説明

感光性樹脂組成物及びその積層体

【課題】高解像性及び高密着性でかつエッチング耐性に優れるネガ型の感光性樹脂組成物及びこれを用いた感光性樹脂積層体の提供。
【解決手段】(A)アルカリ可溶性高分子20〜90質量%、(B)エチレン性不飽和付加重合性モノマー5〜75質量%、及び(C)光重合開始剤0.01〜30質量%を含有する感光性樹脂組成物であって、該(A)アルカリ可溶性高分子が、下記一般式(I):


[式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、そしてR2は炭素数が6〜20のアルキル基を表す。]で表される単量体単位構造を含み、該(B)エチレン性不飽和付加重合性モノマーが、分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和基及び少なくとも1つのイソシアヌル環構造を有するイソシアヌル環含有不飽和化合物を含む、感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ性水溶液によって現像可能なネガ型の感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を支持体上に積層した感光性樹脂積層体、該感光性樹脂積層体を用いて基板上にレジストパターンを形成する方法、及び該レジストパターンの用途に関する。さらに詳しくは、プリント配線板の製造、フレキシブルプリント配線板の製造、ICチップ搭載用リードフレーム(以下、リードフレームという)の製造、メタルマスク製造等の金属箔精密加工、BGA(ボールグリッドアレイ)及びCSP(チップサイズパッケージ)等の半導体パッケージ製造、TAB(Tape Automated Bonding)及びCOF(Chip On Film:半導体ICをフィルム状の微細配線板上に搭載したもの)に代表されるテープ基板の製造、半導体バンプの製造、フラットパネルディスプレイ分野におけるITO電極、アドレス電極及び電磁波シールド等の部材の製造、並びにサンドブラスト工法によって基材を加工する際の保護マスク部材として好適なレジストパターンを与える感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板はフォトリソグラフィー法によって製造されている。フォトリソグラフィー法においては、ネガ型の場合、感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、パターン露光して該感光性樹脂組成物の露光部を重合硬化させ、未露光部を現像液で除去して基板上にレジストパターンを形成し、エッチング又はめっき処理を施して導体パターンを形成した後、該レジストパターンを該基板上から剥離除去することによって、基板上に導体パターンを形成できる。
【0003】
フォトリソグラフィー法においては、感光性樹脂組成物を基板上に塗布するにあたって、フォトレジスト溶液を基板に塗布して乾燥させる方法、又は支持体、感光性樹脂組成物からなる層(以下、「感光性樹脂層」という。)、及び必要によっては保護層、を順次積層した感光性樹脂積層体(以下、「ドライフィルムレジスト」という。)を基板に積層する方法のいずれかが使用される。そして、プリント配線板の製造においては、後者のドライフィルムレジストが使用されることが多い。
【0004】
上記のドライフィルムレジストを用いてプリント配線板を製造する方法の例について、以下に簡単に述べる。まず、ドライフィルムレジストがポリエチレンフィルム等の保護層を有する場合には、感光性樹脂層からこれを剥離する。次いで、ラミネーターを用いて銅張積層板等の基板上に、該基板、感光性樹脂層、支持体(ポリエチレンテレフタレート等からなる)の順序になるよう、感光性樹脂層及び支持体を積層する。次いで、配線パターンを有するフォトマスクを介して、該感光性樹脂層を露光することによって、露光部分を重合硬化させる。次いで支持体を剥離する。次いで、弱アルカリ性を有する水溶液等の現像液により感光性樹脂層の未露光部分を溶解又は分散除去して、基板上にレジストパターンを形成する。この現像液により未露光部分の感光性樹脂層を溶解させる為に要する最も短い時間が最小現像時間とされる。
【0005】
次いで、レジストパターン形成後、回路を形成するプロセスは大きく2つの方法に分かれる。第一の方法は、レジストパターンによって覆われていない基板表面(例えば銅張積層板の銅面等)をエッチング除去した後、レジストパターン部分を現像液よりも強いアルカリ水溶液で除去する方法である。この場合、工程の簡便さから、貫通孔(スルーホール)を硬化膜で覆いその後エッチングする方法(テンティング法)が多用されている。第二の方法は同上の基板表面(例えば銅張積層板の銅面等)上に銅めっき処理を施し、必要であれば更に半田、ニッケル及び錫等のめっき処理を行った後、同様にレジストパターン部分の除去、さらに現れた基板表面をエッチングする方法(めっき法)である。エッチングには塩化第二銅、塩化第二鉄、銅アンモニア錯体溶液、硫酸/過酸化水素水溶液等の酸性エッチング液が用いられる。エッチング処理においては、レジストパターンの耐エッチング性が重要である。耐エッチング性が悪いと、エッチング時にエッチング液がレジストパターンと基板との隙間からしみこみ、回路頂部の一部がエッチングされる。頂部方向からの表面外観は、しみこみによる変色及び酸化が見られ、導体パターンの幅の再現性が一部で悪くなり、直線性が悪くガタつく。さらに耐エッチング性が悪い場合には、導体パターンの欠け及び断線が起こる。これらの欠陥は導体パターンが微細なほど顕著になる。
【0006】
近年のプリント配線板におけるファイン化に伴い、ドライフィルムレジストの薄膜化による解像性の向上が要求されている。ところがドライフィルムレジストを薄膜化すると、エッチング時の薬液耐性が低下し、エッチング液のしみこみ、及びめっき液のしみこみによって、断線及びめっき潜りが発生し、生産性が低下することから、薄膜でも耐薬品性が良好なフォトレジストが望まれている。特にエッチング用レジストでは薄膜化による解像性向上の要求が大きく、エッチング液耐性の向上は大きな課題であった。
【0007】
特許文献1には、鉄金属基材用途のエッチング液耐性が良好な組成物として、スチレン型化合物又はその環置換誘導体とアルキル基が1〜6個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートとアクリロニトリルとからなるバインダーを含む感光性樹枝組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−198033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1には、エチレン性不飽和付加重合性モノマーとして分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和基及びイソシアヌル環構造を有する光重合性化合物を用いた例については開示がない。
【0010】
本発明の目的は、エッチングレジスト又はめっきレジスト等のレジスト材料として特に優れた高解像性と高密着性とを有することによって現像後のスソが極めて小さく、さらに、エッチング耐性に優れるネガ型の感光性樹脂組成物及びこれを用いた感光性樹脂積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、本発明の次の構成によって達成することができる。即ち、本発明は以下の通りである。
【0012】
[1] (A)アルカリ可溶性高分子20〜90質量%、(B)エチレン性不飽和付加重合性モノマー5〜75質量%、及び(C)光重合開始剤0.01〜30質量%を含有する感光性樹脂組成物であって、
該(A)アルカリ可溶性高分子が、下記一般式(I):
【化1】

[式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、そしてR2は炭素数が6〜20のアルキル基を表す。]
で表される単量体単位構造を含み、
該(B)エチレン性不飽和付加重合性モノマーが、分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和基及び少なくとも1つのイソシアヌル環構造を有するイソシアヌル環含有不飽和化合物を含む、感光性樹脂組成物。
[2] 該イソシアヌル環含有不飽和化合物が、下記一般式(II):
【化2】

[式中、R3は各々独立に一般式(III):
【化3】

(式中、R5はエチレン基又はプロピレン基を表し、R6は水素原子又はメチル基を表し、そしてm及びnは各々独立に1〜3の整数である。)
又は一般式(IV):
【化4】

(式中、R7はプロピレン基を表し、R8はエチレン基を表し、R9は水素原子又はメチル基を表し、pは1〜3の整数であり、そしてqは0〜3の整数であり、プロピレン基及びエチレン基はランダム及びブロックのいずれの繰返し配列でもよく、ブロックの場合いずれが末端側であってもよい。)
で表され、R4は上記一般式(III)又は上記一般式(IV)又は下記一般式(V):
【化5】

(式中、R10はエチレン基又はプロピレン基を表し、r及びsは各々独立に1〜3の整数である。)
又は下記一般式(VI):
【化6】

(式中、R11はエチレン基を表し、R12はプロピレン基を表し、tは0〜3の整数であり、uは0〜3の整数であり、そしてt及びuの合計は1以上6以下の整数であり、エチレン基及びプロピレン基はランダム及びブロックのいずれの繰返し配列でもよい。)
で表される。]
で表される、上記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3] 支持体と、該支持体上に積層された上記[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層とを有する、感光性樹脂積層体。
[4] 基板上に、上記[3]に記載の感光性樹脂積層体を用いて感光性樹脂層を形成するラミネート工程、
該感光性樹脂層を露光する露光工程、及び
該露光後の感光性樹脂層を現像することによってレジストパターンを有する基板を得る現像工程
を含む、レジストパターン形成方法。
[5] 該露光工程における露光を直接描画により行う、上記[4]に記載のレジストパターン形成方法。
[6] 上記[4]又は[5]に記載のレジストパターン形成方法によって得た、レジストパターンを有する基板を、エッチング又はめっきする工程を含む、プリント配線板の製造方法。
[7] 上[4]又は[5]に記載のレジストパターン形成方法によって得た、レジストパターンを有する基板を、エッチングする工程を含む、リードフレームの製造方法。
[8] 上記[4]又は[5]に記載のレジストパターン形成方法によって得た、レジストパターンを有する基板を、エッチング又はめっきする工程を含む、半導体パッケージの製造方法。
[9] 上記[4]又は[5]に記載のレジストパターン形成方法によって得た、レジストパターンを有する基板を、エッチング又はめっきする工程を含む、バンプの製造方法。
[10] 上記[4]又は[5]に記載のレジストパターン形成方法によって得た、レジストパターンを有する基板を、サンドブラストによって加工する工程を含む、凹凸パターンを有する基材の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高解像性及び高密着性でかつエッチング耐性に優れるレジストパターンを与える感光性樹脂組成物及び感光性樹脂積層体を提供できる。さらに、本発明によれば、このような感光性樹脂積層体を用いることにより、欠け、断線等の欠陥が低減された導体パターンを形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0015】
<感光性樹脂組成物>
本発明の一態様は、(A)アルカリ可溶性高分子20〜90質量%、(B)エチレン性不飽和付加重合性モノマー5〜75質量%、及び(C)光重合開始剤0.01〜30質量%を含有する感光性樹脂組成物であって、該(A)アルカリ可溶性高分子が、下記一般式(I):
【化7】

[式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、そしてR2は炭素数が6〜20のアルキル基を表す。]で表される単量体単位構造を含み、該(B)エチレン性不飽和付加重合性モノマーが、分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和基及び少なくとも1つのイソシアヌル環構造を有するイソシアヌル環含有不飽和化合物を含む、感光性樹脂組成物を提供する。
【0016】
(A)アルカリ可溶性高分子
本発明に用いられる(A)アルカリ可溶性高分子は、上記一般式(I)で表される単量体単位構造を含む。
【0017】
(A)アルカリ可溶性高分子のカルボキシル基含有量は、酸当量で100〜600であることが好ましく、より好ましくは250以上450以下である。酸当量とは、その中に1当量のカルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子の質量(グラム)を意味する。アルカリ可溶性高分子中のカルボキシル基は、感光性樹脂層にアルカリ水溶液に対する現像性及び剥離性を与えることができる。該酸当量は、現像耐性が良好で、解像度及び密着性が良好であるという点から100以上であることが好ましく、現像性及び剥離性が良好であるという点から600以下であることが好ましい。酸当量の測定は、自動滴定装置(例えば平沼産業(株)製平沼自動滴定装置(COM−555))を使用し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムを用いて電位差滴定法により行われる。
【0018】
本発明に用いられる(A)アルカリ可溶性高分子の重量平均分子量は、5,000〜500,000であることが好ましい。該重量平均分子量は、現像性及び解像性が良好であるという点から500,000以下であることが好ましく、感光性樹脂積層体をロール状に巻き取った場合にロール端面から感光性樹脂組成物が染み出す現象、すなわち、エッジフューズが抑制される点から5,000以上であることが好ましい。(A)アルカリ可溶性高分子の重量平均分子量は、5,000〜100,000であることがより好ましく、さらに好ましくは5,000〜60,000である。
【0019】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(例えば日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(ポンプ:Gulliver、PU−1580型、カラム:昭和電工(株)製Shodex(登録商標)(KF−807、KF−806M、KF−806M、KF−802.5)4本直列、移動層溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン標準サンプル(昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM−105)による検量線使用))によりポリスチレン換算として求められる。
【0020】
本発明に用いられる(A)アルカリ可溶性高分子は、好ましくは、下記の第一の単量体の1種以上と第二の単量体の1種以上とを共重合させることにより得られる。第一の単量体は、分子中に重合性不飽和基を1個有するカルボン酸又は酸無水物である。第一の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、及びマレイン酸半エステルが挙げられる。
【0021】
第二の単量体は、非酸性で、分子中に重合性不飽和基を1個有する化合物である。該化合物は、感光性樹脂層の現像性、エッチング及びめっき工程での耐性、硬化膜の可とう性等の種々の特性を保持するように選ばれる。本発明で必須に用いる上記一般式(I)で表される単量体単位構造はこの第二の単量体に対応する。
【0022】
上記一般式(I)中のR2に関し、炭素数6〜20のアルキル基とは、炭素数6〜20の直鎖状、分岐鎖状、環状又は部分的に環状のアルキル基を意味する。上記一般式(I)で表される単量体単位構造は、炭素数が6以上になることにより疎水性と柔軟性が向上し本発明の感光性樹脂組成物に優れたエッチング耐性を与える。また炭素数が20以下であることで現像性が良好となる。
【0023】
上記一般式(I)で表される単量体単位構造を与える第二の単量体としては、例えばベンジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシベンジル(メタ)アクリレート、4−メトキシベンジル(メタ)アクリレート、4−メチルベンジル(メタ)アクリレート、4−クロロベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(C7以上)、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート(C7以上)、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも解像性の観点から、ベンジル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
上記一般式(I)で表される単量体単位構造は、アルカリ可溶性高分子中の単量体成分の含有量として、エッチング耐性を向上させるという観点から、1質量%が好ましく3質量%以上がより好ましい。また、アルカリ現像性の観点から90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。(A)アルカリ可溶性高分子中の、上記単量体単位構造の含有量は、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法又はH−NMR等を用いた解析方法で確認できる。
【0025】
第二の単量体としては、必須成分である、上記一般式(I)で表される単量体単位構造を与える化合物に加えて、他の公知の単量体も共重合成分として併用する事が出来る。例えば、スチレン、及びスチレン誘導体(例えば、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、及びp−クロロスチレン)、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸グリシジル等を使用でき、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明に用いられる(A)アルカリ可溶性高分子は、上記第一の単量体と第二の単量体とを混合し、溶剤、例えば、アセトン、メチルエチルケトン又はイソプロパノールで希釈した溶液に、ラジカル重合開始剤、例えば、過酸化ベンゾイル又はアゾイソブチロニトリルを適量添加し、加熱攪拌することにより合成を行うことが好ましい。混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行う場合もある。反応終了後、さらに溶剤を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。合成手段としては、溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合又は乳化重合を用いてもよい。
【0027】
本発明に用いられる(A)アルカリ可溶性高分子の、感光性樹脂組成物中の含有量(固形分量基準、以下同じ)は、20〜90質量%の範囲であり、好ましくは30〜70質量%である。露光及び現像によって形成されるレジストパターンが、レジストとしての特性、例えば、テンティング、エッチング及び各種めっき工程において十分な耐性等を有するという観点から、上記含有量は20質量%以上90質量%以下である。
【0028】
(b)エチレン性不飽和付加重合性モノマー
本発明に用いられる(b)エチレン性不飽和付加重合性モノマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和基(典型的には末端エチレン性不飽和基)を有するエチレン性不飽和付加重合性モノマーである。(b)エチレン性不飽和付加重合性モノマーは、分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和基及び少なくとも1つのイソシアヌル環構造を有するイソシアヌル環含有不飽和化合物を含む。このようなイソシアヌル環含有不飽和化合物は、使用する典型的な基板(特に銅基板)表面との化学的相互作用を有するため、良好な解像性、密着性、及びエッチング耐性を与える。
【0029】
イソシアヌル環含有不飽和化合物は、好ましくは、下記一般式(II):
【化8】

[式中、R3は各々独立に一般式(III):
【化9】

(式中、R5はエチレン基又はプロピレン基を表し、R6は水素原子又はメチル基を表し、そしてm及びnは各々独立に1〜3の整数である。)
又は一般式(IV):
【化10】

(式中、R7はプロピレン基を表し、R8はエチレン基を表し、R9は水素原子又はメチル基を表し、pは1〜3の整数であり、そしてqは0〜3の整数であり、プロピレン基及びエチレン基はランダム及びブロックのいずれの繰返し配列でもよく、ブロックの場合いずれが末端側であってもよい。)
で表され、R4は上記一般式(III)又は上記一般式(IV)又は下記一般式(V):
【化11】

(式中、R10はエチレン基又はプロピレン基を表し、r及びsは各々独立に1〜3の整数である。)
又は下記一般式(VI):
【化12】

(式中、R11はエチレン基を表し、R12はプロピレン基を表し、tは0〜3の整数であり、uは0〜3の整数であり、そしてt及びuの合計は1以上6以下の整数であり、エチレン基及びプロピレン基はランダム及びブロックのいずれの繰返し配列でもよい。)
で表される。]
で表される。
【0030】
上記一般式(II)で表されるイソシアヌル環含有不飽和化合物は、エチレン基及び/又はプロピレン基を含有する構造に起因して、良好な解像性、密着性、及びエッチング耐性に対する寄与が特に大きい。
【0031】
上記一般式(II)で表されるイソシアヌル環含有不飽和化合物の好ましい具体例としては、後述の表3に記載するような、アロニックス(登録商標)M―327、アロニックス(登録商標)TO−1682、アロニックス(登録商標)TO−1684、及びアロニックス(登録商標)TO−1698(以上、東亜合成製)等が挙げられる。
【0032】
上記一般式(II)で表されるイソシアヌル環含有不飽和化合物の、感光性樹脂組成物中の含有量は、3〜40質量%であることが好ましい。上記含有量は、解像性、密着性、及びエッチング耐性を得るという観点から3質量%以上が好ましく、現像性の観点から40質量%以下が好ましい。上記含有量のより好ましい範囲は5〜35質量%であり、さらに好ましい範囲は5〜30質量%である。
【0033】
本発明の感光性樹脂組成物に用いる(b)エチレン性不飽和付加重合性モノマーとしては、上記の化合物以外にも少なくとも1つの末端エチレン性不飽和基を有する公知の化合物を使用できる。例えば、4−ノニルフェニルヘプタエチレングリコールジプロピレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、無水フタル酸と2−ヒドロキシプロピルアクリレートとの半エステル化合物とプロピレンオキシドとの反応物(例えば日本触媒化学製、商品名OE−A 200)、4−ノルマルオクチルフェノキシペンタプロピレングリコールアクリレート、2,2−ビス[{4−(メタ)アクリロキシポリエトキシ}フェニル]プロパン、2,2−ビス{(4−アクリロキシポリエトキシ)シクロヘキシル}プロパン又は2,2−ビス{(4−メタクリロキシポリエトキシ)シクロヘキシル}プロパン、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、またポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ウレタン基を含有する多官能基(メタ)アクリレート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタプロピレングリコールモノメタクリレートとのウレタン化合物が挙げられる。また、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘプタプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノニルプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサプロピレングリコールの両端にジエチレングリコールが付加したジ(メタ)アクリレート、ドデカプロピレングリコールの両端にジエチレングリコールが付加したジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種類以上併用しても構わない。
【0034】
本発明の感光性樹脂組成物中に含有される(b)エチレン性不飽和付加重合性モノマーの、感光性樹脂組成物中の含有量は、5〜75質量%の範囲であり、好ましい範囲は15〜70質量%である。上記含有量は、硬化不良、及び現像時間の遅延を抑えるという観点から5質量%以上であり、また、コールドフロー、及び硬化レジストの剥離遅延を抑えるという観点から75質量%以下である。
【0035】
(c)光重合開始剤
本発明に用いられる(c)光重合開始剤としては、各種の活性光線、例えば紫外線等により活性化され、重合を開始させることができる種々の化合物を使用できる。しかし、好ましい態様においては、(c)光重合開始剤が、下記一般式(VII):
【0036】
【化13】

[式中、X、Y及びZは、各々独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基及びアルコキシ基、並びにハロゲン基からなる群より選ばれる1種の基を表し、そしてa、b及びcは、各々独立に1〜5の整数である。]
で表される少なくとも1種の2,4,5−トリアリ−ルイミダゾ−ル二量体を含むことが、高解像度の観点から好ましい。
【0037】
上記一般式(VII)で表される化合物においては、2個のロフィン基を結合する共有結合は、1,1’−、1,2’−、1,4’−、2,2’−、2,4’−又は4,4’−位についているが、感度を向上させる観点から、1,2’−位についている化合物が好ましい。2,4,5−トリアリ−ルイミダゾ−ル二量体としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾ−ル二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス−(m−メトキシフェニル)イミダゾ−ル二量体、2−(p−メトシキフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾ−ル二量体等が挙げられるが、感度及び解像度を向上させる観点から、特に、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾ−ル二量体が好ましい。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物において、上記一般式(VII)で表される少なくとも1種の2,4,5−トリアリールイミダゾ−ル二量体を用いる場合、その含有量は、感光性樹脂組成物中、0.1〜20質量%であることが好ましい。該含有量は、解像性及び密着性の観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、現像凝集性の観点から、20質量%以下であることが好ましい。含有量のより好ましい範囲は0.5〜15質量%であり、さらに好ましい範囲は1〜10質量%である。
【0039】
本発明に用いられる(c)光重合開始剤としては、前記した一般式(VII)で表される2,4,5−トリアリールイミダゾ−ル二量体とp−アミノフェニルケトンとを併用する系が、感度及び解像度が良好であるという観点から好ましい。p−アミノフェニルケトンとしては、例えば、p−アミノベンゾフェノン、p−ブチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p’−ビス(エチルアミノ)ベンゾフェノン、p,p’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン[ミヒラーズケトン]、p,p’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、p,p’−ビス(ジブチルアミノ)ベンゾフェノンが挙げられる。
【0040】
また、感度及び解像度が良好であるという観点から、ピラゾリン化合物、例えば、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリンとの併用も好ましい。
【0041】
また、上記で示された化合物以外に、他の光重合開始剤との併用も可能である。ここでの光重合開始剤とは、各種の活性光線、例えば紫外線等により活性化され、重合を開始させる化合物である。
【0042】
他の光重合開始剤としては、キノン類、例えば、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、芳香族ケトン類、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、アクリジン化合物、例えば、9−フェニルアクリジン、ベンジルジメチルケタ−ル、ベンジルジエチルケタ−ルが挙げられる。
【0043】
また、例えば、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類と、三級アミン化合物、例えば、ジメチルアミノ安息香酸アルキルエステル化合物との組み合わせも挙げられる。
【0044】
また、オキシムエステル類、例えば、1−フェニル−1、2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、1−フェニル−1、2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシムが挙げられる。また、N−アリール−α−アミノ酸化合物を用いることも可能である。これらの中では、感度向上の観点からN−フェニルグリシンが特に好ましい。
【0045】
本発明において用いる(c)光重合開始剤の、感光性樹脂組成物中の含有量は、0.01〜30質量%である。上記含有量が0.01質量%未満であると十分な感度が得られない。また、この割合が30質量%を超えると、露光時にフォトマスクを通した光の回折によるかぶりが発生しやすくなり、その結果として解像性が悪化する。上記含有量は、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%はさらに好ましい。
【0046】
(d)その他の成分
本発明の感光性樹脂組成物中には、必要に応じてその他の成分を含有させることができる。感光性樹脂組成物は、例えば、露光後のコントラスト(すなわち露光部と未露光部との識別)を発現させる目的で、ロイコ染料を含有することができる。ロイコ染料を含有する場合の含有量は、0.1〜10質量%が好ましい。このようなロイコ染料としては、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコマラカイトグリ−ン]、及びフルオラン染料が挙げられる。中でも、ロイコクリスタルバイオレットを用いた場合、コントラストが良好であり好ましい。
【0047】
感光性樹脂組成物中に、上記ロイコ染料とハロゲン化合物とを組み合わせて用いることは、密着性及びコントラストの観点から好ましい。ハロゲン化合物としては、例えば、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンザル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルホン、四臭化炭素、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン、ヘキサクロロエタン、及びハロゲン化トリアジン化合物が挙げられる。該ハロゲン化トリアジン化合物としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、及び2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンが挙げられる。
【0048】
ハロゲン化合物を含有する場合、感光性樹脂組成物中のハロゲン化合物の含有量は、0.01〜10質量%が好ましい。
【0049】
感光性樹脂組成物の取扱い性を向上させるために、前述のロイコ染料以外に下記の着色物質を入れることも可能である。着色物質としては、例えばフクシン、フタロシアニングリ−ン、オーラミン塩基、パラマジエンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリ−ン(例えば保土ヶ谷化学(株)製 アイゼン(登録商標) MALACHITE GREEN)、ベイシックブルー20、ダイアモンドグリーン(例えば保土ヶ谷化学(株)製 アイゼン(登録商標) DIAMOND GREEN GH)等が挙げられる。
【0050】
上記着色物質を含有する場合の、感光性樹脂組成物中の着色物質の含有量は、0.001〜1質量%であることが好ましい。0.001質量%以上である場合、取扱い性向上という効果が良好であり、1質量%以下である場合、保存安定性を維持するという効果が良好である。
【0051】
中でも、トリブロモメチルフェニルスルフォンとロイコ染料との組み合わせ、及びトリアジン化合物とロイコ染料との組み合わせは、感度向上の観点から有用である。
【0052】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物の熱安定性及び保存安定性を向上させるために、感光性樹脂組成物にラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、及びカルボキシベンゾトリアゾール類からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含有させることが好ましい。
【0053】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、及びジフェニルニトロソアミンが挙げられる。
【0054】
また、ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−クロロ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−トリルトリアゾール、及びビス(N−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0055】
また、カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、及びN−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0056】
ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、及びカルボキシベンゾトリアゾール類の、感光性樹脂組成物中の合計含有量は、好ましくは0.01〜3質量%であり、より好ましくは0.05〜1質量%である。該含有量は、感光性樹脂組成物に良好な保存安定性を付与するという観点から0.01質量%以上が好ましく、また、良好な感度を維持するという観点から3質量%以下がより好ましい。
【0057】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、可塑剤を含有させても良い。このような可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノエチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノエチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノエチルエーテル等のグリコール・エステル類、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類、o−トルエンスルフォン酸アミド、p−トルエンスルフォン酸アミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリ−n−プロピル、アセチルクエン酸トリ−n−ブチル等が挙げられる。
【0058】
可塑剤を含有する場合の感光性樹脂組成物中の含有量は、5〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは、5〜30質量%である。上記含有量は、現像時間の遅延を抑えたり、硬化膜に柔軟性を付与するという観点から5質量%以上が好ましく、また、硬化不足及びコールドフローを抑えるという観点から50質量%以下が好ましい。
【0059】
<感光性樹脂組成物調合液>
本発明の感光性樹脂組成物は、これに溶媒を添加した感光性樹脂組成物調合液の形態で使用してもよい。好適な溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)に代表されるケトン類、並びにメタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。感光性樹脂組成物調合液の粘度が25℃で500〜4000mPa・secとなるように、溶媒を感光性樹脂組成物に添加することが好ましい。
【0060】
<感光性樹脂積層体>
本発明の別の態様は、支持体と、該支持体上に積層された上述の本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層とを有する、感光性樹脂積層体を提供する。感光性樹脂積層体は、必要により、感光性樹脂層の支持体積層側とは反対側の表面に保護層を有してもよい。
【0061】
支持体としては、露光光源から放射される光を透過する透明なものが望ましく、典型的には支持フィルムである。このような支持フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、セルロース誘導体フィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、必要に応じて延伸されたものも使用可能であり、ヘーズ5以下のものであることが好ましい。フィルムの厚みは、薄い方が画像形成性及び経済性の面で有利であるが、強度を維持するために10〜30μmのものが好ましく用いられる。
【0062】
感光性樹脂積層体に用いられる保護層の重要な特性は、感光性樹脂層との密着力について支持フィルムよりも保護層の方が充分小さく、容易に剥離できることである。例えば、ポリエチレンフィルム、及びポリプロピレンフィルムが保護層として好ましく使用できる。また、例えば特開昭59−202457号公報に示された剥離性の優れたフィルムを用いることもできる。保護層の膜厚は10〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。感光性樹脂積層体における感光性樹脂層の厚さは、用途において異なるが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは7〜60μmであり、薄いほど解像度は向上し、また厚いほど膜強度が向上する。さらに、高いテント性を必要としないエッチング用途には、感光性樹脂積層体における感光性樹脂層の厚さは、10〜20μmが好ましい。耐エッチング性の観点から、10μm以上であり、解像性の観点から、20μm以下である。
【0063】
<感光性樹脂積層体の作製方法>
支持体、感光性樹脂層、及び必要により保護層を順次積層し感光性樹脂積層体を作製する方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、感光性樹脂層に用いる感光性樹脂組成物を、これを溶解する溶剤と混ぜ合わせ均一な溶液にし、まず支持体上にバーコーター又はロールコーターを用いて塗布し、次いで乾燥して支持体上に感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を積層することができる。次いで必要により、感光性樹脂層上に保護層をラミネートすることにより感光性樹脂積層体を作製することができる。
【0064】
<レジストパターン形成方法>
本発明の別の態様は、基板上に、上述した本発明の感光性樹脂積層体を用いて感光性樹脂層を形成するラミネート工程、
該感光性樹脂層を露光する露光工程、及び
該露光後の感光性樹脂層を現像することによってレジストパターンを有する基板を得る現像工程
を含む、レジストパターン形成方法を提供する。
【0065】
(1)ラミネート工程
本工程では、銅張積層板、フレキシブル基板等の基板の上に、ホットロールラミネーター等を用いて感光性樹脂積層体を密着させる。ラミネートは、感光性樹脂層上に保護層を有する場合にはこれを剥がしながら行う。
(2)露光工程
本工程では、所望のパターン(例えば配線パターン)を有するマスクフィルムを支持体上に密着させ、活性光源を用いて感光性樹脂層を露光するか、又は所望のパターン(例えば配線パターン)にて直接描画によって感光性樹脂層を露光する。
(3)現像工程
本工程では、上記露光の後、感光性樹脂層上の支持体を剥離し、続いてアルカリ水溶液の現像液を用いて未露光部を現像除去して、レジストパターンを基板上に形成する。アルカリ水溶液としては、通常Na2CO3又はK2CO3の水溶液を用いる。アルカリ水溶液は、感光性樹脂層の特性に合わせて適宜選択されるが、約0.2〜2質量%の濃度、約20〜40℃のNa2CO3水溶液が一般的である。
【0066】
上記の各工程を経てレジストパターンを得ることができるが、場合により、現像工程の後、さらに約100〜300℃の加熱工程を行うこともできる。この加熱工程を実施することにより、更なる耐薬品性向上が可能となる。加熱には熱風、赤外線、又は遠赤外線の方式の加熱炉を用いることができる。
【0067】
<プリント配線板の製造方法>
本発明の別の態様は、上述した本発明のレジストパターン形成方法によって得た、レジストパターンを有する基板を、エッチング又はめっきする工程を含む、プリント配線板の製造方法を提供する。
【0068】
(4)エッチング又はめっきを行う工程
本工程では、エッチング又はめっきによって配線パターンを形成する。エッチングの場合には、上述したレジストパターン形成方法で形成されたレジストパターンの上からエッチング液を吹き付けて、レジストパターンによって覆われていない基板面(例えば銅面)をエッチングする。エッチング工程は酸性エッチング、アルカリエッチング等、使用する感光性樹脂積層体に適した方法で行なわれる。めっきの場合には、現像により露出した開口部に銅、はんだ等の柱状のめっきを施す。このような方法により、基板上に配線パターンが形成されてなるプリント配線板を製造できる。
【0069】
なお、エッチング又はめっきの後には、レジストパターンを現像液よりも強いアルカリ性を有する水溶液により基板から剥離する。剥離用のアルカリ水溶液についても特に制限はないが、濃度約2〜5質量%、温度約40〜70℃のNaOH又はKOHの水溶液が一般に用いられる。剥離液に、少量の水溶性溶媒を加えることもできる。
【0070】
<リードフレームの製造方法>
本発明の別の態様は、上述した本発明のレジストパターン形成方法によって得た、レジストパターンを有する基板を、エッチングする工程を含む、リードフレームの製造方法を提供する。基板としては、銅、銅合金、又は鉄系合金等の金属板を使用できる。前述のレジストパターン形成方法によってレジストパターンを形成した後、現像により露出した基板を、プリント配線板の製造方法に関して説明したのと同様の手法でエッチングして導体パターンを形成する。その後、レジストパターンを上述のプリント配線板の製造方法と同様の方法で剥離する剥離工程を行って、所望のリードフレームを得る。
【0071】
<半導体パッケージの製造方法>
また、本発明の別の態様は、上述した本発明のレジストパターン形成方法によって得た、レジストパターンを有する基板を、エッチング又はめっきする工程を含む、半導体パッケージの製造方法を提供する。好ましい例においては、基板としてLSIとしての回路形成が終了したウェハを用いて、これに前述のレジストパターン形成方法によってレジストパターンを形成した後に、以下の工程を経ることによって、半導体パッケージを製造できる。まず、現像により露出した開口部に銅、はんだ等の柱状のめっきを施して、導体パターンを形成する。その後、レジストパターンを上述のプリント配線板の製造方法と同様の方法で剥離する剥離工程を行って、更に、柱状めっき以外の部分の薄い金属層をエッチングにより除去する工程を行うことにより、所望の半導体パッケージを得る。
【0072】
<バンプの製造方法>
また、本発明の別の態様は、上述した本発明のレジストパターン形成方法によって得た、レジストパターンを有する基板を、エッチング又はめっきする工程を含む、バンプの製造方法を提供する。エッチング及びめっきの具体的態様は、プリント配線板の製造方法に関して上述したのと同様であることができる。
【0073】
<凹凸パターンを有する基材の製造方法>
本発明の別の態様は、上述した本発明のレジストパターン形成方法によって得た、レジストパターンを有する基板を、サンドブラストによって加工する工程を含む、凹凸パターンを有する基材の製造方法を提供する。本発明によって形成されるレジストパターンは、サンドブラスト工法により基板に加工を施す時の保護マスク部材として使用することができる。基板としては、ガラス、シリコンウエハー、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、セラミック、サファイア、金属材料等が挙げられる。これら基板上に、前述のレジストパターン形成方法と同様の方法によって、レジストパターンを形成する。その後、形成されたレジストパターン上からブラスト材を吹き付け目的の深さに切削するサンドブラスト処理工程、更には、基板上に残存したレジストパターン部分をアルカリ剥離液等で基板から除去する剥離工程を経て、基板上に微細な凹凸パターンを有する基材を製造できる。上記のサンドブラスト処理工程に用いるブラスト材としては公知のものを使用でき、例えばSiC,SiO2、Al23、CaCO3、ZrO、ガラス、ステンレス等の粒径2〜100μm程度の微粒子が用いられる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例1〜16及び比較例1〜2により、本発明をさらに具体的に説明する。まず、実施例及び比較例の評価用サンプルの作製方法を説明し、次いで、得られたサンプルについての評価方法及びその評価結果を示す。
【0075】
(1)評価用サンプルの作製方法
実施例及び比較例における評価用サンプルは以下のように作製した。
【0076】
<感光性樹脂積層体の作製>
下記表1に示す組成(但し、各成分の数字は固形分としての配合量(質量部)を示す。)の感光性樹脂組成物及び溶媒をよく攪拌、混合して感光性樹脂組成物調合液とし、支持体として16μm厚のポリエチレンテレフタラートフィルム(三菱化学ポリエステルフィムル(株)製、R130−16)の表面にバーコーターを用いて均一に塗布し、95℃の乾燥機中で1.5分間乾燥して感光性樹脂組成層を形成した。感光性樹脂組成層の厚みは15μmであった。
【0077】
次いで、感光性樹脂組成層のポリエチレンテレフタラートフィルムを積層していない側の表面上に、保護層として19μm厚のポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製、GF−818)を張り合わせて感光性樹脂積層体を得た。以下の表2、3に、表1中略号で表した感光性樹脂組成物調合液中の材料成分の名称を示す。
【0078】
<基板整面>
現像性及びエッチング耐性の評価基板として、35μm圧延銅箔を積層した1.6mm厚の銅張積層板を用いた。基板表面を湿式バフロール研磨(スリーエム(株)製、スコッチブライト(登録商標)HD♯600、2回通し)した。
【0079】
<ラミネート>
感光性樹脂積層体のポリエチレンフィルムを剥がしながら、製面して60℃に予熱した銅張積層板に、ホットロールラミネーター(旭化成(株)社製、AL−700)により、ロール温度105℃でラミネートした。エアー圧は0.35MPaとし、ラミネート速度は2.0m/minとした。
【0080】
<露光>
感光性樹脂層の評価に必要なマスクフィルムを支持体であるポリエチレンテレフタラートフィルム上におき、実施例1〜15及び比較例1〜2については超高圧水銀ランプ(オーク製作所社製、HMW―801)により70mJ/cm2の露光量で露光した。実施例16については直接描画式露光装置(日立ビアメカニクス(株)製、DI露光機DE−1DH、光源:GaN青紫ダイオード、主波長405±5nm)により15mJ/cm2の露光量で露光した。
【0081】
<現像>
エッチング耐性の評価基板については、ポリエチレンテレフタラートフィルムを剥離した後、アルカリ現像機(フジ機工製、ドライフィルム用現像機)を用いて30℃の1質量%Na2CO3水溶液を所定時間スプレーし、感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去した。この際、最小現像時間の2倍の時間にて現像し、硬化レジストパターンを作製した。
【0082】
<エッチング>
現像によって、レジストパターンが形成された評価基板に、塩銅エッチング装置(東京化工機(株)社製、塩銅エッチング装置)を用いて塩化第二銅濃度250g/L、塩酸濃度3mol/Lである、50℃の塩化第二銅エッチング液を所定時間スプレーし、銅張積層板上のレジストパターンにより被覆されていない部分の銅箔を溶解除去した。
【0083】
<剥離>
エッチング後の評価基板に50℃に加温した3質量%の水酸化ナトリウム水溶液をスプレーして、硬化したレジストを剥離した。
【0084】
(2)サンプルの評価方法
次に、サンプルの評価方法について説明する。
【0085】
(i)エッチング耐性
上記評価用サンプルの作製方法に従い、ラミネート後15分経過した耐エッチング性評価用基板を、露光部と未露光部の幅が1:1の比率のラインパターンマスクを通して露光した。さらに最小現像時間の2倍の時間で現像し、最小エッチング時間の2倍の時間でエッチングした。硬化レジストを水酸化ナトリウム水溶液にて剥離し、導体パターンを光学顕微鏡にて観察し、かかる観察結果に基づき、以下のようにランク分けした:
○:導体パターンが直線的に形成されており、エッチング液の染み込みが見られない
△:導体パターンが直線的に形成されているが、エッチング液の染み込みが見られる
×:導体パターンが直線的に形成されておらず、ガタツキが見られる
【0086】
(3)評価結果
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0087】
表1から明らかなように、実施例1〜9は本願発明の構成を採用することにより、エッチング液耐性が優れている。比較例1は、アルカリ可溶性高分子が上記一般式(I)で表される単量体単位構造を含んでおらず、比較例2は、(b)エチレン性不飽和付加重合性モノマーとして上記一般式(II)で表されるイソシアヌル環含有不飽和化合物を含有していない。このため、これらの比較例ではそれぞれエッチング耐性が優れていないことがわかる。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る感光性樹脂組成物及び積層体は、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、リードフレームの製造及びメタルマスク製造等の金属箔精密加工、BGA及びCSP等の半導体パッケージ製造、TAB及びCOF等のテープ基板の製造、半導体バンプの製造、ITO電極及びアドレス電極、電磁波シールド等を製造に好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性高分子20〜90質量%、(B)エチレン性不飽和付加重合性モノマー5〜75質量%、及び(C)光重合開始剤0.01〜30質量%を含有する感光性樹脂組成物であって、
該(A)アルカリ可溶性高分子が、下記一般式(I):
【化1】

[式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、そしてR2は炭素数が6〜20のアルキル基を表す。]
で表される単量体単位構造を含み、
該(B)エチレン性不飽和付加重合性モノマーが、分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和基及び少なくとも1つのイソシアヌル環構造を有するイソシアヌル環含有不飽和化合物を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
該イソシアヌル環含有不飽和化合物が、下記一般式(II):
【化2】

[式中、R3は各々独立に一般式(III):
【化3】

(式中、R5はエチレン基又はプロピレン基を表し、R6は水素原子又はメチル基を表し、そしてm及びnは各々独立に1〜3の整数である。)
又は一般式(IV):
【化4】

(式中、R7はプロピレン基を表し、R8はエチレン基を表し、R9は水素原子又はメチル基を表し、pは1〜3の整数であり、そしてqは0〜3の整数であり、プロピレン基及びエチレン基はランダム及びブロックのいずれの繰返し配列でもよく、ブロックの場合いずれが末端側であってもよい。)
で表され、R4は上記一般式(III)又は上記一般式(IV)又は下記一般式(V):
【化5】

(式中、R10はエチレン基又はプロピレン基を表し、r及びsは各々独立に1〜3の整数である。)
又は下記一般式(VI):
【化6】

(式中、R11はエチレン基を表し、R12はプロピレン基を表し、tは0〜3の整数であり、uは0〜3の整数であり、そしてt及びuの合計は1以上6以下の整数であり、エチレン基及びプロピレン基はランダム及びブロックのいずれの繰返し配列でもよい。)
で表される。]
で表される、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
支持体と、該支持体上に積層された請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層とを有する、感光性樹脂積層体。
【請求項4】
基板上に、請求項3に記載の感光性樹脂積層体を用いて感光性樹脂層を形成するラミネート工程、
該感光性樹脂層を露光する露光工程、及び
該露光後の感光性樹脂層を現像することによってレジストパターンを有する基板を得る現像工程
を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項5】
該露光工程における露光を直接描画により行う、請求項4に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のレジストパターン形成方法によって得た、レジストパターンを有する基板を、エッチング又はめっきする工程を含む、プリント配線板の製造方法。
【請求項7】
請求項4又は5に記載のレジストパターン形成方法によって得た、レジストパターンを有する基板を、エッチングする工程を含む、リードフレームの製造方法。
【請求項8】
請求項4又は5に記載のレジストパターン形成方法によって得た、レジストパターンを有する基板を、エッチング又はめっきする工程を含む、半導体パッケージの製造方法。
【請求項9】
請求項4又は5に記載のレジストパターン形成方法によって得た、レジストパターンを有する基板を、エッチング又はめっきする工程を含む、バンプの製造方法。
【請求項10】
請求項4又は5に記載のレジストパターン形成方法によって得た、レジストパターンを有する基板を、サンドブラストによって加工する工程を含む、凹凸パターンを有する基材の製造方法。

【公開番号】特開2012−220686(P2012−220686A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85704(P2011−85704)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】