説明

感染予防寝具製品

枕、掛け布団、マットレス、クッションのような、又は、密封されたカバーを有し、弾力的で変形可能な充填材料を有する同様のもののような、密封された感染予防寝具製品であって、カバーに通気孔手段を含み、通気孔手段は、細菌のサイズの粒子を除くためのろ過膜を含むろ過材を含み、ろ過材は、ろ過材に機械的強度を与えるための材料の強化層も含み、それによって、ろ過材は、それを通して空気を流れさせるが、実質的に液体を透過できないのと同時に、細菌のサイズの粒子に対する障壁を維持する、密封された感染予防寝具製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕、掛け布団、マットレス、クッションなどのような密封された感染予防寝具製品における及び関係する改良に関する。本発明は、通気孔付きの密封された感染予防寝具製品の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
感染予防及び交差感染は、今日の病院における主要な問題であり、多額の費用がかかり、不都合である。細菌株は、抗生物質による治療に対して次第に耐性が強くなっているものが発生している。従って、一度感染が病院内に根付くと、多くの場合根絶することは難しく、かなり急速に広がりうる。「ストライクスルー(strikethrough)」として知られる問題であって、汚染流体が、枕、掛け布団、マットレス又はクッションのような感染予防寝具製品の内部に浸透する問題が、よく知られている。「ストライクスルー」が生じた場合、これらの感染予防寝具製品のいずれかに関連する交差感染の相当のリスクがある。なぜなら、それらは多くの様々なヒトによって続けて使用される傾向があるためである。実際に、この問題は、ヒトが使用する枕、掛け布団などを定期的に交換する状況、例えばホテル及びゲストハウスにおいて生じている。さらに、家庭内でも、アレルギーや呼吸疾患を患う多くの人々が、真菌感染症及び家ダニに関連した問題を抱えている。
一般的にナイロンのメリヤス生地又は織布(熱可塑性物質(一般的にはポリウレタン)コーティングが塗布される)を含み、マットレスの防水カバーとして一般的に使用される多数の市販の材料が存在する。該メリヤス生地又は織布は、機械的強度を与え、一方で、熱可塑性物質(ポリウレタン)コーティングは、防水性を与える。
【0003】
いくらかの当該生地は、微細孔がコーティング中にサブミクロンレベルで存在するので、「水蒸気透過性である」と呼ばれ、水蒸気分子の輸送を名目上可能にする。しかしながら、これらの生地は、枕を通気するのに十分な速度で空気を移動させない。
米国特許明細書番号US4637377は、外科手術の間に、患者の心臓又はほかの体器官を支持するための外科用枕を開示している。US4637377に開示された外科用枕は、使用中に枕の圧縮下でケーシングの中に閉じ込められた空気を放出させるためにケーシング中に通気孔を備える発泡体充填ケーシングを有する。
米国特許明細書番号US5038431は、薬剤投与のための枕を開示している。当該枕は、充填材料の受容のためのポケットを形成する外側のシートを有する。当該ポケットは通気孔を開通し、充填材料は医薬が含浸されている。通気孔が開通するときに、患者は、開いている通気孔を通じて流出する薬剤蒸気に曝される。
これらの先行技術の枕は、「ストライクスルー」の問題を記載していない。
【0004】
米国特許明細書番号4445241は、パッド入りのボディー、マットレスなどのための気密で、流体密閉のカバーを開示している。当該カバーは、上部、下部、及び、複数の側部を有する。少なくとも1つの開通部が、カバーの内部と周囲雰囲気との通気を提供する。側部の少なくとも2つが、少なくとも内部の、中間部の、および外部の材料の層で形成されている。互いに関わる通気開通部オフセットは、内部の及び中間部の材料の層に与えられる。少なくとも1つのフィルターは、中間部の、及び、外部の材料の層の間に配置されている。複数の連接継ぎ目は、側部の長手方向の上及び下の縁の対点から逆に、側部を二分する長手方向の中央線に向かって、側部の幅を横切って、部分的にのびる。連接継ぎ目は、フィルターが配置されている複数のポケットを定める。連接継ぎ目は、その中で粗粒子をさえぎるための材料の個々の層の間の通気道も定める。
【0005】
US−A−4,445,241は、粒子及び細菌用フィルターの収容のためのポケットを構成するための、融着した継ぎ目が備わった枕の湿密及び気密カバーを開示している。これは、製造が難しく高価な複合体製品である。継ぎ目は、枕の内部と外部の間にS字型の通気道を定め、それぞれの気流は、少なくとも2つのフィルターをとおる(contain)。しかしながら、これらのフィルターは、本発明のように、融着又はその他別の方法で物理的に互いに連接されないか、連接できず、そして、実際には通気道の外部の開通部の少なくとも1つフィルターは、スリット形状の開通部28を通って除かれうる(コラム4、13〜15行目参照のこと)。S字型の通路は、実際には細菌の温床を与え、したがって、本目的を達成できない。
US−A−4,445,241と対比して、本発明の更なる特徴及び有利な点は、フィルターが、枕から、意図的に、又は、不注意で除かれる(それゆえに、US−A−4,445,241の設計で可能性があるように、事によってはろ過が正常に行われない)はずがないことである。
【0006】
密封された枕を開発する場合に、主要な解決課題は、枕のコアの十分な通気を確実にすることである。枕は、カバー用の密封材を使用し、継ぎ目を融着することで気密状態に作られうる。しかしながら、そのような枕における通気がおこなわれないと、使用において例えば以下のような課題が生じる:
1)頭部を枕上で休ませる場合に、枕がへこまない。このことは不快であり、頭部が休むのに不安定な表面をつくりだす。
2)偶然、又は、頭部が最初に接触するときの枕に対する衝撃は、継ぎ目上に多分のストレスを生じさせ、結果として破裂しうる。
3)拡散による水蒸気粒子の漸次侵入は、枕の中での液化を生じさせ、その中の材料の加速分解をもたらす。
【0007】
さらに、汚染物質の粒子又は液体に対する障壁を有する枕、クッション、又は、マットレスを提供するために多くの試行錯誤がなされているが、完全に成功したものはない。医療分野で一般的に使用されている今日までの一番の成果は、本出願人の特許明細書番号EP1222886で開示された枕である。それにもかかわらず、本発明の感染予防寝具製品は、EP1222886に開示された枕を超える十分に有利な点を提供する。
欧州特許明細書番号EP1222886は、密封された外側の液体を透過できないカバー、外側カバーの中に保持された充填材料、カバーの内部と外部とを連結するカバー中の通気孔、及び細菌用空気フィルター手段(通気孔を通じて通過する空気のろ過をもたらすために、通気孔を横切るように取り付けられる)を含む枕を開示している。ここで、該フィルターは、耐液体性材料の外層と、外層に取り付けられる多くの積層した内部フィルター材料層を含み、該材料層は、一緒に、通気孔を横切るようにカバーに融着される。細菌用フィルターは、カバーの内部への細菌の侵入を防ぐことを提供する。
【0008】
EP1222886に開示された枕のフィルターの外層は、十分な耐液体性を提供しない。たとえEP1222886フィルターの外層と同じ材料を用いて構築されたろ過材が十分な耐液体性を有しえたとしても、当該ろ過材は、製品が通気性を有するような十分な通気をもたらすことができず、使用中に枕の膨張が生じる。このことは、使用者が休息するのに不快な表面をもたらし、使用中に内圧で破裂しうる。また、EP1222886のフィルターの5層それぞれを融着する方法は、多大な時間を要し、大量生産と商業上の点から、製品の実現を妨げる。
例えば、EP1222886は、フィルターへの防液体外層とは全く異なる、耐液体性のみを教示する。EP1222886に開示されるような繊維製品は、(すなわち、本発明の膜と比較して)比較的低圧レベルで液体が入れるナイロン材料である。EP1222886に開示された繊維製品が、防液体性に作られる場合に、孔サイズが、枕の「通気」又は変形を妨げるような、又は、要求されるレベルに吸入/発散することを妨げるような範囲に孔サイズを減少させることが、必要となる。
【0009】
本発明は、これらの技術的課題を扱い、解決する。以下に更に詳述するように、本発明に包含されるろ過膜は、浸透作用を通じて通気する強化皮膚により近い。これは、製品の部品を製造するために、より目が粗くなければならないEP1222886のフィルターと対照的であり、そして防液体であるというよりはむしろもっぱら耐液体である。EP1222886の枕は、不織のポリエステル層で裏打ちされた織られた合成の外層繊維製品を含む。本発明の膜は、EP1222886で開示された根本的にろ過材とは異なる。
本発明におけるろ過膜は、多くの技術的課題を克服する。本発明に含まれるろ過膜は、薄い皮膚のようであり、強化されなければならない。なぜなら、本発明の感染予防製品は、それが使用される環境での使用に適切であり、そして、使用中に存在しやすい攻撃に耐えられなければならないためである。このことは、ろ過材及び枕の重要な特性、例えば汚染物質のろ過、及び枕の「通気性」に欠陥が生じることなく達成される必要がある。
【0010】
EP1222886は、5又は6層の材料を一緒に融着することを開示している。EP1222886で教示されたように、各層が互いに融着され、次いで耐液体性の外側の生地に融着され、次いで、ろ過材全体が枕の中の開口部を横切るように融着された場合、結果として、方法は製造及び大量生産の観点から実現できなくなる。それら全てが1つの動作で一緒に融着された場合、密封の完全性に欠陥が生じ、及びその結果として、各個々の層の間の密封の強度と完全性に欠陥が生じ、枕に欠陥が生じる。さらに、EP1222886の図面及び明細書では、ろ過材は対角線上に通らなければならず、枕の上部継ぎ目の中に入る1つの端で、及び、枕の側部の継ぎ目の中に入る別の端で融着されなければならないことが説明されている。このことは、5/6層のろ過材に加えて、PUコーティング生地のさらに厚い2厚層が中を通って融着されることが必要であることを意味し、それによって、更なる製造への挑戦や、質/完全性の問題点を引き起こす。言い換えると、EP1222886は、大量生産の場合に、本発明の利益を提供できる製品について教示していない。
【0011】
EP1222886で開示された枕であげられる更なる課題は、患者が肘によりかかるのと同様の圧力がろ過材自体に直接適用された場合に、ろ過材自体だけでなくろ過材と枕カバーの間の封が破裂するか、又は破けることである。したがって本発明で克服される更なる課題は、この性質の圧力に抵抗することができる新規で大きく改良され、同時に効果的な細菌学的特性をもたらすろ過材を供給することである。
EP1222886に開示されたろ過材は、0.6μmかそれより大きいサイズである粒子の通過をブロックするのに効率的であることが記載されているが、これに対して、本発明は、0.2μmかそれより大きいサイズを有する粒子の通過をブロックするのに効率的であることが証明されている新規の医療用メンブレン設計を含む。したがって、本発明は、多数の広いカテゴリーの可能な汚染物質に対処する。
結果として、本発明は、改良された感染予防寝具製品、たとえば、技術的な改良、特に、EP1222886に開示された枕に対して優れた耐液体性を有する枕に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明に従うと、枕、掛け布団、マットレス、クッションのような、又は、密封されたカバーを有し、弾力的で変形可能な充填材料を有する同様のもののような密封された感染予防寝具製品であって、カバーに通気孔手段を含み、通気孔手段は、細菌のサイズの粒子を除くためのろ過膜を含むろ過材を含み、ろ過材は、ろ過材に機械的強度を与えるための材料の強化層も含み、それによって、ろ過材は、それを通して空気を流れさせるが、実質的に液体を透過できないのと同時に、細菌のサイズの粒子に対する障壁を維持する、密封された感染予防寝具製品が提供される。
従って、本発明の感染予防製品は、通気孔は、枕を通気するために空気を通過させる一方で、水蒸気、水滴、ヒトの汗、唾液、尿を含む液体が、通気孔を通過するのを防ぐという有利な点を有する。
【0013】
また、先行技術に関連する課題は、枕のカバーに、実質的に空気を流れさせるが、実質的に液体を透過できず、かつ、細菌のサイズの粒子に対する障壁を維持するろ過材を含む通気孔を組み入れることによって克服される。
好都合なことに、開口部は、製品のカバーに形成され、通気孔を受けるのに適合している。
理想を言えば、感染予防製品のカバー中の開口部は、ろ過材及び開口部の継ぎ目が、感染予防製品のカバーの周囲の継ぎ目と一体にならないように配置される。
好ましくは、強化材料の層は、機械的強度を与える材料を含み、有利に、ポリプロピレン(PP)のようなスパン(spun)不織の合成材料を含みうる。
好ましくは、ろ過材は、液体侵入を実質的に防ぐ一方で、空気が透過することができる手段を含む。好都合なことに、耐液体性は、疎水性材料又は疎油性材料から製造されるろ過膜の効果によって獲得できる。
有利に、ろ過膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含みうる熱可塑性の不織の材料を含む。
【0014】
好適な態様において、ろ過膜は、疎油性延伸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料から製造される。理想を言えば、ろ過膜は、疎油性PTFE膜から製造され、不織のポリビニルクロリド(PVC)バッキングサポートも含む。
ろ過膜は、細菌用フィルターとして機能する。これは、カバーの内部への細菌の侵入を防ぐのに有利である。
有利に、ろ過膜は、0.2μmかそれより大きい粒子の通過をブロックするのに適合する。
好適に、ろ過膜の細孔サイズは、0.2μm〜4μmであり、好ましくは、0.5μm〜4μmであり、1〜4μmでありうる。有利に、ろ過膜の細孔サイズは、2〜4μmのサイズでありうる。
ろ過膜の細孔サイズの低ミクロンサイズを鑑みると、本発明のろ過材がEP1222886に記載された方法と同様にして枕に組み込まれた場合に、内圧は、患者が枕の上に力を及ぼしたときに、枕を破けさせるというリスクがある。注目すべきは、同様のリスクは、ろ過材が適した大部分の用途、例えば、車椅子クッション、マットレスなどにも当てはまる。
【0015】
また、好適な態様において、感染予防寝具製品に通気孔を提供するためにクッション、枕、掛け布団、マットレスなどのような感染予防寝具製品のカバー中の開口部で、ろ過膜及び強化材料を含むろ過材が、一緒に感染予防製品のカバーに結合される。好ましくは、融着によって層の一緒の結合が得られる。最も好適な態様において、通気孔は、ガスケット(PU)を含み、ガスケットも、密封された通気孔を得るために感染予防製品のカバーにろ過材と一緒に結合される。
有利に、枕のような感染予防寝具製品のカバーは、ポリウレタンコーティングポリマー材料、例えばポリウレタンコーティングナイロンから製造される。
最も好ましくは、本発明の感染予防製品はガスケットを含み、それは、理想を言えば通気孔が配置され、実質的に感染予防製品のカバーに結合される感染予防製品のカバーの中の開口部の寸法に対応する寸法である。
好都合なことに、ガスケットは、感染予防製品のカバーと同じ材料から製造される。有利に、ガスケットは、ポリウレタン(PU)のような熱可塑性材料から製造される。感染予防製品の通気孔中にガスケットを包含することで、寝具製品(例えば枕カバー)のカバー生地に結合されるろ過膜/強化層及びガスケットを含む組立てられた通気孔の縁は、確実に密封され、液体を透過できない。
通気孔の構成要素を製品のカバー中の開口部に配置した後に、感染予防製品自体のカバーと一緒に通気孔の全ての構成要素は、液体を透過できない封を提供する方法で、一緒に結合される。
【0016】
本発明は、密封された感染予防寝具製品の製造方法であって、
a)ろ過膜を与える工程、
b)強化層を与える工程、
c)ろ過膜及び強化層を受けることに適合させた開口部を有する寝具製品のカバーを与える工程、及び
d)層a)、b)、及びカバーc)を一緒に張り合わせて、層が一緒に張り合わされて、液体を透過できない封を形成する工程を含む製造方法も提供する。
理想を言えば、工程b)からc)の間に、ガスケットが与えられ、前記ガスケットも、ろ過膜及び強化層と一緒に、製品のカバーに張り合わされる。
好都合なことに、液体を透過できない封を形成するように層を一緒に張り合わせなければならないので、層を一緒に張り合わせる工程は、接着又は融着のような結合によって達成されうる。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、以下、添付する図面を参照してより具体的に説明され、図中、本発明における枕の2つの態様が、例示のみの目的で示される。
図中示される態様は、感染予防枕を含むが、当然、多くの他の感染予防寝具製品が本発明に従って製造されうることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に従った第一形態の枕の外側の斜視図である。
【図2】第二の形態の枕の外側の斜視図である。
【図3】第二の形態の枕の内側の平面図である。
【図4】第三の形態かつ、最も好適な態様である本発明の感染予防寝具製品に含まれる材料の層の分解図である。
【図5】図4に示される第三の形態の感染予防寝具製品の分解拡大図である。
【図6】図4及び5の第三の形態の感染予防寝具製品の斜視図であり、そこに示される層は、感染予防枕製品において組立てられる。
【図7】その場で融着される前の互いに上部に積み重ねられる枕カバー、PUガスケット、スパンボンデッドのポリプロピレン強化層、及び、医療用メンブレンを含む組立層の分解断面図である(融着後、層は一緒に圧縮される)。
【図8】融着用具表面を有する融着用具の上部に積み重ねられた組立層を示す斜視図であり、融着用具表面は、確実にそれぞれの縁が一緒に完全に密封されるために融着用具表面が組立層の面積よりも大きな表面積を有しうるように、必要な大きさにされる。
【図9】感染予防最終製品を示す平面図であり、枕カバーは、ろ過材及び強化層に融着される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1を参照して、本発明に従った枕の第一態様が、参照番号10で全般的に示される。枕10は、防水コーティングされた生地カバー1を含み、ろ過材2の一部を組み込んでいる。枕は、好ましくは、継ぎ目3で超音波融着されている。生地カバー1は、枕の充填材を包み、そして、カバー上の耐液体性(防水)コーティングを与えるポリウレタンでコーティングされた融着可能な材料から形成されている。
ろ過材は、熱可塑性材料から作られた不織の膜を含みうるろ過膜を含む。好適な態様において、ろ過膜は、不織のポリビニルクロリド(PVC)で構成される膜サポートバッキングを有する疎油性延伸PTFE膜から製造される。PVCバッキング層は、PTFEろ過膜に、融合されるか、又は、ラミネート加工される。この使用のためのろ過膜の最適な孔サイズは、2〜4μmの範囲であることが、実験で明らかになっている。この孔サイズは、使用者の頭部が衝突したときに、十分な気流が枕を動的に通気することを可能にする。本発明の枕を通過する気流を測定し、1分当たり、平方センチメートル当たり、1バールの差圧でおおよそ20〜40リットルであることが分かった。この孔サイズは、実験によって細菌負荷の除去に関して100%ろ過効率を有することも実証されており、一方で、おおよそ0.2〜0.8バールの入口圧力で耐水性を提供する。
【0020】
必然的に薄いPTFE/PVCろ過膜の固有の機械的弱点は、ポリプロピレン、好ましくはスパン繊維のポリプロピレンのような合成材料の付加的強化層を与えて、ろ過膜に機械的強度を与えることで克服される。この組立品は、「ろ過材」と呼ばれ、全般的に図1の参照番号2で示される。
以下、図2及び3を参照して、様々な構成要素が一緒に融着されるための好適な配置を説明する。図面において、同じ番号が、第一及び第二の態様における枕の同じ特徴を示す。
枕10の第一の態様において、ろ過材2は、枕10の角全体に広がっており、従って、ろ過材2は、融着された継ぎ目に組み込まれる。しかしながら、使用中に枕が破裂した場合、最も共通する点の不具合は、ろ過材2が継ぎ目に組み込まれたその位置で、融着する継ぎ目であることが実験で明らかになった。この機械的な不具合は、2つの理由から生じると考えられた。
1)継ぎ目の結合構造によって、継ぎ目が剥離力を受けやすい状態になる;及び、
2)延伸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(強度供給)層が、材料が融着される基体に隣接する場合に、ろ過材2を別の基体に融着するときの融着強度は、実質的に強くなる。一方で、防水層(すなわち不織のPVC)が、ろ過材が融着される基体に隣接する場合に、この防水層の層間剥離が発生しうるので、強い継ぎ目が得られない。
【0021】
ろ過材が継ぎ目の中に組み込まれる枕10の第一の態様の結合構造により、延伸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)層の湿りを防止するために必要な防水PVC層が外を向くためには、防水PVC層は、ろ過材の融着表面を構成しなければならない。この配置は、所望よりも弱い融着を生じさせる。
それに応じて、第二の態様が提供され、本発明の第二の態様における枕は、図2及び3に示される。この第二の好適な態様における枕は、参照番号20で全般的に示され、防水枕カバー21、ろ過材22、及び、継ぎ目23を含む。カバー21は、ポリウレタンコーティングナイロンから製造される。図3を参照すると、第二の態様において、枕20は、カバー材料21中で打ち抜きされた窓口24を含む。この窓口24は、どのような形状であってもよく、実質的に枕の継ぎ目23から外れている。図3は、枕カバー21の内側を示す。
【0022】
図3に示すように、ろ過材22は、それが窓口(開口部24)と同様の形状で、同様の寸法になるように切断される。但し、窓口24の縁の枠の向こう側にろ過材22が重ねられるように、ろ過材22が窓口24よりもわずかに大きいことが例外である。ろ過材22の位置づけは、ろ過膜/防水層が、外を向くように(この図中、見る方から離れるように)、かつ、機械的強度を与えるサポート層が、枕カバーのコーティングされる側への融着のための上張り層を形成するようになされる。
この配置は、継ぎ目領域から剥離力を受けない領域にろ過材22を移すことによって、そして、融着用の媒体の間の表面接触の正しい位置づけを維持することによって、双方の機械的不具合の課題を解決する。
【0023】
本発明のろ過材によって、ろ過膜は、耐液体性を与えるが、PVCバッキングの構造によって空気を透過させることができる。ろ過膜の後ろの強化層の付加、好ましくはスパン不織のポリプロピレン(PP)材料(代わりになるべきものとして、他の合成材料もこの目的で用いられた)から製造される強化層の付加は、ろ過材の応用のために枕カバーに備え付けられた窓口/ストリップへの、ろ過材の融着接合箇所周りに必要とされる付加的強度をもたらす。このことは、強化層が枕カバー生地のPUコーティングだけでなく、ろ過膜に溶け込む溶解可能な材料(すなわち不織のPP)から形成されるために、達成され、それにより、強い融着された継ぎ目を与え、感染予防製品破裂のリスクを防ぐ。
また、ろ過材/窓口の継ぎ目(接合する縁)が、継ぎ目の全体の強度を弱めることになる枕の主要な周囲の融着継ぎ目と一体にならないように、窓口/ストリップは設計される。したがって、該窓口は、その縁、又は「フレーム」が枕カバーの縁から分離され、別になるように、再構成され、記載されたろ過材/窓口の強い融着を可能にし、一方で枕の主要な融着継ぎ目の完全性を維持する。
【0024】
図2及び3に示され、かつ参照して説明される第二の態様において、1つの通気孔のみが枕20に備えられている。しかし、当然ながら、いくつかの通気孔が、それぞれそこに関連する好適な細菌用ろ過材で要求されるように備えられうる。
以下、図4、5、6及び7を参照して、該感染予防寝具製品の第三の態様をこれから説明する。第三の態様における製品の図面において、同じ番号が、第一及び第二の態様で示される同じ特徴を表す。
最初に図4、5、6及び7を参照して、第三の態様の感染予防枕が、参照番号30で全般的に示され、枕30は、参照番号32で全般的に示される通気孔を含む。感染予防枕30は、枕カバー31、通気孔32を含み、該通気孔は、ポリウレタン(PU)ガスケット36、スパンボンデッドのポリプロピレン強化層35、及びろ過膜(以下、医療用メンブレンとも呼ぶ)33を含む。これらの構成要素それぞれが一緒に、好ましくは融着により張り合わされた後に、これらの層それぞれが、本発明の感染予防製品を形成するように一緒に圧縮される。
【0025】
[最も好適な態様における感染予防枕製品の構成要素]
・ポリウレタン(PU)コーティングポリアミド−(好ましくは、Redwood‘ICE’生地)から製造される主要な枕カバー31
・W.L. Gore & Associates, Inc., 401 Airport Road, Elkton, Maryland, United States of Americaによって作製された医療用メンブレンMMT−302のような医療用メンブレン33
・スパンボンデッドのポリプロピレン膜35
・PUガスケット36
【0026】
<各構成要素の詳細>
[枕カバー31]
枕カバー31は、135g/m2のポリウレタン(PU)コーティングポリアミドから製造される。
PUコーティングは、真菌及び細菌に対する防御を与える。
通気孔を含む感染予防製品は、75℃で洗浄できる。感染予防製品は、肌に優しく、製品に通気孔を包含することで、製品が患者によって病院内環境で使用される場合に、当然、特に好ましくないノイズを出さないという長所もある。
【0027】
[ろ過膜(医療用メンブレン)]
ろ過膜33は、枕が圧縮された場合に、空気を枕の中から放出させる通気性を有する膜であり、それにより、患者の頭部/口部の周りの望まない「膨張」の影響を抑える。
通気性を有する医療用メンブレン33は、感染予防製品の構造(RF融着継ぎ目を含む)の保護も行い、枕が圧縮された場合に確実に継ぎ目が過剰な圧力を受けないようにして、本質的に枕全体が圧縮された場合に破断を予防する。
医療用メンブレン33は、細菌に対する障壁として精力的に試験されており、非常によく機能する。
【0028】
[スパンボンデッドのポリプロピレン層35]
周囲の形状及び寸法は、医療用メンブレン33と同じである。
スパンボンデッドのポリプロピレンを含む目的は、通気孔領域に更に強度を加えることである。スパンボンデッドのポリプロピレン層35は、医療用メンブレン33の後ろに挿入され、それは、手/指による単純なパンクを予防する。
[ポリウレタン(PU)ガスケット36]
ポリウレタンガスケットは、長方形のRF継ぎ目領域よりわずかに小さいが、医療用メンブレン及びスパンボンデッドのポリウレタンよりわずかに大きい。これによって、確実に医療用メンブレン及びスパンボンデッドのポリプロピレンの縁は、枕カバー表面に完全に密封される。したがって、層のそれぞれの縁は、密封され、圧縮され、それにより、滑らかに仕上がり、患者に優しい表面が生じる。
PUガスケット36の目的は、継ぎ目領域に対して更にプラスチックを加えることであり、更なるプラスチックがスパンボンデッドのポリプロピレン層、医療用メンブレン33、及び、PUコーティング枕カバーに加わると、様々な層の結合の質/強度が高まる。
【0029】
[融着]
[1.枕カバーの縁に沿った長い融着]
枕カバーの縁に沿った長い融着は、十分にRF融着される。このことで、完全に液体を透過できない継ぎ目をもたらす。
[2.充填された枕を完成するための塞ぎ融着]
RF融着又は加熱密封され、閉じた融着部は、枕充填材料を封入し、透過できない周囲の継ぎ目を完成する。
【0030】
[燃焼試験]
本発明の方法に従って、製造され、充填され、密封されて完成した枕に、燃焼試験を受けさせた。完成した枕は、燃焼試験において、非常によく機能し、Crib5のFR評価を記録した。
以下、図8を参照して、通気孔32の構成要素を融着用具の上部に重ねられた状態を示す。融着用具は、確実に通気孔32及び開口部38の周囲の縁が完全に密封されるように構成要素よりも大きな表面を有する。
以下、図9を参照して、最終融着部を示し、PUの光沢のあるビーズが、膜33及びスパンボンデッドのポリプロピレン35の周囲に与えられる。PUで、確実に縁が密封され、透過できないようになる。
【0031】
本発明に従ったクッション、枕、掛け布団、マットレスなどのような密封された感染予防寝具製品の製造方法は、以下の工程を含む。
a)ろ過膜を与える工程、
b)強化層を与える工程、
c)ガスケットを与える工程、
d)開口部を有する寝具製品のカバーを与える工程、
e)開口部にPUガスケット、強化層、及び、ろ過膜を配置する工程、
f)層a)、b)、c)及び製品のカバーを一緒に張り合わせて、層が一緒に密封され、液体を透過できないようにする工程であって、それによって
感染予防寝具製品に通気孔を与えるために、カバー中の開口部で、ろ過膜、強化材料、及びガスケットが、感染予防寝具製品のカバーと一緒に結合される工程。
【0032】
ろ過材の層32は、接着、又は、熱融着、超音波融着、圧縮融着、若しくは、RF融着のような融着によって一緒に結合される。好ましくは、結合は、27.12MHz±160キロヘルツの範囲で動作するRF融着装置を用いたRF融着によって行われる。
感染予防枕30を製造するために、融着装置は使用され、そこでは、融着処置が適切に機能することが必要とされる。上述したような感染予防製品30を製造する方法は、確実に製品30を再現でき、大量生産できる。
従って、本発明は、一般的に、細菌の蔓延及び院内感染(HAI)に対する予防手段として病院及びほかの医療機関での使用に特に有利である枕や同様のものを提供する。本発明は、例えば、弾力的で変形可能な充填材料を含む密封されたカバーを同様に有する、マットレス、車椅子のクッションを含むクッション及び掛け布団のようなほかの寝具製品に応用することもできる。
【0033】
本発明は密封された枕を参照にして説明されたが、当然のことながら、本発明は、一般的に寝具及び室内装飾用の生地製品のための感染予防を提供する。実際には、有利に、本発明は、交差感染を予防するための枕、掛け布団及び同様のものを使用するヒトにおける定期的な交換がある状況で応用されうる。一般的に病院及び医療機関のような高いリスクがある領域に加えて、本発明は、ホテルやゲストハウスなどのような、このタイプの寝具と家具を用いるヒトの定期的な交代があるような他の状況においても、より広く応用することができる。本発明の感染予防枕及び寝具製品は、家ダニ及び真菌感染症に関連する問題を回避するために家庭内で応用することにも利用できる。このタイプの枕製品は、飛行機の座席のヘッドレストに組み込まれうることだけでなく、寝袋などを含む軍事用途があることも想定される。
本発明は、ここに記載される単に例として与えられた具体的な項目に限定されず、添付された請求項に定義された発明の範囲から逸脱しない限り、様々な修正及び変更が可能であることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枕、掛け布団、マットレス、クッションのような、又は、密封されたカバーを有し、弾力的で変形可能な充填材料を有する同様のもののような、密封された感染予防寝具製品であって、
カバーに通気孔手段を含み、
通気孔手段は、細菌のサイズの粒子を除くためのろ過膜を含むろ過材を含み、
ろ過材は、ろ過材に機械的強度を与えるための材料の強化層も含み、
それによって、ろ過材は、それを通して空気を流れさせるが、実質的に液体を透過できないのと同時に、細菌のサイズの粒子に対する障壁を維持する、
密封された感染予防寝具製品。
【請求項2】
ろ過材に含まれる強化材料の層が、
機械的強度を与える材料を含み、好ましくは熱可塑性材料を含む、請求項1に記載の密封された感染予防寝具製品。
【請求項3】
通気孔が、
通気孔の縁が感染予防製品のカバーに接合されるのを確実にするように適合させたガスケットを更に含み、縁は、密封され、液体を透過できない、請求項1又は2に記載の密封された感染予防寝具製品。
【請求項4】
ガスケットが、
通気孔が配置される感染予防製品のカバーの中の開口部の寸法に対応する寸法である、請求項3に記載の密封された感染予防寝具製品。
【請求項5】
ガスケットが、
感染予防製品のカバーと同じ材料から製造される、請求項3又は4に記載の密封された感染予防寝具製品。
【請求項6】
ろ過膜が、
液体の侵入を実質的に防ぐ一方で、空気を透過させる手段を含み、
前記手段は、疎水性材料又は疎油性材料を含むろ過膜によって与えられる、請求項1に記載の密封された感染予防寝具製品。
【請求項7】
ろ過膜が、
不織のポリビニルクロリド(PVC)バッキングサポートを含む疎油性延伸PTFE膜から製造される、請求項6に記載の密封された感染予防寝具製品。
【請求項8】
ろ過膜が、
カバーの内部への細菌の侵入を防ぐために細菌用フィルターを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の密封された感染予防寝具製品。
【請求項9】
ろ過膜が、
0.5μmか、それより大きなサイズの粒子の通過をブロックするように適合した、請求項8に記載の密封された感染予防寝具製品。
【請求項10】
ろ過膜が、
0.2〜4μmの細孔サイズを有するように適合した、請求項9に記載の密封された感染予防寝具製品。
【請求項11】
枕のような感染予防寝具製品のカバーが、
ポリウレタンコーティングポリマー材料、例えばポリウレタンコーティングナイロンから製造される、請求項1〜10のいずれかに記載の密封された感染予防寝具製品。
【請求項12】
開口部が、
製品のカバーに形成され、通気孔を受けることに適合した、請求項1〜11のいずれかに記載の密封された感染予防寝具製品。
【請求項13】
感染予防製品のカバー中の開口部が、
ろ過材及び開口部の継ぎ目が感染予防製品のカバーの周囲の継ぎ目と一体にならないように配置される、請求項12に記載の密封された感染予防寝具製品。
【請求項14】
クッション、枕、掛け布団、マットレスなどのような密封された感染予防寝具製品の製造方法であって、
a)ろ過膜を与える工程、
b)強化層を与える工程、
c)ろ過膜及び強化層を受けることに適合させた開口部を有する寝具製品のカバーを与える工程、
d)層a)、b)、及びカバーc)を一緒に張り合わせて、層が一緒に密封され、液体を透過できないようにする工程であって、それによって
感染予防寝具製品に通気孔を与えるために、カバー中の開口部で、ろ過膜及び強化材料が、感染予防寝具製品のカバーと一緒に結合される工程、を含む製造方法。
【請求項15】
熱可塑性材料から製造されるガスケットが、
工程b)からc)の間に与えられ、
前記ガスケットも、ろ過膜及び強化層と一緒に、製品のカバーに結合される、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
ガスケットが、
製品のカバーと同じ材料から製造される、請求項14又は15に記載の製造方法。
【請求項17】
層が、結合で一緒に張り合わされる、請求項14〜16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
結合が、接着又は融着によって行われる、請求項17に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−538716(P2010−538716A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524521(P2010−524521)
【出願日】平成20年9月15日(2008.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062265
【国際公開番号】WO2009/034193
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(510069799)ニューマ ピュア アイ.ピー. リミテッド (1)
【Fターム(参考)】