説明

感放射線性組成物及び化合物

【課題】高感度で解像度であることに加え、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成可能なレジスト被膜を形成できる感放射線性組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物と溶剤とを含有する感放射線性組成物。但し、前記一般式(1)中、Aは単結合など、Rは水素原子など、Rは炭素数は11〜25のアルキル基など、Rはアルキル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性組成物及び化合物に関する。更に詳しくは、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV等の(極)遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線などの各種の放射線による微細加工に適した化学増幅型レジストとして使用される感放射線性組成物とこの感放射線性組成物に含まれる化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSI等の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域やクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。このような要求に伴い、露光波長の短波長化が検討されている。具体的には、従来は露光波長としてg線を用いていたが、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光などが露光波長として使用されてきている。そして、現在では、エキシマレーザー光以外に、電子線やX線、或いはEUV光を用いたリソグラフィーの開発が進んでいる。
【0003】
EUV光を用いたリソグラフィーは、次世代または次々世代のパターン形成技術として期待され、露光波長としてEUV光を用いることが可能であり、高感度かつ高解像性のポジ型レジスト(感放射線性組成物)の開発が望まれている。
【0004】
ポジ型レジストの高感度化は、ウエハー処理時間の短縮化を達成するために非常に重要な課題である。しかし、EUV用のポジ型レジストにおいて、高感度化を達成しようとすると、解像力が低下することに加え、ナノエッジラフネスが悪化してしまう。即ち、ポジ型レジストの高感度化とナノエッジラフネスの向上(即ち、良好なパターン形状を得ること)とは、トレードオフの関係にある。そのため、ポジ型レジストの高感度化とナノエッジラフネスの向上とを同時に達成する感放射線性組成物の開発が切望されている。
【0005】
なお、ナノエッジラフネスとは、図1に示すように、形成したレジストパターンのライン部2の側面2aが感放射線性組成物の特性に起因して、ライン部の延びる方向と垂直な方向に不規則に変動することによって生じた凹凸(即ち、設計寸法と実際のパターン寸法の差)のことである。
【0006】
この凹凸が生じると、レジストパターンをマスクとして用いたエッチング工程(転写工程)において、凹凸も同時に転写されてしまう。そして、このような凹凸は、電気特性を劣化させるため、凹凸の発生の頻度が高いと歩留りを低下させることになる。特に、EUV光は、32nm以下の超微細領域のリソグラフィーで使用されるため、微細な凹凸であっても電気特性を劣化させる原因になる。そのため、ナノエッジラフネスを向上させることは極めて重要である。
【0007】
そこで、ポジ型レジストの高感度化とナノエッジラフネスの向上とを同時に達成するため(特に高感度化を達成するため)に、酸増殖剤を配合することが知られている(例えば、特許文献1または2参照)。この酸増殖剤は、感放射線性酸発生剤から発生した酸が触媒として作用することによって、酸を発生させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−35665号公報
【特許文献2】特開2008−96743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1または2に記載の感放射線性組成物であっても、形成されるレジスト被膜は、その感度及び解像度が十分ではなく、また、形成したレジストパターンのナノエッジラフネスも十分ではなかった。
【0010】
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、良好な感度を有し(即ち、ウエハー処理時間が短く)、解像度に優れることに加え、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成可能なレジスト被膜を形成することができる感放射線性組成物及び化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、特定の化合物を含有することで上記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明により、以下の感放射線性組成物及び化合物が提供される。
【0012】
[1]下記一般式(1)で表される化合物と、溶剤と、感放射線性酸発生剤と、を含有する感放射線性組成物。
【0013】
【化1】

(前記一般式(1)中、Aは、単結合、下記式(2−1)、下記式(2−2)、または下記式(2−3)で表される基である。Rは、水素原子、炭素数1〜25の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または炭素数6〜18のアリール基である。Rは、炭素数は11〜25の、置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、置換基を有してもよいアリール基若しくはアリールアルキル基、または置換基を有してもよい複素環基である。Rは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基である。)
【0014】
【化2】

【0015】
[2]前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1−1)で表される化合物である前記[1]に記載の感放射線性組成物。
【0016】
【化3】

(前記一般式(1−1)中、Rは、炭素数は11〜25の、置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、置換基を有してもよいアリール基若しくはアリールアルキル基、または置換基を有してもよい複素環基である。)
【0017】
[3]下記一般式(1)で表される化合物。
【0018】
【化4】

(前記一般式(1)中、Aは、単結合、下記式(2−1)、下記式(2−2)、または下記式(2−3)で表される基である。Rは、水素原子、炭素数1〜25の直鎖状、分岐状のアルキル基、または炭素数6〜18のアリール基である。Rは、炭素数は11〜25の、置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、置換基を有してもよいアリール基若しくはアリールアルキル基、または置換基を有してもよい複素環基である。Rは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基である。)
【0019】
【化5】

【0020】
[4]下記一般式(1−1)で表される化合物である前記[3]に記載の化合物。
【0021】
【化6】

(前記一般式(1−1)中、Rは、炭素数は11〜25の、置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、置換基を有してもよいアリール基若しくはアリールアルキル基、または置換基を有してもよい複素環基である。)
【発明の効果】
【0022】
本発明の感放射線性組成物は、良好な感度を有し、解像度に優れることに加え、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成可能なレジスト被膜を形成することができるという効果を奏するものである。
【0023】
本発明の化合物は、良好な感度を有し、解像度に優れることに加え、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成可能なレジスト被膜を形成することができる感放射線性組成物の材料として用いることができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ライン・アンド・スペースパターンを模式的に示す平面図である。
【図2】図1に示すA−A’断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0026】
[1]感放射線性組成物:
本発明の感放射線性組成物は、上記一般式(1)で表される化合物と、溶剤と、感放射線性酸発生剤と、を含有するものであり、酸解離性基を有する樹脂を更に含有することが好ましい。そして、本発明の感放射線性組成物によれば、良好な感度を有し、解像度に優れることに加え、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成可能なレジスト被膜を形成することができる。即ち、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV等の(極)遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線に有効に感応し、感度に優れる。また、微細パターンを高精度に、かつ、安定して形成可能な化学増幅型ポジ型レジスト被膜を成膜することができものである。良好な感度を有すると、ウエハーの処理時間が短くてよいという利点がある。
【0027】
[1−1]一般式(1)で表される化合物:
下記一般式(1)で表される化合物(以下、「酸増殖剤」と記す場合がある)は、酸の作用により連鎖反応的に酸を発生する化合物である。別言すると、下記一般式(1)で表される化合物は、一次的に発生した(存在する)酸の作用により分解されて、その一次的に発生した酸より更に多くの酸を二次的に発生し、全体としてより多く(即ち、上述した一次的に発生した酸より多く)の酸を発生させることが可能な化合物である。
【0028】
【化7】

(一般式(1)中、Aは、単結合、下記式(2−1)、下記式(2−2)、または下記式(2−3)で表される基である。Rは、水素原子、炭素数1〜25の直鎖状、分岐状のアルキル基、または炭素数6〜18のアリール基である。Rは、炭素数は11〜25の、置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、置換基を有してもよいアリール基若しくはアリールアルキル基、または置換基を有してもよい複素環基である。Rは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基である。)
【0029】
【化8】

【0030】
一般式(1)で表される化合物を含有することによって、形成したレジスト被膜中の、放射線が照射された部分(露光部分)の全体に大量の酸が発生する。このように露光部分に大量に酸が発生することによって、露光部分中の酸解離性基含有樹脂の酸解離性基が均一に解離することになる。そのため、形成されるレジスト被膜は、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成することができる。また、一般式(1)で表される化合物に加えて、下記感放射線性酸発生剤を含有することによって、これらの作用が相俟って優れた感度及び解像度を有するレジスト被膜を形成することができる。
【0031】
一般式(1)で表される化合物としては、上記一般式(1−1)で表される化合物であることが好ましい。一般式(1−1)で表される化合物を含有することによって、優れた感度を有し、解像度が更に優れることに加え、ナノエッジラフネスに更に優れたレジストパターンを形成可能なレジスト被膜を形成することができる。
【0032】
一般式(1)中、Aは、上述したように、単結合、式(2−1)、式(2−2)、または式(2−3)で表される基であり、更に良好な感度を得る(即ち、酸増殖剤が酸の作用によって容易に分解される)ことができるという観点から、単結合または上記一般式(2−1)で表される基が好ましく、単結合であることが更に好ましい。
【0033】
一般式(1)中のRとしては、更に良好な感度を得ることができるという観点から、水素原子であることが好ましい。
【0034】
一般式(1)中のRの炭素数1〜25の直鎖状または分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基などを挙げることができる。これらの中でも、更に良好な感度を得ることができるという観点から、水素原子、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基が好ましく、水素原子、t−ブチル基が更に好ましい。
【0035】
一般式(1)中のRの炭素数6〜18のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などを挙げることができる。
【0036】
一般式(1)中のRの炭素数11〜25の、置換基を有してもよい直鎖状または環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などを挙げることができる。これらの中でも、更に良好なナノエッジラフネスを得ることができるという観点から、メチル基、エチル基が好ましい。
【0037】
一般式(1)中のRの置換基を有してもよい脂環式炭化水素基としては、例えば、アリル基、2−プロペニル基、プロパ−2−エン−1−イル基などを挙げることができる。これらの中でも、更に良好なナノエッジラフネスを得ることができるという観点から、アリル基、2−プロペニル基が好ましい。
【0038】
一般式(1)中のRの置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよいアリール基またはアリールアルキル基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントニル基などを挙げることができる。これらの中でも、更に良好なナノエッジラフネスを得ることができるという観点から、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0039】
置換基を有してもよい複素環基としては、単環構造であってもよいし、多環構造であってもよく、従来公知の各種の複素環化合物から誘導されるものなどを挙げることができる。具体的には、各種の複素環化合物に由来する1価の基、例えば、フラン、ピロール、ベンゾフラン、インドール、カルバゾール等の1つのヘテロ原子を含む五員環化合物とその縮合環化合物、オキサゾール、ピラゾール等の2つのヘテロ原子を含む五員環化合物とその縮合環化合物、ピラン、ピロン、クマリン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン等の1つのヘテロ原子を含む六員環化合物とその縮合環化合物、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、フタルジン等の2つのヘテロ原子を含む六員環化合物とその縮合環化合物等を挙げることができる。これらの中でも、更に良好なナノエッジラフネスを得ることができるという観点から、フラン、ピロールが好ましい。
【0040】
一般式(1)中のRの炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などを挙げることができる。これらの中でも、良好なナノエッジラフネスを得ることができるという観点から、メチル基、エチル基が好ましい。
【0041】
一般式(1)で表される化合物は、Rがメチル基であることが更に好ましい。即ち、下記一般式(1−1)で表される化合物であることが好ましい。一般式(1−1)で表される化合物であると、良好なナノエッジラフネスを得ることができるという利点がある。
【0042】
【化9】

(一般式(1−1)中、Rは、炭素数は11〜25の、置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、置換基を有してもよいアリール基若しくはアリールアルキル基、または置換基を有してもよい複素環基である。)
【0043】
酸増殖剤(一般式(1)で表される化合物)としては、具体的には、下記式(3−1)〜(3−20)で表される各化合物等を挙げることができる。これらの中でも、更に良好な感度を得ることができるという観点から、式(3−1)、(3−3)、(3−4)、(3−5)、(3−12)、(3−14)で表される各化合物が好ましい。
【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
後述する酸解離性基含有樹脂を更に含有する場合、酸増殖剤の含有量は、酸解離性基含有樹脂100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、1〜25質量部であることが更に好ましく、1〜20質量部であることが特に好ましい。上記含有量が30質量部超であると、形成したレジスト被膜の感度や、露光部の現像性が低下するおそれがある。なお、上記含有量が1質量部未満である場合、感度が十分に向上しないおそれがある。
【0048】
一般式(1)で表される化合物は、ジオール化合物に、スルホン酸のハロゲン化物を反応させることによって合成することができる。上記ジオール化合物としては、シス、トランスの2つの異性体があるが、シス異性体の方が熱的により安定であるため好適に用いることができる。
【0049】
なお、酸増殖剤(一般式(1)で表される化合物)は、酸が共存しない限り安定に保存することが可能なものである。
【0050】
[1−2]溶剤:
溶剤としては、直鎖状若しくは分岐状のケトン類、環状のケトン類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類、3−アルコキシプロピオン酸アルキル類、γ−ブチロラクトン等を挙げることができ、直鎖状若しくは分岐状のケトン類、環状のケトン類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類、3−アルコキシプロピオン酸アルキル類、及びγ−ブチロラクトンよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0051】
溶剤の含有量は、感放射線性組成物の全固形分濃度が、1〜70質量%となる量であることが好ましく、1〜15質量%となる量であることが更に好ましく、1〜10質量%となる量であることが特に好ましい。上記配合量が1質量%未満であると、粘度が高すぎるため、塗工が困難になるおそれがある。一方、70質量%超であると、レジスト被膜を十分な厚さに形成することが困難になるおそれがある。
【0052】
[1−3]感放射線性酸発生剤:
本発明の感放射線性組成物は、上述したように、感放射線性酸発生剤(以下、「酸発生剤」と記す場合がある)を含有するものである。この酸発生剤は、リソグラフィープロセスにおいて、感放射線性組成物によって形成されたレジスト被膜に電子線や放射線等を照射したときに、レジスト被膜内で酸を発生する物質である。なお、酸発生剤から発生した酸の作用によって、後述する酸解離性基含有樹脂中の酸解離性基が解離することになる。
【0053】
酸発生剤としては、酸発生効率、耐熱性等が良好であるという観点から、例えば、オニウム塩、ジアゾメタン化合物、及びスルホンイミド化合物よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
オニウム塩としては、下記一般式(b1)で表されるものが好ましい。
【0055】
(b1)
(上記一般式(b1)中、Mは1価のオニウムカチオンであり、Zは一価のアニオンである。)
【0056】
オニウム塩としては、具体的には、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等を挙げることができる。これらの中でも、更に良好な感度を得ることができるという観点から、S、Iのオニウムカチオン、即ち、スルホニウムカチオンまたはヨードニウムカチオンであることが好ましい。
【0057】
で表される1価のオニウムカチオンの具体例としては、下記一般式(4)、(5)で表されるものなどを挙げることができる。
【0058】
【化13】

【0059】
【化14】

【0060】
一般式(4)中、R、R、及びRは、相互に独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基であるか、或いは、R、R、及びRのいずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子とともに環状構造を形成しており、残りの1つが置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基である。
【0061】
一般式(5)中、R及びRは、相互に独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基であるか、或いは、R及びRが相互に結合して式中のヨウ素原子とともに環状構造を形成している。
【0062】
で表される1価のオニウムカチオンの部分は、例えば、Advances in Polymer Sciences,Vol.62,p.1−48(1984)に記載されている公知の方法に準じて合成することができる。
【0063】
で表される1価のオニウムアニオンの具体例としては、下記一般式(X−1)、(X−2)、(X−3)、(X−4)で表されるものなどを挙げることができる。
【0064】
【化15】

【0065】
一般式(X−1)中、R及びR10は、相互に独立に、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20のアルキル基であるか、或いは、R及びR10が相互に結合して、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20の環状構造を形成している。一般式(X−2)中、R11、R12、及びR13は、相互に独立に、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20のアルキル基であるか、或いは、R11、R12、及びR13のいずれか2つが相互に結合して、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20の環状構造を形成しており、残りの1つが、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20のアルキル基である。
【0066】
14CnFnSO (X−3)
15SO (X−4)
(一般式(X−3)及び(X−4)中、R14及びR15は、フッ素原子または置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示す。また、一般式(X−3)中、nは、1〜10の整数を示す。)
【0067】
ジアゾメタン化合物としては、例えば、下記一般式(6)で表される化合物等を挙げることができる。
【0068】
【化16】

(一般式(6)中、R16及びR17は、相互に独立に、1価の基を示す。)
【0069】
一般式(6)中のR16及びR17の1価の基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基、ハロゲン置換アリール基等を挙げることができる。
【0070】
アルキル基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を挙げることができ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
【0071】
アリール基としては、例えば、炭素数6〜22のアリール基を挙げることができ、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントリル基等を挙げることができる。
【0072】
ハロゲン置換アルキル基としては、上述のアルキル基における少なくとも1つ以上の水素原子がハロゲン(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)で置換された基を挙げることができる。
【0073】
ハロゲン置換アリール基としては、上述のアリール基における少なくとも1つ以上の水素原子がハロゲン(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)で置換された基を挙げることができる。
【0074】
スルホンイミド化合物としては、例えば、下記式(7)で表される化合物等を挙げることができる。
【0075】
【化17】

(一般式(7)中、Vは2価の基を示す。R18は1価の基を示す。)
【0076】
一般式(7)中のVの2価の基としては、例えば、メチレン基、アルキレン基、アリーレン基、アルコキシレン基等を挙げることができる。
【0077】
アルキレン基としては、例えば、炭素数2〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を挙げることができ、具体的には、エチレン基、1−メチルエチレン基、n−ブチレン基等を挙げることができる。
【0078】
アリーレン基としては、例えば、炭素数6〜22のアリーレン基を挙げることができ、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、クロロフェニレン基、ブロモフェニレン基、フルオロフェニレン基等を挙げることができる。
【0079】
アルコキシレン基としては、例えば、炭素数2〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシレン基を挙げることができ、具体的には、メトキシレン基、エトキシレン基、プロポキシレン基、ブトキシレン基等を挙げることができる。
【0080】
また、一般式(7)中のR18の1価の基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基、ハロゲン置換アリール基等を挙げることができる。これらの各基は、一般式(6)中のR16またはR17の1価の基として例示した各基と同様のものを例示することができる。
【0081】
酸解離性基を有する樹脂を更に含有させた場合、感放射線性酸発生剤の含有量は、酸解離性基含有樹脂100質量部に対して、0.1〜40質量部であることが好ましく、0.5〜30質量部であることが更に好ましい。上記含有量が0.1質量部未満であると、感度及び現像性が低下するおそれがある。一方、40質量部超であると、放射線に対する透明性、パターン形状、耐熱性等が低下するおそれがある。
【0082】
[1−4]酸解離性基を有する樹脂:
本発明の感放射線性組成物は、更に、酸解離性基を有する樹脂(以下、「酸解離性基含有樹脂」と記す場合がある)を含有するものであることが好ましい。
【0083】
酸解離性基含有樹脂は、酸解離性基を有する繰り返し単位を含むアルカリ不溶性またはアルカリ難溶性のものであり、酸の作用によりアルカリ易溶性となる樹脂である。ここで、本明細書において「アルカリ不溶性またはアルカリ難溶性」とは、酸解離性基含有樹脂を含有する感放射線性組成物から形成されたレジスト被膜からレジストパターンを形成する際に採用されるアルカリ現像条件下で、上記レジスト被膜の代わりに酸解離性基含有樹脂のみを用いた膜厚100nmの被膜を現像した場合に、上記レジスト被膜の初期膜厚の50%以上が現像後に残存する性質を意味する。
【0084】
このような酸解離性基含有樹脂を含有することによって、リソグラフィープロセスにおいて、電子線または極紫外線に有効に感応し、微細パターンを高精度に、かつ、安定して形成することができる化学増幅型ポジ型レジスト被膜を成膜可能な感放射線性組成物を得ることができる。
【0085】
酸解離性基含有樹脂中の酸解離性基を有する繰り返し単位の構造は、酸の作用によって酸解離性基が解離する構造を有する限り特に制限はないが、下記一般式(a−1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a−1)」と記す場合がある)、及び、下記一般式(a−2)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a−2)」と記す場合がある)の少なくともいずれかであることが好ましい。酸解離性基を有する繰り返し単位として、繰り返し単位(a−1)及び繰り返し単位(a−2)の少なくともいずれかを有することによって、良好な感度を有するレジスト被膜を形成することができるという利点がある。
【0086】
【化18】

(上記一般式(a−1)中、R19は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、またはヒドロキシメチル基である。各R20は、相互に独立に、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であるか、或いは、いずれか2つのR20が相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに2価の脂環式炭化水素基またはその誘導体を形成しており、残りの1つが、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。)
【0087】
【化19】

(上記一般式(a−2)中、R21は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、またはヒドロキシメチル基である。各R22は、相互に独立に、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であるか、或いは、いずれか2つのR22が相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに2価の脂環式炭化水素基またはその誘導体を形成しており、残りの1つが、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。)
【0088】
一般式(a−1)のR21の炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタン;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類等に由来する脂環族環からなる基;これらの脂環族環からなる基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基等を挙げることができる。
【0089】
一般式(a−1)のR21の炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
【0090】
いずれか2つのR21が相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに形成される2価の脂環式炭化水素基またはその誘導体としては、例えば、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタン、シクロペンタンまたはシクロヘキサンに由来する脂環族環からなる基や、これらの脂環族環からなる基を上記アルキル基で置換した基等を挙げることができる。
【0091】
次に、一般式(a−2)のR22の炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、一般式(a−1)のR25の炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基と同様のものを例示することができる。また、一般式(a−2)のR22の炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基としては、一般式(a−1)のR21の炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基と同様のものを例示することができる。更に、いずれか2つのR22が相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに形成される2価の脂環式炭化水素基またはその誘導体としては、いずれか2つのR21が相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに形成される2価の脂環式炭化水素基またはその誘導体と同様のものを例示することができる。
【0092】
一般式(a−1)で表される繰り返し単位の中でも、下記一般式(a−1−1)〜(a−1−7)で表される繰り返し単位が好ましく、下記一般式(a−1−2)、(a−1−3)、または(a−1−4)で表される繰り返し単位が更に好ましい。これらの繰り返し単位であると、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを得ることができる。
【0093】
【化20】

(上記一般式(a−1−1)〜(a−1−7)中、R23は、相互に独立に、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、またはヒドロキシメチル基であり、R24は、相互に独立に、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基である。)
【0094】
また、一般式(a−2)で表される繰り返し単位の中でも、下記一般式(a−2−1)で表される繰り返し単位が好ましい。このような繰り返し単位であると、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを得ることができる。
【0095】
【化21】

(上記一般式(a−2−1)中、R25は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、またはヒドロキシメチル基であり、R26は、相互に独立に、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基である。)
【0096】
なお、酸解離性基含有樹脂は、上記各繰り返し単位を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
【0097】
酸解離性基含有樹脂は、一般式(a−1)で表される繰り返し単位及び一般式(a−2)で表される繰り返し単位以外に、下記一般式(a−3)、下記一般式(a−4)、及び、下記一般式(a−5)で表される繰り返し単位からなる群より選択される少なくとも1種を更に含有することが好ましい。
【0098】
【化22】

(上記一般式(a−3)中、R27は、水素原子またはメチル基であり、R28は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。kは0〜3の整数であり、lは0〜3の整数である。)
【0099】
【化23】

(上記一般式(a−4)中、R29は、水素原子またはメチル基であり、R30は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。nは1〜3の整数であり、mは0〜3の整数である。)
【0100】
【化24】

(上記一般式(a−5)中、R31は、水素原子またはメチル基であり、R32は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。pは1〜3の整数であり、qは0〜3の整数である。)
【0101】
一般式(a−3)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a−3)」と記す場合がある)を含有することによって、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを得ることができる。
【0102】
一般式(a−3)中のR28の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等を挙げることができる。これらの中でも、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを得ることができるという観点から、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基が好ましい。
【0103】
一般式(a−3)のR28の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等を挙げることができる。これらの中でも、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを得ることができるという観点から、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0104】
一般式(a−3)のkは、0〜3の整数であり、1または2であることが好ましい。また、lは、0〜3の整数であり、0〜2であることが好ましい。
【0105】
繰り返し単位(a−3)としては、具体的には、下記式(a−3−1)〜(a−3−4)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。なお、一般式(a−3)で表される繰り返し単位は、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0106】
【化25】

【0107】
一般式(a−3)で表される繰り返し単位は、対応するヒドロキシスチレン誘導体を単量体として用いることにより形成することができる。また、加水分解することにより、ヒドロキシスチレン誘導体が得られる化合物を単量体として用いることにより形成することもできる。
【0108】
一般式(a−3)で表される繰り返し単位を形成するための単量体としては、例えば、p−アセトキシスチレン、p−(1−エトキシ)スチレン、p−イソプロペニルフェノール等を挙げることができる。なお、p−アセトキシスチレンを用いた場合には、重合反応後、側鎖の加水分解反応を行うことにより、一般式(a−3)で表される繰り返し単位を生成させることができる。
【0109】
一般式(a−4)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a−4)」と記す場合がある)を含有することによって、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを得ることができる。
【0110】
一般式(a−4)中のR30の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、及び、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基としては、それぞれ、上述した一般式(a−3)中のR28の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基及び炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基と同様のものを例示することができる。
【0111】
一般式(a−4)のnは、1〜3の整数であり、1または2であることが好ましい。また、mは、0〜3の整数であり、0または1であることが好ましい。
【0112】
繰り返し単位(a−4)としては、具体的には、下記式(a−4−1)、(a−4−2)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。なお、一般式(a−4)で表される繰り返し単位は、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0113】
【化26】

【0114】
一般式(a−4)で表される繰り返し単位は、対応する単量体を用いることにより得ることができる。一般式(a−4)で表される繰り返し単位に対応する単量体、即ち、一般式(a−4)で表される繰り返し単位を形成するための単量体としては、例えば、4−ヒドロキシフェニルアクリレート、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートなどを挙げることができる。
【0115】
一般式(a−5)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a−5)」と記す場合がある)を含有することによって、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを得ることができる。
【0116】
一般式(a−5)中のR32の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、及び、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基としては、それぞれ、上述した一般式(a−3)中のR28の、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基及び炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基と同様のものを例示することができる。
【0117】
一般式(a−5)中のpは、1〜3の整数であり、1または2であることが好ましい。また、qは、0〜3の整数であり、0または1であることが好ましい。
【0118】
繰り返し単位(a−5)としては、具体的には、下記式(a−5−1)、(a−5−2)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。なお、一般式(a−5)で表される繰り返し単位は、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0119】
【化27】

【0120】
一般式(a−5)で表される繰り返し単位は、対応する単量体を用いることにより得ることができる。一般式(a−5)で表される繰り返し単位に対応する単量体、即ち、一般式(a−5)で表される繰り返し単位を形成するための単量体としては、例えば、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等を挙げることができる。
【0121】
なお、酸解離性基含有樹脂は、上述した一般式(a−1)〜(a−5)で表される各繰り返し単位以外に、非酸解離性化合物に由来する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a−6)」と記す場合がある)を更に含有していてもよい。繰り返し単位(a−6)を含有することによって、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを得ることができる。
【0122】
非酸解離性化合物は、酸の作用によって解離する基(酸解離性基)を含有しない化合物である。そして、非酸解離性化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、イソボロニルアクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデセニル(メタ)アクリレート、下記式(a−6−1)で表される化合物等を挙げることができる。これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、トリシクロデカニルアクリレート、下記式(a−6−1)で表される化合物が好ましい。なお、繰り返し単位(a−6)は、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。また、本明細書における「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
【0123】
【化28】

【0124】
酸解離性基含有樹脂中の繰り返し単位(a−1)の含有割合は、酸解離性基含有樹脂中の全繰り返し単位を100モル%としたときに、1モル%以上であることが好ましく、20〜70モル%であることが更に好ましく、20〜60モル%であることが特に好ましい。上記含有割合が1モル%未満であると、ナノエッジラフネスが悪化するおそれがある。なお、上記含有量が20モル%以上である場合には、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを得ることができる。
【0125】
酸解離性基含有樹脂中の繰り返し単位(a−2)の含有割合は、酸解離性基含有樹脂中の全繰り返し単位を100モル%としたときに、1モル%以上であることが好ましく、20〜70モル%であることが更に好ましく、20〜60モル%であることが特に好ましい。上記含有割合が1モル%未満であると、ナノエッジラフネスが悪化するおそれがある。なお、上記含有量が20〜70モル%である場合には、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを得ることができる。
【0126】
酸解離性基含有樹脂中の繰り返し単位(a−3)〜(a−5)の合計の含有割合は、酸解離性基含有樹脂中の全繰り返し単位を100モル%としたときに、1モル%以上であることが好ましく、10〜95モル%であることが更に好ましく、40〜80モル%であることが特に好ましい。上記合計の含有割合が1モル%未満であると、ナノエッジラフネスが悪化するおそれがある。なお、95モル%超である場合には、ナノエッジラフネスが悪化するおそれがある。
【0127】
酸解離性基含有樹脂中の繰り返し単位(a−1)〜(a−5)の合計の含有割合は、酸解離性基含有樹脂中の全繰り返し単位を100モル%としたときに、10モル%以上であることが好ましく、40〜100モル%であることが更に好ましく、50〜100モル%であることが特に好ましい。上記含有量が10モル%以上である場合には、ナノエッジラフネスに更に優れたレジストパターンを得ることができる。上記合計の含有割合の合計が10モル%未満であると、ナノエッジラフネスが悪化するおそれがある。
【0128】
酸解離性基含有樹脂中の繰り返し単位(a−6)の含有割合は、酸解離性基含有樹脂中の全繰り返し単位を100モル%としたときに、60モル%以下であることが好ましく、0〜50モル%であることが更に好ましい。上記含有量が60モル%以下である場合には、解像性能とナノエッジラフネスとの性能バランスに優れたレジストパターンを形成することができる。上記含有割合が60モル%超であると、ナノエッジラフネスが悪化するおそれがある。
【0129】
酸解離性基含有樹脂の合成方法は、特に限定されなく、公知のラジカル重合またはアニオン重合により得ることができる。また、上述した繰り返し単位(a−3)〜(a−5)における側鎖のヒドロキシスチレンに由来する構造は、得られた酸解離性基含有樹脂を、塩基または酸の存在下、有機溶媒中でアセトキシ基等を加水分解することにより得ることができる。
【0130】
ラジカル重合は、例えば、窒素雰囲気下、適当な有機溶媒中で、ラジカル重合開始剤の存在下において、上述した繰り返し単位(a−1)及び(a−2)の少なくともいずれかを形成するための単量体、並びに、必要に応じて繰り返し単位(a−3)〜(a−6)を形成するための単量体からなる混合物を得、得られた混合物を攪拌し、加熱することにより行うことができる。
【0131】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)2,2’−アゾビスメチルブチロニトリル、2,2’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、シアノメチルエチルアゾホルムアミド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルプロピオン酸メチル)、2,2’−アゾビスシアノバレリック酸等のアゾ化合物;過酸化ベンゾイル、ラウロイルペルオキシド、1,1’−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物、過酸化水素等を挙げることができる。
【0132】
なお、上記重合の際には、必要に応じて、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、ヨウ素、メルカプタン、スチレンダイマー等の重合助剤を添加することもできる。
【0133】
ラジカル重合における反応温度は、特に限定されず、開始剤の種類等により適宜設定することができるが、例えば、50〜200℃とすることができる。特に、アゾ系開始剤やパーオキサイド系開始剤を用いる場合には、開始剤の半減期が10分〜30時間程度となる温度が好ましく、開始剤の半減期が30分〜10時間程度となる温度であることが更に好ましい。
【0134】
また、反応時間は、開始剤の種類や反応温度により異なるが、開始剤が50%以上消費されるまで反応させることが好ましく、具体的には、多くの場合0.5〜24時間程度である。
【0135】
アニオン重合は、例えば、窒素雰囲気下、適当な有機溶媒中で、アニオン重合開始剤の存在下において、上述した繰り返し単位(a−1)及び(a−2)の少なくともいずれかを形成するための単量体、並びに、必要に応じて繰り返し単位(a−3)〜(a−6)を形成するための単量体からなる混合物を攪拌しながら、所定の温度に維持することにより行うことができる。
【0136】
アニオン重合開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、エチルリチウム、エチルナトリウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム等の有機アルカリ金属を挙げることができる。
【0137】
アニオン重合における反応温度は、特に限定されず、開始剤の種類等により適宜設定することができるが、開始剤としてアルキルリチウムを用いる場合には、−100〜+50℃であることが好ましく、−78〜+30℃であることが好ましい。
【0138】
また、反応時間は、開始剤の種類や反応温度により異なるが、開始剤が50%以上消費されるまで反応させることが好ましく、具体的には、多くの場合0.5〜24時間程度である。
【0139】
なお、酸解離性基含有樹脂の合成において、重合開始剤を用いず、加熱することにより重合反応を行わせることや、カチオン重合を採用することもできる。
【0140】
また、酸解離性基含有樹脂の側鎖を加水分解することによってヒドロキシスチレンに由来する構造を得る場合、上記加水分解反応に用いることのできる酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸及びその水和物、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、マロン酸、蓚酸、1,1,1−フルオロ酢酸などの有機酸;硫酸、塩酸、リン酸、臭化水素酸等の無機酸;ピリジニウムp−トルエンスルホネート、アンモニウムp−トルエンスルホネート、4−メチルピリジニウムp−トルエンスルホネート等を挙げることができる。
【0141】
また、塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基;トリエチルアミン、N−メチル−2−ピロリドン、ピペリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩基等を挙げることができる。
【0142】
上記重合及び上記加水分解に用いることのできる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、等のアルコール類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、臭化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化アルキル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブ類等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホロアミド等の非プロトン性極性溶剤類等を挙げることができる。
【0143】
これらの中でも、アセトン、メチルアミルケトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0144】
酸解離性基含有樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」と記す場合がある)は、3000〜100000であることが好ましく、3000〜40000であることが更に好ましく、3000〜25000であることが特に好ましい。
【0145】
また、酸解離性基含有樹脂のMwと、GPCで測定したポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」と記す場合がある)との比(Mw/Mn)は、1〜5であることが好ましく、1〜3であることが更に好ましく、1〜2.5であることが特に好ましい。
【0146】
[1−5]酸拡散制御剤:
本発明の感放射線性組成物は、酸拡散制御剤を更に含有することが好ましい。酸拡散制御剤は、露光により酸発生剤から生じる酸がレジスト被膜中で拡散することを制御するため、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する作用を有する成分である。
【0147】
このような酸拡散制御剤を含有させることにより、得られる感放射線性組成物の貯蔵安定性が向上する。また、形成したレジスト被膜の解像度が更に向上するとともに、露光後、加熱処理を行うまでの引き置き時間(PED)が変動することに起因してレジストパターンの線幅が変化してしまうことを抑制することができるため、プロセス安定性に極めて優れた感放射線性組成物を得ることができる。
【0148】
酸拡散制御剤としては、例えば、含窒素有機化合物、感光性塩基性化合物などを挙げることができる。
【0149】
上記含窒素有機化合物としては、例えば、下記一般式(8)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(i)」という)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(ii)」という)、窒素原子を3個以上有するポリアミノ化合物や重合体(以下、これらをまとめて「含窒素化合物(iii)」という)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等を挙げることができる。
【0150】
【化29】

【0151】
一般式(8)中、各R33は、相互に独立に、水素原子、置換されていてもよい、直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいアラルキル基である。
【0152】
含窒素化合物(i)としては、例えば、モノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ(シクロ)アルキルアミン類;トリ(シクロ)アルキルアミン類;置換アルキルアミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ナフチルアミン、2,4,6−トリ−tert−ブチル−N−メチルアニリン、N−フェニルジエタノールアミン、2,6−ジイソプロピルアニリン等の芳香族アミン類を挙げることができる。
【0153】
含窒素化合物(ii)としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン等を挙げることができる。
【0154】
含窒素化合物(iii)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、2−ジメチルアミノエチルアクリルアミドの重合体等を挙げることができる。
【0155】
アミド基含有化合物としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニルピペラジン、
【0156】
N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物、
【0157】
ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等を挙げることができる。
【0158】
ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等を挙げることができる。
【0159】
含窒素複素環化合物としては、例えば、イミダゾール類;ピリジン類;ピペラジン類のほか、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等を好適例として挙げることができる。
【0160】
感光性塩基性化合物は、露光領域において中性の断片に効率よく分解するとともに、未露光部では分解せずにそのまま残る感光性の成分である。このような感光性塩基性化合物は、非感光性の塩基性化合物に比べて、露光部分(即ち、露光領域)に発生する酸を有効活用することができるため、感度を更に向上させることができる。
【0161】
感光性塩基性化合物としては、上記性質を有する限り、特に制限されないが、例えば、下記一般式(9−1)、(9−2)で表される化合物などを挙げることができる。
【0162】
【化30】

【0163】
【化31】

【0164】
一般式(9−1)中、R34、R35、及びR36は、相互に独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基であるか、或いは、R34、R35、及びR36のいずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子とともに環状構造を形成しており、残りの1つが置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基である。Xは、OH、R39−、R39COOである(但し、R39は1価の有機基である)。
【0165】
一般式(9−2)中、R37及びR38は、相互に独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基であるか、或いは、R37及びR38が相互に結合して式中のヨウ素原子とともに環状構造を形成している。Xは、OH、R40、R40COOである(但し、Rは1価の有機基である)。
【0166】
一般式(9−1)及び一般式(9−2)中、Xとしては、具体的には、OH、CHCOO、下記式(10−1)〜(10−5)で表される各化合物が好ましい。
【0167】
【化32】

【0168】
感光性塩基性化合物としては、具体的には、トリフェニルスルホニウム化合物(上記一般式(9−1)で表される化合物)であり、そのアニオン部(X)がOH、CHCOO、式(10−2)で表される化合物、式(10−3)で表される化合物、式(10−4)で表される化合物が好ましい。
【0169】
なお、上記酸拡散制御剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0170】
酸解離性基含有樹脂を更に含有させた場合、酸拡散制御剤の配合量は、酸解離性基含有樹脂100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、0.001〜30質量部であることが更に好ましく、0.005〜20質量部であることが特に好ましい。上記配合量が30質量部超であると、形成したレジスト被膜の感度や露光部の現像性が低下するおそれがある。なお、0.001質量部未満であると、プロセス条件によっては、形成したレジスト被膜のパターン形状や寸法忠実度が低下するおそれがある。
【0171】
[1−6]その他の成分:
本発明の感放射線性組成物は、上述した酸解離性基含有樹脂、感放射線性酸発生剤、酸増殖剤、酸拡散制御剤、及び溶剤以外に、その他の成分として、各種の添加剤を更に配合することができ、上記添加剤としては、例えば、界面活性剤、増感剤、脂肪族添加剤、染料、顔料、接着助剤、アルカリ可溶性重合体、酸解離性の保護基を有する低分子のアルカリ溶解性制御剤、ハレーション防止剤、保存安定化剤、消泡剤等を挙げることができる。添加剤については従来公知のものを適宜選択して使用することができる。具体的には、特開2009−258598号公報、国際公開第09/110388号パンフレット等に記載されたものを使用することができる。
【0172】
本発明の感放射線性組成物は、例えば、上述した酸解離性基含有樹脂、酸発生剤、酸増殖剤、酸拡散制御剤、及び、その他の成分(溶剤を除く)を溶剤と混合し、溶剤に均一に溶解して調製することができる。このとき、全固形分濃度が上記範囲となるように調節することが好ましい。そして、このように調製した後、例えば、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過することが好ましい。
【0173】
[2]感放射線性組成物の使用方法:
本発明の感放射線性組成物は、化学増幅型ポジ型レジスト被膜を成膜可能な材料として有用である。そして、この化学増幅型ポジ型レジスト被膜は、所望の形状のパターン(ポジ型のレジストパターン)を形成することができるものである。具体的には、上記化学増幅型ポジ型レジスト被膜は、露光されると、含有する酸発生剤から酸が発生し、発生した酸の作用によって、酸解離性基含有樹脂中の酸解離性基が脱離するため、この酸解離性基含有樹脂がアルカリ可溶性となる。そのため、レジスト被膜にアルカリ可溶性部位が生じ、このアルカリ可溶性部位をアルカリ現像液によって溶解、除去することによって所望の形状のレジストパターンが形成されたレジスト被膜を得ることができる。以下、更に具体的に説明する。
【0174】
本発明の感放射線性組成物を用いてレジストパターンを形成するには、まず、本発明の感放射線性組成物を基板上に塗布することよってレジスト被膜を形成する。感放射線性組成物としては、例えば、上述したように、全固形分濃度を調整した後、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過したものを用いることができる。基板としては、例えば、シリコンウエハー、アルミニウムで被覆されたウエハー等を用いることができる。感放射線性組成物を塗布する方法としては、従来公知の方法を適宜採用することができ、具体的には、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
【0175】
その後、場合によっては70〜160℃程度の温度で加熱処理(以下、「PB」という)を行ってもよい。
【0176】
次に、所定のレジストパターンが形成されるように、このレジスト被膜を露光する。この露光に使用することができる放射線としては、例えば、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、EUV(極紫外線、波長13.5nm等)等の(極)遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線等を挙げることができる。また、露光量等の露光条件は、感放射線性組成物の配合組成や添加剤の種類等に応じて適宜選定することができる。なお、この露光においては、液浸露光とすることもできる。
【0177】
なお、露光後には、加熱処理(以下、「PEB」という)を行うことが好ましい。このPEBにより、酸解離性基含有樹脂中の酸解離性基の脱離を更に円滑に進行させることが可能となる。PEBの加熱条件は、感放射線性組成物の配合組成によって適宜選定することができるが、30〜200℃であることが好ましく、50〜170℃であることが更に好ましい。
【0178】
本発明においては、感放射線性組成物の潜在能力を最大限に引き出すため、例えば、特公平6−12452号公報(特開昭59−93448号公報)等に開示されているように、基板上に有機系または無機系の反射防止膜を形成することもできる。また、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、例えば、特開平5−188598号公報等に開示されているように、レジスト被膜上に保護膜を設けることもできる。なお、これらの技術は併用することができる。
【0179】
次に、露光されたレジスト被膜を現像する。このように現像することによって、所定のレジストパターンを得ることができる。現像に使用される現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも一種を溶解したアルカリ性水溶液が好ましい。
【0180】
アルカリ性水溶液の濃度は、10質量%以下であることが好ましい。アルカリ性水溶液の濃度が10質量%超であると、非露光部も現像液に溶解するおそれがある。また、現像液は、具体的には、pH8〜14であることが好ましく、pH9〜14であることが更に好ましい。
【0181】
上記現像液には、例えば、有機溶媒を添加することもできる。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロペンタノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン等のケトン類;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジメチロール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、フェノール、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0182】
有機溶媒の配合量は、アルカリ性水溶液100体積部に対して、100体積部以下であることが好ましい。上記配合量が100体積部超であると、現像性が低下して、露光部の現像残りが多くなるおそれがある。また、現像液には、界面活性剤等を適量添加することもできる。
【0183】
なお、アルカリ性水溶液からなる現像液によって現像した後は、一般的に水で洗浄して乾燥する。
【0184】
[3]化合物:
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表されるものである。このような化合物は、感放射線性組成物の材料として用いることができ、この化合物を含有することによって、感放射線性組成物は、良好な感度を有し、解像度に優れることに加え、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成可能なレジスト被膜を形成することができる。
【0185】
【化33】

(一般式(1)中、Aは、単結合、下記式(2−1)、下記式(2−2)、または下記式(2−3)で表される基である。Rは、水素原子、炭素数1〜25の直鎖状、分岐状のアルキル基、または炭素数6〜18のアリール基である。Rは、炭素数は11〜25の、置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、置換基を有してもよいアリール基若しくはアリールアルキル基、または置換基を有してもよい複素環基である。Rは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基である。)
【0186】
【化34】

【0187】
本発明の化合物は、本発明の感放射線性組成物に含有される一般式(1)で表される化合物と同様のものである。
【0188】
本発明の化合物(一般式(1)で表される化合物)の中でも、下記一般式(1−1)で表される化合物であることが好ましい。一般式(1−1)で表される化合物であると、良好なナノエッジラフネスを得ることができる。
【0189】
【化35】

(一般式(1−1)中、Rは、炭素数は11〜25の、置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、置換基を有してもよいアリール基若しくはアリールアルキル基、または置換基を有してもよい複素環基である。)
【実施例】
【0190】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。なお、実施例の記載における「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。また、本実施例においては、レジスト被膜の露光にEB(電子線)を使用しているが、EUV等の短波長放射線を使用した場合でも、基本的なレジスト特性は類似しており、それらの間に相関性があることも知られている。
【0191】
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分散度(Mw/Mn)の測定]:
東ソー社製のGPCカラム「GPCカラム(G2000HXL2本、G3000HXL1本、G4000HXL1本)」を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶剤としてテトラヒドロフラン、カラム温度を40℃とする分析条件で行い、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、上記測定結果より算出した。
【0192】
13C−NMR分析及びH−NMR分析]:
13C−NMR分析及びH−NMR分析は、日本電子社製の型式「JNM−EX270」を用いた。
【0193】
[感度(L/S)(μC/cm)]:
調製した組成物溶液を、東京エレクトロン社製の「クリーントラックACT−8」内で、シリコンウエハー上に各スピンコートした後、表2に示す条件(PB条件)(具体的には110℃で60秒)で加熱処理(PB)を行い、膜厚50nmのレジスト被膜を形成した。その後、簡易型の電子線描画装置(日立製作所社製、型式「HL800D」、出力;50KeV、電流密度;5.0アンペア/cm)を用いてレジスト被膜に電子線を照射して露光を行った。電子線の照射後(露光後)、表2に示す条件(PEB条件)(具体的には110℃で60秒)加熱処理を行った。その後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、23℃で1分間、パドル法により現像した後、純水で水洗し、乾燥して、所定のレジストパターンが形成されたレジストを得た。
【0194】
このとき、露光量(電子線の照射量)を変化させながら、複数のライン部、及び、隣り合うライン部によって形成されるスペース部(即ち、溝部)からなるレジストパターン(いわゆる、ライン・アンド・スペースパターン(1L1S))を形成した。このとき、ライン部とスペース部の線幅を1対1(具体的には、線幅150nmのライン部と線幅150nmのスペース部)とするような露光量を最適露光量とし、この最適露光量を、感度の基準として評価した。
【0195】
図1は、ライン・アンド・スペースパターンを上方から見た際の模式的な平面図である。また、図2は、図1に示すA−A’断面を示す断面図である。但し、図1及び図2で示す凹凸は、実際より誇張して描いている。
【0196】
[ナノエッジラフネス(nm)]:
上記[感度(L/S)(μC/cm)]と同様の方法で、設計線幅150nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を形成した。その後、ライン・アンド・スペースパターンのライン部を半導体用走査電子顕微鏡(高分解能FEB測長装置、商品名「S−9220」、日立製作所社製)にて観察し、ライン部の横側面のうち、最も突出した凸部分の高さを測定した。具体的には、図1及び図2に示すように、シリコンウエハー1上に形成したレジスト被膜のライン部2の横側面2aに生じた最も著しい凸部分における線幅(図1中、「X」で示す)と、設計線幅150nmとの差(図1及び図2に示す「ΔCD」)を、CD−SEM(日立ハイテクノロジーズ社製、「S−9220」)にて測定した。この測定値をナノエッジラフネスの評価値とした。
【0197】
[解像度(L/S)(nm)]:
上記[感度(L/S)(μC/cm)]の評価で形成したライン・アンド・スペースパターンのライン部の線幅のうち、最小の線幅(nm)の値を解像度とした。
【0198】
(合成例1)酸増殖剤(C−1)の合成:
下記化合物(c1−1)4.1g、下記化合物(c1−2)5.0g、トリエチルアミン2.9g及び4−ジメチルアミノピリジン0.7gをジクロロメタン50gに溶解させ、室温で24時間撹拌した。反応終了後、ジクロロメタン100gを加え、3質量%NaHCO水溶液100gで2回、3質量%シュウ酸水溶液100gで2回、水100gで5回洗浄し、有機層を減圧留去した。得られた粘性液体を水500gに注ぐことで、茶褐色固体を得た。
【0199】
【化36】

【0200】
得られた化合物の構造確認を、H−NMRで行った。その結果を以下に示す。
【0201】
H−NMR(400MHz、溶媒DMSO−d6、内部標準TMS):δ(ppm)=0.71〜1.32(9.0H)、1.40〜1.60(1.0H)、1.60〜1.96(3.0H)、1.97〜2.34(2.0H)、4.40〜4.85(2.0H)、7.10〜8.35(9.0H)
【0202】
上記のH−NMRの結果より、得られた化合物の構造は、下記式(C−1)で表される化合物であることが分かった。以下、この化合物を酸増殖剤(C−1)とする。
【0203】
【化37】

【0204】
(合成例2)酸増殖剤(C−2)の合成:
下記化合物(c2−1)1.9g、下記化合物(c2−2)2.0g、トリエチルアミン1.3g及び4−ジメチルアミノピリジン0.3gをジクロロメタン25gに溶解させ、室温で24時間撹拌した。反応終了後、ジクロロメタン50gを加え、3質量%NaHCO水溶液50gで2回、3質量%シュウ酸水溶液50gで2回、水50gで5回洗浄し、有機層を減圧留去することで、淡黄色粘性液体を得、得られた淡黄色粘性液体を乾燥させて乾燥体(化合物)を得た。
【0205】
【化38】

【0206】
得られた乾燥体の構造確認を、H−NMRで行った。その結果を以下に示す。
【0207】
H−NMR(400MHz、溶媒DMSO−d6、内部標準TMS):δ(ppm)=0.70〜1.31(9.0H)、1.39〜1.65(1.0H)、1.70〜1.93(3.0H)、1.94〜2.30(2.0H)、3.40〜3.90(4.0H)、4.50〜5.00(2.0H)、7.40〜8.25(7.0H)
【0208】
上記のH−NMRの結果より、得られた乾燥体の構造は、下記式(C−2)で表される化合物であることが分かった。以下、この化合物を酸増殖剤(C−2)とする。
【0209】
【化39】

【0210】
(合成例3)酸増殖剤(C−3)の合成:
下記式(c3−1)で表される化合物(c3−1)4.1g、下記式(c3−2)で表される化合物(c3−2)5.0g、トリエチルアミン2.9g及び4−ジメチルアミノピリジン0.7gをジクロロメタン50gに溶解させ、室温で24時間撹拌しつつ反応させた。反応終了後、更にジクロロメタン100gを加え、3質量%NaHCO水溶液100gで2回洗浄し、その後、3質量%シュウ酸水溶液100gで2回洗浄し、その後更に、水100gで5回洗浄した後、有機層を減圧留去し粘性液体を得た。得られた粘性液体を水500gに注いで白色固体を得た。
【0211】
【化40】

【0212】
得られた白色固体を乾燥させてH−NMRにて構造確認を行った。H−NMRの結果を以下に示す。
【0213】
H−NMR(400MHz、溶媒CDCl、内部標準TMS):δ(ppm)=0.70〜1.44(15.0H)、1.44〜1.52(1.0H)、1.52〜1.71(2.0H)、1.84〜2.60(10.0H)、3.20〜3.30(1.0H)、3.50〜3.80(2.0H)、4.90〜5.10(1.0H)
【0214】
上記H−NMRの結果により、得られた白色固体の構造は、下記式(C−3)で表される化合物であることが確認できた。以下、得られた白色固体を酸増殖剤(C−3)とした。
【0215】
【化41】

【0216】
(合成例4)樹脂(A−1)の合成:
p−アセトキシスチレン56g、下記式(M−1)で表される化合物(単量体)44g、アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」という)4g、及びt−ドデシルメルカプタン1gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合させた。重合後、反応溶液を1000gのn−ヘキサン中に滴下して、生成共重合体を凝固精製した。次いで、この共重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、更に、メタノール150g、トリエチルアミン35g及び水7gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応後、溶剤及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた共重合体をアセトン150gに溶解した後、2000gの水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥した。
【0217】
【化42】

【0218】
得られた共重合体は、Mwが11000、Mw/Mnが2.0、13C−NMR分析の結果、p−ヒドロキシスチレン及び上記式(M−1)で表される化合物に由来する各繰り返し単位の含有比(モル比)が65:35の共重合体であった。以下、この共重合体を、樹脂(A−1)とする。
【0219】
(合成例5)樹脂(A−2)の合成:
p−アセトキシスチレン55g、下記式(M−2)で表される化合物(単量体)45g、AIBNg及びt−ドデシルメルカプタン1gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合させた。重合後、反応溶液を1000gのn−ヘキサン中に滴下して、生成共重合体を凝固精製した。次いで、この共重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、更に、メタノール150g、トリエチルアミン34g及び水6gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応後、溶剤及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた共重合体をアセトン150gに溶解した後、2000gの水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥した。
【0220】
【化43】

【0221】
得られた共重合体は、Mwが10000、Mw/Mnが2.1、13C−NMR分析の結果、p−ヒドロキシスチレンと上記式(M−2)で表される化合物に由来する各繰り返し単位の含有比(モル比)が65:35の共重合体であった。以下、この共重合体を、樹脂(A−2)とする。
【0222】
なお、実施例及び比較例に用いた各成分(酸発生剤、酸拡散制御剤、及び溶剤)を以下に示す。
【0223】
酸発生剤としては、以下に示す式(B−1)〜(B−3)で表わさせる各化合物を用いた。
【0224】
【化44】

【0225】
酸拡散制御剤としては、トリ−n−オクチルアミン(表1中、「D−1」と示す)を用いた。
【0226】
溶剤としては、乳酸エチル(表1中、「E−1」と示す)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(表1中、「E−2」と示す)の両方を用いた。
【0227】
(実施例1)
酸解離性基含有樹脂として合成例1で得られた樹脂(A−1)100部、酸発生剤として上記式(B−1)で表わされる化合物15部、酸増殖剤として上記(C−1)で表わさせる化合物(一般式(1)で表される化合物)7部、酸拡散制御剤としてトリ−n−オクチルアミン2部、溶剤として乳酸エチル1100部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2500部を混合して混合液を得、得られた混合液を孔径200nmのメンブランフィルターでろ過することにより、組成物溶液(感放射線性組成物)を調製した。調製した組成物溶液を用いて上記各評価を行った。
【0228】
本実施例においては、感度が18μC/cmであり、ナノエッジラフネスが12nmであり、解像度が80nmであった。なお、評価結果を表2に示す。
【0229】
(実施例2〜6、比較例1)
表1に示す各成分を用い、表1に示す配合量(質量部)としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜6及び比較例1の組成物溶液(感放射線性組成物)を調製した。調製した各組成物溶液を用いて実施例1と同様にして(但し、「PB条件」及び「PEB条件」は表2に示す条件で行った。)上述した各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0230】
【表1】

【0231】
【表2】

【0232】
表2から明らかなように、実施例1〜6の感放射線性組成物は、比較例1の感放射線性組成物に比べて、良好な感度を有し、解像度に優れることに加え、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成可能なレジスト被膜を形成することができることが確認できた。
【0233】
別言すると、一般式(1)で表される化合物を含有する実施例1〜6の感放射線性組成物は、一般式(1)で表される化合物を含有しない比較例1の感放射線性組成物に比べて、電子線または極紫外線に有効に感応し、低ラフネスであるとともに、感度にも優れており、微細パターンを高精度に、かつ、安定して形成することが可能な化学増幅型ポジ型レジスト被膜を成膜できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0234】
本発明の感放射線性組成物は、EB、EUVやX線を用いるリソグラフィープロセスにおける微細加工、特に半導体デバイスなどの製造に用いられるレジスト被膜の材料として好適であり、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用の化学増幅型レジストを形成可能なものとして極めて有用である。また、本発明の化合物は、化学増幅型レジストを形成可能な感放射線性組成物の材料として用いることができる。
【符号の説明】
【0235】
1:シリコンウエハー、2:レジストパターン、2a:レジストパターンの側面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物と
溶剤と、
感放射線性酸発生剤と、
を含有する感放射線性組成物。
【化1】

(前記一般式(1)中、Aは、単結合、下記式(2−1)、下記式(2−2)、または下記式(2−3)で表される基である。Rは、水素原子、炭素数1〜25の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または炭素数6〜18のアリール基である。Rは、炭素数は11〜25の、置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、置換基を有してもよいアリール基若しくはアリールアルキル基、または置換基を有してもよい複素環基である。Rは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基である。)
【化2】

【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(1−1)で表される化合物である請求項1に記載の感放射線性組成物。
【化3】

(前記一般式(1−1)中、Rは、炭素数は11〜25の、置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、置換基を有してもよいアリール基若しくはアリールアルキル基、または置換基を有してもよい複素環基である。)
【請求項3】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化4】

(前記一般式(1)中、Aは、単結合、下記式(2−1)、下記式(2−2)、または下記式(2−3)で表される基である。Rは、水素原子、炭素数1〜25の直鎖状、分岐状のアルキル基、または炭素数6〜18のアリール基である。Rは、炭素数は11〜25の、置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、置換基を有してもよいアリール基若しくはアリールアルキル基、または置換基を有してもよい複素環基である。Rは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基である。)
【化5】

【請求項4】
下記一般式(1−1)で表される化合物である請求項3に記載の化合物。
【化6】

(前記一般式(1−1)中、Rは、炭素数は11〜25の、置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基、置換基を有してもよいアリール基若しくはアリールアルキル基、または置換基を有してもよい複素環基である。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−178670(P2011−178670A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41595(P2010−41595)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】