説明

感光性組成物およびそれを用いた平版印刷版用原版

【課題】 本発明の目的は、湿式現像処理工程を経ることなくネガ型画像を形成することを可能とする感光性組成物と、該感光性組成物用いた平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】 (A)下記式(I)
【化1】


(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。)
の構造を有する繰り返し単位を共重合成分として60〜95モル%含有する高分子化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物に関し、さらにプリント基板、ICパッケージ、チップインダクター、フィルター、アンテナなどの製造に使用する平版印刷版用原版に関する。特に、コンピュータ等のデジタル信号から直接製版できるダイレクト製版用のネガ型の平版印刷版用原版に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平版印刷版原版としては親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた構成を有するものが広く用いられている。その製版方法として、通常は、リスフィルムを介してマスク露光後、非画像部を溶解除去することにより所望の印刷版を得る方法が用いられていた。
【0003】
最近では、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力するデジタル化技術が広く普及している。そして、その様なデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきた。その結果、レーザー光のような指向性の高い光をデジタル化された画像情報に従って走査し、リスフィルムを介することなく、直接印刷版を製造するコンピューター・トゥ・プレート(Computer To Plate;CTP)技術が切望されており、これに適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題となっている。
【0004】
このような走査露光可能な平版印刷版原版としては、特許文献1〜4に開示されている。これら文献によると、親水性支持体上にレーザー露光によりラジカルなどの活性種を発生しうる感光性組成物を含有した感光層を設けた構成が提案され、上市されている。この平版印刷版原版をデジタル情報に基づきレーザー走査露光し活性種を発生させ、その作用によって感光層を物理的、或いは化学的な変化を起こし不溶化させ、引き続き現像処理することによってネガ型の平版印刷版を得ることができる。
【0005】
しかしながら、製版作業の簡易化と地球環境保護の観点から、現像処理工程を含む処理液の不使用又は大幅な削減が強く望まれるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−257828号公報
【特許文献2】特開2007−262125号公報
【特許文献3】特開2009−86514号公報
【特許文献4】特開2009−25683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、新規な高分子化合物を用いることにより、親油性のインキを画像部へインキ付着後、湿式現像処理工程を経ることなくネガ型画像を形成することを可能とする感光性組成物と、該感光性組成物を用いた平版印刷版原版を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)下記式(I)
【化1】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。)
の構造を有する繰り返し単位と、下記式(II)〜(IV)
【化2】

(式中、R、R、R、R、R、及びRは、独立して水素原子又はメチル基を表し、L、Lは、独立して、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。)
の構造を有する繰り返し単位より選択される少なくとも1つとを共重合成分として含有し、前記式(I)の構造を有する繰り返し単位の含有量が60〜95モル%である高分子化合物を提供する。
本発明は、別の側面で、感光性組成物であって、(A)上記式(I)の構造を有する繰り返し単位と、上記式(II)〜(IV)の構造を有する繰り返し単位より選択される少なくとも1つとを共重合成分として含有し、前記式(I)の構造を有する繰り返し単位の含有量が60〜95モル%である高分子化合物と、
(B)ラジカル重合性開始剤と、
(C)光増感色素と
を少なくとも含有する感光性組成物を提供する。
本発明は、別の側面で、上記感光性組成物を含有する感光層を支持体上に設けてなるネガ型平版印刷版原版を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る感光性組成物によれば、現像処理工程を経ることなくネガ型画像を形成することを可能とする感光性組成物と、該感光性組成物を用いた平版印刷版原版を提供することができる。具体的には、以下に詳細に説明するように、本発明の感光性組成物を用いた感光層を設けたネガ型平版印刷版用原版によると、例えば赤外線レーザーを照射すると、ラジカル重合性開始剤との電子移動反応を経て光硬化反応する。その際、嵩高い上記式(I)の繰り返し単位が60〜95モル%含有される為、上記式(II)又は(III)又は(IV)の不飽和二重結合同士の距離が離れる。これにより、同一分子内の反応は起き難く、不飽和二重結合同士が分子間で重合し易くなる為、高密度な架橋構造となる。一方、非画像部位は、上記式(I)の繰り返し単位が60〜95モル%含有される為、感光層表面は高い親油性を有する。その為、印刷インキの様な親油性化合物と相互作用し感光層がインキ中に溶解する。この特徴的な性質を利用すると、光照射部位はネガ型画像を形成し、非照射部位は親油性の印刷インキと共に感光層部位が溶解する為、湿式現像処理工程を経ることなく親水性である支持体表面が露出することにより印刷することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
[感光性組成物]
本発明に係る感光性組成物は、(A)高分子化合物と、(B)ラジカル重合性開始剤と、(C)光増感色素とを含有する。
【0012】
(A)高分子化合物
本発明に係る感光性組成物に含有される高分子化合物は、下記式(I)
【化3】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。)
の構造を有する繰り返し単位と、下記式(II)〜(IV)
【化4】

(式中、R、R、R、R、R、及びRは、独立して水素原子又はメチル基を表し、L、Lは、独立して、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。)
の構造を有する繰り返し単位より選択される少なくとも1つとを共重合成分として含有する。該高分子化合物における式(I)の構造を有する繰り返し単位の含有量は60〜95モル%である。
該高分子化合物は、下記式(V)
【化5】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。)
の構造を有する繰り返し単位を共重合成分として更に含有してもよい。
【0013】
本発明の感光性組成物において、上記式(I)の構造を有する繰り返し単位を与えるモノマーは、例えば、特定脂環構造をもつアルコール化合物と不飽和二重結合を有するアクリル酸エステルとの反応から得ることができる。上記式(I)の構造を有する繰り返し単位を与えるモノマー化合物は、例えば共栄社化学工業社より市販されている。
【0014】
上記式(I)の構造を有する繰り返し単位を与えるモノマーの高分子化合物中の含有量は、60〜95モル%である。式(I)の構造を有する繰り返し単位を与えるモノマーの含有量が60モル%未満では、感光層の印刷インキへの溶解性能が悪くなる。
【0015】
本発明の感光性組成物において、上記式(II)の構造を有する繰り返し単位を与えるモノマーは、例えば、ヒドロキシル基を有する重合性化合物とグリシジルメタクリレートとの反応から得ることができる。
【0016】
上記式(II)の構造を有する繰り返し単位を与えるモノマーの高分子化合物中の含有量は、好ましくは1〜40モル%、より好ましくは5〜40モル%である。式(II)の構造を有する繰り返し単位を与えるモノマーの含有量が1モル%未満では、画像形成が悪くなる場合がある。
【0017】
本発明の感光性組成物において、上記式(III)の構造を有する繰り返し単位を与えるモノマーは、例えば、アルコール性水酸基を有する重合性化合物と不飽和二重結合を有するイソシアネート化合物との付加反応から得ることができる。式(III)中、R、Rは、独立して水素原子又はメチル基を表し、L、Lは、独立して、置換基を有してもよい炭素数が好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。
【0018】
上記式(III)の構造を有する繰り返し単位を与えるモノマーの高分子化合物中の含有量は、好ましくは1〜40モル%、より好ましくは5〜40モル%である。式(III)の構造を有する繰り返し単位を与えるモノマーの含有量が1モル%未満では、画像形成が悪くなる場合がある。
【0019】
本発明の感光性組成物において、上記式(IV)の構造を有する繰り返し単位を与えるモノマーは、例えば、カルボキシル基を有する重合性化合物とメタクリロイルクロリドとの反応から得ることができる。
【0020】
上記式(IV)の構造を有する繰り返し単位を与えるモノマーの高分子化合物中の含有量は、好ましくは1〜40モル%、より好ましくは5〜40モル%である。式(IV)の構造を有する繰り返し単位を与えるモノマーの含有量が1モル%未満では、画像形成が悪くなる場合がある。
【0021】
本発明の感光性組成物において、上記式(V)の構造を有する単量単位を有するモノマーは、例えば、スルホンアミド基を有する化合物とメタクリロイルクロリドとの反応から得ることができる。
【0022】
上記式(V)の構造を有する繰り返し単位を与えるモノマーの高分子化合物中の含有量は、好ましくは1〜20モル%である。式(V)の構造を有する繰り返し単位を与えるモノマーを高分子化合物中に含有させると、本発明に係る感光性組成物の耐薬品性能が更に向上する。式(V)の構造を有する繰り返し単位を与えるモノマーの含有量が1モル%未満では、感光層のインキ溶解性が悪く、20モル%超では画像強度が悪くなる場合がある。
【0023】
更に、これら成分に必要に応じて加えられる重合可能な他のモノマーとして、例えば下記(1)〜(9)に挙げるモノマーが望ましい。
(1)フェノール性水酸基を有するモノマー。例えば、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、p−イソプロペニルフェノール、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレートである。
(2)活性イミド基を有するモノマー。例えば、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミドである。
(3)脂肪族水酸基を有するモノマー。例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレートである。
(4)α,β−不飽和カルボン酸。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸である。
(5)アリル基を有するモノマー。例えば、アリルメタクリレート、N−アリルメタクリルアミドである。
(6)アルキルアクリレート類又はアルキルメタクリレート類。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸へキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、グリシジルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸へキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、グリシジルメタクリレートである。
(7)アクリルアミド類又はメタクリルアミド類。例えば、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−へキシルアクリルアミド、N−シクロへキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−へキシルメタクリルアミド、N−シクロへキシルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミドである。
(8)スチレン類。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン等である。
(9)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾ−ル、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
これらは、1種の化合物単独で用いてもよいし、(1)〜(9)の同じグループの化合物を2種類以上組み合わせて、又は異なるグループの化合物を2種類以上組み合わせて用いてもよい。
上記高分子化合物において必要に応じて加えられる他のモノマーの含有量は好ましくは、1〜20モル%、より好ましくは、1〜15モル%である。
【0024】
前記高分子化合物の製造方法については、特に制限はなく、通常のビニル系又はアクリル系共重合体の製造方法と同様にして製造することができる。例えば、各モノマー成分を適当な溶媒に溶解し、従来慣用されているラジカル重合開始剤を添加し、必要に応じ加熱して重合を行うことにより所望の共重合体を得ることができる。このようにして得られた共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン検算重量平均分子量が1万〜20万、好ましくは1万〜10万の範囲にあるものが用いられる。この重量平均分子量が1万未満では画像部の機械的強度が不足してくる場合がある。20万を超えると印刷インキに溶解し難くなる場合があるため好ましくない。
【0025】
前記高分子化合物の重合のために用いられる溶媒としては、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジオキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。また、前記共重合体の重合のために用いられるラジカル重合開始剤としては、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。添加量としては、モノマーの全量に対して0.1〜1.0質量%である。
【0026】
また、本発明の感光性組成物で使用される高分子化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0027】
(B)ラジカル重合性開始剤
本発明の感光性組成物に含有されるラジカル重合性開始剤は、公知の化合物を用いることができる。例えば、トリハロアルキル置換された化合物、有機ホウ素塩、ヘキサアリールビスイミダゾール、チタノセン化合物、ケトオキシム化合物、チオ化合物、有機過酸化物、オニウム塩(特開2003−114532号公報に記載のヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩)等が挙げられる。これらのラジカル重合性開始剤の中でも、特に、オニウム塩化合物が高感度であり好ましく用いられる。
【0028】
好ましいラジカル重合性開始剤として、オニウム塩化合物が挙げられる。上記オニウム塩化合物とは、具体的にはヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。
【0029】
本発明においてオニウム塩の具体例としては、特開2003−114532号公報の段落番号[0046]〜[0049]に記載されたものが好ましい。
【0030】
ラジカル重合性開始剤の含有量は、高分子化合物の全量に対して、1〜40質量%の範囲が好ましく、更には1〜20質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0031】
(C)光増感色素
本発明の感光性組成物で(C)成分として使用される光増感色素は、画像露光光源の光を吸収して、そのエネルギーを熱に変換し得る化合物であれば特に限定されないが、波長域300〜1300nmの範囲に吸収極大を有し、好ましくは吸収極大でモル吸光係数εが10以上である光増感色素が特に有効である。光増感色素は、光の照射によって光増感色素から光電子移動反応を引き起こしラジカル発生を促進させるために用いられる。このため、本発明の感光性組成物は、光増感色素を含有することにより、レーザー露光により有機溶媒やアルカリ水溶液に対する溶解性が減少するネガ型感光層となる。
【0032】
上記光増感色素としては、例えば、シアニン系色素、スクアリウム系色素、クロコニウム系色素、アズレニウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、チオピリリウム系色素、ジチオール金属錯体系色素、アントラキノン系色素、インドアニリン金属錯体系色素、分子間CT色素等が好ましい。
【0033】
これらの色素は、公知の方法によって合成することができるが、市販品を用いることもできる。株式会社林原、三井化学株式会社、昭和電工株式会社、富士フィルム株式会社、山本化成株式会社等の各社から、上記色素は市販されている。
【0034】
本発明において光増感色素の具体例としては、特開2003−114532号公報の段落番号[0030]〜[0032]に記載されたものが好ましい。
【0035】
上記光増感色素の含有量は、感光性組成物の全固形分中に0.5〜10質量%、好ましくは0.6〜8.0質量%である。含有量が0.5質量%以上、特に0.6質量%以上では、感度が特に高くなり、10質量%以下、特に8.0質量%以下では、損紙枚数が少なくなるので好ましい。
【0036】
(D)その他の成分
本発明の感光性組成物は、前記の成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に必要に応じて、重合性化合物、着色剤、ロイコ色素、感脂性樹脂、重合禁止剤、界面活性剤、可塑剤等を添加することができる。
【0037】
本発明の感光性組成物は、画像強度の向上、感度の向上、耐刷性の向上の為に重合性化合物を含有することもできる。
【0038】
重合性化合物としては分子量1000以下のモノマーから分子量1000以上のオリゴマー、ポリマー領域のものまで種々のものを用いることができる。このような化合物として不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等、不飽和アルコールとイソシアネート化合物とのウレタン、不飽和カルボン酸とエポキシ化合物とのエステル等を挙げることができる。
【0039】
より具体的には、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルジオールジアクリレート、ネオペンチルジオールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。
【0040】
上記重合性化合物は、公知の方法で合成できるほか、市販のものを用いることができる。例えば、東亜合成株式会社製、日本油脂株式会社製、共栄社化学株式会社製、新中村化学株式会社製、三菱化学株式会社製、日本化薬株式会社製、大阪有機化学株式会社製等がある。
【0041】
上記重合性化合物の含有量は、感光性組成物の全固形分中に好ましくは1〜80質量%、さらに好ましくは2〜70質量%である。含有量が、1質量%以上の場合は、感度がより早くなり、80質量%以下では、画像部(露光部)の耐キズ性がより向上するので好ましい。
【0042】
本発明の感光性組成物は、画像を見やすくするために、着色剤を用いることができる。着色剤としては、油溶性染料及び塩基性染料が好ましい。具体的には、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、ビクトリアブルー、メチレンブルー、エチルバイオレット、ローダミンB、ビクトリアピュアブルーBOH(保土谷化学工業社製)、オイルブルー613(オリエント化学工業社製)、オイルグリーン等を挙げることができる。これらの染料の含有量は、好ましくは感光層の0.05〜5.0質量%であり、さらに好ましくは0.1〜4.0質量%である。0.05質量%以上、特に0.1質量%以上では、感光層の着色が十分で画像が特に見やすくなり、5.0質量%以下、特に4.0質量%以下では、損紙枚数が少なくなり好ましい。
【0043】
本発明の感光性組成物には、感光層の着色効果を目的として、ロイコ色素を添加できる。ロイコ色素としては、従来の感熱記録材料に用いられているラクトン環を含む色素が好ましい。好ましい具体例としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3、6−ジメトキシフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロルフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、3−ジメチルアミノ−5、7−ジメチルフルオラン、3−ジメチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7、8−ベンズフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロアミノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−(N−(3’−トリフルオロメチルフェニル)アミノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム等を挙げることができる。
【0044】
ロイコ色素の含有量は、感光層中に好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%である。含有量が0.01質量%以上、特に0.05質量%以上では、感光層の着色が十分となり、可視性が優れ、10質量%以下、特に5質量%以下では、非画像部(露光部)の汚れ難さが特に向上するので好ましい。
【0045】
さらに、本発明の感光性組成物には、感光層の感脂性(親油性)を向上させるために感脂性樹脂を添加することができる。感脂性樹脂としては、例えば、特開昭50−125806号公報に記載されているような、炭素数3〜15のアルキル基で置換されたフェノール類とアルデヒドの縮合物、又はt−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂などが使用可能である。上記感脂性樹脂が感光層の全固形分に占める割合は、0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは、0.05〜10質量%である。
【0046】
本発明の感光性組成物においては、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、即ち、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の含有量は、感光性組成物中の固形成分中に約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また、必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにべヘン酸やべヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の含有量は、感光性組成物中の固形成分中に約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0047】
本発明の感光性組成物には、損紙枚数を低減する為、特開昭62−251740号公報、特開平3−208514号公報、特願2006−241033号に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。非イオン界面活性剤の好適例としては、ソルビタントリステアレ−ト、ソルビタンモノパルミテ−ト、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。両性界面活性剤の好適な例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業(株)製)等が挙げられる。上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤が感光層中に占める割合は、0.01〜15質量%が好ましく、より好ましくは、0.01〜10質量%である。0.01質量%以上では、損紙枚数が少なくなり特に好ましい。また、15質量%超では、画像部の強度が弱くなる。
【0048】
本発明の感光性組成物には、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を添加することもできる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸トリブチル等が用いられる。上記可塑剤が、感光層(感光性組成物)の全固形分に占める割合は、0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは、0.05〜10質量%である。
【0049】
[ネガ型平版印刷版原版]
支持体上に、上記感光性組成物を含有する感光層を設けてなるネガ型平版印刷版もまた、本発明の一つである。本発明の平版印刷版原版は、通常感光性組成物の成分として上述したものを溶媒に溶かして、適当な支持体上に感光層塗布液を塗布することにより製造することができる。ここで使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノ−ル、メチレンクロライド、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、ジオキソラン、アセトン、シクロヘキサノン、トリクロロエチレン、メチルエチルケトン、γ−ブチルラクトン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これら溶媒は単独あるいは2種以上混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0050】
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、回転塗布、押し出し塗布、バーコーター塗布、ロール塗布、エアーナイフ塗布、ディップ塗布、カーテン塗布等を挙げることができる。感光層の塗布量は、用途により異なるが、乾燥時で0.5〜5.0g/mが好ましい。感光層の厚さを単位面積当たりの質量で表すと、乾燥時で0.5〜3.0g/mであることが好ましい。
【0051】
上記支持体としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、もしくは鋼等の金属板や、クロム、亜鉛、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄等がメッキもしくは蒸着された金属板、紙、プラスチックフィルム、もしくはガラス板や、樹脂が塗布された紙や、親水化処理されたプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0052】
上記支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものでなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みは、おおよそ0.1〜0.5mm、好ましくは0.12〜0.4mmである。
【0053】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、表面の圧延油を除去するための、例えば、界面活性剤、又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ブラシ研磨、ボール研磨、ブラスト研磨、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化方法としては、塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭53−123204号公報に開示されている機械的方法と電気化学的な方法を組み合わせた方法も利用することができる。このように粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、一般的に硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。
【0054】
陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜60質量%溶液、液温は5〜60℃、電流密度2〜50A/dm、電圧1〜100V、電解時間5秒〜3分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は0.5〜5.0g/mが適当で、0.5g/m以上では耐摩耗性が特に良くなり、5.0g/m以下では、陽極酸化の孔に染料などが特に染み込みにくくなるので好ましい。
【0055】
陽極酸化を施された後、アルミニウム板は、さらに、例えばケイ酸アルカリ、リン酸ソーダ、弗化ナトリウム、弗化ジルコニウム、アルキルチタネート、トリヒドロキシ安息香酸などの単独あるいは混合液による化成処理や、熱水溶液への浸漬もしくは水蒸気浴などによる封孔処理や、酢酸ストロンチウム、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム、もしくは安息香酸カルシウム等の水溶液による被覆処理や、ポリビニルピロリドン、ポリアミンスルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリアクリル酸、もしくはポリメタクリル酸等による表面もしくは裏面の化成あるいは被覆処理を後処理として行うこともできる。
【0056】
さらに、上記支持体として、特開平10−297130号に記載の表面処理を施したアルミニウム支持体等も使用することができる。
【0057】
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、上記感光性組成物を含有する感光層と、その上層に保護層とを設けてなるものがより好ましい。本発明の平版印刷版原版の感光層は、光重合性ネガ型感光層であり、通常、露光を大気中で行うために、露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の感光層への混入を防止する目的で、感光層の上に、水溶性の保護層を設ける。本発明の感光層に使用できる水溶性保護層は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことを要し、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、画像記録層との密着に優れ、かつ、露光後の刷りだしで容易に除去できることが望ましい。このような、保護層に関する工夫が従来なされており、米国特許第3458311号明細書、特公昭55−49729号公報に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては、例えば、比較的結晶性に優れた水溶性化合物を用いることがよく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが知られているが、これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、インキ溶解性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。保護層の厚さを単位面積当たりの質量で表すと、0.5〜3.0g/mであることが好ましい。本発明に係るネガ型平版印刷版原版は、感光層の上層に保護層を設けることにより、より高感度な平版印刷版原版を達成できる。
【0058】
本発明の平版印刷版原版は、感光層との密着性を向上させる為に、感光層とその上層に保護層を有するものであれば、感光層と保護層とが隣接している必要は必ずしもなく、感光層と保護層との間に、両者を接着させる目的で中間層を有してもよい。
【0059】
本発明の平版印刷原版を合紙なしで多数枚積み重ねた時の版同士の離脱性をよくし、また、合紙を間に入れて積み重ねた場合でも合紙と版との離脱性をよくするために、平版印刷原版をマット化する場合がある。感光層表面をマット化する方法としては、感光層中にマット剤などを添加する方法、感光層表面に水溶性樹脂あるいは水溶性樹脂とマット剤などを溶解、分散させた溶液をスプレー塗布する方法などがある。また、保護層表面をマット化する方法としては、保護層中にマット剤を添加する方法、保護層表面に水溶性樹脂をあるいは水溶性樹脂とマット剤などを溶解、分散させた溶液をスプレーする方法などがある。マット剤としては、例えば二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ粉末、澱粉、コンスターチ、重合体粒子(例えばポリアクリル酸、ポリスチレンなどの粒子)などが挙げられる。
【0060】
本発明の平版印刷版用原版に、照射するためのレーザー光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザー、半導体レーザーが好ましい。発光波長としては600〜1300nmが好ましい。また、UV露光用の光源としては、カーボンアーク灯、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ等がある。発光波長としては、300〜500nmが好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明に係る感光性組成物及びこれを用いた平版印刷版用原版は下記実施例によって制限されるものではない。
【0062】
CHMA:GMA=4:1コポリマー(Polymer A)の合成
【化6】

上記式において、括弧に付加された添え字はモル分率を表す(以下同様とする)。
【0063】
200mlの3つ口フラスコにメタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)を10.0ml(0.0577mol)、メタクリル酸グリシジル(GMA)を1.90ml(0.0144mol)、無水メチルエチルケトンを40ml、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を59.1mg(3.60×10−4mol)を入れ、窒素気流下、70℃で24時間撹拌した。その後、反応溶液を過剰量のMeOHに投入し、撹拌してポリマーを析出させ、これを1晩放置した。析出したポリマーをデカンテーションにより回収し、1晩真空乾燥を行ったところ、白色固体状のポリマーを得た。該ポリマーの収量は7.94g、収率は67.6%であった。
該ポリマーのH NMRスペクトルを測定したところ、CHMA:GMA=4:1コポリマーが合成されたことが確認された。
H−NMR(400MHz,CDCl) δ= 4.72−4.58[m,4H, CH],4.36−4.18[m,1H,CH],3.92−3.74[m,1H,CH],3.28−3.16[m,1H,CH],2.88−2.80[m,1H,CH],2.68−2.60[m,1H,CH],2.10−0.82[m,65H,CHCH
【0064】
反応性官能基の合成(GMA型):II−1
【化7】

200mlの3つ口フラスコにCHMA:GMA=4:1コポリマー(Polymer A)6.00g(7.36×10−3mol(エポキシ環の数))、無水メチルエチルケトン40ml、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)1.42g(4.42×10−3mol)、ハイドロキノン(HQ)15mg(1.36×10−4mol)を入れ、窒素気流下、60℃でフラスコ内部の固体が完全に溶けるまで撹拌した。その後、メタクリル酸(MA)1.87ml(2.21×10−2mol)と無水メチルエチルケトン10mlの混合溶液を反応溶液に滴下して加え、60℃を維持したまま3日間撹拌した。反応終了後、反応溶液を過剰量のMeOHに投入し、撹拌してポリマーを析出させ、これを1晩放置した。析出したポリマーを再沈殿(良溶媒:CHCl、貧溶媒:MeOH)して精製した後、デカンテーションにより回収し、1晩真空乾燥を行ったところ、無色透明な固体状のポリマーを得た。該ポリマーの収量は4.81g、収率は72.5%、二重結合導入率は93%であった。
該ポリマーのH NMRスペクトルを測定したところ、II−1で表されるポリマーが合成されたことが確認された。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ=6.20−6.13[m,1H,=CH],5.68−5.60[m,1H,=CH],4.72−4.58[m,4H,CH],4.35−3.92[m,5H,CHCHCH],2.10−0.80[m,68H,CHCH
FT−IR(薄膜法) 3489cm−1[−OH基のO−H伸縮振動],1724cm−1[エステルのC=O伸縮振動],1637cm−1[−C=C基のC=C伸縮振動],1250,1162cm−1[エステルのC−O伸縮振動]
【0065】
CHMA:HEMA=4:1コポリマー(Polymer B)の合成
【化8】

200mlの3つ口フラスコにメタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)10.0ml(0.0577mol)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)1.75ml(0.0144mol)、無水メチルエチルケトン40ml、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)59.2mg(3.61×10−4mol)を入れ、窒素気流下、70℃で24時間撹拌した。その後、反応溶液を過剰量のMeOHに投入し、撹拌してポリマーを析出させ、これを1晩放置した。析出したポリマーをデカンテーションにより回収し、1晩真空乾燥を行ったところ、白色固体状のポリマーを得た。該ポリマーの収量は7.72g、収率は66.7%であった。
該ポリマーのH NMRスペクトルを測定したところ、CHMA:HEMA=4:1コポリマーが合成されたことが確認された。
H−NMR(400MHz,溶媒:CDCl)δ=4.72−4.58[m,4H,CH], 4.28−3.96[m,2H,CH],3.92−3.78[m,2H,CH],2.00−0.82[m,65H,CHCH
【0066】
反応性官能基の合成(MOI型):III―1
【化9】

200mlの3つ口フラスコにCHMA:HEMA=4:1コポリマー(Polymer B)6.00g(7.47×10−3mol(−OH基の数))、無水CHCl40ml、ジラウリン酸ジブチルすず0.202ml(3.36×10−4mol)を入れ,窒素気流下,室温でフラスコ内部の固体が完全に溶けるまで撹拌した。続けて温度を0℃まで下げ、2−(メタクリロイルオキシ)エチルイソシアネート(MOI)1.59ml(1.12×10−2mol)と無水CHCl5mlの混合溶液を反応溶液に滴下して加えた。その後、反応温度を40℃に昇温し24時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を過剰量のMeOHに投入し、撹拌してポリマーを析出させ、これを1晩放置した。析出したポリマーを再沈殿(良溶媒:CHCl、貧溶媒:MeOH)して精製した後、デカンテーションにより回収し、1晩真空乾燥を行ったところ、無色透明な固体状のポリマーを得た。該ポリマーの収量は3.86g、収率は53.9%、二重結合導入率は95%であった。
該ポリマーのH NMRスペクトルを測定したところ、III−1で表されるポリマーが合成されたことが確認された。
H−NMR (400MHz,溶媒:CDCl)δ=6.17−6.10[m,1H,=CH],5.62−5.55[m,1H,=CH],4.72−4.55[m,4H,CH],4.36−3.98[m,6H,−OCH],3.57−3.42[m,2H,−NH−CH],2.00−0.75[m,68H,CHCH
FT−IR(薄膜法) 3379cm−1[ウレタンのN−H伸縮振動]、1723cm−1[エステルのC=O伸縮振動]、1636cm−1[−C=C基のC=C伸縮振動]、1250、1163cm−1[エステルのC−O伸縮振動]
【0067】
反応性官能基の合成:IV―1
【化10】

200mlの3つ口フラスコにCHMA:HEMA=4:1コポリマー(Polymer B)6.00g(7.47×10−3mol(−OH基の数))、無水THF40ml、トリエチルアミン(TEA)4.14ml(2.99×10−2mol)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)3.65g(2.99×10−2mol)を入れ、窒素気流下、室温でフラスコ内部の固体が完全に溶けるまで撹拌した。続けて温度を0℃まで下げ、メタクリロイルクロリド6.25g(5.98×10−2mol)と無水THF10mlの混合溶液を反応溶液に滴下して加えた。その後、反応温度を室温に昇温し24時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を過剰量のHOに投入し、撹拌してポリマーを析出、および未反応のメタクリロイルクロリドを除去し、これを1晩放置した。析出したポリマーを再沈殿(良溶媒:CHCl、貧溶媒:EtO)して精製し、この際にCHClに不溶性の塩はろ過により除去した。生成したポリマーをデカンテーションにより回収し、1晩真空乾燥を行ったところ、白色固体状のポリマーを得た。該ポリマーの収量は3.17g、収率は46.7%、二重結合導入率は95%であった。
該ポリマーのH NMRスペクトルを測定したところ、IV−1で表されるポリマーが合成されたことが確認された。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ=6.17−6.13[m,1H,=CH],5.68−5.58[m,1H,=CH],4.74−4.57[m,4H,CH],4.42−4.06[m,4H,−OCH],2.05−0.75[m,68H,CHCH
FT−IR(薄膜法) 1724cm−1[エステルのC=O伸縮振動],1637cm−1[−C=C基のC=C伸縮振動],1247,1161cm−1[エステルのC−O伸縮振動]
【0068】
CHMA:NPMA:GMA=4:1:1コポリマー(Polymer C)の合成
【化11】

200mlの3つ口フラスコにメタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)8.32ml(0.0480mol)、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド(NPMA)2.88g(0.0120mol)、メタクリル酸グリシジル(GMA)3.16ml(0.0240mol)、無水DMF40ml、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)118mg(7.20×10−4mol)を入れ、窒素気流下、80℃で24時間撹拌した。その後、反応溶液を過剰量のEtOに投入し、撹拌してポリマーを析出させ、これを1晩放置した。析出したポリマーを再沈殿(良溶媒:CHCl、貧溶媒:EtO)して精製した後、デカンテーションにより回収し、1晩真空乾燥を行ったところ、黄色を帯びた白色固体状のポリマーを得た。該ポリマーの収量は10.2g、収率は80.5%であった。
該ポリマーのH NMRスペクトルを測定したところ、CHMA:NPMA:GMA=4:1:1コポリマーが合成されたことが確認された。GMAは添加量の半分だけがポリマー中に取り込まれていた。
H−NMR(300MHz,DMSO−d) δ=7.81−7.60[m,4H,Ar−H],7.30−7.12[m,2H,SONH],4.67−4.45[m,4H,CH],4.36−4.20[m,1H,CH],3.78−3.60[m,1H,CH],3.21−3.10[m,1H,CH],2.84−2.76[m,1H,CH],2.68−2.60[m,1H,CH],2.18−0.68[m,70H,CH CH
【0069】
CHMA:NPMA:GMA=4:1:1コポリマー(Polymer C)の二重結合導入コポリマーの合成:II−2
【化12】

200mlの3つ口フラスコにCHMA:NPMA:GMA=4:1:1コポリマー(Polymer C)4.00g(3.79x10−3mol:エポキシ環の数)、無水DMF40ml、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)0.735g(2.28×10−3mol)、ハイドロキノン(HQ)15mg(1.36x10−4mol)を入れ、窒素気流下、60℃でフラスコ内部の固体が完全に溶けるまで攪拌した。その後、メタクリル酸(MAA)0.962ml(0.0114mol)と無水DMF10mlの混合溶液を反応溶液に滴下して加え、60℃を維持したまま3日間攪拌した。反応終了後、反応溶液を過剰量のEtOに投入し、撹拌してポリマーを析出させ、これを1晩放置した。析出したポリマーを再沈殿(良溶媒:CHCl、貧溶媒:EtO)して精製した後、デカンテーションにより回収し、1晩真空乾燥を行ったところ、黄色を帯びた白色固体状のポリマーを得た。該ポリマーの収量は1.34g、収率は31.0%、二重結合導入率は98%であった。
該ポリマーのH NMRスペクトルを測定したところ、II−2で表されるポリマーが合成されたことが確認された。
H NMR(300MHz,DMSO−d)δ=7.82−7.60[m,4H,Ar−H],7.28−7.14[m,2H,SONH],6.11−6.02[m,1H,CH],5.72−5.63[m,1H,CH],5.38−5.25[m,1H,OH],2.84−2.76[m,1H,CH],4.75−4.38[m,4H,CH],4.22−3.75[m,5H,CHCHCH],2.16−0.56[m, 73H,CHCH
【0070】
[支持体の作製]
厚さ0.24mmのアルミニウム(材質1050)をアルカリ脱脂した後、パーミストンの水懸濁液をかけながらナイロンブラシで表面を研磨し、よく水洗した。次いで、70℃、15質量%水酸化ナトリウム水溶液を5秒間かけ流し、表面を3g/mエッチングした後、さらに水洗を行ない、次いで、1N塩酸浴中で200クーロン/dmで電解粗面化処理を行った。引き続き水洗した後、15質量%水酸化ナトリウム水溶液で表面を再度エッチングし、水洗を行った後、20質量%の硝酸水溶液に浸漬して、デスマットした。次いで、15質量%硫酸水溶液中で陽極酸化処理を行って、2.0g/mの酸化皮膜を形成し、水洗の後、50℃の1質量%のフッ化カリウムと10質量%のリン酸一ナトリウムの混合溶液で後処理し、水洗・乾燥した。
【0071】
[実施例1]
以下の組成を有する感光液イを調製した。感光液イを、上記アルミニウム版上に乾燥後の膜厚が1.3g/mになるように塗布し、90℃で3分間乾燥して感光層を形成し、平版印刷版を得た。
(感光液イ)
特定高分子化合物(II−1)(2.0g)
ラジカル重合性開始剤:ヨードニウム塩化合物(I−1)(0.1g)
光増感色素:シアニン色素(C−1)(0.05g)
染料:オイルブルー613(オリエント化学工業社製)(0.05g)
溶媒:クロロホルム 40ml
【0072】
【化13】

【0073】
(水溶性保護層)
感光層表面に、以下の組成の水溶性保護層塗布液をワイヤーバーで塗布し、乾燥装置にて90℃で3分間乾燥させた。乾燥塗布量は、2.5g/mであった。
【0074】
(水溶性保護層塗布液)
・ポリビニルアルコール
(日本合成化学工業株式会社製、ケン化度98モル%、重合度500) 100g
・界面活性剤(日本乳化剤、エマレックス710) 0.3g
・ポリエチレングリコール4000 0.5g
・蒸留水 500g
【0075】
[実施例2]
感光液イの代わりに、以下の組成を有する感光液ロを用いて、実施例1と同様にして平版印刷版を得た。
(感光液ロ)
特定高分子化合物(III−1)(2.0g)
ラジカル重合性開始剤:ヨードニウム塩化合物(I−1)(0.1g)
光増感色素:シアニン色素(C−1)(0.05g)
染料:オイルブルー613(オリエント化学工業社製)(0.05g)
溶媒:クロロホルム 40ml
【0076】
[実施例3]
感光液イの代わりに、以下の組成を有する感光液ハを用いて、実施例1と同様にして平版印刷版を得た。
(感光液ハ)
特定高分子化合物(IV−1)(2.0g)
ラジカル重合性開始剤:ヨードニウム塩化合物(I−1)(0.1g)
光増感色素:シアニン色素(C−1)(0.05g)
染料:オイルブルー613(オリエント化学工業社製)(0.05g)
溶媒:クロロホルム 40ml
【0077】
[実施例4]
感光液イの代わりに、以下の組成を有する感光液ニを用いて、実施例1と同様にして平版印刷版を得た。
(感光液ニ)
特定高分子化合物(II−2)(2.0g)
ラジカル重合性開始剤:ヨードニウム塩化合物(I−1)(0.1g)
光増感色素:シアニン色素(C−1)(0.05g)
染料:オイルブルー613(オリエント化学工業社製)(0.05g)
溶媒:クロロホルム 40ml
【0078】
[比較例1]
感光液イの代わりに、以下の組成を有する比較感光液1を用いて、実施例1と同様にして平版印刷版を得た。
(比較感光液1)
比較高分子化合物(Polymer D)(2.0g)
ラジカル重合性開始剤:ヨードニウム塩化合物(I−1)(0.1g)
光増感色素:シアニン色素(C−1)(0.05g)
染料:オイルブルー613(オリエント化学工業社製)(0.05g)
溶媒:クロロホルム 40ml
【0079】
比較高分子化合物:Polymer D
【化14】

【0080】
[比較例2]
感光液イの代わりに、以下の組成を有する比較感光液2を用いて、実施例1と同様にして平版印刷版を得た。
(比較感光液2)
比較高分子化合物(Polymer E)(2.0g)
ラジカル重合性開始剤:ヨードニウム塩化合物(I−1)(0.1g)
光増感色素:シアニン色素(C−1)(0.05g)
染料:オイルブルー613(オリエント化学工業社製)(0.05g)
溶媒:クロロホルム 40ml
【0081】
類似比較高分子化合物:Polymer E
【化15】

【0082】
[評価方法]
実施例1〜4、比較例1、2で得られた平版印刷版原版を以下のように評価した。
1.印刷評価
平版印刷版原版を、Kodak社製Trendsetter 800QTMにて、露光エネルギー40〜150mJ/cmで露光した。露光後、現像せずにそのままリョウビ製印刷機(510型)に装着し、湿し水(東洋インキ社製LRH ALKY(1%))、東洋バンテアンエコインキを用いて印刷し50,000枚印刷を行い画像部の欠落具合と非画像部の汚れ具合で評価した。画像部強度、損紙枚数、非画像部汚れは、表1に示す各平版印刷版原版の最低露光エネルギーで露光した場合の結果を示す。
(最低露光感度)
ベタ画像部を形成する最低露光エネルギー(mJ/cm)を示す。最低露光エネルギーは、数字が小さいほど高感度を意味する。
(画像部強度)
画像部の欠落具合を調べた。画像部に侵された部分が無い場合は「○」、ルーペで見える画像部の欠落がある場合は「△」、目視で画像部の欠落が認められる場合は「×」と評価した。
(損紙枚数)
50,000枚の印刷を行ったうち、不良紙の枚数である損紙枚数が100枚未満の場合は「○」、100以上300未満の場合は「△」、300枚以上の場合は「×」で示した。
(非画像部汚れ)
非画像部の汚れ具合を調べた。非画像部に汚れが無い場合は「○」、僅かに薄汚れが発生している場合は「△」、汚れて印刷できない場合は「×」と評価した。
【0083】
2.耐薬品テスト
上記同様にして露光エネルギー100mJ/cmで得られた50%網点画像を、サイバー10(日研化学社製)を30分間滴下し、脱脂綿で拭取った後、滴下部位をセロテープ(登録商標)(ニチバン社製)で完全に固定する。その後勢いよくはがす。画像欠落具合にて評価した。
耐薬品性は、画像部の欠落が無い場合は「◎」、画像部の僅かな溶解がある場合は「○」、画像部が欠落した場合は「×」と評価した。
【0084】
3.光被りテスト
実施例1〜4、比較例1、2の平版印刷版原版を400ルクスの蛍光灯下に60分間被曝させそのまま印刷評価を行った。非画像部の汚れが無い場合は「○」、非画像部の汚れのため印刷できない場合は「×」と評価した。
【0085】
【表1】

【0086】
表1から明らかなように、本発明の感光性組成物において特定感光性樹脂とラジカル重合開始剤と光増感色素とを含有する感光層を設けたネガ型平版印刷版によると、湿式現像処理工程を経ずとも、いずれも高感度で、損紙枚数の少ない、耐薬品性に優れた平版印刷版原版が提供された。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。)
の構造を有する繰り返し単位と、下記式(II)〜(IV)
【化2】

(式中、R、R、R、R、R、及びRは、独立して水素原子又はメチル基を表し、L、Lは、独立して、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。)
の構造を有する繰り返し単位より選択される少なくとも1つとを共重合成分として含有し、前記式(I)の構造を有する繰り返し単位の含有量が60〜95モル%である高分子化合物。
【請求項2】
(A)下記式(I)
【化3】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。)
の構造を有する繰り返し単位と、下記式(II)〜(IV)
【化4】

(式中、R、R、R、R、R、及びRは、独立して水素原子又はメチル基を表し、L、Lは、独立して、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。)
の構造を有する繰り返し単位より選択される少なくとも1つとを共重合成分として含有し、前記式(I)の構造を有する繰り返し単位の含有量が60〜95モル%である高分子化合物と、
(B)ラジカル重合性開始剤と、
(C)光増感色素と
を少なくとも含有する感光性組成物。
【請求項3】
前記高分子化合物が、下記式(V)
【化5】

(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。)
の構造を有する繰り返し単位を共重合成分として更に含有する請求項2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の感光性組成物を含有する感光層を支持体上に設けてなるネガ型平版印刷版原版。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の感光性組成物を含有する感光層を支持体上に設け、前記感光層の上層に保護層を設けてなるネガ型平版印刷版原版。

【公開番号】特開2012−224796(P2012−224796A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95523(P2011−95523)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(390026435)岡本化学工業株式会社 (24)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】