説明

感光記録媒体

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、文字や画像等の記録に使用される感光記録媒体、更に詳しくは、感光性物質を内包した感光性マイクロカプセルを用いた文字や画像等の感光記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、前記感光性物質を用いた画像形成方法としては、例えば米国特許第2548366号、同第4399209号、同第4416966号、同第4576891号明細書、特開昭48−65011号、特開昭48−95420号、特開昭51−16807号、特開昭57−124343号、特開昭57−179836号、特開昭57−197538号、特開昭58−88739号、特開昭58−88740号、特開昭60−259490号、特開昭61−130945号、特開昭61−275742号、特開昭62−162147号、特開昭62−174195号、特開昭62−209444号及び特開昭62−209531号公報等が一般に知られている。
【0003】その一般的なものは次の通りである。即ち、感光性物質を内包した感光性マイクロカプセルを支持体表面に均一に塗布して形成した感光記録媒体に画像情報の光を照射して露光する。この露光時に光の当たらなかった感光性マイクロカプセルは未反応の状態であり、露光後に必要であれば加熱などの処理を行う。そして、後処理後、加圧もしくは加熱などを施すことにより、未硬化の感光性マイクロカプセルを破壊して、内包物たる感光性物質を被転写媒体に転写するようにしたものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記のような感光記録媒体を使用した従来の画像形成方法では、アナログ光によりポジ像は形成することができるものの、ネガ像を形成することができないといった問題点があった。本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、アナログ光によってネガ像を形成することができるようにした感光記録媒体を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために請求項1に記載の感光記録媒体は、露光によって反応する感光性物質を少なくとも内包した感光性マイクロカプセルをバインダを介して支持体表面上に塗布してなる感光記録媒体において、露光により未硬化の前記感光性マイクロカプセルを破壊して前記感光性物質により前記バインダの結着性及び接着性を低下させ、前記破壊された感光性マイクロカプセルと前記結着性及び接着性が低下したバインダを前記支持体上から剥ぎ取ることにより画像が形成されることを特徴とする。また、請求項2に記載の感光記録媒体は、請求項1に記載の感光記録媒体において、前記感光性マイクロカプセルは、シアンの色素を内包したマイクロカプセル、マゼンタの色素を内包したマイクロカプセル及びイエローの色素を内包したマイクロカプセルの3種類のマイクロカプセルを含み、該3種類のマイクロカプセルは、それぞれ異なる波長の露光により硬化することを特徴とする。また、請求項3に記載の画像形成方法は、露光によって反応する感光性物質を少なくとも内包した感光性マイクロカプセルをバインダを介して支持体表面上に塗布してなる感光記録媒体を用いて画像を形成する画像形成方法であって、露光により未硬化の前記感光性マイクロカプセルを破壊して前記感光性物質により前記バインダの結着性及び接着性を低下させ、前記破壊された感光性マイクロカプセルと前記結着性及び接着性が低下したバインダを前記支持体上から剥ぎ取ることにより画像を形成することを特徴とする。
【0006】
【作用】上記の構成を有する本発明によれば、露光により未硬化の感光性マイクロカプセルを破壊し、この破壊された感光性マイクロカプセル内に内包された感光性物質をバインダに染み込ませて該バインダの結着性及び接着性を低下させ、この低下したバインダを破壊された感光性マイクロカプセルごと感光記録媒体から剥ぎ取ることによって、感光記録媒体にネガ像を形成することができる。
【0007】
【実施例】以下、本発明を具体化した一実施例を図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施例の感光記録媒体1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを支持体11としており、この支持体11の表面上に感光性物質を内包した感光性マイクロカプセル12がバインダ13によって塗布されている。
【0008】感光性マイクロカプセル12には、シアン、マゼンタ及びイエローの色素を持つ3種類のものがある。即ち、シアンの色素を内包した感光性マイクロカプセル12は、650nm付近(レッド)の波長の露光によって固まる。マゼンタの色素を内包した感光性マイクロカプセル12は、550nm付近(グリーン)の波長の露光によって固まる。また、イエローの色素を内包した感光性マイクロカプセル12は、450nm付近(ブルー)の波長の露光によって固まる。この感光性マイクロカプセル12内には、感光性物質、重合開始剤および色素が内包される。
【0009】前記感光性マイクロカプセル12の製造例としては、例えば米国特許第2730456号、同第2800457号、同第2800458号、同第2969331号、同第3111407号、同第3281383号、同第3287154号、同第3418250号、同第3551346号、同第3576660号、同第3578605号、同第3660304号、同第3726803号、同第3755190号、同第3773695号、同第3793268号、同第3796669号、同第3803046号、同第3816331号、同第4001140号、同第4025455号、同第4087376号、同第4089802号明細書、英国特許第927807号、同第930422号、同第965074号、同第990443号明細書、カナダ特許第879043号明細書、特公昭36−9168号、特公昭38−19574号、特公昭42−446号、特公昭42−771号、特公昭48−40347号、特公昭49−24159号、特公昭51−28589号及び特公昭52−12150公報に記載の方法が挙げられる。しかし、これらに限定されるものではないことは勿論であり、また外壁形成物は、光を十分透過するような性質のものが好ましい。
【0010】また、前記感光性物質としては、例えば米国特許第4399203号、同第4416966号、同第4440836号明細書、特開昭57−124343号、特開昭57−179836号、特開昭57−197538号、特開昭58−88739号、特開昭58−88740号、特開昭61−130945号、特開昭61−275742号及び特開昭62−174195号公報等に見られるものが挙げられるが、これに限るものではないことな勿論である。
【0011】前記バインダ13には、感光性マイクロカプセル12内に内包された感光性物質により該バインダ13の結着性及び接着性が低下するようにしたものが使用されている。このバインダ13としては、バインダとして公知のもの、例えばアセタール樹脂、アクリル樹脂、酢酸セルロース、エチレン−酢ビ共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ABS、AS等が挙げられる。本実施例においては、バインダ13として塩ビ酢ビ共重合体が用いられている。
【0012】また、一般的な支持体11としては、紙、ガラス、フィルム、金属及びセラミック等が挙げられるが、バインダ13との濡れ性が良く、加圧及び加熱に耐えるものである必要がある。そして、例えば、トルエン(100重量部)にバインダ13(10重量部)を溶解させた溶液に、前記感光性マイクロカプセル12(5重量部)を分散させた溶液を支持体11に塗布して乾燥させることにより、前記感光記録媒体1を得ることができる。
【0013】次に前記感光記録媒体1を使用した画像形成方法について説明する。先ず、図2に示すように、感光記録媒体1の支持体11側から光源14により原稿15をアナログ投影露光して、感光記録媒体1に潜像を形成する。次に、図3に示すように、前記潜像が形成された感光記録媒体1を一対の加圧ローラ16,16間を通すことにより、未硬化の感光性マイクロカプセル12aを破壊する。この時、硬化した感光性マイクロカプセル12bは破壊されない。そして、この破壊された感光性マイクロカプセル12aから放出された感光性物質がバインダ13内に染み込み、バインダ13の結着性及び接着性を劣化させる。
【0014】更に、図4に示すように、通常の、即ち感光性物質が染み込んでいないバインダ13自身の結着性及びバインダ13と支持体11の接着性よりも劣る接着力の貼着剤層(図示せず)を表面に形成してある貼着ローラ17により、前記破壊された感光性マイクロカプセル12a及び該マイクロカプセル12aの破壊で感光性物質が内部に染み込むことにより結着性及び接着性が劣化したバインダ13が支持体11上から取り除かれる。
【0015】このようにして、図5に示すように、原稿15のネガ像となる感光記録媒体1を得ることができる。尚、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、請求の範囲を脱しない限りに於て、構成や作用を変えることができる。例えば、露光は支持体と反対側からしても良いし、デジタル露光でもかまわない。また、加圧時や未露光部分の剥ぎ取り時に加熱しても良いし、貼着ローラの代わりに静電的に剥ぎ取りを行うようにしても良い。更に、支持体上の像が形成された層の上に透明や白色あるいは青色の層を設けても良く、その層はシートが添付されていても樹脂などが塗布されていても良い。しかも、剥ぎ取った像を他の物に転写して正像としても良い。
【0016】
【発明の効果】以上詳述したことから明かなように、本発明よれば、アナログ露光といった比較的簡易な方法により、感光記録媒体に原稿からのネガ像を形成することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の感光記録媒体の一実施例の概略断面図である。
【図2】本発明の感光記録媒体を用いた画像形成の露光行程の概略断面図である。
【図3】本発明の感光記録媒体を用いた画像形成の加圧行程の概略断面図である。
【図4】本発明の感光記録媒体を用いた画像形成の剥ぎ取り行程の概略断面図である。
【図5】本発明の感光記録媒体を用いた画像形成の完成断面図である。
【符号の説明】
1…記録媒体
11…支持体
12…感光性マイクロカプセル
13…バインダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 露光によって反応する感光性物質を少なくとも内包した感光性マイクロカプセルをバインダを介して支持体表面上に塗布してなる感光記録媒体において、露光により未硬化の前記感光性マイクロカプセルを破壊して前記感光性物質により前記バインダの結着性及び接着性を低下させ、前記破壊された感光性マイクロカプセルと前記結着性及び接着性が低下したバインダを前記支持体上から剥ぎ取ることにより画像が形成されることを特徴とする感光記録媒体。

【請求項2】 前記感光性マイクロカプセルは、シアン
の色素を内包したマイクロカプセル、マゼンタの色素を内包したマイクロカプセル及びイエローの色素を内包したマイクロカプセルの3種類のマイクロカプセルを含み、該3種類のマイクロカプセルは、それぞれ異なる波長の露光により硬化することを特徴とする請求項1に記載の感光記録媒体。
【請求項3】 露光によって反応する感光性物質を少な
くとも内包した感光性マイクロカプセルをバインダを介して支持体表面上に塗布してなる感光記録媒体を用いて画像を形成する画像形成方法であって、露光により未硬化の前記感光性マイクロカプセルを破壊して前記感光性物質により前記バインダの結着性及び接着性を低下させ、前記破壊された感光性マイクロカプセルと前記結着性及び接着性が低下したバインダを前記支持体上から剥ぎ取ることにより画像を形成することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】第2884818号
【登録日】平成11年(1999)2月12日
【発行日】平成11年(1999)4月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−110585
【出願日】平成3年(1991)5月15日
【公開番号】特開平4−338754
【公開日】平成4年(1992)11月26日
【審査請求日】平成8年(1996)12月27日
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【参考文献】
【文献】特開 昭61−260241(JP,A)
【文献】特開 平2−100052(JP,A)
【文献】特開 平2−176660(JP,A)
【文献】特開 平1−216336(JP,A)
【文献】特開 平3−56957(JP,A)