説明

感染の処置又は防止

本発明は、被験体における疾患若しくは状態(該疾患若しくは状態は、被験体の口腔組織中の微生物病原体の存在に関連付けられるものである)の発生率又は重篤性を低減する方法であって、微生物病原体に対する抗菌剤及び免疫原を形成する組成物の使用を含む、被験体における疾患若しくは状態の発生率又は重篤性を低減する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験体における疾患若しくは状態(上記疾患若しくは状態は、被験体の口腔組織中の微生物病原体の存在に関連付けられる)の処置又は防止、具体的には(ただし、排他的ではない)ポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)関連の疾患若しくは状態の処置又は防止に関する。
【背景技術】
【0002】
口は、主な感染部位の1つである。感染は、口腔組織の消耗性疾患を招き得る。また口腔組織の感染と、他の解剖学的区画における疾患又は状態との間に明らかな関連性が観察されている。
【0003】
慢性歯周炎は、口腔組織の疾患の一例である。これは、歯槽骨の吸収及び最終的には歯を失うことにつながる歯の支持組織の炎症性疾患である。この疾患は、社会全体において公衆衛生上の主要な問題であり、成人の人口の最大15%がこの疾患に罹患していると推定され、重篤な形態には5%〜6%が罹患している。
【0004】
慢性歯周炎の発症及び進行は、歯肉縁下の歯垢中の特定のグラム陰性菌と関連付けられている。歯肉縁下の歯垢中のポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)が、疾患に強く関連付けられている。
【0005】
処置(歯石除去及び根面平滑化)後の歯周炎患者の歯肉縁下の歯垢中のポルフィロモナス・ジンジバリスの残留性が、進行性の歯槽骨量減少に大いに関連付けられると報告されている。さらに、歯肉縁下の歯垢中のポルフィロモナス・ジンジバリス細胞数の増加は、付着喪失、歯周ポケットの深さ及びプロービング時の出血によって測定される場合の疾患重篤性と相関することが分かっている。
【0006】
ポルフィロモナス・ジンジバリスによる口腔感染は、マウス、ラット及び非ヒト霊長類において歯周骨量減少を誘導することが分かっている。さらに、歯周病及びポルフィロモナス・ジンジバリス感染と、心血管疾患及び或る特定のがんとの関係性が増大している。
【0007】
他の細菌、真菌、ウイルス及び原虫を含む他の多くの微生物病原体は、口腔組織の疾患に関連付けられており、これらの病原体の幾つかはまた、口腔組織の感染により他の解剖学的区画において疾患を引き起こす。前者の例としては、トレポネーマ・デンチコラ(T. denticola)及びタンネレラ・フォーサイシア(T. forsythia)が挙げられる。A群ストレプトコッカス(Streptococcus)感染は、リウマチ熱及びリウマチ性心疾患の病原学的作用因子である。
【0008】
問題の1つは、粘膜組織が慢性的に炎症しているか、又は粘膜組織の急性炎症が外科的介入又は他の歯科的介入から生じた状況において、所定の微生物病原体に対する強力な防御応答をどのようにして得るかどうかが不明瞭であることである。
【0009】
本明細書における任意の従来技術に対する参考文献は、この従来技術がオーストラリアにおける共通の一般知識若しくは任意の他の法域の一部を形成するという、又はこの従来技術が当業者によって関連があるものと確認され、理解され、かつ見なされることを合理的に期待することができるという承認又は任意の形態の示唆ではなく、またそのように解釈されないものとする。
【発明の概要】
【0010】
或る特定の実施の形態では、被験体における疾患若しくは状態(上記疾患若しくは状態は、被験体の口腔組織中の微生物病原体の存在に関連付けられるものである)の発生率又は重篤性を低減させる方法であって、
被験体を処置し、それにより実質的に全ての微生物又はそれらの断片を上記被験体の口腔組織から除去するためのコンディションを提供することと、その後、
上記被験体において抗体(上記抗体は、口腔組織中でのその存在が疾患又は状態と関連付けられる微生物病原体に対して上記被験体を防御するためのものである)を供給することと
を含み、それにより被験体における疾患若しくは状態の発生率又は重篤性を低減させる、被験体における疾患若しくは状態の発生率又は重篤性を低減させる方法が提供される。
【0011】
一実施の形態では、抗体は、上記被験体へ免疫原(上記免疫原は、微生物病原体に対して上記被験体を防御するためのものである)を投与することによって、上記被験体中で供給される。
【0012】
一実施の形態では、被験体におけるポルフィロモナス・ジンジバリス関連の疾患若しくは状態の発生率又は重篤性を低減させる方法であって、
被験体を処置し、それにより実質的に全ての微生物又はそれらの断片を上記被験体の口腔組織から除去することと、その後、
ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するためのキメラタンパク質又は融合タンパク質(上記タンパク質は、第2のペプチドに直接的に又はリンカーを介して結合される第1のペプチドを含む)を上記被験体へ投与することであって、ここで、
(A)上記第1のペプチドは、
(i)配列番号1で示される配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)配列番号2で示される配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、
を含み、
(B)上記第2のペプチドは、
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼのアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼのアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagAアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て
を含む、投与することと
を含み、それにより被験体における疾患若しくは状態の発生率又は重毒性を低減させる、被験体におけるポルフィロモナス・ジンジバリス関連の疾患若しくは状態の発生率又は重篤性を低減させる方法が提供される。
【0013】
他の実施の形態では、
実質的に全ての微生物又はそれらの断片を上記被験者の口腔組織から除去するための抗菌剤と、
口腔組織中でのその存在が疾患又は状態と関連付けられる微生物病原体に対して、上記被験体を免疫感作するための免疫原と
を含む組成物又はキットが提供され、上記組成物又はキットは、上述の方法で使用するためのものである。
【0014】
或る特定の実施の形態では、被験体における疾患若しくは状態(上記疾患若しくは状態は、被験体の口腔組織中の微生物病原体の存在に関連付けられるものである)の発生率又は重篤性を低減させる方法であって、
被験体の口腔組織に対して外科的処置を実施することと、その後、
上記被験体を処置し、それにより実質的に全ての微生物又はそれらの断片を上記被験体の口腔組織から除去するためのコンディションを提供することと、
上記被験体において抗体(上記抗体は、口腔組織中でのその存在が疾患又は状態と関連付けられる微生物病原体に対して上記被験体を防御するためのものである)を供給することと
を含み、それにより被験体における疾患若しくは状態の発生率又は重篤性を低減させる、被験体における疾患若しくは状態の発生率又は重篤性を低減させる方法が提供される。
【0015】
一実施の形態では、上記外科的処置は歯科的処置である。歯科的処置の例としては、創面切除(debridement)、歯石除去(scaling)及び/又は根面平滑化(root planning)が挙げられる。
【0016】
一実施の形態では、本発明は、被験体における疾患若しくは状態(上記疾患若しくは状態は、被験体の口腔組織中の微生物病原体の存在に関連付けられるものである)の発生率又は重篤性を低減させるための組成物を提供し、上記組成物は、本明細書中に記載されるような抗菌剤と本明細書中に記載されるような免疫原とを含む。
【0017】
別の態様では、本発明は、被験体における疾患若しくは状態(上記疾患若しくは状態は、被験体の口腔組織中の微生物病原体の存在に関連付けられるものである)の発生率又は重篤性を低減させるための薬剤の調製における本発明の組成物の使用を提供する。疾患の非限定的な例としては、歯垢、歯肉炎、歯周炎、慢性歯周炎、齲蝕、骨量減少、歯槽骨量減少及び冠動脈疾患が挙げられる。
【0018】
別の実施の形態では、本発明は、本明細書中に記載されるような抗菌剤の活性成分及び本明細書中に記載されるような免疫原からなる、歯周病(及び/又は処置に適するような本明細書中で同定される他の状態)の処置又は防止のための組成物を提供する。
【0019】
別の実施の形態では、本発明は、被験体における疾患若しくは状態(上記疾患若しくは状態は、被験体の口腔組織中の微生物病原体の存在に関連付けられるものである)の発生率又は重篤性を低減させることにおける使用のための本明細書中に記載されるような抗菌剤と本明細書中に記載されるような免疫原とを含む組成物を提供する。
【0020】
別の実施の形態では、本発明は、薬剤としての使用のための本明細書中に記載されるような組成物を提供する。
【0021】
別の実施の形態では、本発明は、主成分として有効量の本発明の組成物を含む医薬組成物を提供する。
【0022】
1つの実施の形態では、個体において口腔病原体に対する抗体応答を形成する又はTh2応答を形成する方法であって、
口腔病原体に対する抗体応答又はTh2応答が形成されるべき個体を供給する工程と、
前記個体を評価して、該個体が炎症性の口腔組織を有するかどうかを決定する工程と、
前記評価により前記個体が炎症性の口腔組織を有しないことが明らかになる状況において、該個体を口腔病原体で免疫感作し、それにより該個体において口腔病原体に対する抗体応答又はTh2応答を形成する工程と
を含む、個体において口腔病原体に対する抗体応答を形成する又はTh2応答を形成する方法が提供される。
【0023】
1つの実施の形態では、炎症性の口腔組織を有する個体における口腔病原体に対する抗体応答の形成又はTh2応答の形成に関する免疫感作計画において、抗炎症剤を該個体へ投与して、それにより口腔病原体に対する抗体応答又はTh2応答の形成に関する該個体の免疫感作前に、該口腔組織の炎症を最低限に抑えるか、又は該口腔組織から炎症を除去する工程が提供される。
【0024】
別の実施の形態では、口腔病原体に対する抗体応答を形成するように又はTh2応答を形成するように炎症性の口腔組織を有する個体を、該病原体による免疫感作時に調整する方法であって、抗炎症剤を該個体へ投与して、それにより口腔病原体に対する抗体応答の形成又はTh2応答の形成に関する病原体による該個体の免疫感作前に、該口腔組織の炎症を最低限に抑えるか、又は該口腔組織から炎症を除去する工程を含む、口腔病原体に対する抗体応答を形成するように又はTh2応答を形成するように炎症性の口腔組織を有する個体を、該病原体による免疫感作時に調整する方法が提供される。
【0025】
更なる実施の形態では、炎症性の口腔組織を有する個体において口腔病原体に対する抗体応答を形成する又はTh2応答を形成する方法であって、
炎症性の口腔組織を有する個体を準備する工程と、
前記個体に対して処置を適用し、それにより前記口腔組織から炎症を除去する工程と、その後、
前記個体を口腔病原体で免疫感作し、それにより該個体において該病原体に対する抗体応答を形成する又はTh2応答を形成する工程と
を含む、炎症性の口腔組織を有する個体において口腔病原体に対する抗体応答を形成する又はTh2応答を形成する方法が提供される。
【0026】
上記の実施の形態では、免疫感作が、口腔組織が炎症性ではない場合、又は炎症が亜臨床若しくは無症状である場合に提供されるものとする。
【0027】
通常、免疫感作時に形成される免疫応答は主にTh2応答であるが、該免疫応答は、Th1応答の検出可能な構成成分を含有し得る。
【0028】
通常、関連の炎症が慢性歯周炎、特にポルフィロモナス・ジンジバリス感染に関連する歯周炎である。
【0029】
歯周炎がポルフィロモナス・ジンジバリス感染に関連付けられる場合、通常、免疫感作用の免疫原は、ポルフィロモナス・ジンジバリス細胞、それに由来する断片、代謝産物又は組換え産物、例えば本明細書中に記載されるキメラペプチド(特に、KAS1−KsA1、KAS2−KLA1)である。
【0030】
通常、本明細書で規定されるような抗炎症剤又は抗菌剤は、抗炎症性化合物、抗生物質及び抗バイオフィルム剤の1つ若しくは複数を含むか、又はそれらからなり、それらの例は、本明細書中でより詳細に記載されている。
【0031】
本明細書中で使用する場合、文脈上他の意味に解すべき場合を除いて、「含む」という用語及びこの用語の変化形(variations of the term, such as "comprising", "comprises" and "comprised")は、更なる添加剤、構成成分、整数又は工程を排除するとは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】組換えKgpタンパク質のSDS−PAGEゲルのクマシーブルー染色を示す図である。レーン1=KAS2−KLA1、レーン2=KLA1、レーン3=KsA1、レーン4=KAS1−KsA1。分子量マーカーは、kDaとして示される。
【図2】KAS2ペプチド及びホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞の抗体認識を示す図である。(A)KAS2ペプチドを、ELISAにおいてホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞(FK−W50)、組換えタンパク質KAS1−KsA1、KAS2−KLA1、及び合成KAS2−DT複合体及びPBSに対して産生させた抗血清でプローブした。(B)ホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞を、ELISAにおいてホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞(FK−W50)、組換えタンパク質KAS1−KsA1、KAS2−KLA1、KLA1及びPBSに対して産生させた抗血清でプローブした。抗体応答は、得られたELISA力価OD415−2×バックグラウンドレベルとして表わされ、力価はそれぞれ、3つの値の平均値±標準偏差を表す。
【図3】組換えタンパク質及び組換えキメラタンパク質、ホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリス及びアジュバントのみ(PBS、IFA)で免疫感作したマウス、又は非経口感染(非負荷)マウスの上顎臼歯のポルフィロモナス・ジンジバリス誘導性口蓋骨水平板(horizontal bone loss)減少を示す図である。この図では、KAS2−KLA1はAS2−LA1と示され、KLA1はLA1と示され、KAS1−KsA1はAS1−sA1と示され、KsA1はsA1と示される。骨量減少の測定は、セメントエナメル境(CEJ)から、左上顎及び右上顎の両方の各上顎臼歯の頬側の歯槽骨頂(ABC)までの平方ミリメートル(mm)で測定される面積の平均である。データは、レーベンの等分散性により測定されるように正規分布し、mmでの平均値(n=12)として表わされ、一元配置分散分析及びダネットのT3検定を使用して解析した。は、群が対照(感染)群よりも有意に(P<0.001)に低い骨量減少を有することを示す。は、群がAS2−LA1群よりも有意に(P<0.001)に高い骨量減少を有することを示す。
【図4】歯周炎モデルにおける免疫感作したマウスの血清抗体サブクラス応答を示す図である。組換えタンパク質KsA1、KLA1、KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1並びにホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリス株W50で免疫感作したマウス由来の血清;A(経口接種前)及びB(経口接種後)を、吸着抗原としてホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリス株W50を用いたELISAで使用した。抗体応答IgG(黒色棒グラフ)IgG1(灰色棒グラフ)、IgG2a(白色棒グラフ)、IgG2b(横縞棒グラフ)、IgG3(斜め縞棒グラフ)は、得られたELISA力価(log2)−バックグラウンドレベルとして表わされ、力価はそれぞれ、3つの値の平均±標準偏差を表す。
【図5】KAS2ペプチド配列433〜468を表す重複ペプチドに対するペプチド特異的な抗体反応性のPEPSCAN分析を示す図である。(A)KAS1−KsA1(白色棒グラフ)、KAS2−KLA1(黒色棒グラフ)の抗血清でプローブしたKAS2重複ペプチド(オフセット1、オーバーラップ7)。(B)KAS2−DT複合体抗血清でプローブしたKAS2重複ペプチド(オフセット、オーバーラップ7)。棒グラフはそれぞれ、抗体反応性を示す(415nmでの光学密度[OD])。
【図6】キメラAS2−LA1は、ポルフィロモナス・ジンジバリス全細胞及びRgpA−Kgp複合体を認識する非近交系マウスにおける抗体応答を誘導することを示す図である。CD1非近交系マウスを、キメラAS2−LA1(50mg/マウス)で免疫感作して、収集した血清を、吸着抗原としてAS2−LA1(A)、ホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリス株W50(B)及びRgpA−Kgp複合体(C)を用いたELISAで使用した。この図では、KAS2−KLA1はAS2−LA1と示される。各抗原に対する各免疫グロブリンアイソタイプに関する力価が決定され、データは、得られたELISA力価(‘000)−2×バックグラウンドレベルとして表わされ、力価はそれぞれ、3つの値の平均±標準偏差を表す。
【図7】Kgpプロテイナーゼのタンパク質モデルを示す図である。KAS2[Asn433〜Lys468](A)、KAS4[Asp388〜Val395](B)、KAS5[Asn510〜Asp516](C)及びKAS6[Ile570〜Tyr580](D)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
これより、本発明の或る特定の実施形態に関して、詳細に言及する。本発明が実施形態と併せて記載されるが、本発明はそれらの実施形態に限定されるべきではないことが理解されよう。対比して、本発明は、特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲内に包含され得る全ての代替物、変更物及び均等物を包含すると意図される。
【0034】
当業者は、本発明の実施において使用することができる本明細書に記載されるものに類似するか、又はそれらと同等の多くの方法及び材料を認識する。本発明は、記載される方法及び材料に限定されることはない。
【0035】
本明細書中で開示及び規定される本発明は、明細書又は図面から言及されるか、又はそれらから明らかである個々の特徴の2つ以上の全ての代替的な組合せに及ぶことが理解されよう。これらの種々の組合せは全て、本発明の様々な代替的な態様を構成する。
【0036】
本明細書中で使用する場合、文脈上他の意味に解すべき場合を除いて、「を含む」という用語及びこの用語の変化形(variations of the term, such as "comprising", "comprise" and "comprised")は、更なる添加剤、構成成分、整数又は工程を排除するとは意図されない。
【0037】
本発明者らは、感染に対する応答の改善、特に抗体応答の改善は、組織において養子免疫伝達を提供する前に、又は組織において免疫応答を誘起する際に、実質的に全ての炎症性刺激を口腔組織から除去することによって得ることができることを見出した。この知見は、本発明が口腔組織における疾患の防止及び/又は処置、並びに拡大解釈して微生物病原体による口腔組織の感染の結果として他の解剖学的区画に生じる疾患の防止及び/又は処置を提供する場合に特に有用である。
【0038】
したがって、或る特定の実施形態では、被験体における疾患若しくは状態(上記疾患若しくは状態は、被験体の口腔組織中の微生物病原体の存在に関連付けられるものである)の発生率又は重篤性を低減させる方法が提供され、上記方法は、
被験体を処置し、それにより実質的に全ての微生物又はそれらの断片を上記被験体の口腔組織から除去するための条件を提供することと、その後、
上記被験体において抗体(上記抗体は、口腔組織中でのその存在が疾患又は状態と関連付けられる微生物病原体に対して上記被験体を防御するためのものである)を供給することと
を含み、それにより被験体における疾患若しくは状態の発生率又は重篤性を低減させる。
【0039】
一実施形態では、抗体は、上記被験体へ免疫原(上記免疫原は、微生物病原体に対して上記被験体を防御するためのものである)を投与することによって、上記被験体中で供給される。
【0040】
一実施形態では、被験体を処置して、それにより実質的に全ての微生物及びそれらの断片を上記被験体の口腔組織から除去するための条件を提供するための抗菌組成物及び免疫原は、相乗的に有効な量で供給される。
【0041】
通常、本明細書中で言及される被験体は、動物、特に哺乳動物である。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。或る特定の実施形態では、哺乳動物は、家畜又は飼育動物であり得る。家畜又は飼育動物の例としては、ウマ、ヤギ、ブタ及びウシ及びヒツジのような家畜類が挙げられる。或る特定の実施形態では、動物は、イヌ、ネコ、ウサギ又はモルモットのようなペットである。
【0042】
1.定義
「実質的に全ての微生物及びそれらの断片を口腔組織から除去すること」という語句は、組織から炎症性刺激を激減させるのに十分な量の微生物又はそれらの断片若しくは代謝産物が組織から激減される状態を提供し、それにより上記組織における炎症の1つ又は複数の症状を、実質的に低減させるか、又は最低限に抑えることを指す。これは、具体的には関連する被験体が、慢性感染に起因する組織の慢性炎症を有する場合である。概して、組織の炎症を最低限に抑えることに焦点が向けられる。したがって、幾つかの微生物、それらの断片及び代謝産物は、関連する処置工程後に残存する可能性があることが理解されよう。
【0043】
個体が炎症を起こした組織を有しない他の実施形態では、「実質的に全ての微生物及びそれらの断片を口腔組織から除去すること」という語句は、炎症を引き起こすであろう量への微生物、それらの断片及び代謝産物の蓄積を実質的に防止する状態を提供することを指す。これは、具体的には処置のための被験体が正常であるか、又はそうでなければ疾患若しくは状態に関して無症状である場合である。外科的介入又は歯科的介入が微生物を除去して、炎症を引き起こすであろう量の微生物の蓄積を実質的に防止する状態が提供されることを確実にすることが目的である場合にも、同様のことが当てはまる。炎症を引き起こし得る量の微生物の蓄積を防止することに焦点が置かれるようなこれらの実施形態では、幾つかの微生物、それらに由来する断片又は代謝産物が、関連する処置工程後に蓄積する場合があることが理解されよう。
【0044】
「疾患又は状態の発生率を低減させること」という語句は概して、、被験体(正常な個体又無症状の個体である被験体、又は疾患若しくは状態の初期形態を有する被験体(subject))が疾患若しくは状態の完全活性形態へ進行する可能性を最低限に抑えることを指す。或る特定の実施形態では、この語句は、所定の被験体が疾患若しくは状態の完全活性形態へ進行するのを防止することを指す。
【0045】
「疾患若しくは状態の重篤性を低減させること」という語句は概して、疾患若しくは状態の1つ又は複数の症状又は徴候を最低限に抑えることを指す。或る特定の実施形態では、この語句は、疾患若しくは状態を有する個体を処置することを指す。
【0046】
「免疫原」は概して、抗原に対する免疫応答、好ましくは体液性応答又は抗体応答、例えばTh2応答を誘起又は誘発することが可能である分子を指す。免疫原の例としては、ペプチド及び関連タンパク質が挙げられる。
【0047】
「相乗的に有効な量」という語句は概して、それぞれが単独で使用される場合に組成物又は免疫原により達成され得る効果よりも大きい治療効果又は防止効果又は防御効果を提供する抗菌組成物及び免疫原の量を指す。一実施形態では、抗菌組成物及び免疫原の相乗的に有効な量は、上記組成物と免疫原との間の新規の実用的な相互関係を支持し、それにより上記免疫原の防御又は治療効果は、免疫原単独が炎症を起こした組織へ適用される場合に達成され得るよりもはるかに大きい。通常、微生物組成物及び免疫原の相乗的に有効な量は、免疫原が単独で使用される場合に実現され得るよりも高い力価及び/又は微生物病原体に対するより高い親和性抗体応答を提供する。
【0048】
「治療上有効な量」という語句は概して、(i)特定の疾患、状態若しくは障害を処置するか、(ii)特定の疾患、状態若しくは障害の1つ又は複数の症状を減衰させるか、改善させるか、若しくは排除するか、又は(iii)本明細書中に記載される特定の疾患、状態若しくは障害の1つ又は複数の症状の発症を遅延させる本発明の化合物の量を指す。
【0049】
「処置する」又は「処置」という単語は、望ましくない生理学的変化又は障害を減速させる(低下させる)ことが目的である治療的処置である。本発明の目的では、有益な又は所望の臨床結果として、検出可能であるか又は検出不可能であるかに関係なく、症状の改善、疾患の程度の減少、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和、及び鎮静(部分的又は全体的に関係なく)が挙げられるが、これらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けない場合に予測される生存と比較した場合に延命を意味し得る。処置は、必ずしも感染の完全なクリアランスをもたらすことができるとは限らないが、感染の合併症及び副作用、並びに感染の進行を低減させることができるか、又は最低限に抑えることができる。処置の成否は、個体の身体検査、細胞病理学的、血清学的なDNA又はmRNAの検出技法によってモニタリングすることができる。
【0050】
「防止する」又は「防止」という単語は概して、所定の感染関連合併症を有しない個体を、その合併症へ進行することから守る若しくはその合併症へ進行するのを防ぐための予防的又は防止的手段を指す。防止が必要とされる個体は、感染を有する者を含む。
【0051】
「薬学的に許容される」という語句は、物質又は組成物が、配合物を含む他の成分、及び/又はそれらで処置される哺乳動物と、化学的に及び/又は毒物学的に適合性でなくてはならないことを示す。
【0052】
「添付文書」という用語は、治療用製品の市販パッケージに慣例的に含まれる、かかる治療用製品の使用に関する効能、用法、投与量、投薬、禁忌及び/又は警告に関する情報を含む説明書を指す。
【0053】
Th1応答は概して、インターフェロンガンマ及びTNFのようなサイトカインを含む応答を指す。
【0054】
Th2応答は概して、インターロイキン−4、インターロイキン−5、インターロイキン−6、インターロイキン−10、インターロイキン−13等のようなサイトカインを含む応答を指す。
【0055】
2.処置方法
本発明の方法は、上記疾患又は状態に関して無症状である被験体を含む広範囲の被験体に適用可能である。これらの個体は、口腔組織又は他の組織において疾患症状を有しなくてもよい。具体的には、これらの個体は、粘膜組織又は他の口腔組織の炎症を呈さなくてもよい。一実施形態では、これらの個体は、ランダムに選択した被験体のコホートとの関連で、口腔中の微生物病原体の正常な相対存在量を有し得る。
【0056】
他の実施形態では、被験体では、口腔組織若しくは他の解剖学的区画の疾患又は状態の亜臨床的又は臨床的な症状が現れる。
【0057】
上記疾患又は状態の症状は、上記被験体の口腔組織中が現れ得る。血液から損傷組織への血漿及び白血球の移動の増加を含む急性炎症の特質が存在し得る。発赤(赤み)、熱(熱の増加)、腫瘍(膨潤)、痛み(疼痛)及び機能喪失(機能消失)を含む歯肉の急性感染の臨床的徴候もまた存在し得る。慢性炎症は、白血球細胞(単球、マクロファージ、リンパ球、血漿細胞)浸潤を特徴とし得る。組織欠損及び骨量減少が観察され得る。炎症の例としては、口唇炎、歯肉炎、舌炎及び口内炎が挙げられる。
【0058】
一実施形態では、被験体は、炎症を起こした粘膜組織又は他の口腔組織を有し得る。例えば、被験体は、口腔組織の急性炎症を呈し得る。これらの被験体の例としては、創面切除、歯石除去及び根面平滑化を含む歯科的手術又は口腔手術に付された被験体が挙げられる。
【0059】
更なる実施形態では、被験体は、口腔組織の慢性炎症を呈し得る。一例では、被験体は歯槽骨への歯のコラーゲン接着の進行性減少に起因して歯肉炎、歯槽骨の吸収、及び最終的には歯を失うことを呈し得る。粘膜組織又は関連の口腔組織の他の病巣の可能性がある。
【0060】
一実施形態では、疾患又は状態は、口腔組織の疾患又は状態である。慢性歯周炎は、特に重要な例である。他には、猩紅熱、アフタ性口内炎、化膿性肉芽腫、ジフテリア、結核、梅毒、放線菌症、カンジダ症、ヘルペス口内炎で見られるような口腔粘膜に対する損傷を特徴とする疾患及び状態が挙げられる。
【0061】
疾患又は状態は、器官又は系(例えば、心血管系)のような口腔組織以外の組織の疾患又は状態であってもよいことが理解されよう。一実施形態では、疾患又は状態は、心血管疾患である。
【0062】
本発明は、広範な微生物病原体、特に口腔の組織に感染するものに適用可能である。一実施形態では、病原体は、細菌、ウイルス及び真菌からなる群から選択される。
【0063】
特に好ましい細菌は、ポルフィロモナス・ジンジバリス、トレポネーマ・デンチコラ(Treponema denticola)、タンネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)からなる群から選択される。
【0064】
【表1】


【0065】
一実施形態では、抗菌剤を形成する組成物が被験体を投与して、それにより実質的に全ての微生物又はそれらの断片を上記被験体の口腔組織から除去する。例を以下で更に論述する。
【0066】
一実施形態では、例えば免疫原を被験体へ投与することによって被験体において抗体を供給することは、機械的な創面切除による感染部位の処置及び/又は本明細書中で規定されるような抗菌剤の1つ又は複数の適用の1週間〜2週間後に行われる。
【0067】
微生物、それらの断片若しくは代謝産物のレベル又は存在は、微生物からタンパク質若しくはその断片を検出又は測定することによって決定することができる。
【0068】
別の実施形態では、口腔組織における微生物、それらの断片若しくは代謝産物のレベル又は存在は、個体からサンプルを採取すること、及びサンプル中の所定のタンパク質の存在又は所定のタンパク質の発現のレベルを決定することによって決定することができる。タンパク質の存在又はレベルは、任意数のアッセイによって検出することができる。例としては、イムノアッセイ、クロマトグラフィ及び質量分析が挙げられる。特に好ましいイムノアッセイの一例はFACSである。
【0069】
サンプル中の標的タンパク質の存在を検出するのに使用することができる各種アッセイとしては、下記が挙げられる:
【0070】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA):この方法は、標的タンパク質、そのペプチド又は断片を含有するサンプル(例えば唾液又は口腔組織)のマイクロタイタープレートのウェルのような表面への固定化を含む。酵素に連結される標的タンパク質特異的抗体を適用して、標的タンパク質、そのペプチド又は断片と結合させる。次に、抗体の存在を検出して、抗体へ連結させた酵素を用いた比色反応によって定量化する。この方法で一般的に用いられる酵素としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼが挙げられる。十分較正され、かつ線形の応答範囲内である場合、サンプル中に存在する標的タンパク質、そのペプチド又は断片の量は、生じる色の量に比例する。標的タンパク質、そのペプチド又は断片の標準は、定量的精度を改善するのに一般的に用いられる。
【0071】
ウェスタンブロット法:この方法は、アクリルアミドゲルを用いた、標的タンパク質、そのペプチド又は断片と他のタンパク質との分離、続くタンパク質、それらのペプチド又は断片の膜(例えば、ナイロン又はPVDF)への転写を含む。次に、標的タンパク質、そのペプチド又は断片の存在は、標的タンパク質、そのペプチド又は断片に特異的な抗体によって検出され、それらの抗体は、抗体結合試薬によって検出される。抗体結合試薬は、例えばプロテインA又は他の抗体であり得る。抗体結合試薬は、上述するように、放射性標識してもよく、又は酵素連結してもよい。検出は、オートラジオグラフィ、比色反応又は化学発光によるものであり得る。この方法は、標的タンパク質、そのペプチド又は断片の定量化、及び電気泳動中のアクリルアミドゲルにおける移動距離を示す膜上での相対位置によるその同一性の決定の両方を可能にする。
【0072】
ラジオイムノアッセイ(RIA):一様式では、この方法は、アガロースビーズのような沈殿可能な担体上に固定された特異的抗体及び放射標識された抗体結合タンパク質(例えば、I125で標識されたプロテインA)による所望の標的タンパク質、そのペプチド又は断片の沈殿を含む。沈殿したペレット中の計測数は標的タンパク質、そのペプチド又は断片の量に比例する。
【0073】
RIAの別の様式では、標識された標的タンパク質、それらのペプチド又は断片、及び標識されていない抗体結合タンパク質が用いられる。未知量の標的タンパク質、そのペプチド又は断片を含有するサンプルを様々な量で添加する。標識された標的タンパク質、そのペプチド又は断片からの沈殿された計測数の減少が、添加したサンプル中の標的タンパク質、そのペプチド又は断片の量に比例する。
【0074】
蛍光標示式細胞選別(FACS):この方法は、標的タンパク質、そのペプチド又は断片に特異的な抗体による細胞におけるin situでの標的タンパク質、そのペプチド又は断片の検出を含む。標的タンパク質、そのペプチド又は断片に特異的な抗体は、フルオロフォアに連結される。検出は、各細胞から放出される光の波長を、細胞が光線を通過する際に読み取る細胞選別機を用いるものである。
【0075】
免疫組織化学分析:この方法は、標的タンパク質、そのペプチド又は断片に特異的な抗体によって、固定化された細胞におけるin situでの標的タンパク質、そのペプチド又は断片の検出を含む。標的タンパク質、そのペプチド又は断片に特異的な抗体は、酵素連結してもよく、又はフルオロフォアに連結してもよい。検出は、顕微鏡及び主観的評価又は自動評価によるものである。酵素結合した抗体を用いる場合、比色反応が必要とされ得る。免疫組織化学では、多くの場合、例えばヘキマトキシリン又はギムザ染色を使用して細胞核を対比染色することが続くことが理解されよう。
【0076】
in situ活性アッセイ:この方法によれば、発色基質を、活性な酵素を含有する細胞上へ適用し、この酵素は、基質が光又は蛍光顕微鏡により視認される発色生成物を生成するように分解される反応を触媒する。
【0077】
in vitro活性アッセイ:これらの方法では、特定の酵素の活性が、細胞から抽出されたタンパク質混合物中で測定される。活性は、比色方法を良好に使用して分光光度計で測定することができ、又は非変性アクリルアミドゲル(すなわち、活性ゲル)中で測定することができる。電気泳動後に、ゲルを、基質及び比色試薬を含有する溶液中に浸す。得られた染色バンドは、所定のタンパク質の酵素活性に対応する。十分較正され、かつ線形の応答範囲内である場合、サンプル中に存在する酵素の量は、生じる色の量に比例する。酵素標準物質は、定量的精度を改善するのに一般的に用いられる。
【0078】
さらに、細菌DNAの量は、口腔組織中の微生物の存在又はレベルの指標として定量的PCRにより決定することができる。
【0079】
ポリフィロモナス・ジンジバリス、トレポネーマ・デンチコラ、タンネレラ・フォーサイシア由来のタンパク質若しくはDNAの存在又はレベルが決定されてもよく、実質的に全ての微生物又はその断片が被験体の口腔組織から除去されたことを示し得る。
【0080】
抗菌剤及び/又は免疫原は、全身的に、又は口腔組織に直接、特に口腔粘膜に直接投与することができる。
【0081】
一実施形態では、被験体の処置は、実質的に全ての微生物又はその断片を上記被験体の口腔組織から除去して、それにより被験体の口腔組織における炎症を最低限に抑える。別の実施形態では、被験体の処置は、実質的に全ての微生物又はその断片を上記被験体の口腔組織から除去して、それにより被験体の口腔組織の免疫応答を最低限に抑える。
【0082】
免疫原は、実質的に全ての微生物及びその断片を上記被験体の口腔組織から除去するための上記被験体の処置後に上記被験者に投与することができる。
【0083】
概して、本発明によれば、関連の口腔組織は、炎症を起こしていないか、又は仮に炎症が存在した場合にも、免疫感作時に無症状であるか、又は亜臨床である。
【0084】
免疫感作後、被験体は、主として体液性応答であるTh2応答の優性を示し、個体は、検出可能なレベルの防御抗体を有する。
【0085】
3.組成物
或る特定の実施形態では、
実質的に全ての微生物及びその断片を上記被験体の口腔組織から除去するための抗菌剤と、
微生物病原体(口腔組織中でのその存在が疾患又は状態と関連付けられる)に対して上記被験体を免疫感作するための免疫原と
を含む組成物が提供され、上記組成物は、上述の方法で使用されることが可能である。
【0086】
3.(a)抗菌剤
抗菌剤は、投与による効果が炎症性刺激を激減させることである任意の作用物質であり得る。単独で又は組み合わせて使用されるこれらの作用物質は、炎症、歯周病原体の再発、例えばバイオフィルム形成及び/又は歯周骨吸収の短期的な阻害に有用性がある。これらの作用物質は、単独で又は組み合わせて、例えば、歯周病原体に対するワクチン接種のための患者の免疫系を調製する外科的介入を受けることができる歯周部位で徐放性の歯周ゲル配合物において局所的に適用させることができる。
【0087】
理論又は作用機序によって束縛されるものではないが、例えば歯周ゲル配合物における、感染した歯周部位の機械的創面切除及び洗浄の時点での本明細書中で規定されるような抗菌剤の適用は、免疫系を調製して、Th2に偏った応答の発生を可能にするのを助けると考えられる。このTh2に偏った応答は、防御抗体の産生及び歯周病原体の再発の防止及び疾患進行の防止をもたらす。
【0088】
これに関連して、下記のものが抗菌剤であり得る:抗生物質、免疫抑制薬及び消毒薬。或る特定の実施形態では、上記抗菌剤は抗炎症剤であり得る。抗炎症剤としては、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が挙げられる。NSAIDの例としては、シクロオキシゲナーゼを阻害する化合物が挙げられる。NSAIDの具体例としては、アスピリン、イブプロフェン及びナプロキセンが挙げられる。抗炎症剤の他の例としては、PAR−2のアンタゴニストが挙げられ、これにはPAR−2と結合する抗体及び抗体断片、PAR−2に結合し、かつその活性を阻害する他のポリペプチド、PAR−2活性又は発現を阻害する他の化合物(PAR−2コード核酸と相互作用する小有機化合物及び阻害性核酸を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。PAR−2と結合すること及び/又はPAR−2を介したシグナル伝達から、内因性リガンドを阻止又は置換し得る例示的なアンタゴニストとしては、国際公開第2004/002418号及び国際公開第2006/023844号に記載されるもの(例えば、アミノ酸配列LIGK又はLIGKVを有するペプチド)が挙げられる。PAR−2に結合して、かつ係留リガンドとして作用するPAR−2の領域のタンパク質分解性切断を防止するアンタゴニストは、国際公開第2007/092640号に例示される。
【0089】
PAR−2の発現を阻害、低減又は阻止するアンタゴニストとしては、リボザイム、三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)、RNアーゼPによる切断を促進する外部ガイド配列(EGS)、PAR−2をコードする核酸に特異的なペプチド核酸、アンチセンスDNA、siRNA及びミクロRNAが挙げられるが、これらに限定されない阻害性核酸が挙げられる。
【0090】
PAR−2は、正常な状況下でPAR−2を切断して、その活性化をもたらすプロテアーゼの活性を拮抗する「間接的アンタゴニスト」により間接的に阻害することができる。PAR−2を切断することができるプロテアーゼとしては、ジンジパイン、トリプシン、トリプターゼ及び好中球プロテイナーゼ−3が挙げられる。本発明の方法で有用であるか、又は本発明の組成物で使用することができる間接的アンタゴニストの例としては、国際公開第93/14779号で開示されるトリプシン阻害剤及び国際公開第02/47762号で開示されるトリプターゼ阻害剤が挙げられる。
【0091】
1つの特に好ましい実施形態では、抗菌剤は抗生物質である。例としては、以下の表Bで示されるようなマクロライド、テトラサイクリン、ペニシリン、フマル酸還元酵素阻害剤及び抗菌ペプチドからなる群から選択される抗生物質が挙げられる。
【0092】
【表2】


【0093】
一実施形態では、抗菌剤は、フマル酸還元酵酵素の阻害剤の1つ又は複数から選択される。適切な阻害剤としては、デクルシン、ベルチシピロン、ペシラミノール、ストレプトミセス種由来の5−アルケニル−3,3(2H)−フラノン、ナフレジン、メサコン酸、ロテノンを含むがこれらに限定されない天然生成物、並びにそれらの天然類縁体、半合成類縁体及び合成類縁体が挙げられる。別の態様では、阻害剤は、2−置換4,6−ジニトロフェノール、メルカプトピリジンN−オキシド、L−092201(Merck Sharpe and Dohme)、ニトロイミダゾール(例えば、フェキシンダゾール、メガゾール、ベンズニダゾール、MK−436、L−634549、ミソニダゾール)、又はベンズイミダゾール(例えば、アルベンダゾール、カムベンダゾール、メベンダゾール、オクスフェンダゾール、パレベンダゾール及びチアベンダゾール)、又はオキサンテル若しくはモランテルを含むがこれらに限定されない合成化合物であり得る。好ましい阻害剤は、オキサンテル、モランテル又はチアベンダゾールである。特に好ましい阻害剤はオキサンテルである。
【0094】
阻害剤の選択は、阻害剤が臨床背景における使用に適しているかどうかを決定する臨床因子の数に依存することを当業者は理解されよう。
【0095】
抗生物質は、微生物病原体にとって直接的に細胞障害性であり得る。他の実施形態では、抗生物質は間接的に細胞障害性であり、例えば、抗生物質は、微生物バイオフィルム生産又は幾つかの他の代謝の阻害剤であり得る。
【0096】
一実施形態では、抗生物質は、抗菌ペプチドである。例を以下の表Cに示す。
【0097】
【表3】

【0098】
1つの特に好ましい実施形態では、抗菌剤は、微生物バイオフィルム生産の阻害剤である。他の好ましい作用物質はフマル酸還元酵素阻害剤である。
【0099】
或る特定の実施形態では、抗菌剤は抗体であり得る。抗体はポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であり得る。使用され得る例示的なモノクローナル抗体は、歯周病原体の分子(例えば、プロテアーゼ及びアドヘシン)又は炎症を抑えるための宿主指向性を有する[例えば、単独で又は組み合わせて、腫瘍壊死因子(TNFα)、インターロイキン−1(IL−1)、ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子(u−PA)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)及びRANKリガンド(RANKL)に対する抗体]指向性を有する。好ましくは、抗体は、種々の病原体及び宿主炎症性媒介物質に対して誘導されるモノクローナル抗体の混合物である。ポリフィロモナス・ジンジバリスを標的とする使用するのに好ましいモノクローナル抗体は、Kgpプロテイナーゼ及びRgpAプロテイナーゼの活性部位に対して誘導されるもの、並びにKgpプロテイナーゼ及びRgpAプロテイナーゼのA1アドヘシンにおける結合モチーフに対して誘導されるものである。
【0100】
一実施形態では、抗菌剤は抗体疑似体である。抗体疑似体は、免疫グロブリンドメインの三次構造を有してもよく、又は有しなくてもよい(例えば、Dimitrov, 2009、MAbs 1 26〜28)。抗体疑似体は、特定の分子に結合するための特異性を有し得る。抗体疑似体の一例は、アンチカリンとして知られるヒトリポカインに関連する分子のファミリーである(例えば、Skerra, 2007 Current Opinions in Biotechnology, 18 295-304)。好ましくは、アンチカリンは、ポリフィロモナス・ジンジバリスに由来するタンパク質に対して誘導されるか、又はポリフィロモナス・ジンジバリスに由来するタンパク質に特異的に結合する。好ましい実施形態では、アンチカリンは、Lys−X−プロテイナーゼ又はArg−X−プロテイナーゼ(例えば、Kgpプロテイナーゼ及びRgpAプロテイナーゼ)の活性部位に対して誘導されるか、又は該活性部位に特異的に結合する。アンチカリンは、モノクローナル抗体の代わりに使用することができるが、約180アミノ酸のサイズ及び約20kDaの質量よりも8倍小さい。アンチカリンは、抗体よりも良好な組織透過性を有し、最大70℃の温度で安定である。抗体と異なり、アンチカリンは、大腸菌のような細菌細胞中で大量に生産することができる。
【0101】
或る特定の実施形態では、抗菌剤はまた、細菌バイオフィルムの形成若しくは発達を阻害、低減又は防止することができる抗バイオフィルム剤であり得る。抗バイオフィルム剤は、バイオフィルム崩壊活性を有するものとし、バイオフィルム分散を引き起こすことができる。「バイオフィルム崩壊活性」は本明細書中では、バイオフィルムからの細菌の放出を引き起こす組成物又は作用物質の特性を説明するのに使用される。組成物又は作用物質はまた、バイオフィルム中での細菌の生存度を低減させ得るが、必ずしもそうとは限らない。バイオフィルムからの細菌の「放出」は、浮遊状態をとるバイオフィルムからの細菌の数を増加させること、それによりバイオフィルムからの細菌の殺菌剤への感受性を増加させることを含む。殺菌剤は、細菌の生存度を直接低減させる組成物、作用物質、化合物、ペプチド疑似体又はペプチドの特性を記載するのに使用される。
【0102】
したがって、理論又は作用機序によって束縛されるものではないが、バイオフィルム崩壊活性を示す組成物又は作用物質は、必ずしもバイオフィルム中での細菌の生存度を低減させるわけではなく、代わりに細菌細胞をバイオフィルムから放出させるか、又は放出されるよう誘導すると考えられる。或る特定の実施形態では、これらの組成物又は作用物質は、バイオフィルム中のより多くの細菌がプランクトン状態をとり得るか、又はとるように誘導し得る。他の実施形態では、組成物又は作用物質は、バイオフィルムの形成を阻害又は低減することができる。或る特定の実施形態では、組成物又は作用物質は、バイオフィルム成長を阻害又は低減することができる。他の実施形態では、本発明の抗菌剤は、被験体における疾患若しくは状態を開始又は促進する、バイオフィルムが示す任意の特徴を阻害又は低減することができる。或る特定の実施形態では、ペプチド又は組成物は、バイオフィルム中の細菌を死滅させずに、被験体における疾患若しくは状態を開始又は促進する、バイオフィルムが示す任意の特徴を阻害又は低減することができる。
【0103】
或る特定の実施形態では、抗菌組成物又は抗菌剤は、バイオフィルムの測定可能なパラメータを防止、阻害又は低減する能力を指す。バイオフィルムの測定可能なパラメータの非限定的な例は、バイオフィルムの総バイオマス、平均厚、表面対バイオボリューム(biovolume)比、粗度係数又は細菌組成及びそれらの生存度であり得る。
【0104】
3.(b)免疫原
免疫原は、関連する微生物病原体に対する免疫応答、好ましくは防御抗体応答を誘起するように選択される。
【0105】
一実施形態では、免疫原は、ペプチド、例えば組換えペプチドの形態で供給される。
【0106】
ポルフィロモナス・ジンジバリス感染並びに関連の疾患及び状態に特に関連する一実施形態では、組換えペプチドは、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するためのキメラタンパク質又は融合タンパク質であってもよく、該タンパク質は、第2のペプチドに直接的に又はリンカーを介して結合される第1のペプチドを含み、
(A)上記第1のペプチドは、
(i)配列番号1で示される配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)配列番号2で示される配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、
を含み、
(B)上記第2のペプチドは、
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼのアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼのアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagAアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て
を含む。
【0107】
本明細書中で使用する場合、「ペプチド」という用語は、最大約40個のアミノ酸残基、好ましくは5個〜40個のアミノ酸残基のアミノ酸配列を指すのに使用される。
【0108】
一実施形態では、ポリペプチドは、「第2のペプチド」の代わりに、又は換言すると「第2のペプチド」に代わって使用される。「ポリペプチド」という用語は、少なくとも約40個のアミノ酸残基のアミノ酸配列を指すのに使用される。
【0109】
したがって、別の態様では、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するためのキメラタンパク質又は融合タンパク質であって、該タンパク質は、ポリペプチドに直接的に又はリンカーを介して結合されるペプチドを含み、ここで、
(A)上記ペプチドは、
(i)配列番号1で示される配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)配列番号2で示される配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、
を含み、
(B)上記ポリペプチドは、
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼのアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼのアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagAアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て
を含む、
ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するためのキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【0110】
別の態様では、本発明は、
(i)配列番号64〜配列番号66のうちの1つで示される配列と同じであるか、又はその配列と相同性である配列、及び
(ii)配列番号67又は配列番号68で示される配列と同じであるか、又はその配列と相同性である配列
からなる群から選択されるポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するためのペプチドを提供する。
【0111】
ペプチドが配列番号64〜配列番号68の配列を有する本発明の態様では、ペプチドは、キメラタンパク質又は融合タンパク質の形態で供給されてもよく、そこでペプチドは、第2のペプチドに直接的に又はリンカーを介して結合される。ある実施形態では、キメラタンパク質又は融合タンパク質の第2のペプチドは、
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼのアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼのアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagAアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て
を含む。
【0112】
上述の実施形態では、ポリペプチドは、第2のペプチドの代わりに、又は換言すると第2のペプチドに代わって使用される。したがって、別の態様では、被験体におけるポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するためのキメラタンパク質又は融合タンパク質であって、該タンパク質は、ポリペプチドに直接的に又はリンカーを介して結合されるペプチドを含み、ここで、
(A)上記ペプチドは、
(i)配列番号64〜配列番号66のうちの1つで示される配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列、又は
(ii)配列番号67若しくは配列番号68で示される配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列
を含み、
(B)上記ポリペプチドは、
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼのアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼのアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagAアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て
を含む、被験体におけるポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するためのキメラタンパク質又は融合タンパク質が提供される。
【0113】
本明細書中で使用する場合、ペプチド又はポリペプチドの「相同体」に対する言及は、BLASTアルゴリズム(ここで、アルゴリズムのパラメータは、各々の参照配列の完全長にわたって各々の配列間で最大の適合を付与するように選択される)によって比較が実施される場合、第1の記載されるペプチド又はポリペプチドのアミノ酸配列に対して相同性を共有するか、若しくはそのアミノ酸配列に対して相同性であるか、又はそのアミノ酸配列と同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%、及び更に好ましくは98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチド又はポリペプチドに対する言及である。配列同一性は、比較される2つの配列のアミノ酸間での正確な適合を指す。かかる相同体は、ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼ又はArg−X−プロテイナーゼの天然に存在する変異体又は単離体(isolate)に由来し得る。代替的には、かかる相同体は、ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼ又はArg−X−プロテイナーゼ由来のペプチド又はポリペプチドの「保存的置換」変異体であってもよく、ここで1つ又は複数のアミノ酸残基が、ペプチド又はポリペプチドの全体的な立体構造及び機能を変更させることなく変化しており、アミノ酸を、類似した特性を有するもので置換することを含むが、決してそれに限定されない。類似した特性を有するアミノ酸は当該技術分野で既知である。例えば、交換可能であり得る極性/親水性アミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、スレオニン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられ、交換可能であり得る非極性/疎水性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンが挙げられ、交換可能であり得る酸性アミノ酸としては、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられ、交換可能であり得る塩基性アミノ酸としては、ヒスチジン、リシン及びアルギニンが挙げられる。好ましくは、かかる保存的置換変異体は、20個未満、より好ましくは15個未満、更に好ましくは10個未満、最も好ましくは5個未満のアミノ酸の変化を有する。
【0114】
ペプチド結合の切断のための酵素における部位を規定するポルフィロモナス・ジンジバリストリプシン様酵素、特にLys−X−プロテイナーゼ(Kgp)又はArg−X−プロテイナーゼ(RgpA)の領域は、本明細書の教示に従って、特に、Lys−X−プロテイナーゼに関してポルフィロモナス・ジンジバリスで現れる場合に触媒部位の三次元立体構造を予測するプロセスを実証している、図7及び実施例9に関連して決定することができる。図10はArg−X−プロテイナーゼ三次元立体構造のモデリングのための方法を提供する。
【0115】
或る特定の実施形態では、キメラタンパク質若しくは融合タンパク質、又はその第1のペプチド構成成分若しくは第2のペプチド構成成分は、ペプチド疑似体(peptidomimetic)から形成され得る。ペプチド疑似体は、所定のペプチドの1つ又は複数の特徴、例えば立体構造を模倣し、かつアミノ酸残基(その幾つかは、天然に存在しなくてもよい)からなる分子である。
【0116】
触媒部位の免疫原性領域を同定して、本発明者らは、体液性応答が惹起され得る様々なペプチド免疫原の配列を決定した。特に、触媒部位に隣接するか、又はそうでなければ触媒部位を規定する「6つの」領域を下記のとおりに規定した:KAS1/RAS1、KAS2/RAS2、KAS3/RAS3、KAS4/RAS4、KAS5/RAS5及びKAS6(表1を参照されたい)。この情報を用いて、本発明者らは、タンパク質配列データベースを調べて、触媒部位に隣接して、したがってポルフィロモナス・ジンジバリス上に見出される免疫原性エピトープを表す領域を形成するアミノ酸配列と相同性を共有するペプチドを決定することが可能であった。これらのペプチドの配列は、下記構造式によって同定される:
【0117】
【表4】

【0118】
本発明者らは、これらのペプチドを含むキメラタンパク質が多数の利用性を有することを見出している。例えば、本明細書中に記載されるように、慢性歯周炎で観察されるような骨量減少の処置又は防止に関して非常に防御的である体液性応答を生じるものもある。ペプチドはまた、個体の血清中での特異性を検出又はモニタリングすることができる診断アッセイに使用することができ、それにより個体が感染されているか、又は感染されていないかどうか、感染しているならば、処置が必要とされるかどうか、又は提供される場合にはそれらが有効であったかどうかを示す。
【0119】
Lys又はArgのC末端に位置するペプチド結合の切断のための酵素における部位を規定するポルフィロモナス・ジンジバリストリプシン様酵素の領域は、Lys−X−プロテイナーゼ又はArg−X−プロテイナーゼの完全配列を含まないことが理解されよう。
【0120】
本明細書中で使用する場合、「異種タンパク質」又は「キメラタンパク質又は融合タンパク質」という用語は、種々の供給源に由来するアミノ酸の機能性ユニット、ドメイン、配列又は領域で構成されるか、又は同じ供給源に由来して、ユニット、ドメイン、配列若しくは領域が由来するか、又は関連する分子中で観察されるものとは区別される機構を有するように構築されたタンパク質を指すのに使用される。本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質の一般的な特徴は、それらが、ペプチド結合の切断のための触媒部位を規定するポルフィロモナス・ジンジバリストリプシン様酵素の配列と同じであるか、又はそれと相同性を共有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドを含有することである。
【0121】
第1のペプチドがKgp[432〜468]領域由来のペプチドを含む好ましい実施形態では、第1のペプチドは、好ましくは(i)VSFANYT及びVGFANYTから選択される配列、より好ましくはGVSFANYT、GVGFANYT、VSFANYTA及びVGFANYTAから選択される配列を含むペプチド、又は(ii)ETAWAD、ETSWAD、TAWADP及びTSWADPから選択される配列、好ましくはSETAWAD、SETSWAD、ETAWADP、ETSWADP、TAWADPL及びTSWADPLから選択される配列、より好ましくはGSETAWAD、GSETSWAD、SETAWADP、SETSWADP、ETAWADPL、ETSWADPL、TAWADPLL及びTSWADPLLから選択される配列を含むペプチドである。より好ましくは、このペプチドは、第1表に示されるKAS1[432〜454]ペプチド、KAS2[433〜468]ペプチド及びKAS3[436〜455]ペプチドから選択される。代替的には、第1のペプチドは、国際出願PCT/AU98/00311号(国際公開第98/049192号)に開示されるPAS1(K48)としても知られるPAS1K[432〜453]ペプチドであってもよい。これらのペプチドに対応する配列識別子を第3表に示す。
【0122】
同様に、第1のペプチドがRgpA[426〜462]領域由来のペプチドを含む別の好ましい実施形態では、このペプチドは、第1表に示されるRAS1[426〜448]ペプチド、RAS2[427〜462]ペプチド及びRAS3[430〜449]ペプチドから選択されるのが好ましい。代替的には、第1のペプチドは、国際出願PCT/AU98/00311号(国際公開第98/049192号)に開示されるPAS1(R45)としても知られるPAS1R[426〜446]ペプチドであってもよい。
【0123】
本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質では、第2のペプチドは、Lys−X−プロテイナーゼ(Kgp)又はArg−X−プロテイナーゼ(RgpA)又はHagAのようなポルフィロモナス・ジンジバリストリプシン様酵素のアドヘシンドメイン由来のペプチドであってもよい(第2表を参照されたい)。これらのドメインは場合によっては、ヘマグルチニンとしても知られる。Lys−X−プロテイナーゼでは、好ましいドメインは、第2表で同定されるようなKA1、KA2、KA3、KA4、KA5である。Arg−X−プロテイナーゼでは、好ましいドメインは、第2表で同定されるようなRA1、RA2、RA3及びRA4である。HagAでは、好ましいドメインは、HagA1、HagA1及びHagA1**である。
【0124】
【表5】

【0125】
キメラタンパク質又は融合タンパク質においてかかるペプチドとともに包含される場合に、KAS1、KAS2、KAS3、KAS4、KAS5及びKAS6又はRAS1、RAS2及びRAS3、RAS4及びRAS5のような本発明のペプチドに対する体液性応答を改善することのほかに、アドヘシンドメインはまた、免疫原性エピトープを含有し、したがって防御免疫原性応答を誘発するための多重特異性が生じる。アドヘシンドメインの免疫原性エピトープが、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質において供給される場合にポルフィロモナス・ジンジバリストリプシン様酵素のものと近い形態で保持されるという見解は、予測外である。
【0126】
本発明のこれらの実施形態では、キメラタンパク質又は融合タンパク質が、ポルフィロモナス・ジンジバリストリプシン様酵素の任意の1つ又は複数のアドヘシンドメインと一緒に、特にLys-X−プロテイナーゼアドヘシンドメイン(KA1、KA2、KA3、KA4及びKA5)又はArg−X−プロテイナーゼアドヘシンドメイン(RA1、RA2、RA3及びRA4)又はHagAドメイン、HagA1、HagA1及びHagA1**の任意の1つ又は複数とともに、KAS1/RAS1、KAS2/RAS2、KAS3/RAS3、KAS4/RAS4、KAS5/RAS5及びKAS6/RAS6から選択されるペプチドの任意の1つ又は複数を含有し得ることが理解されよう。
【0127】
また、アドヘシンドメインが、ポルフィロモナス・ジンジバリストリプシン様酵素で観察されるような完全ドメインである必要はないことが理解されよう。例えば、アドヘシンドメインは、かかるドメインの断片であってもよく、特に好ましい断片は、Lys−X−プロテイナーゼA1ドメインのKsA1ドメイン断片及びKLA1ドメイン断片である(第2表を参照されたい)。ドメインがアドヘシンドメインの断片である場合、ドメインは一般的に、1つ又は複数のアドヘシンドメイン特異的エピトープを含有する。
【0128】
アドヘシン関連ペプチドに対応する配列識別子を第3表に示す。
【0129】
一実施形態では、第2のペプチド又はポリペプチドは、配列番号69〜配列番号79の1つ又は複数、又は配列番号83〜配列番号85の1つ又は複数で示される配列を含む。
【0130】
本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質は、Lys−X−プロテイナーゼのKgp[432〜468]領域から選択される1つ又は複数の更なるペプチド、及び/又はArg−X−プロテイナーゼのRgpA[426〜462]領域から選択される1つ又は複数の更なるペプチドを包含してもよい。
【0131】
本発明の好ましい実施形態では、キメラタンパク質又は融合タンパク質は、KAS1、KAS2、KAS3、KAS4、KAS5及びKAS6の1つ若しくは複数、又はKsA1又はKLA1と一緒に、RAS1、RAS2、RAS3、RAS4及びRAS5の1つ若しくは複数を含む。
【0132】
したがって、或る特定の実施形態では。キメラタンパク質又は融合タンパク質は、少なくとも1つの更なるペプチドを含んでいてもよく、ここで上記更なるペプチドは、
(i)配列番号1で示される配列と同じであるか、若しくはその配列に相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)配列番号2で示される配列と同じであるか、若しくはその配列に相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼのアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列に相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(iv)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼのアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列に相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(v)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagAアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列に相同性である配列の一部若しくは全て
を含む。
【0133】
本明細書に記載されるようなキメラタンパク質又は融合タンパク質中に含まれ得るドメイン、ユニット、配列又は領域の他の例としては、Fc結合領域若しくはFc受容体のような受容体若しくはリガンドに結合するためのドメイン、アルブミンのような半減期を改善するためのドメイン、又はキメラタンパク質若しくは融合タンパク質の発現若しくは精製を容易とするためのドメインが挙げられる。
【0134】
更に別の態様では、本発明は、配列番号17、配列番号18、配列番号25及び配列番号26のうちの1つで示される配列を含むポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するためのペプチドを提供する。一実施形態では、ペプチドは、配列番号17、配列番号18、配列番号25及び配列番号26のうちの1つに相同性である配列を有する。ペプチドは、5アミノ酸長〜40アミノ酸長を有し得る。
【0135】
更に別の態様では、本発明は、配列番号17、配列番号18、配列番号25及び配列番号26のうちの1つで示される配列を有するペプチドをコードする核酸を提供する。
【0136】
更に別の態様では、本発明は、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するためのキメラタンパク質又は融合タンパク質の製造のための配列番号17、配列番号18、配列番号25及び配列番号26のうちの1つで示される配列を有するペプチド又は配列番号17、配列番号18、配列番号25及び配列番号26のうちの1つで示される配列を有するペプチドをコードする核酸の使用を提供する。
【0137】
更に別の態様では、本発明は、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するための配列番号17、配列番号18、配列番号25及び配列番号26のうちの1つで示される配列を有するペプチド又は配列番号17、配列番号18、配列番号25及び配列番号26のうちの1つで示される配列を有するペプチドをコードする核酸の使用を提供する。一実施形態では、ペプチドは、
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼのアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼのアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagAアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て
を含む、第2のペプチドと同時に又は第2のペプチドに続いて投与する。
【0138】
【表6】












【0139】
本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質では、第1のペプチドのC末端残基は、アドヘシンドメインポリペプチドのN末端残基に共有結合され得るか、又は第1のペプチドのN末端残基は、アドヘシンドメインポリペプチドのC末端残基に共有結合され得る。この配置では、第1のペプチド及びアドヘシンドメインポリペプチドは、「直接的に連結される」か、又は「隣接している」と言われる。
【0140】
他の実施形態では、キメラタンパク質又は融合タンパク質は、第1のペプチドをアドヘシンドメインポリペプチドに連結するためのリンカーを含む。リンカーは、アミノ酸リンカー及び非アミノ酸リンカーの両方を含む、ペプチドをポリペプチドへ結合させることが可能な任意のリンカーであり得る。好ましくは、リンカーは非免疫原性である。適切なリンカーは、最大15アミノ酸長であり得るが、5個未満のアミノ酸が好ましい。リンカーは、第1のペプチド及びアドヘシンドメインポリペプチドを、ポルフィロモナス・ジンジバリストリプシン様酵素で通常観察されるより密接した空間配置にさせるように機能し得る。代替的には、リンカーは、第1のペプチド及びアドヘシンドメインポリペプチドと間隔を空けてもよい。
【0141】
本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質は、組換え発現系(例えば組換えDNA技術)によって、又は化学合成(例えば固相ペプチド合成)によって生産することができる。これらの技法は当該技術分野で既知である。
【0142】
異種タンパク質又はキメラタンパク質は、それがキメラタンパク質又は融合タンパク質第1のペプチド構成成分又は第2のペプチド構成成分を単独で使用して得られるものを上回って得られる体液性応答を改善するため、特に好適である。
【0143】
本発明者らは、これらのペプチドを含むキメラタンパク質が多数の有用性を有することを見出している。例えば、本明細書中に記載されるように、慢性歯周炎で観察されるような骨量減少の処置又は防止に関して非常に防御的である体液性応答を生じるものもある。ペプチドはまた、それらが個体の血清中での特異性を検出又はモニタリングすることができる診断アッセイでも使用することができ、それにより個体が感染されているか、又は感染されていないかどうか、感染しているならば、処置が必要とされるかどうか、又は提供される場合にはそれらが有効であったかどうかを示す。
【0144】
一実施形態では、キメラタンパク質又は融合タンパク質は、防御免疫応答、通常そうでなければポルフィロモナス・ジンジバリス感染と関連付けられる結合組織損傷を少なくとも最低限に抑えるか、又は制限する応答を誘導する。一実施形態では、防御応答は、ポルフィロモナス・ジンジバリス誘導性の骨量減少を少なくとも最低限に抑えるか、又は制限する。ポルフィロモナス・ジンジバリス感染により媒介される骨量減少を測定するためのモデル系は本明細書で論述される。通常、防御免疫応答は、主として体液性応答である。或る特定の実施形態では、防御免疫応答はまた細胞性応答を誘導する。
【0145】
本発明はまた、上で広く記載されるようなキメラタンパク質又は融合タンパク質を含む組成物を提供する。通常、組成物は、抗原性又は免疫原性である。より具体的には、本発明は、任意にアジュバントと関連してキメラタンパク質又は融合タンパク質を含むポルフィロモナス・ジンジバリス感染に対する防御免疫応答又は治療的免疫応答を誘発するのに適した組成物を提供する。かかる組成物はまた、免疫応答を調節又は増強するための別の構成成分を含んでいてもよい。一実施形態では、組成物はワクチンの形態をとる。
【0146】
好ましい組成物は、歯周病原体ポルフィロモナス・ジンジバリス、トレポネーマ・デンチコラ及びタンネレラ・フォーサイシアに対する免疫応答を発生する免疫原を含む。免疫原は、弱毒化全細胞ワクチン、又は精製抗原ワクチン、又はより好ましくは組換え抗原ワクチンであってもよく、ここで、組成物は、3つの歯周病原体の1つ又は複数に対する抗原を含有する。ポルフィロモナス・ジンジバリス、トレポネーマ・デンチコラ及びタンネレラ・フォーサイシア感染に関連する免疫原を形成することが可能である適切なペプチドの他の例を表D〜表Fに示す。
【0147】
【表7】

【0148】
【表8】





【0149】
【表9】





【0150】
様々なアジュバントが、ワクチン組成物と併用した使用に関して知られている。アジュバントは、免疫応答を調節することによって、またワクチン抗原が単独で投与された場合よりも少量のワクチン抗原又はより少ない用量を使用して、より持続的かつより高レベルの免疫性を獲得するのに役立つ。アジュバントの例としては、不完全フロイントアジュバント(IFA)、アジュバント65(ラッカセイ油、マンニドモノオレエート及びモノステアリン酸アルミニウムを含有する)、油状物質エマルジョン、Ribiアジュバント、プルロニックポリオール、ポリアミン、アビリジン、Quil A、サポニン、MPL、QS−21、鉱物ゲル(例えば、アルミニウム塩及びカルシウム塩)、ナノ粒子(例えば、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、アルミニウム塩)、糖オリゴマー及びポリマー(例えば、マンナン、キトサン)が挙げられる。他の例としては、水中油型エマルジョン(例えば、SAF−1、SAF−0、MF59、Seppic ISA720及び他の粒状物質アジュバント(例えば、ISCOM(商標)及びISCOMマトリックス(商標)が挙げられる。アジュバントの他の例の広範ではあるが包括的ではないリストは、Cox and Coulter 1992[Wong WK(編) Animals parasite control utilising technology. Bocca Raton; CRC press、1992年;49〜112中]に列挙される。アジュバントの他に、ワクチン組成物は、従来の薬学的に許容される担体、賦形剤、充填剤、緩衝剤又は希釈剤(適切である場合)を含んでいてもよい。アジュバントを含有するワクチン組成物の1つ又は複数の用量は、歯周炎を防止するために予防的に、又は既に存在する歯周炎を処置するために治療的に投与してもよい。一実施形態では、使用されるアジュバントは、Th−2に偏った応答の産生を容易とするように選択される。例はAlumである。
【0151】
好ましい組成物では、キメラタンパク質又は融合タンパク質は、粘膜アジュバントと併用されて、口腔、頬又は鼻の経路を介して投与される。粘膜アジュバントの例は、ナノ粒子、コレラ毒素及び熱不安定性大腸菌毒素、これらの毒素の無毒性Bサブユニット、毒性が低減されたこれらの毒素の遺伝子突然変異体である。
【0152】
経口的に/頬側的に/経鼻的に抗原タンパク質を送達するのに利用され得る他の方法としては、胃腸管又は他の粘膜表面からの微粒子の取込みを助長するために、及びタンパク質の分解を保護するためにマイクロカプセル化によって生分解性ポリマー(例えば、アクリレート又はポリエステル)の粒子又はナノ粒子(例えば、ヒドロキシアパタイト)中への若しくはその上へのタンパク質の組込み又は吸収が挙げられる。リポソーム、ISCOM(商標)、ヒドロゲルは、粘膜免疫系への抗原タンパク質の送達のためのLTB、CTB又はレクチンのようなターゲッティング分子の組込みにより更に増強され得る他の有望な方法の例である。抗原タンパク質及び粘膜アジュバント又は送達系の他に、ワクチン組成物は、従来の薬学的に許容される担体、賦形剤、充填剤、コーティング剤、分散媒、抗細菌剤又は抗真菌剤、及び緩衝剤又は希釈剤(適切である場合)を含んでいてもよい。
【0153】
皮内投与、筋内投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、鼻内投与、舌下投与、頬側投与及び経口投与を含むがこれらに限定されない多くの方法が、被験体へのワクチン組成物の投与に関して知られている。これらの投与経路は、ワクチン接種に特に有用である。
【0154】
更なる態様では、本発明は、少なくとも1つの調節要素に任意に操作可能に連結される、上で広く記載されるキメラタンパク質又は融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。一実施形態では、核酸は、単離形態又は実質的に精製された形態で提供される。
【0155】
核酸分子は、例えば、原核宿主細胞又は真核宿主細胞への発現ベクターの挿入によって組換えタンパク質としてのキメラタンパク質の生産に適した発現ベクターへ挿入され得る。組換えタンパク質の首尾よい発現は、発現ベクターが、発現に使用される特定の宿主細胞系と適合性でありかつ該特定の宿主細胞系により認識される転写及び翻訳のための必須調節要素を含有することを要する。様々な宿主細胞系を利用して、組換えタンパク質を発現させてもよく、それらとしては、バクテリオファージベクター、プラスミドベクター又はコスミドDNAで形質転換された細菌、酵母ベクターを含有する酵母、真菌ベクターを含有する真菌、ウイルス(例えば、バキュロウイルス)で感染させた昆虫細胞株、及びプラスミド若しくはウイルス発現ベクターでトランスフェクトさせたか、又は組換えウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス等)で感染させた哺乳動物細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
分子生物学の技術分野で既知の方法を使用して、様々なプロモーター及びエンハンサ−を発現ベクターへ組み込ませて、組換えタンパク質の発現を増大させることができる。但し、アミノ酸配列の発現の増大が、使用される特定の宿主細胞系と適合性である(例えば、特定の宿主細胞系に対して無毒性である)。
【0157】
プロモーターの選択は、使用される発現系に依存する。プロモーターは、強度、すなわち転写を容易にする能力が様々である。概して、高レベルのコーティングヌクレオチド配列の転写及び組換えタンパク質への発現を得るために、強力なプロモーターを使用することが望ましい。例えば、大腸菌を含む宿主細胞系で高レベルの転写が観察された技術分野で既知の細菌、ファージ又はプラスミドプロモーターとしては、lacプロモーター、trpプロモーター、recAプロモーター、リボソームRNAプロモーター、Pプロモーター及びPプロモーター、lacUV5、ompF、bla、lpp等が挙げられ、アミノ酸配列をコードする挿入されたヌクレオチド配列の転写を提供するのに使用され得る。
【0158】
効率的な転写又は翻訳のための他の制御要素としては、エンハンサ及び調節性シグナルが挙げられる。エンハンサ配列は、近くのコードヌクレオチド配列に関してそれらの位置及び方向に比較的非依存性の様式で転写効率を増大させると考えられるDNA要素である。したがって、使用される宿主細胞発現ベクター系に応じて、エンハンサは、転写効率を増大させるために挿入されたコード配列から上流又は下流のいずれかに配置してもよい。転写開始シグナル又は翻訳開始シグナルのような他の調節性部位は、コード配列の発現を調節するのに使用することができる。
【0159】
別の実施形態では、ベクターは、ウイルス又は細菌のワクチンベクターであってもよく、組換えウイルスワクチン、組換え細菌ワクチン、組換え弱毒化細菌ワクチン、又は不活性化された組換えウイルスワクチンを提供するのに使用され得る。ワクシニアウイルスは、当該技術分野における、他の生物に由来するワクチン抗原を発現するように操作される感染ウイルスの最も良く知られている例である。弱毒化されているか、又はそうでなくともそれ自体では疾患を引き起こさないように処理される組換え生ワクシニアウイルスは、宿主を免疫感作するのに使用される。宿主内での組換えウイルスの続く複製は、ワクチン抗原による免疫系の連続的な刺激を提供し、それによって長期にわたる免疫性を提供する。
【0160】
他の生ワクチンベクターとしては、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、及び好ましくはポックスウイルス(例えばワクシニア)[Paoletti及びPanicali、米国特許第4,603,112号]及び弱毒化されたサルモネラ(Salmonella)株[Stocker他、米国特許第5,210,035号、同第4,837,151号及び同第4,735,801号、並びにCurtiss他、1988年、Vaccine 6:155-160]が挙げられる。生ワクチンは、それらが実質的に長期にわたる免疫性を付与することができる免疫系を絶えず刺激するため、特に好適である。免疫応答が、続くポルフィロモナス・ジンジバリス感染に対して防御的である場合、生ワクチン自体は、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する予防ワクチンにおいて使用され得る。特に、生ワクチンは、口腔の共生者である細菌に基づき得る。この細菌は、組換えキメラタンパク質を保有するベクターで形質転換することができ、続いて口腔、特に口腔粘膜にコロニー形成するのに使用され得る。口腔粘膜中でコロニー形成すると、組換えタンパク質の発現は、粘膜関連リンパ系組織を刺激して、中和抗体を産生させる。この実施形態を更に説明するために、当該技術分野で既知の分子生物学的技法を使用して、本発明のキメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、エピトープの発現を可能にするが、ワクシニアウイルスベクターの成長又は複製に悪影響を及ぼさない部位で、ワクシニアウイルスゲノムDNAへ挿入してもよい。結果として得られる組換えウイルスは、ワクチン配合物における免疫原として使用され得る。同じ方法が、不活性化された組換えウイルスワクチン配合物を構築するのに使用され得るが、但し、組換えウイルスが、例えば当該技術分野でで既知の化学的手段によって、免疫原としての使用前に、及び発現される免疫原の免疫原性に実質的に影響を及ぼさずに、不活性化される場合を除く。不活性化された組換えワクチンは、ワクチン抗原に対する免疫学的応答を増強するために適切なアジュバントとともに配合してもよい。
【0161】
本発明はまた、ワクチン配合物としての直接的に本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子の使用を提供する。1つ又は複数の調節性要素に操作可能に連結されるキメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、ポルフィロモナス・ジンジバリスの病原性株に対して個体をワクチン接種するのに直接導入することができる(「直接的な遺伝子移入」)。血管内皮細胞並びに主要臓器の組織のようなワクチン接種される個体の細胞による遺伝子材料の発現をもたらすワクチン接種される個体への直接的な遺伝子移入は、例えば発現プラスミド:カチオン性リポソーム複合体を静脈内に注射することによる当該技術分野での技法によって実証されている[Zhu他、1993年、Science 261:209-211]。ベクターDNAを標的細胞へ送達する他の有効的な方法が当該技術分野で知られている。一例では、ウイルス遺伝子を含有する精製組換えプラスミドDNAを使用して、防御免疫応答を誘導するようにワクチンを接種してきた(非経口的にであるか、粘膜的にであるか、又は遺伝子銃免疫感作によるかにかかわらず)[Fynan他、1993年、Proc Natl Acad Sci USA 90:11478-11482]。別の例では、個体から取り出した細胞は、当該技術分野で既知の標準的な手順によりトランスフェクト又は電気穿孔することができ、組換えベクターDNAの標的細胞への導入をもたらす。次に、組換えベクターDNAを含有する細胞は、例えばベクター中で発現される選択マーカーを用いて、当該技術分野で既知の方法を使用することに関して選択してもよく、続いて選択された細胞は、個体へ再導入して、組換えタンパク質を発現させてもよい。
【0162】
他の実施形態では、上述するような抗菌剤及び免疫原を含む医薬組成物が提供される。組成物は更に、希釈剤、賦形剤若しくは担体、又は口腔感染に関連した状態又は疾患の処置のための化学療法剤を含んでいてもよく、経口投与に適合され得る。本発明の組成物を、例えばウォームガムベースで攪拌すること又はガムベースの外面をコーティングすることにより、ロゼンジに又はチューイングガム若しくは他の製品に組み込むこともできる。ガムベースの例は、望ましくは従来の可塑剤若しくは柔軟剤、糖類、又はグルコース、ソルビトール等の他の甘味料を用いた、ジェルトン、ゴム乳液、ビニライト樹脂等である。
【0163】
上述の医薬組成物を含有する本発明の口腔組成物が調製されて、練り歯磨き、歯磨き粉及び液体歯磨剤を含む歯磨剤、洗口剤、トローチ、チューインガム、歯科用ペースト、歯肉マッサージクリーム、うがい用タブレット、乳製品並びに他の食品のような口に適用可能な様々な形態で使用され得る。本発明による口腔組成物は更に、特定の口腔組成物のタイプ及び形態に応じて更なる既知の成分を含んでいてもよい。
【0164】
本発明の或る特定の好ましい形態において、経口組成物は性質として実質的に液体のもの、例えば洗口液又はリンス剤であり得る。このような調製物において、ビヒクルは通常望ましくは以下に記載のような保湿剤を含む水−アルコール混合物である。一般的に、水対アルコールの重量比は約1:1〜約20:1の範囲である。この種の調製物における水−アルコール混合物の総量は通常、調製物の約70重量%〜約99.9重量%の範囲である。アルコールは通常エタノール又はイソプロパノールである。エタノールが好ましい。
【0165】
本発明のこのような液体及び他の調製物のpHは概して約5〜約9、通常約5.0〜7.0の範囲である。pHを酸(例えばクエン酸又は安息香酸)若しくは塩基(例えば水酸化ナトリウム)で制御することができるか、又は(例えばクエン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等を用いて)緩衝させることができる。
【0166】
本発明の他の望ましい形態において、医薬組成物は性質として実質的に固体又はペースト状のもの、例えば歯磨き粉、歯垢検出剤(dental tablet)又は歯磨きペースト(歯科用クリーム)又はジェル歯磨き剤であり得る。このような固体又はペースト状の経口調製物のビヒクルは一般的に歯科的に許容される研磨材料を含有する。
【0167】
歯磨きペーストにおいて、液体ビヒクルは通常、調製物の約10重量%〜約80重量%の範囲の量で水及び保湿剤を含み得る。好適な保湿剤/担体としてグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール及びポリプロピレングリコールが例示される。水、グリセリン及びソルビトールの液体混合物も有益である。屈折率が考慮すべき重要なものである透明なジェルにおいて、約2.5%(w/w)〜30%(w/w)の水、0%(w/w)〜約70%(w/w)のグリセリン、及び約20%(w/w)〜80%(w/w)のソルビトールを用いるのが好ましい。
【0168】
歯磨きペースト、クリーム及びジェルは通常、約0.1%(w/w)〜約10%(w/w)、好ましくは約0.5%(w/w)〜約5%(w/w)の割合で天然型又は合成型の増粘剤又はゲル化剤を含有する。好適な増粘剤は合成ヘクトライト、例えばLaporte Industries Limitedから市販されているLaponite(例えばCP、SP 2002、D)として利用可能な合成コロイドマグネシウムアルカリ金属シリケート複合体粘土である。Laponite Dはおよそ58.00重量% SiO、25.40重量% MgO、3.05重量% NaO、0.98重量% LiO、並びに幾らかの水及び微量金属である。その真の比重は2.53であり、湿度8%で1.0g/mlの見掛けのかさ密度を有する。
【0169】
他の好適な増粘剤には、アイリッシュモス、イオタカラギーナン、トラガカントゴム、デンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(例えばNatrosolとして利用可能)、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び微砕Syloid(例えば244)等のコロイドシリカが含まれる。可溶化剤には、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びヘキシレングリコール等の湿潤ポリオール、メチルセロソルブ及びエチルセロソルブ等のセロソルブ、オリーブ油、ヒマシ油及びワセリン等の直鎖に少なくとも約12個の炭素を含有する植物油及びワックス、並びに酢酸アミル、酢酸エチル及び安息香酸ベンジル等のエステルも含まれ得る。
【0170】
従来どおり経口調製物は通常、好適なラベル付きパッケージで販売されているか、又はそうでなくとも流通していると理解される。このため、マウスリンスのボトルはそれを実質的にマウスリンス又は洗口液として記載し、その使用に関して説明しているラベルを有しており、歯磨きペースト、クリーム又はジェルは通常、それを実質的に歯磨きペースト、ジェル又は歯科クリームとして記載しているラベルを有する、押し出しチューブ(典型的にはアルミニウム、裏打ちされた鉛、又はプラスチック製の)、又は内容物を定量的に取り出す(metering out)他の搾り出し式ディスペンサー、ポンプ式ディスペンサー若しくは加圧式ディスペンサー中にある。
【0171】
予防作用の増大を達成するために、口腔全体への活性剤の徹底的かつ完全な分散を達成するのを助けるために、及び本組成物を化粧品としてより許容可能にするために有機界面活性剤を本発明の組成物に使用してもよい。有機界面活性材料は自然状態でアニオン性、非イオン性又は両性であるのが好ましく、活性剤と相互作用しないのが好ましい。組成物に洗浄性及び発泡性を与える洗浄材料を界面活性剤として利用するのが好ましい。アニオン性界面活性剤の好適な例は、高級脂肪酸モノグリセリドモノスルフェートの水溶性塩、例えば硬化ヤシ油脂肪酸のモノ硫酸モノグリセリドのナトリウム塩、高級アルキル硫酸塩、例えばラウリル硫酸ナトリウム、アルキルアリールスルホネート、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、高級アルキルスルホ酢酸塩、1,2−ジヒドロキシプロパンスルホネートの高級脂肪酸エステル、及び低級脂肪族アミノカルボン酸化合物の実質的に飽和した高級脂肪族アシルアミド、例えば脂肪酸、アルキルラジカル又はアシルラジカルに12個〜16個の炭素を有するもの等である。最後に言及されたアミドの例は、N−ラウロイルサルコシン、並びにセッケン又は同様の高級脂肪酸材料を実質的に含まないとされるN−ラウロイルサルコシン、N−ミリストイルサルコシン又はN−パルミトイルサルコシンのナトリウム塩、カリウム塩及びエタノールアミン塩である。使用に好適な水溶性の非イオン性界面活性剤の例は、エチレンオキシドと疎水性の長鎖(例えば約12個〜20個の炭素原子の脂肪族鎖)を有し、エチレンオキシドと反応性を有する様々な反応性水素含有化合物との縮合生成物であり、該縮合生成物(「エトキサマー(ethoxamers)」)は親水性ポリオキシエチレン部分を含有し、例えばポリ(エチレンオキシド)と脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪アミド、多価アルコール(例えばモノステアリン酸ソルビタン)及びポリプロピレンオキシド(例えばプルロニック材料)との縮合生成物等である。
【0172】
界面活性剤は通常、約0.1重量%〜5重量%の量で存在する。界面活性剤が本発明の活性剤の溶解を助け、それにより必要となる可溶化保湿剤の量を減らすことができることは注目に値する。
【0173】
増白剤、保存料、シリコーン、クロロフィル化合物及び/又は尿素、リン酸二アンモニウム等のアンモニア化材料、並びにそれらの混合物等の様々な他の材料を本発明の経口調製物に組み込んでもよい。これらのアジュバントは存在する場合、所望の特性及び特質に実質的に悪影響を及ぼすことのない量で調製物に組み込まれる。
【0174】
任意の好適な芳香材料又は甘味材料を利用してもよい。好適な芳香成分の例は芳香油、例えばスペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン、サッサフラス、チョウジ、セージ、ユーカリ、マジョラム、シナモン、レモン及びオレンジの油、並びにサリチル酸メチルである。好適な甘味剤には、スクロース、ラクトース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、シクラミン酸ナトリウム、ペリラルチン、AMP(アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル)、サッカリン等が含まれる。好適には芳香剤及び甘味剤は各々又は両方とも、調製物の約0.1%〜5%以上を構成し得る。
【0175】
経口使用を目的とする組成物を医薬組成物の製造に関して当該技術分野で既知の任意の方法に従って調製することができ、このような組成物は薬学的に有効な(elegant)口当たりのよい調製物を提供するために、甘味剤、芳香剤、着色剤及び保存剤からなる群から選択される作用物質を1つ又は複数含有していてもよい。錠剤は錠剤の製造に好適な非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合された活性成分を含有する。これらの賦形剤は例えば不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム;造粒剤及び崩壊剤、例えばコーンスターチ又はアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン又はアカシア、並びに平滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであり得る。錠剤はコーティングされていなくてもよく、又は錠剤を胃腸管又は歯周ポケットでの崩壊及び吸収を遅らせ、それによりより長期にわたり作用が持続するように既知の技法でコーティングしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリル等の遅延材料を利用してもよい。
【0176】
経口使用のための製剤を硬ゼラチンカプセル(その中で活性成分は不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリンと混合される)として、又は軟ゼラチンカプセル(その中で活性成分は水又は油媒体、例えば落花生油、液体パラフィン若しくはオリーブ油と混合される)として提示してもよい。
【0177】
水性懸濁液は水性懸濁液の製造に好適な賦形剤と混合された活性材料を含有する。このような賦形剤は懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアカシアゴムである。分散剤又は湿潤剤は天然のホスファチド、例えばレシチン、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、又はエチレンオキシドと脂肪酸及び無水ヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであり得る。
【0178】
水性懸濁液は1つ又は複数の保存料又は抗菌剤、例えばベンゾエート、例えばエチルp−ヒドロキシベンゾエート又はn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート(別の例はグルコン酸クロルヘキシジンである)1つ又は複数の着色剤、1つ又は複数の芳香剤、及び1つ又は複数の甘味剤、例えばスクロース又はサッカリンを含有していてもよい。
【0179】
油性懸濁液を、植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油若しくはヤシ油、又は液体パラフィン等の鉱油中に活性成分を懸濁することにより配合してもよい。油性懸濁液は増粘剤、例えば蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールを含有していてもよい。上記で記載されるもののような甘味剤、及び芳香剤を口当たりのよい経口調製物を提供するために添加してもよい。これらの組成物をアスコルビン酸等の抗酸化剤の添加により保存してもよい。
【0180】
4.キット
或る特定の実施形態では、
実質的に全ての微生物又はそれらの断片を下記被験体の口腔組織から除去するための抗菌剤、
微生物病原体(口腔組織におけるその存在が、疾患又は状態に関連付けられる)に対して上記被験体を免疫感作するための免疫原
を含むキットが提供され、上記キットは、上述の方法での使用に適合している。
【0181】
キットは、
抗菌剤及び免疫原のうちの1つ又は複数の形態で治療用組成物を保持する容器、
使用に関する説明書を伴うラベル又はパッケージ挿入物
を含んでいてもよい。
【0182】
或る特定の実施形態では、本明細書中で記載される方法又は使用で使用される場合のキットが提供される。
【0183】
或る特定の実施形態では、キットは、疾患又は状態の治療のための1つ又は複数の更なる活性成分又は有効成分を含有していてもよい。
【0184】
キットは、容器、及び容器上のラベル若しくはパッケージ挿入物又は容器に関連付けられるラベル若しくはパッケージ挿入物を含んでいてもよい。適切な容器としては、例えば、瓶、バイアル、シリンジ、ブリスター・パック等が挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックのような各種材料から形成され得る。容器は、状態を処置するのに有効である治療用組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、皮下注射針により貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであり得る)。ラベル又はパッケージ挿入物は、治療用組成物が選んだ状態を処置するのに使用されることを示す。一実施形態では、ラベル又はパッケージ挿入物は、使用に関する説明書を含み、治療用組成物が、所定の疾患又は状態の治療に使用され得ることを示す。
【0185】
キットは、(a)治療用組成物、及び(b)第2の活性成分又は有効成分を中に含有する第2の容器を含んでいてもよい。本発明のこの実施形態におけるキットは更に、その活性成分及び他の活性成分が所定の感染から生じる障害を処置するか、又は合併症を防止するのに使用することができることを示すパッケージ挿入物を含んでいてもよい。代替的には、又はさらには、キットは、薬学的に許容される緩衝剤、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液及びデキストロース溶液を含む第2の(又は第3の)容器を更に含んでいてもよい。キットは更に、他の緩衝剤、希釈剤、フィルタ、針及びシリンジを含む商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料を含んでいてもよい。
【0186】
本発明は、本発明の限定のためでなく例示のために記載される下記実施例によって更に説明される。
【実施例】
【0187】
実施例1:
方法及び材料
細菌株及び成長条件。ポルフィロモナス・ジンジバリスW50の凍結乾燥させた培養液を、5μg/mlのヘミン、0.5μg/mlのシステイン(HB寒天、継代回数10未満)を補充した溶解ウマ血液寒天板上で37℃で嫌気的に成長させた。3日〜4日後、コロニーを使用して、5μg/mlのヘミン、0.5μg/mlのシステインを含有するブレイン・ハートインフュージョン培地に接種した(1)。バッチ培養液を、MK3嫌気性ワークステーション(Don Whitley Scientific Ltd.、オーストラリア、アデレード)中で嫌気的に成長させた。細胞を遠心分離(7500g、30分、4℃)により指数成長期中に収集して、嫌気性ワークステーション中でPG緩衝液(50mM Tris−HCl、150mM NaCl、5mM CaCl及び5mM システイン−HCl、pH8.0)で2回洗浄した。バッチ培養液の成長は、分光光度計(モデル295E、Perkin-Elmer)を使用して650nmでモニタリングした。培養液純度は、グラム染色、顕微鏡検査によって、及びSlots(2)に従う各種生化学試験を使用して日常どおりに検査した。
【0188】
アドヘシン配列及びKgpプロテイナーゼ配列のN末端付加を有するアドヘシン配列を含有するpET28構築物の構築。活性部位(AS)ドメイン及びKgpA1アドヘシン(A1)ドメインのペプチド及びキメラペプチドを表すKgp残基を、pET発現ベクター(Novagen)を使用してヘキサ−Hisタグを有する組換え(r)タンパク質として大腸菌で過剰発現させた。発現させたrタンパク質は、rKAS2及びrKLA1であり、r−キメラタンパク質は、rKAS2−KLA1、rKAS1−KsA1及びrKAS4−KAS3−KAS5−KAS6−KLA1(マルチKAS−KLA1とも称される)であった。様々なA1ドメイン及びASドメインを表すアミノ酸配列を第1表及び第2表に記載する。
【0189】
kgp遺伝子の様々なKASドメイン及びKA1ドメインを、pNS1(pUC18中の3.5kbのBamHI lys断片)又はポルフィロモナス・ジンジバリスゲノムDNAから、それぞれ第4表に列挙されるプライマー、Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)及びPC−960サーマルサイクラー(Corbett Research Technologies)を使用して増幅させた。プライマー対KAS2−FOR及びKAS2−REV、並びにKLA1−FOR及びKLA1−REVを使用して、下記反応条件:94℃で3分、続いて94℃で45秒(変性)、62℃で40秒(アニーリング)及び72℃で20秒(伸長)を28サイクル、続く72℃で5分の最終サイクルを使用して、それぞれKAS2及びKLA1をコードするPCR断片を生成した。
【0190】
KAS2−KLA1キメラPCR産物は、下記のとおりに重複伸長による遺伝子スプライシング(SOEing)によって産生された:PCR産物は、上述の条件を使用してプライマー対KAS2−FOR及びKAS2−KLA1−キメラ−REV、並びにKAS2−KLA1−キメラ−FOR及びKLA1−REVを使用して産生された。次に、PCR産物をアニーリングさせて、最終PCRは、プライマーKAS2−FOR及びKLA1−REVを用いて実施した(94℃で2分、続いて94℃で30秒、50℃で30秒及び72℃で40秒を28サイクル、続く72℃で5分の最終サイクル)。
【0191】
KAS1−KsA1 PCR産物の調製に関して、2つの逐次(successive)PCRを、順次KAS1−KsA1−FORプライマー1及び2のそれぞれとともにKAS1−KsA1−REVプライマーを使用して行って(反応条件:94℃で2分、続いて94℃で15秒、63℃で30秒及び72℃で2分を35サイクル)、KAS1−KsA1 PCR産物を産生した。KAS1−KsA1−FOR1及びKAS1−KsA1−FOR2プライマーは、これまでのPCR産物の5’と重複する3’伸長を含有する。
【0192】
マルチKAS−KLA1 PCR断片の調製に関して、4つの逐次PCRを、順次マルチ−FORプライマー1、2、3及び4のそれぞれとともにマルチ−REVプライマーを使用して行って(反応条件は、95℃で2分、続いて95℃で20秒、68℃で1.5分を35サイクルとした)、マルチKAS−KLA1 PCR産物を産生した。各マルチ−FORプライマーは、これまでのPCR産物の5’と重複する3’伸長を含有する。
【0193】
KAS2、KLA1、KAS2−KLA1、KAS1−KsA1及びマルチKAS−KLA1をコードするPCR断片は全て、製造業者のプロトコルに従って、PCR精製カラム(Qiagen)を使用して精製し、TAクローニングベクターであるpGem−T Easy(Promega)へ連結して、大腸菌JM109へ形質転換した。精製した組換えpGemT−Easy構築物をNcoI及びXhoIで消化して、NcoI/XhoIで消化させたpET28b(Novagen)に定方向にクローニングして、非発現宿主である大腸菌JM109[DH5α]へ形質転換した。組換えpET28構築物は、製造業者の説明書に従って、精製して、大腸菌発現宿主であるBL21(DE3)[HMS174(DE3)](Novagen)へ形質転換して、50μgのカナマイシンを含有するLB上で選択した。各挿入片の完全性は、DNA配列分析により確認した。
【0194】
オリゴヌクレオチドプライマー(第4表)は、制限酵素部位、停止コドン及びヘキサ−Hisタグ(必要であれば)を組み込むように設計されている。rKAS2、rKLA1及びrKAS2−KLA1に使用されるプライマーは、r−タンパク質中における3つ以下の(no more than)アミノ酸にヘキサ−Hisタグを付加したものに対する外来性コード配列の包含を制限するように設計された。rKAS1及びrKLA1は、それぞれN末端及びC末端にヘキサ−Hisタグを含有するように設計されて、その結果、それらはN末端及びC末端の両方でヘキサ−hisタグを有するrKAS2−KLA1と直接比較することができる。rKAS1−KsA1及びrマルチKAS−KLA1では、HisタグはC末端に見出される。
【0195】
【表10】


【0196】
組換えタンパク質の発現及び精製。組換えタンパク質は、イソプロピルβ−D−チオガラクトシダーゼ(IPTG)による誘導によってpET28::KLA1(KAS2、KAS2−LA1、KAS1−SA1、マルチKAS−KLA1)構築物から発現させた。組換えタンパク質は全て、6−His Tag融合タンパク質として産生されて、変性条件下でNI−NTA精製系(Invitrogen)で精製した。簡潔に述べると、大腸菌(DE3)単一コロニー形質転換体を使用して、オービタルシェーカー上で一晩、37℃で50μg/mlのカナマイシンを含有する20mLのルリア・ベルターニ(LB)ブロスに接種した。続いて、この接種材料を使用して、50μg/mlのカナマイシンを含有するLB 1Lに接種した。この培養液のOD600は、200rpmで振とうしながら37℃で2時間、0.1mMでイソプロピルIPTGによりタンパク質発現を誘導する前に0.5〜0.7(対数期中期)に到達させた。細胞を収集して(7500g)、変性結合緩衝液(8M尿素、20mM リン酸ナトリウム(pH8.0)及び500mM NaCl)中に再懸濁して、Bransonのソニファー250細胞破壊器(Branson Ultronics Corporation、コネティカット州ダンベリー)を使用して、設定3でマイクロチップを用いて、30秒間隔で3×15秒のバーストの間、氷上で超音波処理して、続いて39000gで4℃で30分間遠心分離した。組換えタンパク質は、予め平衡化させたNi−NTAアガロースカラム上へ負荷すること、続いて変性洗浄緩衝液(8M 尿素、20mM リン酸ナトリウム(pH6.0)及び500mM NaCl)で洗浄することによって上清から精製して、未結合のタンパク質を溶出させた。続いて、カラムを10倍量の結合緩衝液Bを使用して洗浄して、組換えタンパク質は、変性溶出緩衝液(8M 尿素、20mMリン酸ナトリウム(pH6.0)、500mM NaCl及び0.5M イミダゾール)で溶出させた。精製したタンパク質は、2M 尿素−PBSに対して透析して、−80℃で保管した。
【0197】
組換えタンパク質サンプルは、SDS−PAGEによって分析して、ProtParamオンライン(http://au.expasy.org/tools/protparam.html)を使用して、それらの分子質量を決定した。全てのサンプルのタンパク質濃度は、標準物質としてBSAを使用してBio-Radタンパク質アッセイによって決定した。
【0198】
免疫感作及びマウス歯周炎モデル。マウス歯周炎実験を過去に記載される(3)とおりに実施して、メルボルン大学動物実験倫理委員会(University of Melbourne Ethics Committee for Animal Experimentation)により承認された。ミクロアイソレータ中に収容した6週齢〜8週齢のBALB/cマウス(1群当たりマウス12匹)を、50μgの組換えタンパク質又はRgpA−Kgp複合体のうちの1つ、ポルフィロモナス・ジンジバリス株W50の2×10個のホルマリンで死滅させた細胞又はPBSをのいずれかで皮下的に免疫感作した(皮下100μL)。抗原はそれぞれ、不完全フロイントアジュバント(IFA)中で乳化させた。30日後、マウスを抗原(皮下注射、IFA中に乳化)で追加免疫して、続いて、12日後に眼球後神経叢から出血させた。4日後、第2の免疫感作マウスに、脱イオン水中で1mg/mlでのカナマイシン(Sigma-Aldrich、オーストラリア、ニューサウスウェールズ)を7日間自由に与えた。抗生物質処置の3日後(出血の2日後)、マウスに、2%(wt/vol)カルボキシメチルセルロース(CMC;Sigma-Aldrich、オーストラリア、ニューサウスウェールズ)を含有するPG緩衝液(50mM Tris−HCl、150mM NaCl、5mM CaCl及び5mM システイン−HCl、pH8.0)中の1×1010個の生存可能なポルフィロモナス・ジンジバリスW50(25μl)で、2日空けて4回、経口接種して、対照群は、2%(wt/vol)CMCのみを含有するPG緩衝液で偽感染させた。接種材料は、嫌気性チャンバ中で調製され、続いて、即座に上顎臼歯の歯肉縁へ適用させた。2週後、マウスに、2%(wt/vol)CMCを含有するPG緩衝液中の生存可能なポルフィロモナス・ジンジバリスW50(25μl)1×1010個の細胞を更に4回(2日空けて)投与した。各接種材料中の生存可能細菌の数は、血液寒天上での列挙により確認した。マウスに、軟らかい粉末食(Barastock、オーストラリア)を与え、寝具類への接近を防ぐために、隆起した金網の底部に適合させたケージ中に収容した。最終投与の4週後に、マウスを眼球後神経叢から出血させて、屠殺し、上顎骨を取り出して半分に切断し、一方(右側)を歯槽骨量減少測定に使用し、他方(左側)をリアルタイムPCRに使用した。
【0199】
右半分の上顎骨を脱イオン水中で煮沸し(1分)、機械的に切り落とし、2%(wt/vol)水酸化カリウム中に浸漬させた(16時間、25℃)。続いて、上顎骨の半分を洗浄して(脱イオン水で2回)、3%(wt/vol)過酸化水素中に浸漬させた(6時間、25℃)。上顎骨の半分を洗浄した(脱イオン水で2回)後、それらを0.1%(wt/vol)メチレンブルー水で染色して、各上顎骨の半分の頬側デジタル画像を、OLYSIA BioReportソフトウェアバージョン3.2(Olympus Australia Pty Ltd.、ニューサウスウェールズ、オーストラリア)を使用して解剖顕微鏡上に取り付けたオリンパスDP12デジタルカメラにより取り込み、水平骨量減少を評価した。水平骨量減少は、頂高の低減をもたらす歯槽骨頂(ABC)に垂直な水平面で見られる減少である。各上顎骨の半分を、各歯の画像の臼歯の頬側咬頭及び舌側咬頭が重ね合わさるように整列させて、画像を枠中のマイクロメートルのスケールで取り込み、その結果、測定は、各画像に関して標準化することができた。各臼歯に関してセメント・エナメル接合部からABCまでの面積を、OlYSIA BioReportソフトウェアバージョン3.2画像化ソフトウェアを使用して測定した。骨量減少測定は、無作為化かつ盲検プロトコルを使用して一人の実験者により2回決定された。
【0200】
ELISAによるサブクラス抗体の決定。マウス血清のサブクラス抗体応答を決定するために、0.1%(vol/vol)Tween20を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(0.01M NaHPO、1.5mM KHPO、0.15M NaCl)(pH7.0)(PBST)中のホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50の5μg/ml溶液を使用して、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を三連で実施して、平底ポリビニルマイクロタイタープレート(Dynatech Laboratories、バージニア州マクリーン)のウェルをコーティングした。コーティング溶液の除去後、2%(wt/vol)脱脂粉乳を含有するPBSTをウェルに添加して、室温で1時間コーティングされていないプラスチックをブロッキングした。ウェルをPBSTで4回洗浄した後、0.5%(wt/vol)脱脂粉乳を含有するPBST(SK−PBST)中のマウス血清の段階希釈物を各ウェルへ添加して、室温で16時間インキュベートした。ウェルをPBSTで6回洗浄した後、マウスIgM、IgA、IgG1、IgG2a、IgG2b又はIgG3(Sigma、オーストラリア、ニューサウスウェールズ)に対するヤギIgGの1/2000希釈物がSK−PBST中で添加されて、室温で2時間結合させた。プレートをPBST中で6回洗浄して、SK−PBST中のホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ヤギ免疫グロブリン(Sigma、オーストラリア、ニューサウスウェールズ)の1/5000希釈物を各ウェルへ添加して、室温で1時間インキュベートした。ウェルをPBSTで6回洗浄した後、結合抗体は、100μlのABTS基質[0.005%(vol/vol)過酸化水素を含有する80mM クエン酸中の0.9mM 2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズ−チアゾリン−6)スルホン酸、pH4.0]を各ウェルへ添加することにより検出した。415nmでの光学密度は、マイクロプレ−トリーダー(Bio-Radマイクロプレートリーダー、モデル450)を使用して測定した。
【0201】
SDS−PAGEゲル電気泳動及びウェスタンブロッティング。組換えタンパク質(10μg)を、XCell surelock ミニセル電気泳動システムを使用して分析した。組換えタンパク質は、20μlの還元サンプル緩衝液(10%[wt/vol]SDS、0.05%[wt/vol]ブロモフェノールブルー、25%[vol/vol]グリセロール及び0.05%[vol/vol]2−メルカプトエタノール)中で混合した。pHは、1.5M Tris−HClでpH8.0へ調節して、次に溶液を100℃で5分間加熱した。組換えタンパク質(10μg/レーン)をNovex 12%(wt/vol)Tris−グリシンプレキャストミニゲル上へ負荷して、30mA〜50mAの電流及び125Vの電位差を用いて、Novex電気泳動システム(Novex、カリフォルニア州、サンディエゴ)を使用して電気泳動を行った。タンパク質は、0.25%(w/v)クマジーブルーR250を使用して可視化した。
【0202】
Kgpプロテイナーゼ活性部位ペプチド(KAS−2)配列のエピトープ分析。Lys特異的プロテイナーゼ活性部位ペプチドKAS2に関する抗体結合部位(433〜468、配列番号28)は、Fmoc化学に関する標準的な固相ペプチド合成プロトコルを使用してマルチピンペプチド合成システム(Chiron Technologies、オーストラリア、メルボルン)上でN末端がビオチン化された重複した8残基ペプチド(1個の残基によるオフセット、7個の残基による重複)を合成することによって決定した。0.1M PBS(pH7.4)中のビオチン化されたペプチド(5μg/mL)は、ストレプトアビジンでコーティングされたプレートへ、4℃で一晩結合させた(Nunc、オーストラリア、ニューサウスウェールズ)。ウェルをPBSTで4回洗浄した後、プレートに結合されたペプチドのエピトープマッピングを、0.1%(v/v)Tween20を含有する0.1M PBS(pH7.4)中の1%(w/v)無脂粉乳(SK−PBST)中の1:1000希釈でのマウス血清を使用して、Chiron Technologiesによる指示書に従ってELISAによって実施した。ウェルをPBSTで6回洗浄した後、マウスIgGに対するヤギIgG(Sigma、オーストラリア、ニューサウスウェールズ)の1/2000希釈物をSK−PBST中に添加して、室温で2時間結合させた。プレートをPBST中で6回洗浄した、SK−PBST中のホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ヤギ免疫グロブリン(Sigma、オーストラリア、ニューサウスウェールズ)の1/5000希釈物を各ウェルに添加して、室温で1時間インキュベートした。ウェルをPBSTで6回洗浄した後、結合抗体は、100μlのABTS基質[0.005%(vol/vol)過酸化水素を含有する80mM クエン酸中の0.9mM 2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズ−チアゾリン−6)スルホン酸、pH4.0]を各ウェルへ添加することにより検出した。415nmでの光学密度は、マイクロプレ−トリーダー(Bio-Radマイクロプレートリーダー、モデル450)を使用して測定した。
【0203】
統計学的解析。骨量減少データは、一元配置分散分析(ANOVA)及びダネットT3検定(ウィンドウズ(登録商標)用SPSS、バージョン12)を使用して統計学的に解析した。IgA、IgM及びIgGのサブクラス抗体力価は、SPSSソフトウェア(ウィンドウズ(登録商標)用SPSS、バージョン12)を使用してスチューデントt検定を使用して統計学的に解析した。
【0204】
実施例2
組換えタンパク質(KsA1、KLA1、KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1)の特性化及び精製。KgPアドヘシンA1ドメイン断片及びキメラKgpプロテイナーゼ及びKgpアドヘシンA1ドメイン断片の、ポルフィロモナス・ジンジバリス感染を防御する能力を特性化するために、本発明者らは、組換えタンパク質:KsA1、KLA1、KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1を発現させて、精製した。組換えタンパク質(KsA1及びKLA1)及び組換えキメラタンパク質(KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1)は、ニッケルキレートアフィニティクロマトグラフィを使用して封入体(inclusion bodies)から精製して、精製したタンパク質をSDS−PAGEにより分析した(図1)。精製した組換えタンパク質はそれぞれ、KAS2−KLA1、KLA1、KsA1及びKAS1−KsA1に相当する40kDa、36kDa、31kDa及び32kDaの分子量を有する1つの主要タンパク質バンドからなるものであり、これらの分子量は、ProtParamを使用したHis−タグ組換えタンパク質の算出した分子質量に相当した。組換えタンパク質の免疫原性を特性化するために、KsA1、KLA1、KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1を使用して、マウスを免疫感作して、血清を使用して、KAS2ペプチドでコーティングされたプレート及びホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞でコーティングされたプレートをプロービングした(図2)。組換えキメラタンパク質KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1抗血清は、KAS2特異的抗血清(KAS2−ジフテリア毒素複合体)並びにホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞(図2B)と類似したレベルでKAS2ペプチドを認識することが見出された(図2A)。しかしながら、組換えタンパク質KLA1に対する抗血清のみが、死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞を認識した(図2B)。
【0205】
実施例3
マウス歯周炎モデルにおけるポルフィロモナス・ジンジバリス誘導性の歯槽骨量減少に対する組換えタンパク質(KsA1、KLA1、KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1)による免疫感作の影響。組換えタンパク質KsA1、KLA1、KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1、ホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリス株W50及びRgpA−Kgp複合体を使用して、Baker他(4)により報告されるものに基づく歯周骨量減少の改変マウスモデルを使用したポルフィロモナス・ジンジバリス誘導性の歯槽骨量減少に対して誘導される防御を決定及び比較した。マウスを、組換えタンパク質KsA1、KLA1、KAS1−KsA1若しくはKAS2−KLA1、RgpA−Kgp複合体又はホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリス株W50(FK−W50)細胞又はPBSアジュバントのみのいずれかで免疫感作して(0日目及び30日目)、続いて生存可能なポルフィロモナス・ジンジバリスW50で経口的に負荷した。組換え抗原、RgpA−Kgp複合体及びFK−W50細胞の全てによる免疫感作は、これらの動物がPBSで免疫感作した群に比較して有意に(p<0.001)低い骨量減少を示したため、ポルフィロモナス・ジンジバリス誘導性の歯槽骨量減少に対してBALB/cマウスを防御した(図3)。しかしながら、KAS2−KLA1で免疫感作したマウスは、KLA1(p<0.01)、KsA1(p<0.001)、RgpA−Kgp複合体(p<0.001)、FK−W50細胞(p<0.001)及び非負荷マウス(p<0.001)で免疫感作したマウスよりも有意に低い骨量減少を示した。KAS2−KLA1で免疫感作したマウスとKAS1−KsA1で免疫感作したマウスとの間では骨量減少に有意差はなかった。さらに、KAS1−KsA1で免疫感作したマウスは、非負荷マウス(p<0.01)及びRgpA−Kgp複合体で免疫感作したマウス(p<0.05)よりも有意に低い骨量減少を示したが、KsA1、KLA1及びFK−W50で免疫感作したマウスとは有意に異ならなかった。KsA1で免疫感作したマウスと、KLA1で免疫感作したマウスと、RgpA−Kgp複合体で免疫感作したマウスと、FK−W50で免疫感作したマウスとの間では骨量減少に有意差はなかった。
【0206】
実施例4
マウス歯周炎モデルにおける組換えタンパク質(KsA1、KLA1、KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1)による免疫感作により誘導される抗体サブクラス応答。生存可能なポルフィロモナス・ジンジバリス細胞による経口接種負荷の前及び後に、マウスを出血させて、遠心分離により血清を収集した。図4は、マウス歯周炎モデルにおける各免疫原(KsA1、KLA1、KAS1−KsA1若しくはKAS2−KLA1、又はホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリス株W50(FK−W50)細胞)に関するホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞に対する抗体サブクラス反応性を示す。防御免疫原は全て、FK−W50に対して高いIgG抗体力価を誘導した。さらに、各防御免疫原が誘導する主要な抗体サブクラスは、IgG1であり、FK−W50特異的抗体であるIgG2a、IgG2b及びIgG3の免疫反応性はごく弱いものであった(図4)。経口接種前(図4A)及び経口接種後(図4B)の両方の各免疫原により誘導される主要な抗体サブクラスはIgG1であった。
【0207】
実施例5
KAS2(433〜468)のエピトープマッピング。KAS2(433〜468)に関する重複しているビオチン化された8残基ペプチド(1個はオフセット、7個はオーバーラップ)を合成して、ストレプトアビジンでコーティングされたプレートをコーティングするのに使用した。次に、抗体結合エピトープを、KAS1−KsA1、KAS2−KLA1及びKAS2−ジフテリア毒素複合体で免疫感作したマウス由来の抗血清を使用して同定した(図5)。バックグラウンドを上回る光学密度(415nm)の2倍増加を、陽性抗体応答とみなした(閾値OD)。抗血清は、配列番号28に由来する以下のペプチド配列を認識した。すなわち、KAS1−KsA1は、ペプチド435〜442、436〜443、445〜452、446〜453及び447〜454を認識した(閾値OD=0.07、図5A)のに対して、KAS2−KLA1は、ペプチド435〜442、447〜454及び448〜455を認識した(閾値ID=0.07、図5A)。このことは、多数の最小エピトープ、すなわちペプチド436〜442(VSFANYT及びその変異体VGFANYT)、ペプチド447〜452(ETAWAD及びその変異体ETSWAD)及びペプチド448〜453(TAWADP及びその変異体TSWADP)の認識を示唆する。ペプチド436〜442エピトープを含むペプチドとしては、GVSFANYT、GVGFANYT、VSFANYTA及びVGFANYTAが挙げられる。ペプチド447〜452エピトープ及び/又はペプチド448〜453エピトープを含むペプチドとしては、SETAWAD、SETSWAD、ETAWADP、ETSWADP、TAWADPL及びTSWADPL、より詳細にはGSETAWAD、GSETSWAD、SETAWADP、SETSWADP、ETAWADPL、ETSWADPL、TAWADPLL及びTSWADPLLが挙げられる。
【0208】
実施例6
タンパク質への結合のためのKASペプチド及びRASペプチドの合成
ペプチドは、手動的に又はCEMマイクロ波ペプチド合成器を使用して合成した。Fmoc化学に関する標準的な固相ペプチド合成プロトコルを全体にわたって使用した。ペプチドは、Rinkリンカー由来のAM−sure樹脂(AAPPTEC、米国、ケンタッキー州)を使用してカルボキシアミド形態として構築した。カップリングは、4当量のFmocアミノ酸及び6当量のDIPEAを使用して、HBTU/HOBt活性化により遂行された。Fmoc基は、1M HOBt/DMF中の20%ピペリジンにより除去された。
【0209】
KASペプチド又はRASペプチドを保有する樹脂をDMF中に膨潤させて、続いてN末端のFmoc基を、2%v/vピペリジンを含有するDMF中の2%v/v DBUによって除去した。次に、N末端アミノ基を、5当量のSAMA−OPfp及び5当量のHOBtを使用してS−アセチルメルカプト酢酸(SAMA)基で誘導体化した。反応は、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBSA)試験によってモニタリングした。陰性TNBSA試験が戻った際に、樹脂を洗浄した(5×DMF、3×DCM及び3×ジエチルエーテル)。次に、樹脂を真空下で乾燥させた。樹脂支持体からのペプチドの切断は、TFA:フェノール:TIPS:EDT:水(92:2:2:2:2)切断カクテルを使用して、ペプチドのアルギニン含有量に応じて2.5時間又は4時間実施した。切断後、樹脂を濾過により除去して、濾液を窒素流下でおよそ1mLまで濃縮した。ペプチド生成物を冷エーテル中で沈殿させた後、それらを遠心分離して、3回洗浄した。ペプチド沈殿物を0.1%v/vTFAを含有する水5mL〜10mL中に溶解させて、不溶性残基を遠心分離により除去した。ペプチドは、RP−HPLCによって精製した。
【0210】
多数の様々な化学部分を、タンパク質への結合に関してペプチドを誘導体化するのに使用することができ、これらは、ハロゲン化物(ブロモ、クロロ及びヨード)、マレイミド、スクシンイミジル、ヒドラジニル、オキシム、チオールのような反応性基を導入して、次に、KgpA1のようなタンパク質へ、その自然システイン残基を通じて、誘導体化されたペプチドを結合させるのに使用されるか、又は次に化学的連結を、ペプチド−タンパク質複合体を形成するように進行させる相補的な反応性基で誘導化されている。
【0211】
KA1へのSAMA−ペプチドの結合。リン酸緩衝生理食塩水(0.1M リン酸ナトリウム、0.9%のNaCl、pH7.4)中に10mg/mLの組換えKA1又はRgpA−Kgp複合体の他のアドヘシンドメインを含有する溶液に、0.1mLのDMF中のm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)の1%w/v溶液を添加した。30分後、未反応のMBSを除去して、MBS修飾KA1を、結合緩衝液(0.1M リン酸ナトリウム、5mM EDTA、pH6.0)で平衡化したPD10カラム(Pharmacia、オーストラリア、ニュースサウスウェールズ州)を使用してゲル濾過により収集した。精製したSAMA−ペプチド(1.3μモル)を、6M グアニジンHClを含有する0.5M Tris、2mM EDTA(pH6.0)200μL中に溶解させて、800μLのMilliQ水で希釈して、MilliQ水中に溶解した25μLの2M NHOH(40当量)の添加によりin situで脱保護した。収集したMBS−KA1を、脱保護したSAMA−ペプチドと即座に反応させて、室温で1時間攪拌した。ペプチド−KA1複合体は、PBS(pH7.4)中で平衡化させたPD10カラムを使用してゲル濾過により未反応ペプチドと分離させて、凍結乾燥させた。反応は、エルマン試験を使用してモニタリングした。
【0212】
実施例7
抗体の調製。組換えタンパク質に対するポリクローナル抗血清は、タンパク質で皮下的に免疫感作することによってマウス中で産生される。マウスは、0日目に不完全フロイントアジュバント中の25μgのタンパク質で、30日目に不完全フロイントアジュバント中の25μgのタンパク質で免疫感作する。免疫感作は、標準的な手順を使用して実行する。タンパク質に対して高い力価を有するポリクローナル抗血清が得られる。望ましい場合は、組換えタンパク質に対して特異的に導かれるモノクローナル抗体は、標準的な手順を使用して得られる。
【0213】
実施例8
抗体の生成のための免疫感作。6週齢〜8週齢のBALB/cマウス又はCD1(スイス非近交系マウス)(1群当たりマウス10匹)を、不完全フロイントアジュバント(IFA)中に乳化させた50μgのKAS2−LA1キメラ及び抗原のいずれかで皮下的に免疫感作した(皮下、100μL)。30日後、マウスを抗原(皮下注射、IFA中に乳化)で追加免疫して、12日後に、マウスを死滅させて、心臓(cardiac)を出血させて、血清を収集した。
【0214】
ELISAによるサブクラス抗体の決定。マウス血清のサブクラス抗体応答を決定するために、0.1%(vol/vol)Tween 20を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(0.01M NaHPO、1.5mM KHPO、0.15M NaCl)(pH7.0)(PBST)中のKAS2−LA1キメラ又はホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50又はRgp−Kgp複合体の5μg/mlの溶液を使用して、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を三連で実施して、平底のポリビニルマイクロタイタープレート(Dynatech Laboratories、バージニア州、マクリーン)のウェルをコーティングした。コーティング溶液の除去後、2%(wt/vol)脱脂粉乳を含有するPBSTをウェルに添加して、コーティングされていないプラスチックを室温で1時間ブロックした。ウェルをPBSTで4回洗浄した後、0.5%(wt/vol)脱脂粉乳を含有するPBST(SK−PBST)中のマウス血清の段階希釈物を各ウェルへ添加して、室温で16時間インキュベートした。ウェルをPBSTで6回洗浄した後、マウスIgM、IgA、IgG1、IgG2a、IgG2b又はIgG3に対するヤギIgG(Sigma、オーストラリア、ニューサウスウェールズ州)の2000倍希釈物をSK−PBST中に添加して、室温で2時間結合させた。プレートをPBSTで6回洗浄して、SK−PBST中のホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ヤギ免疫グロブリン(Sigma、オーストラリア、ニューサウスウェールズ州)の5000倍希釈物を各ウェルへ添加して、室温で1時間インキュベートした。ウェルをPBSTで6回洗浄した後、結合抗体は、ABTS基質[0.005%(vol/vol)過酸化水素を含有する80mM クエン酸中の0.9mM 2.2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズ−チアゾリン−6)スルホン酸、pH4.0]を各ウェルへ添加することにより検出した。415nmでの光学密度は、マイクロプレートリーダー(Bio-Radのマイクロプレートリーダー、モデル450)を使用して測定した。
【0215】
非近交系(CD1、スイス)マウスにおける組換えタンパク質KAS2−KLA1による免疫感作より誘導される抗体サブクラス応答。CD1(スイス)マウスをKAS2−LA1キメラで免疫感作させて、出血させて、遠心分離により血清を収集した。図6は、KAS2−LA1キメラ、ホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞及びRgpA−Kgp複合体に対する抗体サブクラス反応性を示す。KAS2−LA1キメラは、KAS2−LA1キメラを認識する優勢IgG1抗体応答を有する強力なIgG抗体を誘導し、かつFK ポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞及びRgpA−Kgp複合体と強力に交差反応した(図6)。さらに、KAS2−LA1キメラは、弱い免疫反応性だけを有するIgG2a、IgG2b及びIgG3の抗原特異的な抗体を誘導した(図6)。
【0216】
実施例9
Kgp構造モデルの開発及び活性部位表面に接近可能な配列の同定
本発明者らの研究により、Kgpプロテイナーゼ活性部位ペプチドが非常に免疫原性であり、ポルフィロモナス・ジンジバリス誘導性の骨量減少に対する高レベルの防御を誘導することが示された。ワクチン候補物として更なるプロテイナーゼ活性部位ペプチドを同定する試みでは、Sybyl7.3内のOrchestrarプログラム一式を使用して、Kgpの触媒ドメインのモデルが開発された(図7)。モデルは、ポルフィロモナス・ジンジバリス由来のRgpBプロテイナーゼのPDB構造1crvに基づくものであり、タンパク質は、23.58%のペアワイズ同一性を有し、Zスコアは25.09である(高信頼度モデル)。Meta−PPispタンパク質相互作用サーバは、Kgpに関する2つのタンパク質間相互作用表面を予測する:基質結合表面(RgpBに見られるような)及びKgpに特有の第2の表面。RgpBモデルとKgpモデルとの間の主な差は、第2の相互作用表面を構成するループ、及び第2の相互作用表面内に収まるKgpではモデリングすることができない19残基ギャップ(Val526〜Phe545)に存在する。図7は、Kgpのプロテイナーゼ活性部位周辺の表面に接近可能な配列を示すより厚みのあるリボンを用いたKgpモデルを示し、表面に接近可能な配列は、Asp338〜Gln394、Leu421〜Ala423、Ala451を有するAla443〜Glu447、Asn510〜Trp513及びTyr580を有するIle570〜Gly577であることが見出された。モデル(図6)から、KAS2(A)とともに、3つの他の配列KAS4(Asp388〜Val395)(B)、KAS5(Asn510〜Asp516)(C)及びKAS6(Ile570〜Tyr580)(D)が優性であり、ワクチン標的であるのに十分な長さを有することが明らかである。したがって、配列中にこれらのペプチドそれぞれを有する組換えキメラタンパク質を生産し、KLA1のN末端上へ結合させて、マルチKAS−KLA1を生産することができ、これを使用して免疫応答を誘導して、したがってポルフィロモナス・ジンジバリス関連の疾患又は状態に対して防御することができる。
【0217】
実施例10
触媒部位に隣接する免疫原性領域を同定するためのArg−X−プロテイナーゼをモデリングするプロセス。
【0218】
Arg−Xプロテイナーゼの三次元構造は、Eichinger, A、Beisel HG、Jacob U、Huber R、Medrano FJ、Banbula A、Potempa J、Travis J、Bode W.「ジンジパインRの結晶構造:カスパーゼ様フォールドを有するArg特異的な細菌システインプロテイナーゼ(Crystal structure of gingipain R: an Arg-specific bacterial cysteine proteinase with caspase-like fold)」.EMBO J. 1999 Oct 15; 18(20):5453-62の方法に従って決定した。
【0219】
実施例11
以下は抗体を含有する歯磨きペースト配合物の一例である。
成分 %(w/w)
リン酸二カルシウム二水和物 50.0
グリセロール 20.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
ナトリウムラウロイルサルコニセート 0.5
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
デキストラナーゼ 0.01
特異的抗体を含有するヤギ血清 0.2
水 残り
【0220】
実施例12
以下は歯磨きペースト配合物の一例である。
成分 %(w/w)
リン酸二カルシウム二水和物 50.0
ソルビトール 10.0
グリセロール 10.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
ナトリウムラウロイルサルコニセート 0.5
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
デキストラナーゼ 0.01
特異的抗体を含有するウシ血清 0.2
水 残り
【0221】
実施例13
以下は歯磨きペースト配合物の一例である。
成分 %(w/w)
リン酸二カルシウム二水和物 50.0
ソルビトール 10.0
グリセロール 10.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
ラウロイルジエタノールアミド 1.0
スクロースモノラウレート 2.0
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
デキストラナーゼ 0.01
特異的抗体を含有するウシ血清 0.1
水 残り
【0222】
実施例14
以下は歯磨きペースト配合物の一例である。
成分 %(w/w)
ソルビトール 22.0
アイリッシュモス 1.0
水酸化ナトリウム(50%) 1.0
Gantrez 19.0
水(脱イオン水) 2.69
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.76
サッカリンナトリウム 0.3
ピロホスフェート 2.0
アルミナ水和物 48.0
香料オイル 0.95
マウスモノクローナル抗体 0.3
ラウリル硫酸ナトリウム 2.00
【0223】
実施例15
以下は液体歯磨きペースト配合物の一例である。
成分 %(w/w)
ポリアクリル酸ナトリウム 50.0
ソルビトール 10.0
グリセロール 20.0
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
エタノール 3.0
特異的抗体を含有するウマIg 0.2
リノール酸 0.05
水 残り
【0224】
実施例16
以下は洗口液配合物の一例である。
成分 %(w/w)
エタノール 20.0
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
ラウロイルジエタノールアミド 0.3
特異的抗体を含有するウサギIg 0.2
水 残り
【0225】
実施例17
以下は洗口液配合物の一例である。
成分 %(w/w)
Gantrez S−97 2.5
グリセリン 10.0
香料オイル 0.4
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.05
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
ラウロイルジエタノールアミド 0.2
マウスモノクローナル抗体 0.3
水 残り
【0226】
実施例18
以下はロゼンジ配合物の一例である。
成分 %(w/w)
糖 75〜80
トウモロコシシロップ 1〜20
香料オイル 1〜2
NaF 0.01〜0.05
マウスモノクローナル抗体 0.3
ステアリン酸Mg 1〜5
水 残り
【0227】
実施例19
以下は歯肉マッサージクリーム配合物の一例である。
成分 %(w/w)
ホワイトワセリン 8.0
プロピレングリコール 4.0
ステアリルアルコール 8.0
ポリエチレングリコール4000 25.0
ポリエチレングリコール400 37.0
モノステアリン酸スクロース 0.5
グルコン酸クロルヘキシジン 0.1
マウスモノクローナル抗体 0.3
水 残り
【0228】
実施例20
以下はチューイングガム配合物の一例である。
成分 %(w/w)
ガム基剤 30.0
炭酸カルシウム 2.0
結晶性ソルビトール 53.0
グリセリン 0.5
香料オイル 0.1
マウスモノクローナル抗体 0.3
水 残り
【0229】
実施例21
以下は医薬配合物の一例である。
成分 %(w/w)
ヒト化特異的モノクローナル抗体 10
無菌リン酸緩衡生理食塩水 90
【0230】
実施例22
以下は歯周ジェル配合物の一例である。
成分 %(w/w)
Pluronic F127 20.0
ステアリルアルコール 8.0
特異的抗体 3.0
コロイド二酸化ケイ素(Aerosil 200) 1.0
グルコン酸クロルヘキシジン 0.1
水 残り
【0231】
実施例23
以下は歯周ジェル配合物の一例である。
成分 %(w/w)
Pluronic F127 20.0
ステアリルアルコール 8.0
特異的抗体 3.0
コロイド二酸化ケイ素(Aerosil 200) 1.0
パモ酸オキサンテル 0.1
水 残り
【0232】
本発明は本明細書中で詳細に説明しているが、実施例は単に例示目的にすぎないと理解すべきである。分子生物学、歯の診断及び関連の関連分野の当業者にとって明らかな本発明の実施形態の他の変更形態が本発明の範囲内であることが意図される。
【0233】
本明細書で開示及び規定される本発明は、明細書若しくは図面で言及される又は明細書若しくは図面から明らかな2つ以上の個々の特徴の全ての代替的な組合せにまで及ぶことが理解される。これらの様々な組合せは全て本発明の様々な代替的な態様を構成する。
【0234】
【表11】

【0235】
本明細書で開示及び規定される本発明は、明細書若しくは図面で言及される又は明細書若しくは図面から明らかな2つ以上の個々の特徴の全ての代替的な組合せにまで及ぶことが理解される。これらの様々な組合せは全て本発明の様々な代替的な態様を構成する。
【配列表フリーテキスト】
【0236】
配列番号1:XはGにもSにもなり得る
XはSにもAにもなり得る
XはSにもLにもなり得る
XはLにもVにもなり得る
XはAにもTにもなり得る
XはTにもSにもなり得る
XはVにもLにもなり得る
XはDにもNにもなり得る
配列番号2:XはVにもAにもなり得る
配列番号27:XはGにもSにもなり得る
XはSにもAにもなり得る
XはSにもLにもなり得る
配列番号28:XはGにもSにもなり得る
XはSにもAにもなり得る
XはSにもLにもなり得る
XはLにもVにもなり得る
XはAにもTにもなり得る
XはTにもSにもなり得る
XはVにもLにもなり得る
XはDにもNにもなり得る
配列番号29:XはGにもSにもなり得る
XはSにもAにもなり得る
XはSにもLにもなり得る
XはLにもVにもなり得る
配列番号31:XはVにもAにもなり得る
配列番号32:XはVにもAにもなり得る
配列番号33:XはVにもAにもなり得る
配列番号64:XはSにもYにもなり得る
XはYにもSにもなり得る
XはPにもSにもなり得る
XはKにもQにもなり得る
XはIにもVにもなり得る
配列番号66:XはVにもIにもなり得る
配列番号68:XはNにもDにもなり得る
XはSにもYにもなり得る
XはSにもPにもなり得る
配列番号79:XはNPにもNPNPにもNPNPNPにもNPNPNPNPにもNPNPNPNPNPにもNPNPNPNPNPNPにもなり得る

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体において口腔病原体に対する抗体応答を形成する方法であって、
口腔病原体に対する抗体応答が形成される個体を供給する工程と、
前記個体を評価し、それにより該個体が炎症性の口腔組織を有するかどうかを決定する工程と、
前記評価により前記個体が炎症性の口腔組織を有しないことが明らかになる状況において、該個体を口腔病原体で免疫感作し、それにより該個体において口腔病原体に対する免疫応答を形成する工程と
を含む、個体において口腔病原体に対する抗体応答を形成する方法。
【請求項2】
炎症性の口腔組織を有する個体における口腔病原体に対する抗体応答の形成に関する免疫感作計画であって、抗炎症剤を該個体へ投与し、それにより口腔病原体に対する抗体応答の形成に関する該個体の免疫感作前に、該口腔組織の炎症を最低限に抑えるか、又は該口腔組織から炎症を除去する工程を含む、炎症性の口腔組織を有する個体における口腔病原体に対する抗体応答の形成に関する免疫感作レジメン。
【請求項3】
口腔病原体に対する抗体応答を形成するように炎症性の口腔組織を有する個体を、該病原体による免疫感作時に調整する方法であって、抗炎症剤を該個体へ投与し、それにより口腔病原体に対する免疫応答の形成に関する病原体による該個体の免疫感作前に、該口腔組織の炎症を最低限に抑えるか、又は該口腔組織から炎症を除去する工程を含む口腔病原体に対する抗体応答を形成するように炎症性の口腔組織を有する個体を、該病原体による免疫感作時に調整する方法。
【請求項4】
炎症性の口腔組織を有する個体において口腔病原体に対する抗体応答を形成する方法であって、
炎症性の口腔組織を有する個体を供給する工程と、
前記個体に対して処置を適用し、それにより前記口腔組織から炎症を除去する工程と、その後、
前記個体を口腔病原体で免疫感作し、それにより該個体において該病原体に対する抗体応答を形成する、免疫感作する工程と
を含む、方法。
【請求項5】
前記免疫感作工程又は免疫感作する工程が、口腔組織が炎症性ではない場合、又は炎症が亜臨床若しくは無症状である場合に提供されるものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法又は免疫感作レジメン。
【請求項6】
免疫感作時に形成される前記抗体応答は主にTh2応答であるが、該抗体応答は、Th1応答の検出可能な構成成分を含有し得る、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法又は免疫感作レジメン。
【請求項7】
前記炎症が慢性歯周炎である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法又は免疫感作レジメン。
【請求項8】
前記歯周炎が、ポルフィロモナス・ジンジバリス感染に関連する、請求項7に記載の方法又は免疫感作レジメン。
【請求項9】
前記免疫感作用の免疫原が、ポルフィロモナス・ジンジバリス細胞、それに由来する断片、代謝産物又は組換え産物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載する方法又は免疫感作レジメン。
【請求項10】
ポルフィロモナス・ジンジバリスに由来する前記組換え産物が、キメラペプチド又は融合タンパク質である、請求項9に記載の方法又は免疫感作レジメン。
【請求項11】
被験体に対してポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するための前記キメラタンパク質又は融合タンパク質が、第2のペプチドに直接的に又はリンカーを介して結合される第1のペプチドを含み、
(A)前記第1のペプチドは、
(i)配列番号1で示される配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)配列番号2で示される配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、
を含み、
(B)前記第2のペプチドは、
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼのアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼのアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagAアドヘシンドメインの配列と同じであるか、若しくはその配列と相同性である配列の一部若しくは全て
を含む、請求項10に記載の方法又は免疫感作レジメン。
【請求項12】
前記キメラペプチド又は融合タンパク質が、本明細書中に記載されるようなKAS1−KsA1又はKAS2−KLA1である、請求項11に記載の方法又は免疫感作レジメン。
【請求項13】
前記抗炎症剤が、抗炎症性化合物、抗生物質又は抗バイオフィルム剤の1つ又は複数を含む、請求項2又は3に記載の方法又は免疫感作レジメン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−520448(P2013−520448A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554168(P2012−554168)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/AU2011/000206
【国際公開番号】WO2011/103633
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(510007610)オーラル ヘルス オーストラリア ピーティーワイ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】