説明

感度調整装置及び電波通信機器

【課題】簡易な機構により、用途に応じた感度となるようにアンテナによる電波の送信又は受信の感度を調整することのできる感度調整装置及びこれを適用した電波通信機器を提供する。
【解決手段】環状に形成されている表示部材本体の表面に、その表示部材本体の外周縁に沿って所定間隔毎にカレンダー表示部71が設けられるとともに、電波の透過を妨げる遮蔽部としての厚肉部74及びこれと隣り合い電波を透過させる開放部としての薄肉部75が、カレンダー表示部71に対応して複数組設けられているカレンダー表示部材7を備え、カレンダー表示部材7はアンテナ6を覆う位置に配置されるとともに、カレンダー部材移動手段78によってその環状中心を中心として回転することにより、アンテナ6に対するカレンダー表示部材7の遮蔽部及び開放部の位置を変更し、遮蔽部により遮蔽される電波の遮蔽度合を調整して、アンテナ6の感度を調整可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感度調整装置及びこれを適用した電波通信機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信機能を備える腕時計等の電子機器間において、無線方式によってデータのやり取りをしたり、情報の同期を取ったりする等、各種データの送信または受信(通信)を行う手法が浸透しつつある。
こうした無線通信によって送信または受信されるデータには個人情報も多く含まれる可能性がある。このため、個人のプライバシー等を保護するためにも、データの送信または受信は特定の電子機器から特定の電子機器に対して正確に行われる必要がある。
【0003】
しかし、身の回りに複数の電子機器がある場合、他の電子機器との干渉が起こって目的の電子機器との間で正確に無線通信を行うことができないおそれがある。特にBluetooth(登録商標)など波長の長い電波を取り扱う際には、障害物等に強く電波が遮断されにくいという性質があるために、他の電子機器との干渉を起こしやすい。
【0004】
従来、無線通信システムにおいて、他の電子機器との干渉を避けて、通信を行いたい電子機器同士を適切にペアリング(すなわち、初期の認識作業)する方法として、ペアリングしたい電子機器(電子デバイス)を互いに近傍となる位置に配置するとともに、一方の電子機器から、無線通信システムにおける標準の信号出力電力レベルよりも小さい電力レベルに制限された問い合わせ信号を送信し、他方の電子機器がこの問い合わせ信号を検出すると、これに対する応答信号を送信する。そして、当該電子機器が問い合わせ信号に応答する最初の電子機器であることに基づいて、双方の電子機器間で、ポイントツーポイント接続を開始するという手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような手法でペアリングを行った場合には、他の電子機器との干渉を避けて目的とする電子機器間でのみ通信を成立させ、適切にペアリングを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007−536852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電子機器間でデータの送信または受信を行う目的は様々であり、ペアリングを行う場合のように電子機器同士を接触させる程度に近接させて通信を行う場合の他、例えばユーザ自身が身に着けている携帯端末装置と腕時計等の電子機器との間で各種データの送信または受信を行う場合のように多少離れた位置にある電子機器間でデータの送信または受信を行う場合や、ユーザが手元から離してしまった電子機器の所在を捜索する場合のようにある程度離れた場所にあると想定される電子機器との間で送信または受信を行う必要がある場合もある。
【0008】
このため、電子機器間でデータの送信または受信を行う際の電波の送信または受信の感度は、その目的・用途・状況等に応じて適宜切り替えられることが求められる。
【0009】
この点、携帯電話やパーソナルコンピュータ(personal computer)等では、受信回路等、通信関連モジュールにおいて送信または受信の感度の切り替えを行っている。
しかし、特に、腕時計等の小型の電子機器では、バッテリの収容スペースに限りがあるため、できるだけ電力消費量を押えることが重要となるところ、この手法では、通信関連モジュールにおける電力消費量が多くなってしまうとの問題がある。
また、通信関連モジュールにおいて受信感度の切り替えを行う場合、モジュール等の内部機構が複雑化することにより耐衝撃性能等に制限が出るおそれもある。
【0010】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、電力消費量を抑えつつ、簡易な機構により、用途に応じた感度となるようにアンテナによる電波の送信または受信の感度を調整することのできる感度調整装置及びこれを適用した電波通信機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明に係る感度調整装置は、
外部の機器との間で無線信号を送信または受信するアンテナの感度を調整する感度調整装置であって、
環状に形成されている表示部材本体の表面に、その表示部材本体の周方向に沿って所定間隔毎にカレンダー表示部が施されているとともに、電波の透過を妨げる遮蔽部及びこれと隣り合い電波を透過させる開放部が、前記カレンダー表示部に対応して複数組設けられており、前記アンテナを上部から覆う位置に配置されるカレンダー表示部材と、
このカレンダー表示部材をその環状中心を中心として回転させて、前記アンテナに対する前記カレンダー表示部材の前記遮蔽部及び前記開放部の位置を変更し、前記遮蔽部により遮蔽される電波の遮蔽度合を調整することにより、前記アンテナの感度を調整するカレンダー部材移動手段と、
を備えていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る電波通信機器は、
請求項1又は請求項2に記載の感度調整装置と、
前記感度調整装置により電波の送信または受信の感度が調整されるアンテナと、
を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アンテナの感度を通信モードに適した感度に調整する手法としてカレンダー表示部材を回転させて遮蔽部により遮蔽される電波の遮蔽度合を調整することにより、アンテナの感度を調整するという機械的な構成をとっている。このため、受信回路等、通信関連モジュールにおいて送信または受信の感度の切り替えを行う場合と比較して、装置構成の簡易化、小型・軽量化を実現することができるとともに、アンテナの感度の調整にかかる電力消費量を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態における感度調整装置を適用した腕時計の正面図である。
【図2】図1の腕時計におけるII−II線断面図である。
【図3】図1の腕時計におけるモジュール部材を示す平面図である。
【図4】第1の実施形態における感度調整装置を示す平面図である。
【図5】図4におけるカレンダー表示部材のV−V線断面図である。
【図6】(A)は、アンテナによる電波の送信または受信の感度が最も高い状態となる場合のカレンダー表示部材とアンテナとの位置関係を示した平面図であり、(B)は、(A)におけるB−B線断面図である。
【図7】(A)は、アンテナによる電波の送信または受信の感度が中程度の状態となる場合のカレンダー表示部材とアンテナとの位置関係を示した平面図であり、(B)は、(A)におけるB−B線断面図である。
【図8】(A)は、アンテナによる電波の送信または受信の感度が最も低い状態となる場合のカレンダー表示部材とアンテナとの位置関係を示した平面図であり、(B)は、(A)におけるB−B線断面図である。
【図9】カレンダー表示部材の一変形例を示す斜視図である。
【図10】アンテナによる電波の送信または受信の感度が最も高い状態となる場合の図9に示すカレンダー表示部材とアンテナとの位置関係を示した断面図である。
【図11】カレンダー表示部材の一変形例を適用した場合にアンテナによる電波の送信または受信の感度が最も高い状態となる場合カレンダー表示部材とアンテナとの位置関係を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1から図8を参照しつつ、本発明にかかる感度調整装置及びこれを備える電波通信機器の好適な一実施形態について説明する。なお、以下では、本発明に係る感度調整装置を、電波通信機器としての機能を備える腕時計に適用した場合について説明するが、本発明を適用可能な実施形態はこれに限定されるものではない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る腕時計の腕時計本体の正面図であり、図2は、図1におけるII−II線に沿う断面図である。
本実施形態に係る腕時計100は、電気的な駆動により指針11(秒針11a、分針11b、時針11c)を回転させて時刻を表示するものである。
【0017】
この腕時計100は、中空の短柱形状に形成された本体ケース1を備えている。この本体ケース1の上下両端部(図1において上下端部)、つまり時計の12時方向側端部及び6時方向側端部には、時計バンド(図示せず)が取り付けられるバンド取付部12が形成されている。
【0018】
また、本体ケース1の外周部には、時刻合わせの指示、送信または受信の感度の調節等を行うための種々の操作指示が入力される複数の操作ボタン13が設けられている。
本実施形態において、操作ボタン13は、後述するアンテナ6による電波の送信または受信の感度を異にする複数の通信モードを切り替えることができ、通信モード切替手段として機能するものである。
具体的には、後述するように、最も低い電波の送信または受信の感度の下で実現されるペアリングモード、標準的な電波の送信または受信の感度で実現されるデータ同期モード、最も高い電波の送信または受信の感度で実現される端末捜索モード/忘れ物防止モードが、操作ボタン13による入力操作により選択、切り替え可能となっている。
【0019】
本体ケース1は、表面側(腕時計100の視認側、図2において上側)の開口部と、本体ケース1の裏面側(図2において下側)の開口部とを有している。そして、本体ケース1の表面側開口部には、透明なガラス等の材料で形成された風防部材2が図示しない防水リングを介して表面側開口部を閉塞するように取り付けられている。
一方、本体ケース1の裏面側開口部には、裏蓋部材3が防水リング3aを介して裏面側開口部を閉塞するように取り付けられている。本実施形態において、裏蓋部材3は、例えばステンレス、チタニウム等の金属材料によって形成されている。
また、本体ケース1の表面側開口部には、風防部材2の外周縁を上方から覆う庇部14aを有するリング状のベゼル部材14が本体ケース1の外側から嵌装されている。
【0020】
本体ケース1の内部には、ほぼ円柱形状に形成されたモジュール部材4が配置されている。モジュール部材4はモジュール保持部材5により、裏面側(図2において下側)から支持され、本体ケース1内でがたつかないように固定されている。
図3は、モジュール部材4を上側(腕時計100の視認側、図2において上側)から見た平面図である。なお、図3では、モジュール部材4上におけるカレンダー表示部材7(後述)及び文字板8の日付窓部81(後述)の対応位置を二点鎖線にて示している。
モジュール部材4は、腕時計100の指針11である秒針11a、分針11b、時針11cを運針させる時計ムーブメント(例えば駆動用のモータや輪列機構等。図示せず)、各種電子部品を実装した回路基板(図示せず)等が例えば樹脂等によって形成されたハウジング(図示せず)に組み込まれたものである。
【0021】
図2及び図3に示すように、モジュール部材4の上面(時計の視認側の面、図2における上側の面)であって、腕時計100におけるほぼ4時と5時との間にあたる位置には、凹部41が形成されている。
凹部41の内部には、例えばチップ状又はループ状の小型のアンテナ6が収納されている。なお、アンテナ6が配置される位置等はここに例示したものに限定されず、他の位置であってもよい。
【0022】
アンテナ6は、外部の機器(例えば外部の端末装置G、図1参照)との間で無線信号を送信または受信するものであり、例えばBluetooth(登録商標)等の規格により通信を行う。なお、アンテナ6の通信規格、通信可能な周波数帯は、Bluetooth(登録商標)に限定されず、腕時計100によって行われる各種通信に適したもの(すなわち、周波数等が適合するもの)が適宜適用される。また、アンテナ6は小型のものであればよく、種類、形状は特に限定されない。また、後述するように、本実施形態では、アンテナ6として、最大で5m程度の範囲内に存する機器との間で信号の送信または受信を行うことのできる電波の送信または受信の感度のものを適用しているが、アンテナ6の電波の送信または受信の感度はこれに限定されず、感度を最大としたときにさらに離れた機器との間で信号の送信または受信を行うことのできるものを用いてもよい。
このアンテナ6は、図示しないコネクタ等を介して回路基板と電気的に接続されており、このコネクタを介して、図示しない電波の送信または受信を制御する制御回路(以下「送受信制御回路部」と称する)と接続されている。
なお、本実施形態では、アンテナ6及び図示しない送受信制御回路部自体は、常に最大の電波の送信または受信の感度(例えば本実施形態ではアンテナ6から5m程度の範囲内で電波を送信または受信することのできる感度)が維持されており、感度調整装置70(図4参照)によるアンテナ6の被遮蔽範囲(すなわち、アンテナ6に入る電波の遮蔽度合)を変えることでアンテナ6の電波の送信または受信の感度を機械的構成により調整するようになっている。
【0023】
また、凹部41の内部には、凹部41の内側面に沿って、アンテナ6の側面を取り囲むように電波遮蔽部材42が配置されている。電波遮蔽部材42は、例えばフェライト等の磁性材料や合成樹脂等に磁性粉を含有させた材料等によって形成された磁性体である。電波遮蔽部材42は、アンテナ6に入射しようとする電波を磁性材料の磁気損失により吸収して電波の透過を妨げるものである。
このような電波遮蔽部材42をアンテナ6の側面を取り囲むように配置することにより、アンテナ6による電波の送信または受信方向が上下方向に限定される。さらに、本実施形態では、前述のように裏蓋部材3が金属材料によって形成されているため、裏蓋部材3側からの電波は裏蓋部材3によって遮蔽され、アンテナ6による電波の送信または受信方向は上方向(視認側方向、図2において上方向)に限定されている。
【0024】
モジュール部材4の上には、カレンダー表示部材7がアンテナ6を上部から覆う位置に配置されている(図3参照)。
カレンダー表示部材7は、環状に形成されている表示部材本体7Aの表面に、その表示部材本体7Aの周方向に沿って所定間隔毎にカレンダー表示部(図4のカレンダー表示部71)が施されているとともに、電波の透過を妨げる遮蔽部(図4の厚肉部74)及びこれと隣り合い電波を透過させる開放部(図4の薄肉部75)が、カレンダー表示部71に対応して複数組設けられているものである。カレンダー表示部材7は、その表示部材本体7Aの環状中心を中心として回転可能に設けられている。図3に示すように、本実施形態では、カレンダー表示部材7はモジュール部材4の外周縁に沿う形状となっている。
本実施形態では、カレンダー表示部材7と、このカレンダー表示部材7をその環状中心を中心として回転させるカレンダー部材移動手段78とによってアンテナ6による電波の送信または受信の感度の調整を行う感度調整装置70が構成されている。
【0025】
図4は、本実施形態における感度調整装置70の概略構成を示す平面図である。
本実施形態において、カレンダー表示部材7は、電波を吸収する電波吸収体等、電波の透過を妨げることのできる材料で形成されている。具体的には、例えば、フェライト等の磁性材料や磁性粉を含有する材料を所定の形状に成型したものが適用される。なお、カレンダー表示部材7を形成する材料はここに示したものに限定されない。
図4に示すように、本実施形態では、カレンダー表示部材7は、環状に形成されている表示部材本体7Aの表面に、カレンダー表示部71として日付表示に用いられる「1」から「31」の数字が、カレンダー表示部材7の周方向に沿って時計回りに所定間隔毎に配置された日車である。
【0026】
図5は、図4に示すカレンダー表示部材7のV-V線に沿う断面図である。
本実施形態において、カレンダー表示部材7には、電波の透過を妨げる遮蔽部及びこれと隣り合い電波を透過させる開放部が、カレンダー表示部71(本実施形態では日付表示部)に対応して複数組(すなわち31組)設けられている。
すなわち、図4及び図5に示すように、カレンダー表示部材7の裏面側であって各カレンダー表示部71(日付表示部)に対応する位置は、彫り込まれて凹部が形成されており、この凹部に対応する部分は他の部分よりも電波の透過方向における厚みが薄い薄肉部75となっている。また、この薄肉部75と隣り合う薄肉部75以外の部分は薄肉部75よりも電波の透過方向における厚みが厚い厚肉部74となっている。
本実施形態では、厚肉部74が電波の透過を妨げる遮蔽部を構成し、薄肉部75が電波を透過させる開放部を構成している。
本実施形態において、薄肉部75(すなわちこれを形成している凹部)は、カレンダー表示部材7の環状中心を中心としたときの中心角が62分の360度かこれよりも小さい角度となる扇形状に形成されている。なお、薄肉部75の形状や大きさはこれに限定されない。
【0027】
図4及び図5に示すように、カレンダー表示部材7の表示部材本体7Aの内側面には、その周方向に沿ってラック(歯車)72が形成されている。
モジュール部材4の上には、このカレンダー表示部材7のラック72と噛み合うカレンダー部材駆動歯車76aを含むカレンダー用輪列機構76、及びこのカレンダー用輪列機構76と接続されカレンダー用輪列機構76を駆動させるモータ77を備えるカレンダー部材移動手段78が設けられている。モータ77は、例えばステッピングモータである。
【0028】
カレンダー部材移動手段78は、操作ボタン13によって通信モードが切り替えられた際に、アンテナ6の電波の送信または受信の感度が当該通信モードに適したものとなるようにカレンダー表示部材7を回転移動させるようになっている。
具体的には、カレンダー部材移動手段78は、モータ77によってカレンダー用輪列機構76を駆動させ、その動力をカレンダー表示部材7に伝えてカレンダー表示部材7を回転(本実施形態では反時計回りに回転移動)させる。これにより、カレンダー表示部材7の遮蔽部である厚肉部74及び開放部である薄肉部75の位置を変更し、遮蔽部である厚肉部74により遮蔽される電波の遮蔽度合を調整することにより、アンテナ6の電波の送信または受信の感度を調整可能に構成されている。
なお、カレンダー表示部材7の回転方向、これを回転させるカレンダー部材移動手段78を構成するカレンダー用輪列機構76及びモータ77の構成等は、ここに例示したものに限定されない。例えば、カレンダー部材移動手段78が、腕時計100の指針11を回転させる機構等、他の駆動機構と兼用される構成としてもよい。
【0029】
カレンダー表示部材7と風防部材2との間には文字板8が配置されている。また、この文字板8と風防部材2との間には、文字板8の外縁部を上部から覆う見切り部材9が配置されている。本実施形態では、図1に示すように、見切り部材9には、その周方向に沿って、腕時計100の時刻表示として機能する時字91が設けられている。
【0030】
図1に示すように、文字板8のほぼ中央には、モジュール部材4側から軸部材10が貫通しており、この軸部材10には、腕時計100の指針11である秒針11a、分針11b、時針11cがそれぞれ回転可能に支持されている。なお、カレンダー表示部材7と風防部材2との間にはアナログ方式の文字板8の他に例えば数字や文字等をデジタル方式で表示する液晶表示部等が設けられていてもよい。
本実施形態において、文字板8における前記アンテナ6に対応する位置、すなわち、腕時計100における4時と5時との間(図1における4時の時字91と5時との時字91との間)には、カレンダー表示部材7のカレンダー表示部71を露出表示させる日付窓部81が設けられている。
【0031】
図6(A)及び図6(B)は、アンテナによる電波の送信または受信の感度が最も高い状態となる場合のカレンダー表示部材とアンテナとの位置関係を示したものであり、図7(A)及び図7(B)は、アンテナによる電波の送信または受信の感度が中程度の状態となる場合のカレンダー表示部材とアンテナとの位置関係を示したものであり、図8(A)及び図8(B)は、アンテナによる電波の送信または受信の感度が最も低い状態となる場合のカレンダー表示部材とアンテナとの位置関係を示したものである。
図6(A)、図7(A)、図8(A)では、文字板8の日付窓部81を太線で示し、アンテナ6及び薄肉部75の位置を破線で示し、薄肉部75のうち、電波の透過方向においてアンテナ6と重なっている部分に格子状の網掛けを施している。
【0032】
図6(A)及び図6(B)に示すように、文字板8の日付窓部81にカレンダー表示部71が表示されている状態のときには、カレンダー表示部材7の薄肉部75の全体がアンテナ6と重なり合う位置に配置されるため、遮蔽部である厚肉部74により遮蔽される電波の遮蔽度合が小さくなる。これにより、アンテナ6の電波の送信または受信の感度は最も高い状態となる。本実施形態では、特に操作ボタン13による通信モードの切り替えが行われないときには、日付窓部81に現在の日付を示す日付表示であるカレンダー表示部71(例えば現在の日付が「1日」である場合には、図6(A)に示すように「1」)が表示された状態となるようになっており、アンテナ6の電波の送信または受信の感度は最も高い状態に保たれている。
【0033】
これに対して、アンテナ6の電波の送信または受信の感度を中程度の状態としたいときには、カレンダー部材移動手段78を動作させることにより、図7(A)及び図7(B)に示すように、文字板8の日付窓部81からカレンダー表示部71が少しずれた状態で表示される位置までカレンダー表示部材7を移動させる。これにより、カレンダー表示部材7の薄肉部75のほぼ半分がアンテナ6と重なり合う位置に配置され、アンテナ6の半分程度が厚肉部74により覆われた状態となる。これにより、遮蔽部である厚肉部74により遮蔽される電波の遮蔽度合が図6(A)及び図6(B)に示す状態のときよりも大きくなり、アンテナ6の電波の送信または受信の感度は中程度の状態となる。
【0034】
また、アンテナ6の電波の送信または受信の感度を最も低い状態としたいときには、カレンダー部材移動手段78を動作させることにより、図8(A)及び図8(B)に示すように、カレンダー表示部71が文字板8の日付窓部81からほとんど露出しない位置までカレンダー表示部材7を移動させる。これにより、アンテナ6の上部全体にカレンダー表示部材7の厚肉部74が重なり合う状態となる。このため、遮蔽部である厚肉部74により遮蔽される電波の遮蔽度合が最も大きくなり、アンテナ6の電波の送信または受信の感度は最も低い状態となる。
【0035】
この他、腕時計100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、等から構成される制御部、電波の送信または受信を制御する送受信制御回路部、時刻補正等を行う計時回路部、発振回路部、指針11を駆動させる指針駆動回路部等(いずれも図示せず)を備えている。これらは、一般的な腕時計に設けられているものと同様のものであるため、図示及び説明を省略する。
【0036】
次に、本実施形態における感度調整装置70及び電波通信機器である腕時計100の作用について説明する。
【0037】
本実施形態において、腕時計100は、前述のように、感度調整装置70により遮蔽部である厚肉部74によって遮蔽される電波の遮蔽度合を調整することにより、アンテナ6の電波の送信または受信の感度を調整できるようになっている。
すなわち、腕時計100は、異なる電波の送信または受信の感度の下で実現される複数の通信モード(本実施形態では後述する「ペアリングモード」「データ同期モード」「端末捜索モード/忘れ物防止モード」)を実現可能となっており、感度調整装置70は、これら各通信モードに適した電波の送信または受信の感度となるように遮蔽部である厚肉部74によって遮蔽される電波の遮蔽度合を調整する。
なお、通信モードの種類はこれに限定されない。「データ同期モード」「端末捜索モード/忘れ物防止モード」のうちいずれか1つのみを有するものであってもよいし、これら3つの通信モード以外の通信モードを実現可能となっていてもよい。
【0038】
このうち、ペアリングモードは、例えばユーザが腕時計100と外部の新たな端末装置G(例えば友人の端末装置等)との間で新たにペアリングを成立させ(すなわち、端末装置間において相互に関連付けを行う初期の登録作業を行い)、データの送信または受信等ができる状態にするための通信モードである。例えば腕時計100と新たな端末装置Gである友人の携帯電話との間でペアリングを行う場合には、腕時計100からペアリングしたい端末装置Gに対して問合せ信号を送信し、送信先の端末装置Gからこの問合せ信号に対する応答信号が腕時計100に送信され、腕時計100のアンテナ6がこの応答信号を受信して制御部に送ると、腕時計100と当該端末装置Gとの間でペアリングが成立する。
【0039】
ペアリングを行う際には、周囲に存する他の端末装置との間で予期せぬペアリングが成立することのないように、腕時計100と端末装置Gとが接触又はそれに近い距離まで接近した場合にのみ電波の送信または受信が可能な程度までアンテナ6の電波の送信または受信の感度が低くなるように調整することが好ましい。
このため、本実施形態では、操作ボタン13等からペアリングモードを選択する指示が入力されペアリングモードで通信を行う通信モードとなった場合には、カレンダー部材移動手段78のモータ77が動作することによりカレンダー用輪列機構76を構成する歯車が順次回転し、カレンダー部材駆動歯車76aがカレンダー表示部材7のラック72と噛み合って回転する。これにより、カレンダー表示部71が文字板8の日付窓部81からほとんど露出しない位置、すなわち、2つのカレンダー表示部71(図8(A)では、「1」と「2」)の中間位置が日付窓部81の中心に配置される位置までカレンダー表示部材7が反時計回りに回転する。これによって、遮蔽部である厚肉部74により遮蔽される電波の遮蔽度合が最も大きくなり、アンテナ6の電波の送信または受信の感度はペアリングモードに適した最も低い感度となる。
この状態で、ユーザがペアリングの対象となる端末装置を腕時計100に接触又は10cm程度の距離まで近接させると、腕時計100のアンテナ6からペアリングのための問合せ信号(例えば腕時計100の個体識別番号等を含む信号)が送信され、この問合せ信号を受信可能な距離にある端末装置Gのみが当該信号を受信する。問合せ信号を受信した端末装置Gは応答信号(例えば当該端末装置の個体識別番号等を含む信号)を腕時計100に返信し、腕時計100のアンテナ6がこの応答信号を受信すると、当該応答信号が制御部に送られ、制御部は当該端末装置Gを以後腕時計100との間でデータの送信または受信が可能な端末装置として登録する。これによりペアリング(端末装置間の初期登録作業)が完了する。
【0040】
なお、ペアリングが成立したか否かは、図示しないライトの点滅、アラーム音等によりユーザに報知されるようにすることが好ましい。
また、アンテナ6の電波の送信または受信の感度の最も低い状態(すなわち、遮蔽部である厚肉部74により遮蔽される電波の遮蔽度合が最も大きい状態)では目的の端末装置との間で適切にペアリングを成立させることができなかった場合(すなわち、ペアリングが成立していない旨の表示や警告等がされた場合)には、ユーザがさらに操作ボタン13を操作することにより、文字板8の日付窓部81からカレンダー表示部71が露出する位置までカレンダー部材移動手段78がカレンダー表示部材7を回転移動させて、開放部である薄肉部75がアンテナ6の上部を覆う位置にくるように調整した上で、再度ペアリングを試みるようにしてもよい。また、ペアリングが成立しないときには、特に操作ボタン13等による操作がない場合でも自動的にカレンダー部材移動手段78を動作させて、カレンダー表示部材7を回転移動させてもよい。この場合、例えばペアリングが成立するまで、カレンダー表示部材7を回転させ、厚肉部74により遮蔽される電波の遮蔽度合を徐々に小さくなるように変化させる。
【0041】
これに対して、データ同期モードは、例えば既に腕時計100との間でペアリングが成立している端末装置であって、ユーザが身につけている端末装置G等(例えば、ユーザの所持している図示しない携帯電話)、腕時計100の比較的近距離(例えばアンテナ6からの距離が1〜2m程度の範囲内)に位置する端末装置との間でデータの同期を図ることを想定した通信モードである。
【0042】
本実施形態では、操作ボタン13等からデータ同期モードを選択する指示が入力されデータ同期モードで通信を行う通信モードとなった場合には、カレンダー部材移動手段78のモータ77が動作することによりカレンダー用輪列機構76を構成する歯車が順次回転し、カレンダー部材駆動歯車76aがカレンダー表示部材7のラック72と噛み合って回転する。これにより、カレンダー表示部71が文字板8の日付窓部81からカレンダー表示部71(図7(A)では、「1」)が少しずれた状態で表示される位置までカレンダー表示部材7が反時計回りに回転する。これによって、開放部である薄肉部75のほぼ半分がアンテナ6と重なり合う位置に配置され、アンテナ6の半分程度が遮蔽部である厚肉部74により覆われて電波の遮蔽度合が中程度となり、アンテナ6の電波の送信または受信の感度はデータ同期モードに適した中程度の感度となる。
これにより、腕時計100は、アンテナ6が多少離れた距離にある端末装置との間で電波を送信または受信することのできる状態となり、例えばユーザが身に付けている携帯電話等との間でデータの送信または受信を行うことにより、相互のデータを同期させることができる。
【0043】
また、端末捜索モードは、例えばユーザが腕時計100との間でペアリング済みである自己又は友人の端末装置等の場所を捜索する場合を想定した通信モードであり、忘れ物防止モードは、例えばユーザが腕時計100との間でペアリング済みである自分の端末装置から所定の距離(例えば5m程度)以上離れたときに、ブザー等により警告を発することを想定した通信モードである。
【0044】
本実施形態では、操作ボタン13等から端末捜索モード又は忘れ物防止モードを選択する指示が入力され端末捜索モード又は忘れ物防止モードで通信を行う通信モードとなった場合には、文字板8の日付窓部81にカレンダー表示部71(図6(A)では、「1」)が表示されている通常の表示状態が維持される。
この状態において、カレンダー表示部材7の薄肉部75の全体がアンテナ6と重なり合う位置に配置されるため、遮蔽部である厚肉部74により遮蔽される電波の遮蔽度合が最も少なくなる。これにより、アンテナ6の電波の送信または受信の感度は端末捜索モード又は忘れ物防止モードに適した最も高い感度となる。
これにより、例えば端末捜索モードであれば、腕時計100から5m程度の範囲内に存するペアリング済みの端末装置Gに対して、腕時計100のアンテナ6から応答を要求する信号が送信され、端末装置Gがこの信号を受信して応答信号を腕時計100に送信すると、その旨がブザー等の音やライトの点滅等によりユーザに報知される。また、例えば忘れ物防止モードであれば、腕時計100のアンテナ6からペアリング済みの端末装置Gに対して応答を要求する信号が送信され、端末装置Gはこの信号を受信して応答信号を腕時計100に送信する。そして、端末装置Gからの応答信号が受信できなくなると、腕時計100の制御部は端末装置Gが所定の距離(本実施形態ではアンテナ6の電波の送信または受信の可能な範囲である5m)以上ユーザから離間したと判断して、その旨をブザー等の音やライトの点滅等によりユーザに報知する。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、異なる電波の送信または受信の感度の下で実現される複数の通信モード(例えばペアリングモード、データ同期モード、端末捜索モード/忘れ物防止モード)を実現可能であるため、ユーザの目的・用途に応じた各種の通信を行うことができる。
そして、腕時計100の場合、小型・軽量化が求められ、大型のバッテリを収容するスペースを確保することが難しいが、本実施形態における腕時計100は、カレンダー表示部材7とカレンダー部材移動手段78により構成される感度調整装置70を備えており、アンテナ6の電波の送信または受信の感度をこれらの通信モードに適した感度に調整する手法としてカレンダー表示部材7を回転させて遮蔽部である厚肉部74により遮蔽される電波の遮蔽度合を調整するという機械的な構成をとっているため、受信回路等、通信関連モジュールにおいて電波の送信または受信の感度の切り替えを行う場合と比較して、アンテナ6の電波の送信または受信の感度の調整にかかる電力消費量を抑えることができる。
そして、電力消費量を抑えることができることにより、大型のバッテリ等を備える必要がないため、装置の小型・軽量化を図ることができる。
また、遮蔽部である厚肉部74と開放部である薄肉部75とを有するカレンダー表示部材7を回転させることによりアンテナ6の電波の送信または受信の感度を調整することができるため、新たに電波の送信または受信の感度を調整するための部材を設けることなく通信モードに適した感度の調整を行うことが可能であり、装置構成の簡易化、小型・軽量化を実現することができる。
また、本実施形態では、電波の透過を妨げる遮蔽部である厚肉部74及びこれと隣り合い電波を透過させる開放部である薄肉部75が、各カレンダー表示部71に対応して複数組設けられている。このため、アンテナ6の電波の送信または受信の感度を調整する際、カレンダー表示部材7をカレンダー表示部71の半日分の幅ずつ移動させるだけで足り、カレンダー表示部材7を大幅に回転させる必要がない。これにより、アンテナ6の電波の送信または受信の感度を、迅速に所望の感度に調整することができる。
また、本実施形態では、電波を透過させる開放部である薄肉部75が、各カレンダー表示部71の位置に対応して複数設けられており、文字板8の日付窓部81から現在の日付に対応するカレンダー表示部71が露出している状態のときにはアンテナ6の電波の送信または受信の感度が最も良好な状態となっている。このため、日付が表示されている通常の表示状態では外部の端末装置Gと自由に電波の送信または受信が可能な状態が維持される。
また、このように、文字板8の日付窓部81から現在の日付に対応するカレンダー表示部71が露出している状態のときにはアンテナ6の電波の送信または受信の感度が最も良好な状態となっており、カレンダー表示部71が日付窓部81からずれるほど電波の送信または受信の感度が低くなっている。このため、ユーザは目視にて、容易にアンテナ6の電波の送信または受信の感度の状態を確認することができる。
【0046】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0047】
例えば、本実施形態では、カレンダー表示部材7を磁性材料等で構成された電波遮蔽体で形成し、開放部としてほぼ台形に彫り込まれ他の部分よりも電波透過方向における厚みを薄くした薄肉部75を備え、これよりも厚みの厚いその他の部分を遮蔽部としての厚肉部74とする構成を例としたが、遮蔽部としての厚肉部74及び開放部としての薄肉部75の形状・態様はこれに限定されない。
例えば、図9及び図10に示すように、内周面に沿ってラック272を備えるカレンダー表示部材200の裏面側に、カレンダー表示部271に対応して、各カレンダー表示部271のほぼ中心に対応する位置が最も肉薄となり、断面視がほぼ鋸歯状となる傾斜部を複数設けてもよい。この場合、傾斜面の最も深く彫り込まれた部分(すなわち、電波透過方向における厚みが最も薄くなっている部分)が開放部としての薄肉部275となり、鋸歯の頂点部分が遮蔽部としての厚肉部274となる。
この場合にも、カレンダー表示部271の全体が文字板8の日付窓部81から露出表示されている状態のときにはアンテナ6の上部が薄肉部275によって覆われるため、アンテナ6の電波の送信または受信の感度が最も良好となり、カレンダー表示部271の位置が日付窓部81からずれるにしたがってアンテナ6の上部が広く厚肉部274によって覆われるため、アンテナ6の電波の送信または受信の感度は徐々に低下していく。
【0048】
また、カレンダー表示部材の裏面側に複数の傾斜部を設ける場合、この傾斜部の断面視における形状は図9及び図10に示すような、薄肉部275の一方側の傾斜部の傾斜角度が他方よりも鋭角となる鋸歯形状に限定されない。
例えば、図11に示すように、カレンダー表示部材300の裏面側に、各カレンダー表示部371のほぼ中心に対応する位置が最も肉薄となり、各カレンダー表示部371同士の中間位置が最も肉厚となるような山型の凹凸を形成してもよい。
この場合には、各カレンダー表示部371のほぼ中心に対応する部分(すなわち、電波透過方向における厚みが最も薄くなっている部分)が開放部としての薄肉部375となり、各カレンダー表示部371同士の中間位置に対応する部分が遮蔽部としての厚肉部374となる。
この場合にも、カレンダー表示部371の全体が文字板8の日付窓部81から露出表示されている状態のときにはアンテナ6の上部が薄肉部375によって覆われるため、アンテナ6の電波の送信または受信の感度が最も良好となり、カレンダー表示部371の位置が日付窓部81からずれるにしたがってアンテナ6の上部が広く厚肉部374によって覆われるため、アンテナ6の電波の送信または受信の感度は徐々に低下していく。
【0049】
また、図9から図11に示すような傾斜部を設ける場合、傾斜面に階段状の段部を形成してもよい。
【0050】
図9から図11に示すような傾斜部を設け、電波透過方向における厚みが最も薄くなっている部分を開放部としての薄肉部とした場合には、アンテナ6の電波の送信または受信の感度の程度をより段階的に円滑に変化させることが可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、カレンダー表示部材7自体が磁性材料等で形成された電波遮蔽体で構成され、電波透過方向における厚みが最も薄くなっている薄肉部を開放部とし、それ以外の厚肉部を遮蔽部とする場合を例として説明したが、カレンダー表示部材7によって電波を遮蔽する構成はこれに限定されない。
例えば、カレンダー表示部材自体を樹脂等の電波を透過させる材料で形成し、カレンダー表示部に対応する位置以外の部分に磁性材料で形成された磁性シート等の電波遮蔽体を貼着してもよい。
この場合、電波遮蔽体が貼着されている部分が電波の透過を妨げる遮蔽部となり、電波遮蔽体が貼着されていない部分が電波を透過させる開放部となる。
【0052】
また、本実施形態では、アンテナ6の周囲に配置される電波遮蔽部材42及びカレンダー表示部材7を磁性材料により形成し、磁性材料の磁気損失により電波を吸収することによって電波の透過を妨げる場合について説明したが、電波遮蔽部材42やカレンダー表示部材は電波の透過を妨げることができるものであればよく、その構成は磁気損失により電波を吸収するものに限定されない。
【0053】
また、本実施形態では、電波の透過を妨げる遮蔽部(厚肉部74)及びこれと隣り合い電波を透過させる開放部(薄肉部75)が、各カレンダー表示部71に対応して複数組(すなわち31組)設けられている場合を例としたが、遮蔽部及び開放部は全てのカレンダー表示部71に対応して1組ずつ設けられていなくてもよい。例えば、「5」「10」「15」「20」「25」「30」のカレンダー表示部71に対応して開放部を設け、開放部と開放部との間を遮蔽部としてもよい。この場合、日付窓部81に表示されるカレンダー表示部71が「5」「10」「15」「20」「25」「30」のときにアンテナ6の電波の送信または受信の感度が最も良好な状態となり、この状態からカレンダー表示部71がずれるにしたがって徐々にアンテナ6の電波の送信または受信の感度が低くなっていくように調整することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、カレンダー表示部材7がカレンダー表示部71として「1」から「31」までの日付表示を有する日車である場合について説明したが、カレンダー表示部材は日車に限定されない。
例えば、カレンダー表示部として「月曜日」から「日曜日」までの曜日表示部を有する曜日表示用のカレンダー表示部材であってもよい。この場合には、各カレンダー表示部に対応して、7組の遮蔽部(例えば厚肉部)及び開放部(例えば薄肉部)が設けられる。
【0055】
また、本実施形態では、カレンダー表示部材7がモジュール部材4の外周縁に沿う環状に形成され、その環状中心が腕時計100の軸部材10とほぼ一致している場合を例としたが、カレンダー表示部材7の形状、大きさはこれに限定されない。例えば、カレンダー表示部材は、モジュール部材4の径の4分の1程度の小径の環状部材であってもよい。また、この場合、カレンダー表示部材の環状中心は腕時計100の軸部材10と一致していなくてもよい。この場合にも、カレンダー表示部材は、アンテナ6の上部を覆う位置に配置される。
【0056】
また、本実施形態では、カレンダー表示部材7を回転移動させるカレンダー部材移動手段78が、カレンダー用輪列機構76とモータ77とによって構成されている場合を例として説明したが、カレンダー部材移動手段の構成はこれに限定されない。
例えば、腕時計が竜頭等を備える場合、この竜頭等の軸の回転をカレンダー表示部材に伝える駆動伝達機構(歯車機構等)を設けて、この竜頭及び駆動伝達機構(歯車機構等)によってカレンダー部材移動手段を構成してもよい。
この場合には、アンテナ6の電波の送信または受信の感度を調整したい際には、例えばユーザが竜頭等を回転操作することにより手動にてカレンダー表示部材を所望の電波の送信または受信の感度となる位置まで回転移動させる。
【0057】
また、本実施形態では、「ペアリングモード」、「データ同期モード」、「端末捜索モード/忘れ物防止モード」の3段階でアンテナ6の電波の送信または受信の感度を調整する場合を例として説明したが、アンテナ6の電波の送信または受信の感度の調整は3段階に限定されない。
例えば、「ペアリングモード」で通信を行う際にはアンテナ6の上に遮蔽部を位置させ、「データ同期モード」又は「端末捜索モード/忘れ物防止モード」で通信を行う際にはアンテナ6の上に開放部を位置させるというように、アンテナ6の電波の送信または受信の感度について2段階の調整を行ってもよい。
また、例えば、遮蔽部とアンテナ6との位置関係を段階的に調整することにより、アンテナ6の電波の送信または受信の感度を4段階以上調整ができるようにしてもよい。この場合には、ユーザは、「ペアリングモード」で通信を行う際に、アンテナ6全体が遮蔽される状態ではペアリングが成立しなかった場合に、ペアリングが成立するまでアンテナ6の電波の送信または受信の感度を段階的に上げていくことができる。
【0058】
また、上記各実施形態では、本体ケース1が例えば樹脂等の電波透過可能な材料により形成されている場合を例としたが、本体ケース1を形成する材料はこれに限定されない。例えば本体ケース1をステンレス、チタニウム等の金属材料によって形成してもよい。
この場合、裏蓋部材3が設けられている腕時計100の裏面だけでなく、腕時計100の側面からも電波の侵入が阻害され、アンテナ6に電波が入る方向は腕時計100の表面側(図2における上側)に限定される。このため、この場合には、アンテナ6の周囲に電波遮蔽部材42を配置する必要はない。
また、上記各実施形態では、裏蓋部材3が例えばステンレス、チタニウム等の金属材料によって形成されている場合を例としたが、裏蓋部材3を形成する材料はこれに限定されない。例えば裏蓋部材3を樹脂等の電波透過可能な材料により形成してもよい。
この場合、裏蓋部材3が設けられている腕時計100の裏面からも電波が入るため、アンテナ6の周囲のみでなく、アンテナ6の下部(すなわち腕時計100の裏面側)にも電波遮蔽部材を配置することが好ましい。
【0059】
また、本実施形態においては、腕時計100が指針11を備えるアナログ式の腕時計である場合について説明したが、腕時計は、アナログ式に限定されない。例えば、アナログ式の文字板の一部等に液晶パネル等で構成された液晶表示部を配置し、指針及び液晶表示部の双方を備える腕時計であってもよい。
【0060】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
外部の機器との間で無線信号を送信または受信するアンテナの感度を調整する感度調整装置であって、
環状に形成されている表示部材本体の表面に、その表示部材本体の周方向に沿って所定間隔毎にカレンダー表示部が施されているとともに、電波の透過を妨げる遮蔽部及びこれと隣り合い電波を透過させる開放部が、前記カレンダー表示部に対応して複数組設けられており、前記アンテナを上部から覆う位置に配置されるカレンダー表示部材と、
このカレンダー表示部材をその環状中心を中心として回転させて、前記アンテナに対する前記カレンダー表示部材の前記遮蔽部及び前記開放部の位置を変更し、前記遮蔽部により遮蔽される電波の遮蔽度合を調整することにより、前記アンテナの感度を調整するカレンダー部材移動手段と、
を備えていることを特徴とする感度調整装置。
<請求項2>
前記開放部は、電波の透過方向における厚みが薄い薄肉部であり、
前記遮蔽部及び前記開放部は、電波の透過方向における厚みを変えることにより電波の遮蔽度合を変えるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の感度調整装置。
<請求項3>
請求項1又は請求項2に記載の感度調整装置と、
前記感度調整装置により電波の送信または受信の感度が調整されるアンテナと、
を備えていることを特徴とする電波通信機器。
【符号の説明】
【0061】
1 本体ケース
4 モジュール部材
6 アンテナ
7 カレンダー表示部材
8 文字板
13 操作ボタン
42 電波遮蔽部材
70 感度調整装置
71 カレンダー表示部
72 ラック
74 厚肉部
75 薄肉部
76 カレンダー用輪列機構
76a カレンダー部材駆動歯車
77 モータ
78 カレンダー部材移動手段
81 日付窓部
100 腕時計
G 端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の機器との間で無線信号を送信または受信するアンテナの感度を調整する感度調整装置であって、
環状に形成されている表示部材本体の表面に、その表示部材本体の周方向に沿って所定間隔毎にカレンダー表示部が施されているとともに、電波の透過を妨げる遮蔽部及びこれと隣り合い電波を透過させる開放部が、前記カレンダー表示部に対応して複数組設けられており、前記アンテナを上部から覆う位置に配置されるカレンダー表示部材と、
このカレンダー表示部材をその環状中心を中心として回転させて、前記アンテナに対する前記カレンダー表示部材の前記遮蔽部及び前記開放部の位置を変更し、前記遮蔽部により遮蔽される電波の遮蔽度合を調整することにより、前記アンテナの感度を調整するカレンダー部材移動手段と、
を備えていることを特徴とする感度調整装置。
【請求項2】
前記開放部は、電波の透過方向における厚みが薄い薄肉部であり、
前記遮蔽部及び前記開放部は、電波の透過方向における厚みを変えることにより電波の遮蔽度合を変えるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の感度調整装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の感度調整装置と、
前記感度調整装置により電波の送信または受信の感度が調整されるアンテナと、
を備えていることを特徴とする電波通信機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−104800(P2013−104800A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249241(P2011−249241)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】