説明

感光性樹脂組成物及び感光性エレメント

【課題】 ソルダーレジスト形成後の表面の平坦性に優れ、かつ、はんだ耐熱性、金めっき耐性、絶縁信頼性、及びクラック耐性を満足した安定性に優れたドライフィルムタイプの感光性ソルダーレジストに用いる感光性樹脂組成物とそれを用いた感光性エレメントを提供する。
【解決手段】 (a)多官能エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸のエステル化合物又は飽和若しくは不飽和多塩基酸のエステル化合物との反応生成物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、さらに1分子中にグリシジル基1つとエチレン性不飽和基を少なくとも1つ以上有する化合物を付加させた感光性プレポリマー、(b)分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性モノマ、(c)光重合開始剤、(d)ブロック化イソシアネート、を含む感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用、半導体パッケージ基板用、フレキシブル配線板用の感光性ソルダーレジストに用いる感光性樹脂組成物とそれを用いた感光性エレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の小型化、軽量化に伴い、プリント配線板、半導体パッケージ基板、フレキシブル配線板には、微細な開口パターンを形成する目的で感光性のソルダーレジストが用いられている。そのようなソルダーレジストには、高解像性、はんだ耐熱性、金めっき耐性、絶縁信頼性、及びクラック耐性等が要求されるが、近年では、上記特性に加えて、特にパッケージ基板用のソルダーレジストには、表面の平坦性の要求が高まっている。
その理由は、パッケージ基板と半導体チップの接続方式がフリップチップ化しており、さらにその接続ピッチが狭ピッチ化していることによる。狭ピッチ化により両者のギャップが狭くなっており、ソルダーレジストの表面に凹凸があるとアンダーフィルの流れ込み性が悪くなり、アンダーフィルボイドの問題が発生するため平坦性が要求されている。
これまで、ソルダーレジストの表面の平坦性の問題を解決するため、フィルムタイプのソルダーレジストが提案されている。それはフィルムタイプでは、従来の液状のソルダーレジストがスクリーン印刷やロールコータ等で塗膜形成後に溶剤を乾燥し体積減少し表面凹凸が大きくなるという欠点を有しているのに対し、フィルムタイプは感光性樹脂組成物を支持体に塗布し溶剤を乾燥させた状態となっており、熱をかけながら基板にプレスラミネールすることで表面を平坦化でき、その後の体積減少が著しく少ないという利点のためである。
ソルダーレジストには、一般に、現像性、高解像性、絶縁性、はんだ耐熱性、金メッキ耐性といった特性が求められる。また、特にパッケージ基板用のソルダーレジストに対しては、上記の特性に加え、例えば−55℃〜125℃の温度サイクル試験(TCT)に対する耐クラック性や、微細配線間でのHAST特性が要求されている。
【0003】
近年では、ソルダーレジストとして、膜厚の均一性、表面平滑性、薄膜形成性を良好にする観点から、ドライフィルムタイプのものが注目されている。このようなドライフィルムタイプのソルダーレジストによれば、上記の特性のほか、レジスト形成のための工程の簡略化やレジスト形成時の溶剤排出量の低減といった効果が得られる。
【0004】
ここで、ソルダーレジストとしては、硬化性の成分であるエポキシ樹脂と、アルカリ現像性を付与するためのカルボン酸基を含有する感光性プレポリマーとを別々に分けた2液タイプの感光性樹脂組成物からなるものが一般的である。感光性プレポリマーとしては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂にアクリル酸を付加した後、酸変性したアルカリ現像可能な感光性プレポリマーが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、従来の感光性樹脂組成物には、ソルダーレジストに求められる特性のうち、はんだ耐熱性等には優れているものの、硬化物が硬くてもろい傾向にあり、耐クラック性が不十分であるという問題があった。そこで、耐クラック性を改善するために、感光性樹脂組成物中にエラストマを加える手法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−243869号公報
【特許文献2】特開2002−162738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の2液の液状のソルダーレジストをそのままフィルム化した場合、現像性に必要なカルボン酸と硬化剤のエポキシ樹脂が室温(25℃)で反応するためフィルムロールを冷凍で保管しなければならないという安定性の課題があった。また、エポキシ樹脂の代わりに他の熱硬化剤を用いた場合には、溶剤以外の体積減少が大きくなり平坦性が得られないという問題があった。
本発明は、ソルダーレジスト形成後の表面の平坦性に優れ、かつ、はんだ耐熱性、金めっき耐性、絶縁信頼性、及びクラック耐性を満足した安定性に優れたドライフィルムタイプの感光性ソルダーレジストに用いる感光性樹脂組成物とそれを用いた感光性エレメントを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、〔1〕(a)多官能エポキシ樹脂と、不飽和モノカルボン酸のエステル化合物又は飽和若しくは不飽和多塩基酸のエステル化合物との反応生成物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、さらに1分子中にグリシジル基1つとエチレン性不飽和基を少なくとも1つ以上有する化合物を付加させた感光性プレポリマー、(b)分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性モノマ、(c)光重合開始剤、(d)ブロック化イソシアネートを含む感光性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、〔2〕(a)感光性プレポリマーが、1分子中にグリシジル基1つとエチレン性不飽和基を少なくとも1つ以上有する化合物の付加率が、飽和又は不飽和多塩基酸無水物の反応量に対し、10〜60%である上記〔1〕に記載の感光性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、〔3〕(d)ブロック化イソシアネートが、全配合物中、3〜8質量%である感光性樹脂組成物に関する。
本発明では、溶剤を除く、5%質量減少温度が200℃以下の配合材の合計量が、全配合物の全質量中の5質量%以下となるよう配合した感光性樹脂組成物にすると好ましい。
また、本発明は、〔4〕(c)光重合開始剤が、オキシムエステルを有する化合物である上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、〔5〕さらに、分子中にマレイミド又はマレイミド誘導体に由来する繰り返し単位を有するアクリル共重合体を含有する上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、〔6〕さらに、ビスマレイミド化合物を含有した上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、〔7〕さらに、無機フィラーを含有した上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、〔8〕支持体と、該支持体上に形成された上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメントに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ソルダーレジスト形成後の表面の平坦性に優れ、かつ、はんだ耐熱性、金めっき耐性、絶縁信頼性を満足した安定性に優れたドライフィルムタイプの感光性ソルダーレジストに用いる感光性樹脂組成物とそれを用いた感光性エレメントを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味し、(メタ)アクリロキシ基とはアクリロキシ基及びそれに対応するメタクリロキシ基を意味する。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、(a)多官能エポキシ樹脂と、不飽和モノカルボン酸のエステル化合物(又は飽和若しくは不飽和多塩基酸のエステル化合物)との反応生成物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、さらに1分子中にグリシジル基1つとエチレン性不飽和基を少なくとも1つ以上有する化合物を付加させた感光性プレポリマー、(b)分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性モノマ、(c)光重合開始剤、(d)ブロック化イソシアネートを含有する。
本発明は、1)硬化剤にエポキシ樹脂を用いなくとも熱キュア時の体積収縮が小さい前記(a)感光性プレポリマーを用い、2)硬化剤に安定性に優れる(d)ブロック化イソシアネートを用いるが、ブロック剤のガス化を考え添加量を規定し、3)さらに熱キュア時に揮発成分となる、5%質量減少温度が200℃以下の光重合開始剤やその他配合材料の総合計量を規定することが好ましい。ブロック化イソシアネートについては、ブロック剤の種類により揮発ガス量が変わってくるのでこの最適値を規定する。このことにより、ソルダーレジスト形成後の表面の平坦性を満足する。また、諸特性を満足させるために、他の成分、例えば、アクリル共重合体からなるポリマ、ビスマレイミド、無機フィラーの併用を本発明では合わせて提案する。
【0012】
以下、本発明で用いる各材料について詳細を記載する。
本発明で用いる(a)成分の感光性プレポリマーは、多官能エポキシ樹脂と、不飽和モノカルボン酸のエステル化合物(又は飽和若しくは不飽和多塩基酸のエステル化合物)との反応生成物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、さらに1分子中にグリシジル基1つとエチレン性不飽和基を少なくとも1つ以上有する化合物を付加させたものである。
【0013】
多官能エポキシ樹脂としては、例えばフェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノール及びアルキルフェノール類とホルムアルデヒドとを酸性触媒下で反応して得られるノボラック類とエピクロルヒドリンを反応させて得られるノボラック型エポキシ化合物が適しており、それらエポキシ化合物としては、東都化成株式会社製商品名:YDCN−701、704、YDPN−638、602、ダウケミカル社製商品名:DEN−431、439、チバ・ガイギ社製商品名:EPN−1299、大日本インキ化学工業株式会社製商品名:N−730、770、865、665、673、VH−4150、4240、日本化薬株式会社製商品名:EOCN−120、BREN等が挙げられる。又、ノボラック型エポキシ化合物以外にも、例えばサリチルアルデヒド−フェノール或いはクレゾール型エポキシ化合物(日本化薬株式会社製商品名:EPPN502H、FAE2500等)が好適に用いられる。又、例えばジャパンエポキシレジン株式会社製商品名:エピコート828、1007、807、大日本インキ化学工業株式会社製商品名:エピクロン840、860、3050、ダウ・ケミカル社製商品名:DER−330、337、361、ダイセル化学工業株式会社製商品名:セロキサイド2021、三菱ガス化学株式会社製商品名:TETRAD−X、C、日本曹達株式会社製商品名:EPB−13、27、チバ・ガイギ社製商品名:GY−260、255、XB−2615等のビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールA型、臭素化ビスフェノールA型、アミノ基含有、脂環式或いはポリブタジエン変性等のグリシジルエーテル型等のエポキシ化合物も好適に用いられる。これらの混合物やブロック共重合物も使用できる。
【0014】
上記不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。上記飽和又は不飽和多塩基酸としては、例えば、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、へキサヒドロフタル酸、マレイン酸、コハク酸、トリメリット酸等が挙げられ、それらの無水物も使用可能である。上記不飽和モノカルボン酸のエステル化合物又は上記飽和又は不飽和多塩基酸のエステル化合物の中でも、特に不飽和モノカルボン酸のエステル化合物が好ましい。これらの不飽和モノカルボン酸は単独又は混合して用いることができる。これらの中でも、特にアクリル酸が好ましい。
【0015】
多官能エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸のエステル化合物(又は飽和若しくは不飽和多塩基酸のエステル化合物)との反応生成物に反応させる飽和又は不飽和多塩基酸無水物としては、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、コハク酸、トリメリット酸等の無水物が用いられる。上記グリシジル基変性前の感光性プレポリマーの市販品としては、ZFR、CCR、ZARシリーズ(日本化薬株式会社製)等がある。
【0016】
1分子中にグリシジル基1つとエチレン性不飽和基を少なくとも1つ以上有する化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート、β−メチルグリシジルアクリレート、β−エチルグリシジルメタクリレート、β−エチルグリシジルアクリレート、N−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンジル]アクリルアミド、N−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンジル]メタクリルアミド、等が挙げられる。これらの中でも特にグリシジルメタクリレートが好ましい。
【0017】
本発明では、それらを飽和又は不飽和多塩基酸無水物の反応量に対し、10〜60%反応させて用いるのが望ましく、さらに望ましくは、20〜50%反応させたものである。10%未満であると硬化物の架橋密度が下がり、体積収縮が大きくなる傾向がある。60%を超えると感光性プレポリマーの酸価が低下し現像液に不溶となり、現像残渣が発生し易くなる。
【0018】
また、本発明の(a)感光性プレポリマーに加え、分子内に2個以上の水酸基とエチレン性不飽和基を有するエポキシアクリレート化合物、ジイソシアネート化合物、カルボキシル基を有するジオール化合物とを反応させて得られるウレタン変性エポキシアクリレートを感度、解像性、耐HAST性向上を目的に併用して使用してもよい。ここで、上記ウレタン変性エポキシアクリレートの主骨格の一つとなる原料の分子内に2個以上の水酸基とエチレン性不飽和基を有するエポキシアクリレート化合物のハードセグメント部の構造はビスフェノールA型構造のものが好ましく、このようなものは、UXE−3011、UXE−3012、UXE−3024(日本化薬株式会社製)として入手可能である。
【0019】
感光性プレポリマーの酸価は、アルカリ現像性と電気特性(HAST耐性)や他の特性バランス上、20〜200mgKOH/g、好ましくは40〜150mgKOH/gである。
なお、酸価は、以下の方法により測定することができる。測定樹脂溶液約1gを精秤した後、その樹脂溶液にアセトンを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、滴定結果より以下の式(1);
【0020】
【数1】

により酸価を算出する。なお、式(1)中、Aは酸価(mgKOH/g)を示し、VfはKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは測定樹脂溶液質量(g)を示し、Iは測定樹脂溶液の不揮発分の割合(質量%)を示す。
【0021】
本発明において(b)成分として用いる分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性モノマとしては、例えば、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物;多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーが挙げられ、これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート;γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が例示可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0022】
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられ、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(製品名、新中村化学工業株式会社製)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(商品名、新中村化学工業株式会社製)として商業的に入手可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0024】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
なお、「EO」とは「エチレンオキシド」のことをいい、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことをいう。また、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CH−CH−O−)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CH−CH−CH−O−、−CH(CH)−CH−O−、−CH−CH(CH)−O−)のブロック構造を有することを意味する。
【0026】
グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニル等が拳げられる。
α,β−不飽和カルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0027】
分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO又はPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。
これら(b)成分は、1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0029】
本発明において(c)成分として用いる光重合開始剤としては、特に制限はなく、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヘラーケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−モルホリノフェノン)−ブタノン−1,2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等などが挙げられる。これらは1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
(c)成分の光重合開始剤は、5%質量減少温度が200℃以下のものについては、その他の配合材料の5%質量減少温度が200℃以下の材料との配合量合計が全配合物の全質量中の5質量%以下でなるように配合する。
5%質量減少温度が200℃以下のものの選択は、各成分を、具体的には、熱重量分析(TG)を用いて測定する。
光重合開始剤は、感度が高く配合量が少なくて済むという観点から、オキシムエステルを有する化合物であることが望ましい。オキシムエステルを有する化合物としては、分子内に少なくとも1つのオキシムエステル構造を有する化合物であれば特に制限はないが、感度をより良好にする観点から、下記一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0031】
【化1】


上記一般式(1)中、Rは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、二重結合がカルボニル基と共役していない炭素数4〜6のアルケノイル基、ベンゾイル基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基又はフェノキシカルボニル基を示し、R、R及びRはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基又はフェノキシカルボニル基を示し、p1は0〜4の整数を示し、p2及びp3は各々独立に0〜5の整数を示す。なお、p1、p2及びp3が複数存在するR、R及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Rは炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、炭素数3〜10のアルキル基であることがより好ましく、炭素数4〜8のアルキル基であることが特に好ましい。また、p1、p2及びp3は0であることがより好ましい。
【0032】
【化2】


上記一般式(2)中、Rは、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基を示し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、二重結合がカルボニル基と共役していない炭素数4〜6のアルケノイル基、ベンゾイル基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基又はフェノキシカルボニル基を示し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基又はフェノキシカルボニル基を示し、R、R及びR10はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、又はフェノキシカルボニル基を示し、q1及びq2はそれぞれ独立に0〜3の整数を示し、q3は0〜5の整数を示す。なお、q1、q2及びq3が2以上である場合、複数存在するR、R及びR10はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Rは炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。Rは炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。R10は炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。また、q1及びq2は0であることがより好ましく、q3は1〜3であることがより好ましい。
【0033】
上記一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]はIRGACURE−OXE01(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)として、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)はIRGACURE−OXE02(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)として商業的に入手可能である。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0034】
(d)ブロック化イソシアネートは、常温(25℃)では不活性であるが加熱するとブロック剤が可逆的に解離してイソシアネート基を再生するもので、用いられるイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート型、ビウレット型、アダクト型が挙げられるが密着性の見地からはイソシアヌレート型が好ましい。これらは、単独で又は2種類以上で使用される。上記ブロック剤としては、ジケトン類、オキシム類、フェノール類、アルカノール類及びカプロラクタム類から選ばれる少なくとも一種の化合物が挙げられる。具体的には、メチルエチルケトンオキシム、ε−カプロラクタム等が挙げられる。ブロック型イソシアネートは市販品として容易に入手可能であり、例えば、スミジュールBL−3175、デスモジュールTPLS−2957、TPLS−2062、TPLS−2957、TPLS−2078、BL4165、TPLS2117、BL1100,BL1265、デスモサーム2170、デスモサーム2265(住友バイエルウレタン株式会社製商品名)、コロネート2512、コロネート2513、コロネート2520(日本ポリウレタン工業株式会社製商品名)、B−830、B−815、B−846、B−870、B−874、B−882(三井武田ケミカル株式会社製商品名)、デュラネートTPA−B80E、デュラネート17B−60PX(旭化成ケミカルズ株式会社製)等が挙げられる。ブロック剤の解離温度は120〜200℃のものが好ましい。
特に、絶縁性が求められる場合には、構造中に、イソシアヌル骨格、又はベンゼン環のような芳香族環を含むことが望ましい。このようなブロック型イソシアネートとしては、スミジュールBL−3175、スミジュールBL−4265、B−870、デュラネートTPA−B80Eなどが挙げられる。
【0035】
上記ブロック剤は熱キュア時に解離しガスとして排出される。そのため体積減少の原因となることから、ブロック剤としては、分子量の小さいものを用いることが望ましい。具体的には、メチルエチルケトンオキシムタイプのものが有効である。ブロック化イソシアネートの配合量は、全配合物中、3〜8質量%が望ましく、さらに望ましくは、3〜7質量%が望ましい。
【0036】
本発明では、諸特性を満足させるために、他の成分、例えば、アクリル共重合体からなるポリマ、ビスマレイミド、無機フィラーの併用を提案する。
アクリル共重合体としては、側鎖にエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性共重合体を含むものが好ましく、側鎖エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性共重合体のエチレン性不飽和基濃度は、1.0×10−5〜6.0×10−3モル/gであることが望ましく、更に、1.0×10−4〜6.0×10−3モル/gであることが更に望ましい。また、側鎖エチレン性不飽和基は、エチレン性不飽和基とイソシアネートを含むウレタンモノマーにより導入されていることが望ましい。その他、公知のグリシジルメタクリレートを用いた手法でエチレン性不飽和基を導入することができるが、その場合、原料に由来する不純物の影響から電気特性(HAST耐性)等が低下する傾向にある。
ここで、アクリル共重合体とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の共重合成分として得られるビニル系共重合化合物である。
【0037】
本発明で用いると好ましいアクリル共重合体の共重合成分としては、マレイミド又はマレイミド誘導体に由来する繰り返し単位を有することが望ましい。具体的には、マレイミド、エチルマレイミド、ブチルマレイミド、オクチルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、ヒドロキシエチルマレイミド、ヒドロキシブチルマレイミド、エトキシエチルマレイミド、ブトキシエチルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、メチルフェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、カルボキシフェニルマレイミド、メトキシフェニルマレイミド、ベンジルマレイミド等が挙げられる。
【0038】
このマレイミド又はマレイミド誘導体に由来する繰り返し単位は、5〜60%であることが望ましく、更に10〜50%であることが更に望ましい。5%未満の場合は樹脂の耐熱性が不足する傾向にあり、60%を超えると、樹脂の密着性が低下し、また樹脂が固く脆くなる傾向にある。
その他、共重合成分は特に制限はないが、分子中にジシクロペンテニル若しくはジシクロペンタニエル骨格を含むものが望ましい。そのような共重合成分としては、例えば、ジシクロペンテニルアクリレ−トFA−511A(日立化成工業株式会社製)、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−トFA−512A(日立化成工業株式会社製)、ジシクロペンタニルアクリレ−トFA−513A(日立化成工業株式会社製)、ジシクロペンタニルメタクリレートFA−513M(日立化成工業株式会社製)、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートFA−512M(日立化成工業株式会社製)等がある。その他、例えば、2−カルボキシエチルメタクリレート、(無水)マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸アミノメチル、メタクリル酸N−メチルアミノメチル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル等のメタクリル酸アミノアルキル、アクリル酸N−メチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル等のアクリル酸アミノアルキル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、酢酸ビニル等が挙げられる。また、アクリル系ポリマの酸価は20(mgKOH/g)以上が好ましく、40〜150(mgKOH/g)が特に好ましい。重量平均分子量は、Mw5000から150000であり、Mw8000から100000の範囲、更に、Mw10000から50000の範囲が好ましい。
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる(標準ポリスチレンによる換算)。
【0039】
また、本発明では、密着性、硬度等の特性を向上する目的で必要に応じて無機及び/又は有機フィラーを用いることができる。例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、粉状酸化珪素、無定形シリカ、タルク、クレー、焼成カオリン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉、エアロジル、ベントン、モンモリロナイト等の無機充填剤が使用できる。有機フィラーとしては、ジアリルフタレート、ジアリルフタレートプレポリマ、アクリルゴム、ニトリルゴム(NBR)、シリコーン粉末、ナイロン粉末等がある。その使用量は、好ましくは全成分量に対し、0〜70質量%である。この使用量が多くなるに従い、ガス化する樹脂分が減少するため表面の平坦性に対しては有利になる。
【0040】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物は特に下地金属との密着を向上させる目的で、ジシアンジアミド、メラミン、グアナミン及びその誘導体を少なくとも1種以上含有することが望ましい。その他、トリアジン化合物及びその誘導体、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の添加剤類を用いることができる。具体的には、例えば、ジシアンジアミド、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン−フェノール−ホルマリン樹脂、四国化成工業株式会社製;2MZ−AZINE,2E4MZ−AZINE,C11Z−AZINE、2MA−OK等が挙げられる。あるいはエチルジアミノ−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−s−トリアジン等のトリアジン誘導体類が挙げられる。これらの化合物は下地金属、特に銅回路との密着性を上げ耐PCT性を向上させ、電食性にも効果がある。これらは(a)感光性プレポリマー、アクリル共重合体と(b)光重合性モノマの合計量、若しくは(a)感光性プレポリマー、アクリル共重合体と(b)光重合性モノマ、(d)ブロック化イソシアネートなどからなる感光性樹脂組成物の合計量100質量部に対して、0.1〜10質量%で使用されるのが好ましい。
【0041】
また、本発明では、必要に応じて希釈剤を用いることが望ましい。希釈剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類、ベンジルアルコール、シクロヘキサン等の炭化水素類、ジアセトンアルコール、3−メトキシ−1−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルペンチルケトン、メチルヘキシルケトン、エチルブチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテル類及びそのアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類及びそのアセテートジエチレングリコールジアルキルエーテル類、トリエチレングリコールアルキルエーテル類、プロピレングリコールアルキルエーテル類及びそのアセテート、ジプロピレングリコールアルキルエーテル類、また、トルエン、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ若しくはソルベントナフサ等の石油系溶剤、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル等のカルボン酸エステル類、アミン、アミド類の例えば、N、N‐ジメチルホルムアミド、N、N‐ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等や、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、3−ヒドロキシ−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、6−ヒドロキシ−2−ヘキサノン等の溶剤を単独、或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
また、必要に応じてフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジングリーン、ジスアゾイエロー、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック、アゾ系の有機顔料などの着色剤、染料等を用いることができる。更にハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤、ベントン、モンモリロナイト、エアロジル、アミドワックス等のチキソ性付与剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤、レベリング剤を用いることができる。
【0043】
感光性樹脂組成物中の各成分の含有量は、感光性樹脂組成物の希釈剤を除く全固形分の合計100質量部に対して、3〜8質量部、有機、無機フィラーを含んでいる場合には、各成分の含有量は、全材料合計量/フィラー成分合計量を3〜8質量部に掛けた値が各成分の含有量となる。
本発明に用いる希釈剤の含有量は、感光性樹脂組成物を液状のまま使用する場合には、全質量中の5〜40%が望ましい。支持体に塗布し感光性エレメントとして使用する場合には、塗布前のワニス状態では、全質量中の20〜70%含有させる。その後、フィルムとした後はフィルム作製時の乾燥工程において揮発させるため、3質量%以下となる。
【0044】
次に、本発明の感光性エレメントについて説明する。
本発明の感光性エレメントは、支持体と、該支持体上に形成された本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層とを備えるものである。感光性樹脂組成物層上には、該感光性樹脂組成物層を被覆する保護フィルムを更に備えていてもよい。
感光性樹脂組成物層は、本発明の感光性樹脂組成物を上記溶剤(希釈剤)又は混合溶剤に溶解して固形分30〜80質量%程度の溶液とした後に、かかる溶液を支持体上に塗布して形成することが好ましい。感光性樹脂組成物層の厚みは、用途により異なるが、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を除去した乾燥後の厚みで、10〜100μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。この厚みが10μm未満では工業的に塗工困難な傾向があり、100μmを超えると本発明により奏される上述の効果が小さくなりやすく、特に、物理特性及び解像度が低下する傾向がある。
【0045】
感光性エレメントが備える支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムなどが挙げられる。
支持体の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。この厚みが5μm未満では現像前に支持体を剥離する際に当該支持体が破れやすくなる傾向があり、また、100μmを超えると解像度及び可撓性が低下する傾向がある。
上述したような支持体と感光性樹脂組成物層との2層からなる感光性エレメント又は支持体と感光性樹脂組成物層と保護フィルムとの3層からなる感光性エレメントは、例えば、そのまま貯蔵してもよく、又は保護フィルムを介在させた上で巻芯にロール状に巻き取って保管することができる。
【0046】
本発明になる感光性エレメントを用いたレジストパターンの形成方法は、必要に応じて上述した感光性エレメントから保護フィルムを除去する除去工程と、該感光性エレメントを感光性樹脂組成物層、支持体の順に回路形成用基板上に積層する積層工程と、活性光線を、必要に応じて支持体を通して、感光性樹脂組成物層の所定部分に照射して、感光性樹脂組成物層に光硬化部を形成させる露光工程と、光硬化部以外の感光性樹脂組成物層を除去する現像工程とを含むものである。
【0047】
なお、回路形成用基板とは、絶縁層と、絶縁層上の片面又は両面に形成された導電体層(銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金、好ましくは銅、銅系合金、鉄系合金からなる)とを備えた基板をいう。また、本実施形態における回路形成用基板は、絶縁層と、絶縁層上の片面又は両面に形成された導電体層とを備えたフレキシブル基板であることが好ましい。
【0048】
必要に応じて保護フィルムを除去する除去工程後の積層工程における積層方法としては、感光性樹脂組成物層を加熱しながら回路形成用基板に圧着することにより積層する方法等が挙げられる。かかる積層の際の雰囲気は特に制限されないが、密着性及び追従性等の見地から減圧下で積層することが好ましい。積層される表面は、通常、回路形成用基板の導電体層の面であるが、当該導電体層以外の面であってもよい。
【0049】
感光性樹脂組成物層の加熱温度は70〜130℃とすることが好ましく、圧着圧力は0.1〜1.0MPa程度とすることが好ましく、周囲の気圧は4000Pa以下とすることがより好ましいが、これらの条件には特に制限はない。また、感光性樹脂組成物層を上記のように70〜130℃に加熱すれば、予め回路形成用基板を予熱処理することは必要ではないが、積層性を更に向上させるために、回路形成用基板の予熱処理を行うこともできる。
【0050】
このようにして積層が完了した後、露光工程において感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して光硬化部を形成せしめる。光硬化部の形成方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射する方法が挙げられる。この際、感光性樹脂組成物層上に存在する支持体が透明の場合には、そのまま活性光線を照射することができるが、不透明の場合には、支持体を除去した後に感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する。
【0051】
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いられる。 更に直接描画方式のダイレクトレーザ露光を用いても良い。其々のレーザ光源、露光方式に対応する(c)成分を用いることにより優れたパターンを形成することが可能となる。
【0052】
現像工程では、現像液として、例えば、20〜50℃の炭酸ナトリウムの希薄溶液(1〜5質量%水溶液)等のアルカリ現像液が用いられ、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像する。
上記現像工程終了後、はんだ耐熱性、耐薬品性等を向上させる目的で、高圧水銀ランプによる紫外線照射や加熱を行うことが好ましい。紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば0.2〜10J/cm程度の照射量で照射を行うこともできる。また、レジストパターンを加熱する場合は、100〜180℃程度の範囲で15〜90分程行われることが好ましい。さらに紫外線照射と加熱とを同時に行うこともでき、いずれか一方を実施した後、他方を実施することもできる。紫外線の照射と加熱とを同時に行う場合、はんだ耐熱性、耐薬品性等を効果的に付与する観点から、60〜150℃に加熱することがより好ましい。
この感光性樹脂組成物層は、基板にはんだ付けを施した後の配線の保護膜を兼ね、優れた耐クラック性、HAST耐性、金めっき性を有するので、プリント配線板用、半導体パッケージ基板用、フレキシブル配線板用のソルダーレジストとして有効である。
このようにしてレジストパターンを備えられた基板は、その後、半導体素子などの実装(例えば、ワイヤーボンディング、はんだ接続)がなされ、そして、パソコン等の電子機器へ装着される。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0054】
本発明の樹脂(1〜2)を以下の方法により合成した。
<樹脂(1)の作製方法>
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のエピクロンN−695(大日本インキ化学工業株式会社製、エポキシ当量=220)220質量部(1当量)を撹拌機及び還流冷却器の付いた四つ口フラスコに入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート216質量部を加え、加熱溶解した。重合禁止剤としてメチルハイドロキノン0.46質量部と、反応触媒としてトリフェニルホスフィン1.38質量部を加えた。この混合物を95〜105℃に加熱し、アクリル酸 57.6質量部(0.8当量)、p−フェニルフェノール34質量部(0.2当量)を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物(水酸基:1当量)を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物87質量部(0.56当量)を加え、8時間反応させた。その後、グリシジルメタクリレート20.2質量部を反応温度を80℃±2℃に保ちながら、更に3時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られた感光性プレポリマーは、不揮発分65質量%、固形物の酸価70mgKOH/gであった。
【0055】
<樹脂(2)の作製方法>
フェノールノボラック型エポキシ樹脂のEPPN−201(日本化薬株式会社製、エポキシ当量=190)190質量部を撹拌機及び還流冷却器の付いた四つ口フラスコに入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート216質量部を加え、加熱溶解した。重合禁止剤としてメチルハイドロキノン0.46質量部と、反応触媒としてトリフェニルホスフィン1.38質量部を加えた。この混合物を95〜105℃に加熱し、アクリル酸57.6質量部(0.8当量)、p−フェニルフェノール34質量部(0.2当量)を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物(水酸基:1当量)を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物87質量部(0.56当量)を加え、8時間反応させた。その後、グリシジルメタクリレート20.2質量部を反応温度を80℃±2℃に保ちながら、更に3時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られた感光性プレポリマーは、不揮発分65質量%、固形物の酸価70mgKOH/gであった。
【0056】
比較例に用いた樹脂(3〜4)はグリシジルメタクリレートを添加する以外は、樹脂(1〜2)と同様の方法により合成した。
【0057】
感光性樹脂組成物の溶液を、表1に示した各成分を、そこに示す固形分の配合比(質量基準)で混合することにより得た。市販の材料として、感光性プレポリマーとして、UXE−3024(ウレタン変性エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製)を用いた。その他、DPHA(ジペンタエリスリトールトリアクリレート、日本化薬株式会社製)、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(FA−321M、日立化成工業株式会社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフェリノフェニル)−ブタノンー1(I−369、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、DETX(ジエチルチオキサントン、日本化薬株式会社製)、ブロック型イソシアネート(BL−3175、住化バイエルウレタン株式会社製)、エピコート9001(ジャパンエポキシレジン株式会社製)ビフェノール型エポキシ樹脂(YX−4000、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、希釈剤には、メチルエチルケトンを使用した。
硫酸バリウムは、バリエースB−30(堺化学工業株式会社製、商品名)を(a)成分アクリル共重合体、及び(b)成分の総計100質量部に対して40質量部、メラミンは、サイメル300(メチロール化メラミン、日本サイテックインダストリーズ株式会社製、商品名)を前記100質量部に対して10質量部、フタロシアニンブルーは前記100質量部に対して0.4質量部をそれぞれ用いた。
【0058】
【表1】


次いで、この感光性樹脂組成物の溶液を支持体である16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(G2−16、帝人株式会社製、商品名)上に均一に塗布することにより感光性樹脂組成物層を形成し、それを、熱風対流式乾燥機を用いて100℃で約10分間乾燥した。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、25μmであった。
続いて、感光性樹脂組成物層の支持体と接している側とは反対側の表面上に、ポリエチレンフィルム(NF−15、タマポリ株式会社製、商品名)を保護フィルムとして貼り合わせ、感光性エレメントを得た。
【0059】
[塗膜性の評価]
得られた感光性エレメントに対し、露光を行わずに、感光性エレメント上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、その塗膜表面に指を軽く押し付け、指に対する張り付き程度を以下の基準で評価した。すなわち、指に対する張り付きが認められない、または、ほとんど認められないものは「○」とし、指に対する張り付きが認められるものは「×」とした。結果を表2に示した。
【0060】
[はんだ耐熱性の評価]
12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(E−679、日立化成工業株式会社製、商品名)の銅表面を砥粒ブラシで研磨し、水洗後、乾燥した。このプリント配線板用基板上にプレス式真空ラミネータ(MVLP−500、株式会社名機製作所製、商品名)を用いて、プレス熱板温度70℃、真空引き時間20秒、ラミネートプレス時間30秒、気圧4kPa以下、圧着圧力0.4MPaの条件の下、前記感光性エレメントのポリエチレンフィルムを剥離して積層し、評価用積層体を得た。
評価用積層体上に、ネガとして2mm角のパターンを有するフォトツールを密着させ、株式会社オーク製作所製EXM‐1201型露光機を使用して、ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った。次いで、常温(25℃)で1時間静置した後、該積層体上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、最小現像時間(未露光部が現像される最小時間)の1.5倍の時間でスプレー現像を行い、パターンを形成した。
続いて、株式会社オーク製作所製紫外線照射装置を使用して1J/cmのエネルギー量で紫外線照射を行い、さらに160℃で60分間加熱処理を行うことにより、2mm角の開口部を有するソルダーレジストを形成した評価用積層体基板を得た。
次いで、該評価用積層体基板にロジン系フラックス(MH−820V、タムラ化研株式会社製、商品名)を塗布した後、260℃のはんだ浴中に10秒間浸漬した。この処理を1回とし、計3回はんだ処理を行った。
このようにしてはんだめっきを施された評価積層体基板上のソルダーレジストのクラック発生状況並びに基板からのソルダーレジストの浮き程度及び剥離程度を目視により観察し、次の基準で評価した。すなわち、ソルダーレジストのクラックの発生が認められず、ソルダーレジストの浮き及び剥離も認められないものは「○」とし、浮きが僅かに見られたものを「△」、いずれもが大きく認められるものは「×」とした。
【0061】
[表面平坦性の評価]
得られた感光性エレメントを、厚み0.1mmで直径0.1mmのスルーホールを有した基板の両面に前記プレス式真空ラミネータで両面同時形成し、所定の露光量で全面露光し、株式会社オーク製作所製紫外線照射装置を使用して1J/cmのエネルギー量で紫外線照射を行い、さらに160℃で60分間加熱処理を行い、ソルダーレジストを硬化させた。その後、スルーホール上のレジスト表面の凹みを表面粗さ計で測定し評価した。すなわち、凹みが3μm以下のものは「○」とし、凹みが3μm以上で5μm以下のものを「△」、凹みが5μm以上のものを「×」とした。結果を表2に示した。
【0062】
[HAST耐性(超加速温湿度ストレス試験、High-Accelerated Temperature and Humidity Stress Test)の評価]
12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(E−679、日立化成工業株式会社製、商品名)の銅表面を、エッチングによりライン/スペースが50μm/50μmのくし型電極を形成した。この基板を評価基板とし、基板上に上述のようにレジストの硬化物を形成し、その後、130℃、85%RH、20V条件下に100時間晒した。その後、マイグレーションの発生の程度を、100倍の金属顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。すなわち、永久レジスト膜に大きなマイグレーションが発生しなかったものは「○」とし、僅かにマイグレーションが発生したものは「△」、大きくマイグレーションが発生したものは「×」とした。結果を表2に示した。
【0063】
[金めっき性の評価]
上述のソルダーレジストを形成した評価用積層体基板を市販の無電解ニッケル/金めっき液を用いて、ニッケルめっき厚5μm、金めっき厚0.1μmとなるようにめっきを行い、ソルダーレジストの外観を実体顕微鏡で観察し次の基準で評価した。すなわち、ソルダーレジストに白化が認められないものは「○」とし、僅かに白化、剥れが発生したものを「△」、白化、剥れが大きく発生したものを「×」とした。結果を表2に示した。
【0064】
[保管安定性]
作製した感光性エレメントを23℃で20日間放置した後、前記の露光、現像、UV照射、加熱工程を経て形成されたパターンを実体顕微鏡で観察し以下の基準にて判定した。結果を表2に示した。
○ 未露光部分に樹脂残りがないもの
× 未露光部分に樹脂残りがあるもの
【0065】
【表2】

【0066】
(a)成分の感光性プレポリマーを用いない比較例1、2では、表面平坦性に劣り、(d)成分のブロック化イソシアネートが多すぎる比較例3では、更に表面平坦性に劣る。また、(d)成分を用いない比較例4、5では、保管安定性に劣る。
これに対し、(a)〜(d)成分を用いた本発明では、はんだ耐熱性、表面平坦性、HAST耐性、金めっき耐性、保管安定性のいずれも優れ、これらの特性を有した感光性エレメントを提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)多官能エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸のエステル化合物又は飽和若しくは不飽和多塩基酸のエステル化合物との反応生成物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、さらに1分子中にグリシジル基1つとエチレン性不飽和基を少なくとも1つ以上有する化合物を付加させた感光性プレポリマー、(b)分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性モノマ、(c)光重合開始剤、(d)ブロック化イソシアネートを含む感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(a)感光性プレポリマーが、1分子中にグリシジル基1つとエチレン性不飽和基を少なくとも1つ以上有する化合物の付加率が、飽和又は不飽和多塩基酸無水物の反応量に対し、10〜60%である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(d)ブロック化イソシアネートが、全配合物中、3〜8質量%である感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(c)光重合開始剤が、オキシムエステルを有する化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、分子中にマレイミド又はマレイミド誘導体に由来する繰り返し単位を有するアクリル共重合体を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、ビスマレイミド化合物を含有した請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、無機フィラーを含有した請求項1〜6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
支持体と、該支持体上に形成された請求項1〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメント。

【公開番号】特開2010−282003(P2010−282003A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134969(P2009−134969)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】