説明

感応掃海装置

【課題】船舶から発生する磁界と船舶の防食電流により発生する電界を同時にシミュレートする感応掃海装置を提供する。
【解決手段】掃海艇10の進行方向に沿って一列に曳航され、船舶の特性に応じて発生する磁界および船舶の防食電流により発生する電界をシミュレーションする5個の掃海具20を備え、この5個の掃海具20からの磁界と同時に電界の電位差を検知したときに作動する高知能型機雷を破壊させる感応掃海装置を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶から発生する磁界と電界を高精度にシミュレートして高知能型機雷を破壊する感応掃海装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の掃海装置は、掃海艇に曳航される海中の複数の電極に電流を流して船舶の磁界をシミュレートし、その磁界により海中に敷設された磁気機雷を破壊させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−306683号公報(第4−6頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、機雷には、磁気と同時に電界の電位差を検知したときに作動して爆発する高知能型機雷がある。その電界は、船舶の防食電流により発生するものであるが、前述した従来の掃海装置は、船舶の磁気をシミュレートするだけで、磁界と電界とを同時にシミュレートする機能を備えていなかった。
【0005】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、船舶の防食電流により発生する電界もシミュレートする感応掃海装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る感応掃海装置は、掃海艇の進行方向に沿って一列に曳航され、船舶の特性に応じて発生する磁界および電界をシミュレーションする複数の掃海具を備え、その複数の掃海具からの磁界および電界により機雷を作動させて破壊する。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、船舶の特性に応じて発生する磁界および電界を複数の掃海具でシミュレートするようにしたので、磁気と同時に電界の電位差を検知したときに作動する高知能型機雷を破壊することが可能になり、船舶の航路をより安全に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明の実施の形態に係る感応掃海装置の構成を示すブロック図、図2は実施の形態の感応掃海装置を掃海艇に適用して示す概念図、図3は感応掃海装置の掃海具および掃海具のコイルを示す斜視図、図4は船舶の磁界のレベルとその磁界を発生させるのに必要なコイル電流との相関を示す図、図5は船舶の電界のレベルとその電界を発生させるのに必要な電極電流との相関を示す図である。
【0009】
実施の形態の感応掃海装置は、図1に示すように、掃海艇10に搭載された発電機11からの交流電流を入力し直流電流に変換する電源装置12と、シミュレートする船舶の例えば船名や船種(タンカー、客船、貨物船、護衛艦など)を入力するための操作部13と、信号処理装置14と、制御装置15と、例えば5個の掃海具20と、この5個の掃海具20を制御装置15にそれぞれ接続する例えば40芯のケーブル30とを備えている。
【0010】
各掃海具20は、図3(a)に示すように外観が流線形状に構成され、後述する3つのコイル21,22,23および1本の電極24と、例えば40極を一組とする二組のコネクタ25(図1参照)とを備えている。このコネクタ25は、掃海具間のケーブル30および掃海具20と制御装置15の間のケーブル30を電気的に接続すると共に、その接続が外れないように各ケーブル30を固定する構造になっている。また、各掃海具20は、掃海艇10によって曳航されているとき、図2に示すように、掃海艇20の進行方向に沿って一列に等間隔に配列され、曳航中の各掃海具20の深度は、最後尾に位置する浮遊ブイ40によってほぼ一定に保たれている。
【0011】
前述の信号処理装置14は、シミュレートする船舶の船名および船種に対応して設定されたコイル電流と電極電流の値がデータとして格納されたメモリ(図示せず)を有している。コイル電流は、例えば図4に示すように、船名A,B,Cの各船舶から発生する磁界をシミュレートするための電流値であり、電極電流は、例えば図5に示すように、船名A,B,Cの各船舶の防食電流により発生する電界をシミュレートするための電流値である。また、船舶の船種に対応して設定されたコイル電流と電極電流は、船舶の特性、例えば船舶の大きさ、船体の材質、搭載量などに基づいて得られた電流値である。なお、コイル電流は、各掃海具20にそれぞれ搭載された3つのコイル21,22,23にそれぞれ供給され、そのうち2つのコイル22,23には同じ値のコイル電流が供給される。
【0012】
制御装置15は、出力側にケーブル30が接続されたコネクタ16を有し、信号処理装置14により設定されたコイル電流と電極電流が各掃海具20にそれぞれ供給されるように電源装置12の直流電流を制御する。コイル電流は、電極電流と比べ、ほぼ百倍以上の電流である。
【0013】
前述した3つのコイル21,22,23は、図3(b)に示すように、円筒状に形成されたX軸コイル21と、側方から見て長方形のリング状に形成され、X軸コイル21の中空内に交差して配置されたY軸およびZ軸コイル22,23とからなっている。各コイル21,22,23は、掃海具20毎に個別にケーブル30の芯線を介して制御装置15と接続されている。また、同図(c)に示すように、X軸コイル21には、掃海艇10の進行方向(X軸方向)に磁気が発生するようにコイル電流が流れ、Y軸コイル22には、掃海艇10の進行方向を直交する方向(Y軸方向)に磁気が発生するようにコイル電流が流れ、また、Z軸コイル23には、海底に向かう垂直方向(Z軸方向)に磁気が発生するようにコイル電流が流れる。
【0014】
各電極24は、各掃海具20の後端側下部にそれぞれ下方に突出して取り付けられている(図3(a)参照)。例えば5本の電極24のうち、掃海艇10側から見て手前の1番目の掃海具20の電極24を+極、2番目の掃海具20の電極24を−極として、また、3番目と4番目の掃海具20の各電極24を+極、最後尾である5番目の掃海具20の電極24を−極として用いている。前述の電極電流は、1番目および3番目と4番目の掃海具20の各電極24に供給される。この場合、1番目の掃海具20の電極24(+極)から2番目の掃海具20の電極24(−電極)に向けて電極電流が放電され、また、3番目と4番目の掃海具20の各電極24(+極)から最後尾の掃海具20の電極24(−電極)に向けて電極電流が放電される。この放電により、X軸方向とZ軸方向に電界が発生する。X軸方向の電界は、+極の電極24と−極の電極24との間の電極電流により発生し、Z軸方向の電界は、−電極に至らない電極電流によるもので、海底方向に発生している。そのZ軸方向の電界のレベルは、X軸方向の電界よりも大幅に低くなっている。
【0015】
次に、前記のように構成された感応掃海装置の動作を説明する。
掃海艇10の船尾から浮遊ブイ40を海上に投下し、次いで5個の掃海具20を順に投下した後に、操作部13からシミュレートする船舶の例えば船名Aを入力すると、信号処理装置14は、入力された船名Aをキーワードとしてメモリにアクセスし、船名Aに関連付けられたコイル電流と電極電流を読み出し、そのデータを制御装置15に転送する。また、信号処理装置14は、シミュレートする船舶の船種が入力されたときは、その船舶の特性である船舶の大きさ、船体の材質、搭載量などを入力させるメッセージを操作部13の表示部に表示し、この表示により船舶の特性が入力されたときは、その特性に対応して設定されたコイル電流と電極電流をメモリから読み出し、そのデータを制御装置15に転送する。
【0016】
制御装置15は、コイル電流と電極電流が入力されると、各掃海具20のX軸コイル21、Y軸コイル22およびZ軸コイル23にそれぞれコイル電流が流れるように電源装置12の直流電流を制御すると共に、掃海艇10側から見て例えば1番目および3番目と4番目の掃海具20の各電極24に前述の電極電流が流れるように電源装置12の直流電流を制御する。この時、各掃海具20に搭載されたコイル21,22,23に流れるコイル電流より発生する3軸方向の磁気による磁界が生じ(図2(a)参照)、1番目の掃海具20の電極24と2番目の掃海具20の電極24との間に放電される電極電流によって電界が発生すると共に、3番目と4番目の掃海具20の各電極24と最後尾の掃海具20の電極24との間に放電される電極電流によって電界(X軸およびZ軸方向)が発生する(図2(b)参照)。
【0017】
各掃海具20のコイル21、22、23による3軸方向の磁気は、シミュレート対象の船舶から発生するX軸,Y軸およびZ軸方向の磁気レベルとほぼ同じになり(図6参照)、また、各掃海具20の電極24による2軸方向の電界は、前述の船舶の防食電流により発生するX軸およびZ軸方向の電界レベルとほぼ同じになる(図7参照)。
【0018】
以上のように実施の形態によれば、船舶から発生する磁界および船舶の防食電流により発生する電界を複数の掃海具20でシミュレートするようにしたので、磁界における3軸方向の磁気と同時に電界の電位差を検知したときに作動する高知能型機雷を破壊することが可能になり、船舶の航路をより安全に確保することができる。
【0019】
なお、実施の形態では、磁気の方向を3軸方向として説明したが、シミュレートする船舶に応じて磁気を1軸方向あるいは2軸方向に切り替え可能な回路構成にしてもよい。
また、+極の電極24から−極の電極24に放電する電極電流を直流としたが、+極の電極24から交流の電流を放電するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る感応掃海装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態の感応掃海装置を掃海艇に適用して示す概念図である。
【図3】感応掃海装置の掃海具および掃海具のコイルを示す斜視図である。
【図4】船舶の磁気レベルとその磁気を発生させるのに必要なコイル電流の相関図である。
【図5】船舶の電界レベルとその電界を発生させるのに必要な電極電流の相関図である。
【図6】シミュレーションによる磁界の3軸方向の磁気と高知能型機雷が検知する3軸方向の磁気とを比較して示す一例図である。
【図7】シミュレーションによる2軸方向の電界と高知能型機雷が検知する2軸方向の電界とを比較して示す一例図である。
【符号の説明】
【0021】
10掃海艇、11 発電機、12 電源装置、13 操作部、14 信号処理装置、
15 コネクタ、20 掃海具、21 X軸コイル、22 Y軸コイル、23 Z軸コイル、25 コネクタ、30 ケーブル、40 浮遊ブイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掃海艇の進行方向に沿って一列に曳航され、船舶の特性に応じて発生する磁界および電界をシミュレーションする複数の掃海具を備え、
該複数の掃海具からの磁界および電界により機雷を作動させて破壊することを特徴とする感応掃海装置。
【請求項2】
前記複数の掃海具には、それぞれ電極が設けられ、
前記複数の掃海具のうち少なくとも1個の掃海具の電極を+極として、他の各掃海具の電極にそれぞれ電流を放電し、船舶の防食電流により発生する電界をシミュレーションすることを特徴とする請求項1記載の感応掃海装置。
【請求項3】
前記複数の掃海具には、3軸方向に磁気を発生するコイルが設けられ、
船舶の特性に応じて前記コイルの磁気方向を選択し、当該船舶の磁界をシミュレーションすることを特徴とする請求項1又は2記載の感応掃海装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−47038(P2010−47038A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210395(P2008−210395)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)