説明

感光性樹脂膜の形成方法、シリカ系被膜の形成方法並びにシリカ系被膜を備える装置及び部材

【課題】 層間絶縁膜として用いることのできるシリカ系被膜の形成が比較的容易であり、プロセスマージンに優れ、形成されるシリカ系被膜が解像性及び耐熱性に優れる感光性樹脂膜の形成方法及びそれを用いたシリカ系被膜の形成方法を提供すること。
【解決手段】 特定のシラン化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂と、上記シロキサン樹脂が溶解する溶媒と、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとを含有する感光性樹脂組成物を、基板上に塗布し真空乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程を備える感光性樹脂膜の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂膜の形成方法、シリカ系被膜の形成方法、並びに当該方法により形成されたシリカ系被膜を備える半導体装置、平面表示装置及び電子デバイス用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の平面表示装置や半導体装置の製作においては、層間絶縁膜が用いられている。一般に層間絶縁膜は、気相からの堆積又は塗布により形成した膜に対し、フォトレジストを介してエッチングすることによりパターン形成されている。そして、微細なパターンを形成する場合には、通常気相エッチングが用いられている。しかしながら、気相エッチングは装置コストが高く、かつ処理速度が遅いという問題があった。
【0003】
そこで、コスト低減を目的として、層間絶縁膜用感光性材料の開発が行われるようになった。特に、液晶表示装置においては、画素電極とゲート/ドレイン配線との間の絶縁及びデバイス平坦化のために用いられる層間絶縁膜に、コンタクトホールを形成する必要があるため、ポジ型の感光特性を有する層間絶縁膜用感光性材料が求められている。さらに、液晶表示装置における層間絶縁膜には、透明性が求められる。また、パターン化された膜を層間絶縁膜として残留させて使用する場合には、誘電率の小さい膜であることが望まれる。
【0004】
これらの要請に応えるために、例えば、特許文献1及び2に開示の層間絶縁膜の形成方法が提案されている。特許文献1には、ポリシラザンと光酸発生剤とを含む感光性ポリシラザン組成物の塗膜を形成する工程と、上記塗膜に光をパターン状に照射する工程と、上記塗膜の照射された部分を溶解除去する工程とを含んでなる、層間絶縁膜の形成方法が開示されている。また、特許文献2には、シロキサン樹脂と、放射線の照射を受けて酸又は塩基を発生する化合物とを含む組成物から形成された層間絶縁膜が開示されている。
【特許文献1】特開2000−181069号公報
【特許文献2】特開2004−107562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の膜を層間絶縁膜として用いる場合には、ポリシラザンを加水分解して、ポリシラザン構造をポリシロキサン構造に転化させる必要がある。この際、膜中の水分が不足すると加水分解が十分に進行しないという問題がある。さらに、ポリシラザンの加水分解においては、揮発性が高いアンモニアが発生することから、製造装置の腐食等が問題となる。
【0006】
また、特許文献2記載のシロキサン樹脂と、放射線の照射を受けて酸又は塩基を発生する化合物とを含む組成物から形成された層間絶縁膜は、耐熱性及び解像性が十分でないという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、層間絶縁膜として用いることのできるシリカ系被膜の形成が比較的容易であり、プロセスマージンに優れると共に、形成されるシリカ系被膜が解像性及び耐熱性に優れる感光性樹脂膜の形成方法及びそれを用いたシリカ系被膜の形成方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、当該方法により形成されたシリカ系被膜を備える半導体装置、平面表示装置及び電子デバイス用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、(a)成分:下記一般式(1)で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂と、(b)成分:(a)成分が溶解する溶媒と、(c)成分:ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルと、を含有する感光性樹脂組成物を、基板上に塗布し真空乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程を備える、感光性樹脂膜の形成方法を提供する。
【化1】


[式(1)中、Rは、H原子若しくはF原子、又は、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を含む基、又は有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、同一分子内の複数のXは同一でも異なっていてもよく、nが2であるとき、同一分子内の複数のRは同一でも異なっていてもよい。]
【0009】
感光性樹脂組成物の構成成分として、シロキサン樹脂を用いているため、特許文献1に記載の方法では必須のポリシラザン構造をポリシロキサン構造に転化させる工程を省略することができることから、比較的容易にシリカ系被膜を形成することができる。
【0010】
さらに、感光性樹脂組成物を基板に塗布後、減圧条件下、乾燥処理することで、未露光部と露光部とのアルカリ水溶液への溶解速度差が大きくなる感光性樹脂膜とすることができるため、プロセスマージンに優れ、さらに解像性及び耐熱性に優れたシリカ系被膜を形成することができる。本発明の感光性樹脂膜から形成されるシリカ系被膜により、このような効果を得ることができる理由は必ずしも明らかでないが、本発明者らは次のように考えている。
【0011】
すなわち、かかる感光性樹脂組成物においては、(a)成分が耐熱性に優れるため、形成されるシリカ系被膜は耐熱性に優れると考えられる。また、上記一般式(1)で表される化合物は、加水分解性基を有していることから、それを加水分解することにより得られるシロキサン樹脂はシラノール基を有するためアルカリ水溶液への溶解性が高い。ここで、パターニングされたシリカ系被膜を形成するためには、被膜の未露光部と露光部とのアルカリ水溶液に対する溶解度の差を大きくすることが必要であり、その差が大きいほど解像度は優れたものとなる。上記感光性樹脂組成物を基板に塗布した後、減圧下で乾燥することで感光性樹脂膜中に含有する溶媒が少なくなり、シロキサン樹脂中のシラノール基と感光剤であるナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物との相互作用が促進され、未露光部のアルカリ水溶液への溶解性が著しく低下する。これはシラノール基がナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物に保護されるために、アルカリ水溶液への溶解性が低下するものと考えられる。一方、露光部は、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物の光反応によって、現像時のアルカリ水溶液により溶解させることが容易となる。そのため、未露光部と露光部とのアルカリ水溶液に対する溶解度の差が大きくなり解像性が向上すると共に、プロセス条件(温度等)の影響を受け難くなると考えられる。そして、上述した効果が有効に発現し、プロセスマージン、解像性及び耐熱性に特に優れたシリカ系被膜を形成することができる。
【0012】
上記感光性樹脂組成物は、(d)成分:下記一般式(2)で表される化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂を更に含有することが好ましい。これにより、柔軟性に優れる感光性樹脂膜を形成でき、最終的に形成されるシリカ系被膜のクラック耐性が向上する。
【0013】
【化2】


[式(2)中、Rは有機基を示し、Aは2価の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、同一分子内の複数のXは同一でも異なっていてもよい。]
【0014】
(b)成分が、エーテルアセテート系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒を含むことが好ましい。これにより、かかる感光性樹脂組成物を基板上に塗布する際の塗布ムラやはじきを抑えることができ、さらに真空下で溶媒を容易に除去することができる。
【0015】
(c)成分は、1価又は多価アルコールと、ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステルであることが好ましい。これにより、かかる感光性樹脂組成物から形成されるシリカ系被膜の透明性が向上する。
【0016】
本発明はまた、上記感光性樹脂膜の形成方法で作製された感光性樹脂膜を更に常圧で熱処理して塗膜を得る熱処理工程と、上記塗膜の所定部分を露光する第1露光工程と、塗膜の露光された所定部分を除去する除去工程と、上記所定部分が除去された塗膜を加熱する加熱工程とを有するシリカ系被膜の形成方法を提供する。このようなシリカ系被膜の形成方法によれば、上述の感光性樹脂膜を用いているため、プロセスマージンに優れ、さらに解像性及び耐熱性に優れるシリカ系被膜を得ることができる。
【0017】
本発明はまた、上記感光性樹脂膜の形成方法で作製された感光性樹脂膜を更に常圧で熱処理して塗膜を得る熱処理工程と、上記塗膜の所定部分を露光する第1露光工程と、上記塗膜の露光された所定部分を除去する除去工程と、上記所定部分が除去された塗膜を露光する第2露光工程と、上記所定部分が除去された塗膜を加熱する加熱工程とを有するシリカ系被膜の形成方法を提供する。このようなシリカ系被膜の形成方法によれば、上述の感光性樹脂組成物を用いているため、プロセスマージンに優れ、さらに解像性及び耐熱性に優れるシリカ系被膜を得ることができる。さらに、可視光領域に光学吸収を有する(c)成分が第2露光工程で分解され、可視光領域における光学吸収が十分に小さい化合物が生成する。よって、得られるシリカ系被膜の透明性が向上する。
【0018】
本発明は、基板と、該基板上に上述の形成方法により形成されたシリカ系被膜とを備える、半導体装置、平面表示装置及び電子デバイス用部材を提供する。これらの半導体装置、平面表示装置及び電子デバイス用部材は、上述の感光性樹脂膜から形成されるシリカ系被膜を層間絶縁膜として備えているため、優れた効果を発揮する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、層間絶縁膜として用いることのできるシリカ系被膜の形成が比較的容易であり、プロセスマージンに優れると共に、形成されるシリカ系被膜が解像性及び耐熱性に優れる感光性樹脂膜の形成方法及びそれを用いたシリカ系被膜の形成方法を提供することができる。また、本発明の感光性樹脂膜から形成されるシリカ系被膜は絶縁特性、低誘電性及び場合により透明性にも優れ、厚膜化も容易に可能である。さらに、本発明は、上記シリカ系被膜の形成方法により形成されるシリカ系被膜を備える半導体装置、平面表示装置及び電子デバイス用部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
また、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)により測定され、かつ標準ポリスチレンの検量線を使用して換算されたものである。
【0022】
ここで、重量平均分子量(Mw)は、例えば、以下の条件で、GPCを用いて測定することができる。
(条件)
試料:10μL
標準ポリスチレン:東ソー株式会社製標準ポリスチレン(分子量;190000、17900、9100、2980、578、474、370、266)
検出器:株式会社日立製作所社製、RI−モニター、商品名「L−3000」
インテグレーター:株式会社日立製作所社製、GPCインテグレーター、商品名「D−2200」
ポンプ:株式会社日立製作所社製、商品名「L−6000」
デガス装置:昭和電工株式会社製、商品名「Shodex DEGAS」
カラム:日立化成工業株式会社製、商品名「GL−R440」、「GL−R430」、「GL−R420」をこの順番で連結して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:23℃
流速:1.75mL/分
測定時間:45分
【0023】
(感光性樹脂組成物)
本発明に係る感光性樹脂組成物は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有し、好ましくはさらに(d)成分を含有する。以下、各成分について説明する。
【0024】
<(a)成分>
(a)成分は、下記一般式(1)で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂である。
【0025】
【化3】


[式(1)中、Rは、H原子若しくはF原子、又は、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を含む基、又は有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、同一分子内の複数のXは同一でも異なっていてもよく、nが2であるとき、同一分子内の複数のRは同一でも異なっていてもよい。]
【0026】
式(1)中、Rで示される有機基としては、例えば、アミノ基、芳香環、アミノ基又はエポキシ基を有する基、脂環式炭化水素基及び炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。これらの中で、接着性の観点から、アミノ基又はエポキシ基を有する基及びメチル基が好ましい。
【0027】
式(1)中、Rで示される炭素数1〜20の有機基としては、例えば、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、及び、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの中で、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状の脂肪族炭化水素基及びその一部がF原子により置換された基、並びにフェニル基が好ましい。
【0028】
式(1)中、Xで示される加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基等が挙げられる。これらの中では、組成物自体の液状安定性や塗布特性等の観点からアルコキシ基が好ましい。
【0029】
加水分解性基Xがアルコキシ基である一般式(1)の化合物(アルコキシシラン)としては、例えば、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0030】
テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシランが挙げられる。
【0031】
トリアルコキシシランとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−iso−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−iso−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、iso−プロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ブチルトリフェノキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、t−ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−iso−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−iso−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0032】
ジオルガノジアルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−iso−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジ−iso−プロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジフェノキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジフェノキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジフェノキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジフェノキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジフェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジ−iso−プロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシランが挙げられる。
【0033】
また、Xがアルコキシ基であり、Rが炭素数1〜20の有機基である上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、上記のものの他、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)プロパン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン等のビスシリルアルカン、ビスシリルベンゼンが挙げられる。
【0034】
Xがアルコキシ基であり、Rが芳香環を有する基である上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、上記のものの他、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、ビス(トリイソプロポキシシリル)ベンゼン等のビスシリルベンゼンが挙げられる。
【0035】
Xがアルコキシ基であり、Rがアミノ基を有する基である上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、4−アミノブチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチルメチルメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリエメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、6−アジドスルフォニルヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
Xがアルコキシ基であり、Rがエポキシ基を有する基である上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
【0037】
これらのような一般式(1)で表される化合物の中でも、接着性の観点から、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン及び(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシランが特に好ましい。また、同様の観点から、nが0である化合物が好ましく、テトラアルコキシシランが特に好ましい。
【0038】
これら一般式(1)で表される化合物は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0039】
上述の一般式(1)で表される化合物の加水分解縮合は、例えば、次のような条件で行うことができる。
【0040】
まず、加水分解縮合の際に用いる水の量は、一般式(1)で表される化合物1モル当たり0.1〜1000モルであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜100モルである。この水の量が0.1モル未満では加水分解縮合反応が十分に進行しない傾向にあり、水の量が1000モルを超えると加水分解中又は縮合中にゲル化物を生じる傾向にある。
【0041】
また、加水分解縮合の際には、触媒を使用してもよい。触媒としては、例えば、酸触媒、アルカリ触媒、金属キレート化合物を用いることができる。これらの中で、一般式(1)で表される化合物のゲル化を防止する観点から、酸触媒が好ましい。
【0042】
酸触媒としては、例えば、有機酸及び無機酸が挙げられる。有機酸としては、例えば、蟻酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、酪酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸等が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、燐酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、フッ酸等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。さらに、加水分解縮合後の触媒は、上述の場合と同様に取り除いたり失活させたりしてもよい。
【0043】
アルカリ触媒としては、例えば、無機アルカリ及び有機アルカリ等が挙げられる。無機アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられる。有機アルカリとしては、例えば、ピリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、アンモニア、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘブチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデカシルアミン、ドデカシルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジペンチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジシクロペンチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0044】
金属キレート化合物としては、例えば、トリメトキシ・モノ(アセチルアセナート)チタン、トリエトキシ・モノ(アセチルアセナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセナート)チタン、トリ−iso−プロポキシ・モノ(アセチルアセナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセナート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセナート)チタン、ジメトキシ・モノ(アセチルアセナート)チタン、ジエトキシ・ジ(アセチルアセナート)チタン、ジn−プロポキシ・ジ(アセチルアセナート)チタン、ジiso−プロポキシ・ジ(アセチルアセナート)チタン、ジn−ブトキシ・ジ(アセチルアセナート)チタン、ジsec−ブトキシ・ジ(アセチルアセナート)チタン、ジtert−ブトキシ・ジ(アセチルアセナート)チタン、モノメトキシ・トリス(アセチルアセナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセナート)チタン、モノn−プロポキシ・トリス(アセチルアセナート)チタン、モノiso−プロポキシ・トリス(アセチルアセナート)チタン、モノn−ブトキシ・トリス(アセチルアセナート)チタン、モノsec−ブトキシ・トリス(アセチルアセナート)チタン、モノtert−ブトキシ・トリス(アセチルアセナート)チタン、テトラキス(アセチルアセナート)チタン、トリメトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−iso−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジメトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、ジn−プロポキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、ジiso−プロポキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、ジn−ブトキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、ジsec−ブトキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、ジtert−ブトキシ・ジ(エチルアセトアセテート)チタン、モノメトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノn−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノiso−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノn−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノsec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノtert−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン等のチタンを有する金属キレート化合物、上記チタンを有する金属キレート化合物のチタンがジルコニウム、アルミニウム等に置換された化合物などが挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0045】
このような触媒の使用量は、一般式(1)で表される化合物1モルに対して0.0001〜1モルの範囲であることが好ましい。この使用量が0.0001モル未満では実質的に反応が進行しない傾向にあり、1モルを超えると加水分解縮合時にゲル化が促進される傾向にある。
【0046】
なお、加水分解縮合において上述の触媒を用いたときには、得られる感光性樹脂組成物の安定性が悪化する可能性や、触媒を含むことにより他の材料への腐食等の影響が懸念される可能性がある。これらのような悪影響は、例えば、加水分解縮合後に、触媒を感光性樹脂組成物から取り除いたり、触媒を他の化合物と反応させて触媒としての機能を失活させたりすることにより解消することができる。これらの操作を実施するための方法としては、従来公知の方法を用いることができる。触媒を取り除く方法としては、例えば、蒸留法やイオンクロマトカラム法等が挙げられる。また、触媒を他の化合物と反応させて触媒としての機能を失活させる方法としては、例えば、触媒が酸触媒の場合、塩基を添加して酸塩基反応により中和する方法が挙げられる。
【0047】
また、かかる加水分解縮合の際にはアルコールが副生する。このアルコールは、プロトン性溶媒であり、感光性樹脂組成物の物性に悪影響を与えるおそれがあることから、エバポレータ等を用いて除去することが好ましい。
【0048】
このようにして得られるシロキサン樹脂は、溶媒への溶解性、機械特性、成形性等の観点から、重量平均分子量が、500〜1000000であることが好ましく、500〜500000であることがより好ましく、500〜100000であることが更に好ましく、500〜10000であることが特に好ましく、500〜5000であることが極めて好ましい。この重量平均分子量が500以上であればシリカ系被膜の成膜性が向上し、1000000以下であれば、溶媒との相溶性に優れるものとなる。
【0049】
<(b)成分>
(b)成分は、(a)成分を溶解する溶媒である。その具体例としては、非プロトン性溶媒及びプロトン性溶媒が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
非プロトン性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−iso−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル等のエステル系溶媒;エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のエーテルアセテート系溶媒;アセトニトリル、N―メチルピロリジノン、N―エチルピロリジノン、N―プロピルピロリジノン、N―ブチルピロリジノン、N―ヘキシルピロリジノン、N―シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレンが挙げられる。これらの中で、形成されるシリカ系被膜の厚膜化が可能となり、かつ感光性樹脂組成物の溶液安定性が向上する観点から、エーテル系溶媒、エーテルアセテート系溶媒及びケトン系溶媒が好ましい。これらの中でも塗布ムラやはじきを抑える観点から、エーテルアセテート系溶媒が最も好ましく、エーテル系溶媒が次に好ましく、ケトン系溶媒がその次に好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
プロトン性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル等のエステル系溶媒が挙げられる。これらの中で、保管安定性の観点から、アルコール系溶媒が好ましい。さらに、塗布ムラやはじきを抑える観点からは、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールプロピルエーテルが好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
上述の(b)成分の種類は、(a)成分、(c)成分及び(d)成分の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、後述する(c)成分がナフトキノンジアジドスルホン酸とフェノール類とのエステルであり、脂肪族炭化水素系溶媒への溶解性が低い場合には、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒等を適宜選択することができる。
【0053】
このような(b)成分の配合量は、(a)成分、(b)成分及び(d)成分の種類等に応じて適宜調節することができるが、例えば、感光性樹脂組成物の固形分全体100質量部に対して、0.1〜90質量部用いることができる。
【0054】
(b)成分を感光性樹脂組成物中に加える方法としては、従来公知の方法を用いることができる。その具体例としては、(a)成分を調製する際の溶媒として用いる方法、(a)成分を調製後、添加する方法、溶媒交換を行う方法、(a)成分を溶媒留去等で取り出した後に(b)成分を加える方法等が挙げられる。
【0055】
<(c)成分>
(c)成分は、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルである。この成分は、感光性樹脂組成物にポジ型感光性を付与するためのものである。ポジ型感光性は、例えば次のようにして発現する。
【0056】
すなわち、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルに含まれるナフトキノンジアジド基は、本来アルカリ現像液に対する溶解性を示さず、さらにシロキサン樹脂のアルカリ現像液への溶解を阻害する。しかし、紫外線又は可視光を照射することにより、ナフトキノンジアジド基は、インデンカルボン酸構造へと変化してアルカリ現像液に高い溶解性を示すようになる。よって、(c)成分を配合することにより、露光部がアルカリ現像液により除去されるポジ型感光性が発現する。
【0057】
ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、例えば、ナフトキノンジアジドスルホン酸とフェノール類又はアルコール類とのエステルが挙げられる。この中で、上記(a)成分との相溶性、形成されるシリカ系被膜の透明性(感度)の観点から、ナフトキノンジアジドスルホン酸と、1価又は多価アルコール類、フェノール類又は1つ以上のアリール基を有するアルコール類とのエステルが好ましく、1価又は多価アルコール類とエステルがより好ましい。ナフトキノンジアジドスルホン酸としては、例えば、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0058】
フェノール類及びアリール基を有するアルコール類の具体例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、o−イソプロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、メシトール、o−プロピルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、2,3,5トリメチルフェノール、2,3,6トリメチルフェノール、2,4,6トリメチルフェノール、o−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、o−エトキシフェノール、m−エトキシフェノール、p−エトキシフェノール、2−メトキシ−4−メチルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、3−メトキシ−5−メチルフェノール、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸イソプロピル、サリチル酸イソブチル、4−ヒドロキシクマリン、7−ヒドロキシクマリン、ベンジルアルコール、o−メチルベンジルアルコール、m−メチルベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、フェネチルアルコール、2,5−ジメチルベンジルアルコール、3,5−ジメチルベンジルアルコール、1−(2−メチルフェニル)エタノール、1−(4−メチルフェニル)エタノール、2−フェノキシエタノール、2−(4−メチルフェニル)エタノール、2−(p−トリル)エタノール、1−フェニル−1−プロパノール、2−フェニル−1−プロパノール、2−フェニル−2−プロパノール、3−フェニル−1−プロパノール、p−キシレン−α,α’−ジオール、o−tert−ブチルフェノール、m−tert−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−sec−ブチルフェノール、6−tert−ブチル−m−クレゾール、2−tert−ブチル−p−クレゾール、o−シクロヘキシルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、o−アリルフェノール、2,6−ジイソプロピルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、4−イソプロピル−3−メチルフェノール、4−tert−ブチル−2−メチルフェノール、2−tert−ブチル−6−メチルフェノール、カテコール、レソシノール、ヒドロキノン、2,3−ジヒドロキシトルエン、2,6−ジヒドロキシトルエン、3,4−ジヒドロキシトルエン、3,5−ジヒドロキシトルエン、サリシルアルコール、o−ヒドロキシベンジルアルコール、m−ヒドロキシベンジルアルコール、p−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール、2,4−ビス(ヒドロキシメチル)−m−クレゾール、2,4,6−トリス(ヒドロキシメチル)フェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、(1,3)−ジヒドロキシナフタレン、(1,4)−ジヒドロキシナフタレン、(1,5)−ジヒドロキシナフタレン、(1,6)−ジヒドロキシナフタレン、(2,3)−ジヒドロキシナフタレン、(2,6)−ジヒドロキシナフタレン、(2,7)−ジヒドロキシナフタレン、1−ナフタレンメタノール、2−ナフタレンメタノール、7−メトキシ−2−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、1−(1−ナフチル)エタノール、1−(2−ナフチル)エタノール、2−(1−ナフチル)エタノール、1,4−ナフタレンジメタノール、2,3−ナフタレンジメタノール、2−(2−ナフトキシ)エタノール、2−ヒドロキシビフェニル、3−ヒドロキシビフェニル、4−ヒドロキシビフェニル、2−ビフェニルエタノール、4−ビフェニルメタノール、2−ベンジルフェノール、ベンズヒドロール、2−メチル−3−ビフェニルメタノール、1,1−ジフェニルエタノール、2,2−ジフェニルエタノール、1−(4−ビフェニリル)エタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシ)プロパン、1,3−ジフェノキシプロパン−2−オール、p−クミルフェノール、2−(4−ビフェニリル)−2−プロパノール、4−(4−ビフェニル)−2−ブタノール、(2,3)ビフェニルジオール、(2,2’)ビフェニルジオール、(4,4’)ビフェニルジオール、3−フェノキシベンジルアルコール、4−4’メチレンジフェノール、2−ベンジルオキシフェノール、4−ベンジルオキシフェノール、1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオール、4,4’−エチリデンジフェノール、4−ベンジルオキシベンジルアルコール、1,3−ジフェノキシ−2−プロパノール、4,4’−ジメトキシベンズヒドロール、1’−ヒドロキシ−2’−アセトナフトン、1−アセトナフトール、2,3,4−トリヒドロキシジフェニルメタン、4−ヒドロキシビフェニル、4−ヒドロキシ−4’−プロポキシビフェニル、4−ヒドロキシ−4’−ブトキシビフェニル、ジフェニルメタン−2,4−ジオール、4,4’,4’’−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’−(1−(p−(4−ヒドロキシ−α,α−ジメチルベンジル)フェニル)エチリデン)ジフェノール、4,4’−(2−ヒドロキシベンジリデン)ビス(2,3,6−トリメチルフェノール)、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)p−クレゾール、1,1,1−トリス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンが挙げられる。
【0059】
また、フェノール類としては、以下の化合物も挙げられる(いずれも本州化学工業(株)製、商品名)。
【0060】
【化4】

【0061】
【化5】

【0062】
1価又は多価アルコール類としては、炭素数3〜20のものが好ましい。1価又は多価アルコール類の炭素数が1又は2である場合、対応するスルホン酸エステルにはナフトキノンジアジドスルホン酸メチルエステル、ナフトキノンジアジドスルホン酸エチルエステル等を挙げることができるが、これらの化合物は、アルキル基部分が小さく、結晶性が高いため、感光性樹脂組成物溶液中で析出しやすく、また、(a)成分との相溶性に劣り十分な濃度で混合できない傾向がある。また、1価又は多価アルコール類の炭素数が20を超える場合には、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル分子中のナフトキノンジアジド部位の占める割合が小さいため、感光特性が低下する傾向にある
【0063】
炭素数3〜20の1価アルコール類の具体例としては、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、ベンジルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘキサンメタノール、シクロヘキサンエタノール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−アダマンタノール、2−アダマンタノール、アダマンタンメタノール、ノルボルナン−2−メタノール、テトラフルフリルアルコール、2−メトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、重合度2〜10のポリエチレングリコールモノメチルエーテル、重合度2〜10のポリエチレングリコールモノエチルエーテル、重合度1〜10のポリプロレングリコールモノメチルエーテル、重合度1〜10のポリプロレングリコールモノエチルエーテル、さらにアルキル基がプロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソアミル、ヘキシル、シクロヘキシル等である重合度1〜10のポリプロレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。
【0064】
炭素数3〜20の2価アルコール類の具体例としては、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、p−キシリレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2−ジイソアミル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジイソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−オクチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールが挙げられる。
【0065】
炭素数3〜20の価数が3以上のアルコール類の具体例としては、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、糖類、これらの多価アルコールのエチレングリコール,プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール付加体が挙げられる。
【0066】
これら1価又は多価アルコールの中でも、形成されるシリカ系被膜の透明性の観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール及びそれらの重合度が2〜10である重合体の中から選ばれた化合物を用いることが好ましい。
【0067】
上述のナフトキノンジアジドスルホン酸エステルは、従来公知の方法により得ることが可能であり、例えば、ナフトキノンジアジドスルホン酸塩化物とアルコールとを塩基存在下で反応させることにより得ることができる。
【0068】
この反応に用いる塩基としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン等の第三級アルキルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、カリウム−tert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが挙げられる。
【0069】
また、反応溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、THF、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセート等のエーテルアセテート系溶媒、アセトン、イソブチルケトン等のケトン系溶媒、ヘキサン、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0070】
また、(c)成分のナフトキノンジアジドスルホン酸エステルは、(a)成分のシロキサン樹脂とともに、(b)成分の溶剤に溶解して用いる。
【0071】
感光性樹脂組成物中の上記(c)成分の配合割合は、感光特性等の観点から、感光性樹脂組成物中に含まれるシロキサン樹脂の固形分全体を基準として、3〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、5〜25質量%であることが更に好ましい。(c)成分の配合割合が3質量%以上であると、アルカリ現像液への溶解阻害作用が向上し、感光性に優れるものとなる。また、(c)成分の配合割合が40質量%以下であると、塗膜を形成する際の(c)成分の析出が抑制され、塗膜が均一となり易い。一方、感光剤の配合割合が40質量%を超えると、感光剤としての(c)成分の濃度が高く、形成される塗膜の表面近傍でのみ光の吸収が起こり、塗膜の下部まで露光時の光が到達せずに感光特性が低下する傾向がある。
【0072】
<(d)成分>
(d)成分は、下記一般式(2)で表される化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂である。この(d)成分は、上述の(a)成分と組み合わせて用いることが好ましい。(d)成分は、シロキサン樹脂中にアシロキシ基を含有するため、感光特性と絶縁被膜特性の双方に優れた被膜を得ることができる。アシロキシ基はアルカリ水溶液に溶解しやすいため、露光後の現像時に使用されるアルカリ水溶液に対して溶解性が増加し、未露光部と露光部とのコントラストが大きくなり解像性が良くなる。また、上記(d)成分は柔軟な成分であるため、加熱処理後の被膜中にクラックが入りにくく、厚膜化が容易となる。これにより、かかる感光性樹脂組成物から形成されるシリカ系被膜のクラック耐性を向上させることができる。
【0073】
【化6】


[式(2)中、Rは有機基を示し、Aは2価の有機基を示し、Xは加水分解性基を示す。なお、同一分子内の複数のXは同一でも異なっていてもよい。]
【0074】
式(2)中、Rで示される有機基としては、例えば、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの中で、炭素数1〜20の直鎖状、分枝状又は環状の脂肪族炭化水素基が好ましい。炭素数1〜20の直鎖状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等の基が挙げられる。分枝状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、イソプロピル基、イソブチル基等の基が挙げられる。また、環状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチレン基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の基が挙げられる。これらの中で、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜5の直鎖状の炭化水素基がより好ましく、原料入手容易性の観点からメチル基が特に好ましい。
【0075】
式(2)中、Aで示される2価の有機基としては、例えば、2価の芳香族炭化水素基及び2価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。これらの中で、原料入手容易性等の観点から、炭素数1〜20の直鎖状、分枝状又は環状の2価の炭化水素基が好ましい。
【0076】
炭素数1〜20の直鎖状の2価の炭化水素基の好ましい具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等の基が挙げられる。炭素数1〜20の分枝状の2価の炭化水素基の好ましい具体例としては、イソプロピレン基、イソブチレン基等の基が挙げられる。炭素数1〜20の環状の2価の炭化水素基の好ましい具体例としては、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロヘプチレン基、ノルボルナン骨格を有する基、アダマンタン骨格を有する基等の基が挙げられる。これらの中で、メチレン基、エチレン基、プロピレン基のような炭素数1〜7の直鎖状の2価の炭化水素基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基のような環状の2価の炭化水素基、ノルボルナン骨格を有する環状の2価の炭化水素基が特に好ましい。
【0077】
式(2)中、Xで示される加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、イソシアネート基及びヒドロキシル基が挙げられる。これらの中で、感光性樹脂組成物自体の液状安定性や塗布特性等の観点からアルコキシ基が好ましい。
【0078】
上記シラン化合物を加水分解縮合する際には、一般式(2)で表される化合物について、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、一般式(1)で表される化合物と2種以上を組み合わせることができる。
【0079】
上述の一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを含むシラン化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂の構造の具体例を下記一般式(3)に示す。なお、この具体例は、2種の一般式(1)で表される化合物(Rはそれぞれフェニル基とメチル基)と、1種の一般式(2)で表される化合物(Rはメチル基)とを加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂の構造である。また、簡略化のため構造を平面的に示したが、当業者には理解されるように、実際のシロキサン樹脂は3次元網目構造を有する。さらに、添え字の”3/2”は、1個のSi原子に対して3/2個の割合でO原子が結合していることを示す。
【0080】
【化7】

【0081】
ここで、式(3)中、a、b、cは、それぞれ各部位に対応する原料のモル比(モル%)を示し、aは1〜98、bは1〜98、cは1〜98である。ただし、a、b及びcの合計は100である。また、式(3)中のAは、2価の有機基を示す。
【0082】
上述のシラン化合物の加水分解縮合は、例えば、次のような条件で行うことができる。
【0083】
まず、加水分解縮合の際に用いる水の量は、一般式(2)で表される化合物1モル当たり0.01〜1000モルであることが好ましく、0.05〜100モルであることがより好ましい。この水の量が0.01モル未満では加水分解縮合反応が十分に進行しない傾向にあり、水の量が1000モルを超えると加水分解中又は縮合中にゲル化物を生じる傾向にある。
【0084】
また、加水分解縮合の際には、触媒を使用してもよい。触媒としては、上述のシラン化合物の加水分解縮合の際に使用されるものと同様なものを用いることができ、例えば、酸触媒、アルカリ触媒、金属キレート化合物が挙げられる。これらの中で、一般式(2)で表される化合物におけるアシロキシ基の加水分解を防止する観点から、酸触媒が好ましい。
【0085】
このような触媒の使用量は、一般式(2)で表される化合物1モルに対して0.0001〜1モルの範囲であることが好ましい。この使用量が0.0001モル未満では実質的に反応が進行しない傾向にあり、1モルを超えると加水分解縮合時にゲル化が促進される傾向にある。
【0086】
なお、加水分解縮合において上述の触媒を用いたときには、得られる感光性樹脂組成物の安定性が悪化する可能性や、触媒を含むことにより他の材料への腐食等の影響が懸念される可能性がある。これらのような悪影響は、例えば、加水分解縮合後に、触媒を感光性樹脂組成物から取り除いたり、触媒を他の化合物と反応させて触媒としての機能を失活させたりすることにより解消することができる。これらの操作を実施するための方法としては、従来公知の方法を用いることができる。触媒を取り除く方法としては、例えば、蒸留法やイオンクロマトカラム法等が挙げられる。また、触媒を他の化合物と反応させて触媒としての機能を失活させる方法としては、例えば、触媒が酸触媒の場合、塩基を添加して酸塩基反応により中和する方法が挙げられる。
【0087】
また、かかる加水分解縮合の際にはアルコールが副生する。このアルコールは、プロトン性溶媒であり、感光性樹脂組成物の物性に悪影響を与えるおそれがあることから、エバポレータ等を用いて除去することが好ましい。
【0088】
このようにして得られるシロキサン樹脂は、溶媒への溶解性や、成形性等の観点から、重量平均分子量が、500〜1000000であることが好ましく、500〜500000であることがより好ましく、500〜100000であることが更に好ましく、500〜50000であることが特に好ましい。この重量平均分子量が500未満ではシリカ系被膜の成膜性が劣る傾向にあり、この重量平均分子量が1000000を超えると、溶媒との相溶性が低下する傾向にある。
【0089】
また、感光性樹脂組成物中の(d)成分の配合割合は、溶媒への溶解性、膜厚、成形性、感光特性、溶液の安定性等の観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を基準として、0〜80質量%であることが必要であり、5〜75質量%であることがより好ましく、20〜70質量%であることが更に好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましい。この配合割合が5質量%以上であるとシリカ系被膜の成膜性、感光特性により優れるものとなり、80質量%以下であると、溶液の安定性に優れるものとなる。
【0090】
感光性樹脂組成物は、上述の(d)成分を上記配合割合で含有すると、形成されるシリカ系被膜は解像性により一層優れる。さらに、かかる感光性樹脂組成物において、上述の(d)成分が柔軟性に優れるため、形成されるシリカ系被膜を加熱処理する際のクラックの発生が防止されることから、クラック耐性に優れる。さらにまた、形成されるシリカ系被膜がクラック耐性に優れることから、本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、シリカ系被膜の厚膜化が可能となる。
【0091】
なお、上述の感光性樹脂組成物を電子部品等に使用する場合は、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含有しないことが望ましく、含まれる場合でも組成物中のそれらの金属イオン濃度が1000ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることがより好ましい。これらの金属イオン濃度が1000ppmを超えると、組成物から得られるシリカ系被膜を有する電子部品に金属イオンが流入し易くなって、電気性能そのものに悪影響を与えるおそれがある。したがって、必要に応じて、例えば、イオン交換フィルター等を使用してアルカリ金属やアルカリ土類金属を組成物中から除去することが有効である。しかし、光導波路や他の用途等に用いる際は、その目的を損なわないのであれば、この限りではない。
【0092】
また、上述の感光性樹脂組成物は、必要に応じて水を含んでいてもよいが、目的とする特性を損なわない範囲であることが好ましい。
【0093】
(感光性樹脂組膜の形成方法)
本発明の感光性樹脂膜の形成方法は、上述の(a)、(b)及び(c)成分と、必要に応じて(d)成分とを含有する感光性樹脂組成物を、基板上に塗布し真空乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程を備える。ここで、本明細書における「感光性樹脂膜」とは、感光性樹脂組成物からなる塗布膜に含まれる溶媒の一部を除去することで予備乾燥された膜を指すものである。
【0094】
<塗布工程>
まず、感光性樹脂組成物を塗布するための基板を用意する。基板としては、表面が平坦なものであっても、電極等が形成され凹凸を有しているものであってもよい。これらの基板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリル、ナイロン、ポリエーテルサルフォン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、トリアセチルセルロース等の有機高分子が挙げられる。また、この有機高分子がフィルム状になっているものを基板として用いることもできる。
【0095】
上述の感光性樹脂組成物は、このような基板上に従来公知の方法によって塗布することが可能である。塗布方法の具体例としては、スピンコート法、スプレー法、ロールコート法、回転法、スリット塗布法が挙げられる。これらの中で、一般に成膜性及び膜均一性に優れるスピンコート法により感光性樹脂組成物を塗布することが好ましい。
【0096】
スピンコート法を用いる場合には、好ましくは300〜3000回転/分、より好ましくは400〜2000回転/分で、基板上に上述の感光性樹脂組成物をスピンコートして塗布膜を形成する。この回転数が300回転/分未満では膜均一性が悪化する傾向があり、3000回転/分を超えると成膜性が悪化するおそれがある。
【0097】
このようにして形成される塗布膜の膜厚は、例えば、次のようにして調整することができる。まず、スピンコートの際に、回転数と塗布回数を調整することにより塗布膜の膜厚を調整することができる。すなわち、スピンコートの回転数を下げたり塗布回数を増やしたりすることにより、塗布膜の膜厚を厚くすることができる。また、スピンコートの回転数を上げたり塗布回数を減らしたりすることにより、塗布膜の膜厚を薄くすることができる。
【0098】
さらに、上述の感光性樹脂組成物において、(a)成分の濃度を調整することにより、塗布膜の膜厚を調整することもできる。例えば、(a)成分の濃度を高くすることにより、塗布膜の膜厚を厚くすることができる。また、(a)成分の濃度を低くすることにより、塗布膜の膜厚を薄くすることができる。
【0099】
以上のようにして塗布膜の膜厚を調整することにより、最終生成物であるシリカ系被膜の膜厚を調整することができる。シリカ系被膜の好適な膜厚は使用用途により異なる。例えば、シリカ系被膜の膜厚は、LSI等の層間絶縁膜に使用する際には0.01〜2μm;パッシベーション層に使用する際には2〜40μm;液晶用途に使用する際には0.1〜20μm;フォトレジストに使用する際には0.1〜2μm;光導波路に使用する際の膜厚は1〜50μmであることが好ましい。一般的に、このシリカ系被膜の膜厚は、0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜5μmであることがより好ましく、0.01〜3μmであることが更に好ましく、0.05〜3μmであることが特に好ましく、0.1〜3μmであることが極めて好ましい。本発明に係る感光性樹脂組成物は、0.5〜3.0μmの膜厚のシリカ系被膜に好適に用いることができ、0.5〜2.5μmの膜厚のシリカ系被膜により好適に用いることができ、1.0〜2.5μmの膜厚のシリカ系被膜に特に好適に用いることができる。
【0100】
上述のようにして基板上に塗布膜を形成した後、減圧条件下で真空乾燥することで塗布膜中の溶媒を除去し、残存溶媒量が低減された感光性樹脂膜を形成する。真空乾燥における減圧度は0.01mmHg〜500mmHgであることが好ましく、0.01mmHg〜200mmHgであることがより好ましく、は0.01mmHg〜100mmHgであることが更に好ましい。減圧度を500mmHg以下にすることで、感光性樹脂膜中の残存溶媒量が低減され、その後の加熱処理における温度の影響が低減されるため乾燥温度や乾燥時間によるアルカリ水溶液に対する溶解性への影響を抑制することができる。また、真空乾燥は、常温で行うことが好ましく、25〜35℃の範囲で行うことがより好ましい。
【0101】
(シリカ系被膜の形成方法)
本発明のシリカ系被膜の形成方法は、上述した本発明の感光性樹脂膜の形成方法で作製された感光性樹脂膜を常圧で熱処理して塗膜を得る熱処理工程と、塗膜の所定部分を露光する第1露光工程と、塗膜の露光された所定部分を除去する除去工程と、所定部分が除去された塗膜を加熱する加熱工程とを有する。また、本発明のシリカ系被膜の形成方法は、上述した本発明の感光性樹脂膜の形成方法で作製された感光性樹脂膜を常圧で熱処理して塗膜を得る熱処理工程と、塗膜の所定部分を露光する第1露光工程と、塗膜の露光された所定部分を除去する除去工程と、所定部分が除去された塗膜を露光する第2露光工程と、所定部分が除去された塗膜を加熱する加熱工程とを有していてもよい。以下、各工程について説明する。
【0102】
<熱処理工程>
上述のようにしてした形成された感光性樹脂膜は、さらに熱処理(乾燥)して、感光性樹脂膜中の溶媒を更に除去する。加熱乾燥には従来公知の方法を用いることができ、例えばホットプレートを用いて乾燥することができる。乾燥温度は、50〜200℃であることが好ましく、80〜180℃がより好ましい。この乾燥温度が50℃未満では、有機溶媒の除去が十分に行われない傾向がある。また、乾燥温度が200℃を超えると塗膜の硬化が進行し、現像液に対する溶解性が低下するため、露光感度低下、解像度低下を伴う傾向がある。
【0103】
<第1露光工程>
次に、得られた塗膜の所定部分を露光する。塗膜の所定部分を露光する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、所定のパターンのマスクを介して塗膜に放射線を照射することにより、所定部分を露光することができる。
【0104】
ここで用いられる放射線としては、例えばg線(波長436nm)、i線(波長365nm)等の紫外線、KrFエキシマレーザー等の遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線が挙げられる。これらのうち、g線及びi線が好ましい。露光量としては、通常10〜2000mJ/cm、好ましくは20〜200mJ/cmである。
【0105】
<除去工程>
続いて、塗膜の露光された所定部分(以下、「露光部」ともいう)を除去して、所定のパターンを有する塗膜を得る。塗膜の露光部を除去する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、現像液を用いて現像処理して露光部を除去することにより、所定のパターンを有する塗膜を得ることができる。
【0106】
ここで用いられる現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、硅酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一級アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第二級アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン類、ジメチルエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン等のアルコ−ルアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩又はピロ−ル、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−(5.4.0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−(4.3.0)−5−ノナン等の環状アミン類を水に溶解したアルカリ水溶液が好ましく使用される。また、該現像液には、水溶性有機溶媒、例えば、メタノ−ル、エタノ−ル等のアルコ−ル類や界面活性剤を適量添加して使用することもできる。さらに、本実施形態に係る感光性樹脂組成物を溶解する各種有機溶媒も現像液として使用することができる。
【0107】
現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法等の適宜の方法を利用することができる。現像処理後に、パターニングされた膜に対し、例えば、流水洗浄によるリンス処理を行ってもよい。
【0108】
<第2露光工程>
さらに、必要な場合には、除去工程後に残った塗膜の全面を露光する。これにより、上述の可視光領域に光学吸収を有する(d)成分が分解して、可視光領域における光学吸収が充分に小さい化合物が生成する。よって、最終生成物であるシリカ系被膜の透明性が向上する。露光には、第1露光工程と同様の放射線を用いることができる。露光量としては、(d)成分を完全に分解する必要があるため、通常100〜3000mJ/cm、好ましくは200〜2000mJ/cmである。
【0109】
<加熱工程>
最後に、除去工程後に残った塗膜を加熱して最終硬化を行う。この加熱工程により、最終生成物であるシリカ系被膜が得られる。加熱温度は、例えば、250〜500℃であることが好ましく、250〜400℃であることがより好ましい。この加熱温度が250℃未満では、充分に塗膜が硬化されない傾向にあり、500℃を超えると、金属配線層がある場合に、入熱量が増大して配線金属の劣化が生じるおそれがある。
【0110】
なお、加熱工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気下で行うのが好ましく、この場合、酸素濃度が1000ppm以下であると好ましい。また、加熱時間は2〜60分が好ましく、2〜30分であるとより好ましい。この加熱時間が2分未満では、充分に塗膜が硬化されない傾向があり、60分を超えると、入熱量が過度に増大して配線金属の劣化が生じるおそれがある。
【0111】
さらに、加熱のための装置としては、石英チューブ炉その他の炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール(RTA)等の加熱処理装置又はEB、UVを併用した加熱処理装置を用いることが好ましい。
【0112】
上述の工程を経て形成されたシリカ系被膜は、例えば、350℃の加熱処理を行っても十分な高い耐熱性、高い透明性を有すると共に、耐溶剤性に優れる。なお、従来知られているノボラック樹脂等のフェノール系樹脂及びキノンジアジド系感光剤を含有する組成物、又はアクリル系樹脂及びキノンジアジド系感光剤材料を含有する組成物から形成される被膜は、一般的に230℃程度が耐熱温度の上限であり、この温度を超えて加熱処理を行うと黄色や褐色に着色し、透明性が著しく低下する。
【0113】
上述の工程を経て形成されたシリカ系被膜は、液晶表示素子、プラズマディスプレイ、有機EL、フィールドエミッションディスプレイ等の平面表示装置の層間絶縁膜として好適に使用できる。また、かかるシリカ系被膜は、半導体素子などの層間絶縁膜としても好適に使用できる。さらに、かかるシリカ系被膜は、半導体素子のウエハコート材料(表面保護膜、バンプ保護膜、MCM(multi−chip module)層間保護膜、ジャンクションコート)、パッケージ材(封止材、ダイボンディング材)等の電子デバイス用部材としても好適に使用することができる。
【0114】
上述のシリカ系被膜を備える本発明の電子部品の具体例としては、図1に示すメモリセルキャパシタが挙げられ、上述のシリカ系被膜を備える本発明の平面表示装置の具体例としては、図2及び3に示すアクティブマトリクス基板を有する平面表示装置が挙げられる。
【0115】
図1は、本発明の電子部品の一実施形態としてのメモリセルキャパシタを示す模式断面図である。図1に示すメモリセルキャパシタ10は、その表面に拡散領域1A及び1Bが形成されたシリコンウェハ1(基板)と、シリコンウェハ1上の拡散領域1A及び1Bの間の位置に設けられたゲート絶縁膜2Bと、ゲート絶縁膜2B上に設けられたゲート電極3と、ゲート電極3の上方に設けられた対向電極8Cと、ゲート電極3と対向電極8Cとの間にシリコンウェハ1側から順に積層された層間絶縁膜5及び7(絶縁被膜)とを有する。
【0116】
拡散領域1A上にはゲート絶縁膜2B及びゲート電極3の側壁と接する側壁酸化膜4Aが形成されている。拡散領域1B上にはゲート絶縁膜2B及びゲート電極3の側壁と接する側壁酸化膜4Bが形成されている。拡散領域1Bのゲート絶縁膜2Bとは反対側において、素子分離のためのフィールド酸化膜2Aがシリコンウェハ1と層間絶縁膜5の間に形成されている。
【0117】
層間絶縁膜5は、ゲート電極3、シリコンウェハ1及びフィールド酸化膜2Aを覆って形成されている。層間絶縁膜5のシリコンウェハ1とは反対側の面は平坦化されている。層間絶縁膜5は拡散領域1A上に位置する側壁を有しており、この側壁と拡散領域1Aを覆うとともに、層間絶縁膜5のシリコンウェハ1とは反対側の面の一部を覆うように延在するビット線6が形成されている。層間絶縁膜5上に設けられた層間絶縁膜7はビット線6を覆うように延びて形成されている。層間絶縁膜5及び層間絶縁膜7によって、ビット線6が埋め込まれたコンタクトホール5Aが形成されている。
【0118】
層間絶縁膜7のシリコンウェハ1とは反対側の面も平坦化されている。拡散領域1B上の位置において層間絶縁膜5及び層間絶縁膜7を貫通するコンタクトホール7Aが形成されている。コンタクトホール7A内には蓄積電極7Aが埋め込まれ、蓄積電極7Aはさらに、層間絶縁膜7のシリコンウェハ1とは反対側の面のうちコンタクトホール7A周囲の部分を覆うように延在している。対向電極8Cは蓄積電極8A及び層間絶縁膜7を覆って形成されており、対向電極8Cと蓄電電極8Aの間にはキャパシタ絶縁膜8Bが介在している。
【0119】
層間絶縁膜5及び7は、上述の感光性樹脂膜から形成されたシリカ系被膜である。層間絶縁膜5及び7は、例えば、上述の感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布する工程を経て形成される。層間絶縁膜5及び7は同一の組成を有していても異なる組成を有していてもよい。
【0120】
図2は、本発明の平面表示装置の一実施形態におけるアクティブマトリクス基板の1画素部分の構成を示す平面図である。図2において、アクティブマトリクス基板20には、複数の画素電極21がマトリクス状に設けられており、これらの画素電極21の周囲を通り、互いに直交するように、走査信号を供給するための各ゲート配線22と表示信号を供給するためのソース配線23が設けられている。これらのゲート配線22とソース配線23はその一部が画素電極21の外周部分とオーバーラップしている。また、これらのゲート配線22とソース配線23の交差部分において、画素電極21に接続されるスイッチング素子としてのTFT24が設けられている。このTFT24のゲート電極32にはゲート配線22が接続され、ゲート電極に入力される信号によってTFT24が駆動制御される。また、TFT24のソース電極にはソース配線23が接続され、TFT24のソース電極にデータ信号が入力される。さらに、TFT24のドレイン電極は、接続電極25さらにコンタクトホール26を介して画素電極21と接続されるとともに、接続電極25を介して付加容量の一方の電極である付加容量電極(図示せず)と接続されている。この付加容量の他方の電極である付加容量対向電極27は共通配線に接続されている。
【0121】
図3は、図2のアクティブマトリクス基板におけるIII−III’断面図である。図3において、透明絶縁性基板31上に、ゲート配線22に接続されたゲート電極32が設けられ、その上を覆ってゲート絶縁膜33が設けられている。その上にはゲート電極32と重畳するように半導体層34が設けられ、その中央部上にチャネル保護層35が設けられている。このチャネル保護層35の両端部及び半導体層34の一部を覆い、チャネル保護層35上で分断された状態で、ソース電極36a及びドレイン電極36bとなるn+Si層が設けられている。一方のn+Si層であるソース電極36aの端部上には、透明導電膜37aと金属層38aとが設けられて2層構造のソース配線23となっている。また、他方のn+Si層であるドレイン電極36bの端部上には、透明導電膜37bと金属層38bとが設けられ、透明導電膜37bは延長されて、ドレイン電極36bと画素電極21とを接続するとともに付加容量の一方の電極である付加容量電極(図示せず)に接続される接続電極25となっている。さらに、TFT24、ゲート配線22及びソース配線23、接続電極25の上部を覆うように層間絶縁膜39が設けられている。この層間絶縁膜39上には、画素電極21となる透明導電膜が設けられ、層間絶縁膜39を貫くコンタクトホール26を介して、接続電極25によりTFT24のドレイン電極36bと接続されている。
【0122】
本実施形態のアクティブマトリクス基板は以上のように構成され、このアクティブマトリクス基板は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0123】
まず、ガラス基板などの透明絶縁性基板31上に、ゲート電極32、ゲート絶縁膜33、半導体層34、チャネル保護層35、ソース電極36a及びドレイン電極36bとなるn+Si層を順次成膜して形成する。ここまでの作製プロセスは、従来のアクティブマトリクス基板の製造方法と同様にして行うことができる。
【0124】
次に、ソース配線23及び接続電極25を構成する透明導電膜37a、37b及び金属層38a、38bを、スパッタ法により順次成膜して所定形状にパターニングする。
【0125】
さらに、その上に、層間絶縁膜39となる上述の感光性樹脂組成物からなる塗布膜をスピンコート法により形成した後、減圧条件下で乾燥することで塗布膜中の溶媒を除去し、残存溶媒量が低減された感光性樹脂膜を形成する。次いで、感光性樹脂膜を熱処理して、例えば2μmの膜厚を有する塗膜を形成し、形成された塗膜に対して、マスクを介して露光し、アルカリ性の溶液によって現像処理することにより、層間絶縁膜39が形成される。この際、露光された部分のみがアルカリ性の溶液によってエッチングされ、層間絶縁膜39を貫通するコンタクトホール26が形成されることになる。
【0126】
その後、画素電極21となる透明導電膜をスパッタ法により形成し、パターニングする。これにより画素電極21は、層間絶縁膜39を貫くコンタクトホール26を介して、TFT24のドレイン電極36bと接続されている透明導電膜38bと接続されることになる。このようにして、上述のアクティブマトリクス基板を製造することができる。
【0127】
したがって、このようにして得られたアクティブマトリクス基板は、ゲート配線22、ソース配線23及びTFT24と、画素電極21との間に厚い膜厚の層間絶縁膜39が形成されているので、各配線22、23及びTFT24に対して画素電極21をオーバーラップさせることができるとともにその表面を平坦化させることができる。このため、アクティブマトリクス基板と対向基板の間に液晶を介在させた平面表示装置の構成とした時に、開口率を向上させることができると共に、各配線22、23に起因する電界を画素電極21でシールドしてディスクリネーションを抑制することができる。
【0128】
また、層間絶縁膜39となる、上述の感光性樹脂膜から形成されるシリカ系被膜は、比誘電率の値が3.0から3.8と無機膜(窒化シリコンの比誘電率8)の比誘電率に比べて低く、また、その透明度も高くスピン塗布法により容易に厚い膜厚にすることができる。このため、ゲート配線22と画素電極21との間の容量及び、ソース配線23と画素電極21との間の容量を低くすることができて時定数が低くなり、各配線22、23と画素電極21との間の容量成分が表示に与えるクロストークなどの影響をより低減することができて良好で明るい表示を得ることができる。また、露光及びアルカリ現像によってパターニングを行うことにより、コンタクトホール26のテーパ形状を良好にすることができ、画素電極21と接続電極25(37b)との接続を良好にすることができる。さらに、上述の感光性樹脂組成物を用いることにより、スピンコート法を用いて薄膜が形成できるので、数μmという膜厚の薄膜を容易に形成でき、さらに、パターニングにフォトレジスト工程も不要であるので、生産性の点で有利である。ここで、層間絶縁膜39として用いた上述の感光性樹脂組成物は、塗布前に着色しているものであるが、パターニング後に全面露光処理を施してより透明化することができる。このように、樹脂の透明化処理は、光学的に行うことができるだけではなくて、化学的にも行うことが可能である。
【0129】
本実施形態で層間絶縁膜39として用いた、上述の感光性樹脂組成物の露光には、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)の輝線を含む水銀灯の光線を用いるのが一般的である。感光性樹脂組成物としては、これらの輝線のなかで最もエネルギーの高い(波長の最も短い)i線に感放射線性(吸収ピーク)を有する感光性樹脂組成物を用いることが好ましい。コンタクトホールの加工精度を高くすると共に、感光剤に起因する着色を最小限に抑制することができる。また、エキシマレーザーからの短波長の紫外線を用いてもよい。
【実施例】
【0130】
以下、本発明に係る具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに制限するものではない。
【0131】
[シロキサン樹脂の合成]
(合成例1)
(1)シロキサン樹脂A(上記(a)成分に相当)の合成
撹拌機、環流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2000mL4つ口フラスコに、テトラエトキシシラン317.9gとメチルトリエトキシシラン247.9gとをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1116.7gに溶解させた溶液中に、0.644重量%に調製した硝酸167.5gを攪拌下で30分間かけて滴下した。滴下終了後3時間反応させた後、減圧下、温浴中で生成エタノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの一部を留去して、固形分濃度25質量%に調製されたシロキサン樹脂Aの溶液740.0gを得た。GPC法によりシロキサン樹脂Aの重量平均分子量を測定すると、870であった。
【0132】
(合成例2)
シロキサン樹脂B:3−アセトキシプロピルシルセスキオキサン・フェニルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体(下記式(4)で表される化合物;上記(d)成分に相当)の合成;
【0133】
【化8】


[式(4)中、20,50,30は、それぞれ各部位に対応する原料のモル比を示す。]
【0134】
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた500mL4つ口フラスコに、トルエン55.8g及び水35.7gを仕込み、35%塩酸3.12g(0.03モル)を加えた。次に、3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン13.5g(0.0605モル)、フェニルトリメトキシシラン30.0g(0.151モル)及びメチルトリメトキシシラン12.4g(0.0908モル)のトルエン27.9g溶液を20〜30℃で滴下した。滴下終了後、同温度で2時間熟成させた。このときの反応溶液をGC(ガスクロマトグラフ)で分析した結果、原料は残っていないことが確認された。次に、反応溶液にトルエンと水を加えて生成物を有機相に抽出し、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後に、水で溶液が中性になるまで洗浄した。その後、有機相を回収し、トルエンを除去して、粘性液体状の目的のシロキサン樹脂B34.6gを得た。さらに、得られたシロキサン樹脂Bをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させ、固形分濃度が50質量%になるように調製されたシロキサン樹脂Bの溶液を得た。また、GPC法によりシロキサン樹脂Bの重量平均分子量を測定すると1050であった。
【0135】
(ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルの合成)
ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルA(上記(c)成分に相当)の合成;
撹拌機、環流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた200mL4つ口フラスコに、ジプロピレングリコール2.68g及びテトラヒドロフラン50gを仕込み、さらに室温(25℃)条件で1,2−ジアゾナフトキノン−5−スルホニルクロリド10.75g、トリエチルアミン4.45g及びジメチルアミノピリジン0.5gを加え、50℃で4時間反応を行った。反応終了後、析出した固形分をろ別し、減圧下、温浴中で溶媒を除去した。その後、メチルイソブチルケトン50gを添加して溶解した後、イオン交換水50gで2回水洗を行い、減圧下、温浴中で溶媒を濃縮し、固形分濃度48質量%になるように調製されたナフトキノンジアジドスルホン酸エステルAの溶液16.4gを得た。
【0136】
ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルB(上記(c)成分に相当)の合成;
撹拌機、環流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた200mL4つ口フラスコに、ジプロピレングリコール2.68g及びテトラヒドロフラン50gを仕込み、さらに室温(25℃)条件で1,2−ジアゾナフトキノン−5−スルホニルクロリド10.75g、トリエチルアミン4.45g及びジメチルアミノピリジン0.5gを加え、50℃で4時間反応を行った。反応終了後、析出した固形分をろ別し、減圧下、温浴中で溶媒を除去した。その後、メチルイソブチルケトン50gを添加して溶解した後、イオン交換水50gで2回水洗を行い、減圧下、温浴中で溶媒を除去してオイル状のナフトキノンジアジドスルホン酸エステル10.2gを得た。このうち7.3gを撹拌機付の容器内に仕込み、さらに3,4−ジヒドロ−2H−ピラン7.7g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート50g及び5%HNO水溶液2.9gを加え、室温(25℃)で72時間反応を行った。反応終了後、メチルイソブチルケトン70gを添加し、さらに0.5%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液70gで洗浄し、次いで、イオン交換水70gで2回水洗した後に有機層を分取した。この溶液を減圧下、温浴中で濃縮し、固形分濃度48質量%になるように調製されたナフトキノンジアジドスルホン酸エステルBの溶液9.6gを得た。
【0137】
(感光性樹脂組成物の調製及び感光性樹脂膜の作製)
[実施例1]
50mLフラスコに、シロキサン樹脂Aの溶液10.0g及びナフトキノンジアジドスルホン酸エステルAの溶液0.52gを加え、室温(24℃)で1時間攪拌し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物をシリコンウェハ又はガラス基板上に、溶媒除去した後の膜厚が2.0μmになるような回転数で30秒間スピンコートした後、減圧乾燥機(ELELY社製、商品名「VOS−300VD」)により、減圧度20mmHg、30℃で10分間乾燥して、実施例1のシリカ系ポジ型感光性樹脂膜を作製した。
【0138】
[実施例2]
50mLフラスコに、シロキサン樹脂Aの溶液10.0g及びナフトキノンジアジドスルホン酸エステルBの溶液0.52gを加え、室温(24℃)で1時間攪拌し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用いて、減圧度200mmHgとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2のシリカ系ポジ型感光性樹脂膜を作製した。
【0139】
[実施例3]
50mLフラスコに、シロキサン樹脂Aの溶液5.0g、シロキサン樹脂Bの溶液1.2g及びナフトキノンジアジドスルホン酸エステルAの溶液0.18gを加え、室温(24℃)で1時間攪拌し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行い、実施例3のシリカ系ポジ型感光性樹脂膜を作製した。
【0140】
[実施例4]
50mLフラスコに、シロキサン樹脂Aの溶液5.0g、シロキサン樹脂Bの溶液2.5g及びナフトキノンジアジドスルホン酸エステルAの溶液0.32gを加え、室温(24℃)で1時間攪拌し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行い、実施例4のシリカ系ポジ型感光性樹脂膜を作製した。
【0141】
[実施例5]
50mLフラスコに、シロキサン樹脂Aの溶液10.0g、シロキサン樹脂Bの溶液1.5g及びナフトキノンジアジドスルホン酸エステルAの溶液0.68gを加え、室温(24℃)で1時間攪拌し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行い、実施例5のシリカ系ポジ型感光性樹脂膜を作製した。
【0142】
[比較例1]
50mLフラスコに、シロキサン樹脂Aの溶液10.0g及びナフトキノンジアジドスルホン酸エステルAの溶液0.52gを加え、室温(24℃)で1時間攪拌し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物をシリコンウェハ又はガラス基板上に、溶媒除去した後の膜厚が2.0μmになるような回転数で30秒間スピンコートし、比較例1のシリカ系ポジ型感光性樹脂膜を作製した。
【0143】
[比較例2]
50mLフラスコに、シロキサン樹脂Aの溶液10.0g及びナフトキノンジアジドスルホン酸エステルBの溶液0.52gを加え、室温(24℃)で1時間攪拌し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用いて、比較例1と同様の操作を行い、比較例2のシリカ系ポジ型感光性樹脂膜を作製した。
【0144】
[比較例3]
50mLフラスコに、シロキサン樹脂Aの溶液5.0g、シロキサン樹脂Bの溶液1.2g及びナフトキノンジアジドスルホン酸エステルAの溶液0.18gを加え、室温(24℃)で1時間攪拌し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用いて、比較例1と同様の操作を行い、比較例3のシリカ系ポジ型感光性樹脂膜を作製した。
【0145】
[比較例4]
50mLフラスコに、シロキサン樹脂Aの溶液5.0g、シロキサン樹脂Bの溶液2.5g及びナフトキノンジアジドスルホン酸エステルAの溶液0.32gを加え、室温(24℃)で1時間攪拌し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用いて、比較例1と同様の操作を行い、比較例4のシリカ系ポジ型感光性樹脂膜を作製した。
【0146】
[比較例5]
50mLフラスコに、シロキサン樹脂Aの溶液10.0g、シロキサン樹脂Bの溶液1.5g及びナフトキノンジアジドスルホン酸エステルAの溶液0.68gを加え、室温(24℃)で1時間攪拌し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用いて、比較例1と同様の操作を行い、比較例5のシリカ系ポジ型感光性樹脂膜を作製した。
【0147】
[未露光部溶解性の評価]
実施例1〜5及び比較例1〜5で作製したシリコンウェハ上に形成された感光性樹脂膜を、常圧下、110℃、120℃、130℃の各温度で150秒間熱処理して得た塗膜を、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、「TMAH」という)水溶液に25℃で60秒間浸漬した。ただし、塗膜が60秒以内に溶解した場合は、塗膜が消失した時間を浸漬時間とした。次いで、イオン交換水でリンスし、窒素ガスを吹き付けて塗膜を乾燥した。未露光部溶解性は、2.38質量%のTMAH水溶液に浸漬した前後の膜厚減少量(nm)と浸漬時間(秒)から算出した値で評価した(下記式参照)。未露光部溶解速度が、1nm/秒未満の場合はA、1nm/秒以上〜100nm/秒未満の場合はB、100nm/秒以上の場合はCとして評価した。
未露光部溶解速度(nm/秒)=膜厚減少量(nm)/浸漬時間(秒)
【0148】
<シリカ系被膜の作製>
実施例1〜5及び比較例1〜5で作製したシリコンウェハ又はガラス基板上に形成された感光性樹脂膜を、120℃で150秒間熱処理して溶媒を除去して得られた塗膜に対し、所定のパターンマスクを介してキャノン株式会社製PLA−600F投影露光機を用い、露光量30mJ/cmにて露光を行った。続いて、2.38質量%のTMAH水溶液を用いて、25℃で1分間揺動浸漬法にて現像処理を行った。これを純水で流水洗浄し、乾燥してパターンを形成した。次いで、パターン部分をキャノン株式会社製PLA−600F投影露光機を用い、露光量1000mJ/cmで全面露光した。次いで、O2濃度が1000ppm未満にコントロールされている石英チューブ炉にて350℃で30分間かけてパターンを最終硬化し、シリカ系被膜を得た。
【0149】
<被膜評価>
上述の方法により、実施例1〜5及び比較例1〜5の感光性樹脂膜から形成されたシリカ系被膜に対して、以下の方法で膜評価を行った。
【0150】
[解像性の評価]
解像性の評価は、シリコンウェハ上に形成されたシリカ系被膜について、5μm角のスルーホールパターンが抜けているかどうかで評価した。すなわち、電子顕微鏡S−4200((株)日立計測器サービス社製)を用いて観察し、露光部の5μm角のスルーホールパターンが抜けている場合はA、抜けていない場合はB、未露光部が溶解してパターンがなくなった場合はCと評価した。
【0151】
[透過率の測定]
可視光領域に吸収がないガラス基板上に塗布されたシリカ系被膜について、(株)日立製作所製UV3310装置によって波長300nm〜800nmの透過率を測定し、波長400nmの値を透過率とした。
【0152】
[耐熱性の評価]
シリコンウェハ上に形成されたシリカ系被膜について、溶媒を除去した後の膜厚に対する最終硬化後の膜厚の減少率が10%未満の場合にA、10%以上の場合にBとして評価した。なお、膜厚は、ガートナー社製のエリプソメータL116Bで測定された膜厚であり、具体的には被膜上にHe−Neレーザーを照射し、照射により生じた位相差から求められる膜厚である。
【0153】
[クラック耐性の評価]
シリコンウェハ上に形成されたシリカ系被膜について、金属顕微鏡により10〜100倍の倍率で面内のクラックの有無を確認した。クラックの発生がない場合はA、クラックが見られた場合をBとして評価した。
【0154】
<評価結果>
実施例1〜5及び比較例1〜5の感光性樹脂組成物から形成されたシリカ系被膜の評価結果を下記の表1に示す。
【0155】
【表1】

【0156】
表1に示した結果から、実施例1〜5の感光性樹脂膜によれば、未露光部溶解速度は、溶媒除去する際の温度依存性がなく、プロセスマージンに優れ、かつ解像性、耐熱性、クラック耐性及び透明性が十分に高いシリカ系被膜を得ることができることが明らかである。なお、これらの実施例では、透過率の高いシリカ系被膜が得られる感光性樹脂組成物のみを示したが、用途に合わせて透過率の低いものを提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】本発明の電子部品の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の平面表示装置の一実施形態におけるアクティブマトリクス基板の1画素部分の構成を示す平面図である。
【図3】図2のアクティブマトリクス基板におけるIII−III’断面図である。
【符号の説明】
【0158】
1…シリコンウェハ、1A,1B…拡散領域、2A…フィールド酸化膜、2B…ゲート絶縁膜、3…ゲート電極、4A,4B…側壁酸化膜、5,7…層間絶縁膜、5A、7A…コンタクトホール、6…ビット線、8A…蓄積電極、8B…キャパシタ絶縁膜、8C…対向電極、10…メモリセルキャパシタ、21…画素電極、22…ゲート配線、23…ソース配線、24…TFT、25…接続電極、26…コンタクトホール、31…透明絶縁性基板、32…ゲート電極、36a…ソース電極、36b…ドレイン電極、37a,37b…透明導電膜、38a、38b…金属層、39…層間絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)成分:下記一般式(1)で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂と、
(b)成分:前記(a)成分が溶解する溶媒と、
(c)成分:ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルと、
を含有する感光性樹脂組成物を、基板上に塗布し真空乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程を備える、感光性樹脂膜の形成方法。
【化1】


[式(1)中、Rは、H原子若しくはF原子、又は、B原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を含む基、又は有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、同一分子内の複数のXは同一でも異なっていてもよく、nが2であるとき、同一分子内の複数のRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記感光性樹脂組成物が、(d)成分:下記一般式(2)で表される化合物を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂を更に含有する、請求項1記載の感光性樹脂膜の形成方法。
【化2】


[式(2)中、Rは有機基を示し、Aは2価の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、同一分子内の複数のXは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項3】
前記(b)成分が、エーテルアセテート系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒を含む、請求項1又は2記載の感光性樹脂膜の形成方法。
【請求項4】
前記(c)成分が、1価又は多価アルコールと、ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステルを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂膜の形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂膜の形成方法で作製された感光性樹脂膜を更に常圧で熱処理して塗膜を得る熱処理工程と、
前記塗膜の所定部分を露光する第1露光工程と、
前記塗膜の露光された前記所定部分を除去する除去工程と、
前記所定部分が除去された塗膜を加熱する加熱工程と、
を有するシリカ系被膜の形成方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂膜の形成方法で作製された感光性樹脂膜を更に常圧で熱処理して塗膜を得る熱処理工程と、
前記塗膜の所定部分を露光する第1露光工程と、
前記塗膜の露光された前記所定部分を除去する除去工程と、
前記所定部分が除去された塗膜を露光する第2露光工程と、
前記所定部分が除去された塗膜を加熱する加熱工程と、
を有するシリカ系被膜の形成方法。
【請求項7】
基板と、該基板上に請求項5又は6記載の形成方法により形成されたシリカ系被膜と、を備える半導体装置。
【請求項8】
基板と、該基板上に請求項5又は6記載の形成方法により形成されたシリカ系被膜と、を備える平面表示装置。
【請求項9】
基板と、該基板上に請求項5又は6記載の形成方法により形成されたシリカ系被膜と、を備える電子デバイス用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−276742(P2009−276742A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321117(P2008−321117)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】