説明

感圧導電性材料

【課題】繰り返しの圧縮変形による電気抵抗値変化に対し優れた再現性を有する感圧導電性材料を提供する。
【解決手段】導電性付与剤により導電性を付与したゴム組成物からなる感圧導電性材料であり、該ゴム組成物は、ゴム成分としてポリブタジエンゴムを全ゴム成分の60質量%以上100質量%以下の範囲で含有し、該導電性付与剤として平均粒径0.1μm以上150μm以下の略球状導電粒子を、該ゴム組成物の総量に対し、10体積%以上50体積%以下含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無加圧・無辺系状態では高い電気抵抗値を示し、圧縮変形時の荷重の増加に従って電気抵抗値が減少し導電性を示す感圧導電性材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、部材に作用する荷重の大きさ、分布状態を測定する手段として、チタン酸ジルコン酸鉛等の圧電セラミックスを用いた方式や、歪みゲージを用いる方式が使用されている。しかしながら、圧電セラミックを用いた方式は、一般に剛性の高い材料で形成されているため、形状の自由度に制限があり、また、歪みゲージを用いる方式も同様に、形状設計の自由度が低いという問題を有している。これらの問題に対して、ゴム、エラストマーなどを基材とし導電性粒子を分散させた導電性材料を用いることで、形状の自由度が高い感圧導電性材料が得られることが知られている。
【0003】
なお感圧導電性ゴム材料の感圧特性は、無加圧・無変形時は高抵抗を示すが、圧縮歪みを受けると、導電性粒子同士の粒子間距離が狭まり、導電性粒子による導電パスが生成するために抵抗値が減少する、いわゆる抵抗値減少型である。この抵抗変化は基材ゴム中における導電性粒子の分散状態が大きく影響する為、繰り返しの圧縮変形による電気抵抗値変化の再現性が課題となっている。
【0004】
これに対し、特許文献1には、シリコーンゴムとイソプレンゴムとからなるブレンドゴムをゴム成分として含有し、かつゴム組成物の全容積当たり25〜55容量%の導電性粒子を含有する感圧導電性ゴム組成物が報告されている。この感圧導電性ゴム組成物は、荷重と出力電圧とが直線的関係になった電気的に高い信頼性を有する感圧導電性ゴム組成物を得ることができる。
【0005】
また、特許文献2には、繰り返しの圧縮変形による電気抵抗値変化の再現性を得る方法として非導電性エラストマー中に板状、針状又は繊維状の導電性フィラーと粒径がナノメーターサイズのセラミック粒子とを分散させた感圧導電性エラストマーが示されている。この感圧導電性エラストマーは板状、針状、又は繊維状の導電性フィラーと、粒径がナノメーターサイズのセラミック粒子を含有する為、機械的強度に優れた感圧導電性エラストマーを得ることが可能である。
【0006】
また、特許文献3においては、非導電性エラストマー中に、粒子径が1〜20μmである微小球状炭素粒子と共に、粒子径が10〜150μmの中空状弾性マイクロスフェアーが分散された感圧導電性エラストマーが報告されている。この感圧導電性エラストマーは、中空状弾性マイクロスフェアーにより、優れた耐久性、衝撃吸収性を示すことになり、圧力−抵抗変化のヒステリシスが改善された感圧導電性エラストマーを得る事が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平02−196836号公報
【特許文献2】特開2005−350614号公報
【特許文献3】特公平06−054603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
引用文献1に開示される感圧導電性ゴム組成物は次の点が問題となる。(1)ブレンドゴムのブレンド比によっては、ゴム相中で導電性粒子が偏在するために抵抗値のばらつきが生じたり、荷重に対する出力電圧の変化が大きい、いわゆるオンオフ型の抵抗変化を示すために部材に作用する荷重の大きさの判断が困難となる場合がある。(2)導電性粒子の形状、粒子径によっては、繰り返しの圧縮変形に対するヒステリシスロスが大きく、電気抵抗値の再現性が良好でない場合がある。(3)シリコーンゴムは、機械的強度が弱いために繰り返しの圧縮変形により疲労し、電気抵抗値変化が大きくなったり、残留する揮発性の低分子量シロキサンのためにコネクタなどの電気接点部のスパーク等で絶縁物となり電気接点障害の原因となる場合がある。
【0009】
また、引用文献2に開示される感圧導電性エラストマーは次の点が問題となる。(1)板状、針状又は繊維状の導電フィラーは、繰り返しの圧縮変形に対するヒステリシスロスが大きくなるものがあり、電気抵抗値の再現性が良好でない場合がある。さらに、球状の導電粒子と比べて導電パスが形成しやすく、いわゆるオンオフ型の抵抗変化を示し、部材に作用する荷重の大きさの判断が困難となる場合がある。(2)非導電性エラストマーの中でも使用するポリマーの主鎖構造によっては、繰り返しの圧縮変形に対するヒステリシスロスが大きくなり、電気抵抗値の再現性が良好でない場合がある。
【0010】
また、引用文献3に開示される感圧導電性エラストマーは、特許文献2と同様に非導電性エラストマーの中でも使用するポリマーの主鎖構造によっては、繰り返しの圧縮変形に対するヒステリシスロスが大きくなり、電気抵抗値の再現性が良好でない場合がある。
【0011】
このように繰り返しの圧縮変形に対する電気抵抗値変化の再現性が良好な感圧導電性材料の要請がある。
【0012】
したがって、本発明の課題は、繰り返しの圧縮変形による電気抵抗値変化に対して優れた再現性を有する感圧導電性材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、繰り返しの圧縮変形に対する電気抵抗値変化の再現性に対する基材ゴムの影響、特に、非導電性ゴムの構造および反発弾性の影響に着想し、研究を行った。その結果、非導電性ゴムの中でも高反発弾性であるポリブタジエンゴムをゴム主成分とし、導電性付与剤として略球状の導電粒子を配合することで圧縮変形に対する電気抵抗値変化の再現性を高めることが出来る知見を得、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は導電性付与剤により導電性を付与したゴム組成物からなる感圧導電性材料であって、
該ゴム組成物は、ゴム成分としてポリブタジエンゴムを全ゴム成分の60質量%以上100質量%以下の範囲で含有し、
該導電性付与剤として平均粒径0.1μm以上150μm以下の略球状導電粒子を、該ゴム組成物の総量に対し、10体積%以上50体積%以下含有することを特徴とする感圧導電性材料に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の感圧導電性材料は非導電性ゴムの中でもポリブタジエンゴムを基材ゴムの主成分として用い、略球状の導電粒子を所定量配合することにより、繰り返しの圧縮変形時の導電性粒子による電気抵抗値変化に対し、優れた再現性を実現した。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】繰り返し圧縮における荷重と電気抵抗値を計測を示す模式図である。
【図2】実施例1における繰り返し圧縮時の荷重と抵抗LogRの関係を示すグラフ図である。
【図3】実施例2における繰り返し圧縮時の荷重と抵抗LogRの関係を示すグラフ図である。
【図4】実施例3における繰り返し圧縮時の荷重と抵抗LogRの関係を示すグラフ図である。
【図5】比較例1における繰り返し圧縮時の荷重と抵抗LogRの関係を示すグラフ図である。
【図6】比較例2における繰り返し圧縮時の荷重と抵抗LogRの関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の感圧導電性材料は、導電性付与剤により導電性を付与したゴム組成物からなる。
ゴム組成物は、ゴム成分としてポリブタジエンゴムを全ゴム成分の60質量%以上100質量%以下の範囲で含有する。また、ゴム組成物は、該導電性付与剤として平均粒径0.1μm以上150μm以下の略球状導電粒子を、該ゴム組成物の総量に対し、10体積%以上50体積%以下含有する。
【0018】
ポリブタジエンゴムの含有量がゴム成分に対して60質量%以上であれば、分子間力が小さく、分子回転時の立体障害が少ないポリブタジエンゴムの特性により、反発弾性に優れたゴム加硫物を得る事が可能となる。また、導電性を付与したゴム加硫物の場合、繰り返しの圧縮変形に対する電気抵抗値変化の再現性が良好な感圧導電性材料が得られる。なお、繰り返しの圧縮変形に対する電気抵抗値変化の再現性としては、荷重5N以下の領域において、圧縮前後の抵抗差が0.3桁以下、より好ましくは0.1桁以下であることが望ましい。この程度の抵抗差であれば、例えば、櫛形の電極に当接させ、部材に作用する荷重の大きさ、分布状態を測定するセンサー等に好適に使用することが可能である。
【0019】
本発明の感圧導電性材料が、繰り返しの圧縮変形に対する電気抵抗値変化に優れた再現性を有する理由として、以下の理由が考えられる。一般に、ゴム加硫物を繰り返し圧縮変形させた場合、ポリマー−ポリマー間やポリマー−フィラー間においてエネルギーロスが生じ、このエネルギーロスの大小が、ゴム加硫物の反発弾性に影響する。またゴム基材中に導電性フィラーを分散させた感圧導電性材料の場合、繰り返しの圧縮変形により、導電性フィラー間の距離が変化することで、電気抵抗値変化が得られる。その為、反発弾性の低いポリマーを基材に用いた場合、繰り返しの圧縮変形に対する電気抵抗値の再現性が損なわれる。これに対し、反発弾性の高いポリマーを基材に用いた感圧導電性材料の場合、繰り返しの圧縮変形による電気抵抗値の再現性は良好なものとなる。本発明においては、非導電性ゴムの中でも分子間力が小さく、分子回転時の立体障害が少ないポリブタジエンゴムを基材のゴム主成分として用いることで、反発弾性に優れた感圧導電性材料を可能としている。また、ゴム主成分がポリブタジエンゴムである為、シリコーンゴムをゴム主成分として用いる場合に生じる低分子量シロキサンに起因した電気接点障害の問題を生じない。
【0020】
なお、繰り返しの圧縮変形に対する電気抵抗値変化の再現性としては、荷重5N以下の領域において、圧縮前後の抵抗差が0.3桁以下、より好ましくは0.1桁以下であることが望ましい。この範囲の抵抗差において、例えば、櫛形の電極に当接させ、部材に作用する荷重の大きさ、分布状態を測定するセンサー等に好適に使用することが可能である。
【0021】
また、ポリブタジエンゴムとブレンドするその他ゴム成分としては、ポリブタジエンゴムが非導電性のジエン系ゴムである為、親和性を考慮すると非導電性ジエン系ゴムが好ましい。このようなゴムとして、イソプレンゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム等が挙げられる。なかでも、イソプレンゴムまたは天然ゴムがより好ましくい。イソプレンゴム及び天然ゴムの少なくとも一種を全ゴム成分の5質量%以上、40質量%以下の範囲で含有することでポリブタジエンゴムの優れた反発弾性を損なわず、混練加工性が良好となるほか、感圧導電性材料の機械的強度を高めることが可能となる。イソプレンゴム及び天然ゴムの少なくとも一種を含有する場合、ポリブタジエンゴムは全ゴム成分の60質量%以上、95質量%以下の範囲とすることができる。なお、その他ゴム成分を含有せずにポリブタジエンゴムが100質量%であっても不都合は生じない。
【0022】
またポリブタジエンゴムとしては、シス1,4−ブタジエン結合を90質量%以上含有する、より好ましくは95質量%以上含有するハイシスタイプのポリブタジエンゴムが好ましい。シス1,4−ブタジエンゴム結合が90質量%以上であれば、分子鎖の直線性は良好なものであり、反発弾性に優れたゴム加硫物が得られる。
【0023】
また、ポリブタジエンゴムは、100℃におけるムーニー粘度(ML)に対する、25℃における5質量%トルエン溶液粘度(Tcp)の比(Tcp/ML)が2〜5であることが好ましい。
【0024】
Tcpは濃厚溶液中での分子の絡み合いの程度を示すものであり、同程度の分子量分布のポリブタジエンにあっては、分子量が同一であれば(すなわち、ML1+4が同一であれば)分岐度の指標(Tcpが大きい程、分岐度は小さい)となるものである。なお、トルエン溶液粘度(Tcp)の測定方法としては、ポリマーをトルエンに5質量%の濃度で溶解した後、標準液として粘度計校正用標準液(JIS Z8809)を用い、キヤノンフェンスケ粘度計NO.400を使用して測定する。
【0025】
また、Tcp/MLはMLの異なるポリブタジエンの分岐度を比較する場合に指標(Tcp/MLが大きい程、分岐度は小さい)として用いられる。トルエン溶液粘度(Tcp)とムーニー粘度(ML)との比(Tcp/ML)が上記範囲にある場合、分子鎖の分岐度は小さく分子回転時の立体障害が少ない為、反発弾性に優れたゴム加硫物が得られる。なお、Tcp/ML比が上記範囲より大きいと、素ゴムのコールドフロー性が大きくなり、上記範囲より小さいと反発弾性が低くなる。また、ポリブタジエンゴムの25℃における5質量%トルエン溶液粘度(Tcp)は50〜150cpの範囲であることが好ましい。また、ポリブタジエンゴムの100℃におけるムーニー粘度(ML)は30〜100の範囲であることが好ましい。これらの数値範囲では混練加工性が良好かつ反発弾性に優れた加硫物が得られる。
【0026】
本発明の感圧導電性材料の加硫系としては、従来公知の硫黄加硫、有機過酸化物加硫いずれも使用可能である。なお硫黄を用いた加硫系の場合、架橋形態としてポリスルフィド結合が含まれるのに対し、有機過酸化物加硫はポリマー鎖中の炭素原子同士の結合となる。その為、ゴム分子鎖同士がより密な圧縮永久歪に優れた加硫物となり、繰り返し圧縮変形に対して良好なものとなる為、有機過酸化物加硫が好ましい。なお用いる有機過酸化物としては、特に制約はなく、従来公知のジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、パーケタール等が使用可能である。アシル基を有する有機過酸化物は、カーボンブラックなど多量の炭素粒子存在下では、加硫阻害を起す可能性がある為、ジアルキルパーオキサイドがより好ましく、ジクミルパーオキサイドが好適である。ジクミルパーオキサイドの配合量としては0.3質量部以上、3質量部以下とすることで、繰り返しの圧縮変形に対する電気抵抗値変化の再現性が良好な感圧導電性材料が得られる。より好ましくは1質量部以上、2質量部以下である。
【0027】
また本発明に用いる導電性付与剤は、平均粒径0.1μm以上、150μm以下の略球状導電粒子であり、ゴム組成物の総量に対し、10体積%以上50体積%以下含有する。平均粒径が0.1μm以上であれば、ポリマー−フィラー間のエネルギーロスが小さく高反発弾性なゴム加硫物が得られ、また、平均粒径が150μm以下であれば圧縮変形時に良好な電気抵抗変化を得る事が可能となる。また、略球状の導電粒子を用いることで、例えば、繊維状の導電粒子で生じる圧縮変形による抵抗値の急激な変化(ON−OFF特性)を生じず、また繰り返しの圧縮変形による導電粒子の磨耗も生じにくく電気抵抗値変化の再現性が良好となる。また、ゴム組成物の総量に対し、10体積%以上含有することで良好な導電性が発現され、50体積%以下とすることでゴム組成物の混練加工性、ゴム加硫物の強度を維持することが可能となる。
【0028】
また、上記略球状の導電粒子は、材質等に特に制限なく用いることができる。例えば、銅粉、銀粉などの金属粒子や、金属粒子を無機物で表面処理した表面処理品、酸化亜鉛等を異種元素でドープすることによりN型半導体化した酸化亜鉛粉末、カーボンブラック、球状黒鉛、有機樹脂の炭化物などいずれも使用可能である。なお、基材ゴムとの親和性を考慮するとカーボンブラック、球状黒鉛、有機樹脂の炭化物などの炭素系粒子が好ましい。なお、カーボンブラックの場合、使用するカーボンブラックの種類によっては、粒子同士がぶどうの房のように連なったストラクチャーを形成している場合がある。一般的にストラクチャーの指標として、ジブチルフタレート吸油量がしられている。ジブチルフタレート吸油量が大きいカーボンブラックの場合、ストラクチャーが発達していることを意味し、ゴム配合物中で粒子同士が近接し導電パスを形成し易くなるため、荷重に対して急激な抵抗値変化(いわゆるON−OFF特性)になる場合がある。したがって本発明においては、人造黒鉛または樹脂粒子表面の炭化物を導電粒子として用いる方が好ましい。カーボンブラックの場合は、DBP吸油量が100cm3/100g以下の比較的ストラクチャーの発達していないカーボンブラックを用いる方が好ましい。
【0029】
上記感圧導電性材料には、上記ゴム成分や導電性付与剤の機能を阻害しない範囲において、加硫促進剤、充填剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤などの従来からゴムの配合剤として使用されているものを適宜配合することができる。また、老化防止剤としては2−メルカプトベンゾイミダゾール やポリメライズド2,2,4−トリメチル1,2−ビヒドロキノリンなどが好適である。また、酸化亜鉛を配合することで耐熱老化性の向上が期待できる。可塑剤、軟化剤としては、不飽和結合の少ない、たとえばパラフィン系のオイルが好適である。
【0030】
上記感圧導電性材料は、上記ゴム成分と上記導電性付与剤と、必要に応じて、他のポリマー、導電性付与剤、充填剤等を加えて、混合することによって調製することができる。混合は、例えば、バンバリーミキサーやインターミックスや加圧式ニーダー等の密閉型混練機や、オープンロールのような開放型の混練機を用いて行うことができる。混合条件としては、例えば、30〜150℃、3分〜30分等、導電性付与剤が基材ゴム中に一様に分散させることができる条件を選択すればよい。
【0031】
安定な感圧特性を有する導電性ゴム組成物を成形、加硫する方法としては、特に限定されるものではなく、成形方法としては、押出成形、射出成形、プレス成形等を挙げることができる。射出成形は、感圧導電性ゴム組成物に射出圧を加えて金型に押し込み、金型を充填して金型の形に成形する方法である。押出成形は、感圧導電性ゴム組成物をスクリューで混練し、先端の押出金型(ダイ)を通過させ連続成形する方法である。また、上記方法の他にオープンロールなどで平板状に成形してもよい。
【0032】
成形後の未加硫ゴム混合物の加硫方法としては、加熱、冷却等の温度制御により加硫を行う方法であれば、特に条件は問わない。過酸化物加硫方式のコンパウンドは熱空気加硫あるいは空気の介在する直接蒸気加硫では、空気中の酸素が生成したポリマーのフリーラジカルに結合する為におきる分子切断により、加硫物の表面著しく粘着性を示す為、空気の介在しない方法が適している。例えば、型内加硫やパージにより脱空気した加硫缶、熱溶融塩槽(LCM)等を使用することができる。具体的には、例えば、金型内に充填した状態で加圧下150〜180℃で、5〜50分加熱して行うことができる。また、過酸化物の未反応残渣を除去する為、上記加硫後の感圧導電性材料を熱風炉等で2次加硫することが好ましい。2次加硫の条件としては、150〜220℃の熱風炉にて30〜100分加熱して行うことができる。
【0033】
本発明の感圧導電性材料は、無圧下で電気絶縁性を示し、1kPa以上の加圧下において103〜106Ω・cm程度の半導電性以上の導電性を示すものである。例えば所望の形状に成形し櫛形の電極に当接させ、部材に作用する荷重の大きさ、分布状態を測定するセンサーに好適に使用することができる。
【実施例】
【0034】
本発明の感圧導電性材料を具体的に説明する。
【0035】
以下に、実施例、比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例のみに限定されるものではない。なお、各実施例および比較例で使用した原料は以下の通りである。
【0036】
(1)原料ゴム
BR(ポリブタジエンゴム):
BR1:BR150L(シス1,4−ブタジエン結合98質量%、ムーニー粘度ML1+4100℃ 43 25℃における5質量%トルエン溶液粘度(Tcp)105cp、Tcp/ML1+4100℃=2.4)(宇部興産株式会社製)
BR2:BR150(シス1,4−ブタジエン結合98質量%、ムーニー粘度 ML1+4100℃ 43 25℃における5質量%トルエン溶液粘度(Tcp)75cp、Tcp/ML1+4100℃=1.7)(宇部興産株式会社製)
BR3:BR150B(シス1,4−ブタジエン結合97質量%、ムーニー粘度ML1+4100℃ 40 25℃における5質量%トルエン溶液粘度(Tcp)48cp、Tcp/ML1+4100℃=1.2)(宇部興産株式会社製)
IR(イソプレンゴム):IR2200(日本ゼオン株式会社製)
NR(天然ゴム):SVR CV−50
IIR(ブチルゴム):JSR BUTYL365(JSR株式会社製)
SBR(スチレンブタジエンゴム):JSR1502(JSR株式会社製)
NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム):N230S(JSR株式会社製)
(2)導電性付与剤
人造黒鉛1:CGC#20(平均粒子径20μm)(日本黒鉛工業株式会社製)
人造黒鉛2:CGC#100(平均粒子径100μm)(日本黒鉛工業株式会社製)
樹脂粒子炭化物:ニカビーズICB20(平均粒子径20μm)(日本カーボン株式会社製)
カーボンブラック1:シーストTA(平均粒子径0.12μm)(東海カーボン株式会社製)
カーボンブラック2:シーストFY(平均粒子径0.07μm)(東海カーボン株式会社製)
炭素繊維:ドナカーボミルドS−2404(平均繊維径13μm、平均繊維長0.04mm、アスペクト比3)(大阪ガスケミカル株式会社製)
(3)加硫剤
ジクミルパーオキサイド:パークミルD−40(ジクミルパーオキサイド40質量%)(日油株式会社製)
(4)その他
酸化亜鉛(ハクスイテック株式会社製)
(実施例1)
加硫剤以外の原材料について、ゴム成分として100質量部のBR1、導電粒子として
5質量部の酸化亜鉛および70質量部の人造黒鉛1を3L加圧型ニーダー(D3−10:株式会社モリヤマ製)を用い混練した。まずローター回転数30rpmで、原料ゴムのみを1分間素練りし、次いで酸化亜鉛、導電粒子を投入して10分間混練りした。ニーダー容量に対する材料の充填量は65vol%で行った。得られたゴム組成物を室温(25℃)で1時間冷ました後、更に、オープンロール機(12inchテスト用ロール機:関西ロール(株)製)を用い、加硫剤を混練した。フロントロール15rpm、バックロール18rpmで、適宜切返しながら15分間混練した後、ロール間隙0.6mmにて薄通した後、10mm×10mmに裁断することにより感圧導電性ゴム組成物を得た。次に、上記感圧導電性ゴム組成物を予め170℃に加熱した10mm×10mm×0.5mmの金型内に充填し、170℃、100kgfにて15分間プレス加硫を行った。その後、得られた加硫物を170℃の熱風炉に投入して無加圧下で30分間加硫を行い、感圧導電性材料を得た。
【0037】
(実施例2)
ゴム成分を80質量部のBR1および20質量部のIRとした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0038】
(実施例3)
ゴム成分を60質量部のBR1および40質量部のIRとした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0039】
(実施例4)
ゴム成分を80質量部のBR1および20質量部のIRとし、導電粒子を5質量部の酸化亜鉛および70質量部の人造黒鉛2とした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0040】
(実施例5)
ゴム成分を80質量部のBR1および20質量部のIRとし、導電粒子を5質量部の酸化亜鉛および70質量部の樹脂粒子炭化物とした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0041】
(実施例6)
ゴム成分を80質量部のBR1および20質量部のIRとし、導電粒子を5質量部の酸化亜鉛および70質量部のカーボンブラック1とした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0042】
(実施例7)
ゴム成分を80質量部のBR1および20質量部のIRとし、導電粒子を5質量部の酸化亜鉛および40質量部の人造黒鉛1とした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0043】
(実施例8)
ゴム成分を100質量部のBR2とした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0044】
(実施例9)
ゴム成分を100質量部のBR3とした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0045】
(実施例10)
ゴム成分を80質量部のBR1および20質量部のNRとした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0046】
(実施例11)
ゴム成分を80質量部のBR1および20質量部のNBRとした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0047】
(実施例12)
ゴム成分を80質量部のBR1および20質量部のSBRとした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0048】
(実施例13)
ゴム成分を80質量部のBR1および20質量部のIIRとした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0049】
(比較例1)
ゴム成分を50質量部のBR1および50質量部のIRとした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0050】
(比較例2)
ゴム成分を100質量部のIIRとした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0051】
(比較例3)
ゴム成分を80質量部のBR1および20質量部のIRとし、導電粒子を5質量部の酸化亜鉛および100質量部のカーボンブラック2とした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0052】
(比較例4)
ゴム成分を80質量部のBR1および20質量部のIRとし、導電粒子を5質量部の酸化亜鉛および70質量部の炭素繊維とした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0053】
(比較例5)
ゴム成分を80質量部のBR1および20質量部のIRとし、導電粒子を5質量部の酸化亜鉛および25質量部の人造黒鉛1とした以外は実施例1と同様にして、感圧導電性材料を得た。
【0054】
[繰り返し圧縮変形に対する電気抵抗値変化の再現性]
得られた感圧導電性材料から10mm×10mm×0.5mmの角形シートを切り取り、23℃/60%RH(N/N)環境に24時間以上放置した後、繰り返し圧縮変形に対する電気抵抗値変化の再現性を評価した。
【0055】
図1に示すように、上記評価用試験片を櫛型電極(電極幅1mm、電極間隔0.5mm)上に配置し、上部をシリコーンゴム製絶縁性シート(10×10×1mm)にて覆い、角形シート上面全体に荷重が加わるようにした。この状態で櫛型電極に直流電圧5Vを印加し、テンションゲージにて感圧導電性材料の厚さ方向に0〜20Nの範囲で繰り返し圧縮を1000回繰り返し、櫛型電極に直列接続した1kΩの抵抗体にかかる電圧を測定した。電圧の測定値の平均値Vave(V)から、感圧導電性材料の抵抗値(R)を求めた。
【0056】
再現性の評価は、繰り返し圧縮1回目における加圧時1N荷重、3N荷重、5N荷重における抵抗値(R)を対数変化した値を各々LogRA1、LogRA3、LogRA5とする。
【0057】
また、繰り返し圧縮1000回目における除荷重時1N荷重、3N荷重、5N荷重における抵抗値(R)を対数変換した値を各々LogRB1、LogRB3、LogRB5とする。
【0058】
荷重1N、3N、5NにおけるLogRAとLogRBから差の絶対値を求め、繰り返し圧縮変形に対する電気抵抗値変化の再現性の指標とした。
○:|Δ(LogRA-LogRB)|≦0.1 再現性最良
△:0.1<|Δ(LogRA-LogRB)|≦0.3 再現性良好
×:0.3<|Δ(LogRA-LogRB)| 再現性低
また上記評価基準において、荷重1N、3N、5Nでの再現性評価で△または×が含まれる場合、総合判定で各々△、×とした。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
実施例1、2、3及び比較例1、2の繰り返し圧縮における荷重と抵抗LogRの関係を図2〜6に示した。実施例1、2、3及び比較例1、2の結果より、ゴム組成物のゴム成分は、ポリブタジエンゴムを本発明の範囲内含有することが適していることがわかる。すなわち、本発明の範囲外である比較例1やゴム成分としてポリブタジエンゴムを用いず、他の非導電性ゴムであるブチルゴムを用いた比較例2は、繰り返し圧縮変形に対する電気抵抗値変化の再現性が劣る。
【0062】
実施例2、4、5、6及び比較例3、4より、導電性付与剤は本発明の範囲内の平均粒径である略球状導電粒子であることが適していることがわかる。すなわち、平均粒径が本発明範囲外である比較例3、略球状導電粒子ではない繊維状の導電粒子を用いた比較例4は、ポリマー−フィラー間のエネルギーロスが大きく、低反発弾性のゴム加硫物となり繰り返し圧縮変形に対する電気抵抗値変化の再現性が劣る。
【0063】
実施例7及び比較例5より、略球状導電粒子の配合量は本発明内が適していることがわかる。本発明範囲外の比較例5は、導電粒子が少ない為、導電性が発現されず電気抵抗値に変化を生じない。
【0064】
実施例1、8、9より、本発明のポリブタジエンゴムとしては、トルエン溶液粘度(Tcp)とムーニー粘度(ML)の比が本発明範囲内のポリブタジエンゴムがより好ましいことがわかる。すなわち、ムーニー粘度(ML)に対するトルエン溶液粘度(Tcp)の比が2より小さい実施例8、9は、1N、3Nにおける電気抵抗値変化の差が大きくなる傾向にある。
【0065】
さらに、実施例2、10〜13より、ポリブタジエンゴムをその他ゴムとブレンドして用いる場合、イソプレンゴム、天然ゴムがより好ましいことがわかる。すなわち、ポリブタジエンゴムのブレンドゴムとして、導電性ジエン系ゴムであるアクリロニトリルブタジエンゴムを用いた実施例11は電気抵抗値変化の差が大きくなる傾向にある。また、非導電性のジエン系であっても、スチレンブタジエンゴムやブチルゴムを用いた実施例12、13は反発弾性が低く、電気抵抗値変化の差が大きくなる傾向にある。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の感圧導電性材料は、例えば所望の形状に成形し櫛形の電極に当接させ、部材に作用する荷重の大きさ、分布状態を測定するセンサーに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 片面電極(櫛型)
2 感圧導電性材料
3 絶縁性シート
4 電圧測定器
5 1kΩ抵抗体
6 直流電圧5V
7 荷重測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性付与剤により導電性を付与したゴム組成物からなる感圧導電性材料であって、該ゴム組成物は、ゴム成分として、ポリブタジエンゴムを全ゴム成分の60質量%以上100質量%以下の範囲で含有し、該導電性付与剤として平均粒径0.1μm以上150μm以下の略球状導電粒子を、該ゴム組成物の総量に対し、10体積%以上50体積%以下含有することを特徴とする感圧導電性材料。
【請求項2】
該ポリブタジエンゴムがシス1,4−ブタジエン結合を90質量%以上含有する請求項1に記載の感圧導電性材料。
【請求項3】
該ポリブタジエンゴムにおいて、25℃における5質量%トルエン溶液粘度(Tcp)が50〜150cpであり、100℃におけるムーニー粘度(ML)が30〜100である請求項1または2に記載の感圧導電性材料。
【請求項4】
該ポリブタジエンゴムにおいて、100℃におけるムーニー粘度(ML)に対する25℃における5質量%トルエン溶液粘度(Tcp)の比(Tcp/ML)が2〜5である請求項1〜3のいずれかに記載の感圧導電性材料。
【請求項5】
該ゴム組成物がゴム成分としてポリブタジエンゴムを全ゴム成分の60質量%以上、95質量%以下の範囲で含有し、イソプレンゴムおよび天然ゴムの少なくとも一種を全ゴム成分の5質量%以上、40質量%以下の範囲で含有する請求項1〜4のいずれかに記載の感圧導電性材料。
【請求項6】
該略球状導電粒子が炭素系粒子である請求項1〜5のいずれかに記載の感圧導電性材料。
【請求項7】
炭素系粒子が人造黒鉛または樹脂粒子炭化物である請求項1〜6のいずれかに記載の感圧導電性材料。
【請求項8】
無圧下で電気絶縁性を示し、1kPa以上の加圧下において半導電性以上の導電性を示すことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の感圧導電性材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−43551(P2012−43551A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181307(P2010−181307)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】