説明

感圧接着シート用塗工紙

【課題】 高い白紙光沢を有し、かつ高湿環境下においても安定した剥離力を保持する後糊方式での親展葉書作製用の感圧接着シート用塗工紙基材を提供する。
【解決手段】 印刷後の塗工紙表面の少なくとも一方の面に接着剤層を設け、互いに強圧処理により接着し、再剥離可能である後糊圧着方式で使用する感圧接着シート用塗工紙において、前記塗工紙が、基紙と、その少なくとも一面上に顔料およびバインダー樹脂とを主成分として含む塗工層を少なくとも一層有し、前記基紙が、密度0.65g/cm以上、表面平滑度10〜100秒、表面サイズ度2〜200秒、内部結合強さ200J/m以上であり、かつ塗工層表面の75°における光沢度が50%以上である感圧接着シート用塗工紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧接着シート用塗工紙に関するものである。詳しくは、オフセット印刷適性、インクジェット記録適性を兼ね備え、且つ塗工紙上にさらに接着剤層を設けてなる三つ折りもしくは二つ折り葉書等各種葉書システムに用いられる後糊方式で使用する感圧接着シート用塗工紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
郵便法の改正に伴い必要情報を記録したシートを二つ折り、又は三つ折りに折り畳み、親展性を持つ葉書システムが実用化され普及している。このような親展性を持つ葉書の基材シートに設けられた接着剤層は常温、常圧では接着性がなく、接着剤層同士を対向させた状態で加圧または加熱加圧することにより接着性を示し、且つ接着後は再剥離することが可能な接着剤層を有する感圧接着シート(以下、代表的な例である親展葉書用紙ともいう)が使用される。
【0003】
親展葉書を作成するシステムは2方式あり、先糊方式と後糊方式がある。先糊方式は、特開平7−276858号公報(特許文献1)や特開2006−002023号公報(特許文献2)に記載されているように、紙基材表面に接着剤層を有している感圧接着シートに印刷をした後、圧着処理を施し親展葉書とする。すなわち、印刷する前に接着剤層(糊)が塗工紙表面に施されているので「先糊」と呼ばれている。先糊方式で作製された親展葉書の特徴は、接着剤層にシリカ系顔料と天然ゴム系接着剤を使用することが主流なため、剥離後の印刷面がマット系になっている。
【0004】
後糊方式は、特開2002−285106号公報(特許文献3)や特開2006−207076号公報(特許文献4)に記載されているように、塗工紙に印刷をした後、接着剤層を塗布して圧着処理を施し親展葉書とするので「後糊」と呼ばれている。後糊方式で作製された親展葉書の特徴は、接着剤層にクリアーニスを使用することが主流なため、塗工紙の光沢を反映し、剥離後の印刷面をマットの系からグロス系まで選択することができるので、近年使用頻度が増加してきている。
【0005】
一方、近年インクジェット方式の高速化、高画質化が進んでいることから、これまでの印刷方法で作製した印刷物に可変情報を追加記録する傾向が顕著になってきている。
【0006】
現在、このような後糊方式の親展葉書作製において使用されている塗工紙は、通常、特開平7−189179号公報(特許文献5)記載のような商業用印刷(オフセット印刷)の分野に用いられてきたてきたものを使用することが一般的であった。該塗工紙は、通常各種コーターを用いて、顔料、バインダー等を含む塗工層用塗料を基紙の片面あたり10g/m2 以上塗布し、その後、カレンダー処理して表面を平滑化して製造されている。
【0007】
したがって、これら一般的な塗工紙はオフセット印刷を主眼においているため、後塗り方式の圧着安定性に乏しく、初期の剥離力が得られないものや、剥離面から剥離せずに、はがき基材が破壊してしまう等の問題が発生するため、満足な後糊圧着方式による感圧接着シート用塗工紙は得られていない。
【0008】
また、一般的な塗工紙はインクジェットインクの吸収性も極めて低いため、にじみの発生や乾燥不良によるインク汚れが発生するため高速インクジェット記録が困難であり、満足なものが得られていないのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特開平7−276858号公報(第1項)
【特許文献2】特開2006−002023号公報(第1項)
【特許文献3】特開2002−285106号公報(第1項)
【特許文献4】特開2006−207076号公報(第1項)
【特許文献5】特開平7−189179号公報(第1項)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高い白紙光沢を有し、オフセット印刷適性、インクジェット記録適性を兼ね備え、且つ高湿環境下においても安定した剥離力を保持する後糊方式での親展葉書作製用の感圧接着シート用塗工紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の様態を含む。
【0012】
(1)印刷後の塗工紙表面の少なくとも一方の面に接着剤層を設け、前記接着剤層は、互いに強圧処理により接着でき、接着後に接着剤層間で剥離可能である後糊圧着方式での圧着葉書用紙として使用する感圧接着シート用塗工紙において、前記塗工紙が、基紙と、その少なくとも一面上に、顔料およびバインダー樹脂を主成分とする一層以上の塗工層とを設けて形成され、前記基紙の表面の王研式平滑度(J.TAPPI No5)が10〜100秒、かつ前記基紙が、ステキヒトサイズ度(JIS−P8122)2〜200秒、密度0.65g/cm以上、内部結合強さ(TAPPI T833)、200J/m以上であり、さらに前記塗工層表面の75°における白紙光沢度(JIS−P8142)が50%以上であることを特徴とする感圧接着シート用塗工紙。
(2)前記塗工層において、最表層の塗工層に含まれる顔料中、カオリンが50質量%以上、軽質炭酸カルシウムが10〜50質量%であり、かつ該塗工層表面の白紙光沢度(JIS−P8122)が60%以上であることが好ましい。
(3)前記顔料およびバインダー樹脂を主成分として含む塗工層が前記基紙にブレードコーターにて形成されることが好ましい。
(4)前記塗工紙の密度が1.05〜1.30g/cmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、高い白紙光沢を有し、オフセット印刷適性、インクジェット記録適性を兼ね備え、且つ安定した剥離力を保持する後糊方式での親展葉書作製用の感圧接着シート用塗工紙を得るものであり、実用上極めて有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳しく説明する。本発明の感圧接着シート用塗工紙は、基紙と、その少なくとも一面上に形成され、かつ顔料およびバインダー樹脂とを主成分として含む塗工層を少なくとも一層有しており、前記基紙の密度、表面平滑度、表面サイズ度、内部結合強さ、ならびに前記塗工層の表面光沢度が特定範囲内であることを特徴とする。
【0015】
基紙の密度としては、0.65g/cm以上であることが好ましい。密度が0.65g/cmより小さい場合、圧着加工時に、基紙部分がつぶれることにより、ニス層表面にも微小な凹凸が発生するため、剥離後のニス表面の光沢が損なわれてしまう。また、塗工層塗工後にスーパーカレンダ等の平滑化処理を行うことによって、密度調整は可能であるが、過度の加工条件ではインクジェットインク吸収性が低下してしまうため、好ましくない。さらに好ましくは0.70g/cm以上である。基紙表面の平滑度は10〜100秒であることが好ましい。平滑度が10秒より低い場合、塗工層を形成する際の塗工量ムラが起こる。塗工層の塗工量ムラは接着剤層を塗布した際、接着剤層の塗工層への浸透ムラを誘発し、圧着加工後、適正な接着力が得られなくなってしまうことや、塗工層表面、接着剤層表面の均一な光沢度が得られなくなることがある。平滑度が100秒を超える場合、本発明で好ましいブレードコーターによる塗工方式では、ストリーク等のトラブルを発生しやすくなるため好ましくない。なお、平滑度の測定方法は王研式平滑度計(J.TAPPI No5)にて行う。
【0016】
平滑度の調整方法としては、湿紙状態でのプレス、乾燥後のカレンダー掛け等が挙げられるが、もちろんこれらに限定するものではない。
【0017】
一般的な塗工紙を後糊方式の感圧接着シート用塗工紙に用いた場合に発生する、剥離面から剥離せずにはがき基材が破壊してしまう問題について、特に湿度が高い環境で発生しやすいことが経験的に知られている。剥離力の発現は、水分が関わっていると考えられているが、この剥離力の増大の原因は剥離面に存在する過剰な水分によるものと考えられる。本発明者等は、剥離面の水分は、主に圧着物の端面の基紙部分から浸入して、塗工層、感圧接着剤層を通って、剥離面に供給されると考えた。そこで、基紙の表面サイズ度を2〜200秒に調整することによって、水分供給を抑制することにより、剥離力の経時安定性が得られることを見出した。表面サイズ度が2秒より低い場合は、基紙中への水分侵入を十分に抑制できずに、剥離面に過剰の水分が供給されてしまい、剥離力は経時的に増大し、基材破壊等の問題を起こす恐れがある。また、表面サイズ度が200秒を超える場合は、剥離面への水分供給が極端に減少するため、十分な剥離面間の接着力が得られない。より好ましいサイズ度は4〜100秒である。
【0018】
基紙のサイズ度の測定方法としては、ステキヒトサイズ法(JIS P−8122)が用いられる。なお、サイズ度2秒未満とは、試験紙を2%チオシアン酸アンモニウム水溶液に浮かべた段階で、直ちにチオシアン酸アンモニウム水溶液が基紙上面まで浸透する状態とする。
【0019】
基紙のサイズ度は、例えば原料中に含有される内添サイズ剤や、サイズプレス塗工機で塗工される表面サイズ剤をそれぞれ単独または組み合わせて所定のサイズ度に調整される。内添サイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸系の中性サイズ剤等のサイズ剤が使用でき、硫酸バンド、カチオン化デンプン等、適当なサイズ剤と定着剤を組み合わせて使用する。表面サイズ剤としては、上記内添サイズで使用したものの他、スチレン・マレイン酸共重合体、スチレン・アクリル酸共重合体、スチレン・メタクリル酸共重合体等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0020】
さらに、本発明では、剥離時の基紙破壊を起こさないために、基材のTAPPI T833における内部結合強さを00J/m以上に調整するものである。内部結合強さは、例えば抄造時にバインダー・紙力増強剤を添加することによって調整される。バインダーとしては、例えば各種デンプン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子が挙げられる。また、紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド等が挙げられる。さらに、本発明では湿潤紙力増強剤も併用可能である。湿潤紙力増強剤としては、例えばポリアミド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド・ポリアミン・エピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂等が挙げられる。内部結合強さについては、500J/mがさらに好ましい。
【0021】
塗工紙の基紙としては、構成するパルプについて、その製法及び種類等に特に限定はない。例えばKPのような化学パルプ、SGP、RGP、BCTMP及びCTMP等の機械パルプ、脱墨パルプのような古紙パルプ、並びにケナフ、竹、藁、麻等のような非木材パルプであってもよく、またポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機合成繊維、再生繊維、例えばポリノジック繊維並びにガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機質繊維も混用することができる。なお、基紙に用いるパルプとして、ECFパルプ、TCFパルプ等の塩素フリーパルプを用いることが好ましい。
【0022】
また、基紙中には、必要に応じて、填料が配合されていてもよい。填料としては、一般に上質紙に用いられる各種の顔料を用いることができ、例えばカオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト及びスメクタイト等の鉱物質顔料、並びにポリスチレン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂及び塩化ビニリデン系樹脂の微小中空粒子、密実型粒子および貫通孔型粒子などの有機顔料が挙げられる。
【0023】
なお、基紙の抄紙時に、その紙料中に、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、パルプ繊維や填料の他に、従来から使用されている各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤等の各種抄紙用内添助剤を必要に応じて適宜選択して使用することができる。さらに染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤も必要に応じて適宜添加することができる。
【0024】
基紙の抄紙方法については特に限定はなく、例えば抄紙pHが4.5付近で行われる酸性抄紙法、炭酸カルシウム等のアルカリ性填料を主成分として含み、抄紙pH約6の弱酸性から抄紙pH約9の弱アルカリ性で行われる中性抄紙法等の、全ての抄紙方法を適用することができ、抄紙機も長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、丸網抄紙機、ヤンキー抄紙機等を適宜使用することができる。
【0025】
塗工紙の塗工層顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、微粒子状珪酸カルシウム、微粒子状炭酸マグネシウム、微粒子状軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、サチンホワイト、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物材料からなる顔料や、ポリスチレン樹脂、スチレン・アクリル共重合樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、並びにこれらの微小中空粒子や貫通孔型の有機材料からなる有機顔料等が挙げられる。本発明では、塗工層が単層の場合は、塗工層中、複数設ける場合は特に最表層の塗工層に含まれる顔料としては、全顔料中、上記カオリンを50質量%以上、且つ軽質炭酸カルシウムを10〜50質量%に調整することによって、高光沢と高速インクジェット記録適性、さらには後糊圧着適性も得られやすいため好ましいが、もちろん上記選択に限定するものではない。これら顔料は数種類を適宜組合せて用いることができる。
【0026】
塗工層バインダー樹脂としては、例えばデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、ジイソブチレン・無水マレイン酸共重合体塩、スチレン・無水マレイン酸共重合体塩、エチレン・アクリル酸共重合体塩、スチレン・アクリル酸共重合体塩、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、アクリル樹脂系ラテックス、ポリウレタン系ラテックス、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系重合体や共重合体類、スチレン・ブタジエン系、メチルメタクリレート・ブタジエン樹脂系等の合成ゴムラテックス、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、オレフィン・無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。本発明では前記顔料バインダー樹脂の中から1種類あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。塗工層バインダー樹脂の使用量としては、特に限定されるものではないが、感圧接着剤の浸透は抑えて、インクジェットインクは吸収させるためには、例えば、塗工層中に5〜30質量%添加させることが好ましく、8〜20質量%がさらに好ましい。
【0027】
また各種助剤、例えば界面活性剤、pH調節剤、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、ワックス類、分散剤、流動変性剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、耐水化剤、可塑剤、滑剤、防腐剤及び香料等の少なくとも1種が必要に応じて適宜含まれていてもよい。特に本発明では、塗工紙の塗工層中に含まれるアルカリイオンや水溶性の塩を少なくしたいため、pH調整剤等の配合は極力控えたほうが良い。
【0028】
本発明の感圧接着シート用塗工紙において、基紙に設けられる塗工層の塗工量は、6〜30g/m好ましい。塗工量が6g/mより少ない場合は、基紙表面の凹凸を十分に被覆できずに、平滑度を適性化できないことがある。また、30g/mより多い場合では、塗工時の乾燥性が悪くなるなど、操業性が低下し、製造原価も高くなるおそれがある。
【0029】
塗工層を形成するための塗工方法としては、一般に従来の塗工装置、例えばブレードコーター、エヤーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、ツーロール、並びにメータリングブレード式のサイズプレスコーター、ビルブレードコーター、ショートドウェルコーター、ゲートロールコーター等の塗工装置を適宜に用いることができる。なかでも、高濃度塗料を高速塗工できるブレードコーターは、塗工層のバインダー樹脂の基紙へのしみこみが小さく抑えられるため、前記バインダー樹脂の使用量で塗工層上に形成される感圧接着剤層が均一な層となり、且つ十分なインクジェットインク吸収性が得られるため好ましい。
【0030】
前記塗工層を設けた塗工基材に平滑化処理を施す際には、通常のスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ等の平滑化処理装置を用いて行われる。前記平滑化処理はオンマシンやオフマシンで適宜施されてもよく、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温等も通常の平滑化処理装置に応じて適宜調節される。塗工紙表面の光沢度は50%以上であることが好ましい。光沢度が50%より低い場合は、感圧接着剤層を設けても面質が荒れたものとなり、高品位のニス塗工面は得られないため好ましくない。より好ましくは、60%以上である。また、塗工紙としての密度は特に限定するものではないが、好ましくは、1.05〜1.30g/cmに調整することにより、圧着物の剥離後、高いニス面光沢度が得られる。より好ましくは、1.10〜1.25g/cmである。1.05g/cmに満たない場合は、圧着加工時に原紙地合いムラや、塗工ムラの影響がニス面の表面性に影響を及ぼし、高いニス面光沢度が得られない恐れがある。また、1.30g/cmを超える場合は、インクジェットインク吸収性が低下する恐れがあるため、好ましくない。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、勿論本発明はこれに限定されるものではない。実施例において示す「部」および「%」は、特に明示の無い限り、質量部および質量%である。
【0032】
(実施例1)
[基紙の製造]
LBKP(CSFフリーネス450ml)90質量部、NBKP(CSFフリーネス450ml)10質量部のパルプスラリーに、内添サイズ剤としてアルケニル無水コハク酸(商品名:ファイブラン81、ナショナルスターチ社製)0.05質量部、紙力増強剤としてポリアクリルアミド系樹脂(商品名:PS194−7、荒川化学社製)0.2質量部、湿潤紙力増強剤としてポリアミド・エピクロルヒドリン系樹脂(商品名:WS570、日本PMC社製)0.2質量部、硫酸バンド0.6質量部を添加し、これらの混合物を白水で希釈してpH5.3、固形分濃度1.1%の紙料を調製した。この紙料を、長網抄紙機に供して抄紙し、得られた湿紙に、スチレン・マレイン酸共重合体(商品名:ポリマロン385、荒川化学工業社製)0.2部、酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)を濃度5.5%で含むサイズプレス液を、サイズプレス装置で塗布量が乾燥質量で2g/mとなるように塗布し、乾燥して、さらにマシンカレンダを用いて平滑度が30秒(J.TAPPI−5記載)になるように平滑化処理を施して、坪量が100g/m2の基紙を製造した。得られた基紙の密度は0.72g/cm、ステキヒトサイズ度は20秒、内部結合強さは400J/mであった。
【0033】
[塗工液の調製]
カオリン(商品名:アマゾンプラスSD、CADAM社製)70質量部と軽質炭酸カルシウム(商品名:コーラルブライト、矢橋工業社製)30質量部に分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンT−50、東亜合成社製)0.1質量部を加えコーレス分散機を用いて水分散して顔料スラリーを調整した。この顔料スラリーに酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)3質量部およびSBRラテックス(商品名:スマーテックスPA−5703C、日本A&L社製)10質量部を添加攪拌し、さらに水を加えて、固形分濃度60%の塗工液を調整した。
【0034】
[塗工紙の作製]
得られた塗工液を、前記基紙の両面に、ブレードコーターを用いて片面当たり乾燥塗布量が14g/mなるように塗工し、スーパーカレンダ処理を施し、坪量128g/mの塗工紙を得た。塗工紙の密度は1.12g/cmであった。
(実施例2)
実施例1の基紙の製造において、サイズプレス液中にスチレン・マレイン酸共重合体を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして基紙を製造した。なお、得られた基紙の密度は0.72g/cm、ステキヒトサイズ度は15秒、内部結合強さは400J/mであった。
得られた基紙を用いて、実施例1と同様にして坪量128g/mの塗工紙を得た。塗工紙の密度は1.12g/cmであった。
(実施例3)
実施例1の基紙の製造において、内添サイズ剤を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして基紙を製造した。なお、得られた基紙の密度は0.72g/cm、ステキヒトサイズ度は4秒、内部結合強さは400J/mであった。得られた基紙を用いて、実施例1と同様にして坪量128g/mの塗工紙を得た。塗工紙の密度は1.12g/cmであった。
(実施例4)
実施例1の基紙の製造において、内添サイズ剤の添加量を0.05質量部から0.08質量部に増やし、且つサイズプレス液中のスチレン・マレイン酸共重合体の添加量を0.2質量部から0.5質量部に増やした以外は実施例1と同様にして基紙を製造した。なお、得られた基紙の密度は0.72g/cm、ステキヒトサイズ度は80秒、内部結合強さは400J/mであった。得られた基紙を用いて、実施例1と同様にして坪量128g/mの塗工紙を得た。塗工紙の密度は1.12g/cmであった。
(実施例5)
実施例1の塗工液の調製において、カオリンの使用量を70質量部から40質量部に減らし、且つ軽質炭酸カルシウムの使用量を30質量部から60質量部に増やした以外は実施例1と同様にして塗工液を得た。得られた塗工液を用いて、実施例1と同様にして坪量128g/mの塗工紙を得た。塗工紙の密度は1.08g/cmであった。
(実施例6)
実施例1の塗工液の調製において、カオリンの使用量を70質量部から95質量部に増やし、且つ軽質炭酸カルシウムの使用量を30質量部から5質量部に減らした以外は実施例1と同様にして塗工液を得た。得られた塗工液を用いて、実施例1と同様にして坪量128g/mの塗工紙を得た。塗工紙の密度は1.21g/cmであった。
(実施例7)
実施例1の塗工液の調製において、軽質炭酸カルシウム30質量部の代わりに、重質炭酸カルシウム(FMT−OP2a、ファイマテック社製)30質量部を用いた以外は
実施例1と同様にして塗工液を得た。得られた塗工液を用いて、実施例1と同様にして坪量128g/mの塗工紙を得た。塗工紙の密度は1.17g/cmであった。
(実施例8)
実施例1の塗工液の調製において、さらに調整水を加えて固形分濃度を40%に調整した。得られた塗工液を、バーコーターを用いて片面当たり乾燥塗布量が14g/mなるように塗工し、スーパーカレンダ処理を施し、坪量128g/mの塗工紙を得た。塗工紙の密度は1.05g/cmであった。
(比較例1)
実施例1の基紙の製造において、内添サイズ剤を使用せず、且つサイズプレス液中にスチレン・マレイン酸共重合体を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして基紙を製造した。なお、得られた基紙の密度は0.72g/cm、ステキヒトサイズ度は0秒であった。得られた基紙を用いて、実施例1と同様にして坪量128g/mの塗工紙を得た。塗工紙の密度は1.12g/cmであった。
(比較例2)
実施例1の基紙の製造において、内添サイズ剤の添加量を0.05質量部から0.12質量部に増やし、且つサイズプレス液中のスチレン・マレイン酸共重合体の添加量を0.2質量部から1.0質量部に増やした以外は実施例1と同様にして基紙を製造した。なお、得られた基紙の密度は0.72g/cm、ステキヒトサイズ度は220秒、内部結合強さは300J/mであった。得られた基紙を用いて、実施例1と同様にして坪量128g/mの塗工紙を得た。塗工紙の密度は1.12g/cmであった。
(比較例3)
実施例1の基紙の製造において、マシンカレンダ条件の調整により、表面平滑度を5秒としたこと以外は実施例1と同様にして基紙を製造した。なお、得られた基紙の密度は0.60g/cm、ステキヒトサイズ度は20秒、内部結合強さは350J/mであった。得られた基紙を用いて、実施例1と同様にして坪量128g/mの塗工紙を得た。塗工紙の密度は0.95g/cmであった。

(比較例4)
実施例1の基紙の製造において、ポリアクリルアミド系樹脂(商品名:PS194−7、荒川化学社製)、ポリアミド・エピクロルヒドリン系樹脂(商品名:WS570、日本PMC社製)を使用しなかった以外は実施例1と同様にして基紙を製造した。なお、得られた基紙の密度は0.72g/cm、ステキヒトサイズ度は20秒、内部結合強さは100J/mであった。得られた基紙を用いて、実施例1と同様にして坪量128g/mの塗工紙を得た。塗工紙の密度は1.12g/cmであった。
【0035】
得られた塗工紙について以下の評価を行い、結果を表1に示した。
【0036】
[評価方法]
【0037】
[親展葉書作製および剥離評価1]
得られた塗工紙に、UV硬化型圧着ニス(ダイキュアクリアーUV−1450HB,大日本インキ社製)をメイヤーバーにて3g/m固形分)塗布し、高圧水銀ランプ80W/cmで、10m/分のスピードで照射処理し接着剤層を形成した。その後、接着剤層が対向するように二つ折りにして葉書サイズになるように断裁し、ドライシーラー(形式:6860、トッパンフォームズ社製)を用い、ロール間隔215μmに設定したプレスロールを通過させて圧着し、親展葉書を作製した。得られた親展葉書を100mm巾に断裁し、T字剥離(剥離速度300mm/分)で圧着直後の接着力(剥離力)を評価した。
測定値 100〜300gf 十分な剥離力で実用レベル
測定値 301gf 以上 剥離力が強すぎて、塗工紙基材が破壊される懸念がある
測定値 100gf 未満 剥離力が弱すぎて、親展葉書配送中に剥がれる懸念がある
【0038】
[剥離評価2]
上記親展葉書作成と同様の方法で作成した親展葉書を40℃、90%の環境下に1日放置後、100mm巾に断裁し、T字剥離(剥離速度300mm/分)で圧着直後の接着力(剥離力)を評価した。
[塗工層表面の光沢度の測定]
得られた塗工紙の表面光沢を光沢度計により(JIS−Z8741記載)入射角75度で測定した。
[感圧接着剤塗工面の光沢度の測定]
得られた塗工紙に、上記親展葉書作製と同様にして接着剤層を形成させた。得られた接着剤層の表面光沢を光沢度計により(ISO 2813記載)入射角20度で測定した。
[インクジェットインク吸収性の評価]
得られた塗工紙を市販のインクジェットプリンター(機種:PM−800C、エプソン社製)でモノクロ印字して、直後の印字部に上質紙をあてて、インクの移りを5段階評価し3点以上を実用レベルとする。
5点:全く上質紙にインクが移らない
4点:上質紙へのインク移りが、殆どなく、問題ないレベル
3点:若干、上質紙にインクが移るが、実用上問題ないレベル
2点:上質紙にインクが移りが有り、実用上問題となるレベル
1点:上質紙にインクが多く移る
【0039】
【表1】

表1が明らかに示しているように、本発明に係る感圧接着シート用塗工紙は、所定の基紙密度、基紙表面平滑度、基紙表面サイズ度、基紙内部結合強さであることで、後糊方式の親展葉書作製に適した剥離力を発現できるものである。また、白紙光沢が高く、感圧接着剤層表面の光沢も高い高品位な表面が得られ、インクジェットインク吸収性も優れたものである(実施例1〜8)。しかし、本発明の基紙表面平滑度、基紙表面サイズ度、基紙内部結合強さでない場合、後糊方式の親展葉書作製に適した剥離力を発現できないものである。さらに所定の基紙密度、基紙表面平滑度でない場合は、高品位な感圧接着剤層表面が得られていない(比較例1〜4)。
【0040】
本発明は、高い白紙光沢を有し、オフセット印刷適性、インクジェット記録適性を兼ね備え、且つ安定した剥離力を保持する後糊方式での親展葉書作製用の感圧接着シート用塗工紙を得るものであり、実用上極めて有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷後の塗工紙表面の少なくとも一方の面に接着剤層を設け、前記接着剤層は、互いに強圧処理により接着でき、接着後に接着剤層間で剥離可能である後糊圧着方式での圧着葉書用紙として使用する感圧接着シート用塗工紙において、前記塗工紙が、基紙と、その少なくとも一面上に、顔料およびバインダー樹脂を主成分とする一層以上の塗工層とを設けて形成され、前記基紙表面の王研式平滑度(J.TAPPI No5)が10〜100秒、かつ前記基紙が、ステキヒトサイズ度(JIS−P8122)2〜200秒、密度0.65g/cm以上、内部結合強さ(TAPPI T833)200J/m以上であり、前記塗工層表面の75°における白紙光沢度(JIS−P8142)が50%以上であることを特徴とする感圧接着シート用塗工紙。
【請求項2】
前記塗工層において、最表層の塗工層に含まれる顔料中、カオリンが50質量%以上、軽質炭酸カルシウムが10〜50質量%であり、かつ該塗工層表面の白紙光沢度(JIS−P8142)が60%以上であることを特徴とする請求項1に記載の感圧接着シート用塗工紙。
【請求項3】
前記顔料およびバインダー樹脂を主成分として含む塗工層が、前記基紙にブレードコーターにて形成されたものである請求項1、2に記載の感圧接着シート用塗工紙。
【請求項4】
前記塗工紙の密度が1.05〜1.30g/cmである請求項1〜3に記載の感圧接着シート用塗工紙。

【公開番号】特開2009−228171(P2009−228171A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77195(P2008−77195)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】