説明

感染因子の急速な生前検出

疑わしい生物試料におけるPrPScの存在又は欠失の検出のための方法であって、試料マトリックスからPrPScを実質的に分離することによって、試料中に存在してよいPrPScを濃縮する工程、少なくとも1つの分子標識で濃縮したPrPScを標識して、標識したPrPScを製造する工程、及びアトモル量の標識したPrPScを検出することができる装置上で、標識したPrPScを検出する工程を含み、その際前記PrPScの濃縮及び標識したPrPScの検出の間の時間が、48時間以下である方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2009年3月25日に出願された米国仮特許出願61/211,265の優先権の利益を請求しており、参照をもって本発明に組込まれたものとする。本明細書は、2009年3月25日に出願された米国仮特許出願61/211,264の優先権の利益を請求しており、参照をもって本発明に組込まれたものとする。
【0002】
本発明は、米国エネルギー省(U.S. Department of Energy)によって承認されている契約DE− AC52−06 NA 25396のもと政府援支援されている。政府は、本発明に明らかに権利を有する。本発明は、さらに、Army Medical Research and Materiel Commandによって承認されている承認番号DAMD17−03−1−0368、及びNational Heart Lung Blood Instituteによって承認されている承認番号HL063837のもと支援されている。
【0003】
発明の分野
本発明は、急速な、生物学的及び化学的生成物の微量の生存検出の方法に関し、代表的なそれらの中には、生物学的試料中の細胞プリオンタンパク質の立体構造的に変更された形である。
【0004】
発明の背景
伝達性海綿状脳症(TSE)又はプリオン疾患は、牛海綿状脳症("狂牛"病)、シカ及びオオシカの慢性消耗性疾患、羊におけるスクレイピー、及び人における、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を含む、哺乳動物の伝染性神経変性疾患である。TSEは、感染させた組織の摂取又は輸血によって宿主から宿主へ渡ってよい。TSEの臨床的症状は、運動協調性の損失及び人における痴呆を含む。それらは、数か月から数年の潜伏期間を有するが、しかし臨床的サインの出現後に、それらは急速に進行し、治療不能であり、そして一定に致死する。TSEリスクの低減の試みは、生産において著しい変化をもたらし、かつ農産物、医薬品、化粧品、血液及び組織提供、並びに生物学的生成物の取引をもたらす。
【0005】
TSEは、細胞プリオンタンパク質エンコードした宿主の立体構造的に変更された形(PrPSc)への変換と関連する。動物又はヒトからの脳組織の検死神経病理試験は、TSE診断の‘ゴールドスタンダード’が残っており、かつ典型的に、時にPrPSc含有アミロイド付着の形成に伴う星状細胞増加及び海綿状変性を示す。これは非常に特異的であるが、しかし他の技術(Wells and Wilesmith, 1995; Gavier− Widen et al., 2005)よりもほとんど感受性がない。顕微鏡観察の感受性は、アミロイド付着におけるPrPScの蓄積を検出するために、PrPに特異的なアミロイドを使用する免疫組織化学的技術によって増加されうるが(van Keulen et al., 1995; 1996)、それらの方法は、急速な機械的な解析に不適当である。追加の懸念は、TSEの研究室での診断が、神経系組織において一貫して見出される最も高い濃度、及び容易に到達可能な体組織、例えば血液又は尿における非常に低い濃度を有する、体組織におけるTSE関連分子の不均等な分布によって複雑にされることである。
【0006】
PrPScは、明確な生理化学的及び生化学的特性、特に凝集、不溶性、プロテアーゼ消化耐性、及びβ−シートが豊富な二次構造を有する。かかるPrPScの変更された特性、すなわちプロテアーゼ消化に対する部分的な耐性は、大部分の診断の生化学的試験の基礎を形成する。PrPCとPrPScとの区別のために、試料は、プロテイナーゼK(PK)で前処理される。PrPScが部分的な消化耐性があり、かつPrPCが容易にPKによって消化されるために、前処理は、PrPCからの干渉の除去又は減少を、及びPrPCと比較してPrPScが豊富な試料をもたらす。しかしながら、CJDで死亡した患者の脳における大部分のPrPScは、生存中のアッセイにおけるPK処理の使用させるPrPScのPK感受性のもの(sPrPSc)であり、その際PrPSc濃度は非常に低く非実用的であることが他によって示唆されている。試料のタンパク質分解処理を要求しない検出アッセイの開発は、タンパク質消化に関連し、かつアッセイ感受性を低減させる組織を除去する。
【0007】
現在のPrPSc検出方法は時間がかかり、かつ疑わしい動物がその病気の1つ以上の症状を示した後に検死を行う。現在の検出方法は、主に、現在までTSEのための信頼できるマーカーのみである、PrPCとPrPScとの物理化学的差異の検出に基づく。例えば、最も広く使用されている検出試験は、PrPCとPrPScとを区別するための脳試料におけるPrPScの相対的なプロテアーゼ耐性を利用する。通常の方法、例えばポリメラーゼ鎖反応、血清学又は細胞培養アッセイを使用することによってプリオン病を検出することは、まだ不可能である。特異的な核酸の作用剤は、まだ確認されておらず、感染した宿主は、抗体反応を誘発しない。
【0008】
本記載内容に開示されている3つの抗体(8E9、11F12及び5D6)に対するPrPScの抗体−抗原結合の事象は、2008年10月31日に電子出版されたChang, et al., PrP Antibody Binding−Induced Epitope Modulation Evokes Immunocooperativity, 205 J. Neuroimmunol., 94, 94−100による文献において特徴づけられ、参照をもって本明細書に開示されたものとする。これらの抗体は、PrPSc上の異なるエピトープと相互に作用する。モノクローナル抗体(Mab)8E9は、PrPScのアミノ酸155〜200の領域で結合する。Mab11F12は、PrPScのアミノ酸93〜112の領域で結合する。Mab5D6は、PrPScの未定義の立体構造エピトープと結合する。立体構造エピトープは、アミノ酸の特定の連続配列と結合しない。むしろ、いくつかの、アミノ酸一次構造の切断された領域からのアミノ酸残基を含んでよいタンパク質の構造の領域に結合する。
【0009】
酵素に連結する免疫吸着アッセイ(ELISA)のキャプチャーは、前記3つの抗体を使用して実施した。キャプチャー剤としてのMab11F12の使用及び検出剤としてのビオチン化したモノクローナル抗体5D6の使用のみは、結合に、及びPrPScの識別に成功した。この命令における抗体のこの組合せのみは、263Kに感染したハムスター、スクレイピー羊又はCWDに影響を及ぼすシカにおいて同様の結果を提供した。この増加させた検出は、PrPScにおいてマスキングしていないエピトープを含む抗体のためである。本質的に、1つの抗体(Mab1F12)のPrPScとの結合は、第二の抗体(Mab5D6)をよりよく結合させる同様の方法におけるエピトープをアンマスクする。これが、PrP立体構造の変更を介して、PrPSc中にPrPCのリフォールディングを生じ、かつ/又はPK耐性において変更し、又はPrPScが、追加の抗体結合に対してそれらをより接近しやすくするために形成するかどうかは、公知ではない。
【0010】
周囲光ファイバー免疫アッセイ(Surround optical fiber immunoassay)(SOFIA)は、2009年2月25日に電子出版されたChang et. al., Surround Optical Fiber Immunoassay (SOFIA): An Ultra−Sensitive Assay for Prion Protein Detection, 159 Journal of Virological Methods, 15, 15−22による文献においても開示されている。SOFIAは、抗原キャプチャーのためのMabにおける特定の本質と、周囲光学検出技術の感受性とを組合せる。極めて低いシグナルレベルを検出するために、低ノイズの、光電池ダイオードを、このシステムのための検出器として使用した。SOFIAは、試料を保持するマイクロキャピラリーを照らすレーザーを使用する。そして、試料から集められた光は、光ファイバーから視覚的に移動するために検出される。次に、電流測定として実施され、かつロックイン増幅器を加工するデジタルシグナルによるノイズに対して増幅させた光を、検出のために光学的に濾過させる。この結果は、コンピュータ上に示され、かつデータ取得のために設計されたコンピュータソフトフェア上に蓄積される。
【0011】
ローダミンレッドは、0.1アトグラム(ag)の濃度までSOFIAによって検出される。従って、SOFIAは、PK処理したハムスターの脳から約10agのPrPScの及び推定される羊及びシカの脳材料からの約1フェムトグラムのPrPScの検出限界を有することを示す。しかしながら、当量の抗体反応性としても、グラム当量での羊及びシカの脳材料よりも、少なくとも10〜100倍多いハムスターの脳におけるPrPScであることが示されたウェスタンブロットは、後者の2つの種におけるタンパク質の検出が10〜100ag以上の範囲でできることの示唆に基づく。
【0012】
異常折り畳みタンパク質反復増幅(protein misfolding cyclic amplification)(PMCA)の研究室技術は、微量のPrPScの増幅をもたらすPrPCのPrPScへの特定の再現性のある変換を支持することを報告している。CWD感染作用剤が唾液、血液、尿及び排泄物において検出されているが、この材料からのPrPScの直接免疫検出は、失敗している((Haley et al, 2009a, b)。さらに、いくつかのこの材料のためのCWD感染作用剤の成功した検出は、連続PMCA(sPMCA)のバイオアッセイを要求した((Mathiason et al., 2006, 2009; Haley et al., 2009a, b; Tamguney et al., 2009)。周囲組織、特に血液におけるTSEの前臨床検出を容易にするために、試料における標的PrPScが、PMCAによって増幅されてよい(Saborio et al., 2001)。PMCAは、実験的にスクレイピーに感染させたげっ歯類(Saborio et al., 2001; Deleault et al., 2003; Bieschke et al., 2004)、それぞれ、牛海綿状脳症及びスクレイピーに自然に感染した牛及び羊(Soto et al., 2005)の脳から、並びにより最近ではクロイツフェルト・ヤコブ病に感染した人((Jones et al., 2007)から、及び慢性消耗性疾患に感染したシカ(Kurt et al., 2007)からの、PrPScの検出の感受性を増加することを報告している。さらに、PMCAは、この技術を有用な診断のツールにする、羊及びハムスターの、双方とも病気の末期段階での血液における、及び前駆症状の動物における(Castilla et al., 2005a, b; Saa et al., 2006; Murayama et al., 2007; Thorne and Terry, 2008)、及び尿及び髄液における(Atarashi et al., 2007, 2008; Murayama et al., 2007)PrPScを検出することを報告している。しかしながら、現在までPMCAはイムノブロットによる最終生成物を視覚化するための循環の多くのラウンドのための要求によって妨げられる。実際、PMCAの多くのラウンドを実施することは、誤った明確な結果を導きうる。192サイクルによって、PrPCのPrPScへの自発的な変換を示した血液試料を調整し、従ってこの技術を幾分不十分に認識目的のためにもたらす。PMCAは大きな可能性を有するが、しかし最適の感受性(約3週間)を達成するために必要な時間の長さを含む種々の基本及び技術の困難さによって妨害される。
【0013】
現在のドグマは、PrPScが感染性と直接相互関係を示し、かつ脳におけるそれらの蓄積が、神経病理学的及び臨床的疾患を引き起こすことである。PrPSc蓄積の割合及びパターン、並びに従って、神経病理の形成の割合は、疾患の培養期間を決定する(Prusiner et al., 1990; Carlson et al., 1994)。しかしながら、CNSにおいて及び予期と反対に、PrPScの全ての蓄積及び高レベルまでの感染力は、無症候性マウスにおいて存在してよい(Bueler et al., 1994)。事前に及び実験的に感染した羊における追加の研究(Madec et al., 2004; Bulgin et al., 2006)は、PrPSc、IHC染色トポロジー、組織学的領域の範囲及び臨床的疾患のレベル間の矛盾も証明している。
【0014】
食料の安全性を改良するために、生存中の臨床前試験、すなわち症状の提示前の試験を使用するプリオン疾患のための全ての動物をふるい分けることは大いに有利であってよい。しかしながら、PrPScレベルは、症状が出る前の宿主において非常に低い。さらに、PrPScは、神経系組織において一貫して見出される最も高い濃度及び容易に到達可能な体液、例えば血液又は尿における非常に低い濃度で、一般に体組織中で不均等に分布される。従って、あらゆるかかる試験は、極めて少量のPrPを検出することを要求し、PrPCとPrPScとを区別する必要がある。
【0015】
速い検出を保証する能力は、実際の値であるべき治療的介入のために必要である。ヒトの食物連鎖並びに血液及び組織ドナーのために予定された動物に関して、プリオン作用剤は、あらゆる臨床症状の出現前に良好に検出できる必要がある。従って、プリオン検出のためのより感受性のある方法のための長期の要求がある。
【0016】
発明の要約
PrPCの立体構造的に変更された形はPrPScである。いくつかの群は、PrPScがTSEにおいて感染作用剤(プリオン作用剤)であることが知られているが、一方で他の群は知られていない。PrPScは、病気プロセスの神経病理的生成物、感染作用剤の成分、それ自体感染作用剤、又は全く他のものであってよい。病気状態におけるその実際の機能の状態にかかわらず、明らかなことは、PrPScが、特に病気プロセスに関係し、かつその検知は、プリオン病を引き起こす作用剤での感染を示す。
【0017】
本発明は、特に、生物学的試料におけるPrPScの検出によるプリオン病の診断のための方法を提供する。この生物学的試料は、脳組織、神経組織、血液、尿、リンパ液、髄液又はそれらの組合せであってよい。PrPScの欠乏は、前記方法の検出限界までの感染作用剤で感染しないことを示す。PrPScの存在の検出は、プリオン病に関連する感染作用剤での感染を示す。プリオン作用剤での感染は、病気進行の前駆症状及び症状段階の双方において検出されてよい。
【0018】
これらの、及び他の改良は、SOFIA、PrPScの検出のために開発されているレーザーを基礎とする免疫アッセイ(Chang et al., 2009)で達成されている。SOFIAの感受性及び特異性(Chang et al., 2009)は、正常な及び異常なPrPアイソフォームを区別するためのPK消化のための要求を除く。さらに、血液プラズマにおけるPrPScの検出は、現在、SOFIAに従った制限されたPMCAによって処理されている。SOFIAの感受性のために、PMCAサイクルは、従って、自発的なPrPSc形成の機会、及び誤って陽性の試料の検出を減少する。
【0019】
本発明は、最近開発されたMab作用剤PrPとの組合せで、明らかに記載されている方法よりも少ない試料の調合を要求する、高い感受性装置を使用する解析の方法を提供することによって、ヒトを含む、前駆症状及び症状のあるTSE感染動物におけるプリオン病の検出における増加させた感受性の前記要求を満たす。本発明の方法は、脳組織においてPrPScを検出するのに十分な感受性レベルを提供する。制限されたsPMCAと結合される場合に、本発明の方法は、生前に採取された血液プラズマ、組織及び他の液体中で、PrPScを検出するのに十分な感受性レベルを提供する。試料の採取と解析との間の時間は、脳材料に関して24時間未満であってよい。前記方法は、キャプチャーのためのMabの感受性と、周囲光ファイバー検出技術の感受性での濃度とを組み合わせる。脳ホモジネートにおけるPrPScの検出のために明らかに記載されている方法とは対照に、これらの技術は、脳ホモジネートを研究するために使用される場合は、播種重合(seeded polymerization)、増幅又は酵素消化(例えばプロテアーゼK又は"PK"によって)を使用しない。これは、以前の報告が、アッセイの信頼性を低下させる変動させたPKを有するPrPScアイソフォームが存在していることを示唆している。このアッセイの感受性は、生物学的液体における、急速なプリオン検出アッセイのための土台として適している。プリオン病に加えて、前記方法は、感染及び病気の広いスペクトルのための急速な高い処理量試験のための手段を提供してよい。
【0020】
免疫沈降との組合せで、sPMCAの約40サイクルが、ELISA又はウェスタンブロットによるプラズマにおけるPrPSc検出に不適切であることを見出した一方で、PrPScは、SOFIA法によって急速に測定されることも見出した。本発明に従って、本発明のアッセイの土台に必要な制限されたサイクル数は、例えば以前に報告された(Thorne and Terry, 2008)のように、PMCAに関連する誤った明確な結果を得る可能性を実質的に除く。
【0021】
次に、本発明の制限されない実施態様を報告する。第一の実施態様に従って、PrPScの存在又は欠乏の検出のための、それらを有することが疑わしい生物学的試料中での方法は、試料マトリックスからのPrPScの実質的な分離によって試料中に存在してよいような、PrPScを濃縮する工程、標識されたPrPScを生産するために少なくとも1分子の標識で濃縮したPrPScを標識する工程、及び解析装置上で標識されたPrPScを検出する工程を含んで開示されている。
【0022】
本発明の第二の実施態様に従って、PrPScの存在又は欠乏の検出のための、それらを有することが疑わしい生物学的試料中での方法は、試料マトリックスからのPrPScの実質的な分離によって試料中に存在してよいような、PrPScを濃縮する工程、標識されたPrPScを生産するために少なくとも1分子の標識で濃縮したPrPScを標識する工程、及び解析装置上で標識されたPrPScを検出する工程を含んで開示されている。この実施態様において、PrPScは消化されない。
【0023】
本発明の第三の実施態様に従って、PrPScの存在又は欠乏の検出のための、それらを有することが疑わしい生物学的試料中での方法は、試料マトリックスからのPrPScの実質的な分離によって試料中に存在してよいような、PrPScを濃縮する工程、標識されたPrPScを生産するために少なくとも1分子の標識で濃縮したPrPScを標識する工程、及び解析装置上で標識されたPrPScを検出する工程を含んで開示されている。PrPScの濃縮と、標識したPrPScの解析との時間は、有利には、約48時間未満である。
【0024】
さらなる本発明の実施態様に従って、PrPScの存在又は欠乏の検出のための、それらを有することが疑わしい生物学的試料中での方法は、sPMCAによって試料中でPrPScを増幅する工程、試料マトリックスからのPrPScの実質的な分離によって試料中に存在してよいような、PrPScを濃縮する工程、標識されたPrPScを生産するために少なくとも1分子の標識で濃縮したPrPScを標識する工程、及び解析装置上で標識されたPrPScを検出する工程を含んで開示されている。
【0025】
さらなる本発明の実施態様に従って、PrPScの存在又は欠乏の検出のための、それらを有することが疑わしい生物学的試料中での方法は、sPMCAによって試料中でPrPScを増幅する工程、試料マトリックスからのPrPScの実質的な分離によって試料中に存在してよいような、PrPScを濃縮する工程、標識されたPrPScを生産するために少なくとも1分子の標識で濃縮したPrPScを標識する工程、及び解析装置上で標識されたPrPScを検出する工程を含んで開示されている。この実施態様において、生物学的試料は、脳組織、神経組織、血液、尿、リンパ液、髄液又はそれらの組合せである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明のいくつかの方法によるPrPScの解析に適した装置の一実施態様を示す略図である。
【図2】図2は、本発明のいくつかの方法によるPrPScの解析に適した装置のエンドポートアセンブリ(end port assembly)の一実施態様の側面図を示す略図である。
【図3】図3は、本発明のいくつかの方法によるPrPScの解析に適した装置の試料容器の一実施態様の略図である。
【図4】図4は、一辺からの見る、図3の試料容器の略図である。
【図5】図5は、頂点から見る、図3の試料容器の略図である。
【図6】図6は、263Kに感染したハムスター(H)、スクレイピーに感染した羊(S)及びCWDに感染したシカ(D)からの、Mab08−1/5D6(A)、08−1/11F12(B)、及び08−1/8E9(C)を使用した、未処理の及びPK処理した合計の脳可溶化液のウェスタンブロット解析を示す。
【図7】図7は、OD405で比色測定で測定された抗体結合を示す。キャプチャーELISAは、キャプチャー剤としてMab11F12、及び検出剤としてビオチン化5D6を使用してアッセイする。脳組織は、通常の及び感染したハムスター、羊及びシカからホモジネートする。前記アッセイを、非PK及びPK処理した脳可溶化液で実施した。
【図8】図8は、キャプチャーELISAに従う、非PKで処理した脳ホモジネートのウェスタンブロット解析を示す。キャプチャーELISAを、通常の羊(NS)、スクレイピーに感染した羊(SS)、通常のシカ(ND)、CWDに感染したシカ(CWD)、通常のハムスター(NH)及び263−Kに感染したハムスター(263K)に対して、非ビオチン化検出剤を使用して図7において記載されたように実施した。免疫染色をMb8E9を使用して実施した。
【図9】図9は、未感染の及び感染したハムスター、羊及びシカからの脳可溶化液を使用するキャプチャーELISAにおける、キャプチャー及び検出剤の逆転の比較を図示する。キャプチャー剤として5D6を、及びビオチン化検出剤として11F12を(5D6/ビオチン11F12)使用する研究は、キャプチャー剤として11F12及びビオチン化検出剤として5D6を(11F12/ビオチン5D6)使用と比較される。
【図10】図10は、図1の装置で得られたデータを示し、ローダミンレッド(四角)の希釈、並びにマウス(アスタリスク)、ハムスター(ダイア)、羊(逆三角形)及びシカ(丸)からのrPrP(組み換えrPrP)からの相対的なシグナル強度を示す。
【図11】図11は、感染させたハムスター、羊及びシカからの、PK処理した及び未処理の通常の(オープンバー)及び感染させた(立体バー)脳ホモジネートにおける、図1の装置によるPrP検出を示す。x軸の数は、通常の試料の10倍希釈の程度を示す。例えば、ハムスターに関する−10は、試料が1×10-10の係数によって希釈されていることを示す。
【図12】図12は、Mab 8E9免疫沈降に従うPrPのウェスタンブロット解析を示す。
【図13】図13は、PrPのMab 8E9の免疫沈降のキャプチャーELISA解析の結果を示す。
【図14】図14は、sPMCAに従うPrPScのウェスタンブロットを示す。
【図15】図15は、スクレイピー羊の第三の瞼リンパ組織の免疫組織化学を示す。
【図16】図16は、sPMCAを有する及び有さないSOFIAを使用する羊スクレイピー血液試料におけるPrPSc検出を示す。
【図17】図17は、sPMCAを有する及び有さないSOFIAを使用するCWD血液試料におけるPrPSc検出を示す。
【0027】
発明の詳細な説明
"PrPSc"は、PrPCの立体構造的に変更された形を意味すると解する。PrPScは、特に、病気プロセス及びプリオン病を引き起こす作用剤での感染の徴候の検出に関する。(TSE)は、制限されることなく、ヒトの病気、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー症候群(GSS)、致死性家族性不眠症(FFI)、及びクールー、並びに病気の動物系、牛海綿状脳症(BSE、通常狂牛病として公知である)、慢性消耗性疾患(CWS)(オオシカ及びシカにおいて)、及びスクレイピー(羊において)を含むと解する。"タンパク質性の"は、プリオンが、タンパク質及び他の生物学的存在物を含んでいてよいことを意味し、かつ従って、プリオンが、単独のタンパク質からなることを暗示することを意図していない。
【0028】
PrPScの濃縮の記載において使用されるような"実質的分離"は、試料中に残っているあらゆる試料マトリックス又は非PrPSc材料が、本発明に記載されている方法によって検出されるために、又は検出を妨げるために十分であることを意味すると解される。
【0029】
"標識されたPrPSc"は、蛍光標識が、共有結合又は非共有結合で付着されているPrPScを意味する。有利には、1つの蛍光標識は、単一のPrPSc分子に付着される。
【0030】
"検出の可能性"は、装置が、標識したPrPScが全く解析されない場合に、装置のバックグラウンドノイズシグナルよりも著しく高いシグナルをもたらすことを意味する。特定の試料がアトモル量より多く含まれてよいが、試料を、解析に対して装置が再現性があり、かつ統計的に著しいシグナルをもたらす、標識したPrPScの試料の約0.1アトモル/ミリリットルまで希釈すべきと解される。
【0031】
"アトモル量"は、0.1アトモル〜1フェムトモルを意味する。
【0032】
"生存"は、試料が採取される生物の死前を意味すると解される。
【0033】
"前臨床"又は"前駆症状"は、試料が、プリオン病の症状を呈さない生物から採取されることを意味すると解される。
【0034】
"播種重合"は、PrPCの、より高いベータ−プリーツシートの含有率を有し、かつプロテアーゼ耐性があるPrPScへの変換の誘発を意味すると解される。
【0035】
"酵素消化"は、特定のアミノ酸の選択的な開裂を誘発する、故意に試料中に導入されたプロテアーゼによるタンパク質の破壊を意味すると解される。"酵素消化"は、試料中に天然に存在する酵素による自己消化又は消化を誘発しないと介する。本明細書において使用される"未消化"は、PrPScが試料調合又は解析中に酵素に従わないことを意味すると解される。
【0036】
本発明の方法は、感染が生じているかどうかを決定することが所望されている動物又はヒトからの、PrPの異常なアイソフォーム(PrPSc)を含んで良い、又は含まなくてよい試料を得る工程を含む。試料が感染した生物からである場合に、該試料は、PrPSc、及び非PrPSc構成成分、例えば細胞、細胞構成成分、生分子、非PrPScタンパク質等を含むと解される試料マトリックスを含む。該試料は、神経組織、血液、尿、リンパ液、髄液及びそれらの組合せから採取され、かつそれらを含んでいてよい。
【0037】
一度採取すれば、PrPScは、試料マトリックスから重要なPrPScを分離することによって、少なくとも半分精製され、又は濃縮される。前記濃縮は、当業者に公知である、制限されることなく、分子抗体、免疫沈降、磁気ビーズ、プラスチック表面上での抗体キャプチャー、マグネシウムホスホタングステン、メタノール、及びそれあの組合せを使用する方法を含む種々の方法によって生じてよい。一実施態様において、前記濃縮は、モノクローナル抗体を使用して生じる。SOFIAにおいて、キャプチャーELISA中で共に使用される場合に、相乗作用を有すると記載されている、いくつかのPrPに特異的なMabを使用した(Chang et al., PrP Antibody Binding−induced Epitope Modulation EvokesImmunocooperativity, J. of Immunology, v.205, issue 1−2, pp. 94−100 (2008))。
【0038】
前記濃度は、さらに、染料標識したアンチ−PrP Mabと共に、第二のビオチン化アンチ−PrP Mab及びストレプトビアジン共役磁気ビーズを使用する免疫沈降を基礎とするキャプチャーアッセイである、Kim et al., 2005において記載された技術によって生じてよく、参照をもって本発明に開示されたものとする。この技術の変法は、直接磁気ビーズと共役させた第二のPrP Mabでの染料標識したアンチ−PrP Mabを含む。
【0039】
濃縮させた試料は、少なくとも0.1アトモルのPrPSc、選択的に200アトモル、選択的に約0.1アトモル〜約1.0アトモル、選択的に約0.1アトモル〜約1.0フェトモル、及び選択的に約0.4アトモル〜約1.0アトモルのPrPScを含んでよい。
【0040】
濃縮した試料中のPrPScは、標識したPrPScを製造するために1つ以上の蛍光分子で標識されてよい。標識は、制限されることなく、蛍光標識、リン光標識、放射性同位体標識、ビオチン化を含む当業者に公知の種々の方法、及び当業者によって理解されうる標識方法によって生じてよい。一実施態様において、標識は、蛍光標識であり、かつ蛍光標識は、ローダミンレッドである。
【0041】
他の一実施態様において、PrPScは、蛍光標識の他に、制限されることなく、リン光体、赤外線、可視光線及び紫外線の吸収によって、及び当業者によって理解されてよい他の分光法によって検出されてよい。
【0042】
一実施態様において、濃縮した試料は、PrPScを感受性があり、かつ急速に検出できる適した解析装置で解析される。一実施態様において、前記装置は、標識されたPrPScのアトモル量を検出できる。一実施態様において、PrPScを濃縮する工程、PrPScを標識する工程、及び検出する工程を含む時間は、48時間未満、選択的に24時間未満、及び選択的に12時間未満であり、選択的には3時間未満である。
【0043】
一実施態様において、装置、例えば米国特許明細書第11/534,546号(参照をもって本明細書に開示されたものとする)において記載されている装置を、本発明の目的のために使用してよい。システム100の代わりの実施態様を図1において図示する。この実施態様において、4つの線状配置は、新調された透過試料容器306を格納する試料フォルダ102からエンドポート103まで伸びる。エンドポート104の末端は、エンドポートアセンブリ200中に挿入される。線状配置は、第一エンド及び第二エンドを有する多数の光ファイバ、場合により保護及び/又は絶縁シースによって覆われた多数の光ファイバを含む。前記光ファイバの数は変動し、一実施態様においては、約10〜約100であり、選択的には約25〜約75であり、選択的には約50である。線状配置の数は変動し、少なくとも2つである。線状配置の最大数は、試料フォルダのサイズに依存し、その際該試料フォルダは、覆うための光ファイバの第一エンドに十分な空間を与えるためにかなり十分であるべきであり、かつ試料容器に近く(例えば約1mm〜約1cm)にあるべきである。一実施態様において、前記線状配置の数は、2〜10であり、選択的には約4〜6であり、かつ選択的には4である。一実施態様において、前記線状配置の数は、平面配置に置かれ、その際調整された線状配置は、互いから及び試料フォルダを覆って等距離に配向される。線状配置の数が4である場合に、調整された線状配置は、たがいに関連して90度の角度で配向される。線状配置の長さは、非常に広く、かつ光ファイバの数及び性質に依存する。前記長さは、光ファイバの規準を損なうことなしにそれぞれ線状配置から光ファイバのバンドリングを可能にするために十分であるべきである。主にそれらは、試料の解析に使用される診断装置から遠く位置されるべき試料を考慮に入れる。光ファイバの長さに対する上限ではない。
【0044】
光ファイバの第一エンドは、試料は含む容器の長さ沿った、実質的に直線の方法で置かれてよい。光ファイバの第二エンドは、シグナルエンドポートを共に形成するために束ねられる。言いかえれば、それぞれの線状配置から前記ファイバーの第二エンドの得られた長さは、単一の束を形成するために混ぜられる。有利には、それぞれの線状配置からの前記ファイバの第二エンドは、束内で無作為に点在される。多数の光ファイバは、重要な解析から発せられたシグナルを受け取り、かつ該ファイバの第一エンドから、該ファイバの第二エンドを含むエンドポートまでシグナルを伝達する。前記ファイバは、サインθ/2に対応する開口数(NA)を有し、θは適用された入射光の角度(光取り込み角度)である。前記光取り込み角度は、実質的に全ての放出されるシグナルが、多数の前記ファイバによって妨げられてよいように選択される。これは、希釈解析、例えばPrPScからのシグナルの最適な採取効率を確実にする。
【0045】
一実施態様において、光ファイバは、ヒューズドシリカを含む。該ファイバは、約50マイクロメートル〜約400マイクロメートルの直径を有する。それぞれの線状配置からの光ファイのバンドリングは、いくつかの利点を提供する。それぞれの線状配置のための別々の検出が要求されるが、単一検出器を使用してよい。4つの線状配置を含むシステムのために、これは、4つの個々の検出器のサイズの4分の1を有する検出範囲をもたらす。したがって、同様にノイズに対するシグナルの割合を高めて、したがって検出の限界を低下するバックグラウンドノイズは、劇的に減少する。一実施態様において、検出器のサイズは、約0.5mm×0.5mm〜約1mm×1mmである。この実施態様のシステムの検出の限界は、分析物の少なくとも0.1アトモルであり、選択的に少なくとも200アトモルであり、選択的に約0.1アトモル〜約1.0ミクロモルであり、選択的に約0.1アトモル〜約1ナノモルであり、選択的に分析物の約0.4〜約1.0アトモルである。代わりに、この実施態様において、前記システムの検出の限界は、分析物の少なくとも0.1アトグラムであり、かつ選択的に分析物の少なくとも10アトグラムである。
【0046】
図2は、この実施態様のエンドポートアセンブリの一実施態様を示す。束ねられた光ファイバを含むシグナルエンドポートの末端は、エンドポートアセンブリ200の入口202中に挿入される。前記シグナルは、光ファイバによってエンドポートアセンブリ200を介して出口207に伝達される。光ファイバ208の出力は、約300ミクロン〜約500ミクロンの直径を有してよく、及び有利には約400ミクロンである。したがって、エンドポートアセンブリは、光学的にシグナルエンドポートを検出器に繋げる。エンドポートアセンブリは、入射シグナルを合わせるために供給する第一レンズ203を有してよい。エンドポートアセンブリは、さらに、光ファイバ208の出力に適しているNAに出力シグナルを集中ために供給する第二レンズ204を有してよい。エンドポートアセンブリは、さらに、少なくとも1つのノッチフィルター205及び少なくとも1つのバンドパスフィルター206を有してよい。
【0047】
適した検出器の制限のない例は、フォトダイオード検出器、光電子増倍管、電荷結合装置、光学顕微鏡、及びそれらのあらゆる組合せを含む。
【0048】
図3は、この実施態様の適した試料フォルダ102の一実施態様を示す。スペーサー303は、空間を、試料フォルダ300を通過して伸長された透過容器306に提供するように配置される。一実施態様において、該試料ホルダはキャピラリーであり、かつガラス、石英、又はあらゆる他の好適な当業者に公知の材料から製造されてよい。実施例によってのみ、前記キャピラリーは、液体の100マイクロリットルを保持してよい。スペーサー303は、さらに、スロット304、又はスペーサーを透過容器の周囲及び接近して光ファイバの第一エンドに提供するために配置される。スペーサー302は、頂部エンドプレート305及び底部エンドプレート302によって固定され、双方は、留め金具、例えばネジのための方法によってスペーサー303に取り付けられる。
【0049】
キャプチャーされる放出されたシグナルは、光検出器によって電子シグナルに変換され、かつ解析器に伝達され(示されていない)、そして電子シグナルを受け、そして解析物の存在で試料を解析する。解析器の例は、当業者によく知られている。前記解析器は、電子シグナルの位相敏感検出を可能にするロックイン増幅器、又は本明細書に記載されている光検出器の種々のタイプによって発せられる電子シグナルを解析するために当業者に公知の方法を含んでよい。
【0050】
前記アッセイのために開発された装置は、レポーター分子から光の採取に最適化されてよい。蛍光を基礎とするアッセイにおいて現在使用される染料は、90%の近く又は90%より高い量子効率を有する。一実施態様において、前記染料は、ローダミンレッドX(Invitrogen Corp., Carlsbad CA)である。さらに、トランスコンダクタンス前置増幅器及びロックイン検出器装置は、低シグナル/低ノイズ検出を良いにするために最適化される。最初に、ロックイン増幅器によるラインフィルタリングが使用されるべきである。一実施態様において、変調周波数は、753Hzであり、かつロックイン増幅器は、60Hz及び120Hzでのフィルタに調整される。トランスコンダクタンス前置増幅器を、期待されるシグナルレベルに基づいて、及び前置増幅器の入力インピーダンスを最適化するために選択し、かつ一実施態様においては1nA/Vに調整される。一実施態様において、バンドパスフィルターを、例えば753Hzであるチョッパ周波数に集中させる。
【0051】
実施例
1.組織試料の採取
ハムスターに適用した263Kスクレイピー株の調達及び繁殖は、Chang, B. et al., "PrP Antibody Binding−Induced Epitope Modulation Evokes Immunocooperativity," J. Neuroimmunol. v.205, issue 1−2, pp. 94−100 (2008))に記載されている。スクレイピーに感染した羊及びCWDに感染したオジロジカからの脳を、臨床的疾患の時点で摘出し、そして−80℃で凍結した。未感染動物からの脳を同様に摘出し、そして凍結した。完全な長さのシカ、ハムスター、マウス及び羊PrPのコード領域を、pET−23ベクター中にクローンして、D. R. Brown et al., "Normal prion protein has an activity like that of superoxide dismutase," Biochem J. vol. 344 pp. 1−5 (1999)において記載されているように、タフを有さないタンパク質(rPrP)を製造した。発現及び精製は、CE. Jones et al., "Preferential Cu2+ coordination by His96 and His111 induces β−sheet formation in the unstructured amyloidogenic region of the prion protein" J. Biol. Chem. 279, pp. 32018−32027 (2004)の手順と実質的に同様であった。
【0052】
実験的経口感染は、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で製造された20%スクレイピー羊の脳ホモジネート(臨床的及び免疫組織学的に要請の動物からのスクレイピー脳の合成物から由来する)を使用した。すべての未感染の動物を、別々のスクレイピーを有さない手段で格納した。羊スクレイピーの臨床的サインは、体の震え、摩擦からの羊毛の損失、最期でのニブリング、過敏症及び足取りの異常を含む。
【0053】
羊の遺伝子タイピングを商業的に実施した(Gene Check, Inc., Greeley,CO)。
【0054】
IHCに関して、ホルマリンで固定した第三眼瞼組織を、水中で15分間洗浄し、そして99%ギ酸中で1時間浸漬した。3時間の水での洗浄後、その組織をMicrom STP 120中でパラフィン処理し、そしてマウンティングのために4ミクロンで切断した。そのスライドを、少なくとも24時間乾燥させ、脱パラフィン処理し、そしてVentana (Ventana Medical Systems Inc., Oro Valley, AZ)所有の試薬(プリオンを高めた溶液及びアンチPrP抗体)、及びBenchmark LT自動システムを使用して免疫染色した。血液採取のために、動物を固定し、そして針を頸静脈中に挿入した。直ちに血液採取し(抗凝固剤としてクエン酸ナトリウムを使用して)、血液の2分の1を冷却し、そして直ちに輸送した。採取した全体の血液試料の残りの半分を、4℃で15分間、低速で遠心分離した。プラズマを取り除き、凍結し、そしてドライアイス上で輸送した。
【0055】
オジロジカの処理及びサンプリグプロトコルを、Colorado Division of Wildlife’s (CDOW) IACUCによって実証した。いくつかの自由な範囲源から獲得した新生児のオジロジカの子ジカを、缶詰にした牛のエバミルクを使用して飼育し、そしてプロトコルを確立した(Wild and Miller 1991; Wild et al. 1994)。シカを、試料採取の時間を除いて、研究中にバイオセンサーパドックに閉じ込めた。食料、水、及びサプリメントを、全てのパドック中で自由に提供した。約6ヶ月の年齢で、オジロジカの子ジカを、同種の約0.5gで経口的に接種し、プールし、感染した脳材料を舌の基に置いた。以前の解析は、この接種物プールが感染性であり、かつ脳組織の約6μg PrP CWD/gを含むことを示した(Raymond et al. 2000; Wolfe et al. 2007)。全てのシカを、CWDの臨床的サインの認識で経験した獣医によって評価し、そして行動変化、体の状態の低下、機能障害、及び唾液分泌及び多渇症に関して主観的に評価した。この研究のための5匹のシカは、天然のプリオンタンパク質遺伝子の子ドン96でのグリシン及びセリンに関する異型接合体であり、感染後日数(dpi)253又は343日によって扁桃腺の政権体においてPrP CWD蓄積を有し(Wolfe et al. 2007)、そして検死の試験891〜1774dpiでプリオンに感染したことを確かめた。
【0056】
血液試料を、891dpiで、5匹の摂取したオジロジカから採取した。サンプリングの時点で、1匹の動物(BC04)は、最終ステージで、臨床的に慢性消耗病であり、2匹(N204及びW1004)は、いくつかの体の状態の低下を示し、そして他の2匹(I304、K304)は臨床的に通常であった。血液採取のために、シカをキシラジンで落ち着かせ、頸静脈の上の皮膚を無菌的に準備し、そして血液について、クエン酸ナトリウムで処理したプラスチックの溶液中に頸静脈パンチャーを介して採取した。
【0057】
2.モノクローナル抗体の発生
アミノ酸(aa)90〜231(PrP90-231)を含むコアタンパク質からなるPK処理したPrPScを、Diringer (1984) によって独自に報告された方法を使用して263Kに感染したハムスターの脳から単離し、そしてRubenstein et al. (1994)によって改質した。この材料を、以前に記載した(Kang et al., 2003)のように沈降させたグアジニンヒドロクロリド及びメタノールを使用して可溶化し、そして抗原として使用した。PrP-/-マウスを免疫化し、そしてそれらの免疫反応を、以前に記載した(Kascsak et al., 1987)のようにELISAによって監視した。免疫化したマウスの1つは、ハイブリドーマを製造するために使用した。そのマウスは、融合後4日に、リン酸緩衝食塩水(PBS)中に静脈内経路によって、抗原の最後の免疫化を受けた。脾臓細胞を、細胞表面PrPScの低減したレベルを発現するSP2/0骨髄腫の細胞系列に融合した(Kim et al., 2003)。そのハイブリドーマを以前に記載した(Kascsak et al., 1987)のようにELISAによって検査し、そして得られた細胞を制限希釈によって3時間クローンした。ラージスケールのMabの生産を、処理可能な生物反応フラスコ(Integra Biosciences, Switzerland)を使用して実施し、そして抗体をタンパク質G免疫アフィニティークロマトグラフィー(Pierce, Rockford, IL)を使用して、媒体から精製した。タンパク質をマイクロBCAタンパク質アッセイ(Pierce)によって測定し、そしてアイソタイピングを、マウスMabアイソタイピングキット(Pierce)を使用して実施した。それぞれのMabを、EZリンクビオチン化キット(Pierce)を使用してビオチン化した。
【0058】
多数のMabを、免疫原として可溶化PrPSc、及びSP2/0骨髄腫の細胞系列を発現する低いPrPを使用して生じた。それらの3つのMab、08−1/5D6 (5D6)、08−1/11F12 (11F12)及び08−1/8E9 (8E9) を、この研究のために選択し、それぞれIgGl、IgG2b及びIgG2bとしてアイソタイプさせた。ここにすべての3つのMabは、通常の、及び病気の関連PrPアイソフォームと反応した。
【0059】
全体の脳溶解物のウェスタンブロット(図6)は、全ての3つのMabが、263Kに感染したハムスター、スクレイピーに感染した羊及びCWDに感染したシカからのプロテアーゼ処理していない脳狩猟及びPK処理したPrPScからのPrPに対して、反応性があることを証明した(図6)。同様の結果を、未処理の及びPK処理した部分的に精製したPrPSc調合物を使用して観察した(データは示されていない)。それらのMabを、通常及び異常なPrPアイソフォーム、並びにME7、139A及び22Lマウスに適用されるスクレイピー株で感染させたマウスの脳から単離したPK処理したPrPSc、並びにCJDに感染したヒトの脳、並びに家畜を含む全ての試験された種からの未感染の脳材料から由来するPrPCに対しても、免疫反応がある(データは示されていない)。
【0060】
間接のELISAによって、3つのMabは、263Kに感染したハムスター脳から精製したPK処理したPrPScに免疫反応がある。反応性の程度は、変性処理の範囲に依存した。熱又はSDS処理は、単独で、免疫反応性を増加したが、2つの処理の組合せは、抗体結合の最も高いレベル、及び2つの処理の付加効果に近い免疫反応性(表1)をもたらし、エピトープの露出が、マルチな機械的プロセスであることを示した。興味深いことに、5D6は、形態的エピトープに結合するが、このMabの反応性は損失せず、しかしむしろPrPの変性を高めた。熱変性がPrPScのポリマー構造を崩壊するために十分ではないことは以前に報告されている(Tayebi et al., 2004)。さらに、Mabは、ELISAによる、未感染の脳及び変性していない脳ホモジネートにおける全PrP(通常及び異常なPrPアイソフォーム)に対して同等に免疫反応性があった。免疫反応性は、SDS及び熱での変性に従って、約2倍高められた。PL処理及び変性に従って、PrPScの免疫反応性は、タンパク質の分解消化の結果として結合する外因的な脳タンパク質がほとんど存在しないことによって、さらに3倍増加した(データは示されていない)。
【0061】
PrP検出の特異性及び感受性を高めるために、キャプチャーELISAアッセイを、ビオチン化検出抗体の取り込みで使用した。予期されたように、それぞれのビオチン化したMabのために、5〜6個のビオチンをそれぞれの抗体分子に結合した。さらに、Mabのビオチン化は、部分的に精製したPK処理したPrPScを使用する、直接ELISAによって評価されたそれらの免疫反応を干渉せず、又は低減しない(データは示されていない)。従って、検出抗体の結合及び反応性における差異は、物理学的なビオチン化方法の結果ではない。SDS及び熱で変性させたPK処理したPrPScを使用して、いくつかのMabの組合せを試験し、そしてそれぞれの抗体を、キャプチャー剤として、及び検出剤として評価した(表2)。抗体の組合せ、キャプチャー剤としてMab 11F12及び検出剤としてビオチン化5D6の1つのみは、PrPScとの結合及びPrPScの同定において成功した。その結果は、PrPScが、263Kに感染したハムスター、スクレイピー羊及びCWDに感染したシカから由来したかどうかは気にかけなかった。精製したハムスター脳に対する直接ELISAアッセイに関する銭の結果と同様に、キャプチャーELISAアッセイにおけるPrPの検出は、エピトープの利用可能性に依存し、そして脳溶解物の最初の処理によって決定された。感染した動物からの未処理の脳溶解物は、未感染の脳材料と比較してシグナル強度におけるわずかな(1.5倍)増加を示す一方で、洗浄剤又は熱変性が単独で4〜7倍の増加をもたらした。驚くことなく、PrPScの検出の最も高いレベル(10倍より大きい)を、SDS及び熱処理の組合せを使用した場合に達成した。さらに、1%未満のSDSの濃度の増加は、おそらく抗体−抗原結合の阻害及び/又は悪化によって検出できるPrPScを低下した。この以下で見られるような厳しい変性処理は、PrP構造を完全に破壊するのに十分ではない。スクレイピー感染性、及びPrPSc構造の推定できる程度が、SDS、熱及びSDS−PAGEにしたがって精製したPrPSc調合物中で維持されうることが以前に報告されている(Brown et al, 1990; Rubenstein et al., 1994)。
【0062】
PrPCを、全ての3つのスクレイピーからのキャプチャーELISAによるPKで処理していない通常の脳ホモジネートにおいて検出した。全ての場合において、シグナル強度(〜0.25〜0.3)は、バックグラウンド(〜0.12〜0.15)の2倍より高くなかった。この材料を、ウェルから溶出し、そしてウェスタンブロットによって試験した。PK処理していない脳ホモジネートから直接検出したPrPCの前記の結果と対照的に、溶出した試料のウェスタンブロットは、IgG軽鎖及び重鎖の検出のみをもたらした。PrPCは、結合材料の低いレベルによって検出できた。PK消化に続いて、ELISA値を、PrPCの除去を示すバックグラウンドレベルまで低下させた。PrPScは、263Kに感染したハムスター、羊スクレイピー及びCWDからのPK処理した脳ホモジネートにおけるキャプチャーELISAアッセイによって急速に検出することができた。興味深いことに、PrPC及びPrPScを含有するPK処理していない脳ホモジネートで実施したキャプチャーELISAアッセイはPrPC(PK処理していない通常組織から決定された)及びPrPSc(PK処理した感染した組織から決定した)凝集物と考えられているものよりも高いシグナル強度を示した(図7)。代わりの説明は、タンパク質、推定できる完全な長さのPrPScと、キャプチャーMabとの結合が、より影響されやすくなる第二Mabのためのエピトープをもたらす抗原における空間変化を誘発することである。このプロセスは、正の免疫反応性に関する。
【0063】
この研究において、使用されるMabの得られたセットに関して、図7において示されるような正の免疫反応性の程度は、主に依存した。CWD感染したシカからのPrPScは、PrPC及びPrPScの組合せから単に算出された、5D6の結合を越えて58%の増加を有する最大レベルを示したが、一方で羊スクレイピーのPrPScは、46%の増加を示した。263Kに感染したハムスターからのPrPScは、最も少なく呈されるが、しかしまだ40%で著しかった。図7における値は、それぞれの種に関する6つの個々の試料に関する3通りに基づき、かつ平均±標準誤差として表される。
【0064】
PrPScにおける抗体で誘発される空間再配列及び/又は立体構造変化は、11F12〜5D6でキャプチャーされた材料が、他のPrPに特異的なMabのためのエピトープを変更することを示すことによって証明されうる。キャプチャーアッセイを、PK処理していないPrPSc、SDS及び熱変性したPrPScで実施した。これは、ビオチン化Mab 8E9、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ及び基材でのインキュベートに従う。シグナルを越えるバックグランドの損失は、Mab 8E9のためのエピトープが、もはや入手でき又は利用できたことを示した。しかしながら、ウェスタンブロット及びMab 8E9での免疫染色によるマイクロリットルのウェルからの11F12〜5D9の溶出は、Mab 8E9エピトープが再度利用できたことを示す強力なPrPSc染色を証明した。おそらく、SDS−PAGE試料緩衝液での処理に加えて、SDSの存在での電気泳動が、11F12〜5D6とPrPScとの結合を変更し、かつ抗体で誘発されるPrPSc変化を再度可能な8E9結合に置き換える。
【0065】
Mab 8E9は、ウェスタンブロット及び間接ELISAアッセイに対して直接PrPC及びPrPScに結合することができたが、キャプチャーELISAアッセイにおける5D6及び8E9の置き換えは、抗原に結合するビオチン化8E9の不在を示す検出できないPrPをもたらす。さらに、11F12〜5D6抗体ペアのPrPSc特異性は、これらの特異的Mabの存在によってだけでなく、結合事象の連続によってであった。キャプチャー剤として5D6及び検出剤としてビオチン化11F12(5D6/ビオチン11F12)を使用することによる抗体の置き換えは、11F12−ビオチン化5D6(11F12/ビオチン5D6)の組合せと比較した場合に、PKで処理されていない脳溶解物を結合する最少PrPScをもたらす(図9)。シグナル対ノイズ(S/N)の比を、ハムスター、羊及びシカの脳組織からの、未感染の脳溶解物を使用したキャプチャーアッセイで得られたPrPシグナルと、未感染の材料から得られたバックグラウンドシグナルにおける相違とを比較することによって得られた(S/N=(S−S0)/(3σS0)、その際Sはシグナルであり、S0は平均バックグラウンドシグナルであり、σS0はバックグラウンドシグナルの標準偏差である)。1未満のS/N比は、Mabの結合が、測定されたシグナルが十分な量のノイズ有し、十分に弱いことを示す。それとは反対に、1以上のS/Nは、測定における力のほとんどが、特異的なMab結合からもたらされることを示す、測定におけるノイズが著しくないことを示す。信頼レベルは、S/N比の増加として指数関数的に増加する。5D6/ビオチン11F12ペアに関して、S/N比は、それぞれ、ハムスター、羊及びシカに関して約0.6、0.1及び0.3であり、Mab結合が非特異的であることを示す。しかしながら、11F12/ビオチン5D6に関して、S/N比の組合せは、約19(ハムスター)、28(羊)及び42(シカ)であった。これらの比は、特異的なMab結合のより高い重要な性質を暗示する。図9における値は、それぞれの種からの6個の個々の試料に関する3通りに基づき、かつELISAの結果は、平均±標準偏差として算出された。感染した試料からの増加した抗体結合(OD405に基づく)を、未感染の対照と比較する。対数スケールでのプロットは、感染した試料のシグナル力を対照試料(ノイズ)における力に対して算出する、シグナルとノイズの比(S/N)である。
【0066】
3.免疫アッセイ
10%脳ホモジネートの精製のために、脳組織を、1mMフェニルメチルスルホニル液(PMSF)の存在で、氷冷した溶解緩衝液(10 mM Tris−HCl、150 mM NaCl、1% Igepal(登録商標)CA−630(Nonidet P−40)、0.5%デオキシコール酸塩、5 mM EDTA、pH 8.0)の10体積中で均一化した(ホモジネートがプロテイナーゼK(PK)で処理されるべきである場合に、PMSFを溶解緩衝液から省いた)。10分間の1000×gでの遠心分離後に、その上澄みをアリコートし、−80℃で貯蔵した。
【0067】
キャプチャーアッセイのためのプロトコル及び試薬は、Chang, B. et al., "PrP Antibody Binding−Induced Epitope Modulation Evokes Immunocooperativity," J. Neuroimmunol. v.205, issue 1−2, pp. 94−100 (2008)において記載されており、参照をもって本明細書に組込まれたものとする。本発明において使用されるマウスのモノクローナル抗体を製造するハイブリドーマ細胞系列は、下記に示されたように置いた。キャプチャーELISAアッセイに関して、96ウェルプレートを、アフィニティー精製した11F12キャプチャーのモノクローナル抗体(Mab)(5μg/ml)で、2〜3時間室温で被覆した。被覆したウェルを、3%牛血清アルブミン(Sigma)で、PBS中で、一昼夜4℃で阻害した。そのウェルをPBSTで3時間洗浄した。その抗原を、PKで処理していない、又はPKで処理した(50℃で30分間100μg/ml)脳溶解物であり、1%PMSFの最終濃度で添加した。全ての試料を、1%SDS(最終濃度)で処理し、10分間100℃で加熱し、そして5分間16000×gで遠心分離した。その上澄みを、連続的に10倍希釈し、そしてそれぞれのウェルに添加した。そのプレートを、1時間37℃でインキュベートした。そのウェルを、PBSTで3時間洗浄し、そしてビオチン化5D6検出器Mab(5μg/ml)の100μlを添加した。60分後に、そのウェルをPBSTで洗浄し、そして100μlストレプトアビジンとアルカリホスファターゼとを(1:5000)、60分間37℃で添加した。PNPP(4−ニトロフェニルホスフェートジナトリウム塩ヘキサヒドレート)(Sigma)基材溶液を、それぞれのウェルに添加し(100μl)、そして60分後に、生成物を、OD405でELISA読み取り機(Bio−Tek, Vermont, NY)で測定した。
【0068】
レーザー解析のために、ビオチン化Mab 5D6でのインキュベートを、ストレプトアビジンとローダミンレッド(1:1000)の添加に従った。60分37℃でのインキュベートに続いて、そのウェルを、PBSTで洗浄し、そして100μlの1N NaOHで、10分間100℃で処理し、そして室温で20分間振とうした。その材料を、100μlのMicrocap(登録商標)(Drummond Scientific, Broomall, PA)マイクロキャピラリー管中に置き、そしてレーザー励起及び放出物検出のために特に設計された試料フォルダ中に挿入した。希釈を、本来の出発脳組織と比較して算出する。それぞれの値(データポイント)は、図の凡例において記載されている多重アッセイからの平均±標準偏差(SE)を示す。
【0069】
4.ウェスタンブロット
パーセント脳ホモジネートを、前記の溶解緩衝液中で製造した。その資料を、低速(2000×gで10分間)で遠心分離した。上澄みのマイクロリットルを、最終の1×試料緩衝液と混合し、4分間100℃で加熱し、そして12%アクリルアミドゲルを使用するSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDE−PAGE)を受け、ニトロセルロース膜に転写し、そして、ストレプトアビジンに共役した、基材としてNBT及びBCIPでのアルカリホスファターゼ(Kascsak et al, 1986)、又はセイヨウワサビペルオキシダーゼと共役した、前記のような(LaFauci et al., 2006) super signal west femto maximum sensitivity substrate(Pierce)でのヤギアンチマウスIgG(Pierce登録商標)を使用して免疫染色した。SDS−PAGEの前にPK消化した使用に関して、低速遠心分離からの上澄みの40μlを、100μg/mlのPK(最終濃度)で30分間50℃でインキュベートし、続いて1% PMSF、1X SDS−PAGE試料緩衝液を添加し、そして100℃で5分間加熱した。
【0070】
5.免疫沈降
MagnaBindタンパク質Gビーズ(Pierce)を、PBSで2回洗浄し、PBS50μlに再懸濁し、そして10%脳ホモジネート200μlを、Mab 8E9(10mg/ml)50μgで、合計体積PBSの1.2mlで添加した。室温で1時間の混合後に、そのビーズを時期的に分離し、3回、0.2%Tween20(PBST)を含むPBSで洗浄し、そして600μlのPBS中に再懸濁した。100℃で10分間の加熱後、及び16000×gでの3分間のマイクロ遠心分離後に、その上澄みをキャプチャーELISAのために使用した。
【0071】
血液試料に関して、magnaBindタンパク質Gビーズを、100μlのPBSで再懸濁し、続いて100μgのMab 8E9を最終体積5mlのPBS中で添加し、そして室温で1時間混合した。そのビーズを、PBSTで洗浄し、500μlのプラズマを含む5mlのPBSに再懸濁し、そしてさらに1時間インキュベートした。脳に関する前記のように、ビーズを単離し、PBSTで洗浄し、キャプチャーELISAによって解析したマイクロ遠心分離の上澄みを加熱した。
【0072】
6.タンパク質のミスフォールディング環状増幅(Protein misfolding cyclic amplification (PMCA))
脳及び血液のsPMCAのためのPrPCの源として、通常のハムスター、羊及びシカからの10%(質量/体積)[150mM NaCl、1.0% Triton X−100、4 mM EDTA、及び完全なプロテアーゼ阻害剤カクテルを含むPBS中で(Calbiochem)製造した]を、遠心分離(1500×g、30秒)し、そして上澄みを急速に凍結した。263Kに感染したハムスター、羊スクレイピー及びVWDシカからの脳ホモジネートの連続10倍希釈(10−8〜10−11)の500μlアリコートを、対応する種からの10%の通常の脳上澄み100μlと混合し、そして浸透しながらインキュベート(1時間37℃で)した。これを増幅の1サイクルとして定義した。5サイクル後に、PMCAを、元の反応管から新しい管にPMCA反応混合物500μlを移送し、そして10%の通常の脳ホモジネートの100μlを添加することによって続けた。未希釈のスクレイピー羊又はCWDシカのプラズマの500μlアリコートに対するPMCAを、脳に関する記載と同様に実施した。PMCAに続いて、試料を2000×gで10分間遠心分離した。脳試料に関して、上澄みの200μlを、プロテイナーゼK(PK)で消化し(100μg/ml、500C、30分間)、続いて、1%プロテアーゼ阻害剤カクテル及び1%SDSを添加した。試料を、100℃で10分間加熱し、そして10μlアリコートを、ウェスタンブロットによって解析した(Chang et al. 2009)。血液に関して、続いて増幅した血液試料のPMCA500μlを、ウェスタンブロット又はSOFIAによる解析前のMab 8E9免疫沈降に従って処理しない、又はPK処理した。全てのPMCAに関して、希釈を、元の希釈していない脳又は血液試料と比較して表した。PMCAに従わない血液試料を免疫沈降し、そして超音波破砕及び37℃のインキュベートサイクルなしに上記と同様に製造した。
【0073】
7.SOFIA
Ninety6ウェルHigh Bindingプレート(Costar, NY)を、キャプチャーMab 11F12(100μl中5μg/ウェル)で、室温で3時間被覆し、そしてTBS中で一昼夜4℃でカゼインで阻害した。Magneticタンパク質Gビーズ及びMab 8E9を60分間混合し、3回PBSTで洗浄し、そしてそのペレットを800μl PBS中で再懸濁した。血液試料を、遠心分離(800×g、5分)し、その上澄み800μlを、SDSと組み合わせ(1%最終濃度)、100℃で10分間加熱し、60分間GビーズMab 8E9と混合し、そして10分間加熱した。16000×gで5分間の遠心分離後に、上澄み100μlを10分間加熱した。室温で(1時間)インキュベート及びPBSTでの洗浄後に、ビオチン化Mab 5D6(2μg/ウェル)の100μlを、1時間添加し、続いて洗浄し、そして100μlのストレプトアビジン−ローダミンレッド−X共役物(インビトロゲン)で1時間インキュベートした。4回のPBSTでの洗浄後に、1N NaOHの100μlを添加し、そしてそのプレートを加熱し(100℃で10分間)、30分間室温で混合し、そしてHClの等モル量で中和した。解析を90μlアリコートで実施した。
【0074】
8.計測
装置を、一般に使用されている使い捨ての100マイクロリットルのマイクロキャピラリー(Drummond Scientific Co., Broomall, PA)の周囲に、試料フォルダとして設置した。その試料を、ローダミンの吸収ピークと良好に適合する、波長532nmで30mWの連続の典型的な力を有するキャピラリーの軸に沿った、固体状態の周波数二倍器Nd::YAGレーザー(Beam of Light Tech.(登録商標), Clackamas, OR )からの時間的に変化させた光の集光によって励起する。ファイバー光学アセンブリを、キャピラリーの長さの約3倍におよび、かつ互いにキャピラリーの周囲に関して90度で配置されている4つの線状配置からなるように設計した。前記ファイバーの多数の開口部(0.22、又は〜23度の容認角度)の結果、このファイバーの方向づけは、試料の分野の完全な適用範囲をもたらす。4つの線状配置によって集められた光は、集まり(すなわち束ねられる又は合される)、かつホログラフィックノッチフィルター(Kaiser Optical Systems Inc. Ann Arbor, MI)及びバンドパスフィルター(Omega Optical, Inc. Brattleboro, VT)がマウントされている伝達光学中に集光される。それらを、それぞれ、励起源からの散乱光を除去し、かつレポーター染料の蛍光の検出を制限するために使用する。その光を、単一のマルチモードの400ミクロン光ファイバー(Thorlabs(登録商標), Inc. Newton, NJ)中に集中させ、そして直接検出電子装置のプリアンプ上でBNCコネクタ上にマウントされる単一の低ノイズの光電池ダイオード検出器(United Detector Technology, Hawthorne, CA)に連結する。シグナルの検出は、相感受性、又は"ロックイン"、検出案を使用する。励起源を、検出システムのための参考波長を派するために提供される光学チョッパー(Thorlabs Inc.)で変調する。ダイオード検出器は、トランスコンダクタンスプリアンプ(Stanford Research Systems, Inc. Sunnyvale, CA)の入力でマウントされて、合計ラインのインピーダンスを低減し、そしてそれらの低レベルでのシグナルのインピーダンス適合における困難さを取り除く。そして、そのシグナルを、ロックイン増幅器(Stanford Research Systems)で検出し、そしてデータ取得を、Lab View(登録商標)(National Instruments Inc., Austin, TX)を介して実施する。そのプログラムは、電圧におけるその読取りのためのロックイン増幅器を支え、周期的にオペレーターに測定値の時刻歴を表示し、かつASCIIファイルにおけるタイムスタンプでの値を記憶する電子ストリップチャートからなる。ロックイン増幅器の時定数は、Hertzの数十番目の帯域幅を提供するために選択されるべきである。これらの測定のために、3秒の時定数を選択した。ロックインは、安定な読取りを得るための継続時間(この場合3〜30秒)におけるいくつかの時定数を要求する。測定のための値を、新たな試料を読み込んだ後にシグナルが安定化された(20〜30秒)後に取った。励起源、及びロックイン検出器のための基準周波数の変調は、最小環境ノイズに選択される753Hzであった。さらに線周波数及び2回の線周波数でのシグナルのフィルタリングをロックイン増幅器で行い、そしてプリアンプシグナルは、変調周波数でフィルターしたバンドパスであった。試料のために、1nA/Vのプリアンプ感受性を選択し、1M Ohmの入力インピーダンスを得た。測定値の測定において、始動手順の設定を維持し、その際、全ての電子装置のための15分の暖機(レーザー、ロックイン増幅器、プリアンプ)、システムが適切に電気的に基づくことを保証するためのダークシグナルレベルの目視検査、安定のために検査するためのレーザー出力の測定、レーザーアライメントの目視試験を含む。ベースラインシグナルの対照測定を、蒸留し、脱イオンした水でキャピラリーを使用して検査した。
【0075】
装置の感受性制限を、ローダミンレッドの蛍光シグナル放出を減少濃度で測定することによって試験した。ローダミンレッドは、0.01アトグラム(ag)の濃度[20アトモル(am)]まで検出可能である(図10)。特異性及び感受性の測定を、シカ、ハムスター、マウス及び羊からの完全な長さの組換えPrP(rPrP)を使用するアッセイを実施することによって実施した。試験したスクレイピーに関わらず、検出可能性の限界は≧10ag rPrPであった。図10に変向して、データを、図2の装置で得た。その際水中でのローダミンレッド(四角)の希釈を100μlマイクロキャピラリー管に添加し、そして周囲光ファイバーの蛍光シグナル放出を記録した。相対的なシグナル強度を、水のみの蛍光シグナル放出に基づいて算出した。マウス(アスタリスク)、ハムスター(ダイヤ)、羊(三角)及びシカ(丸)からのrPrPの場合において、rPrPを、1%PrP-/-脳ホモジネート中で希釈し、そしてSOFIAを受けた。相対蛍光シグナル強度を、rPrP希釈(1% PrP-/-脳ホモジネート)のみで実施した同様のアッセイに基づいて算出した。1nA/Vのプリアンプ設定での三重アッセイを、それぞれのrPrP濃度に関して実施し、そしてその濃度を、シグナル強度(対照と比較した%増加)±SDの平均でプロットした。
【0076】
通常及び感染したハムスター、シカ及び羊からの脳ホモジネートを、本発明の方法におけるそれあの使用のために試験した。10%脳ホモジネートのウェスタンブロットは、出発材料におけるPrPScの存在を証明した。典型的なPrPバンドリングパターンは、完全なタンパク質消化の確認として、通常のハムスター能座医療からのPrPCの除去に加えてPK消化に従うPrPScの低分子サイズに移る特徴的な束でPK処理する前に、10%脳ホモジネート中で明白であった。臨床動物からの、洗浄剤で抽出した脳ホモジネートの連続希釈は、ウェスタンブロットによるPrPSc検出の限界が、約10-3〜10-4である一方で、キャプチャーELISAによるPrPScの検出が、さらに101〜102倍希釈によって感受性があったことを証明している(データは示されていない)。同様のMab及び脳ホモジネートを使用した比較において、この原稿において報告されたアッセイの感受性は、ウェスタンブロット及びキャプチャーELISAに関して大きさの少なくとも5オーダーだけ超えた。本発明の方法を使用して、シグナルとベースラインとの割合(S/B)を、脳ホモジネートにおけるPrP検出可能性を評価刷るために使用した。1.1より大きいS/Bの割合がPrPの存在を示すことを決定した。ハムスター、羊及びシカの通常の及び感染した脳組織からのPK処理した及び未処理の脳ホモジネートの希釈連続を、本発明の方法によってアッセイした(図11)。値は、試料のローダミンレッド蛍光放出(S)に対する希釈液(1% PrP-/-脳ホモジネート又は均一化緩衝液)のみの蛍光放出に由来するバックグラウンドベースラインシグナル(B)の割合として表した。そのデータは、それぞれ脳ホモジネート希釈のためにそれぞれ1nA/Vのプリアンプ設定で三重に実施した、3つの独立した実験からの平均±SDを示す。予期したように、PK処理によって、通常の脳組織からの全ての試料は、PrPCの不在を示す試験した濃度にかかわらず、1.1未満のS/B比を有した。合計シグナル出力又は1.1より高いS/B比によって証明されたように、PK処理した感染したハムスターの脳ホモジネートの連続10倍希釈からの、プロテアーゼ耐性PrPScは、10-11の希釈まで、及び羊及びシカから10-10まで検出可能であった。さらに、PK処理した脳ホモジネートからの最大PrPSc検出は、ハムスター並びに羊及びシカに関して10-7〜10-8の希釈の範囲であった。
【0077】
10倍連続希釈したPK処理していない通常の脳ホモジネートの場合において、PrPCは、SOFIAによって、S/B比が全て1.1未満で減少した後、ハムスターに関して10-11の希釈、及びシカ及び羊に関して10-10まで(10-6〜10-7希釈でのピーク検出で)検出可能であった。263Kに感染したハムスター、スクレイピーに感染した羊及びCWDに感染したシカのPK処理していない脳組織からのS/B比は、PrPの存在を示すまで続けた。感染した組織からの連続希釈した脳ホモジネートは、全て、羊及びしかに関して10-11(10-7でのピーク検出で)、及びハムスターに関して10-13(10-8でのピーク検出)の希釈まで、1.1より高いS/B比を示した。それらの結果は、プロテアーゼ処理していない未感染の脳組織からのPrPをPrPC検出可能性のレベルを超えて希釈することができる一方で合計PrPScを検出する能力を未だ維持していることを示す。それらの結果は、さらに、それらが臨床的疾患で感染した脳におけるPrPCよりも少なくとも1log高い合計PrPScであることを示唆する。この支持において、PrPScが脳中でスクレイピー感染の間蓄積し、そしてPrPCの濃度よりも10倍高い濃度に達することは、以前に報告されている。263Kに感染したハムスター関する以前に報告されたデータ(R. Atarashi et al. "Ultrasensitive detection of scrapie prion protein using seeded conversion of recombinant prion protein," Nature Meth. vol. 4 (2007) pp. 645−650)を使用して、SOFIAは、PK処理していないハムスターの脳からのPrPScの約10agの検出限界を有する。ハムスターのデータから直接の外挿は、PrPScの1フェトグラムを、羊及びシカの脳材料から検出出来ることを示す。しかしながら、当量の抗体反応性であると想定して、希釈した試料のウェスタンブロットは、それらがハムスター脳において、羊及びシカの2つの種におけるプリオンの検出が10〜100ag以上の範囲で会って良いことを示唆するグラム当量を基礎とする羊及びシカの脳材料よりも、少なくとも10〜100倍高いPrPScであることを示した。
【0078】
9.血液中でのPrPScの検出
Mab 8E9での免疫沈降を架橋PMCA及びSOFIAとして供給し、このMabのPrP免疫沈降に関する有用性を試験した。未感染の及び263Kに感染したハムスター10%脳ホモジネートの種々の比の混合物(未感染:感染(%)−100:0、90:10、70:30、50:50)を、免疫沈降し、そしてウェスタンブロットによって解析した(図12)。通常脳ホモジネート(NBH)及び263Kに感染したハムスターの脳ホモジネート(263K BH)のパーセントを、種々の割合(レーン1、5−NBHのみ;レーン2、6−90μL NBH及び10μL 263K BH;レーン3、7−70μL NBH+30μL263 BH;レーン4、8−50μLNBH+50μL 263K BH)で合し、そしてMab 8E9で免疫沈降した。その免疫沈降した試料を、ウェスタンブロット及びMab 11F12での免疫染色前に、処理しなかった(レーン1〜4)又はPK処理した(レーン5〜8)。PK消化の欠如において、脳ホモジネート比に関わらず、全ての試料は、同様の免疫染色強度を示した(レーン1〜4)。PK処理した免疫沈降(レーン5〜8)のウェスタンブロットは、PK処理した263Kに感染した脳ホモジネートのみを含有する試料と直接比較した場合に同様の免疫染色を証明した(データは示されていない)。これらの結果は、PrPC及びPrPScの双方を、並びにPrPCの存在で免疫沈降させたMab 8E9が、最大PrPC免疫沈降を阻害又は低減しなかったことを示す。単離したPrPを質的に及び量的に評価するために、キャプチャーELISAを、PK処理していない通常の及び263Kに感染したハムスターの脳ホモジネートからのMab 8E9免疫沈降で実施した(図13)。キャプチャーELISAは、同様のMabペア(キャプチャーMabとして11F12及び検出Mabとして5D6)を、SOFIAのために使用したように利用した。通常の脳:キャプチャーELISAによる感染した脳の組合せのMab 8E9免疫沈降は、出発混合物において増加した感染した能座医療のレベルとしてELISAシグナル強度の増加をもたらした。能座医療がタンパク質を消化しなかったために、それぞれの混合物は、ウェスタンブロットによって確認されたように、PrPCのみ、又はPrPC及びPrPScの混合物を含んだ(図12)。しかしながら、キャプチャーELISAによる免疫沈降の解析は、シグナル強度の増加がPrPScの存在に及びPrPCの欠失に依存することを示す。これは、それあの特異的なMabの実用性及びPrPScの検出のための方法論を示唆する。免疫沈降−キャプチャーELISAフォーマットが263Kに感染したハムスター、スクレイピー羊及びCWDシカからのPrPSc由来の脳を容易に検出することができたが、PrPScは、臨床動物からの血液中で検出することができなかった。
【0079】
連続的なPMCA(sPMCA)に従う263Kに感染したハムスター及び羊スクレイピー試料からの血液中のPrPScの検出の能力は、以前に報告されている。しかしながら、PrPSc検出に必要である多数のPMCAサイクルは、診断アッセイとしての使用のための実用的ではない技術をもたらす。血液中でのPrPSc検出の問題点は、sPMCAの取り込み、続いて増幅した標的の免疫沈降、そして感受性SOFIAアッセイでの検出によって取り組まれている(Chang et al., 2009)。sPMCAを評価し、そしてハムスターの脳を使用して検証した(図14)。ハムスターの脳ホモジネートの希釈を、PMCAの7、14及び40サイクル(レーン7〜10)で実施し、一方で同一の試料を、超音波破砕梨で同様に実施した(レーン3〜6)。それぞれの試料の10μLアリコートを、Mab 11F12でのウェスタンブロットによって解析した。対照試料は、10%の263Kに感染したハムスターの脳ホモジネートの希釈(基の脳組織に関する)をPrPC源として通常のハムスターの脳ホモジネートを使用してsPMCAを実施する前の、PK消化なし(レーン1)及びPK消化あり(レーン2)の263Kに感染したハムスターの脳ホモジネートの10-2希釈であった。PrPScは、sPMCAの7サイクルによる全ての希釈で検出することができなかったが、しかし14サイクルの完了による10-8希釈した使用において検出することができた(図14、レーン10)。sPMCAの40サイクル(sPMCA40)後に、PK耐性のPrPScは、試験した263Kに感染したハムスターの脳ホモジネートの全ての希釈で検出できた。省略したPMCA超音波破砕工程と同時に実施される同様のハムスターの脳ホモジネートの希釈は、PK耐性のPrPScの免疫染色(図3、レーン3〜6)によって証明されたようなあらゆるPrPSc増幅を示さなかった。sPMCA40後の検出でのPMCAの欠失(基の脳組織に関して10-6)におけるPrPScの検出限界を比較して、及び解析した試料サイズを考慮に入れて、その結果は、PMCAの結果として104倍の増幅を評価する。
【0080】
希釈した羊脳又は臨床動物からのCWD脳ホモジネート(PrPCの源として対応する種の未感染の脳ホモジネートに加えて)での同様のPMCA試験は、感染した脳の10-8希釈でのPMCAの28サイクルでのウェスタンブロットによる増幅したPrPScの最初の検出を証明した。ハムスターの脳と比較した羊及びシカの脳からのPrPScの最初の検出に必要とされるサイクルの増加数は、元の脳組織において見出される出発PrPScのより小さい量による。期待されたように、sPMCA40の終わりで、スクレイピー羊及びCWDシカの脳ホモジネートからの増幅したPrPScを、PK耐性のPrPScの増加した免疫染色強度及び検出限界によって証明した。羊及びシカの脳組織は、感染したハムスターの脳と比較してほとんどPrPScを有さないが、増幅のレベルは、最初のPrPScレベルに関して未だに約4logであった(データは示されていない)。
【0081】
スクレイピー羊及びCWDシカからのプラズマを、sPMCA40を受けさせた。羊試料は、血液採取の時点で、臨床的サイン及び第三眼瞼リンパ小節のPrPSc免疫組織学的(IHC)染色の存在又は欠失に基づいて区別した(図15)。血液採取の時点で臨床症状を示さなかったグループ3の全ての動物は、最終的に臨床症状に進行した。CWD未感染の羊のグループ(表3、グループ4)を収容し、そして単離したスクレイピーを有さない領域中に維持した。CWD試料は、いくつかの実験的に感染した(経口的に)前臨床の及び臨床のオジロジカからなった(表4)。羊及びCWD試料の全てを、個々にsPMCA40を受けさせ、そしてPK消化に続いて、ウェスタンブロットによって解析した。プラズマのsPMCA40に続いて、Mab 8E9免疫沈降によるPrPSc濃縮前又は後のPK処理したPMCA生成物のウェスタンブロットは、あらゆるPrPScを示さなかった。羊の血液からのPrPScの低レベルの急速な検出を容易にするために報告された(Thorne and Terry, 2008)、ポリアデニル酸[ポリ(A)]の添加は、sPMCA40による羊スクレイピー又はCWDシカのプラズマからのPrPScの検出の点まで増幅効率を改良しなかった。羊の血液からのsPMCA40によるPrPSc検出の欠失は、使用した羊の遺伝子型に依存した(データは示されていない)。すなわち、PrPScの源及び通常の羊の脳PrPCの羊の遺伝子型の対合は、イムノブロットによる検出のための増幅した生成物を十分に増加しなかった。ウェスタンブロットが有益ではなかったために、PrPScがCWD及び羊スクレイピーの3つのグループを含むあらゆる動物からの血液中で最初から存在するかどうか、又はPMCAが成功したかどうかは明確ではないが、しかしウェスタンブロットが40サイクル後のみ増幅したPrPScを検出するために十分な感受性がなかった。羊の血液のPMCAが、PrPScの明らかな自発的な発生による偽陽性結果を導きうることが報告されている(Thorne and Terry, 2008)。従って、むしろPMCAサイクル、周囲光ファイバー免疫アッセイ(SOFIA)の数の連続増加を、sPMCA40生成物を免疫沈降させた未処理の及びPK処理したMab 8E9のPrPScの検出のために使用した(Chang et al., 2009)。我々の研究は、sPMCA40の欠失において、スクレイピー羊及び未感染の羊プラズマ試料からのSOFIAによって得られた読取りが同様であり、かつベースラインレベルに達したことを証明した(図16)。sPMCA40の前に、個々の試料に関するSOFIAシグナル強度(試料/バックグラウンド)は、0.5〜0.9(グループ1)0.7〜1.2(グループ2)、0.8〜1.3(グループ3)及び0.6〜1.1(グループ4)の範囲であった。SOFIAの動的範囲に対する以前の研究(Chang et al., 2009)が、PKで処理していない臨床羊の脳PrPScがフェトモル範囲で検出することができる(Chang et al., 2009)ことを証明したために、おそらくスクレイピー羊のプラズマ試料におけるPrPScレベルが検出可能範囲未満である。SOFIAの動的範囲内までPrPScのレベルを増幅する試みにおいて、sPMCA40を、MaB 8E9免疫沈降によって実施した。PKで処理していないPrPScを、免疫沈降したsPMCA40生成物に対してSOFIAによって検出することができた(図16)。sPMCA40に続いて、対照グループ(グループ4)の個々の試料に関するシグナル強度(0.7〜1.2)の範囲は、PMCA前の試料と著しい差はなかった。しかしながら、スクレイピー羊の3つのグループに関するSOFIAシグナル強度の範囲は、それぞれ他と同様(グループ1:4.3〜4.8、グループ2:4.4〜5.1、グループ3:4.8〜5.3)であり、それらの臨床発現に関わらず、前PMCA値及び未感染試料(グループ4)よりも著しく高かった。このアプローチの値は、病気の証明が感染したスクレイピーである羊に依存するが、しかし臨床サインの存在、及びPrPScの存在のために正に試験した羊の全ての3つのグループとしての神経病理学に依存する、1つの考察の場合に実現される(図16)。PrPSc増幅は、遺伝子型の相容性にも依存した。それというのも、ARQ/AQR又はARQ/VRQ羊からの通常の脳ホモジネートを、あらゆる感染した羊のプラズマ試料で使用した場合に、増幅における差異がないからである。さらに、PrPScからPrPCを認識するためのPK消化のための要求は必要でない。それというのも、SOFIAの結果が、免疫沈降及び免疫アッセイ解析のために、sPMCA40生成物を処理していない(図16)又はPK処理した(示されていない)かどうかに関わらず同様であるからである。図16におけるデータは、羊スクレイピーに関連する臨床サインの出現及び免疫組織学(IHC)による3グループ中へのプラズマ試料の分割によって生じた。それぞれのプラズマ試料を、PMCA40を受けさせ(黒塗りの四角)、又はPMCAなしにインキュベートした(白抜きの四角)。それぞれの試料は、未処理、又はMab 8E9免疫沈降によってPK消化、そしてSOFIAによるPrPScを解析した。それぞれ3つのグループからのプラズマ試料を、三重にアッセイし、そしてそれぞれの3グループにおける使用の全てのデータを組合せ、そして平均±標準偏差として表した。
【0082】
同様の研究を、シカCWDの、いくつかの前臨床及び臨床的な場合から得たプラズマで実施した(図17)。前記の羊プラズマ試料と同様に、sPMCA40の欠失におけるCWD試料に対するSOFIAによって得られたシグナルは、それ自体バックグラウンドに達した未感染の対照とは異ならなかった。さらに、PK耐性のPrPScを、キャプチャーELISA又はsPMCA40によるウェスタンブロットによって検出することができなかった。しかしながら、sPMCA40生成物の免疫沈降に従って、PrPScは、全ての前臨床の及び臨床的なCWD血液からSOFIAによって検出することができた(図17)。さらに、スクレイピー羊試料と同様に、SOFIA値は、感染した動物から生じる試料に依存したが、しかしSOFIAによる病気の認識は、病気にかかった動物の臨床状態に依存しなかった。図17におけるデータを、sPMCA40に対する5つのCWDの場合からのそれぞれのプラズマ試料(黒塗りの四角)によって得て、そしてPMCA(白抜きの四角)の欠失で維持した。全ての試料を、未消化、又はMab 8E9免疫沈降及びSOFIAによってPK処理した。結果を、PK未処理の試料に関して示し、そしてその値は、三重アッセイの平均±SDを表す。4つの未感染のシカプラズマ試料の場合において、それぞれの4試料を三重にアッセイし、そして4つの試料の混合結果を、平均±SDとして表す。本発明の全ての実施態様において、全てのパーセンテージは、特に記載されていない限り、合計組成物の質量%である。
【0083】
特に記載されていない限り、全ての比は質量比である。全ての範囲は、包含的であり、かつ組合せ可能である。有効数字の数は、示された量に対する制限又は測定の確度を意味する。全ての数適量は、特に記載されていない限り"約"の言葉によって変更されるべきと考えられる。
【0084】
発明の詳細な説明において挙げられた全ての文献は、関連して、参照をもって本明細書に組み込まれたものとし、あらゆる文献の引用は、本発明に関する先行技術であると認めると解釈するべきではない。この文献における用語のあらゆる意味又は定義が、参照をもって組み込まれた文献における同様の用語のあらゆる意味又は定義と矛盾する範囲に対して、その意味又は定義は、この文献において管理される用語に割り当てられる。
【0085】
本発明の特定の実施態様は説明及び記載されているのに対し、種々の他の変更及び改編は、本発明の趣旨及び範囲を逸脱するものではないことが当業者には明らかである。従って、付随の特許請求の範囲における、本発明の範囲内である全ての変更及び改編は保護されることを意図する。
【0086】

【0087】

【0088】

【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
疑わしい生物試料におけるPrPScの存在又は欠失の検出のための方法であって、
a.試料マトリックスからPrPScを実質的に分離することによって、該試料中に存在してよいPrPScを濃縮する工程、
b.濃縮したPrPScを少なくとも1つの分子標識で標識して、標識したPrPScを製造する工程、及び
c.アトモル量の標識したPrPScを検出することができる装置上で、標識したPrPScを検出する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記PrPScを消化しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PrPScの濃縮及び標識したPrPScの検出の間の時間が、48時間以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PrPScの濃縮及び標識したPrPScの検出の間の時間が、24時間以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試料が、脳組織、神経組織、血液、尿、リンパ液、髄液、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試料が、標識したPrPScの約0.1アトモル〜約200アトモルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記試料が、シード重合を受けない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記分子標識が、蛍光標識、リン光標識、放射性同位体標識、又はそれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記分子標識が、蛍光標識した、アンチPrP抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分子標識が、さらに、ビオチン化アンチPrP抗体を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記PrPScの濃縮工程が、抗体、免疫沈降、磁気ビーズ、又はそれらの組合せを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
疑わしい生物試料におけるPrPScの存在又は欠失の検出のための方法であって、
a.sPMCAによる前記試料中に存在するPrPScを増幅する工程、
b.試料マトリックスからPrPScを実質的に分離することによって、該試料中に存在してよいPrPScを濃縮する工程、
c.濃縮したPrPScを少なくとも1つの分子標識で標識して、標識したPrPScを製造する工程、及び
d.アトモル量の標識したPrPScを検出することができる装置上で、標識したPrPScを検出する工程
を含む、方法。
【請求項13】
前記PrPScの濃縮工程が、分子抗体、免疫沈降、磁気ビーズ、又はそれらの組合せを使用する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記PrPScを消化しない、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記PrPScの増幅及び標識したPrPScの検出の間の時間が、48時間以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記PrPScの増幅及び標識したPrPScの検出の間の時間が、24時間以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記試料が、脳組織、神経組織、血液、尿、リンパ液、髄液、又はそれらの組合せを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記試料が、標識したPrPScの約0.1アトモル〜約200アトモルを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記分子標識が、蛍光標識、リン光標識、放射性同位体標識、又はそれらの組合せである、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記PrPScを濃縮する工程が、モノクローナル抗体又はそれらの抗原−結合プリオンによって生じ、その際該抗体が、ハイブリドーマ08−1/8E9によって製造された抗体と実質的に同一である、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記PrPScを標識する工程が、
a.モノクローナル抗体又はそれらの抗原−結合プリオン、その際該抗体が、ハイブリドーマ08−1/11F12によって製造された抗体と実質的に同一である、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を有し、
b.ビオチン化モノクローナル抗体又はそれらの抗原−結合プリオンでキャプチャーされたPrPscを標識すること、その際該抗体が、ハイブリドーマ08−1/5D6によって製造された抗体と実質的に同一である、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を有し、
によって生じる、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
解析装置が、米国特許明細書61/211,264において開示されている、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
解析装置が、米国特許明細書11/634,546において開示されている、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
解析装置が、米国特許明細書61/211,264において開示されている、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
解析装置が、米国特許明細書11/634,546において開示されている、請求項12に記載の方法。
【請求項26】
PrPScに結合し、かつ第二モノクローナル抗体のPrPScへの結合を高める、モノクローナル抗体又はそれらの抗原−結合プリオン。
【請求項27】
第二モノクローナル抗体のPrPScへの結合後に高められた方法で通常PrPScに結合する、モノクローナル抗体又はそれらの抗原−結合プリオン。
【請求項28】
第二モノクローナル抗体のPrPScへの結合後に結合することができない、通常PrPScに結合する、モノクローナル抗体又はそれらの抗原−結合プリオン。
【請求項29】
PrPScの検出のためのキットであって、
a.PrPScに結合し、かつ第二モノクローナル抗体のPrPScへの結合を高める、第一モノクローナル抗体又はそれらの抗原−結合プリオン
b.第一モノクローナル抗体のPrPScへの結合後に高められた方法で通常PrPScに結合する、第二モノクローナル抗体又はそれらの抗原−結合プリオン
を含む、キット。
【請求項30】
前記第一抗体が、イブリドーマ08−1/11F12によって製造された抗体と実質的に同一である、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を有し、かつ前記第二抗体が、ハイブリドーマ08−1/5D6によって製造された抗体と実質的に同一である、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を有する、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
さらに、PrPScを免疫沈降することができる第三モノクローナル抗体を含む、PrPScの検出のための請求項29に記載のキット。
【請求項32】
さらに、標識したPrPScのアトモル量を検出することができる装置での協同のたえの、少なくとも1つのバイアル、キュベット又はキャピラリーを含む、PrPScの検出のための請求項29に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2012−522222(P2012−522222A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502259(P2012−502259)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/028698
【国際公開番号】WO2010/111514
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(508115026)ロス アラモス ナショナル セキュリティー,エルエルシー (9)
【氏名又は名称原語表記】LOS ALAMOS NATIONAL SECURITY,LLC
【住所又は居所原語表記】LOS ALAMOS NATIONAL LABORATORY,LC/IP,MS A187,Los Alamos,NM 87545,U.S.A.
【出願人】(510150927)ザ リサーチ ファンデーション オブ ステート ユニバーシティ オブ ニューヨーク (3)
【Fターム(参考)】