説明

感光性組成物、パターン形成材料、並びに、これを用いた感光性膜、パターン形成方法、パターン膜、反射防止膜、絶縁膜、光学デバイス及び電子デバイス

【課題】塗布面状が良好で、屈折率が低く、高温条件下においても屈折率変化が小さいパターン膜(以上、例えば、光学デバイスにおける反射防止膜に適した性能)であって、誘電率が低く、かつ、ヤング率が高いパターン膜(以上、例えば、半導体素子デバイス等における層間絶縁膜に適した性能)を、高解像度で形成可能な感光性組成物、パターン形成材料、並びに、これを用いた感光性膜、パターン形成方法、及び、パターン膜を提供する。更に、該感光性組成物を用いて製造される反射防止膜及び絶縁膜、並びに、これらを用いた光学デバイス及び電子デバイスを提供する。
【解決手段】(A)下記式(1)で表される1種又は2種以上のかご状シルセスキオキサン化合物から構成されるシルセスキオキサン類より得られる重合体と(B)光重合開始剤とを含有する感光性組成物、パターン形成材料、並びに、これを用いた感光性膜、パターン膜、反射防止膜、絶縁膜、光学デバイス及び電子デバイス。
(RSiO1.5 式(1)
(式(1)中、Rは、それぞれ独立に、有機基を表し、Rのうちの少なくとも2つは、重合性基を表す。aは8〜16の整数を表す。複数のRは同一であっても異なっていてもよい。)
ただし、前記重合体には前記かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基が残存している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性光線又は放射線の照射により反応して性質が変化する、感光性組成物、並びに、該感光性組成物を用いたパターン形成方法及び膜に関するものである。更に詳しくは、半導体素子などにおける層間絶縁膜材料や光学デバイスにおける反射防止膜などとして有用な、適当な均一な厚さを有する塗膜が形成可能で、かつ、解像度、誘電率特性、屈折率特性などに優れたパターン膜を製造することができる感光性組成物、感光性組成物、パターン形成材料、並びに、これを用いた感光性膜、パターン形成方法、パターン膜、反射防止膜、絶縁膜、光学デバイス及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル、冷陰極線管パネル、プラズマディスプレー等の各種表示パネル及び電荷結合素子(CCD)や相補形金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサなどの固体撮像素子、太陽電池パネル等の光学デバイス、更には薄膜トランジスタや単結晶薄膜シリコン太陽電池を作製するためのレーザアニール時やフォトレジスト工程において、外光の映りを防止し、集光率を向上させ、更に画質を向上させるために、反射防止膜が使用されている。
【0003】
この反射防止膜としては、例えば、反射防止の光学理論に基づいて、基板上に金属酸化物等からなる高屈折率層と低屈折率層とを積層させた複層構成のもの、又は、有機フッ素化合物や無機化合物等の低屈折率層のみを設けた単層構成のものがある。どちらの層構成でも、耐擦傷性、塗工性、及び耐久性に優れた硬化膜からなる低屈折率材料が望まれている。特に、イメージセンサといった光学デバイスなどの反射防止膜として使用する場合は、200℃以上の高温条件下に反射防止膜が長時間曝されるため、高い耐熱性と高温条件下における屈折率の経時安定性とが要求される。
【0004】
現在までに種々の低屈折率材料が提案されている。例えば、特許文献1では、アルコキシシランの加水分解縮合物を使用して、低屈折率材料の作製を行っている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されるようなアルコキシシランの加水分解縮合物を使用する場合、膜形成時の焼成の際に、加水分解縮合物に残存するシラノール基間などで反応が進行してしまい、膜収縮が進行しクラックなどが発生することがあり、成膜加工性が悪い。また、残存するシラノール基のために水分などを吸着しやすく、結果として、屈折率が経時的に変化してしまうという問題もある。更には、得られる膜の屈折率は実用上必ずしも満足いくレベルではなく、さらなる低屈折率化が必要である。
【0006】
一方、従来の半導体素子などにおける層間絶縁膜としては、気相成長(CVD)法などの真空プロセスで形成されたシリカ(SiO2)膜が多用されている。そして、近年、より均一な層間絶縁膜を形成することを目的として、SOG(Spin on Glass)膜と呼ばれるテトラアルコキシランの加水分解生成物を主成分とする塗布型の絶縁膜も使用されるようになっている。また、半導体素子などの高集積化に伴い、有機SOGと呼ばれるポリオルガノシロキサンを主成分とする低誘電率の層間絶縁膜が開発されている。
【0007】
しかし、無機材料の膜の中で最も低い誘電率を示すCVD−SiO2膜でも、比誘電率は約4程度である。また、低誘電率CVD膜として最近検討されているSiOF膜の比誘電率は約3.3〜3.5であるが、この膜は吸湿性が高く、使用しているうちに誘電率が上昇するという問題がある。
【0008】
かかる状況下、絶縁性、耐熱性、耐久性に優れた絶縁膜材料として、オルガノポリシロキサンに高沸点溶剤や熱分解性化合物を添加して空孔を形成し、誘電率を下げる方法が提案されている(非特許文献1参照)。しかしながら、このような多孔質膜では、多孔化することにより誘電率特性が下がっても、機械強度が低下すること、吸湿による誘電率増加がおこることなどが問題になっていた。また、互いに連結した空孔が形成されるため、配線に用いられた銅が、絶縁膜中に拡散するといった問題が生じていた。
【0009】
一方、有機ポリマーに低分子のカゴ型化合物を添加した溶液を塗布することによって、低屈折率、低密度の膜を得る試みも知られている(特許文献2参照)。しかし、カゴ型化合物単量体を添加する方法では、得られる膜の誘電率及びヤング率などの諸特性が実用的な観点からは必ずしも満足いくものではなく、更に塗布面状悪化などの問題点があった。
【0010】
このような誘電特性、反射率特性に加え、更には製造工程の煩雑さなど多くの課題解決が望まれている。特許文献3及び4には製造工程の煩雑性を解消するため、フォトレジストを用いないパターニング方法として、感光性を備えたシリカ系材料を用いて、それ自体を露光・現像してパターンを形成する方法が記載されているが、未だ不十分な点が多く改善が望まれている。
具体的には、特許文献3にはダブルデッカー型POSS重合体によるネガ型レジストが記載されているが、パターン形成における解像度が不充分であるとともに、得られるパターンの屈折率の低屈折率性も不充分である。
また、特許文献4にはゾルゲル重合体によるレジストが記載されているが、パターン形成における解像度が不充分であるとともに、得られるパターンの低誘電率性も不充分である。
更に、特許文献5の実施例には、特定の構造を有するカゴ型ケイ素化合物から誘導されたポリシルセスキオキサンポリマーと、感光性金属錯体とを含有する溶液を用いて、膜を形成し、この膜に対して、露光及び現像を行うことにより、パターンを形成する技術が知られている。しかしながら、照射露光量は非常に大きく低感度な感光膜であり、得られるパターンの屈折率の低屈折率性、及び誘電率の低誘電率性は不充分である。更に金属触媒を用いていることから適用可能なデバイスも大きく制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−21036号公報
【特許文献2】特開2000−334881号公報
【特許文献3】特開2009−215423号公報
【特許文献4】米国特許公開2009/291389号明細書
【特許文献5】特開2007−298841号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Chem.Rev.56,2010,110,56〜110
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、塗布面状が良好で、屈折率が低く、高温条件下においても屈折率変化が小さいパターン膜(以上、例えば、光学デバイスにおける反射防止膜に適した性能)であって、誘電率が低く、かつ、ヤング率が高いパターン膜(以上、例えば、半導体素子デバイス等における層間絶縁膜に適した性能)を、高解像度で形成可能な感光性組成物、パターン形成材料、並びに、これを用いた感光性膜、パターン形成方法、及び、パターン膜を提供することを目的とする。
更に、本発明は、該感光性組成物を用いて製造される反射防止膜及び絶縁膜、並びに、これらを用いた光学デバイス及び電子デバイスを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、下記の構成であり、これにより本発明の上記目的が達成される。
【0015】
[1]
(A)下記式(1)で表される1種又は2種以上のかご状シルセスキオキサン化合物から構成されるシルセスキオキサン類より得られる重合体と
(B)光重合開始剤と
を含有する感光性組成物。
(RSiO1.5 式(1)
(式(1)中、Rは、それぞれ独立に、有機基を表し、Rのうちの少なくとも2つは、重合性基を表す。aは8〜16の整数を表す。複数のRは同一であっても異なっていてもよい。)
ただし、前記重合体には前記かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基が残存している。
【0016】
[2]
前記かご状シルセスキオキサン化合物が、下記一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、上記[1]に記載の感光性組成物。
【0017】
【化1】

【0018】
【化2】

【0019】
(一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)中、Rは、それぞれ独立に、有機基を表し、一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)の各々において、Rのうちの少なくとも2つは、重合性基を表す。)
【0020】
[3]
前記重合体中の前記重合性基の含有量が、ケイ素原子に結合した全有機基中、10〜90モル%である、上記[1]又は[2]に記載の感光性組成物。
【0021】
[4]
前記重合体の重量平均分子量が1万〜50万である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【0022】
[5]
ネガ型の組成物である、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【0023】
[6]
上記光重合開始剤が、オキシム化合物である、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【0024】
[7]
上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の感光性組成物であるパターン形成材料。
【0025】
[8]
上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の感光性組成物により形成される感光性膜。
【0026】
[9]
上記[8]に記載の感光性膜を形成する工程、前記感光性膜を露光する工程、及び、現像してパターン膜を得る現像工程を含むパターン形成方法。
【0027】
[10]
前記現像工程が有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程である上記[9]に記載のパターン形成方法。
【0028】
[11]
前記有機溶剤を含む現像液が、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤である、上記[10]に記載のパターン形成方法。
【0029】
[12]
上記[9]〜[11]のいずれか1項にパターン形成方法により得られるパターン膜。
【0030】
[13]
屈折率が1.35以下である上記[12]に記載のパターン膜。
【0031】
[14]
25℃における比誘電率が2.50以下である上記[12]又は[13]に記載のパターン膜。
【0032】
[15]
膜密度が0.7〜1.25g/cmである、上記[12]〜[14]のいずれか1項に記載のパターン膜。
【0033】
[16]
上記[12]〜[15]のいずれか1項に記載のパターン膜である反射防止膜。
【0034】
[17]
上記[12]〜[15]のいずれか1項に記載のパターン膜である絶縁膜。
【0035】
[18]
上記[16]に記載の反射防止膜を有する光学デバイス。
【0036】
[19]
上記[17]に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、塗布面状が良好で、高温条件下においても屈折率変化が小さいパターン膜(以上、特に、光学デバイスにおける反射防止膜に適した性能)であって、誘電率が低く、かつ、ヤング率が高いパターン膜(以上、特に、半導体素子デバイス等における層間絶縁膜に適した性能)を、高解像度で形成可能な感光性組成物、パターン形成材料、並びに、これを用いた感光性膜、パターン形成方法及び膜を提供できる。
更に、本発明によれば、前記感光性組成物を用いて製造される反射防止膜及び絶縁膜、並びに、これらを用いた光学デバイス及び電子デバイスを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明について詳細に記述する。
なお、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等を意味する。また本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、EUV光などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0039】
本発明の感光性組成物は、(A)後述する平均組成式で表される1種又は2種以上のかご状シルセスキオキサン化合物から構成されるシルセスキオキサン類より得られる重合体と、(B)光重合開始剤とを含有する。
ここで、この重合体には、かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基が残存している。
【0040】
本発明の感光性組成物を用いることによって、本発明の感光性組成物に含有されるかご状シルセスキオキサン化合物の重合体の構造が、塗布面状が良好で、高温条件下においても屈折率変化が小さく、誘電率が低く、かつ、ヤング率が高いパターン膜を形成できることに大きく寄与しているものと考えられる。
また、かご状シルセスキオキサン化合物より得られる重合体と光重合開始剤とを含有する本発明の感光性組成物により膜を形成した後に、該膜に露光を行うことで、前記重合体中の残存重合性基による反応が進行し、露光部が硬化する。次いで、アルカリ現像液を用いた現像工程を行うことにより、未露光部が除去されて、パターンを形成することができる。この現像工程に関し、本発明の感光性組成物により形成された膜は、現像性が優れるものである。その作用は完全には明らかではないが、本発明の感光性組成物に含有されるかご状シルセスキオキサン化合物より得られる重合体の特異な高次構造が、得られる膜の現像液に対する溶解性を大きく改善し、高い現像性の発現に寄与しているものと推察される。
【0041】
本発明に係る感光性組成物は、典型的にはネガ型の組成物(ネガパターンを形成する組成物)である。
また、本発明は、上記感光性組成物であるパターン形成材料にも関する。
【0042】
先ず、組成物に含まれる重合体の原料であるシルセスキオキサン類について説明する。その後、該シルセスキオキサン類から製造される重合体、及びその製造方法について詳述する。
【0043】
[1]シルセスキオキサン類
<かご状シルセスキオキサン化合物>
シルセスキオキサンとは、各ケイ素原子が3個の酸素原子と結合し、各酸素原子が2個のケイ素原子と結合している構造(RSiO1.5、珪素原子数に対する酸素原子数が1.5)を有する化合物である。より具体的には、RSiO1.5ユニットが別のRSiO1.5ユニットにおける酸素原子を共有して他のユニットに連結している。なお、かご状構造は、共有結合した原子で形成された複数の環によって容積が定まり、容積内に位置する点は環を通過せずには容積から離れることができないような構造を指す。
本発明のシルセスキオキサン類は、下記式(1)で表される1種又は2種以上のかご状シルセスキオキサン化合物から構成されるため、該重合体を用いた膜がより低屈折率となると共に、優れた低屈折率性、耐熱性、耐湿性などを示す。なお、複数種(2種以上)のかご状シルセスキオキサン化合物を使用する場合は、同じかご形状の化合物を2種使用してもよいし、異なるかご形状の化合物をそれぞれ1種ずつ使用してもよい。
(RSiO1.5a 式(1)
【0044】
式(1)中、Rは、それぞれ独立に、有機基を表し、Rのうちの少なくとも2つは、重合性基を表す。複数のRは同一であっても異なっていてもよい。
ただし、前記重合体には前記かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基が残存している。
式(1)中、aは8〜16の整数を表す。aは8、10、12、14又は16の整数がより好ましい。得られる膜がより優れた低屈折率性及び耐熱性を示す点より、aが8、10、12であることが好ましく、更に重合制御性の観点から、8がより好ましい。
【0045】
上記かご状シルセスキオキサン化合物の好適態様としては、下記一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)で表される化合物が挙げられる。なかでも、入手性、重合制御性、溶解性の観点から、一般式(Q−6)で表される化合物が最も好ましい。
【0046】
【化3】

【0047】
【化4】

【0048】
(一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)中、Rは、それぞれ独立に、有機基を表し、一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)の各々において、Rのうちの少なくとも2つは、重合性基を表す。)
【0049】
Rの有機基としては、重合性基、及び、非重合性基を挙げることができる。
重合性基としては、特に限定されず、ラジカル重合性基又はカチオン重合性基などが挙げられる。より具体的には、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基などのカチオン重合性基や、アルケニル基、アルキニル基、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステルなどのラジカル重合性基が好ましい。なかでも、合成が容易であり、重合反応が良好に進行する点から、ラジカル重合性基が好ましく、アルケニル基又はアルキニル基がより好ましい。
【0050】
なお、アルケニル基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、ケイ素原子含有基の任意の位置に2重結合を有する基が挙げられる。なかでも、炭素数2〜12が好ましく、更に炭素数2〜6が好ましい。例えば、ビニル基、アリル基などが挙げられ、重合制御性の容易さ、機械強度の観点から、ビニル基が好ましい。
アルキニル基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、ケイ素原子含有基の任意の位置に3重結合を有する基が挙げられる。なかでも、炭素数2〜12が好ましく、更に炭素数2〜6が好ましい。重合制御性の容易さの観点から、エチニル基が好ましい。
【0051】
非重合性基とは、上述した重合性を有さない基を指し、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、ケイ素原子含有基、又はそれらを組み合わせた基などが挙げられる。なかでも、感光性膜が優れた現像性を示す点、及び、得られるパターン膜が優れた低屈折率性及び耐熱性を示す点から、アルキル基又はシクロアルキル基が好ましい。
【0052】
アルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基である。アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子を有していてもよい。アルキル基の具体的としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基などの直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基などの分岐アルキル基などが挙げられる。
なお、アルキル基の好ましい態様の一つとして、得られる膜がより低屈折率性を示す点から、フッ素原子を有するアルキル基(フッ素化アルキル基)が好ましい。フッ素化アルキル基とは、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基などが挙げられる。
【0053】
シクロアルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基であり、多環でもよく、環内に酸素原子を有していてもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。
【0054】
アリール基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数6〜14のアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0055】
アラルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7〜20のアラルキル基であり、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基が挙げられる。
【0056】
アルコキシ基としては、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基などが挙げられる。
【0057】
ケイ素原子含有基は、ケイ素が含有されていれば特に制限されないが、一般式(2)で表される基が好ましい。
*−L−Si−(R20 (2)
一般式(2)中、*はケイ素原子との結合位置を表す。Lはアルキレン基、−O−、−S−、−Si(R21)(R22)−、−N(R23)−又は、これらを組み合わせた2価の連結基を表す。Lは、アルキレン基、−O−又は、これらを組み合わせた2価の連結基が好ましい。
アルキレン基としては、炭素数1〜12が好ましく、炭素数1〜6がより好ましい。R21、R22、R23及びR20は、それぞれ独立にアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアルコキシ基を表す。R21、R22、R23及びR20で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基の定義は、上述の定義と同じであり、好ましくはメチル基、エチル基、ブチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
ケイ素原子含有基としては、シリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)が好ましい。
【0058】
式(1)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物は、下記平均組成式(3)で表されることが好ましい。
(RSiO1.5(RSiO1.5 式(3)
(式(1)中、Rは、重合性基を表す。Rは、非重合性基を表す。ここで重合性基、非重合性基は上と同義である。xは2.0〜14.0の数を表し(2.0≦x≦14.0)、yは0〜14.0の数を表す(0≦y≦14.0)。ただし、x+y=8〜16を満たす。なお、複数のR及びRは、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい。
【0059】
式(3)中、xは2.0〜14.0の数を表し、得られる膜がより優れた低屈折率性、耐熱性、耐光性、及び硬化性を示す点より、xは2.5以上が好ましく、3.0以上がより好ましい。
式(3)中、yは0〜14.0の数を表し、得られる膜がより優れた低屈折率性、耐熱性及び塗布性を示す点より、yは0〜12.0が好ましく、0〜10.0が更に好ましく、0〜7.5がより好ましく、0〜5.0が最も好ましい。
【0060】
式(3)中、x+y=8〜16を満たし、得られる膜がより優れた低屈折率、耐熱性、吸湿性、及び保存安定性を示す点より、x+y=8〜14が好ましく、x+y=8〜12がより好ましく、x+y=8〜10が更に好ましい。
更に、式(3)中、xの割合(x/x+y)は0.1≦(x/x+y)≦1.0を満たすことが好ましく、得られる膜がより優れた低屈折率性、耐熱性、及び機械強度を示す点より、0.2≦(x/x+y)≦1.0がより好ましく、0.3≦x/y≦1.0が更に好ましい。
【0061】
<シルセスキオキサン類の好適態様>
シルセスキオキサン類の好適態様の一つとして、得られる膜がより優れた低屈折率性及び耐熱性を示す点から、式(3)においてxが2.0≦x≦8.0の範囲の数を表し(好ましくは3.0≦x≦8.0)、yが0≦y≦6.0の範囲の数を表し(好ましくは0≦y≦5.0)、x+y=8を表し、上記一般式(Q−6)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物より構成されるシルセスキオキサン類が挙げられる。
該シルセスキオキサン類は、1種又は2種以上の上記一般式(Q−6)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物(T8型)より構成される。例えば、8つの重合性基を有するかご状シルセスキオキサン化合物と、4つの重合性基及び4つの非重合性基を有するかご状シルセスキオキサン化合物との混合物であってもよい。
【0062】
シルセスキオキサン類の他の好適態様として、式(3)においてxが2.0≦x≦10.0の範囲の数を表し(好ましくは3.0≦x≦10.0)、yが0≦y≦8.0の範囲の数を表し(好ましくは0≦y≦7.0)、x+y=10を表し、上記一般式(Q−2)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物及び/又は一般式(Q−7)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物より構成されるシルセスキオキサン類が挙げられる。
該シルセスキオキサン類は、1種又は2種以上の、上記一般式(Q−2)又は一般式(Q−7)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物(T10型)より構成される。
【0063】
シルセスキオキサン類の他の好適態様として、式(3)においてxが2.0≦x≦12.0の範囲の数を表し(好ましくは3.0≦x≦12.0)、yが0≦y≦10.0の範囲の数を表し(好ましくは0≦y≦9.0)、x+y=12を表し、上記一般式(Q−1)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物及び/又は一般式(Q−3)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物より構成されるシルセスキオキサン類が挙げられる。
該シルセスキオキサン類は、1種又は2種以上の、上記一般式(Q−1)又は一般式(Q−3)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物(T12型)より構成される。
【0064】
シルセスキオキサン類の他の好適態様として、式(3)においてxが2.0≦x≦14.0の範囲の数を表し、yが0≦y≦12.0の範囲の数を表し、x+y=14を表し、上記一般式(Q−4)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物より構成されるシルセスキオキサン類が挙げられる。
該シルセスキオキサン類は、1種又は2種以上の上記一般式(Q−4)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物(T14型)より構成される。
【0065】
シルセスキオキサン類のその他の好適態様の一つとして、少なくとも3つの重合性基と、少なくとも3つの非重合性基とを有するかご状シルセスキオキサン化合物(以下、化合物(A)とも言う)を含むシルセスキオキサン類が挙げられる。すなわち、該化合物(A)は、式(3)中のRのうち少なくとも3つが重合性基を表し、更にRのうち少なくとも3つが非重合性基を表す化合物である。該化合物(A)を含有することにより、より低屈折率で耐熱性に優れるパターン膜を得ることができる。
この形態において、かご状シルセスキオキサン化合物(A)は、3つ以上の重合性基と3つ以上の非重合性基を有していてもよい。
化合物(A)の構造は特に限定されないが、上述した一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)で表される化合物であることが好ましい。
例えば、一般式(Q−6)で表される化合物においては、3〜5つの重合性基と3〜5つの非重合性基を有し、両者の総数が8である化合物が化合物(A)に該当する。
また、一般式(Q−2)又は一般式(Q−7)で表される化合物においては、3〜7つの重合性基と3〜7つの非重合性基とを有し、両者の総数が10である化合物が化合物(A)に該当する。
また、一般式(Q−4)で表される化合物においては、3〜11つの重合性基と3〜11つの非重合性基とを有し、両者の総数が14である化合物が化合物(A)に該当する。
【0066】
全シルセスキオキサン類中における上記した化合物(A)の含有量は、特に制限されないが、得られる膜の諸特性がより優れる点より、シルセスキオキサン類全量に対して、10モル%以上であることが好ましく、20〜100モル%であることがより好ましく、60〜100モル%以上であることが更に好ましい。特に、シルセスキオキサン類が化合物(A)のみによって構成され、他のかご状シルセスキオキサン化合物を実質的に含有しないことが好ましい。
【0067】
上述したシルセスキオキサン類は、通常、かご状シルセスキオキサン化合物から構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他のポリシロキサン化合物(ラダー型シルセスキオキサン化合物など)を含んでいてもよい。
【0068】
以下に、シルセスキオキサン類の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、表1中の置換基比率は、式(3)中のx/yに該当する。
【0069】
【表1】

【0070】
本発明で使用されるかご状シルセスキオキサン化合物は、アルドリッチ、Hybrid Plastics社から購入できるものを使用してもよいし、Polymers, 20, 67-85, 2008, Journal of Inorganic and Organometallic Polymers, 11(3), 123-154, 2001, Journal of Organometallic Chemistry, 542, 141-183, 1997, Journal of Macromolecular Science A. Chemistry, 44(7), 659-664, 2007, Chem. Rev., 95, 1409-1430, 1995, Journal of Inorganic and Organometallic Polymers, 11(3), 155-164, 2001, Dalton Transactions, 36-39, 2008, Macromolecules, 37(23), 8517-8522, 2004, Chem. Mater.,8, 1250-1259, 1996などに記載の公知の方法で合成してもよい。
【0071】
[2]シルセスキオキサン類の重合体
以下に、上述したシルセスキオキサン類を原料として得られる重合体の物性値、及びその製造方法について詳述する。
【0072】
重合体の重量平均分子量(M)は特に限定されないが、1.0×10〜50×10であることが好ましく、3.5×10〜40×10であることがより好ましく、5.0×10〜35×10であることが最も好ましい。
重合体の数平均分子量(M)は特に限定されないが、1.5×10〜35×10であることが好ましく、1.5×10〜20×10であることがより好ましく、2.5×10〜15×10であることが最も好ましい。
重合体のZ+1平均分子量(MZ+1)は特に限定されないが、1.5×10〜65×10であることが好ましく、2.5×10〜50×10であることがより好ましく、3.5×10〜35×10であることが最も好ましい。
上記範囲の重量平均分子量及び数平均分子量に設定することにより、有機溶媒に対する溶解性及びフィルターろ過性が向上し、保存時のパーティクルの発生が抑制でき、塗布膜の面状が改善された、低屈折率である膜を形成することができる。
【0073】
有機溶媒に対する溶解性、フィルターろ過性、及び塗布膜面状の観点から、重合体は分子量300万以上の成分を実質的に含まないことが好ましく、200万以上の成分を実質的に含まないことがより好ましく、100万以上の成分を含まないことが最も好ましい。
【0074】
重合体には、かご状シルセスキオキサン化合物由来の未反応の重合性基が残存している。
かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基のうち、10〜90モル%が未反応で残存していることが好ましく、20〜90モル%が未反応で残存していることが好ましく、30〜90モル%が未反応で残存していることが最も好ましい。上記範囲内であれば、本発明の感光性組成物から形成される膜の現像性が充分に得られるとともに、得られるパターン膜の耐熱性、硬化性、機械強度がより向上する。
これらについては、1H−NMRスペクトル等から定量することができる。
【0075】
上述した重合体は、上記式(1)で表される1種又は2種以上のかご状シルセスキオキサン化合物から構成されるシルセスキオキサン類を主成分とする重合体である。該重合体中、重合性基の含有量は特に限定されないが、ケイ素原子に結合した全有機基中(すなわち、上記式(1)におけるRに対応する基の全てに対して)、好ましくは5〜90モル%であり、より好ましくは10〜90モル%であり、更に好ましくは10〜80モル%である。上記範囲内であれば、本発明の感光性組成物から形成される膜の現像性が充分に得られるとともに、得られるパターン膜の耐熱性、機械強度がより向上する。これらについても、1H−NMRスペクトル等から定量することができる。
【0076】
なお、重合体中、かご状シルセスキオキサン化合物由来の構造が、10〜100質量%含まれていることが好ましく、20〜100質量%含まれていることがより好ましい。上記範囲内であれば、得られる膜の耐熱性、低屈折率性、及び透明性がより向上する。
【0077】
また、重合体は、実質的には芳香族基を有さないことが好ましく、これにより、優れた低屈折率性をより確実に発現することができる。具体的には、重合体のケイ素原子に結合した全有機基に対して(すなわち、上記式(1)におけるRに対応する基の全てに対して)、芳香族基の含有量は、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、理想的には0モル%(すなわち、重合体が芳香族基を有さない)である。
【0078】
重合体は、1種を単独で用いても良く、あるいは、2種以上を併用しても良い。
【0079】
<重合体の製造方法>
重合体を製造するための方法としては、得られる重合体に前記かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基が残存すれば、特に制限されず、例えば、重合性基の重合反応、ハイドロシリレーション反応が挙げられる。
重合性基の重合反応としてはどのような重合反応でもよいが、例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、重縮合、重付加、付加縮合、遷移金属触媒重合などが挙げられる。
【0080】
ハイドロシリレーション反応は、例えば、上記のかご状シルセスキオキサン化合物と、それに加えて、分子内に2個以上のSiH基を含む化合物(例えばビス(ジメチルシリル)エタン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなど)を有機溶媒(例えばトルエン、キシレンなど)に溶解し、触媒(例えば、Platinum(0)−1,3−divinyl−1,1,3,3− tetramethyl disiloxane complexなど)を添加して20〜200℃で加熱する、などの方法で行うことができる。
【0081】
上記重合体を製造するための方法としては、重合性基を介した重合反応が好ましく、ラジカル重合が最も好ましい。合成方法としては、上記シルセスキオキサン類及び開始剤を溶媒に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、シルセスキオキサン類を溶媒に溶解させ加熱し、開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法(連続添加)、開始剤を複数回分割して加える分割添加重合法(分割添加)などが挙げられる。膜強度及び分子量再現性がより改善される点で、分割添加及び連続添加が好ましい。
【0082】
重合反応の反応温度は、通常0℃〜200℃であり、好ましくは40℃〜170℃、更に好ましくは80℃〜160℃である。
また、酸による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
【0083】
重合時の反応液中のシルセスキオキサン類の濃度は、反応液全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下が最も好ましい。上記濃度範囲に設定することにより、ゲル化成分などの不純物の生成を抑制することができる。
【0084】
上記重合反応で使用する溶媒は、シルセスキオキサン類が必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成される膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用してもよい。以下の記述において、例えば、エステル系溶媒とは分子内にエステル基を有する溶媒のことである。
溶媒としては、例えば、特開2008−218639号公報の段落番号[0038]に記載の溶媒を用いることができる。
これらの中でより好ましい溶媒は、エステル系溶媒、エーテル系溶媒及び芳香族炭化水素系溶媒であり、具体的には、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、t−ブチルベンゼンが好ましく、特に好ましくは酢酸エチル、酢酸ブチル、ジフェニルエーテル、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼンである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
反応時に重合開始剤を分解させるのに必要な温度まで反応液を加温できるために、溶媒の沸点は65℃以上であることが好ましい。
【0085】
上記溶媒のなかでも、得られる重合体の重合制御がし易く、かつ、得られる膜の諸特性がより優れる点から、連鎖移動定数(Cx)が0<Cx≦5.0×104である溶媒を使用することが特に好ましい。
また、溶媒の好ましいSP(溶媒度パラメータ)値としては、得られる重合体の重合制御がし易く、かつ、得られる膜の諸特性がより優れる点から、10〜25(MPa1/2)が好ましく、15〜25(MPa1/2)がより好ましい。ここで、SP値は、例えば、Polymer Handbook Fourth Edition Volume2(A John Wiley&Sons, Inc., Publication)J. BRANDRUP, E. H. IMMERGUT and E. A. GRULKE(1999) p.675〜714に記載の方法を用いて得られる値である。
【0086】
シルセスキオキサン類の重合反応は、非金属の重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。例えば、加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して活性を示す重合開始剤の存在下で重合することができる。
重合開始剤としては、特に、有機過酸化物又は有機アゾ系化合物が好ましく用いられる。有機過酸化物及び有機アゾ系化合物としては、特開2008−239685号公報の段落番号[0033]〜[0035]に記載の化合物を使用することができる。
【0087】
重合開始剤としては、試薬自体の安全性及び重合反応の分子量再現性から、有機アゾ系化合物が好ましく、なかでも重合体中に有害なシアノが取り込まれないV−601などのアゾエステル化合物が好ましい。
重合開始剤の10時間半減期温度は、100℃以下であることが好ましい。10時間半減期温度が100℃以下であれば、重合開始剤を反応終了時に残存しないようにすることが容易である。
重合開始剤は1種のみ、又は2種以上を混合して用いてもよい。
重合開始剤の使用量は、シルセスキオキサン類1モルに対して、好ましくは0.0001〜2モル、より好ましくは0.003〜1モル、特に好ましくは0.001〜0.5モルである。
【0088】
以上に述べたような条件で重合体を合成することにより、かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基が残存した重合体を好適に得ることができる。
また、得られる重合体において、かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基のうち、未反応で残存する重合性基の含有量は、上記した、重合性基の重合反応の反応温度や重合時の反応液中のシルセスキオキサン類の濃度等の諸条件を、適宜、変更することにより、変更可能である。
【0089】
シルセスキオキサン類の重合反応を行った反応液をそのまま塗布液として用いてもよいが、反応終了後、精製処理を実施することが好ましい。精製の方法としては、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過、遠心分離処理、カラムクロマトグラフィー等の溶液状態での精製方法や、重合体溶液を貧溶媒へ滴下することで重合体を貧溶媒中に凝固させ、残留単量体等を除去する再沈澱法や、ろ別した重合体スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法など通常の方法を適用できる。
例えば、上記重合体が難溶又は不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、重合体含有溶液に接触させることにより重合体を固体として析出させる。重合体溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該重合体の貧溶媒であればよく、重合体の種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)又は水を含む溶媒が好ましい。
【0090】
シルセスキオキサン類の重合体及びその製造工程において、必要以上の重合を抑制するために重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤の例としては、4−メトキシフェノール、2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール、カテコールなどが挙げられる。
【0091】
[3]感光性組成物
本発明の感光性組成物には、上述した所定の平均組成式で表される1種又は2種以上のシルセスキオキサン化合物から構成されるシルセスキオキサン類より得られる重合体を含有する。ただし、上記したように、重合体には前記かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基が残存している。
なお、本発明の組成物は、重合体が溶媒(例えば、有機溶媒)に溶解した溶液であってもよいし、重合体を含む固形物であってもよい。
本発明の組成物は、種々の用途に用いることができ、その目的に応じて重合体の含有量や添加する添加剤などの種類が決められる。用途としては、例えば、膜(例えば、絶縁膜)を製造するためや、低屈折率膜(例えば、反射防止膜)、低屈折率材料、ガス吸着材料、レジスト材料などが挙げられるが、絶縁膜、反射防止膜であることが好ましい。
【0092】
組成物中における上記重合体の含有量は、特に限定されないが、後述する膜形成に使用する場合には、全固形分に対して、50質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは60質量%以上であり、最も好ましくは70質量%以上である。最大値としては99.9質量%である。固形分中のこれらの含量が大きいほど、塗布面状が改善した膜を形成することができる。なお、固形分とは、後述する膜を構成する固形成分を意味し、溶媒などは含まれない。
【0093】
本発明の組成物は、溶媒を含有していてもよい。つまり、重合体を適当な溶媒に溶解させて、支持体上に塗布して使用することが好ましい。
溶媒としては、25℃で重合体を5質量%以上溶解する溶媒が好ましく、10質量%以上がより好ましい。具体的には、特開2008−214454号公報の段落番号[0044]に記載の溶媒を使用することができる。
上記の中でも、好ましい溶媒としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレンカーボネート、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、キシレン、メシチレン、ジイソプロピルベンゼンを挙げることができる。
【0094】
組成物が溶媒を含む場合、組成物中の全固形分濃度は、組成物全量に対して、好ましくは1〜30質量%であり、使用目的に応じて適宜調整される。上記範囲内であれば、塗膜の膜厚が適当な範囲となり、塗布液の保存安定性もより優れるものとなる。
【0095】
組成物中には、不純物としての金属含量が充分に少ないことが好ましい。組成物中の金属濃度はICP−MS法等により高感度に測定可能であり、その場合の遷移金属以外の金属含有量は好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。
【0096】
以下、本発明の感光性組成物の各成分について詳細に説明する。
【0097】
[3−1]光重合開始剤
本発明の組成物は、(B)光重合開始剤を含有する。
(B)光重合開始剤を含有することによって感光性が付与された本発明の感光性組成物は、フォトレジスト、カラーレジスト、光学用コーティング材料等に好適に用いることができるようになる。光重合開始剤としては、以下に述べる光重合開始剤として知られているものを用いることができる。
光重合開始剤としては、前記(A)重合体の残存重合性基の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができ、例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましく、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
また、光重合開始剤は、約200〜800nm(300〜450nmがより好ましい。)の範囲内に少なくとも約50の分子吸光係数を有する成分を少なくとも1種含有していることが好ましい。
【0098】
光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0099】
光ラジカル重合開始剤においては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの、など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物類、ロフィンダイマー類、ベンゾイン類、ケタール類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、有機過酸化物、チオ化合物、ジスルフィド化合物類、アゾ化合物、ホウ酸塩類、無機錯体、クマリン類、ケトン化合物(ベンゾフェノン類、チオキサントン類、チオクロマノン類、アントラキノン類)、芳香族オニウム塩、フルオロアミン化合物類、ケトオキシムエーテル、アセトフェノン類(アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノン化合物)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、オキシム誘導体等のオキシム化合物、などが挙げられる。
【0100】
前記トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物、F.C.SchaeferなどによるJ.Org.Chem.;29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物、特開平5−34920号公報記載化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物、などが挙げられる。
【0101】
前記米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物としては、例えば、オキサジアゾール骨格を有する化合物(例えば、2−トリクロロメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−n−ブトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリプロモメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾールなど)などが挙げられる。
【0102】
ベンゾイン類の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
【0103】
ホウ酸塩としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martinらの“Rad Tech’98.Proceeding April”、19〜22頁(1998年,Chicago)等に記載される有機ホウ酸塩記載される化合物があげられる。例えば、前記特開2002−116539号公報の段落番号[0022]〜[0027]記載の化合物が挙げられる。またその他の有機ホウ素化合物としては、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられ、具体例にはカチオン性色素とのイオンコンプレックス類が挙げられる。
【0104】
また、上記以外のラジカル重合開始剤として、アクリジン誘導体(例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9、9’−アクリジニル)ヘプタンなど)、N−フェニルグリシンなど、ポリハロゲン化合物(例えば、四臭化炭素、フェニルトリブロモメチルスルホン、フェニルトリクロロメチルケトンなど)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン、7−ベンゾトリアゾール−2−イルクマリン、また、特開平5−19475号公報、特開平7−271028号公報、特開2002−363206号公報、特開2002−363207号公報、特開2002−363208号公報、特開2002−363209号公報などに記載のクマリン化合物など)、アシルホスフィンオキサイド類(例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルホスフィンオキサイド、LucirinTPOなど)、メタロセン類(例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフロロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフロロホスフェート(1−)など)、特開昭53−133428号公報、特公昭57−1819号公報、同57−6096号公報、及び米国特許第3615455号明細書に記載された化合物などが挙げられる
【0105】
前記ケトン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン、2−エトキシカルボニルベンゾルフェノン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はそのテトラメチルエステル、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン類(例えば、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビスジシクロヘキシルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジヒドロキシエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンジル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、フェナントラキノン、キサントン、チオキサントン、2−クロル−チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、フルオレノン、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノールオリゴマー、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール)、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドンなどが挙げられる。
【0106】
ラジカル重合開始剤としては、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アシルホスフィン化合物、及びオキシム化合物からなる群より選択される化合物が更に好ましい。より具体的には、例えば、特開平10−291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤、及び、既述のオキシム系開始剤、更にオキシム系開始剤として、特開2001−233842号記載の化合物も用いることができる。
【0107】
アミノアセトフェノン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE−907、IRGACURE−369、及び、IRGACURE−379(商品名:いずれもチバジャパン社製)を用いることができる。また、アシルホスフィン系開始剤としては市販品であるIRGACURE−819やDAROCUR−TPO(商品名:いずれもチバジャパン社製)を用いることができる。
【0108】
ヒドロキシアセトフェノン化合物は、下記式(V)で表される化合物であることが好ましい。
【0109】
【化5】

【0110】
式(V)中、Rは水素原子、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜10のアルコキシ基)、又は、2価の有機基を表す。Rが2価の有機基である場合、2個の光活性なヒドロキシアセトフェノン構造(すなわち、一般式(V)で表される化合物から置換基Rを除外した構造)がRを介して連結してなる2量体を表す。R、Rは互いに独立して、水素原子、又は、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基)を表す。また、RとRは結合して環(好ましくは炭素数4〜8の環)を形成していてもよい。
上記Rとしてのアルキル基及びアルコキシ基、R及びRとしてのアルキル基、並びに、RとRとが結合して形成される環は、更に置換基を有していてもよい。
【0111】
ヒドロキシアセトフェノン化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(DAROCURE 1173)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルブタン−1−オン、1−(4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−オクチルフェニル)プロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−メチルチオフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−クロロフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブロモフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ジメチルアミノフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−カルボエトキシフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−
メチル−1−プロパン−1−オン(IRGACURE 2959)などが挙げられる。
また、市販のα−ヒドロキシアセトフェノン化合物として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製からイルガキュア184(IRGACURE 184)、ダロキュア1173(DAROCURE 1173)、イルガキュア127(IRGACURE 127)、イルガキュア2959(IRGACURE 2959)、イルガキュア1800(IRGACURE1800)、イルガキュア1870(IRGACURE1870)及びダロキュア4265(DAROCURE4265)の商品名で入手可能な重合開始剤も使用することができる。
【0112】
アシルホスフィン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE−819、IRGACURE−819DW,DAROCUR−TPO(商品名:いずれもチバジャパン社製)を用いることができる。また特開2009−134098記載のホスフィン系開始剤も適用できる。
【0113】
本発明における光重合開始剤としては、感度、硬化速度の観点からオキシム誘導体等のオキシム化合物が最も好ましい。オキシム化合物としては、特に限定はなく、例えば、特開2000−80068号公報(段落番号0004〜0296)、WO02/100903A1、特開2001−233842号公報、特開2006−342166号公報(段落番号0004〜0264)等に記載のオキシム系化合物が挙げられる。
具体的な例としては、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ペンタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ヘキサンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−ヘプタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(エチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(ブチルフェニルチオ)フェニル]−1,2−ブタンジオン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−メチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−プロプル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−ブチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノンなどが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0114】
これらのうち、露光量、パターン形状、現像残渣、経時安定性、後加熱時の着色の観点から、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン等のオキシム−O−アシル系化合物が特に好ましく、具体的には、CGI−124、CGI−242(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が好ましい。
【0115】
更に、特開2007−231000公報、及び、特開2007−322744公報に記載される環状オキシム化合物も好適に用いることができる。
最も好ましくは、特開2007−269779公報に示される特定置換基を有するオキシム化合物や、特開2009−191061公報に示されるチオアリール基を有するオキシム化合物が挙げられる。
具体的には、オキシム化合物としては、下記式(I)で表される化合物が好ましい。なお、オキシム結合のN−O結合が(E)体のオキシム化合物であっても、(Z)体のオキシム化合物であっても、(E)体と(Z)体との混合物であってもよい。
【0116】
【化6】

【0117】
(式(I)中、R及びBは各々独立に一価の置換基を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表す。)
前記Rで表される一価の置換基としては、一価の非金属原子団であることが好ましい。
前記一価の非金属原子団としては、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環基、アルキルチオカルボニル基、アリールチオカルボニル基等が挙げられる。また、これらの基は、1以上の置換基を有していてもよい。また、前述した置換基は、更に他の置換基で置換されていてもよい。
置換基としてはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、アルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0118】
置換基を有していてもよいアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1−エチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、4−メチルスルファニルフェナシル基、4−フェニルスルファニルフェナシル基、4−ジメチルアミノフェナシル基、4−シアノフェナシル基、4−メチルフェナシル基、2−メチルフェナシル基、3−フルオロフェナシル基、3−トリフルオロメチルフェナシル基、及び、3−ニトロフェナシル基が例示できる。
【0119】
置換基を有していてもよいアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、9−フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o−、m−及びp−トリル基、キシリル基、o−、m−及びp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、並びに、オバレニル基が例示できる。
【0120】
置換基を有していてもよいアシル基としては、炭素数2〜20のアシル基が好ましく、具体的には、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタノイル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、4−メチルスルファニルベンゾイル基、4−フェニルスルファニルベンゾイル基、4−ジメチルアミノベンゾイル基、4−ジエチルアミノベンゾイル基、2−クロロベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、2−メトキシベンゾイル基、2−ブトキシベンゾイル基、3−クロロベンゾイル基、3−トリフルオロメチルベンゾイル基、3−シアノベンゾイル基、3−ニトロベンゾイル基、4−フルオロベンゾイル基、4−シアノベンゾイル基、及び、4−メトキシベンゾイル基が例示できる。
【0121】
置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が好ましく、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、及び、トリフルオロメチルオキシカルボニル基が例示できる。
【0122】
置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基として具体的には、フェノキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基、4−メチルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4−フェニルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルオキシカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルオキシカルボニル基、2−クロロフェニルオキシカルボニル基、2−メチルフェニルオキシカルボニル基、2−メトキシフェニルオキシカルボニル基、2−ブトキシフェニルオキシカルボニル基、3−クロロフェニルオキシカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルオキシカルボニル基、3−シアノフェニルオキシカルボニル基、3−ニトロフェニルオキシカルボニル基、4−フルオロフェニルオキシカルボニル基、4−シアノフェニルオキシカルボニル基、及び、4−メトキシフェニルオキシカルボニル基が例示できる。
【0123】
置換基を有していてもよい複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子若しくはリン原子を含む、芳香族又は脂肪族の複素環が好ましい。
具体的には、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2,3−b]チエニル基、チアントレニル基、フリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H−ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサニリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH−カルバゾリル基、カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、及び、チオキサントリル基が例示できる。
【0124】
置換基を有していてもよいアルキルチオカルボニル基として具体的には、メチルチオカルボニル基、プロピルチオカルボニル基、ブチルチオカルボニル基、ヘキシルチオカルボニル基、オクチルチオカルボニル基、デシルチオカルボニル基、オクタデシルチオカルボニル基、及び、トリフルオロメチルチオカルボニル基が例示できる。
【0125】
置換基を有していてもよいアリールチオカルボニル基として具体的には、1−ナフチルチオカルボニル基、2−ナフチルチオカルボニル基、4−メチルスルファニルフェニルチオカルボニル基、4−フェニルスルファニルフェニルチオカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルチオカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルチオカルボニル基、2−クロロフェニルチオカルボニル基、2−メチルフェニルチオカルボニル基、2−メトキシフェニルチオカルボニル基、2−ブトキシフェニルチオカルボニル基、3−クロロフェニルチオカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルチオカルボニル基、3−シアノフェニルチオカルボニル基、3−ニトロフェニルチオカルボニル基、4−フルオロフェニルチオカルボニル基、4−シアノフェニルチオカルボニル基、及び、4−メトキシフェニルチオカルボニル基が挙げられる。
【0126】
前記Bで表される一価の置換基としては、アリール基、複素環基、アリールカルボニル基、又は、複素環カルボニル基を表す。また、これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。また、前述した置換基は、更に他の置換基で置換されていてもよい。
【0127】
なかでも、特に好ましくは以下に示す構造である。
下記の構造中、Y、X、及び、nは、それぞれ、後述する式(II)におけるY、X、及び、nと同義であり、好ましい例も同様である。
【0128】
【化7】

【0129】
前記Aで表される二価の有機基としては、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のシクロヘキシレン基、炭素数2〜12のアルキニレン基が挙げられる。また、これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。また、前述した置換基は、更に他の置換基で置換されていてもよい。
中でも、Aとしては、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、無置換のアルキレン基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基)で置換されたアルキレン基、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)で置換されたアルキレン基、アリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基、スチリル基)で置換されたアルキレン基が好ましい。
【0130】
前記Arで表されるアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、また、置換基を有していてもよい。置換基としては、先に置換基を有していてもよいアリール基の具体例として挙げた置換アリール基に導入された置換基と同様のものが例示できる。
なかでも、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、置換又は無置換のフェニル基が好ましい。
【0131】
式(I)においては、前記Arと隣接するSとで形成される「SAr」の構造が、以下に示す構造であることが感度の点で好ましい。なお、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
【0132】
【化8】

【0133】
オキシム化合物は、下記式(II)で表される化合物であることが好ましい。
【0134】
【化9】

【0135】
(式(II)中、R及びXは各々独立に一価の置換基を表し、A及びYは各々独立に二価の有機基を表し、Arはアリール基を表し、nは0〜5の整数である。)
式(II)におけるR、A、及びArは、前記式(I)におけるR、A、及びArと同義であり、好ましい例も同様である。
【0136】
前記Xで表される一価の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、複素環基、ハロゲン原子が挙げられる。また、これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。また、前述した置換基は、更に他の置換基で置換されていてもよい。
【0137】
これらの中でも、Xとしては、溶剤溶解性と長波長領域の吸収効率向上の点から、アルキル基が好ましい。
また、式(2)におけるnは、0〜5の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
【0138】
前記Yで表される二価の有機基としては、以下に示す構造が挙げられる。なお、以下に示される基において、「*」は、前記式(II)において、Yと隣接する炭素原子との結合位置を示す。
【0139】
【化10】

【0140】
中でも、高感度化の観点から、下記に示す構造が好ましい。
【0141】
【化11】

【0142】
更にオキシム化合物は、下記式(III)で表される化合物であることが好ましい。
【0143】
【化12】

【0144】
(式(III)中、R及びXは各々独立に一価の置換基を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表し、nは0〜5の整数である。)
式(III)におけるR、X、A、Ar、及び、nは、前記式(II)におけるR、X、A、Ar、及び、nとそれぞれ同義であり、好ましい例も同様である。
【0145】
以下、好適に用いられるオキシム化合物の具体例(B−1)〜(B−10)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0146】
【化13】

【0147】
オキシム化合物は、350nm〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有するものであり、360nm〜480nmの波長領域に吸収波長を有するものであることが好ましく、365nm及び405nmの吸光度が高いものが特に好ましい。
【0148】
オキシム化合物は、365nm又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、3,000〜300,000であることが好ましく、5,000〜300,000であることがより好ましく、10000〜200,000であることが特に好ましい。
化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いることができるが、具体的には、例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Carry−5 spctrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0149】
本発明の組成物の固形分中における光重合開始剤の含有量は、通常、1質量%〜40質量%であり、2質量%〜30質量%であることが好ましく、2質量%〜15質量%であることがより好ましい。
【0150】
[3−2]重合性化合物
本発明の組成物は、更に、重合体(A)とは異なる重合性化合物を含有しても良い。
本発明の組成物が、重合性化合物を含有することにより、パターン膜の耐溶剤性、寸法均一性及び硬度がより向上する傾向となる。
前記重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。
このような化合物は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。
【0151】
これらは、例えばモノマー、プレポリマー(すなわち2量体、3量体、及びオリゴマー)、又はそれらの混合物若しくはそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、又はアミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基、アミノ基、又はメルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能又は多官能のイソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物、及びヒドロキシ基、アミノ基、又はメルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能又は多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基又はエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、又はチオール類との付加反応物も好適である。更に、ハロゲン基又はトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、又はチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、又はビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0152】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、イタコン酸エステル等が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート等がある。
【0153】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0154】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0155】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号各公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号各公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0156】
更に、酸基を含有するモノマーも使用でき、例えば、(メタ)アクリル酸、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートコハク酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートマレイン酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートマレイン酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートフタル酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートフタル酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートテトラヒドロフタル酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートテトラヒドロフタル酸モノエステル等が挙げられる。特に、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステルが現像性・感度の観点から好ましい。
【0157】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0158】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式で表される化合物における水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0159】
一般式 CH=C(R10)COOCHCH(R11)OH
(ただし、R10及びR11は、H又はCHを示す。)
【0160】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号各公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0161】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号各公報記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0162】
これらの重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、組成物の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわちパターン膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。硬化感度の観点から、(メタ)アクリル酸エステル構造を2個以上含有する化合物を用いることが好ましく、3個以上含有する化合物を用いることがより好ましく、4個以上含有する化合物を用いることが最も好ましい。また、硬化感度、及び、未露光部の現像性の観点では、カルボン酸基又はEO変性体構造を含有する化合物が好ましい。また、硬化感度、及び、露光部強度の観点ではウレタン結合を含有することが好ましい。
【0163】
また、組成物中の他の成分(例えば、樹脂、光重合開始剤、顔料)との相溶性、分散性に対しても、重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
【0164】
以上の観点より、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレートEO変性体、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートEO変性体、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートEO変性体、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステルなどが好ましいものとして挙げられ、また、市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ社製)、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社製)、UA−7200(新中村化学社製)が好ましい。
【0165】
中でも、ビスフェノールAジアクリレートEO変性体、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートEO変性体、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートEO変性体、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステルなどが、市販品としては、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社製)がより好ましい。
【0166】
重合性化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0167】
本発明の組成物は、重合性化合物を含有してもしなくて良いが、含有する場合、組成物の固形分中における重合性化合物の含有量は、1質量%〜90質量%であることが好ましく、5質量%〜80質量%であることがより好ましく、10質量%〜70質量%であることが更に好ましい。
【0168】
[3−3]アルカリ可溶性樹脂
本発明の組成物は、更に、アルカリ可溶性樹脂を含有してもよい。アルカリ可溶性樹脂を含有することにより、現像性が向上する。
【0169】
アルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。このうち、更に好ましくは、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものである。
【0170】
アルカリ可溶性樹脂の製造には、例えば、公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
【0171】
アルカリ可溶性樹脂として用いられる線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましく、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等を挙げることができる。
【0172】
アルカリ可溶性樹脂としては、下記一般式(ED)で示される化合物(以下「エーテルダイマー」と称することもある。)を必須とする単量体成分を重合してなるポリマー(a)を用いることも好ましい。
【0173】
【化14】

【0174】
一般式(ED)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、又は、炭化水素基を表す。R及びRとしての炭化水素基は、炭素数1〜15の炭化水素基であることが好ましく、更に置換基を有していても良い。
【0175】
本発明の組成物が前記ポリマー(a)を含有することにより、該組成物を用いて形成された硬化塗膜の耐熱性及び透明性がより向上する。
前記エーテルダイマーを示す前記一般式(ED)中、R及びRで表される置換基を有していてもよい炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、ステアリル基、ラウリル基、2−エチルヘキシル基、等の直鎖状又は分岐状のアルキル基;フェニル基等のアリール基;シクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、ジシクロペンタジエニル基、トリシクロデカニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、2−メチル−2−アダマンチル基、等の脂環式基;1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基等のアルコキシ基で置換されたアルキル基;ベンジル基等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも特に、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、等のような酸や熱で脱離しにくい1級又は2級炭素の置換基が耐熱性の点で好ましい。
【0176】
前記エーテルダイマーの具体例としては、例えば、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。これらの中でも特に、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。これらエーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記一般式(ED)で示される化合物由来の構造体は、その他の単量体を共重合させてもよい。
【0177】
これらの中では、特に、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体やベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好適である。この他、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを共重合したもの、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクレート/メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0178】
また、本発明における組成物の架橋効率を向上させるために、重合性基を有したアルカリ可溶性樹脂を使用してもよい。
重合性基を有したアルカリ可溶性樹脂としては、アリル基、(メタ)アクリル基、アリルオキシアルキル基等を側鎖に含有したアルカリ可溶性樹脂等が有用である。これら重合性基を含有するアルカリ可溶性樹脂としては、予めイソシアネート基とOH基を反応させ、未反応のイソシアネート基を1つ残し、かつ(メタ)アクリロイル基を含む化合物とカルボキシル基を含むアクリル樹脂との反応によって得られるウレタン変性した重合性二重結合含有アクリル樹脂、カルボキシル基を含むアクリル樹脂と分子内にエポキシ基及び重合性二重結合を共に有する化合物との反応によって得られる不飽和基含有アクリル樹脂、酸ペンダント型エポキシアクリレート樹脂、OH基を含むアクリル樹脂と重合性二重結合を有する2塩基酸無水物を反応させた重合性二重結合含有アクリル樹脂、OH基を含むアクリル樹脂とイソシアネートと重合性基を有する化合物を反応させた樹脂、特開2002-229207号公報及び特開2003-335814号公報に記載されるα位又はβ位にハロゲン原子或いはスルホネート基などの脱離基を有するエステル基を側鎖に有する樹脂を塩基性処理を行うことで得られる樹脂などが好ましい。
【0179】
アルカリ可溶性樹脂の酸価としては好ましくは30mgKOH/g〜200mgKOH/g、より好ましくは50mgKOH/g〜150mgKOH/gであることが好ましく、70〜120mgKOH/gであることが最も好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、2,000〜50,000が好ましく、5,000〜30,000が更に好ましく、7,000〜20,000が最も好ましい。
【0180】
本発明の組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含有してもしなくても良いが、含有する場合、アルカリ可溶性樹脂の組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分に対して、1〜15質量%が好ましく、より好ましくは、2〜12質量%であり、特に好ましくは、3〜10質量%である。これにより水ハジキ性、現像欠陥性能が向上する。
【0181】
[3−4]添加剤
更に、組成物には、組成物を用いて得られる膜の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、コロイド状シリカ、界面活性剤、密着促進剤、空孔形成剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、増感剤などの添加剤を添加してもよい。
【0182】
<コロイド状シリカ>
組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、いかなるコロイド状シリカを含有していてもよい。例えば、高純度の無水ケイ酸を親水性有機溶媒又は水に分散した分散液であり、通常、平均粒径5〜30nm、好ましくは10〜20nm、固形分濃度が5〜40質量%程度のものである。
【0183】
<界面活性剤>
組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、いかなる界面活性剤を含有していてもよい。例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、更にシリコーン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が挙げられる。使用する界面活性剤は、一種類のみでもよいし、二種類以上を併用してもよい。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0184】
本発明の組成物は、界面活性剤を含有してもしなくても良いが、含有する場合、界面活性剤の添加量は、組成物全量に対して、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0185】
なお、シリコーン系界面活性剤とは、少なくとも1原子のSi原子を含む界面活性剤である。シリコーン系界面活性剤としては、いかなるシリコーン系界面活性剤でもよく、アルキレンオキシド及びジメチルシロキサンを含む構造であることが好ましい。下記化学式を含む構造であることが更に好ましい。
【0186】
【化15】

【0187】
上記式中Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基であり、xは1〜20の整数であり、m、nはそれぞれ独立に2〜100の整数である。複数のRは同じでも異なっていてもよい。
【0188】
シリコーン系界面活性剤としては、例えばBYK306、BYK307(ビックケミー社製)、SH7PA、SH21PA、SH28PA、SH30PA(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、TroysolS366(トロイケミカル社製)等を挙げることができる。
【0189】
ノニオン系界面活性剤としては、いかなるノニオン系界面活性剤でもよい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンジアルキルエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリオキシエチレン類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等を挙げることができる。
【0190】
含フッ素系界面活性剤としては、いかなる含フッ素系界面活性剤でもよい。例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド、PF656(OMNOVA社製)、PF6320(OMNOVA社製)、F−475(DIC株式会社製)等を挙げることができる。
【0191】
アクリル系界面活性剤としては、いかなるアクリル系界面活性剤でもよい。例えば、(メタ)アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
【0192】
<密着促進剤>
組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、いかなる密着促進剤を含有していてもよい。密着促進剤としては、例えば、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、1−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノグリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。他には、特開2008−243945号公報の段落番号[0048]に記載の化合物が使用される。
本発明の組成物は、密着促進剤を含有してもしなくても良いが、含有する場合、密着促進剤の好ましい使用量は、特に制限されないが、通常、組成物中の全固形分に対して、10質量%以下、特に0.03〜5質量%であることが好ましい。
【0193】
<空孔形成剤>
本発明では、膜の機械強度の許す範囲内で、空孔形成因子を使用して膜を多孔質化し、低屈折率化を図ることができる。空孔形成因子となる空孔形成剤としては特に限定されないが、非金属化合物が好適に用いられ、塗布液で使用される溶剤との溶解性、絶縁膜用樹脂又はその前駆体との相溶性を同時に満たすことが必要である。
空孔形成剤としてはポリマーも使用することができる。空孔形成剤として使用できるポリマーとしては、例えば、ポリビニル芳香族化合物(ポリスチレン、ポリビニルピリジン、ハロゲン化ポリビニル芳香族化合物など)、ポリアクリロニトリル、ポリアルキレンオキシド(ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドなど)、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリウレタン、ポリメタクリレート(ポリメチルメタクリレートなど)又はポリメタクリル酸、ポリアクリレート(ポリメチルアクリレートなど)及びポリアクリル酸、ポリジエン(ポリブタジエン及びポリイソプレンなど)、ポリビニルクロライド、ポリアセタール、及びアミンキャップドアルキレンオキシド、その他、ポリフェニレンオキシド、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリテトラヒドロフラン、ポリシクロヘキシルエチレン、ポリエチルオキサゾリン、ポリビニルピリジン、ポリカプロラクトン等であってもよい。
【0194】
なかでも、得られる膜がより低屈折率になること、硬化後の膜面状が均一であること、及び濁りなく透明であることから、ポリスチレン、ポリアルキレンオキシド、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリレート、ポリメタクリル酸、ポリアセタール、又はポリペルオキシドが好ましく、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアルキレンオキシド、ポリアセタールが特に好ましい。
【0195】
ポリスチレンとしては、例えば、アニオン性重合ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、未置換及び置換ポリスチレン(例えば、ポリ(Cx−メチルスチレン))が挙げられ、未置換ポリスチレンが好ましい。
ポリメタクリレートとしては、3級エステルを有するポリメタクリレートが好ましい。ポリメタクリレートの具体例としては、例えば、下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0196】
【化16】

【0197】
ポリアルキレンオキシドとしては、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドアルキルエーテル、ポリエチレンオキシドアルキルエステル、ポリプロピレンオキシド、ポリプロピレンオキシドアルキルエーテル、ポリプロピレンオキシドアルキルエステル、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドアルキルエーテル、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドアルキルエステル、ポリブチレンオキシドなどが挙げられる。
ポリアセタールとしては、ホルムアルデヒドの単独重合によって得られる、いわゆるポリアセタールホモポリマーであっても、トリオキサンと環状エーテル及び/又は環状ホルマール化合物の重合によって得られるポリアセタールコポリマーであっても、ジビニルエーテルとジオールの重合によって得られるポリアセタールコポリマーの何れであってもよい。ポリアセタールの具体例としては、例えば、下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0198】
【化17】

【0199】
空孔形成剤の沸点又は分解温度として、熱重量分析(窒素気流下,昇温速度20℃/min)における50%重量減少温度が、得られる膜がより低屈折率になること、硬化時の膜収縮が抑制される点から、好ましくは180〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。
空孔形成剤のポリスチレン換算数平均分子量としては特に制限されないが、膜中での相分離を抑制し、透明で凹凸の無い膜を得られる点から、好ましくは100〜50,000、より好ましくは100〜30,000、特に好ましくは150〜2,5000である。
本発明の組成物は、空孔形成剤を含有してもしなくても良いが、含有する場合、空孔形成剤の添加量は特に限定されないが、組成物の全固形分に対して、好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは1.0〜40質量%、特に好ましくは5.0〜30質量%である。
【0200】
また、非露光領域のアルカリ溶解性を促進し、組成物の現像性の更なる向上を目的に、該組成物に有機カルボン酸、好ましくは分子量1000以下の低分子量有機カルボン酸の添加してもよい。
具体的には、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ジエチル酢酸、エナント酸、カプリル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸等の脂肪族トリカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、ヘメリト酸、メシチレン酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、ピロメリト酸等の芳香族ポリカルボン酸;フェニル酢酸、ヒドロアトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、マンデル酸、フェニルコハク酸、アトロパ酸、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸ベンジル、シンナミリデン酢酸、クマル酸、ウンベル酸等のその他のカルボン酸が挙げられる。
本発明の組成物は、有機カルボン酸を含有してもしなくても良いが、含有する場合、有機カルボン酸の添加量は特に限定されないが、組成物の全固形分に対して、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜30質量%である。
【0201】
組成物の製造方法は特に限定されず、溶媒を含む場合、所定量の重合体を溶媒に添加して、攪拌することにより得られる。
【0202】
上記の組成物はフィルターろ過により、不溶物、ゲル状成分等を除いてから膜形成に用いることが好ましい。その際に用いるフィルターの孔径は0.05〜2.0μmが好ましく、孔径0.05〜1.0μmがより好ましく、孔径孔径0.05〜0.5μmが最も好ましい。フィルターの材質はポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン及びナイロンがより好ましい。
【0203】
[4]パターン形成方法
本発明のパターン形成方法は、感光性膜を形成する工程、前記感光性膜を露光する工程、及び、現像してパターン膜を得る現像工程を含む。
ここで、感光性膜は、本発明の感光性組成物から形成される。
また、本発明は、このパターン形成方法により得られるパターン膜にも関する。
本発明の感光性組成物から形成される感光性膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、感光性組成物をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法、スプレー法、バー塗布法等の任意の方法により、シリコンウエハ、SiO2ウエハ、SiNウエハ、ガラス、プラスチックフィルム、マイクロレンズなどの基板に塗布した後、溶媒を必要に応じて加熱処理で除去して塗膜(感光性膜)を形成し、プリベーク処理を施すことにより形成することができる。
【0204】
基板に塗布する方法としては、スピンコーティング法、スキャン法が好ましい。特に好ましくは、スピンコーティング法である。スピンコーティング法については、市販の装置を使用できる。例えば、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製)、D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業製)等が好ましく使用できる。
【0205】
スピンコート条件としてはいずれの回転速度でもよいが、膜の面内均一性の観点より、300mmシリコン基板においては1300rpm程度の回転速度が好ましい。また組成物溶液の吐出方法においては、回転する基板上に組成物溶液を吐出する動的吐出、静止した基板上へ組成物溶液を吐出する静的吐出のいずれでもよいが、膜の面内均一性の観点より、動的吐出が好ましい。また、組成物の消費量を抑制する観点より、予備的に組成物の主溶媒のみを基板上に吐出して液膜を形成した後、その上から組成物を吐出するという方法を用いることもできる。スピンコート時間については特に制限はないが、スループットの観点から180秒以内が好ましい。また、基板の搬送の観点より、基板エッジ部の膜を残存させないための処理(エッジリンス、バックリンス)をすることも好ましい。
【0206】
プリベーク処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した加熱方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。好ましくは、ホットプレート加熱、ファーネスを使用した加熱方法である。ホットプレートとしては市販の装置を好ましく使用でき、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製)、D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業製)等が好ましく使用できる。ファーネスとしては、Cxシリーズ(東京エレクトロン製)等が好ましく使用できる。上記プリベークの条件としては、ホットプレートやオーブンを用いて、70℃〜150℃で、0.5分間〜15分間程度加熱する条件が挙げられる。
【0207】
感光性膜を露光する工程は、必要に応じてマスクを介して行われる。
この露光に適用し得る活性光線又は放射線としては、赤外光、g線、h線、i線、KrF光、ArF光、X線、電子線等を挙げることができる。露光量、感度、解像度の観点から、i線、KrF光、ArF光、電子線が好ましく、更に汎用性の観点から、i線、KrF光が最も好ましい。照射光にi線を用いる場合、100mJ/cm〜10000mJ/cmの露光量で照射することが好ましい。KrF光を用いる場合は、30mJ/cm〜300mJ/cmの露光量で照射することが好ましい。
また、露光した組成物層は、必要に応じて、次の現像処理前にホットプレートやオーブンを用いて、70℃〜180℃で、0.5分間〜15分間程度加熱することができる。
【0208】
続いて、露光後の組成物層に対し、現像液にて現像を行う(現像工程)。これにより、ネガ型若しくはポジ型のパターン(レジストパターン)を形成することができる。
【0209】
ポジ型現像を行う際には、アルカリ現像液を使用することが好ましい。
ポジ型現像を行う際に使用するアルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチ
ルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
特に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%質量の水溶液が望ましい。
【0210】
ポジ型現像の後に行うリンス処理におけるリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0211】
ネガ型現像を行う際には、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)を使用することが好ましい。
有機系現像液としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。
ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルー3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等を挙げることができる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。
エーテル系溶剤としては、例えば、上記グリコールエーテル系溶剤の他、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
すなわち、有機系現像液に対する有機溶剤の使用量は、現像液の全量に対して、90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
特に、有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を含有する現像液であるのが好ましい。
【0212】
有機系現像液の蒸気圧は、20℃に於いて、5kPa以下が好ましく、3kPa以下が更に好ましく、2kPa以下が特に好ましい。有機系現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。
5kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
特に好ましい範囲である2kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0213】
有機系現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号
明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0214】
なお、本発明は、有機系現像液による現像の前又は後に、アルカリ現像液による現像を行ってもよい。
【0215】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
上記各種の現像方法が、現像装置の現像ノズルから現像液を感光性膜に向けて吐出する工程を含む場合、吐出される現像液の吐出圧(吐出される現像液の単位面積あたりの流速)は好ましくは2mL/sec/mm以下、より好ましくは1.5mL/sec/mm以下、更に好ましくは1mL/sec/mm以下である。流速の下限は特に無いが、スループットを考慮すると0.2mL/sec/mm以上が好ましい。
吐出される現像液の吐出圧を上記の範囲とすることにより、現像後のレジスト残渣に由来するパターンの欠陥を著しく低減することができる。
このメカニズムの詳細は定かではないが、恐らくは、吐出圧を上記範囲とすることで、現像液が感光性膜に与える圧力が小さくなり、感光性膜・パターン膜が不用意に削られたり崩れたりすることが抑制されるためと考えられる。
なお、現像液の吐出圧(mL/sec/mm)は、現像装置中の現像ノズル出口における値である。
【0216】
現像液の吐出圧を調整する方法としては、例えば、ポンプなどで吐出圧を調整する方法や、加圧タンクからの供給で圧力を調整することでを変える方法などを挙げることができる。
【0217】
また、現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0218】
現像の後には、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
【0219】
現像後のリンス工程に用いるリンス液としては、パターン膜を溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。前記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。より好ましくは、現像の後に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。更により好ましくは、現像の後に、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。更により好ましくは、現像の後に、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。特に好ましくは、現像の後に、炭素数5以上の1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。ここで、現像後のリンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、tert―ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、4−メチルー2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、シクロペンタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノールなどを用いることができ、特に好ましい炭素数5以上の1価アルコールとしては、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、4−メチルー2−ペンタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノールなどを用いることができる。
【0220】
前記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0221】
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。
【0222】
現像後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃に於いて0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下が更に好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が最も好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0223】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0224】
リンス工程においては、現像を行ったウェハを前記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程は、通常40〜160℃、好ましくは70〜95℃で、通常10秒〜3分、好ましくは30秒から90秒間行う。
【0225】
現像工程後、必要に応じて、形成されたパターン膜に対し後加熱及び/又は後露光を行い、パターン膜の硬化を更に促進させてもよい(硬膜処理による後硬化工程)。
これにより、耐光性、耐気候性、膜強度が向上し、更に低屈折率性、低誘電率性も向上させることができる場合がある。
【0226】
硬膜処理とは、基板上のパターン膜を更に硬化し、膜に溶媒耐性などを、より与えることを意味する。硬膜の方法としては、加熱処理(焼成)することが好ましい。例えば、重合体中に残存する重合性基の後加熱時の重合反応が利用できる。この後加熱処理の条件は、好ましくは100〜600℃、より好ましくは200〜500℃、特に好ましくは200℃〜450℃で、好ましくは1分〜3時間、より好ましくは1分〜2時間、特に好ましくは1分〜1時間の範囲である。後加熱処理は数回に分けて行ってもよい。
【0227】
また、本発明では加熱処理ではなく、光照射や放射線照射などの高エネルギー線を照射することで、重合体中に、依然、残存する重合性基間の重合反応を起こして硬膜してもよい。高エネルギー線とは、電子線、紫外線、X線などが挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
高エネルギー線として、電子線を使用した場合のエネルギーは0.1〜50keVが好ましく、より好ましくは0.2〜30keV、特に好ましくは0.5〜20keVである。電子線の総ドーズ量は好ましくは0.01〜5μC/cm2 、より好ましくは0.01〜2μC/cm2 、特に好ましくは0.01〜1μC/cm2である。電子線を照射する際の基板温度は0〜500℃が好ましく、より好ましくは20〜450℃、特に好ましくは20〜400℃である。圧力は好ましくは0〜133kPa、より好ましくは0〜60kPa、特に好ましくは0〜20kPaである。
重合体の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、電子線との相互作用で発生するプラズマ、電磁波、化学種との反応を目的に酸素、炭化水素、アンモニアなどのガスを添加してもよい。電子線照射は複数回行ってもよく、この場合は電子線照射条件を毎回同じにする必要はなく、毎回異なる条件で行ってもよい。
【0228】
高エネルギー線として紫外線を用いてもよい。紫外線を用いる際の照射波長領域は160〜400nmが好ましく、その出力は基板直上において0.1〜2000mWcm−2が好ましい。紫外線照射時の基板温度は250〜450℃が好ましく、より好ましくは250〜400℃、特に好ましくは250〜350℃である。本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、その際の圧力は0〜133kPaが好ましい。
【0229】
加熱処理と光照射や放射線照射などの高エネルギー線処理照射を、同時に又は順次行うことにより硬膜してもよい。
【0230】
膜厚は、乾燥膜厚として、1回塗りで厚さ0.05〜1.5μm程度、2回塗りでは厚さ0.1〜3μm程度の塗膜を形成することができる。
重合体のかご状シルセスキオキサン構造が焼成時に分解しないために、組成物及び膜の製造中にSi原子に求核攻撃する基(水酸基、シラノール基など)が実質的に存在しないことが好ましい。
【0231】
本発明の感光性組成物は、上記したように種々の用途に用いることができる。例えば、その用途としては、絶縁膜又は反射防止膜を作製するために使用することが好ましい。
よって、本発明は、上記した本発明のパターン形成方法により得られるパターン膜である反射防止膜にも関する。
また、本発明は、上記した本発明のパターン形成方法により得られるパターン膜である絶縁膜にも関する。
更に、本発明は、上記反射防止膜を有する光学デバイスにも関する。本発明は、上記絶縁膜を有する電子デバイスにも関する。
以下、このような絶縁膜、及び、低屈折率膜(例えば、反射防止膜)について詳述する。ただし、絶縁膜又は低屈折率膜における下記の各種物性の好ましい範囲は、特に絶縁膜又は低屈折率膜の用途においては好ましい範囲であるものの、その用途に限られたものではない。
【0232】
<絶縁膜>
上述した組成物から得られる絶縁膜の厚さは、特に限定されないが、0.005〜10μmであることが好ましく、0.01〜5.0μmであることがより好ましく、0.01〜1.0μmであることが更に好ましい。
ここで、本発明の絶縁膜の厚さは、光学干渉式膜厚測定器にて任意の3箇所以上を測定した場合の単純平均値を意味するものとする。
【0233】
上述の本発明の方法により得られる絶縁膜の比誘電率は、使用する材料によって異なるが、測定温度25℃において、比誘電率が2.50以下であることが好ましく、1.80〜2.40であることがより好ましい。
【0234】
本発明の絶縁膜のヤング率は、使用する材料によって異なるが、25℃において2.0〜15.0GPaであることが好ましく、3.0〜15.0GPaであることがより好ましい。
【0235】
上述した膜形成用組成物から得られる膜は好ましくは多孔質膜であり、多孔質膜中の空孔の空孔分布曲線における最大ピークを示す空孔直径(以後、最大分布直径とも称する)は5nm以下であることが好ましい。最大分布直径が5nm以下であると、より優れた機械的強度と比誘電率特性との両立が可能となる。
最大分布直径は、3nm以下がより好ましい。なお、最大分布直径の下限は、特に制限されないが、公知の測定装置により測定可能な下限として0.5nmが挙げられる。
なお、最大分布直径とは、窒素ガス吸着法により得られた空孔分布曲線における最大ピークを示す空孔直径を意味する。
【0236】
本発明の組成物を使用して得られる絶縁膜は、半導体用層間絶縁膜として使用する際、その配線構造において、配線側面にはメタルマイグレーションを防ぐためのバリア層があってもよい。また、配線や層間絶縁膜の上面底面にはCMP(化学的機械的研磨)での剥離を防ぐキャップ層、層間密着層の他、エッチングストッパー層等があってもよく、更には層間絶縁膜の層を必要に応じて他種材料で複数層に分けてもよい。
【0237】
本発明の絶縁膜は、他の含Si絶縁膜又は有機膜と積層構造を形成させて用いてもよい。炭化水素系の膜と積層して用いることが好ましい。
【0238】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる絶縁膜は、銅配線又はその他の目的でエッチング加工をすることができる。エッチングとしては、ウェットエッチング、ドライエッチングのいずれでもよいが、ドライエッチングが好ましい。ドライエッチングは、アンモニア系プラズマ、フルオロカーボン系プラズマのいずれもが適宜使用できる。これらプラズマにはArだけでなく、酸素、窒素、水素、ヘリウム等のガスを用いることができる。また、エッチング加工後に、加工に使用したフォトレジスト等を除く目的でアッシングすることもでき、更にはアッシング時の残渣を除くため、洗浄することもできる。
【0239】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる絶縁膜は、銅配線加工後に、銅めっき部を平坦化するためCMPをすることができる。CMPスラリー(薬液)としては,市販のスラリー(例えば、フジミ製、ロデールニッタ製、JSR製、日立化成製等)を適宜使用できる。また、CMP装置としては市販の装置(アプライドマテリアル社製,荏原製作所製等)を適宜使用することができる。更にCMP後のスラリー残渣除去のため、洗浄することができる。
【0240】
<用途>
本発明の絶縁膜は、多様の目的に使用することができ、特に電子デバイスへ好適に用いることができる。電子デバイスとは、半導体装置や、磁気記録ヘッドなどを含めた広範な電子機器を意味する。例えば、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、エッチングストッパー膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することができる。また、光学装置用の表面保護膜、反射防止膜、位相差膜としても用いることができる。
【0241】
<低屈折率膜>
上述した組成物を用いて得られるパターン膜は、優れた低屈折率性を示す。具体的には、パターン膜の屈折率(波長633nm、測定温度25℃)は、1.35以下であることが好ましく、1.27〜1.35であることがより好ましく、1.27〜1.33であることが特に好ましい。上記範囲内であれば、後述する反射防止膜として有用である。
【0242】
組成物を用いて得られるパターン膜は、膜内に多数の空孔を有しているため、優れた低屈折率性を示す。具体的には、得られる膜の膜密度が、0.7〜1.25g/cm、好ましくは0.7〜1.2g/cm、更に好ましくは0.8〜1.2g/cmである。膜密度が0.7g/cm未満では、得られる膜の機械的強度が劣る場合があり、一方、1.25g/cmを超えると、耐熱性に劣る場合がある。なお、膜密度の測定は、X線反射率法(XRR)など公知の測定装置により実施できる。
【0243】
組成物を用いて得られるパターン膜は、高温条件下にて、屈折率の変化が小さく、優れた耐熱性を示す。具体的には、得られた膜を200℃以上の高温条件下に2時間放置した際の、放置前と放置後の屈折率(波長633nm)の変化値(放置後の屈折率―放置前の屈折率)が0.006未満であることが好ましく、0.004未満であることがより好ましく、0.002未満であることが特に好ましい。
【0244】
組成物を用いて得られるパターン膜は、高温多湿環境下にて、屈折率の変化が小さく、優れた耐熱性を示す。具体的には、得られたパターン膜を110℃、湿度95%にて12時間放置した際の、放置前と放置後の屈折率(波長633nm)の変化値(放置後の屈折率―放置前の屈折率)が0.01以下であることが好ましい。
また、上記組成物を用いて得られるパターン膜は、該パターン膜が形成される基板との密着性に優れる。
【0245】
<反射防止膜>
上述した本発明の組成物を用いて得られるパターン膜の好適な使用態様として、反射防止膜が挙げられる。特に、光学デバイス(例えば、イメージセンサ用マイクロレンズ、プラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスなど)用の反射防止膜として好適である。
反射防止膜として使用した場合の反射率は低いほど好ましい。具体的には、450〜650nmの波長領域での鏡面平均反射率が3%以下であることが好ましく、2%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。なお、下限値は小さければ小さいほど好ましく0である。
反射防止膜のヘイズは、3%以下であることが好ましく、1%以下であることが更に好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。なお、下限値は小さければ小さいほど好ましく0である。
【0246】
上述した膜を単層型の反射防止膜として用いる場合には、透明基板の屈折率をnGとすると、反射防止膜の屈折率nは√nG、すなわち透明基板の屈折率に対して1/2乗であることが好ましい。例えば、光学ガラスの屈折率は1.47〜1.92(波長633nm、測定温度25℃)であるので、その光学ガラス上に形成される単層の反射防止膜のnは1.21〜1.38であることが好ましい。なお、その際の反射防止膜の膜厚は10nm〜10μmであることが好ましい。
【0247】
上述した膜を、多層型の反射防止膜として用いる場合には、該膜を低屈折率層として使用し、例えば、その膜の下に、高屈折率層、ハードコート層、及び透明基板を含むことができる。このとき、基板の上に、ハードコート層を設けずに、直接、高屈折率層を形成してもよい。また、高屈折率層と低屈折率層の間、又は、高屈折率層とハードコート層の間に、更に中屈折率層を設けてもよい。
以下に、多層型の場合の各層について詳述する。
【0248】
(1)低屈折率層
低屈折率層は、上述のように本発明の組成物を用いて得られるパターン膜から構成される。低屈折率層の屈折率及び厚さについて説明する。
【0249】
(i)屈折率
本発明の組成物を用いて得られるパターン膜の屈折率(波長633nm、測定温度25℃)、即ち、低屈折率膜(低屈折率層ともいう)の屈折率を1.35以下とすることが好ましい。この理由は、低屈折率膜の屈折率が1.35以下であることにより、高屈折率膜(高屈折率層ともいう)と組み合わせた場合に、反射防止効果を確実に発現させることができるためである。
低屈折率膜の屈折率を1.33以下とするのがより好ましく、1.32以下とするのが更に好ましい。なお、低屈折率膜を複数層設ける場合には、そのうちの少なくとも一層が上述した範囲内の屈折率の値を有していればよい。
【0250】
また、低屈折率層を設ける場合、より優れた反射防止効果が得られることから、高屈折率層との間の屈折率差を0.05以上の値とするのが好ましい。低屈折率層と、高屈折率層との間の屈折率差が0.05以上であることにより、これらの反射防止膜層での相乗効果が得られやすく、反射防止効果がより確実に得られやすい。従って、低屈折率層と、高屈折率層との間の屈折率差を0.1〜0.8の範囲内の値とするのがより好ましく、0.15〜0.7の範囲内の値とするのが更に好ましい。
【0251】
(ii)厚さ
低屈折率層の厚さについても特に制限されるものではないが、例えば、20〜300nmであることが好ましい。低屈折率層の厚さが20nm以上となると、下地としての高屈折率膜に対する密着力が確実に得られ、一方、厚さが300nm以下となると、光干渉が生じにくく、反射防止効果がより確実に得られやすい。従って、低屈折率層の厚さを20〜250nmとするのがより好ましく、20〜200nmとするのが更に好ましい。なお、より高い反射防止性を得るために、低屈折率層を複数層設けて多層構造とする場合には、その合計した厚さを20〜300nmとすればよい。
【0252】
(2)高屈折率層
高屈折率層を形成するための硬化性組成物としては、特に制限されるものでないが、膜形成成分として、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、シアネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シロキサン樹脂等の一種単独又は二種以上の組み合わせを含むことが好ましい。これらの樹脂であれば、高屈折率層として、強固な薄膜を形成することができ、結果として、反射防止膜の耐擦傷性を著しく向上させることができる。
しかしながら、通常、これらの樹脂単独での屈折率は1.45〜1.62であり、高い反射防止性能を得るには十分で無い場合がある。そのため、高屈折率の無機粒子、例えば金属酸化物粒子を配合することにより、屈折率1.70〜2.20とすることが好ましい。また、硬化形態としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化できる硬化性組成物を用いることができるが、より好適には生産性の良好な紫外線硬化性組成物が用いられる。
【0253】
高屈折率層の厚さは特に制限されないが、例えば、20〜30,000nmであることが好ましい。高屈折率層の厚さが20nm以上となると、低屈折率層と組み合わせた場合に、反射防止効果や基板に対する密着力がより確実に得られやすく、一方、厚さが30,000nm以下となると、光干渉が生じにくく、反射防止効果がより確実に得られやすい。従って、高屈折率層の厚さを20〜1,000nmとするのがより好ましく、50〜500nmとするのが更に好ましい。また、より高い反射防止性を得るために、高屈折率層を複数層設けて多層構造とする場合には、その合計した厚さを20〜30,000nmとすればよい。なお、高屈折率層と基板との間にハードコート層を設ける場合には、高屈折率層の厚さを20〜300nmとすることができる。
【0254】
(3)ハードコート層
本発明の反射防止膜に用いるハードコート層の構成材料については特に制限されるものでない。このような材料としては、シロキサン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の一種単独又は二種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0255】
また、ハードコート層の厚さについても特に制限されるものではないが、1〜50μmとするのが好ましく、5〜10μmとするのがより好ましい。ハードコート層の厚さが1μm以上となると、反射防止膜の基板に対する密着力をより確実に向上しやすく、一方、厚さが50μm以下であると、均一に形成しやすい。
【0256】
(4)基板
本発明の反射防止膜に用いる基板の種類は特に制限されるものではないが、例えば、ガラス、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース樹脂(TAC)等からなる透明基板及びシリコンウエハを挙げることができる。これらの基板を含む反射防止膜とすることにより、カメラのレンズ部、テレビ(CRT)の画面表示部、液晶表示装置におけるカラーフィルターあるいは撮影素子等の広範な反射防止膜の利用分野において、優れた反射防止効果を得ることができる。
【0257】
本発明の組成物を使用して得られるパターン膜は、光学デバイス用の表面保護膜、位相差膜としても用いることができる。
【実施例】
【0258】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により制約されるものではない。
【0259】
以下のGPC測定は、Waters2695及びShodex製GPCカラムKF−805L(カラム3本を直結)を使用し、カラム温度40℃、試料濃度0.5質量%のテロラヒドロフラン溶液を50μl注入し、溶出溶媒としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流量でフローさせ、RI検出装置(Waters2414)及びUV検出装置(Waters2996)にて試料ピークを検出することでおこなった。M及びMは標準ポリスチレンを用いて作製した検量線を用いて計算した。
【0260】
<化合物I−12の合成>
電子グレード濃塩酸2000g、n-ブタノール12L、イオン交換水4000gの混合溶液を10℃に冷却し、これにビニルトリエトキシシラン840gとメチルトリエトキシシラン786gの混合溶液を20分間かけて滴下した。その後更に、25℃で18時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、電子グレードメタノール300mLで洗浄した。洗浄後、結晶をテトラヒドロフラン4000mLに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール4000mL、続いてイオン交換水8000mLを滴下した。析出した結晶を濾取、乾燥して白色固体の目的物(化合物I−12)105gを得た。H−NMR測定(300MHz,CDCl)の結果、6.08〜5.88及び0.28〜0.18ppmに多重線が観測され、この積分比からビニル/メチル比=3.9/4.1と算出された。上記式(3)においては、xが3.9、yが4.1であり、x+y=8.0であった。なお、得られるシルセスキオキサン類は、上記一般式(Q−6)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物の混合物であった。
【0261】
<化合物I−13の合成>
電子グレード濃塩酸136g、n−ブタノール1L、イオン交換水395gの混合溶液
を10℃に冷却し、これにビニルトリエトキシシラン78.3gとメチルトリエトキシシラン73.3gの混合溶液を15分間かけて滴下した。その後更に、25℃で18時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、電子グレードメタノール100mLで洗浄した。洗浄後、結晶をテトラヒドロフラン500mLに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール200mL、続いてイオン交換水200mLを滴下した。析出した結晶を濾取、乾燥して白色固体の目的物(化合物I−k)7.8gを得た。H−NMR測定(300MHz,CDCl)の結果、6.08〜5.88及び0.28〜0.18ppmに多重線が観測され、この積分比からビニル/メチル比=4.0/4.0と算出された。上記式(3)においては、xが4.0、yが4.0であり、x+y=8.0であった。
ガスクロマトグラフィーで分析した結果(分析条件:SE−30キャピラリカラム、注入温度160℃、100℃で2分間保持後8℃/分で260℃まで昇温、検出器FID)、得られたシルセスキオキサン類はビニル/メチル比が4/4の一般式(6)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物を主成分とする混合物(x/y(モル%):8/0(1%)、7/1(2%)、6/2(11%)、5/3(22%)、4/4(28%)、3/5(22%)、2/6(11%)、1/7(3%))であることがわかった。なお、得られるシルセスキオキサン類は、上記一般式(Q−6)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物の混合物であった。
また、かご状シルセスキオキサン化合物(A)の含有量は、全シルセスキオキサン類に対して、72モル%であった。
【0262】
<化合物I−14の合成>
電子グレード濃塩酸2000g、n-ブタノール12L、イオン交換水4000gの混合溶液を10℃に冷却し、これにビニルトリエトキシシラン944gとメチルトリエトキシシラン688gの混合溶液を20分間かけて滴下した。その後更に、25℃で18時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、電子グレードメタノール300mLで洗浄した。洗浄後、結晶をテトラヒドロフラン1500mLに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール1500mL、続いてイオン交換水1500mLを滴下した。析出した結晶を濾取、乾燥して白色固体の目的物(化合物I−14)108gを得た。H−NMR測定(300MHz,CDCl)の結果、6.08〜5.88及び0.28〜0.18ppmに多重線が観測され、この積分比からビニル/メチル比=4.4/3.6と算出された。上記式(3)においては、xが4.4、yが3.6であり、x+y=8.0であった。なお、得られるシルセスキオキサン類は、上記一般式(Q−6)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物の混合物であった。
【0263】
<化合物I−25の合成>
電子グレード濃塩酸271g、n-ブタノール1238g、イオン交換水541gの混合溶液を10℃に冷却し、これにビニルトリエトキシシラン120gとプロピルトリメトキシシラン120gの混合溶液を10分間かけて滴下した。その後更に、25℃で18時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、電子グレードメタノール100mLで洗浄した。洗浄後、結晶をテトラヒドロフラン200mLに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール217mL、続いてイオン交換水344mLを滴下した。析出した結晶を濾取、乾燥して白色固体の目的物(化合物I−25)7gを得た。H−NMR測定(300MHz,CDCl)の結果、6.13〜5.84、1.54〜1.43、1.26〜0.90及び0.73〜0.60ppmに多重線が観測され、ビニル/プロピル比=4.0/4.0と算出された。式(3)においては、xが4.0、yが4.0であり、x+y=8.0であった。なお、得られるシルセスキオキサン類は、上記一般式(Q−6)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物の混合物であった。
【0264】
<化合物I−27の合成>
電子グレード濃塩酸800g、n-ブタノール3700g、イオン交換水1600gの混合溶液を10℃に冷却し、これにビニルトリエトキシシラン360gとエチルトリメトキシシラン284gの混合溶液を10分間かけて滴下した。その後更に、25℃で18時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、電子グレードメタノール100mLで洗浄した。洗浄後、結晶をテトラヒドロフラン400mLに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール400mL、続いてイオン交換水800mLを滴下した。析出した結晶を濾取、乾燥して白色固体の目的物(化合物I−27)31gを得た。H−NMR測定(300MHz,CDCl3)の結果、6.13〜5.85、1.03〜0.97及び0.69〜0.60ppmに多重線が観測され、ビニル/エチル比=4.3/3.7と算出された。上記式(3)においては、xが4.3、yが3.7であり、x+y=8.0であった。なお、得られるシルセスキオキサン類は、上記一般式(Q−6)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物の混合物であった。
【0265】
上記製造例を参照して、上記表1に記載の他の化合物Iも同様に合成した。
なお、化合物I−4のシルセスキオキサン類は上記一般式(Q−2)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物の混合物であり、化合物I−31のシルセスキオキサン類は上記一般式(Q−7)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物の混合物であった。
また、化合物I−1〜化合物I−3のシルセスキオキサン類はそれぞれ上記一般式(Q−1)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物の混合物であり、化合物I−5のシルセスキオキサン類は上記一般式(Q−3)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物の混合物であった。
また、化合物I−6のシルセスキオキサン類は、上記一般式(Q−4)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物の混合物であった。
また、化合物I−7のシルセスキオキサン類は、上記一般式(Q−5)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物の混合物であった。
更に、化合物I−8〜化合物I−11、及び化合物I−15〜化合物I−30のシルセスキオキサン類は、上記一般式(Q−6)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物の混合物であった。
【0266】
以下に、上記で合成したシルセスキオキサン類(化合物I)を用いた重合体(樹脂A)の合成方法について詳述する。
【0267】
<樹脂A−13の合成>
上記で合成した化合物(I−13)5gを、クロロベンゼン132gに加えた。得られた溶液を窒素気流中、内温132℃で加熱還流しながら、重合開始剤として和光純薬工業社製V−601(10時間半減温度66℃)0.2gをクロロベンゼン80gに溶解させた溶液31mlを310分かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却後、反応液に電子グレードメタノール340mL、イオン交換水34mLを加え、析出した固体を濾取し、電子グレードメタノール10mLで洗浄した。洗浄後、固体をテトラヒドロフラン40gに溶解し、攪拌しながらイオン交換水8gを滴下した。1時間攪拌した後、デカンテーションで上澄みを捨て、電子グレードメタノール20gを加えた。析出した固体を濾取、乾燥して白色固体の目的物(樹脂A−13)1.9gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、M=23.2×10、M=10.9×10であった。固形物中には未反応の化合物(I−13)は1質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、H−NMRスペクトルを測定したところ、メチル基由来のプロトンピーク(−0.5〜0.5ppm)と、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.5〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が4.5/1.7/1.8の積分比率で観察された。該積分比率より、樹脂中の重合性基の含有量は、樹脂中のケイ素原子に結合した全有機基に対して22.5モル%であった。
【0268】
<樹脂A−12の合成>
上記で合成した化合物(I−12)80gを、クロロベンゼン2112gに加えた。得られた溶液を窒素気流中、内温120℃で加熱還流しながら、重合開始剤として和光純薬工業社製V−601(10時間半減温度66℃)500mgをクロロベンゼン200gに溶解させた溶液398mlを265.3分かけて滴下した。滴下終了後、反応液を室温まで冷却後、反応液に電子グレードメタノール5200g、イオン交換水520mLを加え、析出した固体を濾取し、電子グレードメタノール100mLで洗浄し減圧下12時間乾燥した。固体をテトラヒドロフラン825gに溶解し、攪拌しながらイオン交換水110g、電子グレードメタノール110gを滴下し、析出固体を濾取、乾燥した。同様の操作を3回繰り返し白色固体の目的物(樹脂A−12)31gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、M=19.3×104、M=7.85×104であった。固形物中には未反応の化合物(I−12)は1質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、1H−NMRスペクトルを測定したところ、メチル基由来のプロトンピーク(−0.5〜0.5ppm)と、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.5〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が3.5/2.8/1.7の積分比率で観察された。該積分比率より、樹脂中の重合性基の含有量は、樹脂中のケイ素原子に結合した全有機基に対して21.3モル%であった。
【0269】
<樹脂A−25の合成>
化合物(I−25)4gをクロロベンゼン106gに加えた。得られた溶液を窒素気流中、内温120℃で加熱還流しながら、重合開始剤として和光純薬工業社製V−601(10時間半減温度66℃)500mgをクロロベンゼン200gに溶解させた溶液15.95mlを200分かけて滴下した。滴下終了後、反応液を室温まで冷却後、反応液に電子グレードメタノール200ml、イオン交換水20mLを加え、析出した固体を濾取し、電子グレードメタノール50mLで洗浄し減圧下12時間乾燥した。固体をテトラヒドロフラン75gに溶解し、攪拌しながらイオン交換水9gを滴下し、析出固体を濾取、乾燥して白色固体の目的物(樹脂A−25)1.0gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、M=22.3×10、M=8.23×10であった。固形物中には未反応の化合物(I−25)は1質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、H−NMRスペクトルを測定したところ、プロピル基由来のプロトンピークと、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.5〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が4.0/2.6/1.4の積分比率で観察された。該積分比率より、樹脂中の重合性基の含有量は、樹脂中のケイ素原子に結合した全有機基に対して17.5モル%であった。
【0270】
<樹脂A−32の合成>
1,3,5,7,9,11,13,15−Octaethenyl−pentacyclo[9.5.1.13,9.15,15.17,13]octasiloxane(カゴ構造:一般式(Q−6)、8つの置換基Rが全てビニル基の化合物、x=8、y=0)(化合物I−32)50gを電子グレード酢酸ブチル1320gに加えた。得られた溶液を窒素気流中120℃に加熱し、重合開始剤として和光純薬工業社製V−601(10時間半減温度66℃)0.47gと2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール113mgとを電子グレード酢酸ブチル235mlに溶解させた溶液50.4mlを80分かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間120℃にて攪拌した。攪拌終了後、反応液に電子グレードメタノール3L、イオン交換水3Lを加え、析出した固体を濾取し、電子グレードメタノール100mLで洗浄した。洗浄後、固体をテトラヒドロフラン724gに溶解し、攪拌しながら電子グレードメタノール50g続いて水150gを滴下した。1時間攪拌した後、デカンテーションで上澄みを捨て、電子グレードメタノール200gを加えた。析出した固体を濾取、乾燥して白色固体の目的物(樹脂R−1)17.7gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、M=8.7×10、M=5.4×10であった。固形物中には未反応の化合物(I−32)は2質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、1H−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が2.6/5.4の積分比率で観察された。該積分比率より、樹脂中の重合性基の含有量は、樹脂中のケイ素原子に結合した全有機基に対して67.5モル%であった。
【0271】
<樹脂A−33の合成>
樹脂A−32と同様にして、dodecavinyl−heptacyclo [13.9.1.13,13.15,11.17,21.19,19.117,23] dodecasiloxane(カゴ構造:一般式(Q−1)、12つの置換基Rが全てビニル基の化合物、x=12、y=0)(化合物I−33)から樹脂A−33(M=17.8×10、M=9.99×10)を合成した。
得られた樹脂をGPCで分析すると、M=17.8×10、M=9.99×10であった。固形物中には未反応の化合物(I−33)は2質量%以下であり、分子量300万以上の成分は観測されなかった。重クロロホルムを測定溶媒として、H−NMRスペクトルを測定したところ、ビニル基が重合して生成したアルキル基由来のプロトンピーク(0.2〜3.0ppm)と、残存したビニル基のプロトンピーク(4.9〜6.8ppm)が2.5/9.5の積分比率で観察された。該積分比率より、樹脂中の重合性基の含有量は、樹脂中のケイ素原子に結合した全有機基に対して79.2モル%であった。
【0272】
上記の製造例を参照して、その他の樹脂A−1〜A−11、A−14〜A−24、A−26〜A−31、A−34〜A−42を合成した。なお、それぞれの樹脂の合成に使用したシルセスキオキサンの種類及び組成、重合溶媒、重合温度、並びに、得られた重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を表2に示す。
表中の略語は以下の通りである。
BA:酢酸ブチル
DPE:ジフェニルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)
TBB:t−ブチルベンゼン
CYHEX:シクロヘキサノン
CB:クロロベンゼン
THF:テトラヒドロフラン
V−601:和光純薬製ジメチル 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)
V−65:和光純薬製2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)
VR−110:和光純薬製2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)
V−40:和光純薬製1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)
DCP:過酸化ジクミル
【0273】
【表2】

【0274】
<比較例用樹脂(R−1)>
アセトン72mlに溶解したトリクロロフェニルシラン39.2gを1.42kgの氷水に滴下し、0℃で20時間攪拌した。沈殿をろ取し、水洗後乾燥させた。次に、二硫化炭素200mlに懸濁させてろ取し、アセトン/トルエンで再結晶して比較例用樹脂(R−1)8gを得た。
【0275】
<比較例用樹脂(R−2)>
50ml三口フラスコにテトラエトシキシラン625mg、メチルトリエトキシシラン2.32g、シュウ酸100mg、イソプロピルアルコール12ml、ブタノール4ml、イオン交換水3mlを入れ、7時環加熱還流し比較例用樹脂(R−2)を得た。放冷後、孔径0.1μmのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した。
【0276】
<感光性組成物の調製>
下記表3に示す成分を下記表3に示す溶媒に溶解させ、全固形分濃度8質量%とし、孔径0.1μmのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して、実施例1〜42及び比較例1〜3の感光性組成物を調製した。
表3中において、界面活性剤の含有量は、組成物(塗布液)全量に対する質量%を表す。一方、樹脂、密着促進剤、空孔形成剤、重合開始剤、重合性化合物、アルカリ可溶性樹脂の含有量は、組成物(塗布液)中の全固形物に対する質量%で表される。
界面活性剤としては、BYK307(ビックケミー社製)、PF6320(OMNOVA社製)、F−475(DIC株式会社製)を用いた。
密着促進剤としては、GPTMS:3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、MPMDMS:1−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランを用いた。
空孔形成剤の内容については、後述する。
重合開始剤は、市販品を使用した。その詳細は前記した通りである。
重合性化合物としては、PETA:ペンタエリスリトールテトラアクリレート、DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを用いた。
【0277】
アルカリ可溶性樹脂は以下の樹脂P−1を用いた。
【0278】
P−1:メタクリル酸ベンジルとメタクリル酸とメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの3元系共重合体(繰り返し単位の質量比:70/13/17、Mw:28,000、Mw/Mn:11,000)
【0279】
溶剤に関し、表中の略語は上記と同様である。また、PGMEは、プロピレングリコールモノメチルエーテル(別名1−メトキシ−2−プロパノール)を意味する。
【0280】
【表3】

【0281】
【表4】

【0282】
以下に、空孔形成剤を使用した場合の実施例について詳述する。
【0283】
<樹脂B−1の合成>
窒素気流下、PGMEA4gを3つ口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した。次に、この反応液に、1−エチル−シクロペンチルメタクリレート10g、開始剤V−601(和光純薬製)0.379gをPGMEA36gに溶解させた溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に80℃で1時間反応させた。反応液を放冷後、メタノール500mlに10分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥して、樹脂(B−1)5.83gを得た。
得られた樹脂をGPCで分析すると、M=16200、M=9800であった。熱重量分析(TA Instruments社SDT Q600を使用、窒素流量100ml/min,20℃/minで昇温)の結果、50%重量減少温度が228℃であった。
上記の製造例を参照して、樹脂B−4を合成した。樹脂B−4は、前記式(B−4)の樹脂に対応する。
【0284】
<樹脂B−5の合成>
シクロヘキサンジメタノール3.6g、ブタンジオールジビニルエーテル3.6gをテトラヒドロフラン5mLに溶解し、そこにパラトルエンスルホン酸ピリジン塩100mgを加え、室温で4時間撹拌した。撹拌終了後、トリエチルアミン0.5mLを加え、メタノール100mLを反応溶液に加え、30分間撹拌した。撹拌終了後、2層に分かれた上層を除去し、下層を減圧乾燥することで、透明粘性液体の樹脂(B−5)2.8gを得た。得られた樹脂をGPCで分析すると、M=14000、M=3500であった。熱重量分析(TA Instruments社SDT Q600を使用、窒素流量100ml/min,20℃/minで昇温)の結果、50%重量減少温度が241℃であった。
上記の製造例を参照して、ポリアセタールB−6を合成した。樹脂B−5及びB−6は、それぞれ、前記式(B−5)及び(B−6)の樹脂に対応する。
【0285】
上記で合成した樹脂(B−1)、(B−4)、(B−5)及び(B−6)、及び、アルドリッチ社製のポリアルキレングリコール(B−9)及び(B−12)のポリスチレン換算数平均分子量、及び熱重量分析における50%重量減少温度を表5に示す。
【0286】
【表5】

【0287】
下記の方法で形成したパターン膜について下記の方法で評価した。結果を表3に示す。
【0288】
<感光性膜の形成及び露光>
(1)i線露光
上記のように調製した感光性組成物の液を、6インチのシリコンウエハの上に塗布し、ホットプレート上にて100℃で1.5分間、基板を予備乾燥し、膜厚300nmの感光性膜を形成させた。次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して、365nmの波長で0.5μmの正方ピクセルが基板上に設けられた露光マスクを使用して、パターン露光を行った。
【0289】
(2)KrF露光
上記のように調製した感光性組成物の液を、東京エレクトロン製スピンコーターMark8を利用して、シリコンウエハ上に均一に塗布し、100℃で1.5分間加熱乾燥を行い、膜厚300nmの感光性膜を形成した。この感光性膜に対し、KrFエキシマレーザースキャナー(ASML製、PAS5500/850C、NA=0.68、σ=0.60)を用い、露光マスク(ライン/スペース=1/1)を使用して、パターン露光した。
【0290】
(3)ArF露光
上記のように調製した感光性組成物の液を、東京エレクトロン製スピンコーターMark8を利用して、シリコンウエハ上に均一に塗布し、115℃で、60秒間ベークを行い、膜厚200nmの感光性膜を形成した。得られたウェハーをArFエキシマレーザースキャナー(ASML社製 PAS5500/1100、NA0.75、Dipole、σo/σi=0.89/0.65)を用い、露光マスク(ライン/スペース=1/1)を使用して、パターン露光を行った。
【0291】
(4)EB露光
上記のように調製した感光性組成物の液を、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコンウエハー上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、120℃、60秒ベークして膜厚300nmの感光性膜を得た。この感光性膜に対し、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50KeV)を用いて電子線照射を行った。
【0292】
<パターン膜の形成(感光性膜に対する現像)>
得られた露光膜について、次のいずれかの方法で、表6に記載の現像液を用いて現像を実施した。
(A)現像液が満たされた槽中に露光基板を60秒間浸漬し、窒素フローして乾燥させた。
(B)30秒間パドルして現像し、続いてリンス液で30秒間パドルしてリンスした後、2000rpmの回転数で30秒間ウェハーを回転させた。
(C)180秒間パドルして現像し、続いてリンス液で60秒間パドルしてリンスした後、2000rpmの回転数で30秒間ウェハーを回転させた。
【0293】
<パターン膜の硬化>
得られたパターン膜を以下の次の何れかの方法で硬化を実施した。
(反射防止膜)
(1)加熱A
大気下、ホットプレートで220℃、5分間加熱した。
(2)UV照射A
高圧水銀灯(ウシオ電機(株)UMA−802−HC552FFAL)を用いて10000[mJ/cm]の紫外線を照射した。なお、高圧水銀灯からの照射光に含まれる275nm以下の波長光は、10%である。
【0294】
<絶縁膜>
(1)加熱B
光洋サーモ社製クリーンオーブンCLH-21CD(III)により、窒素雰囲気下、クリーンオーブン中で400℃、60分間加熱した。
(2)EB照射
ウシオ電機社製Mini−EBにてAr雰囲気、圧力100kPa、基板温度350℃の条件で、電子加速電圧20keV、電子線ドーズ量1μCcm−2を5分間照射した。
(3)UV照射B
ウシオ電機社製誘電体バリア放電方式エキシマランプUER20−172を用い、窒素気流下、350℃のホットプレート上で172nmの波長光100mJ/cmを5分照射した。
【0295】
得られた硬化膜について下記の方法で評価した。結果を表6に示す。
【0296】
<解像性>
得られたパターン膜を測長SEM((株)日立製作所S−8840)により観察し、下記露光パターンの解像が認められた場合を○、パターンが確認できない場合を×と標記した。
i線露光 0.5μmの正方ピクセル
KrF露光 0.2μmライン(ライン:スペース=1:1)
ArF露光 0.13μmライン(ライン:スペース=1:1)
EB露光 0.10μmライン(ライン:スペース=1:1)
【0297】
<感度>
露光パターンが解像している最小露光量(i線露光、KrF露光、ArF露光の場合は、mJ/cm、EB露光の場合は、μC/cm)を感度とした。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0298】
<塗布面状>
目視によって、ストリエーションやブツなどの面状荒れの発生が確認されたものを×、確認されないものを○とした。
【0299】
<屈折率>
ウーラム社製分光エリプソメーター(VASE)を用いてシリコンウエハ上にて、パターン膜部分における波長633nm、25℃で測定した値を用いた。
【0300】
<耐熱性>
大気下ホットプレートで220℃下にて2時間加熱を行い、試験前後の屈折率変化が0.002未満の場合を◎、0.002以上0.004未満の場合を○、0.004以上0.006未満の場合を△、0.006以上の場合を×とした。なお、実用上の観点から、×が含まれていないことが必要である。
【0301】
<比誘電率>
フォーディメンジョンズ製水銀プローバ及び横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて、1MHzにおける容量値(硬化膜部分、測定温度25℃)から算出した。
【0302】
<ヤング率>
MTS社ナノインデンターSA2を使用して25℃におけるヤング率を測定した。測定値が5.0GPa以上の場合を◎、3.0GPa以上5.0GPa未満の場合を○、1.5GPa以上3.0GPa未満の場合を△、1.5GPa未満の場合を×とした。なお、実用上の観点から、×が含まれていないことが必要である。
【0303】
表6の現像液及びリンス液に関する略語は以下の通りである。
BA:酢酸ブチル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)
CYHEX:シクロヘキサノン
1−hexanol:1−ヘキサノール
IPA:イソプロパノール
MIBK:4−メチル−2−ペンタノン
MEK:メチルエチルケトン
Toluene:トルエン
【0304】
【表6】

【0305】
表6の結果より、本発明の感光性組成物を使用した場合、塗布面状が良好で、屈折率が低く、高温条件下においても屈折率変化が小さく、誘電率が低く、かつ、ヤング率が高いパターン膜を、高解像度で形成できることが分かった。
一方、式(1)を満たさないシルセスキオキサン類の重合体を使用した場合、本発明の上記効果を同時に満たすことはできなかった。
【0306】
更に、以下の項目についても、評価した。
<耐熱性>
耐熱性の評価は、得られたパターン膜を空気中400℃、60秒加熱し、膜厚変化率を測定することによっても行った。値が0に近い値である塗膜ほど、耐熱性が良いといえる。実施例35及び37はそれぞれ4.5%、4.9%であり、比較例2及び3はそれぞれ10.1%、8.9%であった。
【0307】
<空孔径及び密度>
空孔径及び密度に関して以下の測定方法に基づき測定した。
小角X線散乱(SAXS)を用いて、得られたパターン膜の空孔径を測定した。解析は球状モデルを用い、空孔サイズの分布はガンマ分布関数に従うものとして解析し、得られた細孔分布の最大頻度径を最大分布直径とした。実施例14、35、37、39はそれぞれ3.2nm、4.3nm、2.6nm、2.9nmであり、比較例2及び3はそれぞれ9.6nm、8.9nmであった。
X線反射率法(XRR)を用いて、得られたパターン膜の膜密度を測定した。実施例14、35、37、39はそれぞれ0.95g/cm、0.99g/cm、0.94g/cm、0.89g/cmであり、比較例2及び3はそれぞれ1.26g/cm、1.19g/cmであった。
【0308】
以下に、本発明に係る感光性組成物より得られる膜を反射防止膜に応用した実施例について詳述する。
【0309】
<反射率>
反射率は分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、入射角5°における波長450〜650nmの光の鏡面平均反射率(%)を測定した。
【0310】
〔反射防止膜の製造1〕
実施例14、実施例35、実施例37、及び比較例2の感光性組成物から得られた感光性膜の露光膜部分の反射率を測定した結果、それぞれ得られた反射率(%)は0.6%、0.7%、0.5%、及び4.1%であった。
【0311】
〔反射防止膜の製造2〕
ラサ工業社製 RASA TIをシリコンウエハ上にスピンコートして、350℃で焼成することにより、膜厚60nm、屈折率2.0の膜を形成した。この上に、実施例37の感光性組成物を濃度調整して、プリベーク後の膜厚20nmになるように塗布し、露光現像後、ホットプレート上にて100℃で2分間、ついで350℃にて5分間基板を加熱して多層型の反射防止膜を形成した。
比較例として実施例37の組成物の代わりに比較例3の組成物を用いて、同様の操作を行い、多層型の反射防止膜を形成した。
反射率を測定した結果、実施例37の組成物を用いると0.8%、比較例3の組成物を用いると4.7%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表される1種又は2種以上のかご状シルセスキオキサン化合物から構成されるシルセスキオキサン類より得られる重合体と
(B)光重合開始剤と
を含有する感光性組成物。
(RSiO1.5 式(1)
(式(1)中、Rは、それぞれ独立に、有機基を表し、Rのうちの少なくとも2つは、重合性基を表す。aは8〜16の整数を表す。複数のRは同一であっても異なっていてもよい。)
ただし、前記重合体には前記かご状シルセスキオキサン化合物由来の重合性基が残存している。
【請求項2】
前記かご状シルセスキオキサン化合物が、下記一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)で表されるかご状シルセスキオキサン化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載の感光性組成物。
【化1】

【化2】

(一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)中、Rは、それぞれ独立に、有機基を表し、一般式(Q−1)〜一般式(Q−7)の各々において、Rのうちの少なくとも2つは、重合性基を表す。)
【請求項3】
前記重合体中の前記重合性基の含有量が、ケイ素原子に結合した全有機基中、10〜90モル%である、請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記重合体の重量平均分子量が1万〜50万である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項5】
ネガ型の組成物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項6】
上記光重合開始剤が、オキシム化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性組成物であるパターン形成材料。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性組成物により形成される感光性膜。
【請求項9】
請求項8に記載の感光性膜を形成する工程、前記感光性膜を露光する工程、及び、現像してパターン膜を得る現像工程を含むパターン形成方法。
【請求項10】
前記現像工程が有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程である請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記有機溶剤を含む現像液が、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤である、請求項10に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項にパターン形成方法により得られるパターン膜。
【請求項13】
屈折率が1.35以下である請求項12に記載のパターン膜。
【請求項14】
25℃における比誘電率が2.50以下である請求項12又は13に記載のパターン膜。
【請求項15】
膜密度が0.7〜1.25g/cmである、請求項12〜14のいずれか1項に記載のパターン膜。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか1項に記載のパターン膜である反射防止膜。
【請求項17】
請求項12〜15のいずれか1項に記載のパターン膜である絶縁膜。
【請求項18】
請求項16に記載の反射防止膜を有する光学デバイス。
【請求項19】
請求項17に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。

【公開番号】特開2012−14021(P2012−14021A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151499(P2010−151499)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】