説明

感圧導電ゴム部材及び感圧センサ

【課題】ヒステリシスロスが小さく、一定の力がセンサに加えられている時の出力が経時と共に変化する量が極めて小さく、変形による電気抵抗値変化の再現性が優れた感圧導電ゴム部材を提供する。
【解決手段】荷重の変化に応じた感圧導電ゴム部材と電極との導通抵抗値の変化を検出することによって、荷重を感知する感圧センサに用いられる感圧導電ゴム部材。感圧導電ゴム部材は、ゴム基材と樹脂塗膜とを含む少なくとも二層で形成されており、ダイナミック超微小硬度計にて測定される前記ゴム基材の弾性率E1が0.5〜30MPa、前記樹脂塗膜が形成された面の感圧導電ゴム部材の弾性率E2が10〜700MPaであり、且つ、弾性率E1と弾性率E2の比が1<E2/E1<1000である。少なくとも前記感圧導電ゴム部材と電極を備えた感圧センサであり、前記電極がフレキシブルプリント基板であり、前記樹脂塗膜が前記電極と対向して配置された感圧センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重の変化を電気抵抗値の変化で検出する感圧センサに用いられる感圧導電ゴム部材に関し、またこれを用いた感圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部材に作用する圧力の大きさ、分布状態を測定する手段として、チタン酸ジルコン酸鉛等の圧電セラミックスを用いた方式や、歪みゲージを用いる方式が使用されている。しかしながら、圧電セラミックスを用いた方式は、一般に剛性の高い材料が使用されるため、感圧センサの形状の自由度に制限があり、また、歪みゲージを用いる方式も同様に、感圧センサの形状設計の自由度が低いという問題を有している。
【0003】
これらの問題に対して、ゴム、エラストマー、樹脂材料などの高分子材料を基材とし、この基材中に導電性粒子を分散させた感圧部材を用いることで、形状の自由度が高い感圧センサが得られることが知られている。
【0004】
例えば、非導電性エラストマー中に、粒子径が1〜20μmである微小球状炭素粒子と共に、粒子径が10〜150μmの中空状弾性マイクロスフェアーが分散された感圧導電性エラストマーが報告されている(特許文献1)。この感圧導電性エラストマーは、中空状弾性マイクロスフェアーを用いることから、優れた耐久性、衝撃吸収性を示し、圧力−抵抗変化のヒステリシスが改善された感圧導電性エラストマーを得る事が可能となる。
【0005】
また、平均表面粗さが0.1μm以上3μm以下でありかつ表面凹凸周期のピークが10μm以上1,000μm以下であると共に、弾性率が800MPa以上8,000MPa以下である膜状感圧抵抗体が報告されている(特許文献2)。この膜状感圧抵抗体は、充分な平均表面粗さ、表面凹凸周期のピークおよび弾性率を有することから、接触初期の低荷重域における荷重変化に対しても接触面積が緩やかに変化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開4−71108号公報
【特許文献2】特開2002−158103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1の感圧導電性エラストマーは次の点が問題である。
(1)弾性に富んだ中空状弾性マイクロスフェアーを用いたとしても、感圧導電性エラストマーの粘着性等が原因で検知抵抗値に強いヒステリシスロスが生じる場合があり、感圧特性の信頼性に欠ける。
(2)感圧導電性エラストマーの弾性率が低いために、一定の力がセンサに加えられている時にエラストマー変形量が徐々に増大し、出力(電気抵抗値)が経時と共に極めて大きく変化する。
【0008】
また特許文献2の膜状感圧抵抗体は次の点が問題である。
(1)膜状感圧抵抗体が充分な平均表面粗さ、表面凹凸周期のピークおよび弾性率を有するとしても、基材が弾性体でなければ膜状感圧抵抗体と電極との接触状態の均一性に劣り、負荷−除荷試験を繰り返し行なった場合の再現性に劣る場合があり、感圧特性の信頼性に欠ける。
(2)また、膜状感圧抵抗体の弾性率が高いことから、膜状感圧抵抗体と電極との接触状態が乱雑で、一定の力がセンサに加えられている時に出力が一定に保たれない場合がある。
【0009】
したがって、本発明の課題は、ヒステリシスロスが小さく、一定の力がセンサに加えられている時の出力が経時と共に変化する量が極めて小さく(=ドリフト良好)、変形による電気抵抗値の変化が優れた再現性を有し、信頼性の高い感圧導電ゴム部材を提供すること、及びこれを用いた感圧センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、荷重の変化に応じた感圧導電ゴム部材と電極との導通抵抗値の変化を検出することによって、荷重を感知する感圧センサに用いられる感圧導電ゴム部材において、前記感圧導電ゴム部材は、ゴム基材と樹脂塗膜とを含む少なくとも二層で形成されており、ダイナミック超微小硬度計にて測定される前記ゴム基材の弾性率E1が、0.5MPa以上、30MPa以下、前記樹脂塗膜が形成された面の感圧導電ゴム部材の弾性率E2が、10MPa以上、700MPa以下であり、且つ、弾性率E1と弾性率E2の比が、1<E2/E1<1,000であることを特徴とする感圧導電ゴム部材である。
【0011】
また本発明は、少なくとも前記感圧導電ゴム部材と電極とを備えた感圧センサであって、前記電極がフレキシブルプリント基板であり、前記樹脂塗膜が前記電極と対向して配置されている感圧センサである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヒステリシスロスが小さく、一定の力がセンサに加えられている時の出力が経時と共に変化する量が極めて小さく(=ドリフト良好)、変形による電気抵抗値の変化が優れた再現性を有し信頼性の高い検出性を有する感圧センサ用感圧導電ゴム部材が提供される。またこの感圧導電ゴム部材を用いることにより変形による電気抵抗値の変化が優れた再現性を有し信頼性の高い検出性を有する感圧センサが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る感圧導電ゴム部材の断面図である。図1(a)は二層構成、図1(b)は三層構成の樹脂塗膜が被覆している形態であり、図1(c)は基材の周囲を樹脂塗膜が被覆している形態である。
【図2】本発明に係る感圧センサに使用されるフレキシブルプリント基板電極の平面図である。図2(a)は櫛型電極、図2(b)は角板型電極である。
【図3】本発明に係る感圧センサの断面図である。図3(a)は感圧導電ゴム部材1aと櫛型電極2aを使用した場合、図3(b)は感圧導電ゴム部材1bと角板型電極2bを使用した場合である。
【図4】負荷−除荷試験における圧力と電気抵抗値の測定方法を示す模式図である。
【図5】実施例1における負荷−除荷試験の圧力と電気抵抗値LogRの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<感圧導電ゴム部材>
本発明に係る感圧導電ゴム部材は、荷重の変化に応じた感圧導電ゴム部材と電極との導通抵抗値の変化を検出することによって、荷重を感知する感圧センサに用いられる感圧導電ゴム部材である。この感圧導電ゴム部材は、ゴム基材と樹脂塗膜とを含む少なくとも二層で形成されており、ダイナミック超微小硬度計にて測定される前記ゴム基材の弾性率E1が、0.5MPa以上、30MPa以下、前記樹脂塗膜が形成された面の感圧導電ゴム部材の弾性率E2が、10MPa以上、700MPa以下であり、且つ、弾性率E1と弾性率E2の比が、1<E2/E1<1,000であることを特徴としている。
【0015】
本発明に係る感圧導電ゴム部材は、ゴム基材の表面に樹脂塗膜が形成された少なくとも二層構成である。図1(a)〜図1(c)は、本発明の感圧導電ゴム部材の断面図を示している。図1(a)は、ゴム基材1a−1の片面に樹脂塗膜1a−2が形成された二層構成の感圧導電ゴム部材1aである。図1(b)は、ゴム基材1b−1の両面に樹脂塗膜2b−1が形成された三層構成の感圧導電ゴム部材1bである。図1(c)のように、ゴム基材1c−1の周囲に樹脂塗膜1c−2が形成された形態の感圧導電ゴム部材1cでもよい。
【0016】
〔ゴム基材〕
ゴム基材は、圧縮に伴い弾性変形し、感圧導電ゴム部材と対向して配置される電極との導通抵抗変化が滑らかに変化する作用を有する弾性体である。
【0017】
ゴム基材の原料となる未加硫のゴム組成物のゴム成分として具体的には、以下のものが挙げられる。天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、シリコーンゴム、及びウレタンゴム(U)等。これらのゴム成分は、単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。ゴム組成物は通常、ゴム成分の他に各種配合剤を含有する。例えば、導電性付与剤、加硫剤、加硫促進剤、充填剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、軟化剤、可塑剤、分散剤などの従来からゴムの配合剤として使用されているものを適宜配合する。未加硫のゴム組成物の混合は、例えば、加圧式ニーダー、オープンロール等の混練機を用いて行うことができる。
【0018】
未加硫のゴム組成物を成形、架橋する方法としては、特に限定されるものではなく、成形方法としては、押出成形、プレス成形等を挙げることができる。押出成形は、上記未加硫物をスクリューで混練し、先端の押出金型(ダイ)を通過させて連続的に成形する方法である。プレス成形は、金型に上記未加硫物を充填し加圧成型する方法である。成形後の未加硫ゴム混合物の加硫方法としては、加熱、冷却等の温度制御により加硫を行う方法であれば、特に条件は問わない。
【0019】
ゴム基材の弾性率は、0.5MPa以上、30MPa以下であり、より好ましくは、1.0MPa以上、20MPa以下である。上記範囲内であれば、圧縮に伴い弾性変形し、感圧導電ゴム部材と対向して配置される電極との導通抵抗変化が滑らかに変化する作用を有する弾性ゴム基材が得られる。弾性率が、0.5MPaより小さいと、圧縮に伴いゴム基材が即座に変形して、感圧センサがオン−オフのスイッチのように機能することになる。弾性率が、30MPaより大きいと、荷重の増減に追従してゴム基材が弾性変形できず、検知抵抗値が滑らかな曲線にならない。
【0020】
また、ゴム基材の厚みd1は、特に限定はされないが、0.1mm≦d1≦10mmが好ましい。ゴム基材の厚みが0.1mm以上であれば、圧縮に伴ってゴム基材が弾性変形して感圧導電ゴム部材と電極との導通抵抗が適度に変化する。またゴム基材の厚みが10mm以下であれば、感圧導電ゴム部材のサイズの小型化が可能であり、感圧センサの形状の自由度を高めることができる。
【0021】
また、ゴム基材の電気抵抗値は、感圧導電ゴム部材とし、感圧センサとして用いる場合の電極の構成により、適宜調整される。図3(a)に示すような片面に電極が配置されている場合は、電気は樹脂塗膜を通して導通するので、ゴム基材の電気抵抗値は特に限定されない。図3(b)に示すような両面に電極が配置されている場合は、電気はゴム基材を通して導通するので、ゴム基材の電気抵抗値は10Ω・cm以下であることが好ましい。10Ω・cm以下であれば、感圧導電ゴム部材を介して、荷重に応じた電気の導通変化が得られる。
【0022】
〔樹脂塗膜〕
感圧導電ゴム部材は、上記ゴム基材の表面に樹脂塗膜を形成して二層以上の構成とすることにより、感圧導電ゴム部材に対する外力の作用を電気抵抗値として検出する素子として機能する。
【0023】
樹脂塗膜を構成する樹脂成分として具体的には、以下のものが挙げられる。フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(SEBC)及びオレフィン−エチレン・ブチレン・オレフィン共重合体(CEBC)等。これらの樹脂は1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、樹脂は架橋系のものでもよく、樹脂塗膜の原料となる塗料組成物中には、硬化剤として、例えば、イソシアネート化合物、アミン化合物を適宜配合することができる。
【0024】
また、樹脂塗膜は、所望の電気抵抗値を得るために、導電性カーボン、グラファイト、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉及び金属酸化物である導電性酸化錫や導電性酸化チタン等の導電剤を含有する。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂塗膜の電気抵抗値は、特に限定はされないが、500kPa以上の圧力下において、10-1Ω・cm以上10Ω・cm以下であることが好ましい。10-1Ω・cm以上であれば、無加圧時の絶縁性が保たれ、加圧時には、荷重に応じた導通変化が得られる。10Ω・cm以下であれば、負荷を施しても出力が得られないような事はなく、負荷に応じた出力が得られる。
【0025】
上記樹脂、導電粒子の他に、その他成分を配合することも可能であり、例えば、有機弾性フィラー、無機酸化物フィラー、分散剤などが挙げられる。
【0026】
樹脂塗膜の形成方法については、まず上記の樹脂塗膜を構成する材料、及び有機溶剤等からなる塗料組成物を、サンドミル、ペイントシェイカー、ダイノミル、及びパールミル等のビーズを利用した分散装置を用いて調製する。得られた塗料組成物を、ディッピング法やスプレーコート法により、ゴム基材の表面に塗工する。塗料組成物の利用効率を考慮すると、ディッピング法が好ましい。さらに熱風循環乾燥機や赤外線乾燥炉などを用いて溶剤を除去してゴム基材の表面に樹脂塗膜を形成する。
【0027】
なお、ゴム基材と塗料組成物との濡れ性が良好でない場合には、塗工する前に、ゴム基材を紫外線照射することにより表面自由エネルギーを高めたり、ゴム基材にプライマーを塗布して、濡れ性を良好にする事で、均一な塗膜を形成する事が可能である。
【0028】
樹脂塗膜は弾性ゴム基材の少なくとも一面に形成すればよく、本発明の感圧導電ゴム部材を感圧センサとして用いる場合は、少なくとも一対の電極が形成された基板上に、電極に樹脂塗膜が対向するよう感圧導電ゴム部材を配置すればよい。
【0029】
樹脂塗膜が形成される面の感圧導電ゴム部材の弾性率は、10MPa以上、700MPa以下であり、より好ましくは、50MPa以上、600MPa以下である。弾性率が10MPa以上であれば、一定の力がセンサに加えられている時に変形量が経時と共に増加することもなく、経時と共に電気抵抗値が増加するおそれもない。また弾性率が700MPa以下であれば、部材としての柔軟性は良好であり、電極との接触状態の均一性が保たれ、負荷−除荷試験を繰り返し行なった場合の再現性が良好である。また、一定の力がセンサに加えられている時に接触状態が均一に保たれ、出力が経時と共に変化するおそれもない。
【0030】
樹脂塗膜の膜厚d2は、特に限定はされないが、5μm≦d2≦100μmが好ましい。樹脂塗膜の膜厚が100μm以下であれば、感圧導電ゴム部材としての柔軟性が保たれ、荷重の変化に応じて接触面積が変化する。また樹脂塗膜の膜厚が5μm以上であれば、感圧導電ゴム部材として所望の弾性率が得られ、一定の力がセンサに加えられている時に徐々に変形量が増大することもなく、出力が経時と共に変化するおそれもない。
【0031】
ゴム基材の弾性率E1と感圧導電ゴム部材の弾性率E2の比は、1<E2/E1<1,000である。E2/E1が1以下の場合は、ゴム基材の弾性率E1よりも感圧導電ゴム部材の弾性率E2が大きくない場合であり、感圧導電ゴム部材の弾性率の低さに由来し、一定の力がセンサに加えられている時に徐々に変形量が増大し、出力が経時と共に極めて大きく変化するという問題がある。また、感圧導電ゴム部材の粘着性等で検知抵抗値に強いヒステリシスロスが生じるという問題がある。
【0032】
E2/E1が1,000以上の場合は、感圧導電ゴム部材の弾性率の高さに由来し、電極との接触状態の均一性に劣り、負荷−除荷試験を繰り返し行なった場合の再現性に劣るという問題がある。また、一定の力がセンサに加えられている時に接触状態が均一に保たれ難くなり、出力が経時と共に変化するという問題がある。
【0033】
<感圧センサ>
本発明に係る感圧センサは、少なくとも前記感圧導電ゴム部材と電極とを備えた感圧センサであって、前記電極がフレキシブルプリント基板であり、前記樹脂塗膜が前記電極と対向して配置されている。
【0034】
感圧センサの電極としては、図2に示すようなフレキシブルプリント基板電極が使用される。図2(a)は、櫛型電極2aの平面図であり、銅乃至銀ペースト等の導電性金属からなる配線2a−1と、ポリイミド乃至ポリエステルフィルム等の絶縁性樹脂からなる基板2a−2で形成されている。図2(b)は、角板型電極2bの平面図であり、銅乃至銀ペースト等の導電性金属からなる配線2b−1と、ポリイミド乃至ポリエステルフィルム等の絶縁性樹脂からなる基板2b−2で形成されている。
【0035】
図3は、本発明の感圧導電ゴム部材を使用した感圧センサの断面図を示している。図3(a)は、櫛型電極2aの配線2b−1側に、感圧導電ゴム部材1aの樹脂塗膜面1a−1が対向接触するように配置された感圧センサ3aである。感圧センサ3aに対する荷重Pの負荷−除荷に応じて感圧導電ゴム部材1aが弾性変形し導通抵抗が変化する。図3(b)は、角板型電極2bの配線2b−1側が相対するように感圧導電ゴム部材1bを挟み配置された感圧センサ3bである。感圧センサ3bに対する荷重Pの負荷−除荷に応じて感圧導電ゴム部材1bが弾性変形し導通抵抗が変化する。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例により本発明の感圧導電ゴム部材を具体的に説明する。
【0037】
(実施例1)
<1.基材の作製>
以下の材料を2本ロールにて20分間混合し、未加硫ゴムコンパウンドを作製した。
・ブタジエンゴム(宇部興産(株)製、商品名「BR150」)70質量部、
・イソプレンゴム(日本ゼオン(株)製、商品名「IR2200」)30質量部、
・酸化亜鉛(ハクスイテック(株)製、商品名「亜鉛華2種」)5質量部、
・ステアリン酸亜鉛(日本油脂(株)製、商品名「ジンクステアレート」)1質量部、
・カーボンブラック(東海カーボン(株)製、商品名「シーストTA」)10質量部、
・硫黄(鶴見化学工業(株)製、商品名「サルファックスPMC」)2質量部、
・TETD(テトラエチルチウラムジスルフィド)(大内新興化学(株)製、商品名「ノクセラーTET」)1質量部、
・MBTS(ジベンゾチアジルジスルフィド)(大内新興化学(株)製、商品名「ノクセラーDM」)1質量部。
【0038】
次に、上記未加硫物を予め170℃に加熱した縦150mm、横150mm、深さ2.0mmの金型内に充填し、170℃、100kgfにて15分間プレス加硫を行い、平板状ゴム基材を得た。
【0039】
<2.塗料組成物の作製>
続いて、以下の材料を配合し、固形分30質量%の樹脂溶液を作製した。
・ポリオール(ダイセル化学工業(株)製、商品名「プラクセルDC2016(固形分70%、水酸基価80mgKOH/g)」)100質量部、
・イソホロンジイソシアネート系硬化剤(デグサ・ヒュルス社製、商品名「ベスタナートB1370(固形分60%、NCO8.0%)」)25質量部、
・ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤(旭化成工業(株)製、商品名「デュラネートTPA−B80E(固形分80%、NCO12.5%)」)32質量部(NCO/OH比=1.0)、
・カーボンブラック(三菱化学(株)製、商品名「#3230」)55質量部、
・変性ジメチルシリコーンオイル(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製、商品名「SH−28PA」)0.05質量部、
・MIBK(メチルイソブチルケトン)340質量部。
【0040】
この樹脂溶液200質量部に対して、直径0.8mmのガラスビーズを200質量部加えて、450mlのマヨネーズビンに入れ、ペイントシェイカーを使用して6時間分散した。最後に200メッシュの網で溶液をろ過して、塗料組成物を作製した。
【0041】
<3.感圧導電ゴム部材の作製>
前記平板状ゴム基材を前記塗料組成物中に、引き下げ速度200mm/secで垂直に浸漬し、10秒間保持した後、引き上げ速度10mm/secで引き上げ、ゴム基材の表面に塗料組成物を塗工した。なお、上記塗工は、室温にて行った。ついで、室温にて30分間風乾後、オーブンを用い、160℃で1時間加熱することによって硬化させ、ゴム基材の表面に膜厚13μmの樹脂塗膜が形成された感圧導電ゴム部材を得た。
【0042】
<4.弾性率の測定>
弾性率の測定には、島津製作所製「島津ダイナミック超微小硬度計」DUH−W201Sを用いた。測定条件は、試験モード:負荷−除荷試験、負荷速度:0.28mN/sec、保持時間:5sec、圧子の種類:三角すい圧子115である。試験力は、圧子の押し込み深さが、測定対象物の厚みの1/10以下なるよう調整した。つまり、ゴム基材の厚みが2.0mmの時は、押し込み深さが0.2mm以下となるよう、試験力を調整した。樹脂塗膜の厚みが13μmの時は、押し込み深さが1.3μm以下となるよう、試験力を調整した。なお、ゴム基材の弾性率は、前記平板状ゴム基材の表面に三角すい圧子を押し込んで求めた。樹脂塗膜が形成された面の感圧導電ゴム部材の弾性率は、前記感圧導電ゴム部材の樹脂塗膜の表面に三角すい圧子を押し込んで求めた。結果を表1に示す。
【0043】
<5.感圧センサとしての荷重検知性能>
得られた感圧導電ゴム部材を縦10mm、横10mmに裁断した角形シートを、23℃、60%RH(N/N)環境に24時間以上放置した後、図4に示すように、上記感圧導電ゴム部材の樹脂塗膜がフレキシブルプリント基板櫛型電極(電極幅1mm、電極間隔0.5mm)と対向するように配置して感圧センサとし、角形シート上面全体に荷重が加わるようにした。
【0044】
この状態で櫛型電極に直流電圧5Vを印加し、荷重測定器にて感圧センサの厚さ方向に5mm/minの速度で0〜50kPaの範囲で、負荷、除荷を行ない、櫛型電極に直列接続した1kΩの抵抗体にかかる電圧を検出測定した。各荷重における電圧値から、電気抵抗値を算出した。結果を図5に示す。
【0045】
1)ヒステリシスロス
各荷重における、負荷時の電気抵抗値(LogR負荷)と除荷時の電気抵抗値(LogR除荷)の差の絶対値を求め、これの最大値をヒステリシスロスの指標とし、以下の基準で表示した。結果を表1に示す。
◎:|最大値Δ(LogR負荷−LogR除荷)|≦0.1
○:0.1<|最大値Δ(LogR負荷−LogR除荷)|≦0.3
△:0.3<|最大値Δ(LogR負荷−LogR除荷)|≦0.5
×:0.5<|最大値Δ(LogR負荷−LogR除荷)| 。
【0046】
2)再現性
上記負荷−除荷試験を100回繰り返し行ない、繰り返し負荷−除荷における検出抵抗値の再現性を評価した。負荷時の電気抵抗値(LogR負荷)の各荷重における100回測定した値の標準偏差(3σ)、及び、除荷時の電気抵抗値(LogR除荷)の各荷重における100回測定した値の標準偏差(3σ)を求め、これの最大値(3σmax)を再現性の指標とした。結果を表1に示す。
◎:3σmax≦0.3
○:0.3<3σmax≦0.4
△:0.4<3σmax≦0.5
×:0.5<3σmax
【0047】
3)ドリフト
荷重測定器にて感圧センサの厚さ方向に5mm/minの速度で15kPaまで負荷を行ない、この一定荷重15kPaを保持したまま、櫛型電極に直列接続した1kΩの抵抗体にかかる電圧を10時間検出測定した。各時間における電圧値から、電気抵抗値を算出した。初期の電気抵抗値(LogRドリフト初期)と10時間後の電気抵抗値(LogRドリフト10時間後)の差の絶対値を求め、定荷重時の出力変動の指標として以下の基準で表示した。結果を表1に示す。
◎:|Δ(LogRドリフト初期−LogRドリフト10時間後)|≦0.1
○:0.1<|Δ(LogRドリフト初期−LogRドリフト10時間後)|≦0.3
△:0.3<|Δ(LogRドリフト初期−LogRドリフト10時間後)|≦0.5
×:0.5<|Δ(LogRドリフト初期−LogRドリフト10時間後)| 。
【0048】
また感圧センサとしての荷重検知性能の総合判定は下記基準にて行った。結果を表1に示す。
最良:ヒステリシスロス、再現性、ドリフトの各評価において、◎のみである。
良好:ヒステリシスロス、再現性、ドリフトの各評価において、○を含む。(△以下は含まない。)
可:ヒステリシスロス、再現性、ドリフトの各評価において、△を含む。(×以下は含まない。)
不適切:ヒステリシスロス、再現性、ドリフトの各評価において、×を含む。
【0049】
(実施例2)
以下の組成で未加硫ゴムコンパウンドを作製した以外は、実施例1と同様にして感圧導電ゴム部材を得た。また実施例1と同様にして各種評価を実施した。結果を表1に示す。
・エチレンプロピレンゴム(住友化学(株)製、商品名「エスプレン600F(油展量100phr)」)200質量部、
・カーボンブラック「シーストTA」10質量部、
・ジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名「パークミルD−40MB」)8質量部、
・トリアリルイソシアヌレート(日本化成(株)製、商品名「TAIC−WH60」)3質量部。
【0050】
(実施例3)
以下の材料を配合して未加硫ゴムコンパウンドを作製した。
・ブタジエンゴム「BR150」70質量部、
・イソプレンゴム「IR2200」30質量部、
・酸化亜鉛「亜鉛華2種」5質量部、
・カーボンブラック(旭カーボン(株)製、商品名「旭F−200」)50質量部、
・ジクミルパーオキサイド「パークミルD−40MB」3質量部。
【0051】
また、溶剤MIBKの配合部数を235質量部として、固形分37質量%の塗料組成物を作製した。それ以外は、実施例1と同様にして膜厚38μmの樹脂塗膜が形成された感圧導電ゴム部材を得た。また実施例1と同様にして各種評価を実施した。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例4)
溶剤MIBKの配合部数を173質量部として、固形分43質量%の塗料組成物を作製した以外は、実施例1と同様にして膜厚63μmの樹脂塗膜が形成された感圧導電ゴム部材を得た。また実施例1と同様にして各種評価を実施した。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例5)
以下の材料を配合して固形分37質量%の塗料組成物を作製した。
・ポリオール「プラクセルDC2016」100質量部、
・イソホロンジイソシアネート系硬化剤「ベスタナートB1370」45質量部、
・ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤「デュラネートTPA−B80E」29質量部(NCO/OH比=1.2)、
・MIBK244質量部。
それ以外は、実施例1と同様にして膜厚38μmの樹脂塗膜が形成された感圧導電ゴム部材を得た。また実施例1と同様にして各種評価を実施した。結果を表1に示す。
【0054】
(実施例6)
以下の材料を配合して未加硫ゴムコンパウンドを作製した。
・エチレンプロピレンゴム「エスプレン600F」200質量部、
・カーボンブラック「シーストTA」5質量部、
・ジクミルパーオキサイド「パークミルD−40MB」5質量部、
・トリアリルイソシアヌレート「TAIC−WH60」2質量部。
【0055】
また、以下の材料を配合して固形分20質量%の塗料組成物を作製した。
・ポリオール「プラクセルDC2016」100質量部、
・ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤「デュラネートTPA−B80E」48質量部(NCO/OH比=1.0)、
・MIBK612質量部。
それ以外は、実施例1と同様にして膜厚3μmの樹脂塗膜が形成された感圧導電ゴム部材を得た。また実施例1と同様にして各種評価を実施した。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例7)
以下の材料を配合して未加硫ゴムコンパウンドを作製した。
・ブタジエンゴム「BR150」80質量部、
・ハイスチレンゴム(JSR(株)製、商品名「JSR0061」)20質量部、
・酸化亜鉛「亜鉛華2種」5質量部、
・カーボンブラック「旭F−200」50質量部、
・ジクミルパーオキサイド「パークミルD−40MB」5質量部。
【0057】
また、以下の材料を配合して固形分37質量%の塗料組成物を作製した。
・ポリオール「プラクセルDC2016」100質量部、
・イソホロンジイソシアネート系硬化剤「ベスタナートB1370」45質量部、
・ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤「デュラネートTPA−B80E」29質量部(NCO/OH比=1.2)、
・MIBK244質量部。
それ以外は、実施例1と同様にして膜厚38μmの樹脂塗膜が形成された感圧導電ゴム部材を得た。また実施例1と同様にして各種評価を実施した。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例8)
以下の材料を配合して未加硫ゴムコンパウンドを作製した。
・ブタジエンゴム「BR150」80質量部、
・ハイスチレンゴム「JSR0061」20質量部、
・酸化亜鉛「亜鉛華2種」5部、
・カーボンブラック「旭F−200」50質量部、
・ジクミルパーオキサイド「パークミルD−40MB」5質量部。
【0059】
また、以下の材料を配合して固形分20質量%の塗料組成物を作製した。
・ポリオール「プラクセルDC2016」100質量部、
・ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤「デュラネートTPA−B80E」48質量部(NCO/OH比=1.0)、
・MIBK612質量部。
それ以外は、実施例1と同様にして膜厚3μmの樹脂塗膜が形成された感圧導電ゴム部材を得た。また実施例1と同様にして各種評価を実施した。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例9)
以下の材料を配合して未加硫ゴムコンパウンドを作製した。
・エチレンプロピレンゴム「エスプレン600F」200質量部、
・カーボンブラック「シーストTA」5質量部、
・ジクミルパーオキサイド「パークミルD−40MB」5質量部、
・トリアリルイソシアヌレート「TAIC−WH60」2質量部。
【0061】
また、以下の材料を配合して固形分34質量%の塗料組成物を作製した。
・ポリオール「プラクセルDC2016」100質量部、
・イソホロンジイソシアネート系硬化剤「ベスタナートB1370」45質量部、
・ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤「デュラネートTPA−B80E」29質量部(NCO/OH比=1.2)、
・MIBK286質量部。
それ以外は、実施例1と同様にして膜厚23μmの樹脂塗膜が形成された感圧導電ゴム部材を得た。また実施例1と同様にして各種評価を実施した。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
以下の材料を配合して未加硫ゴムコンパウンドを作製した。
・エチレンプロピレンゴム「エスプレン600F」200質量部、
・カーボンブラック「シーストTA」5質量部、
・ジクミルパーオキサイド「パークミルD−40MB」5質量部、
・トリアリルイソシアヌレート「TAIC−WH60」2質量部。
【0063】
また、以下の材料を配合して固形分37質量%の塗料組成物を作製した。
・ポリオール「プラクセルDC2016」100質量部、
・イソホロンジイソシアネート系硬化剤「ベスタナートB1370」45質量部、
・ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤「デュラネートTPA−B80E」29質量部(NCO/OH比=1.2)、
・MIBK244質量部。
それ以外は、実施例1と同様にして膜厚38μmの樹脂塗膜が形成された感圧導電ゴム部材を得た。また実施例1と同様にして各種評価を実施した。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例2)
基材としてポリエステルフィルム(東レフィルム加工(株)製、商品名「タフトップ#188 B2T0」)を用いた。また、以下の材料を配合して固形分20質量%の塗料組成物を作製した。
・ポリオール「プラクセルDC2016」100質量部、
・ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤「デュラネートTPA−B80E」48質量部(NCO/OH比=1.0)、
・MIBK612質量部。
それ以外は、実施例1と同様にして膜厚3μmの樹脂塗膜が形成された感圧導電ゴム部材を得た。また実施例1と同様にして各種評価を実施した。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例3)
以下の材料を2本ロールにて20分間混合して未加硫ゴムコンパウンドを作製した。
・シリコーンゴム(信越シリコーン(株)製、商品名「KE−650U」)100質量部、
・中空状弾性マイクロスフェアー(松本油脂製薬(株)製、商品名「M600」)50質量部、
・微小球状炭素粒子(日本カーボン(株)製、商品名「カーボンマイクロビーズICB0510」)50質量部、
・ジクミルパーオキサイド「パークミルD−40MB」2質量部。
【0066】
次に、上記未加硫物を予め170℃に加熱した縦150mm、横150mm、深さ2.0mmの金型内に充填し、170℃、100kgfにて15分間プレス加硫を行い、感圧導電ゴム部材を得た。この感圧導電ゴム部材を用いて実施例1と同様にして各種評価を実施した。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例1、2及び3においては、ヒステリシスロス、再現性、ドリフトに優れ、本感圧導電ゴム部材を適用することにより、好適な感圧センサを提供できることがわかる。実施例4及び5においては、感圧導電ゴム部材の弾性率の高さに起因し、電極との接触状態の均一性に少し劣り、負荷−除荷試験を繰り返し行なった場合の再現性に劣る傾向にあるが、ヒステリシスロス、ドリフトは優れ、感圧センサとしては良好であることがわかる。
【0069】
実施例6においては、感圧導電ゴム部材の弾性率の低さに起因し、粘着性を有し、検知抵抗値にヒステリシスロスが劣る傾向にある。また、感圧導電ゴム部材の弾性率の低さに起因し、一定の力がセンサに加えられている時に徐々に変形量が増大し、出力が経時と共に変化する傾向にあるが、感圧導電ゴム部材が適度な柔軟性を有するために、負荷−除荷試験を繰り返し行なった場合においても、出力の再現性に優れ、感圧センサとして適用可能である。
【0070】
実施例7においては、感圧導電ゴム部材の弾性率の高さに起因し、電極との接触状態の均一性に少し劣り、負荷−除荷試験を繰り返し行なった場合の再現性に劣る傾向にある。また、ゴム基材の弾性率の高さ及び、感圧導電ゴム部材の弾性率の高さに起因し、一定の力がセンサに加えられている時に接触状態が均一に保たれ難くなり、出力が経時と共に変化する傾向にあるが、感圧導電ゴム部材としては適度な柔軟性を有するために、ヒステリシスロスは優れ、感圧センサとして適用可能である。
【0071】
実施例8においては、弾性率の比E2/E1が小さい事、且つ、感圧導電ゴム部材の弾性率が比較的低い事に起因し、一定の力がセンサに加えられている時に徐々に変形量が増大し、出力が経時と共に変化する傾向にある。また、感圧導電ゴム部材の粘着性に起因して検知抵抗値にヒステリシスロスが劣る傾向にあるが、感圧導電ゴム部材が適度な柔軟性を有するために、負荷−除荷試験を繰り返し行なった場合においても、出力の再現性に優れ、感圧センサとして適用可能である。
【0072】
実施例9においては、弾性率の比E2/E1が大きい事に起因し、ゴム弾性に劣り、電極との接触状態の均一性に少し劣り、負荷−除荷試験を繰り返し行なった場合の再現性に劣る傾向にある。また、一定の力がセンサに加えられている時に接触状態が均一に保たれ難くなり、出力が経時と共に変化する傾向にあるが、感圧導電ゴム部材としては適度な柔軟性を有するために、ヒステリシスロスは優れ、感圧センサとして適用可能である。
【0073】
比較例1においては、弾性率の比E2/E1が大きい事に起因し、ゴム弾性に劣り、電極との接触状態の均一性に劣り、負荷−除荷試験を繰り返し行なった場合の再現性に劣ってしまっている。また、一定の力がセンサに加えられている時に接触状態が均一に保たれ難くなり、出力が経時と共に大きく変化しており、感圧センサとしては適さないことがわかる。
【0074】
比較例2においては、樹脂塗膜の基材として柔軟性の低い樹脂を用いているために、電極との接触状態の均一性に劣り、負荷−除荷試験を繰り返し行なった場合の再現性に劣ってしまっている。また、一定の力がセンサに加えられている時に接触状態が均一に保たれ難くなり、出力が経時と共に大きく変化しており、感圧センサとしては適さないことがわかる。
【0075】
比較例3においては、感圧導電ゴム部材弾性率の低さに由来し、一定の力がセンサに加えられている時に徐々に変形量が増大し、出力が経時と共に極めて大きく変化している。また、感圧導電ゴム部材の粘着性に起因し、強いヒステリシスロスが生じており、感圧センサとしては適さないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の感圧導電ゴム部材は、例えば所望の形状に成形し櫛形の電極に当接させ、部材に作用する加圧力の大きさ、分布状態を測定するセンサとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1a 感圧導電ゴム部材
1a−1 ゴム基材
1a−2 樹脂塗膜
1b 感圧導電ゴム部材
1b−1 ゴム基材
1b−2 樹脂塗膜
1c 感圧導電ゴム部材
1c−1 ゴム基材
1c−2 樹脂塗膜
2a 櫛型電極
2a−1 配線
2a−2 基板
2b 角板型電極
2b−1 配線
2b−2 基板
3a 感圧センサ
3b 感圧センサ
4−1 櫛型電極
4−2 感圧導電ゴム部材
4−3 絶縁性シート
4−4 電圧測定器
4−5 1kΩ抵抗体
4−6 直流電圧発生器5V
4−7 荷重測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重の変化に応じた感圧導電ゴム部材と電極との導通抵抗値の変化を検出することによって、荷重を感知する感圧センサに用いられる感圧導電ゴム部材において、前記感圧導電ゴム部材は、ゴム基材と樹脂塗膜とを含む少なくとも二層で形成されており、ダイナミック超微小硬度計にて測定される前記ゴム基材の弾性率E1が、0.5MPa以上、30MPa以下、前記樹脂塗膜が形成された面の感圧導電ゴム部材の弾性率E2が、10MPa以上、700MPa以下であり、且つ、弾性率E1と弾性率E2の比が、1<E2/E1<1,000であることを特徴とする感圧導電ゴム部材。
【請求項2】
前記弾性率E2が、50MPa以上、600MPa以下である請求項1に記載の感圧導電ゴム部材。
【請求項3】
前記弾性率E1が、1.0MPa以上、20MPa以下である請求項1または2に記載の感圧導電ゴム部材。
【請求項4】
少なくとも請求項1〜3のいずれかの一項に記載の感圧導電ゴム部材と電極とを備えた感圧センサであって、前記電極がフレキシブルプリント基板であり、前記樹脂塗膜が前記電極と対向して配置されている感圧センサ。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−145447(P2012−145447A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4096(P2011−4096)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)