説明

感光性樹脂組成物及びその硬化皮膜を有するフィルム

【課題】放射線によって硬化し、耐擦傷性、耐摩耗性に優れ、低屈折率で反射防止フィルムに使用した場合、反射率の低い感光性樹脂組成物、更にはその硬化皮膜を有するフィルムを提供する。
【解決手段】下記一般式(1)
fSi(OR13・・・(1)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物同士か、又は前記一般式(1)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物と下記一般式(2)ReSi(OR23・・・(2)で表されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物とを、塩基性触媒の存在下に、縮合させて得られるフッ素原子含有ケイ素化合物(A)、光カチオン重合開始剤(B)、幹部分がフッ素系ポリマーで、枝部分がシリコーンで構成された櫛型ポリマー(C)及びフッ素原子を有する高分子化合物(D)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素原子含有ケイ素化合物を含有する感光性樹脂組成物及びその硬化皮膜を有するフィルムに関する。更に詳しくは、耐擦傷性、耐摩耗性、耐汚染性に優れ、低屈折率で反射防止フィルムに使用した場合、反射率が低い感光性樹脂組成物及びその硬化皮膜を有するフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチックは自動車業界、家電業界、電気電子業界を初めとして種々の産業界で大量に使われている。このようにプラスチックが大量に使われている理由は、その加工性、透明性に加えて軽量、安価、光学特性が優れているなどの理由による。しかしながら、ガラスなどに比べて柔らかく、表面に傷が付きやすいなどの欠点を有している。これらの欠点を改良するために、表面にハードコート剤をコーティングする事が一般的な手段として行われている。このハードコート剤には、シリコーン系塗料、アクリル系塗料、メラミン系塗料などの熱硬化型のハードコート剤が用いられている。この中でも特に、シリコン系ハードコート剤は、ハードネスが高く、品質が優れているため多く用いられている。しかしながら、硬化時間が長く、高価であり、連続的に加工するフィルムに設けられるハードコート層には適しているとは言えない。
【0003】
近年、感光性のアクリル系ハードコート剤が開発され、利用されるようになった(特許文献1参照。)。感光性ハードコート剤は、紫外線などの放射線を照射することにより、直ちに硬化して硬い皮膜を形成するため、加工処理スピードが速く、またハードネス、耐擦傷性などに優れた性能を持ち、トータルコスト的に安価になるため、今やハードコート分野の主流になっている。特に、ポリエステルなどのフィルムの連続加工には適している。プラスチックのフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリアクリレートフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、塩化ビニルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエーテルスルホンフィルムなどがあるが、ポリエステルフィルムが種々の優れた特性から最も広く使用されている。このポリエステルフィルムは、ガラスの飛散防止フィルム、あるいは、自動車の遮光フィルム、ホワイトボード用表面フィルム、システムキッチン表面防汚フィルム、電子材料的には、タッチパネル、液晶ディスプレイ、CRTフラットテレビなどの機能性フィルムとして広く用いられている。これらはいずれもその表面に傷が付かないようにするためにハードコートを塗工している。
【0004】
更に近年におけるハードコート剤をコーティングしたフィルムを設けたCRT、LCDなどの表示体では、反射により表示体画面が見難くなり、目が疲れやすいと言う問題が生ずるため、用途によっては、表面反射防止能のあるハードコート処理が必要となっている。表面反射防止の方法としては、感光性樹脂中に無機フィラーや有機フィラーを分散させたものをフィルム上にコーティングし、表面に凹凸をつけて反射防止する方法(AG処理)、フィルム上に高屈折率層、低屈折率層の順に多層構造を設け、屈折率の差による光の干渉を利用し映り込み、反射を防止する方法(AR処理)、または上記2つの方法を合わせたAG/AR処理の方法などがある。(特許文献2参照。)
【0005】
しかしながら、AR処理に用いられる低屈折率層にはゾル−ゲル法によるシラン化合物を縮合させるような熱硬化タイプ(特許文献3参照。)が用いられているが、硬化に時間が掛かり生産性が悪いことや、ハードコート層が加熱により収縮しクラックが入るといった問題がある。一方、フッ素原子を有する(メタ)アクリレートを用いた放射線硬化型樹脂も開発されている(特許文献4参照。)が、耐擦傷性が十分ではなかったり、(メタ)アクリレートを十分硬化させるために真空中または窒素雰囲気下で硬化させる必要があり設備も高価になるという問題がある。
【0006】
生産性や加熱によるクラックの発生等の問題から放射線硬化タイプの低屈折率ハードコートが求められている。また、放射線硬化型樹脂は、耐擦傷性が十分ではなかったり、窒素置換など現状ラインに新たに設備を入れないと行けないというのが実状である。
【0007】
【特許文献1】特開平9−48934号公報
【特許文献2】特開平9−145903号公報
【特許文献3】特開平10−000726号公報
【特許文献4】特開平10−182745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、窒素置換等をしなくても放射線により容易に硬化し、耐擦傷性、耐摩耗性、耐汚染性に優れ、反射防止フィルムに使用した場合、反射率が低い感光性樹脂組成物及びその硬化皮膜を有するフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決するため、鋭意検討を行った結果、特定の化合物及び組成を有する感光性樹脂組成物が前記課題を解決することを見いだし、本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明は、
(1)下記一般式(1)
fSi(OR13 (1)
(式中Rfは、フッ素原子を1〜20個有する置換基を示す。R1はC1〜C4のアルキル基を示す。)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物同士か、又は前記一般式(1)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物と下記一般式(2)
eSi(OR23 (2)
(式中Reは、エポキシ基を有する置換基を示す。R2はC1〜C4のアルキル基を示す。)で表されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物とを、塩基性触媒の存在下に、縮合させて得られるフッ素原子含有ケイ素化合物(A)、光カチオン重合開始剤(B)、幹部分がフッ素系ポリマーで、枝部分がシリコーンで構成された櫛型ポリマー(C)及びフッ素原子を有する高分子化合物(D)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物、
(2)一般式(2)の化合物において、ReがグリシドキシC1〜C4アルキル基又はオキシラン基を有するC5〜C8のシクロアルキル基で置換されたC1〜C3アルキル基である前項(1)記載の感光性樹脂組成物、
(3)フッ素原子含有ケイ素化合物(A)が、前記式(1)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物と前記式(2)で表されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物を縮合させて得られるフッ素原子含有ケイ素化合物である前項(1)又は(2)に記載の感光性樹脂組成物、
(4)一次粒径が1〜200ナノメートルのコロイダルシリカ(E)を含有することを特徴とする前項(1)ないし(3)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、
(5)フッ素原子を有するモノマー(F)を含有することを特徴とする前項(1)ないし(4)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、
(6)フッ素原子を有するモノマー(F)の末端がエポキシ基または(メタ)アクリレート基を有することを特徴とする前項(5)に記載の感光性樹脂組成物、
(7)フッ素原子を有するモノマー(F)の一分子中のフッ素の数が3〜20である前項(5)又は(6)に記載の感光性樹脂組成物、
(8)光ラジカル重合開始剤(G)を含有することを特徴とする前項(1)ないし(7)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、
(9)希釈剤(H)を含有することを特徴とする前項(1)ないし(8)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、
(10)基材フィルム上にハードコート剤及び屈折率が1.55以上の高屈折率ハードコート剤をこの順に塗工し、硬化させたハードコート層の上に、前項(1)ないし(9)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を塗工し、硬化させた反射防止ハードコートフィルム、
(11)高屈折率ハードコート剤が、多官能(メタ)アクリレート(I)、1次粒径1〜200ナノメートルの金属酸化物(J)及び光ラジカル重合開始剤(G)を含有する感光性樹脂組成物であることを特徴とする前項(10)に記載の反射防止ハードコートフィルム、
(12)1次粒径1〜200ナノメートルの金属酸化物(J)が、導電性金属酸化物(K)である前項(11)に記載の反射防止ハードコートフィルム、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により窒素置換等をしなくても放射線により容易に硬化し、耐擦傷性、耐摩耗性、耐汚染性に優れ、反射防止フィルムに使用した場合、反射率が低い感光性樹脂組成物及びその硬化皮膜を有するフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物は、下記一般式(1)
fSi(OR13 (1)
(式中Rfは、フッ素原子を1〜20個有する置換基を示す。R1はC1〜C4のアルキル基を示す。)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物同士か、又は前記一般式(1)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物と下記一般式(2)
eSi(OR23 (2)
(式中Reは、エポキシ基を有する置換基を示す。R2はC1〜C4のアルキル基を示す。)で表されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物とを、塩基性触媒の存在下に、縮合させて得られるフッ素原子含有ケイ素化合物(A)を用いる。
【0014】
本発明で使用する前記一般式(1)で示されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物としては、置換基Rfが、フッ素原子を1〜20個有する置換基であれば良い。具体例としては、例えばトリエトキシフルオロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルトリメトキシシラン、(トリデカフルオロー1,1,2,2、−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロー1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、ノナフルオロへキシルトリメトキシシラン、ノナフルオロへキシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルペンタデカフルオロオクテート、3−トリエトキシシリルプロピルペンタデカフルオロオクテート、3−トリメトキシシリルプロピルペンタデカフルオロオクチルアミド、3−トリエトキシシリルプロピルペンタデカフルオロオクチルアミド、2−トリメトキシシリルエチルペンタデカフルオロプロピルスルフィド、2−トリエトキシシリルエチルペンタデカフルオロデカニルスルフィド等が挙げられ、容易に入手でき、またエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物との相溶性からトリフルオロプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは単独でも2種以上使用してもよい。
【0015】
前記一般式(1)において、R1はC1〜C4のアルキル基を示し、例えばメチル、エチル、プロピル等が挙げられる。本発明では、反応条件の点で、R1として好ましいものは、メチル、エチルである。
【0016】
前記一般式(1)で表される化合物は、市場から入手することができる。市販品としては、たとえば、KBM−7103、KBM−7803(信越化学工業(株)製)、T1770(東京化成工業(株)製)、TSL8257、TSL8233(GE東芝シリコーン(株)製)が挙げられる。
【0017】
また、本発明で使用する前記一般式(2)で示されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物中のReとしては、エポキシ基を有する置換基であれば特に制限はないが、例えばβ−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−グリシドキシブチル基等のグリシドキシC1〜C4、好ましくはグリシドキシC1〜C3アルキル基、グリシジル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘプチル)エチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ペンチル基等のオキシラン基を持ったC5〜C8のシクロアルキル基で置換されたC1〜C3アルキル基が挙げられる。
【0018】
これらの中でβ−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基が好ましい。これらの置換基Reを有する一般式(1)の化合物として用いる事のできる化合物の好ましい具体例としては、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上使用してもよい。
【0019】
前記一般式(2)において、R2はC1〜C4のアルキル基を示し、例えばメチル、エチル、プロピル等が挙げられる。本発明では、反応条件の点で、R2として好ましいものは、メチル、エチルである。
【0020】
本発明で使用するフッ素原子含有ケイ素化合物(A)は、例えば、特開平10−324749、特開平6−32903、特開平6−298940号公報に記載の方法で製造する事が出来るが、本発明においては塩基性触媒存在下に、一般式(1)のフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物同士か、又は一般式(1)のフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物と一般式(2)のエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物とを(共)縮合させることにより得る事が出来る点が特徴である。一般式(1)の化合物と一般式(2)の化合物の(共)縮合比率は、硬化性や屈折率の観点から、一般式(1)の化合物1モルに対して一般式(2)の化合物が0.5〜2モルが好ましい。また、(共)縮合を促進するため、必要に応じ水を添加することができる。水の添加量は、反応混合物全体のアルコキシ基1モルに対し通常0.05〜1.5モル、好ましくは0.07〜1.2モルである。
【0021】
上記縮合反応に使用する触媒は塩基性であれば特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの無機塩基、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチレントリアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機塩基を使用することが出来る。これらの中でも、特に生成物からの触媒除去が容易である点で無機塩基又はアンモニアが好ましい。触媒の添加量としては、フッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物(一般式(1))とエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物(一般式(2))の合計量に対し、通常5×10-4〜7.5重量%、好ましくは1×10-3〜5重量%である。
【0022】
上記縮合反応は、無溶剤または溶剤中で行うことができる。溶剤を用いる場合の溶剤としては、エポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物及びフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物を溶解する溶剤であれば特に制限はない。このような溶剤としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられ、好ましくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンである。
【0023】
本発明の樹脂組成物において、上記(A)成分の使用量は、本発明の樹脂組成物の固形分に対し、0.1〜50重量%が好ましい。
【0024】
本発明の感光性樹脂組成物では、光カチオン重合開始剤(B)を使用する。光カチオン重合開始剤(B)は、光照射下にカチオン重合反応を促進する触媒であり、紫外線等を照射することでルイス酸などのカチオン重合触媒を生成するものを用いることができる。例えば、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。具体的には、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロボレート、4,4'−ビス[ビス(2−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホニオ]フェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられ、好ましくは、ヨードニウム塩類である。これらは、単独又は2種以上を混合して使用しても良い。
【0025】
これらの光カチオン重合開始剤(B)は市場から容易に入手が可能である。
光カチオン重合開始剤(B)の市販品としては例えば、UVI−6990、UVI−6992(商品名:いずれもダウ・ケミカル社製)、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−170(商品名:いずれも旭電化社製)、CIT−1370、CIT−1682、CIP−1866S、CIP−2048S、CIP−2064S(商品名:いずれも日本曹達社製)、IBPF、IBCF、TS−01、TS−02(商品名:いずれも三和ケミカル社製)、DPI−101、DPI−102、DPI−103、DPI−105、MPI−103、MPI−105、BBI−101、BBI−102、BBI−103、BBI−105、TPS−101、TPS−102、TPS−103、TPS−105、MDS−103、MDS−105、DTS−102、DTS−103(商品名:いずれも、みどり化学社製)等が挙げられる。
【0026】
本発明の樹脂組成物において、上記(B)成分の使用量は、本発明の樹脂組成物の固形分に対し、0.1〜20重量%が好ましい。
【0027】
本発明の感光性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、増感剤を併用することができる。使用しうる増感剤は、光カチオン重合を促進するものが用いられる。具体的には、アントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジ(メトキシエトキシ)アントラセン、フルオレン、ピレン、スチルベン、4'−ニトロベンジル−9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、4'−ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート、4'−ニトロベンジル−9,10−ジプロポキシアントラセン−2−スルホネート等が挙げられるが、溶解性及び感光性樹脂組成物への相溶性の点で特に2−エチル−9,10−ジ(メトキシエトキシ)アントラセンが好ましい。これら増感剤を用いる場合の使用量は、光カチオン重合開始剤(B)100重量部に対して1〜200重量部、好ましくは5〜150重量部である。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物では、幹部分がフッ素系ポリマーで、枝部分がシリコーンで構成された櫛型ポリマー(C)を使用する。
【0029】
この化合物(C)は炭化水素系モノマー、フルオロエチレン、メタクリレート変性シリコーン等を重合することにより得ることができる。ポリマーにシリコーンをグラフトさせることにより、塗膜表面からのシリコーンのブリードアウトを抑制し、主鎖のフッ素樹脂により撥水發油性、防汚性を付与することができる。また、炭化水素系ポリマーにより、一般的な溶剤にも可溶である。具体的には、関東電化工業(株)製超防汚性含シリコーンフッ素樹脂エフクリアKD270が挙げられる。
【0030】
本発明の樹脂組成物において、上記(C)成分の使用量は、本発明の樹脂組成物の固形分に対し、0.1〜30重量%が好ましい。
【0031】
本発明の感光樹脂組成物には、フッ素原子を有する高分子化合物(D)を使用する。フッ素原子を有する高分子化合物(D)としては、種々のフッ素原子を有する高分子化合物を使用することができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンや、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4,−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1H,1H,2H,3H,3H−ノナフルオロへプチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1H,1H,2H,3H,3H−トリデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル−1H,1H,2H,3H,3H−オクタフルオロへプチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−8−トリフルオロメチル−1H,1H,2H,3H,3H−ドデカフルオロノニル(メタ)アクリレートなどのフッ素原子とエチレン性不飽和基を有する化合物を単独または2種以上、あるいはフッ素原子とエチレン性不飽和基を有する化合物とフッ素原子を含まないエチレン性不飽和基を有する化合物を重合したポリマーなどが挙げられる。
【0032】
本発明の樹脂組成物において、上記(D)成分の使用量は、本発明の樹脂組成物の固形分に対し、0.1〜30重量%が好ましい。
【0033】
本発明の感光樹脂組成物では、一次粒径が1〜200ナノメートルのコロイダルシリカ(E)を使用する事が出来る。使用しうるコロイダルシリカ(E)としては、例えば、溶媒にコロイダルシリカを分散させたコロイド溶液、又は分散溶媒を含有しない微粉末のコロイダルシリカがある。
【0034】
溶媒にコロイダルシリカを分散させたコロイド溶液の分散溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの多価アルコール類及びその誘導体、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミドなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの非極性溶媒、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類及びその他一般有機溶剤類が使用できる。分散溶媒の量は、通常コロイダルシリカ100重量部に対し100〜900重量部である。
【0035】
これらのコロイダルシリカは、周知の方法で製造され市販されているものを使用できる。粒径は、一次粒径が1〜200ナノメートルのものを使用することが必要であり、好ましくは、一次粒径が5〜100ナノメートル、更に好ましくは一次粒径が10〜80ナノメートルである。また、コロイダルシリカは、本発明においてはpH=2〜6のものを使用することが好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物において、上記(E)成分の使用量は、本発明の樹脂組成物の固形分に対し、0〜30重量%が好ましい。
【0037】
また、コロイダルシリカの表面をシランカップリング剤等で表面処理しても良い。
【0038】
また、コロイダルシリカの表面を、前記式(1)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物又は前記式(2)で表されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物で表面処理することができる。
【0039】
処理方法は、公知の方法で処理することができる。具体的には、乾式法と湿式法があり、乾式法はシリカ粉末に処理する方法で、撹拌機によって高速撹拌しているシリカ粉末にアルコキシケイ素化合物の原液または溶液を均一に分散させて処理する方法である。また、湿式法は溶剤などにシリカを分散させスラリー化したものにアルコキシケイ素化合物を添加・撹拌することで処理する方法である。本発明では、どちらの方法を用いても良い。処理量は、処理量(g)=シリカ重量(g)×シリカの比表面積(m2/g)/アルコキシケイ素化合物の最小被覆面積(m2/g)から求められる量以下であれば良い。
【0040】
本発明の感光性樹脂組成物では、フッ素原子を有するモノマー(F)を使用することが出来る。フッ素原子を有するモノマー(F)としては、例えば、トリフルオロエチルアクリレート(屈折率1.348)、トリフルオロエチルメタアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート(屈折率1.363)、オクタフルオロペンチルアクリレート(屈折率1.347)、オクタフルオロペンチルメタアクリレート等の(メタ)アクリレート化合物、パーフルオロブチルプロピレンオキシド、パーフルオロヘキシルプロピレンオキシド、パーフルオロオクチルプロピレンオキシド等のパーフルオロアルキレンオキシドが挙げられる。
【0041】
これらフッ素原子を有するモノマー(F)は、屈折率が1.38以下が好ましく、末端は光重合可能な(メタ)アクリレート基および/またはエポキシ基を有することが好ましい。また、フッ素原子を有するモノマー(F)の一分子中のフッ素の数が3〜20であることが好ましい。これらは、単独または2種以上を混合して使用しても良い。
【0042】
本発明の樹脂組成物において、上記(F)成分の使用量は、本発明の樹脂組成物の固形分に対し、0〜60重量%が好ましい。
【0043】
本発明の樹脂組成物において、フッ素原子を有するモノマー(F)に(メタ)アクリレート基を有する化合物を使用した場合、光ラジカル重合開始剤(G)を添加するのが好ましい。
【0044】
光ラジカル重合開始剤(G)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、4,4'−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド類等が挙げられる。
【0045】
これらは単独または2種以上の混合物として使用でき、更にはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン、ジエタノールアミンなどの第2級アミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステルなどの安息香酸誘導体などの重合促進剤などと組み合わせて使用することができる。
【0046】
本発明の樹脂組成物において、上記(G)成分の使用量は、本発明の樹脂組成物の固形分に対し、0〜10重量%が好ましい。
【0047】
本発明の感光樹脂組成物には、希釈剤(H)を使用することができる。使用しうる希釈剤(H)としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類;ジオキサン、1,2−ジメトキシメタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類;フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、シクロヘキサン等の炭化水素類;トリクロロエタン、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類等、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤等の有機溶剤類、2H,3H−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系アルコール類、パーフルオロブチルメチルエーテル、パーフルオロブチルエチルエーテル等のハイドロフルオロエーテル類などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して使用しても良い。
【0048】
本発明の樹脂組成物において、上記(H)成分の使用量は、本発明の樹脂組成物中、0〜99重量%が好ましい。
【0049】
更に、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定化剤などを本発明の感光性樹脂組成物に添加し、それぞれ目的とする機能性を付与することも可能である。レベリング剤としてはフッ素系化合物、シリコーン系化合物、アクリル系化合物等が、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物等、光安定化剤としてはヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。
【0050】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分並びに必要に応じて(E)成分、(F)成分、(G)成分、(H)成分及びその他の成分を任意の順序で混合することにより得ることができる。
【0051】
こうして得られた本発明の感光性樹脂組成物は、経時的に安定である。
【0052】
本発明の反射防止ハードコートフィルムは、基材フィルム(ベースフィルム)上にハードコート層、高屈折率ハードコート層及び上記感光性樹脂組成物層の順に各層を設けることにより得られる。まず、基材フィルム上にハードコート剤を乾燥後膜厚が1〜30μm、好ましくは3〜20μmになるように塗布し、乾燥後放射線を照射して硬化皮膜を形成させる。その後、形成されたハードコート層の上に、屈折率が1.55以上の高屈折率ハードコート剤を乾燥後膜厚が0.05〜5μm、好ましくは0.05〜3μm(反射率の最大値を示す波長が500〜700nmになるように膜厚を設定するのが好ましい)になるように塗布し、乾燥後、放射線を照射して硬化皮膜を形成させる。さらに、その高屈折率ハードコート層の上に本発明の感光性樹脂組成物を乾燥後膜厚が0.05〜0.5μm、好ましくは0.05〜0.3μm(反射率の最小値を示す波長が500〜700nm、好ましくは520〜650nmになるように膜厚を設定するのが好ましい)になるように塗布し、乾燥後放射線を照射して硬化皮膜を形成させることにより得ることができる。
【0053】
基材フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルホン、シクロオレフィン系ポリマーなどが挙げられる。フィルムはある程度厚いシート状のものであっても良い。使用するフィルムは、柄や易接着層を設けたもの、コロナ処理等の表面処理をしたものであっても良い。
【0054】
上記の感光性樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、マイクログラビア塗工、ダイコーター塗工、ディップ塗工、スピンコート塗工などが挙げられる。
【0055】
硬化のために照射する放射線としては、例えば、紫外線、電子線などが挙げられる。紫外線により硬化させる場合、光源としては、キセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどを有する紫外線照射装置が使用され、必要に応じて光量、光源の配置などが調整される。高圧水銀灯を使用する場合、80〜120W/cm2のエネルギーを有するランプ1灯に対して搬送速度5〜60m/分で硬化させるのが好ましい。
【0056】
本発明の反射防止ハードコートフィルムの1層目に使用するハードコート剤としては、市販されているハードコート剤をそのまま用いてもよいし、多官能(メタ)アクリレート(I)と光ラジカル重合開始剤(G)、希釈剤(H)を配合して使用してもよい。多官能(メタ)アクリレート(I)の具体例としては、例えばポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX−220、HX−620など)、ビスフェノールAのEO付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、ポリグリシジル化合物(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなど)と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート、水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートなど)とポリイソシアネート化合物(トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなど)の反応物である多官能ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、単独または2種以上を混合して使用しても良い。好ましいものは、3官能以上の(メタ)アクリレートである。
【0057】
光ラジカル重合開始剤(G)としては、前記記載の化合物を使用することができる。
また、前記重合促進剤などと組み合わせて使用することができる。
【0058】
上記ハードコート剤で使用する希釈剤(H)は、前記の希釈剤(H)を使用することができる。
【0059】
前記ハードコート剤に使用する(I)成分、(G)成分、(H)成分は、任意の順序で配合・混合することができ、必要に応じレベリング剤、消泡剤等を添加することができる。各成分の使用比率は、(I)成分30〜99.5重量%、(G)成分0.5〜20重量%で、(H)成分はハードコート剤組成中0〜90重量%、好ましくは20〜80重量%である。
【0060】
本発明の反射防止ハードコートフィルムの2層目に使用する高屈折率ハードコート剤は、屈折率1.55以上のものであれば良いが、好ましくは、多官能(メタ)アクリレート(I)、1次粒径が1〜200ナノメートルの金属酸化物(J)と光ラジカル重合開始剤(G)、希釈剤(H)から得られる感光性樹脂組成物が良い。
多官能(メタ)アクリレート(I)及び光ラジカル重合開始剤(G)、希釈剤(H)は、前記記載の化合物を使用することができる。
【0061】
1次粒径が1〜200ナノメートルの金属酸化物(J)としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化インジウム錫(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アンチモン酸亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、錫ドープアンチモン酸亜鉛などが挙げられる。これらは、微粉末もしくは有機溶剤に分散させた分散液として入手することができる。
【0062】
分散液に使用しうる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの非極性溶媒などが挙げられる。有機溶剤の量は、通常、金属酸化物100重量部に対して70〜900重量部である。
【0063】
また、本発明の反射防止ハードコートフィルムに帯電防止性能を付与するため金属酸化物(J)として、導電性金属酸化物(K)を用いることができる。導電性金属酸化物(K)としては、例えば、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アンチモン酸亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛などが挙げられる。価格、安定性、分散性などからアンチモン酸亜鉛が好ましい。
【0064】
高屈折率ハードコート剤に使用する(I)成分、(J)成分、(G)成分、(H)成分は、任意の順序で配合・混合することができ、必要に応じてレベリング剤、消泡剤等を添加することができる。各成分の使用比率は、高屈折率ハードコート剤組成中、通常(I)成分19.5〜79.5重量%、(J)成分20〜80重量%、(G)成分0.5〜20重量%で、(H)成分は0〜99重量%、好ましくは50〜98重量%である。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、実施例中、特に断りがない限り、部は重量部を示す。なお、実施例中の各物性値は以下の方法で測定した。
(1)エポキシ当量:JIS K−7236に準じた方法で測定。
(2)屈折率 :アッベ屈折率計にて25℃で測定
【0066】
合成例 (フッ素原子含有ケイ素化合物の合成)
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン47.2部、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン43.6部、メチルイソブチルケトン181.8部、0.1重量%水酸化カリウム水溶液10.8部を反応容器に仕込み、80℃に昇温し、5時間反応させた。反応終了後、洗浄液が中性になるまで、0.5重量%酢酸水溶液を用いて水洗を繰り返した。次いで減圧下で溶媒を除去することによりフッ素原子含有ケイ素化合物(A−1)65部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は317g/eq、屈折率1.435であった。また、室温1ヶ月の経時でもゲル化は観察されなかった。
【0067】
製造例1
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD DPHA)42部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート((株)化薬サートマー製、KS−HDDA)5部、イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)3部、メチルエチルケトン25部、メチルイソブチルケトン25部を混合し溶解させた。
得られたハードコート剤をマイクログラビアコーターでPETフィルム(東洋紡績(株)製、A−4300、膜厚188μm)上に膜厚が約5μmになるように塗布し、80℃で乾燥後、紫外線照射器により硬化させた。硬化膜の鉛筆硬度は3Hであった。
【0068】
製造例2
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD DPHA)1.2部、イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.15部、イルガキュア907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.15部、セルナックスCX−Z600M−3F2(日産化学工業(株)製、アンチモン酸亜鉛のメタノール分散ゾル、固形分60%、一次粒径15〜20nm)7.5部、メタノール31部、プロピレングリコールモノメチルエーテル60部を混合し、固形分6%の高屈折率ハードコート剤を得た。
【0069】
次いで、製造例1で得たハードコート層を形成したPETフィルム上に得られた高屈折率ハードコート剤をマイクログラビアコーターで塗布し、80℃で乾燥後、紫外線照射器により硬化させた。この時、反射率の最大値が500〜700nmになるように膜厚を調整した。硬化膜の密着性は良好であった。
【0070】
実施例1〜5及び比較例1
表1に示す材料を配合した感光性樹脂組成物を製造例2で得られた高屈折率ハードコート層まで形成したPETフィルム上に塗布し、80℃で乾燥後、紫外線照射器により硬化させて反射防止ハードコートフィルムを得た。この時、反射率の最小値が520〜650nmになるように膜厚を調整した。尚、表1において単位は「部」を表す。
【0071】
表1
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 実施例5 比較例1
A−1 1.35 1.02 0.96 0.48 1.35
NK−8 1.75 1.70 2.40 1.60 1.75
NK−13 1.50 1.00 1.50 1.50
KD270 1.50
DPHA 0.85
開始剤1 0.15 0.15 0.15 0.15 0.15
開始剤2 0.02 0.04 0.15
MEK−ST 1.75 1.75
H010 1.02
V−3F 1.40
V−8F 0.70
MFS−10P 20.00
MEK 93.50 95.11 94.27 94.83 93.50 79.00
【0072】
(注)
NK−8:関東電化工業(株)製、フッ素系ポリマー(固形分30%)
NK−13:関東電化工業(株)製、ポリシロキサングラフトポリマー(幹部分がフッ素系ポリマーで、枝部分がシリコーンで構成された櫛型ポリマー)(固形分30%)
KD270:関東電化工業(株)製、ポリシロキサングラフトポリマー(幹部分がフッ素系ポリマーで、枝部分がシリコーンで構成された櫛型ポリマー)(固形分30%)
DPHA:日本化薬(株)製、KAYARAD DPHA(ジペンタエリスルトールヘキサアクリレートとペンタアクリレートとの混合物、架橋剤)
開始剤1:ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート
開始剤2:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
MEK−ST:日産化学工業(株)製、オルガノシリカゾル(固形分30%、一次粒径10〜15nm)
H010:東ソーエフテック(株)製、パーフルオロオクチルプロピレンオキシド(屈折率1.318)
V−8F:大阪有機工業(株)製、オクタフルオロペンチルアクリレート(屈折率1.347)
V−3F:大阪有機工業(株)製、トリフルオロエチルアクリレート(屈折率1.348)
MFS−10P:日産化学工業(株)製、フッ化マグネシウムゾル(固形分10%)
MEK:メチルエチルケトン
【0073】
実施例1〜5、比較例1で得られた反射防止ハードコートフィルムにつき、下記項目を評価しその結果を表2に示した。
【0074】
(鉛筆硬度)
JIS K 5400に従い、鉛筆引っかき試験機を用いて、上記組成の塗工フィルムの鉛筆硬度を測定した。詳しくは、測定する硬化皮膜を有するポリエステルフィルム上に、鉛筆を45度の角度で、上から1kgの荷重を掛け5mm程度引っかき、5回中、4回以上傷の付かなかった鉛筆の硬さで表した。
【0075】
(耐擦傷性)
スチールウール#0000上に500g/cm2の荷重を掛けて10往復させ、傷の状況を目視で判定した。
評価 A:0〜5傷なし
B:6〜9本の傷発生
C:10本以上の傷発生
【0076】
(耐摩耗性)
市販のクロス上に1kg/cm2の荷重を掛けて200往復させ、傷の状況、剥がれを目視で観察した。
評価 A:変化なし
B:傷あるが色目に変化なし
C:剥がれ発生
【0077】
(密着性)
JIS D 0202に従い、測定する硬化皮膜を有するフィルムの表面に1mm間隔で縦、横11本の切れ目を入れて100個の碁盤目を作る。セロハンテープをその表面に密着させた後、一気に剥がしたときに剥離せずに残存したマス目の個数を示した。
【0078】
(液屈折率)
アッベの屈折率計にて測定した。それぞれの材料について液屈折率を測定し、塗料固形分100%の屈折率を算出した。
上記評価結果を表2に示した。
【0079】
表2
鉛筆硬度 耐擦傷性 耐摩耗性 密着性 液屈折率
実施例1 3H A A 100/100 1.43
実施例2 3H A A 100/100 1.39
実施例3 3H B A 100/100 1.41
実施例4 3H A A 100/100 1.39
実施例5 3H B A 100/100 1.43
比較例1 2H C B 100/100 1.43
【0080】
実施例1〜5の反射防止ハードコートフィルムは、鉛筆硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、密着性について良好な結果を示した。比較例1は、鉛筆硬度、耐擦傷性、耐摩耗性について劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
フッ素原子を有する新規ケイ素化合物、光カチオン重合開始剤、側鎖に(ポリ)シロキサン結合を有する高分子化合物、フッ素原子を有する高分子化合物、コロイダルシリカ、フッ素原子を有するモノマーを含有する本発明の感光性樹脂組成物で得られた硬化皮膜は、耐擦傷性、耐摩耗性、耐汚染性、密着性に優れ、また、高屈折率層の上に塗工し硬化させることにより反射率の低い反射防止フィルムを製造するのに適している。この様な本発明のフィルムは、特にプラスチック光学部品、タッチパネル、フラットパネルディスプレイ、携帯電話、フィルム液晶素子など反射防止機能を必要とする分野に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
fSi(OR13 (1)
(式中Rfは、フッ素原子を1〜20個有する置換基を示す。R1はC1〜C4のアルキル基を示す。)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物同士か、又は前記一般式(1)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物と下記一般式(2)
eSi(OR23 (2)
(式中Reは、エポキシ基を有する置換基を示す。R2はC1〜C4のアルキル基を示す。)で表されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物とを、塩基性触媒の存在下に、縮合させて得られるフッ素原子含有ケイ素化合物(A)、光カチオン重合開始剤(B)、幹部分がフッ素系ポリマーで、枝部分がシリコーンで構成された櫛型ポリマー(C)及びフッ素原子を有する高分子化合物(D)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
一般式(2)の化合物において、ReがグリシドキシC1〜C4アルキル基又はオキシラン基を有するC5〜C8のシクロアルキル基で置換されたC1〜C3アルキル基である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
フッ素原子含有ケイ素化合物(A)が、前記式(1)で表されるフッ素原子を有するアルコキシケイ素化合物と前記式(2)で表されるエポキシ基を有するアルコキシケイ素化合物を縮合させて得られるフッ素原子含有ケイ素化合物である請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
一次粒径が1〜200ナノメートルのコロイダルシリカ(E)を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
フッ素原子を有するモノマー(F)を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
フッ素原子を有するモノマー(F)の末端がエポキシ基または(メタ)アクリレート基を有することを特徴とする請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
フッ素原子を有するモノマー(F)の一分子中のフッ素の数が3〜20である請求項5又は6に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
光ラジカル重合開始剤(G)を含有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
希釈剤(H)を含有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
基材フィルム上にハードコート剤及び屈折率が1.55以上の高屈折率ハードコート剤をこの順に塗工し、硬化させたハードコート層の上に、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を塗工し、硬化させた反射防止ハードコートフィルム。
【請求項11】
高屈折率ハードコート剤が、多官能(メタ)アクリレート(I)、1次粒径1〜200ナノメートルの金属酸化物(J)及び光ラジカル重合開始剤(G)を含有する感光性樹脂組成物であることを特徴とする請求項10に記載の反射防止ハードコートフィルム。
【請求項12】
1次粒径1〜200ナノメートルの金属酸化物(J)が、導電性金属酸化物(K)である請求項11に記載の反射防止ハードコートフィルム。

【公開番号】特開2006−169328(P2006−169328A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361964(P2004−361964)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】