説明

感圧性接着テープ

【課題】基材の片面または両面に水系粘着剤層が設けられた感圧性粘着テープを提供すること。
【解決手段】基材の片面または両面に粘着剤層が設けられた感圧性接着テープであって、粘着剤層が、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、かつカルボキシル基含有単量体を含有する単量体を、乳化剤の存在下で乳化重合して得られた共重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成されたものであり、基材と粘着剤層との間に水系樹脂材料にて形成された下塗り剤層を有し、下塗り剤層表面の水の接触角が0〜90度である感圧性接着テープとする。下塗り剤層はオキサゾリン基またはカルボジイミド基を含有する水系樹脂材料にて形成することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散型アクリル系粘着剤にて粘着剤層を形成したテープ状絶縁材および当該テープ状絶縁材を貼合して形成された絶縁物品に関する。本発明のテープ状絶縁材は、トランス、コイル等の電気部品、電子部品等の層間絶縁や外面絶縁に使用され、これら物品が絶縁物品とされる。また本発明は、水分散型アクリル系粘着剤にて粘着剤層を形成した感圧性接着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テープ状絶縁材に使用される粘着剤としては、絶縁特性に優れるアクリル系またはゴム系の有機溶剤型粘着剤が使用されていた。かかるテープ状絶縁材に使用される粘着剤にも、一般の粘着剤の場合と同様に、環境保護、省資源、安全衛生等に対する社会的な要請と規制強化から、脱有機溶剤が重要な課題となっており、有機溶剤型粘着剤に代わるものが要望されている。有機溶剤型粘着剤に代わる粘着剤としては、汎用性や応用展開の可能性から、ホットメルト型や硬化型の粘着剤よりも、水系粘着剤が優位であると考えられている。
【0003】
アクリル系の水分散性粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を乳化重合して得られる重合体エマルションを含むものである。溶剤型のアクリル系粘着剤は、一般にコロナ処理をしなくても投錨性は良好であるが、アクリル系の水分散型粘着剤をフィルム基材に塗工するには、投錨性の点で塗工面に予めコロナ処理などをしておく必要がある。
【0004】
しかしながら、アクリル系の水分散型粘着剤の場合、公知のコロナ処理などの方法では十分な投錨性が得られず、ロール状のテープを巻き戻した場合に、背面に粘着剤が転写したり、また被着体との接着強度が大きい場合、テープを剥がすと被着体に糊が残るなどの問題点があった。このような場合に、溶剤型の下塗り剤を使用すると、良好な投錨性が得られるが、粘着剤として水分散型アクリル系粘着剤を使用するという環境に配慮した設計思想に反することになる。アクリル系重合体を基材としアクリル系粘着剤を粘着層とする粘着テープにプライマー層を形成させる技術(特許文献1)や、粘着シート(接着シート)を圧着させる被着体にプライマー層を形成させるコーティング組成物(特許文献2)は公知であるが、種々の基材に水分散型アクリル系粘着剤を塗工した粘着テープに適した下塗り剤については知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−133467号公報
【特許文献2】特開2000−109754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、絶縁基材の片面または両面に水系粘着剤層が設けられており、絶縁特性が良好であり、かつ剥離後に被着体に残存しない粘着剤層を有するテープ状絶縁材を提供することを目的とする。また本発明は、該テープ状絶縁材が貼合されている絶縁物品を提供することを目的とする。また本発明は、基材の片面または両面に水系粘着剤層が設けられた感圧性粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の水系の下塗り剤を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本願第1の発明のテープ状絶縁材は、絶縁基材の片面または両面に粘着剤層を設けたテープ状絶縁材であって、前記粘着剤層が、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、かつカルボキシル基含有単量体を含有する単量体を、乳化剤の存在下で乳化重合して得られた共重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成されたものであり、前記絶縁基材と前記粘着剤層との間にオキサゾリン基を含有する水溶性ポリマー又は水系エマルションにて形成された下塗り剤層を有することを特徴とする。水系エマルションは、アクリルエマルションであることが好ましい。
【0009】
また本願第2の発明のテープ状絶縁材は、絶縁基材の片面または両面に粘着剤層を設けたテープ状絶縁材であって、前記粘着剤層が、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、かつカルボキシル基含有単量体を含有する単量体を、乳化剤の存在下で乳化重合して得られた共重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成されたものであり、前記絶縁基材と前記粘着剤層との間に水系樹脂材料にて形成された下塗り剤層を有し、前記下塗り剤層表面の水の接触角が0〜90度であることを特徴とする。
【0010】
上記いずれの本願発明のテープ状絶縁材も、水系粘着剤として水分散型アクリル系粘着剤を用いているので、天然ゴムラテックスまたは合成ゴムラテツクス粘着剤のようにイオン性乳化剤を多量に含有することによる絶縁特性の低下がない。また本発明のテープ状絶縁材は、絶縁基材と粘着剤層との間に前述のような下塗り剤層を設けることにより、絶縁基材と粘着剤層との密着性が向上し、剥離後に粘着剤層が被着体に残存しないという効果を奏する。さらに本発明のテープ状絶縁材は、絶縁基材の粘着剤層形成面に着色印刷をした場合であっても、絶縁基材と粘着剤層との密着性が優れ、剥離後に粘着剤層が被着体に残存しないという効果を奏する。
【0011】
下塗り剤層表面の水の接触角が0〜90度であることにより、耐発泡性,投錨性や密着性が十分に発揮される。該接触角は、0〜88度であることがより好ましい。
【0012】
本発明のテープ状絶縁材においては、前記下塗り剤層を構成する水系樹脂材料が、オキサゾリン基又はカルボジイミド基を有する水溶性ポリマー、オキサゾリン基又はカルボジイミド基を有するアクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルションから選択されるものであることが好ましい。
【0013】
該オキサゾリン基又はカルボジイミド基を有する水系樹脂材料を下塗り剤として選択することにより,絶縁基材に粘着剤を塗工する際の投錨性が良好となり,粘着特性も良好に維持されたテープ状絶縁材が形成される。
【0014】
本発明のテープ状絶縁材においては、前記下塗り剤は、オキサゾリン基を含有するアクリル系エマルションであることが好ましい。該エマルションを選択することにより、絶縁基材に粘着剤を塗工する際の投錨性がさらに良好であり、粘着特性もさらに良好に維持することができる。
【0015】
上述のテープ状絶縁材においては、前記下塗り剤層の厚みは、0.001以上3.0μm未満であることが好ましく、0.01〜2.0μmであることがより好ましく、0.03〜1.0μmであることがよりがさらに好ましい。かかる範囲の厚みであれば、投錨性や密着性を十分発揮することができる。即ち、下塗り剤層の厚みが3.0μmを超えると投錨力が急激に低下し、0.001μm未満の場合には、薄すぎて下塗り剤層の効果にばらつきが発生する。0.01〜2.0μmであれば、下塗り剤層の効果である良好な投錨力が安定して得られる。下塗り剤層に界面活性剤を添加すると上記の好ましい厚みの範囲において投錨力が低下する。また下塗り剤に増粘剤を添加すると上記のような薄膜塗装を安定して行うことが困難となる。
【0016】
また、本発明は、前記テープ状絶縁材が貼合されている絶縁物品に関する。かかる構成の絶縁物品は、絶縁特性が良好であり、テープ状絶縁材を剥離した後において被着体に粘着剤が残存しないという特徴を有する。
【0017】
別の本願第1の発明の感圧性接着テープは、基材の片面または両面に粘着剤層が設けられた感圧性接着テープであって、前記粘着剤層が、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、かつカルボキシル基含有単量体を含有してなる単量体を、乳化剤の存在下で乳化重合して得られた共重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成されたものであり、前記基材と前記粘着剤層との間にオキサゾリン基を含有する水溶性ポリマー又は水系エマルションにて形成された下塗り剤層を有することを特徴とする。水系エマルションは、アクリルエマルションであることが好ましい。
【0018】
別の本願第2の発明の感圧性接着テープは、基材の片面または両面に粘着剤層が設けられた感圧性接着テープであって、前記粘着剤層が、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、かつカルボキシル基含有単量体を含有してなる単量体を、乳化剤の存在下で乳化重合して得られた共重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成されたものであり、前記基材と前記粘着剤層との間に水系樹脂材料にて形成された下塗り剤層を有し、前記下塗り剤層表面の水の接触角が0〜90度であることを特徴とする。
【0019】
上述の感圧性接着テープにおいては、前記下塗り剤層を構成する水系樹脂材料が、オキサゾリン基又はカルボジイミド基を有する水溶性ポリマー、オキサゾリン基又はカルボジイミド基を有するアクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルションから選択されるものであることが好ましく、前記水系エマルションが、オキサゾリン基含有アクリル樹脂エマルションであることがさらに好ましい。
【0020】
また上述の感圧性接着テープにおいては、前記下塗り剤層の厚みが0.001μm以上3.0μm未満であることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のテープ状絶縁材において粘着剤層を形成する水分散型アクリル系粘着剤は、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、かつカルボキシル基含有単量体を含有する単量体を、乳化剤の存在下に乳化重合することにより得られる共重合体エマルションを含有する。
【0022】
アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸またはメタクリル酸と炭素数が4〜12のアルコールとのエステルであって、具体的には、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニルなどがあげられ、これらの中からその1種または2種以上が用いられる。これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単量体の主成分として、単量体中、50重量%以上、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90〜99.5重量%の割合で用いられる。アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合が少ないと、良好な接着性の粘着剤が得られにくい。
【0023】
水分散型アクリル系粘着剤成分である共重合体を構成する単量体中には、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのほかに、被着体への接着力を向上させること、得られる共重合体を後架橋するための架橋点を導入すること、粘着剤の凝集力を高めること、中和によって機械的安定性を向上させることの少なくとも一つの達成を目的とし、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な官能基含有単量体としてカルボキシル基含有単量体を含有している。カルボキシル基含有単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸などがあげられる。カルボキシル基含有単量体は、使用する全単量体を合計100重量%として、50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは0.5〜10重量%の割合で用いられる。
【0024】
また、被着体への接着力を向上させること、得られる共重合体を後架橋するための架橋点を導入すること、粘着剤の凝集力を高めることの少なくとも一つの達成を目的として、上記成分と共重合可能なカルボキシル基以外の他の官能基含有単量体や改質用単量体を使用してもよい。
【0025】
これら他の官能基含有単量体等は、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、カルボキシル基含有単量体が上述の割合を満足し、かつ使用する全単量体を合計100重量%として、50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは0.5〜10重量%の割合で使用する。
【0026】
上述の他の官能基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルなどのアミノ基含有単量体、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのグリシジル基含有単量体、(メタ)アクリル酸プロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸プロピルジメトキシシラン、(メタ)アクリル酸プロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基含有単量体、(メタ)アクリロニトリル、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピロリドンなどがあげられる。これら官能基含有単量体はその1種を単独でまたは2種以上を使用できる。
【0027】
上述の改質用単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピルなどのアルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどのアルキル基の炭素数が13〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエンなどがあげられる。また、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の二つ以上の重合性官能基を有するものがあげられる。これら改質用単量体もその1種を単独でまたは2種以上を使用できる。
【0028】
水分散型アクリル系粘着剤を乳化重合する際に使用する乳化剤としては、乳化重合において用いられるアニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤を特に制限なく使用できる。たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。
【0029】
乳化剤の使用量は、特に制限されないが、単量体(合計)100重量部に対して、0.3〜5重量部程度とするのが好ましい。乳化剤の使用量が多くなると、得られる共重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成される粘着剤層に含まれる水溶性成分量が多くなり、絶縁特性が低下する傾向がある。乳化剤の使用量は、3重量部以下、さらには2重量部以下とするのが好ましい。乳化剤の使用量は、好ましくは0.5〜3重量部、より好ましくは0.7〜2重量部である。
【0030】
アクリル系重合体の水分散液は、乳化剤の存在下、適宜の重合開始剤を用いて、常法により乳化重合を行って調製する。乳化重合は、一般的な一括重合、連続滴下重合、分割滴下重合などにより行う。重合温度は30〜90℃程度で行うことができる。
【0031】
重合開始剤としては、たとえば、2 ,2 ′−アゾビスイソブチロニトリル、2 ,2 ′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2 ′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパ−オキサイドなどの過酸化物系開始剤や、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムなどのレドツクス系開始剤などがあげられる。また、乳化重合においては、得られる共重合体の分子量の調整のために、必要に応じて、メルカプタン類などに代表される適宜の連鎖移動剤を使用してもよい。
【0032】
本発明で用いられる水分散型アクリル系粘着剤は、上記重合体エマルションを主剤成分とし、これに必要により、架橋剤を含有させることができる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などの一般に用いられているものを使用できる。これら架橋剤は、官能基含有単量体を用いることにより重合体中に導入した官能基と反応して架橋する効果以外に、共重合体エマルションに含まれる水溶性成分と反応することで水溶性成分の減少、即ち水抽出成分量の減少効果を奏する。かかる水溶性成分としては、たとえば、官能基含有単量体としてカルボキシル基含有単量体を用いた場合に、乳化重合時に乳化剤のミセル中でカルボキシル基含有単量体が共重合し難いために水中で形成されるカルボキシル基含有単量体のホモポリマーまたはホモポリマーに近い共重合ポリマー等がある。架橋剤は、これらカルボキシル基を含有するホモポリマーまたはホモポリマーに近い共重合ポリマー等を架橋して水不溶性とする作用を有する。
【0033】
架橋剤の使用量は、特に制限されないが、通常、共重合体中に導入した官能基:架橋剤の官能基の当量比で、1:0〜0.5程度であり、好ましくは1:0.001〜1:0.3の範囲になるようにするのがより好ましい。
【0034】
さらに、本発明で用いられる水分散型アクリル系粘着剤には、粘着付与成分やその他の各種の添加剤を配合できる。粘着付与成分としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、キシレン系樹脂、エラストマーなどがあげられる。
【0035】
本発明のテープ状絶縁材は、絶縁基材の片面または両面に、前記水分散型アクリル系粘着剤により、粘着剤層を形成したものである。粘着剤層は水抽出成分量が3重量%以下になるように調整するのが好ましい。水分散型アクリル系粘着剤の調製にあたっては、単量体の主成分であるアルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの他に、カルボキシル基含有単量体や、カルボキシル基以外の他の官能基含有単量体や改質用単量体の種類や添加量、乳化剤の種類や添加量、さらには得られる共重合体に加える架橋剤の種類や添加量を適切に調整する。
【0036】
絶縁基材は、特に限定されず、例えばポリエステル、ポリプロピレンなどのプラスチックフィルム、紙、不織布などの他、耐熱性のあるポリイミド、ポリアミド、ポリアセテートなどの単体またはこれらの複合基材、また場合によりこれらの基材にエポキシ樹脂などを含浸させたものなどがあげられる。絶縁基材の表面は、必要に応じてコロナ処理を行ってもよい。
【0037】
本発明のテープ状絶縁材は、絶縁基材と粘着剤層との間に下塗り剤層を有することを特徴とする。絶縁基材の片面または両面に、無機顔料とバインダーで構成された組成物を少なくとも一部分に印刷して着色してもよい。本発明のテープ状絶縁材は、絶縁基材の粘着剤層形成面に印刷、着色した場合であっても、絶縁基材と粘着剤層との密着性が向上し、剥離後に粘着剤層が被着体に残存しないものである。
【0038】
絶縁基材の粘着剤層形成面に無機顔料とバインダーで構成された組成物を印刷して着色して基材とした場合、該印刷面に直接水分散型アクリル系粘着剤を塗工すると,乾燥時に発泡するという問題が発生する。これは、有機材料のバインダーを使用するために表面の濡れ性が不良となり、水分散型系粘着剤の印刷面に対する濡れ性が良くないためであると考えられる。本発明のテープ状絶縁材は、絶縁基材と粘着剤層との間に下塗り剤層を形成しているために、水分散型アクリル系粘着剤の塗工、乾燥時の発泡が防止されている。
【0039】
水分散型アクリル系粘着剤の塗工、乾燥時の発泡が防止される理由は、印刷面に下塗り剤層を形成することによって、水分散型系粘着剤の濡れ性が良好となり、水分散型系粘着剤と下塗り剤層の間にある空気が短時間で排出されことによるものと推定される。
【0040】
下塗り剤層を形成するために用いられる下塗り剤は,オキサゾリン基又はカルボジイミド基を含有する水系樹脂材料、即ち水溶性ポリマー又は水系エマルションである。水溶性ポリマー又は水系エマルションとしては、水系ウレタン樹脂やウレタン樹脂エマルション、アミノ基含有水溶性ポリマー又はエマルション、アクリル樹脂エマルション等の公知の水系樹脂材料を制限なく用いることができる。具体的には、オキサゾリン基又はカルボジイミド基を側鎖に含有するアクリル樹脂、オキサゾリン基を側鎖に含有するポリスチレン−アクリルニトリル共重合体などのアクリル系樹脂、カルボジイミド基を含有する水溶性ポリマー、アクリル樹脂もしくは水系ウレタン樹脂等の公知の水系樹脂を制限なく用いることができる。これらの中でもオキサゾリン基を側鎖に含有するアクリル樹脂、オキサゾリン基を側鎖に含有するポリスチレン−アクリルニトリル共重合体などのアクリル系樹脂を使用することが特に好ましい。
【0041】
オキサゾリン基を含有する水系樹脂材料には市販品があり、使用可能である。具体的には,水溶性ポリマーとして,(株)日本触媒製の商品名「エポクロスWS−500」,「エポクロスWS−700」があげられ,水系エマルションとしては,(株)日本触媒製の商品名「エポクロスK−1000」シリーズ,「エポクロスK−2000」シリーズがあげられる。なかでも,下塗りして乾燥させた後の下塗り剤層の耐水性を向上させる点で,水系エマルションタイプの樹脂の使用が好ましい。下塗り剤層の耐水性が良好であると,水分散型アクリル系粘着剤の粘着特性がさらに向上するからである。
【0042】
カルボジイミド基を含有する水系樹脂材料にも市販品があり、使用可能である。具体例としては,水溶性ポリマーとして日清紡績(株)製の商品名「カルボジライトV−02」,「カルボジライトV−02−L2」,「カルボジライトV−04」,「カルボジライトV−06」があげられ,水系エマルションとして日清紡社製の商品名「カルボジライトE−01」,「カルボジライトE−02」があげられる。
【0043】
水系ウレタン樹脂の具体例として,第一工業製薬社製のスーパーフレックスシリーズがあげられる。
【0044】
下塗り剤層は、上述の下塗り剤を絶縁基剤の片面または両面に直接塗布し、乾燥させることによりを形成することができる。
【0045】
乾燥後の下塗り剤層の厚みは、通常0.001〜3.0μmであり、0.01〜2.0μmであることが好ましく、0.03〜1.0μmであることがより好ましい。かかる範囲の厚みであればプライマーとしての機能を十分に発揮することができる。
【0046】
粘着剤層の形成は、上述の水分散型アクリル系粘着剤を、下塗り剤層の表面に直接塗布し乾燥させることにより形成することができる。またセパレータ上に形成した粘着剤層を、下塗り剤層を有する絶縁基材上に転写することによっても粘着剤層を形成することができる。
【0047】
乾燥後の粘着剤層の厚みは、通常10〜50μmであり、20〜40μmであることが好ましい。かかる範囲の厚みであれば粘着性と絶縁性を兼ね備えた粘着層としての機能を発揮することができる。
【0048】
本発明のテープ状絶縁材は、絶縁基材の片面または両面に粘着剤層をそれぞれ単層または複数層設けてシート状やテープ状の形態として得られる。
【0049】
本発明のテープ状絶縁材は、各種電子部品用に好適に用いられ、電子部品類に接着されて電子部品類を構成する。本発明の絶縁物品は、かかる電子部品類を含むものである。その具体例は特に限定されないが、例えば、トランスの層間絶縁、外装絶縁などがあげられる。
【0050】
また、本発明の感圧性接着テープは、一般的なテープの用途にも使用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下、部は重量部を意味する。
(評価方法)
<電食係数(絶縁特性)>
電気絶縁用ポリエステルフィルム粘着テープの試験方法が記載されているJIS C−2338に準じて、電食係数を測定した。
<投錨性>
ステンレス板をNo.360のサンドペーパーで磨いた後、JIS Z−0237に準じてステンレス板にテープ状絶縁材を貼合わせ、80℃で1時間加熱した。室温に冷却した後、剥離速度30m/分で剥離し、糊残りの面積(%)を測定した。
<接着力>
JIS Z−0237に準じてステンレス板にテープ状絶縁材を貼合わせ、剥離力(180度ピール、剥離速度300mm/分)を測定した。
<接触角>
協和界面科学社製の自動接触角計 モデルCA−Vを使用し,液滴法により測定した。水の液滴が固体表面上に着滴してから10秒後の接触角を測定した。
(製造例)
<実施例1>
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、水30部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、撹拌下に1時間窒素置換した。この溶液にアクリル酸n−ブチル95部、アクリル酸5部および乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(第一工業製薬(株)製:商品名「ハイテノールLA−16」)1.0部(固形分換算)を水70部で乳化したものを80℃で3時間かけて滴下し、さらに80℃で2時間熟成を行った。その後、室温まで冷却し、10重量%アンモニア水によりpH8に調整して、共重合体エマルションを得た。この共重合体エマルションに、その固形分(水分散系共重合体)100部に対し、オキサゾリン基を含有する水溶性架橋剤として(株)日本触媒の商品名「エポクロスWS−700」(オキサゾリン基当量:220(g・solid/eq.))0 .1部(固形分換算)を混合して、水分散型アクリル系粘着剤1とした。
【0052】
ポリエステルフィルム(25μm厚)の片面に、オキサゾリン基含有アクリル系エマルション((株)日本触媒の商品名「エポクロスK−2020E」)を乾燥後の厚さが0.1μmになるように塗布して、100℃で1分間乾燥し、下塗り剤層を形成した絶縁基材1を得た。
【0053】
水分散型アクリル系粘着剤1を、絶縁基材1の下塗り剤層の表面に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布して、100℃で3分間乾燥し、テープ状絶縁材を作製した。
<実施例2>
実施例1において、単量体としてアクリル酸n−ブチル95部およびメタクリル酸5部を用いて水分散型アクリル系粘着剤2としたこと、基材としてポリエステルフィルム(25μm厚)の片面にコロナ処理したもの(絶縁基材2)を用いたこと、このコロナ処理面に塗布する下塗り剤としてオキサゾリン基含有アクリル系エマルション((株)日本触媒の商品名「エポクロスK−2010E」)を使用し、乾燥後の下塗り剤層の厚みを1.0μmになるようにして絶縁基材2としたこと以外は実施例1と同様にしてテープ状絶縁材を作製した。
<実施例3>
実施例1において、下塗り剤としてオキサゾリン基含有水溶性アクリルポリマー((株)日本触媒の商品名「エポクロスWS−700」)を使用し、乾燥後の下塗り剤層の厚みを0.5μmになるようにして絶縁基材3としたこと以外は実施例1と同様にして、テープ状絶縁材を作製した。
<比較例1>
実施例1において、下塗り処理をしないこと以外は実施例1と同様にして、テープ状絶縁材を作製した。
<比較例2>
実施例2において、下塗り処理をしないこと以外は実施例2と同様にして、テープ状絶縁材を作製した。
【0054】
以上の実施例1〜3および比較例1〜2で得られた各テープ状絶縁材について、上記した評価方法により接触角、電食係数(絶縁特性)、投錨性および接着力を調べた。これらの結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

表1に示す通り、実施例のテープ状絶縁材は、JIS C−2338で規定される電食係数が0.98以上となっており、本発明のテープ状絶縁材の電食係数が良好であり絶縁特性に優れ、また投錨性も優れていることが認められる。さらに、実施例のテープ状絶縁材の接着力も優れていることが認められる。
<実施例4>
冷却管、窒素導入管、温度計および撹粋装置を備えた反応容器に、水30部および過硫酸アンモニウム0.5部を仕込み,撹拌下1時間窒素置換した。この液にアクリル酸n−ブチル95部、アクリル酸5部および乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(第一工業製薬(株)の商品名「ハイテノールLA−16」)1.0部(固形分換算)を水70部で乳化したものを80℃にて3時間かけて滴下し、80℃で2時間熟成を行った。その後室温まで冷却し、10重量%アンモニア水によりpH値8に調整して、共重合体エマルションを得た。得られた共重合体エマルションに、その固形分(水分散系共重合体)100部に対し,オキサゾリン基を含有する水溶性架橋剤として「エポクロスWS−700」0.1部(固形分換算)を混合し、水分散型アクリル系粘着剤3とした。
【0056】
絶縁基材としてポリエステルフィルム(25μm厚)の片面に、青色無機顔料と有機材料バインダーの組成物を厚さ1μmとなるように塗工した面に,オキサゾリン基含有アクリルエマルション「エポクロスK−2020E」を乾燥後の厚さが0.1μmになるように塗布して,100℃で1分間乾燥し,下塗り剤層を形成した絶縁基材4を得た。
【0057】
つぎに水分散型アクリル系粘着剤3を、絶縁基材4の下塗り剤層の表面に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布して,130℃で3分間乾燥し,テープ状絶縁材を作製した。
<実施例5>
実施例4において,単量体として,アクリル酸2−エチルヘキシル95部、メタクリル酸5部を用いて水分散型アクリル系粘着剤4としたこと,青色面に塗布する下塗り剤としてカルポジイミド基含有水溶性ポリマー(日清紡社製の商品名「カルボジライトV−02−L2」)を使用し,乾燥後の下塗り層の厚みを0.5μmになるようにして絶縁基材5としたこと以外は実施例1と同様にしてテープ状絶縁材を作製した。
<実施例6>
実施例4において,単量体として,アクリル酸n−ブチル50部、アクリル酸2−エチルヘキシル45部,メタクリル酸5部を用いたこと、基材としてポリエステルフィルム(25μm厚)の片面に、白色無機顔料と有機材料バインダーの組成物を2μm印刷し,この白色印刷面にに塗布する下塗り剤として水系ウレタン樹脂(第一工業製薬社製「スーパーフレックス700」)を使用し,乾燥後の下塗り層の厚みを3.5μmになるようにして絶縁基材6としたこと以外は実施例1と同様にして,テープ状絶縁材を作製した。
<比較例3>
実施例4において,下塗り処理をしないこと以外は実施例4と同様にしてテープ状絶縁材を作製した。
<比較例4>
実施例5において,下塗り処理をしないこと以外は実施例5と同様にしてテープ状絶縁材を作製した。
<比較例5>
実施例6において,下塗り処理をしないこと以外は実施例6と同様にしてテープ状絶縁材を作製した。
【0058】
以上の実施例4〜6および比較例3〜5で得られた各テープ状絶縁材について,上記した評価方法により,接触角、耐発泡性、電食係数(絶縁特性)、投錨性および接着力を調べた。これらの結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

表2に示す通り,実施例のテープ状絶縁材は,塗工面が乾燥時に発泡せず良好であり,また,JISC−2338で規定される電食係数が0.98以上となっており,本発明のテープ状絶縁材の電食係数が良好であり絶縁特性に優れ,またまた投錨性も優れていることが認められる。さらに,実施例のテープ状絶縁材の接着力も優れていることが認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の片面または両面に粘着剤層が設けられた感圧性接着テープであって、
前記粘着剤層が、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、かつカルボキシル基含有単量体を含有してなる単量体を、乳化剤の存在下で乳化重合して得られた共重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成されたものであり、
前記基材と前記粘着剤層との間にオキサゾリン基を含有する水溶性ポリマー又は水系エマルションにて形成された下塗り剤層を有することを特徴とする感圧性接着テープ。
【請求項2】
基材の片面または両面に粘着剤層が設けられた感圧性接着テープであって、
前記粘着剤層が、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、かつカルボキシル基含有単量体を含有してなる単量体を、乳化剤の存在下で乳化重合して得られた共重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成されたものであり、
前記基材と前記粘着剤層との間に水系樹脂材料にて形成された下塗り剤層を有し、前記下塗り剤層表面の水の接触角が0〜90度であることを特徴とする感圧性接着テープ。
【請求項3】
前記下塗り剤層を構成する水系樹脂材料が、オキサゾリン基又はカルボジイミド基を有する水溶性ポリマー、オキサゾリン基又はカルボジイミド基を有するアクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルションから選択されるものであることを特徴とする請求項2に記載の感圧性接着テープ。
【請求項4】
前記水系樹脂材料が、オキサゾリン基含有アクリル樹脂エマルションであることを特徴とする請求項3に記載の感圧性接着テープ。
【請求項5】
前記下塗り剤層の厚みが0.001μm以上3.0μm未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感圧性接着テープ。

【公開番号】特開2010−174260(P2010−174260A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113406(P2010−113406)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【分割の表示】特願2004−54476(P2004−54476)の分割
【原出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】