説明

感光性樹脂組成物並びにその硬化物

【課題】光感度に優れ、熱安定性、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性等に優れた感光性樹脂組成物とその硬化物が求められている。
【解決手段】アルカリ水溶液可溶性樹脂(A)、反応性架橋剤(B)、ラジカル重合型光重合開始剤(C)、硬化剤(D)を含有する感光性樹脂組成物において、該硬化剤(D)が下記式(1)


[式中、nは平均値で0〜3を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、C〜Cの低級アルキル基若しくはフェニル基を示し、Rは水素原子若しくはメチル基を示す。]
で表される結晶性化合物である感光性樹脂組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性ビスフェノールフルオレンエポキシ化合物を硬化剤として用いる感光性樹脂組成物並びにその硬化物に関する。更に詳細には、プリント配線板用ソルダーレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁材料、フレキシブルプリント配線板用ソルダーレジスト、メッキレジスト、感光性光導波路等として有用な、現像性、耐熱性、熱安定性、電気絶縁性、密着性、耐薬品性、耐メッキ性等に優れた硬化物を与える樹脂組成物並びにその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシカルボキシレート化合物を用いた感光性樹脂組成物は、環境的、熱的、力学的性質や基材に対する接着性等の特性のバランスに優れている。このため古くから、塗料・コーティング、接着剤等の分野で用いられてきた。最近では、電気・電子部品製造用途やプリント基板製造用途等の広い工業分野で使用され、ますますその応用範囲が広がりつつある。しかしながら、この応用分野の拡大に伴い、エポキシカルボキシレート化合物を用いた感光性樹脂組成物に耐熱性、密着性等の高い機能の更なる付加が要求されるようになり、電気・電子部品製造用途やプリント基板製造用途を中心に、種々の感光性樹脂組成物の開発が進められている。
【0003】
小型軽量化や通信速度の向上が求められている携帯機器等に使用されているプリント配線板は、高精度・高密度化が進められており、それに伴ってソルダーレジストへの要求も、より高度となり、従来以上の耐熱性、熱安定性を有しながら基板密着性、高絶縁性、無電解金メッキ耐性が求められているが、現在市販のソルダーレジストでは、これらに十分な対応ができていない。例えば、特許文献1及び特許文献2には、ビスフェノールフルオレンにエチレンオキサイド鎖を付加した化合物のアルコール性水酸基をグリシジルエーテル化することにより得られるエポキシ樹脂、該エポキシ樹脂を含む樹脂組成物及びその硬化物が記載されている。しかしながら、感光性樹脂組成物としての用途についての記載は無い。
【0004】
また、特許文献3にはビスフェノールフルオレンエポキシ化合物を含有する組成物が記載されているが、ラジカル重合型の感光性樹脂組成物の構成成分としての記載はない。特許文献4及び特許文献5には、ビスフェノールフルオレン骨格を有する結晶性エポキシ樹脂とそれを含む封止剤等に用いる熱硬化型組成物について記載されているが、感光性樹脂組成物としての用途についての記載は無い。
【0005】
【特許文献1】特開平10−36485号公報
【特許文献2】特開平10−45871号公報
【特許文献3】特許第2820553号
【特許文献4】特開2004−35762号公報
【特許文献5】特開2004−43533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにプリント配線板に求められている高度な性能の要求に、現在市販されているソルダーマスクは十分に対応できていない。
本発明の目的は、高機能なプリント配線板に対応し得る微細な画像に対応するために、活性エネルギー線に対する感光性に優れており、アルカリ水溶液による現像によりパターン形成ができると共に、得られる硬化膜がソルダーマスク等に要求される諸特性を満足する樹脂組成物並びにその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記の課題を解決するため、鋭意研究の結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
【0008】
1)アルカリ水溶液可溶性樹脂(A)、反応性架橋剤(B)、ラジカル重合型光重合開始剤(C)及び硬化剤(D)を含有する感光性樹脂組成物において、該硬化剤(D)が下記式(1)
【0009】
【化1】

【0010】
[式中、nは平均値で0〜3の数示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、C〜Cの低級アルキル基若しくはフェニル基を示し、Rは水素原子若しくはメチル基を示す。]
で表される結晶性化合物である感光性樹脂組成物;
2)硬化剤(D)が、式(1)においてnが0、R及びRが水素原子である結晶性化合物である上記1)記載の感光性樹脂組成物;
3)アルカリ水溶液可溶性樹脂(A)が、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)とを反応させて得られるエポキシカルボキシレート化合物に、多塩基酸無水物(c)を反応させて得られる化合物である上記1)または2)に記載の感光性樹脂組成物;
【0011】
4)上記1)〜3)のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物;
5)上記4)に記載の硬化物の層を有する基材;
6)上記5)に記載の基材を有する物品;
7)上記1)〜3)のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板に塗布し、光硬化し、現像処理及び熱処理する工程を含むことを特徴とする塗膜の製造法;
8)塗膜がプリント配線板用ソルダーマスク、フレキシブルプリント配線板用ソルダーマスク、多層プリント配線板用層間絶縁膜または光導波路である上記7)記載の製造法;
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の結晶性硬化剤を用いた感光性樹脂組成物は、毒性が少なく、タック性、感光性(光感度)、熱安定性に優れ、環境に優しいアルカリ水溶液による現像によりパターン形成できると共に、該感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、ハンダ耐熱性、無電解金メッキ耐性等も十分に満足するものである。特に、プリント配線板用ソルダーレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁材料、フレキシブルプリント配線板用ソルダーレジスト、メッキレジストまたは感光性光導波路形成等に使用できる感光性樹脂組成物として適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ水溶液可溶性樹脂(A)、反応性架橋剤(B)、ラジカル重合型光重合開始剤(C)及び上記式(1)[式中、nは平均値で0〜3の数示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、C〜Cの低級アルキル基若しくはフェニル基を示し、Rは水素原子若しくはメチル基を示す。]で表される結晶性化合物を硬化剤(D)として含有する。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物に含有されるアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)としては特に限定されないが、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)とを反応させて得られるエポキシカルボキシレート化合物に、多塩基酸無水物(c)を反応させて得られる化合物が好ましい。2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)としては、エポキシ当量が100〜900g/当量のエポキシ化合物(a)が好ましい。エポキシ当量が100未満の場合、得られるアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)の分子量が小さく成膜が困難となったり、フレキシブル性が十分得られなかったりすることが有り、また、エポキシ当量が900を超える場合、エチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)の導入率が低くなり感光性が低下する場合がある。
【0015】
上記エポキシ化合物(a)の具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂等)、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−Aノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0016】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンN−770(大日本インキ化学工業(株)製)、D.E.N438(ダウ・ケミカル社製)、エピコート154(油化シェルエポキシ(株)製)、EPPN−201、RE−306(いずれも日本化薬(株)製)等が挙げられる。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンN−695(大日本インキ化学工業(株)製)、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S(いずれも日本化薬(株)製)、UVR−6650(ユニオンカーバイド社製)、ESCN−195(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0017】
トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、EPPN−503、EPPN−502H、EPPN−501H(いずれも日本化薬(株)製)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル社製)、エピコートE1032H60(油化シェルエポキシ(株)製)等が挙げられる。
ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンEXA−7200(大日本インキ化学工業(株)製)、TACTIX−556(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0018】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート828、エピコート1001(いずれも油化シェルエポキシ製)、UVR−6410(ユニオンカーバイド社製)、D.E.R−331(ダウ・ケミカル社製)、YD−8125(東都化成社製)等のビスフェノール−A型エポキシ樹脂、UVR−6490(ユニオンカーバイド社製)、YDF−8170(東都化成社製)等のビスフェノール−F型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0019】
ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、NC−3000、NC−3000−H(いずれも日本化薬(株)製)等のビフェノール型エポキシ樹脂、YX−4000(油化シェルエポキシ(株)製)のビキシレノール型エポキシ樹脂、YL−6121(油化シェルエポキシ(株)製)等が挙げられる。
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンN−880(大日本インキ化学工業(株)製)、エピコートE157S75(油化シェルエポキシ(株)製)等が挙げられる。
【0020】
ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂としては、例えば、NC−7000(日本化薬(株)製)、EXA−4750(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、EHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
複素環式エポキシ樹脂としては、例えば、TEPIC(日産化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0021】
前記の分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)としては、例えば、アクリル酸類やクロトン酸、α−シアノ桂皮酸または桂皮酸等が挙げられる。
アクリル酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、飽和若しくは不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体との当モル反応物であるハーフエステル類、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物、飽和若しくは不飽和二塩基酸と不飽和基含有モノグリシジル化合物(例えば、モノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類)との当モル反応物である半エステル類等が挙げられる。
エチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)としては、本発明の感光性樹脂組成物としたときの光感度の点で(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物または桂皮酸が特に好ましい。
【0022】
本発明のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)を製造するために用いる多塩基酸無水物(c)としては、分子中に1個以上の酸無水物構造を有するものであれば全て用いることができるが、具体的には例えば、無水コハク酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセリン−ビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、1,2,3,4,−ブタンテトラカルボン酸2無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸2無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸2無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸2無水物、2,2−ビス(3,4−アンヒドロジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−アンヒドロジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3a,4,5,9b−テトラヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンの中から選択される1種または2種以上の多塩基酸無水物が挙げられる。
【0023】
本発明の感光性樹脂組成物に含有されるアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)の含有割合としては、感光性樹脂組成物の固形分を100重量%としたとき、通常15〜70重量%、好ましくは20〜60重量%である。
【0024】
本発明の感光性樹脂組成物に含有される反応性架橋剤(B)としては(メタ)アクリレート類が挙げられ、具体的には例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等)と多塩基酸無水物(例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等)の反応物であるハーフエステル類,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX−220、HX−620等)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、モノまたはポリグリシジル化合物(例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、グリセリンポリエトキシグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリエトキシポリグリシジルエーテル等)と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
反応性架橋剤(B)の含有割合としては、感光性樹脂組成物の固形分を100重量%としたとき、通常2〜40重量%、好ましくは5〜30重量%である。
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物に含有されるラジカル重合型光重合開始剤(C)としては活性エネルギー線によりラジカルを発生すれば特に限定されず、具体的には例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、4,4'−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類等が挙げられる。
【0027】
ラジカル重合型光重合開始剤(C)の含有割合としては、感光性樹脂組成物の固形分を100重量%としたとき、通常1〜30重量%、好ましくは2〜25重量%である。
【0028】
これら光重合開始剤(C)は単独または2種以上を混合して使用することができ、更にはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の第3級アミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等の安息香酸誘導体等の促進剤等と組み合わせて使用することができる。これらの促進剤を添加する場合、その添加量としてはラジカル重合型光重合開始剤(C)に対して、100%以下が好ましい。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物に含有される硬化剤(D)は、上記式(1)[式中、nは平均値で0〜3を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、C〜Cの低級アルキル基若しくはフェニル基を示し、Rは水素原子若しくはメチル基を示す。]で表される結晶性化合物である。
硬化剤(D)における式(1)において、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等が挙げられ、C〜Cの低級アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
更に、nが0、R及びRが水素原子である結晶性化合物は、例えば、後記の実施例に記載のように取り出すことができ、その化合物の使用により熱安定性、タック性等の面で特性が向上し、好ましい。
硬化剤(D)は、本発明の感光性樹脂組成物を活性エネルギー線により硬化した後の樹脂塗膜に残存するカルボキシル基と加熱することにより反応し、更に強固な薬品耐性等を有する硬化塗膜を得ることができる。
【0030】
該硬化剤(D)のエポキシ当量は100〜800g/eqの範囲にあり、より好ましくは150〜500g/eqの範囲であり、その融点は70〜200℃の範囲が好ましく、90〜170℃の範囲が特に好ましい。
【0031】
硬化剤(D)の含有割合としては、アルカリ水溶液可溶性樹脂(A)の固形分酸価とその使用量から計算されるカルボキシル基の当量の200%以下の量が好ましい。
この量が200%を超えると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が著しく低下する場合があり好ましくない。
【0032】
更に必要に応じて各種の添加剤、例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ、クレー等の充填剤、アエロジル等のチキソトロピー付与剤;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン等の着色剤、シリコーン、フッ素系のレベリング剤や消泡剤;メラミン等の熱硬化触媒;ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤等を組成物の諸性能を高める目的で添加することができる。
【0033】
なお、上記の硬化剤(D)は予め樹脂組成物に混合しておいてもよく、また、プリント配線板等への塗布前に混合して用いることもできる。即ち、前記(A)成分を主体とし、これにエポキシ硬化促進剤等を配合した主剤溶液と、硬化剤(D)を主体とした硬化剤溶液の二液型に配合し、使用に際してこれらを混合して用いてもよい。更に必要に応じて、後記する溶剤を適宜使用してもよい。
【0034】
本発明の感光性樹脂組成物に含有するアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)は、例えば、前記の分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)との反応(以下第一の反応という)により得られるエポキシカルボキシレート化合物のアルコール性水酸基と、多塩基酸無水物(c)とを反応(以下第二の反応という)して得られる。
【0035】
第一の反応は、無溶剤もしくは水酸基を有さない溶媒、具体的には例えば、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のエステル類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤、更には前記の反応性架橋剤(B)等から選ばれる単独または混合有機化合物中で行うことができる。
【0036】
この反応における原料の仕込み割合としては、エポキシ化合物(a)のエポキシ基1当量に対し、分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)を80〜120当量%が好ましい。この範囲を逸脱した場合、第二の反応中にゲル化を引き起こしたり、最終的に得られるアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)の熱安定性が低くなることがある。
【0037】
反応時には反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒を使用する場合、その使用量は反応原料の総重量に対して0.1〜10重量%程度である。反応温度は60〜150℃であり、反応時間は好ましくは5〜60時間である。
該触媒としては、具体的には例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノピリジン、塩化トリエチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、沃化ベンジルトリメチルアンモニウム、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0038】
また、熱重合禁止剤として、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2−メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等の使用が好ましい。
第一の反応は、適宜サンプリングしながら、サンプルの酸価が1mg・KOH/g以下、好ましくは0.5mgKOH/g以下となった時点を終点とする。
【0039】
なお、本発明において固形分酸価とは、樹脂1g中のカルボン酸の酸性を中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)であり、また、酸価とは該樹脂を含む溶液1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)であり、JIS K0070に準じて、通常の中和滴定法により測定される。また、溶液中の該樹脂の濃度がわかれば、溶液の酸価から固形分酸価を計算して求めることもできる。
【0040】
第二の反応は、第一の反応終了後、反応液に前記の多塩基酸無水物(c)を加えて反応させるエステル化反応である。無触媒でも反応を行うことができるが、反応を促進させるために塩基性触媒を使用することもでき、該触媒を使用する場合、その使用量は反応物に対して10重量%以下が好ましい。反応温度としては40〜120℃であり、反応時間は好ましくは5〜60時間である。
塩基性触媒としては、多塩基酸無水物(c)と反応しなければ特に限定されない。
【0041】
多塩基酸無水物(c)の仕込み量としては、アルカリ水溶液可溶性樹脂(A)の固形分酸価が50〜150mg・KOH/gとなるような計算量を添加するのが好ましい。固形分酸価が50mg・KOH/g未満の場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が不十分となり現像操作の際に樹脂組成物が残渣として残ったり、また、最悪の場合、現像ができなくなる。また、固形分酸価が150mg・KOH/gを超える場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が高くなりすぎ、硬化したレジストが剥離する等の問題が生じる場合がある。
【0042】
こうして得られた本発明のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)は反応に溶剤を使用した場合、これを適当な方法で除去することにより単離することもできる。
本発明の感光性樹脂に含有されるアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)はアルカリ水溶液に可溶であるが、前記の溶媒にも可溶であり、ソルダーレジスト、メッキレジスト等に使用した場合、溶剤で現像することも可能である。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物に含有される硬化剤(D)としての上記式(1)で表される結晶性エポキシ化合物は、例えば、下記式(2)の化合物をエピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンに溶解し、アルカリ金属水酸化物の存在下、反応後、必要に応じて溶媒やエピハロヒドリンを除去し、次いで有機溶剤を加えて目的とするエポキシ樹脂の結晶を析出させて得ることができる。
【0044】
【化2】

[式中、n、R、Rは前記と同じ意味を示す。]
式(2)の化合物は、公知の合成法またはそれに準じた方法にて製造することもでき、あるいは、市販されている場合、その化合物を使用することもできる。
【0045】
前記反応において、アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを溜出させ、更に溜出部を分液して水を除去し、エピハロヒドリンを反応系内に連続的に戻す方法でもよい。使用できるアルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられる。
【0046】
この反応において使用されるエピハロヒドリンの量は、上記式(2)で表される化合物のフェノール性またはアルコール性水酸基1当量に対し0.8〜12モル当量、好ましくは0.9〜11モル当量である。この際、化合物の溶解性を高め反応を円滑に進行させるために、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、もしくは、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等を添加して反応を行うことが好ましい。
【0047】
アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの量に対して通常2〜50重量%、好ましくは4〜40重量%であり、非プロトン性極性溶媒を使用する場合は通常5〜100重量%、好ましくは10〜90重量%である。
【0048】
また、式(2)で表される化合物とエピハロヒドリンとの反応は、それら混合物に塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム等の4級アンモニウム塩を触媒として添加し、50〜150℃で0.5〜8時間反応させて得られる式(2)の化合物のクロロヒドリンエーテル化物に、アルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加えて20〜120℃で1〜10時間反応させ、脱ハロゲン化水素(閉環)させる方法でもよい。
【0049】
この場合、4級アンモニウム塩の使用量は式(2)で表される化合物100重量部に対して0.1〜10重量部である。
【0050】
次いで、エポキシ化反応の反応物を水洗後、加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去し、得られる溶融状態の反応物中に下記の有機溶剤を加えた後、常温に戻すことにより結晶性化合物が析出する。用い得る有機溶剤としては、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、キシレン等が挙げられる。結晶化の際のこれらの有機溶剤の使用量としては、通常反応物残渣の重量に対して50〜400重量%であり、好ましくは100〜300重量%である。
【0051】
十分結晶が析出した後、常圧或いは減圧濾過器を用いて結晶を濾過する。より純度の高い結晶とするために、上記の有機溶剤、或いはメタノール、エタノール等のアルコール類で更に洗浄を行うことが好ましい。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)、反応性架橋剤(B)、ラジカル重合型光重合開始剤(C)、硬化剤(D)を含有する。
本発明の感光性樹脂組成物を溶液として使用する場合の溶媒としては、前記のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)の合成の際に使用した溶媒をそのまま用いてもよく、また、反応の際の溶媒として例示した前記溶媒を別途使用しても、混合して用いてもよい。
【0053】
本発明の感光性樹脂組成物は、樹脂組成物が支持フィルムと保護フィルムでサンドイッチされた構造からなるドライフィルムレジストとして用いることもできる。
【0054】
本発明の感光性樹脂組成物(液状またはフィルム状)は、電子部品の層間の絶縁材、光部品間を接続する光導波路やプリント基板用のソルダーレジスト、カバーレイ等のレジスト材料として有用である他、カラーフィルター、印刷インキ、封止剤、塗料、コーティング剤、接着剤等としても使用できる。
光導波路とは、基板の表面もしくは基板表面直下に周囲よりわずかに屈折率の高い部分を作ることにより光を閉じこめ、光の合波・分波やスイッチングを行う特殊な電子部品である。その具体的部品例としては、通信や光情報処理の分野で有用な光合波回路、周波数フィルター、光スイッチ、光インターコネクション部品等が挙げられる。
【0055】
本発明の硬化物は、紫外線等のエネルギー線照射により上記の本発明の樹脂組成物を硬化させたものである。紫外線等のエネルギー線照射により硬化は常法により行うことができる。例えば、紫外線を照射する場合、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、紫外線発光レーザー(エキシマーレーザー等)等の紫外線発生装置を用いればよい。
【0056】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、例えば、レジスト膜、ビルドアップ工法用の層間絶縁材や光導波路としてプリント基板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光基材に利用される。これらの具体例としては、例えば、コンピューター、家電製品、携帯機器等の物品が挙げられる。
この硬化物層の膜厚は0.5〜160μm程度で、1〜100μm程度が好ましい。
【0057】
一例として、本発明の感光性樹脂を使用したプリント配線板の製造について簡単に説明する。プリント配線用基板に液状の樹脂組成物(溶液)を、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法、カーテンコート法等の方法により0.5〜160μmの膜厚で塗布し、塗膜を通常50〜110℃、好ましくは60〜100℃の温度で乾燥させる。その後、ネガフィルム等の露光パターンを形成したフォトマスクを通して塗膜に直接または間接に紫外線等の活性エネルギー線を通常10〜2000mJ/cm程度の強さで照射し、未露光部分を後述する現像液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッビング等により現像する。
必要に応じて更に紫外線を照射し、次いで通常100〜200℃、好ましくは140〜180℃の温度で加熱処理をすることにより、金メッキ耐性に優れ、熱安定性、耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、密着性等の諸特性を満足する永久保護膜を有するプリント配線板が得られる。
【0058】
上記の現像に使用するアルカリ水溶液としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の無機アルカリ水溶液や水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリ水溶液が使用できる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでない。
合成例1
攪拌装置、還流管をつけた3Lフラスコ中に、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)として、EOCN−103S(日本化薬(株)製 多官能クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;エポキシ当量:215.0g/当量)を860.0g、分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)としてアクリル酸(分子量:72.06)を288.3g、反応用溶媒としてカルビトールアセテートを492.1g、熱重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを4.921g及び反応触媒としてトリフェニルホスフィンを4.921g仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が0.5mg・KOH/g以下になるまで反応させ、エポキシカルボキシレート化合物を得た。
次いでこの反応液に反応用溶媒としてカルビトールアセテートを169.8gを追加し、多塩基酸無水物(c)としてテトラヒドロ無水フタル酸201.6gを仕込み、95℃で4時間反応させ、アルカリ水溶液可溶性樹脂(A)67重量%を含む樹脂溶液を得た(この溶液をA−1とする)。酸価を測定したところ、69.4mg・KOH/g(固形分酸価:103.6mg・KOH/g)であった。
【0060】
合成例2
温度計、滴下ロート、冷却管、攪拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら下記式(3)で表されるBPFL(JFEケミカル社製 ビスフェノールフルオレン)87.5g、エピクロルヒドリン370g、メタノール26gを仕込み攪拌下で還流温度まで昇温し、溶解させた。次いでフレーク状水酸化ナトリウム20gを100分かけて分割添加し、その後更に還流温度で1時間反応させた。反応終了後、水150gを加えて水洗を行い生成した塩等を除去した後、ロータリーエバポレーターを使用して加熱減圧下、過剰のエピクロロヒドリン等を留去し、残留物に攪拌下で231gのメチルイソブチルケトンを加え、常温まで冷却した。析出した結晶を、減圧濾過器を用いて分離し、更に300gのメチルイソブチルケトン及び300gのメタノールを用いて洗浄し、乾燥させることにより、下記式(4)の構造を有する白色の結晶71gを得た(この結晶をD−1とする)。この結晶性化合物のエポキシ当量は236g/eq、融点は153℃、200℃における溶融粘度は0.01Pa・sであった。エポキシ当量及び溶融粘度は、公知の通常用いられる方法にて測定した。
【0061】
【化3】

【0062】
【化4】

【0063】
実施例1、2
前記合成例1で得られたアルカリ水溶液可溶性樹脂(A−1)及び合成例2で得られた結晶性硬化剤(D−1)を用い、その他表1に示す化合物をその配合割合で混合し、3本ロールミルで混練して本発明の感光性樹脂組成物を得た。これをスクリーン印刷法により、乾燥膜厚が15〜25μmの厚さになるようにプリント基板に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥器で40分、50分、60分、70分の各時間乾燥させた。次いで、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用い、回路パターンの描画されたマスクを通して紫外線を照射した。その後、1%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行い、紫外線未照射部の樹脂を除去した。水洗乾燥した後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化反応させ硬化膜を得た。得られた硬化物について、後述のとおり、光感度、表面光沢、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性の試験を行なった。それらの結果を表2に示す。
【0064】
比較例
前記合成例1で得られたアルカリ水溶液可溶性樹脂(A−1)、ESF−300(新日鐵化学(株)製 非結晶性ビフェニルフルオレン型エポキシ樹脂;エポキシ当量246g/当量、軟化点76℃)を硬化剤として用い、その他表1に示す化合物をその配合割合で混合し、3本ロールミルで混練して本発明の感光性樹脂組成物を得た。これをスクリーン印刷法により、乾燥膜厚が15〜25μmの厚さになるようにプリント基板に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥器で40分、50分、60分、70分の各時間乾燥させた。次いで、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用い、回路パターンの描画されたマスクを通して紫外線を照射した。その後、1%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行い、紫外線未照射部の樹脂を除去した。水洗乾燥した後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化反応させ硬化膜を得た。得られた硬化物について、後述のとおり、光感度、表面光沢、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性の試験を行なった。それらの結果を表2に示す。
【0065】
表1
実施例 比較例
注 1 2
樹脂溶液
A−1 51.80 51.80 51.80
反応性架橋剤(B)
DPHA *1 3.38 3.38
HX−220 *2 3.38
ラジカル重合型光重合開始剤(C)
イルガキュアー907 *3 4.50 4.50 4.50
DETX−S *4 0.45 0.45 0.45
硬化剤(D)
硬化剤(D−1) 17.62 17.62
ESF−300 *5 17.62
添加剤
メラミン *6 1.00 1.00 1.00
硫酸バリウム *7 15.15 15.15 15.15
フタロシアニンブルー 0.45 0.45 0.45
BYK−354 *8 0.39 0.39 0.39
KS−66 *9 0.39 0.39 0.39
溶剤
CA *10 4.87 4.87 4.87
【0066】

*1 ジペンタエリスリトールポリアクリレート;日本化薬(株)製
*2 ε−カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート;日本化薬(株)製
*3 2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン;Vantico製
*4 2,4−ジエチルチオキサントン;日本化薬(株)製
*5 ESF−300;新日鐵化学(株)製
【0067】
*6 熱硬化触媒
*7 フィラー
*8 レベリング剤;ビックケミー製
*9 消泡剤;信越化学(株)製
*10 カルビトールアセテート(溶剤)
【0068】
なお、表2に記載の試験方法及び評価方法は次のとおりである。
(タック性)基板に塗布した乾燥後の膜に脱脂綿をこすりつけ、膜のタック性を評価した。
○・・・・脱脂綿は貼り付かない。
×・・・・脱脂綿の糸くずが、膜に貼り付く。
【0069】
(熱安定性)80℃での乾燥時間を40分、50分、60分、70分で行った時の現像性を評価し、下記の評価基準を使用した。
○・・・・現像時、完全にインキが除去され、現像できた。
×・・・・現像時、現像されない部分がある。
【0070】
(解像性)乾燥後の塗膜に、50μmのネガパターンを密着させ積算光量200mJ/cmの紫外線を照射露光する。次に1%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cmのスプレー圧で現像し、転写パターンを顕微鏡にて観察する。下記の基準を使用した。
○・・・・パターンエッジが直線で、解像されている。
×・・・・剥離もしくはパターンエッジがぎざぎざである。
【0071】
(光感度)乾燥後の塗膜に、ステップタブレット21段(コダック社製)を密着させ積算光量500mJ/cmの紫外線を照射露光する。次に1%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cmのスプレー圧で現像し、現像されずに残った塗膜の段数を確認する。
【0072】
(表面光沢)乾燥後の塗膜に、500mJ/cmの紫外線を照射露光する。次に1%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cmのスプレー圧で現像し、乾燥後の硬化膜を観察する。下記の基準を使用した。
○・・・・曇りが全く見られない。
×・・・・若干の曇りが見られる。
【0073】
(密着性)JIS K5400に準じて、試験片に1mmのごばん目を100個作りセロテープ(登録商標)によりピーリング試験を行った。ごばん目の剥離状態を観察し、次の基準で評価した。
〇・・・・剥れのないもの。
×・・・・剥離するもの。
【0074】
(鉛筆硬度)JIS K5400に準じて評価を行った。
【0075】
(耐溶剤性)試験片をイソプロピルアルコールに室温で30分間浸漬する。外観に異常がないか確認した後、セロテープ(登録商標)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○・・・・塗膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの。
×・・・・塗膜にフクレや剥離のあるもの。
【0076】
(耐酸性)試験片を10%塩酸水溶液に室温で30分浸漬する。外観に異常がないか確認した後、セロテープ(登録商標)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○・・・・塗膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの。
×・・・・塗膜にフクレや剥離があるもの。
【0077】
(耐熱性)試験片にロジン系プラックスを塗布し260℃の半田槽に5秒間浸漬した。これを1サイクルとし、3サイクル繰り返した。室温まで放冷した後、セロテープ(登録商標)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
〇・・・・塗膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの。
×・・・・塗膜にフクレや剥離のあるもの。
【0078】
(耐金メッキ性)試験基板を、30℃の酸性脱脂液(日本マクダーミット製、Metex L−5Bの20容積%水溶液)に3分間浸漬した後水洗し、次いで、14.4重量%過硫酸アンモン水溶液に室温で3分間浸漬した後水洗し、更に10容積%硫酸水溶液に室温で試験基板を1分間浸漬した後水洗した。次に、この基板を30℃の触媒液(メルテックス製、メタルプレートアクチベーター350の10容積%水溶液)に7分間浸漬し、水洗し、85℃のニッケルメッキ液(メルテックス製 メルプレートNi−865Mの20容積%水溶液、pH4.6)に20分間浸漬し、ニッケルメッキを行った後、10容積%硫酸水溶液に室温で1分間浸漬し、水洗した。次いで、試験基板を95℃の金メッキ液(メルテックス製、オウロレクトロレスUP15容積%とシアン化金カリウム3容積%の水溶液、pH6)に10分間浸漬し、無電解金メッキを行った後、水洗し、更に60℃の温水で3分間浸漬し、水洗後乾燥した。得られた無電解金メッキ評価基板にセロテープ(登録商標)を付着し、剥離したときの状態を観察した。
○・・・・全く異常が無いもの。
×・・・・若干剥がれが観られたもの。
【0079】
(耐PCT性)試験基板を121℃、2気圧の水中で96時間放置する。外観に異常がないか確認した後、セロテープ(登録商標)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○・・・・塗膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの。
×・・・・塗膜にフクレや剥離があるもの。
【0080】
(耐熱衝撃性)試験片を、−55℃/30分、125℃/30分を1サイクルとして熱履歴を加え、1000サイクル経過後、試験片を顕微鏡観察し次の基準で評価した。
○・・・・塗膜にクラックの発生のないもの。
×・・・・塗膜にクラックが発生したもの。
【0081】
表2
実施例1 実施例2 比較例
評価項目
タック性 ○ ○ ×
熱安定性
40分 ○ ○ ○
50分 ○ ○ ○
60分 ○ ○ ×
70分 ○ ○ ×
解像性 ○ ○ ○
光感度 8 7 5
表面光沢 ○ ○ ○
密着性 ○ ○ ○
鉛筆硬度 8H 8H 6H
耐溶剤性 ○ ○ ×
耐酸性 ○ ○ ×
耐熱性 ○ ○ ○
耐金メッキ性 ○ ○ ○
耐PCT性 ○ ○ ×
耐熱衝撃性 ○ ○ ○
【0082】
上記の結果から明らかなように、本発明のアルカリ水溶液可溶性樹脂及び式(1)で表される結晶性硬化剤を用いた感光性樹脂組成物並びに硬化物は、解像性、表面光沢、密着性、鉛筆硬度、耐熱性、耐金メッキ性、耐熱衝撃性に優れ、耐溶剤性、耐酸性、耐PCT性にも優れており、更にタック性も無く、光感度が良好で、80℃で60分、70分乾燥した時の現像性から評価される熱安定性も良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ水溶液可溶性樹脂(A)、反応性架橋剤(B)、ラジカル重合型光重合開始剤(C)及び硬化剤(D)を含有する感光性樹脂組成物において、該硬化剤(D)が下記式(1)
【化1】

[式中、nは平均値で0〜3を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、C〜Cの低級アルキル基若しくはフェニル基を示し、Rは水素原子若しくはメチル基を示す。]
で表される結晶性化合物である感光性樹脂組成物。
【請求項2】
硬化剤(D)が、式(1)においてnが0、R及びRが水素原子である結晶性化合物である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
アルカリ水溶液可溶性樹脂(A)が、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸化合物(b)とを反応させて得られるエポキシカルボキシレート化合物に、多塩基酸無水物(c)を反応させて得られる化合物である請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化物の層を有する基材。
【請求項6】
請求項5に記載の基材を有する物品。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板に塗布し、光硬化し、現像処理及び熱処理する工程を含むことを特徴とする塗膜の製造法。
【請求項8】
塗膜がプリント配線板用ソルダーマスク、フレキシブルプリント配線板用ソルダーマスク、多層プリント配線板用層間絶縁膜または光導波路である請求項7記載の製造法。

【公開番号】特開2006−64890(P2006−64890A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246043(P2004−246043)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】