説明

感光性組成物、この組成物から得られる硬化膜、及びこの硬化膜を有する表示素子

【課題】撥液性及び耐UVオゾンアッシング性に優れる硬化膜を形成することができるポジ型感光性組成物を提供する。
【解決手段】シロキサン構造を含む重合体(A)及び1,2−キノンジアジド化合物(B)を含有する感光性組成物において、シロキサン構造を含む重合体(A)に、ラジカル重合部位を二か所有する特定のシロキサン化合物と、重合体(A)にアルカリ可溶性を付与するアルカリ溶解性とラジカル重合性とを有するアルカリ溶解性ラジカル重合性モノマーとを含むモノマーのラジカル重合体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子やEL表示素子等の表示素子を製造するための感光性組成物、該組成物から製造した透明膜等の硬化膜、及び該硬化膜を有する表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
パターン化された透明膜は、スペーサー、絶縁膜、保護膜等の、液晶表示素子の多くの部分で使用されており、これまで様々な感光性組成物が、液晶表示素子やEL表示素子等の表示素子に用いられてきた(例えば、特許文献1参照。)。パターン化された透明膜は、光硬化性重合体組成物を基板に塗布し、塗布膜にパターンに応じて光照射し、光照射されずに硬化していない膜を洗浄して除去することによりパターン化された膜を形成するネガ型感光性材料と、光照射されアルカリ現像液に可溶化された膜を除去することによりパターン化された膜を形成するポジ型感光性材料により形成され得る。このように、パターン化された透明膜を形成するための、光硬化性重合体組成物及び感光性組成物も多く提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
一方、近年ではインクジェット方式による各種のパターニングが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。また、インクジェット方式によるパターニングでは、精密なインクジェットパターニングを行うために、インクジェット方式による塗布を行う前に、画素間の仕切り(バンク材)を形成することがある。
【0004】
このバンク材は、前述したような光硬化性重合体組成物及び感光性組成物を用いる公知の方法により、パターン化された膜として形成することができる。そのようなバンク材には、インクジェット装置のヘッドノズルから噴出される液状物質が付着しない特性、すなわち撥インク性が求められている(例えば、特許文献4及び5参照。)。さらに、半導体製造やLCD製造プロセス等において、開口部のインク塗布性や濡れ性を向上させるためにUVオゾンアッシング処理工程を入れることがある。この際、バンク表面も処理されてしまうため撥液性が低下するが、このような処理に耐え、表面撥液性の低下が抑えられ得るバンク材料が求められている。
【0005】
このように光硬化性重合体組成物及び感光性組成物の用途は、前記の表示素子中の層を構成する材料だけではなく、表示素子の製造における補助的役割のための膜まで広がっており、このような用途の拡大に伴って、光硬化性重合体組成物及び感光性組成物には、従来よりも多様な性能が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−287232号公報
【特許文献2】特開2001−261761号公報
【特許文献3】特開平10−12377号公報
【特許文献4】特開平11−281815号公報
【特許文献5】特開2004−149699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、撥液性及び耐UVオゾンアッシング性に優れる硬化膜を形成することができるポジ型感光性組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、このようなポジ型感光性組成物による硬化膜、及びこの膜を有する表示素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記問題を解決するため鋭意検討した結果、多官能のシロキサンを含有するモノマーを共重合したポリマーを感光性組成物に用いることにより、特に撥液性及び耐UVオゾンアッシング性に優れる硬化膜が得られることを見出し、以下に示す本発明を完成させた。
【0009】
[1] シロキサン構造を含む重合体(A)及び1,2−キノンジアジド化合物(B)を含有する感光性組成物において、シロキサン構造を含む重合体(A)は、式(1)で表されるシロキサン化合物と重合体(A)にアルカリ可溶性を付与するアルカリ溶解性とラジカル重合性とを有するアルカリ溶解性ラジカル重合性モノマーとを含むモノマーのラジカル重合体である、感光性組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立して水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして連続しない任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜30のアルキルを表し、A1及びA2はそれぞれラジカル重合性官能基を表し、nは1〜1,000の整数を表す。
【0012】
[2] アルカリ溶解性ラジカル重合性モノマーが不飽和カルボン酸を有するラジカル重合性モノマー、不飽和カルボン酸無水物を有するラジカル重合性モノマー、及びフェノール性水酸基を有するラジカル重合性モノマーからなる群から選ばれる一以上を含む、[1]に記載の感光性組成物。
【0013】
[3] アルカリ溶解性ラジカル重合性モノマーが式(2)で表されるラジカル重合体モノマーを含む、[1]又は[2]に記載の感光性組成物。
【0014】
【化2】

【0015】
式(2)中、R5〜R7は、それぞれ、水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜3のアルキルを表し、R8〜R12は、それぞれ、水素;ハロゲン;−CN;−CF3;−OCF3;水酸基;任意のメチレンが−COO−、−OCO−、−CO−で置き換えられてもよく、また任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルキル;又は任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルコキシ;を表す。ただし、R8〜R12のうち少なくとも1つは水酸基である。
【0016】
[4] シロキサン構造を含む重合体(A)が、式(1)で表されるシロキサン化合物及びアルカリ溶解性ラジカル重合性モノマー以外の他のラジカル重合性モノマーをさらに含むモノマーのラジカル重合体である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【0017】
[5] 他のラジカル重合性モノマーが、式(3)で表されるシロキサン化合物を含む、[4]に記載の感光性組成物。
【0018】
【化3】

【0019】
式(3)中、R13〜R17は、それぞれ独立して、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜30のアルキル、又はケイ素数1〜500のトリ(アルキル/アルコキシ)シロキシを表し、A3はラジカル重合性官能基を表し、nは0〜1,000の整数を表す。
【0020】
[6] 他のラジカル重合性モノマーが、nが0である式(3)で表されるシロキサン化合物である、[5]に記載の感光性組成物。
【0021】
[7] 式(3)のR13〜R15がそれぞれ下記式(5)で表される、[6]に記載の感光性組成物。
【0022】
【化4】

【0023】
式(5)中、R21〜R23は、それぞれ水素、炭素数1〜20のアルキル、又は炭素数1〜20のアルコキシを表し、mは1〜500の整数を表す。
【0024】
[8] 他のラジカル重合性モノマーが(メタ)アクリル酸誘導体を含む、[4]〜[7]のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【0025】
[9] 式(1)で表されるシロキサン化合物以外のモノマーのラジカル重合体であり、アルカリ可溶性を有するアルカリ可溶性重合体(C)をさらに含有する、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【0026】
[10] アルカリ可溶性重合体(C)が、不飽和カルボン酸を有するラジカル重合性モノマー、不飽和カルボン酸無水物を有するラジカル重合性モノマー、及びフェノール性水酸基を有するラジカル重合性モノマーからなる群から選ばれる一以上を含むモノマーのラジカル重合体である、[9]に記載の感光性組成物。
【0027】
[11] 溶剤をさらに含有する、[1]〜[10]のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【0028】
[12] [1]〜[11]のいずれか一項に記載の感光性組成物の膜を焼成して得られる硬化膜。
【0029】
[13] [12]に記載の硬化膜を有する表示素子。
【発明の効果】
【0030】
本発明の感光性組成物は、式(1)で表されるシロキサン化合物を含むモノマーの、アルカリ可溶性のラジカル重合体であることから、ポジ型のフォトレジストに適用することにより、UVオゾンアッシング処理の前後のいずれにおいても撥液性に優れる硬化膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
1.本発明の感光性組成物
本発明の感光性組成物は、シロキサン構造を含む重合体(A)と、1,2−キノンジアジド化合物(B)とを含有する。シロキサン構造を含む重合体(A)は一種でも二種以上でもよく、また1,2−キノンジアジド化合物(B)も一種でも二種以上でもよい。感光性組成物は、シロキサン構造を含む重合体(A)と1,2−キノンジアジド化合物(B)を混合して得られる。
【0032】
1−1.シロキサン構造を含む重合体(A)
シロキサン構造を含む重合体(A)は、ケイ素数2以上の直鎖のシロキサン構造と二つのラジカル重合性官能基とを有する式(1)で表されるシロキサン化合物(以下、「ラジカル重合性モノマー(a−1)」とも言う)と、重合体(A)にアルカリ可溶性を付与するアルカリ溶解性とラジカル重合性とを有するアルカリ溶解性ラジカル重合性モノマー(以下、「ラジカル重合性モノマー(a−2)」とも言う)とを含むモノマーのラジカル重合体である。
【0033】
シロキサン構造を含む重合体(A)は、ラジカル重合性モノマー(a−2)によって付与されるアルカリ可溶性を有する。シロキサン構造を含む重合体(A)が有するアルカリ可溶性とは、シロキサン構造を含む重合体(A)の溶液のスピンコート及び100℃2分間の加熱で形成される厚さ0.01〜100μmの膜を、例えば25℃程度の2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に5分間浸した後に純水ですすいだときに、膜が残らないことを言う。
【0034】
ラジカル重合性モノマー(a−1)及び(a−2)はそれぞれ、一種でも二種以上でもよい。シロキサン構造を含む重合体(A)を構成する全モノマーにおけるラジカル重合性モノマー(a−1)の含有量は、硬化膜における撥液性を発現させる観点から、0.1〜50重量%であることが好ましく、0.5〜30重量%であることがより好ましく、1〜20重量%であることがさらに好ましい。また、シロキサン構造を含む重合体(A)を構成する全モノマーにおけるラジカル重合性モノマー(a−2)の含有量は、硬化膜の製造における十分な現像性を発現させる観点から、0.1〜50重量%であることが好ましく、0.5〜30重量%であることがより好ましく、1〜20重量%であることがさらに好ましい。
【0035】
1−1−1.ラジカル重合性モノマー(a−1)
ラジカル重合性モノマー(a−1)は、ケイ素数2以上の直鎖のシロキサン構造と二つのラジカル重合性官能基とを有する化合物であり、式(1)で表される。
【0036】
【化5】

【0037】
式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立して水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして連続しない任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜30のアルキルを表す。このようなアルキルには、例えば、フッ化アルキルや炭素数1〜20のアルコキシが含まれる。
【0038】
式(1)中、A1及びA2はそれぞれラジカル重合性官能基を表す。A1及びA2は同じでも異なっていてもよい。ラジカル重合性官能基には、ラジカル重合性モノマー(a−1)においてラジカル重合し得る構造を有する基を用いることができる。このようなラジカル重合性官能基としては、公知のラジカル重合性官能基が挙げられ、例えば、ビニル、ビニレン、ビニリデン、(メタ)アクリロイル、及びスチリル等が挙げられる。
【0039】
ラジカル重合性官能基は、ラジカル重合性が得られる範囲において、置換基をさらに有していてもよい。このような置換基としては、例えば、炭素数2〜10のアルキレン;メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基;及び、イソプロピル基及びイソブチル基等の分岐アルキル基が挙げられる。
【0040】
式(1)中、nは1〜1,000の整数を表す。nは良好なアルカリ現像性を得る観点から、2〜500であることが好ましく、5〜300であることがより好ましく、10〜150であることがさらに好ましい。
【0041】
ラジカル重合性モノマー(a−1)としては、例えば式(1−1)で表される両末端にメタクリロイル基を有するシロキサン系モノマーが挙げられる。シロキサン系モノマーをラジカル重合性モノマー(a−1)に用いることは、初期の透明性が高く、かつ高温での焼成による透明性の劣化がほとんどなく、また現像時のアルカリ水溶液に対する溶解性が高く(すなわち現像性が高く)、容易にパターン状透明膜が得られ、かつ耐溶剤性、高耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性を示し、さらには下地との密着性が高い感光性組成物又は硬化膜を得る観点から好ましい。なお、式(1−1)中、nは1〜1,000の整数を表す。
【0042】
【化6】

【0043】
ラジカル重合性モノマー(a−1)としては市販されているものもある。式(1−1)で表される化合物として、例えばサイラプレーンFM7711(商品名 チッソ株式会社製)が挙げられる。
【0044】
1−1−2.ラジカル重合性モノマー(a−2)
ラジカル重合性モノマー(a−2)は重合体(A)にアルカリ可溶性を付与するアルカリ溶解性とラジカル重合性とを有する。ラジカル重合性モノマー(a−2)が有するアルカリ溶解性とは、ラジカル重合性モノマー(a−2)のラジカル重合後の形態においてもアルカリによって水溶性の塩を形成することを言う。このようなアルカリ溶解性は、ラジカル重合部位とは独立してアルカリで水溶性の塩を形成する部位、例えばカルボキシル基やフェノール性水酸基、を有する構造によって付与される。またラジカル重合性モノマー(a−2)が有するラジカル重合性とは、ラジカル重合性モノマー(a−1)を含む他のモノマーとラジカル重合する性質を言う。このようなラジカル重合性は、前述したラジカル重合性官能基によって付与される。よってラジカル重合性モノマー(a−2)は、前記のアルカリに溶解する部位とラジカル重合性官能基とから構成される。
【0045】
このようなラジカル重合性モノマー(a−2)としては、例えば、不飽和カルボン酸を含有するラジカル重合性モノマー、不飽和カルボン酸無水物を含有するラジカル重合性モノマー、及びフェノール性水酸基を含有するラジカル重合性モノマーが挙げられる。不飽和カルボン酸を含有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸が挙げられ、不飽和カルボン酸無水物を含有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば無水マレイン酸が挙げられ、フェノール性水酸基を含有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、フェノール性水酸基を有するビニルケトン及びフェノール性水酸基を有するスチレン誘導体が挙げられる。
【0046】
フェノール性水酸基を有するビニルケトンとしては、例えば式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0047】
【化7】

【0048】
式(2)中、R5〜R7は、それぞれ、水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜3のアルキルを表し、R8〜R12は、それぞれ、水素、ハロゲン、−CN、−CF3、−OCF3、水酸基、任意のメチレンが−COO−、−OCO−、−CO−で置き換えられてもよく、また任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルキル、又は任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルコキシを表す。ただし、R8〜R12のうち少なくとも一つは水酸基である。
【0049】
5〜R7及び水酸基を除くR8〜R12は、アルカリ可溶性を高める観点から、水素であることが好ましい。式(2)で表される化合物としては、例えば4−ヒドロキシフェニルビニルケトンが挙げられる。
【0050】
フェノール性水酸基を有するビニルケトンは、公知の方法によって合成して得ることができ、又は市販品として得ることができる。例えば4−ヒドロキシフェニルビニルケトンは、特開2004−189715号公報に記載されているように、2−クロロエチル−4−メトキシフェニルケトンの塩化メチレン溶液に塩化アルミニウムを添加し、得られた混合物を還流し、冷却し、酢酸エチルで有機相を抽出し、得られた有機相をNaOH水溶液で抽出し、塩酸で酸性とした後に再度酢酸エチルで抽出することによって得ることができる。
【0051】
フェノール性水酸基を有するスチレン誘導体は、フェノール性水酸基の他に、スチレンが有する重合性二重結合を有する。フェノール性水酸基を有するスチレン誘導体としては、例えば、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、及びp−ヒドロキシスチレンが挙げられる。
【0052】
1−1−3.その他のラジカル重合性モノマー(a−3)
シロキサン構造を含む重合体(A)は、ラジカル重合性モノマー(a−1)及び(a−2)以外の他のラジカル重合性モノマー(以下「ラジカル重合性モノマー(a−3)」とも言う)をさらに含むモノマーのラジカル重合体であることが、シロキサン構造を含む重合体(A)が有する特性を向上させ、又は増やす観点から好ましい。ラジカル重合性モノマー(a−3)は一種でも二種以上でもよい。シロキサン構造を含む重合体(A)を構成する全モノマーにおけるラジカル重合性モノマー(a−3)の含有量は、シロキサン構造を含む重合体(A)が有する特性の向上や、シロキサン構造を含む重合体(A)へのさらなる特性の付与の観点から、50.0〜99.9重量%であることが好ましく、70.0〜99.5重量%であることがより好ましく、80.0〜99.0重量%であることがさらに好ましい。
【0053】
ラジカル重合性モノマー(a−3)としては、例えば式(3)で表されるシロキサン化合物、エポキシを含有するラジカル重合性モノマー、(メタ)アクリル酸誘導体、N置換マレイミド、及びジシクロペンタニルを含むラジカル重合性モノマーが挙げられる。
【0054】
【化8】

【0055】
式(3)中、R13〜R17は、それぞれ独立して、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜30のアルキル、又はアルキルの炭素数が1〜20であるケイ素数1〜500のトリ(アルキル/アルコキシ)シロキシを表し、A3はラジカル重合性官能基を表し、nは0〜1,000の整数を表す。ただし、nが0のとき、R13〜R15はそれぞれ式(5)に示す基であることが好ましい。なお、ラジカル重合性官能基A3は、前述した式(1)におけるラジカル重合性官能基と同義である。また、「トリ(アルキル/アルコキシ)」は、アルキル基及びアルコキシ基の一方又は両方で構成される三つの基を意味する。
【0056】
【化9】

【0057】
式(5)中、R21〜R23は、それぞれ独立に水素、炭素数1〜20のアルキル又はアルコキシである。mは1〜500の整数を表す。
【0058】
式(3)で表されるシロキサン化合物としては、例えば式(3−1)で表されるα−ブチル−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン(商品名:FM0711、チッソ株式会社製)が挙げられる。これは、含有するケイ素により表面撥液性を向上させる観点から好ましい。
【0059】
【化10】

【0060】
また式(3)で表され、かつnが0であるシロキサン化合物としては、例えば3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:S710、チッソ株式会社製)、3−メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(商品名:TM0701T、チッソ株式会社製)、及び3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(商品名:KBM−502、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。なかでも3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランは、アルカリ現像液に対する溶解性の向上の観点から好ましい。
【0061】
エポキシを含有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、及び3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタンが挙げられる。これらは、入手が容易であり、得られるパターン状透明膜の耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性を高める観点から好ましい。
【0062】
(メタ)アクリル酸誘導体は、(メタ)アクリル酸が有する重合性二重結合を有する誘導体であればよい。(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート;ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート等の芳香環を含有するアルキルメタクリレート;ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシペンチルメタクリレート、ヒドロキシヘキシルメタクリレート等の水酸基を有するアルキルメタクリレート;ジメチルアミノエチルメタクリレート等のジアルキルアミノアルキルメタクリレート;フェニルメタクリレート等のアリールメタクリレートが挙げられる。
【0063】
N置換マレイミドとしては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(4−アセチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(4−ジメチルアミノ−3,5−ジニトロフェニル)マレイミド、N−(1−アニリノナフチル−4)マレイミド、N−[4−(2−ベンズオキサゾリル)フェニル]マレイミド、及びN−(9−アクリジニル)マレイミドが挙げられる。
【0064】
ジシクロペンタニルを含むラジカル重合性モノマーとしては、例えば、ジシクロペンタニルアクリレート及びジシクロペンタニルメタクリレートが挙げられる。
【0065】
ラジカル重合性モノマー(a−3)がN置換マレイミド及びジシクロペンタニルを含むラジカル重合性モノマーの一方又は両方を含むことは、感光性組成物から形成される硬化膜の耐熱性を高める観点から好ましい。
【0066】
シロキサン構造を含む重合体(A)のモノマーについては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸誘導体及びフェノール性水酸基を有するスチレン誘導体からなる群から選ばれる一以上が前記モノマーに含まれることが、シロキサン構造を含む重合体(A)のアルカリ可溶性を高める観点から好ましい。
【0067】
シロキサン構造を含む重合体(A)は、ラジカル重合性モノマー(a−1)及び(a−2)を、また必要に応じてさらにラジカル重合性モノマー(a−3)を加えて、これらをラジカル重合させることによって得られる。このラジカル重合は、公知の方法で行うことができる。
【0068】
シロキサン構造を含む重合体(A)の重合方法は特に制限されないが、溶剤を用いた溶液中でのラジカル重合が好ましい。重合温度は使用する重合開始剤からラジカルが十分発生する温度であれば特に限定されないが、通常50〜150℃の範囲である。重合時間も特に限定されないが、通常1〜24時間の範囲である。また、当該重合は、加圧、減圧又は大気圧のいずれの圧力下でも行うことができる。
【0069】
ラジカル重合で使用される溶剤は、使用するラジカル重合性モノマー及び生成物を溶解する溶剤が好ましい。溶剤は一種でも二種以上でもよい。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、及びN,N−ジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0070】
ラジカル重合で使用される重合開始剤としては、例えば、熱によりラジカルを発生する化合物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、及び過酸化ベンゾイル等の過酸化物系開始剤が挙げられる。重合開始剤の使用量は、原料となるモノマー総量100重量部に対し、1〜30重量部であることが好ましく、5〜25重量部であることがさらに好ましい。
【0071】
また、ラジカル重合では、分子量を調節するために、チオグリコール酸等の連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤の添加量は、原料となるモノマー総量100重量部に対し、0.001〜0.05重量部であることが好ましく、0.005〜0.03重量部であることがさらに好ましい。
【0072】
シロキサン構造を含む重合体(A)の重量平均分子量は、1,000〜100,000であることが、露光部分がアルカリ現像液で溶解されるまでの現像時間が適正であり、かつ、現像時に膜の表面が荒れにくくなる観点から好ましい。重量平均分子量は、さらに現像残渣が極めて少なくなる観点から、1,500〜50,000であることがより好ましく、2,000〜20,000であることがさらに好ましい。
【0073】
重量平均分子量は、ポリスチレンを標準としたGPC分析で求めることができ、例えば、分子量が500〜150,000のポリスチレン(例えばPolymer Laboratories製のPL2010−0102(S−M2−10)standard)を用いることができ、前記測定の際のカラムとしては、Shodex PLgel MIXED−D(Polymer Laboratories製)を用いることができ、前記測定の際の移動相としては、THFを用いることができる。このような条件で、前記重量平均分子量を測定することができる。
【0074】
なお、シロキサン構造を含む重合体(A)のモノマーは、シロキサン構造を含む重合体(A)におけるケイ素原子を含む特定の構造とラジカル重合性官能基に由来する構造とを確認することが可能な公知の分析方法によって確認することができ、例えば、1H−NMRによるSi−CH3のピークの検出とエチレン基やプロピレン基のピークの検出とによって確認することができる。
【0075】
1−2.1,2−キノンジアジド化合物(B)
1,2−キノンジアジド化合物(B)には、例えばレジスト分野において感光剤として使用される化合物を用いることができる。1,2−キノンジアジド化合物(B)としては、例えば、ヒドロキシベンゾフェノン化合物と1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル、ヒドロキシベンゾフェノン化合物と1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル、フェノール化合物と1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル、フェノール化合物と1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル、フェノール化合物の水酸基をアミノ基に置き換えた化合物と1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸とのスルホンアミド、フェノール化合物の水酸基をアミノ基に置き換えた化合物と1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのスルホンアミドが挙げられる。
【0076】
ヒドロキシベンゾフェノン化合物としては、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン、及び2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0077】
フェノール化合物としては、例えば、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール、及び2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバンが挙げられる。
【0078】
1,2−キノンジアジド化合物(B)は、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸とのエステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸とのエステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸とのエステル、及び4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステルからなる群から選ばれる一以上であることが、感光性組成物の透明性を高める観点から好ましい。
【0079】
1−3.他の成分
感光性組成物は、前述したシロキサン構造を含む重合体(A)及び1,2−キノンジアジド化合物(B)以外の他の成分を、本発明の効果が十分に得られる範囲でさらに含有することができる。このような他の成分としては、例えば、アルカリ可溶性重合体(C)、溶剤、添加物、及び多価カルボン酸無水物が挙げられる。
【0080】
1−3−1.アルカリ可溶性重合体(C)
感光性組成物は、アルカリ可溶性重合体(C)をさらに含有することが、感光性組成物のアルカリ可溶性をさらに高めてパターン状透明膜を容易に得る観点、及び、耐溶剤性、高耐水性、高耐酸性、高耐アルカリ性、及び高耐熱性等の、得られる硬化膜の特性を高める観点から好ましい。アルカリ可溶性重合体(C)は一種でも二種以上でもよい。またアルカリ可溶性重合体(C)における「アルカリ可溶性」とは、アルカリ可溶性重合体(C)の溶液のスピンコート及び100℃2分間の加熱で形成される厚さ0.01〜100μmの膜を、例えば25℃程度の2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で5分間浸した後に純水ですすいだときに、膜が残らないことを言う。
【0081】
アルカリ可溶性重合体(C)には、得られる重合体がアルカリ可溶性を有するように、ラジカル重合性モノマー(a−2)、又は、ラジカル重合性モノマー(a−2)及びラジカル重合性モノマー(a−3)、に含まれる二種以上のラジカル重合性モノマーがラジカル重合してなるラジカル重合体を用いることができる。このようなラジカル重合性モノマーは、本発明の感光性組成物において、シロキサン構造を有する重合体(A)での使用量を勘案して、所期の機能が得られる量で、アルカリ可溶性重合体(C)において用いることができる。
【0082】
アルカリ可溶性重合体(C)のモノマーには、フェノール性水酸基を有するラジカル重合性モノマーとして、ラジカル重合性モノマー(a−2)を用いることができる。アルカリ可溶性重合体(C)のモノマーは、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、ヒドロキシスチレン、及び4−ヒドロキシフェニルビニルケトンからなる群から選ばれる一種以上を含むことが、感光性組成物のアルカリ可溶性を向上させる観点から好ましい。
【0083】
アルカリ可溶性重合体(C)の重量平均分子量は、シロキサン構造を含む重合体(A)と同様に、1,000〜100,000であることが、露光部分がアルカリ現像液で溶解されるまでの現像時間が適正であり、かつ、現像時に膜の表面が荒れにくくなる観点から好ましく、1,500〜50,000であることが、さらに現像残渣が極めて少なくなる観点からより好ましく、2,000〜20,000であることがさらに好ましい。アルカリ可溶性重合体(C)の重量平均分子量は、例えばシロキサン構造を含む重合体(A)と同じ条件のGPC分析で求めることができる。
【0084】
アルカリ可溶性重合体(C)は、例えばシロキサン構造を含む重合体(A)と同様の重合方法によって得ることができる。また、アルカリ可溶性重合体(C)のモノマーは、例えばアルカリ可溶性重合体(C)を熱分解したときに、熱分解により生じたガスをGC−MSで測定することによって推定することができる。
【0085】
1−3−2.溶剤
感光性組成物は、溶剤をさらに含有することが好ましい。溶剤は、感光性組成物に配合されるシロキサン構造を含む重合体(A)、1,2−キノンジアジド化合物(B)、及びアルカリ可溶性重合体(C)を溶解する溶剤が好ましい。また、溶剤は、沸点が100〜300℃である溶剤が好ましい。溶剤は、一種でも二種以上でもよい。
【0086】
沸点が100〜300℃である溶剤としては、例えば、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トルエン、キシレン、γ−ブチロラクトン、及びN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0087】
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、乳酸エチル及び酢酸ブチルからなる群から選ばれる一以上であることが、感光性組成物の膜を形成する際の塗布均一性を高める観点から好ましい。さらに溶剤がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、乳酸エチル、及び酢酸ブチルからなる群から選ばれる一以上であることが、人体への安全性の観点からより好ましい。
【0088】
溶剤は、沸点が100〜300℃である溶剤を20重量%以上含有する混合溶剤であってもよい。混合溶剤における、沸点が100〜300℃である溶剤以外の溶剤には、公知の溶剤の一又は二以上を用いることができる。
【0089】
1−3−3.添加剤
感光性組成物は、添加剤をさらに含有することが、解像度、塗布均一性、現像性、及び接着性等の感光性組成物及び形成される硬化膜の特性をさらに向上させる観点から好ましい。添加剤には、フォトレジストの分野において、感光性組成物や硬化膜の特性の向上に利用される各種添加剤を用いることができる。添加剤は一種でも二種以上でもよい。このような添加剤としては、例えば、アクリル系、スチレン系、ポリエチレンイミン系又はウレタン系の高分子分散剤、アニオン系、カチオン系、ノニオン系又はフッ素系の界面活性剤、シリコン樹脂系塗布性向上剤、シランカップリング剤等の密着性向上剤、アルコキシベンゾフェノン類等の紫外線吸収剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤、エポキシ化合物、メラミン化合物又はビスアジド化合物等の熱架橋剤、及び、有機カルボン酸等のアルカリ溶解性促進剤が挙げられる。
【0090】
より具体的には、添加剤としては、例えば、ポリフローNo.45、ポリフローKL−245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(以上いずれも商品名、共栄社化学株式会社製)、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK344、BYK346(以上いずれも商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KP−341、KP−358、KP−368、KF−96−50CS、KF−50−100CS(以上いずれも商品名、信越化学工業株式会社製)、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(以上いずれも商品名、AGCセイミケミカル株式会社製)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218(以上いずれも商品名、株式会社ネオス製)、EFTOP EF−351、EFTOP EF−352、EFTOP EF−601、EFTOP EF−801、EFTOP EF−802(以上いずれも商品名、三菱マテリアル株式会社製)、メガファックF−171、メガファックF−177、メガファックF−475、メガファックR−08、メガファックR−30(以上いずれも商品名、DIC株式会社製)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、及びアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩が挙げられる。添加剤は、これらから選ばれる一種以上であることが好ましい。
【0091】
添加剤は、フッ素系の界面活性剤及びシリコン樹脂系塗布性向上剤の一方又は両方であることが、感光性組成物の塗布均一性を高める観点からより好ましい。より具体的には添加物は、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、BYK306、BYK344、BYK346、KP−341、KP−358、及びKP−368からなる群から選ばれる一種以上であることが、感光性組成物の塗布均一性を高める観点からさらに好ましい。
【0092】
1−3−4.多価カルボン酸無水物
感光性組成物は、多価カルボン酸無水物をさらに含有することが、エポキシを有する感光性組成物から形成される硬化膜の耐熱性及び耐薬品性を高める観点、及び保存時における1,2−キノンジアジド化合物(B)の分解による感光性組成物の着色を防止する観点から好ましい。多価カルボン酸無水物は、加熱により、エポキシを有する感光性組成物中のエポキシと反応する。多価カルボン酸無水物は一種でも二種以上でもよい。多価カルボン酸無水物としては、例えば、無水トリメリット酸、無水フタル酸、及び4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物が挙げられる。多価カルボン酸無水物の中でも無水トリメリット酸が好ましい。
【0093】
1−4.感光性組成物中の各成分の含有量
感光性組成物におけるシロキサン構造を含む重合体(A)の含有量は、硬化膜における撥液性を発現する観点から、20〜80重量%であることが好ましく、30〜70重量%であることがより好ましく、40〜60重量%であることがさらに好ましい。
【0094】
感光性組成物における1,2−キノンジアジド化合物(B)の含有量は、シロキサン構造を含む重合体(A)及びアルカリ可溶性重合体(C)の合計量100重量部に対して、硬化膜において精細なパターンを形成する観点から、5〜50重量部であることが好ましく、10〜40重量部であることがより好ましく、15〜30重量部であることがさらに好ましい。
【0095】
感光性組成物において、アルカリ可溶性の向上効果を十分に発現させる観点から、シロキサン構造を含む重合体(A)の含有量を100重量部としたときに、アルカリ可溶性重合体(C)の含有量は、20〜150重量部であることが好ましく、50〜120重量部であることがより好ましく、70〜100重量部であることがさらに好ましい。
【0096】
感光性組成物における溶剤の含有量は、感光性組成物における全固形分の含有量が5〜50重量%となる量であることが、感光性組成物の塗布均一性を高める観点から、また人体への安全性の観点から好ましく、10〜45重量%となる量であることがより好ましく、15〜40重量%となる量であることがさらに好ましい。
【0097】
感光性組成物における添加剤の含有量は、感光性組成物及び硬化膜の特性の付与及び向上の観点から、シロキサン構造を含む重合体(A)及びアルカリ可溶性重合体(C)の合計量100重量部に対して、0.01〜1重量部であることが好ましく、0.03〜0.7重量部であることがより好ましく、0.05〜0.5重量部であることがさらに好ましい。
【0098】
感光性組成物における多価カルボン酸無水物の含有量は、前述した硬化膜の特性の向上及び感光性組成物の着色防止の観点から、シロキサン構造を含む重合体(A)及びアルカリ可溶性重合体(C)の合計量100重量部に対して、1〜30重量部であることが好ましく、2〜20重量部であることがより好ましく、3〜15重量部であることがさらに好ましい。
【0099】
1−5.感光性組成物の保存
感光性組成物は、−30〜25℃で遮光して保存することが、感光性組成物を安定して保存する観点から好ましく、保存温度が−20〜10℃であることが、析出物の発生を防止する観点からより好ましい。
【0100】
2.本発明の硬化膜
本発明の硬化膜は、前述した本発明の感光性組成物の膜を焼成して得られる。感光性組成物は、透明の硬化膜を形成するのに適しており、パターニングの際の解像度が比較的高いことから10μm以下の小さな穴の開いた絶縁膜を形成するのに適している。ここで、絶縁膜とは、例えば、層状に配置される配線間を絶縁するために設ける膜(層間絶縁膜)等をいう。
【0101】
透明膜及び絶縁膜等の硬化膜は、レジスト分野において硬化膜を形成する通常の方法で形成することができ、例えば以下のようにして形成される。
【0102】
まず、感光性組成物の膜を形成する。感光性組成物の膜は、感光性組成物をスピンコート、ロールコート、スリットコート等の公知の方法により、ガラス等の基板上に塗布することによって形成される。好ましい塗布方法としては、例えば、スピンコート、ロールコート、スリットコートが挙げられる。基板としては、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラス等の透明ガラス基板、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成樹脂製シート、フィルム又は基板、アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板等の金属基板、その他セラミック板、光電変換素子を有する半導体基板等を挙げることができる。これらの基板には所望により、シランカップリング剤等の薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の前処理を行うことができる。
【0103】
次に、感光性組成物の膜を乾燥する。感光性組成物の膜は、例えば、感光性組成物の膜を有する基板をホットプレート又はオーブンにて加熱することによって乾燥される。通常、60〜120℃で1〜5分間乾燥する。
【0104】
次いで、乾燥した感光性組成物の膜に、所望のパターン形状のマスクを介して放射線を照射する。感光性組成物の膜への放射線の照射は、例えば、基板上の乾燥した感光性組成物の膜に、マスクを介して紫外線を照射することによって行われる。照射条件は、感光性組成物中の感光剤の種類に拠り、例えば感光性組成物が1,2−キノンジアジド化合物(B)を含有するため、i線で5〜1,000mJ/cm2が適当である。なお、パターンを有さない硬化膜を形成する場合では、この放射線の照射工程は不要である。
【0105】
次いで、放射線が照射された感光性組成物の膜を、現像液で洗って現像する。放射線が照射された感光性組成物の膜中の1,2−キノンジアジド化合物(B)はインデンカルボン酸となり速やかに現像液に溶解する状態になる。この現像により、膜における放射線が照射された部分は速やかに現像液に溶解する。現像方法は特に限定されず、ディップ現像、パドル現像、シャワー現像等の公知の方法のいずれも用いることができる。なお、パターンを有さない硬化膜を形成する場合では、この現像工程も不要である。
【0106】
現像液はアルカリ溶液が好ましい。現像液としては、アルカリの水溶液が好適に用いられる。アルカリ溶液に含有されるアルカリとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムが挙げられる。好ましい現像液としては、より具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、及び2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の有機アルカリ類等、及び、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム等の無機アルカリ類、の水溶液が挙げられる。
【0107】
現像液には、現像残渣の低減やパターン形状の適性化を目的として、メタノール、エタノールや界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤には、例えばアニオン系、カチオン系、及びノニオン系から選択される界面活性剤を使用することができる。これらの中でも、特に、ノニオン系のポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加すると、解像度を高める観点から好ましい。
【0108】
次いで、現像された膜を洗浄する。膜の洗浄は、例えば膜を基板ごと純水で十分に濯ぐことによって行われる。
【0109】
次いで、洗浄された膜の前面に放射線を照射する。この放射線の照射によって、残余の1,2−キノンジアジド化合物(B)が失活する。この放射線の照射は、例えば放射線が紫外線の場合は、100〜1,000mJ/cm2の露光量で紫外線を膜に照射することによって行われる。
【0110】
次いで、放射線が照射された膜を焼成して硬化膜を得る。この膜の焼成は、例えば膜を有する基板を、180〜250℃で10〜120分間加熱することによって行われる。このような工程により、所望のパターニングされた透明膜として硬化膜が得られる。
【0111】
このようにして得られたパターン状透明膜は、パターン状絶縁膜として用いることもできる。絶縁膜に形成された穴の形状は、真上から見た場合、正方形、長方形、円形又は楕円形であることが好ましい。さらに、該絶縁膜上に透明電極を形成し、エッチングによりパターニングを行った後、配向処理を行う膜を形成させてもよい。該絶縁膜は、耐スパッタ性が高いため、透明電極を形成しても絶縁膜にしわが発生せず、高い透明性を保つことができる。
【0112】
3.本発明の表示素子
本発明の表示素子は、前述した本発明の硬化膜を有する。表示素子における硬化膜の用途としては、例えば透明膜、絶縁膜、及び、パターンの周囲への液の付着を防止するためのバンク膜が挙げられる。
【0113】
表示素子は、本発明の硬化膜を前記の用途で用いる以外は、公知の表示素子と同様の構成を有し、公知の表示素子と同様に製造することができる。表示素子は、例えば、前述したようにして基板上にパターニングされた硬化膜を有する素子基板と、対向基板であるカラーフィルター基板とを、予め各基板に付されている印の位置を合わせて圧着し、その後熱処理して基板以外の他の部材を組み合わせ、対向する基板の間に液晶を注入し、注入口を封止することによって、液晶表示素子として製作される。
【0114】
液晶表示素子の製造において、液晶の封入は、素子基板上に液晶を散布した後、素子基板とカラーフィルター基板とを重ね合わせ、液晶が漏れないように密封することによっても行うことができる。表示素子はこのように製作された液晶表示素子であってもよい。
【0115】
液晶、すなわち液晶化合物及びそれを含有する組成物は、特に限定されず、いずれの液晶化合物及び液晶組成物をも使用することができる。
【0116】
本発明の感光性組成物は、例えば、パターニング透明膜及び絶縁膜に対して一般的に求められている高耐溶剤性、高耐水性、高耐酸性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性等の各種特性を有すると共に、撥液性に優れる硬化膜を形成することができる。
【0117】
また本発明の感光性組成物は、前述した高い撥液性、耐UVオゾンアッシング性に加えて、現像性、耐薬品性、及び密着性等の、フォトレジストの材料として要求される通常の特性についても、フォトレジストの材料として少なくとも十分な性能を有する。したがって、本発明の感光性組成物は、撥液性に加えてパターン形成性に優れる硬化膜を形成することができる。また、当該膜は透明膜、絶縁膜又は保護膜として用いられ得るので、表示素子として用いることができる。
【0118】
本発明の硬化膜は、本発明の感光性組成物から形成されていることから、溶剤、酸、アルカリ溶液等に浸漬、接触、熱処理等の処理を受けても表面荒れが発生しにくい。したがって、本発明の表示素子は、硬化膜における光の透過率が高く、高い表示品位を得ることができる。
【0119】
また本発明の硬化膜は、感光性組成物から形成されていることから、撥液性に優れており、表示素子の製造の過程において、硬化膜のパターン(開口部)に供給される液状の材料のパターン以外の部分への付着が防止され、さらにはこの付着した所望の液体は開口部へ容易に移動させられる。したがって、所望の性能の表示素子を効率よく得ることができ、表示素子の生産性のさらなる向上が期待される。
【実施例】
【0120】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0121】
[合成例1]シロキサン構造を含む重合体(A1)の合成
攪拌機付き4つ口フラスコに、溶剤として16gのジエチレングリコールメチルエチルエーテルを仕込み、一方で11gのジエチレングリコールメチルエチルエーテルに、ラジカル重合性モノマー(a−1)として、式(1−1)で表されるα、ω−ビス(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン(チッソ株式会社製FM7711、数平均分子量:1,000)、ラジカル重合性モノマー(a−2)として4−ヒドロキシフェニルビニルケトン、ラジカル重合性モノマー(a−3)として、グリシジルメタクリレート、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)ジメチルを下記重量で混合し、得られた混合溶液を110℃に維持された4つ口フラスコ中の溶剤に1時間で滴下し、滴下後、110℃で2時間さらに加熱した。
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル 11.0g
式(1−1)のα,ω−ビス(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン
0.675g
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 6.075g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 2.025g
グリシジルメタクリレート 4.725g
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)ジメチル 2.025g
【0122】
【化11】

【0123】
得られた反応液を室温まで冷却し、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)ジメチルを含有しない、シロキサン構造を含む重合体(A1)の33.3重量%溶液を得た。反応液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により重量平均分子量を測定した。その結果、シロキサン構造を含む重合体(A1)の重量平均分子量は4,000であった。
【0124】
[合成例2] シロキサン構造を含む重合体(A2)の合成
下記の成分を下記の重量で用いて前記混合溶液を調製し、合成例1と同様にして重合を行った。
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル 11.0g
式(1−1)のα,ω−ビス(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン
0.675g
N−シクロヘキシルマレイミド 4.725g
ジシクロペンタニルメタクリレート 4.725g
メタクリル酸 3.375g
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)ジメチル 2.025g
【0125】
得られた反応液を室温まで冷却し、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)ジメチルを含有しない、シロキサン構造を含む重合体(A2)の33.3重量%溶液を得た。反応液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により重量平均分子量を測定した。その結果、シロキサン構造を含む重合体(A2)の重量平均分子量は3,100であった。
【0126】
[合成例3]アルカリ可溶性重合体(C1)の合成
α、ω−ビス(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサンに代えて、式(3−1)で表されるα−ブチル−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン(チッソ株式会社製FM0711、数平均分子量:1,000)を用い、下記の成分を下記の重量で用いて前記混合溶液を調製し、合成例1と同様にして重合を行った。
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル 11.0g
式(3−1)のα−ブチル−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン 0.27g
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 6.48g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 1.35g
グリシジルメタクリレート 5.40g
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)ジメチル 2.025g
【0127】
【化12】

【0128】
得られた反応液を室温まで冷却し、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)ジメチルを含有しない、アルカリ可溶性重合体(C1)の33.3重量%溶液を得た。反応液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により重量平均分子量を測定した。その結果、アルカリ可溶性重合体(C1)の重量平均分子量は2,800であった。
【0129】
[合成例4]アルカリ可溶性重合体(C2)の合成
下記の成分を下記の重量で用いて前記混合溶液を調製し、合成例1と同様にして重合を行った。
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル 11.0g
式(3−1)のα−ブチル−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン 0.675g
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 6.075g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 2.025g
グリシジルメタクリレート 4.725g
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)ジメチル 2.025g
【0130】
得られた反応液を室温まで冷却し、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)ジメチルを含有しない、アルカリ可溶性重合体(C2)の33.3重量%溶液を得た。反応液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により重量平均分子量を測定した。その結果、アルカリ可溶性重合体(C2)の重量平均分子量は3,500であった。
【0131】
[合成例5]アルカリ可溶性重合体(C3)の合成
下記の成分を下記の重量で用いて前記混合溶液を調製し、合成例1と同様にして重合を行った。
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル 11.0g
式(3−1)のα−ブチル−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン 0.675g
N−シクロヘキシルマレイミド 4.725g
ジシクロペンタニルメタクリレート 4.725g
メタクリル酸 3.375g
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)ジメチル 2.025g
【0132】
得られた反応液を室温まで冷却し、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)ジメチルを含有しない、アルカリ可溶性重合体(C3)の33.3重量%溶液を得た。反応液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により重量平均分子量を測定した。その結果、アルカリ可溶性重合体(C3)の重量平均分子量は2,800であった。
【0133】
[合成例6] アルカリ可溶性重合体(C4)の合成
下記の成分を下記の重量で用いて前記混合溶液を調製し、合成例1と同様にして重合を行った。
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル 11.0g
N−シクロヘキシルマレイミド 4.725g
ジシクロペンタニルメタクリレート 5.400g
メタクリル酸 3.375g
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)ジメチル 2.025g
【0134】
得られた反応液を室温まで冷却し、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)ジメチルを含有しない、アルカリ可溶性重合体(C4)の33.3重量%溶液を得た。反応液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により重量平均分子量を測定した。その結果、アルカリ可溶性重合体(C4)の重量平均分子量は2,800であった。
【0135】
[比較合成例1]シロキサン構造を含む重合体(D1)の合成
下記の成分を下記の重量で用いて前記混合溶液を調製し、混合溶液の滴下時及びその後の反応における4つ口フラスコ中の溶剤の温度を90℃としたこと以外は、合成例1と同様にして重合を行った。
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル 11.0g
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 6.75g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 1.35g
グリシジルメタクリレート 5.40g
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)ジメチル 2.025g
【0136】
得られた反応液を室温まで冷却し、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)ジメチルを含有しない、シロキサン構造を含む重合体(D1)の33.3重量%溶液を得た。反応液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により重量平均分子量を測定した。その結果、シロキサン構造を含む重合体(D1)の重量平均分子量は2,700であった。
【0137】
[実施例1]
[ポジ型感光性組成物の製造]
合成例1で得られた共重合体(A1)、合成例6で得られた共重合体(C4)、1,2−キノンジアジド化合物である4,4’―[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライドとの縮合物(平均エステル化率58%、以下「PAD」という)、添加剤としてシリコン系界面活性剤であるBYK344(商品名:ビックケミー・ジャパン株式会社、以下「BYK344」と略す)、溶剤としてジエチレングリコールメチルエチルエーテルを下記の重量で混合溶解し、固形分の濃度が35重量%であるポジ型感光性組成物1を得た。
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル 0.451g
シロキサン構造を含む重合体(A1)の33.3重量%溶液 3.00g
アルカリ可溶性重合体(C4)の33.3重量%溶液 3.00g
PAD 0.400g
BYK344 0.007g
【0138】
[ポジ型感光性組成物の評価方法]
1)パターン状透明膜の形成方法
ガラス基板上に感光性組成物1を600rpmで10秒間スピンコートし、100℃のホットプレートで2分間乾燥した。この基板を空気中、ホールパターン形成用のフォトマスクを介して株式会社トプコン製のプロキシミティー露光機TME−150PRCを使用し、波長カットフィルターを通して350nm以下の光をカットしてg,h,i線を取り出し、露光ギャップ100μmで露光した。露光量は150mJ/cm2とした。露光量はウシオ電機株式会社製の積算光量計UIT−102及び受光器UVD−365PDで測定した。露光後のガラス基板を、0.4重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間ディップ現像し、露光部の樹脂組成物を除去した。現像後の基板を純水で60秒間洗ってから100℃のホットプレートで2分間乾燥した。この基板を露光機にて、フォトマスクを介さずに300mJ/cm2で全面露光した後、オーブン中230℃で30分間ポストベイクし、膜厚3μmのパターン状透明膜を形成した。
【0139】
2)現像後残膜率
現像の前後で膜厚を測定し、次式から計算した。
(現像後の膜厚/現像前の膜厚)×100(%)
膜厚は、KLA−Tencor Japan株式会社製の触針式膜厚計P−15を使用し、3箇所測定し、その平均値とした。
【0140】
3)解像度
上記1)で得られたパターン状透明膜の基板を光学顕微鏡で400倍にて観察し、ホールパターンの底にガラスが露出しているマスクサイズを確認した。ホールパターンができていない場合は不良(NG)とした。
【0141】
4)密着性
上記1)で得られたパターン状透明膜の基板を碁盤目剥離試験(クロスカット試験)により評価した。評価は、切り込みによって1mm角の碁盤目を100個形成したパターン状透明膜に、粘着テープ(住友スリーエム(株)製「ポリエステルテープNo.56:粘着力;5.5N/cm」)を貼り付け、テープ剥離後の残存碁盤目数で表した。
【0142】
5)UV/O3アッシング処理
パターンを形成しない以外、すなわちフォトマスクを介しての露光を行わない以外は上記1)と同様に透明膜を形成し、得られた透明膜に、以下の装置で以下の条件下、処理を行った。
装置:PL2003N−12(セン特殊光源株式会社製PHOTO SURFACE PROCESSOR)
諸設定値:紫外線波長(254nm)、露光量(525mJ/cm2
なお、株式会社カスタム製UVC−254を使用して254nmの露光量を測定した。
【0143】
6)接触角
上記5)のUV/O3アッシング処理前後における前記透明膜における純水の接触角を、協和界面化学株式会社製のDrop Master500にて25℃環境下で測定した。純水着滴1秒後の値を接触角値とした。
【0144】
感光性組成物1の組成及び上記の評価方法により得られた結果を表1に示す。
【0145】
【表1】

【0146】
[実施例2〜5及び比較例1〜4]
表1に示す組み合わせ及び量で重合体の溶液である感光性組成物2〜5及び比較用可溶性組成物1〜4を実施例1と同様に調製し、評価した。これらの感光性組成物の組成及び評価結果を表1に示す。
【0147】
表1から明らかなように、実施例1〜5では、比較例1〜4に比べて、UV/O3アッシング処理後においても高い接触角が得られている。
【産業上の利用可能性】
【0148】
以上説明したように、本発明の感光性組成物は、既存のフォトリソグラフ法に従って取り扱いが可能であり、得られた硬化膜はバンク材料としての十分な撥液性を有している。また回路基板製造プロセス等において濡れ性向上のために行われるUV/O3アッシング処理を行うことによるバンク材料表面の撥液性の低下が抑えられており、処理後も十分な撥液性を維持している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン構造を含む重合体(A)及び1,2−キノンジアジド化合物(B)を含有する感光性組成物において、シロキサン構造を含む重合体(A)が、式(1)で表されるシロキサン化合物と重合体(A)にアルカリ可溶性を付与するアルカリ溶解性とラジカル重合性とを有するアルカリ溶解性ラジカル重合性モノマーとを含むモノマーのラジカル重合体である、感光性組成物。
【化1】

(式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立して水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして連続しない任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜30のアルキルを表し、A1及びA2はそれぞれラジカル重合性官能基を表し、nは1〜1,000の整数を表す。)
【請求項2】
アルカリ溶解性ラジカル重合性モノマーが不飽和カルボン酸を有するラジカル重合性モノマー、不飽和カルボン酸無水物を有するラジカル重合性モノマー、及びフェノール性水酸基を有するラジカル重合性モノマーからなる群から選ばれる一以上を含む、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
アルカリ溶解性ラジカル重合性モノマーが式(2)で表されるラジカル重合体モノマーを含む、請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【化2】

(式(2)中、R5〜R7は、それぞれ、水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜3のアルキルを表し、R8〜R12は、それぞれ、水素;ハロゲン;−CN;−CF3;−OCF3;水酸基;任意のメチレンが−COO−、−OCO−、−CO−で置き換えられてもよく、また任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルキル;又は任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルコキシ;を表す。ただし、R8〜R12のうち少なくとも1つは水酸基である。)
【請求項4】
シロキサン構造を含む重合体(A)が、式(1)で表されるシロキサン化合物及びアルカリ溶解性ラジカル重合性モノマー以外の他のラジカル重合性モノマーをさらに含むモノマーのラジカル重合体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項5】
他のラジカル重合性モノマーが、式(3)で表されるシロキサン化合物を含む、請求項4に記載の感光性組成物。
【化3】

(式(3)中、R13〜R17は、それぞれ独立して、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜30のアルキル、又はケイ素数1〜500のトリ(アルキル/アルコキシ)シロキシを表し、A3はラジカル重合性官能基を表し、nは0〜1,000の整数を表す。)
【請求項6】
他のラジカル重合性モノマーが、nが0である式(3)で表されるシロキサン化合物である、請求項5に記載の感光性組成物。
【請求項7】
式(3)のR13〜R15がそれぞれ下記式(5)で表される、請求項6に記載の感光性組成物。
【化4】

(式(5)中、R21〜R23は、それぞれ水素、炭素数1〜20のアルキル、又は炭素数1〜20のアルコキシを表し、mは1〜500の整数を表す。)
【請求項8】
他のラジカル重合性モノマーが(メタ)アクリル酸誘導体を含む、請求項4〜7のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項9】
式(1)で表されるシロキサン化合物以外のモノマーのラジカル重合体であり、アルカリ可溶性を有するアルカリ可溶性重合体(C)をさらに含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項10】
アルカリ可溶性重合体(C)が、不飽和カルボン酸を有するラジカル重合性モノマー、不飽和カルボン酸無水物を有するラジカル重合性モノマー、及びフェノール性水酸基を有するラジカル重合性モノマーからなる群から選ばれる一以上を含むモノマーのラジカル重合体である、請求項9に記載の感光性組成物。
【請求項11】
溶剤をさらに含有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の感光性組成物の膜を焼成して得られる硬化膜。
【請求項13】
請求項12に記載の硬化膜を有する表示素子。

【公開番号】特開2012−37595(P2012−37595A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175135(P2010−175135)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】