説明

感放射線性樹脂組成物

【課題】焦点深度、LWR、MEEFに優れるとともに、現像欠陥にも優れた化学増幅型レジストである感放射線性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)特定の二種の繰り返し単位を含有する重合体、(B)感放射線性酸発生剤および(C)特定のアンモニウム構造を有する化合物を含有する、感放射線性樹脂組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、KrFエキシマレーザーあるいはArFエキシマレーザー等の遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線の如き各種の放射線を使用する微細加工に有用な化学増幅型レジストとして好適に使用できる感放射線性樹脂組成物およびそれに用いられる酸拡散制御剤に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野においては、より高い集積度を得るために、最近ではKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザーあるいはEUV(極紫外線)等の遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線等を用いた100nm程度以下のレベルでの微細加工が可能なリソグラフィー技術が必要とされている。このような放射線に適した感放射線性樹脂組成物として、酸解離性官能基を有する成分と放射線の照射により酸を発生する成分である酸発生剤とによる化学増幅効果を利用した化学増幅型感放射線性組成物が数多く提案されている。例えば、ノルボルナン環誘導体を有する単量体ユニットを含む特定の構造を有する重合体を樹脂成分とするフォトレジスト用高分子化合物が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。また、感度および解像度を向上させるために、酸解離性官能基を有する成分および酸発生剤に、さらに光活性化合物を加えた感放射線性樹脂組成物が開示されている(特許文献3参照)。
【0003】
半導体分野において、より高い集積度が求められるようになると、レジストである感放射線性樹脂組成物はよりリソグラフィー性能のバランス、特に密集パターン・孤立パターンの焦点深度、LWR(Line Width Roughness)、MEEF(Mask Error Enhancement Factor)のバランスに優れたレジストが必要とされるようになってきた。また、同時に、より微細化が進むにつれて、現像欠陥数を減らす要求もますます強まってきた。半導体産業の微細化の進歩につれ、このような焦点深度、LWR、MEEFに優れ、欠陥が少ない感放射線性樹脂組成物の開発が急務になっている。
これまでの技術では焦点深度、LWR、MEEFの性能を、複数の酸解離性基の異なる成分で構成された樹脂を使用することによりバランスを取っていた。
しかしながら、複数の酸解離性基の異なる成分で構成された樹脂を使用すると各々の酸解離性基の活性化エネルギーや現像液に対する溶解性の違いから、溶解速度にムラが生じてしまい、現像工程後に現像欠陥が多く出てしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−201232号公報
【特許文献2】特開2002−145955号公報
【特許文献3】特開2002−363123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題に対処するためになされたもので、化学増幅型レジスト、特にArFエキシマレーザー照射用レジスト(以下、「ArFレジスト」ともいう)として好適に用いられ、焦点深度、LWR、MEEFに優れるとともに、現像欠陥の少ない化学増幅型レジストである感放射線性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、
(A)下記式(1−1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1−1)」ともいう)および下記式(1−2)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1−2)」ともいう)を含有する重合体(以下、「重合体(A)」ともいう)、
(B)感放射線性酸発生剤(以下、「酸発生剤(B)」ともいう) および
(C)下記式(2)で表される化合物(以下、「化合物(C)」ともいう)
を含有することを特徴とする。
【0007】
【化1】

【0008】
(式(1−1)および式(1−2)において、Rは水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を表し、Yは酸の作用により脱離可能な保護基を表し、Zはラクトン骨格または環状エステル構造を有する基を表す。)
【0009】
【化2】

【0010】
(式(2)において、R1 はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、Aは炭素数3〜20のa価の芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を表し、R2 はそれぞれ独立に置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基またはヒドロキシル基を表し、aは1〜20の整数である。)
【0011】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、化合物(C)が、下記式(2−1)で表される化合物(以下、「化合物(2−1)」ともいう)および下記式(2−2)で表される化合物(以下、「化合物(2−2)」ともいう)から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0012】
【化3】

【0013】
(式(2−1)および(2−2)において、R1はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R3およびR4はそれぞれ独立に置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基またはヒドロキシル基を表し、mは0〜15の整数であり、nは0〜5の整数である。)
【0014】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記式(1−1)においてYで表される基が、下記式(i)で表される基であることが好ましい。
【0015】
【化4】

【0016】
(式(i)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であり、R’およびR”はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であるか、または相互に結合して、両者が結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成する。)
【発明の効果】
【0017】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、酸発生剤から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を塩交換により制御し、非照射領域における好ましくない化学反応を抑制する作用を有する特定の酸拡散制御剤を用いることを特徴とする。そのため、レジストの解像度が向上し、焦点深度、LWR、MEEFの性能が優れた微細パターンを形成することができる。さらに、本発明の感放射線性樹脂組成物は、現像欠陥が極めて少ないという効果も有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0019】
重合体(A):
本発明の感放射線性樹脂組成物を構成する重合体(A)は、アルカリ不溶性またはアルカリ難溶性を示す重合体であるが、酸の作用により脱離可能な保護基(酸解離性基)を有し、酸の作用により該保護基が脱離してアルカリ可溶性を示す重合体であり、繰り返し単位(1−1)および繰り返し単位(1−2)を有する。
【0020】
上記式(1−1)において、Rは水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を表し、Yは酸の作用により脱離可能な保護基を示す。該保護基としては、上記式(i)で表される基が好ましい。
上記式(i)中R、R’およびR”における炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基などが挙げられる。また、R’およびR”における炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基;ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基などの有橋脂環骨格を有する基などを挙げることができる。さらに、R’およびR”が相互に結合して、両者が結合している炭素原子と共に形成する炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、上述した1価の脂環式炭化水素基から水素原子を1つ除いた基を挙げることができる。
【0021】
繰り返し単位(1−1)として、好ましい例を下記式(1−1−1)〜式(1−1−9)に挙げる。
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、Rは上記式(1−2)と同じ定義である。)
【0024】
繰り返し単位(1−2)は、ラクトン骨格または環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位である。例えば、下記式(3−1)〜(3−9)で表されるラクトン骨格含有繰り返し単位;下記式(4−1)〜(4−9)で表される環状炭酸エステル構造を含む繰返し単位を特に好ましいものとして挙げることができる。
【0025】
【化6】

【0026】
(式中、Rは上記式(1−2)と同じ定義であり、R〜Rは相互に独立に水素原子、置換あるいは非置換の炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、置換あるいは非置換の炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基または置換あるいは非置換の炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のフッ素化アルキル基を表し、Aは単結合、炭素数1〜4の2価の炭化水素基、−R−O−または−R−COO−を示し(ただし、R8は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を表す)、Xはメチレン基、エチレン基または−O−を表し、p、q、rおよびsは相互に独立に1または2の整数である。)
【0027】
【化7】

【0028】
(式中、Rは上記式(1−2)と同じ定義であり、R9およびR10は相互に独立に水素原子、置換あるいは非置換の炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、置換あるいは非置換の炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基または置換あるいは非置換の炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のフッ素化アルキル基を表し、Aは単結合、炭素数1〜4の2価の炭化水素基、−R11−O−または−R11−COO−を示し(ただし、R11は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を表す)、Xはメチレン基、エチレン基または−O−を表し、t、u、vおよびwは相互に独立に0または1の整数である。)
【0029】
これらの式において、R〜R、RおよびR10で表される炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のフッ素化アルキル基としては、上記アルキル基の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換した基が挙げられる。また、これらの基の置換基としては、水酸基、アミノ基などが好ましい。
【0030】
重合体(A)は、さらに他の繰り返し単位を有してもよい。他の繰り返し単位を構成し得る単量体の具体例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、3−ヒドロキシアダマンチルメタクリレート、3−ヒドロキシアダマンチルアクリレート、3−(2−ヒドロキシ)エチル−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−ヘキサヒドロフタロイルエチルメタクリレート、p−ヒドロキシスチレン、α−メチル−p−ヒドロキシスチレン、p−アセトキシスチレン、α−メチル−p−アセトキシスチレン、p−ベンジロキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、p−tert−ブトキシカルボニロキシスチレン、p−tert−ブチルジメチルシロキシスチレン、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、t−ブチル(メタ)アクリレート、4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチル−1−ブチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等を挙げることがαできる。
【0031】
重合体(A)において、繰り返し単位(1−1)と繰り返し単位(1−2)の含有比(モル比)は、(1−1):(1−2)=10:90〜90:10であることが好ましく、30:70〜70:30であることがさらに好ましい。このような範囲にすることにより、現像時に対する適切な溶解コントラストが得られ、良好な解像度、LWR、パターンプロファイルなどを得ることが可能となる。そして、繰り返し単位(1−1)の含有比が多すぎると、すなわち繰り返し単位(1−2)の含有比が少なすぎると、適切な溶解コントラストが得られず、解像度が低下する可能性があり、繰り返し単位(1−1)の含有比が少なすぎると、すなわち繰り返し単位(1−2)の含有比が多すぎると、現像時に対する溶解コントラストの低下により、適切なパターンプロファイルが形成されない可能性がある。
【0032】
本発明において、重合体(A)は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。また、
この重合体(A)はアルカリ不溶性またはアルカリ難溶性であるが、酸の作用により繰り返し単位(1−1)の保護基が脱離して、アルカリ易溶性となる。
【0033】
重合体(A)の製造方法:
本発明の感放射線性樹脂組成物を構成する重合体(A)の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、所望の分子組成を構成する各繰り返し単位に対応する重合性不飽和単量体を、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等の存在下、適当な溶媒中で重合することにより製造することができる。ラジカル重合開始剤は、十分な重合速度を実現するために、十分高い濃度になるように添加することが好ましい。ただしラジカル重合開始剤量の連鎖移動剤量に対する比率が高すぎると、ラジカル−ラジカルカップリング反応が発生し、望ましくない非リビングラジカル重合体が生成するので、得られる重合体は分子量および分子量分布などの高分子特性においてコントロールされていない特性を有する部分が含まれてしまう。ラジカル重合開始剤量と連鎖移動剤量とのモル比率は、(1:1)〜(0.005:1)であることが好ましい。
【0034】
上記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、熱重合開始剤、レドックス重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。具体的には例えばパーオキシドやアゾ化合物等の重合開始剤が挙げられる。さらに具体的なラジカル重合開始剤としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート(MAIB)等が挙げられる。
上記連鎖移動剤としては、ピラゾール誘導体、アルキルチオール類等が挙げられる。
【0035】
重合操作については通常のバッチ重合、滴下重合などの方法で重合できる。例えば、上記繰り返し単位(1−1)、(1−2)およびその他の繰り返し単位のそれぞれを形成する単量体について、必要な種類および量を有機溶媒に溶解させ、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の存在下で重合することにより重合体(A)が得られる。重合溶媒は一般に単量体、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤を溶解できる有機溶剤が用いられる。有機溶剤としてケトン系溶剤、エーテル系溶剤、非プロトン系極性溶剤、エステル系溶剤、芳香族系溶剤、線状または環状脂肪族系溶剤が挙げられる。ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトンなどが挙げられる。エーテル系溶剤としてはアルコキシアルキルエーテル、例えば、メトキシメチルエーテル、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが挙げられる。非プロトン系極性溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキサイドなどが挙げられる。エステル系溶剤としては、酢酸アルキル、例えば酢酸エチル、酢酸メチルなどが挙げられる。芳香族系溶剤としては、アルキルアリール溶剤、例えばトルエン、キシレン、およびハロゲン化芳香族溶剤、例えばクロロベンゼンなどが挙げられる。脂肪族系溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0036】
重合温度は、一般に20〜120℃、好ましくは50〜110℃、さらに好ましくは60〜100℃である。通常の大気雰囲気でも重合できる場合もあるが、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下での重合が好ましい。重合体(A)の分子量は単量体量と連鎖移動剤量との比率を制御することで調整できる。重合時間は一般に0.5〜144時間、好ましくは1〜72時間、より好ましくは2〜24時間である。
重合体(A)は、分子鎖末端に連鎖移動剤由来の残基を有してもよく、分子鎖末端に連鎖移動剤由来の残基を有さなくてもよく、また、分子鎖末端に連鎖移動剤由来の残基が一部残存する状態であってもよい。
重合体(A)は、ハロゲン、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体やオリゴマー成分が既定値以下、例えばHPLCによる分析で0.1質量%以下であることが好ましく、それにより、レジストとしての感度、解像度、プロセス安定性、パターン形状等をさらに改善できるだけでなく、液中異物や感度等の経時変化が少ないレジストとして使用できる感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0037】
重合体(A)の精製法としては、例えば以下の方法が挙げられる。金属等の不純物を除去する方法としては、ゼータ電位フィルターを用いて重合体(A)溶液中の金属を吸着させる方法や蓚酸やスルホン酸等の酸性水溶液で重合体(A)溶液を洗浄することで金属をキレート状態にして除去する方法等が挙げられる。また、残留単量体やオリゴマー成分を規定値以下に除去する方法としては、水洗や適切な溶剤を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、重合体(A)溶液を貧溶媒へ滴下することで重合体(A)を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した重合体スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法がある。また、これらの方法を組み合わせることもできる。上記再沈澱法に用いられる貧溶媒としては、精製する重合体(A)の物性等に左右され一概には例示することはできないが、当業者であれば重合体の物性等に合わせて適宜選定することができる。
【0038】
重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」と略称する)は、通常、1,000〜300,000、好ましくは2,000〜300,000、さらに好ましくは2,000〜12,000である。重合体(A)のMwが1,000未満では、レジストとしての耐熱性が低下する傾向があり、一方300,000をこえると、レジストとしての現像性が低下する傾向がある。
また、重合体(A)のMwとゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」と略称する)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜3、特に好ましくは1〜1.6である。
【0039】
酸発生剤(B):
本発明の感放射線性樹脂組成物を構成する酸発生剤(B)としては、スルホニウム塩やヨードニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、ジスルホン類やジアゾメタンスルホン類等のスルホン化合物を挙げることができる。
酸発生剤(B)の具体的な好ましい例としては、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート等のトリフェニルスルホニウム塩化合物;
【0040】
4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等の4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物;
【0041】
4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等の4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物;
【0042】
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート等のジフェニルヨードニウム塩化合物;
【0043】
ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等のビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩化合物;
【0044】
1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
【0045】
1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
【0046】
1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
【0047】
N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等のビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド類化合物等を挙げることができる。
【0048】
酸発生剤(B)は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。酸発生剤(B)の配合量は、レジストとしての感度および現像性を確保する観点から、重合体(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、0.1〜20質量部であることがさらに好ましい。この場合、酸発生剤の配合量が0.1質量部未満では、感度および現像性が低下する傾向があり、一方30質量部をこえると、放射線に対する透明性が低下して、矩形のレジストパターンが得られ難くなる傾向がある。
【0049】
化合物(C):
化合物(C)は有機塩化合物であるので、感放射線性樹脂組成物に配合することで、照射により酸発生剤(B)から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を塩交換により制御し、非照射領域における好ましくない化学反応を抑制する作用を有する成分、すなわち酸拡散制御剤である。
【0050】
上記式(2)において、R1 における炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−オクタデシル基などの基が挙げられる。また、Aにおける芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ジフェニル基、ナフチル基、アントリル基などから(a−1)個の水素原子を除いた基が挙げられ、脂環式炭化水素基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基;ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基などの有橋脂環骨格を有する基などから(a−1)個の水素原子を除いた基が挙げられる。
これらのうち、上述した化合物(2−1)および化合物(2−2)が特に好ましく用いられる。上記式(2−1)および(2−2)におけるR1 としては、n−ブチル基、n−プロピル基が特に好ましい。
【0051】
化合物(C)は、例えば、下記のような反応式により合成することができる。
【0052】
【化8】

【0053】
上記反応式において、R、R3、R4、mおよびnは上記の定義通りであり、Xはハロゲン原子、メタンスルホネート、あるいはp−トルエンスルホネートを表し、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子を示し、kは1あるいは2を示す。
【0054】
化合物(m−1)に対する化合物(m−2)のモル比は、通常、0.1〜100であり、0.5〜2とすることが好ましい。化合物(m−1’)に対する化合物(m−2’)のモル比は、通常、0.1〜100であり、0.5〜2とすることが好ましい。
【0055】
上記反応は、通常、水と有機溶媒との混合溶媒中で行なう。用いる有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、アセトニトリル、トルエン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、ピリジン、DMF、DMSO、アセトン等が挙げられる。また、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の極性溶媒中でも行うことができる。中でも、水・テトラヒドロフラン混合溶媒、水・塩化メチレン混合溶媒、メタノール、エタノール中で反応を行うことが好ましい。有機溶媒の使用割合は、有機溶媒と水との合計100質量部に対して、通常、5〜100質量部であり、10〜100質量部とすることが好ましく、20〜90質量部とすることがさらに好ましい。
【0056】
反応温度は、通常、−40〜100℃であり、−20〜80℃とすることが好ましい。また、反応時間は、通常、0.1〜72時間であり、0.5〜10時間とすることが好ましい。
【0057】
化合物(C)は、その他に、例えば公開特許2005−104956に記載のイオン交換樹脂等を用いた方法でも合成することができる。
化合物(C)は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。化合物(C)の配合量は、レジストとしてのLWRの低減、および欠陥数の抑制という観点から、重合体(A)100質量部に対して、0.05〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがさらに好ましい。この場合、化合物(C)の配合量が0.05質量部未満では、焦点深度、LWR、MEEFの性能が不十分になることがあり、20質量部をこえると、樹脂成分の割合が減少し、良好なパターンプロファイルが得られない可能性がある。
【0058】
その他添加物:
本発明の感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて、酸拡散制御剤、酸解離性基を有する脂環族添加剤、酸解離性基を有しない脂環族添加剤、界面活性剤、増感剤等の各種の添加物を配合できる。
上記酸拡散制御剤は、照射により酸発生剤(B)から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非照射領域における好ましくない化学反応を抑制する作用を有する成分である。このような酸拡散制御剤を配合することにより、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上し、またレジストとしての解像度がさらに向上するとともに、照射から現像処理までの引き置き時間(PED)の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物が得られる。上記酸拡散制御剤としては、レジストパターンの形成工程中の照射や加熱処理により塩基性が変化しない含窒素有機化合物が好ましい。
【0059】
このような含窒素有機化合物としては、「3級アミン化合物」、「アミド基含有化合物」、「4級アンモニウムヒドロキシド化合物」、「含窒素複素環化合物」等が挙げられる。
【0060】
「3級アミン化合物」としては、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;トリエタノールアミン、ジエタノールアニリンなどのアルカノールアミン類;N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼンテトラメチレンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル等が挙げられる。
【0061】
「アミド基含有化合物」としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N'−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−ピロリジン、N−t−ブトキシカルボニル−ピペリジン、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−ピペリジン、N−t−ブトキシカルボニル−モルホリン等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物のほか、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0062】
「4級アンモニウムヒドロキシド化合物」としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0063】
「含窒素複素環化合物」としては、例えば、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、
1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール等のイミダゾール類;ピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のピペラジン類のほか、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、tert−ブチル−4−ヒドロキシ−1−ピペリジンカルボキシレート等が挙げられる。
【0064】
上記含窒素複素環化合物のうち、3級アミン化合物、アミド基含有化合物、含窒素複素環化合物が好ましく、また、アミド基含有化合物の中ではN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物が好ましく、含窒素複素環化合物の中ではイミダゾール類が好ましい。
【0065】
上記酸拡散制御剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。酸拡散制御剤の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましく、5質量部以下であることが特に好ましい。この場合、酸拡散制御剤の配合量が15質量部をこえると、レジストとしての感度および放射線照射部の現像性が低下することがある。なお、酸拡散制御剤の配合量が0.001質量部未満であると、プロセス条件によってはレジストとしてのパターン形状や寸法忠実度が低下するおそれがある。
【0066】
また、酸解離性基を有する脂環族添加剤、または酸解離性基を有しない脂環族添加剤は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等をさらに改善する作用を示す成分である。
このような脂環族添加剤としては、例えば、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル、
1−アダマンタンカルボン酸t−ブトキシカルボニルメチル、1−アダマンタンカルボン酸α−ブチロラクトンエステル、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジ−t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブトキシカルボニルメチル、1,3−アダマンタンジ酢酸ジ−t−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(アダマンチルカルボニルオキシ)ヘキサン等のアダマンタン誘導体類;デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル、デオキシコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、デオキシコール酸3−オキソシクロヘキシル、デオキシコール酸テトラヒドロピラニル、デオキシコール酸メバロノラクトンエステル等のデオキシコール酸エステル類;リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル、リトコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、リトコール酸3−オキソシクロヘキシル、リトコール酸テトラヒドロピラニル、リトコール酸メバロノラクトンエステル等のリトコール酸エステル類;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジn−ブチル、アジピン酸ジt−ブチル等のアルキルカルボン酸エステル類等が挙げられる。これらの脂環族添加剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
脂環族添加剤の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。この場合、脂環族添加剤の配合量が50質量部をこえると、レジストとしての耐熱性が低下する傾向がある。
【0067】
また、添加物としての界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す成分である。このような界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤のほか、以下商品名で、KP341(信越化学工業(株)製)、ポリフローNo.75,同No.95(共栄社化学(株)製)、エフトップEF301,同EF303,同EF352(トーケムプロダクツ(株)製)、メガファックスF171,同F173(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430,同FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−382,同SC−101,同SC−102,同SC−103,同SC−104,同SC−105,同SC−106(旭硝子(株)製)等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
界面活性剤の配合量は、酸解離性基含有樹脂100質量部に対して、2質量部以下であることが好ましい。
【0068】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、その使用に際して、通常、全固形分濃度が1〜50質量%、好ましくは3〜25質量%となるように、溶剤に溶解したのち、例えば孔径0.2μm程度のフィルターでろ過し感放射線性樹脂組成物溶液として調製される。上記感放射線性樹脂組成物溶液の調製に使用される溶剤としては、例えば、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン等の直鎖状もしくは分岐状のケトン類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状のケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等の3−アルコキシプロピオン酸アルキル類のほか、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0069】
これらの溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できるが、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチルから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
合成例1:テトラ−n−ブチルアンモニウムアダマンタンカルボキシレートの合成
反応フラスコ内に、アダマンタンカルボン酸ナトリウム4.04g、及びテトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド5.56gを入れた後、イオン交換水30ml、ジクロロメタン30mlを入れ1時間攪拌した後、静止させ、有機層をイオン交換水で2回洗浄した。次いで、ジクロロメタンを減圧除去し、濃縮乾固することによりテトラ−n−ブチルアンモニウムアダマンタンカルボキシレートを得た。この化合物を(C−1)とする。
【0072】
合成例2:テトラ−n−ブチルアンモニウムサリチレートの合成
反応フラスコ内に、サリチル酸ナトリウム3.20g、及びテトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド5.56gを入れた後、イオン交換水30ml、ジクロロメタン30mlを入れ1時間攪拌した後、静止させ、有機層をイオン交換水で2回洗浄した。次いで、ジクロロメタンを減圧除去し、濃縮乾固することによりテトラ−n−ブチルアンモニウムサリチレートを得た。この化合物を(C−2)とする。
【0073】
実施例1〜実施例16、および比較例1〜比較例8上記酸拡散制御剤(C)を用いて、感放射線性樹脂組成物を調製した。配合を表1に示す。なお、実施例、比較例中の「部」は、特記しない限り質量基準である。
各実施例および比較例における各測定・評価は、下記の要領で行なった。
(Mw)
東ソー(株)製GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0074】
(感度)
ウエハー表面に膜厚780オングストロームのARC29(ブルワー・サイエンス(Brewer Science)社製)膜を形成したシリコーンウエハー(ARC29)を用い、各組成物溶液を、基板上にスピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて、表2〜5に示す条件で60秒間PBを行って形成した膜厚0.10μm
のレジスト被膜に、ニコン製ArFエキシマレーザー露光装置(開口数0.78)を用い、マスクパターンを介して露光した。その後、表2〜5に示す条件で60秒間PEBを行ったのち、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、25℃で30秒間現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、線幅0.090μmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度とした。
【0075】
(密集ライン焦点深度)
90nm1L/1Sマスクパターンにおいて解像されるパターン寸法が、マスクの設計寸法の±10%以内となる場合のフォーカスの振れ幅を密集ライン焦点深度とした。
(孤立ライン焦点深度)
140nm1L/1400nmPのマスクパターンにおいて解像される90nm1L/1400nmPパターン寸法が、81〜99nm1L/1400nmPの範囲内となる場合のフォーカスの振れ幅を孤立ライン焦点深度とした。
(LWR)
最適露光量にて解像した90nm1L/1Sパターンの観測において、日立製測長SEM:S9220にてパターン上部から観察する際、線幅を任意のポイントで10点観測し、その測定ばらつきを3シグマで表現した値をLWRとした。
【0076】
(MEEF)
90nmの線幅のマスクを用いて90nm1L/1Sパターンの線幅が90nmとなるように、最適露光量感度を測定し、次いで、その感度で85.0nm、87.5nm、90.0nm、92.5nm、95.0nmの5点でのマスクサイズにおいて解像されるパターン寸法を測定した。その結果を横軸にマスクサイズ、縦軸に線幅を取り、最小二乗法により求めた傾きをMEEFとした。
【0077】
(欠陥数)
現像欠陥:
現像欠陥は、ケー・エル・エー・テンコール(株)製の欠陥検査装置(KLA2351)を用いる下記方法により評価した。
欠陥検査用ウエハーは、次のように作成した。ARC29(Brewer Science社製)780Aをウエハー基板に作成した基板上に、評価用レジストを0.10μmの膜厚で塗布後130℃/90secの条件でPBし、Nikon社製フルフィールド露光装置(S306C)により5mm×5mmのブランク露光をウエハー全面に露光した。
露光後、130℃/90secの条件でPEBをおこなった後、2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、25℃で30秒間現像し、水洗し、乾燥して、欠陥検査用ウエハーを作成した。上記の塗布、焼成および現像は東京エレクトロン社製のACT8を使用し、すべてインラインで実施した。
【0078】
上述の方法により作成した欠陥検査用ウエハーを、ケー・エル・エー・テンコール(株
)製の欠陥検査装置(KLA2351)を使用することにより露光部の現像欠陥の欠陥総数を検査した。欠陥総数の検査は、アレイモードで観察して、比較イメージとピクセル単位の重ね合わせによって生じる差異から抽出されるクラスターおよびアンクラスターの欠陥総数を検出することにより行われた。欠陥総数の検出は、0.15μm以上の欠陥を検出できるように、この装置の感度を設定して行った。評価に当たり、上記欠陥検査装置を用いる方法におけるウエハー1枚当たりの欠陥総数の12%を測定した。
【0079】
合成例3:重合体(A)の合成
化合物(S−1)21.54g(50モル%)、化合物(S−7)28.46g(50モル%)を、2−ブタノン100gに溶解し、さらにジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)2.10gを投入した単量体溶液を準備した。50gの2−ブタノンを投入した500mlの三口フラスコを30分窒素パージし、窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、1000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を200gのメタノールに分散させてスラリー状にして洗浄した後にろ別する操作を2回行い、その後、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の共重合体(重合体(A))を得た(33.5g、収率67%)。この共重合体はMwが6253、Mw/Mn=1.65であり、13C−NMR分析の結果、化合物(S−1)、化合物(S−7)で表される繰り返し単位各繰り返し単位の含有率が46:54(モル%)の共重合体であった。この共重合体を樹脂(A−1)とする。
【0080】
【化9】

【0081】
各単量体のモル比を、下記「共重合体(重合体(A))」に示す各モル比として樹脂(A−2)〜樹脂(A−10)を作製した。
共重合体(重合体(A));
A−2:(S−1)60/(S−7)40=56/44(モル比)、Mw=5213,Mw/Mn=1.45
A−3:(S−2)25/(S−3)25/(S−7)50=29/27/44(モル比)、Mw=6200,Mw/Mn=1.72
A−4:(S−2)15/(S−3)35/(S−6)20/(S−7)30=16/32/19/33(モル比)、Mw=6812,Mw/Mn=1.70
A−5:(S−1)35/(S−4)15/(S−7)50=34/16/50(モル比)、Mw=5768,Mw/Mn=1.70
A−6:(S−1)30/(S−4)10/(S−6)10/(S−7)50=31/8/10/51(モル比)、Mw=6284,Mw/Mn=1.69
A−7:(S−1)30/(S−4)10/(S−5)10/(S−7)50=31/9/9/51(モル比)、Mw=5817,Mw/Mn=1.68
【0082】
感放射線性酸発生剤(B);
B−1:1−(4−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート
B−2:トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート
B−3:トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−ブタンスルホネート
B−4:4−n−ブトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート
B−5:4−n−ブトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムノナフルオロブタンスルホネート
B−6:4−シクロヘキシルフェニル−ジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート
B−7:トリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−ヘキサン−1−スルホネート
【0083】
上記感放射線性酸発生剤(B−1)〜(B−6)のそれぞれに対応する化学式は、以下に示す式(B−1)〜式(B−6)である。
【0084】
酸拡散制御剤(C);
(C−1):テトラ−n−ブチルアンモニウムアダマンタンカルボキシレート
(C−2):テトラ−n−ブチルアンモニウムサリチレート
(C−i):tert−ブチル−4−ヒドロキシ−1−ピペリジンカルボキシレート
【0085】
上記酸拡散制御剤(C)に対応する化学式は以下の通りである。
【0086】
【化10】

【0087】
溶媒(D);
(D−1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(D−2):シクロヘキサノン
(D−3):γ−ブチロラクトン
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
表2に示すように、各実施例は焦点深度、LWR、MEEFに優れ、欠陥数の少ないパターンが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の酸拡散制御剤、および感放射線性樹脂組成物は、焦点深度、LWR、MEEFに優れ、欠陥数に優れているので、これからさらに微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用の化学増幅型レジストとして極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1−1)で表される繰り返し単位および下記式(1−2)で表される繰り返し単位を含有する重合体、(B)感放射線性酸発生剤および(C)下記式(2)で表される化合物を含有する、感放射線性樹脂組成物。
【化1】

(式(1−1)および式(1−2)において、Rは水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を表し、Yは酸の作用により脱離可能な保護基を表し、Zはラクトン骨格または環状エステル構造を有する基を表す。)
【化2】

(式(2)において、R1 はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、Aは炭素数3〜20のa価の芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を表し、R2 はそれぞれ独立に置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基またはヒドロキシル基を表し、aは1〜20の整数である。)
【請求項2】
(C)酸拡散制御剤が、下記式(2−1)で表される化合物および下記式(2−2)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の感放射性樹脂組成物。
【化3】

(式(2−1)および(2−2)において、R1はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R3およびR4はそれぞれ独立に置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基またはヒドロキシル基を表し、mは0〜15の整数であり、nは0〜5の整数である。)
【請求項3】
式(1−1)においてYで表される基が、下記式(i)で表される基である、請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化4】

(式(i)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であり、R’およびR”はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であるか、または相互に結合して、両者が結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成する。)

【公開番号】特開2010−237313(P2010−237313A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83278(P2009−83278)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】