説明

感光性組成物およびそれを用いた平版印刷版用原版

【課題】1液処理が可能であり、耐刷性能が優れた感光層の形成を可能とする感光性組成物、サーマルネガ版用平版印刷版原版、および画像形成方法を提供すること。
【解決手段】下記式(I)〜(III)


で表される繰り返し単位を少なくとも含有し、式(I)、(II)および(III)で表される繰り返し単位の含有量が、それぞれ3〜20質量%、15〜45質量%、および15〜35質量%であるアルカリ可溶性樹脂を少なくとも含有する感光性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性組成物およびそれを用いた平版印刷版用原版に関する。特にコンピューター等のデジタル信号から直接製版できるいわゆるダイレクト製版用のネガ型の平版印刷版用原版に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平版印刷版原版としては親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた構成を有するものが広く用いられている。その製版方法として、通常は、リスフイルムを介してマスク露光後、アルカリ性現像液又は有機溶剤によって非画像部を溶解除去することにより所望の印刷版を得る方法が用いられていた。
【0003】
最近では、画像情報をコンピューターを用いて電子的に処理、蓄積、出力するデジタル化技術が広く普及している。そして、その様なデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきた。その結果、レーザー光のような指向性の高い光をデジタル化された画像情報に従って走査し、リスフイルムを介すること無く、直接印刷版を製造するコンピューター・トゥ・プレート(CTP)技術が切望されており、これに適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題となっている。
【0004】
このような走査露光可能な平版印刷版原版としては、特許文献1〜4に開示されている。これら文献によると、親水性支持体上にレーザー露光によりラジカルなどの活性種を発生しうる感光性組成物を含有した感光層を設けた構成が提案され、上市されている。この平版印刷版原版をデジタル情報に基づきレーザー走査露光し活性種を発生させ、その作用によって感光層を物理的、或いは化学的な変化を起こし不溶化させ、引き続き現像処理することによってネガ型の平版印刷版を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−257828号公報
【特許文献2】特開2007−262125号公報
【特許文献3】特開2009−86514号公報
【特許文献4】特開2009−25683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の現像処理工程はpH11以上のアルカリ性現像液で処理した後、水洗浴にてアルカリ剤を流し、その後、親水性樹脂を主とするガム液で処理するという3つの工程からなっており、現像廃液、水洗廃液、ガム廃液処理の問題等、環境及びランニングコスト面で問題があった。このように、製版作業の簡易化と地球環境保護の観点から現像処理工程を含む処理液の大幅な削減が強く望まれるようになってきている。その為、従来の現像工程とガム引き処理工程を一つにした1液処理に平版印刷版を作製する上で大きな有用性を見出している。
【0007】
従って、本発明の目的は、1液処理が可能であり、耐刷性能が優れた感光層の形成を可能とする感光性組成物、および該感光層が設けられたサーマルネガ版用平版印刷版原版、および該平版印刷版原版を用いた画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、感光性組成物であって、 下記式(I)〜(III)
【化1】

(式中、R、R、Rは、独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基を示し、Lは1〜10の整数を示す。)
で表される繰り返し単位を少なくとも含有し、式(I)で表される繰り返し単位の含有量が3質量%〜20質量%、式(II)で表される繰り返し単位の含有量が15質量%〜45質量%、式(III)で表される繰り返し単位の含有量が15質量%〜35質量%であるアルカリ可溶性樹脂と、
下記式(IV)
【化2】

(式中、R〜Rは、独立して水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、Xは、エステル結合、アミド結合又はフェニル基を示し、Zは、0又は1を示し、Yは、0〜10の整数を示す。)
で表わされるシランカップリング剤と、
赤外線吸収剤と、
ラジカル重合性開始剤と、
エチレン性二重結合を有する重合性化合物と
を少なくとも含有する感光性組成物を提供する。
本発明は、別の側面で、支持体と、上記感光性組成物を用いて前記支持体上に形成された感光層とを備えるネガ型平版印刷版原版を提供する。
本発明は、別の側面で、上記ネガ型平版印刷版原版を、赤外線レーザーで画像露光する工程と、画像露光された前記感光層を、ナトリウム塩と、界面活性剤と、水溶性カチオン化澱粉とを少なくとも含有するpHが8〜11の弱アルカリ性現像液を用いて現像する工程とを少なくとも含む画像形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る感光性組成物を用いて形成した感光層は、1液処理で現像可能であり、現像性、耐刷性、耐薬品性に優れた高品質な印刷版を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
[感光性組成物]
本発明に係る感光性組成物は、アルカリ可溶性樹脂と、シランカップリン剤と、赤外線吸収剤と、ラジカル重合性開始剤と、エチレン性二重結合を有する重合性化合物とを含有する。
【0012】
(A)アルカリ可溶性樹脂
本発明の感光性組成物に含有されるアルカリ可溶性樹脂は、下記式(I)で表される繰り返し単位を3質量%〜20質量%と、下記式(II)で表される繰り返し単位を15質量%〜45質量%と、下記式(III)で表される繰り返し単位を15質量%〜35質量%とを少なくとも含有する。このような組成を有する樹脂は、アルカリ可溶性になる。
【化3】

式中、R、R、Rは、独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10、好ましくは1〜4のアルキル基を示す。また、Lは1〜10の整数を示す。置換基は、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基等である。
【0013】
式(I)〜(III)で表される繰り返し単位を与えるモノマーは、従来の合成法を用いて合成することができる。アルカリ可溶性樹脂の製造方法については、例えば、各モノマー成分を溶媒に溶解し、ラジカル重合開始剤を添加し、必要に応じ加熱して重合を行うことにより所望の共重合体を得ることができる。モノマーの半量を先に重合させて、残りの半量を後に添加して重合させても良い。加熱温度は、例えば50〜150℃とすることができる。このようにして得られた共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン検算重量平均分子量が1万〜15万、好ましくは1万〜10万の範囲にあるものが用いられる。この重量平均分子量が1万未満では画像部の膨潤が起こりやすく、機械的強度が不足してくる場合がある。15万を超えると現像不良による汚れが発生しやすくなる場合があるため好ましくない。
【0014】
上記アルカリ可溶性樹脂の重合のために用いられる溶媒としては、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジオキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。溶媒の添加量は、モノマーの全量に対して、例えば1.0〜5.0倍の質量である。また、上記アルカリ可溶性樹脂のために用いられるラジカル重合開始剤としては、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。ラジカル重合開始剤の添加量としては、例えば、モノマーの全量に対して0.1〜3.0質量%である。
【0015】
式(I)〜(III)で表される繰り返し単位を与えるモノマーに必要に応じて加えられる重合可能な不飽和結合基を有する他のモノマーとして、例えば下記(1)〜(10)に挙げるモノマーが望ましい。
(1)フェノール性水酸基を有するモノマー。例えば、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、p−イソプロペニルフェノール、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレートである。
(2)スルホンアミド基を有するモノマー。例えば、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミドである。
(3)活性イミド基を有するモノマー。例えばN−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミドである。
(4)脂肪族水酸基を有するモノマー。例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレートである。
(5)α,β−不飽和カルボン酸。例えばアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸である。
(6)アリル基を有するモノマー。例えば、アリルメタクリレート、N−アリルメタクリルアミドである。
(7)アルキルアクリレート類又はアルキルメタクリレート類。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸へキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、グリシジルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸へキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、グリシジルメタクリレートである。
(8)アクリルアミド類又はメタクリルアミド類。例えば、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−へキシルアクリルアミド、N−シクロへキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−へキシルメタクリルアミド、N−シクロへキシルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミドである。
(9)スチレン類。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン等である。
(10)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾ−ル、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
これらは、1種の化合物を単独で加えてもよいし、(1)〜(10)の同じグループの化合物を2種類以上組み合わせて加えてもよく、又は異なるグループの化合物を2種類以上組み合わせて加えてもよい。上記アルカリ可溶性樹脂において必要に応じて加えられる他のモノマーの含有量は好ましくは、アルカリ可溶性樹脂を構成するモノマーの全量中に1〜67質量%、好ましくは、5〜20質量%である。
【0016】
アルカリ可溶性樹脂は、上記(1)〜(10)のモノマーのうち、(5)のモノマーから誘導される繰り返し単位を含有することが好ましく、該繰り返し単位が有する側鎖カルボキシル基に重合性の二重結合部位を導入したものを含有することが特に好ましい。例えば、上記(5)のモノマーから誘導される繰り返し単位が有する側鎖カルボキシル基に、グリシジルメタクリレートを付加反応させることにより、末端に重合性の二重結合を導入することができる。二重結合を導入可能な化合物は、グリシジルメタクリレートに限定されず、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、メタクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル等であってもよい。側鎖カルボキシル基の末端に重合性の二重結合部位を導入することにより、より強固な感光層を得ることができる。上記(5)のモノマーから誘導される繰り返し単位は、好ましくは、アルカリ可溶性樹脂の総質量中の1〜67質量%を占める。
【0017】
また、グリシジルメタクリレート等の付加による二重結合部位の導入率としては、アルカリ可溶性樹脂中のカルボキシル基に対して好ましくは20〜70%、より好ましくは30〜60%である。二重結合部位の導入率は、反応温度、反応時間により調整できる。20%未満の導入率では、感度が著しく低下する場合があり、70%超の導入率では、現像性が悪くなる場合がある。
【0018】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。上記式(I)〜(III)で表される繰り返し単位を含有するアルカリ可溶性樹脂の含有量は、感光性組成物の総質量に対して好ましくは10〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%である。10質量%以上では、特に耐刷性、耐薬品性が良くなる。一方、10質量%未満では、現像性が悪くなる場合がある。
【0019】
本発明の感光性組成物は、式(I)〜(III)で表される繰り返し単位を含有するアルカリ可溶性樹脂とともに、別のアルカリ可溶性樹脂を含有してもよい。別のアルカリ可溶性樹脂としては、アクリル酸誘導体の共重合体が好ましい。アクリル酸誘導体の共重合体は、側鎖カルボキシル基を有するアクリル酸共重合体であって、当該カルボキシル基に二重結合を導入可能な化合物を付加反応させて、末端に重合性の二重結合を有するものが特に好ましい。ここで、アクリル酸誘導体には、アクリル酸のみならずメタクリル酸から誘導される化合物も含まれる。二重結合を導入可能な化合物としては、グリシジルメタクリレート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアナート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアナート等が挙げられるが、これらに限定されない。二重結合部位の導入率は、アクリル酸誘導体の共重合体中のカルボキシル基に対して好ましくは20〜70%、より好ましくは30〜60%である。アクリル酸共重合体の含有量は、感光性組成物の総質量に対して、好ましくは5.0〜20質量%である。
【0020】
アクリル酸誘導体の共重合体のGPC測定によるポリスチレン検算重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000〜150,000、特に好ましくは10,000〜100,000のものが用いられる。Mwが1,000以上、特に10,000以上では、特に十分な塗膜が得られ、150,000以下、特に100,000以下では、露光部分のアルカリ現像液に対する溶解性が良くなり、特に良好に現像できる。
【0021】
(B)シランカップリング剤
本発明の感光性組成物において使用されるシランカップリング剤は、式(IV)で表される。
【化4】

該シランカップリング剤は、例えば、トリクロロシランにアリルエーテル化合物を付加反応させ、アルコキシ化させることによって合成できる。これら化合物は、信越化学工業社、東レ・ダウコーニング社、Gelest社、チッソ社等から市販されている。上記式(IV)におけるR、RおよびRは、同一又は異なり、水素原子、又は置換基を有してもよい好ましくは炭素数1〜10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。R、RおよびRのいずれかがアルコキシ基である場合、その炭素数は、好ましくは1〜3である。置換基は、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基である。上記式(IV)におけるXは、エステル結合、アミド結合又はフェニル基を示す。Zは、0又は1を示す。Yは、0〜10の整数を示す。より好ましくは、0〜5である。
【0022】
式(IV)で表されるシランカップリング剤の含有量は、感光性組成物の総質量に対して好ましくは15〜40質量%、より好ましくは20〜40質量%である。15質量%以上では、特に耐刷性、耐薬品性が良くなる。一方、15質量%未満では、耐刷性、耐薬品性が悪くなる。
【0023】
(C)赤外線吸収剤
本発明の感光性組成物で使用される赤外線吸収剤は、画像露光光源の光を吸収して、そのエネルギーを熱に変換し得る化合物であれば特に限定されないが、波長域650〜1300nmの範囲に吸収極大を有し、好ましくは吸収極大でモル吸光係数εが10以上である赤外線吸収色素が特に有効である。赤外線吸収剤は、光の照射によって赤外線吸収剤から発生する熱、又は光電子移動を引き起こしラジカル発生を促進させるために用いられる。このため、本発明の感光性組成物は、赤外線吸収剤を含有することにより、レーザー露光によりアルカリ性現像液に対する溶解性が減少するネガ型感光層となる。
【0024】
上記赤外線吸収剤としては、シアニン系色素、スクアリウム系色素、クロコニウム系色素、アズレニウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、チオピリリウム系色素、ジチオール金属錯体系色素、アントラキノン系色素、インドアニリン金属錯体系色素、分子間CT色素等が好ましい。
【0025】
これらの色素は、公知の方法によって合成することができるが、市販品を用いることもできる。これらの色素は、日本化薬株式会社、DIC株式会社、山本化成社、林原社、三井化学社、昭和電工社、富士フィルム社等の各社から市販されている。
【0026】
上記赤外線吸収剤の添加量は、感光性組成物の総質量に対して0.5〜10質量%、好ましくは0.6〜8.0質量%である。添加量が0.5質量%以上、特に0.6質量%以上では、感度が特に高くなり、10質量%以下、特に8.0質量%以下では、非画像部(未露光部)の現像性が特に向上するので好ましい。
【0027】
(D)ラジカル重合性開始剤
ラジカル重合性開始剤としては公知の化合物を用いることができる。例えば、有機ホウ素塩、トリハロアルキル置換された化合物、ヘキサアリールビスイミダゾール、チタノセン化合物、ケトオキシム化合物、チオ化合物、有機過酸化物、オニウム塩(特開2003−114532号公報に記載のヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩)等が挙げられる。これらのラジカル重合性開始剤の中でも、特に有機ホウ素塩、オニウム塩が好ましく用いられる。更に好ましくは、有機ホウ素塩とオニウム塩を組み合わせて用いることである。
【0028】
上述したようなラジカル重合性開始剤の含有量は、エチレン性二重結合を有する重合性化合物に対して、1〜40質量%の範囲が好ましく、1〜20質量%の範囲で含まれることが更に好ましい。
【0029】
(E)エチレン性二重結合を有する重合性化合物
エチレン性二重結合を有する重合性化合物としては、公知の化合物を用いることができる。上記重合性化合物を含有することによって皮膜強度が向上し、高感度で支持体との密着性に優れ、耐刷性も向上すると考えられる。
【0030】
エチレン性二重結合を有する重合可能な化合物としては分子量1000以下のモノマーから分子量1000以上のオリゴマー、ポリマー領域のものまで種々のものを用いることができる。このような化合物として不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等、不飽和アルコールとイソシアネート化合物とのウレタン、不飽和カルボン酸とエポキシ化合物とのエステル等を挙げることができる。
【0031】
より具体的には、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルジオールジアクリレート、ネオペンチルジオールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。
【0032】
上記エチレン性二重結合を有する重合性化合物は、公知の方法で合成できるほか、市販のものを用いることができる。例えば、東亜合成社製、日油社製、共栄社化学社製、新中村化学社製、三菱化学社製、日本化薬社製、大阪有機化学社製等から市販されている。
【0033】
上記エチレン性二重結合を有する重合性化合物の添加量は、感光性組成物の総質量に対して(即ち、感光性組成物の全固形分に対して)好ましくは1〜40質量%、さらに好ましくは2〜30質量%である。添加量が、1質量%以上の場合は、感度がより早くなり、40質量%以下では、画像部(露光部)の耐キズ性がより向上するので好ましい。
【0034】
(F)その他の添加剤
本発明の感光性組成物は、前記の成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、着色剤、ロイコ色素、感脂性樹脂、重合禁止剤、界面活性剤、可塑剤等を更に添加することができる。
【0035】
本発明の感光性組成物は、画像を見やすくするために、着色剤を用いることができる。着色剤としては、油溶性染料及び塩基性染料が好ましい。具体的には、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、ビクトリアブルー、メチレンブルー、エチルバイオレット、ローダミンB、ビクトリアピュアブルーBOH(保土谷化学工業社製)、オイルブルー613(オリエント化学工業社製)、オイルグリーン等を挙げることができる。これらの染料の添加量は、好ましくは感光性組成物中に0.05〜5.0質量%であり、さらに好ましくは0.1〜4.0質量%である。0.05質量%以上、特に0.1質量%以上では、感光層の着色が十分で画像が特に見やすくなり、5.0質量%以下、特に4.0質量%以下では、現像後の非画像部に染料の残りが残りにくくなり好ましい。
【0036】
本発明の感光性組成物には、感光層の着色効果と現像液に対する溶解抑制効果を目的として、ロイコ色素を添加できる。ロイコ色素としては、従来の感熱記録材料に用いられているラクトン環を含む色素が好ましい。好ましい具体例としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3、6−ジメトキシフルオラン、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロルフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、3−ジメチルアミノ−5、7−ジメチルフルオラン、3−ジメチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7、8−ベンズフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロアミノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−(N−(3’−トリフルオロメチルフェニル)アミノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム)等を挙げることができる。
【0037】
ロイコ色素の含有量は、感光性組成物中に0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%である。含有量が0.01質量%以上、特に0.05質量%以上では、感光層の着色が十分となり、可視性が優れ、10質量%以下、特に5質量%以下では、非画像部(未露光部)の現像性が特に向上するので好ましい。
【0038】
さらに、本発明の感光性組成物には、感光層の感脂性(親油性)を向上させるために感脂性樹脂を添加することができる。感脂性樹脂としては、例えば、特開昭50−125806号公報に記載されているような、炭素数3〜15のアルキル基で置換されたフェノール類とアルデヒドの縮合物、又はt−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂などが使用可能である。上記感脂性樹脂が感光性組成物の総質量に占める割合は、0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは、0.05〜10質量%である。
【0039】
本発明の感光性組成物においては、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、即ち、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、感光性組成物中の全固形分の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。
また、必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにべヘン酸やべヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、感光性組成物中の全固形分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0040】
本発明の感光性組成物には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報、特開平3−208514号公報、特願2006−241033号明細書に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。非イオン界面活性剤の好適例としては、ソルビタントリステアレ−ト、ソルビタンモノパルミテ−ト、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。両性界面活性剤の好適例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業株式会社製)等が挙げられる。上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤が感光性組成物に占める割合は、0.01〜15質量%が好ましく、より好ましくは、0.01〜10質量%である。0.01質量%以上では、現像性が特に良好であり、また、15質量%超では、画像部の強度が弱くなる場合がある。
【0041】
本発明の感光性組成物には、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を添加することもできる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸トリブチル等が用いられる。上記可塑剤が、感光性組成物に占める割合は、0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは、0.05〜10質量%である。
【0042】
[ネガ型平版印刷版]
支持体上に、上記感光性組成物を含有する感光層を設けてなるネガ型平版印刷版もまた、本発明の一つである。感光層を設けたネガ型平版印刷版用原版によると、赤外線レーザーの照射時に、シランカップリング剤中の不飽和二重結合部位とエチレン性二重結合を有する重合性化合物の不飽和二重結合部位との高速重合によって非常に高密度な架橋構造となる。一方、シランカップリング剤中のシリル基部位は、感光層塗布時に自己縮合し、複雑な構造変化を起こし、感光層中でこれら無機化合物同士の相互作用によってより強固な感光層を生じると考えられる。また、本発明のアルカリ可溶性樹脂は構造式(I)、(II)、(III)で表される繰り返し単位を特定の範囲で含有することよりpHが8〜11での現像性と強固な耐刷性能を可能にした。
本発明の平版印刷版原版は、通常、感光性組成物の成分として上述したものを溶媒に溶かして感光液とし、適当な支持体上に感光液を塗布することにより製造することができる。ここで使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノ−ル、メチレンクロライド、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、ジオキソラン、アセトン、シクロヘキサノン、トリクロロエチレン、メチルエチルケトン、γ−ブチルラクトン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これら溶媒は単独あるいは2種以上混合して使用される。感光液中の上記感光性組成物の成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0043】
塗布する方法はとしては、種々の方法を用いることができるが、例えば、回転塗布、押し出し塗布、バーコーター塗布、ロール塗布、エアーナイフ塗布、ディップ塗布、カーテン塗布等を挙げることができる。感光層の塗布量は、用途により異なるが、乾燥時で0.5〜5.0g/mが好ましい。乾燥後の感光層の厚さは、例えば0.5〜5.0μmである。
【0044】
上記支持体としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、もしくは鋼等の金属板や、クロム、亜鉛、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄等がメッキもしくは蒸着された金属板、紙、プラスチックフィルム、もしくはガラス板や、樹脂が塗布された紙や、親水化処理されたプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0045】
上記支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものでなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みは、おおよそ0.1〜0.5mm、好ましくは0.12〜0.4mmである。
【0046】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、表面の圧延油を除去するための、例えば、界面活性剤、又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ブラシ研磨、ボール研磨、ブラスト研磨、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化方法としては、塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭53−123204号公報に開示されている機械的方法と電気化学的な方法を組み合わせた方法も利用することができる。このように粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、一般的に硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。
【0047】
陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜60質量%溶液、液温は5〜60℃、電流密度2〜50A/dm、電圧1〜100V、電解時間5秒〜3分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は0.5〜5.0g/mが適当で、0.5g/m以上では耐摩耗性が特に良くなり、5.0g/m以下では、陽極酸化の孔に染料などが特に染み込みにくくなるので好ましい。
【0048】
陽極酸化を施された後、アルミニウム板は、さらに、例えばケイ酸アルカリ、リン酸ソーダ、弗化ナトリウム、弗化ジルコニウム、アルキルチタネート、トリヒドロキシ安息香酸などの単独あるいは混合液による化成処理や、熱水溶液への浸漬もしくは水蒸気浴などによる封孔処理や、酢酸ストロンチウム、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム、もしくは安息香酸カルシウム等の水溶液による被覆処理や、ポリビニルピロリドン、ポリアミンスルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリアクリル酸、もしくはポリメタクリル酸等による表面もしくは裏面の化成あるいは被覆処理を後処理として行うこともできる。
【0049】
さらに、上記支持体として、特開平10−297130号公報に記載の表面処理を施したアルミニウム支持体等も使用することができる。
【0050】
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、上記感光性組成物を含有する感光層と、その上層に保護層とを設けてなる。本発明の平版印刷版原版の感光層は、光重合性ネガ型感光層であり、通常、露光を大気中で行うために、大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の感光層への混入を防止する目的で、感光層の上に、水溶性の保護層を設けることが好ましい。これらの低分子化合物は、感光層中で露光により生じる画像形成反応を阻害するためである。本発明における水溶性保護層は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことを要し、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、画像記録層との密着に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。このような、保護層に関する工夫が従来なされており、米国特許第3458311号明細書、特公昭55−49729号公報に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては、例えば、比較的結晶性に優れた水溶性化合物を用いることがよく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが知られているが、これらの内、ポリビニルアルコール(PVA)を主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
【0051】
保護層の成分(PVAの種類の選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐キズ性を考慮して選択される。一般には使用するPVAの加水分解率が高いほど(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高いほど)、膜厚が厚いほど酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。しかしながら、極端に酸素遮断性を高めると、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また、画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。また、画像部との密着性や、耐キズ性も版の取り扱い上極めて重要である。即ち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を親油性の感光層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害により膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。これに対し、これら2層間の接着性を改善すべく種々の提案がなされている。例えば、米国特許出願番号第292501号明細書、米国特許出願番号第44563号明細書には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジョン又は水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60質量%混合し、感光層の上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明の感光層組成物に対しては、これら公知の技術をいずれも適用することができる。このような保護層の塗布方法については、例えば、米国特許第3458311号明細書、特公昭55−49729号公報に詳しく記載されている。本発明の感光性組成物には、接着力、感度、不要なカブリの観点から、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンを併用することが好ましい。添加量比(質量比)は、ポリビニルアルコール:ポリビニルピロリドンの比率が3:1以下、即ち、PVAに対するPVPの混合比が1/3以下であることが好ましい。水溶性保護層の乾燥後の塗布質量としては、1.0〜3.0g/mであることが好ましい。保護層の厚さは、例えば1.0〜3.0μmである。
【0052】
本発明の平版印刷版原版は、感光層とその上層に保護層とを有するものであれば、感光層と保護層とが隣接している必要は必ずしもなく、感光層と保護層との間に、両者を接着させる目的で中間層を有していてもよい。
【0053】
本発明の平版印刷版原版を合紙なしで多数枚積み重ねた時の版同士の離脱性をよくし、また、合紙を間に入れて積み重ねた場合でも合紙と版との離脱性をよくするために、平版印刷版原版の保護層表面をマット化する場合がある。保護層表面をマット化する方法としては、保護層中にマット剤などを添加する方法、保護層表面に水溶性樹脂あるいは水溶性樹脂とマット剤などを溶解、分散させた溶液をスプレー塗布する方法などがある。マット剤としては、例えば二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ粉末、澱粉、コンスターチ、重合体粒子(例えばポリアクリル酸、ポリスチレンなどの粒子)などが挙げられる。
【0054】
さらに、保護層に他の機能を付与することができる。例えば、露光に使う波長の光の透過性に優れ、且つ画像形成に寄与しない波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(水溶性染料等)の添加により、感度低下を起こすことなく、セーフライト適性をさらに高めることができる。
【0055】
[現像液]
本発明に係る平版印刷版原版の現像処理には、(1)ナトリウム塩と、(2)界面活性剤と、(3)水溶性カチオン化澱粉とを含有するpH8〜11、好ましくはpH9.0〜11.0の水溶液である弱アルカリ性現像液を用いることができる。
【0056】
(1)ナトリウム塩
ナトリウム塩としては、水に溶解したときにアルカリ性を示すものであって、例えば珪酸ナトリウム、オルト珪酸ナトリウムが挙げられる。ナトリウム塩は、市販のものをそのまま使用できる。例えば、珪酸ソーダ1号、珪酸ソーダ2号、珪酸ソーダ3号、珪酸ソーダ4号、オルト珪酸ソーダ等の商品名にて販売されている。
ナトリウム塩の含有量は、現像液中に、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜20質量%である。含有量が0.01質量%未満では、非画像部の汚れを招く場合があり、20質量%を超えると、現像性を劣化させる場合がある。また、現像液は、ナトリウム塩を含有することによって容易に特定pHの8.0〜11に調整が可能である。すなわち、ナトリウム塩の含有量を調整することにより、pHの8.0〜11とすることができる。
【0057】
(2)水溶性カチオン化澱粉
現像液に使用される水溶性カチオン化澱粉は、例えば、1分子内に複数個のカチオン性を帯びた原子を持ち、分子内に水酸基と反応性を示すハロヒドリン基もしくはエポキシ環を有するポリマー型カチオン化剤と、澱粉の水酸基を反応させてエーテル結合を生じさせることにより得られる。
【0058】
ポリマー型カチオン化剤の例としては、ハロヒドリン基又はエポキシ環を有するモノマー1種類以上と、カチオン性モノマー1種類以上を共重合させることによって得られるカチオン性ポリマーである。
ハロヒドリン基又はエポキシ環を有するモノマーの具体的な例としては、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルジアリルアミン塩酸塩、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルジアリルメチルアンモニウムクロライド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルジアリルエチルアンモニウムクロライド、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルジアリルアミン塩酸塩、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルジアリルメチルアンモニウムクロライド、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルジアリルエチルアンモニウムクロライド、3−ヨード−2−ヒドロキシプロピルジアリルアミン塩酸塩、3−ヨード−2−ヒドロキシプロピルジアリルメチルアンモニウムクロライド、3−ヨード−2−ヒドロキシプロピルジアリルエチルアンモニウムクロライド、グリシジルジアリルアミン塩酸塩、グリシジルジアリルメチルアンモニウムクロライド、グリシジルジアリルエチルアンモニウムクロライドなどがあり、ここに示した例は一例でハロヒドリン基又はエポキシ環を有するモノマーであれば特に問題なく使用できる。
【0059】
カチオン性モノマーの具体的な例としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジエチルアンモニウムクロライド、ジエチルアミノエチルメタクリレート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアリルピリジニウムクロライド、ジアリルピペリジニウムクロライドなどのような化合物がある。無論、カチオン性モノマーであればこれら例に挙げたものだけに何等限定されない。
【0060】
ハロヒドリン基やエポキシ環を有するモノマー1種類以上とカチオン性モノマー1種類以上を共重合させることによって得られたカチオン性ポリマー(ポリマー型カチオン化剤)のゲルフィルタレーションクロマトグラフィー(GFC)測定による重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000〜100万、より好ましくは5000〜50万である。ハロヒドリン基やエポキシ環を有するモノマーとカチオン性モノマーとのモル比は、好ましくは1:1から1:50、より好ましくは1:10〜1:25である。また、カチオン性ポリマーのカチオン化度は、好ましくは0.01〜2.00質量%、更に好ましくは0.015〜1.00質量%である。カチオン化度は、ケルダール分析法に従い、カチオン化澱粉1分子中の窒素原子の含有量から窒素含有量を算出し、窒素含有量及び重量平均分子量から、グルコース残基1つあたりのカチオン基導入量を求め、カチオン化度(置換度)とした。重量平均分子量は、GFC法により測定できる。
【0061】
本発明に使用することが出来る澱粉は、ごく一般的に使用されている澱粉であり、特に限定されることはない。その澱粉の例としては、トウモロコシ、じゃがいも、タピオカ、米、小麦等の澱粉である。ここに挙げたのは、ほんの一例である。
【0062】
水溶性カチオン化澱粉としては、市販のカチオン化澱粉を用いることができる。例えば、星光PMC社製紙力増強剤シリーズDD−4280、王子コーンスターチ社製カチオン化澱粉、日澱化学社製EX−3、エキセルDH、ベトロサイズJ、ベトロサイズUのカチオン化澱粉、三晶社製マーメイドC−50、C−50H、マーメイドM−350B、SB GUM−POSIT等である。
【0063】
水溶性カチオン化澱粉の含有量は、現像液中に、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1.0〜10質量%である。ここで含有量が0.1質量%未満では、汚れる場合があり10質量%を超えると、現像液中に析出する場合がある。
【0064】
(3)界面活性剤
界面活性剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系界面活性剤がある。
アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミドニナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホコハク酸類、アルキル硫酸エステル塩類およびアルキルナフタレンスルホン酸塩類が好ましく用いられる。
【0065】
カチオン系界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0066】
ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及び/又はソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪酸エステル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0067】
界面活性剤としては、ソルビトール及び/又はソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、多価アルコールの脂肪酸エステルがより好ましい。
【0068】
また、水に対する安定な溶解性あるいは混濁性の観点から、ノニオン系界面活性剤としてはHLB値が6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。また、アセチレングリコール系とアセチレンアルコール系のオキシエチレン付加物、フッ素系、シリコン系等の界面活性剤も同様に使用できる。
【0069】
これらの界面活性剤は、単独もしくは組み合わせて使用することができる。また、これら界面活性剤の現像液中における含有量は、有効成分換算で、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
上記現像液を用いることにより、本発明に係る平版印刷版原版を1液処理で現像することができる。1液処理では、好ましくは標準的な処理で最低必要となる現像処理、水洗処理およびガム引き処理を、1液で同時に行うことができる。
【実施例1】
【0070】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に示すが、本実施例は本発明を限定するものでない。
【0071】
[支持体の作製]
厚さ0.30mmのアルミニウム(材質1050)をアルカリ脱脂した後、パーミストンの水懸濁液をかけながらナイロンブラシで表面を研磨し、よく水洗した。次いで、70℃、15質量%水酸化ナトリウム水溶液を5秒間かけ流し、表面を3g/mエッチングした後、さらに水洗を行ない、次いで、1N塩酸浴中で200クーロン/dmで電解粗面化処理を行った。引き続き水洗した後、15質量%水酸化ナトリウム水溶液で表面を再度エッチングし、水洗を行った後、20質量%の硝酸水溶液に浸漬して、デスマットした。次いで、15質量%硫酸水溶液中で陽極酸化処理を行って、2.0g/mの酸化皮膜を形成し、水洗の後、50℃の1質量%のフッ化カリウムと10質量%のリン酸一ナトリウムの混合溶液で後処理し、水洗・乾燥した。
【0072】
[合成例1:特定アルカリ可溶性樹脂(A−1)]
500ml四つ口フラスコに、窒素ガス、還流管、温度計、攪拌機を準備し、23gのアクリル酸、12.5gのアクリロイルモルホリン、2.0gのジシクロペンタニルメタクリレート(FA−513M、日立化成工業社製)、12.5gのエチルカルビトールアクリレート(ECA)をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)100gに溶かした。窒素雰囲気下、85℃で加熱攪拌し、重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、V−59、和光純薬社製)0.4gを4gのPGMEに溶かし添加後、23gのアクリル酸、12.5gのアクリロイルモルホリン、2.0gのFA−513M、12.5gのECAを100gのPGMEに溶かしたものを滴下しながら4時間攪拌した。更に、0.2gのV−59を4gのPGMEに溶かし2時間攪拌した。その後、反応溶液を85℃で、48gのGMAを加え6時間付加反応させた。反応後、反応溶液に対して、重合禁止剤(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン・アルミニウム塩、Q−1301、和光純薬社製)を500ppm添加した。GPC測定からMwが17000の目的樹脂を得た。
【0073】
[合成例2:特定アルカリ可溶性樹脂(A−2)]
500ml四つ口フラスコに、窒素ガス、還流管、温度計、攪拌機を準備し、27.5gのアクリル酸、7.5gのアクリロイルモルホリン、5.0gのFA−513M、10gのエチルカルビトールアクリレート(ECA)をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)100gに溶かした。窒素雰囲気下、85℃で加熱攪拌し、0.4gの重合開始剤(V−59、和光純薬社製)を4gのPGMEに溶かし添加後、27.5gのアクリル酸、7.5gのアクリロイルモルホリン、5.0gのFA−513M、10gのECAを100gのPGMEに溶かしたものを滴下しながら4時間攪拌した。更に、0.2gのV−59を4gのPGMEに溶かし2時間攪拌した。その後、反応溶液を85℃で、50gのGMAを加え6時間付加反応させた。反応後、反応溶液に対して、Q−1301を500ppm添加した。GPC測定からMwが11000の目的樹脂を得た。
【0074】
[合成例3:特定アルカリ可溶性樹脂(A−3)]
500ml四つ口フラスコに、窒素ガス、還流管、温度計、攪拌機を準備し、26gのアクリル酸、9.5gのアクリロイルモルホリン、2.5gのFA−513M、9.5gのエチルカルビトールアクリレート(ECA)、2.5gの3−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェネチルメタクリレートをプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)100gに溶かした。窒素雰囲気下、85℃で加熱攪拌し、0.4gの重合開始剤(V−59、和光純薬社製)を4gのPGMEに溶かし添加後、26gのアクリル酸、9.5gのアクリロイルモルホリン、2.5gのFA−513M、9.5gのECA、2.5gの3−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェネチルメタクリレートを100gのPGMEに溶かしたものを滴下しながら4時間攪拌した。更に、0.2gのV−59を4gのPGMEに溶かし2時間攪拌した。その後、反応溶液を85℃で、48gのGMAを加え6時間付加反応させた。反応後、反応溶液に対して、Q−1301を500ppm添加した。GPC測定からMwが15000の目的樹脂を得た。
【0075】
[実施例1]
以下の組成を有する感光液イを調製した。感光液イを上記アルミニウム板上に乾燥後の塗布質量が1.9g/mになるように塗布し、90℃で5分間乾燥して平版印刷版原版を得た。
(感光液イ)
・特定アルカリ可溶性樹脂(A−1) 0.8g
・バインダー樹脂(M−1) 0.8g
・特定シランカップリング剤(S−1) 1.0g
・重合性化合物(E−1) 1.6g
・赤外線吸収剤(IRA−I) 0.05g
・ラジカル重合性開始剤1:有機ホウ素塩(B−1) 0.1g
・ラジカル重合性開始剤2:オニウム塩(I−1) 0.1g
・染料:オイルブルー613(オリエント化学工業株式会社製) 0.05g
・溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル 20ml
・溶媒:テトラヒドロフラン 20ml
【0076】
(水溶性保護層)
感光層表面に、下記水溶性保護層塗布液をワイヤーバーで塗布し、乾燥装置にて90℃で3分間乾燥させた。塗布量は、1.0g/mであった。
【0077】
(水溶性保護層塗布液)
・ポリビニルアルコール 100g
(日本合成化学工業株式会社製 ケン化度92モル%、重合度500)
・界面活性剤(日本乳化剤、エマレックス710) 0.1g
・蒸留水 400g
【0078】
[実施例2]
感光液イの代わりに、以下の組成を有する感光液ロを用いて、実施例1と同様にして平版印刷版原版を得た。
(感光液ロ)
・特定アルカリ可溶性樹脂(A−2) 0.8g
・バインダー樹脂(M−1) 0.8g
・特定シランカップリング剤(S−1) 1.0g
・重合性化合物(E−1) 1.6g
・赤外線吸収剤(IRA−I) 0.05g
・ラジカル重合性開始剤1:有機ホウ素塩(B−1) 0.1g
・ラジカル重合性開始剤2:オニウム塩(I−1) 0.1g
・染料:オイルブルー613(オリエント化学工業株式会社製) 0.05g
・溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル 20ml
・溶媒:テトラヒドロフラン 20ml
【0079】
[実施例3]
感光液イの代わりに、以下の組成を有する感光液ハを用いて、実施例1と同様にして平版印刷版原版を得た。
(感光液ハ)
・特定アルカリ可溶性樹脂(A−3) 0.8g
・バインダー樹脂(M−1) 0.8g
・特定シランカップリング剤(S−1) 1.0g
・重合性化合物(E−1) 1.6g
・赤外線吸収剤(IRA−I) 0.05g
・ラジカル重合性開始剤1:有機ホウ素塩(B−1) 0.1g
・ラジカル重合性開始剤2:オニウム塩(I−1) 0.1g
・染料:オイルブルー613(オリエント化学工業株式会社製) 0.05g
・溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル 20ml
・溶媒:テトラヒドロフラン 20ml
【0080】
[比較例1]
感光液イの代わりに、以下の組成を有する感光液ニを用いて、実施例1と同様にして平版印刷版原版を得た。
(感光液ニ)
・比較アルカリ可溶性樹脂1(C−1) 0.8g
・バインダー樹脂(M−1) 0.8g
・特定シランカップリング剤(S−1) 1.0g
・重合性化合物(E−1) 1.6g
・赤外線吸収剤(IRA−I) 0.05g
・ラジカル重合性開始剤1:有機ホウ素塩(B−1) 0.1g
・ラジカル重合性開始剤2:オニウム塩(I−1) 0.1g
・染料:オイルブルー613(オリエント化学工業株式会社製) 0.05g
・溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル 20ml
・溶媒:テトラヒドロフラン 20ml
【0081】
[比較例2]
感光液イの代わりに、以下の組成を有する感光液ホを用いて、実施例1と同様にして平版印刷版原版を得た。
(感光液ホ)
・比較アルカリ可溶性樹脂2(C−2) 0.8g
・バインダー樹脂(M−1) 0.8g
・特定シランカップリング剤(S−1) 1.0g
・重合性化合物(E−1) 1.6g
・赤外線吸収剤(IRA−I) 0.05g
・ラジカル重合性開始剤1:有機ホウ素塩(B−1) 0.1g
・ラジカル重合性開始剤2:オニウム塩(I−1) 0.1g
・染料:オイルブルー613(オリエント化学工業株式会社製) 0.05g
・溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル 20ml
・溶媒:テトラヒドロフラン 20ml
【0082】
【化5】

【化6】

【化7】

上記式において、括弧に付加された添え字は重量分率を表す。
【0083】
[評価方法]
実施例1〜3、比較例1、2で得られた平版印刷版原版を以下のように評価した。
1.現像処理性評価
平版印刷版原版を、Kodak社製Trend setter 800 QTMにて、解像度2400dpi、外面ドラム回転数360rpmで照射エネルギー100mJ/cmでAM200線の50%網点画像とベタ画像を露光した。これを下記の組成を有する現像液に20秒間浸し、現像処理した。完全に現像できた場合は「○」、現像不良であった場合は「×」と評価した(表1)。
(現像液)
・水溶性カチオン化澱粉(星光PMC社製、DD−4280) 185g
・界面活性剤(日本乳化剤、エマレックス710) 0.1g
・珪酸ソーダ3号 5g
・トリポリリン酸ナトリウム 1g
・EDTA 1g
・蒸留水 310g
【0084】
2.画像強度評価
「1.現像処理性評価」と同様にして得られた50%網点画像を、10%の湿し水(東洋インキ工業社製、News King Alky)に2分浸漬し、その後脱脂綿にて3分間強く擦り、画像が擦れる、或いは剥離しないかどうかを評価した。画像部に全く変化がない場合は「○」、少し剥離するが実用範囲内であった場合は「△」、完全に剥離した場合は「×」として示す。
【0085】
3.インク汚れテスト
「1.現像処理性評価」と同様にして得られた50%網点画像に、軽く水拭きした後、新聞用インク(東洋インキ工業社製、ヴァンテアンエコー・スミ)をハンドローラーを用いて評価版に着肉させ、再度軽く水拭きしインクによる汚れがないかを確認した。非画像部の汚れが無かった場合は「○」、非画像部の汚れがあった場合は「×」として示す。
【0086】
4.耐薬品テスト
「1.現像処理性評価」と同様にして得られた50%網点画像を、ウルトラプレートクリーナーマイルド(エスケー液製造社製)を15分間滴下し、脱脂綿で拭取った後、滴下部位をセロテープ(登録商標)(ニチバン社製)で完全に固定する。その後勢いよくはがす。画像部位の侵されかたで評価した。画像部に全く変化が無かった場合は「○」、剥離は無いが少し溶解した場合は「△」、完全に剥離した場合は「×」として示す。
【0087】
【表1】

【0088】
表1より、実施例1〜3の平版印刷版原版は、1液現像処理で優れた現像性、耐刷性能、及び耐薬品性能をもつ印刷版を提供できることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)〜(III)
【化1】

(式中、R、R、Rは、独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基を示し、Lは1〜10の整数を示す。)
で表される繰り返し単位を少なくとも含有し、式(I)で表される繰り返し単位の含有量が3質量%〜20質量%、式(II)で表される繰り返し単位の含有量が15質量%〜45質量%、式(III)で表される繰り返し単位の含有量が15質量%〜35質量%であるアルカリ可溶性樹脂と、
下記式(IV)
【化2】

(式中、R〜Rは、独立して水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、Xは、エステル結合、アミド結合又はフェニル基を示し、Zは、0又は1を示し、Yは、0〜10の整数を示す。)
で表わされるシランカップリング剤と、
赤外線吸収剤と、
ラジカル重合性開始剤と、
エチレン性二重結合を有する重合性化合物と
を少なくとも含有する感光性組成物。
【請求項2】
前記アルカリ可溶性樹脂が、さらに、α,β−不飽和カルボン酸から誘導される繰り返し単位を1〜67質量%含有する請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記シランカップリング剤の含有量が15質量%〜40質量%である請求項1又は請求項2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
支持体と、請求項1〜3のいずれかに記載の感光性組成物を用いて前記支持体上に形成された感光層とを備えるネガ型平版印刷版原版。
【請求項5】
前記感光層の上層に形成された保護層をさらに備える請求項4に記載のネガ型平版印刷版原版。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のネガ型平版印刷版原版を、赤外線レーザーで画像露光する工程と、
画像露光された前記感光層を、ナトリウム塩と、界面活性剤と、水溶性カチオン化澱粉とを少なくとも含有するpHが8〜11の弱アルカリ性現像液を用いて現像する工程と
を少なくとも含む画像形成方法。

【公開番号】特開2012−230194(P2012−230194A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97536(P2011−97536)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(390026435)岡本化学工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】