説明

感圧接着剤ヒドロゲルを製造する方法

【課題】感圧接着剤ヒドロゲルを製造する方法を提供する。
【解決手段】(A)エチレン系不飽和で末端封止されたポリエーテル部分を含むオリゴマー前駆体であって、メタクリル酸が付随されているオリゴマー前駆体を提供する工程と、(B)二官能性エチレン系不飽和モノマー、三官能性エチレン系不飽和モノマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されたエチレン系不飽和架橋剤を提供する工程と、(C)約3.5〜約9の間のpHで水の中で前記オリゴマー前駆体と前記エチレン系不飽和架橋剤をラジカル硬化させて、前記感圧接着剤ヒドロゲルを提供する工程とを含む感圧接着剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感圧接着剤ヒドロゲル材料を製造する方法および該感圧接着剤ヒドロゲルにより医療用物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンオキシド(PEO)に基づく水膨潤性感圧接着剤は知られており、医療用物品を含む様々な物品のいずれかの中で一般に有用である。医療用物品の中でのこうした材料の用途には、創傷包帯、創傷充填物、コンタクトレンズ、眼内レンズ、生体組織のための接着剤、接着防止材料、血液浄化のための吸収剤、薬物を放出するための基礎材料および生体用電極などが挙げられる。歯科における材料の使用も歯科応形機能成形または圧入、歯科用接着剤、修復材、塗料、複合材およびシーラントなどのためにこうした感圧接着剤を導入する場合がある。本明細書で用いられる「医療」用途は、歯科用接着剤、修復材、塗料、複合材、シーラントなどを含む歯科用途を包含することを意図している。水膨潤性ポリマーゲルが生体組織の組成および機械的特性に似た組成および機械的特性を有するので、こうしたゲルは将来において多様な分野で応用され得る。
【0003】
感圧接着剤材料における凝集性と粘着力との間の所望のバランス(粘着性)を付与する一般的な方法は、所定の架橋密度にPEOを無秩序に架橋するのを助けるために高エネルギー放射線(例えば紫外線)の使用によっていた。代替方法は、エチレン系不飽和で末端封止されたPEO系前駆体のラジカル硬化を含む。この代替方法は、多縮合反応を通して低分子量ポリエチレングリコールジアミンおよびジイソシアネートから所望のレベルに前駆体の分子量を作るとともにエチレン系不飽和部分で末端封止するために前駆体を利用する。効果的である一方で、この代替方法は連鎖延長反応の厳密な制御を必要とし、それは労働集約的であるとともに時間がかかることがあり得る。
【0004】
前述した前駆体の調製において、所望の分子量のPEO材料は反応性エチレン系不飽和により最初に末端封止される。適する末端基は様々な材料のいずれかを含み得る。メタクリレート末端基は、最終接着剤材料を医療用途において用いようとする場合に望ましい場合がある。メタクリレートは一般に製造するのが容易であり、皮膚刺激を引き起こす低い潜在性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エチレン系不飽和により末端封止されたオリゴマー前駆体から感圧接着剤ヒドロゲルなどの接着剤材料を提供することが望ましい。技術上以前に提供されていたよりも効率的且つ費用効果に優れた方式で前述した接着剤材料を提供することも望ましい。エチレン系不飽和により末端封止されたポリエーテル部分として前述したオリゴマー前駆体を提供するとともに必要ならば医療用途において用いるために前述した接着剤ヒドロゲルを更に提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、感圧接着剤ヒドロゲルを調製する方法であって、
(A)エチレン系不飽和で末端封止されたポリエーテル部分を含むオリゴマー前駆体であって、メタクリル酸が付随(associate)されているオリゴマー前駆体を提供する工程と、
(B)二官能性エチレン系不飽和モノマー、三官能性エチレン系不飽和モノマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されたエチレン系不飽和架橋剤を提供する工程と、
(C)約3.5〜約9の間のpHで水の中で前記オリゴマー前駆体と前記エチレン系不飽和架橋剤をラジカル硬化させて、前記感圧接着剤ヒドロゲルを提供する工程と、
を含む方法を提供する。
【0007】
「ゲル」または「ヒドロゲル」は、粒子(例えばポリマー粒子)が外部相または分散相の中にあり、水が分散相であるコロイド、分散液または懸濁液などを含むゲル材料を意味する。ゲルまたはヒドロゲルは、水和の異なる状態で存在する場合があり、水または水系流体(例えば、血液、血漿および間質液または生理的食塩水などの体液に似た液を含む体液)に接触させた時、溶解せずに典型的に膨潤することが可能である。
【0008】
「メタクリル酸が付随されている」という言葉はメタクリル酸の存在を意味する。記載された実施形態の文脈において、メタクリル酸は、エチレン系不飽和により末端封止されたポリエーテル部分として前駆体を提供する反応の副生物として、オリゴマー前駆体に典型的に付随されている。幾つかの実施形態において、例えば、ポリエチレングリコールは無水メタクリル酸と反応する。無水メタクリル酸が反応して、ポリエーテル上にエチレン系不飽和末端基を提供する一方で、一切の未反応酸無水物は加水分解されて、オリゴマー前駆体に付随されたままであるメタクリル酸の残留濃度を提供することが可能である。しかし、前述した言葉は、例えばオリゴマー前駆体に添加されたメタクリル酸も包含する。
【0009】
当業者は、図面の簡単な説明に続く本発明の非限定的な実施形態の記載を含む開示の残りを見ると、本発明の詳細を更に理解するであろう。
【0010】
本発明の実施形態を記載する際に、種々の図面に言及する。図面の中で、類似参照番号は構造を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ポリエーテル部分とエチレン系不飽和部分との反応生成物を含むオリゴマー前駆体の水溶液から誘導された感圧接着剤ヒドロゲルを製造する方法を提供する。無水メタクリル酸はオリゴマー前駆体上にエチレン系不飽和を提供するために本発明方法において用いられる。一切の未反応酸無水物は、数千ppm以下のレベルでオリゴマー前駆体に付随され得る副生物としてメタクリル酸の産出を典型的にもたらす。医療用物品などと合わせて用いるための接着剤配合物に含まれる場合、メタクリル酸は著しい刺激物であり得る。更に、メタクリル酸の存在は接着剤ヒドロゲルのラジカル重合を妨害し得る。反応生成物からの酸の除去は、過去には超高真空(例えば、10マイクロメートルHg)の使用を必要とし、よって大幅な費用をプロセスに付加したが、オリゴマー前駆体に付随するメタクリル酸の少なくとも幾らかをなお残した。本発明方法は、感圧接着剤ヒドロゲルを提供するオリゴマー前駆体の重合に及ぼすメタクリル酸の潜在的に有害な影響を認識している。本発明は、硬化中に溶液のpHを制御することにより水の中でメタクリル酸の存在下でオリゴマー前駆体を硬化させる硬化工程を含むプロセスを提供する。本発明は医療用物品の製造のためのプロセスも提供する。本発明のプロセスは、ラジカル重合による水および残留メタクリル酸の存在下での架橋剤によるオリゴマー前駆体の硬化を促進する。幾つかの実施形態において、ラジカル重合は紫外線を用いて実行して重合反応を開始させる。本発明プロセスによって得られるヒドロゲルは、生体用電極の部品として用いられた時に電気信号を送信/受信するために配合され得る感圧医用接着剤として有用である。接着剤ヒドロゲルは、哺乳動物の皮膚に、または哺乳動物の皮膚を通して薬物または他の活性成分を送出する薬物送出用具としても用いてよい。接着剤ヒドロゲルは、哺乳動物の皮膚または哺乳動物の皮膚孔を抗菌剤により保護する皮膚カバーの中の成分としても有用である場合がある。本発明は、凝集性感圧接着剤ヒドロゲルを形成させるのに十分な量で存在する本質的に不揮発性の可塑剤で可塑化された水溶性ポリエーテル誘導網目から製造された親水性感圧接着剤ヒドロゲルの製造のためのプロセスを提供する。本発明のプロセスは重合(または硬化)中にpHへの驚くべき依存性を示す。
【0012】
本発明のヒドロゲル材料を医療用物品の中で用いることが可能である。幾つかの実施形態において、ゲル材料は吸収性であり、下にある材料または医療状態の検査を必要とし得る場合に有利に透明である場合がある。創傷包帯などの医療用物品の場合、透明性は、創傷包帯を最初に除去する必要なしに創傷を目視検査することを可能にする場合がある。幾つかの実施形態において、ゲル材料は吸収性と透明性の両方である。
【0013】
本発明のプロセスにより製造された医療用物品、特に創傷包帯は、典型的には創傷からの過剰の滲出液を除去することが可能であり、湿った創傷環境を維持することが可能であり、酸素、水蒸気および二酸化炭素を物品に通すことができるようにガス交換を可能にすることができ、創傷を体温に維持するために断熱性であることが可能であり、雑菌混入および感染を最少にするために液体および微生物に対して不透過性である場合があり、損傷を肉芽組織にしないように創傷に対して非付着性である場合がある。
【0014】
本発明のプロセスにより製造されたヒドロゲルは、ヒドロゲルの構造一体性および典型的には透明性を保持しつつ、種々の流体(例えば体液)の中程度の量から大量のような流体を吸収することができる点で吸収性である場合がある。本発明により製造されたヒドロゲルは、室温で24時間後に少なくとも自重の等張生理食塩水溶液(脱イオン水中の0.9重量%塩化ナトリウム)を吸収できる点で「吸収性」である。すなわち、材料は少なくとも100重量%の吸収率を有する。より好ましくは、ゲル材料は、自重の少なくとも2倍(吸収率200%)、なおより好ましくは自重の少なくとも4倍(吸収率400%)、最も好ましくは、室温で24時間後に自重の少なくとも5倍(吸収率500%)の等張生理食塩水溶液を吸収することが可能である。典型的には、本発明のゲル材料は自重の8倍以下の等張生理食塩水溶液を吸収することが可能である。
【0015】
幾つかの実施形態において、本発明のプロセスにより製造されたヒドロゲル材料は比較的柔軟である。柔軟性は、関節などの身体の曲げられる部分に容易に被着されるべきヒドロゲル材料を導入した医療用物品を見越している。柔軟でない材料も本発明により製造してよく、例えば創傷充填物材料として用いてもよい。
【0016】
本発明のプロセスにより製造されたヒドロゲル材料は、ヒドロゲルが著しい不利な反応を伴わずに身体組織および/または体液に接触する能力を有する点で典型的には生体適合性である。
【0017】
前述したように、本発明により製造されたヒドロゲル材料は感圧接着剤特性を有し、本発明により製造された感圧接着剤ヒドロゲルは、典型的にオリゴマー前駆体と架橋剤の重合から生じる架橋ポリマーを含み、ここで、オリゴマー前駆体はエチレン系不飽和で末端封止されたポリエーテルである。幾つかの実施形態において、オリゴマー前駆体は、適する架橋剤と反応した時に−15℃未満のガラス転移温度を示す感圧接着剤ヒドロゲルポリマーを提供するポリエーテルメタクリレートである。
【0018】
幾つかの実施形態において、本発明により製造された感圧接着剤ヒドロゲルは静菌性であり、低い臭気を有する。静菌性および/または低臭気の特性は本来備わっていることが可能である。幾つかの実施形態において、静菌剤および臭気除去剤を添加して、ヒドロゲル材料におけるこれらの特性を強化することが可能である。こうした材料は以下でより詳しく記載する。
【0019】
本発明により製造されたヒドロゲル材料は多官能性ポリ(アルキレンオキシド)ラジカル重合性オリゴマー(例えば、オリゴマー前駆体)のポリマーを含む。幾つかの実施形態において、多官能性ポリ(アルキレンオキシド)オリゴマーは、少なくとも約6000の重量平均分子量を有する。これより低い分子量を有するオリゴマーは好ましくなく脆い場合がある。幾つかの実施形態において、多官能性オリゴマーは、少なくとも約8000、しばしば少なくとも約12,000の重量平均分子量を有することが可能である。本発明により製造された材料は大幅により高い分子量も有することが可能である。一般に、多官能性オリゴマーは、室温で流動性且つ加工性の状態(例えば液状で)でオリゴマーを提供する分子量を有する。しかし、希釈剤または他の添加剤および/またはより高い温度(例えば押出温度)を用いて加工することが可能である場合、室温で流動性ではない高分子量多官能性オリゴマーを用いることが可能である。オリゴマーの多官能性は重合すると架橋に導く。典型的には、多官能性ポリ(アルキレンオキシド)オリゴマーの分子量が高ければ高いほど、最終ゲル材料における架橋間の結果的な距離は大きくなる(すなわち、より低い架橋密度)。幾つかの実施形態において、より低い架橋密度は、膨潤形態での凝集強度ばかりでなく、順応性(すなわち弾性)と引張強度の望ましいバランスと合わせて望ましい機械的特性も提供する。
【0020】
幾つかの実施形態において、本発明のプロセスにより製造された感圧接着剤ヒドロゲルは、最初にエチレン系不飽和で末端封止された二官能性ポリエーテル部分をラジカル源にさらすことにより調製される。適するポリエーテル部分を例えばポリ(エチレングリコール)から誘導してもよい一方で、エチレン系不飽和には、ポリエチレングリコールジメタクリレートを含むオリゴマー前駆体を少なくとも部分的に提供するためにメタクリレートを含む末端基を与えてもよい。適する他のポリエーテル部分は、例えばポリ[エチレングリコール−コ−プロピレングリコール]ランダムコポリマーを含む。ポリエチレングリコールジメタクリレートが本発明のプロセスにおいて多官能性オリゴマーである実施形態において、オリゴマー前駆体は、例えば米国特許出願公開第2003/0203011号明細書に記載されたプロセスにより調製してもよい。この特許出願の全体の開示は本明細書に引用して援用する。簡単に言うと、適するオリゴマー前駆体は、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(「BHT」)などの酸化防止剤の存在下で、そして水または溶媒の存在しない状態で、ポリエチレングリコールと無水メタクリル酸の反応を経由して得てもよい。本反応は、これも副生物として残留メタクリル酸を含む水溶性オリゴマー前駆体をもたらす。酸の少なくとも一部は、真空ストリッピングによってオリゴマー前駆体反応生成物から任意に除去してもよい。水溶性多官能性オリゴマーまたはオリゴマー前駆体およびメタクリル酸副生物は次に水または水系溶媒に溶解させて、追加の反応物および他の成分を添加してもよいオリゴマー前駆体溶液を提供する。オリゴマー前駆体溶液中の残留メタクリル酸レベルは、数ppm〜約100ppmより大且つ数百ppmまたは数千ppm以下の範囲であってもよい。
【0021】
架橋剤をポリマー前駆体溶液に添加して、反応性溶液を提供することが可能である。架橋剤は、硬化のために適切な条件にさらされると、ポリマーの連鎖成長反応中に架橋を促進する。架橋剤は水溶性であり、幾つかの実施形態において二官能性架橋剤である。幾つかの実施形態において、架橋剤は三官能性架橋剤である。二官能性架橋剤と三官能性架橋剤の混合物を用いることが可能である。適する二官能性架橋剤は、ポリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートおよびアルカンジオールジ(メタ)アクリレートの1種以上を含むことが可能である。適する三官能性架橋剤は、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレートおよびプロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレートの1種以上を含むことが可能である。当業者は本発明のプロセスにおいて他の架橋剤をうまく用いてもよいことを認識している。
【0022】
幾つかの実施形態において、本発明のプロセスで用いられる架橋剤を最初に水に溶解させて、未反応架橋剤の溶液を提供してもよい。その後、架橋剤の溶液をオリゴマー前駆体の溶液と組み合わせて、多官能性オリゴマー、架橋剤および本明細書に記載された追加の成分を含む反応性溶液を提供してもよい。本発明の幾つかの実施形態において、架橋剤は、架橋剤の溶液を最初に形成させて反応性溶液を提供せずに、架橋剤をオリゴマー前駆体溶液に直接添加することにより水に溶解させてもよい。本発明のプロセスは、架橋剤およびオリゴマー前駆体を互いに混合して水性反応性溶液を提供する方式によって限定されることを意図していない。
【0023】
反応性溶液の中のオリゴマー前駆体の量は、反応性溶液の典型的には約4〜60重量%の範囲である。幾つかの実施形態において、反応性溶液の中のオリゴマー前駆体の量は反応性溶液の約15〜25重量%の範囲である。架橋剤は、典型的には約0.5〜約20%の範囲の濃度で存在する。
【0024】
不揮発性極性可塑剤は、重合の前に典型的には約96〜20重量%の範囲の量で反応性溶液中に存在する。幾つかの実施形態において、不揮発性極性可塑剤は、重合の前に約50〜40重量%の範囲の量で反応性溶液中に存在する。可塑剤は、周囲温度および哺乳動物の体温で高分子網目のポリエーテル部分の結晶化を最少化するように機能し、高分子網目の順応性を増して感圧接着剤特性と哺乳動物の身体および他の曲がった表面への順応性とを与え、感圧接着剤の粘着性または親指頼みを修正する。可塑剤は、開始剤、電解質および薬理的に活性な成分を含む他の添加剤を溶解させるために溶媒としても機能することが可能である。多官能性オリゴマーのための可塑剤が迅速な水分損失の傾向がある劣った粘着性〜中程度の粘着性を有する材料をしばしば与えるので、可塑剤は水のみを用いるゆえに本質的に不揮発性である。幾つかの実施形態において、不揮発性極性可塑剤は水とオリゴマー前駆体の両方に混和性のヒドロキシ含有可塑剤を含み、こうした可塑剤は、アルコール、水およびオリゴマー前駆体の混合物が未硬化状態で液体であり、一旦重合されると感圧粘着性を示すように、アルコール、アルコールの混合物および水とアルコールの混合物から選択されたものを含む。典型的には、アルコールは低い揮発性を有するべきであり、オリゴマー前駆体の後続の重合を大幅に妨げるべきではない。
【0025】
適するアルコールの非限定的な例には、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールおよびトリメチロールプロパンが挙げられる。幾つかの実施形態において、適するアルコールには、エチレングリコールおよび式(I)によって示された誘導体が挙げられる。
MO(CH2CH2O)mH (I)
式中、
Mは水素またはC1〜C6アルキルであり、
mは約1〜約25の範囲の整数である。
【0026】
極性可塑剤として用いるために適する材料には、例えば、「カルボワックス(Carbowax)」PEG300という商品名でミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Company(Midland,MI))から市販されているような300の分子量(重量平均)を有するポリエチレングリコールが挙げられる。幾つかの実施形態において、不揮発性極性可塑剤は分子量(重量平均)300または400のポリエチレングリコールの混合物である。
【0027】
例えば生体用電極中の導電性接着剤として最終ヒドロキシルを用いようとする用途において、反応性溶液はイオン導電性電解質も含む。電解質の非限定的な例はイオン導電性を提供するために接着剤に溶解させたイオン塩を含み、そして感圧接着剤ヒドロゲルのイオン導電性を強化するために、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウムおよびそれらの組み合わせを含むことが可能である。あるいは、硫酸塩およびグルコナートなどの第二鉄塩と第一鉄塩の混合物などのレドックス対を添加することが可能である。本発明により製造されたヒドロゲル中に存在するこれらのイオン塩の量は比較的少なく、ヒドロゲルの約0.5〜10重量%、好ましくは約2〜5重量%である。レドックス対を用いる時、生体用電極は過負荷電位から回復することが可能である。米国特許第4,846,185号明細書(カリム(Carim))は、合計で接着剤の約20重量%以下になるレドックス対を開示している。
【0028】
可塑剤の存在下でのオリゴマー前駆体の現場(in−situ)無溶媒の重合または硬化は、ラジカル源にオリゴマー前駆体をさらすことにより実行される。当業者が認識するように、ラジカルは、熱、レドックスまたは光化学手段によって発生し得るか、または材料に化学線源を照射することによって発生し得る。反応性溶液の硬化は、架橋ヒドロゲルを提供するために、ポリマー鎖と架橋剤の反応に加えて、またはポリマー鎖と架橋剤の反応が後に続く多官能性オリゴマーの連鎖成長反応を含む。
【0029】
幾つかの実施形態において、硬化は、所望のポリマーの連鎖成長反応を開始させるラジカルの発生のために適する条件に反応性溶液をさらすことにより実行される。硬化を開始させるために可視光または紫外線を用いる時、この硬化を引き起こすために適する光源には、中圧水銀ランプおよび低強度「バックライト」蛍光バルブが挙げられる。紫外線硬化のために適する装置には、本明細書の実施例に記載されているような装置が挙げられる。反応性溶液の中に開始剤が存在しない状態で、電子ビーム照射またはコバルト60ガンマ源などの化学線を照射することもラジカルを発生させる。オリゴマー前駆体の多官能性は、エチレン系不飽和部分を重合すると架橋に導く。典型的には、オリゴマー前駆体の分子量が高ければ高いほど、硬化ポリマーにおける架橋間の結果的な距離は大きくなる(すなわち、より低い架橋密度)。こうしたより低い架橋密度は、典型的には、より望ましい機械的特性を有するヒドロゲルを提供する。すなわち、本発明により製造された接着剤ヒドロゲルは、膨潤形態での凝集強度ばかりでなく、順応性(すなわち弾性)と引張強度のバランスを有する。
【0030】
ラジカル重合のために、適する開始剤材料は典型的には反応性水溶液に添加して、重合反応を開始させて本発明による架橋ヒドロゲルを形成させる。典型的には、本発明のプロセスにおいて用いられる開始剤は、紫外線などの放射線を照射するとラジカルを発生させるものである。適する開始剤は、ベンゾインエーテル、ベンゾフェノン(例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノンおよびその誘導体)、アシルホスフィンオキシド、アセトフェノン誘導体、樟脳キノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(「イルガキュア(IRGACURE)」184)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(「イルガキュア(IRGACURE)」651)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(「イルガキュア(IRGACURE)」819)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(「イルガキュア(IRGACURE)」2959)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン(「イルガキュア(IRGACURE)」369)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(「イルガキュア(IRGACURE)」907)および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(「ダロキュア(DAROCUR)」1173)などの「イルガキュア(IRGACURE)」および「ダロキュア(DAROCUR)」(ニューヨーク州タリータウンのチバ・スペッシャリティ・ケミカル(Ciba Speciality Chemical Corp.(Tarrytown,NY)))という商品名で入手できる光開始剤、ならびに反応性求核性基を有するあらゆる光開始剤のいずれかを含む。前述した開始剤の2種以上の組み合わせも用いてよい。開始剤は、反応性溶液の一般に約0.05〜約5重量%の濃度で存在する。
【0031】
熱開始剤を用いる実施形態において、適する熱開始剤には、アゾ化合物、過酸化物および過硫酸塩を挙げてもよく、後者の2つの群をアスコルビン酸または亜硫酸水素塩化合物などの還元剤および任意に触媒量の鉄または銅などの遷移金属塩と組み合わせて用いる時、ラジカルのレドックス発生が周囲以下の温度でさえ起き得る。
【0032】
得られた感圧接着剤ヒドロゲルの特性を変えるために反応性溶液に種々の他の材料および添加剤も導入してよい。非限定的な例には、低レベルの共重合性ビニルモノマーおよび非官能化相溶性ポリマーが挙げられる。低レベルの共重合性ビニルモノマー、特にオリゴマー前駆体/可塑剤混合物に混和性のモノマーは、重合の速度を促進するように機能することが可能である。好ましい共重合性モノマーには、アクリル酸およびメタクリル酸ならびにそれらのアンモニウム塩およびアルカリ金属塩、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのアンモニウム塩およびアルカリ金属塩、ヒドロキシルエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルメタクリレートおよび2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレートが挙げられる。共重合性ビニルモノマーを用いる時、共重合性ビニルモノマーは、得られた感圧接着剤ヒドロゲルの全重量の好ましくは約2〜約15重量%を構成する。
【0033】
非官能化相溶性ポリマーの添加は重合の前のオリゴマー前駆体の粘度を強化して、得られた親水性感圧接着剤ヒドロゲルの例えば模様塗りのためにより良好な被覆性を付与することが可能である。適するポリマーには、中分子量および高分子量のポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)およびポリ(アクリルアミド)を含め、反応性溶液中で親水性および相溶性であるポリマーが挙げられる。任意に、本発明により製造されたヒドロゲル材料は、ゲル材料の透明性を落とし得るのでヒドロコロイドは必ずしも好ましいとは限らないけれども、典型的には粒子状のヒドロコロイドを含むことが可能である。ヒドロコロイドの例には、植物滲出液などの天然ゴム(アラビアゴム、ガッチゴム、カラヤゴムおよびトラガカントゴム)、植物種子ゴム(グアールガム、ローカストビーンガムおよびアカシアゴム)、海藻浸出液(寒天、アルギン、アルギン酸塩およびカラゲナン)、穀類ゴム(デンプンおよび加工デンプン)、発酵ゴムおよび微生物ゴム(デキストランおよびキサンタンガム)、変性セルロース(ヒドロキシメチルセルロース、微結晶セルロースおよびカルボキシメチルセルロース)、ペクチン、ゼラチン、カゼインおよび合成ゴム(ポリビニルピロリドン、低メトキシルペクチン、アルギン酸プロピレングリコール、カルボキシメチルローカストビーンガムおよびカルボキシメチルグアールガム)および類似の水膨潤性ヒドロコロイドまたは水和性ヒドロコロイドが挙げられるが、それらに限定されない。ヒドロコロイドという用語は水和の状態に無関係に用いられる。本発明により製造されたヒドロゲル材料は、材料が透明(好ましくは、ASTM D1003−00に準拠して総光透過率が84%より大きい)であるような量のヒドロコロイドを含むことが可能である。典型的には、ヒドロコロイドが存在する時、ヒドロコロイドの量はヒドロゲル材料の全重量を基準にして約5重量%未満である。
【0034】
適する過酸化物捕捉剤を反応性溶液に添加して、ポリエチレングリコールの酸化から形成された過酸化物を捕捉してもよい。適する捕捉剤には、例えば、チオジプロピオン酸およびその脂肪酸エステルが挙げられる。
【0035】
重合中の反応性溶液のpHの制御が前述したメタクリル酸副生物の存在下でさえ適する感圧接着剤ヒドロゲルの生成を促進することが驚くべきことに見出された。それに反して、メタクリル酸の存在下での反応性溶液のpHを維持できないと、典型的には重合反応の失敗をもたらす。メタクリレート溶液を5未満の酸性pHで貯蔵してエステル連結の加水分解を防止するべきであると技術が一般に推奨してきた一方で、メタクリル酸不純物の存在下でのオリゴマー前駆体および架橋剤の硬化が特定の範囲内に反応物溶液のpHを維持することにより促進されることが発見された。反応性溶液のpHの調節は、適する酸、塩基または緩衝剤を用いて達成してもよい。重合または硬化を開始させる前に、反応性溶液のpHを必要ならば調節してもよい。本発明は、重合中に所望のpH範囲内に反応性溶液を維持することを含む。典型的には、反応性溶液のpHは、約3.5以上のpH且つ約9以下のpHで維持される。幾つかの実施形態において、反応性溶液のpHは約5以上且つ約9以下に維持される。他の実施形態において、反応性溶液のpHは約6以上且つ約8以下に維持される。
【0036】
本発明により製造された感圧接着剤ヒドロゲルは、高水蒸気透過性創傷包帯または高水蒸気透過性火傷包帯、経皮薬物送出において用いるための接着剤、例えば、製紙工業おける薄切り用途の再パルプ可能な接着剤ヒドロゲルおよび生体用電極用途における導電性接着剤ゲルとしての用途を含む様々な用途において有用である。この最後の用途において、ヒドロゲルに関する高度の感圧接着剤粘着性は、例えば、非導電性低アレルギー性感圧接着剤が電極構造において導電性接着剤に接する時に必要ではない場合がある。
【0037】
本発明により調製された感圧接着剤ヒドロゲルは、使用中に接着力より一般に高い凝集力を達成するのに十分な凝集強度を有し、よって皮膚からのきれいな除去を見込んでいる。しかし、接着剤ヒドロゲルは、大きな差圧に耐えることが必要とされる親水性コンタクトレンズまたはメンブレンなどの幾つかの用途において追加の内部一体性または支持体を必要とする場合がある。接着剤シートとして用いられる時、取扱いの容易さおよび寸法安定性を見込むために埋込支持体付き接着剤シートを硬化させることが望ましい場合がある。
【0038】
本発明により製造された感圧接着剤ヒドロゲルは、局所薬物送出系または経皮薬物送出系などの形態を取って、哺乳動物の皮膚への薬物の送出または哺乳動物の皮膚を通しての薬物の送出において用いることも可能である。薬物または他の活性成分は、重合後にヒドロゲル接着剤に配合することが可能である。
【0039】
本発明により製造された感圧接着剤ヒドロゲルは、包帯、創傷閉鎖材料およびテープなどの哺乳動物の皮膚治療カバーの中で用いることも可能である。哺乳動物の皮膚カバーに関して、生体活性材料に悪影響を及ぼさずに重合の前に生体活性材料を反応性溶液に添加することが可能である。こうした他の生体活性材料の非限定的な例には、細菌レベルを減少させて感染の危険を最少化させるか、または哺乳動物患者の皮膚または皮膚孔で感染の作用を治療する広い範囲の抗微生物剤が挙げられる。広い範囲の抗微生物剤は米国特許第4,310,509号明細書で開示されている。この特許の全体の開示は本明細書に引用して援用する。他の抗微生物剤の非限定的な例には、パラクロロメタキシレノール、トリコセン、クロルヘキシジンとクロルヘキシジンアセテートおよびクロルヘキシジングルコネートなどのその塩、沃素、ヨードフォア、ポリ−N−ビニルピロリドン−ヨードフォア、酸化銀、銀およびその塩、抗生物質(例えば、ネオマイシン、バシトラシンおよびポリミキシンB)が挙げられる。抗微生物剤は、全接着剤ヒドロゲルの約0.01〜約10重量%の範囲の濃度で接着剤ヒドロゲル中に含めることが可能である。
【0040】
他の生体適合性材料および/または治療材料を添加して、化合物などの適する感圧接着剤ヒドロゲルを提供して、最終ヒドロゲル接着剤のpHを緩衝液で処理して、敏感な哺乳動物の皮膚組織と共に用いるために適する非刺激pHを有する製品を提供することが可能であるか、または別段に抗菌力を最大化することが可能である。局所送出または経皮送出のための薬物または他の活性剤がそのように要求する時、浸透増強剤または医薬品添加物もヒドロゲル接着剤に添加することが可能である。
【0041】
電解質を中に含ませた本発明のプロセスにより製造された感圧接着剤ヒドロゲルを用いる生体用電極は、診断目的および治療目的のために有用である。その最も基本的な形態において、生体用電極は、哺乳動物の皮膚に接触する導電性媒体と、導電性媒体と電気診断装置、電気治療装置または電気手術装置との間で交流する電気通信のための手段を含む。
【0042】
本発明のプロセスにより製造された感圧接着剤ヒドロゲルは、適する方式で物品にヒドロゲルを導入することにより本明細書で挙げられた種々の物品の中に含めてもよい。幾つかの実施形態において、例えば、重合済みヒドロゲルは、適する裏地、剥離ライナーまたは他の表面上に貼合わせてもよく、その後必要ならば貼合わされたヒドロゲルを適切な寸法に切断(打抜き)してもよい。幾つかの実施形態において、(重合の前の)反応性溶液を物品またはその一部内に入れてもよく、その後、ヒドロゲルを作る際の重合工程が物品の製造工程でもあるように現場(in−situ)で重合してもよい。本明細書に記載されたものなどの物品に感圧接着剤ヒドロゲルを導入する他の方法は当業者によって認められるであろう。結果として、本発明の実施形態は、物品に感圧接着剤ヒドロゲルを導入する工程を含む。前述した工程は、例えば、後でヒドロゲルを貼合わせ、任意にヒドロゲルを打抜くことにより物品または物品の一部に感圧接着剤ヒドロゲルを添加することを含んでもよい。前述した工程は、物品または物品の一部に反応性溶液を添加し、その後、反応性溶液を現場(in−situ)で重合させてヒドロゲルを生成させることを含んでもよい。更に、前述した工程は、反応性溶液を現場(in−situ)で重合させて、こうして製造されたヒドロゲルを含む物品を提供することを含む、物品または物品の一部上に、または物品または物品の一部内に感圧接着剤ヒドロゲルを製造するプロセス全体を実施することを含んでもよい。
【0043】
種々の図を今参照すると、図1および2は、使い捨て診断用心電図(ECG)電極または経皮的電気刺激(TENS)電極のいずれかであり得る生体用電極10を示している。電極10は剥離ライナー12上にあり、生体適合性で導電性の感圧接着剤ヒドロゲルの場14を更に含む。本明細書に記載されたような重合後、感圧接着剤ヒドロゲルは剥離ライナー12上に貼合わされ、その後、必要に応じて切断(打抜き)される。感圧接着剤ヒドロゲルの場14は、保護剥離ライナー12を除去すると患者の哺乳動物皮膚に接触するために適する。電極10は、感圧接着剤ヒドロゲルの場14に接触している導電性界面部分18を有する導電性部材と、電気的計器(図示していない)に機械的および電気的な接触のために場14の超えて伸びるタブ部分20とを含む電気通信のための手段16を含む。電気通信のための手段16は、感圧接着剤ヒドロゲルの場14に接触している少なくとも側22で被覆された導電性層26を含む。
【0044】
幾つかの実施形態において、ECG導体部材16は、約0.05〜0.2ミリメートルの厚さを有するポリエステルフィルムなどの材料の細片を含み、細片上で約2.5〜12マイクロメートルの厚さ、典型的には約5マイクロメートルの厚さの銀/塩化銀の被膜26を側22に有する。適するポリエステルフィルムには、「R−300」インキという商品名でマサチューセッツ州ウォルサムのエルコン・インコーポレーテッド(Ercon,Inc.(Waltham,MA))から市販されている銀/塩化銀インキで被覆された「メリネックス(Mellinex)」505−300、329または339フィルムという商品名でバージニア州ホープウェルのICIアメリカズ(ICI Americas(Hopewell,VA))から市販されているフィルムが挙げられる。幾つかの実施形態において、TENS導体部材16は不織布20から製造することが可能である。不織布20のために適する材料には、「SS24363」インキという商品名でミシガン州ポートフロンのアケソン・コロイズ・カンパニー(Acheson Colloids Company(PortHuron,MI))から市販されている炭素インキ層26を側22に有する「マニウェブ(Manniweb)」ウェブという商品名でニューヨーク州トロイのリダル・インコーポレーテッド(Lydall,Inc.(Troy,NY))から市販されている繊維などのポリエステル/セルロース繊維が挙げられる。
【0045】
導電性接着剤場として本発明により製造された親水性感圧接着剤ヒドロゲルを用いることができる生体用電極の非限定的な例には、米国特許第4,527,087号明細書、米国特許第4,539,996号明細書、米国特許第4,554,924号明細書、米国特許第4,848,353号明細書(すべてエンゲル(Engel))、米国特許第4,846,185号明細書(カリム(Carim))、米国特許第4,771,713号明細書(ロバーツ(Roberts))、米国特許第4,715,382号明細書(ストランド(Strand))、米国特許第5,012,810号明細書(ストランド(Strand)ら)、米国特許第5,133,356号明細書(ブリアン(Bryan)ら)および米国特許第5,215,087号明細書(アンダーソン(Anderson)ら)で開示されているような電極が挙げられる。これらの特許の全体の開示は本明細書に引用して援用する。
【0046】
本発明により製造された感圧接着剤ヒドロゲルが感圧接着剤特性を有するゲルとして特徴付けることも可能であるので、本接着剤は、電気通信のスナップ−アイレット手段を有する従来のゲル電解質生体用電極の中でゲル化接点としても用いることも可能である。こうした生体用電極の記載は、米国特許第3,805,769号明細書(セッションズ(Sessions))、米国特許第3,845,757号明細書(ウェイヤー(Weyer))および米国特許第4,640,289号明細書(クレイグヘッド(Craighead))において見られる場合がある。これらの特許の全体の開示は本明細書に引用して援用する。こうした生体用電極の非限定的な例は、図5で示されている電極50の分解図によって代表されるスナップ型監視電極を含め、多くの会社(「レッドドット(Red Dot)」というブランドでのスリーエム・カンパニー(3M Company)を含む)によって販売されている電極である。
【0047】
図5を参照すると、(コネチカット州トマストンのアイレット・フォア・インダストリー(Eyelet for Industry(Thomaston,CN))などの会社から市販されているステンレススチールアイレットNo.304などの)立込ボルト51は、(イリノイ州ウェストシカゴのプライム・グラフィックス(Prime Graphics(West Chicago,IL))から市販されている塗装白色ポリエチレンの前方印刷用粘着シートなどの)高分子裏地53の開口を通して(マサチューセッツ州フィッチバーグのミクロン・プロダクツ(Micron Products(Fitchburg,MA))から市販されている銀メッキされ塩素処理されたABSプラスチックアイレットなどの)プラスチック金属メッキアイレット52を接合している。高分子裏地の内面は、(フェノール−硬化スモーククレープ天然ゴム系接着剤などの)接着剤で被覆されている。メッキ面でアイレット52に接触するのは、本発明により製造された一定量の感圧接着剤ヒドロゲル55を載せられた(ウィスコンシン州のグリーンベイのジェームスリバー・コーポレーション(James River Corporation(Green Bay,WI))から市販されている「エアテックス(Airtex)」399スクリムなどの)木材パルプスクリム54である。スクリム54および接着剤ヒドロゲル55は厚さ0.16cmの被覆ポリエチレン発泡体56の空隙に常駐する。空隙内にヒドロゲル55を入れるための適する手段は、空隙内に一定量の反応性溶液を入れ、溶液を現場(in−situ)で重合させることを含む。ポリエチレン発泡体56は、コポリマー固体約35〜40重量%の量で存在するハーキュレス・コーポレーション(Hercules Corporation)から市販されている「フォラル(Foral)」AXロジンまたは「フォラル(Foral)」85ロジンなどの「フォラル(Foral)」ブランド松脂酸ロジンで粘着性付与された12グレーンの91:9イソオクチルアクリレート:N−ビニル−2−ピロリドンコポリマー感圧接着剤または18グレーンの94:6イソオクチルアクリレート:アクリル酸コポリマーのいずれかで被覆されていてもよい。感圧接着剤は、(「カルゴン(Calgon)」TK−100ブランド殺黴剤で処理された「ポリシルク(Polysilk)」S−8004ブランド下の83ポンド漂白剥離紙など、ライナーと処理剤の両方はイリノイ州シカゴのH.P.スミス・カンパニー(H.P.Smith Company(Chicago,IL))から市販されている)タブ付き防黴ライナー57によって覆われている。
【0048】
スクリム54および接着剤55は、接着剤テープ(「3M」ブランド「タイプ2185」テープなど)の2つの細片59によって所定の場所に固定された(イリノイ州シカゴのウェイス・カンパニー(Weiss Company(Chicago,IL))から市販されている0.25mmの「PETG」ポリエステルフィルムなどの)キャップ58によって保護されている。多くの会社によって販売されている生体用電極およびこうした電極の中で用いられる成分は、本発明により製造された親水性感圧接着剤ヒドロゲルを導入するためにスナップ型監視用の生体用電極として有用な代替材料の組み合わせを提供する。あるいは、こうした電極は、米国特許第4,640,289号明細書(クレイグヘッド(Craighead))に記載された装置を用いて製造することが可能である。
【0049】
場合によって、電気通信のための手段は、米国特許第4,848,353号明細書に見られるものなどの生体用電極の周囲から広がる導電性タブであることが可能であるか、または米国特許第5,012,810号明細書に見られるものなどの絶縁性裏地部材におけるスリットまたは継目を通して広がる導体部材であることが可能である。そうでなければ、電気通信のための手段は、アイレットまたは米国特許第4,640,289号明細書および米国特許第4,846,185号明細書で開示されたものなどの他のスナップ型コネクタであることが可能である。更に、電気通信のための手段は、米国特許第4,771,783号明細書に見られるものなどのリード線であることが可能である。用いられる電気通信のための手段のタイプに関係なく、電解質を含有する本発明により製造された感圧接着剤ヒドロゲルは、診断目的、治療目的または電気手術目的のために生体用電極上に導電性接着剤の場として常駐することが可能である。
【0050】
任意に抗微生物剤および他の生体活性剤を中に含ませた本発明により製造された感圧接着剤ヒドロゲルを用いる医療用皮膚カバーは、好ましくは感染の可能性に対して哺乳動物の皮膚または哺乳動物の皮膚孔の処置のために有用である。
【0051】
図3を参照すると、裏地材料32と、本発明により製造され裏地材料32上に置かれた感圧接着剤ヒドロゲルの層34とを有する医療用皮膚カバー30の断面図が示されている。感圧接着剤ヒドロゲルの層34は剥離ライナー36により使用まで保護される。好ましくは、抗微生物剤38は、ヒドロゲルへの材料の重合の前に抗微生物剤38を反応性溶液に添加することにより層34に含められる。感圧接着剤ヒドロゲルの層34は、ヒドロゲルを裏地に貼合わせ、ヒドロゲルおよび/または裏地を必要に応じて任意に打抜くことにより裏地材料32上に置いてもよい。他の実施形態において、ヒドロゲルは剥離ライナー36上に最初に貼合わせた後に、ヒドロゲルを裏地材料32上に置く。
【0052】
使用のために剥離ライナー36は除去され、感圧接着剤ヒドロゲルの層34は、医療用テープ、創傷包帯、一般薬用配備の帯具または水−水分吸収特性を有する他の医療用具の一部として患者の皮膚に被着させることが可能である。
【0053】
接着剤ヒドロゲル層34は、医療用テープ、包帯および帯具などとして用いるために高い水蒸気透過率を有する幾つかの裏地材料のいずれかから選択された裏地材料32の層上に被覆してもよい。適する裏地材料には、米国特許第3,645,835号明細書および米国特許第4,595,001号明細書で開示された材料が挙げられる。この特許の開示は本明細書に引用して援用する。押出性ポリマーとして市販されている様々なフィルムの他の例には、デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.DuPont de Nemours and Company(Wilmington,DE))から入手できる「ハイトレル(Hytrel)」4056および「ハイトレル(Hytrel)」3548ブランドのポリエステルエラストマー、オハイオ州クリーブランドのグッドリッチ(B.F.Goodrich(Cleveland,OH))から入手できる「エスタン(Estane)」ブランドのポリウレタンまたはマサチューセッツ州マルデンのK.J.キン・アンド・カンパニー(K.J.Quinn & Co.(Malden,MA))から入手できる「Q−タン(Q−thane)」ブランドのポリウレタンが挙げられる。
【0054】
適する裏地材料の層32と組み合わせた接着剤ヒドロゲルの層34は包帯として用いることが可能である。
【0055】
本発明により製造された親水性感圧接着剤ヒドロゲルは、同時係属且つ共譲渡の米国特許出願第07/905,490号明細書に記載されたように医療用途において有用な2相複合材を形成させるために連続感圧接着剤マトリックスに分散させたばらばらのゲル粒子として用いることが可能である。この特許の開示は本明細書に引用して援用する。
【0056】
貼合わせおよび高温貼合わせの方法は、接着剤ヒドロゲルの層34上で圧力またはそれぞれ熱と圧力を裏地材料層32に加えることを一般に含む。高温貼合わせのための温度は、約50〜約250℃の範囲であり、貼合わせと高温貼合わせの両方に加えられる圧力は0.1Kg/cm2〜約50Kg/cm2の範囲である。
【0057】
任意に局所治療薬、経皮治療薬またはイオン導入法治療薬および医薬品添加物、溶媒または浸透増強剤を中に含ませた本発明の親水性感圧接着剤を用いる薬物送出用具は、哺乳動物の皮膚に、または哺乳動物の皮膚を通して薬物または他の活性剤を送出するために有用である。
【0058】
図4は、裏地層42とその上に貼合わされ剥離ライナー46によって保護された本発明により製造された感圧接着剤ヒドロゲルを含む層44を有する経皮薬物送出用具40または局所薬物送出用具40の断面図を示している。他の層は、層42と層44との間に存在して、薬物または他の治療薬を収容することが可能である。そうでなければ、図4に示したように、薬物および他の薬剤48は接着剤ヒドロゲル層44に分散される。
【0059】
裏地層42は、薬物送出用具のために有用な適するいかなる材料であることも可能である。こうした裏地材料の非限定的な例は、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレン−アルミニウム−ポリエチレン複合材およびミネソタ州セントポールのスリーエム・カンパニー(3M Company(St.Paul,MN))(3M)から市販されている「スコッチパック(ScotchPak)」ブランドの裏地である。
【0060】
剥離ライナー46は、当業者に知られている適するいかなる材料であることも可能である。市販されている適する剥離ライナーの非限定的な例には、H.P.スミス・カンパニー(H.P.Smith Co.)から市販されているシリコン処理ポリエチレンテレフタレートフィルムおよび「スコッチパック(ScotchPak)」ブランドの剥離ライナーとしてスリーエム・カンパニー(3M Company)から市販されているフルオロポリマー被覆ポリエステルフィルムが挙げられる。
【0061】
治療薬48は、患者の皮膚に局所的に、または患者の皮膚を通して経皮でまたはイオン導入法で送出するために承認されたいかなる治療活性材料であることも可能である。経皮送出用具において有用な治療薬の非限定的な例は、局所用途または経皮用途において用いられるあらゆる活性薬物または薬物の塩、あるいは創傷癒合を増速する際に用いるための成長因子である。薬物または薬物活性剤として特定された他の治療薬は、米国特許第4,849,224号明細書および米国特許第4,855,294号明細書ならびに国際公開第89/07951号パンフレットで開示されている。
【0062】
医薬品添加物または浸透増強剤も当業者に知られている。適する浸透増強剤の非限定的な例には、エタノール、メチルラウレート、オレイン酸、イソプロピルミリステートおよびグリセロールモノラウレートが挙げられる。当業者に知られている他の浸透増強剤は、米国特許第4,849,224号明細書および米国特許第4,855,294号明細書ならびに国際公開第89/07951号パンフレットで開示されている。
【0063】
図4に示した薬物送出用具40は、以下の一般的な方法を用いて調製することが可能である。望まれる治療薬48およびこうした任意の医薬品添加物を適する溶媒に溶解させることにより溶液を調製し、接着剤の形成前、接着剤の形成中または本明細書に記載された反応性溶液に直接的に可塑剤に混合する。重合後、材料が装填された得られた接着剤ヒドロゲルを裏地層42上に貼合わせる。装填された接着剤44を覆うために剥離ライナー46を被着させる。打抜きは必要に応じて行う。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の親水性感圧接着剤を含有する生体用電極の上面図である。
【図2】図1の生体用電極の分解断面図である。
【図3】本発明の親水性感圧接着剤を含有する医療用哺乳動物皮膚カバーの断面図である。
【図4】本発明の親水性感圧接着剤を含有する薬物送出器具の断面図である。
【図5】本発明の親水性感圧接着剤を用いる生体用電極の分解図である。
【実施例】
【0065】
以下の非限定的な実施例によって本発明を更に例示する。実施例において、すべての部は特に指定がない限り重量による。
【0066】
[試験方法]
ガスクロマトグラフ分析
内部標準ガスクロマトグラフ試験方法によって残留メタクリル酸および無水メタクリル酸の分析を実行する。0.01%(W/W)のメタクリル酸および0.001%(W/W)の無水メタクリル酸を含有する混合標準を2−エチルヘキシルアクリレートの0.001%(W/W)内部標準でスパイクされた安定化テトラヒドロフラン(THF)の中で調製した。サンプルを溶解させ、0.001%(W/W)の2−エチルヘキシルアクリレート内部標準でスパイクされた安定化THF中で10%(W/W)に希釈した。Rtx−1701、30m、ID0.32mm、0.5μmのdfキャピラリーGCカラム(14%シアノ−プロピル−フェニル−86%ジメチルポリシロキサン)を用いて分離を実行した。ヘリウムをキャリアガスとして用いた。15分にわたる3.6mL/分、その後、9.6mL/分の最終フローへの2分にわたる3mL/分での傾斜および1分にわたる保持のカラムフロープログラムを用いた。0分にわたる50℃、その後、200℃への10℃/分での傾斜、0分にわたる保持、その後、270℃への30℃/分での傾斜および0.67分にわたる保持の炉温度プログラムを用いる。パージバルブを最初に閉じ、その後、1分で開けて、分流のない注入モードでガスクロマトグラフを運転した。注入口を170℃で運転し、水素炎イオン化検出器(FID)を290℃で維持した。標準およびサンプルのための3μLの注入体積を用いた。
【0067】
粘着性値
硬化の直後に接着剤組成物の初期粘着性を評価した。この試験において、親指でサンプルに確かな圧力を加え、親指を取り去った。粘着性を定性的に評価し、表1により1〜6の値を割り振った。この尺度で、2、3および4の粘着性値は、粘着性を有するのに十分な伸展性と凝集強度を有するのに十分な一体性の望ましいバランスを有する接着剤を表した。しかし、受けいれられない値は1、5および6である。これらの値は、(1)本質的に粘着性のない組成物、(5)凝集強度を欠き、接着剤転写を示す組成物および(6)硬化サイクル後に液状を保持する未硬化組成物を表している。
【0068】
【表1】

【0069】
[実施例1A]
一般に、公称分子量12000のポリエチレングリコールをメタクリレートで末端封止して、米国特許出願公開第20030203011号明細書に記載された手順を用いてオリゴマー前駆体としてポリエチレングリコールジメタクリレート(「DMPEG」)を提供した。詳しくは、500グラムのポリグリコール12000S(0.0365モル、ドイツ国ゲンドルフのクラリアント(Clariant GmbH(Gendolf,Germany))から購入したもの)を100℃で乾燥窒素の雰囲気下で溶融させた。0.23グラムの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI))から購入した「BHT」)および14.08グラムの無水メタクリル酸(0.091モル、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI))から購入したもの)を溶融させた材料に添加した。得られた混合物を100℃で乾燥空気の雰囲気下で6時間にわたり保持し、その後、65℃に冷却した。その後、得られた材料を真空でストリッピングして、内部コンデンサを有する0.04m2のガラス転圧式フィルム蒸発器を用いて過剰の無水メタクリル酸および副生物メタクリル酸の大部分を除去した。ジャケットを100℃に、コンデンサを15℃に、ロータを175rpmに、および真空を約6マイクロメートルHgに設定した。
【0070】
反応で用いられたPEGの未反応−OH官能基を監視することにより反応の完了を決定した。残留−OH基はフェニルイソシアネートにより誘導される。誘導体はサイズ排除カラム(Jordi 100A)を用いてHPLCによって分離し、230nmでのUV吸収を測定することにより決定した。分析は、封止反応が97%完了であったことを示した。残留無水メタクリル酸およびDMPEGのメタクリル酸レベルをそれぞれ122ppmおよび1904ppmであるとGCによって決定した。
【0071】
10グラムのDMPEGを45グラムのDI水に溶解させた。4グラムの塩化カリウム(ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI))から購入したもの)、35グラムのポリエチレングリコール300(ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカルズ(Dow Chemicals(Midland,MI)から購入したもの)、1.7グラムのエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(架橋剤)(SR415というブランドでペンシルバニア州ウェストチェスターのサートマーケミカルズ(Sartomer Chemicals(Westchester,PA))から購入したもの)および0.2グラムの2−ヒドロキシ−1−[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(「イルガキュア(IRGACURE)」2959というブランドでニューヨーク州ホーソンのチバ・ガイギー・コーポレーション(Ciba−Geigy Corporation(Hawthorne,NY))から入手できる)をこの溶液に添加した。反応性溶液のpHを5.0と測定した。118W/cm(300W/インチ)Hバルブを備えたフュージョンUVインコーポレーテッド(Fusion UV Inc.)製の「フュージョン(Fusion)」300システムを用いて1.5mm(60ミル)の深さであったポリエチレン発泡体製溜めの中で反応性溶液をUV硬化させた。全エネルギーを550mJ/cm2で維持した。
【0072】
[実施例1Bおよび比較例A]
比較例Aを酢酸で3.5のpHに調節し、実施例1Bを水酸化ナトリウムで7.5にpH調節したことを除き(酢酸および水酸化ナトリウムは両方ともウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI))から購入した)、実施例1Aのように2つの追加の反応性溶液を製造した。比較例Aおよび実施例1Bも「フュージョン(Fusion)」300システムUVランプ下で溜めの中でUV硬化させた。粘着性値および残留メタクリル酸レベルを表2に示している。
【0073】
【表2】

【0074】
[比較例B−Eおよび実施例2A−2D]
反応性溶液を実施例1Aのように配合した。比較例B−Eを反応性溶液から製造し、メタクリル酸濃度を原液メタクリル酸(ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI))から購入したもの)の添加によって調節し、酸濃度をそれぞれ225、350、600および850ppmであるようにした。pH値を原液メタクリル酸の添加後に測定し、配合物を実施例1Aのような硬化のための条件に供した。比較例B−Eが硬化しなかったことに気付くとともに粘着性値を割り振った後、比較例B−Eの未反応溶液を水酸化ナトリウムで中性pHにpH調節し、再び硬化条件に供した。得られたヒドロゲル材料を実施例2A−2Dと指定した。実施例2A−2Dおよび比較例B−Eに関する粘着性値を表3に示している。
【0075】
【表3】

【0076】
[実施例3A−3H]
反応性溶液を実施例1Aに略述した手順と同様に配合した。実施例3A−3Dを前駆体から製造し、酸濃度を原液アクリル酸(ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI))から購入したもの)の添加によって調節した。メタクリル酸のレベルを95ppmで維持しつつアクリル酸濃度を実施例3A−3Dにおいてそれぞれ125、250、500および750ppmに調節した。pH値を添加後に測定し、配合物を実施例1Aのように硬化させた。実施例3E-3Hの反応性溶液を後で水酸化ナトリウムにより中性pHにpH調節し硬化させたことを除き、4つの追加の反応性溶液実施例3E-3Hを同じ方式で調製した。実施例3A-3Hに関する粘着性値は表4に示している。
【0077】
【表4】

【0078】
[実施例3Iおよび3Jならびに比較例FおよびG]
反応性溶液を実施例1Aに略述した手順と同様に配合した。比較例FおよびGを前駆体から製造し、酸濃度を原液アクリル酸(ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI))から購入したもの)の添加によって調節した。メタクリル酸のレベルを比較例FとGの両方で300ppmに調節しつつアクリル酸濃度を比較例Fにおいて750ppmに、および比較例Gにおいて2500ppmに調節した。pH値を添加後に測定し、配合物を実施例1Aのように硬化させた。2つの追加の反応性溶液実施例3Iおよび3Jを同じ方式で調製し、実施例3Iは750ppmのアクリル酸含有率を有し、実施例Jは2500ppmのアクリル酸含有率を有していた。メタクリル酸のレベルを実施例3Iと3Jの両方で300ppmに調節した。3Iおよび3Jの反応性溶液を水酸化ナトリウムで中性pHにpH調節し、硬化させた。比較例FおよびGならびに実施例3Iおよび3Jに関する粘着性値を表5に記載している。
【0079】
【表5】

【0080】
[実施例4および比較例H]
実施例4を以下の方式で調製した。一般に、16000の公称分子量のエチレングリコールとプロピレングリコール(75/25)の水溶性ランダムコポリマーをダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Company)から購入し、米国特許出願公開第2003/0203011号明細書に記載されたように無水メタクリル酸で封止した。詳しくは、480グラムの「ウコン(UCON)」−75H−90000(0.030モル、ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Co.(Midland,MI))から購入したもの)、0.25グラムの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI))から購入したBHT)、16.3グラム(0.106モル)の無水メタクリル酸(ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI))から購入したもの)および2グラム(0.023モル)のメタクリル酸(ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI))から購入したもの)を組み合わせ、90/10窒素/酸素の雰囲気下で合計で48時間にわたり加熱した。この時間の間に、12時間ごとに追加0.12グラムのBHTを添加した。反応の終わりに、約5mmHgの真空を反応容器で引き、空気を1時間にわたり混合物にパージして、未反応無水メタクリル酸の大部分を追い出した。最後に、1グラムの水を添加し、混合物を65℃で3時間にわたり攪拌した。
【0081】
残留メタクリル酸をポリグリコールジメタクリレートの1.4%w/wであると決定した。45グラムのDI水に10グラムを溶解させることによりポリグリコールジメタクリレートをオリゴマー前駆体溶液に配合した。4グラムの塩化カリウム(ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI))から購入したもの)、26グラムのメトキシポリエチレングリコール350(ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Co.(Midland,MI))から購入したもの)、10グラムのプロピレングリコール(ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI)))、4グラムのエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(SR415というブランドでペンシルバニア州ウェストチェスターのサートマーケミカルズ(Sartomer Chemicals(Westchester,PA))から購入したもの)および0.2グラムの2−ヒドロキシ−1−[4−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパン(「イルガキュア(IRGACURE)」2959というブランドでニューヨーク州ホーソンのチバ・ガイギー・コーポレーション(Ciba Geigy Corporation(Hawthorne,NY))から入手できる)をこの溶液に添加した。溶液のpHを水酸化ナトリウムで7.0に調節した。118W/cm(300W/インチ)Hバルブを備えたフュージョンUVインコーポレーテッド(Fusion UV Inc.)製の「フュージョン(Fusion)」300システムを用いて1.5mm(60ミル)の深さであったポリエチレン発泡体製溜めの中で実施例4をUV硬化させた。全エネルギーを550mJ/cm2で維持した。pHを酢酸で3.5に調節したことを除き、実施例4と同じ方式で同じ前駆体溶液比較例Hを調製した。比較例Hも実施例4と同じ硬化条件に供したが、比較例Hは硬化しなかった。実施例4および比較例Hに関する粘着性値を表6に示している。
【0082】
【表6】

【0083】
[実施例5A、5Bおよび比較例I、J]
一般に、ポリエーテルジアクリルアミドを含有するオリゴマー前駆体溶液をカントナー(Kantner)らに譲渡された米国特許第5,489,624号明細書に略述された手順により合成した。詳しくは、一定量のMW2,000のポリ(エチレンオキシド)ジアミン(「ジェファーミン(Jeffamine)」ED−2001というブランドでテキサス州ヒューストンのテキサコ・ケミカル・カンパニー(Texaco Chemical Company(Houston,TX))から入手できる)を55℃の炉内で4時間にわたり保持することにより溶融させた。200グラムの量のポリ(エチレンオキシド)ジアミンを74.4グラムの脱イオン水と74.4グラムのMW300のポリエチレングリコール(PEG300)の混合物に溶解させ、放置して室温に冷却した。得られた溶液を1リットルのガラス容器に投入し、上部機械的攪拌パドルを溶液に浸漬させつつ室温で水浴に入れた。16.68グラムの量のイソホロンジイソシアネート(IPDI)(ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI))から入手できる)を数分の過程にわたって分割して添加して、45℃より低い温度に維持した。満足に攪拌するには溶液が粘性過ぎるようになるまで、攪拌を10分にわたり続けた。混合パドルを取り除き、6.96グラムの2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン−5−オン(VDM)(ニュージャージー州プリンストンのS.N.P.E(Princeton,NJ))から入手できる)を溶液に添加し混合して、均質混合物を得た。その後、それに蓋を付け、室温で一晩暗所に放置した。
【0084】
連鎖延長され官能化された得られたポリ(エチレングリコール)オリゴマー前駆体の概略分子量は8000であり、ジアミンとジイソシアネートが高純度であるとともに反応が副反応なしで完了に達したという仮定による第1の原則に基づいて計算した。得られた60%の固溶体を1/1PEG300/水の等量で30%固体に希釈し、0.5重量%の2−ヒドロキシ−1−[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン光開始剤を添加した。溶液のpHを8.5と測定した。
【0085】
2つの等部分に溶液を最初に分割することにより実施例5A、5Bおよび比較例I、Jを調製した。第1の部分を酢酸で4.5のpHに調節した。その後、この第1の部分を更に2つの部分に分けた。それらの部分は比較例Iおよび実施例5Aを表している。その後、実施例5Aをメタクリル酸でスパイクして、250ppmの最終濃度を得た。その後、8.5のpHを有していた元の溶液の第2の部分を更に2つの部分に分けた。それらの部分は比較例Jおよび実施例5Bを表している。実施例5Bも250ppmの最終濃度にメタクリル酸でスパイクした。比較例Jは、pH調節もメタクリル酸によるスパイクもされなかった点で対照として用いた。118W/cm(300W/インチ)Hバルブを備えたフュージョンUVインコーポレーテッド(Fusion UV Inc.)製の「フュージョン(Fusion)」300システムを用いて1.5mm(60ミル)の深さであったポリエチレン発泡体製溜めの中で実施例5A、5Bおよび比較例I、JをUV硬化させた。全エネルギーを550mJ/cm2で維持した。硬化後の粘着性値を表7に示している。
【0086】
【表7】

【0087】
本発明の実施形態を記載してきた一方で、本発明の精神および範囲を逸脱せずに本明細書に記載された実施形態の種々の特徴に対して変更および修正をなし得ることは認められるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感圧接着剤ヒドロゲルを製造する方法であって、
(A)エチレン系不飽和基で末端封止されたポリエーテル部分を含むオリゴマー前駆体であって、メタクリル酸が付随されているオリゴマー前駆体を提供する工程と、
(B)二官能性エチレン系不飽和モノマー、三官能性エチレン系不飽和モノマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されたエチレン系不飽和架橋剤を提供する工程と、
(C)約3.5〜約9の間のpHで前記メタクリル酸の存在下で水の中で前記オリゴマー前駆体と前記エチレン系不飽和架橋剤をラジカル硬化させて、前記感圧接着剤ヒドロゲルを提供する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記ポリエーテル部分がポリエチレングリコール、ポリ[エチレングリコール−コ−プロピレングリコール]ランダムコポリマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリエーテル部分と無水メタクリル酸を反応させることによりエチレン系不飽和基が提供される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(A)でオリゴマー前駆体を提供することが、ポリエーテルと無水メタクリル酸を反応させることを含み、前記オリゴマー前駆体を水に溶解させてオリゴマー前駆体溶液を提供する工程を更に含み、前記オリゴマー前駆体がポリエチレングリコールジメタクリレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記メタクリル酸が約100ppmより高い濃度で反応性溶液中に存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記オリゴマー前駆体が少なくとも約6000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
エチレン系不飽和架橋剤を提供する工程(B)が、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレートおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群から架橋剤を選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(C)で前記オリゴマー前駆体と前記エチレン系不飽和架橋剤をラジカル硬化させることが過酸化物捕捉剤の存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(C)で前記オリゴマー前駆体と前記エチレン系不飽和架橋剤をラジカル硬化させることが、開始剤を添加し、前記オリゴマー前駆体および前記架橋剤に化学線を照射して、重合反応を開始させるとともに感圧接着剤ヒドロゲルを提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(C)で前記オリゴマー前駆体と前記エチレン系不飽和架橋剤をラジカル硬化させることが、開始剤を添加し、前記オリゴマー前駆体および前記架橋剤に紫外線を照射して、重合反応を開始させるとともに感圧接着剤ヒドロゲルを提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(C)で前記オリゴマー前駆体と前記エチレン系不飽和架橋剤をラジカル硬化させることが、開始剤材料を添加して、酸化/還元反応を開始させて、重合を開始させるとともに感圧接着剤ヒドロゲルを提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程(C)で前記オリゴマー前駆体と前記エチレン系不飽和架橋剤をラジカル硬化させることが、前記オリゴマー前駆体と前記エチレン系不飽和架橋剤を同じ体積の水に溶解させて反応性溶液を提供し、紫外線開始剤材料を前記反応性溶液に添加し、前記反応性溶液に紫外線を照射して、重合反応を開始させるとともに感圧接着剤ヒドロゲルを提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(C)で前記オリゴマー前駆体と前記エチレン系不飽和架橋剤をラジカル硬化させることが、別個の体積の水に前記オリゴマー前駆体と前記エチレン系不飽和架橋剤を溶解させてオリゴマー前駆体溶液とエチレン系不飽和モノマー溶液を提供し、前記オリゴマー前駆体溶液と前記エチレン系不飽和モノマー溶液を組み合わせて反応性溶液を提供し、紫外線開始剤材料を前記反応性溶液に添加し、前記反応性溶液に紫外線を照射して、重合反応を開始させるとともに感圧接着剤ヒドロゲルを提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記感圧接着剤ヒドロゲルが式I
MO(CH2CH2O)mH I
(式中、
Mは水素またはC1〜C6アルキルであり、
mは約1〜約25の範囲の整数である)
によって表された化合物を含む極性可塑剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
工程(C)で前記オリゴマー前駆体と前記エチレン系不飽和架橋剤をラジカル硬化させることが約5〜約9の間のpHで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記感圧接着剤ヒドロゲルを物品に導入する工程(D)を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記物品が医療用具である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記感圧接着剤ヒドロゲルが塩を更に含み、前記医療用具が生体用電極である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記感圧接着剤ヒドロゲルが抗微生物剤を更に含み、前記医療用具が創傷包帯である、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−18989(P2013−18989A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−204720(P2012−204720)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2007−544340(P2007−544340)の分割
【原出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】