説明

感受性薬剤存在下の放射によるポリマーマトリックスの製造方法

本発明は、少なくとも1種の感受性薬剤の存在下に重合性混合物を放射重合することにより薬剤を含有する薬物担持マトリックスを製造する方法であって、重合性混合物が、a)少なくとも1種の重合性化合物、b)任意成分として、少なくとも1種の光開始剤、c)任意成分として、少なくとも1種の添加剤を含み、これらは感受性薬剤の分解が2%未満となるように選択されるか、または感受性薬剤が分解から保護され、ラジカルを生ずる成分とともに照射した場合と比較して、分解が約50%以下となるように選択される方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、薬剤の存在下にポリマーマトリックスを製造する方法に関する。特に、本発明は、重合過程で反応性ラジカル中間体に感受性を示す薬剤を使用する上記方法に関する。
【0002】
近年、薬物の徐放性製剤の人気がますます高まってきている。これは多くの利点によりもたらされたものである。薬剤は一般により制御された方法で運ばれ、しばしば全身投与で必要とするより少ない投与量で済み、これにより、望ましくない多くの副作用が最小限に抑えられる。さらに、長時間有効で、かつ制御された薬剤放出マトリックスを使用すれば、医療従事者による継続的な投与の必要性が減少するため、医療費の観点から大きなメリットがある。徐放性製剤は、また、例えばそのような製剤が体内の薬剤を必要としている特定の部位に運ばれるならば、標的薬物放出の可能性を提供する。薬剤の放出はしばしば局所的であるため、移植部位は標的薬物送達を実現する方法を提供する。これらの移植体の動きは制限されているため、標的薬物送達の様態を既に整えている。しかしながら、別の適用では、血管、神経、骨、筋肉または他の組織の再生に使用されるものとして、マトリックスが製造される。再生された組織がマトリックスに代わるか、または、マトリックスが体内に残る。マトリックスは、1種またはそれ以上の薬物学的および、または生物学的活性物を担持していることが好ましい。
【0003】
一般に、薬物はポリマーまたはゲルなどのマトリックス中に吸収させる。吸収はそのようなポリマーまたはゲルの作成後に行われる。例えばキム(Kim)ら、ファーマスーティカル・リサーチ(Phar.Res)9、p.283−289(1992)を参照されたい。そのようなシステムには固有の欠点が有り、薬物の担持は、薬物の分子量、薬物の極性、並びにマトリックスの分子量および極性に強く依存する。グレフ(Gref)ら、サイエンス(Science)、1994、263、p.1600−1602に記載されているように、既に形成されたマトリックスへの担持を改善するためには、薬物を溶媒に溶解しなければならないことがしばしばある。しかしながら、例えば薬物がタンパク質をベースとするものであるような場合、薬物は、溶媒により、またはその後の溶媒を除去する工程で、変性を受ける可能性がある。このため、例えば国際公開第96/02239号パンフレットおよび国際公開第95/15748号パンフレットに開示されているように、薬物の高分子ゲルへの担持を促進する方法が数多く提案されている。
【0004】
マトリックスを形成するポリマーを得るための重合を薬物の存在下に行えば、薬物がその場でカプセル化されるという効果によって、潜在的により良好な製剤化が可能になる。重合は、UVまたは可視光誘起ラジカル重合で行うことが好ましい。放射により開始された重合、または実際のあらゆるラジカル重合の過程で起こるラジカル反応は、ラジカルと薬剤との反応を伴い得る。これには、有効な薬剤が失われるという欠点だけでなく、得られた副生物が健康を損ねたり望ましくない副作用を引き起こしたりするおそれがあるという欠点がある。
【0005】
国際公開第2005/070467号パンフレットには、光重合環境から感受性分子を保護する方法が記載されている。この文献は、体温で固体−ゲル転移を起こす不溶物質を生物活性分子に適用することを示唆している。これには、追加の工程が必要であり、かつ、生体適合性や薬物放出挙動への影響に対する注意深い制御を必要とする別の成分をさらに使用するという欠点がある。
【0006】
本発明の目的は、感受性薬剤の存在下に重合性混合物を放射重合してマトリックスを形成することにより、薬物担持マトリックスを製造する方法であって、前記薬剤化合物が実質的に分解または化学的変化を受けない方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、その活性を実質的に保持している感受性薬剤を含む薬物担持マトリックスを製造することにある。
【0008】
これや他の有用な結果は、感受性薬剤の存在下に重合性混合物を放射重合することにより薬剤含有マトリックスを製造する方法であって、重合性混合物が、
a)少なくとも1種の重合性化合物、
b)任意成分として、少なくとも1種の光開始剤、
c)任意成分として、少なくとも1種の添加剤
を含み、
これらは薬剤の分解が2%未満となるように選択される
方法において得られる。
【0009】
本発明の別の実施態様は、少なくとも1種の感受性薬剤の存在下に重合性混合物を重合することにより薬物担持マトリックスを製造する方法であって、重合性混合物が、
a)少なくとも1種の重合性化合物、
b)任意成分として、少なくとも1種の光開始剤、
c)任意成分として、少なくとも1種の添加剤
を含み、
これらは感受性薬剤が分解から保護され、成分(a)および(c)を含まずに照射した場合と比較して分解が約50%以下となるように選択される
方法に関する。
【0010】
薬剤は、UV光、可視光、電子線またはガンマ線により、あるいは、例えば光開始系により生成されたラジカルまたはイオンにより影響を受けるおそれがある。もし薬剤が光重合系の影響を全く受けないのであれば、これらの薬剤は光にも光重合系にも感受性がないので、分解に関していかなる問題もなく、薬剤をその場で担持するマトリックスの製造に使用することができる。薬剤(以下、API、活性薬剤成分(active pharmaceutical ingredient)、または薬物ともいう)が影響を受けるか否かは、容易には推測できない。
【0011】
薬剤のUVおよび光に対する感受性を試験するためのガイドラインがいくつか提案されている。しかしながら、ICH試験ガイドラインは、長期間の保存に関する光安定性を試験するよう設計されており、ここでの問題の解決には適していない。ICH試験ガイドラインでは、使用される光強度は低いが、照射時間が長い(数カ月あるいは数年に亘る)。これにより、光照射量は数百〜数千J/cmとなる。対照的に、薬物をその場で用いる光重合の場合には、照射は短時間(1秒未満から数分)で、かつ一般に高強度である。例えば、光重合の場合、マトリックスは、約0.2または3J/cmの照射量のUVまたは可視光放射により製造することができる。グラフト反応では、時々、最大で10J/cmもしくはそれ以上を使用する。本発明者らは信頼できる試験方法を開発した。
【0012】
本発明者らが開発した試験方法では、2J/cmでのAPI試験および12J/cmでの強制放射試験を必要とする。このレベルの照射によりAPIが影響を受けるか否かは、多くの方法で測定することができる。発明者らは、後述するように極めて適切な方法を見出した。
【0013】
予期しなかったことに、本発明者らは、さらに、そのような感受性APIが光重合系において他の成分によって保護され得ることを見出した。理論に捉われずにいうならば、現時点では、試験した数種の薬物において、これらの他の成分はラジカルに対し薬物と有効に競争し、それによって薬物を保護する官能基を有していると考えられる。これらの添加剤中に存在する官能基の適切な例としては、開始、成長、連鎖移動または停止の反応を通して、フリーラジカル重合を妨害することができる、不飽和基、ひずみ環、第3アミン、チオール、有機ハロゲンおよび他の反応性ラジカル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある官能基が保護に有効であると決まれば、APIを保護するために、その官能基を有するオリゴマー、および(他の)単官能または多官能の反応性希釈剤を最終重合性混合物中に加えて使用することができる。
【0014】
APIは(ラジカルの攻撃を受けると)一般に、結合の切断、付加、グラフトまたは水素引き抜きに起因する欠陥を示す。付加は、エチレン性不飽和二重結合との反応であり、グラフトはC=C二重結合の位置にない原子への反応であり、水素引き抜きはグラフト、そしてまたAPIからの基の除去(結合の切断)を誘起する。APIを保護するためには、欠陥が付加によるものならば、ラジカル付加反応を受けることができる化合物、例えば、適当なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が有効であろう。グラフトまたは切断または水素引き抜きの場合は、API保護にエチレン性不飽和基を有する化合物を使用できるが、連鎖移動剤または停止剤を使用することもできる。連鎖移動剤の例としては、例えばアミンまたはチオールを含む化合物が挙げられる。停止剤は、一般に、安定剤、または、ラジカル反応を妨害するフェノチアジン、安定ラジカル化合物およびキノン類(例えば、Irganox 1035.ハイドロキノン、メチルハイドロキノン)などの化合物である。
【0015】
本明細書で使用されるとき、感受性薬剤という用語は、12J/cmの照射によるラジカル発生環境下において5%超分解する化合物であると解釈すべきである。より詳しくは薬剤は、ラジカル発生種(開始剤)の非存在下または10%以下の存在下、UVもしくは可視光(200〜700nm)、または電子線もしくはガンマ線により開始される重合過程で感受性を示し得るものである。開始剤が存在する場合、1〜10重量%の光開始剤が好ましい。系は、また、光開始剤に加えて、熱開始剤(例えばペルオキシドおよび/またはレドックス開始剤)を含有してもよい。放射に対し感受性を有する(光)開始剤、例えばノリッシュI型またはノリッシュII型開始剤を使用することが好ましい。電子線またはガンマ線が使用される場合、あるいは、不飽和化合物(一方の化合物の二重結合は電子が豊富であり、他方の化合物の二重結合は電子が少ない)が互いに反応し、ドナー−アクセプター複合体を経てポリマーを生成する場合には、そのようなラジカル発生種を使用せずに済ませることも可能である。
【0016】
潜在的分解性は、100ppm(0.1g/l)の薬剤を石英、ガラスまたはHPLC容器中で適当な溶媒に溶解することによって測定することができる。1連の容器がそのように使用される。第2の一連の容器に、1種以上の開始剤、好ましくは重合性混合物中で使用するものを、薬剤と同量添加する。次に、容器を2および12J/cmの照射に供する。例を挙げれば、D−バルブD65を具備し、UV光ガイドにより試料に向けられた、実験室向けUV源Bluepoint 2を使用してUV放射を行うことができる。ガイドからの出力は、Solascope 1 UV分光計で測定した値で200mW/cm(1秒当たり、200mJ/cm)である。10および60秒の照射で、それぞれ2および12J/cmの照射量を達成した。照射システムの選択は、研究所、病院または製造所の環境におけるハードウエアの使用に通常影響する用途またはプロセスを考慮して決定される。例えば歯科用セメントおよび接着剤、眼内レンズ、外科用シーラントまたはバリヤーのために照射が体内で行われる場合、好ましい光源はしばしば可視光である。このように、これらの用途では、UVの代わりに可視光源が使用されるであろう。
【0017】
回収率はHPLCにより分析できるであろう。光照射前後の薬物濃度の信頼性の高い測定のために、光開始剤および重合性化学種(アクリレートなど)から薬物をクロマトグラフィにより分離する逆相HPLC法を開発した。X Terra RP 18(3.5μm)カラムを装着したHewlett Packard 1090 HPLC装置を使用して、開始剤および(メタ)アクリレートモノマーから薬物を分離し、溶液中の薬物濃度を測定した。溶離剤としてアセトニトリルおよび10mMリン酸水溶液を使用した。このスクリーニング構成では、モノマーとして、得られるポリマーが化学架橋してポリマーネットワークを形成することのないようなものを選択する。なぜなら、それは薬物を捕捉して、その後の分析を困難にするおそれがあるからである。約250nmでのUV検出を行った。薬物については、使用した濃度範囲で直線状の検量線(薬物ピーク面積対薬物濃度)が得られた。薬物のUVスペクトルは、UV照射の前後で(2および12J/cmの両方ともに)同一形状であり、これは、薬物濃度の変化の定量的測定にHPLC法が使用可能であることを意味している。分解率は、回収されたAPIのパーセントを差し引くことにより計算されるであろう。
【0018】
分解が生じたか否か、また、副生物が生成されたか否かを調べるために、より詳細な評価を行うことが可能であり、かつ有用である。溶出された化合物のUVスペクトルを、例えばフォトダイオードアレイで測定することが好ましい。さらに、分解生成物を調べるために、溶出された化合物のMSスペクトルを測定することが好ましい。適切な方法には、例えば、迅速スクリーニング法としてFIA−PDA−ESI−MSが含まれる。しかしながら、HPLC−PDA−ESI−MSを使用することがより好ましい(FIA:フローインジェクション分析(Flow Injection Analysis);HPLC:高速液体クロマトグラフィ(High Performance Liquid Chromatography);PDA:フォトダイオードアレイ検出(Photo Diode Array detection);ESI:エレクトロスプレーイオン化(Electro spray ionization);MS:質量分析(mass spectrometry))。適用した逆相法はエナンチオマーの分離には適していない。多くの活性薬剤成分はキラル分子であり、異性化またはラセミ化によって光またはラジカルに対して感受性を示すであろう。これらのプロセスは、また、薬剤活性を減少させるか、あるいは有毒成分にさえ転じさせる。追加する分析手法には、これらの分子の変化を検出できることが要求される。薬物がHPLC−PDA−ESI−MSに対して化学的に安定であると考えられる場合には、例えばFIA−ALP(ALP:新型レーザー偏光計(advanced laser polarimetry)、または、より好ましくはHPLC−PDA−ALPを用いて旋光度測定を行うことによって、キラル性に関するより詳細な分析を行うことができる。
【0019】
PDA(UV分光分析)は全吸収を示すものであり、これによりUV源からの光吸収能に関する情報が得られ、そして、その光吸収スペクトルのいかなる変化も化学的変化を示唆する。
【0020】
ESI−MS(質量分析)はフィンガープリント質量スペクトルを提供し、断片化または付加または他の化学的変化を明らかにする。
【0021】
キラル活性の変化を検出するために、FIA−APL(偏光計)を使用して旋光度の変化を測定することができる。
【0022】
溶媒としては、薬剤を溶解するものであればいかなる溶媒も適している。適切な溶媒の例としては、水、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、DMF、DMSO、NMP、アセトン、メチルエチルケトン、およびジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化溶媒、並びにこれらの溶媒の任意の混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。潜在的分解性を大きく高めるような溶媒を使用することが好ましい。あるいは、薬物を含む1種以上の成分を分散させることもできる(例えば、水中油エマルジョンもしくは油中水エマルジョン、または分散液として)。
【0023】
本発明の方法は、感受性薬剤を含むマトリックスの作製に特に適している。
【0024】
Terazosin(登録商標)、Prazosin(登録商標)、Rapamycin(登録商標)、Chloramphenicol(登録商標)およびAmiodarone(登録商標)など、多くの薬剤化合物が、この試験方法でラジカル感受性であることがわかった。他のものについても、上記のようにして試験することができる。
【0025】
適切な成分を選択することによって、分解を、約50%以上、あるいは約70%以上さえも減少させることができる。
【0026】
一実施態様では、12J/cmにおける分解が、約4%以下、好ましくは約3%以下、より好ましくは約2%以下である。
【0027】
別の実施態様では、2J/cmにおける分解が、約1%以下、好ましくは約0.5%以下である。
【0028】
マトリックスは、モノマーまたはポリマーであって、かつラジカル反応性および/または不飽和結合を有するラジカル重合性成分から製造することができる。マトリックスは、ゲル、あるいは、コーティング、フィルム、接着剤、ラミネート、ミクロ粒子およびナノ粒子、ベシクル、リポソーム、ポリマーソーム、例えば中空管または充填管などの成型品、繊維、織物、メッシュ、および、ラピッドプロトタイピングや他の多層製造プロセスなどの高分子加工で得られる種々の複雑さを有する多くの3次元モノリスに形成することができる。
【0029】
一実施態様では、薬物担持マトリックスはドラッグデリバリーで使用される。別の実施態様では、担持薬物は再生医療で使用される。別の実施態様では、薬物担持マトリックスは診断の目的に使用される。別の実施態様では、薬物担持マトリックスは解毒または物質除去に使用される。別の実施態様では、マトリックスは細胞の成長、分化および増殖のための基質または足場となる。
【0030】
一実施態様では、薬物担持マトリックスは実験室または製造プラントで製造される。これは、ドラッグデリバリーまたは診断目的のための薬物担持マトリックスを製造するうえで特に有利となる。
【0031】
別の実施態様では、薬物担持マトリックスは、例えばランガー(Langer)ら、米国科学アカデミー紀要(Proc.Nat.Acad.Sci.)96、p.3104(1999)および米国特許第6,602,975号明細書に記載されているように、患者または動物の治療時に、体内で作られる。
【0032】
一実施態様では、薬物担持マトリックスは自己完結型である。それは、そのまま使用するか、または後でキャリアに固定することができる。
【0033】
別の実施態様では、薬物担持マトリックスはキャリア上で製造される。キャリアは生安定性であっても生分解性であってもよい。
【0034】
キャリアの例としては、フィルム、チューブ、あるいは、ヒトまたは動物の体内へ移植または挿入するための機能、もしくは体内へ挿入する際の機能を助けることができるようにその形状が作られている機能的形状の医療デバイス、例えばヒドロゲル、カテーテル、ステント、ステントグラフト、チューブ、スポンジ、石膏および粘着性ゲルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
一実施態様では、マトリックスは生体内で分解可能である。
【0036】
別の実施態様では、マトリックスは生体内で分解されない。
【0037】
場合によりキャリアに保持される薬物担持マトリックスは、殺菌されるか、または無菌環境で製造ないし加工されることが好ましい。
【0038】
薬剤は、ヒトもしくは動物の治療、または体内への移植もしくは侵入による副作用の治療に有用な化合物ならばいかなるものであってもよい。特に適しているのは、標的部位、または徐放系において有効な薬剤である。薬物担持マトリックスは、1種以上の薬学的または生物学的活性物を含み、そのうちの少なくとも1種は感受性薬剤である。適切なラジカル感受性もしくはラジカル非感受性薬剤の例としては、成長因子、血液凝固阻害因子、抗炎症薬、抗がん剤、降圧剤、抗血栓薬、鎮痛剤、石灰化剤、ニューロン遮断薬、神経伝達物質、ワクチン、ホルモン、鎮痙薬、抗片頭痛薬、筋弛緩剤、利尿薬、子宮用薬、麻酔薬、抗生物質、抗ウイルス薬、サイトカイン、心臓血管薬、ヒスタミンおよび抗ヒスタミン剤、免疫抑制剤、ビタミン、造影剤(X線、MRIまたは超音波)、治療用タンパク質またはペプチドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
マトリックスは、少なくとも1種のモノマー、オリゴマーまたはポリマーを含む混合物を重合することにより製造される。本発明の一実施態様では、マトリックスは、可溶性もしくは不溶性の線状ポリマーを含む。ポリマーが可溶性の場合、薬剤を徐々に放出させるために、溶解速度が遅いことが好ましい。本発明の別の実施態様では、マトリックスはポリマーネットワークからなる。
【0040】
ポリマーネットワークは分解時に可溶性とすることができよう。
【0041】
マトリックスの物理特性は、使用する化合物とマトリックス中に含有される薬物に大きく依存する。マトリックスは、その用途に必要な物理特性を有することができる。マトリックスは、例えば硬くすることもできるし、あるいは非常に柔軟で追従性の高いものとすることもできる。硬い薬物担持マトリックスは、骨の修復における骨の置換体またはセメントとして、あるいは、圧縮荷重を支える身体部位として製造される。軟質ではあるが強度の大きい薬物担持マトリックスは、柔らかい組織が存在する身体領域に有用であり、また、場合により、血管インプラント、腱、筋肉、または引張荷重のかかる身体部位のように、患者の快適性および追従性が問題となる身体領域に有用である。要求される特性は、適切な化合物を用いることにより得ることができる。
【0042】
マトリックスを得るための重合性混合物の重合は、放射を使用して行うことが有利である。温度はタンパク質などの熱感受性薬剤にダメージを与えるので、熱開始重合より放射開始重合が好ましい。しかしながら、ラジカル反応を含む熱開始重合も考慮されるであろう。放射は、UV、可視光、電子線またはガンマ線の任意の電磁放射とすることができる。照射エネルギーは、重合性化合物の適正な硬化速度および十分な硬化を達成し、その結果、薬剤を有効に保持するマトリックスが得られる範囲で、可能な限り低くすることが好ましい。
【0043】
一般に照射エネルギーは、約0.2J/cm以上、好ましくは約0.5J/cm以上であり、例えば約0.8J/cm以上、例えば約1または約2J/cmである。一般に照射エネルギーは、約5J/cm以下、好ましくは約3J/cm以下である。
【0044】
重合は薬剤の存在下に行われる。これには、化合物が溶液または分散液としてよりいっそう均一に分散し、かつ薬物担持マトリックスを1工程で製造できるという利点がある。また、これは、異なる層に異なる薬剤を担持させる多層系を製造する選択肢を与える。さらに、これは、生体内適用を可能にする。薬剤はマトリックス製造時に存在していなければならない。重合が、例えば第1工程で小さな分子を生成するだけというように、複数の工程で行われる場合、薬剤は、最終的なマトリックスが形成される最終工程で存在させればよい。
【0045】
重合性混合物は、重合によりマトリックスを形成するのに適した多くの化合物を含むことができる。
【0046】
架橋(化学的)ネットワークを得ようとする場合は、一般に混合物は少なくとも1種の多官能のエチレン性不飽和化合物を含む。様々な化合物が適している。
【0047】
マトリックスの形成に線状ポリマーを使用する場合は、一般に単官能性化合物が使用される。以下、このタイプのマトリックスを物理的ネットワークともいう。
【0048】
一般に、重合性化合物は、重合時、半貫通性の物理的または化学的ネットワークを形成する、反応性希釈剤と、反応性オリゴマーと、場合により非反応性ポリマーまたはオリゴマーとを含む。オリゴマーは多官能性であることが多いので、オリゴマーは化学ネットワークの形成を促進させるためにしばしば使用される。反応性希釈剤は、単官能性であっても多官能性であってもよい。このように、最終マトリックスに要求される特性に応じて、重合性組成物は、要求される物理特性を達成するために、オリゴマーと、希釈剤と、場合により非反応性オリゴマーおよびモノマーとを含む。特性としては、弾性率、分解性、柔軟性、表面滑性、および応力−歪挙動が挙げられる。重合性混合物の重合により、線状、分岐またはくし型のポリマーが生成され、それらは、主に物理的絡み合いにより、あるいは化学的架橋によってネットワークを形成する。
【0049】
一般に、オリゴマーは生分解性または非生分解性材料であり、約400以上、好ましくは約800以上の分子量を有する。一般に、分子量は約20000以下、好ましくは約10,000以下である。
【0050】
一般に、化学的(3次元)ネットワークを形成するために使用されるオリゴマーは、約1.3以上、好ましくは約1.8以上の平均官能価を有する。一般に、官能価は約30以下、好ましくは約10以下、より好ましくは約8以下である。
【0051】
物理的ネットワークを形成するために使用されるオリゴマーは、約1以下の平均官能価を有する。
【0052】
本明細書で使用されるとき、官能価は、線状ポリマーを生成するために有効な2つの結合を形成する能力をいう。例えば、ラジカル重合における単官能性アクリレートは2つの結合を形成することができる。別の例として、チオールはビニルエーテルと逐次重合で反応することができる。チオールはビニル基に付加して、ポリマーを生成するのに有効な1つの結合のみを形成するため、この場合、単官能性は、化合物が平均2個のチオールもしくは2個のビニル基、または1個のビニルと1個のチオールを有することを意味する。
【0053】
オリゴマーの例としては、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリペプチド、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリチオエステル、ポリハイドロカーボン、ポリカーボネート、ポリ尿素、ポリスルフォン、およびポリアクリルアミド、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリジオキサノン、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(グリコリド−コポリジオキサノン)、ポリ酸無水物、ポリ(グリコリド−コトリメチレンカーボネート)、ポリ−ヒドロキシアルカノエート、およびポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。適切な例としては、Mwが8000、6000、600、3400、または4600のポリエチレン−グリコール、ポリ−アクリルアミド−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、ポリオルトエステルおよびポリ[ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン−コ−セバシン酸]]、ポリテレフタル酸、ポリセバシン酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
オリゴマーは、また、デキストラン、セルロース、またはゼラチンなどの天然化合物をベースとするものであってもよい。
【0055】
オリゴマーは、一般に、例えばアクリレート、メタクリレート、フマレート、マレート、イタコネートまたはアリルマロネート、ビニルエーテル、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテル、アリルエーテルおよびアリルエステル、ビニルアミンおよびビニルアミド、スチリル基、マレイミド、イタコンイミド、シナメート、チオールまたはオキサゾリンなどの反応性基を含む。オリゴマーは商業的に入手してもよいし、合成してもよい。例えば、これらの反応性基は、直接または多段階反応により導入することができる。ヒドロキシ側鎖を有するアクリルポリマーは、アクリル酸塩化物、アクリレート基含有イソシアネート化合物、またはエピクロルヒドリンで官能化することができる。エポキシ基は、その後、アクリル酸基またはアミン基で官能化することができる。ポリ酸無水物などの酸性官能基含有オリゴマーは、エポキシ−プロピルメタクリレートで官能化することができる。
【0056】
(物理的)ネットワークを形成する線状ポリマーの製造に適した化合物の例としては、ポリエチレングリコール−モノアクリレート、ポリ乳酸モノアクリレート、ビニルピロリドン、スチリル化合物、ビニルイミダゾール、並びにジチオール官能性およびジエン官能性のオリゴマーまたは低分子量化合物が挙げられる。
【0057】
本発明の一実施態様では、光重合混合物は、さらに、少なくとも1種の反応性希釈剤を含む。反応性希釈剤の分子量は、一般に、約700以下、好ましくは約400以下である。反応性希釈剤は1〜8のラジカル反応性官能価を有する。
【0058】
適切な希釈剤の例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール−ジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソ−デシル(メタ)アクリレート、エトキシ化ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
本発明で使用される光開始剤は、一般に、ノリッシュI型またはノリッシュII型光開始剤である。
【0060】
ノリッシュI型光開始剤はUVおよび/または可視光によって開裂してラジカルを生じ、これがラジカル重合反応を開始させる。ノリッシュI型光開始剤の例としては、ジメトキシアセトフェノン、アミノアルキルフェノン、ベンジルケタール、ヒドロキシアルキルフェノンおよびアシルホスフィンオキシドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
ノリッシュII型光開始剤は、プロトンドナー、一般にジメチルアミン化合物との反応により、ラジカルを生じる。ノリッシュII型光開始剤の例としては、ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、クマリン、芳香族1、2ジケトン、フェニルグリオキシレート、カンファーキノンおよび、ジメチルエタノールアミンなどのジメチルアミンに結合したエオシンYが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
添加剤は、特性に影響を及ぼすには有用である。例えば、可溶性ポリマーは、粘度を増加させるために使用することができ、シロキサンはマトリックスの撥水性を高めるために使用することができる。本発明の一実施態様では、これらの添加剤の1種以上がラジカルに対して反応性を有しており、反応性二重結合、チオール、またはTEMPOなどのラジカル捕捉剤であり得る。ラジカルに対して反応性を示すならば、添加剤は薬剤を保護する役割を果たし得る。
【0063】
以下の発明により本発明を説明するが、これらに限定されるものではない。
【0064】
[実施例]
[実施例I:方法]
[UV照射:]
D−バルブをUV光ガイドで(開放)HPLCバイアル(2ml)に向けて装着した実験室向けUV源のDr.Hoenle Bluepoint 2を使用して、薬物含有溶液(下記を参照)にUV照射を行った(Solascope 1 UV発光分光計による測定値で、200mW/cm;毎秒200mJ/cm)。(攪拌しない)溶液に2J/cm(「低」UV照射量)または12J/cm(「高」UV照射量)で照射した。UV光照射後、バイアルを振盪してサンプルを均一にした。
【0065】
[フェーズ(i)試験:]
5mgの薬物(amiodarone(登録商標)、prazosin(登録商標)、chloramphenicol(登録商標)およびterazosin(登録商標))を50mlの水/エタノール(1/1(v/v))に溶解した。
【0066】
この溶液1mlを3本のHPLCバイアルに充填した。1本のバイアルにはUV光照射を行わず(対照)、1本のバイアルには2J/cmのUV光を照射し(Bluepoint2光ガイドへ10秒間照射)、1本のバイアルには12J/cmのUV光を照射した(Bluepoint2光ガイドへ60秒間照射)。
【0067】
[フェーズ(ii)試験:]
5mgの薬物および5mgの光開始剤(Irgacure 2959または819)を50mlの水/エタノール(1/1)に溶解した。薬剤/光開始剤(重量比)=1。
【0068】
この溶液1mlを3本のHPLCバイアルに充填した。1本のバイアルにはUV光照射を行わず(対照)、1本のバイアルには2J/cmのUV光を照射し(Bluepoint2光ガイドへ10秒間照射)、1本のバイアルには12J/cmのUV光を照射した。
【0069】
[フェーズ(iii)試験:]
5mgの薬物、5mgの光開始剤および0.5gの(メタ)アクリレートを50mlの水/エタノール(1/1)に溶解し、重合性化合物と混合した。HEAまたはHEMA:両者とも水/メタノールに可溶であり、IDA(イソデシルアクリレート)は水/エタノール(1/1)に溶解せず、エマルジョンを形成する。薬剤/光開始剤(重量比)=1;アクリレート/薬物(比)=100。試験目的のために、重合性化合物は単官能性反応性化合物とする。そのような化合物を重合すると、線状ポリマーのみが得られるであろう。これにより、薬剤のポリマーネットワーク中への取り込みが妨げられるであろう。
【0070】
この溶液1mlを3本のHPLCバイアルに充填した。1本のバイアルにはUV光照射を行わず(対照)、1本のバイアルには2J/cmのUV光を照射し(Bluepoint2光ガイドへ10秒間照射)、1本のバイアルには12J/cmのUV光を照射した。
【0071】
フェーズ(i)、(ii)および(iii)の試験を5回行った。結果は5回の(独立した)測定の平均である。
【0072】
[分析:]
UV光照射前後の薬物濃度を測定し比較するための分析技術として、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)を使用した。
【0073】
HPLCを使用して、光開始剤および(メタ)アクリレートから薬物を分離し、溶液中の薬物濃度を決定した。
【0074】
薬剤濃度の測定はすべて液体クロマトグラフィにより行った。HPLCシステム(HP1090 Liquid Chromatograph)は次の部品:DR5ポンプ、ダイオードアレイ検出器(DAD)、内蔵オートサンプラーおよびChemStationソフトウェア、バージョンRev.A.08.03(Agilent Technologies)から構成されていた。平均粒子径3.5μmのC18分析カラム150×4.6mm(XTerra RP18、Waters)を40.0℃で使用した。アセトニトリルおよび10mMリン酸/水溶液を溶離液として用いた。分析では、流量1.5ml/分および注入量5μlを用いた。
【0075】
全ての薬物について、UV検出を行った。薬物に対し、使用する濃度範囲で直線状の検量線(薬物ピーク面積対薬物濃度)が得られた。UV照射前後の薬物のUVスペクトル(両照射量:2および12J/cmで)は同じ形状を有しており、これは、薬物濃度の変化を定量的に測定するのにHPLC法を使用し得ることを意味している。
【0076】
それぞれの薬物について、光開始剤およびモノマー(アクリレートタイプ)から薬物をクロマトグラフィにより分離するHPLC法を開発した。
【0077】
[溶離液勾配:]
prazosin(登録商標)では、以下のサイクルを開発した。14分の1勾配サイクルの間に、移動相の移動相アセトニトリルを8分間で17%から80%へ変化させ、2分間80%を維持した後、4分内で17%まで減少させ、次のサンプルが注入されるまでそのまま保持した。検出は250nmおよび340nmで行った。
【0078】
terazosin(登録商標)では、14分の1勾配サイクルの間に、移動相の移動相アセトニトリルを8分間で10%から80%へ変化させ、2分間80%を維持した後、4分内で10%まで減少させ、次のサンプルが注入されるまでそのまま保持した。検出は250nmおよび340nmで行った。
【0079】
amiodarone(登録商標)では、若干変更したHPLC法を開発した。移動相として50/50のACN/10mM HPO混合溶媒を使用して、5分間の定組成HPLC運転を行った。UV検出は(230nmおよび)254nmで行った。
【0080】
chloramphenicol(登録商標)では、10分の1勾配サイクルの間に、移動相の移動相アセトニトリルを5分間で30%から70%へ変化させ、1分間70%を維持した後、0.1分間で移動相アセトニトリルを90%へ変化させ、再度1分間90%を維持し、0.1分内で30%まで減少させ、次のサンプルが注入されるまでそのまま保持した。分析中、流量1.5ml/分、注入量5μlとした。検出は200nmおよび280nmで行った。
【0081】
[実施例II]
所要量のPrazosin(登録商標)を50%水、50%エタノールに溶解して100ppm溶液を調製し、1mlのHPLC容器に加えた。別の容器は、以下の表に示すように、100ppmのIrgacure 2959光開始剤とともに、また、光開始剤および重合成分とともに使用した。
【0082】
【表1】

【0083】
[実施例III]
別の実験で、所要量のPrazosin(登録商標)を50%水、50%エタノールに溶解して100ppm溶液を調製し、1mlの石英製HPLC容器に加えた。別の容器は、以下の表に示すように、100ppmのIrgacure 2959光開始剤とともに、また、光開始剤および重合成分とともに使用した。DMEAはジメチルエタノールアミンである。
【0084】
【表2】

【0085】
この実施例は、実験が再現性に優れ、許容誤差(±1%)内であることを示している。許容誤差は、より多くの実験を行って誤差を平均することにより、より小さくなり得る。
【0086】
[実施例IV]
所要量のChloroamphenicolを50%水、50%エタノールに溶解して100ppm溶液を得、1mlのHPLC容器に加えた。別の容器は、以下の表に示すように、Irgacure 2959とともに、また、これとポリ(プロピレングリコール)モノ−アクリレートとの混合物とともに使用した。
【0087】
【表3】

【0088】
[実施例V]
所要量のAmiodarone(登録商標)を50%水、50%エタノールに溶解して100ppm溶液を得、1mlのHPLC容器に加えた。別の容器は、以下の表に示すように、Irgacure 819とともに、またヒドロキシエチルアクリレートとともに、また、これらの混合物とともに使用した。
【0089】
【表4】

【0090】
[実施例VI]
所要量のTerazosin(登録商標)を50%水、50%エタノールに溶解して100ppm溶液を得、1mlのHPLC容器に加えた。別の容器は、Irgacure 2959とともに使用した。ここでは、2%terazosin(登録商標)およびIrgacure 2959を伴うヒドロキシエチルアクリレートのバルク重合について評価(iii)を行った。結果を以下の表に示す。
【0091】
【表5】

【0092】
これらの実施例から明らかなように、適切な成分を選択すれば、当業者は、容易かつ直接的な分析技術により、この明細書に記載された知識により、分解から保護すべき感受性薬剤とともに行うその場重合を実際に使用可能にする系、あるいは、少なくとも分解を50%以上阻止し得る方法を見出すことができる。薬剤が取り込まれないようにした上記実験では、100%から回収パーセントを差し引いたものが分解率である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の感受性薬剤の存在下に重合性混合物を放射重合することにより薬剤を含有する薬物担持マトリックスを製造する方法であって、前記重合性混合物が、
a)少なくとも1種の重合性化合物、
b)任意成分として、少なくとも1種の光開始剤、
c)任意成分として、少なくとも1種の添加剤
を含み、
これらは前記感受性薬剤の分解が2%未満となるように選択される
方法。
【請求項2】
前記混合物を硬化させる照射量で測定される前記薬剤の分解が1%未満である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1種の感受性薬剤の存在下に重合性混合物を放射重合することにより薬剤を含有する薬物担持マトリックスを製造する方法であって、前記重合性混合物が、
a)少なくとも1種の重合性化合物、
b)任意成分として、少なくとも1種の光開始剤、
c)任意成分として、少なくとも1種の添加剤
を含み、
これらは前記感受性薬剤が分解から保護され、成分(a)および(c)を含まずに照射した場合と比較して分解が約50%以下となるように選択される
方法。
【請求項4】
光開始剤の存在下に、12J/cmのUVまたは可視光を照射したとき、前記薬剤が5%を超えて分解する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記重合性混合物が、光開始剤を含み、かつUV−可視光を約0.2J/cm以上、約3J/cm以下で照射することにより硬化する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
硬化が電子線またはガンマ線により行われる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤が、成長因子、血液凝固阻害因子、抗炎症薬、抗血栓薬、抗がん剤、降圧剤、鎮痛剤、石灰化剤、ニューロン遮断薬、神経伝達物質、ワクチン、ホルモン、鎮痙薬、抗片頭痛薬、筋弛緩剤、利尿薬、子宮用薬、麻酔薬、抗生物質、抗ウイルス薬、サイトカイン、心臓血管薬、ヒスタミンおよび抗ヒスタミン剤、免疫抑制剤、ビタミン、治療用ペプチドおよびタンパク質、および造影剤からなる群から選択される請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
場合によりキャリアに保持される前記薬物担持マトリックスが、ゲル、コーティング、フィルム、接着剤、ラミネート、ミクロ粒子およびナノ粒子、ベシクル、リポソーム、ポリマーソーム、例えば中空管、充填管などの成型品、繊維、織物、メッシュ、スポンジ、または3次元モノリスの形態を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記薬物担持マトリックスがマトリックスおよび薬剤化合物を含み、前記マトリックスが線状、分岐、または架橋したポリマーネットワークであり、反応性希釈剤および反応性オリゴマーを重合することによって製造される請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記マトリックスが体内で分解することができるものである請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マトリックスが体内で分解することができないものである請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記マトリックスを製造するためにオリゴマーが使用され、前記オリゴマーが、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリペプチド、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリチオエステル、ポリハイドロカーボン、ポリカーボネート、ポリ尿素、ポリスルフォン、およびポリアクリルアミド、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリジオキサノン、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(グリコリド−コポリジオキサノン)、ポリ酸無水物、ポリ(グリコリド−コトリメチレンカーボネート)、ポリヒドロキシアルカノエート、およびポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)からなる群から選択される請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記重合性化合物が、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、ビニルエステル、ビニルアミドまたはスチリル基、フマレート、アセチレン、シンナメート、チオールを含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−539906(P2009−539906A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514693(P2009−514693)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005176
【国際公開番号】WO2007/144143
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】