説明

感光性組成物及びプリント配線板

【課題】耐熱クラック性に優れたレジスト膜を形成できる感光性組成物、並びに該感光性組成物を用いたプリント配線板を提供する。
【解決手段】本発明に係る感光性組成物は、芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と、酸化チタンと、環状エーテル骨格を有する化合物と、光重合開始剤とを含む。本発明に係るプリント配線板は、回路を表面に有するプリント配線板本体と、上記プリント配線板本体の上記回路が設けられた表面に積層されたレジスト膜3とを備える。レジスト膜3は、上記感光性組成物により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成させるソルダーレジスト膜や、発光ダイオードチップが搭載される基板上に形成される光を反射させるレジスト膜などのレジスト膜を形成するために好適に用いられる感光性組成物、並びに該感光性組成物を用いたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電子機器用途において、プリント配線板の上面に発光ダイオード(以下、LEDと略す)チップが搭載されている。LEDから発せられた光の内、上記プリント配線板の上面側に到達した光も利用するために、プリント配線板の上面に白色ソルダーレジスト膜が形成されていることがある。この場合には、LEDチップの表面からプリント配線板とは反対側に直接照射される光だけでなく、プリント配線板の上面側に到達し、白色ソルダーレジスト膜により反射された反射光も利用できる。従って、LEDから生じた光の利用効率を高めることができる。
【0003】
上記白色ソルダーレジスト膜を形成するための材料の一例として、下記の特許文献1には、エポキシ樹脂と加水分解性アルコキシシランとの脱アルコール反応により得られたアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を含有し、かつ不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂と、希釈剤と、光重合開始剤と、硬化密着性付与剤とをさらに含有するレジスト組成物が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂と、光重合開始剤と、エポキシ化合物と、ルチル型酸化チタンと、希釈剤とを含有する白色ソルダーレジスト組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−249148号公報
【特許文献2】特開2007−322546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2に記載のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成した場合には、はんだリフロー時のような200℃程度以上の高温に晒されると、レジスト膜が黄色に変色(以下、黄変と略す)することがある。さらに、レジスト膜が高温下に晒されると、クラックが生じることがある。
【0007】
本発明の目的は、耐熱クラック性に優れたレジスト膜を形成できる感光性組成物、並びに該感光性組成物を用いたプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の広い局面によれば、芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と、酸化チタンと、環状エーテル骨格を有する化合物と、光重合開始剤とを含む、感光性組成物が提供される。
【0009】
上記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂は、不飽和二重結合を有することが好ましい。また、上記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂は、芳香環を有するエポキシ化合物と多塩基酸化合物とを反応させて得られる樹脂、又は芳香環を有するエポキシ化合物と不飽和二重結合を少なくとも1つ有するカルボキシル基含有化合物とを反応させた後、多塩基酸化合物をさらに反応させて得られる樹脂であることが好ましい。
【0010】
上記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂は、メチレン基を介して2つの芳香環が結合した第1の構造単位、及びオキシメチレン基と芳香環とがエーテル結合した第2の構造単位の内の少なくとも1つの構造単位を有することが望ましい。
【0011】
上記環状エーテル骨格を有する化合物は、芳香環を有することが好ましい。
【0012】
上記酸化チタンは、ルチル型酸化チタンであることが好ましい。上記酸化チタンは、ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンを含むことが好ましい。
【0013】
本発明に係る感光性組成物は、酸化防止剤をさらに含むことが好ましい。該酸化防止剤はフェノール系酸化防止剤であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る感光性組成物のある特定の局面では、感光性組成物が、フェノール系酸化防止剤を含まないか、又はフェノール系酸化防止剤をさらに含み、上記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂が、メチレン基を介して2つの芳香環が結合した第1の構造単位、及びオキシメチレン基と芳香環とがエーテル結合した第2の構造単位の内の少なくとも1つの構造単位を有し、上記酸化チタンが、ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンを含まないか、又は該ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンを含み、上記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂の上記第1の構造単位のモル数をVとし、上記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂の上記第2の構造単位のモル数をWとし、上記ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンのモル数をX1とし、上記ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンではない酸化チタンのモル数をX2とし、かつ上記フェノール系酸化防止剤のフェノール基のモル数をYとしたときに、下記式(1)を満たす。
【0015】
0.06≦(5V+3W)/(3X1+X2+100Y)≦0.35 ・・・式(1)
【0016】
本発明に係る感光性組成物の他の特定の局面では、第1の液と、第2の液とを有し、該第1,第2の液が混合されて用いられる2液混合型の感光性組成物であり、上記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と、上記酸化チタンと、上記環状エーテル骨格を有する化合物と、上記光重合開始剤とはそれぞれ、上記第1の液及び上記第2の液の内の少なくとも一方に含まれており、上記第1,第2の液が混合された混合物は、上記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と、上記酸化チタンと、上記環状エーテル骨格を有する化合物と、上記光重合開始剤とを含む。
【0017】
上記第1の液が、上記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を少なくとも含み、かつ、上記第2の液が、上記環状エーテル骨格を有する化合物を少なくとも含むことが好ましい。
【0018】
本発明に係るプリント配線板は、回路を表面に有するプリント配線板本体と、該プリント配線板本体の上記回路が設けられた表面に積層されたレジスト膜とを備え、該レジスト膜が、本発明に従って構成された感光性組成物を用いて形成されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る感光性組成物は、芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と、酸化チタンと、環状エーテル骨格を有する化合物と、光重合開始剤とを含むので、耐熱クラック性に優れたレジスト膜を得ることができる。
【0020】
本発明に係る感光性組成物が酸化防止剤を含む場合には、耐熱黄変性に優れたレジスト膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明に係る感光性組成物を用いたレジスト膜を有するLEDデバイスの一例を示す部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0023】
本発明に係る感光性組成物は、(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と、(B)酸化チタンと、(C)環状エーテル骨格を有する化合物と、(D)光重合開始剤とを含む。
【0024】
((A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂)
本発明に係る感光性組成物に含まれている(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂は、芳香環とカルボキシル基とを有するものであれば特に限定されない。(A)芳香環を有するカルボキシルキ含有樹脂として、感光性の不飽和二重結合を少なくとも1つ有する感光性のカルボキシル基含有樹脂、および感光性の不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のいずれも使用可能である。(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0025】
(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂は、下記のカルボキシル基含有樹脂(a)〜(e)であることが好ましい。下記のカルボキシル基含有樹脂(a)〜(e)を得る際に、ベンゼン環、置換基を持つベンゼン環、多環芳香環又は複素芳香環を有する化合物が用いられる。上記ベンゼン環に置換した置換基としては、アルキル基、水酸基及び臭素や塩素などのハロゲン原子等が挙げられる。上記多芳香環としては、ナフタレン環やアントラセン環等が挙げられる。上記複素芳香環は、N、SやO等を含む。上記複素芳香環としては、ピリジン環、ピロール環、イミダゾール環及びチオフェン環等が挙げられる。
【0026】
(a)不飽和カルボン酸と重合性不飽和二重結合を有する化合物との共重合によって得られるカルボキシル基含有樹脂
(b)カルボキシル基含有(メタ)アクリル共重合樹脂(b1)と、1分子中にオキシラン環及びエチレン性重合性不飽和二重結合を有する化合物(b2)との反応により得られるカルボキシル基含有樹脂
(c)1分子中にそれぞれ1個のエポキシ基及び重合性不飽和二重結合を有する化合物と、重合性不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、不飽和モノカルボン酸を反応させた後、生成した反応物の第2級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂
(d)水酸基含有ポリマーに、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、生成したカルボン酸に、1分子中にそれぞれ1個のエポキシ基及び重合性不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる水酸基及びカルボキシル基含有樹脂
(e)芳香環を有するエポキシ化合物と飽和多塩基酸無水物や不飽和多塩基酸無水物などの多塩基酸化合物とを反応させて得られる樹脂、又は芳香環を有するエポキシ化合物と不飽和二重結合を少なくとも1つ有するカルボキシル基含有化合物とを反応させた後、飽和多塩基酸無水物や不飽和多塩基酸無水物などの多塩基酸化合物をさらに反応させて得られる樹脂
【0027】
上記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂は、芳香環を有するエポキシ化合物と多塩基酸化合物とを反応させて得られる樹脂、又は芳香環を有するエポキシ化合物と不飽和二重結合を少なくとも1つ有するカルボキシル基含有化合物とを反応させた後、多塩基酸化合物をさらに反応させて得られる樹脂であることが好ましい。この場合には、レジスト膜の耐熱クラック性をより一層高めることができる。
【0028】
上記芳香環を有するエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、ナフタレン型、トリスフェノールメタン型、ジシクロペンタジエン・フェニレン型、フェノール・ビフェニレン型、フェノキシ型、グリシジルアミン型、ビスフェノールS型などのエポキシ化合物や、フタル酸ジグリシジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸グリシジル化物などの塩基酸のグリシジルエステル化物や、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0029】
(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂の酸価は、50〜200mgKOH/gの範囲内であることが望ましい。酸価が50mgKOH/g以上であると、現像時に弱アルカリ水溶液でも未露光部分の除去が容易である。酸価が200mgKOH/g以下であると、硬化被膜の耐水性、電気特性がより一層高くなる。また、(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、5,000〜100,000の範囲内であることが好ましい。重量平均分子量が5,000以上であると、指で触れたときの乾燥性がより一層良好になる。また、重量平均分子量が100,000以下であると、感光性組成物の露光後の現像性、及び感光性組成物の貯蔵安定性がより一層高くなる。
【0030】
上記(A)カルボキシル含有基樹脂は、メチレン基を介して2つの芳香環が結合した第1の構造単位、及びオキシメチレン基と芳香環とがエーテル結合した第2の構造単位の内の少なくとも1つの構造単位を有することが望ましい。
【0031】
なお、第1の構造単位や第2の構造単位における芳香環としては、ベンゼン環、置換基を持つベンゼン環、多環芳香環、複素芳香環等が挙げられる。上記ベンゼン環に置換した置換基としては、アルキル基、水酸基及び臭素や塩素などのハロゲン原子等が挙げられる。上記多芳香環としては、ナフタレン環やアントラセン環等が挙げられる。上記複素芳香環は、N、SやO等を含む。上記複素芳香環としては、ピリジン環、ピロール環、イミダゾール環及びチオフェン環等が挙げられる。
【0032】
上記第1の構造単位を有するカルボキシル基含有樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂や、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などの第1の構造単位を有する芳香族エポキシ樹脂と、フタル酸、無水フタル酸などの多塩基酸化合物とを反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、又は上記芳香族エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸などの不飽和二重結合を有する塩基酸化合物とを反応させた後、フタル酸、無水フタル酸などの多塩基酸化合物をさらに反応させて得られる不飽和二重結合及びカルボキシル基を含有する樹脂が挙げられる。
【0033】
上記第2の構造単位を有するカルボキシル基含有樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂や、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などの芳香族エポキシ樹脂と、フタル酸、無水フタル酸などの多塩基酸化合物とを反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、又は上記芳香族エポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸などの不飽和二重結合を有する塩基酸化合物とを反応させた後、フタル酸、無水フタル酸などの多塩基酸化合物をさらに反応させて得られる不飽和二重結合及びカルボキシル基を含有する樹脂が挙げられる。(A)カルボキシル基含有樹脂が、上記第1の構造単位及び上記第2の構造単位の内の少なくとも1つの構造単位を有する場合には、レジスト膜の耐熱黄変性及び耐熱クラック性をさらに一層高めることができる。
【0034】
上記第1の構造単位における2つの芳香環は、ベンゼン環または置換基を持つベンゼン環であることが好ましい。上記第1の構造単位は、下記式(11)で表される構造単位であることが好ましい。下記式(11)中に示された共有結合は、フェニレン基に対してどの位置に結合していてもよい。また、フェニレン基は置換されていてもよい。
【0035】
【化1】

【0036】
上記第2の構造単位における芳香環は、ベンゼン環または置換基を持つベンゼン環であることが好ましい。第2の構造単位は、下記式(12)で表される構造単位であることが好ましい。下記式(12)中に示された共有結合は、フェニレン基に対してどの位置に結合していてもよい。また、フェニレン基は置換されていてもよい。
【0037】
【化2】

【0038】
本発明に係る感光性組成物が、フェノール系酸化防止剤を含まないか、又はフェノール系酸化防止剤をさらに含み、上記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂が、メチレン基を介して2つの芳香環が結合した第1の構造単位、及びオキシメチレン基と芳香環とがエーテル結合した第2の構造単位の内の少なくとも1つの構造単位を有し、上記酸化チタンが、ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンを含まないか、又は該ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンを含み、上記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂の上記第1の構造単位のモル数をVとし、上記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂の上記第2の構造単位のモル数をWとし、上記ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンのモル数をX1とし、上記ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンではない酸化チタンのモル数をX2とし、かつ上記フェノール系酸化防止剤のフェノール基のモル数をYとしたときに、本発明に係る感光性組成物は、下記式(1)を満たすことが好ましい。
【0039】
0.06≦(5V+3W)/(3X1+X2+100Y)≦0.35 ・・・式(1)
【0040】
上記式(1)を満たす場合、レジスト膜の耐熱黄変性をより一層高めると共に耐熱クラック性を高めることができる。
【0041】
((B)酸化チタン)
本発明に係る感光性組成物に含まれている(B)酸化チタンは特に限定されない。(B)酸化チタンは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
(B)酸化チタンを用いた場合には、酸化チタン以外の他の無機フィラーを用いた場合と比較して、反射率が高いレジスト膜を形成できる。
【0043】
(B)酸化チタンは、ルチル型酸化チタン又はアナターゼ型酸化チタンであることが好ましい。ルチル型酸化チタンの使用により、耐熱黄変性により一層優れたレジスト膜を形成できる。上記アナターゼ型酸化チタンは、ルチル型酸化チタンよりも、硬度が低い。このため、アナターゼ型酸化チタンの使用により、レジスト膜の加工性を高めることができる。
【0044】
上記酸化チタンは、ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンを含むことが望ましい。上記酸化チタン100重量%中、上記ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンの含有量は10重量%以上であることが望ましく、30重量%以上であることがより望ましい。上記酸化チタンは、上記ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンであることがより望ましい。これらの場合には、レジスト膜の耐熱黄変性をより一層高めることができる。
【0045】
ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンとしては、例えば、ルチル塩素法酸化チタンである石原産業社製の品番:CR−90や、ルチル硫酸法酸化チタンである石原産業社製の品番:R−550等が挙げられる。
【0046】
本発明に係る感光性組成物100重量%中、(B)酸化チタンの含有量は、3重量%以上80重量%以下であることが好ましい。(B)酸化チタンの含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は75重量%である。(B)酸化チタンの含有量が上記範囲内にあると、レジスト膜が高温に晒されたときに、黄変し難くなる。さらに、塗工に適した粘度を有する感光性組成物を容易に調製できる。
【0047】
((C)環状エーテル骨格を有する化合物)
本発明に係る感光性組成物に含まれている(C)環状エーテル骨格を有する化合物は、環状エーテル骨格を有していれば特に限定されない。(C)環状エーテル骨格を有する化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
(C)環状エーテル骨格を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂や、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0049】
(C)環状エーテル骨格を有する化合物は、芳香環を有することが好ましい。この場合には、レジスト膜の耐熱クラック性をより一層高めることができる。
【0050】
上記芳香環を有するエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、ナフタレン型、トリスフェノールメタン型、ジシクロペンタジエン・フェニレン型、フェノール・ビフェニレン型、フェノキシ型、グリシジルアミン型、ビスフェノールS型などのエポキシ化合物や、フタル酸ジグリシジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸グリシジル化物などの塩基酸のグリシジルエステル化物や、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0051】
(C)環状エーテル骨格を有する化合物は、(A)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基と反応して、感光性組成物を硬化させるように作用する。
【0052】
(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂100重量部に対して、(C)環状エーテル骨格を有する化合物の含有量の好ましい下限は0.1重量部、より好ましい下限は1重量部、好ましい上限は50重量部、より好ましい上限は30重量部である。(C)環状エーテル骨格を有する化合物の含有量が上記好ましい上限及び下限を満たすと、レジスト膜の黄変をより一層抑制できる。
【0053】
((D)光重合開始剤)
本発明に係る感光性組成物は(D)光重合開始剤を含むため、感光性を有する。(D)光重合開始剤は特に限定されない。(D)光重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
(D)光重合開始剤としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド、ハロメチル化トリアジン、ハロメチル化オキサジアゾール、イミダゾール、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、アントラキノン、ベンズアンスロン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、チオキサントン、安息香酸エステル、アクリジン、フェナジン、チタノセン、α−アミノアルキルフェノン、オキシムや、これらの誘導体等が挙げられる。
【0055】
(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂100重量部に対して、(D)光重合開始剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、より好ましい下限は1重量部、好ましい上限は30重量部、より好ましい上限は15重量部である。(D)光重合開始剤の含有量が上記好ましい下限及び上限を満たすと、感光性組成物の感光性をより一層高めることができる。
【0056】
((E)希釈剤)
本発明に係る感光性組成物は、(E)希釈剤を含むことが好ましい。(E)希釈剤の使用により、感光性組成物を塗工しやすくすることができる。(E)希釈剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
(E)希釈剤は、感光性組成物の粘度を調整して作業性を向上させるとともに、架橋密度を高くしたり、密着性などを向上したりするために用いられる。(E)希釈剤として、光重合性モノマーなどの反応性希釈剤や、公知慣用の溶剤を使用できる。該溶剤としては、有機溶剤や、水等が挙げられる。
【0058】
上記光重合性モノマーとしては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキシド誘導体のモノ又はジ(メタ)アクリレート類、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール又はこれらのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物の多価(メタ)アクリレート類、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート類、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリジジルエーテルの(メタ)アクリレート類や、メラミン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの光重合性モノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
感光性組成物の液安定性を高める観点からは、親水性基を有する(メタ)アクリレート類が好ましい。また、感光性組成物の光硬化性を高める観点からは、多官能性の(メタ)アクリレート類が好ましい。上記感光性組成物100重量%中、上記光重合モノマーの含有量の好ましい上限は20重量%、より好ましい上限は10重量%である。上記光重合性モノマーの含有量が上記好ましい上限を満たすと、硬化物の表面のべたつきが少なく、指で触れたときの乾燥性が良好になる。
【0060】
上記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、並びに石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。上記有機溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
(E)希釈剤の含有量は特に限定されない。感光性組成物の塗工性を考慮して、(E)希釈剤は適宜の含有量で用いられる。
【0062】
((F)酸化防止剤)
高温に晒されたときにレジスト膜が黄変するおそれを小さくするために、本発明に係る感光性組成物は、(F)酸化防止剤を含むことが好ましい。(F)酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
(F)酸化防止剤は、ルイス塩基性部位を有することが好ましい。レジスト膜の黄変をより一層抑制する観点からは、(F)酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤や、アミン系酸化防止剤からなる群から選択された少なくとも一種であることが好ましい。レジスト膜の黄変をさらに一層抑制する観点からは、(F)酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤であることが好ましい。
【0064】
上記フェノール系酸化防止剤の市販品としては、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 1076、IRGANOX 1135、IRGANOX 245、IRGANOX 259や、IRGANOX 295(以上、いずれもチバ・ジャパン社製)、アデカスタブ AO−30、アデカスタブ AO−40、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80、アデカスタブ AO−90や、アデカスタブ AO−330(以上、いずれもADEKA社製)、Sumilizer GA−80、Sumilizer MDP−S、Sumilizer BBM−S、Sumilizer GM、Sumilizer GS(F)や、Sumilizer GP(以上、いずれも住友化学工業社製)、HOSTANOX O10、HOSTANOX O16、HOSTANOX O14や、HOSTANOX O3(以上、いずれもクラリアント社製)、アンテージ BHT、アンテージ W−300、アンテージ W−400や、アンテージ W500(以上、いずれも川口化学工業社製)、並びにSEENOX 224Mや、SEENOX 326M(以上、いずれもシプロ化成社製)等が挙げられる。
【0065】
上記リン系酸化防止剤としては、シクロヘキシルフォスフィンや、トリフェニルフォスフィン等が挙げられる。上記リン系酸化防止剤の市販品としては、アデアスタブ PEP−4C、アデアスタブ PEP−8、アデアスタブ PEP−24G、アデアスタブ PEP−36、アデアスタブ HP−10、アデアスタブ 2112、アデアスタブ 260、アデアスタブ 522A、アデアスタブ 1178、アデアスタブ 1500、アデアスタブ C、アデアスタブ 135A、アデアスタブ 3010や、アデアスタブ TPP(以上、いずれもADEKA社製)、サンドスタブ P−EPQや、ホスタノックス PAR24(以上、いずれもクラリアント社製)、並びにJP−312L、JP−318−0、JPM−308、JPM−313、JPP−613M、JPP−31、JPP−2000PTや、JPH−3800(以上、いずれも城北化学工業社製)等が挙げられる。
【0066】
上記アミン系酸化防止剤としては、トリエチルアミン、ジシアンジアミド、メラミン、エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−トリル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジンや、第四級アンモニウム塩誘導体等が挙げられる。
【0067】
(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂100重量部に対して、(F)酸化防止剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、より好ましい下限は5重量部、好ましい上限は30重量部、より好ましい上限は15重量部である。(F)酸化防止剤の含有量が上記好ましい下限及び上限を満たすと、耐熱黄変性により一層優れたレジスト膜を形成できる。
【0068】
(その他の成分)
本発明に係る感光性組成物は、着色剤、充填剤、消泡剤、硬化剤、硬化促進剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、安定剤、カップリング剤、タレ防止剤又は蛍光体等を含んでいてもよい。
【0069】
(感光性組成物及びその調製方法)
本発明に係る感光性組成物は、1液型の感光性組成物であってもよい。さらに、本発明に係る感光性組成物は、フィルム状の感光性組成物であってもよい。感光性組成物をフィルム状にする方法として、公知の方法を用いることができる。なお、フィルムにはシート含まれる。
【0070】
さらに、本発明に係る感光性組成物は、第1の液と、第2の液とを有し、該第1,第2の液が混合されて用いられる2液混合型の感光性組成物であってもよい。2液混合型の感光性組成物の場合には、使用前に重合又は硬化反応が進行するのを抑制できる。このため、2液それぞれのポットライフを向上できる。
【0071】
2液混合型の感光性組成物の場合には、(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と、(B)酸化チタンと、(C)環状エーテル骨格を有する化合物と、(D)光重合開始剤とはそれぞれ、上記第1の液及び上記第2の液の内の少なくとも一方に含まれる。
【0072】
上記第1,第2の液が混合された混合物は、感光性組成物であり、(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と、(B)酸化チタンと、(C)環状エーテル骨格を有する化合物と、(D)光重合開始剤とを含む。
【0073】
2液それぞれのポットライフをより一層高める観点からは、上記第1の液が、(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を少なくとも含み、かつ上記第2の液が、(C)環状エーテル骨格を有する化合物を少なくとも含むことが好ましい。上記第1の液が、(C)環状エーテル骨格を有する化合物を含まず、(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を少なくとも含み、かつ上記第2の液が、(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を含まず、(C)環状エーテル骨格を有する化合物を少なくとも含むことがより好ましい。すなわち、(A)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と(C)環状エーテル骨格を有する化合物とが、同じ液に含まれておらず、異なる液に含まれていることがより好ましい。
【0074】
本発明に係る感光性組成物は、例えば、各配合成分を撹拌混合した後、3本ロールにて均一に混合することにより調製できる。
【0075】
感光性組成物を硬化させるために使用される光源としては、紫外線又は可視光線等の活性エネルギー線を発光する照射装置が挙げられる。上記光源として、例えば、超高圧水銀灯、Deep UV ランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプや、エキシマレーザーが挙げられる。これらの光源は、感光性組成物の構成成分の感光波長に応じて適宜選択される。光の照射エネルギーは、所望とする膜厚又は感光性組成物の構成成分により適宜選択される。光の照射エネルギーは、一般に、10〜3000mJ/cmの範囲内である。
【0076】
(プリント配線板及びLEDデバイス)
本発明に係る感光性組成物は、プリント配線板のレジスト膜を形成する用途に好適に用いられ、ソルダーレジスト膜を形成する用途により好適に用いられる。本発明に係る感光性組成物は、レジスト組成物であることが好ましく、ソルダーレジスト組成物であることがより好ましい。
【0077】
本発明に係るプリント配線板は、回路を表面に有するプリント配線板本体と、該プリント配線板本体の上記回路が設けられた表面に積層されたレジスト膜とを備える。該レジスト膜が、本発明に係る感光性組成物により形成されている。
【0078】
本発明に係る感光性組成物は、LEDチップが基板に実装されているLEDデバイス中のレジスト膜の形成に好適に用いられ、ソルダーレジスト膜の形成により好適に用いられる。
【0079】
図1は、本発明に係る感光性組成物を用いて形成されたソルダーレジスト膜を備えるLEDデバイスの一例を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【0080】
図1に示すLEDデバイス1では、基板2上に、ソルダーレジスト膜3が形成されている。ソルダーレジスト膜3上に、LEDチップ7が搭載されている。
【0081】
基板2は、ガラス層5と樹脂層6とを有する積層基板である。基板2は、特に限定されず、樹脂と他の材料からなる積層基板に限らず、セラミック多層基板などの他の積層基板により形成されていてもよい。さらに、基板2は、単一の樹脂材料からなる樹脂基板であってもよい。基板2上には、電極4a,4bが形成されている。電極4a,4bは、適宜の金属もしくは合金からなる。回路としての電極4a,4bが上面に形成された基板2は、プリント配線板本体である。
【0082】
ソルダーレジスト膜3は、本発明の感光性組成物を基板2上に塗工し、露光し、現像することにより形成されている。より具体的には、電極4a,4bを形成した後に、基板2上の全領域に感光性組成物を塗工する。次に、下方に電極4a,4bが位置する部分が遮光部とされているマスクを用いて感光性組成物を上方から選択的に露光する。露光により、光が照射された領域では、感光性組成物が硬化する。遮光部で覆われた領域では感光性組成物の硬化は進行しない。従って、硬化していない感光性組成物を溶解する溶剤を用いて、露光されていない感光性組成物部分を除去する。このようにして、図1に示す開口部3a,3bを有するソルダーレジスト膜3を得ることができる。開口部3a,3bには、電極4a,4bがそれぞれ露出している。
【0083】
次に、下面7aに端子8a,8bを有するLEDチップ7をソルダーレジスト膜3上に搭載し、半田9a,9bにより端子8a,8bと電極4a,4bとをそれぞれ接合する。このようにして、LEDデバイス1が得られる。
【0084】
LEDデバイス1では、LEDチップ7を駆動すると、破線で示すように光が発せられる。この場合、LEDチップ7から基板2の上面2aとは反対側すなわち上方に照射される光だけでなく、ソルダーレジスト膜3に到達した光が矢印Aで示すように反射される。ソルダーレジスト膜3は、白色であり、上記光を高い効率で反射させる。従って、矢印Aで示す反射光も利用されるので、LEDチップ7の光の利用効率を高めることができる。
【0085】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0086】
まず、下記の合成例1〜8により、(A1)〜(A7)の芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂、並びに芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂を用意した。合成例1、6、7で得られるカルボキシル基含有樹脂は、第1および第2の構造単位を有するカルボキシル基含有樹脂に相当する。合成例5、8で得られるカルボキシル基含有樹脂は、第2の構造単位を有するカルボキシル基含有樹脂に相当する。
【0087】
(合成例1)
エチルカルビトールアセテート139重量部中で、触媒としてジメチルベンジルアミン0.5重量部と、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1重量部とを用いて、エポキシ当量210、軟化点80℃のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(「エポトートYDCN−704」、東都化成社製)210重量部と、アクリル酸50重量部と、酢酸18重量部とを反応させて、エポキシアクリレートを得た。得られたエポキシアクリレート278重量部と、テトラヒドロ無水フタル酸46重量部(エポキシアクリレートの水酸基1.0モルに対して0.3モル)とを反応させ、固形分酸価が52mgKOH/gの芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を65重量%含む溶液を得た。以下、この溶液を(A1)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と呼ぶ。
【0088】
(合成例2)
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えたフラスコに、溶剤としてエチルカルビトールアセテートと、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルとを入れ、窒素雰囲気下で80℃に加熱し、メタクリル酸とメチルメタクリレートとスチレンとを30:50:20のモル比で混合したモノマーを2時間かけて滴下した。滴下後、1時間攪拌し、温度を120℃に上げた。その後、冷却した。得られた樹脂の全てのモノマー単位の総量のモル量に対するモル比が10となる量のグリシジルアクリレートを加え、触媒として臭化テトラブチルアンモニウムを用い100℃で30時間加熱して、グリシジルアクリレートとカルボキシル基とを付加反応させた。冷却後、フラスコから取り出して、固形分酸価60mgKOH/gの芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を50重量%含む溶液を得た。以下、この溶液を(A2)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と呼ぶ。
【0089】
(合成例3)
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えたフラスコに、溶剤としてエチルカルビトールアセテートと、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルとを入れ、窒素雰囲気下で80℃に加熱し、メタクリル酸とスチレンとを20:80のモル比で混合したモノマーを2時間かけて滴下した。滴下後、1時間攪拌し、温度を120℃に上げた。その後、冷却した。冷却後、フラスコから取り出して、固形分酸価60mgKOH/gの芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を50重量%含む溶液を得た。以下、この溶液を(A3)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と呼ぶ。
【0090】
(合成例4)
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えたフラスコに、溶剤としてエチルカルビトールアセテートと、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルとを入れ、窒素雰囲気下で80℃に加熱し、メタクリル酸とメチルメタクリレートとを30:70のモル比で混合したモノマーを2時間かけて滴下した。滴下後、1時間攪拌し、温度を120℃に上げた。その後、冷却した。得られた樹脂の全てのモノマー単位の総量のモル量に対するモル比が10となる量のグリシジルアクリレートを加え、触媒として臭化テトラブチルアンモニウムを用い100℃で30時間加熱して、グリシジルアクリレートとカルボキシル基とを付加反応させた。冷却後、フラスコから取り出して、固形分酸価60mgKOH/gの芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂を50重量%含む溶液を得た。以下、この溶液を芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂と呼ぶ。
【0091】
(合成例5)
エチルカルビトールアセテート139重量部中で、触媒としてジメチルベンジルアミン0.5重量部と、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1重量部とを用いて、エポキシ当量210、軟化点80℃のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(「エポトートYDCN−704」、東都化成社製)210重量部とテトラヒドロ無水フタル酸46重量部(エポキシ基1.0モルに対して0.3モル)とを反応させ、固形分酸価が67mgKOH/gの芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を63重量%含む溶液を得た。以下、この溶液を(A4)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と呼ぶ。
【0092】
(合成例6)
エチルカルビトールアセテート139重量部中で、触媒としてジメチルベンジルアミン0.5重量部と、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1重量部とを用いて、エポキシ当量180のフェノールノボラック型エポキシ樹脂(「エポトートYDPN−638」、東都化成社製)180重量部と、アクリル酸50重量部と、酢酸18重量部とを反応させて、エポキシアクリレートを得た。得られたエポキシアクリレート248重量部と、テトラヒドロ無水フタル酸46重量部(エポキシアクリレートの水酸基1.0モルに対して0.3モル)とを反応させ、固形分酸価が58mgKOH/gの芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を66重量%含む溶液を得た。以下、この溶液を(A5)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と呼ぶ。
【0093】
(合成例7)
エチルカルビトールアセテート139重量部中で、触媒としてジメチルベンジルアミン0.5重量部と、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1重量部とを用いて、エポキシ当量180のビスフェノールF型エポキシ樹脂(「エポトートYDF−170」、東都化成社製)180重量部と、アクリル酸50重量部と、酢酸18重量部とを反応させて、エポキシアクリレートを得た。得られたエポキシアクリレート248重量部と、テトラヒドロ無水フタル酸46重量部(エポキシアクリレートの水酸基1.0モルに対して0.3モル)とを反応させ、固形分酸価が58mgKOH/gの芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を66重量%含む溶液を得た。以下、この溶液を(A6)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と呼ぶ。
【0094】
(合成例8)
エチルカルビトールアセテート139重量部中で、触媒としてジメチルベンジルアミン0.5重量部と、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1重量部とを用いて、エポキシ当量180のビスフェノールA型エポキシ樹脂(「エポトートYD−127」、東都化成社製)180重量部と、アクリル酸50重量部と、酢酸18重量部とを反応させて、エポキシアクリレートを得た。得られたエポキシアクリレート248重量部と、テトラヒドロ無水フタル酸46重量部(エポキシアクリレートの水酸基1.0モルに対して0.3モル)とを反応させ、固形分酸価が58mgKOH/gの芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を66重量%含む溶液を得た。以下、この溶液を(A7)芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と呼ぶ。
【0095】
(B)酸化チタン
以下の実施例及び比較例で用いた酸化チタンの詳細は以下の通りである。
ルチル型酸化チタン(1):石原産業社製、型番:CR−97。塩素法により製造されたルチル型酸化チタン。
ルチル型酸化チタン(2):石原産業社製、型番:CR−50。塩素法により製造されたルチル型酸化チタン。
ルチル型酸化チタン(3):石原産業社製、型番:CR−90。塩素法により製造されたルチル型酸化チタン、シリカにより処理されている。
ルチル硫酸法酸化チタン(1):硫酸法により製造されたルチル酸化チタン、石原産業社製、品番:R−630。
ルチル硫酸法酸化チタン(2):硫酸法によって製造されたルチル型酸化チタン、石原産業社製、品番:R−550。シリカにより処理されている。
アナターゼ型酸化チタン:石原産業社製、品番:A−220。
【0096】
(他の成分)
後述の実施例及び比較例では、下記の表1,2に示す成分を適宜用いた。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
(実施例1)
合成例1で得られた芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)25重量部と、ルチル型塩素法酸化チタン(石原産業社製「CR−97」)40重量部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「jER828」)8重量部と、光重合開始剤(光ラジカル発生剤、BASFジャパン社製「TPO」)2重量部と、フェノール系酸化防止剤(チバジャパン社製「IRGANOX 1010」)0.5重量部と、希釈剤としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、ダイセルサイテック社製)5重量部と、エチルカルビトールアセテート(ダイセル化学工業社製)20重量部とを配合し、混合機(練太郎SP−500、シンキー社製)にて3分間混合した後、3本ロールにて混合し、混合物を得た。その後、SP−500を用いて、得られた混合物を3分間脱泡することにより、感光性組成物を得た。
【0100】
(実施例2〜23及び比較例1〜5)
使用した材料の種類及び配合量を下記の表3〜6に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、感光性組成物を得た。
【0101】
(実施例1〜23及び比較例1〜5の評価)
(1)測定サンプルの調製
100mm×100mm×厚さ0.8mmのFR−4である基板を用意した。この基板上に、スクリーン印刷法により、100メッシュのポリエステルバイアス製の版を用いて、ベタパターンで感光性組成物を印刷した。印刷後、80℃のオーブン内で20分間乾燥させ、レジスト材料層を基板上に形成した。次に、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、紫外線照射装置を用い、レジスト材料層に波長365nmの紫外線を、照射エネルギーが400mJ/cmとなるように100mW/cmの紫外線照度で4秒間照射した。その後、未露光部のレジスト材料層を除去してパターンを形成するために、炭酸ナトリウムの1重量%水溶液にレジスト材料層を浸漬して現像し、基板上にレジスト膜を形成した。その後、150℃のオーブン内で1時間加熱して、レジスト膜を後硬化させることにより、測定サンプルとしてのレジスト膜を得た。得られたレジスト膜の厚みは20μmであった。
【0102】
(2)耐熱黄変性
測定サンプルを加熱オーブン内に入れ、270℃で5分間加熱した。
【0103】
色彩・色差計(コニカミノルタ社製、CR−400)を用いて、熱処理される前の評価サンプルのL*、a*、b*を測定した。また、熱処理された後の評価サンプルのL*、a*、b*を測定し、これら2つの測定値からΔE*abを求めた。下記の判定基準で耐熱黄変性を判定した。
【0104】
[耐熱黄変性の判定基準]
○○:熱処理の後の評価サンプルのΔE*abが2.5未満
○:熱処理の後の評価サンプルのΔE*abが2.5以上、4未満
△:熱処理の後の評価サンプルのΔE*abが4以上、5.5未満
×:熱処理の後の評価サンプルのΔE*abが5.5以上
【0105】
(3)耐熱クラック性
測定サンプルを加熱オーブン内に入れ、270℃で5分間加熱した。熱処理された後の評価サンプルのクラックの有無を、顕微鏡を用いずに確認した。さらに、熱処理された後の評価サンプルのクラックの有無を、顕微鏡を用いて確認した。下記の判定基準で耐熱クラック性を判定した。
【0106】
[耐熱クラック性の判定基準]
○○:顕微鏡を用いずに見ても、顕微鏡で見ても、クラックが確認できない
○:顕微鏡を用いずに見るとクラックが確認できないものの、顕微鏡を用いて見るとクラックが確認できる
×:顕微鏡を用いずに見ても、クラックが確認できる
××:顕微鏡を用いずに見ても、クラックが確認でき、かつレジスト膜の剥離が確認できる
結果を下記の表3〜6に示す。なお、評価欄に、前述した式(1)の「(5V+3W)/(3X1+X2+100Y)」の値を併せて示す。
【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【0109】
【表5】

【0110】
【表6】

【0111】
次に、第1の液と第2の液とを有する2液混合型の感光性組成物を用意した。
【0112】
(実施例24)
下記の表7に示す材料を下記の表7に示す配合量で配合し、混合機(練太郎SP−500、シンキー社製)にて3分間混合した後、3本ロールにて混合し、混合物を得た。その後、SP−500を用いて、得られた混合物を3分間脱泡することにより、第1の液を得た。
【0113】
下記の表7に示す材料を下記の表7に示す配合量で配合し、混合機(練太郎SP−500、シンキー社製)にて3分間混合した後、3本ロールにて混合し、混合物を得た。その後、SP−500を用いて、得られた混合物を3分間脱泡することにより、第2の液を得た。
【0114】
上記のようにして、第1,第2の液を有する2液混合型の感光性組成物を用意した。
【0115】
(実施例25〜35)
第1の液及び第2の液で使用した材料の種類及び配合量を下記の表7,8に示すように変更したこと以外は、実施例24と同様にして、2液混合型の感光性組成物を得た。
【0116】
(実施例25〜35の評価)
実施例1〜24及び比較例1〜5と同様の評価を実施した。なお、基板上に感光性組成物を印刷する際に、第1,第2の液を混合した。
【0117】
結果を下記の表7,8に示す。
【0118】
【表7】

【0119】
【表8】

【符号の説明】
【0120】
1…LEDデバイス
2…基板
2a…上面
3…ソルダーレジスト膜
3a,3b…開口部
4a,4b…電極
5…ガラス層
6…樹脂層
7…LEDチップ
7a…下面
8a,8b…端子
9a,9b…半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と、酸化チタンと、環状エーテル骨格を有する化合物と、光重合開始剤とを含む、感光性組成物。
【請求項2】
前記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂が、不飽和二重結合を有する、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂が、芳香環を有するエポキシ化合物と多塩基酸化合物とを反応させて得られる樹脂、又は芳香環を有するエポキシ化合物と不飽和二重結合を少なくとも1つ有するカルボキシル基含有化合物とを反応させた後、多塩基酸化合物をさらに反応させて得られる樹脂である、請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂が、メチレン基を介して2つの芳香環が結合した第1の構造単位、及びオキシメチレン基と芳香環とがエーテル結合した第2の構造単位の内の少なくとも1つの構造単位を有する、請求項1〜3に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記環状エーテル骨格を有する化合物が芳香環を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項6】
前記酸化チタンがルチル型酸化チタンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項7】
前記酸化チタンが、ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項8】
酸化防止剤をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項9】
前記酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤である、請求項8に記載の感光性組成物。
【請求項10】
フェノール系酸化防止剤を含まないか、又はフェノール系酸化防止剤をさらに含み、
上記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂が、メチレン基を介して2つの芳香環が結合した第1の構造単位、及びオキシメチレン基と芳香環とがエーテル結合した第2の構造単位の内の少なくとも1つの構造単位を有し、
前記酸化チタンが、ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンを含まないか、又は該ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンを含み、
前記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂の前記第1の構造単位のモル数をVとし、前記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂の前記第2の構造単位のモル数をWとし、前記ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンのモル数をX1とし、前記ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンではない酸化チタンのモル数をX2とし、かつ前記フェノール系酸化防止剤のフェノール基のモル数をYとしたときに、下記式(1)を満たす、請求項1〜9のいずれか1項に記載の感光性組成物。
0.06≦(5V+3W)/(3X1+X2+100Y)≦0.35 ・・・式(1)
【請求項11】
第1の液と、第2の液とを有し、該第1,第2の液が混合されて用いられる2液混合型の感光性組成物であり、
前記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と、前記酸化チタンと、前記環状エーテル骨格を有する化合物と、前記光重合開始剤とはそれぞれ、前記第1の液及び前記第2の液の内の少なくとも一方に含まれており、
前記第1,第2の液が混合された混合物が、前記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂と、前記酸化チタンと、前記環状エーテル骨格を有する化合物と、前記光重合開始剤とを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項12】
前記第1の液が、前記芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂を少なくとも含み、かつ、前記第2の液が、前記環状エーテル骨格を有する化合物を少なくとも含む、請求項11に記載の感光性組成物。
【請求項13】
回路を表面に有するプリント配線板本体と、
前記プリント配線板本体の前記回路が設けられた表面に積層されたレジスト膜とを備え、
前記レジスト膜が、請求項1〜12のいずれか1項に記載の感光性組成物を用いて形成されている、プリント配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2012−108523(P2012−108523A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−281761(P2011−281761)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【分割の表示】特願2010−513521(P2010−513521)の分割
【原出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】