説明

感光性組成物

【課題】高耐熱性、高透明性、耐クラック性、下地との密着性等に優れるのに加え、高誘電率を有し、アルカリ水溶液で現像することにより得られる高精細なパターニングされた膜の形成に有用な感光性組成物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるシランと、下記一般式(2)で表されるシランとを含有するシラン混合物を加水分解および縮合させることによって得られるシロキサンポリマー(A)と、光酸発生剤(B)と、上記(A)及び(B)が可溶な溶剤(C)と、を含む感光性組成物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の絶縁材料や半導体装置におけるパッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、平坦化膜、あるいは液晶表示素子における高屈折率膜、高誘電率ゲート絶縁膜等の耐熱性・光学特性・電気特性が求められるパターンの形成に用いられる感光性組成物、それによるパターン状透明膜、及びその膜を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、軽量化、低コスト化のために、モジュールやパッケージの実装の高密度化が進められている。高密度実装の一つの手段として、キャパシタなどの受動部品をモジュール基板内、実装基板内やトランジスター作製後の半導体ウェハ上に作り込む方法がある。キャパシタの静電容量は層間絶縁材料の誘電率に比例するため、大容量化には誘電率が大きい層間絶縁材料を用いることが有利である。
【0003】
一方、層間絶縁膜を形成する材料に感光性を有する材料を用いると、フォトリソグラフィーにより層間絶縁膜のパターン形成を容易に行うことができる。
感光性をもたせた高誘電率組成物として、例えば特許文献1〜3が知られている。これらの技術は、アルカリ可溶性アクリルポリマーに無機微粒子を分散し、なおかつ重合性モノマーを添加することで感光性材料としていた。しかし、得られるパターンサイズは数百μm程度の解像度であり、数μmの微細なパターンを得ることは難しかった。
また、無機微粒子を含有することによって、この材料を膜にした際の膜面均一性や膜表面強度の低下が起こる可能性があった。例えば、無機微粒子を含有する組成物では、耐クラック性に問題が生じることがあった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−365794号公報
【特許文献2】特開2002−365796号公報
【特許文献3】特開2003−288813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、高精細なレリーフパターンを基材上に形成するのに使用される感光性組成物、かつ光学特性・電気特性に優れる有機膜、及びこの有機膜を有する電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、高精細なパターン形成が可能で、なおかつ無機微粒子を含有しなくても、良好な光学特性・電気特性を両立することができる感光性組成物を見出し、前述の課題を高いレベルで解決できる組成物を完成するに至った。
本発明は以下の構成を有する。
【0007】
[1] 下記一般式(1)で表されるシランと、下記一般式(2)で表されるシランとを含有するシラン混合物を加水分解および縮合させることによって得られるシロキサンポリマー(A)と、光酸発生剤(B)と、上記(A)及び(B)が可溶な溶剤(C)と、を含む感光性組成物。
【化1】

(一般式(1)中、R1は独立して、水素、フッ素、炭素数1〜10のアルキル又は炭素数6〜15のアリールであり、該アルキルにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく、該アリールにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、R2は独立して、水素又は炭素数1〜5のアルキルであり、該アルキルにおいて任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、OR2におけるR2において、Oに隣接している−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、lは0〜2の整数であり、mは1〜3の整数である。)
【化2】

(一般式(2)中、R3は独立して、水素、フッ素、炭素数1〜10の分岐鎖を有してもよいアルキル、炭素数1〜10のアルケニル、炭素数6〜15のシクロアルキル、炭素数6〜15のシクロアルケニル又は炭素数6〜15のアリールであり、該アルキル、アルケニル、シクロアルキル及びシクロアルケニルにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく、該アルキルにおいて、任意の水素が、下記式(a)で表される基、ハロゲン、メルカプト、ウレイド、グリシジルエーテルを有してもよい炭素数6〜10のシクロアルキル、アミノ、アミノアルキル、イソシアナト、不飽和アシル及びグリシジルオキシから選ばれる置換基で置き換えられてもよく、該アリールにおいて任意の水素がフッ素又はアミノで置き換えられていてもよく、R4は独立して、水素、炭素数1〜5のアルキル、トリメチルシリル又は下記式(b)で表される構造であり、式(b)において、Xは−OH、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数1〜10のアルコキシであり、rは1〜20の整数を表し、R4中のアルキルにおいて任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、OR4におけるR4において、Oに隣接している−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、nは0〜3の整数を表す。)
【化3】

【化4】

【0008】
[2]前記一般式(1)で表されるシランがシアノエチルトリエトキシシラン又はシアノエチルトリメトキシシランである[1]に記載の感光性組成物。
【0009】
[3]前記一般式(2)で表されるシランが、オルト珪酸テトラエチル、オルト珪酸テトラメチル、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジエトキシシラン、エトキシトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン及びジフェニルシランジオールから選ばれる一以上である[1]又は[2]に記載の感光性組成物。
【0010】
[4]前記シロキサンポリマー(A)が、感光性組成物全量に対して0.1〜50重量%含まれる[1]〜[3]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0011】
[5]前記シロキサンポリマー(A)の重量平均分子量が、500〜100,000である[1]〜[4]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0012】
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の感光性組成物により形成されるパターン状透明膜。
【0013】
[7][6]に記載のパターン状透明膜を用いた絶縁膜。
【0014】
[8][6]に記載のパターン状透明膜を含む表示素子。
【発明の効果】
【0015】
本発明の感光性組成物を用いて形成される透明膜、絶縁膜等のパターン状透明膜は高精細なレリーフパターンが形成可能であり、耐熱性、透明性、下地との密着性等に優れ、高い誘電率を有している。高誘電率膜を使うことで、絶縁膜を厚くし、リーク電流を低く抑えることができるため、本発明の感光性組成物を用いた透明膜等の膜を用いた表示素子の表示品位が高まる。本発明の組成物は誘電率を高めるために無機微粒子を含有させる必要がないので、得られるパターン状透明膜は耐クラック性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
1 本発明の感光性組成物
本発明の感光性組成物は、一般式(1)で表されるシランと、一般式(2)で表されるシランを含有するシラン混合物を加水分解および縮合させることによって得られるシロキサンポリマー(A)と、光酸発生剤(B)と、上記(A)及び(B)が可溶な溶剤(C)とを含有する。
また本発明の感光性組成物は、本発明の効果が得られる範囲において、一般式(1)で表されるシランと、一般式(2)で表されるシランを含有するシラン混合物を加水分解および縮合させることによって得られるシロキサンポリマー(A)、光酸発生剤(B)、上記(A)及び(B)が可溶な溶剤(C)以外の他の成分をさらに含有していてもよい。
【0017】
本発明の感光性組成物は、シロキサンポリマー(A)100重量部に対し、光酸発生剤(B)を10〜300重量部含有することが、本発明の感光性組成物から得られる有機膜の透明性、耐熱性、及び現像性を高める観点から好ましい。
また、本発明の感光性組成物は、その全量に対し、シロキサンポリマー(A)を十分な現像性を発現させる観点から0.1〜70重量%含むことが好ましく、0.5〜50重量%含むことがより好ましく、1〜40重量%含むことが特に好ましい。
【0018】
1−1 シロキサンポリマー(A)
前記シロキサンポリマー(A)は、一般式(1)で表されるシランと一般式(2)で表
されるシランを含有するシラン混合物を加水分解および縮合させることによって得られる。
一般式(1)で表されるシラン及び一般式(2)で表されるシランの好ましい混合割合(モル比)は、一般式(1)で表されるシランの1モルに対して、一般式(2)で表されるシランが、耐クラック性の観点から、好ましくは1〜20モルであり、より好ましくは1〜10モルであり、さらに好ましくは1〜5モルである。
【0019】
1−2 一般式(1)で表されるシラン
本発明では、下記一般式(1)で表されるシランをシロキサンポリマー(A)を得るための原料として用いる。
【化5】

(一般式(1)中、R1は独立して、水素、フッ素、炭素数1〜10のアルキル又は炭素数6〜15のアリールであり、該アルキルにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく、該アリールにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、R2は独立して、水素又は炭素数1〜5のアルキルであり、該アルキルにおいて任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよい(ただし、OR2におけるR2において、Oに隣接している−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、lは0〜2の整数であり、mは1〜3の整数である。)
【0020】
本発明において、一般式(1)で表されるシランのうち、上記lが0又は1であるものが好ましく、mが1又は2であるものが好ましい。また、一般式(1)で表されるシランのうち、R1の炭素数が1〜3であるものが好ましい。また、R2の炭素数は、1〜3であるものが好ましい。
一般式(1)で表されるシランとしては、例えば、シアノエチルトリエトキシシラン、シアノエチルトリメトキシシランが挙げられる。これらのシランは、入手が容易である点から好ましい。
【0021】
1−3 一般式(2)で表されるシラン
下記一般式(2)で表されるシランは、1〜4ケのアルコキシをもつアルコキシシラン化合物、1〜4ケの−OHをもつシラノール化合物、又はジシロキサン、テトラシロキサンなどのシロキサン化合物より複数の化合物から選択されるものである。以下、加水分解及び縮合に用いることができる上記化合物をアルコキシシラン化合物類と呼ぶ。
【0022】
【化6】

(一般式(2)中、R3は独立して、水素、フッ素、炭素数1〜10の分岐鎖を有してもよいアルキル、炭素数1〜10のアルケニル、炭素数6〜15のシクロアルキル、炭素数6〜15のシクロアルケニル又は炭素数6〜15のアリールであり、該アルキル、アルケニル、シクロアルキル及びシクロアルケニルにおいて任意の水素がフッ素でおきかえられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく、該アルキルにおいて、任意の水素が、下記式(a)で表される基、ハロゲン、メルカプト、ウレイド、グリシジルエーテルを有してもよい炭素数6〜10のシクロアルキル、アミノ、アミノアルキル、イソシアナト、不飽和アシル及びグリシジルオキシから選ばれる置換基で置き換えられてもよく、該アリールにおいて任意の水素がフッ素又はアミノで置き換えられていてもよく、R4は独立して、水素、炭素数1〜5のアルキル、トリメチルシリル又は下記式(b)で表される構造であり、式(b)において、Xは−OH、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数1〜10のアルコキシであり、rは1〜20の整数を表し、R4中のアルキルにおいて任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、OR4におけるR4において、Oに隣接している−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、nは0〜3の整数を表す。)
【化7】

【化8】

【0023】
一般式(2)において、R3が炭素数1〜10の分岐鎖を有してもよいアルキルである場合、該アルキルの炭素数は1〜3であることが好ましく、該アルキルが有してもよい置換基のグリシジルエーテルを有してもよいシクロアルキルとしては、3,4−エポキシシクロヘキシルを挙げることができ、ハロゲンとしては、ブロモ又はクロロを挙げることができ、アミノアルキルとしては、アミノエチルアミノを挙げることができ、不飽和アシルとしては、アクリロイルまたはメタクリロイルを挙げることができる。
【0024】
一般式(2)で表されるシランのうち、R3がアルケニルの場合には、炭素数が2〜4であることがより好ましく、アリールの場合には、炭素数が6〜12であることがより好ましい。
また、一般式(2)で表されるシランのうち、R4のアルキルの炭素数は、1〜3であることが好ましい。
3またはR4において、2つのR3またはR4が結合して環状となってもよい。
また、R4として式(b)を選ぶ場合は、2つ以上のR4が式(b)であることが好ましい。
【0025】
一般式(2)で表されるシランの具体例として、トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート、オルト珪酸テトラブチル、オルト珪酸テトラプロピル、オルト珪酸テトライソプロピル、オルト珪酸テトラエチル、オルト珪酸テトラメチル、(3-ブロモプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]尿素、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、イソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル クロリド、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、メタクリル酸3-[トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル]プロピル、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、ベンジルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(p-トリル)シラン、トリエトキシメチルシラン、[ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル]トリエトキシシラン、トリエトキシ-1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシフルオロシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリメトキシ[3-(フェニルアミノ)プロピル]シラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3-クロロプロピルジメトキシメチルシラン、3-グリシジルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、シクロヘキシルジメトキシメチルシラン、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジメトキシジ-p-トリルシラン、エトキシトリエチルシラン、メトキシトリメチルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジフェニルシランジオール、ジエチル(イソプロピル)シラノール、トリエチルシラノール、トリフェニルシラノール、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンを挙げることができる。
一般式(1)で表されるシランと、これらのアルコキシシラン化合物類を用いたシロキサンポリマー(A)は、高温での焼成による透明性の劣化がほとんどなく、また現像時のアルカリ水溶液に対する溶解性が高く、すなわち現像性が高く、容易にパターン状透明膜が得られる。そしてその膜は、高精細なパターンが形成可能であり、耐溶剤性、高耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性を示し、さらには下地との密着性が高く、高い透明性と高い誘電率を有する。
【0026】
上記のアルコキシシラン化合物類は、単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記アルコキシシラン化合物類の具体例の中でも、オルト珪酸テトラエチル、オルト珪酸テトラメチル、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジエトキシシラン、エトキシトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、ジフェニルシランジオールは入手が容易であり、得られたパターン状透明膜の耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性を高める観点から好ましい。
【0028】
1−4 シロキサンポリマー(A)の製造方法
シロキサンポリマー(A)は、前記一般式(1)で表されるシランと一般式(2) で表されるシランを加水分解および縮合させることによって得られる。シロキサンポリマー(A)の反応方法は特に制限されないが、上記シラン類を加水分解縮合させて作ることが可能である。加水分解には水と、酸あるいは塩基触媒を用いることができる。酸触媒としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、硝酸、硫酸、塩酸、フッ酸、ホウ酸、リン酸、陽イオン交換樹脂等、また塩基触媒としてはアンモニア、トリエチルアミン、モノエタノー
ルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、陰イオン交換樹脂等が挙げられる。反応温度は特に限定されないが、通常50℃〜150℃の範囲である。反応時間も特に限定されないが、通常1〜48時間の範囲である。また、当該反応は、加圧、減圧又は大気圧のいずれの圧力下でも行うことができる。反応後は、シロキサンポリマーを安定化させるために、留去により低分子量成分を除去するのが好ましい。留去は減圧でも常圧でも可能で、常圧では留去温度は通常100℃〜200℃程度である。
【0029】
上記の加水分解縮合(重合)反応に使用する溶剤は、使用するシラン化合物、そして生成する重合体が溶解する溶剤が好ましい。当該溶剤の具体例は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等が挙げられる。溶剤は、これらの一種であってもよいし、これらの二種以上の混合物であってもよい。
【0030】
シロキサンポリマー(A)は、ポリスチレンを標準としたGPC分析で求めた重量平均分子量が500〜100,000の範囲であると、露光部分がアルカリ現像液で溶解されるまでの現像時間が適正であり、かつ、現像時に膜の表面が荒れにくくなり好ましい。さらに、重量平均分子量が1,500〜50,000の範囲であると、露光部分がアルカリ現像液で溶解されるまでの現像時間が適正であり、かつ、現像時に膜の表面が荒にくく、現像残渣も極めて少なくなるので、一層好ましい。同様の理由により、重量平均分子量が2,000〜20,000の範囲であると、特に一層好ましい。
【0031】
シロキサンポリマー(A)の重量平均分子量は、例えば、標準のポリスチレンには分子量が645〜132,900のポリスチレン(例えば、VARIAN社製のポリスチレンキャリブレーションキットPL2010−0102)、カラムにはPLgel MIXED−D(VARIAN社製)を用い、移動相としてTHFを使用して測定することができる。
【0032】
1−5 光酸発生剤(B)
本発明の感光性組成物で使用される光照射により酸を発生する、光酸発生剤としては、多くの公知化合物およびそれらの混合物を使用することができる。詳述すると、アンモニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレニウム塩、アルソニウム塩等の各種オニウム化合物、フェニルトリハロメチルスルホン化合物、ハロメチルトリアジン化合物、ハロメチルオキサジアゾール化合物等の有機ハロゲン化合物、1,2−ベンゾキノンジアジドのスルホン酸エステルもしくはアミド化合物や1,2−ナフトキノンジアジドのスルホン酸エステルもしくはアミド化合物のような1,2−キノンジアジド化合物、ニトロベンジルアルコールのスルホン酸エステル化合物、オキシムのスルホン酸エステル化合物、N−ヒドロキシアミドもしくはイミドのスルホン酸エステル化合物、β−ケトスルホン系化合物、ベンゾインのスルホン酸エステル化合物等のスルホン酸発生剤等を示すことができる。
【0033】
これらの光酸発生剤の中でも、1,2−キノンジアジド化合物、特に1,2−ナフトキノンジアジドのスルホン酸エステルもしくはアミド化合物を用いた感光性組成物の場合、アルカリ可溶性ポリマーにナフトキノンジアジドを添加することにより、組成物のアルカリ溶解性を低下させる(溶解抑止)能力が発現し、未露光部の現像液への溶解に対する耐
性が生じる。一方、露光部は、ナフトキノンジアジドがインデンカルボン酸に変換され、溶解抑止能力が消失して現像液に溶解するようになる観点から、使用が好ましい。
【0034】
1,2−キノンジアジド化合物としては、フェノール化合物と1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル、フェノール化合物と1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル、フェノール化合物の水酸基をアミノ基に置き換えた化合物と1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸とのスルホンアミド、フェノール化合物の水酸基をアミノ基に置き換えた化合物と1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのスルホンアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
フェノール化合物の具体例は、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール、又は2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバンなどである。
【0036】
1,2−キノンジアジド化合物として、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸とのエステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸とのエステル、又は4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステルなどを用いると、感光性組成物の透明性を高める観点から好ましい。これらは単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
1−6 溶剤(C)
本発明で用いられる溶剤(C)は、沸点が100℃〜300℃である化合物が好ましい。沸点が100℃〜300℃である前記溶剤の具体例には、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トルエン、キシレン、γ−ブチロラクトン、又はN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明で用いられる溶剤は、これらの沸点が100〜300℃である溶剤を20重量%以上含有する混合溶剤であってもよい。混合溶剤における、沸点が100〜300℃である溶剤以外の溶剤には、公知の溶剤の一又は二以上を用いることができる。
【0039】
本発明の感光性組成物に含まれる溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、乳酸エチルおよび酢酸ブチルから選ばれる少なくとも1つを用いると、塗布均一性が高くなるのでより好ましい。さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、乳酸エチル、および酢酸ブチルから選ばれる少なくとも1つを用いると、感光性組成物の塗布均一性を高め、また人体への安全性の観点からより一層好ましい。
【0040】
また、本発明の感光性組成物において、シロキサンポリマー(A)、光酸発生剤および溶剤の総量に対し、固形分であるシロキサンポリマー(A)および光酸発生剤が総量で5〜50重量%となるように溶剤が配合されることが好ましい。
【0041】
1−7 その他の成分
本発明の感光性組成物には、解像度、塗布均一性、現像性、接着性を向上させるために各種の添加剤を添加することができる。添加剤には、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、フッ素系又はシリコン系のレベリング剤・界面活性剤、シランカップリング剤等の密着性向上剤、アルコキシベンゾフェノン類等の紫外線吸収剤、エポキシ化合物、メラミン化合物又はビスアジド化合物等の架橋剤、多価カルボン酸、フェノール化合物等のアルカリ溶解性促進剤、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系化合物等の酸化防止剤が主に挙げられる。
【0042】
1−7−1 レベリング剤、界面活性剤
本発明の感光性組成物には、ポリフローNo.45、ポリフローKL−245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(以上いずれも商品名;共栄社化学工業株式会社)、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK346(以上いずれも商品名;ビックケミー・ジャパン株式会社)、KP−341、KP−358、KP−368、KF−96−50CS、KF−50−100CS(以上いずれも商品名;信越化学工業株式会社)、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(以上いずれも商品名;AGCセイミケミカル株式会社)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218(以上いずれも商品名;株式会社ネオス)、EFTOP EF−351、EFTOP EF−352、EFTOP EF−601、EFTOP EF−801、EFTOP EF−802(以上いずれも商品名;三菱マテリアル株式会社)、メガファックF−171、メガファックF−177、メガファックF−475、メガファックF−556、メガファックR−30(以上いずれも商品名;DIC株式会社)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、又はアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等が挙げられる。これらから選ばれる少なくとも1つを前記添加剤に用いることが好ましい。
【0043】
これらの添加剤の中でも、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、又はフルオロアルキルアミノスルホン酸塩等のフッ素系の界面活性剤、BYK306、BYK346、KP−341、KP−358、又はKP−368等のシリコン系添加剤の中から選ばれる少なくとも1種が添加されると、感光性組成物の塗布均一性が高くなるので好ましい。
また、本発明の感光性組成物におけるレべリング剤、界面活性剤の含有量は、通常、0.01〜10重量%であることが好ましい。
【0044】
1−7−2 密着性向上剤
本発明の感光性組成物は、形成される硬化膜と基板との密着性をさらに向上させる観点から、密着性向上剤をさらに含有してもよい。このような観点から、密着性向上剤の含有量は、感光性組成物全量に対して、10重量%以下であることが好ましい。一方で、0.01重量%以上であることが好ましい。
【0045】
このような密着性向上剤としては、例えば、シラン系、アルミニウム系又はチタネート系のカップリング剤を用いることができ、具体的には、3−グリシジルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤、及びテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤を挙げることができる。
【0046】
これらの中でも、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが、密着性を向上させる効果が大きいため好ましい。
【0047】
1−7−3 紫外線吸収剤
本発明の感光性組成物は、硬化膜の劣化防止能をさらに向上させる観点から、紫外線吸収剤をさらに含有してもよい。このような観点から、紫外線吸収剤の含有量は、感光性組成物全量に対して、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜8重量%であることがより好ましく、0.1〜5重量%であることがさらに好ましい。
【0048】
このような紫外線吸収剤としては、例えば、チヌビンP、チヌビン120、チヌビン144、チヌビン213、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン571、チヌビン765(以上いずれも商品名;BASFジャパン(株))が挙げられる。これらの中でも、チヌビンP、チヌビン120、チヌビン326が、透明性、相溶性の観点から好ましい。
【0049】
1−7−4 架橋剤
本発明の感光性組成物は、耐熱性、耐薬品性、膜面内均一性、可撓性、柔軟性、弾性をさらに向上させる観点から、架橋剤をさらに含有してもよい。このような観点では、架橋剤の含有量は、上記感光性組成物全量に対して、30重量%以下であることが好ましい。一方で、0.01重量%以上であることが好ましい。また、架橋剤は熱によって架橋する熱架橋剤でも、光照射によって架橋する光架橋剤でもよい。
【0050】
このような熱架橋剤としては、例えば、jER807、jER815、jER825、jER827、jER828、jER190P及びjER191P(商品名;三菱化学(株))、jER1004、jER1256、YX8000(商品名;三菱化学(株))、アラルダイトCY177、アラルダイトCY184(商品名;ハンツマン・ジャパン(株))、セロキサイド2021P、EHPE−3150(商品名;ダイセル化学工業(株))、テクモアVG3101L(商品名;三井化学(株))、ニカラックMW−30HM、ニカラックMW−100LM、ニカラックMW−270、ニカラックMW−280、ニカラックMW−290、ニカラックMW−390、ニカラックMW−750LM、(商品名;(株)三和ケミカル)が挙げられる。
また、このような光架橋剤としては、例えば、4,4'-ジアジドスチルベン-2,2'-二ナトリウムスルホネート、4,4'-ジアジドベンザルアセトン-2,2'-ジスルホネート二ナトリウム塩、1,3-ビス(4'-アジド-2'-スルホベンジリデン)ブタノン二ナトリウム塩、2,6-ビス(4'-アジド-2'-スルホベンジリデン)シクロヘキサノン二ナトリウム塩、2,6-ビス(4'-アジド-2'-スルホベンジリデン)-4-メチルシクロヘキサノン二ナトリウム塩、2,5-ビス(4'-アジド-2'-スルホベンジリデン)シクロペンタノン二ナトリウム塩、4,4'-ジアドシナミリデンアセトン-2,2'-二ナトリウムスルホネート、2,6-ビス(4'-アジド-2'-スルホシナミリデン)シクロヘキサノン二ナトリウム塩、2,5-ビス(4'-アジド-2'-スルホシナミリデン)シクロペンタノン二ナトリウム塩が挙げられる。
【0051】
1−7−5 アルカリ溶解性促進剤
本発明の感光性組成物は、アルカリ可溶性を調整する観点から、アルカリ溶解性促進剤をさらに含有してもよい。このような観点から、アルカリ溶解性促進剤の含有量は、感光性組成物全量に対して、10重量%以下であることが好ましい。一方で、0.01重量%以上であることが好ましい。
【0052】
このようなアルカリ溶解性促進剤としては、例えば、SMA17352(商品名;SARTOMER(株))、酸無水物系硬化剤としては、SMA1000、SMA2000、
SMA3000(商品名;SARTOMER(株))、無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、トリメリット酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物、無水メチルナジミック酸、水素化メチルナジミック酸無水物、ドデセニル無水コハク酸、ピロメリット酸二無水物、ヘキサヒドロピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、TMEG、TMTA−C、TMEG−500、TMEG−600、(商品名;新日本理化(株))、EpiclonB−4400(商品名;DIC(株))、YH−306、YH−307、YH−309(商品名;三菱化学(株))、SL−12AH、SL−20AH、IPU−22AH(商品名;岡村製油(株))、OSA−DA、DSA、PDSA−DA(商品名;三洋化成(株))、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール、又は2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン等のフェノール化合物を添加してもよい。これらのフェノール化合物の中でも、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、が好ましく挙げられる。
【0053】
本発明の感光性組成物に前記多価カルボン酸やフェノール化合物が添加されると、アルカリ可溶性を調整することができる。また、多価カルボン酸のカルボキシル、フェノール化合物のフェノールは、感光性組成物にエポキシが含まれる場合に、これらと反応して、耐熱性、耐薬品性をさらに向上させることができる。また、本発明の感光性組成物に光酸発生剤(B)として前記1,2−キノンジアジド化合物が含有されている場合、その感光性組成物に前記多価カルボン酸が添加されると、保存時に1,2−キノンジアジド化合物の分解が抑制され、感光性組成物の着色を防ぐことができる。
【0054】
1−7−6 酸化防止剤
本発明の感光性組成物には、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系化合物などの酸化防止剤を添加することができる。この中でもヒンダードフェノール系が耐候性の観点から好ましい。具体例としては、Irganox1010、IrganoxFF、Irganox1035、Irganox1035FF、Irganox1076、Irganox1076FD、Irganox1076DWJ、Irganox1098、Irganox1135、Irganox1330、Irganox1726、Irganox1425 WL、Irganox1520L、Irganox245、Irganox245FF、Irganox245DWJ、Irganox259、Irganox3114、Irganox565、Irganox565DD、Irganox295(商品名;BASFジャパン(株))、ADK STAB AO−20、ADK STAB AO−30、ADK STAB AO−50、ADK STAB AO−60、ADK STAB AO−70、ADK STAB AO−80(商品名;(株)ADEKA)が挙げられる。この中でもIrganox1010が、より好ましい。
酸化防止剤の含有量は、感光性組成物全量に対して、0.01〜10重量%であること
が好ましい。
【0055】
本発明の感光性組成物は、温度−30℃〜25℃の範囲で遮光して保存すると、組成物の経時安定性が良好となり好ましい。保存温度が−20℃〜10℃であれば、析出物もなく一層好ましい。
【0056】
本発明の感光性組成物は、透明の膜を形成するのに適しており、パターニングの際の解像度が比較的高いことから10μm以下の小さな穴の開いた絶縁膜を形成するのに最適である。ここで、絶縁膜とは、例えば、層状に配置される配線間を絶縁するために設ける膜(層間絶縁膜)等をいう。
【0057】
本発明のパターン状透明膜は、前述の本発明の感光性組成物の塗膜の露光、現像、及び焼成によって形成される。例えば、前記透明膜および絶縁膜等の本発明のパターン状透明膜は、レジスト分野において膜を形成する通常の方法で形成することができ、例えば以下のようにして形成される。
【0058】
まず、本発明の感光性組成物をスピンコート、ロールコート、スリットコート等の公知の方法により、ガラス等の基板上に塗布する。基板としては、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラス等の透明ガラス基板、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル、塩化ビニール、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成樹脂製シート、フィルム又は基板、アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板等の金属基板、その他セラミック板、光電変換素子を有する半導体基板等を挙げることができる。これらの基板には所望により、シランカップリング剤等の薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の前処理を行うことができる。
【0059】
次に、基板上の感光性組成物の膜をホットプレート又はオーブンで乾燥する。通常、60〜120℃で1〜5分間乾燥する。乾燥した基板上の前記膜に、所望のパターン形状のマスクを介して紫外線等の放射線を照射して露光する。照射条件は、感光性組成物中の光酸発生剤の種類にもよるが、例えば光酸発生剤が1,2−キノンジアジド化合物であれば、i線で5〜1,000mJ/cm2が適当である。紫外線の当たった部分の1,2−キノンジアジド化合物はインデンカルボン酸となり速やかに現像液に溶解する。
その他の光酸発生剤を用いる場合にも、i線で5〜1000mJ/cm2が適当である。
【0060】
放射線照射後の膜は、アルカリ溶液等の現像液を用いて現像される。この現像により、前記膜における放射線が照射された部分は速やかに現像液に溶解する。現像方法は特に限定されず、ディップ現像、パドル現像、シャワー現像のいずれも用いることができる。
【0061】
前記現像液はアルカリ溶液が好ましい。アルカリ溶液に含まれるアルカリの具体例は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム等が挙げられる。また、現像液としては、これらのアルカリの水溶液が好適に用いられる。すなわち、現像液として、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、又は2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アルカリ類等、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム等の無機アルカリ類の水溶液を挙げることができる。
【0062】
現像液には現像残渣の低減やパターン形状の適性化を目的として、メタノール、エタノ
ールや界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤には、例えばアニオン系、カチオン系、およびノニオン系から選択される界面活性剤を使用することができる。これらの中でも、特に、ノニオン系のポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加すると、解像度を高める観点から好ましい。
【0063】
前記現像された前記膜は、純水で十分洗浄され、その後、再度放射線が基板上の膜の全面に照射される。例えば放射線が紫外線の場合は、100〜1,000mJ/cm2の強度で前記膜に照射される。放射線が再照射された基板上の前記膜は、最後に180〜250℃で10〜120分間焼成される。こうして、所望のパターニングされた透明膜を得ることができる。
【0064】
このようにして得られたパターン状透明膜は、パターン状絶縁膜として用いることもできる。絶縁膜に形成された穴の形状は、真上から見た場合、正方形、長方形、円形又は楕円形であることが好ましい。さらに、該絶縁膜上に透明電極を形成し、エッチングによりパターニングを行った後、配向処理を行う膜を形成させてもよい。該絶縁膜は、耐スパッタ性が高いため、透明電極を形成しても絶縁膜にしわが発生せず、高い透明性を保つことができる。
【0065】
前記透明膜および絶縁膜等の前記パターン状透明膜は、液晶等を用いる表示素子に用いられる。例えば前記表示素子は、上記のようにして基板上にパターニングされた透明膜又は絶縁膜が設けられた素子基板と、対向基板であるカラーフィルター基板とを、位置を合わせて圧着し、その後熱処理して組み合わせ、対向する基板の間に液晶を注入し、注入口を封止することによって製作される。
【0066】
又は、前記素子基板上に液晶を散布した後、素子基板を重ね合わせ、液晶が漏れないように密封することによっても製作することができ、前記表示素子はこのように製作された表示素子であってもよい。
【0067】
このようにして、本発明の感光性組成物で形成された、優れた耐熱性と透明性を有する絶縁膜を液晶表示素子に用いることができる。なお、本発明の液晶表示素子に用いられる液晶、すなわち液晶化合物および液晶組成物については特に限定されず、いずれの液晶化合物および液晶組成物をも使用することができる。
【0068】
本発明の好ましい態様に係る感光性組成物は、例えば、パターニング透明膜および絶縁膜に対して一般的に求められている高耐溶剤性、高耐水性、高耐酸性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性等の各種特性を有するのに加え、高解像度を有し、かつ、高誘電率を有する。その結果、本発明の好ましい態様に係る感光性組成物を用いた透明膜等を用いた表示素子等の製品の表示品位を高めることができる。
【0069】
また、本発明の好ましい態様に係る感光性組成物は、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性に優れており、当該感光性組成物を用いた透明膜、絶縁膜、および表示素子等は、その製造後工程において溶剤、酸、アルカリ溶液等に浸漬、接触、熱処理等がなされても、膜に表面荒れが発生しにくい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0071】
[合成例1]シロキサンポリマー(A1)の合成
攪拌器付4つ口フラスコに、重合溶剤としてジエチレングリコールメチルエチルエーテ
ル、モノマーとしてシアノエチルトリメトキシシラン、オルト珪酸テトラエチル、ジエトキシジメチルシラン、ならびにトリエトキシフェニルシランを下記の重量で仕込み、さらにギ酸12.9gと水25.4gの混合溶液を滴下して加えた。その後、80℃で1時間加熱し、さらに低分子成分を1時間留去して除去し、さらに150℃で1.5時間留去して目的のポリマーの溶液を得た。
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル 220.2g
シアノエチルトリエトキシシラン 33.0g
オルト珪酸テトラエチル 15.8g
ジメトキシジメチルシラン 11.8g
トリメトキシフェニルシラン 30.0g
【0072】
溶液を室温まで冷却し、シロキサンポリマー(A1)溶液を得た。
【0073】
溶液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により重量平均分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は7,000であった。
【0074】
[合成例2]シロキサンポリマー(A2)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、重合を行った(ギ酸12.5g、水26.0gを添加)。
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル 213.2g
シアノエチルトリメトキシシラン 27.0g
オルト珪酸テトラエチル 15.8g
ジメトキシジメチルシラン 11.8g
トリメトキシフェニルシラン 30.0g
【0075】
合成例1と同様の処理を行い、シロキサンポリマー(A2)溶液を得た。得られたシロキサンポリマー(A2)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は9,200であった。
【0076】
[合成例3]シロキサンポリマー(A3)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、重合を行った(ギ酸13.2g、水25.4gを添加)。
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル 217.0g
シアノエチルトリエトキシシラン 33.0g
オルト珪酸テトラエチル 15.8g
ジエトキシジメチルシラン 14.5g
トリメトキシフェニルシラン 30.0g
【0077】
合成例1と同様の処理を行い、シロキサンポリマー(A3)溶液を得た。得られたシロキサンポリマー(A3)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は6,200であった。
【0078】
[合成例4]シロキサンポリマー(A4)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、重合を行った(ギ酸12.1g、水21.0gを添加)。
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル 192.0g
シアノエチルトリエトキシシラン 27.0g
オルト珪酸テトラエチル 13.0g
ジエトキシジメチルシラン 12.1g
トリエトキシフェニルシラン 30.0g
【0079】
合成例1と同様の処理を行い、シロキサンポリマー(A4)溶液を得た。得られたシロキサンポリマー(A4)のGPC分析(ポリスチレン標準)により求めた重量平均分子量は5,100であった。
【0080】
[実施例1]
[感光性組成物の製造]
溶剤としてジエチレングリコールメチルエチルエーテル、合成例1で得られたシロキサンポリマー(A1)溶液、1,2−キノンジアジド化合物である4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと6−ジアゾ−5,6−ジヒドロ−5−オキソナフタレン−1−スルホン酸とのエステル化合物(以下「AT」ともいう)、添加剤として界面活性剤である信越化学工業株式会社製KP−341(以下「KP−341」と略す)を下記の重量で混合溶解し、感光性組成物を得た。
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル 4.20g
シロキサンポリマー(A1)溶液 30.0g
AT 1.8g
KP−341 0.02g
【0081】
[実施例2〜4]感光性組成物の製造
実施例1において用いられたシロキサンポリマー(A1)溶液の代わりに、合成例2〜4で得られたシロキサンポリマー(A2〜A4)溶液を用いた以外は、実施例1と同様に感光性組成物を調製し、実施例2〜4の感光性組成物を得た。
【0082】
[比較合成例1]比較シロキサンポリマー(D1)の合成
シアノエチルトリエトキシシランを除いた以外は合成例1と同じ条件で反応を行い、比較シロキサンポリマー(D1)溶液を得た。このようにして得られたシロキサンポリマー(D1)のGPC分析により求めた重量平均分子量(Mw)は、4,800であった。
【0083】
[比較合成例2]比較シロキサンポリマー(D2)の合成
シアノエチルトリメトキシシランを除いた以外は合成例2と同じ条件で反応を行い、比較シロキサンポリマー(D2)溶液を得た。このようにして得られたシロキサンポリマー(D2)のGPC分析により求めた重量平均分子量(Mw)は、5,200であった。
【0084】
[比較合成例3]比較シロキサンポリマー(D3)の合成
シアノエチルトリメトキシシランを除いた以外は合成例3と同じ条件で反応を行い、比較シロキサンポリマー(D3)溶液を得た。このようにして得られたシロキサンポリマー(D3)のGPC分析により求めた重量平均分子量(Mw)は、4,200であった。
【0085】
[比較合成例4]比較シロキサンポリマー(D4)の合成
シアノエチルトリメトキシシランを除いた以外は合成例4と同じ条件で反応を行い、比較シロキサンポリマー(D4)溶液を得た。このようにして得られたシロキサンポリマー(D4)のGPC分析により求めた重量平均分子量(Mw)は、3,700であった。
【0086】
[比較例1〜4]感光性組成物の製造
実施例1において用いられたシロキサンポリマー(A1)溶液の代わりに、比較合成例1〜4で得られたシロキサンポリマー(D1〜D4)溶液を用いた以外は、実施例1と同様に感光性組成物を調製し、比較例1〜4の感光性組成物を得た。
【0087】
[感光性組成物の評価方法]
1)パターン状透明膜の形成
ガラス基板上に実施例1で合成された感光性組成物を500rpmで10秒間スピンコートし、100℃のホットプレート上で2分間乾燥した。この基板を空気中、ホールパターン形成用のマスクを介して、株式会社トプコン製のプロキシミティー露光機TME−150PRCを使用し、波長カットフィルターを通して350nm以下の光をカットしてg、h、i線を取り出し、露光ギャップ100μmで露光した。露光量はウシオ電機株式会社製の積算光量計UIT−102、受光器UVD−365PDで測定して100mJ/cm2とした。露光後のガラス基板を、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間ディップ現像し、露光部の組成物を除去した。現像後の基板を純水で60秒間洗ってから100℃のホットプレートで2分間乾燥した。この基板を前記露光機にてマスクを介さずに露光量300mJ/cm2で全面露光した後、オーブン中230℃で30分ポストベイクし、膜厚1.5μmのパターン状透明膜を形成した。膜厚はKLA−Tencor Japan株式会社製触針式膜厚計αステップ200を使用し、3箇所の測定の平均値を膜厚とした。
【0088】
2)現像後残膜率
現像の前後で膜厚を測定し、次式から計算した。
(現像後膜厚/現像前膜厚)×100(%)
【0089】
3)解像度
上記1)で得られたポストベイク後のパターン状透明膜の基板を光学顕微鏡で1,000倍にて観察し、ホールパターンの底にガラスが露出しているマスクサイズを確認した。ホールパターンができていない場合は不良(NG:No Good)とした。
【0090】
4)透明性
有限会社東京電色製TC−1800を使用し、透明膜を形成していないガラス基板をリファレンスとして波長400nmでの光透過率を測定した。
【0091】
5)耐熱性
上記1)で得られたパターン状透明膜の基板を230℃のオーブンで60分追加ベイクし、加熱の前後において上記4)と同様に光透過率を測定し、ポストベイク後(追加ベイク前)の光透過率をT1とし、追加ベイク後の光透過率をT2とした。ポストベイク後から追加ベイク後の光透過率の低下が少ないほど良好と判定できる。また加熱の前後で膜厚を測定し、膜厚の変化率を次式から計算した。
(追加ベイク後膜厚/ポストベイク後膜厚)×100(%)
【0092】
6)密着性
上記1)で得られたパターン状透明膜の基板を碁盤目剥離試験(クロスカット試験)により評価した。評価は1mm角の碁盤目100個中におけるテープ剥離後の残存碁盤目数を表した。
【0093】
7)比誘電率
アジレントテクノロジー社製LCRメーター(4284A)を使用し、透明膜の上下に電極を作成し、比誘電率測定を行った。評価は1kHzで行った。
【0094】
8)耐クラック性
上記1)で得られたポストベイク後の基板と、さらに350℃のオーブンで30分追加ベイクした基板について、光学顕微鏡にて1,000倍にて観察し、膜のクラックの有無を確認した。ポストベイク後、追加ベイク後のいずれにもクラックが発生しない場合○、ポストベイク後にクラックがないが追加ベイク後にクラックが発生した場合を×、ポスト
ベイク後に既にクラックが発生した場合を××とする。
【0095】
実施例1〜4で得られた感光性組成物について、上記の評価方法によって得られた結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
比較例1〜4で得られた感光性組成物について、上記の評価方法によって得られた結果を表2に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
比較例1〜4の感光性組成物について、比誘電率5以上は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の感光性組成物は、例えば、液晶表示素子に用いられる膜の形成に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるシランと、下記一般式(2)で表されるシランとを含有するシラン混合物を加水分解および縮合させることによって得られるシロキサンポリマー(A)と、光酸発生剤(B)と、上記(A)及び(B)が可溶な溶剤(C)と、を含む感光性組成物。
【化1】

(一般式(1)中、R1は独立して、水素、フッ素、炭素数1〜10のアルキル又は炭素数6〜15のアリールであり、該アルキルにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく、該アリールにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、R2は独立して、水素又は炭素数1〜5のアルキルであり、該アルキルにおいて任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよい(ただし、OR2におけるR2において、Oに隣接している−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、lは0〜2の整数であり、mは1〜3の整数である。)
【化2】

(一般式(2)中、R3は独立して、水素、フッ素、炭素数1〜10の分岐鎖を有してもよいアルキル、炭素数1〜10のアルケニル、炭素数6〜15のシクロアルキル、炭素数6〜15のシクロアルケニル又は炭素数6〜15のアリールであり、該アルキル、アルケニル、シクロアルキル及びシクロアルケニルにおいて任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、また任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく、該アルキルにおいて、任意の水素が、下記式(a)で表される基、ハロゲン、メルカプト、ウレイド、グリシジルエーテルを有してもよい炭素数6〜10のシクロアルキル、アミノ、アミノアルキル、イソシアナト、不飽和アシル及びグリシジルオキシから選ばれる置換基で置き換えられてもよく、該アリールにおいて任意の水素がフッ素又はアミノで置き換えられていてもよく、R4は独立して、水素、炭素数1〜5のアルキル、トリメチルシリル又は下記式(b)で表される構造であり、式(b)において、Xは−OH、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数1〜10のアルコキシであり、rは1〜20の整数を表し、R4中のアルキルにおいて任意の連続しない−CH2−がエーテル結合で置き換えられていてもよく(ただし、OR4におけるR4において、Oに隣接している−CH2−がエーテル結合で置き換えられることはない)、nは0〜3の整数を表す。)
【化3】

【化4】

【請求項2】
前記一般式(1)で表されるシランがシアノエチルトリエトキシシラン又はシアノエチルトリメトキシシランである請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記一般式(2)で表されるシランが、オルト珪酸テトラエチル、オルト珪酸テトラメチル、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジエトキシシラン、エトキシトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン及びジフェニルシランジオールから選ばれる一以上である請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記シロキサンポリマー(A)が、感光性組成物全量に対して0.1〜50重量%含まれる請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記シロキサンポリマー(A)の重量平均分子量が、500〜100,000である請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性組成物により形成されるパターン状透明膜。
【請求項7】
請求項6に記載のパターン状透明膜を用いた絶縁膜。
【請求項8】
請求項6に記載のパターン状透明膜を含む表示素子。

【公開番号】特開2013−80165(P2013−80165A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221042(P2011−221042)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】