説明

感光性樹脂組成物

【課題】感光性、耐熱性、保存安定性に優れた感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)多官能性シアネートエステル化合物、及び/又は、多官能性シアネートエステルプレポリマー、(B)フェノール性水酸基を保護した化合物、及び、(C)光酸発生剤、及び/又は、光塩基発生剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント配線板や半導体素子等に塗布し、永久保護膜、層間絶縁膜、バッファーコート膜、光導波路等に利用可能なレリーフパターンが形成できる感光性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、優れた感光特性を有し、かつ、加熱硬化後のレリーフパターンが高い耐熱性を有する高性能な感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の絶縁材料や、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜などには、ポリイミドをはじめとする耐熱性樹脂が、優れた耐熱性や電気特性、力学特性等を活かして広く利用されている。
【0003】
このような中、プリント基板上や半導体素子上へのパターン形成において、基材表面へのレジスト材の製膜、所定箇所への露光、現像やエッチング等による不要箇所の除去、基板表面の洗浄等の多岐にわたる工程を経てパターン形成が行われることから、レジスト材としては、露光、現像によるパターン形成後も必要な部分をそのまま残して用いることが可能な感光性樹脂材料が望まれている。
【0004】
前記感光性材料として、耐熱性に優れた感光性ポリイミドが挙げられ、例えば、ポリイミド前駆体の酸官能基に対し、感光基を有する化合物を付加もしくは混合する方法などが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
しかしながら、前記ポリイミド前駆体あるいはその付加体を用いる場合は、パターン形成に際して300℃以上の高温で、加熱キュアによるイミド化を必要とするため、基板等が高温に耐えられない場合に、使用できないという問題を有している。
【0006】
また、加熱キュアにおいて、感光性化合物または感光性基が揮発するため、キュア後の硬化物は、著しく収縮してしまうという問題があった。
【0007】
前記感光性樹脂組成物として、エポキシ基を含有する化合物に、UVによって硬化可能な不飽和基を含有する化合物などを添加したものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
しかしながら、前記エポキシ基を有する化合物を含有する感光性樹脂組成物中に含まれる不飽和二重結合(C=C二重結合)は、暗反応により、重合反応が進行する可能性があり、経時による粘度変化が起こるため、前記感光性化合物を含有する感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物溶液)の保存安定性が悪く、初期の樹脂特性や感光特性を維持することが困難であった。
【0009】
シアネート樹脂は、触媒の存在下、200℃程度の温度でも熱硬化可能であり、またその耐熱性も高く、更に硬化前後での寸法変化も、硬化時のアウトガスの発生がないことから、極めて小さいなどの特徴を有する熱硬化性樹脂であり、前記感光性シアネート樹脂として、多官能性シアネートエステル化合物、または、前記プレポリマーに光酸発生剤を添加したものが提案されている(例えば、特許文献4及び5参照)。
【0010】
しかしながら、前記光酸発生剤によって発生した酸のみでは、前記感光性シアネート樹脂の硬化触媒能は十分ではなく、高温での熱処理を必要とすることから、レリーフパターンを形成する際に、感光性樹脂組成物が、熱流動を起こしやすく、鮮明なパターンが得られ難い、すなわち感光性が十分ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭54−116216号公報
【特許文献2】特開昭54−145794号公報
【特許文献3】特許3316015号公報
【特許文献4】特開2001−324810号公報
【特許文献5】特開2001−207057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、感光性、耐熱性、及び、保存安定性に優れた感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、以上の問題を鑑み、鋭意検討を積み重ねた結果、多官能性シアネートエステル化合物、及び/又は、多官能性シアネートエステルプレポリマー、フェノール性水酸基を保護した化合物、及び、光酸発生剤、又は、光塩基発生剤を含有する感光性樹脂組成物により、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)多官能性シアネートエステル化合物、及び/又は、多官能性シアネートエステルプレポリマー、(B)フェノール性水酸基を保護した化合物、及び、(C)光酸発生剤、又は、光塩基発生剤を含有することを特徴とする。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(B)フェノール性水酸基を保護した化合物が、下記一般式(1)、及び/又は、下記一般式(2)であることが好ましい。
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


(式(1)、及び、式(2)中のR1は、同一、又は、異なっていてもよく、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アルコキシ基、シアノ基、パーフルオロアルキル基、アルキル基、及び、アリール基からなる群より選択される少なくとも一種類であり、式(2)中のXは、直結、又は、式(3)に記載される群より選択される少なくとも一種であり、式(1)、及び、式(2)中のYは、式(4)に記載される群より選択される少なくとも一種である。)
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(A)多官能性シアネートエステル化合物、及び/又は、多官能性シアネートエステルプレポリマー100重量部に対して、前記(B)フェノール性水酸基を保護した化合物が、1〜50重量部、前記(C)光酸発生剤、又は、光塩基発生剤が、0.01〜30重量部含有することであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物は、感光性、耐熱性、保存安定性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができ、これにより、感光性、耐熱性、及び、寸法安定性に優れたレリーフパターンを形成できる感光性樹脂(感光性樹脂組成物層)を提供することが可能になり、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明するが、これらは本発明の実施形態の一例であり、これらの記載内容に限定されるものではない。
【0019】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)多官能性シアネートエステル化合物、及び/又は、多官能性シアネートエステルプレポリマー(A成分)、(B)フェノール性水酸基を保護した化合物(B成分)、及び、(C)光酸発生剤、又は、光塩基発生剤(C成分)を含有することを特徴とする。
【0020】
前記(A)多官能性シアネートエステル化合物は、硬化物を形成する際、その強度や耐熱性、透明性などを確保するためのものであり、前記目的を達成し得るものであれば特に限定されず、公知のものを含め、使用することができる。具体的には、1,3−ジシアネートベンゼン、1,4−ジシアネートベンゼン、2−tert−ブチル−1,4−ジシアネートベンゼン、2,4−ジメチル−1,3−ジシアネートベンゼン、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ジシアネートベンゼン、テトラメチル−1,4−ジシアネートベンゼン、4−クロロ−1,3−ジシアネートベンゼン、1,3,5−トリシアネートベンゼン、2,2’−ジシアネートビフェニル、4,4’−ジシアネートビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジシアネートビフェニル、3,3’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジシアネートビフェニル、3,3’,5,5’−テトラクロロ−2,2’−ジシアネートビフェニル、1,3−ジシアネートナフタレン、1,4−ジシアネートナフタレン、1,5−ジシアネートナフタレン、1,6−ジシアネートナフタレン、1,8−ジシアネートナフタレン、2,6−ジシアネートナフタレン、2,7−ジシアネートナフタレン、1,3,6−トリシアネートナフタレン、4,4’−ビス−〔(3−シアネート)−フェノキシ〕−ジフェニル、4,4’−ビス−〔(4−シアネート)−フェノキシ〕−ジフェニル、2,2’−ジシアネート−1,1’−ビナフチル、4,4’−ジシアネートジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジシアネートエーテル、3,3’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジシアネートフェニルエーテル、4,4’−ビス−〔p−シアネートフェノキシ〕−ジフェニルエーテル、4,4’−ビス−〔p−シアネートフェニルイソプロピル〕−ジフェニルエーテル、4,4’−ビス−〔p−シアネートフェノキシ〕−ベンゼン、4,4’−ビス−〔m−シアネートフェノキシ〕−ジフェニルエーテル、4,4’−ビス−〔4−(4−シアネートフェノキシ)フェニルスルホン〕−ジフェニルエーテル、4,4’−ジシアネートジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジシアネートジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジシアネートジフェニルスルホン、4,4’−ビス−〔p−シアネートフェニルイソプロピル〕−ジフェニルスルホン、4,4’−ビス−〔(4−シアネート)−フェノキシ〕−ジフェニルスルホン、4,4’−ビス−〔(3−シアネート)−フェノキシ〕−ジフェニルスルホン、4,4’−ビス−〔4−(4−シアネートフェニルイソプロピル)−フェノキシ〕−ジフェニルスルホン、4,4’−ビス−〔4−(4−シアネートフェニルスルホン)−フェノキシ〕−ジフェニルスルホン、4,4’−ビス−〔4−(4−シアネート)−ジフェノキシ〕−ジフェニルスルホン、4,4’−ジシアネートジフェニルメタン、4,4’−ビス−(p−シアネートフェニル)−ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン、2,2’−ビス−(3,5−ジメチル−4−シアネートフェニル)−プロパン、2,2’−ビス−(3,5−ジクロロ−4−シアネートフェニル)−プロパン、2,2’−ビス−(3,5−ジブロモ−4−シアネートフェニル)−プロパン、1,1’−ビス−(p−シアネートフェニル)−エタン、1,1’−ビス−(p−シアネートフェニル)−シクロヘキサン、ビス−(2−シアネート−1−ナフチル)−メタン、1,2−ビス−(p−シアネートフェニル)−1,1,2,2−テトラメチルエタン、4,4’−ジシアネートベンゾフェノン、4,4’−ビス−(4−シアネート)−フェノキシベンゾフェノン、1,4−ビス−(p−シアネートフェニルフェニルイソプロピル)−ベンゼン、ジアリルビスフェノールAシアネートエステル、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、2,2’−ビス−(p−シアネートフェニル)−ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ノボラックフ型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂等が挙げられ、中でも、特に、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンが、透明性、取り扱い容易性(ハンドリング性)、及び、人手容易性等の点で好ましい。また、これら多官能性シアネートエステル化合物は単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
前記(A)多官能性シアネートエステルプレポリマーは、前記(A)多官能性シアネートエステル化合物を重合することにより得ることができる。前記(A)多官能シアネートエステル化合物の重合反応としては、シアネート基が3量化し、トリアジン環を形成する反応のことである。シアネート基は約230℃以上の温度で反応することが知られているが、この反応を促進するために触媒を添加することができる。例えば、塩酸、リン酸に代表されるプロトン酸;塩化アルミニウム、塩化亜鉛に代表されるルイス酸;フェノール、ピロカテコール、ジヒドロキシナフタレンに代表される芳香族ヒドロキシ化合物;ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの有機金属塩;銅アセチルアセトナート、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄アレーン錯体、ルテニウムアレーン錯体などに代表される有機金属錯体;トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの3級アミン類;塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウムに代表される4級アンモニウム塩;イミダゾール類、水酸化ナトリウム、トリフェニルホスフィン、およびこれらの混合系などを挙げることができる。これらの触媒の中でも、触媒能や着色の点から、好ましくはオクチル酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの有機金属塩を挙げることができる。これらの触媒は、多官能性シアネートエステル化合物に対して任意の割合で添加することができるが、好ましくは多官能性イソシアネートエステル化合物100重量部に対して、0.005〜5重量部、より好ましくは0.01〜1重量部である。重合反応温度としては、100〜250℃、好ましくは100〜200℃である。
【0022】
また、前記重合反応において、必要に応じ、これらと共重合反応することが知られている化合物を添加し、更に、前記多官能性シアネートエステルプレポリマーを変性することができる。例えば、エポキシ基含有化合物、ビスマレイミド化合物、フェノール基含有化合物、カルボン酸基含有化合物、アミド基含有化合物などを挙げることができる。これらの化合物の添加量は、特に限定されないが、例えば、前記多官能シアネートエステル化合物に対して、50mol%以下であることが好ましい。50mol%を超えると、感光性樹脂の耐熱性が低下したり、感光性樹脂組成物の硬化前後における寸法変化の増大することにつながり、好ましくない。
【0023】
前記重合反応は、前記(A)多官能シアネートエステル化合物のみを用いて行うことが可能であるが、有機溶媒中で重合することもできる。使用する有機溶媒としては、前記多官能シアネートエステル化合物を十分に溶解できるものであれば、特に限定されないが、例えば、アセトン、ルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ―ブチロラクトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルグリコールアセテート、クロロホルムなどを挙げることができる。これらは単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
前記(A)多官能性シアネートエステルプレポリマーは、少なくともトリアジン環を1個以上有する化合物、すなわちシアネートエステル化合物の3量体以上であることが好ましい。形成したトリアジン環数の上限は、得られる多官能性シアネートエステルプレポリマーの特性が、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、特に限定されるものではないが、6個以下であることが好ましく、4個以下であることがより好ましい。6個を超えると、著しく重合が進行することになるため、有機溶媒に不溶となり、好ましくない。つまり、本発明における前記(A)多官能性シアネートエステルプレポリマーとは、特定の有機溶媒に可溶である必要がある。ここで使用する有機溶媒とは公知のものであれば、特に限定はないが、例えば、前記重合反応時に使用できる有機溶媒を挙げることができ、これらは2種類以上を併用して用いることができる。
【0025】
前記(B)フェノール性水酸基を保護した化合物(B成分)は、公知のものを含め、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)、及び/又は、(2)で表した化合物を使用することができる。なお、前記B成分は、光酸発生剤や光塩基発生剤によって、保護基が脱保護された後に、触媒能を発揮しうるものである。また、十分な触媒能を発揮することにより、高耐熱性を得ることができ、前記感光性樹脂組成物を用いて、レリーフパターンを形成する際に、前記感光性樹脂組成物の熱流動が起こらず、鮮明なパターン形成を行う事ができ、感光性にも優れることになる。
【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


(式(1)、及び、式(2)中のR1は、同一、又は、異なっていてもよく、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アルコキシ基、シアノ基、パーフルオロアルキル基、アルキル基、及び、アリール基からなる群より選択される少なくとも一種類であり、式(2)中のXは、直結、又は、式(3)に記載される群より選択される少なくとも一種であり、式(1)、及び、式(2)中のYは、式(4)に記載される群より選択される少なくとも一種である。)
【0026】
より具体的には、2,2−ビス[4−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)ベンゼン]プロパン、2,2−ビス(4−テトラヒドロピラニルオキシベンゼン)プロパン、2,2−ビス[4−(tert−ブトキシベンゼン)]プロパン、2,2−ビス(4−トリメチルシリルオキシオキシベンゼン)プロパン、1,1−ビス[4−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)ベンゼン]エタン、1,1−ビス(4−テトラヒドロピラニルオキシベンゼン)エタン、1,1−ビス[4−(tert−ブトキシベンゼン)]エタン、1,1−ビス(4−トリメチルシリルオキシオキシベンゼン)エタン等を例示することができ、中でも特に、2,2−ビス[4−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)ベンゼン]プロパンや、1,1−ビス[4−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)ベンゼン]エタンが、合成容易性や、光酸発生剤や光塩基発生剤による保護基の脱離能(脱保護)が良好である点で、好ましい。これらは単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
前記B成分の配合量は、前記A成分の総量100重量部に対して、1〜50重量部とすることが好ましく、10〜30重量部がより好ましい。1重量部より少ないと、触媒能が不十分となり、十分な硬化反応が進まず、50重量部を超えると、硬化物の硬化密度が下がり、力学特性(強度等)や耐熱性が低下するため好ましくない。
【0028】
前記C成分は、公知のものを含め、特に限定されない。なお、前記(C)光酸発生剤とは、光を照射することによって、酸を発生する化合物であり、前記(C)光塩基発生剤とは、光を照射することによって、塩基を発生する化合物を意味する。
【0029】
前記(C)光酸発生剤としては、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールホスホニウム塩などオニウム塩(これらの対イオンとしては、例えば、CFSO3−、BF4−、PF6−、AsF6−、SbF6−などのアニオンが挙げられる)、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、オキシムスルホン酸エステル、芳香族N−オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ハロアルキル基含有炭化水素系化合物、ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物、ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル等が挙げられ、中でも特に、芳香族N−オキシイミドスルフォネートのN−トリフルオロスルホニル−1,8−ナフタレンカルボジイミドが、特にパターン形成性が良好な点で、好ましい。これら光酸発生剤は単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
前記(C)光塩基発生剤としては、ベンゾインシクロヘキシルカルバメート、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、3,5−ジメトキシベンジルシクロヘキシルカルバメート、N−シクロヘキシル−2−ナフチルスルフォンアミド、3−ニトロフェニルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、トリ(4−クロロフェニル)メタノール、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホニルアミド、N−[1−(3,5−ジメトキシフェニル)−1−メチルエトキシカルボニル]シクロヘキシルアミド、N−[(2,6−ジニトロフェニル)メトキシカルボニル]シクロヘキシルアミド、N−[1−(2,6−ジニトロフェニル)エトキシカルボニル]シクロヘキシルアミド、N−[ビス(2,6−ジニトロフェニル)メトキシカルボニル]シクロヘキシルアミド、N−[ビス(2−ニトロフェニル)メトキシカルボニル]オクタデシルアミド、N−[ビス(2−ニトロフェニル)エトキシカルボニル]オクタデシルアミド、N−[1−(4−メチル−2−ニトロフェニル)エトキシカルボニル]オクタデシルアミド等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
前記C成分の配合量は、前記A成分の総量100重量部に対して、0.01〜30重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。0.01重量部より少ないと、光感度が不十分となり、前記B成分を脱保護するための酸や塩基が十分に発生せず、30重量部を超えると、硬化物中の不純物として働く恐れがあり、耐熱性や透明性を低下させ、更に、経済的にも好ましくない。
【0032】
前記C成分は、増感剤と組み合わせて使用することができる。増感剤は活性エネルギー線により励起状態となり、前記C成分(光酸発生剤、又は、光塩基発生剤)と相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動等)することにより、酸又は塩基を効率的に発生することが可能である。増感剤は従来公知の化合物を含め、特に限定されることなく使用できる。例えばアントラセン、アントラキノン、ピレン、ペリレン、ビオランスレンなどといった芳香族多環式炭化水素(特に電子供与性置換基を有するもの)、アミノケトン、p−置換アミノスチリル、キサンテン、チオキサントン、ポリアリール化合物、ポリメチレン染料などが挙げられる。具体的には、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジクロロアントラセン、1−クロロアントラセン、2−メチルアントラセン、9−メチルアントラセン、2−tert−ブチルアントラセン、アントラセン、1,2−ベンズアントラセン、1,2,3,4−ジベンズアントラセン、1,2,5,6−ジベンズアントラセン、1,2,7,8−ジベンズアントラセン、9,10−ジメトキシジメチルアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、N−メチルフェノチアジン、イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらの増感剤は単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
前記増感剤の配合量は、前記A成分の総量100重量部に対して、0.01〜5重量部とすることが好ましく、0.1〜1重量部とすることがより好ましい。0.01重量部より少ないと光が増感されず、前記C成分が十分に活性化されにくく、5重量部を超えると、硬化物中の不純物となり、耐熱性を低下させることになるため、好ましくない。
【0034】
また、このほかに必要に応じて、本発明の感光性樹脂組成物中に、酸化防止剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、着色剤、可塑剤、安定剤、無機充填剤、内部離型剤、難燃剤、消泡剤、界面活性剤、及び、シアネートエステル熱硬化触媒などの添加剤を、本発明の効果に悪影響を及ぼさない程度に、添加しても構わない。
【0035】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記A成分、B成分、及びC成分を、有機溶媒に溶解・分散して用いることが好ましい。ここで用いる有機溶媒としては、前記感光性樹脂組成物を溶解することができるものであれば特に限定されず、使用することができる。例えば、アセトン、ルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ―ブチロラクトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルグリコールアセテートなどを挙げることができる。これらは単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。感光性樹脂組成物溶液(樹脂ワニス)中の樹脂組成物の濃度としては、塗布しやすさの観点から、20〜80重量%であることが好ましく、50〜70量%であることがより好ましい。
【0036】
前記感光性樹脂組成物溶液(樹脂ワニス)は、スピンコート法、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法、インクジェット法等の方法を用いて、シリコンウェハー、金属基板、セラミック基板、高分子材料の基板等に塗布され、乾燥機等を用いて溶剤を揮発させることにより、塗膜とすることができる。
【0037】
前記基板等に塗布する膜厚は、目的に応じ適宜選択すればよいが、通常、0.1μm〜1000μmの範囲が好ましい。乾燥は常圧でも減圧雰囲気でもよく、有機溶剤を揮発させる温度条件としては、50〜150℃が好ましい。
【0038】
乾燥後に残留する有機溶媒の含有量は、有機溶剤を完全に揮発させた後の感光性樹脂組成物を100重量部とした場合に、10重量部以下であることが好ましい。10重量部を超えると、感光性樹脂組成物(溶液)の保存安定性に、悪影響を与えたり、露光によるパターン形成の精度を悪化させるなどの問題があり、好ましくない。
【0039】
乾燥後の感光性樹脂組成物層の膜厚は、通常、0.1〜250μmであることが好ましい。前記範囲内であれば、パターンニング(パターン形成)が可能であり、好ましい。
【0040】
得られた感光性樹脂組成物層に所望のパターンが描かれたマスクを通して活性エネルギー線を照射する露光処理を行なうことができる。前記活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線を挙げることができるが、特に紫外線が好ましい。紫外線の光源としては公知のものを含め特に限定されるものではないが、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ、LEDなどを挙げることができる。
【0041】
前記活性エネルギー線を照射した後、加熱処理(以下、「ポストベーク」と言う。)を行なうことができる。前記ポストベーク条件としては、感光性樹脂組成物、添加剤の種類、添加剤の配合量等によって異なるが、通常、50〜200℃、好ましくは80〜180℃で、例えば5分間〜5時間の加熱条件で行う事が良い。本発明の感光性樹脂組成物において、前記C成分は、活性エネルギー線の照射によりプロトン酸又は、塩基を発生せしめる。そしてポストベークにおいて、前記プロトン酸又は、塩基が、前記B成分の保護基を脱保護させ、生じたフェノール性化合物がシアネートエステルの硬化触媒として働く。そのため、ポストベークにおいては、活性エネルギー線が照射された部分は、照射されていない部分に比べシアネートエステル化合物の熱硬化反応が速やかに進行する。ポストベーク後に現像を行ない、活性エネルギー線が照射されていない部分を現像液で溶解除去することにより、レリーフパターンを形成することができる。
【0042】
前記現像液に用いる有機溶媒としては、本発明の感光性樹脂組成物を分散・溶解するものであれば特に制限されないが、例えば、アセトン、ルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ―ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルグリコールアセテート、ヘキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。これらは単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。また、引火防止のため、これらの有機溶剤に0.5〜20重量%の範囲で水を添加することもできる。
【0043】
前記現像方法としては、静置浸漬法、揺動浸漬法、パドル法、スプレー法、ブラッシング法、スクラッピング法、超音波法等の公知の方法により現像を行なうが、これらに限定されるものではない。
【0044】
前記現像時における現像時間としては、通常、5〜600秒である。必要に応じ、現像後に洗浄を行なっても構わない。洗浄液に特に限定はないが、水を含め現像に用いた上記有機溶媒を挙げることができる。これらは、2種類以上併用して用いることができる。
【0045】
前記現像後に100〜250℃の加熱処理を行なうことで、本発明の感光性樹脂組成物の硬化度を高めることができ、耐熱性が向上するため、好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これら実施例に限定されるものではない。
【0047】
[(A)多官能シアネートエステルプレポリマーの合成例]
還流器の付いたフラスコに2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンを5g入れ、220℃で3.5時間、攪拌しながら反応させた。フラスコより反応物を回収し、薄黄色の多官能シアネートエステルプレポリマー(PP1)を得た。
【0048】
[(B)フェノール性水酸基を保護した化合物の合成例]
ナスフラスコに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3g、4−ジメチルアミノピリジン160mg、テトラヒドロフラン88mlを入れ、室温で攪拌しながら二炭酸ジ−tert−ブチル7.2mlを滴下し、室温で4時間反応させた。反応終了後、得られた反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液100mlを加え、酢酸エチルで3回抽出した。抽出液は、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製し、白色粉末の2,2−ビス[4−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)ベンゼン]プロパンを得た。
【0049】
(実施例1)
<塗膜の作製と評価>
表1に示すA成分として、前記多官能性シアネートエステルプレポリマー(PP1)、B成分(フェノール性水酸基を保護した化合物)として、前記2,2−ビス[4−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)ベンゼン]プロパン(tert−ブトキシカルボニル基(t−Boc基)で保護した化合物)、C成分として、光酸発生剤であるN−トリフルオロスルホニル−1,8−ナフタレンカルボジイミドを、メチルエチルケトン(A成分100重量部に対して、70重量部として換算)に溶解して、感光性樹脂組成物溶液(樹脂ワニス)を得た。
【0050】
前記感光性樹脂組成物溶液(樹脂ワニス)を、スライドガラス上に、アプリケーターを用いて塗布し、80℃で10分間、常圧で乾燥し、次いで80℃で20分間、減圧乾燥した。このとき、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが、約50μmになるようにアプリケーターの間隔を調整し、塗膜(感光性樹脂組成物層)を得た。更に、フォトマスク(凸版印刷社製、ネガマスク、L/S=50μm/250μm)を介して、紫外線露光機(ルミナス社製、マクスアライナ)にて、波長360nm、照度10mW/cmの紫外線を180秒間照射した。次いで、135℃×60分間、ポストベークを行なった。これをN−メチル−2−ピロリドン/エタノール=5/5混合溶媒中で30秒間、揺動浸漬処理して、現像を行なった後、エタノールで洗浄した。顕微鏡観察により、50μm幅ラインが形成されていることを確認した。
【0051】
更に、現像後、230℃で1時間加熱(キュア)したサンプルを用いて熱分解開始温度を測定したところ、291℃と高い耐熱性を示した。つまり、高い感光性と高耐熱性の両方を満足していることが分かる。
【0052】
(実施例2)
前記感光性樹脂組成物溶液(樹脂ワニス)を、スライドガラス上にアプリケーターを用いて塗布し、80℃で10分間、常圧で乾燥し、次いで80℃で20分間、減圧乾燥した。このとき、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが、約50μmになるようにアプリケーターの間隔を調整し、塗膜(感光性樹脂組成物層)を得た。更に、フォトマスク(凸版印刷社製、ネガマスク、L/S=50μm/250μm)を介して、紫外線露光機(ルミナス社製、マクスアライナ)にて、波長360nm、照度10mW/cmの紫外線を180秒間照射した。次いで、135℃×60分間、ポストベークを行なった。これをN−メチル−2−ピロリドン/エタノール=5/5混合溶媒中で30秒間、揺動浸漬処理して、現像を行なった後、エタノールで洗浄した。顕微鏡観察により、50μm幅ラインが形成されていることを確認した。
【0053】
更に、現像後、230℃で1時間加熱(キュア)したサンプルを用いて熱分解開始温度を測定したところ293℃と、高い耐熱性を示した。つまり、高い感光性と高耐熱性の両方を満足していることが分かる。
【0054】
(比較例1〜3、5、及び、6)
表1記載の配合内容・調製条件で行ったこと以外は、実施例1と同様の処理を行なった。
【0055】
(比較例4)
表1記載の配合内容・調製条件で行ったこと以外は、実施例2と同様の処理を行なった。その結果、50μm幅ラインの形成は確認されなかった。そこで、新たに、紫外線照射後にポストベークを行なった試料を、現像することなく、230℃で1時間加熱(キュア)し、熱分解開始温度を測定したところ、298℃と高い耐熱性を示したが、レリーフパターンを形成できず、感光性と耐熱性の両方を満足できなかった。
【0056】
得られた塗膜(感光性樹脂組成物層)については、以下の特性結果を評価した。
【0057】
[シアネート基反応率]
紫外線露光機にて波長360nm、照度10mW/cmの紫外線を180秒間照射(露光)、又は、そのまま(未露光)条件下において)、実施例及び比較例のそれぞれにおいて、所定の条件(温度、時間)でポストベークを行い、FT−IR[装置名:FT/IR−6100、日本分光株式会社製]を用いてシアネート基(OCN基)のピーク(2237cm−1)と芳香環ピーク(1502cm−1)からOCN基反応率を算出した。なお、シアネート基反応率としては、未露光条件下で、30%以下が好ましく、25%以下がより好ましい。また、露光条件下では、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。前記範囲内にあると、レリーフパターンの形成が良好となり、好ましい。
OCN基反応率(%)=100×(a−b)/a
a: ポストベーク前のOCN基ピーク面積/ポストベーク前の芳香環ピーク面積
b: ポストベーク後のOCN基ピーク面積/ポストベーク後の芳香環ピーク面積
【0058】
[熱分解開始温度]
熱重量測定装置TGA―50(島津製作所製)を用い、昇温速度10℃/分、窒素雰囲気中で測定を行い、5wt%質量減少温度を熱分解開始温度(℃)として、規定した。なお、前記熱分解温度としては、感光性樹脂組成物として使用するにあたり、高耐熱性を得るためには、250℃以上が好ましく、290℃以上がより好ましい。なお、熱分解温度開始温度については、実施例1、2、及び、比較例4について、評価した。
【0059】
[パターン形成性]
マスク露光後に現像処理を行い、50μm幅ラインの形成の有無を顕微鏡(キーエンス社製、マイクロスコープ)にて、50μm幅があるかを観察し、判定基準とした。なお、パターン形成性については、実施例1、2、及び、比較例4について、評価した。
【0060】
【表1】

【0061】
上記表1の結果より、実施例1及び2は、露光条件下では、光酸発生剤から、露光により発生した酸が、ポストベークで、t−Boc基を脱保護することにより、フェノール性水酸基が発生し、前記フェノール性水酸基が、シアネートエステル硬化触媒として働くことで、OCN基の反応が十分進行していることが確認できた。一方、未露光条件下では、光酸発生剤から酸が発生しないため、t−Boc基は脱保護されず、OCN基の反応は不十分であることが確認できた。
【0062】
比較例1及び2においては、(C)光酸発生剤(及び/又は光塩基発生剤)が添加されていないため、硬化触媒として働くフェノール性水酸基が発生せず、OCN基の反応率が小さいことが確認された。
【0063】
また、比較例3及び4においては、(B)フェノール性水酸基を保護した化合物が添加されておらず、(A)多官能性シアネートエステルプレポリマーと、(C)光酸発生剤のみを含有するため、露光条件下では、光酸発生剤が、多官能性シアネートエステルプレポリマーの硬化触媒として働くが、その効果が極めて小さいものと推測され、OCN基の反応は十分に認められなかった。また、未露光条件下では、光酸発生剤から、酸が発生しないため、シアネートエステル硬化触媒となる物質が発生せず、OCN基反応率が低いことが、確認された。
【0064】
比較例5及び6は、加熱のみによるOCN基の反応を確認しているものであるが、反応は、ほとんど進行していないことが、確認された。
【0065】
また、実施例2の結果から、優れた感光性、高耐熱性のレリーフパターンを提供できることが確認できた。一方、比較例4の結果から、50μm幅ラインの形成は確認できず、感光性に劣り、感光性と耐熱性の両方を満足できるものを得られないこと、が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の感光性樹脂組成物によれば、感光性と耐熱性を両立することができ、また、不飽和二重結合を有する化合物を使用しないため、経時で粘度変化を生じたりすることがないため、保存安定性に優れた感光性樹脂組成物を提供することができる。更に、前記感光性樹脂組成物の硬化時において、アウトガスの発生がないため、寸法変化の小さな感光性樹脂を得ることができる。また、前記感光性樹脂は、プリント配線板や半導体素子等に形成し、永久保護膜、層間絶縁膜、バッファーコート膜、光導波路等としても、利用でき、有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)多官能性シアネートエステル化合物、及び/又は、多官能性シアネートエステルプレポリマー、(B)フェノール性水酸基を保護した化合物、及び、(C)光酸発生剤、又は、光塩基発生剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)フェノール性水酸基を保護した化合物が、下記一般式(1)、及び/又は、下記一般式(2)であることを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


(式(1)、及び、式(2)中のR1は、同一、又は、異なっていてもよく、水素、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アルコキシ基、シアノ基、パーフルオロアルキル基、アルキル基、及び、アリール基からなる群より選択される少なくとも一種類であり、式(2)中のXは、直結、又は、式(3)に記載される群より選択される少なくとも一種であり、式(1)、及び、式(2)中のYは、式(4)に記載される群より選択される少なくとも一種である。)
【請求項3】
前記(A)多官能性シアネートエステル化合物、及び/又は、多官能性シアネートエステルプレポリマー100重量部に対して、前記(B)フェノール性水酸基を保護した化合物が、1〜50重量部、前記(C)光酸発生剤、又は、光塩基発生剤が、0.01〜30重量部含有することであることを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。



【公開番号】特開2011−215360(P2011−215360A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83206(P2010−83206)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】