説明

感光性樹脂組成物及びそれを用いた回路基板

【課題】従来の感光性樹脂組成物では困難であった、光塩基発生剤による副生成物がなく、さらに高温キュアの必要がないアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物及びそれを用いた回路基板を提供すること。
【解決手段】本発明の感光性樹脂組成物は、光塩基発生剤(A)とポリアミド酸(B)とを含有する感光性樹脂組成物であって、前記光塩基発生剤は、式(1)で表わされる光による解裂部位を環状構造内に含む環状化合物を含有することを特徴とする。
【化1】


(式中、X1はアリーレン基であり、nは0〜3の整数を表す。Rは芳香族基または炭素数が2〜50のアルキル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光塩基発生剤を用いた新規な感光性樹脂組成物及びそれを用いた回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、高い絶縁性、耐熱耐寒性、高強度などの優れた特性に基づいて様々な分野で応用されている。近年、伸長著しいフレキシブルプリント配線板(以下、FPCと省略する)においては、ポリイミドが基材、カバーレイとして用いられている。近年のIC実装技術の高度化や高密度化とあいまってFPCも配線の微細化が求められており、ポリイミドを用いたカバーレイにも高度な加工性が求められている。
【0003】
FPCの製造においては、ポリイミド基材を機械的に打ち抜き、位置合わせを行って貼り合わせを行うので、位置合わせ精度を高くできないという問題があった。これを解決すべく、アクリレート樹脂やエポキシ樹脂を用いたソルダレジストフィルムをベースにした感光性フィルムの検討がなされてきたが、可撓性などの物性面でポリイミドには及ばなかった(例えば、特許文献1〜3)。
【0004】
また、感光基を側鎖に有するポリアミド酸エステルを用いた感光性樹脂組成物の提案もあるが、この場合は現像後に300℃〜450℃程度で高温キュアして側鎖の感光基を分解し、イミド化する必要がある(例えば、特許文献4)。これらの感光性ポリアミド酸エステルは、FPCのカバーレイとして用いる場合は高温でのキュアが回路基板を傷める懸念がある。
【0005】
光塩基発生剤を用いた感光性ポリアミド酸としては、光塩基発生剤としてニトロベンジルカルバメートを用いたポジ型の感光性樹脂組成物や、アシルオキシイミノ基を有する光塩基発生剤を用いたネガ型の感光性樹脂組成物の提案がある(例えば、特許文献5,6)。
【0006】
しかしながら、従来知られている非環状型の光塩基発生剤は光開裂後、ラジカル種が2つの分子に分かれて存在するため、ラジカル種同士が拡散し、再カップリングの確率を低下させ、塩基発生効率が低下する。このため樹脂100質量部に対して光塩基発生剤を100質量部程度添加することが必要であり、膜の機械物性が悪化する懸念がある。また、アミンと共にアルデヒド化合物やケトン化合物の副生成物が完全に離れた分子として生成する。生成した副生成物は、ネガ型フォトリソグラフィーのプロセスにおいては、現像液に溶出して膜減りの要因となる懸念がある。また、副生成物の揮発性が高い場合、臭気を伴うこと及びフォトリソグラフィーの光学系を汚染する懸念がある。かかる点に鑑みて、副生成物を伴わない分子設計を行った、環状型の光塩基発生剤(例えば、特許文献7)の提案があるが、これらは必ずしも耐熱安定性を満たし得るものではなく、感光性樹脂組成物からなるフィルムを感光性カバーレイとしてもちいる際のフィルムの機械物性に懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭56−6498号公報
【特許文献2】特開昭61−243869号公報
【特許文献3】特開平6−332171号公報
【特許文献4】特開2001−194783号公報
【特許文献5】特許第3363580号公報
【特許文献6】特開平6−295063号公報
【特許文献7】特開2008−003581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされるものであり、光塩基発生剤の耐熱安定性を改善することにより、従来の感光性樹脂組成物では困難であった、フィルムの機械物性を向上した感光性樹脂組成物及びそれを用いた回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の感光性樹脂組成物は、光塩基発生剤(A)とポリアミド酸(B)とを含有する感光性樹脂組成物であって、前記光塩基発生剤は、式(1)で表されるアシルオキシイミノ基を含有する化合物であることを特徴とする。
【0010】
【化1】

(式中、X1はアリーレン基であり、nは0〜3の整数を表す。Rは芳香族基または炭素数が2以上のアルキル基である。)
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記光塩基発生剤が、式(1)で表されるアシルオキシイミノ基を含有する化合物であり、該化合物が式(2)または式(3)で表されることが好ましい。
【0012】
【化2】

(式中、nは0〜3の整数を表す。Rは芳香族基または炭素数が2以上のアルキル基である。)
【0013】
【化3】

(式中、nは0〜3の整数を表す。Rは芳香族基または炭素数が2以上のアルキル基である。)
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記ポリアミド酸が式(4)で表されるジアミンを用いて得られるポリアミド酸であることが好ましい。
【0015】
【化4】

(式中Rは炭素数が1〜50の2価の有機基である。kは1〜50の数を表す。)
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物においては、ポリアミド酸が、更に式(5)で表される酸二無水物を用いて得られるポリアミド酸であることが好ましい。
【0017】
【化5】

(式中lは1〜20の数を表す。mは2〜50の整数を表す。)
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記ポリアミド酸が、更に式(6)で表されるジアミンを用いて得られるポリアミド酸であることが好ましい。
【0019】
【化6】

(式中、Zは2価の有機基であり、式(7)に示す有機基から選ばれる。)
【0020】
【化7】

(式中pは3から5の整数を表す。)
【0021】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記ポリアミド酸が更に、オキシジフタル酸二無水物を用いて得られるポリアミド酸であることが好ましい。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物においては、さらに光増感剤(C)を含有することが好ましい。
【0023】
本発明の感光性樹脂組成物においては、さらに難燃剤(D)を含有することが好ましい。
【0024】
本発明の感光性樹脂組成物においては、さらに可塑剤(E)を含有することが好ましい。
【0025】
本発明の感光性フィルムは、上記感光性樹脂組成物で構成されたことを特徴とする。
【0026】
本発明の積層フィルムは、キャリアフィルムと、前記キャリアフィルム上に設けられた上記感光性フィルムと、を具備することを特徴とする。
【0027】
本発明の積層フィルムにおいては、前記感光性フィルム上に形成されたカバーフィルムを具備することが好ましい。
【0028】
本発明の回路基板は、配線を有する基材と、上記感光性フィルム、又は上記積層フィルムを用いて構成されたカバーレイとを具備することを特徴とする。
【0029】
本発明の回路基板の製造方法は、上記感光性樹脂組成物を用いて、少なくとも配線を有する基材上に樹脂組成物層を形成する工程と、前記樹脂組成物層にパターン露光を行う工程と、前記パターン露光後の樹脂組成物層に対してアルカリ水溶液を用いて現像処理を行う工程と、現像処理後の樹脂組成物層をキュアする工程と、を具備することを特徴とする。
【0030】
本発明の回路基板の製造方法においては、少なくとも、上記感光性フィルム、又は上記積層フィルムのいずれかを配線を有する基材上にラミネートして樹脂組成物層を形成する工程と、前記樹脂組成物層にパターン露光を行う工程と、前記パターン露光後の樹脂組成物層に対してアルカリ水溶液を用いて現像処理を行う工程と、現像処理後の樹脂組成物層をキュアする工程と、を具備することが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の感光性樹脂組成物は、光による解裂部位を環状構造内に含む環状化合物を含有する光塩基発生剤(A)を含有するので、副生成物として生成するケトンが遊離しないアルカリ可溶な感光性ポリアミド酸樹脂組成物を提供することができる。さらに該環状構造内にアリーレン基を含有し、環状構造外の置換基に芳香族基または炭素数が2以上のアルキル基を導入する為、耐熱安定性が改善する。これらの光塩基発生剤の分子設計により、従来の光塩基発生剤では困難であったフィルムの機械物性を向上した感光性樹脂組成物及びそれを用いた回路基板を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係る光塩基発生剤(A)は、波長が200nm〜500nmの光に対して良好に分解し、塩基を発生することができる。その際、本発明に係る光塩基発生剤は、アシルオキシイミノ基が環状構造に含まれているため、光解裂反応で生成するラジカル種同士が共有結合で結ばれており、副生成物が生成しない。さらに、本発明係る光塩基発生剤は、光による開裂後発生するラジカル種同士が共有結合で結ばれているため、ラジカル再カップリングの効率が非環状型の光塩基発生剤より高く、それにより塩基の発生効率を向上させることが可能である。
【0033】
本発明における光塩基発生剤は、式(1)で表されるアシルオキシイミノ基を含有する化合物である。
【0034】
【化8】

(式中、X1はアリーレン基であり、nは0〜3の整数を表す。Rは芳香族基または炭素数が2以上のアルキル基である。)
【0035】
本発明における光塩基発生剤は、環状構造内にアリーレン基を含有するので、熱分解性が改善する。これは環状構造にアリーレン基を導入することにより、熱運動が抑制される為であると推定される。
【0036】
式(1)中、Xで示されるアリーレン基とは特に制限はないが、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、などが挙げられる。これらの基は光吸収の観点から好ましい。式(1)中、nは、光塩基発生剤は光による開裂後のラジカルカップリング効率の観点から、0〜3が好ましい。また、式(1)中、Rは芳香族基または炭素数が2以上のアルキル基であり、これらの中でも芳香族基または炭素数2〜50のアルキル基であることが好ましい。
【0037】
光塩基発生剤は環状構造外の置換基Rに芳香族基または炭素数が2以上のアルキル基を導入する為、熱飛散性が低減する。これは嵩高い芳香族基または炭素数が2以上のアルキル基が、分子の揮発を妨げることによると推定される。
【0038】
芳香族基とは、例えば、フェニル基やナフチル基などである。これらは置換基を有していても良い。芳香族基が有していても良い置換基とは例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、フェノキシ基、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基などが挙げられる。これら置換基はポリマーワニスへの溶解性向上に寄与する。
【0039】
炭素数が2以上のアルキル基とは例えば、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、フェノキシ基、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−−ブトキシ基などが挙げられる。これらの炭素数が2以上のアルキル基は熱飛散性抑制の観点から好ましい。
【0040】
これらの置換基Rのなかで、アシルオキシイミノ基との共役を伸長する為、光分解性向上にも寄与する観点から、特に芳香族基が好ましい。
【0041】
式(1)で表されるアシルオキシイミノ基を含有する化合物のなかでも好ましくは式(2)、式(3)で表される化合物である。これらは耐熱安定性、光分解性の観点より好ましい。また、式(2)、式(3)中のRは、芳香族基または炭素数が2以上のアルキル基を表し、これらの中でも芳香族基または炭素数2〜50のアルキル基であることが好ましい。
【0042】
【化9】

(式中、nは0〜3の整数を表す。Rは芳香族基または炭素数が2以上のアルキル基である。)
【0043】
【化10】


(式中、nは0〜3の整数を表す。Rは芳香族基または炭素数が2以上のアルキル基である。)
【0044】
これら熱分解性の改善、及び熱飛散性の改善による熱安定性の向上はフィルムに現像処理後の加熱処理によるキュア(以下単にキュアと表記)を施した際にフィルムの物性低下を引き起こさない為好ましい。
【0045】
感光性樹脂組成物における光塩基発生剤の量は、感光性や硬化後の樹脂の機械的特性を考慮して、ポリアミド酸100質量部に対して1質量部〜50質量部配合することが好ましい。より好ましくは2質量部〜30質量部である。特に好ましくは3質量部〜20質量部である。
【0046】
本発明に係る感光性樹脂組成物においては、光塩基発生剤と公知の光塩基発生剤を併用しても良い。公知の光塩基発生剤とは、例えば、非環状のアシルオキシイミノ化合物、非環状のカルバモイルオキシム化合物、カルバモイルヒドロキシルアミン化合物、カルバミン酸化合物、ホルムアミド化合物、アセトアミド化合物、カルバメート化合物、ベンジルカルバメート化合物、ニトロベンジルカルバメート化合物、スルホンアミド化合物、イミダゾール誘導体化合物、アミンイミド化合物、ピリジン誘導体化合物、α−アミノアセトフェノン誘導体化合物、4級アンモニウム塩誘導体化合物、α−ラクトン環誘導体化合物、アミンイミド化合物、フタルイミド誘導体化合物などを用いることができる。なかでも比較的アミンの発生効率が高いアシルオキシイミノ化合物が好ましい。公知の光塩基発生剤の添加については少ない方が好ましい。
【0047】
次に、ポリアミド酸(B)について説明する。本発明に係るポリアミド酸について特に制限はなく、公知のポリアミド酸を用いることができる。ポリアミド酸は例えば、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを原料として得ることができる。
【0048】
本発明に係るポリアミド酸は、基板の低反り性の観点から特にジアミンとして式(4)で示されるジアミンを用いて合成する事が好ましい。
【0049】
【化11】

(式中Rは炭素数が1〜50の2価の有機基である。kは1〜50の数を表す。)
【0050】
一般式(4)で表されるジアミンは両末端にo−、m−、p−アミノ安息香酸エステル基を持つジアミンであれば、特に限定はないが、両末端が、p−アミノ安息香酸エステル基のものがより好ましい。式(4)中、kは1〜50の数であり、より好ましくは、kは3〜25の数である。式(4)中、Rは炭素数1〜50の2価の有機基である。具体的には、Rは式(8)で表される2価の有機基であることが好ましい。
【0051】
【化12】

式(4)で表されるジアミンの具体例としては、例えばポリテトラメチレンオキシド−ジ−o−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−m−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−o−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−m−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート等が挙げられるが、これらに限定されない。ジアミンを2種以上、使用しても良い。好ましくは、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエートである。
【0052】
本発明に係るポリアミド酸は、式(4)で表されるジアミンを、全ジアミンに対して10モル%〜55モル%含むことが好ましい。より好ましくは15モル%〜50モル%である。式(4)で表わされるジアミンの含有量が全ジアミンに対して15モル%以上であれば、低反り、低反発性に優れる。
【0053】
式(4)で表されるジアミン以外に本発明で使用できる他のジアミンとしては例えば、例えば、式(6)に示すジアミンがアルカリ溶解性、低反り性の観点から好ましい。
【0054】
【化13】

(式中、Zは2価の有機基であり、式(7)に示す有機基から選ばれる。)
【0055】
【化14】

(式中pは3から5の整数を表す。)
【0056】
式(6)に示すジアミンとは、具体的には例えば、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、である。
【0057】
本発明に係るポリアミド酸は、式(6)で表されるジアミンを、全ジアミンに対して10モル%〜90モル%含むことが好ましい。より好ましくは20モル%〜85モル%である。式(6)で表わされるジアミンの含有量が全ジアミンに対して20モル%以上であれば、キュア後のフィルムの機械特性に優れる。
【0058】
これらジアミン以外に本発明で使用できる他のジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、カルボキシル基を有するジアミン、水酸基を有するジアミン、シロキサン骨格を有するジアミン、などが挙げられる。
【0059】
芳香族ジアミンとしては、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、が挙げられる。
【0060】
脂肪族ジアミンとしては、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカンが挙げられる。
【0061】
カルボキシル基を有するジアミンとしては、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジアミノ安息香酸が挙げられる。
【0062】
水酸基を有するジアミンとしては、1,2−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−5−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ジアミノ−6−ヒドロキシベンゼン、1,5−ジアミノ−6−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジアミノ−3,5−ジヒドロキシベンゼン、4−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、3−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、2−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)メタン、4−[(2,4−ジアミノ−5−ピリミジニル)メチル]フェノール、p−(3,6−ジアミノ−s−トリアジン−2−イル)フェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ジフルオロメタン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタンが挙げられる。
【0063】
これらのカルボキシル基または水酸基を有するジアミンはアルカリ溶解性向上の観点から用いることができる。
【0064】
シロキサン骨格を有するジアミンとしては、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサンなどが挙げられる。これらジアミンは単独、又は組み合わせて用いることができる。
【0065】
本発明に係るポリアミド酸は、基板の低反り性の観点から酸二無水物として特に式(5)で示される酸二無水物を用いる事が好ましい。
【0066】
【化15】

(式中lは1〜20の数を表す。mは2〜50の整数を表す。)
【0067】
具体的には、エチレングリコール−ビス−無水トリメリット酸エステル、1,3−プロパンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステル、ブタンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステル、ペンタンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステル、ヘプタンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステル、デカンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステルが挙げられる。これらは、2種以上混合して用いることも好ましい。好ましくは、エチレングリコール−ビス−無水トリメリット酸エステル、ペンタンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステル、デカンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステルである。より好ましくは、エチレングリコール−ビス−無水トリメリット酸エステルとペンタンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステルとの組み合わせ、又は、エチレングリコール−ビス−無水トリメリット酸エステルとデカンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステルとの組み合わせである。
【0068】
本発明に使用する酸二無水物として、式(5)以外の他の酸二無水物を用いることもでき、中でも、オキシジフタル酸二無水物が現像性を改善する観点から好ましい。
【0069】
これらの酸二無水物以外に本発明で使用できる他の酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0070】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物が挙げられる。
【0071】
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては例えば、1,5−シクロオクタジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,6−トリカルボン酸−2,3:5,6−二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物)スルホンが挙げられる。
【0072】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、などが挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物成分は、単独又は組み合わせて用いることができる。
【0073】
本発明に係るポリアミド酸は、前記ジアミンと前記テトラカルボン酸二無水物とを任意の溶媒中にて混合することにより合成し、ポリアミド酸溶液を得ることができる。本発明に係るポリアミド酸の製造方法は、公知方法を含め、ポリアミド酸を製造可能な方法が全て適用できる。中でも、有機溶媒中で反応を行うことが好ましい。このような反応において用いられる溶媒として、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、フェノール、クレゾールなどが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0074】
この反応における反応原料の濃度は、通常、2質量%〜50質量%、好ましくは5質量%〜40質量%である。
【0075】
反応温度は、通常、80℃以下、好ましくは70℃以下である。反応圧力は特に限定されず、常圧で十分実施できる。また、反応時間は反応原料の種類、溶媒の種類及び反応温度によって異なるが、通常0.5時間〜24時間で十分である。このような重縮合反応により、本発明に係るポリアミド酸が製造される。
【0076】
反応させる酸二無水物とジアミンとのモル比は、0.8〜1.2の範囲内である。この範囲内の場合、分子量を上げることができ、伸度等にも優れる。好ましくは0.9〜1.1である。
【0077】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、さらに光増感剤(C)を含んでいても良い。光増感剤を含むと、光塩基発生剤の分解が促進でき、露光量の低減に効果がある。光増感剤としては特に制限はなく、公知の光増感剤を用いることができる。例えば、アジドアントラキノン、アジドベンザルアセトフェノンなどの芳香族物アジド類;クマリン、ケトクマリン、3,3’−カルボニルビス(ジエチルアミノクマリン)などのクマリン化合物;ベンズアントロン、フェノントレンキノン、ベンジル、ベンゾフェノン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノンなどの芳香族ケトン類;N−フェニルジエタノ−ルアミン、N−フェニルグリシン、p−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、2,6−ジニトロ−4−ニトロアニリン、ミヒラ−ケトンなどの芳香族アミン類;チオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン化合物;アントラセン、ナフタレン、ジフェニル、p−ニトロジフェニルなどの芳香族炭化水素類;アントラキノン、ナフトキノン、ベンゾキノンなどのキノン類などである。
【0078】
この他、例えば特開平3−239703号公報、特開平5−289335号公報に記載された複素環を有するクマリン化合物;特開昭63−221110号公報に記載された3−ケトクマリン化合物;特開平4−221958号公報、特開平4−219756号公報に記載されたキサンテン色素;特開平6−19240号公報に記載されたピロメテン色素;特開昭47−2528号公報、特開昭54−155292号公報、特開昭56−166154号公報、特開昭59−56403号公報に記載された(p−ジアルキルアミノベンジリデン)ケトン、スチリル系色素;特開平6−295061号公報に記載されたジュロリジル基を有する増感色素;特開平11−326624号公報に記載されたジアミノベンゼン化合物などを挙げることができる。
【0079】
なかでも300nm〜450nm付近に吸収を持つ化合物が好ましく、具体的にはベンゾフェノン類、クマリン化合物、チオキサントン化合物、芳香族ケトン類、ミヒラーケトン類が好ましい。
【0080】
用いる光増感剤の量は特に制限はないが、感光性や硬化後の樹脂の機械的特性を考慮して、ポリアミド酸100質量部に対して1質量部〜50質量部配合することが好ましい。さらに好ましくは3質量部〜30質量部である。
【0081】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、さらに難燃剤(D)を含んでいても良い。本発明に係る感光性樹脂組成物は難燃剤成分の添加によって更に難燃性を高めることができる。難燃剤としては特に制限はなく、公知の難燃剤を用いることができる。
【0082】
難燃剤成分はリン系の難燃剤が好ましく、なかでもリン酸エステル化合物及び、又はホスファゼン化合物が、感光性樹脂組成物の柔軟性、屈曲性の観点より好ましい。リン酸エステル化合物もしくはホスファゼン化合物の中でも、耐熱安定性の観点より環状ホスファゼン化合物が更に好ましい。
【0083】
リン酸エステル化合物としては芳香族リン酸エステル又は、アルキルリン酸エステル又はアルコキシリン酸エステルが好ましい。
【0084】
芳香族リン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリイソプロピルフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(以下、「RDP」ともいう。)などが挙げられる。
【0085】
アルキルリン酸エステルとしては、例えば、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリイソブチルホスフェート(以下、「TIBP」ともいう。)、などが挙げられる。
【0086】
アルコキシリン酸エステルとしてはトリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリス(ブトキシブチル)ホスフェート(以下、「TBXP」ともいう。)、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェートなどが挙げられる。
【0087】
ホスファゼン化合物としては、耐熱安定性の観点より環状化合物が好ましい。例えば式(9)で示される化合物の中から選ばれる化合物が好ましい。
【0088】
【化16】

(式中、Xはそれぞれ3〜5の数を表す。)
【0089】
これらの難燃剤成分は単独又は組み合わせて用いることができる。
【0090】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、さらに可塑剤(E)を含んでいても良い。本発明に係る感光性樹脂組成物は可塑剤成分の添加によって更に低反り性を高めることができる。
【0091】
可塑剤としては特に制限はないが、低反り性の観点から、エチレングリコール鎖及び/又はプロピレングリコール鎖を含む可塑剤が好ましい。更に好ましくは難燃性の観点からエチレングリコール鎖及び/又はプロピレングリコール鎖を有しイソシアヌル酸環有する化合物である。例えば式(10)に示す化合物などが挙げられる。
【0092】
【化17】

(式中Rはエチレングリコール鎖及び/又はプロピレングリコール鎖を含む有機基である。)
【0093】
として、具体的に例えば式(11)で示される有機基が好ましい。
【0094】
【化18】

(式中、式中n’は2〜8の数を表す。L’は2〜8の数を表す。)
【0095】
本発明に係る感光性樹脂組成物には、本発明の効果を逸脱しない量的、質的範囲内で、既に公知である添加剤を必要に応じて添加することができる。具体的に添加剤としては、密着性向上剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、可塑剤、ワックス類、充填剤、顔料、染料、発泡剤、消泡剤、脱水剤、帯電防止剤、抗菌剤、防カビ剤、レベリング剤、分散剤、エチレン性不飽和化合物などが挙げられる。
【0096】
密着性向上剤としては、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、スルフィド化合物が挙げられるが、好ましくは2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イミダゾールシランなどのケイ素含有イミダゾールが挙げられる。イミダゾールシランとしては例えば、日鉱金属社製のIM−1000が好ましい。
【0097】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、光塩基発生剤、ポリアミド酸及び必要に応じて光増感剤及び難燃剤及び可塑剤を任意の溶剤中にて混合して得ることができる。本発明に係る感光性樹脂組成物は溶液の状態でも良いが、フィルムを形成することが好ましい。フィルムを形成する際は、光塩基発生剤、ポリアミド酸及び必要に応じて光増感剤及び難燃剤及び可塑剤を任意の溶剤中にて混合後、任意の方法で乾燥することにより得ることができる。
【0098】
本発明に係る感光性樹脂組成物は感光性インク又は感光性フィルムに好適に用いることができる。本発明の感光性樹脂組成物を感光性インク又は感光性フィルムに用いた場合、ネガ型のフォトリソグラフィーが可能である。
【0099】
本発明に係る感光性樹脂組成物を感光性インクとして用いる場合は、任意の基材上にスクリーン印刷にて塗布後乾燥して任意の基材上にカバーレイ形成することができる。スクリーン印刷法とは公知の印刷法で、パターンを形成したスクリーン上にスキージ等を用いてインクを通過させて印刷する方法である。
【0100】
本発明に係る感光性樹脂組成物を感光性フィルムに用いる場合、まず、本発明に係る感光性樹脂組成物を基材にコートし感光性フィルムを作成する。前記基材としては、感光性フィルム形成の際に損傷しない基材であれば、限定されない。このような基材はキャリアフィルムとして用いられる。
【0101】
キャリアフィルムとしては、例えば、耐熱性樹脂、ポリエチレンテレフタレートフィルムや金属フィルムなどが挙げられる。これらの中でも取扱いの良さから、耐熱性樹脂及びポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、基板圧着後の剥離性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0102】
本発明に係る感光性樹脂組成物で構成された感光性フィルムは、キャリアフィルムを具備する積層フィルムに加工することができる。また、この積層フィルムは、カバーフィルムを具備していても良い。
【0103】
感光性樹脂組成物のキャリアフィルムへのコートは、例えば、バーコート、ローラーコート、ダイコート、ブレードコート、ディップコート、ドクターナイフ、スプレーコート、フローコート、スピンコート、スリットコート、はけ塗り、などによって行うことができる。コート後、必要に応じてオーブン、ホットプレートなどにより加熱処理を行い、溶剤を乾燥させ、キャリアフィルムと感光性フィルムとを有する積層フィルムとする。
【0104】
また、本発明に係る感光性フィルム上に、任意の防汚用や保護用のカバーフィルムを少なくとも一層設けて積層フィルムとしても良い。本発明に係る積層フィルムにおいて、カバーフィルムとしては、例えば、低密度ポリエチレンなど任意の防汚用のフィルムや保護用のフィルムを用いることができる。
【0105】
以上のようにして作成した本発明に係る感光性フィルムを、配線を有する基材に、前記配線を覆うように圧着することにより、基材上にカバーレイを備えた回路基板を形成することができる。また、上記の感光性フィルム以外に、キャリアフィルムと感光性フィルムとを備える積層フィルム若しくはこの積層フィルムの上に更にカバーフィルムを備えた積層フィルムを用いても同様に回路基板を形成することができる。
【0106】
上記方法によって感光性インクまたは感光性フィルムを用いて形成された任意の基材上に形成されたカバーレイは、少なくとも露光、アルカリ現像の工程を経て、キュアなどの処理が施される。
【0107】
本発明に係る感光性樹脂組成物を用いて、回路基板を製造することができる。この回路基板の製造方法においては、回路基板を製造し、少なくとも配線を有する基材上に感光性樹脂組成物を塗布後乾燥して樹脂組成物層を形成し、樹脂組成物にパターン露光を行い、パターン露光後の樹脂組成物層に対してアルカリ水溶液を用いて現像処理を行い、現像処理後の樹脂組成物層をキュアする。
【0108】
また、回路基板の製造方法においては、少なくとも、上記感光性フィルム、又は上記積層フィルムのいずれかを配線を有する基材上にラミネートして樹脂組成物層を形成し、前記樹脂組成物層にパターン露光を行い、前記パターン露光後の樹脂組成物層に対してアルカリ水溶液を用いて現像処理を行い、現像処理後の樹脂組成物層をキュアする。
【0109】
配線を有する基材としては、ガラスエポキシ基板、ガラスマレイミド基板などのような硬質基材、あるいはポリイミドフィルムなどのフレキシブルな基板などの任意の基材上に配線を有するものが挙げられる。これらの中で、折り曲げ可能の観点からフレキシブルな基板上に配線を有する基材が好ましい。
【0110】
樹脂組成層の形成方法としては、感光性インクを用いる場合は前述したスクリーン印刷法が好適に用いられる。
【0111】
感光性フィルムを用いる場合は、前記配線を有する基材の配線側と感光性フィルムを接触させた状態で、熱プレス、熱ラミネート、熱真空プレス、熱真空ラミネートなどを行う方法などが挙げられる。この中で、配線間への感光性フィルムの埋め込みの観点から、熱真空プレス、熱真空ラミネートが好ましい。前記配線を有する基材上に感光性フィルムを積層する際の加熱温度は、感光性フィルムが基材に密着し得る温度であれば限定されない。基材への密着の観点や感光性フィルムの分解や副反応の観点から、30℃〜400℃が好ましい。より好ましくは、50℃〜150℃である。
【0112】
本発明に係るカバーレイは、露光後、現像を行う前に必要に応じて加熱処理(以下PEBと表記)を施した後、未露光部位をアルカリ現像にて溶解することにより、ネガ型のフォトリソグラフィーが可能である。この場合において、露光に用いる光源は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーなどが挙げられる。この中で、高圧水銀灯、超高圧水銀灯が好ましい。
【0113】
PEBを実施する際の温度は現像性の観点から100℃〜160℃が好ましい。加熱は、空気雰囲気下、窒素雰囲気下のいずれで行っても良い。また、加熱方法としては特に制限はないが、オーブン、焼成炉、ホットプレートなどを用いて行うことができる。
【0114】
現像に用いるアルカリ水溶液としては、未露光部位を溶解し得る溶液であれば限定されない。このような溶液として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などが挙げられる。現像性の観点から、炭酸ナトリウム水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。現像方法としては、スプレー現像、浸漬現像、パドル現像などが挙げられる。
【0115】
次いで、本発明のカバーレイを形成した回路基板を必要に応じてキュアすることによりカバーレイを具備する回路基板を形成する。キュアは、溶媒の除去の観点や副反応や分解、基材上の配線を傷めないなどの観点から、30℃〜400℃の温度で実施することが好ましい。より好ましくは、100℃〜200℃が好ましい。さらに好ましくは120℃〜180℃である。キュアは、空気雰囲気下、窒素雰囲気下のいずれで行っても良い。また、キュア方法としては特に制限はないが、オーブン、焼成炉、ホットプレートなどを用いて行うことができる。
【0116】
本発明に係る感光性樹脂組成物の露光部と未露光部との間の溶解度差及び/又は溶解速度差に差が生じる機構は次のように推定される。露光により光塩基発生剤より発生する塩基がポリアミド酸をポリイミドへ変換する際のイミド化触媒として作用することにより、露光部のイミド化率が未露光部と比較して高くなるため、露光部のアルカリ現像液に対する溶解度及び/又は溶解速度が低下する。
【0117】
その際、PEBを施すことにより、イミド化反応を促進することが可能である。このアルカリ現像液に対する溶解度及び/又は溶解速度を利用して、アルカリ現像を行うことにより、露光部が現像液に対して溶け残るネガ型のフォトリソグラフィーが可能となる。
【0118】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、カバーレイとして反りが充分に抑制され、かつ現像性も良好であり、キュアを施し、硬化体とした際に耐薬品性を示すことから、エレクトロニクス分野で各種電子機器の操作パネルなどに使用されるプリント配線板や回路基板の保護層形成、積層基板の絶縁層形成、半導体装置に使用されるシリコンウエハ、半導体チップ、半導体装置周辺の部材、半導体搭載用基板、放熱板、リードピン、半導体自身などの保護や絶縁及び接着に使用するための電子部品への膜形成用途に利用される。
【0119】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
【0120】
<光塩基発生剤合成例使用試薬>
光塩基発生剤合成例において、用いた試薬であるα−テトラロン(東京化成工業社製)、1−インダノン(東京化成工業社製)、フェニルマグネシウムブロミド(東京化成工業社製)、メチルマグネシウムブロミド(東京化成工業社製)、p−トルエンスルホン酸(東京化成工業社製)、過ヨウ素酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、塩化ルテニウム(III)水和物(和光純薬工業社製)、塩化ヒドロキシルアンモニウム(和光純薬工業社製)、50%ヒドロキシルアミン水溶液(和光純薬工業社製)、2,4,6,−トリクロロベンゾイルクロリド(東京化成工業社製)、トリエチルアミン(和光純薬工業社製)、4−ジメチルアミノピリジン(東京化成工業社製)、5−ベンゾイルペンタノイックアシッド(東京化成工業社製)、塩化チオニル(和光純薬工業社製)は特別な精製を実施せずに反応に用いた。
【0121】
<光塩基発生剤合成例1>
(工程1)
窒素気流下、200mlの2つ口フラスコにα−テトラロン(5.0g/34.2mmol)、イソプロピルエーテル(70ml)を入れ、氷浴中にて攪拌した。シリンジを用いフェニルマグネシウムブロミド(34.2ml/68.4mmol)を滴下後、白色懸濁液となった。3時間攪拌した後、飽和食塩水を加え洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後、溶媒をエバポレーターで留去し、析出物を回収した。
【0122】
(工程2)
2つ口フラスコに工程1で回収した析出物と塩化メチレン(34ml)とp−トルエンスルホン酸(2.0g/10.5mmol)をいれ、室温にて3時間攪拌した。飽和食塩水を加え洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後、溶媒をエバポレーターで留去し、析出物を回収した。
【0123】
(工程3)
還流管を付けた1つ口フラスコに工程2で回収した析出物(2.0g/9.7mmol)と過ヨウ素酸ナトリウム(10.6g/50.0mmol)と塩化ルテニウム(III)水和物(0.2g/0.97mmol)とアセトニトリル(18ml)、ヘキサン(24ml)、水(18ml)をいれ水浴中にて攪拌した。4時間攪拌した後、得られた褐色懸濁液に塩化メチレン、2N塩酸を加え抽出した。有機層を取り出し、10%水酸化ナトリウム水溶液で抽出した。水層を取り出し、2N塩酸を加え、塩化メチレンにて抽出した。有機層を取り出し、水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後、溶媒をエバポレーターで留去し、析出物を回収した。
【0124】
(工程4)
還流管を付けたナスフラスコに得られた工程3で得られた析出物(0.93g/3.67mmol)と塩化ヒドロキシルアンモニウム(2.42g/34.8mmol)と水酸化ナトリウム(4.4g/110mmol)と水(12ml)とエチレングリコール(12ml)をいれ、還流条件下、5時間加熱した。室温まで冷却したのち、2N塩酸を加え、有機層と水層とに分け、有機層を塩化メチレンにて抽出した。抽出した有機層を飽和食塩水で洗浄した後、ヘキサンと塩化メチレンによる再結晶で精製し、得られた結晶を回収した。
【0125】
(工程5)
ナスフラスコに窒素気流下にて工程4で回収した結晶(1.02g/3.78mmol)と2,4,6,−トリクロロベンゾイルクロリド(2.77g/11.3mmol)とトリエチルアミン(1.91g/18.9mmol)とテトラヒドロフラン(38ml)をいれ、室温で一時間攪拌後、白色懸濁液を得た。得られた白色懸濁液を濾過し、濾液を4−ジメチルアミノピリジン(9.24g/75.6mmol)を加えたトルエン(380ml)に滴下し、室温にて12時間攪拌した。得られた懸濁液に飽和食塩水を加えよく洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。エバポレーターで溶媒を留去し、得られた固体をヘキサンと酢酸エチルで再結晶し、析出した結晶を回収した。得られた化合物は、1H−NMR、GC−MSにより式(12)と同定した。得られた化合物を以下PBG−1と表記する。
【0126】
【化19】

【0127】
<光塩基発生剤合成例2>
光塩基発生剤合成例1の(工程1)の原料にα−テトラロンの代わりに、1−インダノンを用いた以外は光塩基発生剤合成例1同様の条件にて合成を実施し、化合物を得た。得られた化合物は、1H−NMR、GC−MSにより式(13)と同定した。得られた化合物を以下PBG−2と表記する。
【0128】
【化20】

【0129】
<光塩基発生剤合成比較例1>
光塩基発生剤合成例1の(工程1)の原料にフェニルマグネシウムブロミドの代わりにメチルマグネシウムブロミドを用いた以外は光塩基発生剤合成例1同様の条件にて合成を実施し、化合物を得た。得られた化合物は、1H−NMR、GC−MSにより式(14)と同定した。得られた化合物を以下PBG−3と表記する。
【0130】
【化21】

【0131】
<光塩基発生剤合成比較例2>
5−ベンゾイルペンタノイックアシッド(7.5g/36mmol)、塩化ヒドロキシルアンモニウム(3.75g/53.94mmol)、メタノール(30ml)をフラスコに入れ、KOH(5.6g/100mmol)を含む水溶液(15ml)を加え、攪拌しながら60℃で10分間加熱した後、室温まで冷却した後、氷浴で冷却し、1.2N塩酸水溶液で中和した。析出した白色固体をトルエンで再結晶し、(5.4g/24mmol)の6−ヒドロキシイミノ−6−フェニルヘキサノイックアシッドを得た。
【0132】
得られた6−ヒドロキシイミノ−6−フェニルヘキサノイックアシッド(3.06g/13.8mmol)、ピリジン(45ml)、ジエチルエーテル(60ml)をフラスコ中に入れ、−20℃〜−30℃に冷却し、攪拌しながら塩化チオニル(1.20ml/16.4mmol)(和光純薬工業社製)を含むジエチルエーテル(120ml)を滴下した。室温で一晩撹拌した後、溶媒をエバポレーターで留去した。析出物に(50ml)のクロロホルムを加え、このクロロホルム溶液を1.2N塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後、クロロホルムをエバポレーターで留去し、得られた淡黄色固体をカラムクロマトグラフィーで分離し、式(15)で表される光塩基発生剤を得た。得られた化合物を以下PBG−4と表記する。
【0133】
【化22】

【0134】
<光塩基発生剤合成比較例3>
フェニルアセチルクロリド(15.46g/0.10mol)(東京化成工業社製)とアセトフェノンオキシム(14.87g/0.11mol)をクロロホルムに溶解しトリエチルアミンをアセトフェノンオキシムの1.1倍モル添加した。室温で3時間攪拌後、水を少量添加し、その後反応液を、水、飽和食塩水で充分に洗浄した。エバポレーターで溶媒を留去した後、粗物をシクロヘキサン−酢酸エチルで精製し析出物を回収し、式(16)の光塩基発生剤を得た。得られた化合物を以下PBG−5とする。
【0135】
【化23】

【0136】
<ポリアミド酸合成例使用試薬>
ポリアミド酸合成例において、用いた試薬である、オキシジフタル酸二無水物(マナック社製)、ペンタンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステル(黒金化成社製、商品名:5BTA)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート(イハラケミカル工業社製、商品名:エラスマー1000、平均分子量1238)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(和歌山精化社製)は特別な精製を実施せずに反応に用いた。
【0137】
<ポリアミド酸合成例>
攪拌器を取り付けた1リットルのセパラブルフラスコに、窒素気流下にて、γ−ブチロラクトン(20g)とオキシジフタル酸二無水物(1.70g/5.5mmol)とペンタンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステル(4.07g/9mmol)とを入れ、室温で攪拌しながら1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(2.25g/7.7mmol)を入れた後、60℃に加熱し10分攪拌した。オキシジフタル酸二無水物(1.70g/5.5mmol)とγ−ブチロラクトン(17.2g)とポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート(3.96g/3.2mmol)と1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(2.25g/7.7mmol)をいれ1時間攪拌した。反応液が褐色透明になったら室温に冷却し、孔サイズ10μmのろ紙を用いて反応液を加圧ろ過して回収し、ポリアミド酸溶液(ポリアミド酸含有率30質量%)を得た。数平均分子量は約15,000、重量平均分子量は約42,000であった。本ポリアミド酸溶液はそのまま感光性樹脂組成物の作製に用いた(以下ポリアミド酸B1と表記)。
【0138】
<分子量測定>
分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて下記の条件により測定をした。溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を用い、測定前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)及び63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えたものを使用した。
カラム:Shodex KD−806M(昭和電工社製)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU−2080Plus(JASCO社製)
検出器:RI−2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)
UV―2075Plus(UV−VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製)
また、分子量を算出するための検量線は、スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作成した。
【0139】
<配合例使用試薬>
配合例において、用いた試薬である、2,4−ジエチル−9H−チオキサンテン−9−オン(和光純薬工業社製)(以下DETXと表記)、式(17)に示す化合物(伏見製薬社製、商品名:ラビトルFP−100)(以下FP−100と表記)、及び式(18)に示す化合物(東邦化学社製、商品名:サンプルC)(以下サンプルCと表記)は特別な精製を実施せずに配合に用いた。
【0140】
【化24】

【0141】
【化25】

【0142】
<感光性樹脂組成物配合例>
【表1】

(表1中、(B)成分の配合量はポリアミド酸溶液中に含まれるポリアミド酸の値である。)
【0143】
<感光性樹脂組成物フィルム作製>
上記表1に示した配合で作製した樹脂組成物ワニスを25μm厚のPETフィルム(R−310−25/三菱化学ポリエステルフィルム社製)にブレードコーターで塗工後、95℃/12分間オーブン(ESPEC社製、SPHH−10l)で乾燥しPETフィルムと感光性樹脂組成物で構成されたフィルムの積層フィルムを得た。感光性樹脂組成物で構成されたフィルム層の厚みは何れの配合も20μmであった。以下、感光性樹脂組成物で構成されたフィルム層を感光性フィルムと表記する。
【0144】
<膜厚測定>
膜厚測定は、膜厚計(Mitutoyo社製、ID−C112B)を用いて行った。
【0145】
<FPCカバーレイの作製>
フィルム積層は、真空プレス機(テスター産業社製)を用いて行った。プレス温度100℃、プレス圧0.5MPa、プレス時間1分間にて行った。上記条件にてFPC基板上に感光性フィルムを積層した後、PETフィルムを剥離した。FPC基板上に得た感光性フィルム層を感光性カバーレイと表記する。
【0146】
<フォトリソグラフィー評価例>
得られた感光性カバーレイに、ネガ型のマスクを用い超高圧水銀灯(オーク社製、商品名:HMW−201KB)でコンタクト露光を行った。露光量は実施例1、実施例3、比較例1において1000mJ/cm、実施例2、比較例2、比較例3において500mJ/cmであった。露光後110℃のオーブンにて20分間加熱した。現像は、1%の炭酸ナトリウム水溶液で現像温度30℃、スプレー圧0.2MPaでスプレー現像を行った。30℃の蒸留水にてスプレー圧0.2MPaでスプレー水洗を行い、得られたパターンを光学顕微鏡で観察した。100μmの円孔パターンの形成が可能であったものを○、パターン形成が困難であったものを×として評価を行った。
【0147】
<キュアフィルム低反り性評価例>
反りの評価は、カプトン(東レ・デュポン社製、登録商標、膜厚25μm)フィルム上に感光性フィルムを上記の積層条件で積層し、前述の方法によりフォトマスクを用いずに両面に1,000mJ/cmの露光を施した。次いで、後述の方法にてキュアを行いサンプルを作成した。作成したサンプルを50mm×50mmの大きさに切り出し、水平な面に静置した際、裾部分の浮きが10mm以下の場合を○とし、10mmより大きい場合を×とした。
【0148】
<キュアフィルム機械物性評価例>
パターンのないFPC(新日鐵化学社製、商品名:エスパネックス、ポリイミド20μm/銅12μm)の銅面に、感光性フィルムを上記の積層条件でラミネートし、感光性カバーレイを得た後に前述の方法によりフォトマスクを用いずに両面に1,000mJ/cmの露光を施した。次いで、後述の方法にてキュアを行いサンプルを作成した。得られたサンプルをはぜ折りし、クラック若しくは剥離が発生せず10回以上はぜ折りが可能であったものを○とし、9回以下のものを×とした。
【0149】
<キュア>
95℃/12分間オーブン(ESPEC社製、SPHH−10l)で感光性フィルムを積層したカプトンフィルム、あるいは感光性カバーレイを積層したFPC基板を120℃にて1時間、次いで180℃にて1時間の加熱処理を施した。
【0150】
<キュアフィルム難燃性試験結果>
前述のコート方法によって、カプトンフィルムの片面に感光性樹脂組成物をコートし、95℃で12分間乾燥し、次いで反対の面に感光性樹脂組成物をコートし、95℃で12分間乾燥させることにより、カプトンフィルムの両面に感光性樹脂組成物をコートした後、前述の方法によりフォトマスクを用いずに両面に1,000mJ/cmの露光を施した。次いで、前述の方法にてキュアを行いサンプルを作成した。このサンプルフィルムを20cm×5cmに切り取り、UL94 VTM試験により難燃性の評価を行った。各試料の残炎時間が10秒以下で、かつ12.5cmの標線まで燃焼しなかったサンプルを○と評価し、各試料の残炎時間が10秒以上あるいは12.5cmの標線まで燃焼したサンプルを×と評価した。
【0151】
<評価例結果>
【表2】

評価例結果から明らかなように、本発明に係る感光性樹脂組成物は少量の光塩基発生剤の添加で良好なフォトリソグラフィー性を有していることが分った。比較例1では添加した光塩基発生剤が乾燥時にフィルムから飛散した為、充分なフォトリソグラフィー性が得られなかった。比較例2では未分解のPBGがキュアの熱により熱分解物を起こし機械物性が低下した。比較例3では光塩基発生剤より発生する塩基のイミド化触媒としての性能が低い為、充分なフォトリソグラフィー性が得られなかった。また発生する塩基によりキュア後のフィルムが脆く変質した。
【0152】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態における数値や成分についてこれに限定されず、適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明は、アルカリ現像可能なフォトリソグラフィーを利用したパターニング工程に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光塩基発生剤(A)とポリアミド酸(B)とを含有する感光性樹脂組成物であって、前記光塩基発生剤は、式(1)で表されるアシルオキシイミノ基を含有する化合物であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、X1はアリーレン基であり、nは0〜3の整数を表す。Rは芳香族基または炭素数が2以上のアルキル基である。)
【請求項2】
前記光塩基発生剤が、式(1)で表されるアシルオキシイミノ基を含有する化合物であり、前記化合物が式(2)または式(3)で表されることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】

(式中、nは0〜3の整数を表す。Rは芳香族基または炭素数が2以上のアルキル基である。)
【化3】

(式中、nは0〜3の整数を表す。Rは芳香族基または炭素数が2以上のアルキル基である。)
【請求項3】
前記ポリアミド酸が式(4)で表されるジアミンを用いて得られるポリアミド酸であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】

(式中Rは炭素数が1〜50の2価の有機基である。kは1〜50の数を表す。)
【請求項4】
前記ポリアミド酸が、更に式(5)で表される酸二無水物を用いて得られるポリアミド酸であることを特徴とする請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【化5】

(式中lは1〜20の数を表す。mは2〜50の整数を表す。)
【請求項5】
前記ポリアミド酸が、更に式(6)で表されるジアミンを用いて得られるポリアミド酸であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【化6】

(式中、Zは2価の有機基であり、式(7)に示す有機基から選ばれる。)
【化7】

(式中pは3〜5の整数を表す。)
【請求項6】
前記ポリアミド酸が更に、オキシジフタル酸二無水物を用いて得られるポリアミド酸であることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに光増感剤(C)を含有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに難燃剤(D)を含有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに可塑剤(E)を含有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の感光性樹脂組成物で構成されたことを特徴とする感光性フィルム。
【請求項11】
キャリアフィルムと、前記キャリアフィルム上に設けられた請求項10に記載の感光性フィルムと、を具備することを特徴とする積層フィルム。
【請求項12】
前記感光性フィルム上に形成されたカバーフィルムを具備することを特徴とする請求項11に記載の積層フィルム。
【請求項13】
配線を有する基材と、請求項10に記載の感光性フィルム、又は請求項11若しくは請求項12に記載の積層フィルムを用いて構成されたカバーレイと、を具備することを特徴とする回路基板。
【請求項14】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を用いて、少なくとも配線を有する基材上に樹脂組成物層を形成する工程と、前記樹脂組成物層にパターン露光を行う工程と、前記パターン露光後の樹脂組成物層に対してアルカリ水溶液を用いて現像処理を行う工程と、現像処理後の樹脂組成物層をキュアする工程と、を具備することを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項15】
少なくとも、請求項10に記載の感光性フィルム、又は請求項11若しくは請求項12に記載の積層フィルムのいずれかを配線を有する基材上にラミネートして樹脂組成物層を形成する工程と、前記樹脂組成物層にパターン露光を行う工程と、前記パターン露光後の樹脂組成物層に対してアルカリ水溶液を用いて現像処理を行う工程と、現像処理後の樹脂組成物層をキュアする工程と、を具備することを特徴とする回路基板の製造方法。

【公開番号】特開2010−186054(P2010−186054A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30138(P2009−30138)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】