説明

感染性疾患の処置及び防御方法

【課題】感染性疾患、とりわけ脂質含有感染性生物が体液、例えば血液中に見出される感染性疾患の発生および重篤度を低減させる方法を提供する。
【解決手段】脂質含有感染性生物から脂質を抽出するのに有用な溶媒を用い、それにより感染性生物の感染性を低減させる。また感染性生物の脂質含量を低減させるため溶媒で処理した脂質含有感染性生物を、医薬適合性の担体と組み合わせて含んでなるワクチン組成物をも提供する。ワクチン組成物を動物またはヒトに投与して脂質含有感染性生物に対する保護法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感染性疾患、とりわけ感染性生物が体液、例えば血液中に見出される感染性疾患の発生及び重篤度を低減させる方法に関する。本発明の方法は脂質を含有する感染性生物を処置するための系を用いる。本発明は感染性生物から脂質を抽出するのに有用な溶媒系を用い、それにより感染性生物の感染性を低減させる。本発明はまた感染性生物の脂質含量を低減させるために、本発明の方法で処理した感染性生物を含んでなるワクチンを、医薬適合性の担体と組み合わせて含んでなる組成物を提供し、動物またはヒトに投与して脂質含有感染性生物に対する保護を提供することにより感染性疾患の蔓延を低減させる。
【背景技術】
【0002】
感染性疾患は世界中で罹病及び死亡の主要な原因である。毎年莫大な数の動物及びヒトが種々の病因の感染性疾患を患い、社会に巨大な経済的な重荷を負わせている。多くの感染生物はそれらを取り囲む膜の主要な成分として脂質を含有する。感染性疾患を生み出し、その細胞壁またはエンベロープに脂質を含有する生物には、細菌、ウイルス、原生動物、糸状菌、及び真菌などがあるがこれらに限定されない。動物及びヒトを襲う多くの細菌及びウイルスは極端な罹病、病的状態及び致死を引き起こす。多くの細菌及びウイルスは体液、例えば血液中で体内を回る。これら及びその他の感染性生物を別の体液、例えば腹膜液、リンパ液、胸膜液、脳脊髄液、及び生殖系の種々の液において見出すことができる。疾患はこれらの液に浸るいずれかの部位で引き起こされ得る。別の細菌及びウイルスは主に異なる器官系及び特異的な組織に存在し、増殖し、次いで循環系に侵入して離れた部位の別の組織及び器官に接近する。
【0003】
感染性生物、例えばウイルスは毎年莫大な数のヒトを襲う。最近の病因には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)により引き起こされると考えられている後天性免疫不全症候群(AIDS)として知られている疾患などがある。関連するウイルスは別の動物、例えば霊長類及びネコを襲う。このウイルスは急速に世界中に広まり、輸血を受けている個体、汚染された針を用いている個体、及び感染した体液と接触した個体などの種々の個体の亜集団で流行する。この疾患はまた特定の国で蔓延し、集団の3分の1以上を襲う。公知の治療法は存在しない。必要なのは、簡単で信頼性があり経済的なHIVウイルスの感染性を低減させ、それにより伝染性を低減させる方法である。また必要なのは、ウイルスがこれらの体液と接触した別のものに伝染するのを低減させるために、感染された個体の体液を処置する方法である。また必要なのは、輸血を受ける個体を通じたウイルスの伝染を低減させるために、血液バンクで見出される血液を処置する方法である。さらにHIV及び別のウイルスに必要なのは、血漿に負荷されたウイルスを減少させるように個体の血漿を処置し、処置した血漿を個体に戻すことによりヒトまたは動物のウイルス負荷を低減させるメカニズムである。
【0004】
動物及びヒトを襲う別の主要なウイルス感染には、これらに限定されないが髄膜炎、サイトメガロウイルス、及び種々の形態の肝炎などがある。いくつかの形態の肝炎は薬物で処置できるが、別の型はうまく処置できず、死に至る。現在のところたいていの抗ウイルス治療はウイルス複製を防御または阻止するように指示され、ウイルスのT4リンパ球またはマクロファージへの最初の結合、ウイルスRNAのウイルスDNAへの転写及び繁殖中の新規ウイルスの会合に焦点があてられているようである。しかしながらとりわけHIVに関する既存の処置での主要な困難はウイルスの変異率が高いことである。HIVの多くの異なる株は抗ウイルス薬物治療に対して抵抗性であるかまたは抵抗するようになる。さらに抗ウイルス治療の処置の間、ウイルスの抵抗性株が進化し得る。最後に、HIV感染のための多くの一般的な治療には多くの望ましくない副作用が関与し、毎日または1日数回多くの丸剤の摂取には患者のコンプライアンスが必要である。不幸にも、多くの個体は1つ以上の感染性生物により引き起こされる多重感染、例えばHIVと肝炎を患う。かかる個体は疾患の進行を妨げるために、さらに積極的で経費のかかる薬物治療計画が必要とされる。かかる治療計画は多くの副作用及び複数薬剤抵抗性を引き起こし得る。
【0005】
化学物質を用いる不活性化ウイルスの先行技術の方法は有機溶媒、例えばクロロホルムに頼っていた。しかしながらクロロホルムは多くの血漿タンパク質を変性し、続いて動物またはヒトに再投与する液体と共に使用するのには不適である。クロロホルムにより有害な影響を受ける多くの血漿タンパク質は、凝固、ホルモン様応答及び免疫応答などの重要な生物学的機能を呈する。これらの機能の多くは生命に必須であり、これらの機能に関係するタンパク質へのそのような損傷は患者の健康に悪影響を及ぼす可能性があり、恐らく死に至らしめる。別の溶媒、例えばB−プロピオラクトン、界面活性剤、例えばTWEEN−80、及びリン酸ジまたはトリアルキルが単独でまたは組み合わせて用いられている。これらの方法の多くはとりわけ界面活性剤を含み、処置した血漿サンプルを動物またはヒトに再導入するまえに界面活性剤の除去を確かめるための長々とした手順が必要とされる。さらに先行技術で記載された多くの方法は遊離のウイルス及び感染細胞を殺すために高温に長時間暴露することが含まれる。体液、例えば血漿に含まれる多くのタンパク質は高温により有害な影響を受ける。従って、必要とされることは、簡単で、有効な、高温の使用を必要とせず、血漿タンパク質をそれほど変性しない方法、あるいは処置される生物学的サンプルからそれを抽出する方法である。
【0006】
感染性生物により引き起こされる疾患の予防及び疾患の重篤度の改善は現代の薬物の主要な目標である。ワクチン接種プログラムは多くの疾患の発生及び重篤度を低減するが、感染性生物により引き起こされる多くの疾患は有効なワクチンがないままである。したがって、必要とされることは、感染性生物に対して保護効果を提供するための新規ワクチン組成物である。
【0007】
本発明は、脂質含有感染性生物を含有する液体を処置するための、簡単で、有効で、効率のよい方法を提供することにより前記の問題を解決する。本発明の方法は体液中の脂質含有感染性生物の濃度を低下させるのに有効である。本発明はまた感染性生物を含有する体液を、生物が依然存在するが、もはや感染性ではないように処置することにより、脂質含有感染性生物に対するワクチンを製造するのにも有効である。その感染性を減じるためにこの方法で処置した脂質含有感染性生物を受体、例えば動物またはヒトに医薬適合性の担体及び、場合によっては脱脂した感染性生物からの抗原に対して動物またはヒトにおいて免疫応答を誘発するために免疫刺激剤と一緒に投与する。
【0008】
本発明は、その細胞壁またはエンベロープに脂質成分を含有する感染性生物の処置を企図する。従って、多くのウイルス及び細菌が本発明の方法で処置できる感染性生物に含まれる。脂質を含有する感染性生物を含む液体を処置するための本発明の方法は:感染性生物を含有する液体を得ること;液体を感染性生物の脂質を可溶化できる第1の有機溶媒と接触させること;及び、脂質を含有する第1相を、実質的に脂質不含であり、レベルが低下した感染性生物を含有する第2相から分離すること;からなる。この方法で処置した液体を場合によっては動物またはヒトに再導入できる。
【0009】
本発明の方法で処置できる液体には、これらに限定されないが:血漿;血清;リンパ液;脳脊髄液;腹膜液;胸膜液;これらに限定されないが精液、射精液、卵胞液及び羊水などの生殖系の種々の液;細胞培養試薬、例えば正常血清、例えばウシ胎児血清またはいずれか別の動物またはヒトに由来する血清;並びに免疫学的試薬、例えば抗体及びサイトカインの種々の調製物などがある。
【0010】
本発明で処置される感染性生物
本発明の方法で処置できる感染性生物には脂質を含有する感染性生物などがある。かかる感染性生物には、これらに限定されないがウイルス及び細菌などがあり、ただしウイルスまたは細菌は、各々ウイルスエンベロープまたは細菌細胞壁に脂質を含有する。本発明の方法は感染性生物の感染性を低減し、またこれらの生物に対するワクチンをも提供する。
【0011】
前記の系により不活性化できるウイルス感染性生物には、これらに限定されないが以下の属の脂質含有ウイルスなどがある:アルファウイルス属(Alphavirus)(アルファウイルス)、ルビウイルス属(Rubivurus)(ルベラウイルス(rubella virus))、フラビウイルス属(Flavivirus)(フラビウイルス)、ペスチウイルス属(Pestivirus)(粘膜病ウイルス(mucosal disease viruses))、(無名のC型肝炎ウイルス)、コロナウイルス属(Coronavirus)(コロナウイルス)、トロウイルス属(Torovirus)(トロウイルス)、アルテイウイルス属(Arteivirus)(アルテリウイルス(arteriviruses))、パラミクソウイルス属(Paramyxovirus)(パラミクソウイルス)、ルブラウイルス属(Rubulavirus)(ルブラウイルス)、モービリウイルス属(Morbillivirus)(モービリウイルス)、ニューモウイルス亜科(Pneumovirinae)(ニューモウイルス)、ニューモウイルス属(Pneumovirius)(ニューモウイルス)、ベシキュロウイルス属(Vesiculovirus)(ベシキュロウイルス)、リッサウイルス属(Lyssavirus)(リッサウイルス)、エフェメロウイルス属(Ephemerovirus)(エフェメロウイルス)、サイトラブドウイルス属(Cytorhabdovirus)(植物ラブドウイルスA群)、ヌクレオラブドウイルス属(Nucleorhabdovirus)(植物ラブドウイルスB群)、フィロウイルス属(Filovirus)(フィロウイルス)、インフルエンザウイルスA、B属(Influenzavirus A,B)(A型及びB型インフルエンザウイルス)、C型インフルエンザウイルス属(Influenza virus C)(C型インフルエンザウイルス)、(無名のトゴト様ウイルス(Thogoto−like viruses))、ブニアウイルス属(Bunyavirus)(ブニアウイルス)、フレボウイルス属(Phlebovirus)(フレボウイルス)、ナイロウイルス属(Nairovirus)(ナイロウイルス)、ハンタウイルス属(Hantavirus)(ハンタウイルス)、トスポウイルス属(Tospovirus)(トスポウイルス)、アレナウイルス属(Arenavirus)(アレナウイルス)、無名の哺乳類B型レトロウイルス、無名の哺乳類及び爬虫類C型レトロウイルス、無名のD型レトロウイルス、レンチウイルス属(Lentivirus)(レンチウイルス)、スプーマウイルス属(Spumavirus)(スプーマウイルス)、オルトヘパドナウイルス属(Orthohepadnavirus)(哺乳類のヘパドナウイルス)、アビヘパドナウイルス属(Avihepadnavirus)(鳥類のヘパドナウイルス)、シンプレックスウイルス属(Simplexvirus)(シンプレックスウイルス)、バリセロウイルス属(Varicellovirus)(バリセロウイルス)、ベータヘルペスウイルス亜科(Betaherpesvirinae)(サイトメガロウイルス)、サイトメガロウイルス属(Cytomegalovirus)(サイトメガロウイルス)、ミュロメガロウイルス属(Muromegalovirus)(ネズミサイトメガロウイルス(murine cytomegaloviruses))、ロゼオロウイルス属(Roseolovirus)(ヒトヘルペスウイルス6型)、ガンマヘルペスウイルス亜科(Gammaherpesvirinae)(リンパ球関連ヘルペスウイルス)、リンホクリプトウイルス属(Lymphocryptovirus)(エプスタイン・バー様ウイルス(Epstein−Bar−like virus))、ラディノウイルス属(Rhadinovirus)(リスザル−クモザル様ヘルペスウイルス(saimiri−ateles−like herpes virus))、オルトポックスウイルス属(Orthopoxvirus)(オルトポックスウイルス)、パラポックスウイルス属(Parapoxvirus)(パラポックスウイルス)、アビポックスウイルス属(Avipoxvirus)(鶏痘ウイルス(fowlpox virus))、ヤギ痘スウイルス属(Capripoxvirus)(ヒツジ痘様ウイルス(sheeppoxlike viruses))、ウサギ痘ウイルス属(Leporipoxvirus)(粘液腫ウイルス(myxomaviruses))、スイポックスウイルス属(Suipoxvirus)(ブタ痘ウイルス(swine−pox viruses))、モルシポックスウイルス属(Molluscipoxvirus)(伝染性軟骨腫ウイルス(molluscum contagiosum viruses))、ヤタポックスウイルス属(Yatapoxvirus)(ヤバポックス(yabapox)及びタナポックス(tanapox)ウイルス)、無名のアフリカブタコレラ様ウイルス(African swine fever−like viruses)、イリドウイルス属(Iridovirus)(小型虹色昆虫ウイルス(small iridescent insect viruses))、ラナウイルス属(Ranavirus)(フロントイリドウイルス(front iridoviruses))、リンホシスチウイルス属(Lymphocystivirus)(魚類のリンパ嚢腫ウイルス(lymphocystis viruses))、トガウイルス科(Togaviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、コロナウイルス科(Coronaviridae)、エナブドウイルス科(Enabdoviridae)、フィロウイルス科(Filoviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、ブニアウイルス科(Bunyaviridae)、アレナウイルス科(Arenaviridae)、レトロウイルス科(Retroviridae)、ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、ポックスウイルス科(Poxviridae)、及びいずれかその他の脂質含有ウイルスなどがある。
【0012】
これらのウイルスには以下のヒト及び動物病原体が含まれる:ロスリバーウイルス(Ross River virus)、フィーバーウイルス(fever virus)、デングウイルス(dengue viruses)、マリー渓谷脳炎ウイルス(Murray Valley encephalitis virus)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(tick−borne encephalitis virus)(欧州及び極東ダニ媒介性脳炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトコロナウイルス229−E及びOC43、並びに(感冒、上気道感染、たぶん肺炎、もしかすると胃腸炎を誘起する)その他のもの、1及び3型ヒトパラインフルエンザウイルス(human parainfluenza virus)、ムンプスウイルス(mumps virus)、2、4a及び4b型ヒトパラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス(measles virus)、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(human respiratory syncytial virus)、狂犬病ウイルス(rabies virus)、マールブルグウイルス(Marburg virus)、エボラウイルス(Ebola virus)、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス、アレナウイルス属(Arenaviruss);リンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)ウイルス(lymphocytic choriomeningitis virus);ラッサウイルス(Lassa virus)、1及び2型ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus 1 and 2)、B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus)、ワクシニア(Vaccinia)、亜科:1及び2型ヒトヘルペスウイルス(human herpes virus)、B型ヘルペスウイルス、エプスタイン−バーウイルス(Epstein−Barr virus)などを含む)、(天然痘(smallpox))ウイルス、黄熱病ウイルス(Yellow fever virus)、牛痘ウイルス(cowpox virus)、ポリオウイルス(poliovirus)、ノーウォークウイルス(Norwalk virus)、伝染性軟骨腫ウイルス、及びいずれかその他の脂質含有ウイルス。
【0013】
本発明の方法で処置するのが好ましいウイルスには、これらに限定されないが免疫不全ウイルスのヒト(HIV)、サル(SIV)、ネコ(FIV)及びいずれかその他の形態などの種々の免疫不全ウイルスが含まれる。本発明の方法で処置するのが好ましい別のウイルスには、これらに限定されないが種々の形態の肝炎、とりわけA型肝炎、B型肝炎及びC型肝炎などが含まれる。本発明の方法で処置するのが好ましいもう1つのウイルスにはウシペスチウイルスが含まれる。本発明は前記のリストに提供されるウイルスには限定されないことを理解すべきである。とりわけウイルスエンベロープに脂質を含有する全てのウイルスが本発明の範囲内に含まれる。
【0014】
細菌が好ましくはその細菌細胞壁に脂質を含有する場合、細菌は本発明の方法で処置できる感染性生物の別の好ましいクラスを構成する。本発明の方法で処置される好ましい細菌には、これらに限定されないが以下のものが含まれる:ブドウ球菌属(Staphylococcus);連鎖球菌属(Streptococcus)、例えば化膿連鎖球菌(S.pyogenes);腸球菌属(Enterococci);バシラス属(Bacillus)、例えばバシラス・アンスラシス(Bacilus anthracis)、及びラクトバシラス属(Lactobacillus);リステリア属(Listeria);コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheriae);ガードネレラ属(Gardnerella)例えばG.バジナリス(G.vaginalis);ノカルジア属(Nocardia);ストレプトマイセス属(Streptomyces);ゼマクチノミセス・ブルガリス(Thermoactinomyces vulgaris);トレポネーマ属(Treponema);キャンプリオバクター属(Camplyobacter);シュードモナス属(Pseudomonas)例えば緑膿菌(P.aeruginosa);レジオネラ属(Legionella);ナイセリア属(Neisseria)例えば淋菌(N.gonorrhoeae)及び髄膜炎菌(N.meningitides);フラボバクテリウム(Flavobacterium)例えばF.メンニガセプティカム(F.meningosepticum)及びF.オドラツウム(F.odoratum);ブルセラ属(Brucella);ボルデテラ属(Bordetella)例えば百日咳菌(B.pertussis)及び気管支敗血症菌(B.bronchiseptica);大腸菌属(Esherichia)例えば大腸菌(E.coli);クレブシエラ属(Klebsiella);エンテロバクター属(Enterobacter);セラチア属(Serratia)例えば霊菌(S.marcescens)及びS.リクファシエンス(S.liquefaciens);エドワードシエラ属(Edwardsiella);プロテウス属(Proteus)例えばP.ミラビリス(P.mirabilis)及びP.ブルガリス(P.vulgaris);連鎖桿菌属(Streptobacillus);リケッチア科(Rickettsiaceae)例えばR.リケッチー(R.rickettsii);クラミジア属(Chlamydia)例えばオウム病クラミジア(C.psittaci)及びトラコーマクラミジア(C.trachomatis);マイコバクテリウム属(Mycobacterium)例えばヒト型結核菌(M.tuberculosis)、M.イントラセルラーレ(M.intracellulare)、M.ホルツイツム(M.fortuitum)、らい菌(M.laprae)、M.アビウム(M.avium)、ウシ型結核菌(M.bovis)、アフリカ型結核菌(M.africanum)、M.カンサシ(M.kansasii)、M.イントラセルラーレ(M.intracellulare)、及びネズミらい菌(M.lepraemurium)及びノルカルジア属(Norcardia)、並びにいずれかその他の、その膜に脂質を含有する細菌。
【0015】
本発明の方法で処置できるその他の脂質含有感染性生物には、これらに限定されないが原生動物、糸状菌及び真菌などがある。
【0016】
従って、本明細書に包含される感染性生物の感染性を低減または排除するために液体を処置する方法を提供することが本発明の目的である。
【0017】
本発明のもう1つの目的は液体中の感染性生物の濃度を低減させることである。
【0018】
本発明のさらにもう1つの目的は、液体中に含まれる感染性生物の感染性を低減させることである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、液体中に含まれる感染性生物の濃度及び感染性を低減させる本発明の方法を使用することである。
【0020】
本発明の具体的な目的は、液体中に含まれる感染性生物の感染性を低減させることであり、ここで液体は血漿である。
【0021】
本発明のもう1つの具体的な目的は、液体、例えば血漿中に見出されるウイルスの感染性及びウイルス負荷を低減させる方法を提供することである。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、サンプル、例えば血漿中に含まれるウイルスのウイルス負荷を完全にまたは部分的に不活性化し低減することであり、ここでウイルスとはヒト免疫不全ウイルス、種々の形態の肝炎またはその他のウイルスである。
【0023】
本発明のさらに別の具体的な目的は液体、例えば血漿中に含まれる細菌の感染性及び濃度を低減させることである。
【0024】
本発明のさらなる目的は動物またはヒトに医薬適合性の担体及び場合によっては免疫刺激化合物と一緒に投与できる、感染性を低減させ、脱脂した感染性生物を含んでなるワクチンを提供するために、本発明の方法で感染性生物を処置して感染性生物に暴露した後の疾患の臨床上の症状の発現を防御または最小化することである。
【0025】
本発明のもう1つの具体的な目的は抗ウイルスワクチンを提供することである。
【0026】
本発明のもう1つの目的は抗細菌ワクチンを提供することである。
【0027】
本発明のさらに別の目的は、医薬適合性の担体中に本発明の方法で処置した感染性生物を含む組成物からなるワクチンを投与することにより、動物またはヒトに脂質含有感染性生物に対する免疫を賦与することである。
【0028】
本発明のもう1つの目的は、これらに限定されないがウイルス及び細菌などの感染性生物に対するワクチンの開発に有用な方法を提供することである。
【0029】
本発明のさらに別の目的は、動物またはヒトに投与するのが望ましい場合、凍結乾燥し、再構成することができる、処置された脂質含有ウイルスの不活性化ウイルス粒子を含有する溶液を提供することである。
【0030】
本発明のさらなる目的は、液体中に含まれるタンパク質に及ぼす有害な影響を最低限にする、脂質含有感染性生物を液体で処置するための方法を提供することである。
【0031】
本発明のもう1つの方法は脂質含有感染性生物の感染性を低減するための方法を提供することであって、ここで該方法は高温、クロロホルム、界面活性剤またはリン酸トリアルキルを使用しない。
【0032】
好ましい実施形態の詳細な記載及び添付の請求の範囲を読めば、本発明のこれらの及びその他の目的、利点、及び使用が当業者に明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
「液体」なる用語は、これらに限定されないが動物またはヒトのごとき生物から得られる体液などの、感染性生物を含有するいずれかの液体を意味する。生物から得られるかかる体液には、これらに限定されないが血漿、血清、脳脊髄液、リンパ液、腹膜液、卵胞液、羊水、胸膜液、心膜液、生殖液及び生物に含まれるいずれか別の液体などがある。別の液体は、いずれかの選択された液体に懸濁された感染性生物を含む実験用サンプルを含んでよい。別の液体には細胞培養試薬が含まれ、その多くは、生きている生物から得られる液体のごとき生物学的化合物を含み、これらに限定されないが種々動物から得られ、細胞及び組織培養適用で成長培地として用いられる「正常血清」などがある。
【0034】
「第1溶媒」または「第1有機溶媒」なる用語は、脂質の抽出を促進する1つまたはそれ以上の溶媒を含んでなる溶媒を意味する。
【0035】
「解乳化剤」なる用語は、水層中エマルジョンで存在し得る第1溶媒の除去を補助する物質を意味する。
【0036】
本明細書で用いる「医薬適合性の担体または医薬適合性のビヒクル」なる用語は、これらに限定されないが水または生理食塩水、ゲル、唾液、溶媒、希釈液、液体軟膏基剤、リポソーム、ミセル、巨大ミセル等のいずれかの液体を意味し、これは不都合な生理学的応答を引き起こさずに、生きている動物またはヒト組織と接触させて使用するのに適しており、これは有害な様式で組成物の別の成分と相互作用しない。
【0037】
「感染性生物」なる用語は感染を引き起こすことができるいずれかの脂質含有感染性生物を意味する。いくつかの感染性生物には細菌、ウイルス、原生動物、寄生虫、真菌及び糸状菌などがある。本発明の方法で処置できるいくつかの細菌には、これらに限定されないが以下のものなどが含まれる:ブドウ球菌属;連鎖球菌属、例えば化膿連鎖球菌;腸球菌属;バシラス属、例えばバシラス・アンスラシス、及びラクトバシラス属;リステリア属;コリネバクテリウム・ジフテリア;ガードネレラ属、例えばG.バギナリス;ノカルジア属;ストレプトマイセス属;ゼマクチノミセス・ブルガリス;トレポーマ属;キャンプリオバクター属(Camplyobacter);シュードモナス属、例えば緑膿菌;レギオネラ属;ナイセリア属、例えば淋菌、及び髄膜炎菌;フラボバクテリウム属、例えばF.メニンガセプティカム、及びF.オドラツウム;ブルセラ属;ボルデテラ属、例えば百日咳菌、及び気管支敗血症菌;大腸菌属、例えば大腸菌;クレブシエラ属;エンテロバクター属;セラチア属、例えば霊菌、及びS.リクエファシエンス;エドワードシエラ属;プロテウス属、例えばP.ミラビリス、及びP.ブルガリス;連鎖桿菌属;リケッチア科、例えばR.リケッチー;クラミジア属、例えばオウム病クラミジア及びトラコーマクラミジア;マイコバクテリウム属、例えばヒト型結核菌、M.イントラセルラーレ、M.ホルツイツム、らい菌、M.アビウム、ウシ型結核菌、アフリカ型結核菌、M.カンサシ、M.イントラセルラーレ、及びネズミらい菌、及びノルカルジア属、並びにいずれかその他の、その膜に脂質を含有する細菌。
【0038】
前記の系により不活性化できるウイルス感染性生物には、これらに限定されないが以下の属の脂質含有ウイルスなどがある:アルファウイルス属(アルファウイルス)、ルビウイルス属(ルベラウイルス)、フラビウイルス属(フラビウイルス)、ペスチウイルス属(粘膜病ウイルス)、(無名のC型肝炎ウイルス)、コロナウイルス属(コロナウイルス)、トロウイルス属(トロウイルス)、アルテイウイルス属(アルテリウイルス)、パラミクソウイルス属(パラミクソウイルス)、ルブラウイルス属(ルブラウイルス)、モービリウイルス属(モービリウイルス)、ニューモウイルス亜科(ニューモウイルス)、ニューモウイルス属(ニューモウイルス)、ベシキュロウイルス属(ベシキュロウイルス)、リッサウイルス属(リッサウイルス)、エフェメロウイルス属(エフェメロウイルス)、サイトラブドウイルス属(植物ラブドウイルスA群)、ヌクレオラブドウイルス属(植物ラブドウイルスB群)、フィロウイルス属(フィロウイルス)、インフルエンザウイルスA、B属(A型及びB型インフルエンザウイルス)、C型インフルエンザウイルス属(C型インフルエンザウイルス)、(無名のトゴト様ウイルス)、ブニヤウイルス属(ブニヤウイルス)、フレボウイルス属(フレボウイルス)、ナイロウイルス属(ナイロウイルス)、ハンタウイルス属(ハンタウイルス)、トスポウイルス属(トスポウイルス)、アレナウイルス属(アレナウイルス)、無名の哺乳類B型レトロウイルス、無名の哺乳類及び爬虫類C型レトロウイルス、無名のD型レトロウイルス、レンチウイルス属(レンチウイルス)、スプーマウイルス属(スプーマウイルス)、オルトヘパドナウイルス属(哺乳類のヘパドナウイルス)、アビヘパドナウイルス属(鳥類のヘパドナウイルス)、シンプレックスウイルス属(シンプレックスウイルス)、バリセロウイルス属(バリセロウイルス)、ベータヘルペスウイルス亜科(サイトメガロウイルス)、サイトメガロウイルス属(サイトメガロウイルス)、ミュロメガロウイルス属(マウスサイトメガロウイルス)、ロゼオロウイルス属(ヒトヘルペスウイルス6型)、ガンマヘルペスウイルス亜科(リンパ球関連ヘルペスウイルス)、リンホクリプトウイルス属(エプスタイン−バー様ウイルス)、ラディノウイルス属(リスザル−クモザル様ヘルペスウイルス)、オルトポックスウイルス属(オルトポックスウイルス)、パラポックスウイルス属(パラポックスウイルス)、アビポックスウイルス属(鶏痘ウイルス)、ヤギ痘ウイルス属(ヒツジ痘様ウイルス)、ウサギ痘ウイルス属(粘液腫ウイルス)、スイポックスウイルス属(ブタ痘ウイルス)、モルシポックスウイルス属(伝染性軟骨腫ウイルス)、ヤタポックスウイルス属(ヤバポックス及びタナポックスウイルス)、無名のアフリカブタコレラ様ウイルス、イリドウイルス属(小型虹色昆虫ウイルス)、ラナウイルス属(フロント・イリドウイルス)、リンホシスチウイルス属(魚類のリンパ嚢腫ウイルス)、トガウイルス科、フラビウイルス科、コロナウイルス科、エナブドウイルス科、フィロウイルス科、パラミクソウイルス科、オルトミクソウイルス科、ブニヤウイルス科、アレナウイルス科、レトロウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、及びいずれかその他の脂質含有ウイルスなどがある。
【0039】
これらのウイルスには以下のヒト及び動物病原体が含まれる:ロスリバーウイルス、フィーバーウイルス、デングウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス(欧州及び極東ダニ媒介性脳炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトコロナウイルス229−E及びOC43、並びに(感冒、上気道感染、たぶん肺炎、もしかすると胃腸炎を誘起する)その他のもの、1及び3型ヒトパラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、2、4a及び4b型ヒトパラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ヒト呼吸器合胞ウイルス、狂犬病ウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、A型インフルエンザウイルス及びB型インフルエンザウイルス、アレナウイルス属;リンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)ウイルス;ラッサウイルス、1及び2型ヒト免疫不全ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、亜科:1及び2型ヒトヘルペスウイルス、B型ヘルペスウイルス、エプスタイン−バーウイルスなどを含む)、(天然痘)ウイルス、牛痘ウイルス、伝染性軟骨腫ウイルス。
【0040】
脂質含有生物とりわけ感染性生物からの脂質の除去に使用するための溶媒
溶媒またはその組み合わせが脂質の可溶化に有効である場合、脂質含有生物、とりわけ感染性生物から脂質を除去するために本発明の方法において多くの有機溶媒を使用することができる。適当な溶媒は炭化水素、エーテル、アルコール及びアミンの混合物を含んでなる。本発明の方法で使用できる別の溶媒にはアミン及びアミンの混合物などがある。好ましい溶媒はアルコール及びエーテルの組み合わせである。もう1つの好ましい溶媒はエーテルまたはエーテルの組み合わせを含んでなる。溶媒または溶媒の組み合わせが比較的低沸点を有し、真空及びおそらく加熱との組み合わせにより除去を促進するのが好ましい。
【0041】
本発明の脂質含有生物からの脂質の除去に使用するための適当なアミンの例は実質的に水非混和性のものである。典型的なアミンは少なくとも6個の炭素原子の炭素鎖を有する脂肪族アミンである。かかるアミンはこれに限定されないがC13NHである。
【0042】
本発明で使用するのに好ましいアルコールには、単独で使用する場合、血漿またはその他の体液とあまり混和しないアルコールなどがある。かかるアルコールには、これらに限定されないが、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール及び多数の炭素を含有するアルコールなどの直鎖状及び分岐鎖状アルコールなどがある。
【0043】
アルコールをもう1つの溶媒、例えばエーテル、炭化水素、アミンまたはその組み合わせと組み合わせて使用する場合、C−C含有アルコールを使用できる。もう1つの溶媒と組み合わせて使用するのに好ましいアルコールにはC−C含有アルコールなどがある。従って、本発明の範囲内に入る好ましいアルコールは、好ましくはブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール及びオクタノール、並びにそのイソ体である。とりわけ好ましいものはブタノール(1−ブタノール、2−ブタノール)である。前記したように、最も好ましいアルコールはCアルコール、ブタノールである。アルコールの具体的な選択は用いる第2溶媒に依存する。好ましい実施形態では、低級アルコールを低級エーテルと組み合わせる。
【0044】
単独で使用するか、または別の溶媒、好ましくはアルコールと組み合わせるエーテルは、本発明の方法で使用するのに好ましいもう1つの溶媒である。とりわけ好ましいのは、C−C含有エーテルであり、これらに限定されないがエチルエーテル、ジエチルエーテル、及びジイソプロピルエーテルに限定されないプロピルエーテルである。また本発明で有用なのはエーテルの組み合わせあり、例えばジイソプロピルエーテル及びジエチルエーテルの組み合わせである。脂質含有感染性生物を含有する液体と接触させるための第1溶媒として、エーテル及びアルコールを組み合わせて使用する場合、組み合わせが感染性生物から脂質を部分的または完全に除去するのに有効であれば、アルコール及びエーテルのいずれの組み合わせを用いてもよい。1つの実施形態では、感染性生物のウイルスエンベロープまたは細菌細胞壁から脂質を除去する。液体に含まれる感染性生物を処置するための第1溶媒としてアルコール及びエーテルを組み合わせる場合、この溶媒中のエーテルに対するアルコールの好ましい比率はエーテル約40%から99.99%に対して約0.01%から60%アルコール、好ましい比率はアルコール約10%から50%でエーテル約50%から90%、最も好ましい比率は約20%から45%アルコール及び約55%から80%エーテルである。アルコール及びエーテルのとりわけ好ましい組み合わせはブタノール及びジイソプロピルエーテルの組み合わせである。もう1つのとりわけ好ましいアルコール及びエーテルの組み合わせはブタノールとジエチルエーテルの組み合わせである。ブタノール及びジイソプロピルエーテルが液体に含まれる感染性生物を処置するための第1溶媒として組み合わされる場合、溶媒中のジイソプロピルエーテルに対するブタノールの好ましい比率はジイソプロピルエーテル約40%から99.99%に対して約0.01%から60%ブタノール、好ましい比率はブタノールが約10%から50%でジイソプロピルエーテル約50%から90%、最も好ましい比率は約20%から45%ブタノール及び約55%から80%ジイソプロピルエーテルである。ブタノール及びジイソプロピルエーテルの最も好ましい比率は約40%ブタノール及び約60%ジイソプロピルエーテルである。
【0045】
第1溶媒中ブタノールをジエチルエーテルと組み合わせて用いる場合、この組み合わせのジエチルエーテルに対するブタノールの好ましい比率はジエチルエーテル約40%から99.99%に対してブタノール約0.01%から60%、好ましい比率は約10%から50%ブタノールで約50%から90%ジエチルエーテル、最も好ましい比率は約20%から45%ブタノール及び約55%から80%ジエチルエーテルである。第1溶媒中のブタノール及びジエチルエーテルの最も好ましい比率は約40%ブタノール及び約60%ジエチルエーテルである。約40%ブタノール及び約60%ジエチルエーテル(容量:容量)の組み合わせは、米国特許第4895558号の実施例で示されるように、種々の生化学的及び血液学的血液パラメーターに有意な影響がないことが示された。ブタノール−DIPE(40%から60%(容量/容量))で処置した場合、ヒト血清における血清pH、タンパク質及び酵素活性においてさらなる比較を行った。結果を以下の表で説明する。
【0046】
【表1】

前記の表で示すように、ブタノール−DIPE(40%から60%(容量/容量))のこの溶媒系は血液構成成分には不利益な影響を及ぼさない。また血漿タンパク質の変性及び、脂質関連酵素、例えばレシチンコレステロールアセチルトランスフェラーゼ及びコレステロールエステル転移タンパク質の活性などの酵素活性の変化はほとんどまたは全く認められない。
【0047】
ワクチン製造において使用するための溶媒
処置された脂質含有生物、例えば感染性生物を用いてワクチンを製造するために、異なる溶媒及び溶媒の組み合わせを脂質含有生物、例えば感染性生物を処置するのに使用することができる。このセクションではこれらの溶媒及びその組み合わせについて記載する。適当な溶媒は炭化水素、エーテル、アルコール、アミン、界面活性剤、エステル及びその組み合わせからなる。
【0048】
液体の形態の炭化水素は低極性化合物、例えば感染性生物の膜で見出される脂質を溶解する。約37℃で液体である炭化水素は感染性生物の脂質膜を崩壊させるのに有効である。従って、炭化水素は約37℃で液体であるいずれかの実質的に水と非混和性である炭化水素からなる。適当な炭化水素には、これらに限定されないが以下のものが含まれる:CからC20脂肪族炭化水素、例えば石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン;ハロ脂肪族炭化水素、例えばクロロホルム、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン及び四塩化炭素、並びにチオ脂肪族炭化水素で、その各々は直鎖状、分岐鎖状または環状、飽和または不飽和でよい;芳香族炭化水素、例えばベンゼン;アルキルアレン、例えばトルエン、ハロアレン、ハロアルキルアレン及びチオアレン。別の適当な溶媒は、また、飽和または不飽和ヘテロ環式化合物、例えばピリジン及びその脂肪族、チオまたはハロ誘導体などが含まれ得る。
【0049】
使用できる適当なエーテルには、これらに限定されないが酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びプロピオン酸エチルなどが含まれる。
【0050】
使用できる適当な界面活性剤には、これらに限定されないが以下のものが含まれる:硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩(リン脂質を含む)、カルボン酸塩、及びスルホコハク酸塩。本発明に有用ないくつかのアニオン性両親媒性物質には、これらに限定されないが以下のものが含まれる:ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、デシル硫酸ナトリウム、ビス−(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)、硫酸コレステロール及びラウリン酸ナトリウム。
【0051】
本発明で使用するのに好ましいアルコールには、単独で用いる場合、血漿またはその他の体液とあまり混和しないアルコールなどがある。アルコールをもう1つの溶媒、例えばエーテル、炭化水素、アミン、またはその組み合わせと組み合わせて使用する場合、C−C含有アルコールを用いることができる。もう1つの溶媒と組み合わせて使用するのに好ましいアルコールには、低級アルコール、例えばC−C含有アルコールなどがある。従って、本発明の範囲内に入る好ましいアルコールは、好ましくはブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール及びオクタノール、並びにそのイソ体である。とりわけ好ましいのはブタノール(1−ブタノール及び2−ブタノール)である。前記したように、最も好ましいアルコールは、Cアルコール、ブタノールである。具体的なアルコールの選択は用いる第2溶媒に依存する。好ましい実施形態では、アルコールを低級エーテルと組み合わせる。
【0052】
単独で使用するか、または別の溶媒、好ましくはアルコールと組み合わせるエーテルは、本発明の方法で使用するもう1つの好ましい溶媒である。とりわけ好ましいのは、これらに限定されないが、ジイソプロピルエーテルなどのC−Cエーテルである。また本発明で有用なものは、例えばジイソプロピルエーテル及びジエチルエーテルのごときエーテルの組み合わせである。
【0053】
ワクチンを製造するために感染性生物から脂質を除去するための第1溶媒としてエーテル及びアルコールを組み合わせて使用する場合、組み合わせが感染性生物から脂質を部分的または完全に除去するのに有効であればアルコール及びエーテルのいずれの組み合わせをも使用できる。1つの実施形態では、感染性生物のウイルスエンベロープまたは細菌細胞壁から脂質を除去する。液体に含まれる感染性生物を処置するための第1溶媒としてアルコール及びエーテルを組み合わせる場合、この溶媒中のエーテルに対するアルコールの好ましい比率は、エーテル約40%から99.99%に対してアルコール約0.01%から60%、好ましい比率はアルコール約10%から50%でエーテル約50%から90%、最も好ましい比率は約20%から45%アルコール及び約55%から80%エーテルである。アルコール及びエーテルのとりわけ好ましい組み合わせは、ブタノール及びジイソプロピルエーテルの組み合わせである。もう1つのとりわけ好ましいアルコール及びエーテルの組み合わせは、ブタノールとジエチルエーテルの組み合わせである。ブタノール及びジイソプロピルエーテルが液体に含まれる感染性生物を処置するための第1溶媒として組み合わされる場合、溶媒中のジイソプロピルエーテルに対するブタノールの好ましい比率はジイソプロピルエーテル約40%から99.99%に対してブタノール約0.01%から60%、好ましい比率はブタノールが約10%から50%でジイソプロピルエーテル約50%から90%、最も好ましい比率は約20%から45%ブタノール及び約55%から80%ジイソプロピルエーテルである。ブタノール及びジイソプロピルエーテルの最も好ましい比率は約40%ブタノール及び約60%ジイソプロピルエーテルである。
【0054】
第1溶媒中ブタノールをジエチルエーテルと組み合わせて用いる場合、この組み合わせのジエチルエーテルに対するブタノールの好ましい比率は、ジエチルエーテル約40%から99.99%に対してブタノール約0.01%から60%、好ましい比率は約10%から50%ブタノールで約50%から90%ジエチルエーテル、最も好ましい比率は約20%から45%ブタノール及び約55%から80%ジエチルエーテルである。第1溶媒中のブタノール及びジエチルエーテルの最も好ましい比率は、約40%ブタノール及び約60%ジエチルエーテルである。
【0055】
感染性の脂質含有生物の感染性を低減させるための体液及びその処置
前記したように、液体中の脂質含有生物のレベルまたは感染性を低下させるために本発明の方法で種々の体液を使用できる。本発明の好ましい実施形態では、動物またはヒトから得られた血漿を、血漿中の脂質含有感染性生物の濃度及び/または感染性を低減させるために本発明の方法で処置することができる。この実施形態では公知の方法を用いて動物またはヒトから血液を抜き取り、血漿から血液の細胞成分(赤血球及び白血球)を分離するために、血液を通常の方法で処置することにより、動物またはヒトから血漿を得ることができる。かかる方法は当業者に公知であり、遠心及び濾過を含む。
【0056】
ウイルスは典型的には血漿に保持され、本発明の方法で血漿を処置することにより影響を受ける。処置すべき脂質含有生物が、実質的にはウイルスよりも大きく、血漿から細胞を分離するための典型的な遠心条件下では赤血球及び白血球と共にペレット化され得る場合、当業者に公知の技術を用いて脂質含有生物を赤血球及び白血球から分離することができる。かかる方法にはこれらに限定されないが遠心及び濾過が含まれる。当業者は赤血球及び白血球からかかる脂質含有生物を分離するための適切な遠心条件を理解している。濾過には、赤血球及び白血球から脂質含有生物、例えば細菌を分離する孔径を有する膜を通すダイアフィルトレーションまたは濾過が含まれる。本発明の使用により、血漿中に見出された脂質含有生物、例えば細菌を、別の血漿タンパク質に有害な影響を及ぼすことなく処置することが可能になる。
【0057】
血液及び血漿以外の体液中の脂質含有生物の処置は、一般に脱脂手順を開始する前に液体からの細胞の分離を含めることはない。例えば卵胞液及び腹膜液を本発明の方法で処置して、タンパク質成分に有害な影響を及ぼすことなく脂質含有生物のレベル及び感染性に影響することができる。処置された液体を次いで動物またはヒトに戻すことができる。これらの非血液型液体の処置は液体中の細菌及びウイルスなどの脂質含有生物に影響を及ぼす。
【0058】
このような様式で得られた血漿の様な体液、または貯蔵用保存バックから得られた体液は、前記した脂質含有感染性生物の脂質を可溶化できる第1有機溶媒に接触させられる。第1有機溶媒は、感染性生物の脂質を実質的に可溶化するのに有効な量で存在する比率で血漿と組み合わせられる。血漿に対する第1溶媒の好ましい比率(第1有機溶媒:血漿)は以下の範囲で記載される:0.5から4.0:0.5から4.0、0.8から3.0:0.8から3.0及び1から2:0.8から1.5。
【0059】
種々の別の比率を異なる液体、例えば前記した液体に用いることができることは理解すべきである。例えば、細胞培養液の場合、細胞培養液に対する第1有機溶媒の以下の範囲を用いることができる:0.5から4.0:0.5から4.0、0.8から3.0:0.8から3.0及び1から2:0.8から1.5。
【0060】
感染性生物を含有する液体を前記した第1溶媒と接触させた後、第1溶媒及び液体を混合する。適当な混合方法には、これらに限定されないが:穏やかな攪拌;激しい攪拌;振盪;渦巻き;ホモジナイゼーション;及びひっくり返し回転などがある。
【0061】
第1溶媒と液体とを十分に混合するのに必要とされる時間は、用いる混合方法に関係する。有機相及び水相間の十分な接触を可能にし、第1溶媒が感染性生物に含まれる脂質のいくらか、または全てを可溶化するのに十分な時間液体を混合する。典型的には約10秒から約24時間、好ましくは約10秒から約2時間、より好ましくはおよそ10秒からおよそ10分間、または約30秒から約1時間、用いる混合方法に依存して混合を実施する。異なる方法の混合期間は、これらに限定されないが次の文にて提示する。穏やかな攪拌及びひっくり返し回転は約10秒から約24時間行うことができる。激しい攪拌及び振盪は約10秒から約30秒間行うことができる。渦巻きは約10秒から約2時間行うことができる。ホモジナイゼーションは約10秒から約10分間行うことができる。
【0062】
第1溶媒と液体との混合に続いて溶媒を処置すべき液体から分離する。当業者に公知の有機相及び水相を分離するいずれかの適当な方法により分離を行うことができる。第1溶媒は典型的には水性の液体に非混和性であるので、通常2相を分離させ、望ましくない層を除去することにより分離を達成する。望ましくない層は溶解した脂質を含有する溶媒層であり、溶媒が水相よりもいくらか濃厚であるかどうかに依存する。この様式での分離の利点は、溶媒層に溶解した脂質を除去できるという点である。これらに限定されないが以下の手段により分離を達成できる:ピペッティングによる層の除去;遠心の後、分離すべき層の除去;層を含有するチューブの底に経路または孔を作り、下層を通過させる;特定の層に接近し除去し易くするために容器の長軸に沿って特定の長さに位置するバルブまたはポートを有する容器の利用;及び当業者に公知のいずれか別の手段。層を分離するもう1つの方法は、とりわけ溶媒層が揮発性である場合、場合によっては穏やかな加熱と組み合わせた、減圧下蒸留、または室温での蒸発による。遠心を用いる1つの実施形態では、比較的低いgの力、例えば900×gで約5から15分を用いて相を分離する。
【0063】
処置すべき液体からの第1溶媒の除去の後、第1溶媒のいくらかが水相に捕捉されて留まっている可能性がある。これはエマルジョンの形態であり得る。場合によっては解乳化剤を用いて捕捉された第1溶媒の除去を促す。解乳化剤は第1溶媒の除去を促すのに有効ないずれかの物質でよい。好ましい解乳化剤はエーテルであり、より好ましい解乳化剤はジエチルエーテルである。解乳化剤を液体に加えるか、また別に液体を解乳化剤に分散させることができる。ワクチンを調製する場合、エマルジョン約1(容量:容量)に対して約0.5から約4.0の比率のアルカンを解乳化剤として用いることができ、続いて、ワクチン調製のための脱脂生物から残留アルカンを除去するために洗浄する。好ましいアルカンには、これらに限定されないがペンタン、ヘキサン及び高いオーダーの直鎖状または分岐鎖状のアルカンなどがある。
【0064】
解乳化剤、例えばエーテルを、前記のパラグラフで記載したような手段などの当業者に公知の手段により除去できる。系内からエーテルのような解乳化剤を除去するのに都合の良い方法としては、エーテルを系内からヒュームフード、または除去された解乳化剤を回収する他の装置内へ蒸発させる方法がある。約10から20ミリバールの圧を伴い、または伴わずに、高温、例えば約24から37℃を適用することにより解乳化剤を除去することができる。解乳化剤を除去するためのもう1つの方法は、遠心による分離、吸引続いて減圧蒸留(例えば50ミリバール)による有機溶媒の除去、または不活性ガス、例えば窒素をメニスカスを越えてさらに供給することなどがある。
【0065】
本発明の方法を連続または不連続様式で用いることができるということは理解すべきである。すなわち連続様式では、液体は連続して系内に供給され第1溶剤と混合され、分離され、そして場合によってはさらに解乳化剤が除去される。連続法では続く脱脂感染性生物含有液体を望ましい配置に戻すことをも促す。かかる配置は、かかる処置された液体の受容及び/または保存のための容器でよく、ヒトもしくは動物の血管系またはヒトもしくは動物のその他の身体の区画、例えば胸膜、心膜、腹膜、及び腹部骨盤腔を含んでよい。例えば本発明の1つの実施形態では、以下のシナリオで連続して方法を用いることができる。体液、例えば血液を当業者に公知の手段、例えばカテーテルを用いて動物またはヒトから取り出す。当業者に公知の適当な抗凝固因子、例えばヘパリン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはクエン酸塩を用いる。次いで遠心を使用することによりこの血液をその細胞成分と血漿成分に分離する。次いで血漿成分を第1溶媒と接触させ、第1溶媒と混合して血漿中に含まれる感染性生物から脂質を除去する。処置された血漿からの第1溶媒の分離に続いて、場合によっては解乳化剤を用いて捕捉された第1溶媒を除去する。第1溶媒、または解乳化剤を用いる場合は解乳化剤の許容レベルが脱脂感染性生物を含有する血漿中で見出されることを確認した後、次いで血漿を、場合によっては予め血液から分離された細胞と組み合わせて、部分的または完全に脱脂された感染性生物を含有する新たな血液サンプルを形成する。いずれにせよ、感染性生物の感染性は本発明の方法により大きく低減されるかまたは排除される。血液から元来分離されていた細胞と再度組み合わせた後、このサンプルをヒトまたは動物の血管系または別の系に再導入できる。ヒトまたは動物から除去された血漿のかかる処置、及び部分的または完全に脱脂した感染性生物を含有するサンプルをヒトまたは動物に戻すことの影響により、ヒトまたは動物の血管系内に含まれる感染性生物の濃度及び感染性に正味の低下が誘起される。この様式では、感染性生物がウイルス、細菌またはその他の感染性生物、例えば原生動物または糸状菌であってもその負荷または濃度が低減される。この操作の連続様式では、本発明の方法を用いて連続様式で体液を処置し、一方ヒトまたは動物はかかる処置のための系に連結されている。
【0066】
本発明の方法のもう1つの使用は不連続またはバッチ様式である。この実施形態では、ヒトまたは動物は本発明の方法で体液を処置するための装置に連結されていない。操作の不連続様式では、本発明は体液、例えば血漿サンプルまたはリンパ液もしくは卵胞液のサンプルを用い、これは予めヒトまたは動物から得られたものである。サンプルは血液バンクに含まれるか、または単に方法の適用前にヒトまたは動物から取り出されてよい。サンプルは生殖液または人工授精またはインビトロ受精の方法において用いられるいずれかの液体でよい。また別に、サンプルはヒトまたは動物から直接得られものではなく、細胞培養液または感染性生物を含有する可能性のあるその他の液体でよい。この操作様式ではサンプルを本発明の方法で処置して部分的または完全に脱脂した感染性生物を含有する新たなサンプルを作製する。本発明のこの様式の1つの実施形態は動物またはヒトから予め得られ、続く注入のために血液バンクで保存された血漿サンプルを処置することである。これらのサンプルを本発明の方法で処置して生物学的サンプルから感染性疾患、例えばHIV、肝炎、サイトメガロウイルス、スタフィロコッカス、ストレプトコッカス、エンテロコッカス、または髄膜炎菌の伝染を最低限にするかまたは排除することができる。
【0067】
感染性生物の脱脂は種々の手段により達成できる。新鮮なまたは保存された体液、例えば新鮮凍結血漿に関してバッチ法を用いることができる。この場合、種々の記載された有機溶媒またはその混合物をウイルス不活性化に用いることができる。抽出時間は溶媒または(混合された溶媒)及び用いた混合手順に依存する。
【0068】
例えば米国特許第4895558号または第5744038号に記載の装置を用いて、感染性生物の脱脂に連続法を用いることもできる。
【0069】
ワクチンの製造
部分的にまたは実質的に脱脂された感染性生物またはその構成成分を医薬適合性の担体と組み合わせてワクチンを含んでなる組成物を製造する。このワクチン組成物を場合によっては免疫刺激剤と組み合わせて動物またはヒトに投与する。ワクチン組成物は1つ以上の部分的にまたは実質的に脱脂された感染性生物またはその構成成分を含有し、ワクチン接種後に1つまたはそれ以上の疾患に対する保護を提供することは理解される。かかる組み合わせを望ましい免疫性に従って選択できる。例えば、HIV及び肝炎の組み合わせ、またはインフルエンザと肝炎の組み合わせでよい。生物の残りの粒子は脱脂された体液に保持され、動物またはヒトに再導入された場合、恐らく食細胞により摂食される。脱脂処置により単離され影響を受ける粒子の数は処置の前後の粒子の計数により決定される。
【0070】
本発明の方法で製造されたワクチンの投与
脱脂された生物を動物またはヒトに投与する場合、典型的には医薬適合性の単体と組み合わせてワクチンを製造し、場合によっては当業者に公知の免疫刺激剤と組み合わせる。
【0071】
ワクチン処方を便宜的に単位投与形態で提示し、慣用される医薬技術により調製することができる。かかる技術には活性成分及び医薬用の(複数の)担体または(複数の)賦形剤と合わせる工程を含む。一般に、活性成分と液体担体を均一に及び完全に合わせることにより処方を調製する。非経口投与に適した処方には水性及び非水性滅菌注射用溶液が含まれ、これには抗酸化剤、バッファー、静菌剤、及び受容者の血液と等張にする溶質を含有することができ;並びに水性及び非水性滅菌懸濁液には懸濁剤及び増粘剤を含有することができる。処方は単位投与または多回投与用容器、例えば密封アンプル及びバイアルで提示でき、滅菌液体担体、例えば注射用水を使用直前に添加することだけが必要とされる凍結し乾燥した(凍結乾燥)状態で保存できる。即時注射溶液及び懸濁液を、当業者に通常使用される滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製できる。
【0072】
好ましい単位投与処方は投与される成分の用量もしくは単位、または適当なその分画を含有する処方である。本発明の処方はとりわけ前記した成分に加えて当業者により通常用いられるその他の物質を含むことができることは理解すべきである。
【0073】
ワクチンを異なる経路、例えばバッカル及び舌下を含む経口、直腸、非経口、エアロゾル、鼻腔、筋肉内、皮下、皮内及び局所経路で投与できる。本発明のワクチンを異なる形態は、これらに限定されないが、溶液、エマルジョン及び懸濁液、マイクロスフェア、粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子及びリポソームで投与できる。免疫療法によれば、約1から約5用量が必要であることは予測される。最初の注射は約1mgから1gの範囲でよく、好ましい範囲は約10mgから800mgであり、より好ましい範囲はおよそ25mgから500mgである。ブースター注射は1mgから1gの範囲であり、好ましい範囲は約10mgから750mgであり、より好ましい範囲は約50mgから500mgである。
【0074】
投与容量は投与経路に依存して変化する。筋肉内注射は約0.1mlから1.0mlの範囲でよい。
【0075】
感染の前、最中または後に本発明のワクチンを投与できる。1つの実施形態ではヒトまたは動物のウイルス負荷(1つまたはそれ以上のウイルス)を血漿の脱脂処置により低減することができ、同一の個体に1つまたはそれ以上のウイルスに指向するワクチンを投与でき、それにより免疫系を刺激し、個体に留まるウイルスと戦わせる。
【0076】
ワクチンを約4℃から100℃の温度で保存できる。ワクチンを凍結乾燥状態で、室温を含む、異なる温度で保存することもできる。当業者に公知の通常の方法によりワクチンを滅菌できる。かかる手段にはこれらに限定されないが濾過、放射及び加熱などがある。本発明のワクチンはまた静菌剤、例えばチメロサールと組み合わせて細菌の成長を阻止することもできる。
【0077】
ワクチン接種スケジュール
本発明のワクチンをヒトまたは動物に投与することができる。ワクチンの投与に最適な時間は最初の感染の約1から3か月前である。しかしながらワクチンを最初の感染の後に投与して疾患の進行を改善するか、または最初の感染後に疾患を処置することもできる。
【0078】
アジュバント
当業者に公知の種々のアジュバントをワクチン組成物のタンパク質と一緒に投与することができる。かかるアジュバントには、これらに限定されないが以下のものがある:ポリマー、コポリマー、例えばポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、遮断コポリマーを含む;ポリマーP1005;モノタイドISA72;フロイント完全アジュバント(動物用);フロイント不完全アジュバント;モノオレイン酸ソルビタン;スクワレン;CRL−8300アジュバント;ミョウバン;QS21、ムラミールジペプチド;トレハロース;細菌抽出物、ミコバクテリウム抽出物を含む;無毒化エンドトキシン;膜脂質;またはその組み合わせ。
【0079】
別の実施形態及び使用は当業者に明らかであり、本発明はこれらの具体的に説明する実施例に限定されるものではないことは理解されよう。
【実施例1】
【0080】
血清の脱脂によりアヒルB型肝炎ウイルス(DHBV)の不活性化を行う
DHBVの10 ID50用量を含有する標準的なアヒル血清プール(カムデン)を用いた。ID50はその用量で処置された動物の50%を感染するのに有効な感染性用量(ID)として当業者に公知である。孵化の日にDHBV陰性群から21匹の雛アヒルを入手した。これらの雛アヒルを購入時に試験し、ドットブロットハイブリダイゼーションによりDHBV DNA陰性であることが示された。
【0081】
有機溶媒系を60%ジイソプロピルエーテルに対して40%ブタノールの比率で混合した。混合した有機溶媒系4mlを標準血清プール2mlと混合し、室温で1時間穏やかに回転させた。混合物を400xgで10分間遠心し、室温で下層の水相を除去した。次いで下層を等容量のジエチルエーテルと混合し、前記のように遠心した。次いで水相を除去し、等容量のジエチルエーテルと混合し、再度遠心した。水相を除去し、ヒュームキャビネットで室温で1時間空気を通すことにより残留したジエチルエーテルを除去した。ウイルス粒子を伴うまたは伴わない脱脂した血漿を−20℃で保存した。
【0082】
陽性及び陰性対照アヒル血清をリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)で希釈した。陽性対照:DHBVの10 ID50用量を含有するプールした血清2ml。陰性対照:プールしたDHBV陰性血清2mlをPBS4mlと混合した。日齢のアヒルの腹膜腔に試験サンプル(n=7)、陰性(n=7)または陽性(n=7)対照のいずれか100μlを接種することにより残留した感染性を試験した。有機溶媒で処置し、次いでリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)と混合し、受体のアヒルに注射したDHBV陰性血清で対照実験を行った。
【0083】
陽性対照アヒルの1匹は4及び6日齢の間で死亡し、さらなる分析から排除した。さらに3匹の陽性対照アヒルが9から10日齢の間で死亡し、処置した2匹及び陰性対照の1匹が11日に死亡した。実験を終止することを決断した。残りの雛アヒルを12日にペンチバルビトンナトリウムの静脈内注射で安楽死させ、Devaら(J.Hospital Infection 33:119−130(1996))に記載されるようなDNBV DNA分析のためにその肝臓を除去した。7匹の陰性対照アヒル全てがDHBV陰性のままであった。6匹の陽性対照アヒルの肝臓はDHBV陽性であった。7匹の被験アヒルは全て肝臓のDHBV DNAに関して陰性のままであった。
【0084】
前記の溶媒系を用いる血清の脱脂の結果、DHBVが不活性化された。処置された血清を投与された雛アヒルは感染しなかった。実験は14日ではなく12日に終止しなければならなかったが、陽性対照アヒルの全てがDHBVに関して陽性であった(3/3は10日までにDHBV陽性であった)。これは処置されたアヒルが肝臓においてDHBV陽性になるのに十分な時間が経過し、時期尚早な実験の終了が結果に何ら関係がなかったことを示唆している。
【実施例2】
【0085】
C型肝炎のモデルとしてのウシペスチウイルス(ウシウイルス性下痢ウイルス、BVDV)の不活性化
標準的なウシペスチウイルス単離体(BVDV)をこれらの実験で使用した。この単離体「ヌメレラ(Numerella)」BVDウイルスを、1987年、オーストラリア、ニュー・サウス・ウェールズ、ベガ地区の農場の「粘膜病」の典型例から提出された診断用標本から単離した。このウイルスは非細胞変性であり、型別試薬としてエリザベス・マッカーサー農業研究所(EMAI)、NSW(オーストラリア)で作製したモノクローナル抗体のパネルの12個全てと反応させる。従ってこのウイルスはオーストラリアBVDウイルスの「標準株」を表す。
【0086】
BVDVなどの外来ウイルス性物質不含であることが試験済みのウシMDBK細胞中でヌメレラウイルスを成長させた。ウイルス成長に用いた培地はEMAIウシに由来する10%成熟ウシ血清を含有し、全てBVDVウイルス及びBVDV抗体不含であることは試験済みであった。この血清サプリメントを何年間も使用してきて、試験ウイルスが培養系で唯一のものであることを確認する予防措置をとらない全世界の研究室に共通の失敗である試験の系の外来性BVDV汚染の可能性を排除した。これらの試験済みの培養液を用いてウイルスの高レベル複製及び感染性ウイルスの高収量を確認した。MDBK細胞で5日間成長させた後に生じた最終ウイルス力価は清澄化(遠心した)培養培地のmlあたり106.8の力価の感染性ウイルス粒子が示された。
【0087】
1.感染性BVDVの不活性化
106.8ウイルス粒子/mlを含有する組織培養上清100mlを150cm組織培養フラスコから収穫した。遠心により上清を清澄化し(細胞砕片を3000rpm、4℃で10分)、動物接種のための陽性対照(非不活化ウイルス)として取っておく。残りの107.5感染性ウイルスを含有する90mlを以下のプロトコルを用いて不活性化した。簡単には、ブタノール:ジイソプロピルエーテル(2:1)180mlを加え、渦巻きにより混合した。次いで500mlコニカルフラスコ中混合物をオービタルシェーカーで30rpm、室温で60分間振盪した。次いで400xg、4℃で10分間遠心し、有機溶媒相を除去し、廃棄した。次の工程では、底部層(水相)を有機相の下から除去し、収量がかなり改善された。
【0088】
ブタノール:ジイソプロピルエーテル処置の後、水相を等容量の新鮮ジエチルエーテルで4回洗浄し、夾雑した微量のブタノールを全て除去した。各時間でフラスコを渦巻きして、前記の遠心(400xg、4℃で10分)の前に水相及び有機相を十分に確実に混合した。4回洗浄した後、滅菌組織で被覆した滅菌ビーカー中に水相を配置し、汚染防止のためのゴムバンドを付けたビーカーに固定し、ヒュームフード内に置いて一晩連続で(16時間)作動させた。続いて不活性化物質の培養により汚染は示されなかった。ヒュームフードは作動を続け、不活性化ウイルス調製物から全ての揮発性エーテル残留物を除去した。次いでいずれかの残りの感染性ウイルスを試験するために組織培養または動物に接種するまで、滅菌条件下4℃で保存した。
【0089】
2.不活性化BVDV調製物の試験
2.1組織培養接種
約107.1と予測されるウイルス等価物を含有する溶媒不活性化ウイルス調製物2mlを、10%試験済み成熟ウシ血清を含有する組織培養培地最小イーグル培地(MEM)8mlと混合し、25cm組織培養フラスコ中MDBK細胞の単層に60分間吸収させた。陽性対照として非不活化ウイルス(同一量の生存感染性ウイルス)2mlを同様に25cm組織培養フラスコ中MDBK細胞に吸収させた。60分後、上清を双方のフラスコから除去し、正常な成長培地(+10%ABS)と置換した。次いでMDBK細胞が固定される前に、細胞を標準条件下5日間成長させ、標準的なイムノペルオキシダーゼプロトコルを用いて6BVDV特異的モノクローナル抗体の混合物で染色した(2つの異なるBVDウイルスタンパク質と反応するEMAIパネル)。
【0090】
有機溶媒処置(不活性化)したウイルスで接種したMDBK細胞の単層には感染細胞はなかった。対照的に、対照フラスコ(非不活化BVDウイルスで接種した)中の細胞のおよそ90%が、強く特異的なイムノペルオキシダーゼ染色により示されるようにウイルス陽性であった。これらの結果は、インビトロ条件下で感染性ウイルスは不活性化されたBVDV調製物には残存しないことを示した。
【0091】
動物接種
さらにもっと感受性の高いインビボ試験は不活性化ウイルス調製物を未処置(抗体陰性)ウシに接種することである。かかる動物に皮下注射したできるだけ小さな感染性ウイルス粒子が、細胞内に侵入し、ウイルス複製がBVDVに極めて効率的であれば感染性ウシ用量であると考えられる。
【0092】
10匹の抗体陰性去勢ウシ(10から12月齢)を無作為に3群に割り当てた。第1群の6匹の去勢ウシを用いてBVDウイルスが十分に不活化されたかどうかを試験した。前記した同一のBVDの不活性化調製物をこの実施例で使用した。
【0093】
2匹の去勢ウシに非不活化ワクチンを接種し、ワクチン群の陽性対照としたが、2匹の残りの去勢ウシは陰性の「歩哨(sentinel)」動物とし、動物のワクチン接種群で天然に発生するペスチウイルス転移がないことを確認した。陽性対照動物(生存する感染性ウイルスを接種)には各々非不活化ウイルス調製物(前記した元来のウイルス収穫)5mlを投与し、別個の隔離された条件下で進行させ、感染後(通常生存BVDVウイルスを投与して4から7日後)の一過性のウイルス血症を発達させたときに別の動物からの感染を防御した。確認されている、EMAIで発展させた競合ELISAを用いて10匹全ての動物で抗体レベルを測定した。この試験はCSLリミテッドで独自に確認されて欧州でIDEXXスカンジナビアにより市販されている。
【0094】
第1群の6匹の動物は各々、市販のアジュバントに組み込んだ不活性化BVDV調製物4.5mlの皮下注射を受けた。不活性化調製物はmlあたり106.8ウイルス等価物を含有するので、不活性化の前に負荷した全ウイルスは107.4組織培養感染用量(TCID)50であった。陽性対照動物は非不活性化調製物各々5mlを投与される、すなわち107.5TCID50が第1群と同様に皮下注射された。残りの2匹の「歩哨」動物はいずれのウイルス抗原も投与されず、試験中第1群の動物と一緒に放牧して、試験を行っている間にその群に天然のペスチウイルス活性が発生しないことを確認した。
【0095】
不活性化BVDウイルス調製物を投与されているワクチン接種した去勢ウシでは第2用量のワクチンが投与されるまでいずれも抗体が発達しなかった。従って1回投与後2及び4週後には、6匹の去勢ウシで血清変換がなく、これは不活性化ウイルス調製物全量27mlには感染性ウイルスは残っていなかったことを示す。これは108.2TCID50の全不活性化の等価物である。対照的に不活性化前にウイルス調製物を各々5ml投与された2匹の動物で接種後2及び4週の双方で抗E2抗体(中和抗体)及び抗NS3抗体の双方のレベルが高かった。これは不活性化の前の感染特性を確認した。これらのインビボの結果はインビトロ組織培養試験の知見を確認した。2匹の「歩哨」動物はずっと血清陰性のままであり、これはこの群が天然のペスチウイルスに感染されずにいたことを示している。
【0096】
無傷のウイルスの脂質エンベロープに組み込まれた糖タンパク質である、主要なエンベロープ糖タンパク質(E2)に対して指向する宿主抗体を検出するのにモノクローナル抗体のパネルを使用した。試験系はまたウイルスに感染した細胞内で作られる非構造タンパク質、NS3に対して指向する抗体をも検出した。このタンパク質はウイルス複製において主要な制御の役割を有し、感染性ウイルス内には存在しない。無傷のウイルスタンパク質の存在に関する証拠はなかった。ワクチン接種したウシに感染性ウイルスが存在した証拠はなく、全ての感染性ウイルスが破壊されていたことが示された。全てのペスチウイルスはRNAウイルスである。従って、不活性化調製物にはウイルス性DNAが存在しなかった。
【実施例3】
【0097】
去勢ウシのワクチンとしての不活性化BVDV調製物
実施例2に記載した不活性化BVDV調製物の初期用量4.5mlを投与された6匹の去勢ウシ全てに第1回目の初回抗原刺激投与後4週に類似用量を皮下に再注射した。このときに1回投与後の抗体応答はなかった。動物は通常第2回目の投与の後に反応する。不活性化ウイルスの第2回投与後2週に6匹中3匹の去勢ウシで抗E2抗体レベルに強い既往性の応答(中和抗体SNTと同等)が観察された。この応答は競合ELISAにおける阻止の70%以上であった。残りの3匹の動物は弱い抗体応答を示した(23から31%阻止)。
【0098】
抗E2抗体応答とは対照的に、1匹の動物のみが不活性化BVDVの第2回投与後2週で強い抗NS3抗体応答(93%阻止)を発達させた。第2の動物は弱い抗NS3応答(29%阻止)を有し、4匹の動物は2回投与の後に抗体を示さなかった。不活性化BVDVワクチンの投与に続いて類似の応答が以前に観察されていたので、これは予想されないことではなかった。第2回の投与の後2週で6匹のワクチン接種した去勢ウシ全てで抗E2抗体レベルを測定できたので、不活性化BVDV調製物の2回投与に続く去勢ウシにおける抗体レベルがワクチンとしてのその可能性を示している。
【実施例4】
【0099】
脱脂処置の前後のフラビウイルス属クンジンウイルス(FlavivirusKunjin Virus)粒子の微細構造の分析
ジイソプロピルエーテル(DIPE)/ブタノール及びDIPE単独で、60分、1分及び30秒間脱脂を行った。標準的な微細構造の免疫細胞化学技術を使用した。ウシ血清アルブミンを1%の濃度で遮断溶液として使用し、抗体をこの溶液で希釈し、サンプルを室温で15分間インキュベートした。金標識プロテインAをバイオセル(英国)より購入した。
【0100】
30秒の処置の後でさえ感染性のまたは可視ウイルス粒子はEMで検出されなかった。不活性化サンプルではウイルス粒子は観察されなかった。ウイルス液体エンベロープの崩壊があまりにも早くに生じ、観察できなかったと考えられる。
【0101】
しかしながら、未精製の処置されたサンプル(すなわち組織培養液で感染された)を使用した場合、ウイルス粒子は存在しないが、主要なエンベロープウイルスプロテインEに特異的な、金標識したモノクローナル抗体共にいくつかのタンパク質が微細構造的に観察できた。粒子の可視化のための微細構造分析は実際には相当なウイルス力価(mlあたり約10粒子)があることに依存する。感染性アッセイでは脱脂処置がウイルスの感染性を低減し、この方法が時間依存的であるようであった。従って処置により、頻繁なEM可視化でのレベル以下であるレベルまで力価が低減され、従って粒子が全く観察されないので、分解されたことを示唆している。以下の記載に束縛されたくないが、感染性を示すいくつかの粒子が依然存在したが、処置を長くするほどより不活性化され、恐らく崩壊された。
【実施例5】
【0102】
DHBV感染を防御するためのワクチンとしての脱脂されたDHBV陽性血清
アヒルB型肝炎ウイルス(DHBV)に対するワクチンを提供するための脱脂手順の効率を試験した。
【0103】
およそ16匹のペキン交配雛アヒルを孵化の日に雛アヒルのDNBV陰性群から入手した。雛アヒルを試験し、ドットブロットハイブリダイゼーションを用いるDHBV DNA分析によりDHBV陰性であることを決定した。アヒルを3群に分けた:1群は被験ワクチンを投与された6匹のアヒルを含む;2群はグルタルアルデヒド不活化DHBVでワクチン接種した4匹のアヒルから成り、この群を擬似ワクチン接種と称する;3群はリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)でワクチン接種した6匹のアヒルから成り、これらをワクチン接種方法のための対象として用いる偽ワクチン接種アヒルと考えた。グルタルアルデヒド不活性化は、約1:250に希釈したグルタルアルデヒド溶液で固定することにより達成した。
【0104】
脱脂手順
有機溶媒系を用いて血清の脱脂を行った。溶媒系は40%ブタノール(分析試薬の等級)及び60%ジイソプロピルエーテルからなる。この溶媒を2:1の比率で血清と混合した。従って、有機溶媒4mlを血清2mlと混合して1時間回転させた。この混合物をおよそ400xgで10分間遠心し、水相を除去した。次いで水相を等容量のジエチルエーテルと混合し、400xgで10分間遠心した。次に、水相を除去し、等容量のジエチルエーテルと、30rpmで約1時間ひっくり返して回転させて混合し、400xgで10分間遠心した。水相を除去し、残留ジエチルエーテルをおよそ10から30分間ヒュームキャビネットで蒸発させることにより除去した。ジエチルエーテルの除去の後に残ったものを処置された血清と考え、ワクチンの製造に使用した。脱脂手順の対照は、DHBV陰性血清をDHBV陽性血清と同一の脱脂手順に供することを含む。
【0105】
ワクチン製造
被験ワクチン:
第1回投与−脱脂血清の40μlアリコートをリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)1960μlと混合した。
【0106】
第2回投与−脱脂血清の40μlアリコートをPBS 1960μlと混合し、次いでフロイント不完全アジュバント1000μl中で乳化した。
【0107】
第3回投与−脱脂血清の200μlアリコートをPBS 1800μlと混合し、次いでフロイント不完全アジュバント1000μl中で乳化した。
【0108】
擬似ワクチン接種またはDHBV血清対照:
第1回投与−DHBV陽性血清プール#4(20.4.99)の200μlアリコートをPBS 300μl及び2%グルタルアルデヒド溶液(ホワイトレイ・ケミカルズのアイダル・プラス)100μlと混合し、10分間インキュベートし、DHBVを不活性化した。不活性化した血清/PBS混合物の40μlアリコートをPBS 1960μlに加えた。
【0109】
第2回及び第3回投与−DHBV陽性血清プール#4(20.4.99)の200μlアリコートをPBS 300μl及びアイダル・プラス(ホワイトレイ・ケミカルズ)100μlと混合し、10分間インキュベートし、DHBVを不活性化した。不活性化した血清/PBS混合の40μlアリコートをPBS 1960μlに加え、フロイント不完全アジュバント100μl中で乳化した。
【0110】
偽ワクチン接種または陰性対照:
第1回投与−PBS
第2回及び第3回投与−PBS混合物の2000μlアリコートをフロイント不完全アジュバント1000μl中で乳化した。
【0111】
実験手順
孵化の日付:23.10.00
ワクチン接種プロトコル:第1回投与−孵化後8日にアヒルの腹膜腔に各々のワクチン200μlを注射した。第2回投与−孵化後16日に各々のワクチン300μlをアヒルの筋肉内にワクチン接種した。第3回投与−孵化後22日に各々のワクチン300μlをアヒルの筋肉内にワクチン接種した。
【0112】
孵化後29日にDHBV陽性血清(血清プール20.1.97)1000μlでアヒルを対抗した。ドットブロットハイブリダイゼーションにより血清プール20.1.97はmlあたり1.8x1010ゲノム等価性(gev)を有することが示された。1つのgevはおよそ1個のウイルス粒子である。
【0113】
ワクチン接種の前1日及び10日、対抗前17日及び23日、並びに対抗後37日、43及び52日にアヒルを出血させた。その血清をDevaら(1995)に記載されるように、ドットブロットハイブリダイゼーションによりDHBV DNAに関して試験した。アヒルを58日に安楽死させ、その肝臓を取り出し、DNA抽出し、Devaら(1995)に記載されるように、ドットブロットハイブリダイゼーションによりDHBVの存在に関して試験した。
【0114】
結果
被験ワクチン
被験ワクチンでワクチン接種した6匹の被験アヒルのうち5匹の被験アヒルが対抗後、血清及び肝臓でDHBV DNAに関して陰性のままであった。1匹の被験アヒルは対抗後、DHBVに関して陽性になった。
【0115】
擬似ワクチン
被験アヒルグルタルアルデヒド不活化血清でワクチン接種した4匹の被験アヒルの全てが対抗後、DHBVに関して陽性になった。
【0116】
偽ワクチン接種したアヒル
6匹の偽ワクチン接種した陰性対照アヒルのうち5匹が対抗後DHBV陽性になった。
【0117】
カイ2乗分析を用いて処置間の差異を比較した。脱脂血清でワクチン接種したアヒルよりも有意に多い対照アヒル(偽ワクチン接種した)が対抗後DHBV陽性になった(p<0.05)。
【0118】
前記のプロトコルを用いて脱脂DHBV陽性血清で雛アヒルにワクチン接種した結果、DHBV陽性血清で対抗した後、6匹の雛アヒル中5匹でDHBV感染が防御された。これは脱脂血清ワクチンがワクチン接種したアヒルにおける免疫を誘導できることを示唆している。6匹の偽ワクチン接種のうちの5匹及び4匹の擬似ワクチン接種したアヒルのうち4匹がワクチン接種後DHBV陽性になり、これはこれらのアヒルにおいて免疫が誘導されなかったことを示唆している。
【0119】
もちろん、前記のものが本発明の好ましい実施形態にのみ関係し、添付の請求の範囲に示す本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多くの修飾または変更を行うことができることは理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質含有感染性生物を含有する液体を、前記脂質含有感染性生物から脂質を抽出することができる第1有機溶媒と接触させるステップと、
前記液体と前記第1溶媒とを混合するステップと、
有機相および水相を分離させるステップと、
脂質含量を低減させた前記感染性生物を含有する前記水相を回収するステップ
とを含む、液体中の脂質含有感染性生物のレベルを低減させる方法。
【請求項2】
前記水相と、前記第1有機溶媒を除去できる解乳化剤とを接触させるステップと、
除去された前記第1有機溶媒を含有する前記解乳化剤を、接触させた前記水相から分離するステップ
とをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
動物またはヒトから脂質含有感染性生物を含有する液体を得るステップと、
前記脂質含有感染性生物を含有する液体を、脂質含有感染性生物から脂質を抽出できる第1有機溶媒と接触させるステップと、
前記液体と前記第1有機溶媒とを混合するステップと、
有機相および水相を分離させるステップと、
脂質含量が低減された感染性生物を含有する水相を回収するステップと、
前記脂質含量が低減された感染性生物を含有する水相を、前記動物またはヒトに導入するステップ
とを含む、動物またはヒトにおける脂質含有感染性生物のレベルを低減させる方法。
【請求項4】
前記水相を回収した後、前記脂質含量が低減された感染性生物を含有する水相を、前記動物またはヒトに導入する前に、前記第1有機溶媒を除去できる解乳化剤と接触させ、除去された前記第1有機溶媒を含有する前記解乳化剤を前記水相から除去する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
動物またはヒトから脂質含有感染性生物を含有する血液を取り出すステップと、
前記血液から脂質含有感染性生物を含有する血漿を得るステップと、
前記脂質含有感染性生物を含有する血漿を、脂質含有感染性生物から脂質を抽出できる第1有機溶媒と接触させるステップと、
前記血漿と前記第1有機溶媒とを混合するステップと、
有機相および水相を分離させるステップと、
脂質含量が低減された感染性生物を含有する水相を回収するステップと、
前記脂質含量が低減された感染性生物を含有する水相を、前記動物またはヒトに導入するステップ
とを含む、動物またはヒトの血漿における脂質含有感染性生物のレベルを低減させる方法。
【請求項6】
前記水相を回収した後、前記脂質含量が低減された感染性生物を含有する水相を、前記動物またはヒトに導入する前に、前記第1有機溶媒を除去できる解乳化剤と接触させ、除去された前記第1有機溶媒を含有する前記解乳化剤を接触させた前記水相から分離し除去する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記動物またはヒトに導入する前に、前記脂質含量が低減された感染性生物を含有する水相に細胞を添加するステップをさらに含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
液体中の脂質含有感染性生物を、前記脂質含有感染性生物から脂質を抽出できる第1有機溶媒と接触させるステップと、
前記脂質含有感染性生物から脂質を抽出するのに十分な時間、前記液体と前記第1有機溶媒とを混合するステップと、
有機相および水相を分離させるステップと、
脂質含量が低減された感染性生物を含有する水相を回収するステップ
とを含む、ワクチンを製造するための方法。
【請求項9】
前記水相を、前記第1有機溶媒を除去できる解乳化剤と接触させるステップと、
接触させた前記水相から、前記解乳化剤および除去された前記第1有機溶媒を分離するステップ
とをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
医薬適合性の担体中に請求項8に記載の脂質含量が低減された感染性生物を含む組成物の有効量を動物またはヒトに投与するステップであって、ここで量は動物またはヒトにおいて感染性生物による感染に対して保護効果を提供するのに有効な量である;
を含む、動物またはヒトにおいて感染性生物に対する保護を提供する方法。
【請求項11】
さらに免疫刺激剤の投与を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記脂質含有感染性生物が、ウイルス、細菌、原生動物または真菌である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記感染性生物がウイルスであり、前記ウイルスが免疫不全ウイルス、肝炎ウイルスまたはペスチウイルスである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1有機溶媒が、アルコール、エーテル、アミン、炭化水素、またはその組み合わせである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1有機溶媒が、アルコール、エーテル、またはその組み合わせである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記エーテルがC−Cエーテルであり、前記アルコールがC−Cアルコールである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記解乳化剤がエーテルである、請求項2、4、6、および9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記液体が、血漿、血清、腹膜液、リンパ液、胸膜液、心膜液、脳脊髄液、または生殖系の液体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1有機溶媒が、アルコール、エーテル、アミン、炭化水素、エステル、界面活性剤またはこれらの組み合わせである、請求項8に記載の方法。
【請求項20】
実質的に脱脂された感染性生物および医薬適合性の担体を含む、ワクチン組成物。
【請求項21】
免疫刺激剤をさらに含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記感染性生物が、ウイルス、細菌、真菌または原生動物である、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記ウイルスが免疫不全ウイルスまたは肝炎である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
免疫応答を誘導するための医薬品を調製するための、請求項20に記載の組成物の使用。
【請求項25】
ワクチンを調製するための、請求項20に記載の組成物の使用。
【請求項26】
動物またはヒトから液体を入手するステップと、
液体中の脂質含有感染性生物の活性レベルを低減させるのに十分な時間、前記液体を溶媒系と接触させるステップと、
前記溶媒系から前記液体を分離するステップと、
前記液体を動物またはヒトに再導入するステップ
とにより、脂質含有感染性生物に感染した動物またはヒトを処置するための溶媒系を調製するための、ジイソプロピルエーテルおよびブタノールを含む有機溶媒混合物の使用であって、溶解された脂質は溶媒系で分離され、溶媒系に残存する、ジイソプロピルエーテルおよびブタノールを含む有機溶媒混合物の使用。
【請求項27】
前記液体が前記動物またはヒトの血液から得られた血漿である、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
動物またはヒトから血液を入手するステップと、
血漿を得るために血液細胞を分離するステップと、
血漿中の脂質含有感染性生物の活性レベルを低減させるのに十分な時間、前記血漿を溶媒系と接触させるステップと、
前記溶媒系から前記血漿を分離するステップと、
前記血漿を前記動物またはヒトに再導入するステップ
とにより、脂質含有感染性生物に感染した動物またはヒトを処置するための溶媒系を調製するための、ジイソプロピルエーテルおよびブタノールを含む有機溶媒混合物の使用であって、溶解された脂質は溶媒系で分離され、溶媒系に残存する、ジイソプロピルエーテルおよびブタノールを含む有機溶媒混合物の使用。

【公開番号】特開2010−77135(P2010−77135A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−247950(P2009−247950)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【分割の表示】特願2002−505047(P2002−505047)の分割
【原出願日】平成13年6月21日(2001.6.21)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】