説明

感光性樹脂組成物及びその硬化物

【課題】光感度に優れ、得られた硬化物は、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性、HAST性、難燃性、柔軟性等に優れた感光性樹脂組成物及び当該硬化物を提供する。
【解決手段】式(1)
【化3】


(式中nは平均値で、1〜20の数を、R及びRは、同一又は異なってよく、水素原子、ハロゲン原子又はC〜Cの低級アルキル基を、R、R、R及びR10は、同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を、R、R、R及びRは、同一又は異なってもよく、水素原子又はメチル基をそれぞれ示す)で表される化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(b)と多塩基酸無水物(c)との反応生成物(A)、架橋剤(B)及び光重合開始剤(C)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物及びその硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板製造の際のソルダーマスクや無電解金メッキレジスト等に使用できる、有機溶剤又はアルカリ水溶液による現像が可能な感光性樹脂組成物及びその硬化物に関し、更に詳しくは、柔軟性に富むと共に密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性、HAST(Highly Accelerated Temperature and Humidity Stress Test)性、難燃性等に優れた感光性樹脂組成物の硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソルダーマスクは、プリント配線回路基板に部品をハンダ付けする時に目的の部位以外の所へのハンダの付着を避けること、及びプリント配線回路基板上の回路の保護を目的として使用され、電気絶縁性、耐熱性、密着性、耐化学薬品性等の諸特性が要求されるインキである。初期には、メラミン系の加熱硬化型ソルダーレジストインキが使用されていたが、その後、耐熱性、硬度、密着性、耐化学薬品性等に優れたエポキシ系の加熱硬化型ソルダーレジストインキが開発されるに至り、高信頼性を重要視するコンピュータ関係等の産業機器用プリント配線回路基板においては、その主流となっている。
【0003】
一方、民生用プリント配線回路基板に用いられるソルダーレジストインキは作業性と生産性が要求されるため、エポキシ樹脂をアクリレート化し、さらに酸変性させた、アルカリ水溶液による現像が可能な紫外線硬化型のソルダーレジストインキがエポキシ系の加熱硬化型のソルダーレジストインキに代わり、その主流となっている。最近のエレクトロニクス機器類の小型化、高機能化、省資源化、低コスト化等により、産業用プリント配線回路基板に於いても回路パターン密度の精度向上に対する要求が高くなり、写真現像型のソルダーマスクの開発が進められており、これらの例として、フェノールノボラック型エポキシアクリレート樹脂、若しくはクレゾール型エポキシアクリレート樹脂と多塩基酸無水物とを反応させて得られた樹脂を用いた組成物が主に工業的に使用されている。更には、耐熱性をより向上させるため、フェノール性水酸基を部分的にグリシジル(メタ)アクリレートと反応させ、多塩基酸無水物により変性した樹脂を用いた組成物の提案が特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に記載されている。これらの組成物は、プリント基板上に塗布され、加熱処理(ソフトベーク処理)が施された後にマスクパターンを密着させて紫外線露光され、その後、適切なアルカリ水溶液にて現像することにより、紫外線未照射部が除去されパターン化できるという方法に用いられている。
【0004】
又、可撓性を向上させるために、特許文献4には、ビフェニル骨格を有する不飽和基含有化合物と、前記骨格以外の(メタ)アクリレート化合物を併用して用いることが提案され、特許文献5には、有機溶媒又はアルカリ水溶液で現像可能で、耐メッキ性、耐熱性及び耐溶剤性を備えることを目的として、ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物に不飽和基含有モノカルボン酸化合物を反応させ、酸無水物を付加した樹脂組成物が提案されている。
【特許文献1】特開2002−308957号公報
【特許文献2】特開2002−138125号公報
【特許文献3】特開2002−128865号公報
【特許文献4】特開2003−82067号公報
【特許文献5】特開平11−140144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に記載の樹脂組成物に使用されているノボラック型エポキシ樹脂は、そのほとんどが柔軟性を持たず、昨今の携帯機器に使用されている薄膜タイプのプリント基板へ適用した場合、硬化物にクラックが生じる等の不具合があった。また、特許文献4に記載の樹脂組成物の硬化物は、ビフェニル骨格以外の(メタ)アクリレート化合物を併用しているが、現在必要とされるHAST等の信頼性、難燃性の要求に応えることができていない。さらに、特許文献5に記載の樹脂組成物に使用されているエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、その組成物の硬化性に問題があった。
【0006】
プリント配線板は携帯機器の小型軽量化や通信速度の向上をめざし、更なる高精度、高密度化が求められており、それに伴いソルダーマスクへの要求も益々高度となり、従来の要求よりも、より柔軟性に富むと共に密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性、HAST性、難燃性等に優れる性能を併せ持つことが要求されているが、現在市販されているソルダーマスクでは、上述の要求に充分に対応できていない。
【0007】
本発明の課題は、活性エネルギー線に対する感光性に優れており、かつアルカリ水溶液による現像により、今日のプリント配線板の高機能化に対応し得る微細な画像をパターン形成できると共に、得られる硬化膜がソルダーマスクに要求される諸特性を満足する感光性樹脂組成物及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前述の課題を解決するため、光感度に優れると共に、得られる硬化物が柔軟性、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性、HAST性、難燃性等に優れた感光性樹脂組成物及び当該硬化物を求めて鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
(1)下記式(1)
【0010】
【化1】

(式中nは平均値で、1〜20の数を、R及びRは、同一又は異なってよく、水素原子、ハロゲン原子又はC〜Cの低級アルキル基を、R、R、R及びR10は、同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を、R、R、R及びRは、同一又は異なってもよく、水素原子又はメチル基をそれぞれ示す)で表される化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(b)と多塩基酸無水物(c)との反応生成物であるカルボキシル基含有樹脂(A)、架橋剤(B)及び光重合開始剤(C)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物、
【0011】
(2)更に、式(1)で表される化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(b)との反応生成物(A’)を含有することを特徴とする(1)に記載の感光性樹脂組成物、
(3)式(1)の化合物(a)のRからR10の全てが水素原子である(1)または(2)に記載の感光性樹脂組成物、
(4)分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(b)が、グリシジル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル化物、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル化物、ペンタエリスリトールトリアクリレートのグリシジルエーテル化物、マレイミドカプロン酸のグリシジルエステル化物及び桂皮酸のグリシジルエステル化物からなる群から選ばれる1種又は2種以上である(1)乃至(3)の何れか1項に記載の感光性樹脂組成物、
(5)(1)乃至(4)の何れか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物、
(6)(5)に記載の硬化物の層を有する基材、
(7)(6)に記載の基材を有する物品、
を提供することにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物は、タック性、感光性に優れ、アルカリ水溶液による現像によりパターン形成ができると共に、その硬化物はより柔軟性に富みながら、密着性、ハンダ耐熱性、無電解金メッキ耐性等に優れる性能を併せ持つため、電子部品の層間の絶縁材、光部品間を接続する光導波路やプリント基板用のソルダーマスク、カバーレイ等のレジスト材料等に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物は、好ましくは、ビフェニル骨格を有するカルボキシル基含有アクリレート樹脂(A)、架橋剤(B)並びに光重合開始剤(C)を含有することを特徴とする。
【0014】
本発明で使用しうるビフェニル骨格を有するカルボキシル基含有アクリレート樹脂(A)は、前記式(1)で表される化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(b)と多塩基酸無水物(c)を反応させて得られる。
【0015】
前記式(1)において、R及びRは、同一又は異なってよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子又はC〜Cの低級アルキル基である。R、R、R及びR10は、同一又は異なってもよく、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子又はメチル基である。R、R、R及びRは、同一又は異なってもよく、水素原子又はメチル基である。nは平均値で1〜20の数である。
【0016】
前記式(1)において、C〜Cの低級アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等があげられ、ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等があげられる。また、前記式(1)で表される化合物(a)は、通常重合度が異なる化合物の混合物として使用され、nは平均値で1〜20、好ましく1.1〜10、より好ましくは1.2〜5の数である。なお、nは式(1)の化合物のエポキシ当量より計算できる。
【0017】
ビフェニル骨格を有するカルボキシル基含有アクリレート樹脂(A)に使用しうる前記式(1)で表される化合物(a)としては、4,4’−ジメチロールビフェニル誘導体化合物とフェノール誘導体化合物を、シュウ酸、硫酸、塩酸等の酸性触媒を用いて脱水縮合させて得られる化合物、又は4,4’−ジハロゲノメチルビフェニル誘導体化合物とフェノール誘導体化合物を加熱により脱ハロゲノ酸縮合させて得られる化合物等があげられる。
【0018】
4,4’−ジメチロールビフェニル誘導体化合物としては、例えば4,4’−ジメチロールビフェニル、4,4’−ジメチロール−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ジメチロール−3,3’,5,5’−テトラクロロビフェニル、4,4’−ジメチロール−3,3’,5,5’−テトラブロモビフェニル、4,4’−ジメチロール−2,2’−ジメチルビフェニル等が挙げられる。
【0019】
4,4’−ジハロゲノメチルビフェニル誘導体化合物としては、例えば4,4’−ジクロロメチルビフェニル、4,4’−ジクロロメチル−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ジブロモメチルビフェニル等が挙げられる。
【0020】
また、フェノール誘導体化合物としては、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2−エチルフェノール、2−プロピルフェノール、2−クロロフェノール、2−ブロモフェノール、2,4−ジクロロフェノール等が挙げられる。
【0021】
前記式(1)において、R〜R10の好ましい組み合わせとしては、例えばR〜R10のいずれもが水素原子の化合物があげられる。
前記式(1)で表される化合物(a)として、例えば市販品のMEH−7851SS(n=1.5)、MEH−7851M(n=2.1)、MEH−7851−3H(n=3.2)(何れも明和化成(株)製)があげられる。
【0022】
本発明のビフェニル骨格を有するカルボキシル基含有アクリレート樹脂(A)に使用しうる分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(b)としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル化物、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル化物、ペンタエリスリトールトリアクリレートのグリシジルエーテル化物、マレイミドカプロン酸のグリシジルエステル化物、桂皮酸のグリシジルエステル化物等が挙げられ、特に好ましくは、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル化物が挙げられ、市販品としては、グリシジルメタクリレート(和光純薬工業製)、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成(株)製)等が挙げられる。
【0023】
多塩基酸無水物(c)としては、分子中に酸無水物構造を有する化合物であれば全て用いることができるが、アルカリ水溶液現像性、耐熱性、加水分解耐性等に優れた無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、3−メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸又は無水マレイン酸等の2又は3塩基酸の無水物が好ましく、中でも、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸が特に好ましい。
【0024】
ビフェニル骨格を有するカルボキシル基含有アクリレート樹脂(A)は、式(1)の化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(b)と多塩基酸無水物(c)との反応で得ることができる。化合物(a)と化合物(b)との反応は、無溶剤又は有機溶媒中で、或いは後述する架橋剤(B)等の単独又は混合有機溶媒中で、化合物(a)の水酸基当量、1当量に対し、化合物(b)のエポキシ当量0.5〜1.0当量反応させることにより得ることができる。
【0025】
有機溶媒としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のエステル類;γ−ブチロラクトン等の環状エステル類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0026】
化合物(a)と化合物(b)との反応時には、熱重合反応を抑えるため熱重合禁止剤を加えることが好ましく、該熱重合禁止剤の使用量は、化合物(a)に対して好ましくは0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。使用しうる熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。
【0027】
また、化合物(a)と化合物(b)との反応時には、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は化合物(a)に対して好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜5重量%である。その際の反応温度は好ましくは60〜150℃で、より好ましくは80〜130℃あり、また反応時間は、好ましくは3〜60時間で、より好ましくは5〜40時間である。この反応で使用しうる触媒としては、例えば4−ジメチルアミノピリジン等のジメチルアミノピリジン類、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、2−エチルヘキサン酸クロム、オクタン酸クロム、2−エチルヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、オクタン酸ジルコニウム、ジメチルスルフィド、ジフェニルスルフィド等が挙げられる。
【0028】
多塩基酸無水物(c)を付加させる反応は、化合物(a)と化合物(b)との反応後、反応液に多塩基酸無水物(c)を加えることにより行うことができる。その際の反応温度としては、好ましくは60〜150℃であり、また反応時間は好ましくは2〜8時間である。多塩基酸無水物(c)の添加量は、現像性の観点から、最終的に得られるビフェニル骨格を有するカルボキシル基含有アクリレート樹脂(A)の固形分酸価が40〜160mg・KOH/gとなる計算値を仕込むことが好ましい。
【0029】
また、本発明の感光性樹脂組成物においては、更に、前記式(1)で表される化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(b)との反応生成物(A’)を含有してもよい。即ち、本発明にはカルボキシル基含有アクリレート樹脂(A)、反応生成物(A’)、架橋剤(B)並び光重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物も含まれる。化合物(a)と化合物(b)との反応生成物(A’)の製造方法は前記したとおりである。
【0030】
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられ、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、水酸基含有(メタ)アクリレートと多塩基酸化合物の酸無水物の反応物であるハーフエステル、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製のKAYARAD HX−220、HX−620等)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製のε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPCA−60)等)、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、モノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート等をあげることができる。架橋剤(B)は、単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0031】
架橋剤(B)としての水酸基含有(メタ)アクリレートと多塩基酸化合物の酸無水物の反応物であるハーフエステルにおける水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。多塩基酸化合物の酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0032】
架橋剤(B)としてのモノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートにおけるモノ又はポリグリシジル化合物としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、グリセリンポリエトキシグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリエトキシポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0033】
本発明の感光性樹脂組成物に使用しうる光重合開始剤(C)としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシンクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等が挙げられる。
【0034】
光重合開始剤(C)は、単独又は2種以上の混合物として使用でき、更にはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の第3級アミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等の安息香酸誘導体等の促進剤等と組み合わせて使用することもできる。
【0035】
本発明の感光性樹脂組成物には、耐熱性をさらにあげる目的等において、必要に応じて硬化成分を添加することができる。この硬化成分としては、例えば、エポキシ化合物、オキサジン化合物等が挙げられる。硬化成分は、光硬化後の樹脂塗膜に残存するカルボキシル基や水酸基と加熱により反応し、さらに強固な薬品耐性を有する硬化塗膜を得ようとする場合に特に好ましく用いられる。
【0036】
硬化成分としてのエポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−Aノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0037】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN−770(大日本インキ化学工業(株)製)、D.E.N438(ダウ・ケミカル社製)、エピコート154(ジャパンエポキシレジン(株)製)、RE−306(日本化薬(株)製)等が挙げられる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN−695(大日本インキ化学工業(株)製)、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S(何れも日本化薬(株)製)、UVR−6650(ユニオンカーバイド社製)、ESCN−195(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0038】
トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、例えばEPPN−503、EPPN−502H、EPPN−501H(何れも日本化薬(株)製)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル社製)、エピコートE1032H60(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンEXA−7200(大日本インキ化学工業(株)製)、TACTIX−556(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0039】
ビスフェノール−A型エポキシ樹脂としては、例えばエピコート828、エピコート1001(何れもジャパンエポキシレジン(株)製)、UVR−6410(ユニオンカーバイド社製)、D.E.R−331(ダウ・ケミカル社製)、YD−8125(東都化成(株)製)等が挙げられる。ビスフェノール−F型エポキシ樹脂としては、例えばUVR−6490(ユニオンカーバイド社製)、YDF−8170(東都化成(株)製)等が挙げられる。
【0040】
ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、NC−3000、NC−3000H(何れも日本化薬(株)製)等のビフェノール型エポキシ樹脂、YX−4000(ジャパンエポキシレジン(株)製)のビキシレノール型エポキシ樹脂、YL−6121(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN−880(大日本インキ化学工業(株)製)、エピコートE157S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
【0041】
ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂としては、例えばNC−7000、NC−7300(何れも日本化薬(株)製)、EXA−4750(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。脂環式エポキシ樹脂としては、例えばEHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。複素環式エポキシ樹脂としては、例えばTEPIC−L,TEPIC−H、TEPIC−S(何れも日産化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0042】
硬化成分としてのオキサジン化合物としては例えば、B−m型ベンゾオキサジン、P−a型ベンゾオキサジン、B−a型ベンゾオキサジン(何れも四国化成工業(株)製)が挙げられる。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物は、好ましくはビフェニル骨格を有するカルボキシル基含有アクリレート樹脂(A)、架橋剤(B)、光重合開始剤(C)並びに任意成分の硬化成分を混合することにより得ることが出来る。本発明の感光性樹脂組成物に含まれる(A)、(B)、並びに(C)成分の量は、本発明の感光性樹脂組成物の不揮発分を100重量%とした場合、(A)成分は10〜80重量%、(B)成分は3〜60重量%、(C)成分は0.5〜30重量%であるのが好ましく、(A)成分は20〜70重量%、(B)成分は5〜30重量%、(C)成分は2〜20重量%であるのがより好ましく、任意成分の硬化成分は0〜50重量%が好ましい。また、樹脂組成物が更に(A’)を含む場合は、(A)+(A’)のトータルを10〜80重量%とするのが好ましい。
【0044】
さらに必要に応じて各種の添加剤、例えばメラミン等の熱硬化触媒、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ、クレー等の充填剤、アエロジル等のチキソトロピー付与剤、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、緑色顔料等の着色剤、シリコーン、フッ素系のレベリング剤や消泡剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤等を感光性樹脂組成物の諸性能を高める目的で添加することが出来る。
【0045】
なお、前述の硬化成分を添加する場合は、予め前記感光性樹脂組成物に混合してもよいが、プリント配線板等の基材への塗布前に混合して用いることもできる。すなわち、前記(A)成分を主体とし、これにエポキシ硬化促進剤等を配合した主剤溶液と、硬化成分を主体とした硬化成分溶液の二液型に配合し、使用に際してこれらを混合して用いる方法である。
【0046】
また、前記感光性樹脂組成物は、混練、場合によっては加熱することにより溶解させることができるが、好ましくは三本ロールミルにより混練すると分散性が向上し、解像度、耐熱性等諸特性が向上する。特に、前記各種添加剤を用いる時は三本ロールミルを用いる混練方法がより好ましい。また、前記の主剤溶液、及び硬化成分溶液の二液型にする場合も同様である。
【0047】
本発明の感光性樹脂組成物は、樹脂組成物が支持フィルムと保護フィルムでサンドイッチされた構造からなるドライフィルム型のソルダーマスクとしても用いることもできる。
【0048】
本発明の感光性樹脂組成物(液状又はフィルム状)は、電子部品の層間の絶縁材、光部品間を接続する光導波路やプリント基板用のソルダーマスク、カバーレイ等のレジスト材料として有用であり、又、カラーフィルター、印刷インキ、封止剤、塗料、コーティング剤、接着剤等としても使用できる。
【0049】
本発明の感光性樹脂組成物の硬化物とは、紫外線等のエネルギー線照射により本発明の感光性樹脂組成物を硬化させたものであり、硬化は紫外線等のエネルギー線照射による常法によって行うことができる。例えば紫外線を照射する場合、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、紫外線発光レーザー(エキシマーレーザー等)等の紫外線発生装置を用いればよい。
【0050】
本発明の硬化物の層を有する基材とは、本発明の感光性樹脂組成物を紫外線等のエネルギー線照射により硬化させた層状の硬化物を有する基材であり、例えばレジスト膜、ビルドアップ工法用の層間絶縁材や光導波路としてプリント基板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光部品が挙げられる。これらの基材を有する物品としては、例えば、自動車、航空機、コンピュータ、家電製品、携帯機器等が挙げられる。この硬化物層の膜厚は好ましくは0.5〜160μm程度で、1〜100μm程度がより好ましい。
【0051】
本発明の硬化物の層を有する基材は、プリント配線板を例にとると、例えば次のようにして得ることができる。即ち、液状の樹脂組成物を使用する場合、プリント配線用基板に、バーコート法、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法、カーテンコート法等の方法により5〜160μmの膜厚で本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、塗膜を通常50〜110℃、好ましくは60〜100℃の温度で、通常10〜90分、好ましくは30〜60分乾燥させることにより、塗膜が形成できる。その後、ネガフィルム等の露光パターンを形成したフォトマスクを通して塗膜に直接又は間接に紫外線等の高エネルギー線を通常10〜2000mJ/cm、好ましくは300〜1000mJ/cm程度の強さで照射し、未露光部分を後述する現像液を用いて、例えばスプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等により現像する。その後、必要に応じて更に紫外線を照射し、次いで通常100〜200℃、好ましくは140〜180℃の温度で、通常0.5〜5時間、好ましくは0.8〜3時間加熱処理をすることにより、金メッキ性に優れ、耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、密着性等の諸特性を満足する永久保護膜を有するプリント配線板が得られる。
【0052】
前記、現像に使用しうる現像液としては、有機溶剤又はアルカリ水溶液を用いることができる。使用しうる有機溶剤としては例えば、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のエステル類;γ−ブチロラクトン等の環状エステル類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0053】
使用しうるアルカリ水溶液としては例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の無機アルカリ水溶液や、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリ水溶液が挙げられる。アルカリ水溶液を使用する場合の濃度としては、通常0.1〜5重量%、好ましくは、0.5〜3重量%である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものでない。
【0055】
合成例1
攪拌装置、還流管をつけた1Lフラスコ中に、反応溶媒としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを150g、化合物(a)としてMEH−7851SS(商品名:明和化成(株)製、式(1)において、R〜R10=水素原子、n=1.5、水酸基当量:200g/当量)を200g(1当量)、化合物(b)として4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成(株)製、エポキシ当量:200g/当量)を150g(0.75当量)、反応触媒として4−ジメチルアミノピリジンを1g、及び熱重合禁止剤として2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾールを1g仕込み、120℃の温度で反応液のエポキシ基が消失するまで24時間反応させ、ビフェニル骨格を有するアクリレート樹脂を70重量%含む樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を(A’−1)とした。この樹脂溶液(A’−1)の酸価は、0.2mg・KOH/g(固形分換算値:0.3mg・KOH/g)であった。
【0056】
合成例2
攪拌装置、還流管をつけた1Lフラスコ中に、反応溶媒としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを150g、化合物(a)としてMEH−7851−3H(商品名:明和化成(株)製、式(1)において、R〜R10=水素原子、n=3.2、水酸基当量:200g/当量)を200g(1当量)、化合物(b)として4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成(株)製、エポキシ当量:200g/当量)を150g(0.75当量)、反応触媒として4−ジメチルアミノピリジンを1g、及び熱重合禁止剤として2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾールを1g仕込み、120℃の温度で反応液のエポキシ基が消失するまで24時間反応させ、ビフェニル骨格を有するアクリレート樹脂を70重量%含む樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を(A’−2)とした。この樹脂溶液(A’−2)の酸価は、0.8mg・KOH/g(固形分換算値:1.1mg・KOH/g)であった。
【0057】
合成例3
合成例2で得られた樹脂溶液(A’−2)に、多塩基酸無水物(c)としてテトラヒドロ無水フタル酸を114g(0.75当量)、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを49g仕込み、100℃の温度で6時間反応させ、ビフェニル骨格を有するカルボキシル基含有アクリレート樹脂(A)を70重量%含む樹脂溶液(A−3)を得た。この樹脂溶液(A−3)の酸価は、63.4mg・KOH/g(固形分換算値:90.6mg・KOH/g)であった。
【0058】
合成例4
合成例2で得られた樹脂溶液(A’−2)に、多塩基酸無水物(c)として無水コハク酸を75g(0.75当量)、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを32g仕込み、100℃の温度で6時間反応させ、ビフェニル骨格を有するカルボキシル基含有アクリレート樹脂(A)を70重量%含む樹脂溶液(A−4)を得た。この樹脂溶液(A−4)の酸価は、69.3mg・KOH/g(固形分換算値:99mg・KOH/g)であった。
【0059】
実施例1〜3
前記合成例1、合成例3、及び合成例4で得られた樹脂溶液(A’−1)、(A−3)、及び(A−4)、並びにその他の各種成分を表1に示す配合割合で混合、必要に応じて3本ロールミルで混練し、本発明の感光性樹脂組成物を得た。これをバーコート法により、15〜25μmの厚さになるように銅回路プリント基板に塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥器で60分乾燥させた。得られた塗膜について、後述のとおり、タック性を確認した。次いで、パターンの描画されたマスクフィルムを密着させ、紫外線露光装置(USHIO製:500Wマルチライト)を用いて、紫外線を照射した。次に、アルカリ現像液である、2重量%炭酸ナトリウム水溶液(温度30℃)を用いて120秒間スプレー(スプレー圧:0.2MPa)現像を行った。リンス後、150℃の熱風乾燥器で60分間熱処理を行い本発明の硬化物を得た。得られた硬化物について、光感度、表面光沢、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性、HAST性、柔軟性の試験を行なった。それらの結果を表2に示す。なお、各試験方法及び評価方法は次のとおりである。
【0060】
(タック性)プリント基板に塗布し、乾燥後室温に冷却した塗膜に脱脂綿をこすりつけ、塗膜のタック性を評価した。
○・・・・脱脂綿は張り付かない。
×・・・・脱脂綿の糸くずが、膜に張り付く。
【0061】
(光感度)乾燥後の塗膜に紫外線を照射した後、現像し、硬化物が得られるかどうか確認した。下記の基準を使用した。
○・・・・照射量150mJ/cm以下でも硬化した場合
△・・・・照射量150〜500mJ/cmで硬化した場合
×・・・・照射量500mJ/cm以上でないと硬化しない場合
【0062】
(表面光沢)乾燥後の塗膜に、500mJ/cmの紫外線を照射した後、上述の方法で硬化膜を得た。得られた硬化膜をエタノールに60秒間浸漬させ、乾燥後の硬化膜を観察した。下記の基準を使用した。
○・・・・曇りが全く見られない
△・・・・若干の曇りが見られる
×・・・・曇りが見られ、光沢無し
【0063】
(密着性)乾燥後の塗膜に、500mJ/cmの紫外線を照射した後、上述の方法で硬化膜を得た。得られた硬化膜をJIS K5400に準じて、試験片に1mmのごばん目を100個作りセロテープ(登録商標)によりピーリング試験を行った。ごばん目の剥離状態を観察し、次の基準で評価した。
○・・・・剥れのないもの
×・・・・剥離するもの
【0064】
(鉛筆硬度)乾燥後の塗膜に、500mJ/cmの紫外線を照射した後、上述の方法で硬化膜を得た。得られた硬化膜をJIS K5400に準じて評価を行った。
【0065】
(耐溶剤性)乾燥後の塗膜に、500mJ/cmの紫外線を照射した後、上述の方法で硬化膜を得た。得られた硬化膜をイソプロピルアルコールに室温で30分間浸漬した後、外観に異常がないかどうか確認した。
○・・・・曇りが全く見られない
×・・・・若干の曇りが見られる
【0066】
(耐酸性)乾燥後の塗膜に、500mJ/cmの紫外線を照射した後、上述の方法で硬化膜を得た。得られた硬化膜を10重量%塩酸水溶液に室温で30分浸漬した。外観に異常がないか確認した後、セロテープ(登録商標)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○・・・・膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの
×・・・・膜にフクレや剥離があるもの
【0067】
(耐熱性)乾燥後の塗膜に、500mJ/cmの紫外線を照射した後、上述の方法で硬化膜を得た。得られた硬化膜にロジン系プラックスを塗布し、260℃の半田槽に5秒間浸漬した。これを1サイクルとし、3サイクル繰り返した。室温まで放冷した後、セロテープ(登録商標)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○・・・・膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの
×・・・・膜にフクレや剥離のあるもの
【0068】
(耐金メッキ性)乾燥後の塗膜に、500mJ/cmの紫外線を照射した後、上述の方法で硬化膜を得た。得られた硬化膜を、30℃の酸性脱脂液(日本マクダーミット製、Metex L−5Bの20容量%水溶液)に3分間浸漬した後、水洗し、次いで、14.4重量%過硫酸アンモン水溶液に室温で3分間浸漬した。その後、水洗し、更に10容量%硫酸水溶液に室温で試験基板を1分間浸漬した後水洗した。次に、この基板を30℃の触媒液(メルテックス製、メタルプレートアクチベーター350の10容量%水溶液)に7分間浸漬し、水洗し、85℃のニッケルメッキ液(メルテックス製、メルプレートNi−865Mの20容量%水溶液、pH4.6)に20分間浸漬し、ニッケルメッキを行った後、10容量%硫酸水溶液に室温で1分間浸漬し、水洗した。次いで、試験基板を95℃の金メッキ液(メルテックス製、オウロレクトロレスUP15容量%とシアン化金カリウム3容量%の水溶液、pH6)に10分間浸漬し、無電解金メッキを行った後、水洗し、更に60℃の温水で3分間浸漬し、水洗し、乾燥した。得られた無電解金メッキ評価基板にセロハン粘着テープを付着せしめ、剥離したときの状態を観察した。
○:全く異常が無いもの。
×:若干剥がれが観られたもの。
【0069】
(HAST性)乾燥後の塗膜に、500mJ/cmの紫外線を照射した後、上述の方法で硬化膜を得た。得られた硬化膜を、温度121℃、湿度85%の加圧蒸気下に200時間放置した。得られた評価基板にセロハン粘着テープを付着せしめ、剥離したときの状態を観察した。
○:全く異常が無いもの。
×:若干剥がれが観られたもの。
【0070】
(柔軟性)乾燥後の塗膜に、500mJ/cmの紫外線を照射した後、上述の方法で硬化膜を得た。得られた硬化膜を、180度に完全に折り曲げ、折り曲げ部の状態を観察した。
○:全く異常がないもの
×:細かいクラックが入っているもの
【0071】
【表1】


*1 ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製)
*2 2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ製)
*3 2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬(株)製)
*4 ビスフェノール−A型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製)
*5 ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製)
*6 硫酸バリウム(堺化学製)
*7 レベリング剤(ビックケミー製)
*8 消泡剤(信越化学製)
*9 ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
*10 ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
*11 プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0072】
【表2】

【0073】
実施例4
実施例1で用いた本発明の感光性樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布(乾燥膜厚50μm)し、80℃の乾燥機で30分乾燥させた。この膜に500mJ/cmの紫外線を照射し、得られた硬化膜をフィルム基板より剥離した。得られた硬化膜を150℃の温度で60分間加熱硬化処理を行い、カッターにて幅5mmに切断した。短冊状の硬化膜に火をつけ、燃えやすさを観察したところ、直ちに炎が消え難燃性を示すことが観察された。
【0074】
実施例から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物は高感度であり、その硬化膜も柔軟性に富むと共に密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性、HAST性、難燃性等に優れているので、特にフレキシブルプリント基板用感光性樹脂組成物として適している。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の感光性樹脂組成物は、紫外線により露光硬化することによる塗膜の形成において、光感度に優れ、得られた硬化物は、柔軟性に富むと共に密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性、HAST性、難燃性等も十分に満足するものであり、光硬化型塗料、光硬化型接着剤等に好適に使用でき、特にプリント基板用感光性樹脂組成物として適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化2】

(式中nは平均値で、1〜20の数を、R及びRは、同一又は異なってよく、水素原子、ハロゲン原子又はC〜Cの低級アルキル基を、R、R、R及びR10は、同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を、R、R、R及びRは、同一又は異なってもよく、水素原子又はメチル基をそれぞれ示す)で表される化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(b)と多塩基酸無水物(c)との反応生成物であるカルボキシル基含有樹脂(A)、架橋剤(B)及び光重合開始剤(C)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
更に、式(1)で表される化合物(a)と分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(b)との反応生成物(A’)を含有することを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
式(1)の化合物(a)のRからR10の全てが水素原子である請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
分子中にエチレン性不飽和基とグリシジル基を有する化合物(b)が、グリシジル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル化物、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル化物、ペンタエリスリトールトリアクリレートのグリシジルエーテル化物、マレイミドカプロン酸のグリシジルエステル化物及び桂皮酸のグリシジルエステル化物からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物の層を有する基材。
【請求項7】
請求項6に記載の基材を有する物品。

【国際公開番号】WO2005/071489
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【発行日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517277(P2005−517277)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000761
【国際出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】