説明

感光性樹脂組成物用保護層

【課題】本発明により、開始剤として有機ホウ素アニオン含有化合物を含有する感光性樹脂組成物用の保護層を提供する。
【解決手段】本発明は、近赤外線に感光性を有し、開始剤として有機ホウ素アニオン含有化合物を含有する感光性樹脂組成物用の保護層であって、水溶性またはアルカリ可溶性樹脂から形成され、塗布量1.0〜2.5g/mを有する保護層に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物用の保護層、特に近赤外線に感光性を有し、開始剤として有機ホウ素アニオン含有化合物を含有する感光性樹脂組成物用の保護層に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版は、樹脂組成物層からなる数ミクロンの厚さの画像部が親油性となってインキを受け取り、親水化処理された支持体露出部が非画像部となって水を受け取って被印刷物に印刷するシステムである。このような感光性平版印刷版の感光材料として、その光架橋度を上げることにより強靭な皮膜が得られること、開始剤系の適切な選択によって高感度化が比較的容易であることなどから、光重合性の感光性樹脂組成物が印刷分野で広く使用されている。特に近年のコンピューター技術およびレーザー技術の著しい進歩に伴い、コンピューター処理された画像情報を、レーザー走査露光により光重合性の感光性樹脂組成物層に直接記録し、記録した画像を現像して印刷版を製造する方法が検討されている(CTP(Computer To Plate))。レーザー光源としては、355nmの半導体レーザー(紫外)、405nmの半導体レーザー(紫)、488nmのアルゴンレーザー(青)、532nmのFD‐YAGレーザー(緑)、633nmのヘリウムネオンレーザー(赤)、670nmの半導体レーザー(赤)、780nmの半導体レーザー(近赤外)、830nmの半導体レーザー(近赤外)、1064nmのYAGレーザー(赤外)など、多岐にわたるが、最近は、高出力の得られる近赤外または赤外領域の半導体レーザー、特に、830nmの半導体レーザー(近赤外)が注目を集めている。
【0003】
830nmの半導体レーザー用に用いられる感光性樹脂組成物には、通常、当該波長に吸収を有する色素、即ち、近赤外吸収色素を添加するが、この近赤外吸収色素は、わずかながら、可視光領域にも吸収を有するので、高感度の光重合性の感光性樹脂組成物と組み合わせて(特許文献1)感光性平版印刷版材とすると、可視光領域にも感光性を有するようになり、黄色灯または紫外線をカットした白色灯などの明るい安全光下でも、光重合反応が生起する場合がある。このため、レーザー走査露光をする前に、感光性平版印刷版材の感光層が全面光硬化してしまうという、いわゆる「カブリ現象」を生じるという問題があった。
【0004】
これに類似した問題を解決するため、感光性樹脂組成物層上に、特定範囲の波長の光を吸収する染料等または紫外線吸収剤を含有する保護層を設ける方法が提案されている(特許文献2〜6)。しかしながら、本発明は、830nmの半導体レーザー用に用いられる、特定の感光性樹脂組成物を対象にしているので、これらの特許文献に記載の方法を適用するだけでは、「カブリ現象」を解消することはできない。問題解決には、新たな発明が必要であった
【0005】
一方、保護層のある版材であっても、版材を複数枚積み上げたときに、版材間の粘着力により版材同士が付着してしまって、使用時に一枚ずつ取り上げることができなくなる問題がある。このような問題を解決するために、感光層やその上に形成した被覆層等に樹脂粒子を含有させることによって、またはグラビアロールなどを用いることによって、感光層やその上に形成した被覆層等の表面に凹凸を形成することが提案されている(特許文献7〜10)。
【特許文献1】特許第3321288号公報
【特許文献2】特公平7‐60268号公報
【特許文献3】特開平8‐137096号公報
【特許文献4】特開平8‐248639号公報
【特許文献5】特開2004‐240093号公報
【特許文献6】特開2004‐252201号公報
【特許文献7】特開平昭2000‐235255号公報
【特許文献8】特開昭51‐96604号公報
【特許文献9】特開昭55‐12974号公報
【特許文献10】特開昭58‐182636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来の感光性樹脂組成物用の保護層の有する問題を解決するものであり、その目的とするところは、黄色灯または紫外線カットした白色灯などの明るい安全光下でも保存安定性が優れ、水性アルカリ現像液による現像が可能な印刷版材を得ることができる感光性樹脂組成物用保護層を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、水溶性またはアルカリ可溶性樹脂から形成され、400〜800nmの波長領域に吸収を有する有機顔料および/または水溶性染料を含有することによって、黄色灯または紫外線カットした白色灯などの明るい安全光下でも保存安定性が優れ、水性アルカリ現像液による現像が可能な印刷版材を得ることができる感光性樹脂組成物用保護層を提供することができ、そのことにより上記目的が達成されることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、近赤外線に感光性を有し、開始剤として有機ホウ素アニオン含有化合物を含有する感光性樹脂組成物用の保護層であって、水溶性またはアルカリ可溶性樹脂から形成され、塗布量1.0〜2.5g/mを有する保護層である。
【0009】
更に、本発明を好適に実施するためには、
上記水溶性またはアルカリ可溶性樹脂が、ポリ酢酸ビニル部分ケン化物またはその変性物、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体および不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物との共重合体から成る群から選択され;
上記水溶性またはアルカリ可溶性樹脂が、400〜800nmの波長領域に吸収を有する有機顔料および/または水溶性染料を前記水溶性またはアルカリ可溶性樹脂100重量部に対して25〜50重量部更に含有し;
上記有機顔料が、アゾ系顔料および/またはフタロシアニン系顔料であり、前記水溶性染料が、スルホン酸塩構造を有するアニオン系染料であり;
上記水溶性またはアルカリ可溶性樹脂が、有機顔料を含有する場合に、更にイオン性基を含有する水溶性もしくは水分散性樹脂を含有し;
上記水溶性またはアルカリ可溶性樹脂が、更にマット化剤を保護層の固形分100重量部に対し0.05〜0.5重量部含有し;
上記マット化剤が、シリカ、架橋ポリメチルメタクリレートおよび架橋ポリスチレン粒子から成る群から選択され、平均粒径3〜20μmおよび粒度分布1〜30μmを有する;
ことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、水溶性またはアルカリ可溶性樹脂から形成され、400〜800nmの波長領域に吸収を有する有機顔料および/または水溶性染料を含有することによって、黄色灯または紫外線カットした白色灯などの明るい安全光下でも保存安定性が優れ、水性アルカリ現像液による現像が可能な印刷版材を得ることができる感光性樹脂組成物用保護層を提供し得たものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の感光性樹脂組成物用の保護層を更に詳細に説明する。
【0012】
[感光性樹脂組成物]
以下、本発明の感光性樹脂組成物を更に詳細に説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和化合物、アルカリ可溶性樹脂、近赤外吸収色素、ハロメチル基含有化合物および有機ホウ素アニオン含有化合物を含有する。
【0013】
(エチレン性不飽和化合物)
本発明の感光性樹脂組成物に用いることができるエチレン性不飽和化合物は、光重合開始剤の作用によりラジカル付加重合して硬化するエチレン性不飽和二重結合を有する化合物であれば特に限定されない。
【0014】
具体的には、アクリル酸、メタアクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐プロピル(メタ)アクリレート、iso‐プロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、iso‐ブチル(メタ)アクリレート、sec‐ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n‐ノニル(メタ)アクリレート、n‐デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n‐トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、分子量200〜1,000のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、分子量200〜1,000のポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、分子量200〜1,000のポリエチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、分子量200〜1,000のポリプロピレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、分子量200〜1,000のポリエチレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、分子量200〜1,000のポリプロピレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、n‐ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2‐フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,3‐ジクロロプロピル(メタ)アクリレート、3‐クロロ‐2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N‐ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N‐ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N‐t‐ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3‐プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート;アクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、エチレンビスメタクリルアミド、ヘキサメチレンビスアクリルアミドおよびヘキサメチレンビスメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0015】
また、ポリエステルポリオール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよび1,3‐ブチレングリコールのようなジオール成分と、フタル酸、テトラヒドロフタル酸およびヘキサヒドロフタル酸のような二塩基酸またはその無水物のような酸成分とから得られる)とポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、4,4'‐ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートなど)とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート(例えば、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなど)とを反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;特開平10‐90886号公報に記載されている分子内に3個以上のイソシアネート基を有する化合物(例えばジイソシアネート類のイソシアヌレート体、ビュレット体、アダクト体)とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート(例えば、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなど)を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、シェルのエピコート828、エピコート1001、エピコート1004およびエピコート807など)と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるビスフェノール型エポキシアクリレート;ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、シェルのエピコート152およびエピコート154)と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるノボラック型エポキシアクリレートなども好適に用いることができる。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物に用いることができるエチレン性不飽和化合物は、前述のような化合物であってもよいが、(メタ)アクリル基を2個以上、好ましくは3〜15個、より好ましくは4〜15個有することが望ましく、分子量300〜3,000、好ましくは500〜3,000を有するものが望ましい。上記エチレン性不飽和化合物の(メタ)アクリル基が2個未満では、耐刷性が低くなる。上記エチレン性不飽和化合物の分子量が300未満では架橋密度は高くなるものの耐衝撃性が弱くなり、かえって耐刷性が低くなり、3,000を超えると架橋密度が低くなり、耐刷性が低くなる。
【0017】
上記のようなエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記感光性樹脂組成物の総重量に対して、30〜90重量%、好ましくは40〜80重量%であることが望ましい。上記エチレン性不飽和化合物の含有量が30重量%未満では感度が低下して耐刷性が低くなり、90重量%を超えると印刷版材など製品の固形保持性が必要な場合、固形保持性が悪くなる。
【0018】
(アルカリ可溶性樹脂)
本発明の感光性樹脂組成物に用いることができるアルカリ可溶性樹脂は、カルボン酸を側鎖に有する樹脂、およびカルボン酸およびエチレン性不飽和基を側鎖に有する樹脂、またはそれらの混合物が挙げられる。上記エチレン性不飽和基は、アルカリ可溶性樹脂の側鎖にあるカルボン酸の一部とエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物とを反応することにより導入される。上記エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物としては、特許第2758737号において、化合物(III)(エポキシ基と(メタ)アクリロイル若しくは(メチル置換基を有してよい)ビニル基とを有する化合物)として記載されている化合物、特許第2763775号において、脂環式エポキシ基含有不飽和化合物(一分子中に1個のラジカル重合性の不飽和基と脂環式エポキシ基とを有する化合物)として記載されている化合物などが使用可能であるが、好ましいものは、グリシジル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリレートなどである。
【0019】
上記アルカリ可溶性樹脂の具体例として、モノマーとして(メタ)アクリル酸、メタクリル酸2‐サクシノロイルオキシエチル、メタクリル酸2‐マレイノロイルオキシエチル、メタクリル酸2‐フタロイルオキシエチル、メタクリル酸2‐ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸を単独重合させた樹脂や、これらの不飽和カルボン酸とカルボキシル基を有さないビニルモノマーの1種以上とを共重合させた樹脂が挙げられる。
【0020】
カルボキシル基を有さないビニルモノマーとしては、
(I)ヒドロキシル基含有モノマー:例えば2‐ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、アリルアルコール、メタアリルアルコール、N‐(4‐ヒドロキシフェニル)アクリルアミドまたはN‐(4‐ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o‐、m‐、p‐ヒドロキシスチレン、o‐、m‐、p‐ヒドロキシフェニル‐アクリレートまたは‐メタクリレート;
(II)アルキルアクリレートもしくはメタクリレート:例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチルアクリレート、2‐クロロエチルアクリレート;
(III)重合性アミド:例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N‐メチロールアクリルアミド、N‐メチロールメタクリルアミド、N‐エチルアクリルアミド、N‐ヘキシルアクリルアミド、N‐シクロヘキシルアクリルアミド、N‐ヒドロキシエチルアクリルアミド、N‐フェニルアクリルアミド、N‐ニトロフェニルアミド、N‐エチル‐N‐フェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド類;
【0021】
(IV)含窒素アルキルアクリレートもしくはメタクリレート:例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート;
(V)ビニルエーテル類:例えばエチルビニルエーテル、2‐クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル;
(VI)ビニルエステル類:例えばビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル;
【0022】
(VII)スチレン類:例えばスチレン、α‐メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン;
(VIII)ビニルケトン類:例えばメチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン;
(IX)オレフィン類:例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン;
【0023】
(X)グリシジル(メタ)アクリレート;
(XI)重合性ニトリル:例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル;
(XII)N‐ビニルピロリドン、N‐ビニルカルバゾール、4‐ビニルピリジン:
(XIII)両性イオン性単量体:N,N‐ジメチル‐N‐メタクリルオキシエチル‐N‐(3‐スルホプロピル)‐アンモニウム‐ベタイン、N,N‐ジメチル‐N‐メタクリルアミドプロピル‐N‐(3‐スルホプロピル)‐アンモニウム‐ベタイン、1‐(3‐スルホプロピル)‐2‐ビニルピリジニウム‐ベタイン;等が挙げられる。
【0024】
また、無水マレイン酸をスチレン、α‐メチルスチレン等と共重合させ、無水マレイン酸をメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の一価アルコールでハーフエステル化あるいは水により加水分解させた樹脂も挙げられる。
【0025】
さらに、ノボラックエポキシアクリレート樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂等に(メタ)アクリル酸、メタクリル酸2‐サクシノロイルオキシエチル、メタクリル酸2‐マレイノロイルオキシエチル、メタクリル酸2‐フタロイルオキシエチル、メタクリル酸2‐ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、等の不飽和カルボン酸あるいは酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸等の飽和カルボン酸を付加させた後、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水フタル酸等の酸無水物で変性させた樹脂も挙げられる。
【0026】
それらの中では、合成のし易さ、エチレン性不飽和化合物との相溶性の点から、アクリル系樹脂が好ましく、それらの具体例(好ましい例)として、メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体、メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸2‐エチルヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル/メタクリル酸n‐ブチル/アクリル酸2‐エチルヘキシル/メタクリル酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸2‐ヒドロキシエチル/メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸n‐ブチル/アクリル酸2‐エチルヘキシル/メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸n‐ブチル/アクリル酸2‐エチルヘキシル/スチレン/メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0027】
本発明においては、側鎖にエチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性でない樹脂を混合して使用することもできる。そのような側鎖にエチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性でない樹脂としては、例えば、カルボン酸を有するアルカリ可溶性樹脂のカルボン酸の全てを、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物(グリシジル(メタ)アクリレート、3,4‐エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなど)のエポキシ基と反応させた樹脂、ヒドロキシル基を有するアルカリ可溶性でない樹脂を、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物のイソシアネート基と反応させた樹脂などが挙げられる。その他の方法で、側鎖にエチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性でない樹脂を合成し使用しても特に問題ない。
【0028】
これらの樹脂とアルカリ可溶性樹脂を混合したものが結果としてアルカリ可溶性であれば特に問題なく、全体としてアルカリ可溶性樹脂と見なすことができる。その場合の樹脂特性は混合物として見なしている。
【0029】
本発明においては、側鎖にエチレン性不飽和基を有さず、かつアルカリ可溶性でもない樹脂も、前記アルカリ可溶性樹脂と混合して使用することができる。このような樹脂は、添加剤的な樹脂とも考えられるが、アルカリ可溶性樹脂と混合して用いられるので、ここに記載する。そのような、エチレン性不飽和基を有さず、アルカリ可溶性でない樹脂は、前述のカルボキシル基を有さないビニルモノマーとして例示したモノマーを重合することにより得られるアクリル樹脂が一般的である。
【0030】
本発明に用いることができるアルカリ可溶性樹脂は、酸価30〜150KOH・mg/g、好ましくは50〜130KOH・mg/gを有し、重量平均分子量5,000〜200,000、好ましくは10,000〜200,000を有することが望ましい。上記アルカリ可溶性樹脂の酸価が、30KOH・mg/g未満ではアルカリ現像性が不十分となり、150KOH・mg/gより大きいと、アルカリ現像性は十分であるが、膜減りして画像残存性が悪くなる。
【0031】
上記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量が、5,000未満では耐刷性が低くなり、印刷版材など製品の固形保持性が必要な場合に固形保持性が低下し、200,000を超えるとアルカリ現像性が低くなる。
【0032】
上記エチレン性不飽和化合物:アルカリ可溶性樹脂の配合比は、40:60〜90:10、好ましくは50:50〜90:10、より好ましくは60:40〜90:10である。上記アルカリ可溶性樹脂が、10重量%未満ではアルカリ現像性が低く、また固形保持性が悪くなり、60重量%を超えると耐刷性が低くなる。
【0033】
(近赤外吸収色素)
本発明の感光性樹脂組成物に用いることができる近赤外吸収色素は、600〜1100nmの波長領域に吸収を有する化合物であって、具体的には、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、シアニン系色素、ポリメチン系色素などが挙げられるが、増感色素として当業者に知られているものであれば特に限定されない。その中でも、シアニン系色素、ポリメチン系色素が好ましく、さらに、800〜860nmに極大吸収波長を有するものが特に好ましい。近赤外吸収色素は単独または組み合わせて配合することができる。
【0034】
具体的には、以下に例示したものが挙げられるが、これに限定される訳ではない。
キノリン系シアニン色素、例えば以下の式:
【化1】

で表される1‐エチル‐4‐[5‐(1‐エチル‐4(1H)‐キノリニリデン)‐1,3‐ペンタジエニル]キノリニウムアイオダイド(814nm;MeOH)、以下の式:
【化2】

で表される1‐エチル‐2‐[7‐(1‐エチル‐2(1H)‐キノリニリデン)‐1,3,5‐ヘプタトリエニル]キノリニウムアイオダイド(817nm;MeOH);
ベンゾピリリウム系シアニン色素、例えば以下の式:
【化3】

で表される8‐[(6,7‐ジヒドロ‐2,4‐ジフェニル‐5H‐1‐ベンゾピラン‐8‐イル)メチレン]5,6,7,8‐テトラヒドロ‐2,4‐ジフェニル‐1‐ベンゾピリリウムパークロレート(840nm;ジクロロエタン);
ベンゾチアゾール系シアニン色素、例えば以下の式:
【化4】

で表される5‐クロロ‐2‐[2‐[3‐[2‐(5‐クロロ‐3‐エチル‐2(3H)‐ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]‐2‐ジフェニルアミノ‐1‐シクロペンテン‐1‐イル]エテニル]‐3‐エチルベンゾチアゾリウムパークロレート(825nm;DMSO)、以下の式:
【化5】

で表される3‐エチル‐2‐[2‐[3‐[2‐(3‐エチル‐2(3H)‐ベンゾチアゾリリデン)エチリデン]‐2‐ジフェニルアミノ‐1‐シクロペンテン‐1‐イル]エテニル]ベンゾチアゾリウムパークロレート(831nm;DMSO);
インドール系シアニン色素、例えば以下の式:
【化6】

で表される2‐[2‐[2‐クロロ‐3‐[(3‐エチル‐1,3‐ジヒドロ‐1,1‐ジメチル‐2H‐ベンズ[e]インドール‐2‐イリデン)エチリデン]‐1‐シクロヘキセン‐1‐イル]エテニル]‐1,1‐ジメチル‐3‐エチル‐1H‐ベンズ[e]インドリウムテトラフルオロボレート(816nm;MeOH)、以下の式:
【化7】

で表される3‐ブチル‐1,1‐ジメチル‐2‐[2[2‐ジフェニルアミノ‐3‐[(3‐ブチル‐1,3‐ジヒドロ‐1,1‐ジメチル‐2H‐ベンズ[e]インドール‐2‐イリデン)エチリデン]‐1‐シクロペンテン‐1‐イル]エチエニル]‐1H‐ベンズ[e]インドリウムパークロレート(830nm;MeOH)、以下の式:
【化8】

で表される2[2‐[2‐クロロ‐3‐[(3‐エチル‐1,3‐ジヒドロ‐1,1‐ジメチル‐2H‐ベンズ[e]インドール‐2‐イリデン)エチリデン]‐1‐シクロペンテン‐1‐イル]エテニル]‐1,1‐ジメチル‐3‐エチル‐1H‐ベンズ[e]インドリウムアイオダイド(841nm;MeOH);
ポリメチレン系色素、例えば以下の式:
【化9】

で表される1,1,5,5‐テトラキス[4‐(ジエチルアミノ)フェニル]‐1,4‐ペンタジエン‐3‐イリウム=p‐トリエンスルホナート(817nm;AcCN アセトニトリル)、以下の式:
【化10】

で表される1,5‐ビス[4‐(ジエチルアミノ)フェニル]‐1,5‐ビス(4‐メトキシフェニル)‐1,4‐ペンタジエン‐3‐イリウムトリフルオロメタンスルホネート(819nm;AcCN)、以下の式:
【化11】

で表される1,1,5,5‐テトラキス[4‐(ジエチルアミノ)フェニル]‐1,4‐ペンタジエン‐3‐イリウム=ブチル(トリフェニル)ボレート(820nm;AcCN)
【0035】
本発明の感光性樹脂組成物において、上記近赤外吸収色素の配合量は、上記エチレン性不飽和化合物と上記アルカリ可溶性樹脂の合計量100重量部に対して、0.05〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。上記近赤外吸収色素の配合量が0.05重量部を下回ると硬化が不十分となり、20重量部を上回ると下層部の硬化が困難となる。
【0036】
(ハロメチル基含有化合物)
本発明の感光性樹脂組成物に用いることができるハロメチル基含有化合物としては、水素原子の少なくとも1つが塩素原子または臭素原子で置換されたメチル基を少なくとも1つ有するS‐トリアジン化合物、好ましくは以下の式:
【化12】

[式中、R13、R14およびR15は、R13〜R15の少なくとも1つはトリクロロメチル基であるという条件で、独立してトリクロロメチル基、炭素数1〜10、好ましくは1〜4の置換基を有していてもよいアルキル基、炭素数6〜15、好ましくは6〜10のアリール基、炭素数7〜25、好ましくは7〜14のアラルキル基、炭素数1〜10、好ましくは1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜15、好ましくは2〜10のアルケニル基、ピペリジノ基、ピペロニル基、アミノ基、炭素数2〜20、好ましくは2〜8のジアルキルアミノ基、チオール基または炭素数1〜10、好ましくは1〜4のアルキルチオ基である。]
で示されるような、少なくとも1つのトリクロロメチル基がS‐トリアジン骨格の炭素原子に結合しているS‐トリアジン化合物、およびトリブロモメチルスルホニル基を有する化合物、例えばトリブロモメチルフェニルスルホン、2‐トリブロモメチルスルホニルピリジン、2‐トリブロモメチルスルホニルベンズチアゾール等が挙げられる。
【0037】
本発明に特に好適に用いることができるS‐トリアジン化合物の具体的には、2,4,6‐トリス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐メチル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐メトキシ‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐フェニル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐(p‐メトキシフェニル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐(4‐メチルチオフェニル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐(p‐クロロフェニル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐(4‐メトキシナフチル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐ピペロニル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐ピペリジノ‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐スチリル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐(p‐メトキシスチリル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐(3,4‐ジメトキシスチリル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン、2‐(p‐ジメチルアミノスチリル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジンが挙げられる。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物中において、上記ハロメチル基含有化合物の配合量は、上記エチレン性不飽和化合物と上記アルカリ可溶性樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。上記ハロメチル基含有化合物の量が0.1重量部を下回ると硬化が不十分となり、20重量部を上回ると硬化物の耐溶剤性等が低下する。
【0039】
(有機ホウ素アニオン含有化合物)
本発明の感光性樹脂組成物に用いることができる有機ホウ素アニオン含有化合物は、以下の式(a):
【化13】

[式中、R、R、RおよびRは、独立して炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数2〜10のアルカリール基、アリル基、炭素数1〜10のアラルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基または炭素数1〜10のアルキニル基であり、該基は置換基を有していてよく、Xは対カチオン、アルカリ金属カチオン(例えば、ナトリウムカチオン、リチウムカチオン)またはホスホニウムカチオンである。]
で表されることが必要である。
以下の式(b):
【化14】

[式中、R、R、RおよびRは独立して炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数2〜10のアルカリール基、アリル基、炭素数1〜10のアラルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルキニル基、シリル基、脂環式基または複素環基であり、該基は置換基を有していてもよく、また環状構造を有してもよく、R、R10、R11およびR12は、独立して炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数2〜10のアルカリール基、アリル基、炭素数1〜10のアラルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基または炭素数1〜10のアルキニル基であり、該基は置換基を有していてもよい(但し、R、R10、R11およびR12の少なくとも一つがアルキル基であるのが好ましい)。]
で表される化合物から成る群から選択されることが望ましい。
【0040】
上記式(a)で表される有機ホウ素アニオン含有化合物の例として、ナトリウムテトラフェニルボレート、リチウムトリフェニルn‐ブチルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラキス(4‐メチルフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、4‐メチルフェニルトリフェニルホスホニウムテトラキス(4‐メチルフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0041】
上記式(b)で表される有機ホウ素アニオン含有化合物の例として、テトラメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラメチルアンモニウムテトラアニシルボレート、1,5‐ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン‐5‐テトラフェニルボレート、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン‐7‐テトラフェニルボレート、2‐エチル‐4‐メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、テトラメチルアンモニウムトリフェニルn‐ブチルボレート、テトラメチルアンモニウムトリフェニルn‐オクチルボレート、テトラエチルアンモニウムトリフェニルn‐ブチルボレート、テトラメチルアンモニウムトリアニシルn‐ブチルボレートおよびテトラエチルアンモニウムジフェニルジn‐ブチルボレート等が挙げられる。
【0042】
本発明の感光性樹脂組成物において、上記有機ホウ素アニオン含有化合物の配合量は、上記エチレン性不飽和化合物と上記アルカリ可溶性樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。上記有機ホウ素アニオン含有化合物の配合量が0.1重量部を下回ると硬化が不十分となり、20重量部を上回ると硬化物の耐溶剤性等が低下する。
【0043】
(その他の添加剤)
本発明のアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物には、またその他添加剤として溶剤、着色剤、マット化剤、充填剤、熱重合禁止剤、可塑剤、塗布性改良のための界面活性剤、消泡剤および無機または有機の微小フィラーを含有してもよい。無機フィラーとしては、微粉末シリカ(粒径0.001〜2μm)や溶剤に分散したコロイダルシリカ(粒径0.001〜1μm)が好ましい。有機フィラーとしては、内部がゲル化したマイクロジェル(粒径0.01〜5μm)が好ましい。特に好ましいそれらのマイクロジェルの例は特開平4‐274428号公報に開示されている。これはSp値が9〜16の高分子乳化剤を用いる乳化重合により調整された粒子径が0.01〜2μmのマイクロジェルである。
【0044】
前述のようなエチレン性不飽和化合物、アルカリ可溶性樹脂、近赤外吸収色素、ハロメチル基含有化合物および有機ホウ素アニオン含有化合物、並びに要すればその他添加剤を、遮光下に高速撹拌器のような当業者に周知の装置を用いて機械的撹拌混合することにより、本発明の感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0045】
上記感光性樹脂組成物層の支持体上への塗布方法は特に限定されず、例えば、バーコーターを用いて塗布し、その後、例えば、60〜100℃で1〜10分間乾燥させる。乾燥後の塗布量は0.5〜2.5g/m程度とすることが好ましい。
【0046】
[保護層]
(水溶性またはアルカリ可溶性樹脂)
本発明の保護層は、前述のような感光性樹脂組成物の層上に形成される。本発明の保護層は、水溶性またはアルカリ可溶性樹脂から形成されることが必要である。更に、感光性平版印刷版用の感光層には、ラジカル連鎖重合反応を利用した光重合性の感光性樹脂組成物が特に高感度化には有効であるが、空気中の酸素の影響を受けると連鎖重合が初期あるいは途中で停止してしまうため、感光性樹脂組成物層の表面に更に酸素遮断層を設ける必要がある。従って、本発明の保護層は酸素遮断性も有することが好ましい。
【0047】
本発明の保護層に用いることができる水溶性またはアルカリ可溶性樹脂の例には、それらに限定されないが、(i)ポリビニルアルコール類、例えばポリ酢酸ビニルの部分ケン化物(ケン化度:70〜99モル%)、マレイン酸変性ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、イタコン酸変性ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、エチレン変性ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、株式会社クラレの商品名「エクセバール」(RS−4104、RS−4105、RS−3110、RS−2117、RS−1117、RS−2817、RS−1717、RS−1113、RS−2713、RS−1713などのRSポリマー)として知られる水溶性樹脂;(ii)ゼラチン;(iii)アラビアゴム;(iv)ポリエチレンオキサイド類;(v)ポリプロピレンオキサイド類;(vi)ポリビニルピロリドン類、例えばポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体、アルキル化ポリビニルピロリドン;(vii)メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体;(viii)セルロース類、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース;(ix)不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等)とエチレン性不飽和化合物(例えば、スチレン、α‐メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル等)との共重合体、例えばスチレンとα‐メチルスチレンとアクリル酸との共重合体;およびそれらの混合物が挙げられる。ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体および不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物との共重合体が好ましい。上記水溶性またはアルカリ可溶性樹脂を、上記(i)〜(viii)は水溶液から、(ix)はアンモニア水溶液から、塗布および乾燥工程を経て、感光性樹脂組成物層上に保護層を形成する。
【0048】
(有機顔料および/または水溶性染料)
本発明の感光性樹脂組成物層と保護層とを組み合わせて得られる感光性平版印刷版が、画像露光工程において、作業環境の改善のため、紫外線カットした白色灯または黄色灯などの明るい安全光下でも保存安定性の観点からも取り扱いが可能なものとするため、上記保護層用の水溶性またはアルカリ可溶性樹脂は、400〜800nmの波長領域に吸収を有する有機顔料および/または水溶性染料を更に含有することが望ましい。具体的には、紫外線カットした白色蛍光灯の発光波長(400〜700nm)またはイエローランプの発光波長(500〜700nm)を十分に遮蔽するように、保護層の吸収波長と吸光度を調整すればよい。吸光度は2.0以上(99%以上遮蔽)が好ましい。
【0049】
上記有機顔料としては、400〜800nmに光吸収を有する不溶性の有機顔料であって、従来公知のいかなるものであってもよいが、特に、モノアゾ、ジスアゾ、金属錯体等の不溶性アゾ系、アゾレーキ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、チオインジゴ系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系の各種有機顔料から選択される。また、前記水溶性染料としては、スルホン酸塩構造を有するアニオン系染料であることが望ましい。これらは、所望の光吸収を得るべく2種以上併用してもよい。
【0050】
本発明の保護層に用いられる上記有機顔料の例には、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Red 22、C.I.Pigment Red 254、C.I.Pigment Violet 1、C.I.Pigment Violet 23、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 15、C.I.Pigment Blue 15:4などが挙げられる。特に、アゾ系染料、フタロシアニン系染料が好ましい。
【0051】
カチオン系染料は、光を吸収して励起し、有機ホウ素アニオン含有化合物と反応してラジカル種を生じると言われているが、その染料が感光層に移行すると、酸素濃度が小さい場合は感光層の重合反応を誘発して硬化し、酸素濃度が大きい場合は酸素にトラップされて有機ホウ素アニオン含有化合物の有効濃度が低下して感度低下し、画像が形成されなくなる。従って、上記感光性樹脂組成物層には有機ホウ素アニオン含有化合物を含有するので、染料を用いる場合、塩基性染料等のカチオン系染料は使用できず、スルホン酸塩構造を有するアニオン系染料であることが望ましい。上記スルホン酸塩構造を有するアニオン系染料を使用することの更なる長所は、当該染料の水溶性が非常に良好であるため、上記水溶性またはアルカリ可溶性樹脂の水溶液と容易に混合できること、および、アルコールなどの有機溶剤に対する溶解性が悪いので、エチレン性不飽和化合物を含有する感光層への移行が極めて少ないことである。
【0052】
本発明の保護層に用いられる上記のスルホン酸塩構造を有するアニオン系染料の例には、C.I.Acid Yellow 1、C.I.Acid Yellow 23、C.I.Acid Red 26、C.I.Acid Red 35、C.I.Acid Blue 1、C.I.Acid Blue 9、C.I.Direct Yellow 4、C.I.Direct Yellow 12、C.I.Direct Red 28、C.I.Direct Red 39、C.I.Direct Blue 6、C.I.Direct Blue 22、C.I.Mordant Blue 13、C.I.Mordant Blue 56などが挙げられる。
【0053】
上記有機顔料および水溶性染料の配合量は、上記保護層用の水溶性またはアルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、25〜50重量部、好ましくは30〜45重量部、より好ましくは30〜35重量部である。上記配合量が、25重量部未満では、紫外線カットした白色灯または黄色灯などの明るい安全光に対する遮蔽性が不足するので、そのような安全光に長時間さらすと感光層が硬化し、50重量部を超えると、保護層の酸素遮断性に悪影響を及ぼすので画像が形成されなくなる。
【0054】
上記有機顔料は、上記水溶性染料に比べ、版材表面を湿った指で触っても指が汚れないとか、感光層への移行がまったくないといった長所を有しているが、水溶性を有していないため、上記水溶性またはアルカリ可溶性樹脂の水溶液と容易に混合できないという短所がある。従って、上記有機顔料を使用する場合は、予め上記有機顔料を水媒体中で均一に分散した顔料分散液として使用することが好ましい。しかしながら、上記水溶性またはアルカリ可溶性樹脂の水溶液と上記顔料分散液とを混合する際に、良好に分散されている有機顔料がショックを起こして凝集するという問題が生じる場合がある。また、紫外線カットした白色灯または黄色灯などの明るい安全光に対する十分な遮蔽効果を発現するためには、顔料濃度を上げる必要があるが、そのような場合、塗装装置に適した粘度が得られなかったり、または保存中に顔料粒子が凝集し、顔料分散液の粘度が上昇したり、もしくはゲル化する等の問題が生じる場合もある。
【0055】
上記問題を解決するために、本発明では、保護層に有機顔料を使用する場合、更にイオン性基を含有する水溶性もしくは水分散性樹脂を含有することが好ましく、更に任意成分としてイオン性基を有する高分子分散剤あるいは界面活性剤等のその他添加物を含有することがより好ましい。即ち、本発明の保護層の1つの態様として、
(a)水溶性またはアルカリ可溶性樹脂、および(b)有機顔料に加えて、
(c)イオン性基を含有する水溶性もしくは水分散性樹脂、および
(d)必要に応じて、その他添加物
を含有するものがある。
【0056】
上記(a)〜(d)成分の配合量は、水溶性またはアルカリ可溶性樹脂(a)100重量部に対して、
有機顔料(b)25〜50重量部、好ましくは30〜45重量部、イオン性基を含有する水溶性もしくは水分散性樹脂(c)5〜15重量部、好ましくは5〜10重量部、その他添加物(d)は0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部であることが望ましい。
【0057】
上記イオン性基を含有する水溶性もしくは水分散性樹脂(c)が、5重量部未満では顔料の分散性が悪くなり、15重量部を超えると保護層の酸素遮断性に悪影響を及ぼす。その他添加物(d)が、0.1重量部未満では形成される保護層が均一な皮膜にならない場合があり、5重量部を超えると保護層としての機能に悪影響を及ぼす。
【0058】
上記有機顔料(b)としては、前述のものが有効に使用される。これらは、所望の光吸収を得るべく2種以上併用してもよい。
【0059】
上記イオン性基を含有する水溶性もしくは水分散性樹脂(c)としては、イオン性基として、酸性基(例えば、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基)または塩基性基(例え.ぱ、アミノ基、イミノ基)を含有するアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリエステル樹脂から選択される。イオン性基として酸性基を有する樹脂は、通常、塩基、例えばアンモニア、有機アミン、水酸化カリウム等で中和することにより、水溶化もしくは水分散化される(いわゆるアニオン性樹脂)。また、イオン性基として、アミノ基のような塩基性基を有する樹脂は、通常、塩酸、硝酸等の無機酸あるいはリン酸、ギ酸、酢酸、ヒドロキシ酢酸、スルファミン酸、乳酸等の有機酸で中和して水溶化もしくは水分散化される(いわゆるカチオン性樹脂)。
【0060】
このうち、酸性基を有する不飽和モノマー、および、必要に応じて、水酸基を有する不飽和モノマー0〜60重量%、ならびに、他の不飽和モノマーを共重合することによって得られるアクリル系アニオン樹脂が好ましい。また、上記酸性基としては、特にカルボキシル基が好ましい。そのような酸性基を有する不飽和モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等、またはこれらの誘導体が挙げられる。前記酸性基を有する樹脂は、必要に応じて、上記モノマーと水酸基を有する不飽和モノマーおよびその他の不飽和モノマーとの共重合体であってよい。前記水酸基を有する不飽和モノマーとしては、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、あるいはこれらの誘導体が挙げられる。その他の不飽和モノマーは、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル等、従来公知のモノマーであってよい。
【0061】
上記有機顔料(b)と上記イオン性基を含有する水溶性もしくは水分散性樹脂(c)は、予め(b)を(c)に分散して分散液としたものを使用してもよい。それらの例には、例えば、御国色素社製の「ハイミクロン(Himicron)K Blue 2453」、「ハイミクロン(Himicron)K Green 13983」、「ハイミクロン(Himicron)K Violet 2419」、「ハイミクロン(Himicron)K Red 10159」、「ハイミクロン(Himicron)K Red 12266」等が挙げられる。
【0062】
その他添加物(d)としては、イオン性基を有する高分子分散剤あるいは界面活性剤が挙げられ、必要に応じて添加される。不溶性の有機顔料の含有量は、所望の光吸収を有するのに十分な量であってよいが、多すぎると水分散性が悪化するため、所望の光吸収を有するのに必要な量の有機顔料を、イオン性基を有する高分子分散剤あるいは界面活性剤を添加することにより、上記樹脂(c)にあらかじめ分散混合して顔料分散液を製造した後、使用されるのが好ましい。この場合、上記樹脂(c)のイオン性(すなわち、アニオン性またはカチオン性)と、有機顔料を分散する高分子分散剤のイオン性は同一であるが、そのイオン種、すなわち官能基種は必ずしも同一でなくてもよい。
【0063】
上記有機顔料の水分散液を製造する方法は、顔料を分散する方法として一般に使われている方法であれば、特に限定されない。具体的には、有機顔料、イオン性基を含有する水溶性もしくは水分散性樹脂、必要に応じて、イオン性基を有する高分子分散剤または界面活性剤を、水中で混合し、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ等の媒体を加え、ペイントコンディショナー、ボールミル、サンドグラインダー等により分散を行う。また、ニーダー、2本ロール、3本ロール、ホモジナイザー系、ジェットミル、超音波等を用いて分散することもできる。また、これらの分散方法を組み合わせてもよい。
【0064】
分散液の顔料の平均粒径は、40〜500nm、好ましくは60〜200nmになるようにする。また、分散液の粘度は、2〜10mPa・s、好ましくは3〜5mPa・sになるようにする。(粒度分布の測定装置:ハネウェル社製Microtrac UPA、条件:20℃、粘度計:E型粘度計、条件:25℃、50rpm)。上記平均粒径が500nmより大きい場合には、1ミクロン以上の粗大粒子が存在することになるので、フィルターの工程でつまりが生じるという問題がある。平均粒径が40nmより小さい場合は、分散液の粘度が増加する、安定性が悪い、塗布性が悪いなどの問題を生じる場合がある。
【0065】
(マット化剤)
印刷版材を自動供給する装置において、版材と版材との間に合紙を挟まずに複数枚(通常、500枚ほど)積み上げた版材の束から、吸盤を用いて版材を1枚ずつ搬送する場合、版材どうしの密着により一度に複数枚持ち上がる等の問題があった。
【0066】
本発明では、上記のような一度に複数枚持ち上がる問題を解決するため、保護層にはマット化剤を含有することが好ましい。本発明の保護層に用いられるマット化剤は、平均粒径3〜20μm、好ましくは5〜15μm、より好ましくは6〜12μmを有することが望ましい。上記マット化剤の平均粒径が、3μm未満では複数枚持ち上がることがよく起こり、12μmより大きいと束の版がすべって、うまく重なった状態にならず、また、レーザーが乱反射して鮮明な画像が得られない。また、上記マット化剤は、粒度分布1〜30μm、好ましくは1〜25μm、より好ましくは1〜20μmを有することが望ましい。
【0067】
本発明の保護層に用いられるマット化剤としては、それらに限定されないが、無機材料の代表例として、シリカ粒子、有機材料の代表例として、架橋樹脂粒子、例えば架橋ポリメチルメタクリレート、架橋ポリスチレン等が挙げられる。上記有機材料の場合、架橋していないと版材を積み上げた時に粒子が潰れるため、架橋樹脂粒子が好ましい。
【0068】
上記マット化剤の配合量は、保護層用組成物の固形分に対して、0.05〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.45重量%、より好ましくは0.15〜0.4重量%であることが望ましい。上記マット化剤の配合量が0.05重量%未満では、前述のような一度に複数枚持ち上がることがよく起こり、0.5重量%を超えると複数枚の版材を積み上げた場合に版材が滑ってうまく積み上げることができなくなり、またレーザーが乱反射して鮮明な画像が形成されない。
【0069】
本発明の保護層には、また、その添加剤として、コロイダルシリカなどの微小フィラー、塗布性改良のための界面活性剤、消泡剤を含有してもよい。
【0070】
上記保護層の感光性樹脂組成物層上への塗布方法は特に限定されず、例えば、バーコーターを用いて塗布し、その後、例えば、60〜100℃で1〜10分間乾燥させる。乾燥後の塗布量は1.0〜2.5g/m程度とすることが好ましい。
【実施例】
【0071】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0072】
(感光層)
以下の表1に示した成分を有する感光性樹脂組成物の有機溶剤溶液(有機溶剤:メトキシプロパノール、8%)を、バーコーターを用いて親水化処理されたアルミニウム支持体に塗布し、80℃で5分間乾燥して、塗布量1.2g/mを有する感光層を形成した。
【0073】
【表1】

【0074】
(注1)ダイセル化学工業(株)の商品(商品名:サイクロマーP)で、側鎖にアクリル基とカルボキシル基とを含有するアクリル共重合樹脂
(注2)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(注3)1,1,5,5‐テトラキス[4‐(ジエチルアミノ)フェニル]‐1,4‐ペンタジエン‐3‐イリウム=p‐トルエンスルホネート
(注4)テトラn‐ブチルアンモニウムトリフェニルn‐ブチルボレート
(注5)2,4,6‐トリス(トリクロロメチル)‐S‐トリアジン
(注6)2’‐(2‐ブロモ‐4‐ニトロ‐6‐シアノフェニルアゾ)‐5’‐ジエチルアミノプロピオアニリド;三井化学社製EX‐236
【0075】
(保護層)
(1)上記のようにして得られた感光層の上に、以下の表2に示した樹脂の7%水溶液を、バーコーターを用いて塗布し、60℃で5分間乾燥し、塗布量約1.5g/mを有する保護層を形成して、印刷版を得た。得られた印刷版の画像残存性を評価し、その結果を同表に示した。試験方法は以下の通りである。
【0076】
(試験方法)
画像残存性
クレオ(Creo)社のトレンドセッター(Trendsetter)NEWSにて、網点50%のパターンを用いて、2W、4W、6W、8Wおよび10Wで描画露光した後、ブラシ型の自動現像機に富士写真フィルム社の現像液(DH‐N)を4倍の水で希釈して満たし、30℃で現像し、水洗後、風乾して画像を形成した。得られた画像を目視判定することによって、画像残存性を決定した。
【0077】
【表2】

【0078】
(注1)(株)クラレ製の部分ケン化ポリ酢酸ビニル、ケン化度:99
(注2)(株)クラレ製の部分ケン化ポリ酢酸ビニル、ケン化度:88
(注3)(株)クラレ製の部分ケン化ポリ酢酸ビニル、ケン化度:80
(注4)(株)クラレ製の部分ケン化ポリ酢酸ビニル、ケン化度:75
(注5)ISP製のポリビニルピロリドン、Mw:6万
(注6)ISP製のポリビニルピロリドン、Mw:130万
(注7)ISP製のビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体
(注8)ジョンソンポリマー(株)製のスチレン/アクリル酸共重合体の水溶液、Mw:4900
(注9)ジョンソンポリマー(株)製のスチレン/アクリル酸共重合体の水溶液、Mw:8500
【0079】
(2)上記感光層の上に、保護層として、イエローランプの発光波長(500〜700nm)をカバーしているクリスタルバイオレット(塩基性染料)10、20、または、30重量部を100重量部のポバール205と混合して使用して、上記(1)と同様にして塗布・乾燥し、一晩放置したところ、上記染料が感光層に移行し、イエローランプの下で版を取り扱っている際に感光層の重合反応を誘発して、画像が形成されなかった。
【0080】
(3)一方、上記感光層の上に、保護層として、以下の表3に示すようなスルホン酸塩構造を有する酸性染料およびダイレクト染料を、イエローランプの発光波長をカバーするように配合量を調整してポバール205と混合して使用して、上記(1)と同様にして塗布・乾燥し、一晩放置後、約250ルクスのイエローランプに5時間暴露したものとしなかったものの画像残存性を評価した。その結果を同表に示す。
【0081】
【表3】

(注10)(株)クラレ製の部分ケン化ポリ酢酸ビニル、ケン化度:88
(注11)試薬:C.I.Acid Blue 1(吸収波長:600〜700nm)
(注12)試薬:C.I.Direct Red 39(吸収波長:500〜600nm)
【0082】
【表4】

(注13)(株)クラレ製の部分ケン化ポリ酢酸ビニル、ケン化度:88
(注14)御国色素(株)製の顔料分散液「Himicron K Blue 2453」(フタロシアニン系、吸収波長:500〜800nm)を使用。固形分:20.3%、顔料分:15.6%、平均粒径:103.4nm、分散用樹脂:MMA・AAを主成分とする共重合体のアミン中和物。
(注15)御国色素(株)製の顔料分散液「Himicron K Violet 2419」(ジオキサジン系、吸収波長:480〜680nm)を使用。固形分:20.5%、顔料分:16.6%、平均粒径:80.2nm、分散用樹脂:分散用樹脂はMMA・AAを主成分とする共重合体のアミン中和物。
(注16)御国色素(株)製の顔料分散液「Himicron K Red 10159」(ジケトピロロピロール系、吸収波長:400〜570nm)を使用。固形分:13.5%、顔料分:10.0%、平均粒径:126.4nm、分散用樹脂:分散用樹脂はMMA・AAを主成分とする共重合体のアミン中和物。
【0083】
【表5】

【0084】
(マット化剤)
(1)実施例7:上記表4の実施例3の保護層配合に、マット化剤として、積水化成社製のテクポリマー「SB30X‐8」(架橋ポリスチレン、平均粒径8μm、粒度分布2〜20μm)および「SB30X‐12」(架橋ポリスチレン、平均粒径12μm、粒度分布3〜25μm)を0.27重量部添加して保護層とした。こうして製造した版材を500枚積み重ねて、35℃、80%RHの環境試験機に3日間放置後、吸盤による持ち上げテストを行った。上記マット化剤を添加していない場合は、10回の内、4回、複数枚持ち上がることが観察された。これに対して、上記マット化剤を使用した版材では、10回繰り返しても、複数枚持ち上がることはまったく観察されなかった。
(2)比較例5:更に、上記実施例3の保護層配合に「SB30X‐12」を1.35重量部添加したものは、版材を500枚積み重ねると、版材の間ですべりが生じ、うまく積み重ねることができなかった。
【0085】
以上の結果から、実施例1〜6の本発明の保護層を形成した印刷版材は、比較例1〜3の保護層を形成した印刷版材に比較して、イエローランプに5時間暴露後も優れた画像残存性を有することがわかった。また、実施例7の本発明の保護層を形成した印刷版材は、吸盤によって複数枚持ち上がることがないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の感光性樹脂組成物用保護層は、いわゆるコンピューター‐ツー‐プレート(CTP)の印刷用版材に有用である。もちろん、所定の光を露光して、その露光部分が硬化し、未露光部分はアルカリ水で現像するいわゆるネガ型の種々のレジスト等の用途にも利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線に感光性を有し、開始剤として有機ホウ素アニオン含有化合物を含有する感光性樹脂組成物用の保護層であって、水溶性またはアルカリ可溶性樹脂から形成され、塗布量1.0〜2.5g/mを有する保護層。
【請求項2】
前記水溶性またはアルカリ可溶性樹脂が、ポリ酢酸ビニル部分ケン化物またはその変性物、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体および不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物との共重合体から成る群から選択される請求項1記載の保護層。
【請求項3】
前記水溶性またはアルカリ可溶性樹脂が、400〜800nmの波長領域に吸収を有する有機顔料および/または水溶性染料を前記水溶性またはアルカリ可溶性樹脂100重量部に対して25〜50重量部更に含有する請求項1記載の保護層。
【請求項4】
前記有機顔料が、アゾ系顔料および/またはフタロシアニン系顔料であり、前記水溶性染料が、スルホン酸塩構造を有するアニオン系染料である請求項3記載の保護層。
【請求項5】
前記水溶性またはアルカリ可溶性樹脂が、有機顔料を含有する場合に、更にイオン性基を含有する水溶性もしくは水分散性樹脂を含有する請求項3記載の保護層。
【請求項6】
前記水溶性またはアルカリ可溶性樹脂が、更にマット化剤を保護層の固形分100重量部に対し0.05〜0.5重量部含有する請求項1〜5のいずれか1項記載の保護層。
【請求項7】
前記マット化剤が、シリカ、架橋ポリメチルメタクリレートおよび架橋ポリスチレン粒子から成る群から選択され、平均粒径3〜20μmおよび粒度分布1〜30μmを有する請求項6記載の保護層。

【公開番号】特開2007−108722(P2007−108722A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246841(P2006−246841)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】