説明

感光性樹脂組成物及びそれを用いたレジストパターンの形成方法、プリント配線板の製造方法

【課題】 アルカリ現像性、難燃性に優れ、且つ部品実装時の反り、低反発及び作業性に優れた感光性樹脂組成物とそれを用いたレジストパターンの形成方法、プリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】 (A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物、(B)エチレン性不飽和基を有する重合性モノマー、(C)光重合開始剤、(D)リン含有化合物、及び(E)熱硬化剤を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(A)ポリウレタン化合物は、二重結合当量が600〜2000g/molであり、重量平均分子量が8000〜16000である感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物及びそれを用いたレジストパターンの形成方法、プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造業界では従来、プリント配線板上にソルダーレジストを形成することが行われている。このソルダーレジストは、実装部品をプリント配線板に接合するためのはんだ付け工程において、プリント配線板の導体層の不要な部分にはんだが付着することを防ぐ役割を有している他、実装部品接合後のプリント配線板の使用時においては導体層の腐食を防止したり導体層間の電気絶縁性を保持したりする永久マスクとしての役割も有している。
【0003】
ソルダーレジストの形成方法としては、例えば、プリント配線板の導体層上に熱硬化性樹脂をスクリーン印刷する方法が知られているが、このような方法ではレジストパターンの高解像度化に限界があるため、近年のプリント配線板の高密度化に対応させることが困難になってきている。
【0004】
そこで、レジストパターンの高解像度化を達成するために、フォトレジスト法が盛んに用いられるようになってきている。このフォトレジスト法は、基板上に感光性樹脂組成物からなる感光層を形成し、この感光層を所定パターンの露光により硬化させ、未露光部分を現像により除去して所定パターンの硬化膜を形成するものである。また、かかる方法に使用される感光性樹脂組成物は、作業環境保全、地球環境保全の点から、炭酸ナトリウム水溶液等の希アルカリ水溶液で現像可能なアルカリ現像型のものが主流になってきている。このような感光性樹脂組成物としては、例えば、下記特許文献1記載の液状レジストインキ組成物や、下記特許文献2記載の感光性熱硬化性樹脂組成物などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−243869号公報
【特許文献2】特開平01−141904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、各種工業製品の火災に対する難燃化の規制が厳しくなっており、プリント配線板等に使用される材料も例外ではない。難燃化する方法としては、ハロゲン系化合物、アンチモン系化合物、リン系化合物、ホウ素系化合物、無機充填剤等を添加する方法が一般的に知られている。しかし、最近では、環境問題、人体に対する安全性問題への関心の高まりと共に、非公害性、低有毒性、安全性へと重点が移り、単に燃えにくいだけでなく、有害ガス及び発煙性物質の低減が要望されつつある。これを受けて、ハロゲン系化合物やアンチモン系化合物を使用しない難燃基板が既に開発・実用化され始めている。
【0007】
しかしながら、上記のような難燃基板上に、上記特許文献1及び2に記載されているような従来の感光性樹脂組成物を用いて硬化膜を形成すると、十分な難燃性(UL94 V−0)を確保することができなくなってしまうことが本発明者らの検討により判明している。また、近年の電子機器の小型化薄型化に伴い難燃技術とともに部品実装時の反り、反発力の低減の要求が多くなっている。また、従来のフォトレジスト法の場合、光照射量が非常に多くなり作業性が悪かった。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、アルカリ現像性、難燃性に優れ、且つ部品実装時の反り、低反発及び作業性に優れた感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、前記特性を有するレジストパターンの形成方法、プリント配線板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物の二重結合当量及び重量平均分子量を特定の値に制御することで上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物、(B)エチレン性不飽和基を有する重合性モノマー、(C)光重合開始剤、
(D)リン含有化合物、及び(E)熱硬化剤を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(A)ポリウレタン化合物は、二重結合当量が600〜2000g/molであり、重量平均分子量が8000〜16000である、感光性樹脂組成物を提供する。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記構成を有することにより、現像前の未露光部の表面ベタつきが少なく、希アルカリ水溶液による現像が可能で、該感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜の難燃性、耐めっき性、はんだ耐熱性、耐HAST性(不飽和加圧蒸気試験、Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)を高い水準で満足させることができ、更に部品実装時の反り、反発を抑制でき、作業性が向上する。よって、本発明の感光性樹脂組成物によれば、十分な難燃性を有する硬化膜を高解像度で効率よく形成することが可能となる。
【0012】
また、本発明の感光性樹脂組成物によれば、ハロゲン系化合物やアンチモン系化合物を含まずに硬化膜の難燃性を十分高いものとすることができることから、例えば、プリント配線板の環境負荷や毒性を低減することが可能となる。特に、本発明の感光性樹脂組成物を非ハロゲン系或いは非アンチモン系の難燃基板に適用する場合、上記の効果が更に有効に奏される。
【0013】
また、前記(A)ポリウレタン化合物の酸価は、25〜100mgKOH/gであることが好ましい。これにより、アルカリ現像性と難燃性、可とう性(耐折曲げ性・低反り・低反発力)を向上させることができる。
【0014】
また、(D)成分であるリン含有化合物は、下記一般式(1)で示されるホスフィン酸塩であることが好ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
[一般式(1)中、A及びBは各々独立に、直鎖状の若しくは枝分かれした炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基を示し、MはMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na及びKからなる群より選択される金属類の少なくとも1種であり、mは1〜4の整数である。]
これにより感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜が十分な難燃性を有することができる。
【0017】
また、本発明は、感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を基板上に形成する形成工程と、前記感光性樹脂組成物層に活性光線を画像状に照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、前記感光性樹脂組成物層の前記露光部以外の部分を現像により除去する現像工程と、を有するレジストパターンの形成方法を提供する。また、本発明は、前記レジストパターンの形成方法により、基板上に永久マスクを形成する工程を有する、プリント配線板の製造方法を提供し、感光性樹脂組成物からなる硬化膜を形成する。
該感光性樹脂組成物の硬化膜をポリイミドなどのフレキシブル基材上に形成した基板は、難燃性を有することを特徴とし、更に実装時の低反り、低反発性を特徴とする。該感光性樹脂組成物は、ハロゲン系化合物やアンチモン系化合物を含まずに硬化膜の難燃性を十分高いものとすることができることから、例えば、プリント配線板の環境負荷や毒性を低減することが可能となる。
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物は、十分な難燃性を有する硬化膜を効率よく高解像度で形成でき、十分な可とう性を有することから、プリント配線板、特にフレキシブルプリント配線板の永久マスク形成に用いられるものであることが好ましい。
【0019】
本発明の感光性樹脂組成物をフィルム基材上に形成した感光性樹脂組成物層に、必要により保護フィルムで被覆した感光性エレメントによれば、本発明の感光性樹脂組成物からなる感光層を備えることにより、十分な難燃性を有する硬化膜を高解像度で効率よく形成することが可能となり、更に部品実装時の反り、反発を低減することが可能となる。
【0020】
また、本発明により形成できる感光性エレメントによれば、ハロゲン系化合物やアンチモン系化合物を用いることなく十分な難燃性を有することから、低環境負荷、低毒性、高解像度のプリント配線板の効率的な生産が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、特に現像までの工程において作業性に優れ、アルカリ現像性、難燃性、及び可とう性に優れた硬化膜を高解像度で効率よく形成できる感光性樹脂組成物及びそれを用いたプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
【0023】
[感光性樹脂組成物]
先ず、本発明の感光性樹脂組成物について説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物、(B)エチレン性不飽和基を有する重合性モノマー、(C)光重合開始剤、(D)リン含有化合物、及び(E)熱硬化剤を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(A)ポリウレタン化合物は、二重結合当量が600〜2000g/molであり、重量平均分子量が8000〜16000である。
【0024】
以下、本発明の感光性樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
<(A)成分>
(A)成分は、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物であり、二重結合当量が600〜2000g/molであり、重量平均分子量が8000〜16000である。(A)成分としては、例えば、(a)ジグリシジル化合物及び(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物と、(b)ジイソシアネート化合物と、(c)カルボキシル基を有するジオール化合物と、を反応させて得られるポリウレタン化合物を用いることができる。
【0025】
上記ポリウレタン化合物は、エチレン性不飽和基及び2つ以上の水酸基を有するエポキシアクリレート化合物(以下、「原料エポキシアクリレート」という)、ジイソシアネート化合物(以下、「原料ジイソシアネート」という)及び、ジオール化合物(以下、「原料ジオール」という)を原料成分として得られる。まず、これらの原料成分について説明する。
【0026】
原料エポキシアクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物等に(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物等が挙げられる。
【0027】
原料ジイソシアネートとしては、イソシアナト基を2つ有する化合物であれば特に制限なく適用できる。ジイソシアネート化合物としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、アリレンスルホンエーテルジイソシアネート、アリルシアンジイソシアネート、N−アシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルナン−ジイソシアネートメチル等が挙げられる。
【0028】
原料ジオールは、分子内に、水酸基を2つ有するとともに、カルボキシル基を有している化合物である。水酸基としては、イソシアネートとの反応性の高いアルコール性水酸基であることが好ましい。このようなジオール化合物としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が例示できる。
【0029】
また、原料ジオールとして上記以外のジオール化合物をさらに組み合わせて適用することも可能である。上記以外のジオール化合物を組み合わせることで、(A)成分の酸価や二重結合当量を容易に調節することが可能である。
【0030】
次に、上述した原料成分を用いてポリウレタン化合物を製造する工程の例について説明する。
【0031】
すなわち、ポリウレタン化合物の製造工程では、まず、原料エポキシアクリレート及び原料ジオールを、原料ジイソシアネートと反応させる。かかる反応においては、主に、原料エポキシアクリレートにおける水酸基と原料ジイソシアネートにおけるイソシアナト基との間、及び、原料ジオールにおける水酸基と原料ジイソシアネートにおけるイソシアナト基との間で、いわゆるウレタン化反応が生じる。この反応により、例えば、原料エポキシアクリレートに由来する構造単位と、原料ジオールに由来する構造単位とが、原料ジイソシアネートに由来する構造単位を介して交互に又はブロック的に重合されたような中間体が生じる。
【0032】
次に、このような中間体と原料エポキシとを反応させて、ポリウレタン化合物を得る。この反応では、主に中間体におけるジオール化合物に由来するカルボキシル基と、原料エポキシの有するエポキシ基との間でいわゆるエポキシカルボキシレート化反応が生じる。このようにして得られるポリウレタン化合物は、例えば、上述した中間体から形成される主鎖と、原料エポキシアクリレートや原料エポキシに由来するエチレン性不飽和基を含む側鎖とを備えるものとなる。
【0033】
上述したポリウレタン化合物の製造工程では、中間体を得る工程において、原料エポキシアクリレート、原料ジオール及び原料ジイソシアネート以外に、これらとは異なるジオール化合物を更に添加してもよい。これにより、得られるポリウレタン化合物の主鎖構造を変えることが可能となり、後述する酸価等の特性を所望の範囲に調整できる。また、上述した各工程では、適宜、触媒等を用いてもよい。
【0034】
上述のポリウレタン化合物としては、例えば、下記一般式(2)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0035】
【化2】

【0036】
式中、R11は原料エポキシアクリレートの残基を示し、R12は原料イソシアネートの残基を示し、R13は、炭素数1〜5のアルキル基を示し、R14は水素原子又はメチル基を示す。なお、残基とは、原料成分から結合に供された官能基を除いた部分の構造をいう。具体的には、R11としては、例えば、ビス(4−オキシフェニル)−メタン、2,2−ビス(4−オキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(4−オキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビスフェノールA型及びビスフェノールF型骨格,ノボラック骨格、フルオレン骨格が挙げられ、R12としては、例えば、フェニレン、トリレン、キシリレン、テトラメチルキシリレン、ジフェニルメチレン、ヘキサメチレン、トリメチルヘキサメチレン、ジシクロヘキシルメチレン、イソホロンが挙げられる。また、炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、アミル基等が挙げられる。
【0037】
上記一般式(2)のような構造を有するポリウレタン化合物を感光性樹脂組成物に含有させることによって、アルカリ現像性、難燃性、可とう性(耐折曲げ性・低反り・低反発力)をより向上することができる。
【0038】
(A)成分の二重結合当量は600〜2000g/molであり、650〜1500g/molであることが好ましく、700〜1200g/molであることがより好ましい。(A)成分の二重結合当量が600g/mol以上であることで、可とう性に優れた感光性樹脂組成物の硬化膜が得られ、2000g/mol以下であることで、絶縁信頼性に優れた感光性樹脂組成物の硬化膜が得られる。
【0039】
(A)成分の二重結合当量は、炭素−炭素二重結合1molに対して必要な樹脂のg数により求めることができる。
(A)成分の二重結合当量は、下記方法で測定したヨウ素値の値により求めることができる。
<ヨウ素価の測定方法>
ポリウレタン化合物を0.25〜0.35gの範囲で精秤し、200mlのフラスコに入れ、30mlのクロロホルムを添加して試料を完全に溶解する。該溶液に、Wijs試薬(三塩化ヨウ素7.9g及びヨウ素8.2gを、それぞれ200〜300ml氷酢酸に溶解後、両液を混合して1lとする)をホールピペットで正確に20ml加え、次いで2.5%酢酸第二水銀氷酢酸溶液10mlを添加後、20分間暗所に放置して反応を完結させる。上記溶液に新しく調製した20質量%KI溶液を5ml添加し、1質量%澱粉溶液を指示薬として用い、0.1N−Na標準液で滴定する。同時に空試験も行って、以下の式によりヨウ素価Yを計算し、ヨウ素価より二重結合当量を測定した。
ヨウ素価Y(g/100g)=(A−B)×f×127×100/S
二重結合当量(g/mol)=100×254/Y
A:空試験に要した0.1N−Na標準液のml数
B:本試験に要した0.1N−Na標準液のml数
f:0.1N−Na標準液の力価
S:試料のg数
【0040】
(A)成分の酸価は、25〜100mgKOH/gであることが好ましく、45〜90mgKOH/gであることがより好ましく、55〜80mgKOH/gであることがさらに好ましい。(A)成分の酸価が25mgKOH/g以上であることで、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液による現像性が良好となり、優れた解像度が得られ易くなり、酸価が100mgKOH/g以下であることで、可とう性に優れた感光性樹脂組成物の硬化膜が得られる易くなる。
【0041】
(A)成分の酸価は、以下の方法により測定することができる。まず、(A)成分としての樹脂溶液約1gを精秤した後、その樹脂溶液にアセトンを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、滴定結果より下記式(3)により酸価を算出する(式中、VfはKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは(A)成分としての樹脂溶液の質量(g)を示し、Iは(A)成分としての樹脂溶液の不揮発分の割合(質量%)を示す。)。
酸価(mgKOH/g)=10×Vf×56.1/(Wp×I) (3)
【0042】
(A)成分の重量平均分子量は、感光性樹脂組成物の成膜性、硬化膜の耐クラック性及び耐HAST性を向上する観点から、8000〜16000であるが、8500〜15500であることがより好ましく、9000〜15000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が8000より大きいことで、印刷・乾燥後の感光性樹脂組成物のベタつきが少なくなり、装置への樹脂組成物の付着による汚染や、異物の不着による感光層表面の汚染を発生しづらくすることができる。また、重量平均分子量が16000より小さいことで、樹脂組成物のスクリーン印刷時の版離れが良くなるとともに、希アルカリ水溶液による現像を可能にすることができる。
【0043】
(A)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値により求めることができる。なお、GPCにおける測定の条件は以下のとおりである。
カラム:Gelpack GL−R440+GL−R450+GL−R400M
流量:2.05mL/min
濃度:120mg/5mL
注入量:200μL
溶離液:THF
【0044】
(A)成分としては、市販のものを利用することができ、例えば、UXE−3061、UXE−3063、UXE−3064、UXE−3073(商品名、日本化薬株式会社製)等が購入可能である。
【0045】
感光性樹脂組成物から形成される硬化膜の難燃性及び可とう性を良好に発現する観点から、感光性樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、5〜90質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。(A)成分の含有量が5質量%より少ないと、難燃性が低下する傾向があり、90質量%より多いと、希アルカリ水溶液による現像性に劣る傾向がある。
【0046】
<(B)成分>
(B)成分であるエチレン性不飽和基を有する重合性モノマーの具体例としては、例えば、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物;多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーが挙げられ、これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレン(メタ)アクリレート;γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β′−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が例示可能である。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
上記の中でも、密着性及び解像性に優れる点では、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0048】
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートプロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
なお、「EO」とは「エチレンオキシド」のことをいい、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことをいう。また、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CHCHO−)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CHCH(CH)O−、−CH(CH)CHO−)のブロック構造を有することを意味する。
【0050】
グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート及び2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニル等が挙げられる。上記のα,β−不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
ウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO又はPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
(B)成分の含有量は、解像性及び難燃性の観点から、感光性樹脂組成物中の(B)成分の含有量が、5〜90質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。(B)成分の含有量が5質量%より少ない場合は実装時の反り、反発性が劣る傾向があり、90質量%より多い場合は難燃性が低下する傾向がある。
【0054】
<(C)成分>
本実施形態の(C)成分である光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N′−テトラアルキル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等などが挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
本実施形態に係る(C)成分は、感度及び解像度を良好にする観点から、芳香族ケトンを含有することが好ましく、中でもα-アミノアルキルフェノン化合物を含むことが好ましい。α-アミノアルキルフェノン化合物としては、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1が挙げられる。
【0056】
(C)成分の含有量は、光感度の観点から、感光性樹脂組成物中の(C)成分の含有量が、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがより好ましい。
【0057】
<(D)成分>
(D)成分である、リン含有有化合物は、下記一般式(1)で示されるホスフィン酸塩であると好ましい。
【0058】
【化3】

[一般式(1)中、A及びBは各々独立に、直鎖状の若しくは枝分かれした炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基を示し、MはMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na及びKからなる群より選択される金属類の少なくとも1種であり、mは1〜4の整数である。]
A、Bの具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第三−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基等が挙げられる。
【0059】
またホスフィン酸塩の80質量%以上は、感光性樹脂組成物及び、感光性エレメントに用いた際の信頼性の見地から、ホスフィン酸塩の粒子の粒度が10μm以下であることが好ましく、5μm以下であるとさらに好ましく、3μm以下であると特に好ましい。この粒子の粒度が10μmを超えると、感光性樹脂組成物の塗膜外観が悪くなる傾向があり、高解像度のプリント配線板の製造が困難になる傾向がある。
【0060】
(D)成分は、感光性樹脂組成物中のリン含有量が1.5〜5.0質量%の範囲になるように含有させることが好ましい。ホスフィン酸塩は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
ホスフィン酸塩は購入することもでき、例えば、EXOLIT OP 930、EXOLIT OP 935、EXOLIT OP 940(いずれもクラリアントジャパン株式会社製、商品名)を用いることもできる。
【0062】
<(E)成分>
(E)成分である熱硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性の化合物などが挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型三級脂肪酸変性ポリオールエポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のジグリシジルエステル類、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン等のジグリシジルアミン類等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用して使用してもよい。
【0063】
また(E)成分である熱硬化剤として、潜在性の熱硬化剤であるブロックイソシアネート化合物を用いることもできる。ブロックイソシアネート化合物としては、例えば、アルコール化合物、フェノール化合物、ε−カプロラクタム、オキシム化合物、活性メチレン化合物等のブロック剤によりブロック化されたポリイソシアネート化合物が挙げられる。ブロック化されるポリイソシアネート化合物としては、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられ、耐熱性の観点からは芳香族ポリイソシアネートが、着色防止の観点からは脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが好ましい。
【0064】
(E)成分の含有量は、難燃性及び絶縁信頼性の観点から、感光性樹脂組成物中の(E)成分の含有量が、10〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。
【0065】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、マラカイトグリーン等の染料、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤若しくはp−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系、アゾ系等の有機顔料若しくは二酸化チタン等の無機顔料、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム若しくは硫酸バリウム等の無機顔料からなる充填剤、消泡剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、酸化防止剤、香料或いはイメージング剤などを含有させることができる。これらの成分は、感光性樹脂組成物中の含有量として、各々0.01〜20質量%程度含有させることが好ましい。また、上記の成分は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
更に、本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解し、固形分30〜70質量%程度の溶液として塗布することができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜4、比較例1〜3)
表1に示す各成分をそこに示す固形分の配合比(質量基準)で混合することにより感光性樹脂組成物溶液を得た。
【0068】
なお、表1中の各成分は下記の通りである。
(A-1)成分:ポリウレタン化合物UXE-3061(日本化薬株式会社製、酸価60mgKOH/g、二重結合当量700g/mol、重量平均分子量15000)
(A-2)成分:ポリウレタン化合物UXE-3063(日本化薬株式会社製、酸価60mgKOH/g、二重結合当量900g/mol、重量平均分子量9000)
(A-3)成分:ポリウレタン化合物UXE−3064(日本化薬株式会社製、酸価60mgKOH/g、二重結合当量1300g/mol、重量平均分子量10000)
(A-4)成分:ポリウレタン化合物UXE−3073(日本化薬株式会社製、酸価60mgKOH/g、二重結合当量900g/mol、重量平均分子量13000)
以上(A-1)〜(A-4)成分は(A)成分に相当する。
【0069】
(A-5)成分:ポリウレタン化合物UXE−3044(日本化薬株式会社製、酸価60mgKOH/g、二重結合当量550g/mol)、重量平均分子量10000)
(A-6)成分:ポリウレタン化合物UXE−3065(日本化薬株式会社製、酸価60mgKOH/g、二重結合当量3000g/mol、重量平均分子量13000)
(A-7)成分:ポリウレタン化合物UXE−3067(日本化薬株式会社製、酸価60mgKOH/g、二重結合当量1000g/mol、重量平均分子量17000)
以上(A-5)〜(A-7)はポリウレタン樹脂ではあるが、二重結合当量又は重量平均分子量が規定値内から外れている。
(B-1)成分:エチレンオキサイド変性ビスフェノールAのメタクリル酸エステル(FA-321M、日立化成工業株式会社製)
(C-1)成分:チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製、商品名I−907)
(D-1)成分:ホスフィン酸塩(クラリアントジャパン株式会社製、商品名「EXOLIT OP 935」、リン含有量=23質量%)
(E-1)成分:YDPF-1000S(東都化成株式会社製、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、固形タイプ)
【0070】
【表1】

注)表1中の値は、各成分の固形分の配合比である。また、表中記号「−」は、該当する成分を含有していないことを示す。
【0071】
[評価基板の作製及び版離れ性の評価]
得られた感光性樹脂組成物溶液を銅張積層板(新日鐵化学株式会社製、エスパネックスMBシリーズ)上にそれぞれ別に均一に塗布することにより感光性樹脂組成物層を形成した。印刷はスクリーン印刷機(株式会社セリテック製、SS1520)を使用して、印刷速度(スキージ走行速度)200mm/秒にて、スクリーン版(メッシュ120、材質ポリエステル、印刷範囲110mm角)と銅張積層板とのギャップ(クリアランス)1mmで行った。版離れ性の評価は、スキージ通過後1秒未満で版離れした場合は版離れ性「○」とし、版離れに1秒以上要した場合を「×」として評価した。印刷後、熱風対流式乾燥機を用いて80℃で約20分間乾燥した。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、15μmであった。得られた基板を評価基板とした。
【0072】
[感光層のべたつき性評価]
上述の乾燥後の評価基板2枚の感光層形成面同士を合わせて重ね、そのまま平置きして1分間放置し、その後2枚の基板を分けた。このとき感光層の一部がもう一枚の基板に転写しないものを感光層のべたつき性「○」とし、もう一枚に転写して感光層にキズがつくものを感光層のべたつき性「×」として評価した。
【0073】
[光感度の評価]
得られた上記評価基板上に、ネガとしてストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールを密着させ、株式会社オーク製作所製HMW−201GX型露光機を使用して、該ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を15秒間スプレーして現像を行い、80℃で10分間加熱(乾燥)した。光感度を評価する数値として、上記エネルギー量を用いた。この数値が低いほど、光感度が高いことを示す。結果を表2に示した。
【0074】
[解像度の評価]
ストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールと、解像度評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が30/30〜200/200(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールとを評価用積層体上に密着させ、上述した露光機を用いて、ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を15秒間スプレーして現像を行い、80℃で10分間加熱(乾燥)した。ここで、解像度は、現像処理によって矩形のレジスト形状が得られたライン幅間のスペース幅の最も小さい値(単位:μm)により評価した。この値が小さいほど、解像度に優れていることを示す。結果を表2に示した。
【0075】
[評価用FPCの作製]
評価基板上に、ストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールと、カバーレイの信頼性評価用ネガとして配線パターンを有するフォトツールとを密着させ、上述した露光機を使用して、該ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った後、光感度評価の場合と同様の現像液及び現像条件でスプレー現像を行い、80℃で10分間加熱(乾燥)した。更に160℃で60分間加熱処理を行うことにより、カバーレイを形成した評価用FPCを得た。
【0076】
[可撓性(耐折性)の評価]
上述のようにして得られたカバーレイを形成した評価用FPCを、ハゼ折りにより180°折り曲げを繰り返して行い、その際のカバーレイにおけるクラックが発生するまでの回数を顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。すなわち、5回以上折り曲げてもカバーレイにクラックが認められないものは「A」とし、クラックが発生するまでの回数が2回以上で5回未満のものは「B」とし、クラックが発生するまでの回数が2回未満のものは「C」とした。結果を表2に示した。
【0077】
[難燃性の評価]
上述したカバーレイを形成した評価用FPCについて、UL94規格に準拠した薄材垂直燃焼試験を行った。評価はUL94規格に基づいて、VTM−0、VTM−1又はVTM−2で評価した。結果を表2に示した。なお、表2中「燃焼」とは、燃焼試験において難燃性評価用サンプルがVTM−0、VTM−1、VTM−2に該当せず全焼したことを示す。
【0078】
[反りの評価]
上述のようにして得られたカバーレイを形成した評価用FPCを、一定のサイズへカットし、260℃のホットプレート上へ60秒放置した後の反りを評価した。反りが3mm以下のものは「A」とし、3〜10mmのものは「B」、円筒状になるものは「C」として評価した。
【0079】
[反発性(スティフネス性)の評価]
同様にして得られたカバーレイを形成したFPCを、ガーレー式スティフネステスターを用い反発性(スティフネス性)の評価を実施した。数値が小さいほど低反発となる。
【0080】
「耐めっき性の評価」
上記カバーレイを形成した評価用FPCに対し、無電解ニッケルめっき(上村工業株式会社製、商品名ニムデンNPR−4)を施し(15分間処理)、更に無電解金めっき(上村工業株式会社製、商品名ゴブライトTAM−54)を施した(10分間処理)。
【0081】
このようにしてめっきが施された評価用基板に対し、カバーレイ底部へのめっき液の染み込み、並びに、基板からのカバーレイの浮き及び剥離を100倍の金属顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。すなわち、カバーレイ底部への染み込みが認められず、カバーレイの浮き及び剥離も認められないものは「A」とし、それらのいずれかが認められるものは「C」とした。また、カバーレイ底部へ僅かに染み込みが認められるものの実用上全く問題ないものは実施例間での差を明らかにするために「B」として評価した。
【0082】
「はんだ耐熱性の評価(耐はんだ性)」
上記「耐めっき性」試験と同様にして得られたカバーレイを有する評価用基板を用い、以下のようにしてはんだ耐熱性の評価を行った。すなわち、評価用基板に対し、ロジン系フラックス(タムラ化研株式会社製、商品名MH−820V)を塗布した後、288℃のはんだ浴中に10秒間浸漬するはんだ処理を行った。
【0083】
このようにしてはんだめっきを施した評価用基板上のカバーレイのクラック発生状況、並びに、基板からのカバーレイの浮き程度及び剥離を100倍の金属顕微鏡により観察した。その結果を、次の基準で評価した。すなわち、カバーレイのクラックの発生が認められず、カバーレイの浮き及び剥離も認められないものは「A」とし、それらのいずれかが認められるものは「C」とした。
【0084】
「HAST耐性の評価(耐HAST性)」
12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(日立化成工業株式会社製、商品名E−679)の銅表面を、エッチングによりライン/スペースが50μm/50μmのくし型電極に加工した。これを、評価用配線板とした。
【0085】
この評価用配線板におけるくし型電極上に、上記「耐めっき性」試験と同様にしてレジストの硬化物からなるカバーレイを形成し、これを評価用基板とした。この評価用基板を、130℃、85%RH、6Vの条件で超加速高温高湿寿命試験(HAST)槽内に100時間晒した。試験後、各評価用基板におけるマイグレーションの発生の程度を、100倍の金属顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。すなわち、カバーレイに大きなマイグレーションが発生しなかったものは「A」とし、大きくマイグレーションが発生したものは「C」とした。マイグレーションとは、銅電極からソルダーレジストへ銅が溶出し、析出することにより、電極周辺のソルダーレジストの変色や絶縁抵抗の低下が起こる現象である。
【0086】
【表2】

【0087】
表2から明らかなように、(A)成分のポリウレタン化合物中の二重結合当量が600〜2000g/molで、重量平均分子量が8000〜16000である実施例1、2、3及び4の感光性樹脂組成物によれば、作業性が良好となり、十分な光感度及び解像度が得られることが確認された。また、実施例1、2、3及び4の感光性樹脂組成物から形成された硬化膜を備える積層板は、十分な難燃性(VTM−0)、耐めっき性、はんだ耐熱性、耐HAST性を有していることが確認された。更に、実施例1、2、3及び4の感光性樹脂組成物から形成された硬化膜は、良好な低反り、低反発性を有していることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有するポリウレタン化合物、
(B)エチレン性不飽和基を有する重合性モノマー、
(C)光重合開始剤、
(D)リン含有化合物、及び
(E)熱硬化剤を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(A)ポリウレタン化合物は、二重結合当量が600〜2000g/molであり、重量平均分子量が8000〜16000である、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ポリウレタン化合物の酸価が、25〜100mgKOH/gである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)リン含有化合物が、下記一般式(1)で示されるホスフィン酸塩を含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

[一般式(1)中、A及びBは各々独立に、直鎖状の若しくは枝分かれした炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基を示し、MはMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na及びKからなる群より選択される金属類の少なくとも1種であり、mは1〜4の整数である。]
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を基板上に形成する形成工程と、
前記感光性樹脂組成物層に活性光線を画像状に照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、
前記感光性樹脂組成物層の前記露光部以外の部分を現像により除去する現像工程と、
を有するレジストパターンの形成方法。
【請求項5】
請求項4に記載のレジストパターンの形成方法により、基板上に永久マスクを形成する工程を有する、プリント配線板の製造方法。

【公開番号】特開2012−220667(P2012−220667A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85350(P2011−85350)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】