説明

感光性樹脂組成物

【課題】厚膜形成に適した感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】実施の形態に係る感光性樹脂組成物は、光照射により重合する重合性基を有するシロキサンポリマー(A)と、末端変性シロキサン化合物(B)と、重合開始剤(C)と、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂組成物としてシロキサンポリマーを含有する感光性樹脂組成物が知られている。この感光性樹脂組成物の硬化膜は、リソグラフィ、特に近年開発が進められているナノインプリントリソグラフィのみならず、その透明性を活かして照明器具などの保護膜や光散乱膜としての用途が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−100609
【特許文献2】特開2006−84799
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシロキサンポリマー系の感光性樹脂組成物を用いて厚膜を形成する場合、たとえば、特許文献1や特許文献2の組成物では1〜3μm程度の膜厚しか形成できないという問題があった。また3μm超、例えば10μm以上の厚膜を形成できるシロキサンポリマー系の感光性樹脂組成物であっても光照射により硬化させると白濁するという問題があった。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、厚膜形成に適した感光性樹脂組成物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、感光性樹脂組成物である。当該感光性樹脂組成物は、光照射により重合する重合性基を有するシロキサンポリマー(A)と、末端変性シロキサン化合物(B)と、重合開始剤(C)と、を含有することを特徴とする。
【0007】
この態様の感光性樹脂組成物を用いて、厚膜を形成し、光照射により硬化させたることにより、白濁を生じることなく透明性の高い硬化膜を得ることができる。
【0008】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、厚膜形成に適した感光性樹脂組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態に係る感光性樹脂組成物を用いたナノインプリントリソグラフィによるパターン形成方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態に係る感光性樹脂組成物は、光照射により重合する重合性基を有するシロキサンポリマー(A)と、末端変性シロキサン化合物(B)と、重合開始剤(C)と、を含有する。以下、実施の形態に係る感光性樹脂組成物の各成分について詳述する。なお、実施の形態に係る感光性樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、リソグラフィ、特にナノインプリントリソグラフィの他に、その透明性を活かして照明器具などの保護膜や光散乱膜への適用が可能である。
【0012】
(A)シロキサンポリマー
実施の形態に係る感光性樹脂組成物を構成するシロキサンポリマー(A)(以下、(A)成分ということがある。)は、光照射により重合する重合性基を有する化合物であり、具体的には、下記一般式(A1)で表される。
【0013】
【化1】

式(A1)中、Rは、エチレン性不飽和二重結合を含有する基であり、Rは炭素数1〜9のアルキレン基であり、異なるRを有する場合があってもよく、Rはアルキル基、アリール基、または水素原子であり、異なるRを有する場合があってもよく、m:nは50:50〜100:0の範囲である。式(A1)中、Rが「光照射により重合する重合性基」に相当する。
【0014】
式(A1)中、Rにおけるエチレン性不飽和二重結合を含有する基としては、末端にエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましく、特に、下記式で表されるものが好ましい。
【0015】
【化2】

【0016】
式(A1)中、Rにおける炭素数1〜9のアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜7、さらに好ましくは炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基であり、特に好ましくは、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基である。
【0017】
式(A1)中、Rにおけるアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基;1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基等の環状のアルキル基;が挙げられる。好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0018】
また、Rのアルキル基における水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。実施の形態に係る感光性樹脂組成物をナノインプリントリソグラフィに用いる場合には、ハロゲン原子としてはモールドの離型性の点からフッ素原子が最も好ましい。
【0019】
式(A1)中、Rにおけるアリール基としては、たとえば、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等が挙げられる。好ましくはフェニル基である。また、Rのアリール基はアルキル基等の置換基を有していてもよい。
【0020】
式(A1)中、m:nはSi含有率や、膜厚調整、押し圧調整の点を考慮して適宜設定すればよい。好ましくは50:50〜99:1の範囲であり、より好ましくは70:30〜99:1、さらに好ましくは80:20〜99:1、特に好ましくは90:10〜99:1である。mが増加すると硬化性に優れる。
【0021】
式(A1)で表されるシロキサンポリマーとして、特に好ましくは下記式(A1−1)あるいは下記式(A1−2)で示されるものが挙げられる。
【0022】
【化3】

【0023】
【化4】

【0024】
上記式(A1−1)および上記式(A1−2)中、Raは、メチル基または水素原子であり、mおよびnは上記式(A1)におけるmおよびnと同様である。
【0025】
(A)成分の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、500〜10000が好ましく、より好ましくは1000〜5000であり、さらに好ましくは1000〜3000である。実施の形態に係る感光性樹脂組成物をナノインプリントリソグラフィに用いる場合には、上記範囲内とすることで押し圧の低減効果の向上と、形成されるパターン形状の特性向上とのバランスに優れる。
【0026】
(B)末端変性シロキサン化合物
実施の形態に係る感光性樹脂組成物を構成する末端変性シロキサン化合物(B)(以下、(B)成分ということがある。)は、末端変性シリコーンオイルの一種であり、下記式(B1)で表される。
【0027】
【化5】

式(B1)中、sは、1〜20の整数であり、Rは、メチル基または水素原子であり、Rは、炭素数1〜9のアルキレン基であり、X、Yは独立に、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、水酸基、または下記式(I)で表される基(式(I)中、R〜Rは独立に炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、水酸基であり、tは1〜3の整数)であり、
【0028】
【化6】

Zは、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、水酸基、または式(II)で表される基(式(II)中R3’はメチル基または水素原子であり;R4’は炭素数1〜9のアルキレン基)である。
【0029】
【化7】

【0030】
式(B1)で表される末端変性シロキサン化合物について、上記アルキレン基、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、の例としては上述の(A1)において挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0031】
式(B1)中、sは好ましくは1〜15であり、より好ましくは2〜12である。Rのアルキレン基として、好ましくは炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基であり、特に好ましくは、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基である。X、Yとして、好ましくはアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基でありメチル基が特に好ましい。Zとして好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基、または式(II)で表される基である。
【0032】
上記式(B1)で表される末端変性シロキサン化合物のうち、特に好ましくは、下記式(B1−1)で表される化合物である。
【0033】
【化8】

式(B1−1)中、s、R、R、X、Yは、上記式(B1)におけるs、R、R、X、Yと同様である。
【0034】
シロキサンポリマー(A)と末端変性シリコーンオイル(B)の質量比[W(A)/W(B)]の好ましい範囲は、30/70〜90/10であり、より好ましくは35/65〜80/20であり、さらに好ましくは40/60〜75/25である。質量比[W(A)/W(B)]が30/70以上であると、光照射により得られる硬化膜における硬化収縮の抑制硬化が高まる。一方、質量比[W(A)/W(B)]が90/10より以下であると、本願組成物の各成分の相溶性や安定性に優れ、本願組成物を無溶剤化する場合に好適となる。
【0035】
(C)重合開始剤
重合開始剤(C)(以下、(C)成分ということがある。)は、光照射時にシロキサンポリマー(A)の重合を開始、促進させる化合物であれば、特に限定されないが、たとえば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾル−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−ベンゾイル−4’−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ−2−エチルヘキシル安息香酸、4−ジメチルアミノ−2−イソアミル安息香酸、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド、2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン、p−メトキシトリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン;メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;イソブチリルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどのジアルキルパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパ−オキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのパーオキシケタール類;t−ブチルパ−オキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルパーオキシネオデカノエートなどのパーオキシエステル類;ジn−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類;アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチレートなどのアゾ化合物類等が挙げられる。
【0036】
上記のなかでも、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ヨードニウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルと2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルとの混合物、フェニルグリコシレート、ベンゾフェノン等が好ましい。
【0037】
これらの重合開始剤は市販のものを用いることができ、たとえばIRGACURE 907、IRGACURE 369、IRGACURE 651、(いずれも、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が市販されている。これらの重合開始剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
実施の形態に係る感光性樹脂組成物は、溶媒を必要としない無溶剤の状態で塗布可能である点が特徴の一つである。これにより、基板(支持体)の種類が制限されなくなる。また、より安定な硬化膜が得られる。特に、ナノインプリントリソグラフィのような密閉系で光硬化させる場合は、膜中に残存する溶剤の悪影響を考慮する必要がなくなるため好ましい。
【0039】
なお、実施の形態に係る感光性樹脂組成物に溶媒(D)を添加することも可能である。溶媒(D)としては、特に(B)成分との相溶性が良好なことから、アルコール類が好ましく、具体的にはメタノール(沸点64.7度)、エタノール(沸点78.3度)、n-プロピルアルコール(沸点97.2度)、イソプロピルアルコール(IPA;沸点82.4度)、n−ペンチルアルコール(沸点138.0度)、s−ペンチルアルコール(沸点119.3度)、t−ペンチルアルコール(101.8度)、イソペンチルアルコール(沸点130.8度)、イソブタノール(イソブチルアルコール又は2−メチル−1−プロパノールとも呼ぶ)(沸点107.9度)、2−エチルブタノール(沸点147度)、ネオペンチルアルコール(沸点114度)、n−ブタノール(沸点117.7度)、s−ブタノール(沸点99.5度)、t−ブタノール(沸点82.5度)、1−プロパノール(沸点97.2度)、n−ヘキサノール(沸点157.1度)、2−ヘプタノール(沸点160.4度)、3−ヘプタノール(沸点156.2度)、2−メチル−1−ブタノール(沸点128.0度)、2−メチル−2−ブタノール(沸点112.0度)、4−メチル−2−ペンタノール(沸点131.8度)、1−ブトキシ−2−プロパノール(1,2-Propylene glycol 1-monobutyl ether:PGB;沸点170度)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(沸点150度)、5−メチル−1−ヘキサノール(沸点167℃)、6−メチル−2−ヘプタノール(沸点171℃)、1−オクタノール(沸点196℃)、2−オクタノール(沸点179℃)、3−オクタノール(沸点175℃)、4−オクタノール(沸点175℃)、2−エチル−1−ヘキサノール(沸点185℃)、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール(沸点231℃)等の鎖状構造のアルコール類;シクロペンタンメタノール(沸点162℃)、1−シクロペンチルエタノール(沸点167℃)、シクロヘキサノール(沸点161℃)、シクロヘキサンメタノール(CM;沸点183℃)、シクロヘキサンエタノール(沸点205℃)、1,2,3,6−テトラヒドロベンジルアルコール(沸点191℃)、exo−ノルボルネオール(沸点176℃)、2−メチルシクロヘキサノール(沸点165℃)、シクロヘプタノール(沸点185℃)、3,5−ジメチルシクロヘキサノール(沸点185℃)、ベンジルアルコール(沸点204℃)、ターピオネール(沸点217度)等の環状構造を有するアルコール類;などが挙げられる。これらの溶剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記のなかでも、鎖状構造のアルコール類が好ましく、特に好ましくは、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、1−ブトキシ−2−プロパノールである。
【0040】
(パターン形成方法)
図1は、実施の形態に係る感光性樹脂組成物を用いたナノインプリントリソグラフィによるパターン形成方法を示す工程図である。
【0041】
まず、図1(A)に示すように、基板10に、感光性樹脂組成物20を塗布し、感光性樹脂組成物20の塗布層を形成する。基板10は、ポリカーボネート基板、アクリル系基板、ガラス基板、フィルム、半導体微細加工が施されるSiウェハ、銅配線、絶縁層などからなる。
【0042】
感光性樹脂組成物20を塗布する際は、バーコーター、ダイコーター、ロールコーター、リバースコーター、スリットコーター、スプレー等を用いる。感光性樹脂組成物20は、その後に実施されるパターン形成等の加工のため基板10に塗布されたときの厚みが均一であることが好ましい。このため、感光性樹脂組成物20を基板10上に積層する際には、バーコーター、またはダイコーターが好適である。
【0043】
次に、図1(B)に示すように、感光性樹脂組成物20が積層された基板10に、凹凸構造の所定パターンが形成されたモールド30を、感光性樹脂組成物20に対向して押し付け、感光性樹脂組成物20をモールド30の凹凸構造のパターンに合わせて変形させる。
【0044】
次に、図1(C)に示すように、モールド30を押圧した状態で、感光性樹脂組成物20に露光を行う。具体的には、紫外線(UV)などの電磁波が感光性樹脂組成物20に照射される。露光により、モールド30が押圧された状態で感光性樹脂組成物20が硬化し、モールド30の凹凸構造が転写された感光性樹脂組成物20からなるレジスト膜が形成される。なお、モールド30は、照射される電磁波に対して透過性を有する。
【0045】
次に、図1(D)に示すように、基板10からモールド30を剥離する。これにより、硬化した状態の感光性樹脂組成物20が基板10上にパターニングされる。このように、感光性樹脂組成物20が硬化した状態でモールド30を基板10から剥離することにより、モールド30の押圧を低圧化しつつ、形成されるパターン形状の、モールド30の凹凸構造に対する追随性を向上させることができる。
【0046】
このようにして、耐熱性、耐クラック性を有する良好な加工膜を得ることができる。について、シロキサン結合(Si−O―Si)を主骨格に有さないような有機系の化合物を用いた場合は、本発明の感光性樹脂組成物よりも耐熱性に劣り、また仮に耐熱性を有する有機系の化合物であっても、ナノインプリントリソグラフィによる加工の容易性が劣ると考えられる。本発明の感光性樹脂組成物を用いれば、3〜100μmの厚膜を形成した後、さらにその膜表面を容易に加工することが可能である。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の実施例を説明するが、これら実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【0048】
下記表1に示す各成分を混合、溶解して感光性樹脂組成物を調整した。
【0049】
【表1】

表1中の記号はそれぞれ以下のものを示す。なお、「(A)/(B)」は(A)成分と(B)成分の質量比である。(C)成分[]の数値は、(A)成分および(B)成分を100質量部としたときの配合量である。
(A)−1:下記式(A)−1で表される化合物(Mw2000、東レ・ファインケミカル(株)製、式中の括弧の隅にある値はモル比である)
【0050】
【化9】

(A)−2:下記式(A)−2で表される化合物(Mw2000、東レ・ファインケミカル(株)製、式中の括弧の隅にある値はモル比である)
【0051】
【化10】

(B)−1:テトラエトキシシラン
(B)−2:下記式(B)−2で表される化合物(mは3〜8、Mw400〜700)
【0052】
【化11】

(B)−3:下記式(B)−3で表される化合物(mは5〜10、粘度10cm/s)
【0053】
【化12】

(C)−1:IRGACURE907(Ciba社製)
【0054】
[硬化膜の評価−1]
得られた組成物をそれぞれガラス基板上にスポイトで滴下し、表1の「塗付膜厚」に示すターゲット膜厚となるようにバーコーターを用いて塗膜を得た。次いで、離型処理したガラス基板を前記塗膜上に載せ、ghi線超高圧水銀灯MAT−2501(ウシオ電機社製)により、500mJで照射を行った。その後、離型処理したガラス基板をはがし、硬化膜を目視で確認した。硬化膜の評価結果を表1に併記した。
【0055】
表1に示すように、比較例に係る組成物では白濁が生じることが確認された。これに対して、実施例に係る組成物はいずれも透明で良好な膜(膜厚:約10μm)が形成できることが確認できた。
【0056】
[硬化膜の評価−2(安定性の評価)]
上記評価で良好な膜が得られたもののうち、実施例2〜5の組成物をそれぞれガラス基板上にスポイトで滴下し(滴下塗付)、その塗布液上にそのまま離型処理したガラス基板を載せ、ghi線超高圧水銀灯MAT−2501(ウシオ電機社製)により、500mJで照射を行った。その後、離型処理したガラス基板をはがし、硬化膜の膜厚を測定した。
【0057】
次いで、滴下塗付により得られた各硬化膜と、上記評価で得られた膜厚10μmの硬化膜(実施例1〜6および比較例4〜6)について、室温で1週間経過させた後の状態変化を目視で確認した。結果を以下に示す。なお、滴下塗布によるため各硬化膜の膜厚は一定でないが、バーコーターによる塗布よりも安定性評価においては強制条件となる。
【0058】
【表2】

【0059】
表2に示すように、実施例2〜5の組成物を滴下塗布することによって形成された硬化膜は透明であり、良好な状態であることが確認された。また、1週間後の硬化膜の状態について、膜厚10μmの実施例1〜6も滴下塗付の結果と同様に、特に変化した様子がなく良好であった。一方、比較例4〜6の硬化膜には無数のクラックが入っていた。
以上より、本発明に係る組成物による硬化膜の安定性が良好であることが確認できた。
【0060】
[硬化膜の評価−3(硬化収縮の評価)]
実施例1〜3の組成物をそれぞれフィルム上にスポイトで滴下し、表1の「塗付膜厚」に示すターゲット膜厚となるようにバーコーターを用いて塗膜を得た。次いで、離型処理したガラス基板を前記塗膜上に載せ、ghi線超高圧水銀灯MAT−2501(ウシオ電機社製)により、1000mJ(強制条件)で前記ガラス基板の側から照射を行った。その後、離型処理したガラス基板をはがし、硬化膜の支持体となっているフィルムの反りを確認した。
【0061】
結果、実施例1および2ではフィルムはほとんど平坦なままだったが、実施例3は若干フィルムが反り返っていた。よって、実施例1および2の組成物は、硬化収縮が少なく良好であることが確認できた。
【符号の説明】
【0062】
10 基板、20 感光性樹脂組成物、30 モールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射により重合する重合性基を有するシロキサンポリマー(A)と、
末端変性シロキサン化合物(B)と、
重合開始剤(C)と、
を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
末端変性シロキサン化合物(B)が下記式(B1)で表される請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

式(B1)中、
sは、1〜20の整数であり、
は、メチル基または水素原子であり、
は、炭素数1〜9のアルキレン基であり、
X、Yは独立に、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、水酸基、または下記式(I)で表される基(式(I)中、R〜Rは独立に炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、水酸基であり、tは1〜3の整数)であり、
【化2】

Zは、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、水酸基、または式(II)で表される基(式(II)中R3’はメチル基または水素原子であり;R4’は炭素数1〜9のアルキレン基)である。
【化3】

【請求項3】
前記シロキサンポリマー(A)が下記一般式(A1)で表される請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】

式(A1)中、Rは、エチレン性不飽和二重結合を含有する基であり、Rは炭素数1〜9のアルキレン基であり、異なるRを有する場合があってもよく、Rはアルキル基、アリール基、または水素原子であり、異なるRを有する場合があってもよく、m:nは50:50〜100:0の範囲である。
【請求項4】
シロキサンポリマー(A)と末端変性シリコーンオイル(B)の質量比(W(A)/WB))が30/70〜90/10の範囲である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
無溶剤である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−54682(P2011−54682A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200705(P2009−200705)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】