説明

感圧式接着剤組成物及び該感圧式接着剤組成物を用いてなる積層体

【課題】良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性、再剥離性等を有する接着剤層を形成し得る感圧式接着剤組成物の提供、および該感圧式接着剤組成物と光学部材からなる積層体の提供。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と、側鎖に炭化水素基を有するグリコールを含むジオール成分とを重縮合してなる、重量平均分子量30000〜300000のポリエステル、及び、芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と、側鎖に炭化水素基を有するグリコールを含むジオール成分と、3価以上の多価アルコール及び/又は3価以上の多価カルボン酸とを重縮合してなる、重量平均分子量3000〜100000のポリエステルを、含有してなる感圧式接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種被着体との接着性、耐熱性、耐湿熱性及び透明性に優れた感圧式接着剤組成物に関し、更に詳しくは、特に光学部材の積層に好適な前記ポリエステルを含む感圧式接着剤組成物及びそれを用いてなる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエレクトロニクスの飛躍的な進歩により、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、リアプロジェクションディスプレイ(RPJ)、ELディスプレイ、発光ダイオ−ドディスプレイなどの様々なフラットパネルディスプレイ(FPD)が、様々な分野で表示装置として使用されようになってきた。例えば、これらFPDは、パーソナルコンピューターのディスプレイや液晶テレビをはじめ屋内で使用されるばかりでなく、カーナビゲーション用ディスプレイ等のように車両に搭載して使用されたりする。
【0003】
LCDを構成する液晶セル用部材には、偏光フィルムや位相差フィルムが積層されている。又、これらの表示装置には、外部光源からの反射を防ぐための反射防止フィルムや、表示装置の表面の傷付き防止のための保護フィルム(プロテクトフィルム)などが使用されている。更にFPDを表示装置として利用するだけではなく、それらの表面にタッチパネルの機能を設けて、入力装置としても利用されることがある。このタッチパネルにも、保護フィルム、反射防止フィルムやITO蒸着樹脂フィルムなどが使用されている。
【0004】
前記表示装置に使用される種々のフィルムは、感圧式接着剤により被着体に貼着され、使用されている。表示装置に用いられるものであるから、感圧式接着剤は、まず透明性に優れることが要求されるので、アクリル系樹脂を主剤とする感圧式接着剤が一般に使用されている。
【0005】
近年では、光学部材の接着処理おいて、光を有効利用するという観点から、光学部材と被着体との間における屈折率差に基づく界面反射の抑制が求められ、光学部材の屈折率と被着体の屈折率との中間の屈折率を有する感圧式接着剤層の使用が有利であることが知られている。ちなみに界面での屈折率差が大きいと全反射を生じる入射角が小さくなり、光の有効利用度を低下させる。
【0006】
しかしながら従来のアクリル系樹脂を用いた接着剤層の屈折率は、1.46前後であるのに対して、光学部材を形成する材料の屈折率は、例えばガラスで1.52前後、メタクリル系樹脂で1.51前後、ポリカーボネート系樹脂で1.54前後、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂で1.60前後であるため、両者の屈折率の差が大きく、又、例えばガラスからなる光学部材とメタクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂、あるいはPET樹脂からなる光学部材とを接着する際に、前記した中間の屈折率を得ることもできない。
【0007】
従って、偏光フィルムを液晶セル用のガラス部材に貼着するためのアクリル系感圧式接着剤は、偏光フィルム自体の寸法変化を抑えることや、接着剤層の屈折率をより高めることが求められる。このために、接着剤層自体を硬くしたり、接着強さを大きくしたりすることによって、比較的小さい寸法の変化、あるいは比較的短期間の寸法の変化を抑制することはできる。又、芳香環含有の単量体を使用したり、芳香族化合物や硫黄原子を含む化合物、あるいは無機化合物を使用したりすることである程度の屈折率向上は可能である。
【0008】
ところで、前記した種々のフィルムのうち偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系偏光子の両面をトリアセチルセルロース系やシクロオレフィン系、ポリカーボネート系の保護フィルムで挟んだ3層構造を呈する。各層を構成する材料の特性故に、そもそも熱や湿度によって、偏光フィルムは伸縮による顕著な寸法変化を生ずる。特に、偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系フィルムは延伸処理されたものを用いるため、偏光フィルムがガラス基板に貼着された後、熱や湿度により未延伸の状態に戻ろうとする力が働くことが知られている。この力により寸法変化を生ずるといわれている。
【0009】
近年の液晶パネルの大画面化に伴い、偏光フィルムのサイズも大型化し、偏光フィルムの熱変形量が増大するようになった。従来の感圧式接着剤を使用した場合、接着剤層に残る貼着時の応力の緩和が充分ではないので、偏光フィルムのひずみに接着剤層が充分には追随できず、その結果、大型液晶パネルを高温に曝したり、高湿度に曝したりすると、偏光フィルムに応力が集中し、大型液晶パネルに光漏れが生じるという問題がある。この現象を熱ムラと称することがある。一方、感圧式接着剤の応力緩和が強すぎると、高温や高湿度に曝されたりした時に貼着力が低下して、ガラス基板面で偏光フィルムがズレたり、部分的に剥がれて発泡状態を生じたりする。熱ムラとズレや剥がれは、一方を良好に設計すると他の性能が低下するという、相反する現象であり、この両者を満足するためには感圧式接着剤の組成に微妙なバランスを取ることが要求される。
【0010】
又、液晶パネルを長期にわたって使用する間にも偏光フィルムは寸法変化し、その応力が接着剤層に蓄積されることとなる。応力が接着剤層に蓄積され続けると、偏光フィルムと液晶セル用ガラス基板間の接着力の分布が不均一となる。そして、長期間の使用中に特に偏光フィルムの周縁部に応力が集中し、その結果液晶素子の周縁部が中央より明るかったり、あるいは暗くなったりするなどの液晶素子表面に色ムラ・白ヌケが発生する。
【0011】
又、液晶セル用のガラス基板に偏光フィルムを貼り付けて積層体とした後、検品工程において、積層工程でのエアーや粉塵の巻き込み等のあるものについては、ガラス基板から偏光フィルムを剥がして、もう一度新しい偏光フィルムを貼り直す(再剥離)ことが行われる場合がある。感圧式接着剤は貼着後一般に、接着性促進のために高温下で一定時間保管し、その後検査されるので、その間に接着強度が高くなり過ぎ、偏光フィルムを剥がし難くなったり、剥がした後に糊残りが生じたりして、再剥離性が不充分となる場合がある。
【0012】
上記したように、液晶セル用のガラス基板に偏光フィルムを積層するために使用する感圧式接着剤には、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性、再剥離性等が求められる。そして、位相差フィルムや各種ディスプレイのカバーフィルムを積層するための感圧式接着剤にも同様の性能が求められる。
【0013】
これら種々の要求に対して、従来、様々な感圧式接着剤が提案されてきた。例えば、アクリル系樹脂を主剤とする種々の感圧式接着剤が知られている(特許文献1〜5参照)。又、アクリル系樹脂にポリステルやポリウレタンを併用する感圧式接着剤も知られている(特許文献6〜9参照)。
【0014】
アクリル系樹脂を感圧式接着剤として用いることにより、接着剤層の発泡や偏光板の液晶セルからの浮き剥がれは抑制できるが、偏光板の寸法変化による応力を吸収・緩和することができず、偏光板の周縁部に応力が集中するため、液晶表示装置の周縁部と中央部の明るさが異なり、液晶表示装置表面に色ムラ・白ヌケが発生する問題があった。
【0015】
又、アクリル系樹脂にポリステルやポリウレタンを併用する感圧式接着剤は、アクリル系樹脂と、ポリエステルやポリウレタンとは相溶性が悪く、アクリル系樹脂に対し、ポリエステルやポリウレタンを少量混合する程度であれば透明性をさほど損なうことはないが、ポリエステルやポリウレタンを多く混合しようとすると、感圧式接着剤自体が白化したり、分離したりする。偏光フィルム等を液晶セル用のガラス基板に貼着するための感圧式接着剤には、極めて高度な透明性が要求される。そして、上記のような、相溶性の悪い感圧式接着剤を用いて偏光フィルム等を液晶セル用のガラス基板に貼着しようとしても、接着剤層に相分離や揺らぎが発生してしまうという問題点があった。
【0016】
ところで、耐薬品性、加工性の良さから、繊維、塗料の他、食品包装用積層体形成用や金属板とプラスチックフィルムとの積層用をはじめとする感圧式接着剤以外の接着剤(以下、単に接着剤という)等の様々な技術分野では、従来からポリエステル系接着剤が使用されてきた。しかし、感圧式接着剤の技術分野では、ポリエステル系感圧式接着剤は講学上検討されたことはあったようであるが、実務上はほとんど検討されてなく、アクリル系感圧式接着剤がその大部分を占めていた。
【0017】
感圧式接着剤は、感圧式接着シートを形成するために用いられる。感圧式接着シートの基本的積層構成は、シート状基材/感圧式接着剤層/剥離シートのような片面感圧式接着シート、あるいは剥離シート/感圧式接着剤層/シート状基材/感圧式接着剤層/剥離シートのような両面感圧式接着粘着シートである。使用時に、剥離シートが剥がされ、感圧式接着剤層が被着体に貼付される。感圧式接着剤は、貼着の際被着体に感圧式接着剤層が触れるその瞬間に感圧式接着剤層がタックを有すのみならず、接着剤とは異なり、貼着中も完全に固化することなく、タックと適度な固さを有しつつ、貼着状態を維持するための凝集力を有することが必要である。凝集力は分子量に大きく依存し、高分子量のものほど凝集力が強く、低分子量になるほど凝集力が低下する。
【0018】
アクリル系樹脂は、付加重合により形成されるので、数十万以上の分子量のものを簡単に形成することができる。一方、ポリエステル系樹脂は縮合により形成されるので、そのような高分子量のものを形成することは事実上無理である。ポリエステル系樹脂の場合、縮合と分解とが平衡状態に達してしまうと、分子量はもはやそれ以上大きくはならないからであり、反応条件を変え、さらに縮合を進めようとすると劣化との競合となるからである。従って、タックを有しつつ、高凝集力を発現するためには、分子量が比較的大きく、凝集力を発現しやすいアクリル系樹脂を主剤とし、その主剤に対して、比較的少量の硬化剤を用い、タックを発現させやすいアクリル系感圧式接着剤が好適であるといえる。一方、比較的分子量の小さいポリエステル樹脂は、比較的多量の硬化剤でしっかり架橋させ、接着性能を発現するための接着剤に好適であるといえる。
【0019】
タックを発現するためには柔軟な性質を有する脂肪族系の原料を多く用いる必要がある。アクリル系樹脂の場合には、数十万以上の分子量にすることが出来るため脂肪族系の原料を多量に用いても、この分子量効果により耐熱性や耐湿熱性を付与される。一方、アクリル系樹脂と比べ、比較的分子量の小さいポリエステル系樹脂を感圧式接着剤として用いる場合、脂肪族系の原料を多く用いると、充分な耐熱性や耐湿熱性を得ることが出来ない。
【0020】
従って、ポリエステル系樹脂を感圧式接着剤として用いる場合には、ポリエステル樹脂に架橋性の官能基を多く含有させる必要があり、又、芳香族系の原料を多く用いる必要があるが、逆にタックが低下する傾向にある。
【0021】
しかし、感圧式接着シートの用いられる分野も多岐にわたり、要求レベルが上がったり、新たな要求が追加されたり、従来のアクリル系感圧式接着剤では種々の要求に充分応えられなくなりつつある。そこで、ポリエステル系樹脂の感圧式接着剤への適用が検討されるようになってきた。
【0022】
例えば、ダイマー酸を必須とするジカルボン酸成分と、側鎖にアルキル基を有するグリコールを30モル%以上含むグリコール成分とから形成されるガラス転移温度(Tg)が−60〜0℃のポリエステルを用いてなる感圧式接着剤が知られている(特許文献10参照)。ダイマー酸を必須とすることによって、芳香族ジカルボン酸を相当量使用しながらも、タックを付与できたものと推測する。しかし、ダイマー酸は天然物由来の成分であるため、品質のバラつきが大きく、感圧式接着シートとしての性能がバラつきやすい。又、ダイマー酸を用いるとポリエステル系樹脂が着色するので、着色を忌む分野、例えば光学用途や各種表示部装置を構成するための感圧式接着剤には適用できない。
【0023】
又、特許文献11や12では、カーボネート構造やシクロヘキサン構造を含有するポリエステル系樹脂が開示されているが、いずれも耐熱性や耐湿熱性は不充分である(特許文献11、12参照)。
【0024】
更に、芳香族ジカルボン酸を含む酸性分と、側鎖に炭化水素基を有するグリコールを含むジオール成分と、3価以上のアルコール及び/又はカルボン酸からなるポリエステルからなる感圧式接着剤が知られている(特許文献13参照)。特許文献13に開示される感圧式接着剤は、本発明の目的とする耐熱性と耐湿熱性には優れるが、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性、再剥離性等をすべて満足するものではない。
【0025】
特に、前記したように熱ムラとズレや剥がれは、一方を良好に設計すると他の性能が低下するという、相反する現象であり、特許文献13で開示されているようなポリエステルでは両者を満足することは出来ない。ポリエステル系樹脂はアクリル系樹脂と比べ比較的低分子量であるため、高凝集力を発現するためには、しっかりと架橋させる必要がある。そのためには、架橋剤を多く用いることが必要であるが、ポリエステル系樹脂にも多くの反応性官能基を含有させる必要がある。
【0026】
特許文献13では、ジカルボン酸成分とジオール成分、3価以上の多価アルコール及び/又は3価以上の多価カルボン酸を重縮合してポリエステル樹脂を合成しているが、単にこのような方法では、高凝集力を発現する高分子量と高官能基数の両方を満足することは出来ない。即ち、高官能基数を得ようとして、3価以上の多価アルコール及び/又は3価以上の多価カルボン酸を多量に用いると、ポリエステルの合成途中でゲル化してしまうという問題がある。ゲル化しないように反応を制御すると、得られるポリエステルは低分子量の樹脂になってしまい、高凝集力を得ることが出来ない。
【0027】
これらのポリエステルを使用した感圧式接着剤は、アクリル系樹脂の短所である屈折率の制御性や耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性などを向上したりできると、一般には考えられる。しかしながら、これら全てを満足させることは出来ず、初期接着性(タック)が低すぎたり、凝集力が無かったりして感圧式接着剤としての機能を維持できない。又、これらは相溶性が不充分であり、このため、偏光フィルムや位相差フィルム等の光学フィルムに適用した場合、接着剤層に相分離や揺らぎ、はみ出しが発生してしまうとともに、これらを起点として、発泡やズレ等の現象を引き起こすだけでなく、貼着後、剥離強度が高くなり過ぎ、偏光フィルム等を剥ぎ取り難いばかりでなく、剥がした後に糊残りが生じたりして、再剥離性が不充分であるため、偏光フィルムや位相差フィルム等の光学フィルムを貼着するための感圧式接着剤には適さない。
【特許文献1】特開平01−066283号公報
【特許文献2】特開平10−279907号公報
【特許文献3】特開2002−121521号公報
【特許文献4】特開2003−013029号公報
【特許文献5】特開2002−014225号公報
【特許文献6】特開2003−073646号公報
【特許文献7】特開2004−002827号公報
【特許文献8】特開2004−083648号公報
【特許文献9】特開2002−053835号公報
【特許文献10】特開平04−328186号公報
【特許文献11】特開2002−194314号公報
【特許文献12】特開2004−99792号公報
【特許文献13】特開2007−099879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、液晶セル用のガラス基板に偏光フィルムを積層するために使用する感圧式接着剤に関し、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性、再剥離性等を有する接着剤層を形成し得る感圧式接着剤組成物を提供することを目的とする。更に、該感圧式接着剤組成物と光学部材からなる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明者らは、上記問題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に達した。即ち、本発明は、芳香族ジカルボン酸(a1)を含むジカルボン酸成分(A)と、側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)を含むジオール成分(B)とを重縮合してなる、重量平均分子量30000〜300000のポリエステル[I]、及び、
芳香族ジカルボン酸(a1)を含むジカルボン酸成分(A)と、側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)を含むジオール成分(B)と、3価以上の多価アルコール(c1)及び/又は3価以上の多価カルボン酸(c2)とを重縮合してなるポリエステルであって、3価以上の多価アルコール(c1)及び/又は3価以上の多価カルボン酸(c2)を、ジカルボン酸成分(A)と、ジオール成分(B)と、3価以上の多価アルコール(c1)と、3価以上の多価カルボン酸(c2)との合計に対して1〜20モル%使用することを特徴とする、重量平均分子量3000〜100000のポリエステル[II]を、含有してなる感圧式接着剤組成物に関する。
【0030】
更に本発明は、ポリエステル[I]及び/又はポリエステル[II]中の反応性官能基と反応しうる官能基を有する化合物(D)を含む上記感圧式接着剤組成物に関する。
【0031】
更に本発明は、化合物(D)が、ポリイソシアネート化合物である上記感圧式接着剤組成物に関する。
【0032】
更に本発明は、シランカップリング剤を含むことを特徴とする上記感圧式接着剤組成物に関する。
【0033】
更に本発明は、上記感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層上に光学部材が積層されてなる積層体に関する。
【0034】
更に本発明は、液晶セル用ガラス部材、上記感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層、及び光学部材が、順次積層されてなる液晶セル用部材に関する。
【発明の効果】
【0035】
本発明の感圧式接着剤組成物は、良好な光学特性(透明性)、耐熱性及び耐湿熱性、良好な応力緩和性、屈折率の制御性に優れた接着剤層を形成することができる。更に、本発明の感圧式接着剤組成物を用いることにより、特に耐熱性や耐湿熱性を必要とされる光学部材用途においては、従来よりも過酷な熱あるいは湿熱条件下でも発泡や剥がれ等が発生せず、又、液晶セル用のガラス基板面に偏光フィルムを貼り付けて積層体とした後に、ガラス基板面から偏光フィルムを剥がして、もう一度新しい偏光フィルム等を貼り直す場合に、偏光フィルムを剥がし難くかったり、剥がした後に糊残りが生じたりしない、再剥離性の良好な接着剤組成物と光学部材からなる積層体を提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の感圧式接着剤組成物は、重量平均分子量が30000〜300000の直鎖状ポリエステル[I]と、重量平均分子量が3000〜100000の分岐状ポリエステル[II]と、を含むことを特徴とする。直鎖状ポリエステル[I]が接着力やタックに寄与し、分岐状ポリエステル[II]が凝集力に寄与する。本発明の感圧式接着剤組成物は、これらの物性を容易にコントロールできるとともに、特に耐熱性や耐湿熱性を必要とされる光学部材用途において、従来よりも過酷な熱あるいは湿熱条件下でも発泡や剥がれ等が発生せず、偏光板の伸縮等により生じる応力集中を緩和して液晶素子に色ムラ・白ヌケを発生させない。
【0037】
まず、本発明の直鎖状ポリエステル[I]について説明する。ポリエステル[I]は、芳香族ジカルボン酸(a1)を含むジカルボン酸成分(A)と、側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)を含むジオール成分(B)とを重縮合してなるポリエステルである。ポリエステル[I]は、後述するポリエステル[II]で使用する、3価以上の多価アルコール(c1)及び/又は3価以上の多価カルボン酸(c2)を構成成分としない。即ち、分岐のない直鎖状の比較的高分子量のポリエステルである。
【0038】
芳香族ジカルボン酸(a1)を使用することで耐熱性、耐湿熱性が向上し、光学部材の積層に使用した場合、フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生しない。又、高屈折率を発現する。本発明では、ジカルボン酸成分(A)として、芳香族ジカルボン酸系(a1)をジカルボン酸成分(A)中で10〜80モル%使用するのが好ましく、20〜70モル%使用するのが更に好ましい。芳香族ジカルボン酸(a1)の使用量が10モル%未満であると耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する場合がある。又、屈折率は低いものとなる場合がある。又、80モル%を超えて使用すると接着性が低下し充分な接着力を得ることができない場合がある。
【0039】
本発明の芳香族ジカルボン酸系(a1)としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロルフタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;
無水フタル酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物等の芳香族ジカルボン酸無水物類が挙げられる。
【0040】
又、上記のような芳香族ジカルボン酸系成分や芳香族ジカルボン酸無水物類を低級アルコール、例えば炭素数1〜4のアルキルアルコールのエステル化物を用いることもできる。芳香族ジカルボン酸系成分や芳香族ジカルボン酸無水物類の低級アルコールのエステル化物を用いる場合には、ジオール成分(B)と脱水縮合ではなく、脱アルコールによるエステル交換反応によって、エステル結合を生成する。
【0041】
更に、芳香族トリカルボン酸無水物や芳香族テトラカルボン酸無水物をモノアルコールでハーフエステル化した化合物を芳香族ジカルボン酸として使用することができる。
【0042】
芳香族トリカルボン酸無水物としては、例えば、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,4,5−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,8−ナフタレントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、2,3,2’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルメタントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルスルホントリカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0043】
芳香族テトラカルボン酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−1−ナフタレンコハク酸無水物等が挙げられる。
モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、n−アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソオクタノール、ノナノール、デカノール、イソウンデカノール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の直鎖又は分岐脂肪族アルコール類;
ベンジルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、フェネチルアルコール等の芳香脂肪族モノアルコール類;
シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、トリシクロデカンメタノール等の脂環族モノアルコール類が挙げられる。
【0044】
これら芳香族ジカルボン酸系(a1)は、単独で、又は2種以上で用いることができる。これらの中でも、耐熱性、耐湿熱性の点から、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0045】
芳香族ジカルボン酸(a1)以外のジカルボン酸成分(A)としては、例えば、シトラコン酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−カルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族、脂環族ジカルボン酸類;
無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、ブチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、ブチルマレイン酸無水物、ペンチルマレイン酸無水物、ヘキシルマレイン酸無水物、オクチルマレイン酸無水物、デシルマレイン酸無水物、ドデシルマレイン酸無水物、ブチルグルタミン酸無水物、ヘキシルグルタミン酸無水物、ヘプチルグルタミン酸無水物、オクチルグルタミン酸無水物、デシルグルタミン酸無水物、ドデシルグルタミン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルペンタヒドロ無水フタル酸、メチルトリヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸等の脂肪族、脂環族ジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0046】
又、ポリエステル[I]は、側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)を使用することで基材に対する濡れ性が良くなり、耐熱性、耐湿熱性が向上し、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生しない。本発明では、ジオール成分(B)として、側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)を10〜70モル%使用するのが好ましく、20〜60モル%使用するのが更に好ましい。側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)の使用量が10モル%未満であると耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する場合がある。又、70モル%を超えて使用するとタックが下がる傾向にあり、重合時間も長くなり生産性に問題を生じる場合がある。
【0047】
側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)における炭化水素基とは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、炭素数3〜9の直鎖又は分岐のアルキル基が更に好ましい。側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)としては、例えば、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,3,5−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1, 6−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、2−ペンチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ヘキシル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ヘキシル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,4−ブタンジオール、2−ブチル−2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−ヘキシル−3−メチル−1,4−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,4−ブタンジオール、2−ブチル−4−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−プロピル−4−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−5−メチル−1,6−ヘキサンジオール、2−ヘキシル−5−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,5−ジブチル−1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、等が挙げられる。
【0048】
側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)以外のジオール成分(B)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン、ビスフェノールF、水添ビスフェノールF、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコールもしくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0049】
本発明のポリエステル[I]は、上記ジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)とを触媒存在下、公知の方法により重縮合反応させることにより得られる。通常、150℃〜260℃の温度で脱水及び/又は脱アルコール反応によりエステル化を行う。分子量の調整はジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)との仕込み比により行う。通常はジカルボン酸成分(A)中のCOOH官能基1モル(酸無水物基1個のCOOH官能基は2モル)に対してジオール成分(B)中のOH官能基を過剰に仕込む。OH/COOH=1/1〜1.50/1の比率で仕込むことが好ましく、1.05/1〜1.30/1の比率で仕込むことがより好ましい。1/1に近い程高分子量となり、1.50/1に近い程低分子量となる。更に高分子量とするためには、5mmHg以下の減圧下で脱ジオール反応を行う場合もある。
【0050】
脱ジオール反応には触媒を用いるのが好ましい。例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系、三酸化アンチモン等のアンチモン系、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系などの触媒や酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイドなどをあげることができ、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。これらのなかでも、触媒の活性が高い点から、三酸化アンチモン、テトラブチルチタネートが好ましい。
【0051】
本発明のポリエステル[I]の重量平均分子量(Mw)は、30000〜300000の範囲にあることが接着性の点で好ましく、50000〜200000の範囲にあることがより好ましい。Mwが30000未満であると凝集力を発現できずに、耐熱性や耐湿熱性が低下する。一方、Mwが300000を超えると、樹脂の流動性が不良となって、樹脂積層体を作製することが困難となる。
【0052】
本発明のポリエステル[I]の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.5〜5.0が好ましく、2.0〜4.0がより好ましい。Mw/Mnが1.5未満であると耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する場合がある。又、5.0を超えると高粘度化してハンドリングに問題を生じる場合がある。
【0053】
本発明のポリエステル[I]は、ガラス転移温度が−80〜0℃であることを特徴とする。ガラス転移温度が−80℃未満の場合、該ポリエステルを用いて得られる感圧式接着剤層の凝集力が低下し、浮き剥がれが生じる場合がある。一方、ガラス転移温度が0℃を超えると、感圧式接着剤層が充分なタックを発現しない場合がある。尚、ガラス転移温度は、DSC(示差熱熱重量測定装置)を用いて測定することができる。
【0054】
本発明のポリエステル[I]の水酸基価は、0.1〜30mgKOH/gであることが好ましく、2〜20mgKOH/gであることがより好ましい。0.1mgKOH/g未満であると、凝集力が低下する場合があり、30mgKOH/gを超えると粘着量や耐湿熱性が低下する場合がある。
【0055】
次に、本発明の分岐状ポリエステル[II]について説明する。ポリエステル[II]は、前記の直鎖状ポリエステル[I]と同様、芳香族ジカルボン酸(a1)を含むジカルボン酸成分(A)と、側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)を含むジオール成分(B)とを重縮合してなるポリエステルであるが、3価以上の多価アルコール(c1)及び/又は3価以上の多価カルボン酸(c2)を必須の構成成分とする。即ち、分岐構造を有するポリエステルである。
【0056】
芳香族ジカルボン酸(a1)を使用することで耐熱性、耐湿熱性が向上し、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生しない。本発明では、ジカルボン酸成分(A)として、芳香族ジカルボン酸系(a1)をジカルボン酸成分(A)中で10〜80モル%使用するのが好ましく、20〜70モル%使用するのが更に好ましい。芳香族ジカルボン酸(a1)の使用量が10モル%未満であると耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する場合がある。又、80モル%を超えて使用すると接着性が低下し充分な接着力を得ることができない場合がある。
【0057】
本発明の芳香族ジカルボン酸系(a1)としては、前記のポリエステル[I]で例示したものと同様のものを使用することができる。これらの中でも、耐熱性、耐湿熱性の点から、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0058】
芳香族ジカルボン酸(a1)以外のジカルボン酸成分(A)としても、前記のポリエステル[I]と同様のものを使用することができる。
【0059】
又、ポリエステル[II]は、側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)を使用することで基材に対する濡れ性が良くなり、耐熱性、耐湿熱性が向上し、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生しない。本発明では、ジオール成分(B)として、側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)を10〜70モル%使用するのが好ましく、20〜60モル%使用するのが更に好ましい。側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)の使用量が10モル%未満であると耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する場合がある。又、70モル%を超えて使用するとタックが下がる傾向にあり、重合時間も長くなり生産性に問題を生じる場合がある。
【0060】
側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)としては、前記のポリエステル[I]で例示したものと同様のものを使用することができる。又、側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)以外のジオール成分(B)としても、前記のポリエステル[I]で例示したものと同様のものを使用することができる。
【0061】
本発明のポリエステル[II]は、ジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)と共に、3価以上の多価アルコール(c1)及び/又は3価以上の多価カルボン酸(c2)を重縮合してなることを特徴とする。即ち、ジカルボン酸成分(A)、ジオール成分(B)、3価以上の多価アルコール(c1)、及び3価以上の多価カルボン酸(c2)各成分の合計に対して、1モル%〜20モル%の3価以上の多価アルコール(c1)及び/又は3価以上の多価カルボン酸(c2)を、ジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)と共に、重縮合してなることを特徴とする。3価以上の多価アルコール(c1)及び/又は3価以上の多価カルボン酸(c2)が1モル%未満であると反応性官能基数が少なくなり、凝集力が低下する。その結果、耐熱性や耐湿熱性に劣り光学用途において剥離や白ヌケといった問題が発生する。又、20モル%を超えるとゲル化を起こしやすく合成が困難となる。
【0062】
3価以上の多価アルコール(c1)としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。
【0063】
3価以上の多価カルボン酸(c2)としては、脂肪族多価カルボン酸や芳香族多価カルボン酸が挙げられる。脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、3−カルボキシメチルグルタル酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、cis−プロペン−1,2,3−トリカルボン酸、1,3,4−シクロペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸等が挙げられる。
【0064】
又、芳香族多価カルボン酸としては、例えば、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、トリメリット酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,4,5−ナフタレントリカルボン酸、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸、1,2,8−ナフタレントリカルボン酸、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸、3,4,4’−ビフェニルエーテルトリカルボン酸、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸、2,3,2’−ビフェニルトリカルボン酸、3,4,4’−ビフェニルメタントリカルボン酸、3,4,4’−ビフェニルスルホントリカルボン酸、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−1−ナフタレンコハク酸等が挙げられる。
【0065】
更に、3価以上の多価カルボン酸(c2)として、前記多価カルボン酸の無水物も使用することができる。
【0066】
本発明のポリエステル[II]は、ポリエステル[I]と同様に、ジカルボン酸成分(A)と、ジオール成分(B)と、3価以上の多価アルコール(c1)及び/又は3価以上の多価カルボン酸(c2)とを、公知の方法により重縮合反応させることにより得られる。ジカルボン酸成分(A)及び3価以上の多価カルボン酸(c2)中のCOOH官能基1モル(酸無水物基1個のCOOH官能基は2モル)に対して、ジオール成分(B)及び3価以上の多価アルコール(c1)中のOH官能基を過剰に仕込む。OH/COOH=1/1〜2/1の比率で仕込むことが好ましく、1.1/1〜1.8/1の比率がより好ましく、1.1/1〜1.5/1の比率で仕込むことが特に好ましい。1/1に近いほど高分子量の樹脂が得られ、2/1に近い程低分子量の樹脂が得られる。
【0067】
本発明のポリエステル[II]の重量平均分子量(Mw)は、3000〜100000の範囲にあることが凝集力、架橋度の点で好ましく、5000〜50000の範囲にあることがより好ましい。Mwが3000未満であると耐熱性や耐湿熱性が低下する。一方、Mwが100000を超えると、樹脂の流動性が不良となって、ゲル化するおそれがある。
【0068】
本発明のポリエステル[II]の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、2.0〜8.0が好ましく、3.0〜6.0がより好ましい。Mw/Mnが2.0未満であると耐熱性、耐湿熱性が劣り、光学部材の積層に使用した場合フィルムの剥離や白ヌケといった問題が発生する場合がある。又、8.0を超えると高粘度化してハンドリングに問題を生じる場合がある。
【0069】
本発明のポリエステル[II]は、ガラス転移温度が−70〜10℃であることが好ましい。ガラス転移温度が−70℃未満の場合、該ポリエステルを用いて得られる感圧式接着剤層の凝集力が低下し、浮き剥がれが生じる場合がある。一方、ガラス転移温度が10℃を超えると、感圧式接着剤層が充分なタックを発現しない場合がある。
【0070】
本発明のポリエステル[II]の水酸基価は、1〜100mgKOH/gであることが好ましく、5〜80mgKOH/gであることがより好ましい。1mgKOH/g未満であると、架橋が充分に行われずに凝集力が低下する場合があり、100mgKOH/gを超えると粘着力が低下する場合がある。
【0071】
本発明の感圧式接着剤組成物は、ポリエステル[I]とポリエステル[II]とを含有することを特徴とする。ポリエステル[I]は分岐の無い直鎖高分子量のポリエステルであり、高凝集力と応力緩和性を発現する。ポリエステル[II]は高分岐型ポリエステルであり、架橋反応に寄与して耐熱性や耐湿熱性を向上させる。それぞれのポリエステルの配合比は重量比で、ポリエステル[I]:ポリエステル[II]=50:50〜99:1が好ましく、60:40〜90:10がより好ましい。前記範囲よりポリエステル[I]が少ないとタックや応力緩和性が不充分となる傾向があり、ポリエステル[II]が少ないと架橋反応が不充分となり、耐熱性や耐湿熱性が低下する傾向にある。
【0072】
又、ポリエステル[I]とポリエステル[II]とを合計した中に、ジカルボン酸成分(A)として、それぞれの芳香族ジカルボン酸(a1)の構成成分の合計が10〜80モル%であるのが好ましく、20〜70モル%使であるのが更に好ましい。又、ジオール成分(B)として、側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)の構成成分の合計が10〜70モル%であるのが好ましく、20〜60モル%であるのが更に好ましい。
【0073】
本発明の感圧式接着剤組成物は、前記ポリエステル[I]と、ポリエステル[II]と、架橋剤として前記ポリエステル中の反応性官能基と反応しうる官能基を有する化合物(D)とを含有することを特徴とする。前記ポリエステル中の反応性官能基としては、水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。従って、本発明に用いられる化合物(D)の有する官能基としては、イソシアネート基、エポキシ基、アルコキシシリル基、メチロール基等が挙げられる。化合物(D)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、多官能シラン化合物、N−メチロール基含有化合物などが挙げられるが、これらの中でも、架橋剤として作用するために、ポリエステル中の水酸基と反応し得る官能基を分子内に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。特にポリイソシアネート化合物や多官能シラン化合物は、架橋反応後の樹脂組成物の接着性や被覆層への密着性に優れていることから好ましく用いられる。
【0074】
ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0075】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0076】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0077】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0078】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0079】
又、上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体や、イソシアヌレート環を有する3量体等も使用することができる。更には、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(PAPI)、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネート変性物等を使用し得る。なおポリイソシアネート変性物としては、カルボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、水と反応したビュレット基、イソシアヌレート基のうちのいずれかの基、又はこれらの基の2種以上を有する変性物を使用できる。又、ポリオールとジイソシアネートの反応物もポリイソシアネートとして使用することができる。
【0080】
これらポリイソシアネート化合物の内、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)、キシリレンジイソシネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(別名:水添MDI)等の無黄変型又は難黄変型のポリイシソアネート化合物を用いると耐候性、耐熱性あるいは耐湿熱性の点から、特に好ましい。
【0081】
化合物(D)としてポリイソシアネート化合物を使用する場合、反応促進のため、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。例えば三級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられ、単独でもあるいは複数を使用することもできる。
【0082】
多官能シラン化合物としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどのメタクリロキシ基とアルキル基とアルコキシ基を2つ有するシラン化合物;
γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどのアクリロキシ基とアルキル基とアルコキシ基を2つ有するシラン化合物;
γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシメチルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロキシアルキル基とアルコキシ基を3つ有するシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン;
5−ヘキセニルトリメトキシシラン、9−デセニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシランなどのアルキル基を有するアルコキシシラン;
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのアミノアルキル基とアルコキシ基とを有するシラン;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘキサメチルシラザン、ジフェニルジメトキシシラン、1, 3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビニルトリス( 2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0083】
本発明の感圧式接着剤組成物は、ポリエステル[I]とポリエステル[II]との合計100重量部に対して、化合物(D)を0.001〜20重量部含有することが好ましく、0.01〜10重量部含有することがより好ましい。化合物(D)の使用量が、20重量部を越えると感圧式接着剤組成物から形成されると感圧式接着剤層の架橋構造が密になり、感圧式接着剤層のタックが低下傾向となり、被着体に対する接着性が低下したり、応力緩和性が低下したりして、熱ムラを生ずる傾向にある。又、0.001重量部未満では、充分な架橋構造が得られないため、凝集力が低下し、耐熱性、耐湿熱性が低下する傾向にあるため、好ましくない。ポリエステル中の反応性官能基と化合物(D)中の官能基との反応により、樹脂組成物が三次元架橋し、各種基材や被着体との密着性を確保するだけでなく、従来よりも過酷な条件下における耐熱性及び耐湿熱性をも向上することができるため、光学部材用として好ましく使用することができる。
【0084】
本発明の感圧式接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で有れば、各種樹脂、カップリング剤、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、タッキファイヤ、可塑剤、充填剤及び老化防止剤等を配合しても良い。
【0085】
本発明の感圧式接着剤組成物を使用して、感圧式接着層とシート状基材とからなる積層製品(以下、「接着シート」という。)を得ることができる。例えば、種々のシート状基材に本発明の感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥・硬化することによって感圧式接着シートを得ることができる。感圧式接着シートを構成する感圧式接着層は、「感圧式」であるから室温程度でタックを有する。感圧式接着剤組成物を塗工するに際し、適当な液状媒体、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、その他の炭化水素系溶媒等の有機溶媒や、水をさらに添加して、粘度を調整することもできるし、感圧式接着剤組成物を加熱して粘度を低下させることもできる。ただし、水やアルコール等は多量に添加するとポリエステルと化合物(D)との反応阻害を引き起こす可能性があるため、注意が必要である。
【0086】
シート状基材としては、セロハン、各種プラスチックシート、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス板、金属板、木材等の平坦な形状のものが挙げられる。又、各種基材は単独でも用いることもできるし、複数のものを積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。更に表面を剥離処理したものを用いることもできる。
【0087】
各種プラスチックシートとしては、各種プラスチックフィルムともいわれ、ポリビニルアルコールフィルムやトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルム、ポリカーボネート系樹脂のフィルム、ポリノルボルネン系樹脂のフィルム、ポリアリレート系樹脂のフィルム、アクリル系樹脂のフィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルム、ポリスチレン樹脂のフィルム、ビニル系樹脂のフィルム、ポリアミド系樹脂のフィルム、ポリイミド系樹脂のフィルム、エポキシ系樹脂のフィルム等が挙げられる。
【0088】
常法にしたがって適当な方法で上記シート状基材に感圧式接着剤組成物を塗工した後、感圧式接着剤組成物が有機溶媒や水等の液状媒体を含有する場合には、液状媒体を除去したり、感圧式接着剤組成物が揮発すべき液状媒体を含有しない場合は、溶融状態にある接着剤層を冷却して固化したりして、シート状基材の上に接着剤層を形成することができる。感圧式接着剤層の厚さは、0.1μm〜200μmであることが好ましく、1μm〜100μmであることがより好ましい。0.1μm未満では充分な接着力が得られないことがあり、200μmを超えても接着力等の特性はそれ以上向上しない場合が多い。
【0089】
本発明の感圧式接着剤組成物をシート状基材に塗工する方法としては、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等種々の塗工方法が挙げられる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては接着剤組成物の硬化形態、膜厚や選択した溶剤にもよるが、通常60〜180℃程度の熱風加熱でよい。
【0090】
本発明の積層体は、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム等の種々の光学特性を持つ、いわゆるシート(前述の通りフィルムともいう)状の光学部材に、上記本発明の感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層が積層された状態のものである。感圧式接着剤層の他の面には、剥離処理されたシート状基材を積層することができる。
【0091】
本発明の積層体は、
(ア)剥離処理されたシート状基材の剥離処理面に感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥し、シート状の光学部材を感圧式接着剤層の表面に積層したり、
(イ)シート状の光学部材に感圧式接着剤組成物を塗工、乾燥し、感圧式接着剤層の表面に剥離処理されたシート状基材の剥離処理面を積層したりすることによって得ることができる。
【0092】
このようにして得た積層体から感圧式接着剤層の表面を覆っていた剥離処理されたシート状基材を剥がし、例えば、感圧式接着剤層を液晶セル用ガラス部材に貼着することによって、「シート状の光学部材/感圧式接着剤層/液晶セル用ガラス部材」という構成の液晶セル部材を得ることができる。
【0093】
本発明の感圧式接着剤組成物は、ポリエステルで構成されているため、基材への密着性を向上させており、耐可塑剤性や低温接着性に優れ、発泡体の様な基材に対する密着性が必要とされる用途にも、好適に使用される。特に主鎖骨格に芳香環を含有することができるため、該感圧式接着剤組成物の乾燥及び/又は硬化後の屈折率は、1.45以上を維持することが可能である。光学部材用フィルムやガラス等の光学用部材に使用される材料の屈折率は、先に述べたように、1.50〜1.58程度のものであり、感圧式接着剤組成物を乾燥及び/又は硬化させた後の屈折率が1.45未満であると光学フィルムや光学用部材との屈折率差が大きくなる。そのため、例えば、該感圧式接着剤組成物から得られる接着剤層が光学フィルムの一種であるフィルム導光板上に設けられた場合、浅い角度で全反射が起こり、光の有効的な利用性が低下する場合がある。又、光学フィルムや光学用部材との屈折率差を低減するために、本発明の感圧式接着剤組成物の乾燥及び/又は硬化後の屈折率が1.49〜1.60の範囲で制御できることも重要である。特に1.50〜1.55の範囲で制御が可能である。
【実施例】
【0094】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」及び「%」は、特にことわらない限り「重量部」及び「重量%」を表す。
【0095】
(合成例1)「直鎖状ポリエステル[I]の合成」
攪拌機、温度計、水分離装置、還流冷却器、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽に、ジカルボン酸成分(A)と,ジオール成分(B)とを、それぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0096】
[重合槽]
イソフタル酸 88.24部
アジピン酸 155.22部
セバシン酸 214.76部
エチレングリコール 54.38部
1,4−ブタンジオール 52.63部
1,6−ヘキサンジオール 69.00部
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 70.17部
ネオペンチルグリコール 45.61部
【0097】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、160℃に昇温した。160℃で脱水を確認してから30分毎に10℃ずつ昇温し、250℃まで温度を上げて脱水反応を行った。250℃で更に反応を続け、酸価が15mgKOH/g以下になったら、150℃まで温度を下げた。150℃でテトラブチルチタネート0.1部を加えて、温度を240℃まで昇温し、240℃になったら徐々に減圧を開始し、5mmHg以下で5時間脱ジオール反応を行った。所定の分子量になったことを確認して反応を終了した。このポリエステルをメチルエチルケトン/酢酸エチル混合溶液(重量比=1/1)に溶解し、固形分50%に調整してポリエステル溶液(A−1)を得た。得られた樹脂溶液の特性値を表−1に示した。
【0098】
(合成例2、3)「直鎖状ポリエステル[I]の合成」
合成例1と同様の方法で、表−1の仕込み組成に従って合成を行い、ポリエステル溶液(A−2、A−3)を得た。得られた樹脂溶液の特性値を表−1に示した。
【0099】
(合成例4)「直鎖状ポリエステル[I]の合成」
攪拌機、温度計、水分離装置、還流冷却器、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽に、ジカルボン酸成分(A)と,ジオール成分(B)とを、それぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0100】
[重合槽]
ジメチルテレフタル酸 233.65部
エチレングリコール 32.86部
1,4−ブタンジオール 35.77部
1,6−ヘキサンジオール 46.90部
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 105.99部
ネオペンチルグリコール 68.89部
酢酸亜鉛(触媒) 0.035部
【0101】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、160℃に昇温した。160℃で脱メタノールを確認してから30分毎に10℃ずつ昇温し、210℃まで温度を上げて脱メタノール反応を行い、メタノールの留出が止まるまで反応を続けた。脱メタノール反応が終了したら150℃まで温度を下げた。150℃でイソフタル酸79.97部、セバシン酸145.97部を加えて昇温し、250℃まで温度を上げて脱水反応を行った。酸価が15mgKOH/g以下になったら反応を終了し、150℃まで温度を下げた。次いで、テトラブチルチタネート0.1部を加えて、温度を240℃まで昇温し、240℃になったら徐々に減圧を開始し、5mmHg以下で5時間脱ジオール反応を行った。所定の分子量になったことを確認して反応を終了した。このポリエステルをメチルエチルケトン/酢酸エチル混合溶液(重量比=1/1)に溶解して固形分50%に調整し、ポリエステル溶液(A−4)を得た。得られた樹脂溶液の特性値を表−1に示した。
【0102】
(合成例5)「直鎖状ポリエステルの合成(比較合成例)」
合成例1と同様の方法で、表−1の仕込み組成に従って合成を行い、ポリエステル溶液(A−5)を得た。得られた樹脂溶液の特性値を表−1に示した。
【0103】
(合成例6)「分岐状ポリエステル[II]の合成」
攪拌機、温度計、水分離装置、還流冷却器、窒素導入管を備えた重合反応装置の重合槽に、ジカルボン酸成分(A)と,ジオール成分(B)と、3価以上の多価アルコール(c1)とを、それぞれ下記の比率で仕込んだ。
【0104】
[重合槽]
イソフタル酸 86.84部
アジピン酸 152.75部
セバシン酸 211.34部
1,4−ブタンジオール 33.66部
1,6−ヘキサンジオール 44.14部
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール 59.84部
ネオペンチルグリコール 32.91部
トリメチロールプロパン 128.51部
【0105】
重合槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下、160℃に昇温した。160℃で脱水を確認してから30分毎に10℃ずつ昇温し、240℃まで温度を上げて脱水反応を行った。240℃で更に反応を続け、酸価が所定の値になったら反応を終了した。その後、100mmHgの減圧下で30分間、未反応のモノマーを留去した後、このポリエステルをメチルエチルケトン/酢酸エチル混合溶液(重量比=1/1)に溶解し、固形分50%に調整してポリエステル溶液(A−6)を得た。得られた樹脂溶液の特性値を表−2に示した。
【0106】
(合成例7〜10、12)「分岐状ポリエステル[II]の合成」
合成例5と同様の方法で、表−2の仕込み組成に従って合成を行い、ポリエステル溶液(A−7)〜(A−10)、(A−12)を得た。得られた樹脂溶液の特性値を表−2に示した。
【0107】
(合成例11)「分岐状ポリエステルの合成(比較合成例)」
合成例5と同様の方法で、表−2の仕込み組成に従って合成を行い、ポリエステル溶液(A−11)を得た。得られた樹脂溶液の特性値を表−2に示した。
【0108】
(合成例13)「アクリル樹脂の合成(比較合成例)」
温度計、攪拌機、蒸留管、冷却器、滴下ロートを具備した4つ口セパラブルフラスコに2−エチルヘキシルアクリレート49g、フェノキシエチルアクリレート50g、アクリル酸1g及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2gをトルエン100gと共に入れて室温で窒素還流を1時間行った後、その窒素気流下、温度を60℃に昇温して4時間反応させ、ついで80℃に昇温して2時間熟成させてアクリル樹脂溶液(A−13)を得た。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量は599000、分散度は5.8、酸価は7.8mgKOH/g、ガラス転移温度は−35.3℃であった。
【0109】
合成例1〜13で得られた各樹脂の重量平均分子量(Mw)、分散度、酸価、ガラス転移温度(Tg)を以下の方法に従って求め、結果を表−1及び表−2に示した。
【0110】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
Mwの測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0111】
<分散度>
上記GPCで求めた重量平均分子量(Mw)を、同様にして求めた数平均分子量(Mn)で除して分散度とした。
【0112】
<酸価>
合成例1〜13で合成した樹脂溶液2gをトルエン/イソプロピルアルコール=70/30(重量比)の混合溶剤30mlに溶解し、0.1mol/LのKOHエタノール溶液で滴定して、樹脂固形分1g当りのKOHのmg数を求めた。
【0113】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ロボットDSC(示差走査熱量計)「RDC220」(セイコーインスツルメンツ社製)に「SSC5200ディスクステーション」(セイコーインスツルメンツ社製)を接続して測定した。アルミニウムパンに試料約10mgを秤量してDSC装置にセットし(リファレンス:試料を入れていない同タイプのアルミニウムパンとした。)、300℃の温度で5分間加熱した後、液体窒素を用いて−120℃まで急冷処理した。その後10℃/分で昇温し、得られたDSCチャートからガラス転移温度(Tg)を算出した(単位:℃)。
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【0116】
(実施例1)
合成例1で得られたポリエステル溶液(A−1)60部(固形分50%)、ポリエステル溶液(A−8)40部(固形分50%)にトルエンを約25部加え、固形分が40%となるように調整した。次いで、硬化剤である化合物(D)として、TDI/TMP(トルレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)2.5部と、シランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.5部加えてよく撹拌して、本発明の感圧式接着剤組成物を得た。
【0117】
これを剥離処理されたポリエステルフィルム(以下、「剥離フィルム」という。)上に乾燥後の厚みが25μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させ、感圧式接着剤層を形成した。乾燥後、感圧式接着剤層に、ポリビニルアルコール(PVA)系偏光子の両面をトリアセチルセルロース系保護フィルム(以下、「TACフィルム」という)で挟んだ三層構造の偏光フィルムの片面を貼り合せ、「剥離フィルム/感圧式接着剤層/TACフィルム/PVA/TACフィルム」なる構成の積層体を得た。次いで、得られた積層体を温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成(暗反応)させて、接着剤層の反応を進行させ、接着加工した偏光板(積層体)を作製した。
【0118】
(実施例2〜6)
表−3の組み合わせに従ってポリエステル[I]とポリエステル[II]とを混合し、実施例1と同様にして感圧式接着剤組成物を作製した。得られた感圧式接着剤組成物を用いて接着加工した偏光板(積層体)を作製した。
【0119】
(比較例1)
合成例3で得られたポリエステル溶液(A−3)100部(固形分50%)にトルエンを約25部加え、固形分が40%となるように調整した。次いで、硬化剤である化合物(D)として、TDI/TMP(トルレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)2.5部と、シランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.5部加えてよく撹拌して、感圧式接着剤組成物を得た。
【0120】
(比較例2)
合成例5で得られたポリエステル溶液(A−5)60部(固形分50%)、合成例8で得られたポリエステル溶液(A−8)40部(固形分50%)にトルエンを約25部加え、固形分が40%となるように調整した。次いで、硬化剤である化合物(D)として、TDI/TMP(トルレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)2.5部を加えてよく撹拌して、感圧式接着剤組成物を得た。
【0121】
(比較例3)
合成例11で得られたポリエステル溶液(A−11)100部(固形分50%)にトルエンを約25部加え、固形分が40%となるように調整した。次いで、硬化剤である化合物(D)として、TDI/TMP(トルレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)2.5部を加えてよく撹拌したが、粘度が高すぎて感圧式接着剤組成物を塗工出来なかった。
【0122】
(比較例4)
合成例12で得られたポリエステル溶液(A−12)100部(固形分50%)にトルエンを約25部加え、固形分が40%となるように調整した。次いで、硬化剤である化合物(D)として、TDI/TMP(トルレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)2.5部を加えてよく撹拌して、感圧式接着剤組成物を得た。
【0123】
(比較例5)
合成例12で得られたポリエステル溶液(A−12)100部(固形分50%)にトルエンを約25部加え、固形分が40%となるように調整した。次いで、硬化剤である化合物(D)として、TDI/TMP(トルレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)5.0部と、シランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.5部加えてよく撹拌して、感圧式接着剤組成物を得た。
【0124】
(比較例6)
合成例13で得られたアクリル樹脂溶液(A−13)100部(固形分50%)にトルエンを約25部加え、固形分が40%となるように調整した。次いで、硬化剤である化合物(D)として、TDI/TMP(トルレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)2.5部と、シランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.5部加えてよく撹拌して、感圧式接着剤組成物を得た。
【0125】
(比較例7)
合成例3で得られたポリエステル溶液(A−3)50部(固形分50%)、合成例13で得られたアクリル樹脂溶液(A−13)50部(固形分50%)にトルエンを約25部加え、固形分が40%となるように調整したが、ポリエステル溶液(A−3)とアクリル樹脂溶液(A−13)の相溶性が悪く白濁・分離したため、評価を行えなかった。
【0126】
実施例及び比較例で得られた接着加工した偏光板(積層体)について、塗膜の耐熱性、耐湿熱性、熱ムラ、屈折率、及び再剥離性を以下の方法で評価した。結果を表−3及び表−4に示す。
【0127】
<耐熱性、耐湿熱性の評価方法>
接着加工した偏光板(積層体)を150mm×80mmの大きさに裁断し、剥離フィルムを剥がし、厚さ1.1mmのフロートガラス板の両面に、それぞれの偏光板の吸収軸が直交するようにラミネーターを用いて貼着した。続いて、この偏光板が貼り付けられたガラス板を50℃−5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて、偏光板をガラス板に強固に密着させ、偏光板とガラス板との積層物を得た。
【0128】
耐熱性の評価として、上記積層物を80℃のオーブン中で500時間放置した後の偏光板の浮き、ハガレ、ガラス板面とのズレを目視で評価した。又、耐湿熱性の評価として、上記積層物を60℃、相対湿度80%の恒温高湿槽で500時間放置した後の偏光板の浮きやハガレ、ガラス板面とのズレを目視で評価した。耐熱性、耐湿熱性について、下記の3段階の評価基準に基づいて評価をおこなった。
【0129】
○:「浮き、ハガレ、ズレが全く認められず、実用上全く問題なし。」
△:「若干浮きやハガレ、ズレが認められるが、実用上問題がない」
×:「全面的に浮き、ハガレ、ズレがあり、実用不可である」
をそれぞれ意味する。
【0130】
<熱ムラの評価方法>
接着加工した偏光板(積層体)を150mm×80mmの大きさに裁断して剥離フィルムを剥がし、厚さ1.1mmのフロートガラス板の両面に、それぞれの偏光板の吸収軸が直交するようにラミネーターを用いて貼着した。続いて、この偏光板が貼り付けられたガラス板を50℃−5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて、偏光板をガラス板に強固に密着させ、偏光板とガラス板との積層物を得た。この積層物を80℃のオーブン中に24時間放置した後、この積層物の片面から光を当て、反対の面から偏光板の光漏れを目視評価した。
【0131】
〇:偏光板の全面が暗黒色の色相で均一。
△:偏光板の四辺部で10mm以内に暗黒色が薄くなっているが実用上問題ない。
×:偏光板の四辺部で10mm以上に暗黒色が薄くなっている。
【0132】
<塗膜の屈折率の評価方法>
実施例及び比較例で得られた感圧式接着剤組成物を剥離フィルム上に塗工し、120℃のオーブンにて乾燥して、厚さ25μmの感圧式接着剤層を設けた後、ポリエステルフィルム貼り合わせて積層させ、感圧式接着シートを作製した。その後、アッベ屈折率計「DR−M2」[ATAGO社製]にて、25℃雰囲気下、ナトリウムD線を照射して、接着シート上の接着剤層の屈折率を測定した。
【0133】
<再剥離性(リワーク性)の評価方法>
接着加工した偏光板(積層体)を25mm×150mmの大きさに裁断し、剥離フィルムを剥がし、厚さ1.1mmのフロートガラス板にラミネーターを用いて貼り付け、50℃5気圧の条件のオートクレーブ内に20分保持させて、偏光板をガラス板に強固に密着させた。この試験片を23℃、相対湿度50%で1週間放置した後に、180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験を実施し、剥離後のガラス表面の曇りを目視で観察し、3段階で評価した。
【0134】
○:「曇りがなく、実用上全く問題がない」、
△:「若干曇りが認められるが、実用上問題ない」、
×:「全面的に接着剤層の転着が認められ、実用不可である」
をそれぞれ意味する。
【0135】
【表3】

【0136】
【表4】

【0137】
以上のように、本発明の感圧式接着剤組成物は、耐熱性、耐湿熱性、熱ムラ、再剥離性、屈折率の制御性に優れていることが分かる。これに対して、比較例1では耐熱性と耐湿熱性が劣り、比較例2では耐熱性と高屈折率が不充分で再剥離性が劣る。比較例3はポリエステル樹脂溶液の粘度が高すぎて塗工できなかった。比較例4と5は硬化剤の添加量により、耐熱性・耐湿熱性と熱ムラのバランスが取れない。比較例6は耐熱性・耐湿熱性は良好であるが熱ムラが劣っていた。比較例7はアクリル樹脂にポリエステルを混合したが相溶性が劣った。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の感圧式接着剤組成物は、ポリエステル特有の凝集力を維持しつつ、主鎖骨格に芳香環や脂環を導入したポリマーを形成することができるため、アクリル系樹脂では得られなかった接着物性を発現させることができる。その例として、本発明の様な光学積層体での耐熱性、耐湿熱性、光学特性、再剥離性等が挙げられる。特に、光学積層体の用途では、光学特性である、光漏れのないことが重要視され、近年のディスプレイの大型化に伴い、屈折率の制御等、その要求性能はますます厳しくなってきている。そこで、本発明の感圧式接着剤組成物は、上述のようにこれまでは困難であった特性を発揮できるため、さらに有用になると考えられる。
【0139】
又、本発明の感圧式接着剤組成物は、光学部材用途として好適であるほか、一般ラベル・シールのほか、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、タッキファイヤ、接着剤、積層構造体用接着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング用等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、フィルム(ラミネート接着剤、保護フィルム等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、又、各種樹脂添加剤及びその原料等としても非常に有用に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸(a1)を含むジカルボン酸成分(A)と、側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)を含むジオール成分(B)とを重縮合してなる、重量平均分子量30000〜300000のポリエステル[I]、及び、
芳香族ジカルボン酸(a1)を含むジカルボン酸成分(A)と、側鎖に炭化水素基を有するグリコール(b1)を含むジオール成分(B)と、3価以上の多価アルコール(c1)及び/又は3価以上の多価カルボン酸(c2)とを重縮合してなるポリエステルであって、3価以上の多価アルコール(c1)及び/又は3価以上の多価カルボン酸(c2)を、ジカルボン酸成分(A)と、ジオール成分(B)と、3価以上の多価アルコール(c1)と、3価以上の多価カルボン酸(c2)との合計に対して1〜20モル%使用することを特徴とする、重量平均分子量3000〜100000のポリエステル[II]を、含有してなる感圧式接着剤組成物。
【請求項2】
ポリエステル[I]及び/又はポリエステル[II]中の反応性官能基と反応しうる官能基を有する化合物(D)を含む請求項1記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項3】
化合物(D)が、ポリイソシアネート化合物である請求項2記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項4】
更にシランカップリング剤を含むことを特徴とする請求項3記載の感圧式接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層上に光学部材が積層されてなる積層体。
【請求項6】
液晶セル用ガラス部材、請求項1〜4いずれか記載の感圧式接着剤組成物から形成される感圧式接着剤層、及び光学部材が、順次積層されてなる液晶セル用部材。

【公開番号】特開2009−7429(P2009−7429A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168503(P2007−168503)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】