説明

感染を処置するためのゲルソリンの使用

【課題】感染および敗血症を処置するためのゲルソリンの使用、および感染の処置をモニタリングし、評価するためのゲルソリンの使用を提供すること。
【解決手段】本発明は、感染を処置する、および感染の処置をモニタリングするためのゲルソリンの使用に関する。本発明はまた、インターロイキンの発現を上方制御する方法および炎症誘発性サイトカインの発現を下方制御する方法を提供する。本発明は、ゲルソリンが感染を処置し、感染の毒性の発現に対して保護するという驚くべき知見に基づく。本発明者らは、感染性の因子に対する曝露後にゲルソリンを注射したマウスが、生理食塩水を与えたマウスより、予想外に、良好に生存したことを見出した。したがって、本発明は、1つの局面において感染を処置するための、被験体に対するゲルソリンの投与に関連する。本発明はまた、感染の生物学的影響を処置するためにゲルソリンを使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、感染および敗血症を処置するためのゲルソリンの使用、ならびに感染の処置をモニタリングし、そして評価するためのゲルソリンの使用に関する。本発明はまた、インターロイキンの発現を上方制御する方法および炎症誘発性サイトカインの発現を下方制御するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
診断および治療の顕著な進歩にもかかわらず、感染および敗血症は、世界中で、罹患率および死亡率の主要な原因であり続ける。積極的な管理と同じくして、重篤な感染を有する多くの患者は、合併症を発症し、そして一部の患者は死亡する。敗血症は、米国において毎年200,000人超の命を奪う(非特許文献1)。激しい炎症応答は、他の生化学的な異常に加えて、炎症誘発性サイトカインの著しく増加した血漿レベルを伴う敗血症の初期段階に付随して起こる(非特許文献2)。多くの協調した研究は、敗血症に対する薬学的処置の開発を期待して、特定の炎症性メディエーターの阻害における試みを行った。それにもかかわらず、活性化プロテインC(APC)は、重篤な敗血症の死亡率を減少させることが証明された唯一の薬物であり、これは、死亡を絶対的に6%減少させる(非特許文献3)。
感染および敗血症の、健康に対する負の影響は、新規の処置ならびに感染および敗血症の治療を評価する改良された検査およびアプローチを同定する強い動機を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Angus,D.C.およびWax,R.S.、「Crit Care Med」、2001年、第29巻、S109−16
【非特許文献2】Riedemann,N.C.、Guo,R.F.およびWard,P.A.、「Nat Med」、2003年、第29巻、p.517−24
【非特許文献3】Bernard,G.R.、Vincent,J.L.、Laterre,P.F.、LaRosa,S.P.、Dhainaut,J.F.、Lopez−Rodriguez,A.、Steingrub,J.S.、Garber,G.E.、Helterbrand,J.D.、Ely,E.W.およびFisher,C.J.,Jr.、「N Engl J Med」、2001年、第344巻、p.699−709
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、ゲルソリンが感染を処置し、そして感染の毒性の発現に対して保護するという驚くべき知見に基づく。本発明者らは、感染性の因子に対する曝露後にゲルソリンを注射したマウスが、生理食塩水を与えたマウスより、予想外に、良好に生存したことを見出した。したがって、本発明は、1つの局面において、感染を処置するための、被験体に対するゲルソリンの投与に関連する。本発明はまた、感染の生物学的影響を処置するためにゲルソリンを使用する方法に関する。
【0005】
細胞運動に関連する細胞内のアクチン結合タンパク質として最初に見出されたゲルソリン(GSN)(具体的には、細胞質のゲルソリン(cGSN))(Yin,H.L.およびStossel,T.P.、(1979)、Nature 281、583−6)はまた、豊富な分泌タンパク質である(abundant secretory protein)(Yin,H.L.、Kwiatkowski,D.J.、Mole,J.E.およびCole,F.S.、(1984)、J Biol Chem 259、5271−6)。ゲルソリンの輸送されるアイソフォーム(血漿ゲルソリン(pGSN)と称される)は、25個のさらなるアミノ酸を有し、そして単一遺伝子の選択的スプライシングによって生じる(Kwiatkowski,D.J.、Stossel,T.P.、Orkin,S.H.、Mole,J.E.、Colten,H.R.およびYin,H.L.、(1986)、Nature 323、455−8)。
【0006】
本発明の以下の局面および実施形態の各々において、pGSNの使用が、好ましい。
【0007】
本発明の1つの局面に従って、被験体において感染を処置する方法が、提供される。この方法は、感染を有するか、または感染を有するリスクがある被験体に、この感染を処置するのに有効な量でゲルソリンを投与する工程を包含する。この感染は、グラム陽性菌、抗酸菌、スピロヘータ、放線菌、ウイルス、真菌、寄生生物、Ureoplasma urealyticumを含むUreoplasma種、Mycoplasma pneumoniaを含むMycoplasma種、Rickettsia種、Chlamydia psittaci、Chlamydia trachomatisおよびChlamydia pneumoniaeを含むChlamydia種、ならびにPneumocystis cariniiを含むPneumocystis種によって引き起こされ得る。いくつかの実施形態において、この被験体は、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない。いくつかの実施形態において、このゲルソリンは、この感染に対するこの被験体の曝露後に投与される。特定の実施形態において、このゲルソリンは、この感染に対するこの被験体の曝露の、少なくとも約1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、9時間後、10時間後、11時間後、12時間後、13時間後、14時間後、15時間後、16時間後、17時間後、18時間後、19時間後、20時間後、21時間後、22時間後、23時間後、または24時間後に投与される。いくつかの実施形態において、このゲルソリンは、この感染に対するこの被験体の曝露の、少なくとも約1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、またはそれ以降に投与される。
【0008】
本発明のなお別の局面に従って、被験体においてグラム陰性菌の感染を処置する方法が、提供される。この方法は、この被験体に、有効量のゲルソリンを、グラム陰性菌の感染に対するこの被験体の曝露後に一度に投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、この被験体は、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない。いくつかの実施形態において、このゲルソリンは、このグラム陰性菌の感染に対するこの被験体の曝露の、少なくとも約1時間後に投与される。特定の実施形態において、このゲルソリンは、このグラム陰性菌の感染に対するこの被験体の曝露の、少なくとも約2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、9時間後、10時間後、11時間後、12時間後、13時間後、14時間後、15時間後、16時間後、17時間後、18時間後、19時間後、20時間後、21時間後、22時間後、23時間後、または24時間後に投与される。いくつかの実施形態において、このゲルソリンは、このグラム陰性菌の感染に対するこの被験体の曝露の、少なくとも約1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、またはそれ以降に投与される。いくつかの実施形態において、ゲルソリンは、このグラム陰性菌の感染に対するこの被験体の曝露前に投与される。
【0009】
本発明の別の局面に従って、被験体においてリポ多糖エンドトキシン(LPS)の影響を処置するか、または防止する方法が、提供される。この方法は、有効量のゲルソリンを、LPS曝露後に一度にこの被験体に投与して、この被験体をLPSの影響に対して保護する工程を包含する。いくつかの実施形態において、この被験体は、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない。いくつかの実施形態において、このゲルソリンは、LPSに対するこの被験体の曝露の、少なくとも約1時間後に投与される。特定の実施形態において、このゲルソリンは、LPSに対するこの被験体の曝露の、少なくとも約2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、9時間後、10時間後、11時間後、12時間後、13時間後、14時間後、15時間後、16時間後、17時間後、18時間後、19時間後、20時間後、21時間後、22時間後、23時間後、もしくは24時間後またはそれ以降に投与される。いくつかの実施形態において、このゲルソリンは、LPSに対するこの被験体の曝露の、少なくとも約1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、またはそれ以降に投与される。
【0010】
本発明の別の局面に従って別の局面に従って、LPSに曝された被験体においてグラム陰性菌の敗血症性ショックを処置するか、または防止する方法が、提供される。この方法は、有効量のゲルソリンを、LPS曝露後に一度にこの被験体に投与して、この被験体においてこのグラム陰性菌の敗血症性ショックを処置する工程を包含する。いくつかの実施形態において、この被験体は、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない。いくつかの実施形態において、このゲルソリンは、LPSに対するこの被験体の曝露の、少なくとも約1時間後に投与される。特定の実施形態において、このゲルソリンは、LPSに対するこの被験体の曝露の、少なくとも約2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、9時間後、10時間後、11時間後、12時間後、13時間後、14時間後、15時間後、16時間後、17時間後、18時間後、19時間後、20時間後、21時間後、22時間後、23時間後、または24時間後に投与される。いくつかの実施形態において、このゲルソリンは、LPSに対するこの被験体の曝露の、少なくとも約1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、またはそれ以降に投与される。
【0011】
本発明の別の局面に従って、被験体においてインターロイキン(IL)の発現を上方制御するための方法が、提供される。この方法は、この被験体においてILの発現を上方制御するのに有効な量で、ゲルソリンをこの被験体に投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、この被験体は、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない。ILの発現の上方制御は、このILの増加した発現、またはこのILの減少した分解もしくはこのILの増加した発現とこのILの減少した分解との組み合わせのいずれかに起因し得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、このILの発現は、コントロールに対して少なくとも約25%増加する。他の実施形態において、このILの発現は、コントロールに対して、少なくとも約50%または75%増加する。いくつかの実施形態において、このILの発現は、コントロールに対して少なくとも約2倍増加する。いくつかの実施形態において、このILの発現は、コントロールに対して、少なくとも約3倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、または1000倍増加する。一般に、コントロールにおけるILの発現レベルは、ゲルソリンは投与されなかったが、それ以外は処置された被験体と同じである被験体におけるILの発現のレベルである。ILのレベルを測定する方法は、当業者に公知である。
【0013】
本発明の別の局面に従って、インビトロでインターロイキン(IL)の発現を上方制御するための方法が、提供される。この方法は、ILを発現し得る細胞と、この細胞においてILの発現のレベルを上方制御するのに十分な量のゲルソリンとを接触させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、このILの発現は、コントロールに対して少なくとも約25%増加する。他の実施形態において、このILの発現は、コントロールに対して、少なくとも約50%または75%増加する。いくつかの実施形態において、このILの発現は、コントロールに対して少なくとも約2倍増加する。一般に、コントロールにおけるILの発現レベルは、ゲルソリンと接触させないが、それ以外はゲルソリンと接触させた細胞と同様に処理された細胞における発現のレベルである。いくつかの実施形態において、このILの発現は、コントロールに対して、少なくとも約3倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、または1000倍増加する。ILのレベルを測定する方法は、当業者に公知である。
【0014】
このILの発現が増加する時間周期は、少なくとも部分的に、細胞型、および使用される特定の培養容器によって変化する。一般に、この時間周期は、2時間〜3時間(短期の増加)から、約2日間〜3日間(中期の増加)または数週間(長期の増加)までの範囲である。当業者に公知である慣用的な手順が使用されて、ゲルソリンの増加する用量の関数またはこの細胞とゲルソリンとのインキュベーション時間の関数として、ILの発現のレベルを決定し得る。1つの好ましいILは、IL−10である。
【0015】
本発明の別の局面に従って、被験体において炎症誘発性サイトカインの発現を下方制御するための方法が、提供される。この方法は、この被験体において炎症誘発性サイトカインの発現を下方制御するのに有効な量で、この被験体にゲルソリンを投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、この被験体は、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない。炎症誘発性サイトカインの発現の下方制御は、このサイトカインの減少した発現、またはこのサイトカインの増加した分解もしくはこのサイトカインの減少した発現とこのサイトカインの増加した分解との組み合わせに起因し得る。一般に、この炎症誘発性サイトカインの発現は、コントロールに対して少なくとも約10%減少する。いくつかの実施形態において、この炎症誘発性サイトカインの発現は、コントロールに対して、少なくとも約20%,30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%減少する。いくつかの実施形態において、この炎症誘発性サイトカインの発現は、コントロールに対して100%減少する。一般に、コントロールにおける炎症誘発性サイトカインの発現レベルは、ゲルソリンは投与されなかったが、それ以外は処置された被験体と同じである被験体における炎症誘発性サイトカインの発現のレベルである。炎症誘発性サイトカインのレベルを測定する方法は、当業者に公知である。1つの好ましい炎症誘発性サイトカインは、IL−1βである。別の好ましい炎症誘発性サイトカインは、IFN−αである。
【0016】
本発明の1つの局面に従って、インビトロで炎症誘発性サイトカインの発現を下方制御するための方法が、提供される。この方法は、炎症誘発性サイトカインを発現し得る細胞と、細胞において炎症誘発性サイトカインの発現のレベルを下方制御するのに十分な量のゲルソリンとを接触させる工程を包含する。一般に、この炎症誘発性サイトカインの発現は、コントロールに対して少なくとも約10%減少する。一般に、コントロールにおける炎症誘発性サイトカインの発現レベルは、ゲルソリンと接触させないが、それ以外はゲルソリンと接触させた細胞と同様に処理された細胞における発現のレベルである。いくつかの実施形態において、この炎症誘発性サイトカインの発現は、コントロールに対して、少なくとも約20%,30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%減少する。いくつかの実施形態において、この炎症誘発性サイトカイン発現は、コントロールに対して100%減少する。炎症誘発性サイトカインのレベルを測定する方法は、当業者に公知である。
【0017】
この炎症誘発性サイトカインの発現が減少する時間周期は、少なくとも部分的に、細胞型、および使用される特定の培養容器によって変化する。一般に、この時間周期は、2時間〜3時間(短期の減少)から、約2日間〜3日間(中期の減少)または数週間(長期の減少)までの範囲である。当業者に公知である慣用的な手順が使用されて、ゲルソリンの増加する用量の関数またはこの細胞とゲルソリンとのインキュベーション時間の関数として、炎症誘発性サイトカインの発現のレベルを決定し得る。
【0018】
本発明の別の局面に従って、被験体を処置して、感染のリスクを減少させるための方法が、提供される。この方法は、被験体を、この被験体が正常より低いゲルソリンのレベルを有すると分かっていることに基づいて選択する工程、およびこの被験体の感染を発症するリスクを低下させるのに有効な量で、感染のリスクを減少させるための因子をこの被験体に投与する工程を包含する。この因子は、ゲルソリンおよび/または抗感染因子であり得る。いくつかの実施形態において、この被験体は、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない。
【0019】
「正常より低いゲルソリンのレベル」は、被験体の所与の集団について測定された平均レベルより少なくとも10%低いゲルソリンレベルである。この平均ゲルソリンレベルは、被験体の特定の集団に依存する。例えば、見かけ上健康な集団は、感染または他の状態の前である被験体の集団とは異なるゲルソリンの「正常な」範囲を有する。いくつかの実施形態において、このゲルソリンレベルは、被験体の所与の集団について測定された平均レベルより少なくとも10%低い。他の実施形態において、このゲルソリンレベルは、被験体の所与の集団について測定された平均レベルより少なくとも20%低い。さらに他の実施形態において、このゲルソリンレベルは、被験体の所与の集団について測定された平均レベルより少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%低い。1つの好ましい実施形態において、このゲルソリンレベルは、血漿1Lあたり約2.4μM(マイクロモル/リットル)以下である。
【0020】
いくつかの実施形態において、この被験体は、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない。この因子が抗感染因子である場合、抗感染因子による処置を必要とする徴候を有さない被験体は、感染の徴候または症状を有さない被験体である。感染の徴候および症状は、当業者に周知である。ゲルソリンは、アクチンに関連する障害(例えば、成人呼吸促進症候群(ARDS)、劇症型の肝臓壊死、急性腎不全、筋肉の損傷、BUNおよび/またはクレアチニンの高いレベルによって特徴付けられる障害)の処置のために望ましい。アクチンに関連する障害は、当業者に公知である。
【0021】
他の実施形態において、この被験体は、見かけ上健康である。本明細書中で使用される場合、「見かけ上健康な被験体」は、疾患の徴候および/または症状を有さない被験体である。
【0022】
この感染は、細菌、ウイルス、真菌、または寄生生物のような多くの生物体のうちの1種以上によって引き起こされ得る。
【0023】
抗感染因子は、抗細菌因子、抗ウイルス因子、および抗真菌因子、または抗寄生生物因子であり得る。
【0024】
抗細菌因子、抗ウイルス因子、抗真菌因子、および抗寄生生物因子の例は、以下に記載される。
【0025】
このゲルソリンは、経口投与、舌下投与、口腔投与、鼻腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、鞘内投与、腹腔内投与、皮下投与、皮内投与、局所投与、直腸投与、経膣投与、滑液包内投与または硝子体内投与され得る。
【0026】
本発明の別の局面に従って、ゲルソリン以外の治療因子を用いて感染を処置するか、または減少させるための治療の有効性を評価する方法が、提供される。この方法は、感染を処置するか、または防止する治療を受ける被験体において、ゲルソリンのレベルを得る工程を包含する。ゲルソリンのこのレベルは、コントロール(例えば、見かけ上健康な集団)のゲルソリンのレベルに対応する所定の値と比較される。ゲルソリンのこのレベルが、この所定のレベルを下回るか否かの決定は、この治療が有効であるか否かを示す。いくつかの実施形態において、このゲルソリンのレベルを得る工程は、ヒト被験体のゲルソリンのレベルを長期間にわたってモニタリングするために繰り返される。
【0027】
本発明のなお別の局面に従って、被験体において治療の経過を判定するための方法が、提供される。この方法は、感染を処置する治療を受ける被験体において、ゲルソリンのレベルを得る工程を包含する。ゲルソリンのこのレベルは、コントロール(例えば、見かけ上健康な集団)のゲルソリンのレベルに対応する所定の値と比較される。この得られたゲルソリンのレベルがこの所定の値を上回るのか、またはこの値を下回るのかが決定され、そしてこの治療の経過が、このような決定に基づいて判定される。いくつかの実施形態において、ゲルソリンのレベルを得る工程は、この被験体のゲルソリンのレベルを長期間にわたってモニタリングするために繰り返される。
【0028】
本発明のなお別の局面に従って、減少したレベルのゲルソリンによって被験体を処置するための方法が、提供される。この方法は、感染を処置するための第1の治療によってこの被験体を処置する工程を包含する。この被験体におけるゲルソリンのレベルが、得られる。ゲルソリンのこのレベルは、コントロール(例えば、見かけ上健康な集団)のゲルソリンのレベルに対応する所定の値と比較される。ゲルソリンのこの所定レベルが達成されない場合、この被験体は、ゲルソリンのこの所定のレベルが達成されるまで、感染を処置するための第2の治療によって処置され、そしてゲルソリンのこのレベルが測定され、そしてゲルソリンのこの所定のレベルと比較される。
【0029】
本発明のさらになお別の局面に従って、さらなる感染を発症する被験体のリスクプロフィールを特徴付けるための方法が、提供される。この方法は、この被験体においてゲルソリンのレベルを得る工程、およびこの指標のレベルと所定の値とを比較する工程を包含する。この被験体の感染を発症するリスクプロフィールは、この所定の値と比較したこのゲルソリンのレベルに基づいて特徴付けられる。この所定のレベルを下回るゲルソリンのレベルは、この被験体が感染を発症する高いリスクにあることを示し、そしてこの所定のレベルを上回るゲルソリンのレベルは、この被験体が感染を発症する高いリスクにないこと示す。
【0030】
いくつかの実施形態において、この所定の値は、血漿1Lあたり約2.4μM以下である。
【0031】
いくつかの実施形態において、この被験体は、見かけ上健康な被験体である。
【0032】
本発明の各々の限定は、本発明の種々の実施形態を包含し得る。したがって、いずれか1つの要素または要素の組み合わせに関する本発明の各々の制限が本発明の各局面に含まれ得ることは、予想される。本発明は、他の実施形態が可能であり、そして種々の様式で実施され得るか、または実行され得る。また、本明細書中で使用される表現および用語法は、説明を目的とするものであり、限定と見なされるべきではない。「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、およびそれらのバリエーションの本明細書中での使用は、本明細書中で以下に記載される品目およびその等価物、ならびにさらなる品目を包含することを意味する。
【0033】
本発明のこれらの局面および他の局面は、発明の詳細な説明と組み合わせて、以下でより詳細に記載される。
【0034】
本願において特定される全ての文書は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
感染を有するかまたは感染を発症するリスクがある被験体を処置するための方法であって、
このような処置を必要とする被験体に、該感染を処置するのに有効な量でゲルソリンを投与する工程であって、該感染が、グラム陽性菌、抗酸菌、グラム陽性菌、抗酸菌、スピロヘータ、放線菌、ウイルス、真菌、寄生生物、Ureoplasma種、Mycoplasma種、Chlamydia種、およびPneumocystis種によって引き起こされる、工程
を包含する、方法。
(項目2)
前記被験体が、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記ゲルソリンが、血漿ゲルソリン(pGSN)である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記グラム陽性菌が、Pasteurella種、Staphylococcus種、Streptococcus種、Bacillus anthracis、Corynebacterium種、Diphtheroids種、Listeria種、Erysipelothrix種、およびClostridium種からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記抗酸菌が、Mycobaterium種である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記スピロヘータが、Treponema種、Borrelia種、およびLeptospira種からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記ウイルスが、レトロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、サイトメガロウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、コサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス、カリシウイルス、トガウイルス、馬脳炎ウイルス、風疹ウイルス、フラビウイルス、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス、フィロウイルス、エボラウイルス、パラミクソウイルス、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス、オルトミクソウイルス、インフルエンザウイルス、ハンターンウイルス、ブニヤウイルス、フレボウイルス、ナイロウイルス、アレナウイルス、出血熱ウイルス、レオウイルス、オルビウイルス、ロタウイルス、ビルナウイルス、ヘパドナウイルス、B型肝炎ウイルス、パルボウイルス、パポバウイルス、パピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、イリドウイルス、アフリカ豚コレラウイルス、D型肝炎ウイルス、非A非B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ノーウォークウイルス、アストロウイルス、および分類されていないウイルスからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記真菌が、Cryptococcus種、Histoplasma種、Coccidioides種、Paracoccidioides種、Blastomyces種、Chlamydia種、Candida種、Sporothrix種、Aspergillus種、およびムコール症の真菌、からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記寄生生物が、Plasmodium種、Toxoplasma種、Babesia種、Leishmania種、およびTrypanosoma種からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記ゲルソリンが、経口投与、舌下投与、口腔投与、鼻腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、鞘内投与、腹腔内投与、皮下投与、皮内投与、局所投与、直腸投与、経膣投与、滑液包内投与または硝子体内投与される、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記ゲルソリンが、前記感染に対する前記被験体の曝露後に投与される、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記ゲルソリンが、前記感染に対する前記被験体の曝露前に投与される、項目1に記載の方法。
(項目13)
グラム陰性菌の感染を有するか、またはグラム陰性菌の感染を発症するリスクがある被験体を処置するための方法であって、
このような処置を必要とする被験体に、該グラム陰性菌の感染を処置するのに有効な量のゲルソリンを、該感染に対する曝露後に一度に投与する工程
を包含する、方法。
(項目14)
前記グラム陰性菌の感染が、Neisseria種、Branhamella種、Escherichia種、Enterobacter種、Proteus種、Pseudomonas種、Klebsiella種、Salmonella種、Shigella種、Serratia種、Acinetobacter種、Haemophilus種、Brucella種、Yersinia種、Francisella種、Pasturella種、Vibrio cholera種、Flavobacterium種、Pseudomonas種、Campylobacter種、Bacteroides種、Fusobacterium種、Calymmatobacterium種、Streptobacillus種、およびLegionella種によって引き起こされる、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記被験体が、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない、項目13に記載の方法。
(項目16)
前記ゲルソリンが、血漿ゲルソリン(pGSN)である、項目13に記載の方法。
(項目17)
前記ゲルソリンが、経口投与、舌下投与、口腔投与、鼻腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、鞘内投与、腹腔内投与、皮下投与、皮内投与、局所投与、直腸投与、経膣投与、滑液包内投与または硝子体内投与される、項目13に記載の方法。
(項目18)
被験体においてリポ多糖エンドトキシン(LPS)の影響を処置するか、または防止する方法であって、
有効量のゲルソリンを、LPS曝露後に一度に該被験体に投与して、該被験体をLPSの影響に対して保護する工程
を包含する、方法。
(項目19)
前記被験体が、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない、項目18に記載の方法。
(項目20)
リポ多糖エンドトキシン(LPS)に曝された被験体においてグラム陰性菌の敗血症性ショックを処置するか、または防止する方法であって、
該被験体において該グラム陰性菌の敗血症性ショックを処置するのに有効な量で、ゲルソリンを該被験体に投与する工程
を包含する、方法。
(項目21)
前記被験体が、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記ゲルソリンが、血漿ゲルソリン(pGSN)である、項目20に記載の方法。
(項目23)
被験体においてインターロイキン(IL)の発現を上方制御するための方法であって、
インターロイキン(IL)の発現を上方制御するのに有効な量で、ゲルソリンを該被験体に投与する工程
を包含する、方法。
(項目24)
前記ILがIL−10である、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記被験体が、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記ゲルソリンが、血漿ゲルソリン(pGSN)である、項目23に記載の方法。
(項目27)
インビトロでインターロイキン(IL)の発現を上方制御するための方法であって、
ILを発現し得る細胞と、該細胞中でインターロイキン(IL)の発現を上方制御するのに有効な量のゲルソリンとを接触させる工程
を包含する、方法。
(項目28)
前記ILが、IL−10である、項目27に記載の方法。
(項目29)
被験体が、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない、項目27に記載の方法。
(項目30)
前記ゲルソリンが、血漿ゲルソリン(pGSN)である、項目27に記載の方法。
(項目31)
被験体において炎症誘発性サイトカインの発現を下方制御するための方法であって、
該被験体において炎症誘発性サイトカインの発現を下方制御するのに有効な量で、該被験体にゲルソリンを投与する工程
を包含する、方法。
(項目32)
前記被験体が、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記ゲルソリンが、血漿ゲルソリン(pGSN)である、項目31に記載の方法。
(項目34)
前記炎症誘発性サイトカインが、IL−1βである、項目31に記載の方法。
(項目35)
前記炎症誘発性サイトカインが、IFN−αである、項目31に記載の方法。
(項目36)
インビトロで炎症誘発性サイトカインの発現を下方制御するための方法であって、以下
炎症誘発性サイトカインを発現し得る細胞と、該細胞において炎症誘発性サイトカインの発現を下方制御するのに有効な量のゲルソリンとを接触させる工程、
を包含する、方法。
(項目37)
前記炎症誘発性サイトカインが、IL−1βである、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記炎症誘発性サイトカインが、IFN−αである、項目36に記載の方法。
(項目39)
被験体が、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない、項目36に記載の方法。
(項目40)
前記ゲルソリンが、血漿ゲルソリン(pGSN)である、項目36に記載の方法。
(項目41)
被験体を処置して、感染のリスクを減少させるための方法であって、
被験体を、該被験体が正常より低いゲルソリンのレベルを有すると分かっていることに基づいて選択する工程;および
該被験体の感染を発症するリスクを減少させるのに有効な量で、該被験体および/または抗感染因子にゲルソリンを施す工程
を包含する、方法。
(項目42)
前記被験体が、他にゲルソリンによる処置を必要とする徴候を有さない、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記ゲルソリンが、血漿ゲルソリン(pGSN)である、項目41に記載の方法。
(項目44)
前記被験体が、見かけ上健康である、項目41に記載の方法。
(項目45)
前記感染が、細菌、ウイルス、真菌、または寄生生物によって引き起こされる、項目41に記載の方法。
(項目46)
前記抗感染因子が、抗細菌因子、抗ウイルス因子、抗真菌因子、または抗寄生生物因子である、項目41に記載の方法。
(項目47)
被験体において感染のリスクを処置するか、または減少させるための治療の有効性を評価するための方法であって、
(i)感染のリスクを処置するか、または減少させる因子を用いる治療を受ける被験体において、ゲルソリンのレベルを得る工程;
(ii)工程(i)において得られたゲルソリンの該レベルと、見かけ上健康なコントロール集団におけるゲルソリンのレベルに対応する所定の値とを比較する工程;および
(iii)工程(i)におけるゲルソリンの該レベルが所定のレベルを上回るか否かを決定する工程であって、該決定は、該治療が有効であるか否かを示す、工程
を包含する、方法。
(項目48)
工程(i)および工程(ii)が、前記被験体のゲルソリンのレベルを長期間にわたってモニタリングするために繰り返される、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記所定の値が、血漿1Lあたり約2.4μM以下である、項目47に記載の方法。
(項目50)
前記感染が、細菌、ウイルス、真菌、または寄生生物によって引き起こされる、項目47に記載の方法。
(項目51)
前記抗感染因子が、抗細菌因子、抗ウイルス因子、抗真菌因子、または抗寄生生物因子である、項目47に記載の方法。
(項目52)
被験体において治療の経過を判定するための方法であって、
(i)感染のリスクを処置するか、または減少させる因子を用いる治療を受ける被験体において、ゲルソリンのレベルを得る工程;
(ii)工程(i)において得られたゲルソリンの該レベルと、見かけ上健康なコントロール集団におけるゲルソリンのレベルに対応する所定の値とを比較する工程;
(iii)工程(i)において得られたゲルソリンの該レベルが該所定のレベルを下回るか否かを決定する工程;および
(iv)このような決定に基づいて該治療の経過を判定する工程
を包含する、方法。
(項目53)
工程(i)が、前記被験体のゲルソリンのレベルを長期間にわたってモニタリングするために繰り返される、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記所定の値が、血漿1Lあたり約2.4μM以下である、項目52に記載の方法。
(項目55)
減少したレベルのゲルソリンによって被験体を処置するための方法であって、
(i)感染のリスクを処置するか、または減少させるための第1の治療によって該被験体を処置する工程;
(ii)該被験体においてゲルソリンのレベルを得る工程;
(iii)工程(ii)において得られたゲルソリンの該レベルと、見かけ上健康なコントロール集団におけるゲルソリンの所定のレベルに対応する所定の値とを比較する工程、
を包含し、そしてゲルソリンの該所定のレベルが、達成されない場合、
(iv)感染のリスクを処置するか、または減少させるための第2の治療によって該被験体を処置し、そしてゲルソリンの該所定のレベルが達成されるまで工程(ii)および工程(iii)を繰り返す工程
を包含する、方法。
(項目56)
前記所定の値が、血漿1Lあたり約2.4μM以上である、項目55に記載の方法。
(項目57)
さらなる感染を発症する被験体のリスクプロフィールを特徴付けるための方法であって、
該被験体においてゲルソリンのレベルを得る工程;
ゲルソリンの該レベルと所定の値とを比較する工程;および
該所定の値と比較したゲルソリンの該レベルに基づいて、感染を発症する該被験体のリスクプロフィールを特徴付ける工程であって、ここで該所定のレベルを下回るゲルソリンのレベルは、該被験体が感染を発症する高いリスクにあることを示し、そして該所定のレベルを上回るゲルソリンのレベルは、該被験体が感染を発症する高いリスクにないこと示す、工程
を包含する、方法。
(項目58)
前記所定の値が、血漿1Lあたり約2.4μM以下である、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記被験体が、見かけ上健康な被験体である、項目57に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図面は、単なる例示であり、本明細書中に開示される発明の実施を可能にするために必要とされない。
【図1】図1は、敗血症のマウスにおける血漿ゲルソリンレベルのグラフである。(A)マウスは、非致死的なLPSの増加する用量を腹腔内(IP)に注射され、次いでマウスは、24時間後に出血した。pGSNレベルは、LPSの用量と逆に相関した(P<0.05、Spearman Correlation)。反対に、アルブミンは、変化しなかった。(B)マウスは、CLP(盲腸結紮穿刺)に供されるか、外科処置に供されず、そして血漿は、24時間後に集められた。左のグラフは、CLPに供されたマウスのpGSNレベルがコントロールのマウスより有意に低下した(P<0.001)ことを示し、一方で右のグラフは、血漿アルブミンレベルが、CLPマウスにおいて、実際に、より高くなった(P=0.02)ことを示す。
【図2】図2は、敗血症のマウスにおける生存率のプロットである。(A)致死的なLPSをチャレンジしたマウスにおいて、pGSNによって処置されたマウスは、BSA処置マウス(P<0.001)または生理食塩水処置マウス(P<0.001)と比較して、有意に良好な生存率を有した。(B)CLPに供されたマウスは、pGSNに対して同様の好ましい応答を有し、そして非常に良好な生存率を有した(P=0.001)。
【図3】図3は、外因性pGSNを用いてか、または外因性pGSNを用いずに処置した、致死的な内毒血症のマウスにおけるpGSNレベルのグラフである。白抜き(open)のバーは、生理食塩水による処置を受容したマウスを示し、そして黒塗り(solid)のバーは、外因性pGSNによる処置を受容したマウスを示す。外因性pGSNレベルは、致死的なLPSチャレンジの6時間以内に、正常の50%近くまで降下し、そしてこれは少なくとも24時間持続した(P<0.015、チャレンジしなかったマウスと比較される)。LPSのチャレンジと同時の外因性pGSNの投与は、pGSNレベルを首尾よく上昇させた(**P<0.021、同じ群内でpGSN処置マウスおよびpGSN未処置マウスを比較する)。
【図4】図4は、LPSの6時間後および24時間後に、pGSNを用いてか、またはpGSNを用いずに処置された内毒血症のマウスのサイトカインプロフィールのグラフである(y軸は対数目盛り)。(A)サイトカインプロフィールは、LPSチャレンジの6時間後においてpGSN処置マウス(黒塗りのバー)とpGSN未処置マウス(白抜きのバー)との間で違わなかった。(B)しかし、LPSの24時間後、生理食塩水処置マウスは、pGSN処置マウスと比較して10倍と同程度である、GM−CSF、IFN−γ、およびIL−1βの有意に高いレベルを有した(全てについてP<0.03)。対照的に、IL−10レベルは、pGSN処置マウスにおいて有意に高かった(P<0.03)。
【図5】図5は、E.coliのLPSをチャレンジしたC3H/HeJマウスおよびE.coliのLPSをチャレンジしなかったC3H/HeJマウスにおける、血漿ゲルソリンレベルのグラフである。LPSは、TLR4変異体のpGSNレベルに対して影響を有さなかった。C57BL/6マウスに対して致死的であったLPSを注射されたC3H/HeJマウスは、疾病の任意の徴候を示さず、そして変化のないpGSNレベルを有した。
【図6】図6は、pGSNについて染色した、LPSをチャレンジしたか、またはLPSをチャレンジしなかったマウスの組織抽出物についてのウエスタンブロット分析である。このブロットは、正常なマウスおよび内毒血症のマウスの両方において、肺が、骨格筋、心臓、腎臓、および肝臓と比較して最も高いpGSNの濃度を有することを示す。
【図7】図7は、pGSN対BSAのLPSに対する結合を比較するプロットである。pGSNおよびLPSとの結合性の蛍光ベースの研究は、ウェル1つあたり250μgのpGSNにて平衡に達する、蛍光LPSの伝統的な結合曲線を示す。コントロールとして機能するBSAは、LPSに対する最小限の親和性を示すタンパク質であった。
【図8】図8は、LPSによって処理されなかったTHP−1細胞(非刺激)、LPSのみによって処理されたTHP−1細胞、pGSNのみによって処理されたTHP−1細胞、LPSおよびpGSNによって処理されたTHP−1細胞、LPSおよびBSAによって処理されたTHP−1細胞、ならびにBSAのみによって処理されたTHP−1細胞から得た培地のTNF−αレベルのグラフである。pGSNまたはBSAによって処理されたLPS刺激THP−1細胞は、TNF−αの同様のレベルを有した(P>0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(発明の詳細な説明)
本発明は、部分的に、ゲルソリンの投与が感染から被験体を保護するという知見に基づく。したがって、本発明は、いくつかの局面において、被験体における感染の処置のために、その被験体にゲルソリンを投与する工程を包含する。本発明者らは、リポ多糖エンドトキシン(LPS)(グラム陰性菌の感染の発現の多くを担うことが公知である、グラム陰性菌の細胞壁成分)の毒性効果と拮抗することを見出した。
【0037】
本発明者らはまた、感染に対する被験体の曝露後の、その被験体へのゲルソリンの投与が、感染を処置し得、そしてその被験体において感染の毒性効果を減少させ得るか、または防止し得ることを見出した。好ましくは、この感染の処置は、この感染の徴候および症状の処置に関連する。
【0038】
用語「処置」または「処置する」は、感染の予防、寛解、防止または治癒を含む。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「被験体」は、処置を必要とし得る任意の哺乳動物を意味する。被験体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヒト、非ヒト霊長類、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、げっ歯類(例えば、マウス、ハムスター、およびラット)。好ましい被験体は、ヒト被験体である。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「ゲルソリン」は、野生型ゲルソリン(GenBank登録番号X04412)、ゲルソリンのアイソフォーム、ゲルソリンのアナログ、ゲルソリンの改変体、ゲルソリンのフラグメントまたはゲルソリンの機能的誘導体を包含する。ゲルソリンは、ネイティブなゲルソリン、および合成ゲルソリンおよび組換えゲルソリンおよびゲルソリンアナログを包含する。ゲルソリン(具体的には、cGSN)は、豊富な分泌タンパク質(Yin,H.L.、Kwiatkowski,D.J.、Mole,J.E.およびCole,F.S.、(1984)、J Biol Chem 259、5271−6)である。ゲルソリンの輸送されるアイソフォーム(pGSN)は、25個のさらなるアミノ酸を有し、そして単一遺伝子の選択的スプライシングから生じる(Kwiatkowski,D.J.、Stossel,T.P.、Orkin,S.H.、Mole,J.E.、Colten,H.R.およびYin,H.L.、(1986)、Nature 323、455−8)。本発明の異なる局面および実施形態において、pGSNの使用が、好ましい。
【0041】
「ゲルソリンアナログ」とは、ネイティブなゲルソリンまたはそのフラグメントのいずれかと、機能において実質的に同様である化合物をいう。ゲルソリンアナログは、ゲルソリンの配列と実質的に同様である生物学的に活性なアミノ酸配列を含み、そしてゲルソリンの生物活性と実質的に同様な生物活性を保有する、置換した配列、欠失した配列、伸長した配列、交換された配列、または他の改変された配列を有し得る。例えば、ゲルソリンのアナログは、ゲルソリンと同じアミノ酸配列を有さないが、ゲルソリンの生物活性を保持するために十分な、ゲルソリンと相同なアミノ酸配列を有するアナログである。生物活性は、例えば、ゲルソリンアナログの性質を決定すること、および/または感染の影響を減少させるか、または防止するゲルソリンアナログの能力を決定することによって決定され得る。ゲルソリンの生物活性についてのアッセイの1つの例は、アクチン核形成を刺激するゲルソリン能力である。ゲルソリンの生物活性についてのアッセイは、実施例に記載され、そして当業者に公知である。
【0042】
「フラグメント」は、ゲルソリンの生物活性を維持するゲルソリンのセグメントを提供するゲルソリン分子の任意の部分を含むことが意味され;この用語は、任意の供給源(例えば、天然に存在するペプチド配列、合成のペプチド配列または化学的に合成されたペプチド配列、および遺伝子的に操作されたペプチド配列に由来するような)から作製されるゲルソリンフラグメントを含むことが意味される。
【0043】
ゲルソリンの「改変体」は、ネイティブなゲルソリン、またはそのフラグメントのいずれかと、構造および生物活性において実質的に同様である化合物をいうことが意味される。
【0044】
ゲルソリンの「機能的誘導体」は、ゲルソリンの生物活性と実質的に同様である生物活性を保有する誘導体である。「実質的に同様」は、量的に異なるが、質的に同じである活性を意味する。例えば、ゲルソリンの機能的誘導体は、ゲルソリンと同じアミノ酸骨格を含み得るが、診断的アッセイまたは治療的処置の性能のためのこのような修飾の必要性に依存して、翻訳後修飾のような他の修飾(例えば、結合されたリン脂質、または共有結合された炭水化物のような)も含む。本明細書中で使用される場合、この用語はまた、ゲルソリンの化学的誘導体を含むことが意味される。このような誘導体は、ゲルソリンの溶解性、吸収、生物学的半減期などを改善し得る。これらの誘導体はまた、ゲルソリンの毒性を減少させ得るか、またはゲルソリンの望ましくない任意の副作用などを排除するか、もしくは弱め得る。誘導体および、具体的には、このような効果を媒介し得る化学的部分は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1980)に開示される。ゲルソリンのような分子にこのような部分を連結するための手順は、当該分野において周知である。用語「機能的誘導体」は、ゲルソリンの「フラグメント」、「改変体」、「アナログ」、または「化学的誘導体」を含むことを意図する。
【0045】
本発明は、いくつかの局面において、被験体において感染を処置するための方法を包含する。この方法は、感染を処置するために被験体をゲルソリン投与する工程を包含する。この被験体は、感染を有するか、感染に曝されたことが推測されるか、もしくは感染に曝されるリスクがあるかことが分かっているか、または感染に曝された被験体である。ゲルソリンは、この被験体において感染を処置するのに有効な量で投与される。
【0046】
本発明の処置方法に対する応答は、例えば、この処置の生理学的効果(例えば、この処置の施行後の症状の減少または欠如)を決定することによって測定され得る。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「感染」または「感染症」とは、感染性の生物体による宿主の表面的か、局所的か、または全身的な侵襲から生じる障害をいう。感染性の生物体としては、細菌、ウイルス、寄生生物、真菌、および原生動物が挙げられる。
【0048】
細菌としては、グラム陰性菌およびグラム陽性菌が挙げられる。グラム陽性菌の例としては、以下が挙げられる:Pasteurella種、Staphylococcus aureusを含むStaphylococcus種、A群Streptococcus
pyogenes、Streptococcus viridans群、B群Streptococcus agalactiae、Streptococcus bovis、Streptococcus anaerobic種、Streptococcus pneumoniae、およびStreptococcus faecalisを含むStreptococcus種、Bacillus anthracisを含むBacillus種、Corynebacterium diphtheriae、好気性のCorynebacterium種、および嫌気性のCorynebacterium種を含むCorynebacterium種、Diphtheroids種、Listeria monocytogenesを含むListeria種、Erysipelothrix
rhusiopathiaeを含むErysipelothrix種、Clostridium perfringens、Clostridium tetani、およびClostridium difficileを含むClostridium種。
【0049】
グラム陰性菌としては、以下が挙げられる:Neisseria gonorrhoeaeおよびNeisseria meningitidisを含むNeisseria種、Branhamella catarrhalisを含むBranhamella種、Escherichia coliを含むEscherichia種、Enterobacter種、Proteus mirabilisを含むProteus種、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas mallei、およびPseudomonas pseudomalleiを含むPseudomonas種、Klebsiella pneumoniaeを含むKlebsiella種、Salmonella種、Shigella種、Serratia種、Acinetobacter種; Haemophilus influenzaeおよびHaemophilus
ducreyiを含むHaemophilus種、Brucella種、Yersinia pestisおよびYersinia enterocoliticaを含むYersinia種、Francisella tularensisを含むFrancisella種、Pasteurella multocidaを含むPasturella種、Vibrio cholerae、Flavobacterium種(Flavobacterium meningosepticum)、Campylobacter jejuniを含むCampylobacter種、Bacteroides fragilisを含むBacteroides種(口、咽頭)、Fusobacterium nucleatumを含むFusobacterium種、Calymmatobacterium granulomatis、Streptobacillus moniliformisを含むStreptobacillus種、Legionella pneumophilaを含むLegionella種。
【0050】
他の型の細菌としては、抗酸菌、スピロヘータ、および放線菌が挙げられる。
【0051】
抗酸菌の例としては、Mycobacterium tuberculosisおよびMycobacterium lepraeを含むMycobacterium種が挙げられる。
【0052】
スピロヘータの例としては、Treponema pallidum、およびTreponema pertenueを含むTreponema種、Borrelia burgdorferi(ライム病)、およびBorrelia recurrentisを含むBorrelia種、ならびにLeptospira種が挙げられる。
【0053】
放線菌の例としては、Actinomyces israeliiを含むActinomyces種、およびNocardia asteroidesを含むNocardia種が挙げられる。
【0054】
ウイルスの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:レトロウイルス、HIV−1、HDTV−III、LAVE、HTLV−III/LAV、HIV−III、およびHIV−LPを含むヒト免疫不全ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、ヒトコサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス、カリシウイルス(Calcivirus)、トガウイルス、馬脳炎ウイルス、風疹ウイルス、フラビウイルス(Flavirus)、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス、フィロウイルス、エボラウイルス、パラミクソウイルス、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス(RSV)、オルトミクソウイルス、インフルエンザウイルス、ブニヤウイルス(Bungavirus)、ハンターンウイルス、フレボウイルスおよびナイロウイルス、アレナウイルス、出血熱ウイルス、レオウイルス、オルビウイルス、ロタウイルス、ビルナウイルス、ヘパドナウイルス、B型肝炎ウイルス、パルボウイルス、パポバウイルス、パピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス1型および単純ヘルペスウイルス2型を含むヘルペスウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、イリドウイルス、アフリカ豚コレラウイルス、D型肝炎ウイルス、非A非B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ノーウォークウイルス、アストロウイルスならびに分類されていないウイルス。
【0055】
真菌の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Crytococcus neoformansを含むCryptococcus種、Histoplasma capsulatumを含むHistoplasma種、Coccidiodes immitisを含むCoccidioides種、Paracoccidioides
brasiliensisを含むParacoccidioides種、Blastomyces dermatitidisを含むBlastomyces種、Chlamydia trachomatisを含むChlamydia種、Candida albicansを含むCandida種、Sporothrix schenckiiを含むSporothrix種、Aspergillus種、およびムコール症の真菌。
【0056】
他の感染性の生物体としては、寄生生物が挙げられる。寄生生物としては、Plasmodium種(例えば、Plasmodium falciparum、Plasmodium malariae、Plasmodium ovale、およびPlasmodium vivaxを含むPlasmodium種)およびToxoplasma gondiiが挙げられる。血液媒介性の寄生生物および/または組織に対する寄生生物としては、Plasmodium種、babesia microtiおよびBabesia
divergensを含むBabesia種、Leishmania tropicaを含むLeishmania種、Leishmania種(Leishmania braziliensis、Leishmania donovani)、Trypanosoma gambiense、Trypanosoma rhodesiense(アフリカ睡眠病)、およびTrypanosoma cruzi(シャーガス病)を含むTrypanosoma種が挙げられる。
【0057】
他の医学的に関連する微生物は、文献に広く記載されてきた(例えば、C.G.A Thomas、Medical Microbiology、Bailliere Tindall、Great Britain 1983(この内容の全ては、本明細書によって参考として援用される)を参照のこと)。
【0058】
本発明の別の局面において、被験体においてインターロイキン(IL)の発現を上方制御するための方法が、提供される。この方法は、ILの発現を上方制御するのに有効な量で、ゲルソリンをこの被験体に投与する工程を包含する。ILの上方制御は、ゲルソリンの投与後にILの生理学的効果を決定することによって測定され得る。ILの生理学的効果は、当業者に公知である。
【0059】
本発明の別の局面において、被験体において炎症誘発性サイトカインの発現を下方制御するための方法が、提供される。この方法は、炎症誘発性サイトカインの発現を下方制御するのに有効な量で、この被験体にゲルソリンを投与する工程を包含する。炎症誘発性サイトカインの下方制御は、ゲルソリンの投与後に炎症誘発性サイトカインの生理学的効果を決定することによって測定され得る。炎症誘発性サイトカインの生理学的効果は、当業者に公知である。
【0060】
他のアッセイは、当業者に公知であり、そして上記応答のレベルを測定するために利用され得る。
【0061】
本発明の別の局面において、被験体をモニタリングするための方法が、提供される。この方法は、感染を処置する治療を受ける被験体において、ゲルソリンのレベルを得る工程を包含する。ゲルソリンのこのレベルは、コントロール(例えば、見かけ上健康な集団)のゲルソリンのレベルに対応する所定の値と比較される。ゲルソリンのこのレベルが所定のレベルを下回るか否かの決定は、この被験体が、同じ治療を用いた継続的な治療によって利益を受けるのか、または治療の変更によって利益を受けるのかを示す。いくつかの実施形態において、ゲルソリンのレベルを得る工程は、この被験体のゲルソリンのレベルを長期間にわたってモニタリングするために繰り返される。いくつかの実施形態において、この被験体は、少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間またはそれ以上、その治療を受けていた可能性がある。いくつかの実施形態において、この被験体は、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間またはそれ以上、その治療を受けていた可能性がある。
【0062】
ゲルソリンによる治療の変更とは、このゲルソリンの用量の増加、ゲルソリンから別の因子への切り換え、ゲルソリンによる治療レジメンに対する別の因子の追加、またはそれらの組み合わせをいう。
【0063】
本発明の別の局面に従って、感染のリスクを処置するか、または減少させるための治療の有効性を評価するための方法が、提供される。この方法は、感染を処置するか、または防止する治療を受ける被験体において、ゲルソリンのレベルを得る工程を包含する。ゲルソリンのこのレベルは、コントロール(例えば、見かけ上健康な集団)のゲルソリンのレベルに対応する所定の値と比較される。ゲルソリンのこのレベルが所定のレベルを下回るか否かの決定は、その治療が有効であるか否かを示す。いくつかの実施形態において、この被験体は、少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間またはそれ以上、その治療を受けていた可能性がある。いくつかの実施形態において、このヒト被験体は、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間またはそれ以上、その治療を受けていた可能性がある。
【0064】
本発明の1つの局面は、被験体における転帰を改善するために、処置を導くゲルソリンの測定に関する。ゲルソリンの治療中のレベルは、感染または敗血症の処置に対する応答についての予測値を有する。ゲルソリンのこの治療中のレベルは、先行技術における感染の転帰の予測に対して付加的である。
【0065】
本発明のこの局面によって利益を受ける被験体は、感染を処置するか、または防止する治療を受けている被験体(すなわち、「治療中」の被験体)である。治療中の被験体は、既に診断され、そして感染を処置するための治療による処置の経過にある被験体である。この治療は、本明細書中に言及される治療因子のいずれかであり得る。この治療はまた、非薬物的処置であり得る。重要な実施形態において、この治療は、ゲルソリンのレベルを増加させるものである。特に重要な実施形態において、この治療は、ゲルソリンによる治療である。好ましい被験体は、ヒト被験体である。本発明によって利益を受ける可能性が最も高い被験体は、治療中であり、かつ血漿1Lあたり約2.4μMを下回るゲルソリンレベルを有するヒト被験体である。
【0066】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、既に感染を有するか、または感染を有した。細菌、ウイルス、真菌、寄生生物、もしくは原生動物による一次(第1の)感染を有するか、または有していた被験体は、二次(第2の)感染の高いリスクにあり得る。いくつかの実施形態において、この被験体は、一次感染を有していないが、被験体が感染を有する1つ以上のリスクを有するので、感染を有する高いリスクにある。一次感染についてのリスクファクターとしては、以下が挙げられる:免疫抑制、免疫無防備状態、年齢、外傷、やけど(例えば、熱傷)、外科手術、異物、癌、新生児(新生仔)(特に、早すぎる時期に生まれた新生児(新生仔))。感染のリスクの程度は、この被験体が有するリスクファクターの多数性(multitude)および重大性または重要性に依存する。リスクの履歴(risk chart)および予測アルゴリズムは、リスクファクターの存在および重大性に基づいて、被験体における感染のリスクを判断するのに利用可能である。
【0067】
被験体における感染のリスクを判断する他の方法は、当業者に公知である。
【0068】
さらに他の実施形態において、上記被験体は、一次感染を有しており、そして1つ以上の他のリスクファクターを有する。
【0069】
本発明の好ましい処置は、ゲルソリンである。ゲルソリンは、薬学的組成物として単独で投与されても、他の治療レジメンと組み合わされてもよい。ゲルソリンおよび他の治療因子は、同時に投与されても、連続して投与されてもよい。他の治療因子が同時に投与される場合、これらは、同じ処方物において投与されても、別個の処方物において投与されよいが、同時に投与される。他の治療因子およびゲルソリンの投与が、時間的に隔てられる場合、他の治療因子は、互いに連続して投与され得、そしてゲルソリンと連続して投与され得る。これらの化合物の投与間の時間の隔たりは、おおよそ数分間であり得るか、またはそれより長くあり得る。他の治療因子としては、抗感染因子が挙げられるが、これに限定されない。抗感染因子の例としては、抗細菌因子、抗ウイルス因子、抗真菌因子または抗原生動物因子が挙げられる。
【0070】
「抗感染因子」、「抗細菌因子」、「抗ウイルス因子」、「抗真菌因子」、「抗寄生生物因子」および「駆虫薬」のような語句は、当業者に定着した意味を有し、そして標準的な医学の教科書において定義される。簡単にいうと、抗細菌因子は、細菌を殺傷するか、または細菌の増殖または機能を阻害する。抗細菌因子としては、抗生物質および同様の機能を有する他の合成化合物または天然化合物が挙げられる。代表的に、抗生物質は、細胞(例えば、微生物)によって二次代謝産物として生成される低分子量の分子である。一般に、抗生物質は、その微生物に特異的であり、そして宿主細胞に存在しない1つ以上の細菌の機能または構造を妨げる。
【0071】
抗細菌因子の大きな分類は、抗生物質である。広い範囲の細菌を殺傷するか、または阻害するために有効な抗生物質は、広域スペクトル抗生物質といわれる。他の型の抗生物質は、グラム陽性の分類またはグラム陰性の分類の細菌に対して主に有効である。これらの型の抗生物質は、狭域スペクトル抗生物質といわれる。単一の生物体または疾患に対して有効であり、かつ他の型の細菌に対して有効でない他の抗生物質は、限定スペクトル(limited spectrum)抗生物質といわれる。抗細菌因子は、ときとして、それらの作用の主要な様式に基づいて分類される。一般に、抗細菌因子は、細胞壁合成インヒビター、細胞膜インヒビター、タンパク質合成インヒビター、核酸合成インヒビターまたは核酸機能のインヒビター(nucleic acid functional inhibitor)、および競合的インヒビターである。
【0072】
抗細菌因子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アミノグリコシド系、β−ラクタム剤、セファロスポリン系、マクロライド系、ペニシリン系、キノロン系、スルホンアミド系、およびテトラサイクリン系。抗細菌因子の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アセダプソン、アセトスルホンナトリウム、アラメシン(Alamecin)、アレキシジン、アムジノシリンクラブラン酸カリウム、アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アミサイクリン(Amicycline)、アミフロキサシン、メシル酸アミフロキサシン、アミカシン、硫酸アミカシン、アミノサリチル酸、アミノサリチル酸ナトリウム、アモキシリン、アンホマイシン、アンピシリン、アンピシリンナトリウム、アパルシリン(Apalcillin)ナトリウム、アプラマイシン、アスパルトシン(Aspartocin)、硫酸アストロマイシン、アビラマイシン、アボパルシン、アジスロマイシン、アズロシリン、アズロシリンナトリウム、塩酸バカンピシリン、バシトラシン、バシトラシンメチレンジサリチレート、亜鉛バシトラシン、バンベルマイシン、ベンゾイルパスカルシウム、ベリスロマイシン(Berythromycin)、硫酸ベタマイシン(Betamicin sulfate)、ビアペネム、ビニラマイシン(Biniramycin)、塩酸ビフェナミン、ビシピリチオンマグスルフェックス(Bispyrithione Magsulfex)、ブチカシン、硫酸ブチロシン、硫酸カプレオマイシン、カルバドックス、カルベニシリン二ナトリウム、カルベニシリンインダニルナトリウム、カルベニシリンフェニルナトリウム、カルベニシリンカリウム、カルモナムナトリウム、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファマンドールナファート、セファマンドールナトリウム、セファパロール(Cefaparole)、セファトリジン、セファザフラール(Cefazaflur)ナトリウム、セファゾリン、セファゾリンナトリウム、セフブペラゾン、セフジニル、セフジトレンピボキシル、セフェピム、塩酸セフェピム、セフェテコール(Cefetecol)、セフェキシム、塩酸セフメノキシム、セフメタゾール、セフメタゾールナトリウム、セフォニシド一ナトリウム、セフォニシドナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、セフォラニド、セフォタキシム、セフォタキシムナトリウム、セフォテタン、セフォテタン二ナトリウム、塩酸セフォチアム、セフォキシチン、セフォキシチンナトリウム、セフピミゾール、セフピミゾールナトリウム、セフピラミド、セフピラミドナトリウム、硫酸セフピロム、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル、セフロキサジン、セフスロジンナトリウム、セフタジジム、セフタジジムナトリウム、セフチブテン、セフチゾキシムナトリウム、セフトリアキソンナトリウム、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、セフロキシムピボキセチル、セフロキシムナトリウム、セファセトリルナトリウム、セファレキシン、塩酸セファレキシン、セファログリシン、セファロリジン、セファロチンナトリウム、セファピリンナトリウム、セフラジン、塩酸セトサイクリン(Cetocycline Hydrochloride)、セトフェニコール(Cetophenicol)、クロラムフェニコール、パルミチン酸クロラムフェニコール、パントテン酸クロラムフェニコール錯体、コハク酸クロラムフェニコールナトリウム、クロルヘキシジンホスファニレート(Chlorhexidine Phosphanilate)、クロロキシレノール、クロルテトラサイクリンビスルフェート、塩酸クロルテトラサイクリン、シラスタチン、シノキサシン、シプロフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン、シロレマイシン(Cirolemycin)、クラリスロマイシン、クラブラン酸カリウム、塩酸クリナフロキサシン、クリンダマイシン、クリンダマイシンデキストロース、塩酸クリンダマイシン、塩酸パルミチン酸クリンダマイシン、リン酸クリンダマイシン、クロファジミン、クロキサシリンベンザチン、クロキサシリンナトリウム、クロキシキン(Cloxyquin)、コリスチメテート(Colistimethate)、コリスチンメタナトリウム、硫酸コリスチン、クーママイシン(Coumermycin)、クーママイシンナトリウム、シクラシリン、シクロセリン、ダルフォプリスチン、ダプソン、ダプトマイシン、デメクロサイクリン、塩酸デメクロサイクリン、デメサイクリン、デノフンギン(Denofungin)、ジアベリジン、ジクロキサシリン、ジクロキサシリンナトリウム、硫酸ジヒドロストレプトマイシン、ジピリチオン、ジリスロマイシン、ドキシサイクリン、ドキシサイクリンカルシウム、ドキシサイクリンホスファテックス、ドキシサイクリンヒクラート、ドキシサイクリン一水和物、ドロキサシンナトリウム、エノキサシン、エピシリン、塩酸エピテトラサイクリン、エルタペネム、エリスロマイシン、エリスロマイシンアシスラート、エリスロマイシンエストレート、エチルコハク酸エリスロマイシン、エリスロマイシングルコヘプトナート(Gluceptate)、ラクトビオン酸エリスロマイシン、プロピオン酸エリスロマイシン、ステアリン酸エリスロマイシン、塩酸エタンブトール、エチオナミド、フレロキサシン、フロキサシリン、フルダラニン、フルメキン、ホスホマイシン、ホスホマイシントロメタミン、フモキシシリン(Fumoxicillin)、塩化フラゾリウム、酒石酸フラゾリウム、フシジン酸ナトリウム、フシジン酸、ガチフロキサシン、ゲニフロキサシン(Genifloxacin)、硫酸ゲンタマイシン、グロキシモナム(Gloximonam)、グラミシジン、ハロプロジン、ヘタシリン、ヘタシリンカリウム、ヘキセジン、イバフロキサシン、イミペネム、イソコナゾール、イセパマイシン、イソニアジド、ジョサマイシン、硫酸カナマイシン、キタサマイシン、レボフロキサシン、レボフラルタドン、レボプロピルシリン(Levopropylcillin)カリウム、レキシスロマイシン(Lexithromycin)、リンコマイシン、塩酸リンコマイシン、リネゾリド、ロメフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、メシル酸ロメフロキサシン、ロラカルベフ、マフェナイド、メクロサイクリン(Meclocycline)、スルホサリチル酸メクロサイクリン、リン酸メガロマイシンカリウム、メキドクス、メロペネム、メタサイクリン、塩酸メタサイクリン、メテナミン、馬尿酸メテナミン、マンデル酸メテナミン、メチシリンナトリウム、メチオプリム、塩酸メトロニダゾール、リン酸メトロニダゾール、メズロシリン、メズロシリンナトリウム、ミノサイクリン、塩酸ミノサイクリン、塩酸ミリンカマイシン(Mirincamycin
Hydrochloride)、モネンシン、モネンシンナトリウム、塩酸モキシフロキサシン、ナフシリンナトリウム、ナリジクス酸ナトリウム、ナリジクス酸、ナタマイシン、ネブラマイシン、パルミチン酸ネオマイシン、硫酸ネオマイシン、ウンデシレン酸ネオマイシン、硫酸ネチルマイシン、ネチルマイシン、ニフラデン、ニフラルデゾン、ニフラテル、ニフラトロン、ニフルダジル、ニフリミド、ニフルピリノール、ニフルキナゾール、ニフルチアゾール、ニトロサイクリン(Nitrocycline)、ニトロフラントイン、ニトロミド、ノルフロキサシン、ノボビオシンナトリウム、オフロキサシン、オルメトプリム、オキサシリンナトリウム、オキシモナム、オキシモナムナトリウム、オキソリン酸、オキシテトラサイクリン、オキシテトラサイクリンカルシウム、塩酸オキシテトラサイク、Paldimycin、パラクロロフェノール、パウロマイシン(Paulomycin)、ペフロキサシン、メシル酸ペフロキサシン、ペナメシリン(Penamecillin)、ベンザチンペニシリンG、ペニシリンGカリウム、プロカインペニシリンG、ペニシリンGナトリウム、ペニシリンV、ベンザチンペニシリンV、ヒドラバミンペニシリンV、ペニシリンVカリウム、ペンチジドンナトリウム、アミノサリチル酸フェニル、ピペラシリン、ピペラシリンナトリウム、ピルベニシリン(Pirbenicillin)ナトリウム、ピリジシリン(Piridicillin)ナトリウム、塩酸ピルリマイシン、塩酸ピバンピシリン、パモ酸ピバンピシリン、ピバンピシリンプロベネート(Pivampicillin Probenate)、硫酸ポリミキシンB、ポルフィロマイシン、プロピカシン(Propikacin)、ピラジンアミド、ピリチオン亜鉛、酢酸キンデカミン、キヌプリスチン、ラセフェニコール(Racephenicol)、ラモプラニン、ラニマイシン(Ranimycin)、レロマイシン、レプロマイシン(Repromicin)、リファブチン、リファメタン(Rifametane)、リファメキシル(Rifamexil)、リファミド(Rifamide)、リファンピン、リファペンチン、リファミキシン、ロリテトラサイクリン、硝酸ロリテトラサイクリン、ロサラマイシン(Rosaramicin)、酪酸ロサラマイシン、プロピオン酸ロサラマイシン、リン酸ロサラマイシンナトリウム、ステアリン酸ロサラマイシン、ロソキサシン、ロキサルソン、ロキシスロマイシン、サンサイクリン(Sancycline)、サンフェトリネムナトリウム(Sanfetrinem Sodium)、サルモキシシリン(Sarmoxicillin)、サルピシリン(Sarpicillin)、スコパフンギン(Scopafungin)、シソマイシン、硫酸シソマイシン、スパフロキサシン、塩酸スペクチノマイシン、スピラマイシン、塩酸スタルリマイシン(Stallimycin Hydrochloride)、ステフィマイシン(Steffimycin)、滅菌チカルシリン二ナトリウム、硫酸ストレプトマシン、ストレプトニコジド(Streptonicozid)、スルバクタムナトリウム、スルファベンズ、スルファベンザミド、スルファセタミド、スルファセタミドナトリウム、スルファシチン、スルファジアジン、スルファジアジンナトリウム、スルファドキシン、スルファレン、スルファメラジン、スルファメータ、スルファメタジン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファモノメトキシン、スルファモキソール、スルファニル酸亜鉛(Sulfanilate Zinc)、スルファニトラン、スルファサラジン、スルファソミゾール、スルファチアゾール、スルファザメット(Sulfazamet)、スルフイソキサゾール、スルフイソキサゾールアセチル、スルフイソキサゾールジオラミン、スルホミキシン、スロペネム、スルタミシリン、サンシリンナトリウム(Suncillin Sodium)、塩酸タランピシリン、タゾバクタム、テイコプラニン、塩酸テマフロキサシン、テモシリン、テトラサイクリン、塩酸テトラサイクリン、リン酸テトラサイクリン錯体、テトロキソプリム、チアンフェニコール、チフェンシリンカリウム、チカルシリンクレジルナトリウム、チカルシリン二ナトリウム、チカルシリン一ナトリウム、チクラトン、塩化チオドニウム、トブラマイシン、硫酸トブラマイシン、トスフロキサシン、トリメトプリム、硫酸トリメトプリム、トリスルファピリミジン(Trisulfapyrimidine)、トロレアンドマイシン、硫酸トロレアンドマイシン、トロバフロキサシン、チロスリシン、バンコマイシン、塩酸バンコマイシン、バージニアマイシン、ゾルバマイシン(Zorbamycin)。
【0073】
抗ウイルス因子は、天然の供給源から単離され得るか、または合成され得、そしてウイルスを殺傷するか、またはウイルスの増殖もしくは機能を阻害するのに有用である。抗ウイルス因子は、ウイルスによる細胞の感染、またはウイルスの細胞内での複製を防止する化合物である。抗ウイルス因子によってブロックされ得るか、または阻害され得るウイルス感染のプロセス内には、いくつかの段階が存在する。これらの段階としては、宿主細胞に対するウイルスの接着(免疫グロブリンまたは結合ペプチド)、ウイルスの脱殻(例えば、アマンダジン)、ウイルスmRNAの合成または翻訳(例えば、インターフェロン)、ウイルスRNAまたはウイルスDNAの複製(例えば、ヌクレオチドアナログ)、新しいウイルスタンパク質の成熟(例えば、プロテアーゼインヒビター)、およびウイルスの出芽および放出が挙げられる。
【0074】
本発明において有用な抗ウイルス因子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:免疫グロブリン、アマンダジン、インターフェロン、ヌクレオチドアナログ、およびプロテアーゼインヒビター。抗ウイルスの特定の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:エースマンナン;アシクロビル;アシクロビルナトリウム;アデフォビル;アロブジン;アルビルセプトスドトックス(Alvircept Sudotox);塩酸アマンダジン;アラノチン;アリルドン;メシル酸アテビルジン;アブリジン;シドフォビル;シパムフィリン(Cipamfylline);塩酸シタラビン;メシル酸デラビルジン;デスシクロビル;ジダノシン;ジソキサリル;エドクスジン;エンビラデン;エンビロキシム;ファムシクロビル;塩酸ファモチン;フィアシタビン;フィアルリジン;ホサリラート;ホスカネットナトリウム;ホスホネトナトリウム;ガンシクロビル;ガンシクロビルナトリウム;イドクスウリジン;ケトキサール;ラミブジン;ロブカビル;塩酸メモチン;メチサゾン;ネビラピン;ペンシクロビル;ピロダビル;リバビリン;塩酸リマンタジン;メシル酸サキナビル;塩酸ソマンタジン;ソリブジン;スタトロン(Statolon);スタブジン;塩酸チロロン;トリフルリジン;塩酸バラシクロビル;ビダラビン;リン酸ビダラビン;リン酸ビダラビンナトリウム;ビロキシム;
ザルシタビン;ジドブジン;およびジンビロキシム。
【0075】
ヌクレオチドアナログは、ヌクレオチドに類似するが、不完全かもしくは異常なデオキシリボース基またはリボース基を有する、合成化合物である。一旦これらのヌクレオチドアナログが、細胞に入ると、これらはリン酸化され、ウイルスDNAまたはウイルスRNAへの組み込みに関して正常なヌクレオチドと競合する三リン酸形態を生成する。一旦これらのヌクレオチドアナログの三リン酸形態が、成長する核酸鎖に組み込まれると、これらの三リン酸形態は、ウイルスポリメラーゼとの不可逆的な結合を生じ、したがって鎖の終結を生じる。ヌクレオチドアナログとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アシクロビル(単純ヘルペスウイルスおよび水痘‐帯状疱疹ウイルスの処置のために使用される)、ガンシクロビル(サイトメガロウイルスの処置に有用である)、イドクスウリジン、リバビリン(RSウイルスの処置に有用である)、ジデオキシイノシン、ジデオキシシチジン、ジドブジン(アジドチミジン)、イミキモッド、およびレシミキモッド(resimiquimod)。
【0076】
インターフェロンは、ウイルスに感染した細胞および免疫細胞によって分泌されるサイトカインである。これらのインターフェロンは、感染した細胞に隣接する特異的なレセプターに結合することによって機能し、ウイルスによる感染から細胞を保護する細胞の変化を引き起こす。α−インターフェロンおよびβ−インターフェロンはまた、感染した細胞の表面上にクラスIのMHC分子およびクラスIIのMHC分子の発現を誘導し、宿主免疫細胞の認識のために増加した抗原提示を生じる。α−インターフェロンおよびβ−インターフェロンは、組換え形態として利用可能であり、そして慢性的なB型肝炎感染および慢性的なC型肝炎感染の処置のために使用されてきた。抗ウイルス治療に有効である投薬量において、インターフェロンは、重篤な副作用(例えば、発熱、倦怠感および体重減少)を有する。
【0077】
抗真菌因子は、浅在性の真菌感染ならびに日和見性および主要な全身性の真菌感染を処置するために使用される。抗真菌因子は、感染性の真菌の処置および防止に有用である。抗真菌因子は、ときとして、これらの作用機序に基づいて分類される。いくつかの抗真菌因子は、例えば、グルコースシンターゼを阻害することによって細胞壁インヒビターとして機能する。これらとしては、バシウンギン(basiungin)/ECBが挙げられるが、これに限定されない。他の抗真菌因子は、膜の完全性を不安定化することによって機能する。これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:イミダゾール(immidazole)系(例えば、クロトリマゾール、セルタコナゾール(sertaconzole)、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、およびボリコナゾール(voriconacole))、およびFK 463、アムホテリシンB、BAY 38−9502、MK 991、プラディマイシン、UK 292、ブテナフィン、ならびにテルビナフィン。他の抗真菌因子は、function byキチン(例えば、キチナーゼ)または免疫抑制(501クリーム)を破壊することによって機能する。
【0078】
抗寄生生物因子は、寄生生物を殺傷するか、または阻害する。ヒトへの投与に有用な抗寄生生物因子(駆虫薬ともいわれる)の例はとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アルベンダゾール、アムホテリシンB、ベンズニダゾール、ビチオノール、クロロキンHCl、リン酸クロロキン、クリンダマイシン、デヒドロエメチン、酸ジエチルカルバマジン、ジロキサニドフロエート、エフロルニチン、フラゾリダオン(furazolidaone)、糖質コルチコイド、ハルファントリン、ヨードキノール、アイバメクチン、メベンダゾール、メフロキン、アンチモン酸メグルミン、メラルソプロール、メトリホナート、メトロニダゾール、ニクロサミド、ニフルティモックス、オキサムニキン、パラモマイシン、ペンタミジンイセチオネート、ピペラジン、プラジカンテル、リン酸プリマキン、プログアニル、ピランテルパモエート、ピリメタミン−スルホンアミド、ピリメタミン−スルファドキシン、キナクリンHCl、硫酸キニーネ、グルコン酸キニジン、スピラマイシン、スチボグルコネートナトリウム(アンチモニルグルコン酸ナトリウム)、スラミン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、チアベンダゾール、チニダゾール、トリメトプリム(trimethroprim)−スルファメトキサゾール、およびトリパルサミド(これらのうちのいくつかは、単独で使用されるか、または他のものと組み合わせて使用される)。
【0079】
本発明の特定の方法の実施において、被験体においてゲルソリンのレベルを得ることが、必要とされる。その後、このレベルは、所定の値と比較され、所定の値との比較においてゲルソリンのこのレベルは、被験体が継続的な治療によって利益を受ける可能性を示す。その後、この被験体は、治療の変化から得られるであろう最終的な利益の点から特付けられ得る。
【0080】
上記被験体に関するゲルソリンのレベルは、当該分野で認識される任意の方法によって得られ得る。代表的に、このレベルは、体液(例えば、血液、リンパ液、唾液、尿など)中のマーカーのレベルを測定することによって決定される。このレベルは、ELISA、またはイムノアッセイ、またはマーカーの存在を決定するための慣習的な他の技術によって決定され得る。慣習的な方法としては、被験体の体液のサンプルを、測定のための商業的な実験室に送ることが挙げられる。ゲルソリンを測定するための方法は、実施例に記載される。
【0081】
本発明はまた、上記被験体に関するゲルソリンのレベルと所定の値とを比較する工程を包含する。この所定の値は、種々の形態をとり得る。それは、単一のカットオフ値(例えば、中央値または平均)であり得る。それは、例えば、1つの定義された群におけるリスクが別の定義された群におけるリスクの2倍であるような、比較の群に基づいて確立され得る。それは、例えば、試験された集団が、均等(または不均等)に群(例えば、リスクが低い群、リスクが中程度の群およびリスクが高い群)へと分割されるか、または四分位値(最も高いリスクを有する被験体である最も低い四分位値および最も低いリスクを有する被験体である最も高い四分位値)へと分割されるか、もしくは三分位値(最も高いリスクを有する被験体である最も低い三分位値および最も低いリスクを有する被験体である最も高い三分位値)へと分割される範囲であり得る。
【0082】
上記所定の値は、選択された被験体の特定の集団に依存し得る。例えば、見かけ上健康な集団は、感染または他の状態の前である被験体の集団と異なるゲルソリンの「正常な」範囲を有する。したがって、選択された所定の値は、被験体が分類される部類を考慮し得る。適切な範囲および部類は、当業者による慣用的な実験によって選択され得るに過ぎない。
【0083】
好ましい体液は、血液である。ゲルソリンの1つの好ましい所定の値は、血漿1Lあたり約2.4μMである。
【0084】
ゲルソリンの重要な所定の値は、健康な被験体の集団(すなわち、疾患の徴候および症状を有さない被験体)についての平均である値である。この所定の値は、当然に、被験体が属する被験体の集団の特性に依存する。リスクの特徴付けにおいて、多くの所定の値が確立され得る。
【0085】
現在、ゲルソリンについてのアッセイのための試薬を生産する商業的供給源が、存在する。これらとしては、例えば、Cytoskeleton(Denver、CO)、Sigma(St.Louis、MO)およびCalbiochem(San Diego、CA)が挙げられる。
【0086】
本発明は、感染を発症する被験体のリスクを特徴付けるために、例えば、白血球(WBC)のレベルのような感染の別のマーカーのレベルと一緒にゲルソリンのレベルを測定する工程をさらに包含する。その被験体においてゲルソリンのレベルが、得られる。ゲルソリンのこのレベルが所定の値と比較されて、第1のリスク値を確立する。被験体におけるWBCのレベルがまた、得られる。被験体におけるWBCのこのレベルが第2の所定の値と比較されて、第2のリスク値を確立する。その後、感染を発症する被験体のリスクプロフィールは、第1のリスク値と第2のリスク値との組み合わせに基づいて特徴付けられ、第1のリスク値と第2のリスク値との組み合わせは、第1のリスク値および第2のリスク値と異なる第3のリスク値を確立する。いくつかの実施形態において、この第3のリスク値は、第1のリスク値および第2のリスク値のどちらよりも大きい。試験のために好ましい被験体および好ましい所定の値は、上に記載される通りである。この感染は、上に記載されるような任意の感染であり得る。
【0087】
本発明は、被験体が継続的な治療によって利益を受けるのか、または治療の変更によって利益を受けるのかを決定するための方法を提供する。この利益は、代表的に、感染の出現の割合の減少、または感染からのより早い回復である。被験体が継続的な治療によって利益を受けるのか、または治療の変更によって利益を受けるのかを決定する工程は、臨床上有用である。本発明の方法の臨床上の有用性の1つの例としては、治療に応答する可能性が低い被験体、または治療に応答する可能性が高い被験体を同定することが挙げられる。本発明の方法はまた、被験体が継続的な治療によって利益を受けるのか、または治療の変更によって利益を受けるのかを、予想または決定するのに有用である。ヒト被験体の場合において、臨床上の有用性の別の例としては、臨床試験のための、最終的な利益を得る高い可能性を有する被験体の選択において臨床研究者を補助することが挙げられる。ここで、臨床研究者が、臨床試験についての参加基準を決定するために本発明を使用することが、予期される。
【0088】
継続的な治療によって利益を受ける被験体は、治療中のゲルソリンのレベルが特定の所定の値に到達する被験体であるか、またはゲルソリンのレベルが増加している被験体である。ゲルソリンの所定の値は、上に記載される。治療の変更によって利益を受ける被験体は、治療中のゲルソリンのレベルが特定の所定の値に到達しなかった被験体であるか、または治療中のゲルソリンのレベルが増加していない被験体である。
【0089】
本明細書中で使用される場合、「治療の変更」とは、行われている治療の用量の増加または減少、1つの治療の別の治療への切り換え、行われている治療に対する別の治療の追加、またはそれらの組み合わせをいう。1つの治療からの別の治療への切り換えは、高いリスクプロフィールを有するが、予期される利益の可能性が上昇する治療への切り換えを含み得る。いくつかの実施形態において、好ましい治療は、ゲルソリンのこのレベルの増加させる治療である。行われている治療の用量を増加することに基づく治療の変更によって利益を受ける被験体は、例えば、治療中であるが最大耐量を受容していない被験体であるか、またはゲルソリンのレベルが特定の所定の値に到達しなかった被験体である。このような例において、行われている治療の用量は、ゲルソリンのこのレベルが特定の所定の値に到達するまで増加される。いくつかの例において、行われている治療の用量は、行われている用量から、治療の最大耐量でも最大許容量でもない、より高い用量まで増加される。他の例において、この用量は、その治療の最大耐量までか、またはその治療の最大許容量まで増加される。行われている治療の用量を減少することに基づく治療の変更によって利益を受ける被験体は、例えば、治療中のゲルソリンのレベルに到達する被験体であるか、またはその治療のより低い用量によって特定の所定の値に到達し得る被験体である。
【0090】
1つの治療の別の治療への切り換えによって利益を受ける被験体は、例えば、その治療の最大耐量またはその治療の最大許容量を受容し、かつゲルソリンのレベルが特定の所定の値に到達しなかった被験体である。別の例は、その治療の最大耐量またはその治療の最大許容量を受容しなかったが、別の治療によって利益を受ける可能性がより高いことが医療関係者によって決定された被験体である。このような決定は、例えば、被験体における最初の治療上の望ましくない副作用の発症か、またはこの最初の治療に対する応答の欠如に基づく。
【0091】
行われている治療に対する別の治療の追加に基づく治療の変更によって利益を受ける被験体は、例えば、治療を受けたが、ゲルソリンのレベルが特定の所定の値に到達しなかった被験体である。それぞれの例において、別の治療が、この行われている治療に追加される。この行われている治療に追加される治療は、ゲルソリンのレベルの増加において、この行われている治療と異なる作用機序を有し得る。いくつかの例において、前述の治療の変更の組み合わせがまた、使用され得る。
【0092】
本発明はまた、治療の有効性を決定するための方法を提供する。この有効性は、代表的に、ゲルソリンのレベルの増加におけるその治療の有効性である。これはまた、ときとして、正の応答または有利な応答といわれる。有効性がゲルソリンの血液検査によって決定されて、ゲルソリンレベルが治療の結果として増加するか否かを決定し得る。いくつかの実施形態において、有効性の決定は、ゲルソリンの計数および正規化したWBCの計数の両方の増加における、治療の有効性に基づく。
【0093】
上記ゲルソリンの測定は、μM/L(マイクロモル/リットル)、mg/dl(ミリグラム/デシリットル)、またはmg/L(ミリグラム/リットル)で報告される。
【0094】
本発明はまた、感染を処置する治療を受ける被験体において治療の経過を判定するための方法を提供する。このような治療の経過は、ゲルソリンのレベルに基づいて判定される。感染のリスクを処置するか、または減少させるための治療は、上に記載される。いくつかの実施形態において、この被験体は、既に感染を有したか、または感染を有するリスクがある。一次(第1の)感染を有した被験体は、この一次感染に起因して二次(第2の)感染の高いリスクにある。いくつかの実施形態において、被験体は、この被験体が、感染を有する原因である1つ以上のリスクファクターを有するので、感染の高いリスクにある。感染を有する原因である1つ以上のリスクファクターの例は、上に記載される。いくつかの実施形態において、感染の高いリスクにある被験体は、見かけ上健康な被験体であり得る。見かけ上健康な被験体は、疾患の徴候または症状を有さない被験体である。
【0095】
これらの方法は、患者の処置、そしてまた、新しい治療の臨床開発に対して重要な意味を有する。ここで、臨床研究者が、臨床試験におけるヒト被検体についての参加基準を決定するために本発明を使用することが、予期される。医療関係者は、被験体に対する最終的な利益に基づいて処置のための治療レジメンを選択する。この最終的な利益は、この利益に対するリスクの比から得られる。本発明は、被験体が、継続的な治療によって利益を受けるのか、または治療の変更によって利益を受けるのかの決定を可能にし、これによって治療の選択において医師を支援する。
【0096】
処置の量は、例えば、ゲルソリンまたは薬理学的因子または治療用組成物の量を増加または減少すること、投与される治療用組成物を変更すること、投与の経路を変更することなどによって変えられ得る。有効量は、処置される特定の感染または状態、処置される被験体の年齢および生理的状態、感染または状態の重症度、処置の持続期間、併用する治療の性質(存在する場合)、投与の特定の経路などの、健全な実施者の知識および専門性の範囲内である要因によって変化する。例えば、有効量は、個体が感染に曝されたか、または感染に対する曝露によって影響された程度に依存し得る。
【0097】
有効量は、医学的に望ましい結果を提供するのに十分な治療因子の投薬量である。有効量はまた、例えば、個体がゲルソリンの異常に減少したレベルを有する程度に依存し得る。本発明の治療因子は感染を処置するか、または防止するために使用されること、すなわち、これらの因子は感染を発症するリスクがある被験体において予防的に使用され得ることが、理解されるべきである。したがって、有効量は、感染の発症のリスクを低下させるか、感染の発症を遅延させるか、またはおそらく、総じて感染の発症を防止し得る量である。この治療因子が急性の状況で使用される場合、この因子が、代表的にはこのような有害な事象から生じる1つ以上の医学的に望ましくない結果を防止するために使用されることが、認識される。
【0098】
有効量を決定する工程に関連する要因は、当業者に周知であり、そして慣用的な実験によって扱われ得るに過ぎない。一般に、使用(単独か、または他の治療因子との組み合わせで)される本発明の薬理学的因子の最大用量、すなわち、正しい医学的判断に従う最も高い安全量が、好ましい。患者は医学的な理由、心理的な理由からか、もしくは実質的に任意の他の理由から、より低い用量または耐容量を主張することが、当業者に理解される。
【0099】
本発明の薬理学的因子の治療有効量は、障害(例えば、感染)を処置するのに有効な量である。感染の場合において、所望の応答は、感染の進行を阻害することである。これは、感染の進行を一時的に遅延させることのみを包含し得るが、より好ましくは、これは、感染の進行を持続的に停止させることを包含する。これは、当業者に公知である慣用的な診断方法によってモニタリングされ得る。感染の処置に対する所望の方法はまた、この感染の開始を遅らせること、またはこの感染の開始を防止さえすることであり得る。
【0100】
本発明の方法において使用される薬理学的因子は、好ましくは無菌であり、そして所望の応答を生じるためのゲルソリンの有効量を、被験体への投与に適した重量または容量の単位で含む。被験体に投与される薬理学的因子の用量は、異なるパラメーターに従って選択され得、特に、使用される投与の様式およびその被験体の状態に従って選択され得る。他の要因としては、処置の所望される期間が挙げられる。被験体における反応が最初に適用された用量において不十分である事象において、より高い用量(またはより局在的な、異なる送達経路に基づく、効率的により高い用量)が、患者の耐性が許容する程度まで利用され得る。薬理学的因子の投薬量は、特に、任意の合併症の事象において、個々の医師または獣医師によって調節され得る。代表的に、治療有効量は、1日以上で1用量以上の毎日の投与において、0.01mg/kg〜約1000mg/kg、好ましくは約0.1mg/kg〜約200mg/kg、および最も好ましくは約0.2mg/kg〜約20mg/kgで変化する。
【0101】
投与の種々の様式は、本発明の薬理学的因子を、所望の組織、細胞、または体液に効率的に送達する分野の当業者に公知である。この投与方法は、本願において他の部分で議論される。本発明は、本明細書中に開示される投与の特定の様式に限定されない。当該分野における標準的な参考文献(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、Lippincott、Williams and Wilkins、Baltimore MD、2001)は、薬学的キャリア中の種々の薬学的調製物および薬学的処方物の送達のための、投与および処方の様式を提供する。本発明の薬理学的因子の投与に有用であり、用量の量、投与の計画、投与の部位、投与の様式などが本明細書中にあるものと異なる他のプロトコールは、当業者に公知である。
【0102】
ヒト以外の哺乳動物に対する本発明の薬理学的因子の投与(例えば、試験目的または獣医学の治療目的のため)は、上に記載されるものと実質的に同じ条件下において行われる。本発明はヒトの疾患および動物の疾患の両方に適用可能であることが、当業者に理解される。したがって、本発明は、農業および獣医学の医薬ならびにヒトの治療において使用されることが意図される。
【0103】
投与される場合、本発明の薬学的調製物は、薬学的に受容可能な量および薬学的に受容可能な組成物に適用される。用語「薬学的に受容可能な」は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨害しない非毒性の物質を意味する。このような調製物は、塩、緩衝剤、保存料、適合性のキャリア、および必要に応じて他の治療因子を慣用的に含み得る。医薬に使用される場合、これらの塩は、薬学的に受容可能であるべきであるが、薬学的に受容可能でない塩は、その薬学的に受容可能な塩を調製するために都合よく使用され得、そして本発明の範囲から除外されない。このような薬理学的に受容可能な塩および薬学的に受容可能な塩としては、以下の酸から調製される塩が挙げられるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸など。また、薬学的に受容可能な塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩)として調製され得る。
【0104】
薬理学的因子または薬理学的組成物は、所望される場合、薬学的に受容可能なキャリアと組み合され得る。本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、ヒトへの投与に適した、1種以上の適合性である固体もしくは液体の充填剤(filler)、希釈剤または封入用物質を意味する。用語「キャリア」は、活性成分が組み合わせられて適用を容易にする、天然もしくは合成の有機成分または無機成分を示す。薬学的組成物の構成成分はまた、所望の薬学的有効性を実質的に損なう相互作用が存在しないような様式で、本発明の薬理学的因子、および他の成分のそれぞれと混合され得る。
【0105】
上記薬学的組成物は、上に記載されるような適切な緩衝剤を含み得、この緩衝剤としては、以下が挙げられる:アセテート、ホスフェート、シトレート、グリシン、ボレート、カルボネート、ビカルボネート、水酸化物(および他の塩基)および前述の化合物の薬学的に受容可能な塩。この薬学的組成物はまた、必要に応じて、以下のような適切な保存料を含み得る:塩化ベンザルコニウム;クロロブタノール;パラベンおよびチメロサール。
【0106】
上記薬学的組成物は、単位投薬形態で都合よく存在し得、そして製薬学の分野において周知である方法のいずれかによって調製され得る。全ての方法は、活性因子を、1種以上の補助的成分を構成するキャリアと結合させる工程を包含する。一般に、この組成物は、活性化合物を、液体キャリアか、微細に分離した固体キャリアか、またはその両方と、均一でありかつ堅く結合させ、次いで必要に応じて、生成物を成形することによって調製される。
【0107】
経口投与に適した組成物は、所定の量の活性化合物(例えば、ゲルソリン)をそれぞれ含む、分離した単位(例えば、カプセル、錠剤、丸剤、ロゼンジ)として存在し得る。他の組成物としては、水性の液体または非水性の液体中の懸濁物(例えば、シロップ、エリキシル、エマルション、またはゲル)が挙げられる。
【0108】
経口的な使用のための薬学的調製物は、所望される場合、錠剤または糖剤のコア(core)を得るために、適切な助剤を添加した後、固体の賦形剤として得られる混合物を粉砕し、そして顆粒の混合物を加工して得られ得る。適切な賦形剤は、特に、以下のような充填剤である:糖類(ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールが挙げられる);セルロース調製物(例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)のような)。所望される場合、崩壊因子(disintegrating agent)(例えば、ビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸またはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)が、添加される。必要に応じて、経口用処方物はまた、生理食塩水または緩衝剤(すなわち、内部の酸の組成を中和するためのEDTA)中に処方されても、任意のキャリアなしで投与されてもよい。
【0109】
具体的に、上記の構成成分の経口投薬形態がまた、企図される。これらの構成成分は、この誘導体の経口的な送達が有効であるように、化学的に修飾され得る。一般に、企図される化学修飾は、この構成成分の分子それ自体に対する、少なくとも1つの部分の連結であり、この部分は、(a)タンパク質分解の阻害;および(b)胃または腸からの血流中への取り込みを可能にする。これらの構成成分の全体的な安定性の増加および身体における循環時間の増加がまた、所望される。このような部分の例としては、以下が挙げられる:ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリプロピレン。AbuchowskiおよびDavis、1981、「Soluble Polymer−Enzyme Adducts」、Enzymes as Drugs、HocenbergおよびRoberts編、Wiley−Interscience、New York、NY、pp.367−383;Newmarkら、1982、J.Appl.Biochem.4:185−189。使用され得る他のポリマーは、ポリ−1,3−ジオキシランおよびポリ−1,3,6−トリオキソラン(tioxocane)である。ポリエチレングリコール部分は、上記に示される薬学的使用のために好ましい。
【0110】
上記構成成分(または誘導体)に関して、その放出の場所は、胃、小腸(十二指腸、空腸回腸)、または大腸であり得る。当業者は、胃で溶解しないが、腸の中の十二指腸または他の場所で、この物質を放出する利用可能な処方物を有する。好ましくは、この放出は、ゲルソリンの保護または胃の環境を過ぎてから(例えば、腸)の生物学的に活性な物質の放出のいずれかによって、胃の環境からの悪影響を回避する。
【0111】
胃に対する十分な抵抗性を確保するために、少なくともpH5.0おいて不浸透性のコーティングが必須である。腸溶コーティングとして使用される、より一般的な不活性成分の例は、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、HPMCP 50、HPMCP 55、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、Eudragit L30D、Aquateric、セルロースアセテートフタレート(CAP)、Eudragit L、Eudragit S、およびShellacである。これらのコーティングは、混合フィルムとして使用され得る。
【0112】
コーティングまたはコーティングの混合物はまた、胃に対抗する保護が意図されない錠剤上に使用され得る。これとしては、糖衣、または嚥下しやすい錠剤を作製するコーティングが挙げられ得る。カプセルは、乾燥した治療剤(therapeutic)(すなわち、粉末)の送達のための硬い殻(例えば、ゼラチン)で構成され得;液体形態については、軟ゼラチンの殻が、使用され得る。カシェ剤の殻物質は、厚いデンプンまたは他の食べられる紙であり得る。丸剤、ロゼンジ、成形した錠剤または錠剤を粉砕したものについては、湿式凝塊技術(moist massing technique)が、使用され得る。
【0113】
上記治療剤は、約1mmの粒子サイズの顆粒またはペレットの形態である、微細な多数の微粒子として処方物中に含まれ得る。カプセル投与のための物質の処方物はまた、粉末、軽く圧縮したプラグ(plug)であり得るか、または錠剤でさえあり得る。この治療剤は、圧縮によって調製され得る。
【0114】
着色料および香料は、全て含まれ得る。例えば、ゲルソリンは、(例えば、リポソームまたはミクロスフェアによる封入によって)調製され得、次いで着色料および香料を含む清涼飲料(refrigerated beverage)のような食べられる製品内に、さらに含まれ得る。
【0115】
不活性物質によって治療剤を希釈するか、または治療剤の用量を増加させ得る。これらの希釈剤としては、炭水化物(特に、マンニトール、a−ラクトース、無水のラクトース、セルロース、スクロース、修飾デキストランおよび修飾デンプン)が挙げられる。特定の無機塩はまた、充填剤として使用され得、これらとしては、三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムが挙げられる。いくつかの市販されている希釈剤は、Fast−Flo、Emdex、STA−Rx 1500、EmcompressおよびAvicellである。
【0116】
崩壊剤は、上記治療剤の固形投薬形態への処方に含まれ得る。崩壊剤として使用される物質としては、デンプンに基づく市販の崩壊剤(Explotab)が挙げられるデンプンが挙げられるが、これに限定されない。デンプングリコール酸ナトリウム、Amberlite、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラアミロペクチン(ultramylopectin)、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸性カルボキシメチルセルロース、天然のスポンジ(natural sponge)およびベントナイトは、全て含まれ得る。崩壊剤の別の形態は、不溶性のカチオン交換樹脂である。粉末増粘剤は、崩壊剤および結合剤として使用され得、そしてこれらとしては、寒天、Karayaまたはトラガカントのような粉末増粘剤が挙げられる。アルギン酸およびそのナトリウム塩もまた、崩壊剤として有用である。
【0117】
結合剤が使用されて、治療因子が一つに保持され、硬い錠剤を形成し得る。これらの結合剤としては、アカシア、トラガカント、デンプンおよびゼラチンが挙げられる。他の結合剤としては、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。ポリビニルピロリドン(PVP)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、両方とも、治療剤を造粒するために、アルコール性の溶液中に使用され得る。
【0118】
抗摩擦剤(anti−frictional agent)は、処方プロセスの間の固着を防止するために、治療剤の処方に含まれ得る。滑沢剤は、治療剤とダイ壁との間の層として使用され得る、そしてこれらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:マグネシウム塩およびカルシウム塩が挙げられるステアリン酸の塩、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油および植物蝋。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、種々の分子量のポリエチレングリコール、Carbowax 4000およびCarbowax 6000のような可溶性の滑沢剤もまた、使用され得る。
【0119】
処方の間の薬物の流動性を改善し、そして圧縮の間の再配置を支援する流動促進剤(glidant)が、添加され得る。流動促進剤としては、デンプン、タルク、発熱性シリカおよびアルミノケイ酸ナトリウム水和物が挙げられ得る。
【0120】
水性環境中への治療剤の溶解を補助するために、界面活性剤が、湿潤剤として添加され得る。界面活性剤としては、アニオン性洗浄剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよびスルホン酸ジオクチルナトリウム)が挙げられ得る。カチオン性洗浄剤は、使用され得、そしてこれらとしては、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムが挙げられ得る。界面活性剤として処方中に含まれ得る可能な非イオン性洗浄剤の一覧は、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、モノステアリン酸グリコール、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65およびポリソルベート80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースである。これらの界面活性剤は、単独か、または異なる比の混合物としてかのいずれかで、ゲルソリンの処方物中に存在し得る。
【0121】
経口的に使用され得る薬学的調製物としては、ゼラチンから作製され、押し込んで嵌める(push−fit)カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトール)から作製される密閉された軟カプセルが挙げられる。この押し込んで嵌めるカプセルは、充填剤(例えば、ラクトース)、結合剤(例えば、デンプン)、および/または滑沢剤(例えば、タルク、またはステアリン酸マグネシウム)、ならびに必要に応じて安定化剤を有する混合物中に活性成分を含み得る。軟カプセルにおいて、この活性化合物は、適切な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィン、または液体のポリエチレングリコール)中に、溶解されても、懸濁されてもよい。さらに、安定化剤が、添加され得る。
【0122】
経口投与のために処方されるミクロスフェアがまた、使用され得る。このようなミクロスフェアは、当該分野において良好に定義されてきた。経口投与のためのあらゆる処方物は、このような投与に適した投薬量であるべきである。
【0123】
口腔投与に関して、上記組成物は、慣習的な様式で処方される錠剤またはロゼンジの形態をとり得る。
【0124】
吸入による投与に関して、本発明に従って使用するための化合物は、適切な噴霧剤(例えば、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素または他の適切な気体)の使用によって、加圧されたパックまたは噴霧器からエアロゾル噴霧を提示する形態で都合よく提供され得る。加圧されたエアロゾルの場合において、この投薬単位は、一定量を送達するための弁を提供することによって決定され得る。例えば、吸入器(inhaler)または吸入器(insufflator)において使用するためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物の混合粉末および適切な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)を含んで処方され得る。
【0125】
ゲルソリンの肺送達はまた、本明細書中で企図される。ゲルソリンは、吸入している間に哺乳動物の肺に送達され、肺の上皮層を血流に向かって横切る。吸入される分子の他の報告としては、Adjeiら、1990、Pharmaceutical Research、7:565−569;Adjeiら、1990、International Journal of Pharmaceutics、63:135−144(酢酸ロイプロリド);Braquetら、1989、Journal of Cardiovascular Pharmacology、13(補遺5):143−146(エンドセリン−1);Hubbardら、1989、Annals of Internal Medicine、第III巻、pp.206−212(a1−アンチトリプシン);Smithら、1989、J.Clin.Invest.84:1145−1146(a−1−プロテイナーゼ);Osweinら、1990、「Aerosolization of Proteins」、Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II、Keystone、Colorado、March(組換えヒト成長ホルモン);Debsら、1988、J.Immunol.140:3482−3488(インターフェロン−γおよび腫瘍壊死因子α)およびPlatzら、米国特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子)が挙げられる。全身作用を目的とした薬物の肺送達のための方法および組成物は、Wongらに対して1995年9月19日に発行された米国特許第5,451,569号に記載される。
【0126】
治療薬の肺送達のために設計された広範な医療用デバイスは、本発明の実施における使用が企図され、これらのデバイスとしては、噴霧器、定量吸入器、および粉末吸入器(これらの全ては、当業者にとって身近である)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
本発明の実施に適した市販されているデバイスはのいくつかの特定の例は、Mallinckrodt,Inc.、St.Louis、Missouriによって製造されるUltravent噴霧器;Marquest Medical Products、Englewood、Coloradoによって製造されるAcorn II噴霧器;Glaxo Inc.、Research Triangle Park、North Carolinaによって製造されるVentolin定量吸入器;およびFisons Corp.、Bedford、Massachusettsによって製造されるSpinhaler粉末吸入器である。
【0128】
このようなデバイスの全ては、ゲルソリンを分散させるのに適した処方物の使用を必要とする。代表的に、各処方物は、利用されるデバイスの型に特異的であり、そして治療において有用な通常の希釈剤、アジュバントおよび/またはキャリアに加えて、適切な噴霧剤物質の使用を必要とし得る。また、リポソーム、マイクロカプセルもしくはミクロスフェア、包接複合体(inclusion complex)、または他の型のキャリアの使用が、企図される。化学的に修飾されたゲルソリンはまた、化学修飾の型または使用されるデバイスの型に依存して、異なる処方物中に調製され得る。
【0129】
噴霧器(ジェット噴霧器または超音波噴霧器のいずれか)で使用するのに適した処方物は、代表的に、溶液1mLあたり約0.1mg〜25mgの生物学的に活性なゲルソリンの濃度で水中に溶解されたゲルソリンを含む。この処方物はまた、(例えば、ゲルソリンの安定化および浸透圧の調節のために)緩衝剤および単一の糖を含み得る。噴霧器の処方物はまた、エアロゾルの形成における溶液の霧化によって生じる、ゲルソリンの表面に誘起される凝集を減少させるか、または防止するために、界面活性剤を含み得る。
【0130】
一般に、定量吸入器デバイスで使用するための処方物は、界面活性剤の補助を伴う噴霧剤中に懸濁されたゲルソリンを含有する、微細に分離した粉末を含む。この噴霧剤は、この目的のために利用される都合のよい任意の物質(例えば、クロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、または炭化水素(トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、および1,1,1,2−テトラフルオロエタンまたはそれらの組み合わせが挙げられる))であり得る。適切な界面活性剤としては、ソルビタントリオレエートおよび大豆レシチン(soya lecithin)が挙げられる。オレイン酸はまた、界面活性剤として有用であり得る。
【0131】
粉末吸入器デバイスから分散させるための処方物は、ゲルソリンを含有する微細に分離した乾燥粉末を含み、そしてまた、ラクトース、ソルビトール、スクロース、またはマンニトールのような膨張剤(bulking agent)を、このデバイスからのこの粉末の分散を容易にする量(例えば、処方物の50重量%〜90重量%)で含み得る。ゲルソリンは、肺の末梢に対する最も有効な送達のために、10mm(またはミクロン)未満(最も好ましくは0.5mm〜5mm)の平均粒子サイズの粒子形態で、最も有利に調製されるべきである。
【0132】
本発明の薬学的組成物の鼻(または鼻腔内)への送達もまた、企図される。鼻への送達は、この治療薬の鼻への投与後に、本発明の薬学的組成物の血流への直接的な通過を可能にし、この送達は、肺における製品の堆積を必要としない。鼻への送達のための処方物としては、デキストランまたはシクロデキストランを含む処方物が挙げられる。
【0133】
鼻への投与に関して、有用なデバイスは、定量スプレーを備える小型の硬質ボトルが、連結される。1つの実施形態において、この一定用量は、規定された容量のチャンバーに本発明の溶液の薬学的組成物を引き込むことによって送達される。このチャンバーは、エアロゾル化のための寸法のアパーチャ、およびチャンバー中の液体が加圧される場合に噴霧を形成することによるエアロゾル処方物を有する。このチャンバーは、本発明の薬学的組成物を投与するために加圧される。特定の実施形態において、このチャンバーは、ピストンの配置である。このようなデバイスは、市販されている。
【0134】
あるいは、圧搾される場合に噴霧を形成するエアロゾル処方物をエアロゾル化する寸法のアパーチャおよび開口部を有する可撓性の圧搾ボトルは、が使用される。この開口部は、通常、このボトルの先端に見出され、そしてこの先端は、一般に、このエアロゾル処方物の効率的な投与のために鼻孔に部分的に適合するように先細になる。好ましくは、鼻吸入器は、薬物の一定用量の投与のために、このエアロゾル処方物の一定量を提供する。
【0135】
化合物は、全身的に送達することが所望される場合、注射による非経口的な投与(例えば、ボーラス注射または持続注入)のために処方され得る。注射のための処方物は、添加された保存料を有する単位投薬形態(例えば、アンプルまたは複数用量の容器)で存在する。これらの組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物、溶液、またはエマルションのような形態をとり得、そして懸濁化する因子、安定化する因子および/または分散させる因子のような処方用の因子を含み得る。
【0136】
非経口的な投与のための薬学的処方物としては、水溶性形態の活性化合物の水性溶液が挙げられる。さらに、この活性化合物の懸濁物は、適切な油性の注射用懸濁物として調製され得る。適切な新油性の溶液またはビヒクルとしては、ゴマ油のような脂肪油、または合成の脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリド)、またはリポソームが挙げられる。水性の注射用懸濁物は、溶液の粘性を増加させる物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストラン)を含み得る。必要に応じて、この懸濁物はまた、適切な安定剤、または高濃度の溶液の調製を可能にする、化合物の溶解性を増加させる因子を含み得る。
【0137】
あるいは、この活性化合物は、適切なビヒクル(例えば、パイロジェンを含まない滅菌した水)による構成のために、使用前においては粉末形態であり得る。
【0138】
上記化合物はまた、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドのような都合のよい坐剤の基剤を含む直腸用組成物または膣用組成物(例えば、坐剤または浣腸)中に処方され得る。
【0139】
これまでに記載された処方物に加えて、上記化合物はまた、デポー調製物として処方され得る。このような長く作用する処方物は、適切なポリマー物質か、もしくは適切な疎水性物質(例えば、受容可能な油におけるエマルションのような)か、もしくはイオン交換樹脂と共に処方されても、噴霧可能な可溶性の誘導体(例えば、噴霧可能な可溶性の塩)として処方されてもよい。
【0140】
上記薬学的組成物はまた、適切な固相もしくはゲル相のキャリアまたは賦形剤を含有し得る。このようなキャリアまたは賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールのようなポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
適切な液体または固体の薬学的調製物形態は、例えば、吸入のための水溶液または生理食塩水溶液であるか、マイクロカプセル化されるか、渦巻き型にされる(encochleated)か、微小金粒子上に被膜されるか、リポソーム(噴霧されるエアロゾル)中に含まれるか、皮膚に移植するためのペレットであるか、または皮膚に掻きこまれる尖った物の上に乾燥される。この薬学的組成物としてはまた、調製用の賦形剤および添加剤および/または助剤(例えば、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨張剤(swelling agents)、滑沢剤、香料、甘味料または可溶化剤)が上に記載されるように慣習的に使用される、顆粒、粉末、錠剤、コーティングされた錠剤、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ、エマルション、懸濁物、クリーム、点滴または活性化合物の持続的な放出を伴う調製物が挙げられる。この薬学的組成物は、種々の薬物送達システムにおいて使用するのに適切である。薬物送達のための方法の簡単な概要については、Langer、Science 249:1527−1533、1990(これは本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0142】
ゲルソリン、および必要に応じて、他の治療剤は、それ自体で投与されても、薬学的に受容可能な塩の形態で投与されてもよい。
【0143】
上記治療因子(具体的には、ゲルソリンが挙げられるが、これに限定されない)は、粒子として提供され得る。本明細書中で使用される場合、粒子は、ゲルソリンまたは本明細書中に記載される他の治療因子の全てまたは一部からなり得るナノ粒子もしくはマイクロ粒子(またはいくつかの場合においてはそれより大きい粒子)である。これらの粒子は、コーティングによって囲まれるコア中に治療因子を含み得、このコーティングとしては、腸溶コーティングが挙げられるが、これに限定されない。これらの治療因子は、粒子全体に分散され得る。これらの治療因子は、この粒子中に吸着され得る。これらの粒子は、0次放出、一次放出、二次放出、遅延放出、持続放出、即時放出およびそれらの任意の組み合わせなどが挙げられる任意の次数の放出動態であり得る。この粒子は、上記治療因子に加えて、製薬および医薬の分野において慣用的に使用される物質を含み得、これらとしては、侵食可能な物質、侵食不可能な物質、生分解性物質、もしくは非生分解性物質またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらの粒子は、溶液または半固体状態のゲルソリンを含むマイクロカプセルであり得る。これらの粒子は、実質的に任意の形状であり得る。
【0144】
非生分解性ポリマー物質および生分解性ポリマー物質の両方が、上記治療因子を送達する粒子の製造に使用され得る。ポリマーは、天然のポリマーであっても合成のポリマーであってもよい。このポリマーは、放出が所望される時間に基づいて選択される。目的の粒子の生体接着性ポリマーとしては、H.S.Sawhney、C.P.PathakおよびJ.A.Hubell、Macromolecules、(1993)、26:581−587(この教示は本明細書中に援用される)に記載される生体内分解性のヒドロゲルが挙げられる。これらとしては、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルテン(glutin)、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、およびポリ(オクタデシルアクリレート)が挙げられる。
【0145】
上記治療因子は、放出制御システム中に含まれ得る。用語「放出制御」は、処方物からの薬物放出の様式およびプロフィールが制御される薬物含有処方物をいうことが意図される。これは、即時放出型処方物および非即時放出型処方物をいい、非即時放出型処方物としては、持続放出型処方物および遅延放出型処方物が挙げられるが、これらに限定されない。用語「持続放出」(「徐放」ともいわれる)は、延長された時間にわたって薬物の段階的な放出を提供し、そして必ずではないが好ましくは、延長された時間にわたって、薬物の実質的に一定の血中レベルをもたらす薬物処方物をいう慣習的な意味で使用される。用語「遅延放出」は、処方物の投与と処方物からの薬物の放出との間に時間の遅延がある薬物処方物をいう慣習的な意味で使用される。「遅延放出」は、延長された時間にわたる薬物の段階的な放出を含んでも含まなくてもよく、したがって「持続放出」であってもなくてもよい。
【0146】
長期持続放出型移植物の使用は、慢性的な状態を処置するために特に適切であり得る。本明細書中で使用される場合、「長期」放出は、移植物が少なくとも7日間、および好ましくは30日間〜60日間にわたって治療的レベルの活性成分を送達するために構築され、そして配置されることを意味する。長期持続放出型移植物は、当業者に周知であり、そしてこれらとしては、上に記載される放出システムのいくつかが挙げられる。
【0147】
本発明はまた、キットの使用を企図する。本発明のいくつかの局面において、このキットは、薬学的調製物のバイアル、薬学的調製物用の希釈剤のバイアル、およびゲルソリンを備え得る。薬学的調製物のための希釈剤を含むバイアルは、必要に応じて備えられる。この希釈剤のバイアルは、希釈剤(例えば、ゲルソリンの濃縮溶液または凍結乾燥粉末であり得るものを希釈するための生理的食塩水)を含む。説明書としては、特定の量の希釈剤と特定の量の濃縮された薬学的調製物を混合することによって、注射または注入のための最終的な処方物を調製するための説明書が挙げられ得る。この説明書としては、有効量のゲルソリンによって被験体を処置するための説明書が挙げられる。この調製物を含む容器(この容器が、ボトル、隔壁を有するバイアル、隔壁を有するアンプル、注入用バッグなどであるか否かにかかわらず)が、調製物がオートクレーブされたか、またはそうでなければ滅菌された場合に色が変わる慣習的な目印のような印を含み得ることはまた、理解される。
【0148】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示され、これは、決してさらなる限定として解釈されるべきではない。本願の全体にわたって列挙される全ての参考文献(文献の参考文献、発行された特許、公開された特許出願、および同時係属中の特許出願を含む)の全内容は、参照として本明細書によって明確に援用される。
【実施例】
【0149】
敗血症は、血漿ゲルソリンの枯渇が挙げられる種々の生化学的な異常に関連する。血漿ゲルソリンの正確な機能は公知ではないが、臨床研究および動物研究は、損傷および炎症による血漿ゲルソリンの枯渇が、不利な転帰に関連することを示した。本発明者らは、敗血症のマウスにおいて血漿ゲルソリンを試験し、そして血漿ゲルソリンの枯渇が敗血症のチャレンジ(challenge)後に起こり、そして著しい枯渇が致死的な敗血症に伴って起こることを見出した。血漿ゲルソリンの補充は、より有利なサイトカインプロフィールを生じ、そして死亡率を改善する。血漿ゲルソリンは、全身的な炎症において生理学的な役割を担い、そしてゲルソリンの置換は、感染および敗血症に対する新規の治療を示す。
【0150】
細胞運動に関連する細胞内のアクチン結合タンパク質として最初に見出されたゲルソリン(GSN)(具体的には、細胞質のゲルソリン(cGSN))(Yin,H.L.およびStossel,T.P.、(1979)、Nature 281、583−6)はまた、豊富な分泌タンパク質である(Yin,H.L.、Kwiatkowski,D.J.、Mole,J.E.およびCole,F.S.、(1984)、J Biol Chem 259、5271−6)。ゲルソリンの輸送されるアイソフォーム(血漿ゲルソリン(pGSN)と称される)は、25個のさらなるアミノ酸を有し、そして単一遺伝子の選択的スプライシングによって生じる(Kwiatkowski,D.J.、Stossel,T.P.、Orkin,S.H.、Mole,J.E.、Colten,H.R.およびYin,H.L.、(1986)、Nature 323、455−8)。「アクチンスカベンジャー」として仮定される(Lee,W.M.およびGalbraith,R.M.、(1992)、N Engl J Med 326、1335−41)が、pGSNの生物学的な機能は、不明である。ショウジョウバエが挙げられる複雑な生物におけるpGSNの普及(Stella,M.C.、Schauerte,H.、Straub,K.L.およびLeptin,M.、(1994)、J Cell Biol 125、607−16)は、pGSNが重要な生理学的役割を担うことと合致する。ヒトにおいて、外傷、大規模な溶血、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、造血幹細胞移植(HSCT)、急性肝不全、筋壊死、膵炎、および敗血症は、pGSNの枯渇を生じ得る(Dahl,B.、Schiodt,F.V.、Ott,P.、Gvozdenovic,R.、Yin,H.L.およびLee,W.M.、(1999)、Shock 12、102−4;Suhler,E.、Lin,W.、Yin,H.L.およびLee,W.M.、(1997)、Crit Care Med 25、594−8;DiNubile,M.J.、Stossel,T.P.、Ljunghusen,O.C.、Ferrara,J.L.およびAntin,J.H.、(2002)、Blood 100、4367−71;ならびにLind,S.E.、Smith,D.B.、Janmey,P.A.およびStossel,T.P.、(1988)、Am Rev Respir Dis 138、429−34)。さらに、外傷の患者およびHSCTの受容者において、より低いpGSNレベルは、上昇した罹患率および死亡率を予期する(DiNubile,M.J.、Stossel,T.P.、Ljunghusen,O.C.、Ferrara,J.L.およびAntin、J.H.、(2002)、Blood 100、4367−71;Mounzer,K.C.、Moncure,M.、Smith,Y.R.およびDinubile,M.J.、(1999)、Am J Respir Crit Care Med 160、1673−81)。
【0151】
動物において、やけどならびに酸化的ストレス、放射線および過酸素症によって誘導される急性肺障害はまた、pGSNの枯渇を引き起こす(Rothenbach,P.A.、Dahl,B.、Schwartz,J.J.、O’Keefe,G.E.、Yamamoto,M.、Lee,W.M.、Horton,J.W.、Yin,H.L.およびTumage,R.H.、(2004)、J Appl Physiol 96、25−31;Christofidou−Solomidou,M.、Scherpereel,A.、Solomides,C.C.、Christie,J.D.、Stossel,T.P.、Goelz,S.およびDiNubile,M.J.、(2002)、J Investig Med 50、54−60;ならびにChristofidou−Solomidou,M.、Scherpereel,A.、Solomides,C.C.、Muzykantov,V.R.、Machtay,M.、Albelda,S.M.およびDiNubile,M.J.、(2002)、Lung 180、91−104)。これらの動物の数種に対するpGSNの投与は、それらの損傷を緩和する(Rothenbach,P.A.、Dahl,B.、Schwartz,J.J.、O’Keefe,G.E.、Yamamoto,M.、Lee,W.M.、Horton,J.W.、Yin,H.L.およびTumage,R.H.、(2004)、J Appl Physiol 96、25−31;ならびにChristofidou−Solomidou,M.、Scherpereel,A.、Solomides,C.C.、Christie,J.D.、Stossel,T.P.、Goelz,S.およびDiNubile,M.J.、(2002)、J lnvestig Med 50、54−60)。
【0152】
本発明者らは、敗血症に関連した全身的な炎症がpGSNを低下させる場合、pGSNの回復が有益であり得ると仮定した。ここで、本発明者らは、pGSNレベルが内毒血症または腹膜炎に供されたマウスにおいて下降し、そしてpGSNの回復が敗血症のマウスにおいて改善された生存プロフィールおよびサイトカインプロフィールの変化を生じることを示す。
【0153】
(材料および方法)
(動物)
野生型C57BL/6雄マウスを、Charles River Laboratories(Wilmington、MA)から購入した。toll様レセプター4(TLR4)変異C3H/HeJ雄マウスを、Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から購入した。マウスを、標準的な食餌および水を自由に得られるようにし、そして本明細書に記載される全ての手順および研究は、The Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsに示されるような基準に従い、Harvard Medical Area Standing Committee on Animalsによって承認された。
【0154】
(LPS用量応答)
18〜20gの体重である6〜8週齢の雄C57BL/6マウスに、100μlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のLPS(Pseudomonas aeruginosa血清型10、Sigma(St.Louis、MO)製)を、0mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、および40mg/kgの用量で腹腔内(i.p.)に注射した。3〜4を各群において使用した。LPS投与の24時間後、動物を、0.015〜0.017mg/gのAvertin(Fluka Chemie、Buchs、Switzerland)のi.p.によって麻酔した。次いで、血液を、後眼窩の出血によって、0.1容量のAster−Jandl抗凝血溶液(Gamulescu,M.A.、Seifert,K.、Tingart,M.、Falet,H.およびHoffmeister,K.M.、(2003)、Platelets 14、211−7)中に回収し、そして1000×gで10分間遠心分離して、血漿を生成した。血漿を、液体窒素で凍結し、そして−80℃に保存した。
【0155】
(CLP(盲腸結紮穿刺)によるマウスの敗血症)
8〜10週齢の雄C57BL/6マウスを、最初にi.p.の0.015〜0.017mg/gのAvertinによって麻酔した。それぞれの麻酔した動物の盲腸を、前腹部の下部における小切開によって曝し、そして19ゲージの針で穿刺した。少量の腸の内容物を押し出し、そして盲腸を、6−0絹縫合糸によって腸管を塞がずに結紮した。これらの腸の内容物の置換の後、腹部を、4−0絹縫合糸で閉じた。pGSNレベルの研究のために、5匹の動物は、外科手術後に、1mlのPBSを皮下に即座に受容した。CLPを受けなかった5匹の動物は、コントロールとして機能した。動物を、食餌および水を自由に得られるようにして回復させた。CLPの24時間後、次いで動物を麻酔し、そして血漿を、これまでに記載したように回収した。さらに、心臓、肺、肝臓、腎臓および後肢からの骨格筋を、各動物から収集し、そして−80℃に凍結した。肺を、最初に右心室を穿刺し、そして左心室に1mlのPBSを注射することによる灌流後に収集した。死亡率の研究のために、20匹の動物をCLPに供し、そして10匹の動物は、1)150mMのNaCl(生理食塩水)または2)生理食塩水中の0.4mMのCaを伴う8mg/mlの組換えヒトpGSN(Biogen、Boston、MA)による1mlの皮下(s.c.)注射を、即時、およびCLPの24時間後に受容した。
【0156】
(LPSの死亡率および血漿のサイトカイン)
18〜20gの体重である6〜8週齢の雄C57BL/6マウスに、25mg/kgのLPS(Escherichia coli 055:B5、St.Louis、Sigma)をi.p.に注射し、そしてこれらのマウスを分割して、1)pGSN:生理食塩水中の1mMのCaを伴う20mg/mlの組換えヒトpGSN(8匹の動物)、2)BSA:生理食塩水中の1mMのCaを伴う20mg/mlのウシ血清アルブミン(Serologicals、Norcross、GA)(9匹の動物)、または3)生理食塩水:滅菌生理食塩水のみ(9匹の動物)の、400μlの背部皮下注射を、即座ならびにLPS注射の24時間後、48時間後、および72時間後に受容させた。これらの動物を、頻繁にモニタリングし、そして死亡率を7日間記録した。生き残ったマウスを、安楽死させた。別の実験において、マウスは、同じLPSチャレンジを受容し、そしてこれらのマウスを分割して、pGSNまたは生理食塩水の処置を受容させ、そしてLPSチャレンジの6時間後(1つの処置群あたり5匹のマウス)および24時間後(1つの処置群あたり4匹のマウス)に、血漿および器官の回収に供した。さらに、LPSチャレンジを伴わないコントロールのマウスに、血液および器官の収集に供する24時間前にs.c.で生理食塩水(5匹のマウス)またはpGSN(3匹のマウス)のみを与えた。血漿および器官を、記載されるように各マウスから回収した。
【0157】
(LPS抵抗性マウスにおけるpGSN)
19〜20gの体重である6〜8週齢の雄C3H/Hejマウスに、25mg/kgのE.coliのLPS(4匹のマウス)をi.p.に注射し、そしてチャレンジしなかったマウスは、コントロール(4匹のマウス)として機能した。LPSチャレンジの24時間後、血漿サンプルを上に記載されるように麻酔したマウスから回収した。ゲルソリンレベルを、各血漿サンプルにおいて測定した。
【0158】
(マウスのサイトカイン測定)
血漿のサイトカイン(GM−CSF、INF−γ、IL−1β、IL−6、IL−10、およびTNF−α)を、ELISAアッセイ(LINCO Research、St.Charles、MO)を使用して測定した。このアッセイのより低い範囲は、各サイトカインについて3.2pg/ml以下であり、そして3.2pg/ml以下のレベルに、0の値を割り当てた。
【0159】
(ゲルソリンおよびアルブミンの測定)
血漿ゲルソリンを、そのアクチン核形成を刺激する能力(Janmey,P.A.、Chaponnier,C.、Lind,S.E.、Zaner,K.S.、Stossel,T.P.およびYin,H.L.、(1985)、Biochemistry 24、3714−23)によって二つ組で測定した。マウスの血漿を、0.1MのKCl、0.2mMのMgC1、1mMのEGTA、0.5mMのATP、0.5mMのβ−メルカプトエタノール、10mMのTris−HCl緩衝液(pH7.4)(緩衝液B)中に1:5で希釈した。この希釈した血漿サンプルの5μlを、6×50mmのホウケイ酸培養チューブ中の、1.5mMのCaClおよび0.4μMのPhallacidinを補充した280μlの緩衝液Bに添加した。このアクチン重合反応を、0.5mMのATP、5mMのβ−メルカプトエタノール、0.2mMのCaCl、0.2mMのTris−HCl緩衝液(pH7.4)(緩衝液A)中の15μlの20μMのピレン標識アクチン(pyrene actin)に添加することによって開始した。重合を、それぞれ366nmおよび386nmの励起波長および放出波長にて、分光蛍光光度計で200秒間モニタリングした。ゲルソリン濃度を、組換えヒトpGSNを使用した検量線から推定した。これらのアッセイのために、KouyamaおよびMihashiの方法(Kouyama,T.およびMihashi,K.、(1981)、Eur J Biochem 114、33−8)によって調製したストックのピレン標識アクチンを、解凍され、そして緩衝液Aで10倍に希釈され、一晩静置した後に250,000×gで30分間遠心分離されるロットで−80℃に保存した。
【0160】
このアクチン核形成アッセイによるゲルソリンの定量化は、ウエスタンプロッティング測定から得られたレベル(Mounzer,K.C.、Moncure,M.、Smith,Y.R.およびDinubile,M.J.、(1999)、Am J Respir Crit Care Med 160、1673−81)と、良好に相関した。このアッセイは、LPS処置されたゲルソリン−ヌルマウスの血漿(データは示さない)における実質的に0の活性によって証明されるように、高度に特異的であるが;しかし、このアッセイは、cGSNとpGSNとの間を区別しない。それはまた、種特異的でなく、そして組換えヒトpGSNによって処置したマウスにおける総ゲルソリンレベルを概算し得る。pGSNと複合体化する脂質は、pGSNのアクチン核形成活性に影響しない(Janmey,P.A.、Iida,K.、Yin,H.L.およびStossel,T.P.、(1987)、J Biol Chem 262、12228−36)。
【0161】
アルブミンレベルを、製造業者の説明書に従って市販のキット(Stanbio、Boerne、TX)を使用し、比色測定で測定した。
【0162】
(器官からのタンパク質抽出)
E.coliのLPS、またはCLPを25mg/kgでi.p.にチャレンジした6時間後に回収した器官を、分析した。チャレンジしなかったマウスから得た器官は、コントロールとして機能した。各器官を、1:100の濃度でタンパク質インヒビターのカクテル(Calbiochem、La Jolla、CA)を補充し、そしてバナジン酸ナトリウムを補充したRIPA緩衝液(Boston Bioproducts、Ashland、MA)中でホモジナイズし、そして4℃にて2,000×gで30分間遠心分離する前に氷上で30分間インキュベートした。この上清を、取り出し、そして再び4℃にて10,000×gで30分間遠心分離した。この上清を、取り出し、そして分析まで−80℃に保った。
【0163】
(ウエスタンブロット分析)
タンパク質濃度を、製造業者の説明書に従ってDC Protein Assay(Bio−Rad、Hercules、CA)を使用して、各サンプルについて決定した。10μgの各サンプルを、SDS−サンプル緩衝液(Boston Bioproducts)中で85℃にて3分間加熱し、次いで12% Tris−Glycine Gel(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用したSDS−PAGEによって分析し、そしてPVDF膜(Millipore、Bedford、MA)に転写した。この膜を、0.05%のTween 20を含むTris緩衝生理食塩水(TBS)中の5%の脱脂粉乳において一晩ブロックした後、マウスpGSN抗血清を、1:1000で添加し、次いで1:2000のHRP結合型の抗ウサギIgG(Cell Signaling、Beverly、MA)でプローブした。化学発光を、LumiGLO(Cell Signaling、Beverly、MA)によって発生させ、そしてフォトフィルム(photofilm)を曝露し、そして現像した。抗マウスpGSN血清を、市販のサービス(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用してマウスpGSNの血漿の拡大(plasma extension)に由来するペプチドに対してウサギを免疫化することによって産生した。この抗血清の特異性および感受性を、ELISAおよびウエスタンブロッティングを使用して試験し、そしてこのELISAおよびウエスタンブロッティングは、マウスpGSNのみに対して特異的であり、細胞質のゲルソリン(cGSN)に対して特異的でないことを示した(データは示さない)。
【0164】
(ゲルソリン−LPS結合)
全ての研究を二つ組で行った。Microlite 2(白色96ウェル平底プレート)(Dynex Technologies、Chantilly、VA)の各ウェルを、種々の量の組換えヒトpGSNまたはBSAでコーティングし、そして4℃で一晩インキュベートした。PB緩衝液(145mMのNaCl、5mMのKCl、2mMのMgCl,3.5mMのNaHP0、10mMのグルコース、10mMのHepes、3mg/mlのBSA、1mMのCaCl、pH7.4)で4回洗浄した後に、2μgのAlexa488標識LPS(Escherichia coli血清型055:B5、Molecular Probes、Eugene、OR)を、100μlのPB緩衝液を有する各ウェルに添加し、そして室温で1時間インキュベートした。PB緩衝液で4回洗浄した後に、各ウェルの蛍光を、それぞれ488nmおよび520nmの励起波長および放出波長にて分光蛍光光度計で分析した。Alexa488−LPS結合した量を、PB緩衝液中に種々の量のAlexa488−LPSをシードすることによって作成される検量線からの外挿に基づいて推定した。
【0165】
(単球細胞のLPS刺激)
ヒト単球細胞株THP−1を、American Type Culture Collection、Manassas、VAから購入した。細胞を、10%のウシ胎仔血清および2%のペニシリン−ストレプトマイシン(GIBCO)を補充したRPMI(GIBCO、Grand Island、NY)中に37℃にて維持した。50,000個の細胞を、24ウェルプレート中の各ウェルに播種し、そして100ngのE.coliのLPSで刺激するか、または刺激せず、そして200μg/mlのヒト組換えpGSNまたはBSAによって処理した。LPSの2時間後、200μlの培地を回収し、そして細胞を、1000×gで10分間の遠心分離によって除去した。細胞を含まない培地のTNF−αレベルを、ELISA(R&D Systems、Minneapolis、MN)によって決定した。
【0166】
(統計)
値を、平均±SDとして示す。ノンパラメトリック検定(スペルマン順位相関)を使用して、この用量反応研究における相関を分析した。動物の死亡率を、Kaplan−Meier曲線として示し、そして対数順位検定を使用して、動物の死亡率に対する処置の影響を分析した。Mann−Whiney U検定を使用して、サイトカインレベルとpGSNレベルとの間の違いを評価した。0.05未満のP値を、有意と見なした。
【0167】
(結果)
(LPSまたはCLPに供されたマウスにおけるpGSNレベルの減少)
図1Aは、増加する非致死用量のPseudomonasのLPSの注射が、20mg/kgの用量において最大である、マウスにおけるpGSNレベルの進行性の減少をもたらしたことを示す(P<0.05)。血漿アルブミンレベルは、LPS処置によって変化しなかった。同様に、アルブミンレベルがCLPの後にマウスにおいて増加した(P=0.02)一方で、pGSNレベルは、下降した(P<0.001)。これらのデータは、敗血症に起因する全身的な炎症がpGSNに対して特定の影響を有することを示唆する。
【0168】
(pGSNの補充は、敗血症のマウスにおいて生存率を改善した)
25mg/kgの用量(i.p.)でのE.coliのLPSは、注射の7日以内に、マウスにおいて90%を超える死亡率を誘導し、そして生存したマウスは、完全に回復したようであり、かつ苦痛の徴候を示さない。図2Aに示されるように、LPSのチャレンジと同時での外因性pGSNの投与は、内毒血症のマウスにおいて、生理食塩水によって処置したマウス(P<0.001)、またはBSAによって処置したマウス(P<0.001)と比較して、生存率をかなり向上させた。図2Bは、pGSNを受容したマウスがまた、CLPの後に生理食塩水を受容したマウスより、かなり良好な生存率を有した(P=0.001)ことを示す。
【0169】
(外因性pGSNの投与は、内毒血症のマウスにおいてpGSNレベルを効率的に上昇させた)
図3は、E.coliのLPSの致死用量によってチャレンジしたマウスにおけるpGSNのレベルを示す。pGSNを14%下落させるのみの非致死的なPseudomonasのLPSと対照的に、致死用量のE.coliのLPSは、LPSチャレンジの6時間以内にpGSNレベルの50%の下落を誘導する。8mgの組換えpGSNの皮下注射は、内毒血症のマウスにおいてpGSNを、正常範囲にか、または正常範囲をこえて首尾よく維持する。
【0170】
(内毒血症のマウスのサイトカインプロフィールに対するpGSN補充の効果)
本発明者らは、pGSNの投与が内毒血症のマウスのサイトカインプロフィールを変化させるか否かを調べた。図4Aは、LPSの6時間後に、pGSN処置した内毒血症のマウスと生理食塩水処置した内毒血症のマウスとの間で、血漿サイトカインプロフィールにおいて違いを示さなかった(示される全てのサイトカインについてP>0.05)。TNF−αレベルは、ほぼベースラインであり、TNF−αがピークに達し、そしてマウスにおけるLPSチャレンジの2〜3時間以内に下降し始めることを示す公表された報告(Villa,P.、Sartor,G.、Angelini,M.、Sironi,M.、Conni,M.、Gnocchi,P.、Isetta,A.M.、Grau,G.、Buurman,W.、van Tits,L.J.ら、(1995)、Clin Diagn Lab Immunol 2、549−53)と合致した。
【0171】
しかし、LPSチャレンジの24時間後に、pGSN処置マウスは、いくつかの炎症誘発性サイトカイン(GM−CSF、IFN−γ、IL−1β)の、有意により低いレベルを有したが、IL−6レベルおよびTNF−αレベルに、検出可能な違いはなかった(図4B)。さらに、pGSN処置は、有意により高いIL−10レベルをもたらした。pGSNは、pGSN投与を伴うか、またはこれを伴わずにチャレンジされなかったマウスが、著しく異なるサイトカインプロフィールを有さなかったように、IL−10の分泌を直接刺激しないようであり;具体的には、IL−10は、pGSN処置したチャレンジされなかったマウスにおいて、増加しなかった(データは示さない)。
【0172】
(pGSNの組織分布)
マウスpGSN抗血清を使用し、25mg/kgのE.coliのLPSによってか、またはこれによらずに処置した6時間後に、マウスから収集した骨格筋、心臓、腎臓、肝臓、および肺の代表的なウエスタンブロット分析を、図6に示す。本発明者らは、肺が、正常な状態および内毒血症の状態の両方において最も高いpGSNの濃度を有することを見出した。肺をPBSで灌流して、収集する前に血管内の血液を除去したので、血液濃度は、本発明者らの結果を説明し得ない。本発明者らは、CLPに供したマウスにおいて、同様なpGSNの組織分布を見出した(データは示さない)。
【0173】
(pGSNは、LPSに結合するが、単球を活性化するLPSを阻害しない)
pGSNは、生物活性脂質(例えば、リゾホスファチジン酸)に結合し得る(Goetzl,E.J.、Lee,H.、Azuma,T.、Stossel,T.P.、Turck,C.W.およびKarliner,J.S.、(2000)、J Biol Chem 275、14573−8)ことに起因して、本発明者らは、pGSNがLPSにも結合し得る可能性を調査した。図7は、pGSNが、LPSに対してほとんど親和性を示さないコントロールのタンパク質(BSA)に結合する一方で、蛍光LPSに特異的に結合することを示す。しかし、pGSNは、ヒト単球からTNF−αの分泌を誘発するLPSの能力を妨害しないようである。なぜなら、LPSで刺激し、pGSNまたはBSAで処置したTHP−1細胞は、培地中に同様の量のTNF−αを分泌したからである(図8)。
【0174】
(pGSNは、LPSによってチャレンジしたTLR4変異マウスに影響しない)
LPSがpGSNの枯渇を直接引き起こすか否かを調べるために、本発明者らは、C3H/HeJマウス(マウスにLPS誘導性の炎症に対する抵抗性を与える変異したTLR4を発現する株(Beutler,B.およびPoltorak,A.、(2001)、Crit Care Med 29、S2−6;考察S6−7))において、pGSNレベルを研究した。図5は、pGSNレベルがE.coliのLPSをチャレンジしたC3H/HeJマウスとE.coliのLPSをチャレンジしなかったC3H/HeJマウスとの間で著しく違わなかったことを示す。LPSに対するそれらの抵抗性と合致して、C3H/HeJマウスはまた、LPSチャレンジ後に完全に正常であるようであった。
【0175】
(考察)
ここで、本発明者らは、著しいpGSNの枯渇がエンドトキシンまたは腹膜炎による敗血症の侵襲後におこり、そして外因性pGSNが敗血症のマウスの生存を劇的に改善することを実証した。これらのデータは、pGSNが、敗血症において、重要な生存を促進する機能を担うことを示す。
【0176】
pGSNが「アクチンスカベンジャー」であるという仮定は、細胞質のゲルソリン(cGSN)についての研究に起因し、そしてアクチン分子のラットへの注入が死亡を引き起こすことを実証する1つの報告に基づく。しかし、初期の敗血症が、アクチンの放出を生じるとは分かっていないので、pGSNは、敗血症において循環するアクチンに対するスカベンジャーとして作用しないかもしれない。本発明者らは、内毒血症のマウスの血漿においてゲルソリン−アクチン複合体を実証できなかった(未公開データ)。
【0177】
本発明者らは、pGSNが、LPSと直接的に相互作用することによって機能する可能性を調査した。pGSNは、LPSを結合し得るが、本発明者らは、pGSNが培養細胞において炎症を惹起するLPSの能力を妨げる証拠を見出さなかった。pGSNを、LPSチャレンジの直後にマウスに注射したが、皮下の投与経路に起因して、循環中に送達されるpGSNにおける遅延が存在した。したがって、pGSNはLPSを直接妨害することによっては、機能しないようであり、そして処置した内毒血症のマウスおよび処置しなかった内毒血症のマウスの、初期のサイトカインプロフィールは、この結論を支持する。LPSを結合するpGSNの能力は、LPS誘導性の免疫応答において、さらに後の事象を変化させる。本発明者らのコントロールのマウスおよびpGSN処置マウスの、類似する初期段階のサイトカインプロフィールはまた、pGSNが初期のサイトカインのシグナル伝達(具体的には、TNF−α)を妨害することによっては機能しないようであることを示唆する。なぜなら内毒血症のマウスモデルにおけるTNF−αの阻害は、LPSチャレンジの3時間〜4時間以内に、血漿のIL−1βレベルおよびIL−6レベルを低下させるからである(Fong,Y.、Tracey,K.J.、Moldawer,L.L.、Hesse,D.G.、Manogue,K.B.、Kenney,J.S.、Lee,A.T.、Kuo,G.C.、Allison,A.C.、Lowry,S.F.ら、(1989)、J Exp Med 170、1627−33)。一方で、LPSの24時間後の、処置したマウスおよび処置しなかったマウスのサイトカインプロフィールは、pGSNが、IL−10(敗血症および炎症において抗炎症性の役割を有すると考えられるサイトカイン)を上方制御しつつ、数種の炎症誘発性サイトカインを90%程度減少させ得る(Moore,K.W.、de Waal Malefyt,R.、Coffman,R.L.およびO’Garra,A.、(2001)、Annu Rev Immunol 19、683−765)。LPSの致死用量が、持続的に高められた炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL−1βおよびIFN−γ)に関連する(Joshi,V.D.、Kalvakolanu,D.V.、Hebel,J.R.、Hasday,J.D.およびCross,A.S.、(2002)、Infect Immun 70、6896−903)ので、本発明者らは、サイトカインプロフィールの変化は、炎症からの回復を促すpGSNと合致すると考える。
【0178】
肺は、ウエスタンブロット分析によって他の器官と比較した場合に、最も高い濃度のpGSNを有するようであり、そしてpGSNの本質的な供給源であり得る。このことは、ノーザンブロット分析を使用して、pGSNの主要な供給源が骨格筋であると結論付けるこれまでの研究(Kwiatkowski,D.J.、Mehl,R.、Izumo,S.、Nadal−Ginard,B.およびYin,H.L.、(1988)、J Biol Chem 263、8239−43)とは対照的である。この矛盾は、ノーザンブロット分析の定量化の性能またはタンパク質の産生を示さないmRNAの発現に起因し得るが、これらに限定されない。
【0179】
LPS抵抗性マウスにおけるpGSNの変化の欠如は、pGSNの枯渇が、TLR4のLPS活性化の下流にあり、そして炎症カスケードの開始を必要とすることを示唆する。しかし、現在の研究は、敗血症におけるpGSNの枯渇のメカニズムを解明していない。
【0180】
20年以上前にゲルソリンが見出されて以来、調査の大多数は、cGSNおよびそのアクチンとの相互作用に集中し(Kwiatkowski,D.J.、(1999)、Curr Opin Cell Biol 11、103−8)、そしてpGSNは、ほとんど注目されなかった。本発明者らの研究は、pGSNが、全身的な炎症において臨床的な役割を担い、そしてpGSNの投与が、マウスの敗血症における生存率を改善し、そして炎症からの回復に関するサイトカインの変化を促進することを示す。
【0181】
前述の明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分であると見なされる。本発明は、提供された実施例によって範囲が限定されることはない。なぜならこれらの実施例は、本発明の1つの局面の単なる例示として意図され、そして機能的に等価な他の実施形態は、本発明の範囲内であるからである。本明細書中に示され、そして記載されるものに加えて、本発明の種々の改変は、前述の説明によって当業者に明らかとなり、そして添付の特許請求の範囲の範囲内にである。本発明の利点および目的は、必ずしも本発明のそれぞれの実施形態に包含されるわけではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−67125(P2012−67125A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−282211(P2011−282211)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【分割の表示】特願2007−513408(P2007−513408)の分割
【原出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(504412945)ザ ブライハム アンド ウイメンズ ホスピタル, インコーポレイテッド (54)
【Fターム(参考)】