説明

感光性樹脂組成物及び感光性フィルム

【課題】保存安定性等、ソルダーレジストに要求される諸特性に優れ、アルカリ現像可能な感光性樹脂組成物及びそれを用い感光性フィルムの提供。
【解決手段】(a)成分:分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂、(b)成分:分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と、トリシクロデカン構造とを有する光重合性モノマー、(c)成分:光重合開始剤、(d)成分:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、及び(e)成分:充填量が全質量中の20〜70質量%で、組成物中で最大粒径が1μm以下に分散されている平均粒径が3〜300nmのシリカフィラーを含有する感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物及びそれを用いた感光性フィルムに関する。特に、プリント配線板用、半導体パッケージ基板用、フレキシブル配線板用に使用されるソルダーレジストとして好適な感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の小型化、軽量化に伴い、プリント配線板、半導体パッケージ基板、フレキシブル配線板には、微細な開口パターンを形成する目的で感光性のソルダーレジストが用いられている。ソルダーレジストには、一般に、現像性、解像性、はんだ耐熱性及び金めっき耐性等が要求される。
【0003】
半導体パッケージは、小型化、多ピン化が実用化されているため、例えば、小型化、軽量化、高性能化されたBGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)等の半導体パッケージに使用するソルダーレジストには、上記特性に加えて、高信頼性の点から、TCT(テンパラチャーサイクルテスト)に対しての高いクラック耐性、PCT耐性(プレッシャークッカーテスト耐性)、及び微細配線間でのHAST耐性(高度加速ストレス試験耐性)が要求されている。さらに、環境問題への配慮から生じる鉛フリー化の要求に伴い、高耐熱性(高Tg)も要求されている。
【0004】
また、フレキシブル配線板用のソルダーレジストに対しては、反りを小さく抑えることも重要となる。
【0005】
現在使用されている一般的なソルダーレジストは、硬化剤としてのエポキシ樹脂と、アルカリ現像性を付与させるためのカルボン酸含有感光性プレポリマーとを別々に分けた、液状2液タイプが主流である(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、液状2液タイプの感光性樹脂組成物は、硬化剤のエポキシ樹脂と、現像性付与に必要なカルボン酸を有する感光性プレポリマーとが、室温で反応するため、2液混合後の安定性(ポットライフ)に問題があった。
【0006】
ところで、近年、特にパッケージ基板の分野では、基板の薄型化に伴い、ドライフィルムタイプのソルダーレジストが、膜厚均一性、表面平滑性及び薄膜形成性の観点から注目されている。また、ドライフィルムタイプは、工程簡便化、溶剤排出量の低減化などの利点を有している。
【0007】
上述した液状タイプの感光性樹脂組成物は、保存安定性に課題があるため、ドライフィルム化には適さないものが多い。従って、ドライフィルムタイプのソルダーレジストには、保存安定性に優れた感光性樹脂組成物が要求される。
【0008】
保存安定性を向上させるための手法としては、例えば、エポキシ樹脂に比べて反応性が劣る添加剤を加える手法が開示されている。具体的には、硬化剤としてブロック型イソシアネートを用いる方法やメチルエーテル化メラミンを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−162738号公報
【特許文献2】特開平11‐109622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した添加剤を加えた感光性樹脂組成物は、熱硬化時にアウトガスが発生する問題や、ソルダーレジストとしての上述した諸特性を満足することができない問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、
(a)成分:分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂、
(b)成分:分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と、トリシクロデカン構造とを有する光重合性モノマー、
(c)成分:光重合開始剤、
(d)成分:下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂、及び
(e)成分:シリカフィラー
を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(e)成分の平均粒径が、3〜300nmであり、かつ、感光性樹脂組成物中に最大粒径が1μm以下で分散されており、その充填量が全質量中の20〜70質量%である感光性樹脂組成物が、上記課題を達成することを見出し、本願発明を完成した。
【0012】
【化1】

[一般式(1)中R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基およびフェニル基の中から選択される1種を示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい]
【0013】
本発明の効果が得られる要因は明らかではないが、上記一般式(1)で表される特定の構造を有するエポキシ樹脂と、(b)成分中に含まれるトリシクロデカン構造と、特定の粒径を有した(e)成分を用いることにより、本発明の効果に至っていると考えられる。
【0014】
より具体的には本発明は、上記(b)成分が、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、トリシクロデカンジオールジアクリレート及びトリシクロデカンジオールジメタクリレートからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。これら特定の成分を含むことで、HAST耐性及び耐熱性をより向上させることができる。
【0015】
また、上記(b)成分は、下記一般式(2)又は一般式(3)で示される部分構造を有する化合物を含むことも好ましい。これにより、HAST耐性、耐熱性をより向上させることができだけでなく、反りを小さく抑えることができる。
【0016】
【化2】

【0017】
【化3】

【0018】
[一般式(2)又は(3)中、R、Rは直接結合、アルキレン、又はアリーレンを示す。]
上記一般式(2)及び一般式(3)で示される部分構造を有する化合物は、トリシクロデカン構造を含むジオール化合物と、ジイソシアネート化合物と、分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と1個のヒドロキシル基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン化合物であることが好ましい。
【0019】
また、上記ジイソシアネート化合物として、環構造を有するジイソシアネート化合物を用いると、感光性樹脂組成物の金めっき耐性をより向上させることができ、反りを抑えることができる。
【0020】
また、本発明は、上述した感光性樹脂組成物を支持体上に塗布、乾燥して形成した感光性積層体からなる感光性フィルムを提供できる。これにより、上記特性に優れた、ドライフィルムタイプの感光性フィルムを提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、保存安定性および現像性、解像性に優れ、かつ十分なクラック耐性、PCT耐性、HAST耐性を有し、はんだ耐熱性などの高耐熱性を得る保存安定性に優れたアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物、及びドライフィルムタイプの感光性フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物の一実施形態としては、(a)成分:分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂、(b)成分:分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と、トリシクロデカン構造とを有する光重合性モノマー、(c)成分:光重合開始剤、(d)成分:下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂、及び(e)成分:シリカフィラーを含有する感光性樹脂組成物であって、前記(e)成分の平均粒径が、3〜300nmであり、かつ、感光性樹脂組成物中に最大粒径が1μm以下で分散されており、その充填量が全質量中の20〜70質量%である、感光性樹脂組成物である。
【0023】
【化4】


[一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基およびフェニル基の中から選択される1種を示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい]
【0024】
上記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂を用いることで、高い保存安定性と耐熱性を両立することができる。高い耐熱性はビフェニル構造に由来し、優れた保存安定性については発明者らもその現象を明らかにできていないが、他の一般的なクレゾールノボラック型エポキシ樹脂やビスフェノールA型エポキシ樹脂に比べ、室温、冷蔵温度条件下において遥かに優れた安定性を有する。
【0025】
以下、本発明の感光性樹脂組成物で用いられる各成分についてより詳細に説明する。
(a)成分:分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂
本発明で用いることのできる(a)成分としては、感光性樹脂組成物の他の成分との相溶性があれば特に制限はないが、例えば、エポキシ化合物(a1)と、不飽和モノカルボン酸(a2)とのエステル化物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物(a3)を付加した付加反応物等を用いることができる。これらは、次の二段階の反応によって得ることができる。最初の反応(以下、便宜的に「第一の反応」という。)では、エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)とが反応する。次の反応(以下、便宜的に「第二の反応」という。)では、第一の反応で生成したエステル化物と、飽和又は不飽和多塩基酸無水物(a3)とが反応する。
【0026】
上記エポキシ化合物(a1)としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、多官能エポキシ化合物等が挙げられる。ビスフェノール型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型とエピクロルヒドリンを反応させて得られるものが適しており、チバガイギー社製GY−260、GY−255、XB−2615、ジャパンエポキシレジン株式会社製エピコート828、1007、807等のビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールA型、アミノ基含有、脂環式あるいはポリブタジエン変性等のエポキシ化合物が好適である。
【0027】
ノボラック型エポキシ化合物としては、フェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノール及びアルキルフェノール等のフェノール類から選ばれる少なくとも一種とホルムアルデヒドとを、酸性触媒下で反応して得られるノボラック類と、エピクロルヒドリンを反応させて得られるものが適しており、東都化成株式会社製YDCN−701、704、YDPN−638、602、ダウ・ケミカル社製DEN−431、439、チバガイギー社製EPN−1299、大日本インキ化学工業株式会社製N−730、770、865、665、673、VH−4150、4240、日本化薬株式会社製EOCN−120、BREN等が挙げられる。
【0028】
その他の構造のエポキシ化合物としては、例えば、サリチルアルデヒド−フェノール又はサリチルアルデヒド−クレゾール型エポキシ化合物(日本化薬株式会社製EPPN502H、FAE2500等)、ダウ・ケミカル社製DER−330、337、361、ダイセル化学工業株式会社製セロキサイド2021、三菱ガス化学株式会社製TETRAD−X、C、日本曹達株式会社製EPB−13、27等も使用することができる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用され、混合物あるいはブロック共重合物を用いてもよい。
【0029】
上記不飽和モノカルボン酸(a2)としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸や、飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類又は飽和若しくは不飽和二塩基酸と不飽和モノグリシジル化合物との半エステル化合物類との反応物が挙げられる。この反応物としては、例えば、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、へキサヒドロフタル酸、マレイン酸、コハク酸等と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等とを、常法により等モル比で反応させて得られる反応物などが挙げられる。これらの不飽和モノカルボン酸は単独又は混合して用いることができる。これらの中でも、アクリル酸が好ましい。
なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート」とは、「アクリル酸、アクリレート」及びそれに対応する「メタクリル酸、メタクリレート」を意味する。同様に「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味する。
【0030】
飽和又は不飽和多塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、無水トリメリット酸等が挙げられる。
【0031】
第一の反応では、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基と不飽和モノカルボン酸(a2)のカルボキシル基との付加反応により水酸基が生成する。第一の反応における、エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)との比率は、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1当量に対して、不飽和モノカルボン酸(a2)が0.7〜1.05当量となる比率であることが好ましく、0.8〜1.0当量となる比率であることがより好ましい。
【0032】
エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)とは有機溶剤に溶解させて反応させることができる。有機溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などを用いることができる。
【0033】
第一の反応では、反応を促進させるために触媒を用いることが好ましい。触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン等を用いることができる。触媒の使用量は、エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましい。
【0034】
第一の反応において、エポキシ化合物(a1)同士又は不飽和モノカルボン酸(a2)同士、あるいはエポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)との重合を防止するため、重合防止剤を使用することが好ましい。重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、及びピロガロール等を用いることができる。重合防止剤の使用量は、エポキシ化合物(a1)と不飽和モノカルボン酸(a2)の合計100質量部に対して、0.01〜1質量部とすることが好ましい。第一の反応の反応温度は、60〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。
【0035】
第一の反応では、必要に応じて不飽和モノカルボン酸(a2)と、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の多塩基酸無水物とを併用することができる。
【0036】
第二の反応では、第一の反応で生成した水酸基及びエポキシ化合物(a1)中に元来ある水酸基が、飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物(a3)の酸無水物基と半エステル反応すると推察される。ここでは、第一の反応によって得られる樹脂中の水酸基1当量に対して、0.1〜1.0当量の多塩基酸無水物(a3)を反応させることができる。多塩基酸無水物(a3)の量をこの範囲内で調製することによって、(a)成分の酸価を調整することができる。
【0037】
上記のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂としては、CCR−1218H、CCR−1159H、CCR−1222H、PCR−1050、TCR−1335H、ZAR−1035、ZAR−2001H、ZFR−1185及びZCR−1569H(以上、日本化薬株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0038】
また、本発明で用いることのできる(a)成分としては、分子内に2つ以上の水酸基及びエチレン性不飽和基を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物とを反応させて得られるポリウレタン化合物を挙げることができる。
【0039】
ポリウレタン化合物は、上記のように、2つ以上の水酸基及びエチレン性不飽和基を有するエポキシアクリレート化合物(以下、「原料エポキシアクリレート」という)、ジイソシアネート化合物(以下、「原料ジイソシアネート」という)、並びにカルボキシル基を有するジオール化合物(以下、「原料ジオール」という)を原料成分として得られる化合物である。これらの原料成分について説明する。
【0040】
上記原料エポキシアクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物等に(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物などが挙げられる。
【0041】
上記原料ジイソシアネートとしては、イソシアネート基を2つ有する化合物であれば特に制限なく適用できる。例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、アリレンスルホンエーテルジイソシアネート、アリルシアンジイソシアネート、N−アシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルナン−ジイソシアネートメチル等が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用される。
【0042】
上記原料ジオールは、分子内に、アルコール性水酸基及び/又はフェノール性水酸基等の水酸基を2つ有するとともに、カルボキシル基を有する化合物である。水酸基としては、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液による現像性を良好にする観点から、アルコール性水酸基を有していることが好ましい。このようなジオール化合物としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等を挙げることができる。
【0043】
次に、上記した原料成分を用いてポリウレタン化合物を製造する工程の例について説明する。
【0044】
ポリウレタン化合物の製造工程では、まず、上記原料エポキシアクリレート及び上記原料ジオールを、上記原料ジイソシアネートと反応させる。かかる反応においては、主に、原料エポキシアクリレートにおける水酸基と原料ジイソシアネートにおけるイソシアネート基との間、及び、原料ジオールにおける水酸基と原料ジイソシアネートにおけるイソシアネート基との間で、いわゆるウレタン化反応が生じる。この反応により、例えば、原料エポキシアクリレートに由来する構造単位と、原料ジオールに由来する構造単位とが、原料ジイソシアネートに由来する構造単位を介して交互に又はブロック的に重合されたポリウレタン化合物が生じる。
【0045】
このようなポリウレタン化合物としては、下記一般式(4)で表される化合物が例示できる。
【0046】
【化5】

ここで、一般式(4)中、Rは原料エポキシアクリレートの残基、Rは原料ジイソシアネートの残基、Rは炭素数1〜5のアルキル基、R10は水素原子又はメチル基を示す。なお、残基とは、原料成分から結合に供された官能基を除いた部分の構造をいう。また、式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、上記ポリウレタン化合物が有する末端の水酸基は、飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物で処理されていてもよい。
【0047】
上記のポリウレタン化合物の製造工程では、原料エポキシアクリレート、原料ジオール及び原料ジイソシアネート以外に、これらとは異なるジオール化合物をさらに添加してもよい。これにより、得られるポリウレタン化合物の主鎖構造を変えることが可能となり、後述する酸価等の特性を、所望の範囲に調整できる。また、上記した各工程では、適宜、触媒等を用いてもよい。
【0048】
また、上記のポリウレタン化合物と原料エポキシアクリレートとをさらに反応させてもよい。この反応では、主に上記ポリウレタン化合物における原料ジオール化合物に由来するカルボキシル基と、原料エポキシアクリレートの有するエポキシ基との間で、いわゆるエポキシカルボキシレート化反応が生じる。このようにして得られる化合物は、例えば、上記したポリウレタン化合物から形成される主鎖と、原料エポキシアクリレートに由来するエチレン性不飽和基を含む側鎖とを備えるものとなる。
【0049】
本実施形態のポリウレタン化合物としては、一般式(4)で表される化合物の中でも、ポリウレタンの主骨格の一つとなる原料エポキシアクリレートのハードセグメント部、すなわちRが、ビスフェノールA型構造のものが好ましい。このようなポリウレタン化合物は、UXE−3011、UXE−3012、UXE−3024(日本化薬株式会社製)等として商業的に入手可能である。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用される。また、かかるポリウレタン化合物を含む感光性樹脂組成物は、HAST耐性をより向上させることができる。
【0050】
これまでに例示した(a)成分のカルボキシル基を有する樹脂は、その酸価が、20〜180mgKOH/gであることが好ましく、30〜150mgKOH/gであることがより好ましく、40〜120mgKOH/gであることが特に好ましい。これにより、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液による現像性が良好となり、優れた解像度が得られるようになる。
【0051】
ここで、酸価は以下の方法により測定することができる。まず、測定樹脂溶液約1gを精秤した後、その樹脂溶液にアセトンを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、次式により酸価を算出する。
A=10×Vf×56.1/(Wp×I)
なお、式中、Aは酸価(mgKOH/g)を示し、VfはKOHの滴定量(mL)を示し、Wpは測定樹脂溶液重量(g)を示し、Iは測定樹脂溶液の不揮発分の割合(質量%)を示す。
【0052】
また、(a)成分のカルボキシル基を有する樹脂の重量平均分子量は、塗膜性の観点から、3000〜30000であることが好ましく、5000〜20000であることがより好ましく、7000〜15000であることが特に好ましい。これらは分子量の異なる樹脂を2種以上組み合わせて使用することも可能である。
【0053】
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値から求めることができる。
【0054】
(b)成分:分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と、トリシクロデカン構造とを有する光重合性モノマー
本発明で用いる(b)成分は、分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と、トリシクロデカン構造とを有する光重合性モノマーである。
【0055】
これらの(b)成分は、トリシクロデカン構造を有する光重合性モノマーであれば特に制限はないが、例えば、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、トリシクロデカンジオールジアクリレート及びトリシクロデカンジオールジメタクリレートからなる群から選択される1種以上であると好ましい。これらは商業的には、NKエステルDCP、NKエステルA−DCP(いずれも新中村化学工業株式会社製)として入手可能である。
【0056】
また、上記(b)成分にウレタン結合を有するものを用いる場合、一般式(2)又は一般式(3)で示される部分構造を有する(b)成分を使用することが好ましい。
【0057】
【化6】

【0058】
【化7】

[一般式(1)及び一般式(2)中、R、Rは、直接結合、アルキレン、又はアリーレン基を示す。]
【0059】
上記アルキレン基としては、炭素数2〜20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2〜6のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0060】
炭素数2〜6のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基等が挙げられるが、解像度、耐めっき性の点からエチレン基又はイソプロピレン基であることが好ましく、エチレン基であることが特に好ましい。
【0061】
上記アリーレン基としては、炭素数は6〜14のアリーレン基であることが好ましく、炭素数6〜10のアリーレン基であることがより好ましい。このようなアリーレン基としては、フェニレン、ナフチレン等が挙げられる。
【0062】
上記(b)成分として、上記の一般式(2)又は一般式(3)で示される部分構造を有する化合物を使用する場合、(b1)トリシクロデカン構造を含むジオール化合物と、(b2)ジイソシアネート化合物と、(b3)分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と1個のヒドロキシル基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン化合物であることが好ましい。
【0063】
上記(b2)ジイソシアネートとしては、特に制限はないが、環構造を有する化合物が好ましい。中でも、イソホロンジイソシアネートのような剛直な構造を有しているものが、耐クラック(耐熱性)の観点からより好ましい。
【0064】
また、上記(b3)分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と1個のヒドロキシル基を有する化合物は、架橋密度の観点から、エチレン性不飽和基を2個有しているものが好ましく、3個有しているものが、特に好ましい。
【0065】
これらの中でも、上記ジイソシアネートが、イソホロンジイソシアネートであり、加えて、上記分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と1個のヒドロキシル基を有する化合物が、上記一般式(3)で示す化合物であると、さらに好ましい。そのような化合物としては、商業的には、UX−5002D−M20(日本化薬株式会社製)等がある。これらは、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
上記(b)成分は、分子内にウレタン結合を有していない化合物と、分子内にウレタン結合を有している化合物を組み合わせて用いることが、ソルダーレジストに要求される諸特性を向上させる点では、好ましい。
【0067】
(c)成分:光重合開始剤
本発明で用いる(c)光重合開始剤としては、使用する露光機の光波長にあわせたものであれば特に制限はなく、公知のものを利用することができる。具体的には例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族ケトン類;アルキルアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類;ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、9−フェニルアクリジン等のアクリジン誘導体、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイルオキシム)]等のオキシムエステル類、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等のクマリン系化合物、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物などが挙げられ、これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
レジスト形状をより良好にする観点から、ホスフィンオキサイド系光重合開始剤を用いることが好ましい。そのような化合物としては、モノアシルホスフィンオキサイドのものとしては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドがあり、ビスアシルホスフィンオキサイドのものとしては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、が挙げられる。それぞれ、IRGACURE−TPO、IRGACURE−819(いずれもチバ・ジャパン株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。これらの中でも、モノアシルホスフィンオキサイドを用いることが好ましい。
【0069】
また、感度向上を目的にアクリジン環を有する化合物、オキシムエステルを有する化合物をさらに含有することが好ましく、これらは併用することもできる。上記アクリジン環を有する化合物としては、例えば、9−フェニルアクリジン、9−アミノアクリジン、9−ペンチルアミノアクリジン、1,2−ビス(9−アクリジニル)エタン、1,3−ビス(9−アクリジニル)プロパン、1,4−ビス(9−アクリジニル)ブタン、1,5−ビス(9−アクリジニル)ペンタン、1,6−ビス(9−アクリジニル)ヘキサン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、1,8−ビス(9−アクリジニル)オクタン、1,9−ビス(9−アクリジニル)ノナン、1,10−ビス(9−アクリジニル)デカン、1,11−ビス(9−アクリジニル)ウンデカン、1,12−ビス(9−アクリジニル)ドデカン等のビス(9−アクリジニル)アルカン、9−フェニルアクリジン、9−ピリジルアクリジン、9−ピラジニルアクリジン、9−モノペンチルアミノアクリジン、1,3−ビス(9−アクリジニル)−2−オキサプロパン、1,3−ビス(9−アクリジニル)−2−チアプロパン、1,5−ビス(9−アクリジニル)−3−チアペンタンなどが挙げられ、中でも1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタンがより好ましい。1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタンは、N−1717(株式会社ADEKA製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0070】
上記オキシムエステルを有する化合物としては、例えば、(2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン)、(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム))が挙げられる。市販品としては、IRGACURE−OXE01、IRGACURE−OXE02(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)等が挙げられる。
モノアシルホスフィンオキサイドと、オキシムエステルを有する化合物とを併用することが好ましい。
【0071】
(d)成分:下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂
本発明では、(d)成分として、下記一般式(1)に示されるエポキシ樹脂を用いる。
【0072】
【化8】

[一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基およびフェニル基の中から選択される1種を示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい]
【0073】
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、日本化薬株式会社製、NC−3000、NC−3100、NC−3200等が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。また、他のエポキシ樹脂と組み合わせて使用することもできるが、その場合、本発明の特徴である保存安定性については、組み合わせて使用するエポキシ樹脂の配合量や反応性によって低下する可能性がある。
【0074】
上記一般式(1)中、保存安定性に優れる点では、R〜Rは、2つ以上が水素原子であることが好ましく、4つ以上が水素原子であることがより好まく、6つ以上が水素原子であることがさらに好ましく、全てが水素原子であることが特に好ましい。
【0075】
(e)成分:シリカフィラー
次に本発明の平均粒径が3〜300nmでかつ、感光性樹脂組成物中に最大粒径が1μm以下で分散されている(e)シリカフィラーについて説明する。
【0076】
本発明で用いられるシリカフィラーは一次粒径のまま、凝集することなく樹脂中に分散させるために、シランカップリング剤を用いることができる。
シランカップリング剤としては、一般的に入手可能なものを用いることができ、例えば、アルキルシラン、アルコキシシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、アクリルシラン、メタクリルシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン、サルファーシラン、スチリルシラン、アルキルクロロシラン等が使用可能である。具体的な化合物名としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン等がある。
【0077】
用いるシランカップリング剤として望ましいものは、感光性樹脂組成物に含まれる(a)成分のカルボキシル基及びエチレン性不飽和基を分子内に少なくとも1つ以上有する樹脂のカルボキシキ基と反応する種類のものが良く、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、イソシアネートシランが望ましい。これらのシランカップリング剤は、シリカと樹脂の結合を強めるため、永久マスクレジストとした際に膜の強度を強め、また同時に熱膨張係数を大きく低減することが可能なため、温度サイクル試験における耐クラック性等に寄与する。
【0078】
また、アクリルシラン、メタクリルシランを用いても良い。(b)成分のエチレン性不飽和基を有する光重合モノマーのエチレン性不飽和基と反応し前記シランカップリング剤を用いたときと同様の効果を発揮すると考えられる。
【0079】
シリカフィラーの使用量は、全質量部100質量部に対し、20〜70質量部であり、熱膨張係数低減の観点からは、25質量部以上、塗膜性の観点からは、50質量部以下が好ましい。更に好ましくは30質量部以上、塗膜性の観点からは、40質量部以下である。
【0080】
なお、感光性樹脂組成物は、上記した(a)〜(e)成分に加えて、所望の特性に応じてその他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0081】
その他の成分としては、次に、(b)成分とは異なる、分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性モノマーが挙げられる。要求される特性によって、これらの光重合性モノマーを適宜選択し、(b)成分に加えて使用することができる。
【0082】
そのような化合物としては、具体的に例えば、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマー等が挙げられる。また、これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びEO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0083】
アルカリ現像性を良好にするためには、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を(b)成分と組み合わせて使用することが好ましい。ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは、1種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
感度及び解像度を良好にするためには、上記のなかでも2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンを、(b)成分と組み合わせて使用することが好ましい。
【0085】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは、単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
上記化合物のうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、FA−321M(日立化成工業株式会社製、商品名)又はBPE−500(新中村化学工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0087】
また、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカプロポキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0088】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0089】
密着性、解像度及び耐電食性のバランスを良好にするためには、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物を、(b)成分と組み合わせて使用することが好ましい。
【0090】
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性グリセリルトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセリルトリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性グリセリルトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0091】
なお、「EO」とは「エチレンオキシド」のことをいい、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことをいう。また、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CH−CH−O−)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CH−CH−CH−O−)又はイソプロピレンオキシドユニット(−CH−CH(CH)−O−、−CH(CH)−CH−O−)のブロック構造を有することを意味する。
【0092】
また、上記グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート及び2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニル等が挙げられる。なお、上記したような化合物を得るためのα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0093】
また、上記分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマー等としては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーと、イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物や、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、及びEO又はPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0094】
さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを(b)成分と組み合わせて使用する際には、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0095】
その他の成分としては、さらに、(c)光重合開始剤の増感剤が挙げられる。レジスト形状をより良好にする観点から、チオキサントン系化合物が好ましい。具体的には例えば、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられ、中でも2,4−ジエチルチオキサントンを含むことがより好ましい。2,4−ジエチルチオキサントンは、KAYACURE−DETX(日本化薬株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0096】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物は、特に銅等の金属との密着が必要とされる場合、密着性向上剤として、メラミン、ジシアンジアミド、トリアジン化合物及びその誘導体、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の添加剤類を用いることができる。例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン−フェノール−ホルマリン樹脂、ジシアンジアミド、四国化成工業株式会社製;2MZ−AZINE、2E4MZ−AZINE、C11Z−AZINE、2MA−OK等が挙げられる。あるいはエチルジアミノ−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−s−トリアジン等のトリアジン誘導体類が挙げられる。これらの化合物は銅回路との密着性を上げ耐PCT性を向上させ、HAST耐性にも効果がある。これらは(a)から(c)成分の総量100質量部に対して0.1〜10質量%で使用されるのが好ましい。
【0097】
また、必要に応じてフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジングリーン、ジスアゾイエロー、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック、アゾ系の有機顔料などの着色剤、染料等を用いることができる。さらにハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤、ベントン、モンモリロナイト、アミドワックス等のチキソ性付与剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤、レベリング剤を用いることができる。
【0098】
感光性樹脂組成物中の各成分の含有量は、上記(a)成分は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、30〜80質量部とすることが好ましく、40〜75質量部とすることがより好ましく、50〜70質量部とすることが特に好ましい。(a)成分の含有量がこの範囲であると、感光性樹脂組成物の塗膜性及び光硬化物の強度がより良好となり、現像性、解像性、はんだ耐熱性や金めっき耐性といった特性を損なうことなく、微細配線間でのHAST耐性に優れ、かつ高耐熱性となる。
【0099】
上記(b)成分の含有量は、(a)成分及び(b)成分の総量100質量部に対して、20〜70質量部とすることが好ましく、25〜50質量部とすることがより好ましく、30〜40重量部とすることが特に好ましい。(b)成分の含有量がこの範囲であると、感光性樹脂組成物の光感度及び塗膜性がより良好となる。
【0100】
感光性樹脂組成物中の(c)、(d)各成分の含有量は、成分(a)と(b)の合計100質量部に対して、成分(c)は0.1〜10質量部を配合してなることが好ましく、成分(d)は3〜50質量部であることが好ましく、5〜40質量部であるとより好ましい。
【0101】
[感光性フィルム]
次に、好適な実施形態の感光性フィルムについて説明する。本発明に係る感光性フィルムは、支持体と、該支持体上に形成された本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層とを備えた感光性積層体からなるものである。感光性樹脂組成物層上には、該感光性樹脂組成物層を被覆する保護フィルムをさらに備えていてもよい。
【0102】
上記支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。上記支持体(重合体フィルム)の厚みは、5〜25μmとすることが好ましく、この厚みが5μm未満では、現像前に行う支持フィルム剥離の際に支持フィルムが破れやすくなる傾向があり、25μmを超えると解像度が低下する傾向がある。なお、上記重合体フィルムは、一つを支持体かつ保護フィルムとして感光樹脂組成物層の両面に積層して使用してもよい。
【0103】
上記保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。市販のものとしては、例えば、王子製紙株式会社製の製品名「アルファンMA−410」、「E−200C」、信越フィルム株式会社製等のポリプロピレンフィルム、帝人株式会社製の製品名「PS−25」等のPSシリーズなどのポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられるが、これらに限られたものではない。上記保護フィルムの厚みは、1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、5〜30μmであることがさらに好ましく、15〜30μmであることが特に好ましい。この厚みが1μm未満では、ラミネートの際に保護フィルムが破れる傾向があり、100μmを超えると廉価性に劣る傾向がある。なお、保護フィルムは、感光性樹脂組成物層及び支持体の接着力よりも、感光性樹脂組成物層及び保護フィルムの接着力の方が小さいものが好ましく、また、低フィッシュアイのフィルムが好ましい。フィッシュアイとは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸する押出し法、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。
【0104】
上記感光性樹脂組成物層は、本発明の感光性樹脂組成物を希釈剤(溶剤)に溶解して固形分30〜70質量%程度の溶液(塗布液)とした後に、かかる溶液(塗布液)を支持体上に塗布して乾燥することにより形成することが好ましい。上記塗布は、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等を用いた公知の方法で行うことができる。また、上記乾燥は70〜150℃、5〜30分間程度で行うことができる。感光性樹脂組成物中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、感光性樹脂組成物の総量に対して3質量%以下とすることが好ましい。上記感光層の厚みは、用途により異なるが、乾燥後の厚みで5〜200μmであることが好ましく、15〜60μmであることがより好ましく、20〜50μmであることが特に好ましい。この厚みが5μm未満では、工業的に塗工困難な傾向があり、200μmを超えると感光性樹脂組成物層内部の感度及び解像度が低下する傾向がある。
【0105】
上記感光性フィルムは、さらにクッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層等を有していてもよい。また、得られた感光性フィルムは、シート状、又は巻芯にロール状に巻き取って保管することができる。なお、この際支持体が最も外側になるように巻き取られることが好ましい。上記ロール状の感光性フィルムロールの端面には、端面保護の観点から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの観点から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、梱包方法として、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。上記巻芯としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックなどが挙げられる。
【0106】
[レジストパターンの形成方法]
次に、本発明の感光性フィルムを用いたレジストパターンの形成方法について説明する。レジストを形成すべき基板上に、上記した感光性樹脂組成物からなる感光層を形成する。上記感光性フィルムの保護フィルムを感光性樹脂組成物層から剥離させ、露出した面をラミネート等により、基板上に形成された回路パターンを有する導体層を覆うように密着させる。密着性、追従性向上の観点から減圧下で積層する方法も好ましい。なお、感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物のワニスをスクリーン印刷法やロールコータにより塗布する方法等の公知の方法により基板上に塗布することもできる。
【0107】
次いで、マスクパターンを通して、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射し、照射部の感光性樹脂組成物層を光硬化させる露光工程を行う。さらに、感光層上に支持体が存在している場合にはその支持体を除去した後、ウエット現像又はドライ現像で光硬化されていない部分(未露光部)を除去して現像することにより、レジストパターンを形成することができる。
【0108】
上記ウエット現像の場合、現像液としては、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の安全かつ安定であり操作性が良好なものが、感光性樹脂組成物の種類に対応して用いられる。また、現像方法としては、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法が適宜採用される。
【0109】
上記アルカリ性水溶液の塩基としては、アルカリ金属、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物である水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等、アルカリ金属、アンモニウム等の炭酸塩又は重炭酸塩である炭酸アルカリ又は重炭酸アルカリ、アルカリ金属のリン酸塩であるリン酸ナトリウム、リン酸カリウム等、アルカリ金属のピロリン酸塩であるピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等、安全かつ安定であり、操作性が良好なものが用いられる。
【0110】
また、このようなアルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液が好ましく、そのpHは9〜11の範囲とすることが好ましい。また、このようなアルカリ性水溶液の温度は感光層の現像性に合わせて調節され、20〜50℃とすることが好ましい。さらに、上記アルカリ性水溶液中には、現像を促進させるために界面活性剤、消泡剤等の少量の添加剤を混入させてもよい。
【0111】
上記水系現像液としては、水及びアルカリ性水溶液若しくは一種以上の有機溶剤とからなるものが用いられる。ここでアルカリ性水溶液の塩基としては、上記したもの以外に、例えば、ホウ砂、メタケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ジアミノプロパノール−2、モルホリンが挙げられる。このような水系現像液のpHは、現像処理が充分にできる範囲でできるだけ小さくすることが好ましく、pH8〜12であることが好ましく、pH9〜10であることがより好ましい。
【0112】
上記有機溶剤としては、例えば、アセトン、酢酸エチル、炭素数1〜4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが用いられる。このような有機溶剤の濃度は、通常、2〜90質量%であることが好ましい。また、このような有機溶剤の温度は、現像性にあわせて調節することができる。さらに、このような有機溶剤は単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。単独で用いる有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトンが挙げられる。さらに、上記アルカリ性水溶液中には、現像を促進させるために界面活性剤、消泡剤等の少量の添加剤を混入させてもよい。
【0113】
本発明のレジストパターンの形成方法においては、必要に応じて、上記した二種類以上の現像方法を併用して用いてもよい。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、高圧スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等があり、高圧スプレー方式が解像度向上のためには最も適している。現像後に行われる金属面のエッチングには、例えば、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液等を用いることができる。
【0114】
[感光性永久レジストの好適な実施形態]
本発明の感光性フィルムを用いた感光性永久レジストの好適な実施形態について説明する。
【0115】
上記現像工程終了後、はんだ耐熱性及び耐薬品性等を向上させる目的で、高圧水銀ランプによる紫外線照射や加熱を行うことが好ましい。紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば0.05〜10J/cm程度の照射量で照射を行うことができる。また、レジストパターンを加熱する場合は、130〜200℃程度の範囲で15〜90分程行われることが好ましい。
【0116】
紫外線照射及び加熱は、両方を行ってもよい。この場合、両方を同時に行ってもよく、いずれか一方を実施した後に他方を実施してもよい。紫外線照射と加熱とを同時に行う場合は、はんだ耐熱性及び耐薬品性をより良好に付与する観点から、60〜150℃に加熱することが好ましい。
【0117】
このようにして形成された感光性永久レジストは、基板にはんだ付けを施した後の配線の保護膜を兼ね、ソルダーレジストの諸特性を有しプリント配線板用、半導体パッケージ基板用、フレキシブル配線板用のソルダーレジストとして用いることが可能である。
【0118】
上記ソルダーレジストは、例えば、基板に対し、めっきやエッチングを施す場合に、めっきレジストやエッチングレジストとして用いられる他、そのまま基板上に残されて、配線等を保護するための保護膜(感光性永久レジスト)として用いられる。
【0119】
また、上記の露光工程において、上記導体層の所定部分が未露光となるパターンを有するマスク又は描画データを用いて露光を行った場合、これを現像することにより、未露光部分が除去され、基板上に形成された導体層の一部が露出した、開口パターンを有するレジストが得られる。その後、上記の感光性永久レジストを形成するのに必要な処理を行うことが好ましい。
【0120】
感光性永久レジストを備えた基板は、その後、半導体素子などの実装(例えば、ワイヤーボンディング、C4はんだ接続)がなされ、そして、パソコン等の電子機器へ装着される。
【0121】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に制限されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【実施例】
【0122】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
(感光性フィルムの作製)
表1及び表2に示した各成分を、そこに示す配合比(質量基準)で混合することにより実施例1〜6、比較例1〜9の感光性樹脂組成物溶液を得た。なお、希釈剤には、メチルエチルケトンを使用した。
【0123】
【表1】

【0124】
【表2】

【0125】
表1及び表2に示される各成分として下記のものを使用した。
(a)成分
EXP−2810:酸変性クレゾールノボラック型エポキシアクリレート(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名)
ZFR−1158:ビスフェノールF型エポキシアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名)
CCR−1219H:クレゾールノボラック型エポキシアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名)
UXE−3024:ウレタン変性エポキシアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名)
樹脂(1):アクリル共重合体(メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルの共重合体で重量平均分子量60000、酸価110mgKOH/g、ZP−18、日立化成工業株式会社製)
(b)成分
DCP:トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名)
UX−5002D−M20:トリシクロデカン構造含有ウレタンアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名)
(c)成分
TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(ダロキュアTPO、チバ・ジャパン株式会社製、商品名)
OXE−02:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(イルガキュアOXE−02、チバ・ジャパン株式会社製、商品名)
(d)成分
NC−3000H:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名)、
YX−4000:ビフェノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、
YSLV−80XL:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製、商品名)、
EP828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製、商品名)、
(e)成分
シリカフィラー成分には、以下の材料を使用した。
シリカA:シリカフィラーの平均粒径が50nmでシランカップリング剤として、メタクリルシランである3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランでカップリング処理して、上記(a)カルボキシル基及びエチレン性不飽和基を分子内に少なくとも1つ以上有する樹脂中に分散した。分散状態は、動的光散乱式ナノトラック粒度分布計「UPA−EX150」(日機装株式会社製)を用いて測定し、最大粒径が1μm以下となっていることを確認した。
シリカB:シリカフィラーの平均粒径が1μmでメチルエチルケトン中にスラリー状に分散されているシリカフィラー分散体SC2050(アドマテックス株式会社製)使用した。分散状態は、レーザー回折散乱式マイクロトラック粒度分布計「MT−3100」(日機装株式会社製)を用いて測定した。最大粒径は約3μmとなっていることを確認した。
その他の成分
ヒタロイド9082:ウレタンアクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名)
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名)
FA−321M:ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名)
BL−3175:ブロック型イソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名)
ジシアンジアミド(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)
メラミン:(メラミン、日産化学工業株式会社製、商品名)
フタロシアニンブルー(東洋インキ製造株式会社製)
硫酸バリウム(バリエースB−30、平均粒子径0.3μm、堺化学工業株式会社製)
【0126】
フィラーとしてのシリカ、硫酸バリウム分散液の調整を以下の方法で調整した。上記(b)成分又は(b)成分とは異なる、分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を有する光重合性モノマー、シリカまたは硫酸バリウムの所定量、メラミン2質量部、メチルエチルケトン50質量部をスターミルLMZ(アシザワファインテック株式会社製)で、直径1.0mmのジルコニアビーズを用い、周速12m/sにて3時間分散してシリカ、硫酸バリウム分散液をそれぞれ調整した。
【0127】
次いで、調整した感光性樹脂組成物溶液を支持層である16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(G2−16、帝人株式会社製、商品名)上に均一に塗布することにより感光性樹脂組成物層を形成し、それを、熱風対流式乾燥機を用いて100℃で約10分間乾燥した。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、25μmであった。
【0128】
続いて、感光性樹脂組成物層の支持層と接している側とは反対側の表面上に、ポリエチレンフィルム(NF−15、タマポリ株式会社製、商品名)を保護フィルムとして貼り合わせ、支持層/感光性樹脂組成物層/保護フィルムを有してなる感光性フィルムを得た。
(特性評価)
[解像性の評価]
解像性の指標として、レジスト形状を評価した。12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(E−679、日立化成工業株式会社製、商品名)の銅表面を砥粒ブラシで研磨し、水洗後、乾燥した。このプリント配線板用基板上に真空加圧式ラミネータ(平坦プレス付2ステージ方式、MVLP−500、株式会社名機製作所製、商品名)を用いて、プレス熱板温度70℃、真空引き時間20秒、ラミネートプレス時間30秒、気圧4kPa以下、圧着圧力0.4MPaの条件の下、感光性フィルムの保護フィルムを剥離して積層し、評価用積層体を得た。
【0129】
その後、室温(25℃)で1時間以上放置した後、得られた評価用積層体の支持体上に、21段ステップタブレット(イーストマンコダック社製)を密着させ、超高圧水銀ランプを光源とした平行光露光方式の露光機EXM−1201(株式会社オーク製作所製)を用いて露光を行った。露光後から室温で30分間放置した後、支持体のポリエチレンテレフタレートを除去し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で未露光部の感光性樹脂組成物を60秒間スプレー現像した。現像後、21段ステップタブレットの残存ステップ段数が8.0となる露光エネルギー量を感光性樹脂組成物層の最適露光量(単位;mJ/cm)とした。
【0130】
続いて、上記で得られた最適露光量で同様にして得られた評価用積層体を室温で1時間以上放置した後、直径60μmの開口パターンを有するネガパターンを介し、平行光露光方式の露光機EXM−1201(株式会社オーク製作所製)を用いて露光を行った。
【0131】
露光後、室温で30分間放置し、支持体のポリエチレンテレフタレートを除去し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で未露光部の感光性樹脂組成物を、最小現像時間(未露光部が現像される最小時間)の1.5倍の時間でスプレー現像した。スプレー現像後、株式会社オーク製作所製の紫外線照射装置を使用して1J/cmの紫外線照射を行い、さらに160℃/60分間で加熱処理し、直径60μmの開口部を有する永久マスクレジストパターンを形成した。
【0132】
次いで、株式会社日立製作所製のS−2100A型走査型電子顕微鏡を用いてレジストパターンの直径60μmの開口部における断面を観察した。開口部のレジスト形状は、はんだの密着性の観点から、断面形状が「順テーパ」形、又は「ストレート」形であることが望ましい。露光不足により現像時にレジスト底部が溶出してできる、「アンダーカット」や、過露光によりレジスト上部が残ってせり出す、「オーバーハング」のような逆テーパ形状であると、はんだ付けの際、はんだの密着性が悪くなる可能性があり、好ましくない。レジスト形状の評価は、レジスト開口部の断面形状が順テーパ形又はストレート形となっているものを「3」とし、5μm以下の僅かにオーバーハング又はアンダーカットが発生しているものを「2」、オーバーハング又はアンダーカットが発生し完全に逆テーパ形となっているものを「1」とした。結果を表3、表4に示した。
【0133】
[評価基板の作製]
12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(E−679、日立化成工業株式会社製、商品名)の銅表面を砥粒ブラシで研磨し、水洗後、乾燥した。このプリント配線板用基板上に真空加圧式ラミネータ(MVLP−500、株式会社名機製作所製、商品名)を用いて、プレス熱板温度70℃、真空引き時間20秒、ラミネートプレス時間30秒、気圧4kPa以下、圧着圧力0.4MPaの条件の下、上記感光性フィルムのポリエチレンフィルムを剥離して積層し、評価用積層体を得た。
【0134】
評価用積層体上に、ネガとして2mm角のパターンを有するフォトツールを密着させ、株式会社オーク製作所製EXM−1201型露光機を使用して、ストーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光を行った。次いで、常温(25℃)で1時間静置した後、上記積層体上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、最小現像時間(未露光部が現像される最小時間)の2.0倍の時間でスプレー現像を行い、パターンを形成した。
【0135】
続いて、株式会社オーク製作所製紫外線照射装置を使用して1J/cmのエネルギー量で紫外線照射を行い、さらに160℃で60分間加熱処理を行うことにより、2mm角の開口部を有するソルダーレジストを形成した評価用積層体基板を得た。
【0136】
[金めっき性(金メッキ耐性)の評価]
上記の2mm角の開口部を有するソルダーレジストを形成した評価用積層体基板を市販の無電解ニッケル/金めっき液を用いて、ニッケルめっき厚5μm、金めっき厚0.1μmとなるようにめっきを行い、ソルダーレジストの外観を実体顕微鏡で観察し次の基準で評価した。すなわち、開口部周辺にソルダーレジストの白化が認められないものは「3」とし、10μm以下で白化、剥れが発生したものを「2」、白化、剥れが大きく発生したものを「1」とした。結果を表3、表4に示した。
【0137】
[HAST耐性の評価]
12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(E−679、日立化成工業株式会社、商品名)の銅表面を、エッチングによりライン/スペースが25μm/25μmのくし型電極に加工し、これを評価基板とした。
【0138】
この評価基板におけるくし型電極上に、上記「評価基板の作製」と同様にしてレジストの硬化物からなるソルダーレジストを形成し(くし型電極部分にソルダーレジストが残るように露光し現像、紫外線照射、加熱処理を行い形成)、その後、130℃、85%RH、20V条件下に100時間晒した。その後、抵抗値の測定とマイグレーションの発生の程度を100倍の金属顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。すなわち、100時間後晒した後でも抵抗値が1.0×1010Ω以上が保持されており、更に100時間、合計200時間後晒した後でもソルダーレジスト膜にマイグレーションが発生しなかったものは「4」、200時間後ではソルダーレジスト膜にマイグレーションが僅かに発生するが、100時間後ではマイグレーションが発生しなかったものは「3」とし、100時間後で抵抗値が1.0×1010Ω以上が保持されていたが、僅かにマイグレーションが発生したものは「2」、抵抗値が1.0×1010Ω以下となり、マイグレーションが大きく発生したものは「1」とした。結果を表3、表4に示した。
【0139】
[Tgの評価]
16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(G2−16、帝人株式会社製、商品名)上に、上記のようにソルダーレジストの硬化物を形成し(全面を露光して、現像、紫外線照射、加熱処理まで行い形成)、次いで、カッターナイフで、幅3mm、長さ30mmに切り出した後、該積層体上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、熱膨張係数評価用感光性樹脂硬化物を得た。TMA装置SS6000(セイコー・インスツルメンツ株式会社製)を用いて、引張りモードでの熱膨張係数の測定を行った。引張り荷重は2g、スパン(チャック間距離)は15mm、昇温速度は10℃/分である。まず、サンプルを装置に装着し、室温(25℃)から160℃まで加熱し、15分間放置した。その後、−60℃まで冷却し、−60℃から250℃まで昇温速度10℃/分の条件で測定を行った。25℃から200℃までの範囲で見られる変曲点をTgとし、その時の温度が、120℃以上のものを「4」、100℃から120℃未満のものを「3」、100℃から80℃未満のものを「2」、80℃未満のものを「1」とした。結果を表3、表4に示した。
【0140】
[CTEの評価]
上記Tgの評価の測定により同時に求められるTg以下のCTE(線熱膨張係数)を比較した。CTEが50ppm未満のものを「4」、50ppm以上で55ppm未満のものを「3」、55ppm以上で60ppm未満のものを「2」、60ppm以上のものを「1」とした。結果を表3、表4に示した。
【0141】
[耐クラック性の評価]
上記「評価基板の作製」と同様にソルダーレジストを形成した評価用積層体基板を、−65℃の大気中に15分間晒した後、180℃/分の昇温速度で昇温し、次いで、150℃の大気中に15分間晒した後、180℃/分の降温速度で降温する熱サイクルを1000回繰り返した。このような環境下に晒した後、評価用積層体基板の永久レジスト膜のクラック及び剥離程度を100倍の金属顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。すなわち、2mm角の開口部の10箇所を確認して永久レジスト膜のクラック及び剥離を全く観察できなかったものは「3」とし、10箇所中2箇所以下でクラック及び剥離が観察されたものを「2」、10箇所中3箇所以上でクラック及び剥離が観察されたものを「1」とした。
【0142】
[保管安定性]
作製した感光性フィルムを室温(25℃)で20日間放置した後、上記の露光、現像、UV照射、加熱工程を経て形成されたパターンを実体顕微鏡で観察し以下の基準にて判定した。
[2] 未露光部分に樹脂残りがないもの
[1] 未露光部分に樹脂残りがあるもの
結果を表3、表4に示した。
【0143】
【表3】

【0144】
【表4】

【0145】
表3、4より、シリカの代わりに硫酸バリウムを用いた比較例2は、解像性、線膨張係数(CTE)、耐クラック性に劣る。(b)成分の分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と、トリシクロデカン構造とを有する光重合性モノマーを用いない比較例3、(d)成分の一般式(1)で表されるエポキシ樹脂を用いない比較例4、6〜9、(a)成分の分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂を用いない比較例5は、金めっき耐性、HAST耐性、Tg、CET、クラック耐性に劣る。これに対し(a)成分〜(e)成分を含有する本発明の感光性樹脂組成物は、解像性及び金めっき耐性といった、ソルダーレジストにおいて一般的に要求される諸特性に加え、特にHAST耐性、高耐熱性(Tg、耐クラック性)に優れていることが分かる。また、CTEの低減にも有効であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)成分:分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する樹脂、
(b)成分:分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と、トリシクロデカン構造とを有する光重合性モノマー、
(c)成分:光重合開始剤、
(d)成分:下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂、及び
(e)成分:シリカフィラー
を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(e)成分の平均粒径が、3〜300nmであり、かつ、感光性樹脂組成物中に最大粒径が1μm以下で分散されており、その充填量が全質量中の20〜70質量%である、感光性樹脂組成物。
【化1】

[一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基およびフェニル基の中から選択される1種を示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい]
【請求項2】
前記(b)成分が、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、トリシクロデカンジオールジアクリレート及びトリシクロデカンジオールジメタクリレートからなる群から選択される1種以上である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(b)成分が、下記一般式(2)又は一般式(3)で示される部分構造を有する請求項1又は請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】


【化3】

[一般式(2)又は(3)中、R、Rは直接結合、アルキレン、又はアリーレンを示す。]
【請求項4】
前記一般式(2)又は一般式(3)で示される部分構造を有する化合物が、トリシクロデカン構造を含むジオール化合物と、ジイソシアネート化合物と、分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と1個のヒドロキシル基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン化合物である請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ジイソシアネート化合物が、環構造を有するジイソシアネートである請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を支持体上に塗布、乾燥して形成した感光性積層体からなる感光性フィルム。

【公開番号】特開2012−83467(P2012−83467A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228436(P2010−228436)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】