説明

感圧接着シート用塗工紙

【課題】 オフセット印刷でき、かつ高い白紙光沢を有する、後糊方式での親展葉書作製用の感圧接着シート用塗工紙基材を提供する。
【解決手段】 印刷された塗工紙基材表面の少なくとも一方の面に接着剤層を有し、強圧処理により接着でき、接着後に接着剤層間で剥離可能な後糊圧着方式で使用する感圧接着シート用塗工紙において、前記塗工紙が、基紙と、その少なくとも一面上に形成され、顔料およびバインダー樹脂とを主成分として含む塗工層を少なくとも一層有し、前記バインダー樹脂の少なくとも1種類として、ガラス転移温度(Tg)−20〜40℃のラテックスを用い、かつその配合量が、顔料100質量部に対し5〜30質量部であることを特徴とする感圧接着シート用塗工紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧接着シート用塗工紙に関するものである。詳しくは、オフセット印刷適性を備えかつ、塗工紙上にさらに接着剤層を設けてなる三つ折りもしくは二つ折り葉書等各種葉書システムに用いられる後糊方式で使用する感圧接着シート用塗工紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
郵便法の改正に伴い必要情報を記録したシートを二つ折り、又は三つ折りに折り畳み、親展性を持つ葉書システムが実用化され普及している。このような親展性を持つ葉書の基材シートに設けられた接着剤層は常温、常圧では接着性がなく、接着剤層同士を対向させた状態で加圧することにより接着性を示し、かつ接着後は再剥離することが可能な接着剤層を有する感圧接着シート(以下、代表的な例である親展葉書用紙ともいう)が使用される。
【0003】
親展葉書を作成するシステムは2方式あり、先糊方式と後糊方式がある。先糊方式は、特開平7−276858号公報(特許文献1)や特開2006−002023号公報(特許文献2)に記載されているように、紙基材表面に接着剤層を有している感圧接着シートに印刷をした後、圧着処理を施し親展葉書とする。すなわち、印刷する前に接着剤層(糊)が塗工紙表面に施されているので「先糊」と呼ばれている。先糊方式で作製された親展葉書の特徴は、接着剤層にシリカ系顔料と天然ゴム系接着剤を使用することが主流なため、剥離後の印刷面がマット系になっている。
【0004】
後糊方式は、特開2002−285106号公報(特許文献3)や特開2006−207076号公報(特許文献4)に記載されているように、塗工紙に印刷をした後、接着剤層を塗布して圧着処理を施し親展葉書とするので「後糊」と呼ばれている。後糊方式で作製された親展葉書の特徴は、接着剤層にクリアーニスを使用することが主流なため、塗工紙の光沢を反映し、剥離後の印刷面をマットの系からグロス系まで選択することができるので、近年、使用頻度が増加してきている。
【0005】
現在、このような後糊方式の親展葉書作製において使用されている塗工紙は、通常、特開平6−158597号公報(特許文献5)記載のような商業用印刷(オフセット印刷)の分野に用いられてきたてきたものを使用することが一般的である。該塗工紙は、通常各種コーターを用いて平均粒子径2ミクロン以下の顔料を基紙の片面あたり10g/m 以上塗布し、その後、カレンダー処理して表面を平滑化して製造されている。
【0006】
しかしながら、一般的な塗工紙で圧着処理を施し親展用葉書を作製したものは、再剥離するまでの長時間(数日間)放置されたり、高い温度環境下で長時間放置されたりした場合等には、接着剤層同士の界面から剥離せずに紙基材が破壊され、親展葉書の役割を果たさないものがある。
【0007】
【特許文献1】特開平7−276858号公報(第2項)
【特許文献2】特開2006−002023号公報(第1項)
【特許文献3】特開2002−285106号公報(第1項)
【特許文献4】特開2006−207076号公報(第1項)
【特許文献5】特開平6−158597号公報(第1項)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、オフセット印刷適性を備え、後糊方式で使用され、圧着後の再剥離力が長期間安定である感圧接着シート用塗工紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の様態を含む。
【0010】
(1)印刷後の塗工紙表面の少なくとも一方の面に接着剤層を設け、前記接着剤層は、互いに強圧処理により接着でき、接着後に接着剤層間で剥離可能である後糊圧着方式での圧着葉書用紙として使用する感圧接着シート用塗工紙において、前記塗工紙が、基紙と、その少なくとも一面上に形成され、かつ顔料およびバインダー樹脂とを主成分として含む塗工層を少なくとも一層有し、前記バインダー樹脂の少なくとも1種類として、ガラス転移温度(Tg)が−20〜40℃のラテックスを用い、かつその配合量が、顔料100質量部に対し5〜30質量部であることを特徴とする感圧接着シート用塗工紙。
【0011】
(2)前記ラテックスが、より好ましくは連続異組成構造を有するスチレン・ブタジエン系共重合ラテックスである。
【0012】
(3)前記塗工紙の表面光沢度が、より好ましくは50%以上である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、オフセット印刷適性を備え、後糊方式で使用され、圧着後の再剥離力が長期間安定である感圧接着シート用塗工紙が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0015】
本発明の感圧接着シート用塗工紙は、基紙と、その少なくとも一面上に形成され、かつ顔料およびバインダー樹脂とを主成分として含む塗工層を少なくとも一層有しており、前記バインダー樹脂の少なくとも1種類として、そのガラス転移温度(以下、Tgとも記す。)が特定範囲内にあるラテックスを、特定範囲内の配合量で用いたことを特徴とする表面光沢度の優れる塗工紙である。
【0016】
該ラテックスのTgは−20〜40℃の範囲内であることが好ましく、−15〜30℃の範囲内であればより好ましい。また、連続異組成構造を有するスチレン・ブタジエン系共重合ラテックスが好ましく使用される。
【0017】
連続異組成構造を有するラテックスとは、ラテックスの中心から最外郭層に向けて連続的に組成が変化している構造のものであり、その種の共重合体ラテックスは示差走査熱量計(DSC)等でガラス転移温度を測定した場合に、ガラス状領域とゴム状領域との間の転移領域の温度幅が広く、特定のガラス転移温度を明確に示さない。製造方法については限定されないが、例えば特開平11−189627号公報(特許文献6)に記載されている方法で得られる。本発明で好ましく用いるスチレン・ブタジエン系共重合ラテックスのモノマー組成は、特に特定されるものではなく、中心部のガラス転移温度が−100℃〜10℃、最外郭のガラス転移温度が−10℃〜100℃となるようにモノマー組成が調整されたものである。
【特許文献6】特開平11−189627号公報
【0018】
また、本発明でいうガラス転移温度とは、例えば、妹尾学・栗田公夫・矢野彰一郎・澤口孝志著「基礎高分子科学」(共立出版株式会社)に記載されているような非晶領域における高分子鎖のセグメントがミクロブラウン運動を開始する温度で、共重合体の場合は、同書第131〜132頁に記載されているFoxの式により計算されるガラス転移温度である。即ち、共重合体のガラス転移温度は次式によって計算されたものである。
【0019】
【数1】

【0020】
前記式において、Tgとは共重合体のガラス転移温度であり、絶対温度に換算して計算される。Tg1、Tg2、…・・、Tgnは、成分1、2、…・・、nのそれぞれのホモポリマー1、2、…・・、nのガラス転移温度であり、絶対温度に換算して計算される。また、W1、W2、…・・、Wnは、共重合体成分中における特定の単量体の重量分率である。
【0021】
前記計算式で算出されるラテックスのTgが−20℃より低い場合は、接着剤層を設けて圧着処理を施し、後糊方式で作成した親展葉書等を、高温度下で長時間放置した場合、ラテックスが軟化してしまうために、接着剤層同士の接着力が、経時的に上昇する傾向が大きくなり、塗工紙基材の塗工層強度を上回ることとなり、再剥離の際に紙基材が破壊されてしまうことがある。また、Tgが40℃より高い場合は、塗工紙製造工程における十分な熱量をラテックスに与える事ができずに成膜性が不十分となり、塗工層強度の弱い塗工紙となってしまう。このためオフセット印刷での問題が生じたり、接着剤層同士の接着力が、塗工紙基材の塗工層強度を上回ることとなり、再剥離の際に紙基材が破壊されてしまうことがある。
【0022】
本発明に用いる連続異組成構造を有するスチレン・ブタジエン系共重合ラテックスは、高温度・圧着下でも軟化しにくい、また塗工層強度が優れたレベルで安定であるので、接着剤層を設けて圧着処理を施した後の、接着剤層同士の接着力、並びに再剥離性の安定性に優れ、好ましく用いることができる。
【0023】
ラテックスの配合量は、顔料100質量部に対し5〜30質量部が好ましく、より好ましくは8〜20質量部である。配合量が5質量部より少ない場合は、塗工紙基材の塗工層強度が接着剤層同士の接着力より低くなり、再剥離の際に紙基材が破壊されてしまうことがある。また、配合量が30質量部より多い場合は、塗工紙製造工程での操業性(洗浄性等)が著しく悪化したり、塗工紙製造原価が大幅にアップする。
【0024】
塗工紙表面の光沢度は50%以上であることが好ましい。光沢度が50%より低い場合は、マット調の塗工面となり、光沢感のあるグロス系塗工面とは言えない。
【0025】
塗工紙の基紙としては、構成するパルプについて、その製法及び種類等に特に限定はない。例えばKPのような化学パルプ、SGP、RGP、BCTMP及びCTMP等の機械パルプ、脱墨パルプのような古紙パルプ、並びにケナフ、竹、藁、麻等のような非木材パルプであってもよく、またポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機合成繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維等の再生繊維、例えばポリノジック繊維並びにガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機質繊維も混用することができる。なお、基紙に用いるパルプとして、ECFパルプ、TCFパルプ等の塩素フリーパルプを用いることが好ましい。
【0026】
また、基紙中には、必要に応じて、填料が配合されていてもよい。填料としては、一般に上質紙に用いられる各種の顔料を用いることができ、例えばカオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト及びスメクタイト等の鉱物質顔料、並びにポリスチレン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂及び塩化ビニリデン系樹脂の微小中空粒子、密実型粒子および貫通孔型粒子などの有機顔料が挙げられる。
【0027】
なお、基紙の抄紙時に、その紙料中に、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、パルプ繊維や填料の他に、従来から使用されている各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤や内添サイズ剤等の各種抄紙用内添助剤を必要に応じて適宜選択して使用することができる。さらに染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤も必要に応じて適宜添加することができる。
【0028】
基紙の抄紙方法については特に限定はなく、例えば抄紙pHが4.5付近で行われる酸性抄紙法、炭酸カルシウム等のアルカリ性填料を主成分として含み、抄紙pH約6の弱酸性から抄紙pH約9の弱アルカリ性で行われる中性抄紙法等の、全ての抄紙方法を適用することができ、抄紙機も長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、丸網抄紙機、ヤンキー抄紙機等を適宜使用することができる。
【0029】
塗工紙の塗工層用顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、微粒子状珪酸カルシウム、微粒子状炭酸マグネシウム、微粒子状軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、サチンホワイト、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物材料からなる顔料や、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、並びにこれらの微小中空粒子や貫通孔型の有機材料からなる有機顔料等が挙げられる。本発明では、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、構造性カオリン、微粒子状軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、サチンホワイトが好ましく使用され、これら顔料の中から1種類あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。
【0030】
併用する塗工層用バインダー樹脂としては、例えばデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、ジイソブチレン・無水マレイン酸共重合体塩、スチレン・無水マレイン酸共重合体塩、エチレン・アクリル酸共重合体塩、スチレン・アクリル酸共重合体塩、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、アクリル樹脂系ラテックス、ポリウレタン系ラテックス、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系重合体や共重合体類、スチレン・ブタジエン系、メチルメタクリレート・ブタジエン樹脂系等の合成ゴムラテックス、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、オレフィン・無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。本発明で好ましくは、製紙用ラテックスとして使用されている、スチレン・ブタジエン系、メチルメタクリレート・ブタジエン樹脂系等の合成ゴムラテックスが好ましい。本発明では前記バインダー樹脂の中から1種類あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。
【0031】
また各種助剤、例えば界面活性剤、pH調節剤、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、ワックス類、分散剤、流動変性剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、耐水化剤、可塑剤、滑剤、防腐剤及び香料等の少なくとも1種が必要に応じて適宜含まれていてもよい。特に本発明では、塗工紙の塗工層中に含まれるアルカリイオンや水溶性の塩を少なくしたいため、pH調整剤等の配合は極力控えたほうが良い。
【0032】
本発明の感圧接着シート用塗工紙において、基紙に設けられる塗工層の塗工量は、6〜20g/mが好ましい。塗工量が6g/mより少ない場合は、基紙表面の凹凸を十分に被覆できずに、平滑度を適性化できないことがある。また、20g/mより多い場合では、塗工時の乾燥性が悪くなるなど、操業性が低下し、製造原価も高くなるおそれがある。
【0033】
塗工層を形成するための塗工方法としては、一般に従来の塗工装置、例えばブレードコーター、エヤーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、ツーロール、並びにメータリングブレード式のサイズプレスコーター、ビルブレードコーター、ショートドウェルコーター、ゲートロールコーター等の塗工装置を適宜に用いることができる。
【0034】
前記塗工層を設けた塗工基材に平滑化処理を施す際には、通常のスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ等の平滑化処理装置を用いて行われる。前記平滑化処理はオンマシンやオフマシンで適宜施されてもよく、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温等も通常の平滑化処理装置に応じて適宜調節される。なお、支持体表面に予め顔料と接着剤とからなる塗工層が設けられた市販の用紙を用いることも出来る。
【0035】
本発明の塗工紙基材は、オフセット印刷だけではなく、オンデマンド出版物の分野において、比較的手軽で、また少部数、また1部単位からの可変情報への対応が可能であり、特に可変情報部(個人の宛名、顧客の好む品々の情報、請求書料金等)を、電子写真方式、インクジェット方式のプリンターで印字することも可能である。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、勿論本発明はこれに限定されるものではない。実施例において示す「部」および「%」は、特に明示の無い限り、質量部および質量%である。
【0037】
(実施例1)
[基紙の製造]
LBKP(CSFフリーネス550ml)100質量部のパルプスラリーに、紙力剤としてポリアクリルアミド系樹脂(商品名:PS194−7、荒川化学社製)0.2質量部、湿潤紙力増強剤としてポリアミド・エピクロルヒドリン系樹脂(商品名:WS570、日本PMC社製)0.2質量部、硫酸バンド1質量部を添加し、これらの混合物を白水で希釈してpH5.3、固形分濃度1.1%の紙料を調製した。この紙料を、長網抄紙機に供して抄紙し、得られた湿紙に、酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)を濃度6%で含むサイズプレス液を、サイズプレス装置で塗布量が乾燥質量で2g/mとなるように塗布し、乾燥して、さらにマシンカレンダを用いて平滑度が50秒になるように平滑化処理を施して、坪量が83g/mの基紙を製造した。
【0038】
[塗工液−1の調整]
カオリン(商品名:アマゾンプラスSD、CADAM社製)60質量部と軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−121、奥多摩工業社製)40質量部に分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンT−50、東亜合成社製)0.1質量部を加え、コーレス分散機を用いて水分散して顔料スラリーを調整した。この顔料スラリーに酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)3質量部およびSBRラテックス(商品名:ナルスターSR−103、日本A&L社製、Tg=5℃)10質量部を添加攪拌し、さらに水を加えて、固形分濃度60%の塗工液を調整した。
【0039】
[塗工紙の作製]
得られた塗工液−1を、前記基紙の両面に、ブレードコーターを用いて片面当たり乾燥塗布量が12g/mとなるように塗工し、スーパーカレンダー処理を施し、塗工層の光沢度が所定の値となるように、坪量107g/mの塗工紙を得た。
【0040】
[評価方法]
[光沢度の測定方法]
得られた塗工紙を光沢度計により(JIS−Z8741記載)入射角75度での光沢度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0041】
[オフセット印刷性の評価]
得られた塗工紙を、RI印刷試験機(型式:RI−1、石川島産業機械社製)で、テストインキ(商品名:Printing Ink紙試験用SD50紅B T=13、T&K TOKA社製)を0.5g/金属ロールにより展色胴を回転させ印刷した。印刷物の表面状態を目視観察し表面が破れ(紙ムケ)状態を5段階評価し3点以上を実用レベルとした。
5点:一般塗工紙と同等に紙表面が破れない(紙ムケしない)もの
4点:極く僅か紙表面に乱れがみられるが(紙ムケしていない)良好なレベル
3点:若干紙表面が破れている(紙ムケしている)が実用上問題ないレベル
2点:紙表面が破れている(紙ムケしている)実用上問題あるレベル
1点:紙表面が全面で破れている(紙ムケしている)
【0042】
[親展葉書の作製]
得られた塗工紙に、UV硬化型圧着ニス(ダイキュアクリヤー UV−1451、DIC社製)をメイヤーバーにて3g/m(固形分)塗布し、高圧水銀ランプ80W/cm、速度10m/分で照射処理し、接着剤層を形成した。その後、接着剤層が対向するように二つ折りにして葉書サイズになるように断裁し、ドライシーラー(形式:6860、トッパンフォームズ社製)を用い、ロール間隔180μmに設定したプレスロールを通過させて圧着し、親展葉書を作製した。
【0043】
[親展葉書の圧着直後の剥離評価]
得られた親展葉書を100mm巾に断裁し、T字剥離(剥離速度300mm/分)で圧着直後の接着力(剥離力)を評価した。
測定値 100〜300gf 十分な剥離力で実用レベル
測定値 301gf 以上 剥離力が強すぎて、親展葉書の再剥離時に塗工紙基材が
破壊される虞がある
測定値 100gf 未満 剥離力が弱すぎて、親展葉書配送中に剥がれる虞がある
【0044】
[親展葉書の高温放置後の剥離評価]
得られた親展葉書を100mm巾に断裁し、40℃、60%RHの恒温恒湿器に1週間放置した後、T字剥離(剥離速度300mm/分)で高温放置後の接着力(剥離力)を評価した。
測定値 100〜300gf 十分な剥離力で実用レベル
測定値 301gf 以上 剥離力が強すぎて、親展葉書の再剥離時に塗工紙基材が
破壊される虞がある
測定値 100gf 未満 剥離力が弱すぎて、親展葉書配送中に剥がれる虞がある
【0045】
(実施例2)
[塗工液−2の調整]
塗工液−1において、SBRラテックス(商品名:ナルスターSR−142、日本A&L社製、Tg=−10℃)10質量部のみを変更し、固形分濃度60%の塗工液を調整した。その後、実施例1と同様に坪量107g/mの塗工紙を作製、評価を行い、表1に結果を示した。
【0046】
(実施例3)
[塗工液−3の調整]
塗工液−1において、連続異組成構造SBRラテックス(商品名:OJ−1000、JSR社製、Tg=−7℃)10質量部のみを変更し、固形分濃度60%の塗工液を調整した。その後、実施例1と同様に坪量107g/mの塗工紙を作製、評価を行い、表1に結果を示した。
【0047】
(実施例4)
[塗工液−4の調整]
塗工液−1において、連続異組成構造SBRラテックス(商品名:OJ−1000H、JSR社製、Tg=−14℃)10質量部のみを変更し、固形分濃度60%の塗工液を調整した。その後、実施例1と同様に坪量107g/mの塗工紙を作製、評価を行い、表1に結果を示した。
【0048】
(実施例5)
[塗工液−5の調整]
塗工液−1において、連続異組成構造SBRラテックス(商品名:AT−008、旭化成ケミカルズ社製、Tg=22℃)10質量部のみを変更し、固形分濃度60%の塗工液を調整した。その後、実施例1と同様に坪量107g/mの塗工紙を作製、評価を行い、表1に結果を示した。
【0049】
(実施例6)
[塗工液−6の調整]
塗工液−3において、連続異組成構造SBRラテックス(商品名:AT−008、旭化成ケミカルズ社製、Tg=22℃)15質量部のみを変更し、固形分濃度60%の塗工液を調整した。その後、実施例1と同様に坪量107g/mの塗工紙を作製、評価を行い、表1に結果を示した。
【0050】
(比較例1)
[塗工液−7の調整]
塗工液−1において、SBRラテックス(商品名:ナルスターSR−114、日本A&L社製、Tg=−36℃)10質量部のみを変更し、固形分濃度60%の塗工液を調整した。その後、実施例1と同様に坪量107g/mの塗工紙を作製、評価を行い、表1に結果を示した。
【0051】
(比較例2)
[塗工液−8の調整]
塗工液−1において、SBRラテックス(商品名:LX407BP6、日本ゼオン社製、Tg=70℃)10質量部のみを変更し、固形分濃度60%の塗工液を調整した。その後、実施例1と同様に坪量107g/mの塗工紙を作製、評価を行い、表1に結果を示した。
【0052】
(比較例3)
[塗工液−9の調整]
塗工液−1において、SBRラテックス(商品名:ナルスターSR−103、日本A&L社製、Tg=5℃)6質量部のみを変更し、固形分濃度60%の塗工液を調整した。その後、実施例1と同様に坪量107g/mの塗工紙を作製、評価を行い、表1に結果を示した。
【0053】
【表1】

【0054】
表1が明らかに示しているように、本発明に係る感圧接着シート用塗工紙は、白紙光沢が高く、オフセット印刷が可能で、かつ、後糊方式の親展葉書作製に適した剥離力を発現できるものである(実施例1〜6)。しかし、本発明のラテックスのTgおよび配合量が所定範囲内でない場合、後糊方式の親展葉書作製に適した剥離力を発現できないものである(比較例1〜3)。本発明は、オフセット印刷でき、かつ高い白紙光沢を有する、後糊方式での親展葉書作製用の感圧接着シート用塗工紙を得るものであり、実用上極めて有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷後の塗工紙表面の少なくとも一方の面に接着剤層を設け、前記接着剤層は、互いに強圧処理により接着でき、接着後に接着剤層間で剥離可能である後糊圧着方式での圧着葉書用紙として使用する感圧接着シート用塗工紙において、前記塗工紙が、基紙と、その少なくとも一面上に、顔料およびバインダー樹脂とを主成分とする一層以上の塗工層とを設けて形成され、前記バインダー樹脂の少なくとも1種類として、ガラス転移温度−20〜40℃のラテックスを用い、かつその配合量が、顔料100質量部に対し5〜30質量部であることを特徴とする感圧接着シート用塗工紙。
【請求項2】
前記ラテックスが、連続異組成構造を有するスチレン・ブタジエン系共重合ラテックスである請求項1に記載の感圧接着シート用塗工紙。
【請求項3】
前記塗工紙表面の光沢度が50%以上である請求項1、2に記載の感圧接着シート用塗工紙。

【公開番号】特開2009−209494(P2009−209494A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55664(P2008−55664)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】