説明

感光性樹脂組成物並びにこれを用いた感光性エレメント、画像表示装置の隔壁の形成方法及び画像表示装置の製造方法

【課題】 高温高湿下で電圧を印加した際にも透明電極基板の溶解を抑えることが可能な感光性樹脂組成物並びにこれを用いた感光性エレメント、これらの材料を用いた画像表示装置の隔壁の形成方法及び画像表示装置を提供する。
【解決手段】 画像表示装置において、画素を分離する隔壁を形成するための感光性樹脂組成物であって、前記感光性樹脂組成物が、(A)成分:分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するバインダーポリマー、(B)成分:光重合性化合物、(C)成分:光重合開始剤、(D)成分:エポキシ基を有する化合物を含有し、前記(B)成分が、下記一般式(1)で表される化合物を含有する、感光性樹脂組成物。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物並びにこれを用いた感光性エレメント、画像表示装置の隔壁の形成方法、画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙のように薄く、持ち運びが自由で、文字や画像が表示可能な画像表示装置(PLD:Paper Like Display)が注目を集めている。かかる画像表示装置は、通常の印刷物としての紙の長所である視認性、携帯性を有し、さらに、情報を電気的に書き換え可能であるため、環境やコストの面からも紙の代替品として実用化が試みられている。
【0003】
画像表示装置の表示技術としては、電気泳動等により粒子を移動させるタイプ、液晶タイプ、電気化学タイプなど様々なタイプが考案されている(例えば、非特許文献1参照)。特に粒子を移動させるタイプとしては、マイクロカプセル型電気泳動方式、マイクロカップ型電気泳動方式、電子粉流体方式、トナーディスプレイ等の方式が検討されている。これらの方式では、透明電極間に表示媒体である白と黒の粒子を封入し電場をかけ、これらの粒子を電気的に移動させることにより白/黒画像を形成し表示させる。また、画像表示装置の駆動方式としては、アクティブ駆動とパッシブ駆動があり、画像表示装置用の背面技術(パネル回路)の検討もなされている。
【0004】
上記粒子移動タイプの画像表示装置の場合、上記のように白/黒の粒子を封入するための隔壁が必要となる。かかる隔壁の形成方法としては、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。中でも、感光性樹脂組成物を用いて、活性光線の照射により高精細なパターンが効率よく形成できるフォトリソ法が注目されている。
【0005】
また、最近では、フレキシブル化の検討や、白/黒画像表示にカラーフィルターを組み合わせることにより、フルカラー表示を実現させるという報告例もある(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
また、フルカラー表示を行う際には、白/黒表示の画像表示装置にカラーフィルターを併用するため、各画素間のコントラストの向上が必須である。従って、各画素間の光を遮断するための遮光層が必要となる。モノクロ表示の場合は、カラーフィルターを使用せず、画像表示装置の画像の明度を上げるため、遮光性ではなく透明性を求められる場合もある。
【0007】
フォトリソ法を用いた画像表示装置の隔壁は、以下のようにして形成される。すなわち、透明電極基板上にブラックマトリックスと呼ばれる遮光層をフォトリソ技術により積層する工程、さらに上記遮光層上に感光性樹脂組成物を塗布、又は感光性フィルムを積層することにより感光性樹脂組成物層を形成する工程、上記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化させる工程、未露光部を除去して光硬化物パターンを形成する工程を含む。従って、画像表示装置の隔壁を形成するための感光性樹脂組成物には、一般に、感度、解像性及び基板への密着性が要求される。
【0008】
また、画像表示装置を製造する場合、上記工程で得たパターン内に、粒子等の表示媒体を充填する工程、上記光硬化物パターンを熱処理する工程、電極基板を貼り付ける工程等をさらに含む。これにより、感光性樹脂組成物層の硬化物を隔壁とする画像表示装置が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−178881号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】鈴木 明、“電子ペーパーの最新動向2007”、平成19年10月10日、日本画像学会誌 第46巻 第5号:372−384(2007)
【非特許文献2】田沼 逸夫、“電子粉流体を用いたフレキシブル電子ペーパー”、平成19年10月10日、日本画像学会誌 第46巻 第5号:396−400(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記電極基板を貼り付ける工程においては、高温高湿下で電圧を印加するため、感光性樹脂組成物の硬化物と密着した電極部分が溶解する問題があった。
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、高温高湿下で電圧を印加した際にも透明電極基板の溶解を抑えることが可能な感光性樹脂組成物並びにこれを用いた感光性エレメント、これらの材料を用いた画像表示装置の隔壁の形成方法及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、画像表示装置において、画素を分離する隔壁を形成するための感光性樹脂組成物であって、上記感光性樹脂組成物が、(A)成分:分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するバインダーポリマー、(B)成分:光重合性化合物、(C)成分:光重合開始剤、(D)成分:エポキシ基を有する化合物を含有し、上記(B)成分が、下記一般式(1)で表される化合物を含有する、感光性樹脂組成物が、電極の溶解を抑えることができることを見いだし、本願発明を完成した。
【0014】
【化1】

(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、m及びnはそれぞれ独立に0〜50の整数を示す。ただし、m+nは1以上の整数である。)
【0015】
また、本発明は、必要に応じて上記(E)成分がチタンブラックを好例とする無機系黒色顔料を含む感光性樹脂組成物に関する。これにより、光感度と遮光性という相反する特性をバランス良く維持することができる。その一方、画像表示装置の明度を向上させるため、この無機系黒色顔料((E)成分)を一切含まない隔壁形成用感光性樹脂組成物及びこれを用いた感光性エレメントが求められる場合もあるので、必要に応じて添加すれば良い。
【0016】
さらに、本発明は、上記(B)成分が、下記一般式(2)で表される化合物をさらに含む、感光性樹脂組成物に関する。これにより、電極基板の溶解を抑制することができる。
【0017】
【化2】

[一般式(2)中、R、R及びRは各々独立に、下記一般式(3):
【0018】
【化3】

(一般式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、Zは単結合又は2価の有機基を示し、kは1〜30の整数を示す。)で表される基、或いは、下記一般式(4):
【0019】
【化4】

(一般式(4)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Zは単結合又は2価の有機基を示し、Yは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、mは1〜10の整数を示し、nは1〜10の整数を示し、lは0〜10の整数を示す。)で表される基を示し、R、R及びRのうちの少なくとも1つは上記一般式(4)で表される基を示す。]
【0020】
本発明では、一般式(4)で表される化合物におけるnが4〜25の整数であると好ましい。また、前記Z及び前記Zが、下記一般式(5)で表される2価の基であると好ましい。
【0021】
【化5】

【0022】
本発明はまた、支持体と、該支持体上に形成された上記本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を備える感光性エレメントを提供する。このような感光性エレメントを用いることにより、画像表示装置の隔壁を形成する際に問題となる電極の溶解を抑えたまま、屈曲時の破損を抑制できる隔壁を形成することができる。また、かかる感光性エレメントによれば、解像度及び密着性に優れた光硬化物パターンを感度良く形成することができる。
【0023】
上記感光性エレメントにおいて、上記感光性樹脂組成物層の膜厚は、10〜100μmであることが好ましい。これにより画像表示装置の薄型化及びコントラストをより向上させることができる。
【0024】
本発明はまた、少なくとも表示面に配置された透明電極と、画素を分離する隔壁とを備える、屈曲性を有する画像表示装置の隔壁の形成方法であって、上記画像表示装置の基板上に、上記本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を積層する積層工程と、上記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、上記感光性樹脂組成物層の上記露光部以外の部分を除去して光硬化物パターンを形成する現像工程と、を有する、画像表示装置の隔壁の形成方法を提供する。
【0025】
本発明は更に、少なくとも表示面に配置された透明電極と、画素を分離する隔壁とを備える、屈曲性を有する画像表示装置の製造方法であって、上記本発明の画像表示装置の隔壁の形成方法により上記隔壁を形成する工程を有する、画像表示装置の製造方法を提供する。
【0026】
上記画像表示装置の隔壁の形成方法及び画像表示装置の製造方法によれば、上述した本発明の感光性樹脂組成物によって隔壁を形成しているため、隔壁を形成する際の電極の溶解を抑制することができる。
【0027】
また、上記画像表示装置の製造方法は、上記隔壁内に表示媒体を充填する工程と、一方の基板に対向するように隔壁の反対側に基板を貼り付ける工程と、を更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の効果が得られる詳細な要因は明らかではないが、本発明の感光性樹脂組成物は(A)成分〜(D)成分を含有し、特に(B)成分に一般式(1)で表される特定の化合物を含有させることが発明の効果を奏する一因と予想される。本発明によれば、恒温恒湿下で電圧を印加した際の電極の溶解を抑えることが可能な画像表示装置用の隔壁を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本明細書における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル及びそれに対応するメタクリロイルを意味する。
【0030】
(感光性樹脂組成物)
本発明の感光性樹脂組成物は、画像表示装置の隔壁を形成するための感光性樹脂組成物であって、上記感光性樹脂組成物が、(A)成分として分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するバインダーポリマー、(B)成分として光重合性化合物、(C)成分として光重合開始剤、(D)成分としてエポキシ基を有する化合物を含有し、前記(B)成分が、上記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
【0031】
以下、本発明の感光性樹脂組成物で使用できる各成分について詳細に説明する。
【0032】
(A)成分:分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するバインダーポリマー
本発明に用いることのできる(A)成分としては、分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有し、フィルム性を付与できるものであれば特に制限なく、例えばアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。中でも、アクリル系樹脂が、アルカリ現像性の観点からは好ましい。これらは単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。二種類以上のバインダーポリマーの組み合わせの例としては、異なる共重合成分からなる二種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の二種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度の二種類以上のバインダーポリマー等が挙げられる。また、特開平11−327137号公報記載のマルチモード分子量分布を有するポリマーを用いることもできる。
【0033】
(A)成分は、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させ、その後、重合性単量体にエチレン性不飽和結合を有する単量体を付加させることで製造することができる。重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン等の重合可能なスチレン誘導体;アクリルアミド;アクリロニトリル;ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸;マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノイソプロピルエステル等のマレイン酸モノエステル;フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸、マレイミド化合物などが挙げられる。カルボキシル基を有する重合性単量体としては、現像性及び安定性の観点から(メタ)アクリル酸を含むことが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、後述するイソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステルと反応し、透湿性を抑えることが出来る点で好ましい。また、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0034】
また、これらは単独でホモポリマーとして、又は二種類以上を組み合わせてコポリマーとして用いることができる。
【0035】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、及びこれらの構造異性体が挙げられる。
【0036】
また、単量体としては、例えばイソシアネート基含有アクリル酸エステル、イソシアネート基含有メタクリル酸エステル、グリシジル基含有アクリル酸エステル、グリシジル基含有メタクリル酸エステルなどを含むことが好ましい。これにより、例えば上述した2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが単量体として含まれる場合には、これらの単量体が反応し、より架橋密度を上げることで、透湿性を抑えることができる。
【0037】
(A)成分の酸価は、解像性に優れる点では、30mgKOH/g以上であることが好ましく、80mgKOH/g以上であることがより好ましく、130mgKOH/g以上であることがさらに好ましく、180mgKOH/以上であることが特に好ましい。耐現像液性及び密着性に優れる点では、250mgKOH/g以下であることが好ましく、240mgKOH/g以下であることがより好ましく、230mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、220mgKOH/g以下であることが特に好ましい。なお、現像工程として溶剤による現像を行う場合は、カルボキシル基を有する重合性単量体の使用量を抑えて調製することが好ましい。
【0038】
ここで、酸価は、次のようにして測定することができる。すなわち、まず、酸価を測定すべき樹脂の溶液約1gを精秤した後、この樹脂溶液にアセトンを30g添加し、これを均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、次式により酸価を算出する。
【0039】
A=10×Vf×56.1/(Wp×I)
式中、Aは酸価(mgKOH/g)を示し、Vfは0.1NのKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは測定した樹脂溶液の質量(g)を示し、Iは測定した樹脂溶液中の不揮発分の割合(質量%)を示す。
【0040】
(A)成分の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算)は、耐現像液性に優れる点では、20,000以上であることが好ましく、23,000以上であることがより好ましく、25,000以上であることがさらに好ましい。現像時間を短くできる観点からは、300,000以下であることが好ましく、150,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることがさらに好ましい。なお、バインダーポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することとする。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件は、以下に示すとおりである。
[GPC測定条件]
ポンプ:日立 L−6000型(株式会社日立製作所製)
カラム:Gelpack GL−R420 + Gelpack GL−R430 +
Gelpack GL−R440(計3本)(以上、日立化成工業株式会社製、商品名)溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:25℃
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L−3300型RI(株式会社日立製作所製)
【0041】
(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、感光性樹脂組成物の塗膜性に優れる点では、40質量部以上が好ましく、45質量部以上がより好ましい。光硬化物の機械的強度に優れる点では、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、70質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましい。
【0042】
(B)成分:光重合性化合物
本発明の感光性樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される化合物を必須成分として含む。下記一般式(1)中、m+nは、1以上の整数であるが透湿性を抑える点で、3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
【0043】
【化6】

(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、m及びnはそれぞれ独立に0〜50の整数を示す。ただし、m+nは1以上の整数である。)
【0044】
本発明に用いることのできるその他の(B)成分としては、特に制限はないが、イソシアヌル環構造を有する化合物を含有することが好ましい。イソシアヌル環構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0045】
【化7】

[一般式(2)中、R、R及びRは各々独立に、下記一般式(3):
【0046】
【化8】

(一般式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、Zは単結合又は2価の有機基を示し、kは1〜30の整数を示す。)で表される基、或いは、下記一般式(4):
【0047】
【化9】

(一般式(4)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Zは単結合又は2価の有機基を示し、Yは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、mは1〜10の整数を示し、nは1〜10の整数を示し、lは0〜10の整数を示す。)で表される基を示し、R、R及びRのうちの少なくとも1つは前記一般式(4)で表される基を示す。]
【0048】
上記一般式(3)及び(4)中、X及びYで示される炭素数2〜6のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ネオペンチレン基、へキシレン基等が挙げられるが、エチレン基又はプロピレン基であることが好ましい。
【0049】
上記一般式(3)中、kは、電極の溶解及び耐現像液性の観点から、3〜20の整数であることが好ましく、4〜15の整数であることがより好ましく、5〜10の整数であることが特に好ましい。
【0050】
上記一般式(4)中、mは、得られる硬化膜の弾性率の観点から、2〜8であることが好ましく、4〜6であることがより好ましい。また、nは得られる硬化膜の弾性率の観点から、2〜10の整数であることが好ましく、3〜8の整数であることがより好ましく、4〜6の整数であることが特に好ましい。更に、lは得られる硬化膜の弾性率の観点から、1〜5の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましい。
【0051】
上記一般式(3)中のXがエチレン基又はプロピレン基であり、上記一般式(4)中のmが4〜10であることが好ましい。
【0052】
一般式(3)及び(4)のZ及びZが各々独立に、下記一般式(5)で表される2価の基であることが好ましい。
【0053】
【化10】

[一般式(5)中、pは1〜10の整数を示す。]
【0054】
ここで、上記一般式(5)中、pは、得られる硬化膜の弾性率の観点から、2〜8であることが好ましく、4〜7であることがより好ましい。
【0055】
上記一般式(2)で表される化合物で入手可能なものとしては、例えば、R、R及びRが上記一般式(4)で表される基、Rがメチル基、Yがエチレン基、m=5、n=3、l=1、Zが上記一般式(5)で表される基、p=6、である化合物(日本サイテックインダストリーズ株式会社製)等が挙げられる。
【0056】
さらに、上記以外の(B)成分としては、分子内にエチレン性不飽和結合を1つ有する化合物を含むことが好ましい。
【0057】
上記(B)成分としては、特に制限はないが、解像性に優れる点では、下記一般式(6)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0058】
【化11】


[一般式(6)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子、メチル基又はハロゲン化メチル基のいずれかを示し、R10は炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基のいずれかを示し、pは0〜4の整数を示す。なお、pが2以上の場合、複数存在するR10は同一でも異なっていてもよい。−(O−A)−はオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を示し、−(O−A)−の繰り返し総数aは1〜4の整数を示す。]
【0059】
上記一般式(6)で表される化合物で入手可能なものとしては、例えば、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、及びβ−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート等が挙げられ、なかでも、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレートが好ましい。γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレートはFA−MECH(日立化成工業株式会社製、製品名)が挙げられる。
【0060】
さらに、その他の(B)成分としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレン基の数が2〜14のもの)、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレン基の数が2〜14のもの)等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート等のトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート化合物;テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等のテトラメチロールメタン(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート化合物;ビスフェノールAジオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAトリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAデカオキシエチレンジ(メタ)アクリレート等のビスフェノールAジオキシエチレンジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリルレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリレートなどが挙げられる。
上記(B)成分は、単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
(B)成分の含有量は、解像性及び密着性と、フィルム形成性の観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、30〜60質量部の範囲とすることが好ましく、35〜55質量部とすることがより好ましい。
【0062】
(C)成分:光重合開始剤
本発明に用いることのできる(C)成分としては、使用する露光機の光波長にあわせたものであれば特に制限はなく、具体的には例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体;クマリン系化合物;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等のイミダゾール二量体;1−(4−メトキシフェニル)−2,2−ジメトキシ−2−フェニルエタン−1−オン、1−(4−メトキシフェニル)−2−メトキシ−2−エトキシ−2−フェニルエタン−1−オン、1−(4−メトキシフェニル)−2−メトキシ−2−プロポキシ−2−フェニルエタン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(通称ベンジルジメチルケタール);などが挙げられる。また、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は同一で対象な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせでもよい。これらは、単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
中でも、解像性を良好にする観点から、アクリジン誘導体及びベンジル誘導体を含むことが好ましく、特に1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタンを含むことが好ましい。
【0064】
上記(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、光感度に優れる点では、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましい。また、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、感光性樹脂組成物の内部の光硬化に優れる点では20質量部以下が好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0065】
上記(C)成分として、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタンを含む場合、その含有量は、上記(A)成分と(B)成分の総量100質量部に対して、光感度に優れる点では、0.05〜1質量部が好ましく、0.1〜0.5質量部であることがより好ましい。
【0066】
(D)成分:エポキシ基を有する化合物
本発明で用いることのできる(D)成分としては、エポキシ基(オキシラン環)を有する化合物等が挙げられる。
【0067】
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノールジグリシジルエーテル等のビキシレノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及び、それらの二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0068】
これらの化合物としては市販品を用いることができる。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとしては、エピコート828、エピコート1001及びエピコート1002(いずれもジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、エピクロン1055(DIC株式会社製、商品名)等を挙げることができる。
【0069】
ビスフェノールFジグリシジルエーテルとしては、エピコート807(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)等を挙げることができ、ビスフェノールSジグリシジルエーテルとしてはEBPS−200(日本化薬株式会社製、商品名)及びエピクロンEXA−1514(DIC株式会社製、商品名)等を挙げることができる。
【0070】
また、ビフェノールジグリシジルエーテルとしてはYL−6121(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)等を挙げることができ、ビキシレノールジグリシジルエーテルとしてはYX−4000(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)等を挙げることができる。
【0071】
さらに、水添ビスフェノールAグリシジルエーテルとしてはST−2004及びST−2007(いずれも東都化成株式会社製、商品名)等を挙げることができ、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としてはエピクロンHP−7200L(DIC株式会社製、商品名)等を挙げることができ、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としてはエピクロンN−670−EXP−S(DIC株式会社製、商品名)等を挙げることができる。また、上記した二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてはST−5100及びST−5080(いずれも東都化成株式会社製、商品名)等を挙げることができる。
【0072】
これらの中でも、電極の溶解を抑える点では、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。また、上記(D)成分は、単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
(E)成分:無機系黒色顔料
本発明で用いることのできる(E)成分としては、例えば、チタンブラック、カーボンブラック、コバルトブラック等が挙げられ、360nm及び405nmの透過性が良好である点で、チタンブラックが好ましい。
【0074】
上記(E)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、遮光性に優れる点では、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましい。また、密着性及び解像性に優れる点では、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0075】
以上のような成分を含む感光性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、黒色以外の顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などを、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して各々0.01〜20質量部程度含有することができる。これらは単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
以上のような成分を含む本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、含有成分をロールミル、ビーズミル等で均一に混練、混合することにより得ることができる。また、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解して、固形分30〜60質量%程度の溶液として用いることができる。
【0077】
得られた感光性樹脂組成物を用いて画像表示装置用基板上に感光性樹脂組成物層を形成する方法としては、特に制限はないが、上記基板上に感光性樹脂組成物を液状レジストとして塗布して乾燥することができる。また、必要に応じて感光性樹脂組成物層上に保護フィルムを被覆することができる。さらに、後に詳しく述べるが、感光性樹脂組成物層を感光性エレメントの形態で用いることが好ましい。液状レジストとして使用する場合、塗布後に保護フィルムを被覆して用いる場合の保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムが挙げられる。
【0078】
本発明の感光性エレメントは、支持体と、その上に形成された上記感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層とを備える。支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の重合体フィルムを好ましく用いることができる。重合体フィルムの厚みは、1〜100μm程度とすることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、10〜30μmであることがさらに好ましい。
【0079】
支持体上への感光性樹脂組成物層の形成方法は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の溶液を塗布、乾燥することにより好ましく実施できる。塗布される感光性樹脂組成物層の厚みは、用途により異なるが、乾燥後の厚みで10〜100μm程度であることが好ましい。画像表示装置の隔壁として用いる場合、感光性樹脂組成物層の厚みは、コントラストに優れる点では、乾燥後の厚みで10〜70μmであることがより好ましく、15〜60μmであることがさらに好ましい。
【0080】
塗布は、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の公知の方法で行うことができる。乾燥は、例えば70〜150℃、2〜30分間程度で行うことができる。また、感光性樹脂組成物層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、2質量%以下とすることが好ましい。
【0081】
支持体上に塗布された感光性樹脂組成物層上に保護フィルムを用いて、感光性樹脂組成物層表面を被覆してもよい。保護フィルムとしては、感光性樹脂組成物層と支持体の接着力よりも、感光性樹脂組成物層と保護フィルムの接着力の方が小さいものが好ましくポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系フィルムやポリエチレンテレフタレートを代表とするポリエステルフィルムが用いられる。ポリエステルフィルムを支持体として用い、保護フィルムに同種のポリエステルフィルムを用いる場合には、保護フィルムの感光性樹脂層に接触する面に加工処理をしたものを用いることが好ましい。またこれらの保護フィルムは、低フィッシュアイのフィルムが好ましい。ここで、「フィッシュアイ」とは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、二軸延伸する押出法、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものを意味する。すなわち、「低フィッシュアイ」とは、フィルム中の上記異物等が少ないことを意味する。さらに、感光性フィルムは、感光性樹脂組成物層、支持体及び任意の保護フィルムの他に、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層や保護層を有していてもよい。
【0082】
製造された感光性エレメントは、通常、円筒状の巻芯に巻きとって貯蔵される。なお、この際支持体が外側になるように巻き取られることが好ましい。上記ロール状の感光性エレメントロールの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。ここで言うエッジフュージョンとは、コールドフローとも称される端面から感光性樹脂組成物層が染み出してくる現象を表す。この現象が発生すると隔壁形成時の異物発生源となり、好ましくない現象である。また、梱包方法として、透湿性が小さく遮光性に優れる黒色シートに包んで包装することが好ましい。上記巻芯としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックが挙げられる。
【0083】
次に、本発明の感光性樹脂組成物及び又は感光性エレメントを用いた画像表示装置の隔壁の形成方法及び製造方法について説明する。画像表示装置の基板上に、感光性樹脂組成物、又は感光性エレメントを用いて感光性樹脂組成物層を積層する積層工程と、上記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、上記露光部以外の部分を除去して光硬化物パターンを形成する現像工程とを有する。
【0084】
まず、上記の本発明の感光性樹脂組成物層を画像表示装置の電極基板上に積層する。上記基板としては、ガラス基板若しくはポリマーフィルム基板のような絶縁基板若しくはシリコン基板等の半導体基板上にITO、IZO、Agワイヤ・インクのような電極が形成されたものが挙げられる。電極の形成方法としては蒸着、スパッタリング等の方法で積層した電極材料をフォトリソ手法を用いてパターン形成する方法や、感光性を有する電極材料をパターニングする方法などが取られる。この電極の形成方法に関しては特に制限はない。電極基板上への積層方法としては、上記した塗布方法が用いられる他、感光性エレメントを用いることもできる。
【0085】
感光性エレメントを用いる積層方法は、感光性樹脂組成物層上に保護フィルムが存在している場合には、保護フィルムを除去しながら基板上へ積層する。上記積層条件としては、例えば、感光性樹脂組成物層を70〜130℃程度に加熱しながら、基板上に0.1〜1MPa程度(1〜10kgf/cm程度)の圧力で圧着することにより積層する方法等が挙げられ、減圧下で積層することも可能である。基板表面の形状は、通常は電極パターンが形成されているが、平坦であったり、必要に応じて凹凸が形成されていてもよい。
【0086】
感光性樹脂組成物の積層後、感光性樹脂組成物層に画像状に活性光線を照射して、露光部を光硬化させる。画像状に活性光線を照射させる方法としては、感光性樹脂組成物層上にマスクパターンを設置して画像状に活性光線を照射し、露光部の感光性樹脂組成物層を光硬化させる方法がある。マスクパターンは、ネガ型でもポジ型でもよく、一般に用いられているものを使用できる。活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものが用いられる。また、露光方法としては、マスクパターンを用いずにレーザーで直接パターンを描画する、直接描画露光法を用いることもできる。
【0087】
露光後に未露光部の感光性樹脂組成物層を現像により選択的に除去することにより、画像表示装置用の基板上に光硬化物パターンが形成される。なお現像工程は、支持体が存在する場合は、現像に先立ち、支持体を除去する。現像は、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の現像液によるウエット現像、ドライ現像等で未露光部を除去することにより行われる。本発明においては、アルカリ性水溶液を用いることが好ましい。アルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化カリウムの希薄溶液等が挙げられる。このアルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を混入させてもよい。上記現像の方式としては、例えば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられるが、解像度を向上させるにはスプレー方式が好ましい。
【0088】
現像後の処理として、形成された上記光硬化物パターンを、必要に応じて60〜250℃程度の加熱処理によりさらに硬化してもよい。
【実施例】
【0089】
以下、実施例により本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
(実施例1〜5及び比較例1〜7)
(C)成分:光重合開始剤
EAB(N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、保土ヶ谷化学工業株式会社製、商品名)0.05g、TPS(トリブロモメチルフェニルスルホン、住友精化株式会社製、製品名)0.5g、N−1717(1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、株式会社ADEKA社製、商品名)0.3g、I−651(ベンジルジメチルケタール、チバスペシャリティーケミカル株式会社製、商品名)3g
(D)成分:エポキシ基を有する化合物
エピクロンN−670−EXP−S(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社製、商品名)12.8g
(E)成分:無機系黒色顔料
BT−1HCA(チタンブラック分散液、株式会社ジェムコ製、商品名)0.59g
(その他の成分)
フローレンDOPA−17HF(分散剤、共栄社化学株式会社製、商品名)0.25g、SZ−6030(メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名)5g、トルエン12g、メタノール4gを配合し、溶液を得た。
【0090】
この溶液に表1に示す(A)成分、(B)成分を溶解させて感光性樹脂組成物を得た。次いで、この感光性樹脂組成物溶液を16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、商品名:FB−40)上に均一に塗布し、90℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥した後、ポリエチレン製保護フィルム(フィルム長手方向の引張強さ:16MPa、フィルム幅方向の引張強さ:12MPa、商品名:NF−15,タマポリ株式会社製)で保護して感光性エレメントを得た。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、45μmであった。
【0091】
ITO付PET基材(東洋紡績株式会社製R−300)のITO面上に、上記感光性エレメントを、感光性樹脂組成物層がITO付PET基材表面に接するように、ポリエチレン製保護フィルムを剥離しながら110℃に加熱したラミネートロールを通してラミネートした。できあがった積層物の構成は、下からITO付PET基材、感光性樹脂組成物層、ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)となる。得られた積層物について、フィルム性、感度、密着性、解像性及び電極の溶解性について評価を行った。
【0092】
<フィルム性の評価>
感光性エレメントを作製した後、10℃以下で保管し、60日後に感光性樹脂組成物層表面におけるしわ等の発生状況を評価した。2ヶ月以内にしわの発生が認められない場合を「良好」とし、発生が認められた場合にその状況を評価した。結果を表1に示した。
【0093】
<感度の評価>
高圧水銀灯ランプを有する平行光露光機EXM−1201(株式会社オーク製作所製)を用いて、41段ステップタブレットを有するフォトツールを積層物のポリエチレンテレフタレートフィルム上に密着させ、露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃でスプレーすることにより、未露光部分を除去した。41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が29.0となるエネルギー量(露光量)を感度(mJ/cm)とした。このエネルギー量の数値が小さい程、感度が高いことを示す。表1に評価結果を示した。
【0094】
<密着性の評価>
高圧水銀灯ランプを有する平行光露光機(株式会社オーク製作所製)EXM−1201を用いて、密着性評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が10/300〜80/300(単位:μm、スペース幅一定)の配線パターンを有するフォトツールと、41段ステップタブレットを有するフォトツールを積層物のポリエチレンテレフタレートフィルム上に密着させ、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が29.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃でスプレーすることにより、未露光部分を除去して密着性を評価した。密着性は現像液により剥離されずに残ったラインの幅(μm)で表され、この数値が小さい程、細いラインでもガラス基板から剥離せずに密着していることから、密着性が高いことを示す。表1に評価結果を示した。
【0095】
<解像性の評価>
41段ステップタブレットを有するフォトツールと、解像性評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が30/30〜200/200(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールを積層物のポリエチレンテレフタレートフィルム上に密着させ、高圧水銀灯ランプを有する平行光露光機(株式会社オーク製作所製)EXM−1201を用いて、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が29.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃でスプレーすることにより、未露光部分を除去して解像性を評価した。解像性は現像処理によって未露光部が良好に除去された最も小さいスペース幅(μm)で表され、この数値が小さいほど解像性は良好である。表1に評価結果を示した。
【0096】
<電極の溶解性>
ITO−TEG(Test Element Group)基板(ライン幅/スペース幅が80/80(単位:μm))のITO面上に、上記感光性エレメントを、感光性樹脂組成物層がITO−TEG基板表面に接するように、ポリエチレン製保護フィルムを剥離しながら110℃に加熱したラミネートロールを通してラミネートした。できあがった積層物の構成は、下からITO−TEG基板、感光性樹脂組成物層、ポリエチレンテレフタレートフィルムとなる。得られた積層物を、高圧水銀灯ランプを有する平行光露光機(株式会社オーク製作所製)EXM−1201を用いて、現像後の残存ステップ段数が29.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃でスプレーすることにより、未露光部分を除去した。次いで、120℃に加熱した箱型乾燥機(三菱電機株式会社製、型番:NV50−CA)内に1時間静置した。次いで、60℃、90%RHの条件下で、80Vの直流電圧を印加し、100時間経過後の陽極の抵抗値を測定し、下記式より初期値からの上昇率を算出した。抵抗値の上昇率100%未満を「○」と、100%以上を「△」とし、電極が溶解し抵抗値の測定が不可能であったものを「×」として評価した。表1に評価結果を示した。
抵抗値の上昇率(%)=(100時間経過後の陽極抵抗値)×100/(陽極抵抗値の初期値)−100
【0097】
【表1】

配合量の単位:g
○:電極の抵抗値上昇率100%未満、△:上昇率100%以上、×:溶解ありのため測定不可
*1(MIS−115);メタクリル酸−2-ヒドロキシエチル/メタクリル酸/N−シクロヘキシルマレイミド/ジシクロペンタニルメタクリレート共重合体(質量比39.5/15/13.5/32、2−イソシアネートエチルメタクリレート1.5mmol/g付加(綜研化学株式会社製 商品名:フォレットMIS−115)
*2(樹脂A);メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル共重合体(樹脂A、質量比30/35/35、重量平均分子量50,000、酸価196mgKOH/g)の48質量%メチルセロソルブ/トルエン(質量比6/4)溶液93.75g(固形分45g)
*3(HT−9082−95);末端にヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物、有機イソシアネート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られた光重合性化合物、重量平均分子量4000(日立化成工業株式会社製、商品名:HT−9082−95)
*4(UA21EB);トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学工業株式会社製、商品名NKオリゴUA−21)
*5(JTX−039B);上記一般式(2)で表される化合物であって、R及びRが上記一般式(3)で表される基、Rが上記一般式(4)で表される基、Rがメチル基、Xがエチレン基、k=7、Rがメチル基、Yがエチレン基、m=5、n=4、l=1、Z及びZが上記一般式(5)で表される基、p=6、である化合物(日本サイテックインダストリーズ株式会社製、サンプル名)
*6(FA−023M);(EO)(PO)(EO)変性ポリプロピレングリコール#700ジメタクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名:FA−023M)
*7(FA-024M);(PO)(EO)(PO)変性ポリエチレングリコールジメタクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名:FA−024M)
*8(APG−400);上記一般式(1)で表される化合物であって、m+n=7、であるプロピレングリコールジアクリレート(新中村化学工業社製商品名:APG−400)
*9(FA−MECH);γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレート(日立化成工業株式会社製、商品名:FA−MECH)
【0098】
表1から明らかなように、(A)成分の分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するバインダーポリマーと(B)成分の一般式(1)で表される光重合性化合物を含有する実施例1〜5は、透明電極の溶解を防止することが可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置において、画素を分離する隔壁を形成するための感光性樹脂組成物であって、
前記感光性樹脂組成物が、
(A)成分:分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するバインダーポリマー、
(B)成分:光重合性化合物、
(C)成分:光重合開始剤、
(D)成分:エポキシ基を有する化合物を含有し、
前記(B)成分が、下記一般式(1)で表される化合物を含有する、感光性樹脂組成物。
【化1】

(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、m及びnはそれぞれ独立に0〜50の整数を示す。ただし、m+nは1以上の整数である。)
【請求項2】
更に(E)成分:無機系黒色顔料を含有する、請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、さらに、下記一般式(2)で表される化合物を含有する、請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物。
【化2】

[一般式(2)中、R、R及びRは各々独立に、下記一般式(3):
【化3】

(一般式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、Zは単結合又は2価の有機基を示し、kは1〜30の整数を示す。)で表される基、或いは、下記一般式(4):
【化4】

(一般式(4)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Zは単結合又は2価の有機基を示し、Yは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、mは1〜10の整数を示し、nは1〜10の整数を示し、lは0〜10の整数を示す。)で表される基を示し、R、R及びRのうちの少なくとも1つは前記一般式(4)で表される基を示す。]
【請求項4】
前記一般式(4)で表される化合物におけるnが4〜25の整数である、請求項3記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記Z及び前記Zが、下記一般式(5)で表される2価の基である、請求項3又は請求項4記載の感光性樹脂組成物。
【化5】

[一般式(5)中、pは1〜10の整数を示す。]
【請求項6】
前記(E)成分の無機系黒色顔料が、チタンブラックを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
支持体と、該支持体上に形成された請求項1〜6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を備える感光性エレメント。
【請求項8】
前記感光性樹脂組成物層の膜厚が10〜100μmである、請求項7記載の感光性エレメント。
【請求項9】
少なくとも表示面に配置された透明電極と、画素を分離する隔壁とを備える、屈曲性を有する画像表示装置の隔壁の形成方法であって、
前記画像表示装置の基板上に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を積層する積層工程と、
前記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、
前記感光性樹脂組成物層の前記露光部以外の部分を除去して光硬化物パターンを形成する現像工程と、
を有する、画像表示装置の隔壁の形成方法。
【請求項10】
少なくとも表示面に配置された透明電極と、画素を分離する隔壁とを備える、屈曲性を有する画像表示装置の製造方法であって、
請求項9記載の方法により前記隔壁を形成する工程を有する、画像表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記隔壁内に表示媒体を充填する工程と、
一方の基板に対向するように隔壁の反対側に基板を貼り付ける工程と、
を更に含む、請求項10記載の画像表示装置の製造方法。

【公開番号】特開2012−93559(P2012−93559A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240884(P2010−240884)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】