説明

感圧センサの製造方法、感圧センサ、および弾性組成物

【課題】感度の良好な感圧センサの製造方法、感圧センサ、および弾性組成物を提供する。
【解決手段】感圧センサの製造方法は、25℃でゴム弾性を示す材料またはその原材料と、導電性粒子とを混合することにより混合物を得る工程(S1)と、混合物に電圧を加えることにより、導電性粒子を配向させる工程(S2)とを備える。混合物を得る工程(S1)は、原材料と導電性粒子とを混合する工程であり、導電性粒子を配向させる工程(S2)の後に、混合物を加硫する工程(S3)をさらに備えることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感圧センサの製造方法、感圧センサ、および弾性組成物に関し、より特定的には、ゴム弾性を示し、on―offスイッチ機能、圧力測定、または圧力分布測定などを可能とする感圧センサの製造方法、感圧センサ、および弾性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力を検出するセンサとしては、ピエゾ効果を用いたペロブスカイト系セラミックスによるセンサや、感圧導電ゴムセンサが知られている。このうち感圧導電ゴムセンサについては、その応用も含め1970年代ころまでよく検討されていた。しかし最近では、感圧導電ゴムセンサの応用デバイスに関する技術への取り組みはあっても、感圧ゴムセンサに用いられる感圧ゴム材料の性能を向上する取り組みは少ない。
【0003】
従来の感圧センサに関する技術は、たとえば下記特許文献1〜6および下記非特許文献1に開示されている。特許文献1には、合成コア上に成型した生タイヤをモールド内で加硫するに当たり、加硫中のモールドキャビティ内の圧力を検出する圧力センサが開示されている。特許文献2には、プリント回路板と導電弾性層とを含む感触装置が開示されている。特許文献3には、ゴム基材に導電性粒子を配合してなる感圧導電性ゴム組成物であって、導電性粒子が直径約40〜160μmの黒鉛粒子からなる感圧導電性ゴム組成物が開示されている。特許文献4には、加圧される2点の長さを電気的に計測する計測装置に感圧導電性弾性体を使用する技術が開示されている。特許文献5には、車両のトレッドを測定する用途に感圧性導電ゴムを使用する技術が開示されている。特許文献6には、圧力を受けてラバーと接点との間の接触面積が増大し、それによるラバーと接点との間の静電容量の変化に基づいて圧力を測定する感圧センサが開示されている。非特許文献1には、道路センサ、楽器センサ、ズームスイッチ、または荷重センサとして感圧導電ゴムを使用する技術が開示されている。
【0004】
従来の感圧導電ゴムセンサは、ゴムの内部で導電性粒子同士が、感圧導電ゴムセンサの表面に沿う方向で、圧縮力を受けない状態の場合にも(予め)接触しているような材料設計になっている。この感圧導電ゴムセンサは、その厚み方向の圧縮力を受けた場合に、導電性粒子の接触抵抗が圧縮歪により変化する性質を利用して圧力を感知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−181846号公報
【特許文献2】特開昭52−51827号公報
【特許文献3】特開昭53−79937号公報
【特許文献4】特開昭52−68437号公報
【特許文献5】特開昭53−19051号公報
【特許文献6】特開2002−25377号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“感圧導電ゴムの紹介と応用”、[online]、[平成20年3月10日検索]、インターネット(URL:http://pcr.lar.jp/psecrsyoukai.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の感圧導電ゴムセンサには、感度が悪いという問題があった。すなわち、従来の感圧導電ゴムセンサは、圧縮力を受けない状態の場合であってもゴムの内部で導電性粒子同士が接触しているので、表面比抵抗が低く(たとえば103Ω/sq以下)、厚み方向の圧縮力を受けた場合の導電性(導電性粒子の接触抵抗)の変化量が小さかった。具体的には、従来の感圧導電ゴムセンサは、10%圧縮歪を与えたときに0.5桁以下の電気抵抗変化しか得ることができなかった。
【0008】
従来の感圧導電ゴムセンサは、感度が悪いため、高感度が要求される圧力センサとして使用することや、電極をネットワーク状に敷き詰めることにより圧力分布を測定するような用途(圧力マッピングの用途)に使用することが難しかった。
【0009】
感圧導電ゴムセンサは、理想的には、表面比抵抗が十分に大きく、厚み方向の抵抗が小さく、変形に対する導電性の変化が大きいことが望ましい。それにもかかわらず、従来の感圧導電ゴムセンサは、表面比抵抗が低いため、表面比抵抗と厚み(膜厚)方向との抵抗差を確保するために厚みを大きく(たとえば10cm程度にする)する必要があった。このため従来の感圧導電ゴムセンサは、薄膜の感圧ゴムセンサとして用いることや、圧力分布を計測する装置に用いることができず、単に縦方向の導電性の変化だけを利用するセンサとして利用されていた。
【0010】
従って、本発明の目的は、感度の良好な感圧センサの製造方法、感圧センサ、および弾性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一の局面に従う感圧センサの製造方法は、25℃でゴム弾性を示す材料またはその原材料と、導電性粒子とを混合することにより混合物を得る工程と、混合物に電圧を加えることにより、導電性粒子を配向させる工程とを備える。
【0012】
上記製造方法において好ましくは、混合物を得る工程は、原材料と導電性粒子とを混合する工程であり、導電性粒子を配向させる工程の後に、混合物を加硫する工程をさらに備える。
【0013】
上記製造方法において好ましくは、混合物を得る工程における導電性粒子の添加量は、パーコレーション転移が開始する添加量からパーコレーション転移が完了する添加量までの範囲内にある。
【0014】
本発明の他の局面に従う感圧センサは、上記のいずれかの製造方法を用いて製造される。
【0015】
本発明のさらに他の局面に従う弾性組成物は、25℃でゴム弾性を示す材料と、導電性粒子とを含む。25℃で弾性変形可能であり、かつ10%圧縮歪を与えた状態の体積固有抵抗が、無歪の状態の体積固有抵抗の10分の1以下である。
【0016】
上記弾性組成物において好ましくは、導電性粒子の添加量は、パーコレーション転移が開始する添加量からパーコレーション転移が完了する添加量までの範囲内にある。
【0017】
上記弾性組成物において好ましくは、ゴム弾性を示す材料として、全体に対する含有量が50質量パーセント以上99質量パーセント未満であるシリコーンゴムを含む。
【0018】
上記弾性組成物において好ましくは、導電性粒子はカーボンよりなる。
【0019】
本発明のさらに他の局面に従う感圧センサは、上記のいずれかの弾性組成物と、弾性組成物を挟み込む2つの電極とを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、感度の良好な感圧センサの製造方法、感圧センサ、および弾性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態における弾性組成物の製造方法を示す図である。
【図2】粉体の材料の体積固有抵抗を測定するための測定装置を示す図である。
【図3】図2の測定装置を用いた体積固有抵抗の測定方法を説明するための図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態における感圧センサの構成を模式的に示す上面図である。
【図5】圧力が加えられていない状態の感圧センサにおける、図4のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図4の下部電極の電極パターンを示す図である。
【図7】図4の上部電極の電極パターンを示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における感圧センサが接続される圧力測定装置本体付近の構成を模式的に示す図である。
【図9】圧力が加えられた状態の感圧センサの構成を模式的に示す断面図である。
【図10】感圧センサにおける特定の位置における圧力値の測定の仕方を説明するための図である。
【図11】絶縁体中への導電性粒子の添加率と絶縁体の電気抵抗との関係を模式的に示す図である。
【図12】絶縁体中における導電性粒子の配列の様子を模式的に示す図である。
【図13】アスペクト比が1である導電性粒子の体積分率(添加量)と、体積固有抵抗の対数値との関係のシミュレーション結果を示す図である。
【図14】絶縁体に導電性粒子を添加した材料に対して引っ張り試験を行った場合における、引っ張り歪と体積固有抵抗との関係を示す図である。
【図15】SnO2ゾルとアクリル系ラテックスとの2元系による薄膜の顕微鏡写真である。
【図16】本発明の実施例1で得られたゴムシートにおける、歪と体積固有抵抗の対数値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0023】
[第1の実施の形態]
【0024】
図1は、本発明の第1の実施の形態における弾性組成物(たとえば感圧導電ゴム)の製造方法を示す図である。
【0025】
図1を参照して、始めに、25℃(室温)でゴム弾性を示す材料(以下、ゴム状材料と記すことがある)の原材料と、導電性粒子(導電性微粒子)とを混合することにより、混合物を得る(S1)。
【0026】
ゴム状材料は、絶縁体、半導体、および導電体のいずれであってもよいが、絶縁体(絶縁性材料)であることが好ましい。またゴム状材料は、1010Ωcm以上の抵抗率を有し、かつ室温でゴム弾性を示す材料であることが好ましい。ゴム状材料として、1010Ωcm未満の抵抗率を有する材料を用いることも可能である。しかし、表面比抵抗の高い感圧センサを得るためには、ゴム状材料は1011Ωcm以上の抵抗率を有していることが好ましい。シリコーンゴムは、1012Ωcm以上の抵抗率を有し、かつ高い耐久性を有するため、ゴム状材料として特に好ましい材料である。
【0027】
従って、ゴム状材料の原材料としては、たとえば液状のシリコーンゴムや、ゴム系の原材料(生ゴムなど)などが用いられる。ゴム状材料としてシリコーンゴムを用いる場合、全体に対するシリコーンゴムの含有量は、50質量パーセント以上99質量パーセント未満であることが好ましい。
【0028】
導電性粒子としては、たとえば金属粒子、金属酸化物粒子、ポリアニリン、ポリピロール、またはポリアセチレンなどの導電性高分子の粒子や、カーボン粒子などが用いられる。本発明に用いる導電性粒子は、抵抗率が106Ωm以下の粒子であることが好ましく、低い導電性および経済性の観点から、カーボンよりなることが特に好ましい。導電性粒子の添加量は、パーコレーション転移が開始する添加量からパーコレーション転移が完了する添加量までの範囲内(パーコレーション転移の閾値近辺)にあることが好ましい。
【0029】
上記混合工程(S1)においては、マイカなどの絶縁性粒子がさらに混合されてもよい。
【0030】
次に、得られた混合物をたとえば金型に入れることにより成型し、成型された混合物に対して電圧を印加する(S2)。金型に入れたままの状態の混合物に対して電圧が印加されてもよい。ゴム状材料が板状に成型された場合には、板の厚み方向に沿って電圧が印加されることが好ましい。このようにゴム状材料(ゴム)に電圧を印加することにより、ゴム状材料に配合された導電性粒子が板状のゴム状材料の厚み方向に沿って配向し、異方導電性が生じる。
【0031】
印加する電圧は、交流電圧および直流電圧のいずれであってもよい。また印加する電圧は400V/mm以上であることが好ましく、500V/mm以上であることがより好ましい。さらに、2kV/mm以上の高電圧を印加した場合には、ゴム状材料が高粘度のゴムであった場合でも導電性粒子を配向させることが容易となる。一方印加する電圧が10kV/mm以下であることにより、電圧の印加によるゴム状材料のゴム弾性の劣化を抑制することができる。
【0032】
電圧の印加時間は、ゴムの緩和現象を考慮して1分以上であることが好ましい。しかし十分な配向が確認されれば、電圧の印加時間は1分以下であってもよい。電圧の印加時間が1分以下の場合には、工程時間が短くなり生産性を向上することができる。電圧の印加時間は、3分以上であることがより好ましい。一方電圧の印加時間は、経済的な観点から1時間以未満とすることが好ましい。
【0033】
ゴム状材料が溶融しているときに電圧(電場)を印加すると、導電性粒子は電極に集まり、表面に偏析しやすくなる。従って、ゴム状材料の表面に導電性粒子が偏析しないよう、導電性粒子の厚み方向のパスができるように電圧を印加することが好ましい。マイカなどの絶縁性粒子を添加した場合には、この制御の可能な範囲(オペレーションウィンドウ)を広くすることができる。
【0034】
続いて、混合体をオーブン(加硫管)に入れることにより、混合体を加硫する(S3)。これにより、ゴム状材料の原材料が架橋してゴム状材料となる。以上の工程により、弾性組成物が得られる。感圧センサを得る場合には、得られた弾性組成物を2つの電極で挟み込む工程がさらに行われてもよい。
【0035】
上記混合工程(S1)において、ゴム状材料の原材料の代わりにゴム状材料が導電性粒子と混合されてもよい。この場合には、加硫工程は実施されなくてもよい。加硫工程の実施は任意である。
【0036】
上記電圧印加工程(S2)は、どのタイミングで実施されてもよい。電圧印加工程は加硫工程の前に実施されることが好ましいが、電圧印加工程を行いながら加硫工程が行われてもよい(電圧を印加しながら加硫してもよい)。ただし、ゴム状材料として熱可塑性エラストマーを用いた場合に電圧印加工程を実施する際には、50℃以上とされることが好ましく、電流が流れすぎるのを防ぐために200℃未満とされることが好ましい。
【0037】
上記製造方法によれば、25℃でゴム弾性を示す材料と、導電性粒子とを含む弾性組成物が得られる。この弾性組成物は、25℃で弾性変形可能であり、かつ10%圧縮歪を与えた状態の体積固有抵抗が、無歪の状態の体積固有抵抗の10分の1以下の値まで変化する(体積固有抵抗が10倍以上低下する)。
【0038】
ここで、上記における導電性粒子などの粉体の材料の体積固有抵抗値(抵抗値)は、たとえば以下の方法で測定される。
【0039】
図2は、粉体の材料の体積固有抵抗を測定するための測定装置を示す図である。なお、(b)は(a)のIIA−IIA線に沿う断面図を示しており、(b)には各部の寸法が記入されている。
【0040】
図2を参照して、測定装置100は、ステンレスよりなる加圧部分101および102と、テフロン(登録商標)よりなる筐体104と、端子103とを備えている。筐体104は円筒形状を有しており、筐体104の内部の中空部分には、円筒形状の加圧部分101および102が重ねられて配置されている。端子103は下側の加圧部分102に電気的に接続されている。
【0041】
図3は、図2の測定装置を用いた体積固有抵抗の測定方法を説明するための図である。
【0042】
図3を参照して、始めに、加圧部分102上に粉体の材料200を1g入れ、材料200の上に加圧部分101を乗せる。次に、無加圧状態で測定装置100をテーブルバイブレータに乗せ、10分間振動させる。続いて、加圧部分101を通じて300kgwの荷重(圧力P)を材料200に加えながら、加圧部分101と端子103との間に電圧を加える。そして、材料200を流れる電流値を測定し、電流値から抵抗Rを算出する。次に、材料200の厚みTおよび抵抗Rから、ρ=3×R/Tという計算式に基づいて体積固有抵抗ρを算出する。得られた体積固有抵抗ρを100で割った値が、材料200の体積固有抵抗となる。
【0043】
[第2の実施の形態]
【0044】
本実施の形態においては、第1の実施の形態で製造された弾性組成物を用いた感圧センサについて説明する。
【0045】
図4は、本発明の第2の実施の形態における感圧センサの構成を模式的に示す上面図である。図5は、圧力が加えられていない状態の感圧センサにおける、図4のV−V線に沿う断面図である。図4および図5を参照して、感圧センサ1は、下部電極(第1電極)10と上部電極(第2電極)20と、異方性導電シート3とを主に備えている。異方性導電シート3は、第1の実施の形態における弾性組成物に対応するものである。下部電極10の上部には上部電極20が配置されており、異方性導電シート3は下部電極10と上部電極20との間に挟み込まれている。下部電極10および上部電極20は、異方性導電シート3の抵抗値を測定する。
【0046】
図6は、図4の下部電極の電極パターンを示す図である。なお、図6は異方性導電シートに接触する側の面を示している。図6を参照して、下部電極10は、基板13と、複数の電極パターン11a〜11d・・・と、接続電極パターン12a〜12d・・・とを含んでいる。基板13の下端部には、たとえば銅よりなる電極パターン11a〜11dが形成されている。基板13はたとえばFPC(Flexible Printed Circuits)基板などのポリイミド系基板である。電極パターン11a〜11dの各々は、基板13上に形成されており、たとえば図6中縦方向に延在している。電極パターン11a〜11dが形成された矩形領域は、異方性導電シート3と直接接触している。また、基板13は図6中上方向に突出した接続部13aを有しており、基板13上における接続部13aの先端には、接続電極パターン12a〜12dの各々が形成されている。電極パターン11a〜11dの各々と接続電極パターン12a〜12dの各々とは電気的に接続されている。
【0047】
図7は、図4の上部電極の電極パターンを示す図である。なお、図7は異方性導電シートに接触する側の面を説明の便宜上、透過的に示している。図7を参照して、上部電極20は、基板23と、複数の電極パターン21a〜21d・・・と、接続電極パターン22a〜22d・・・とを含んでいる。基板23の下端部には、たとえば銅よりなる電極パターン21a〜21dが形成されている。基板23はたとえばポリイミド系基板である。電極パターン21a〜21dの各々は、基板23上に形成されており、たとえば図7中横方向に延在している。電極パターン21a〜21dが形成された矩形領域は、異方性導電シート3と直接接触している。電極パターン11a〜11dの各々と電極パターン21a〜21dの各々とは、平面的に見て互いに交差しており、この交差部分が異方性導電シート3の抵抗値の検出部分となっている。また、基板23は図7中上方向に突出した接続部23aを有しており、基板23上における接続部23aの先端には、接続電極パターン22a〜22dの各々が形成されている。電極パターン21a〜21dの各々と接続電極パターン22a〜22dの各々とは電気的に接続されている。
【0048】
なお、図6および図7においては、代表的な電極パターンにのみ符号を付している。電極パターンの数および形状は任意である。電極パターンの幅を小さくし、その数を多くするほどに抵抗値を検出する箇所の数を増やすことができる。
【0049】
続いて、本実施の形態における感圧センサを用いた圧力の測定方法について説明する。
【0050】
始めに図8に示すように、感圧センサを圧力測定装置本体(以下、装置本体と記すことがある)に接続する。
【0051】
図8は、本発明の第2の実施の形態における感圧センサが接続される圧力測定装置本体付近の構成を模式的に示す図である。
【0052】
図8を参照して、装置本体30とコンピュータ40とは電気的に接続されている。装置本体30は取付ソケット31および32と、ロック部31aおよび32aとを含んでいる。下部電極10の接続電極パターン12a〜12dと、上部電極20の接続電極パターン22a〜22dとは、互いに図8中横方向に並ぶように構成されている。下部電極10の接続電極パターン12a〜12dの各々は取付ソケット31に挿入され、ロック部31aによって固定される。同様に、上部電極20の接続電極パターン22a〜22dの各々は取付ソケット32に挿入され、ロック部32aによって固定される。これにより、感圧センサと装置本体30とが電気的に接続される。
【0053】
次に、圧力を測定する箇所へ感圧センサ1を配置し、圧力を感知する。図9は、圧力が加えられた状態の感圧センサの構成を模式的に示す断面図である。
【0054】
図9を参照して、圧力が加えられると感圧センサ1は凹形状に変形する。A部分は最も圧力が加えられているため、変形(圧縮)が最も大きくなっており、C部分は圧力が加えられていないため、変形しておらず、B部分はA部分よりも小さな圧力が加えられているため、わずかに変形している。異方性導電シート3の抵抗値は変形に応じて変化するため、位置Aの抵抗値よりも位置Bの抵抗値の方が高く、位置Bの抵抗値よりも位置Cの抵抗値の方が高くなっている。したがって、感圧センサ1に対し圧力を加えた際の異方性導電シート3の抵抗値が、下部電極10および上部電極20で測定される。
【0055】
次に図8を参照して、測定された抵抗値は装置本体30へ送信される。装置本体30は、スイッチ部により電極パターン11a〜11dのうち任意のパターンと電極パターン21a〜21dのうち任意のパターンとを選択することによって、測定位置を特定し、特定された位置において測定された異方性導電シート3の局所的な抵抗値を圧力値に変換する。そして、特定する位置を順次切り替えることにより、所望の領域における抵抗値が圧力値に変換される。
【0056】
図10は、感圧センサにおける特定の位置における圧力値の測定の仕方を説明するための図である。図8および図10を参照して、電極パターン11a〜11dの各々と電極パターン21a〜21dの各々とは、たとえば直角に交差している。たとえば交差部分40a〜40dの圧力値を得る場合には、最初に電極パターン11aと電極パターン21aとを選択することにより交差部分40aが特定され、交差部分40aで測定された抵抗値が圧力値に変換される。次に、電極パターン11aと電極パターン21bとを選択することにより交差部分40bが特定され、交差部分40bで測定された抵抗値が圧力値に変換される。次に、電極パターン11bと電極パターン21aとを選択することにより交差部分40cが特定され、交差部分40cで測定された抵抗値が圧力値に変換される。次に、電極パターン11bと電極パターン21bとを選択することにより交差部分40dが特定され、交差部分40dで測定された抵抗値が圧力値に変換される。
【0057】
装置本体30において得られた圧力値は、コンピュータ40へ出力されてもよい。装置本体30はA/D変換や、シリアルデータの出力を行ってもよい。コンピュータ40は、ソフトを用いて圧力分布に関する二次元の図を作成し、ディスプレイに表示してもよい。
【0058】
また、上記感圧センサは、装置本体内で互いに圧接する部材相互間の圧接力を検出し、その圧接力が適切となるよう調節することを目的として用いられてよい。すなわち、装置本体内において第1の部材と第2の部材とが圧接する構成である場合に、上記第2の態様あるいはその他の態様で検出された圧力が適切な目標値となるよう第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方の位置等を調節することができる。また、上記装置本体に備えられた制御部の制御により、例えば上記第2の実施形態の態様あるいはその他の態様で検出された圧力が適切な目標値に近づくよう第1の部材と第2の部材の圧接を制御することが可能となる。
【0059】
そのためには、上記感圧センサが第1の部材と第2の部材間に配置される、あるいは第1、第2の両部材もしくは何れか一方の部材の少なくとも一部が上記感圧センサで構成される、上記第1、第2の部材のうちの一方の部材を他方の部材に押圧するための押圧部材に上記感圧センサを配置する、などの構成を採用し得る。
【0060】
[実施の形態の効果]
【0061】
上述の実施の形態によれば、ゴム状材料と導電性粒子とを混合した状態で電圧を印加することにより、ゴム状材料内において導電性粒子を厚み方向に配向させることができる。これにより、厚み方向(縦方向)の導電性と表面に沿う方向(横方向)の導電性とに異方性が発生し、厚み方向に電気は通り易いが表面に沿う方向には電気は通り難い状態となる。その結果、弾性組成物の表面比抵抗を増加させることができ、表面比抵抗に対する体積固有抵抗を低くすることができる。また表面比抵抗に対する体積固有抵抗が低いので、歪に対する体積固有抵抗の変化率が増加し、感度の良好な弾性組成物および感圧センサを得ることができる。上述の実施の形態によれば、弾性組成物(感圧導電ゴム)は薄膜の状態で使用可能であり、かつ微少歪に対して1桁以上の抵抗変化を示す。
【0062】
ここで、絶縁体である高分子に導電性粒子を分散させると、パーコレーション転移という現象が生じる。導電性粒子の分散が純粋に確率だけに依存すると仮定すると、パーコレーション転移の起き易さは、導電性粒子の分散確率(1つの導電性粒子が絶縁体の中のどこに存在するか、という確率)、導電性微粒子の短径と長径の比であるアスペクト比、または導電性粒子の添加量などに依存し、パーコレーション転移は材料全体に均一に生じる。
【0063】
しかし現実の系では、絶縁体と導電性粒子との相互作用や、その他に添加された材料とこれらの物質との相互作用や、プロセス条件などによって、パーコレーション転移の起き易さは様々に変化する。また、導電性粒子が絶縁体へ分散し難いような絶縁体と導電性粒子との組み合わせの場合、すなわち絶縁体が導電性粒子の表面に濡れにくい場合には、絶縁体中で導電性粒子は凝集し、導電性粒子の添加量がある値以上になると絶縁体と混合することができなくなる。この濡れ難さは、一般的に、絶縁体と導電性粒子との双方に親和性を有する界面活性剤のような第3成分をさらに添加することで改善することができるが、この方法には限界はある。界面活性剤のような第3成分の他にも、絶縁体中に分散しやすい別の(種類の異なる)微粒子を第3成分として添加することによっても、導電性粒子の分散性を制御することができる。
【0064】
また最近では、磁場や電場の存在下で微粒子の分散性を制御する方法も研究されている。特に、電場をかけて微粒子の分散状態を制御する方法については、1990年頃流行した電気粘性流体(ERF)の分野でよく研究されていた。電場や磁場を用いたプロセスによって導電性粒子の分散は制御可能であるが、外部場の力が働かないプロセスでは、材料が硬化するまでのマトリックスである高分子の緩和、流動、熱の対流、または溶媒の蒸発(但し、溶媒を使用していた場合)などの影響が働く。さらに、絶縁体をシート状に成型した場合、表面あるいは中心部への導電性粒子の偏析が生じる場合がある。
【0065】
導電性粒子を絶縁体(高分子材料)に分散させたときに見られるこれらの現象は、感圧センサ(高分子半導体センサ)のばらつきに影響を及ぼすだけでなく、感圧センサの性能へも大きく影響を及ぼす。一方で、パーコレーション転移は、導電性粒子の添加率がある範囲内にある場合に生じるものである。このため、従来の感圧センサのように、導電性粒子の添加率がその範囲以上に設定されると、感圧センサのばらつきは小さくなり、性能は安定化する。
【0066】
導電性粒子を絶縁体に分散することにより製造される半導体材料シートでは、偏析が生じなければ(すなわち均一材料であり、パーコレーション転移だけが生じると仮定するならば)、表面比抵抗と、シートの厚みと、体積固有抵抗との間には下記の式(1)の関係が成立する。一方、従来の技術のように電圧を印加せずに感圧センサを製造した場合には、偏析が生じやすく、偏析が生じた場合(不均一な材料である場合)には、式(1)の関係は成立しなくなる。たとえば、導電性粒子がシート表面に偏析した場合には、下記の式(2)の関係が成立する。また、導電性粒子がシートの中央部に偏析した場合には、下記の式(3)の関係が成立する。さらに、上述の実施の形態の製造方法のように、電場を印加して、シートの厚み方向に導電性粒子を並びやすく制御した場合にも、下記の式(3)の関係が成立する。導電性粒子が偏析した場合には、いずれも異方性となる。
【0067】
上述の実施の形態の感圧センサにおいては、感圧センサの厚み方向に電流を流すことにより、感圧センサの表面に加わる圧力を厚み方向の抵抗変化として検出するので、下記式(4)で示すように、感圧センサの表面方向(横方向)は絶縁体に近く、厚み方向(縦方向)は半導体に近い状態となることが好ましい。上述の実施の形態の感圧センサによれば、このような状態を実現することができる。式(4)のような関係が成立することにより、表面に沿う方向の影響を受けることなく厚み方向の変位感度を向上することができる。
【0068】
表面比抵抗×シートの厚み=体積固有抵抗 ・・式(1)
【0069】
表面比抵抗×シートの厚み<体積固有抵抗 ・・式(2)
【0070】
表面比抵抗×シートの厚み>体積固有抵抗 ・・式(3)
【0071】
表面比抵抗×シートの厚み>>体積固有抵抗 ・・式(4)
【0072】
また、マイカなどの絶縁性粒子は、弾性組成物が受ける圧力の有無による導電性粒子の接触・非接触をコントロールする(粒子のつながりをオン・オフする)役目を果たす。すなわち、マイカなどの絶縁性粒子は、電場が印加された場合に導電性粒子の列から排除されて、弾性組成物の表面に沿う方向(横方向)の電気抵抗を上げる働きをする。このため、マイカなどの絶縁性粒子を、ゴム状材料および導電性粒子に対してさらに添加することにより、式(4)の関係が一層成立しやすくなる。上述の実施の形態における弾性組成物においては、製造時に電圧を印加することで厚み方向に導電性粒子のパスが形成されているので、絶縁性粒子が存在していても導電性を高い状態に保つことができ、SN(Signal−Noise ratio)比および感度を上げることができる。さらに、センシングを直流ではなく交流で使用するときには、一層感度を向上することができる。
【0073】
上述の実施の形態においてマイカの添加により感度が向上する理由は、以下のように推測される。すなわち、(製造時に電圧を印加せずに)ゴム状材料および導電性粒子に対してマイカを単に混合した場合には、マイカも導電性粒子(カーボン)も均一に分散する。一方、上述の実施の形態のように製造時に電圧を印加した場合には、導電性粒子は導電性パスを形成し、マイカは導電性粒子の導電性パス(導電性粒子のつながり)の周囲に配向分散し、導電性パスを保持する。故に、マイカが無い場合には、材料がひずみを受けたときに、導電性粒子(炭素粒子)の一粒一粒が応力を受け、導電性パスの一部が壊れ易くなる。従って、ゴム状材料および導電性粒子に対してマイカを添加することにより、導電性粒子(炭素)のかたまりで応力を受けることができ、導電性粒子の接触圧が高まり抵抗が下がることにより、圧力−抵抗の感度が高くなる。
【0074】
上述の実施の形態によれば、導電性粒子の添加量を、パーコレーション転移が開始する導電性粒子の添加量からパーコレーション転移が完了する導電性粒子の添加量までの範囲内に設定することにより、感度を一層向上することができる。これについて以下に説明する。
【0075】
図11は、絶縁体中への導電性粒子の添加率と絶縁体の電気抵抗との関係を模式的に示す図である。図12は、絶縁体中における導電性粒子の配列の様子を模式的に示す図である。
【0076】
図11および図12を参照して、絶縁体への導電性粒子の添加量(導電性微粒子の分散量)を増やしていくと、添加量が少ない場合には導電性粒子同士は互いに分離しているものの(図12中(a)の状態)、ある添加量を閾値として導電性粒子同士が偶然つながりやすくなり(図12中(b)の状態)、パーコレーション転移が生じ、電気抵抗が急激に低下する。パーコレーション転移が完了した後は、電気抵抗が低い状態となる(図12中(c)の状態)。
【0077】
パーコレーション転移の起き易さ(導電性粒子同士が偶然つながる確率)は、導電性粒子の置かれた場の状態(バインダーと粒子の相互作用や、電場の有無など)により決まる。
【0078】
図13は、アスペクト比が1である導電性粒子の体積分率(添加量)と、体積固有抵抗の対数値との関係のシミュレーション結果を示す図である。図13中L1で示す曲線は、縦方向に並びやすくする乱数が発生する場合(パーコレーション転移が起き易い確率(転移促進)の場合)のシミュレーション結果の曲線であり、図13中L2で示す曲線は、横方向に並びやすくする乱数が発生する場合(パーコレーション転移が起き難い確率(転移緩和)の場合)のシミュレーション結果の曲線である。
【0079】
図13を参照して、パーコレーション転移が起き易い確率の場合のシミュレーション結果である曲線L1と、パーコレーション転移が起き難い確率の場合のシミュレーション結果である曲線L2とでは、パーコレーション転移が起きる体積分率の範囲が互いに異なっている。したがって、パーコレーション転移が起き易い確率の場合にパーコレーション転移が開始する体積分率A1から、パーコレーション転移が起き難い確率の場合にパーコレーション転移が完了する体積分率A2までの範囲A内では、絶縁体中の導電性粒子はパーコレーション転移の途中の状態にあるものと推測される。
【0080】
パーコレーション転移の生じる導電性粒子の体積分率(添加量)は、外力をかけなければバインダ(絶縁性粒子)と導電性粒子との相互作用で決まる。外力が働くと、たとえばプロセス因子でさえも変化する。
【0081】
図14は、絶縁体に導電性粒子を添加した材料に対して引っ張り試験を行った場合における、引っ張り歪と体積固有抵抗との関係を示す図である。図14中の曲線L3は、導電性粒子の体積分率を図13の範囲A内に設定した材料についての結果であり、図14中の直線L4は、導電性粒子の体積分率をパーコレーション転移の完了の体積分率よりも高く設定した材料(図13中横軸において位置A2よりも右側の体積分率に設定した材料)についての結果である。
【0082】
図14を参照して、材料の表面に沿う方向に引っ張り力を加えた場合、材料の表面に沿う方向に伸び歪が生じるとともに、ポアソン比に起因して生じる厚み方向の圧縮力により、厚み方向に圧縮歪が生じる。曲線L3では、この厚み方向の圧縮歪(圧縮力)により体積固有抵抗が一旦低下する。引っ張り力が大きくなると、厚み方向の圧縮力に比べて表面に沿う方向の引っ張り力の方が体積固有抵抗に強く影響を及ぼし、引っ張り歪の増加ととともに体積固有抵抗は増加する。
【0083】
一方、直線L4に着目すると、パーコレーション転移が完了(完結)した材料では、引っ張り歪の増加とともに体積固有抵抗値は単調に増加している。これは、パーコレーション転移が完了(完結)した材料においては、導電性粒子同士は密着した状態で存在しているので、初期の圧縮歪による体積固有抵抗値の低下の影響よりも、引っ張り力で導電性粒子同士が離れることによる体積固有抵抗値の増加の影響の方が大きいためである。
【0084】
図14の結果は、材料に引っ張り力を加えた場合の体積固有抵抗の変化であるが、材料に圧縮力を加えた場合の体積固有抵抗の変化の特性についても、図14の結果と同様になる。すなわち、導電性粒子の体積分率を図13の範囲A内に設定した材料では、圧縮歪による体積固有抵抗値の低下の効果が大きくなる。
【0085】
従って、導電性粒子の添加量を、パーコレーション転移が開始する導電性粒子の添加量からパーコレーション転移が完了する導電性粒子の添加量までの範囲内(パーコレーション転移の閾値近辺)とする(導電性粒子を図13中の範囲Aの体積分率とする)ことにより、体積固有抵抗を低くすることができ、体積固有抵抗に対する表面比抵抗の値を高くすることができる。その結果、感圧センサとして活用することが可能となる。
【0086】
一方、従来の感圧センサでは、圧力による導電性粒子の接触抵抗の変化を利用するために、パーコレーション転移が完了する導電性粒子の添加量を超える量(パーコレーション転移の閾値を越える量)まで導電性粒子が多量に添加されている。このような添加量では、体積固有抵抗と表面比抵抗との両方が低くなり、表面に沿う方向(横方向)の感度を上げることができない。したがって、本実施の形態のように平面の圧力分布を細かく計測することは困難である。また、静電容量変化を利用する構成の従来の感圧センサにおいても、抵抗値が低すぎるため、感度を上げることはできない。
【0087】
図15は、SnO2ゾルとアクリル系ラテックスとの2元系による薄膜の顕微鏡写真である。
【0088】
図15を参照して、SnO2ゾル単独の場合(図15中(a))には、SnO2は2nm未満の長さとなっており、SnO2の配列は見られない。一方、図13中範囲Aに含まれる体積分率でSnO2ゾルをアクリル系ラテックスに添加して、0.1μmの厚さの薄膜を作製した場合(図15中(b))には、SnO2の各々は図15中横方向に互いに繋がって、約50nmの長さとなっている。
【0089】
従って、高度の技術で制御した場合には、電場を印加しなくても、図15中縦方向に延在する導電性粒子(SnO2)のネットワークがうまく形成されることが分かる。
【実施例】
【0090】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0091】
(実施例1)
【0092】
乳鉢にカーボン(デンカカーボン(登録商標)、電気化学工業株式会社製)0.236gと、液状シリコーンゴム(KE−106、信越化学工業株式会社製)1.5gと、硬化剤(CAT−RG、信越化学工業株式会社製)0.7gとを添加し、5分間混合した。さらに、液状シリコーンゴム8.5gと、硬化剤0.3gとを添加し、5分間混合した。次に、得られた混合物(組成物)を3本ロールで10分間混練し脱泡した。次に、脱泡後の混合物を、厚み300μmのシートを成形可能な金型へ充填し(移し)、金型を1時間静置した。続いて、混合物を充填した金型に対して、400Vの電圧を3分印加した。その後、電圧印加後の金型をオーブンに入れ、オーブン内で混合物を30分加硫した。
【0093】
以上の工程により得られたゴムシート(弾性組成物)の厚みは300μmであり、表面比抵抗は6×108Ω/sqであり、体積固有抵抗は1.5×107Ωcmであった。さらにこのゴムシートについて、歪に対する体積固有抵抗の応答性を測定したところ、図16の結果が得られた。図16を参照して、無歪の状態で6.8程度であった体積固有抵抗の対数値が、10%圧縮歪を与えた状態では4.9程度まで低下している。この結果より、10%圧縮歪を与えた状態の体積固有抵抗値が、無歪の状態の体積固有抵抗値の1/10以上(約1/100)まで低下していることが分かる。
【0094】
(実施例2)
【0095】
乳鉢にカーボン0.26gと、マイカ微粉体0.1gと、液状シリコーンゴム1.5gと、硬化剤0.7gとを添加し、5分間混合した。さらに、液状シリコーンゴム8.5gと、硬化剤0.3gとを添加し、5分間混合した。次に、得られた混合物(組成物)を3本ロールで10分間混練し脱泡した。次に、脱泡後の混合物を金型へ充填し、金型を1時間静置した。続いて、混合物を充填した金型に対して、400Vの電圧を3分印加した。その後、電圧印加後の金型をオーブンに入れ、オーブン内で混合物を30分加硫した。
【0096】
以上の工程により得られたゴムシートの厚みは300μmであり、表面比抵抗は3.2×109Ω/sqであり、体積固有抵抗は6.0×107Ωcmであった。歪に対する体積固有抵抗については、図16と同様の線形性のある応答性が得られ、10%圧縮歪を与えた状態の体積固有抵抗は1.6×106Ωcmであった。
【0097】
(実施例3)
【0098】
混合物を充填した金型に対して印加する電圧を180Vとした以外は、実施例2と同様の方法でゴムシートを作製した。得られたゴムシートの厚みは300μmであり、表面比抵抗は3.2×109Ω/sqであり、体積固有抵抗は6.0×107Ωcmであった。歪に対する体積固有抵抗については、図16と同様の線形性のある応答性が得られ、10%圧縮歪を与えた状態の体積固有抵抗は1.6×106Ωcmであった。
【0099】
(実施例4)
【0100】
17質量%の塩化第二スズ水溶液500gをラボミキサーにて撹拌しながら、飽和炭酸水素アンモニウム1800gにゆっくりと添加することにより、ゲル分散水溶液を生成した。続いて、生成したゲルをデカンテーションにより取り出し、このゲルを蒸留水にて何度も水洗いした。次に、ゲルを洗浄するのに用いた蒸留水中に硝酸銀を適下し、沈澱ができないことを確認した後、蒸留水1000ml中にアンモニア水を添加することによりpHを9前後に調整した水溶液を作製した。続いて、この水溶液にゲルを添加し、水溶液をラボミキサーで激しく撹拌することにより、ゲルを水溶液中に分散させた。続いて、この分散液に、上記と同様の方法にて合成したアンチモンの酸化物ゲル2gを添加して、ゲルスラリーを調製した。続いて、壁面が石英製の筒型電気炉を350℃に加熱保持し、調整したゲルスラリーをこの電気炉内にスプレーすることにより粉末化し、得られた粉末を乾燥して回収した。以上の工程により得られた粉末を粉末P1とする。
【0101】
続いて、乳鉢に粉末P1を6gと、液状シリコーンゴム1.5gと、硬化剤0.7gとを添加し、5分間混合した。さらに、液状シリコーンゴム8.5gと、硬化剤0.3gとを添加し、5分間混合した。次に、得られた混合物(組成物)を3本ロールで10分間混練し脱泡した。次に、脱泡後の混合物を金型へ充填し(移し)、金型を1時間静置した。続いて、混合物を充填した金型に対して、400Vの電圧を3分印加した。その後、電圧印加後の金型をオーブンに入れ、オーブン内で混合物を30分加硫した。
【0102】
得られたゴムシートの厚みは300μmであり、表面比抵抗は2.1×1010Ω/sqであり、体積固有抵抗は3.6×106Ωcmであった。歪に対する体積固有抵抗については、図16と同様の線形性のある応答性が得られ、10%圧縮歪を与えた状態の体積固有抵抗は1.6×103Ωcmであった。
【0103】
(実施例5)
【0104】
SBR(スチレン・ブタジエンゴム)(JSR株式会社製)100gと、酸化亜鉛3gと、ゴム用粉末硫黄1.3gと、加硫促進剤であるTBBS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)1gと、ステアリン酸1gと、カーボンブラック(HAF)6gとを2本ロールで15分間混合し、平板ゴム作成用電極付金型に充填した。この金型に300Vの交流を印加しながら140℃で5分間、加硫を行った。
【0105】
得られたゴムシートの厚みは300μmであり、表面比抵抗は2.1×108Ω/sqであり、体積固有抵抗は5.5×106Ωcmであった。歪に対する体積固有抵抗については、図16と同様の線形性のある応答性が得られ、10%圧縮歪を与えた状態の体積固有抵抗は5.6×103Ωcmであった。
【0106】
(実施例6)
【0107】
実施例1で得られたゴムシート(ゴムセンサ)を上部電極および下部電極で挟み込むことにより、感圧センサを作製した。上部電極および下部電極の各々は、ポリイミドフィルムよりなる基板と、基板上に1cmの間隔で配置された複数の電極パターン(5mm幅の線状の電極)とを有していた。上部電極における電極パターンの各々の延在方向と、下部電極における電極パターンの各々の延在方向とは互いに直交しており、ゴムシートを挟み込んだ状態で上部電極および下部電極の各々における複数の電極パターンは、格子状に配置されていた。この感圧センサにおいて任意の位置に加重をかけると、その位置に相当する電極間で抵抗が1/10に下がった。
【0108】
(比較例1)
【0109】
乳鉢にカーボン(デンカカーボン(登録商標)、電気化学工業株式会社製)0.236gと、液状シリコーンゴム(KE−106、信越化学工業株式会社製)1.5gと、硬化剤(CAT−RG、信越化学工業株式会社製)0.7gとを添加し、5分間混合した。さらに、液状シリコーンゴム(KE−106、信越化学工業株式会社製)8.5gと、硬化剤(CAT−RG、信越化学工業株式会社製)0.3gとを添加し、5分間混合した。次に、得られた混合物(組成物)を3本ロールで10分間混練し脱泡した。次に、脱泡後の混合物を金型へ充填し、金型を1時間静置した。続いて電圧を印加せずに、混合物が充填された金型をオーブンに入れ、オーブン内で混合物を30分加硫した。
【0110】
得られたゴムシートの厚みは300μmであり、表面比抵抗は8.5×108Ω/sqであり、体積固有抵抗は7.6×107Ωcmであった。10%圧縮歪を与えた状態の体積固有抵抗は2.6×107Ωcmであった。
【0111】
本願明細書においては、体積固有抵抗はたとえば四端子法にて測定される。表面比抵抗はたとえば二重リング法にて測定される。また表面比抵抗は、1000Ω/sq以上の抵抗の場合には、ハイレスタMCP―HT450(株式会社三菱化学アナリテック社製)を使用して測定され、1000Ω/sq以下の抵抗の場合には、4端子法にて測定されてもよい。さらに、交流でインピーダンスを計測する場合には、フィルム用電極16451B(アジレントテクノロジー社製)を使用してインピーダンスが測定されてもよい。
【0112】
上述の実施の形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0113】
1 感圧センサ
3 異方性導電シート
10 下部電極
11a〜11d,21a〜21d 電極パターン
12a〜12d,22a〜22d 接続電極パターン
13,23 基板
13a,23a 接続部
20 上部電極
30 装置本体
31,32 取付ソケット
31a,32a ロック部
40 コンピュータ
40a〜40d 交差部分
100 測定装置
101,102 加圧部分
103 端子
104 筐体
200 粉末の材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃でゴム弾性を示す材料またはその原材料と、導電性粒子とを混合することにより混合物を得る工程と、
前記混合物に電圧を加えることにより、前記導電性粒子を配向させる工程とを備える、感圧センサの製造方法。
【請求項2】
前記混合物を得る工程は、前記原材料と前記導電性粒子とを混合する工程であり、
前記導電性粒子を配向させる工程の後に、前記混合物を加硫する工程をさらに備える、請求項1に記載の感圧センサの製造方法。
【請求項3】
前記混合物を得る工程における前記導電性粒子の添加量は、パーコレーション転移が開始する添加量からパーコレーション転移が完了する添加量までの範囲内にある、請求項1または2に記載の感圧センサの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法を用いて製造された感圧センサ。
【請求項5】
25℃でゴム弾性を示す材料と、導電性粒子とを含み、
25℃で弾性変形可能であり、かつ10%圧縮歪を与えた状態の体積固有抵抗が、無歪の状態の体積固有抵抗の10分の1以下である、弾性組成物。
【請求項6】
前記導電性粒子の添加量は、パーコレーション転移が開始する添加量からパーコレーション転移が完了する添加量までの範囲内にある、請求項5に記載の弾性組成物。
【請求項7】
前記ゴム弾性を示す材料として、全体に対する含有量が50質量パーセント以上99質量パーセント未満であるシリコーンゴムを含む、請求項5または6に記載の弾性組成物。
【請求項8】
前記導電性粒子はカーボンよりなる、請求項5〜7のいずれかに記載の弾性組成物。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の弾性組成物と、
前記弾性組成物を挟み込む2つの電極とを備えた、感圧センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図12】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−226852(P2011−226852A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95082(P2010−95082)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】