説明

感染症治療剤

【課題】PD−1抗体を有効成分として含む感染症治療剤に関する。
【解決手段】PD−1抗体は感染症に対する治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PD−1、PD−L1、またはPD−L2によって誘導される免疫抑制シグナルを阻害することを特徴とする免疫賦活、癌の治療若しくは感染症の治療のための組成物、およびそれらを用いる治療方法に関する。
【0002】
さらに詳しく言えば、PD−1、PD−L1、またはPD−L2によって誘導される免疫抑制シグナルを阻害した結果惹起される免疫賦活を介した癌の治療若しくは感染症の治療ための組成物、それらを用いる治療方法、その組成物に有効成分として含まれる免疫賦活物質、癌治療物質若しくは感染症治療物質のスクリーニング方法、それらスクリーニング方法に使用される細胞株、癌治療物質を選別する評価法、およびその評価に用いられる癌細胞移植哺乳動物に関する。
【背景技術】
【0003】
免疫療法は、ほとんどの薬物療法において避け難い副作用が軽減され、極めて特異性の高い治療方法として期待されている。特に、癌治療や感染症治療における薬物療法が、患者に対して大きな負担を課す治療方法であるために、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の回復が重要視されているが、免疫療法は、ヒトがもともと備え持っている免疫反応を外因的な方法によって賦活化させ、薬物投与による負担の一部を肩代わりさせることによって、患者のQOLを回復させる目的のもとに行なうことができる。
【0004】
免疫の賦活化は、Tリンパ球細胞の免疫反応を活性化させる方法で行なうことができる。T細胞の活性化には、抗原レセプター(TCR)を介した刺激だけでなく、共役刺激分子群(例えば、CD28)を介した付加的な刺激誘導が必要であるといわれている。一方、最近、共役刺激分子群と相同的な構造を有する分子群、CTLA−4とPD−1が発見され、抗原レセプター(TCR)シグナルを抑制するシグナルを発していることが報告されている。T細胞の活性化の方法として、この共役抑制分子の機能を抑制することも有効な1つの手段であると考えられている。
【0005】
PD−1は免疫グロブリンファミリーに属する55kDのI型膜タンパクとしてクローニングされた(The EMBO Journal,1992年,第11巻,第11号,p.3887〜3895、特開平5-336973号公報、特開平7-291996号公報)。ヒトPD−1cDNAは、EMBL / GenBank Acc. No. NM_005018に示される塩基配列で構成され、マウスPD−1cDNAは、Acc. No. X67914に示される塩基配列で構成され、それら発現は、胸腺細胞においてはCD4−CD8−からCD4+CD8+細胞に分化する際に認められる(International Immunology,1996年,第18巻,第5号,p.773〜780、Journal of Experimental Medicine,2000年,第191巻,第5号,p.891〜898)。また、末梢におけるPD−1の発現は、抗原レセプターからの刺激により活性化したT細胞、B細胞(International Immunology,1996年,第18巻,第5号,p.765〜772参照)または活性化マクロファージを含む骨髄細胞に認められることが報告されている。
【0006】
PD−1の細胞内領域には、ITIMモチーフ(Immunoreceptor Tyrosine - based Inhibitory Motif)があり、免疫反応に対する抑制ドメインと考えられている。さらに、PD−1欠損マウスが、糸球体腎炎、関節炎といったループス様自己免疫病(C57BL/6遺伝子背景の場合)(International Immunology,1998年,第10巻,第10号,p.1563〜1572、Immunity,1999年,第11巻,第2号,p.141〜151)や拡張性心筋症様疾患(BALB/c遺伝子背景の場合)(Science,2001年,第291巻,第5502号,p.319〜332)を発症することから、PD−1が自己免疫疾患発症、特に、末梢自己免疫寛容の制御因子であることも示唆されている。
【0007】
PD−1のリガンドであるPD−L1(ヒトPD−L1cDNAはEMBL / GenBank Acc. No. AF233516、マウスPD−L1cDNAはNM_021893で示される塩基配列で構成される。)は、活性化した単球や樹状細胞などのいわゆる抗原提示細胞に発現している(Journal of Experimental Medicine,2000年,第19巻,第7号,p.1027〜1034)。これら細胞は、Tリンパ球細胞に対して、さまざまな免疫誘導シグナルを誘導する相互作用分子を提示しており、PD−L1は、PD−1による抑制シグナルを誘導する分子の1つである。PD−L1リガンド刺激は、PD−1を発現しているTリンパ球細胞の活性化(細胞増殖、各種サイトカイン産生誘導)を抑制することが示されている。さらに、PD−L1の発現は、免疫担当細胞のみでなく、ある種の腫瘍細胞株(単球性白血病由来細胞株、肥満細胞種由来細胞株、肝癌由来細胞株、神経芽細胞種由来細胞株、乳癌由来各種細胞株)でも確認されている(Nature Immunology,2001年,第2巻,第3号,p.261〜267参照)。
【0008】
PD−L2(ヒトPD−L2cDNAはEMBL / GenBank Acc. No. NM_025239、マウスPD−L2cDNAはNM_021896で示される塩基配列で構成される(Nature Immunology,2001年,第2巻,第3号,p.261〜267)。)は、PD−1の第2番目リガンドとして同定されたが、その発現と機能はPD−L1とほぼ同じであることが報告されている。
【0009】
PD−1に代表される共役抑制分子からの抑制シグナルは、抗原レセプター(TCR)および共役刺激分子によるポジティブなシグナルを適性に制御するメカニズムによって、リンパ球発生または成熟過程での免疫寛容や自己抗原に対する異常な免疫反応を制御していると考えられている。また、ある種の腫瘍やウイルスは、直接的もしくは間接的なメカニズムによって、T細胞の活性化および増殖を遮断し、これら共役抑制分子を自らに対する宿主免疫反応を衰弱させるのに利用していると考えられている(Cell,1992年,第71巻,第7号,p.1093〜1102、Science,1993年,第259巻,第5093号,p.368〜370参照)。さらに、T細胞の機能障害に起因すると考えられている疾患の一部では、これら共役抑制分子の異常がT細胞の機能障害を起していると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−336973号公報
【特許文献2】特開平7−291996号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】The EMBO Journal,1992年,第11巻,第11号,p.3887〜3895
【非特許文献2】International Immunology,1996年,第18巻,第5号,p.773〜780
【非特許文献3】Journal of Experimental Medicine,2000年,第191巻,第5号,p.891〜898
【非特許文献4】International Immunology,1996年,第18巻,第5号,p.765〜772
【非特許文献5】International Immunology,1998年,第10巻,第10号,p.1563〜1572
【非特許文献6】Immunity,1999年,第11巻,第2号,p.141〜151
【非特許文献7】Science,2001年,第291巻,第5502号,p.319〜332
【非特許文献8】Journal of Experimental Medicine,2000年,第19巻,第7号,p.1027〜1034
【非特許文献9】Nature Immunology,2001年,第2巻,第3号,p.261〜267
【非特許文献10】Cell,1992年,第71巻,第7号,p.1093〜1102
【非特許文献11】Science,1993年,第259巻,第5093号,p.368〜370
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、PD−1、PD−L1、またはPD−L2による抑制シグナルを阻害して、免疫賦活させる組成物およびこの機構を介した癌治療または感染症治療のための組成物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、癌治療または感染症治療における新たな標的として、PD−1、PD−L1、またはPD−L2に注目し、PD−1、PD−L1、またはPD−L2による抑制シグナルを阻害する物質が、免疫機能の回復、さらには賦活機構を介して癌の増殖を阻害することを見出した。さらに、感染したウイルスの排除にPD−1シグナル、具体的にはPD−1とPD−L1またはPD−1とPD−L2の相互作用が関与していることを見出した。これら事実に基づいて、PD−1、PD−L1、またはPD−L2による抑制シグナルを阻害する物質が、癌または感染症に対して治療効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は、
1.PD−1、PD−L1、またはPD−L2の免疫抑制シグナル阻害物質を含有してなる免疫賦活組成物、
2.PD−1、PD−L1、またはPD−L2の免疫抑制シグナル阻害物質を含有してなる癌治療組成物、
3.癌転移を抑制する組成物である前項2記載の癌治療組成物、
4.PD−1、PD−L1、またはPD−L2の免疫抑制シグナル阻害物質を含有してなる感染症治療組成物、
5.免疫賦活を介して作用することを特徴とする前項2または3記載の癌治療組成物、
6.免疫賦活を介して作用することを特徴とする前項4記載の感染症治療組成物、
7.PD−1とPD−L1若しくはPD−1とPD−L2の相互作用阻害物質、PD−1の細胞内シグナル阻害物質、およびPD−1、PD−L1若しくはPD−L2の産生阻害物質から選択される一以上の免疫抑制シグナル阻害物質である前項1乃至6のいずれかに記載の組成物、
8.PD−1抗体、PD−L1抗体、可溶化PD−1、および可溶化PD−L1から選択される一以上のPD−1とPD−L1の相互作用阻害物質である前項7記載の組成物、
9.国際受託番号FERM BP-8392で識別されるハイブリドーマが産生する抗ヒトPD−1抗体、非ヒト抗体をヒト化させた抗PD−1抗体、および完全ヒト型抗ヒトPD−1抗体から選択されるPD−1抗体である前項8記載の組成物、
10.遺伝子改変によりPD−1発現が阻害されたリンパ球細胞が、免疫抑制シグナル阻害物質である前項1乃至6のいずれかに記載の組成物、
11.PD−1とPD−L1若しくはPD−1とPD−L2の相互作用阻害物質、PD−1の細胞内シグナル阻害物質、またはPD−1、PD−L1若しくはPD−L2の産生阻害物質が、タンパク質、ポリペプチド若しくはペプチド、ポリヌクレオチド若しくはポリヌクレオシド、抗体若しくはそれらの誘導体、有機合成化合物、無機化合物、および天然物から選択される一以上の物質である前項7記載の組成物、
12.PD−1、PD−L1、またはPD−L2の免疫抑制シグナル阻害物質を投与することからなる免疫賦活方法、
13.PD−1、PD−L1、またはPD−L2の免疫抑制シグナル阻害物質を投与することからなる癌治療方法、
14.癌転移を抑制する前項13記載の癌治療方法、
15.PD−1、PD−L1、またはPD−L2の免疫抑制シグナル阻害物質を投与することからなる感染症治療方法、
16.免疫賦活を介して作用することを特徴とする前項13または14記載の癌治療方法、
17.免疫賦活を介して作用することを特徴とする前項15記載の感染症治療方法、
18.PD−1とPD−L1若しくはPD−1とPD−L2の相互作用阻害物質、PD−1の細胞内シグナル阻害物質、およびPD−1、PD−L1若しくはPD−L2の産生阻害物質から選択される一以上の免疫抑制シグナル阻害物質である前項12乃至17のいずれかに記載の方法、
19.PD−1抗体、PD−L1抗体、可溶化PD−1、および可溶化PD−L1から選択される一以上のPD−1とPD−L1の相互作用阻害物質である前項18記載の方法、
20.国際受託番号FERM BP-8392で識別されるハイブリドーマが産生する抗ヒトPD−1抗体、非ヒト抗体をヒト化させたPD−1抗体、および完全ヒト型抗ヒトPD−1抗体から選択されるPD−1抗体である前項19記載の方法、
21.遺伝子改変によりPD−1発現が阻害されたリンパ球細胞が、免疫抑制シグナル阻害物質である前項12乃至17のいずれかに記載の方法、
22.PD−1とPD−L1若しくはPD−1とPD−L2の相互作用阻害物質、PD−1の細胞内シグナル阻害物質、またはPD−1、PD−L1若しくはPD−L2の産生阻害物質が、タンパク質、ポリペプチド若しくはペプチド、ポリヌクレオチド若しくはポリヌクレオシド、抗体若しくはそれらの誘導体、有機合成化合物、無機化合物、および天然物から選択される1つ以上の物質である前項18記載の方法、
23.免疫賦活組成物を製造するためのPD−1、PD−L1、またはPD−L2の免疫抑制シグナル阻害物質の使用、
24.癌治療組成物を製造するためのPD−1、PD−L1、またはPD−L2の免疫抑制シグナル阻害物質の使用、
25.癌治療組成物が、癌転移抑制組成物である前項24記載の物質の使用、
26.感染症治療組成物を製造するためのPD−1、PD−L1、またはPD−L2の免疫抑制シグナル阻害物質の使用、
27.PD−L1またはPD−L2を発現するように形質転換されたスクリーニング用癌細胞株、
28.前項27記載の細胞、リンパ球細胞および被験物質を接触させて、前項27記載の細胞へのリンパ球細胞の免疫反応に対する被験物質の増強作用を評価することを特徴とする免疫賦活物質のスクリーニング方法、
29.癌細胞である前項27記載の細胞、リンパ球細胞および被験物質を接触させて、その癌細胞へのリンパ球細胞の免疫反応に対する被験物質の増強作用またはその腫瘍細胞の増殖に対する阻害作用を評価することを特徴とする癌治療物質のスクリーニング方法、
30.病原体を感染させた前項27記載の細胞またはPD−L1若しくはPD−L2を発現する細胞、リンパ球細胞および被験物質を接触させて、その感染細胞へのリンパ球細胞の免疫反応に対する被験物質の増強作用または病原体増殖に対する阻害作用を評価することを特徴とする感染症治療物質のスクリーニング方法、
31.前項27記載の癌細胞株を移植して作出した哺乳動物、
32.前項31記載の哺乳動物に被験物質を投与し、被験物質による移植癌細胞の増殖に対する抑制率またはその被移植哺乳動物の生存率を評価することを特徴とする癌治療物質の選別方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は、H−2Ld特異的2C CTLクローンのPD−1発現と、P815(肥満細胞種由来細胞株)のPD−L1発現安定形質転換株でのPD−L1発現を示すフローサイトメトリー、(B)は、PD−L1発現P815細胞株に対する2C CTL細胞株の細胞傷害活性と抗PD−L1抗体(anti−PD−L1F(ab’)2IgG)の細胞傷害活性に対する効果を示す。
【図2】同系マウスにおける移植PD−L1発現P815細胞株の腫瘍増殖性と浸潤性を示す。(A)は移植PD−L1発現P815腫瘍の腫瘍容積(上)、移植後の生存率(下)であり、(B)は同系DBA/2マウスにおける移植PD−L1発現P815腫瘍塊の組織染色像である(aは腹壁および腹膜への腫瘍細胞の浸潤を示す40倍像、bは同じく400倍像、cは脾臓への転移、dは肝臓への転移を示す。)。
【図3】同系マウスにおける移植PD−L1発現P815細胞株の腫瘍増殖性に対する抗PD−L1抗体のin vivo効果を示す。(A)は当該マウスにおける腫瘍特異的CD8+T細胞からのIFN−γ産生に対する抗PD−L1抗体のin vivo効果、(B)は当該マウスにおける移植PD−L1発現P815腫瘍の腫瘍容積(上)と生存率(下)に対する抗PD−L1抗体のin vivo効果を示す(図中、□は対照群(ラットIgG投与群)、○は抗PD−L1抗体(anti−PD−L1F(ab')2IgG)投与群)。
【図4】PD−1遺伝子ホモ欠損同系マウス(PD−1-/-)でのPD−L1発現B16メラノーマの増殖抑制を示す。
【図5】同系マウス(BALB/c)における移植ミエローマ細胞株の腫瘍増殖性に対する抗PD−L1抗体のin vivo効果とPD−1の関与を示す。(A)は各種ミエローマ細胞株でのPD−L1発現を示すフローサイトメトリー、(B)は前記マウスにおける移植J558L腫瘍の腫瘍容積に対する抗PD−L1抗体のin vivo効果、(C)は野生型およびPD−1遺伝子欠損PD−1-/-の同系マウスにおける移植J558L腫瘍の腫瘍増殖の比較を示す。
【図6】血管内皮でのPD−L1発現を示す。(A)はマウス心臓の血管内皮細胞でのPD−L1,PD−L2の発現を示す。(B)はマウス各組織でのPD−L1発現の確認を組織染色を示す。(a):眼球、(b):顎下腺、(c):心臓、(d):肺、(e):肝臓、(f):腎臓でのPD−L1の発現を示す。図中、Chは脈絡膜、CVは中心静脈、Glは糸球体、Reは網膜を示す。各矢印は、血管内皮細胞を示す。各染色像は40倍拡大像である。
【図7】肝臓非実質細胞でのPD−L1発現を示す。(A)はマウス肝臓でのICAM−1、(B)はPD−L1の発現を示す(CV:中心静脈)。
【図8】クップファー細胞(Kupffer Cell)および肝臓類洞周囲腔内皮細胞(LSEC)での細胞表面分子のフェノタイプを示す。
【図9】PD−1遺伝子ホモ欠損マウス(PD−1-/-)あるいは野生型マウス(wt)のCD4陽性T細胞での細胞表面分子のフェノタイプを示す。
【図10】PD−1遺伝子ホモ欠損マウス(PD−1-/-)あるいは野生型マウス(wt)のCD8陽性T細胞での細胞表面分子のフェノタイプを示す。
【図11】T細胞増殖に対するLNPCのPD−L1の効果を示す。(A)はPD−1-/-マウスおよびwtマウスのそれぞれのナイーブT細胞刺激時の細胞増殖を示す。(B)はPD−1-/-マウスおよびwtマウス由来で既に活性化されたT細胞とLNPCとの共培養における細胞増殖に対する抗PD−L1抗体の効果を示す。
【図12】サイトカイン産生に対するLNPCのPD−L1の効果を示す。(A)はPD−1-/-マウスおよびwtマウスのそれぞれのナイーブT細胞刺激時のサイトカイン産生を示す。(B)は、PD−1-/-マウスおよびwtマウス由来で既に活性化されたT細胞とLNPCとの共培養におけるサイトカイン産生に対する抗PD−L1抗体の効果を示す。(C)はLNPCとの共培養におけるPD−1-/-マウスおよびwtマウスからの活性化T細胞の細胞分裂を示す。
【図13】ウイルス感染したマウス肝臓におけるTリンパ球細胞の増殖に対するPD−1の関与を示す。(A)はアデノウイルス感染後0日目、(B)は同7日目でのPD−1-/-マウスおよびwtマウスの肝臓および脾臓でのCD19陽性およびCD3陽性リンパ球細胞の増殖を示す。
【図14】ウイルス感染したマウス肝臓におけるTリンパ球細胞の増殖に対するPD−1の関与を示す。(A)はアデノウイルス感染後7日目でのPD−1-/-マウスおよびwtマウスの肝臓でのCD4陽性およびCD8陽性リンパ球細胞の増殖を示す。(B)は、感染後7日目での各種増殖性リンパ球の割合を示す。
【図15】ウイルス感染に対するPD−1の関与を示す。図中(a)〜(d)は、アデノウイルス感染後0日および7日目でのPD−1-/-マウスおよびwtマウスの肝臓でのそれぞれの細胞増殖を示す組織染色像である。(e)、(f)はアデノウイルス感染後7日目でのPD−1-/-マウスでのCD4陽性、CD8陽性T細胞の細胞増殖を示す。
【図16】ウイルス感染に対するPD−1の関与を示す。図中(g)〜(n)は、アデノウイルス感染後0日および7日目でのPD−1-/-マウスおよびwtマウスの肝臓のヘマトキシリン&エオジン組織染色像である。図中(o)〜(r)は、アデノウイルス感染後0日および7日目でのPD−1-/-マウスおよびwtマウスの肝臓のX−Gal染色像である。
【図17】細胞傷害活性に対する各物質の増強作用を示す。図中(a)抗マウスPD−1抗体の増強作用、(b)抗マウスPD−L1抗体の増強作用、(c)マウスPD−1Fcの増強作用(d)ヒトPD−1Fcの増強作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明中のPD−1、PD−L1またはPD−L2は、それぞれマウス、ラット、ハムスター、モルモット、イヌ、ブタ、サルまたはヒトを含む霊長類の哺乳動物を由来とするものを含む。好ましくは、ヒトPD−1、ヒトPD−L1およびヒトPD−L2である。
【0017】
本発明中のPD−1、PD−L1、またはPD−L2による免疫抑制シグナルは、少なくともPD−1とPD−L1またはPD−1とPD−L2との相互作用、PD−1の細胞内シグナルから構成される。さらに、PD−1、PD−L1、またはPD−L2分子自身の産生もこれに含まれる。
【0018】
本発明中のPD−1、PD−L1、またはPD−L2による免疫抑制シグナルは、PD−1とPD−L1またはPD−1とPD−L2との相互作用またはPD−1の細胞内シグナルの直接的あるいは間接的な阻害によって阻害される。これらの阻害活性を有する物質として、PD−1、PD−L1、またはPD−L2にそれぞれ選択的に結合する物質が挙げられる。好ましくは、例えば、タンパク質、ポリペプチド若しくはペプチド、ポリヌクレオチド若しくはポリヌクレオシド、抗体若しくはそれら誘導体、有機合成化合物、無機化合物、または天然物が挙げられる。特に、特異性に優れた物質として、PD−1、PD−L1、またはPD−L2に対する抗体が挙げられる。
【0019】
また、当該免疫抑制シグナルは、PD−1、PD−L1、またはPD−L2分子自身の産生の阻害によっても阻害される。
【0020】
PD−1、PD−L1、またはPD−L2に対する抗体は、PD−1、PD−L1、またはPD−L2による免疫抑制シグナルを阻害するものであれば、ヒト由来抗体、マウス由来抗体、ラット由来抗体、ウサギ由来抗体またはヤギ由来抗体のいずれの抗体でもよく、さらにそれらのポリクローナル若しくはモノクローナル抗体、完全型若しくは短縮型(例えば、F(ab')2、Fab'、FabまたはFv断片)抗体、キメラ化抗体、ヒト化抗体または完全ヒト型抗体のいずれのものでもよい。
【0021】
そのような抗体は、PD−1、PD−L1、またはPD−L2の細胞外領域の部分タンパク質を抗原として、公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。細胞外領域の部分タンパク質は、公知のタンパク質発現ならびに精製法によって調製することができる。
【0022】
ポリクローナル抗体は、公知の方法によって製造することができる。例えば、抗原タンパク質あるいはそれとキャリアー蛋白質との混合物で、適当な動物に免疫を行ない、その免疫動物から抗原タンパク質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造することができる。用いられる動物としては、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、モルモットが一般的に挙げられる。抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを抗原タンパク質と共に投与することができる。投与は、通常約2週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なうのが一般的である。ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された動物の血液、腹水などから採取することができる。抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、ELISA法によって測定することができる。ポリクローナル抗体の分離精製は、例えば、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤を用いた精製法、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法などの免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0023】
抗体製剤としては、モノクローナル抗体あるいはその修飾体がより好ましい。
モノクローナル抗体産生細胞の作製は、抗原で免疫された動物から抗体価の認められた個体を選択し、最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、継代培養可能なモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを作製することにより行なうことができる。抗原タンパク質の投与は、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤と共に行なう。投与には、抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与するのが一般的である。また、“DNA免疫”と呼ばれる方法によっても、動物を免疫することができる。この方法は、免疫動物の後足前脛骨筋にカルジオトキシン(Cardiotoxin)を処置し、さらに抗原タンパク質を発現するベクターを導入した後、組織修復の過程でベクターが筋細胞に取りこまれ、タンパク質を発現する現象を利用した方法である(Nature Immunology,2001年,第2巻,第3号,p.261〜267)。
【0024】
免疫される動物としては、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ウサギまたはモルモットが可能であるが、好ましくはマウスまたはラットが用いられる。融合操作は、コーラー(Kohler)とミルシュタイン(Milstein)の方法(Nature,1975年,第256巻,第5517号,p.495〜497)で実施することができ、融合促進剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが用いられる。骨髄腫細胞としては、P3U1、NS1、SP2/0、AP1などの骨髄腫細胞が挙げられるが、通常P3U1がよく利用される。モノクローナル抗体産生細胞の選別は、例えば、抗原タンパク質を直接あるいは担体と共に吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加することによるELISA法などにより検出して行なうことができる。さらに、ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、ELISA法によって測定できる。モノクローナル抗体の分離精製は、上記のポリクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。具体的には、国際受託番号FERM BP-8392で識別されるハイブリドーマが産生する抗ヒトPD−1抗体あるいは国際受託番号FERM BP-8396で識別されるハイブリドーマが産生する抗マウスPD−L1抗体である。
【0025】
国際受託番号FERM BP-8392で識別されるハイブリドーマは、2002年12月19日付で日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305-8566)、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM P-19162で寄託され、2003年6月5日付で国際寄託に移管されている。また、国際受託番号FERM BP-8396で識別されるハイブリドーマは、2002年6月25日付で同センターに受託番号FERM P-18908で寄託され、2003年6月11日付で国際寄託に移管されている。
【0026】
抗体断片とは、F(ab')2、Fab'、FabまたはscFv抗体フラグメントであり、プロテアーゼ酵素により処理し、場合により還元して得ることができる。
【0027】
F(ab')2抗体フラグメントは、精製されたモノクローナル抗体をペプシンで完全に消化し、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過、プロテインAあるいはプロテインGカラムなどのアフィニティークロマトグラフィーのいずれかの方法により精製することができる。ペプシンの消化時間は、Igサブタイプにより異なるため、適当に調製することが必要である。Fab'抗体フラグメントは、調製したF(ab')2を2−メルカプトエチルアミンで部分還元することによって作製することができる。また、Fab抗体フラグメントは、システイン存在下で消化酵素パパインで直接消化し、精製して作製することができる。
【0028】
また、モノクローナル抗体は、抗体のアミノ酸配列を決定したり、ハイブリドーマから単離できる抗体をコードするDNA配列を利用して、遺伝子組換え技術により改変し、改変抗体やハイブリッド抗体を産生させることも可能である。例えば、通常の完全型抗体ではなく単鎖抗体として作製することもできる。scFv抗体(Single Chain Fv)は、ジョストらの方法(Journal of Biological Chemistry,1994年,第269巻,第42号,p.26267〜26273)により行なうことができる。重鎖および軽鎖の可変領域をそれぞれコードするDNA断片を中性アミノ酸(グリシンあるいはセリン)をコードするスペーサーで連結し、この融合DNAを含む発現ベクターを適当な宿主細胞で発現させることによって、本来の抗体の特性と親和性を保持する単鎖の抗体を作製することができる。
【0029】
非ヒト抗体をヒトの治療に用いる場合、その抗体の抗原性を減少させることが不可欠である。患者の抗体に対する免疫反応は、有効な治療期間を短縮させる場合が多く、抗体をヒト化あるいは完全ヒト型化させ、抗体の抗原性を減らす工程が必要である。ヒトへの投与が可能となるよう改変されたヒト化抗体とは、同抗体をヒトに投与したときに薬理学的に許容し得る程度に、抗原性が減少あるいは血中動態が改善するよう改変された抗体である。
【0030】
本発明の明細書中のヒトPD−1抗体またはヒトPD−L1抗体は、これをヒト化あるいは完全ヒト型化した抗体をも含む。
【0031】
ヒト化抗体は、ヒト以外の哺乳動物に免疫して作製された非ヒト抗体の一部をヒト抗体の一部に置換することによって作製できる。具体的には、ヒト抗体の定常領域をコードする遺伝子とのキメラを構築することによって作製できることが知られている(Proc. Natl. Acad. Sci. (USA),1987年,第84巻,p.3439〜3443、Journal of Immunology,1987年,第139巻,第1号,p.3521)。ヒトの定常領域のDNA配列は文献に記載されており、その定常領域遺伝子は既知のクローンから容易に入手できる。続いて、抗体の可変領域をコードするDNA配列をヒトの定常領域の配列に融合させる。ヒトの定常領域のアイソタイプは所望のエフェクター機能または抗体依存細胞性細胞毒性における活性によって選択できる。好ましいアイソタイプはIgG1、IgG3およびIgG4である。また、ヒト軽鎖定常領域、κ鎖またはλ鎖のいずれも用いることができる。このヒト化キメラ抗体は通常の方法によって発現させることができる。
【0032】
完全ヒト型抗体は、ヒト免疫グロブリンの定常領域遺伝子を導入されたマウス(ゼノマウス(Chemical Biology,2000年,第7巻,第8号,p.R185-6)、ヒューマブマウス(infection and immunity,2002年,第70巻,第2号,p.612-9)、TCマウス(Biotechnology and Genetics Enginnering Revew,2002年,第19巻,p.73〜82)、KMマウス(Cloning Stem Cells,2002年,第4巻,第1号,p.91-102))を利用して作製することができ、さらにそれらマウスから単離した抗体産生リンパ球をハイブリドーマにして、目的の抗体を量産させることができる。また、ファージ・ディスプレー法(FEBS Letter,1998年,第441巻,p.20-24)によっても作製することができる。この方法は、環状一本鎖DNAにヒト抗体遺伝子を組み込んだファージを利用して、ファージを構成する外殻タンパク質と融合した形で、ヒト型抗体をファージの表面に発現されることができる。
【0033】
PD−1、PD−L1、またはPD−L2に結合するポリペプチドまたはその誘導体は、PD−1、PD−L1、またはPD−L2のそれぞれの部分タンパク質であって、免疫抑制シグナルを誘導しないものが挙げられる。PD−1の免疫抑制シグナルの誘導には、PD−1が抗原レセプターの近傍に存在することが不可欠であり、そのためには抗原提示細胞、腫瘍あるいは癌細胞に存在するPD−L1またはPD−L2との相互作用による拘束が必要である。したがって、細胞外ドメインのみであってPD−1と相互作用する部分を有する可溶化PD−L1または可溶化PD−L2は、PD−1の免疫抑制シグナルを阻害することができる。逆に、同様の構造を有し、PD−L1またはPD−L2に結合できる可溶化PD−1も、免疫抑制シグナルを阻害することができる。これら可溶化タンパク質は、PD−1、PD−L1、またはPD−L2に結合するのに必要十分な細胞外領域を含むものであればよく、公知のタンパク質発現法および精製法によって調製することができる。
【0034】
PD−1とPD−L1またはPD−1とPD−L2の相互作用阻害物質がタンパク質またはポリペプチドであり、それらの相互作用に必須の領域が、連続するポリペプチドのみによって構成されている場合、そのようなポリペプチド断片は、互いの拮抗物質になり得る。さらに、このポリペプチド断片を化学的に修飾されたあるいはポリペプチド断片の立体構造をもとにコンピュータによって設計された分子群から、より強力な活性を有する拮抗物質を同定することが可能となる。また、相互作用領域のタンパク質立体構造解析データをもとにコンピュータによって設計された分子群の中から、最適の拮抗分子をより効率的に選択することもできる。
【0035】
また、PD−1とPD−L1またはPD−1とPD−L2の相互作用を阻害する物質を直接スクリーニングすることができる。そのような物質は、タンパク質、ポリペプチド若しくはペプチド、ポリヌクレオチド若しくはポリヌクレオシド、非ペプチド性化合物、有機合成化合物、または天然物(例えば、発酵生産物、細胞抽出物、植物抽出物、動物組織抽出物)のライブラリーから同定することが可能である。
【0036】
PD−1細胞内ドメインの抑制シグナルは、PD−1細胞内ドメインであるITIMに結合した脱リン酸化酵素(例えば、SHP−1、2(Sathish JG,Journal of Immunology),2001年,第166巻,第3号,p.1763-70)が、抗原受容体複合体の細胞内複合体に接触することによって生じることから、総じて抗原受容体複合体とPD−1の接触の阻害によって阻害される。抑制シグナルを阻害する物質として、ITIMのチロシン残基のリン酸化を阻害する物質、ITIMへの脱リン酸化酵素の結合を阻害する物質、その脱リン酸化酵素の活性を直接阻害する物質などが挙げられる。抗原受容体複合体としては、T細胞受容体複合体、B細胞受容体複合体が挙げられる。
【0037】
PD−1、PD−L1、またはPD−L2の産生は、特定のポリヌクレオチド若しくはポリヌクレオシド、有機合成化合物、無機化合物、または天然物などによって阻害できる。特に、好適なポリヌクレオチドまたはポリヌクレオシドとして、リボザイムと呼ばれるアンチセンスヌクレオチド誘導体が挙げられる。これは、PD−1、PD−L1または、PD−L2のmRNAに相補的なポリヌクレオチド誘導体を、対象の発現細胞に導入することによって、発現するmRNAが破壊される機構を利用したものである。さらに、ベクターは、患者から採取したリンパ球前駆細胞に対して、PD−1の発現を阻害するような遺伝子操作に使用でき、その操作された細胞は、増殖、分化、そして、活性化させて、再び患者に投与する細胞医療に利用することができる。特に、癌に対する免疫療法においては、リンパ球前駆細胞の成熟化および活性化の際に、標的細胞の特異抗原を添加することによって、標的細胞に特異的で、よりクローナルなリンパ球細胞を調製することができる。
【0038】
本発明のスクリーニング法は、細胞機能を測定する方法で行なうことができる。同方法で使用されるPD−L1またはPD−L2を発現するように形質転換したスクリーニング用癌細胞株とは、PD−L1またはPD−L2を発現するように構築された発現ベクターを公知の方法によって細胞に導入し、一過性あるいは安定的に形質転換された癌細胞株を含む。使用される癌細胞株としては、サルCOS−1細胞、COS−7細胞、Vero、チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記する。)、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr−)細胞と略記する。)、マウスL細胞、マウスAtT−20、マウスミエローマ細胞、ラットGH3、HEK293T細胞、ヒトFL細胞などが用いられる。特に、動物細胞を形質転換する場合には、例えば、「細胞工学別冊8新細胞工学実験プロトコール」(秀潤社、1995年、第263)や「Virology」(1973年、第52巻、第456号)に記載の方法に従って行なうことができる。
【0039】
また、自然にPD−L1またはPD−L2を発現する細胞を用いることもできる。そのような細胞として、白血球細胞、好ましくは単球、マクロファージ若しくは抗原提示細胞、上皮系細胞、腫瘍細胞、癌細胞またはそれらの細胞株などである。腫瘍細胞または癌細胞として使用できる細胞として、例えば、P38D1細胞、P815細胞、NB41A3細胞、MDA−231細胞、SKBR−3細胞、MCF−7細胞、BT474細胞、J558L細胞、P3U1細胞、PAI細胞、X63細胞またはSP2/0細胞を用いることができる。
【0040】
PD−L1若しくはPD−L2を自然に発現する細胞または強制的に発現させた細胞であって、病原体を感染させた細胞を用いることもできる。感染させる病原体としては、ヒト肝炎ウイルス(B型肝炎、C型肝炎、A型肝炎)またはE型肝炎)、ヒトレトロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV1、HIV2)、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒトTリンパ向性ウイルス(HTLV1、HTLV2)、単純ヘルペスウイルス1型若しくは2型、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6を含むヒトヘルペスウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、日本脳炎ウイルス、おたふくウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、ライノウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)を発症するウイルス、エボラウイルス、西ナイルウイルス、またはそれらを人為的に改変されたウイルスが挙げられる。その他の病原体として、例えば、病原性原生動物(例えば、トリパノソーマ、マラリアおよびトキソプラズマ)、細菌(例えば、マイコバクテリウム、サルモネラおよびリステリア)、または真菌(例えば、カンジダ)が挙げられる。
【0041】
本発明のスクリーニング法で使用されるリンパ球細胞としては、T細胞またはB細胞であり、好ましくは、細胞傷害性Tリンパ球細胞(CTL)である。また、本発明のスクリーニング法におけるリンパ球細胞の免疫反応は、細胞傷害反応(例えば、腫瘍免疫反応)、混合リンパ球反応、サイトカイン、抗体、補体若しくはその他細胞表面抗原の産生、または細胞増殖が挙げられる。
【0042】
本発明の免疫賦活または癌治療組成物の有効成分のスクリーニング法は、具体的には、細胞傷害性Tリンパ球の対象細胞に対する細胞傷害活性を測定し、その活性に対する被験物質の効果を定量することによって行なうことができる。この方法は、PD−1を自然に発現する細胞傷害性Tリンパ球細胞(CTL)あるいは細胞株(例えば、2C細胞)および同系マウス由来であってPD−L1またはPD−L2を自然に発現するもしくは強制的に発現させた細胞の混合培養に対して、被験物質を添加することによる細胞傷害活性の回復あるいは増強を定量するものである。本法の特徴は、PD−L1またはPD−L2を発現していない細胞に対する細胞傷害活性に比べ、PD−L1またはPD−L2を発現している細胞に対する細胞傷害活性が低く、被験物質による細胞傷害活性の回復(上昇幅)をより明確に測定できるところにある。被験物質による細胞傷害性の回復は、本発明の特徴とするPD−L1またはPD−L2による細胞傷害性の抑制の阻害に相当するものとして評価することができる。さらに、被験物質による細胞毒性を任意に測定することがより望ましい。これに使用される細胞としては、自然にPD−L1またはPD−L2を発現する腫瘍細胞株または癌細胞株(Nature Immunology,2001年,第2巻,第3号,p.261〜267)、例えば、P38D1細胞、P815細胞、NB41A3細胞、MDA−231細胞、SKBR−3細胞、MCF−7細胞、BT474細胞、J558L細胞、P3U1細胞、PAI細胞、X63細胞、またはSP2/0細胞を用いることができるが、PD−L1またはPD−L2を安定的にあるいは一過的に発現するように形質転換させた腫瘍細胞株または癌細胞株も使用することができる。
【0043】
一方、使用できる細胞傷害性リンパ球は、PD−1を発現しているものであって、対象とする細胞に対して同系の動物由来の細胞であることが好ましい。
【0044】
本発明の感染症治療組成物の有効成分のスクリーニングは、PD−1を自然に発現する細胞傷害性Tリンパ球細胞(CTL)あるいは細胞株(例えば、2C細胞)、病原菌またはウイルスを感染させた同系由来のPD−L1またはPD−L2を自然に発現するもしくは強制的に発現させた細胞の混合培養に対して、被験物質を添加することによるその感染細胞へのリンパ球細胞の免疫反応の増強作用または病原菌若しくはウイルスの増殖活性に対する阻害作用を定量するものである。
【0045】
さらに、同様の原理を利用した評価法では、上記のPD−L1またはPD−L2を発現するように形質転換させたスクリーニング用癌細胞株または自然にPD−L1またはPD−L2を発現する細胞を、同系哺乳動物に移植して作出した哺乳動物を使用することができる。作出する工程としては、細胞を移植する工程、評価対象が適切となるまで同哺乳動物を飼育する工程が不可欠である。この評価法は、移植細胞の増殖、各種サイトカイン若しくは細胞表面抗原の産生量、特に、細胞が癌細胞の場合は、同細胞の増殖、浸潤若しくは転移の組織学的解析または被移植哺乳動物の生存率を評価することを特徴とする。細胞増殖は、腹水癌または血液癌の場合はその単位容量当りの癌細胞数、固形癌の場合はその大きさまたは摘出後の重量によって評価することができる。本法における被験物質による癌治療効果は、PD−L1またはPD−L2による細胞傷害性抑制の阻害に由来する効果に相当するものとして評価することができる。移植する癌細胞株は、インビトロでのスクリーニング法で使用できる癌細胞のいずれも使用できるが、移植哺乳動物と同系由来のもので、増殖性が良いものがより好ましい。哺乳動物としては、ヒトを除く霊長類、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、イヌ、ブタ、サルが挙げられる。
【0046】
本発明者らは、癌細胞移植動物モデルへの投与によって、癌の増殖を顕著に抑制し個体の延命効果を発揮する物質として、PD−1、PD−L1の機能を阻害するそれぞれの特異的抗体(抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体)を発明した。これら抗体は、PD−1を発現しているCTL(細胞傷害性Tリンパ球細胞)へのPD−L1リガンドの提示によって相対的に低下する細胞傷害活性を回復あるいは増強させる作用を示した(実施例1,図1参照)。これは、CTLによる癌細胞に対する細胞傷害活性が、これら抗体の投与によって増強しうることを示唆するものである。さらに、抗PD−L1抗体の投与は、PD−L1を人為的に発現させた肥満細胞腫由来細胞株を移入した同系マウスを用いた癌細胞移植動物モデル(蛋白質・核酸・酵素、1981年、26巻、3号、p.208〜224)において、癌細胞の増殖、浸潤および転移を抑制し、個体の延命効果を示した(図2、図3参照)。さらに、この抗体によるPD−L1機能の阻害による効果と同様の効果が、PD−1の機能あるいは産生を阻害することによって得られることが示唆された。これは、PD−1欠損マウスを用いた癌移入モデルでは、移入癌細胞の増殖が全く認められなかったからであり、PD−1の機能阻害あるいは産生阻害も有効な癌治療方法になることを示すものである(実施例5,図5参照)。
【0047】
実際に、癌細胞移植動物モデルにおいて、抗PD−1抗体の投与が移入癌細胞の肝臓への転移を有意に抑制することが証明されていた(実施例13参照)。
【0048】
さらに、発明者らは、PD−1、PD−L1、またはPD−L2によって誘導される免疫抑制シグナルを阻害する物質が、感染症治療に有用であることを示した(実施例11,図15,図16参照)。
【0049】
本発明者らが実験的に示したこれら結果は、PD−1抗体またはPD−L1抗体のみが既述の効果を呈することを示すものではなく、PD−1、PD−L1、またはPD−L2からの免疫抑制シグナルを阻害し得るいずれの物質もほぼ同様の効果を呈することを証明するものである。そのような効果を有する物質として、例えば、抗PD−L2抗体、可溶化PD−1、可溶化PD−L1、可溶化PD−L2、PD−1拮抗物質、PD−L1拮抗物質、PD−L2拮抗物質、PD−1とPD−L1若しくはPD−1とPD−L2の相互作用を阻害する物質、PD−1産生阻害物質、PD−L1産生阻害物質、PD−L2産生阻害物質、またはPD−1による細胞内抑制シグナル阻害物質が挙げられる。
【0050】
本発明の癌治療組成物の投与によって、その効果が期待される癌または腫瘍として、例えば、癌腫、扁平上皮癌(例えば、子宮頚管、瞼、結膜、膣肺、口腔、皮膚、膀胱、舌、喉頭、食道)、腺癌(例えば、前立腺、小腸、子宮内膜、子宮頚管、大腸、肺、膵、食道、直腸、子宮、胃、乳房、卵巣)が挙げられる。さらに、肉腫(例えば、筋原性肉腫)、白血病、神経腫、メラノーマ、リンパ腫も含まれる。
【0051】
これら癌または腫瘍のうち、特にPD−L1またはPD−L2を顕著に発現しているものに対してその効果が顕著である。PD−L1またはPD−L2の発現を、外科的に切除した癌または腫瘍塊あるいは体外に採取した病変部をサンプルとする検査により同定でき、本発明の組成物の投与は、PD−L1またはPD−L2を顕著に発現している腫瘍または癌を有する患者に対する外科的処置後の治療として、効率的で有効な方法となる。PD−L1またはPD−L2の発現の同定は、例えば、PD−L1抗体若しくはPD−L2抗体を用いた免疫化学的方法、RT−PCR法またはDNAアレイ法によって検査することができる。
【0052】
癌に対する化学療法および放射線療法は、リンパ球の増殖を激しく減少させるという副作用が不可避である。本発明の組成物の投与は、減少したリンパ球細胞を刺激、増殖させる効果を示すと共に、通常の化学療法に付随する激烈な副作用を最小限に抑制することができる。また、放射線療法についても同様である。また、本発明の組成物との併用によって、化学療法剤の用量または照射放射線量を通常使用される用量あるいは照射量から大幅に減少させることができる。
【0053】
本発明の癌治療組成物は、既存の化学療法剤と併用あるいは合剤化することができる。そのような化学療法剤として、例えば、アルキル化剤、ニトロソウレア剤、代謝拮抗剤、抗癌性抗生物質、植物由来アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン療法剤、ホルモン拮抗剤、アロマターゼ阻害剤、P糖蛋白阻害剤、白金錯体誘導体、その他免疫療法剤またはその他の抗癌剤が挙げられる。さらに、患者のQOL回復のための癌治療補助剤である白血球(好中球)減少症治療薬、血小板減少症治療薬、制吐剤、癌性疼痛治療薬と併用あるいは合剤化ができる。
【0054】
本発明の癌治療組成物は、その他の免疫賦活物質と併用あるいは合剤化することができる。そのような免疫賦活物質としては、例えば、各種サイトカインや腫瘍抗原などが挙げられる。免疫反応を刺激するサイトカインとしては、例えば、GM−CSF、M−CSF、G−CSF、インターフェロン−α、β、γ、IL−1、IL−2、IL−3、IL−12などが挙げられる。また、B7リガンド誘導体、抗CD3抗体および抗CD28抗体、抗CTLA−4抗体も免疫反応を高めることができる。
【0055】
癌抗原の投与も、癌細胞に対するTリンパ球細胞の特異的免疫反応を高めることができ、本発明の癌治療組成物との併用によって、付加的あるいは相乗的な増強を与えることができる。癌抗原は、遺伝子が明らかなものについては精製タンパク質として、また不明なものについては、癌細胞自体の溶解物として調製することができる。
【0056】
そのような癌抗原として、例えば、悪性黒色腫のMAGE−1、MAGE−3由来のHLA−A1およびHLA−A2拘束ペプチドやMART−1、gp100が挙げられる。また、乳癌や卵巣癌のHER2/neuペプチドや腺癌のMUC−1ペプチド、さらに、転移性癌のNY−ESO−1も挙げることができる。
【0057】
ウイルスは、感染宿主の免疫防御から逃れるための1つの方法として、Tリンパ球細胞の共役抑制因子を利用していると考えられている(Journal Experimental Medicine,2000年,第191巻,第11号,p.1987〜1997)。ウイルス感染は、このようなウイルスのエスケープ機能に一部起因しており、本発明の組成物の投与によってTリンパ球細胞のウイルスに対する免疫反応を高めることができると考えられる。
【0058】
本発明の感染症治療組成物の投与は、例えば、ヒト肝炎ウイルス(B型肝炎、C型肝炎、A型肝炎またはE型肝炎)、ヒトレトロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV1、HIV2)、ヒトT細胞白血病ウイルスまたはヒトTリンパ向性ウイルス(HTLV1、HTLV2)の感染治療に有効である。また、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6を含むヒトヘルペスウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、日本脳炎ウイルス、おたふくウイルス、インフルエンザウイルスまたは風邪ウイルスとして挙げられるアデノウイルス、エンテロウイルス若しくはライノウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)を発症するウイルス、エボラウイルス、または西ナイルウイルスの感染治療にも有効であると考えられる。
【0059】
その他の病原体として、例えば、病原性原生動物(例えば、トリパノソーマ、マラリアおよびトキソプラズマ)、細菌(例えば、マイコバクテリウム、サルモネラおよびリステリア)または真菌(例えば、カンジダ)による感染に対しても有効であると考えられる。
【0060】
本発明の感染症治療組成物は、既存の抗HIV剤、抗ウイルス剤、抗生物質製剤、抗菌剤、内臓真菌症治療薬と併用あるいは合剤化することができる。
【0061】
抗HIV剤として、例えば、逆転写酵素阻害剤(例えば、AZT,ddI,3TC,d4T)、プロテアーゼ阻害剤(例えば、メシル酸サキナビル、リトナビル、メシル酸ネルフィナビル、アンプレナビル、メシル酸デラビルジン、サキナビル、ロピナビル/リトナビル)、またはCCR5受容体拮抗剤が挙げられる。抗ウイルス剤としては、例えば、抗ヘルペスウイルス剤、抗インフルエンザウイルス剤、インターフェロン−αおよびβ、または各種免疫グロブリンが挙げられる。
【0062】
本発明の感染症治療組成物は、ウイルスもしくは病原体のワクチンと併用あるいは共に製剤化することができる。そのようなワクチンとしては、例えば、ポリオワクチン、麻疹ワクチン、日本脳炎ワクチン、BCGワクチン、3種混合ワクチン、おたふくワクチン、水痘ワクチン、インフルエンザワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、またはコレラワクチンが挙げられる。
【0063】
本発明の組成物は、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。
【0064】
投与量は、本発明に用いる薬物により異なると同時に、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、経口投与の場合は、通常、成人一人あたり、1回につき、1μgから100mgの範囲で、1日1回から数回投与される。非経口投与の場合は、成人一人あたり、1回につき、0.1ngから10mgの範囲で、1日1回から数回投与され、その非経口投与形態は、好ましくは、静脈内投与であり、1日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。
【0065】
もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
【0066】
本発明の組成物と他の薬剤の併用剤を投与する際には、経口投与のための内服用固形剤、内服用液剤および、非経口投与のための注射剤、外用剤、坐剤、吸入剤、経鼻剤等として用いられる。
【0067】
経口投与のための内服用固形剤には、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。カプセル剤には、ハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。また錠剤には舌下錠、口腔内貼付錠、口腔内速崩壊錠などが含まれる。
【0068】
このような内服用固形剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質はそのままか、または賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。さらにゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。
【0069】
舌下錠は公知の方法に準じて製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質に賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、コロイダルシリカ、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(デンプン、L−ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、膨潤剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カーボポール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、グアーガム等)、膨潤補助剤(グルコース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルトース、トレハロース、リン酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、グリシン、グルタミン酸、アルギニン等)安定剤、溶解補助剤(ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、香味料(オレンジ、ストロベリー、ミント、レモン、バニラ等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。また、必要に応じて常用される防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を加えることもできる。口腔内貼付錠は公知の方法に準じて製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質に賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、コロイダルシリカ、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(デンプン、L−ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、付着剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カーボポール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、グアーガム等)、付着補助剤(グルコース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルトース、トレハロース、リン酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、グリシン、グルタミン酸、アルギニン等)安定剤、溶解補助剤(ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、香味料(オレンジ、ストロベリー、ミント、レモン、バニラ等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。また、必要に応じて常用される防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を加えることもできる。
【0070】
口腔内速崩壊錠は公知の方法に準じて製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質をそのまま、あるいは原末もしくは造粒原末粒子に適当なコーティング剤(エチルセルロース、ヒドキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリル酸メタクリル酸コポリマー等)、可塑剤(ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル等)を用いて被覆を施した活性物質に賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、コロイダルシリカ、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(デンプン、L−ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、分散補助剤(グルコース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルトース、トレハロース、リン酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、グリシン、グルタミン酸、アルギニン等)安定剤、溶解補助剤(ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、香味料(オレンジ、ストロベリー、ミント、レモン、バニラ等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。また、必要に応じて常用される防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を加えることもできる。
【0071】
経口投与のための内服用液剤は、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含む。このような液剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質が、一般的に用いられる希釈剤(精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0072】
非経口投与のための外用剤の剤形には、例えば、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、貼付剤、リニメント剤、噴霧剤、吸入剤、スプレー剤、エアゾル剤、点眼剤、および点鼻剤等が含まれる。これらはひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、公知の方法または通常使用されている処方により製造される。
【0073】
軟膏剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に研和、または溶融させて調製される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0074】
ゲル剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させて調製される。ゲル基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、低級アルコール(エタノール、イソプロピルアルコール等)、ゲル化剤(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等)、中和剤(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等)、界面活性剤(モノステアリン酸ポリエチレングリコール等)、ガム類、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0075】
クリーム剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融または乳化させて調製される。クリーム基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸エステル、低級アルコール、炭化水素類、多価アルコール(プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等)、高級アルコール(2−ヘキシルデカノール、セタノール等)、乳化剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸エステル類等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0076】
湿布剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、練合物とし支持体上に展延塗布して製造される。湿布基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、増粘剤(ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース等)、湿潤剤(尿素、グリセリン、プロピレングリコール等)、充填剤(カオリン、酸化亜鉛、タルク、カルシウム、マグネシウム等)、水、溶解補助剤、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0077】
貼付剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、支持体上に展延塗布して製造される。貼付剤用基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高分子基剤、油脂、高級脂肪酸、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0078】
リニメント剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物を水、アルコール(エタノール、ポリエチレングリコール等)、高級脂肪酸、グリセリン、セッケン、乳化剤、懸濁化剤等から選ばれるもの単独または2種以上に溶解、懸濁または乳化させて調製される。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0079】
噴霧剤、吸入剤、およびスプレー剤は、一般的に用いられる希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。
【0080】
非経口投与のための注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0081】
非経口投与のための吸入剤としては、エアロゾル剤、吸入用粉末剤又は吸入用液剤が含まれ、当該吸入用液剤は用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁させて使用する形態であってもよい。
【0082】
これらの吸入剤は公知の方法に準じて製造される。
【0083】
例えば、吸入用液剤の場合には、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、着色剤、緩衝化剤(リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、等張化剤(塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、増粘剤(カリボキシビニルポリマー等)、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。
【0084】
吸入用粉末剤の場合には、滑沢剤(ステアリン酸およびその塩等)、結合剤(デンプン、デキストリン等)、賦形剤(乳糖、セルロース等)、着色剤、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、吸収促進剤などを必要に応じて適宜選択して調製される。
【0085】
吸入用液剤を投与する際には通常噴霧器(アトマイザー、ネブライザー)が使用され、吸入用粉末剤を投与する際には通常粉末薬剤用吸入投与器が使用される。
【0086】
非経口投与のためその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される直腸内投与のための坐剤および腟内投与のためのペッサリー等が含まれる。
【0087】
スプレー剤は、一般的に用いられる希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。スプレー剤の製造方法は、例えば、米国特許第2,868,691号明細書および米国特許第3,095,355号明細書に詳しく記載されている。
【実施例】
【0088】
以下に実施例を挙げて本発明を、より具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
【0089】
実施例1
マウスPD−L1発現ベクターの作製は、マウスPD-L1cDNA(Journal of Experimental Medicine,2000年,第19巻,第7号,p.1027〜1034)を制限酵素EcoRIで消化して、発現ベクターpApuroXS(The EMBO Journal,1994年,第13巻,第6号,p.1341〜1349)に挿入し、連結させることによって行った。作製した発現ベクターpApuroXS-PD-L1のP815細胞への導入は、エレクトロポーレーション法(360V、500μF)で行った。P815細胞の培養は、FCS(10%)、2−メルカプトエタノール(10-5M)、各種抗生物質含RPMI-1640培地で培養できるが、さらに、抗生物質ピューロマイシン(Puromycin;3μg/ml)を含んだ培地の培養に対して耐性の同細胞株を継代培養することによって、マウスPD−L1を安定的に発現する形質転換P815細胞株を取得した。PD−L1の発現は、フローサイトメトリー解析にて確認した。図1(A)にH−2Ld特異的2C CTLクローンのPD−1発現(i)と、P815(肥満細胞種由来細胞株)のPD−L1発現安定形質転換株でのPD−L1発現(ii)を示すフローサイトメトリーを示す。
同様の方法で、PD−L1を安定的に発現する形質転換B16細胞株(B16/PD−L1)を取得した(図1(A)(iii)〜(v)参照)。ここでは発現ベクターとして同様の方法で作製したpEFBOSneo-PD-L1(Nucleic Acid Research,1990年,第18巻,第17号,p.5322)を用い、細胞株の選択培養にはG418(0.5mg/ml)を使用した。
全長マウスPD-L1cDNAの3'末端側に6個のヒスチジンがタンデムに並んだペプチドタグ(His-Tag)を連結させたタンパク質をコードするcDNAを制限酵素EcoRIおよびNotIで消化して、発現ベクターpVL1393(商品名:Clontechより購入)に挿入させた。続いて、この発現ベクターをSF9昆虫細胞(Invitrogenより購入)に導入して、封入体を回収した。この封入体ウイルスをHiFive昆虫細胞(Invitrogenより購入)に2日間、27℃下で培養することによって感染させた。溶解緩衝液(Tris-HCl(50mM,pH7,含1%TritonX-100)、EDTA(10mM)、NaCl(150mM)、各種プロテアーゼ阻害剤)で溶解させた細胞溶解液を、Ni−セファロースカラムクロマトグラフィーで処理することによって、抗原となる精製PD−L1タンパク質を取得した。
透析した同PD−L1タンパク質を完全フロイントアジュバンドと共に8週令メスWhisterラット(SLC Japanより購入)に免疫して、数日後、末梢リンパ節から回収した2×108細胞を、PEG1500(Amershamより購入)を用いて同数のSP2/0細胞と細胞融合させた。さらに、RPMI1640培地(HAT(Sigmaより購入)、Origen(10%,Igenより購入)、FCS(10%)、2−メルカプトエタノール(10-5M)、各種抗生物質)で培養することによって選択し、産生抗体の存在をフローサイトメトリー解析にて確認した。これによって樹立されたハイブリドーマ(国際受託番号:FERM BP-8396で認識されるハイブリドーマ)をBalb/C nu/nuマウスに移入して、後に腹水からの回収液をプロテインGセファロースカラムクロマトグラフィーで精製することによって、PD−L1に対するモノクローナル抗体(1−111)を取得した。フローサイトメトリー等で使用される抗体は、Sulfo-NHS-LC-biotin(商品名:Pierceより購入)を用いてビオチン化したものを用いた。
また、同様の方法に従い、抗ヒトPD−1抗体(国際受託番号:FERM BP-8392で認識されるハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体)を作製した。
細胞傷害性アッセイは、51Cr(クロム)遊離アッセイによって行った。
2C細胞(Journal of Immunology,1996年,第157巻,第2号,p.670〜678)は、2CトランスジェニックB6マウス由来の(H−2L)dアロ反応性の細胞傷害性T細胞である。図1(B)に、2C細胞(E:エフェクター)を51Crラベル化したP815細胞(T:ターゲット)と共に(○)または3つのPD−L1発現P815細胞株(P815/PD−L1)(□、◇、△)と共にあるいはさらに10mg/mlラットanti-PD-L1F(ab')2IgG存在下(▲)を、さまざまなE/T比で混合して、4時間で遊離される51Crを測定した結果を示す。
抗PD−L1抗体(anti-PD-L1F(ab')2)は、細胞傷害性Tリンパ球細胞の低下した細胞傷害活性を回復させた。これらの結果から、PD−L1の機能を阻害することによるPD−1およびPD−L1シグナルの阻害は、癌細胞に対する細胞傷害活性を増強させることができると考えられる。
【0090】
実施例2
1×106細胞のP815細胞(n=6)またはP815/PD−L1細胞(n=6)を同系DBA/2マウスの皮下にそれぞれ移入し、腫瘍増殖とマウスの生存率を評価した。その結果を図2(A)に示す。図中、○はP815細胞株移植群、□、△はPD−L1発現P815細胞株移植群である。さらにP815/PD−L1細胞を移入した群の組織学的解析を行った。移入20日後のマウスの腹壁ならびに腹膜腔の組織切片を、10%ホルムアルデヒドで固定、パラフィンで砲架して、ヘマトキシリン、エオジンで染色して得られた染色像を図2(B)に示す。図中、aは腹壁および腹膜への腫瘍細胞の浸潤を示す40倍像、bは同じく400倍像であり、cは脾臓への転移、dは肝臓への転移を示す。
P815細胞を移植した群では、P815細胞の増殖は抑えられており、6〜7週目では30%が生存したのに対して、PD−L1を発現するP815細胞(P815/PD−L1)を移植した群では、癌細胞の増殖は著しく、2〜4週目までに全例が死亡した(図2(A))。P815/PD−L1は、腹膜腔、さらに、腹腔へ浸潤しており、また、肝および脾臓への転移が認められた(図2(B)a〜d参照)。
【0091】
実施例3
P815細胞を移入し免疫したマウスから細胞傷害性T細胞CTLを調整し、2×106個数のCTL細胞と、5×106個数のP815細胞またはP815/PD−L1細胞のみ、あるいはanti-PD-L1F(ab')2IgG(10mg/ml)存在下でP815/PD−L1細胞をそれぞれ混合培養し、24時間後の培養上清中のIFN−γをELISAキット(Bioscienceから購入)で測定した。その結果を図3(A)に示す。
また、図3(B)に、3×106個数のP815/PD−L1細胞を皮下移入した同系DBA/2マウス(n=10)に、ラットIgG(□)あるいはanti-PD-L1F(ab')2IgG(0.1mg/一匹)(○)を、細胞移入後1、3、5、7日後にそれぞれ腹腔内投与し、腫瘍増殖とマウスの生存率を評価した結果を示す。
抗PD−L1抗体は、P815/PD−L1により抑制された細胞傷害性Tリンパ球細胞からのIFN−γ産生を回復させた(図3(A))。抗PD−L1抗体の投与は、癌細胞増殖を抑制し、明確な生存効果を示した(図3(B))。この結果は、抗PD−L1抗体の投与が癌治療に有効であることを示している。
【0092】
実施例4
1×106個数のB16メラノーマ(n=6)またはB16/PD−L1細胞(n=6)をB6マウスにはそれぞれ皮下移入し、同数のB16/PD−L1細胞をPD−1トランスジェニックB6マウス(n=5)およびPD−1遺伝子ホモ欠損B6マウス(PD−1-/-(n=4))(Science,2001年,291巻,5502号,p.319〜332)に移入し、以後25日までそれぞれの腫瘍増殖を測定した。その結果を図4に示す。
【0093】
実施例5
2.5×108個数のJ558Lミエローマ細胞を皮下移入した同系Balb/Cマウス(n=9)に、ラットIgGあるいはanti-PD-L1F(ab')2IgG(0.1mg/一匹)を細胞移入後3、5、7日後にそれぞれ腹腔内投与し、腫瘍増殖を評価した(図5(B))。また、同様にJ558Lミエローマ細胞を皮下移入したPD−1ホモ欠損マウスとBalb/C(n=4)での腫瘍増殖を比較した(図5(C))。
抗PD−L1抗体の投与は、PD−L1を発現しているJ558癌細胞(図5(A)に各種ミエローマ細胞株でのPD−L1発現を示すフローサイトメトリーを示す。)の増殖を抑制した(図5(B))。また、J558細胞を移植したPD−1欠損マウスでは移植癌細胞の増殖は完全に阻害された(図5(C))。これらの結果は、PD−L1もしくはPD−1の阻害が癌治療に有効であることを示している。
【0094】
実施例6
血管内皮細胞(以下、ECsと略す。)をマレリーバーグの方法(Journal Immunology Methods,2000年,第244巻,第1-2号,p.205〜215)により、マウス心臓から取得した。具体的には、心臓組織をコラゲナーゼで消化した後、マウスIgとともに前培養、さらに、FITC修飾した抗CD31抗体、同修飾抗CD105抗体、同修飾抗isolectinB4抗体、および、抗FITCビーズを添加して培養した。この血管内皮細胞をMagnetic-activated cell-sorting separation columns(商品名:Miltenyi Biotecより購入)を用いて、ポジティブ選択によって精製した。
取得した血管内皮細胞でのPD−L1、PD−L2の発現を、フローサイトメトリーで確認した。同細胞の標識には、抗PD−L1抗体(抗体名:1−111)、抗PD−L2抗体(抗体名:#122)および蛍光標識した2次抗体を用いて行った(図6(A))。解析はCellQuestソフトウェア(Dickinsonより購入)を使用したFacscalibur(機器名:Becton Dickinsonより購入)で、1万回イベントで解析した。PD−L1あるいはPD−L2の発現は、開口曲線で示され、コントロールIgは充填曲線で示される。
マウス各組織でのPD−L1発現の確認を組織染色によって行った。各組織サンプリング1時間前に100μgビオチン標識化抗PD−L1抗体(1−111)を溶解した100μlPBSをマウスに静脈投与した。続いて、5μm凍結切片を4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定して、Streptavidin-FITCで染色した。さらに、各切片をPhalloidinで対比染色した(図6(B)、(a)眼球、(b)顎下腺、(c)心臓、(d)肺、(e)肝臓、(f)腎臓でのPD−L1の発現を示す。図中、Chは脈絡膜、CVは中心静脈、Glは糸球体、Reは網膜を示す。各矢印は、血管内皮細胞を示す。各染色像は40倍拡大像である。)。PD−L1は、心臓、肺、腎臓、胃、小腸、顎下腺、眼球、肝臓の血管内皮で認められた。肝臓での発現は、肝臓洞様毛細血管に局在していた。
【0095】
実施例7
肝臓非実質細胞(以下、LNPCsと略記する。)でのPD−L1発現を組織染色(図7(A))ならびにフローサイトメトリー(図7(B))で確認した。組織染色は、3%PFAで固定した5μm肝臓凍結切片をラット血清で前処理し、ビオチン標識化抗PD−L1抗体(1−111)あるいはビオチン標識化抗ICAM−1抗体(商品名:BD Pharmingenより購入)にて1時間、室温下で抗体反応を行ない、ビオチン抗体をtyramide signal amplification(TSA)fluorescence system(機器名:PerkinElmer Life Sciencesより購入)にて視覚化した(図7(A):ICAM−1の発現、同図(B):PD−L1の発現、CV:中心静脈を示す。各染色像は40倍拡大像である。)。
LNPCsは、pronaseE法(Experimental Cell Research,1976年,第99巻,p.444〜449)によってマウス肝臓より単離した。具体的には、LNPCsは、肝臓をpronaseE溶液(Merck)にて還流、培養し、密度勾配遠心法にて分離した。その細胞懸濁液中のクップファー細胞(Kupffer Cells)(CD54+、CD11bhigh)の相対的分布は20〜25%であり、肝臓類洞周囲腔内皮細胞(以下、LSECsと略記する。)(CD54+、CD11bhigh)は、75〜80%である。
クップファー細胞とLSECsを、FITC標識化抗CD11b抗体およびICAM−1、PD−L1、B7−1、B7−2に対するそれぞれのビオチン化モノクローナル抗体、それに続くPE標識化Streptavidinにて、それぞれ二重染色した。クップファー細胞とLSECsは、それぞれCD11bhighとCD11blow細胞としてゲートされる(図8)。
PD−L1は、クップファー細胞では、ICAM−1、B7−1、B7−2を共発現しているが、LSECsではその発現は弱いものであった(図8)。
【0096】
実施例8
PD−1遺伝子ホモ欠損マウス(PD−1-/-)あるいは野生型C57BL/6マウス(wt)の脾臓ならびにリンパ組織から、T-cell enrichment column(商品名:Genzymeより購入)を用いたネガティブ選別によって、ナイーブT細胞(精製度90%以上)を精製した。同細胞を10μg/ml抗CD3モノクローナル抗体(2C11)とともに48時間培養して活性化させた。
上記方法によって活性化したナイーブT細胞を、FITC標識化抗CD4抗体あるいはAPC標識化抗CD8抗体ならびにPE標識化抗CD25抗体、PE標識化抗CD44抗体、PE標識化抗CD69抗体、PE標識化抗CTLA−4抗体、ビオチン標識化抗B7−1(CD80)抗体、ビオチン標識化抗B7−2(CD86)抗体、抗PD−1抗体(抗体名:J43、国際受託番号FERM BP-8118で認識されるハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体)、抗PD−L1抗体(1−111)で二重染色して、フローサイトメトリーにてそれぞれの分子の発現を解析した(図9、図10)。
なお、国際受託番号FERM BP-8118で識別されるハイブリドーマは、2001年5月30日付で日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305-8566)、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM P-18356で寄託され、2002年7月16日付で国際寄託に移管されている。
【0097】
実施例9
PD−1遺伝子ホモ欠損マウス(PD−1-/-)あるいは野生型マウス(wt)のナイーブT細胞の活性化は、上記実施例8に記載の方法で行った。活性化後の同細胞の増殖をBrdU取りこみ法によって測定した(図11(A))。BrdUを48時間の最後の6時間に添加して細胞を標識し、これをProliferation ELISA kit(商品名:Rocheより購入)を用いる測定によって細胞増殖を決定した。また、この時のIFN−γ産生量をELISA Kit(商品名:Genzymeより購入)にて測定した(図12(A))。
PD−1遺伝子ホモ欠損マウス(PD−1-/-)あるいは野生型マウス(wt)由来のT細胞を上記実施例8で記載の方法であらかじめ活性化させた。続いて、既に活性化しているT細胞に対して、野生型マウスからのマイトマイシンC処理LNPCsの存在あるいは非存在下で、さらに、30μg/ml抗PD−L1抗体(1−111)(コントロールとしたラットIgG)、20μg/mlCTLA4-Ig(Genzyme)(コントロールとしたヒトIgG)の存在あるいは非存在下でそれぞれ60時間培養して、最後の12時間の同細胞の増殖をBrdU取りこみ法によって測定した(図11(B))。また、48時間時点でのIFN−γ産生量も測定した(図12(B))。
ナイーブT細胞の活性化時におけるIFN−γ産生量は、PD−1-/-と野生型マウスの違いによる有意な差異は認められなかった。一方、既に活性化されたT細胞においては、野生型マウス由来のT細胞のIFN−γ産生量は、PD−1-/-由来のものに比べ有意に低かった(図12)。このことから、既に活性化しているT細胞に対するPD−1の抑制作用の効果は、ナイーブT細胞の活性化に対する効果よりも高いことが示唆された。
野生型マウス由来の活性化したT細胞は、LNPCsとの共培養では、T細胞の細胞増殖およびIFN−γ産生量に有意な変化は認められないが、PD−1-/-由来の活性化したT細胞は、LNPCsとの共培養によって、その細胞増殖に有意な増加が認められた(図11(B)、図12(B))。また、野生型マウス由来の活性化したT細胞とLNPCsとの共培養への抗PD−L1抗体の添加によって、T細胞の細胞増殖の増加が認められた(図11(B))。これらの結果は、LNPCsのPD−1あるいはPD−L1が、活性化T細胞の抑制に関与しており、PD−1の欠如あるいはPD−1とPD−L1間の相互作用の阻害が、T細胞を活性化することを示すものである。
PD−1遺伝子ホモ欠損マウス(PD−1-/-)あるいは野生型マウス(wt)の活性化T細胞を、5μM CFSE(5-(6)-carboxy-fluorescein diacetate succinimidyl diester)(商品名:Molecular probesより購入)で標識して、LNPCsとともに48時間共培養した。この時の細胞分裂を、FACSを用いたCFSE活性測定によって決定した(図12(C))。
活性化T細胞の細胞増殖抑制は、細胞分裂の停止に起因しており、PD−1シグナルがT細胞の細胞分裂を抑制することが示唆された(図12(C))。
【0098】
実施例10
PD−1遺伝子ホモ欠損マウス(PD−1-/-)あるいは野生型マウス(wt)(3匹/群)に109-1010PFU(plaque-forming units)Ad-lacZを静脈内投与して、マウスをアデノウイルスに感染させた。ここで使用したAd-lacZは、E1およびE3領域に欠損を有し、さらに、lacZ遺伝子を持った5型アデノウイルスであり、293細胞で増殖させた後、塩化セシウム密度勾配遠心分離(Nucleic Acid Research,1995年,第234巻,第19号,p.3816〜3821)の記載によって精製したものである。
感染後0日日あるいは7日目に、同マウスに対して屠殺1時間前に0.5mg BrdU(商品名:Sigmaより購入)を静脈内投与して、採取した脾臓細胞および肝臓内リンパ球を抗BrdU抗体および抗CD19抗体あるいは抗CD3抗体で二重標識した(図13)。
さらに、感染後7日目の同細胞に対しては、抗BrdU抗体、抗CD19抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体で二重標識した(図14(B)、それぞれの棒グラフはBrdU陽性細胞の割合を示す。)。
アデノウイルス感染したPD−1-/-マウスの肝臓では、同様に感染した野生型マウスの肝臓に比較して、増殖性(BrdU陽性)の各リンパ球(CD19陽性、CD3陽性、CD4陽性、CD8陽性)の割合が増加していた。一方、このような現象が脾臓では認められなかったことから、PD−1は、炎症を起した組織でのT細胞の増殖を阻害することが示唆された(図14(B))。
【0099】
実施例11
PD−1遺伝子ホモ欠損マウス(PD−1-/-)あるいは野生型マウス(wt)(3匹/群)に109-1010PFU Ad-lacZを静脈内投与して、マウスをアデノウイルスに感染させ、さらに、感染後0日目あるいは7日目の屠殺1時間前に0.5mg BrdU(商品名:Sigmaより購入)を静脈内投与して、採取した肝臓切片を抗BrdU抗体で標識した(図15(a)〜(d))、20倍拡大像)。感染後7日目のPD−1遺伝子ホモ欠損マウス(PD−1-/-)の肝臓切片に対しては、抗BrdU抗体および抗CD4抗体あるいは抗CD8抗体で二重標識した(図15(e)、(f)、40倍拡大像)。
感染後30日目の野生型マウスの肝臓では、洞様毛細血管および非実質領域への中程度の局所的な細胞浸潤が認められたが、PD−1-/-マウスでは、肝炎を示す症状は認められなかった(図16(h)、(i)および(j)、(n))。
感染後7日目あるいは30日目のPD−1遺伝子ホモ欠損マウス(PD−1-/-)あるいは野生型マウス(wt)の肝臓切片に対して、ヘマトキシリン&エオジン染色(図16(g)〜(j),20倍拡大像、(k)〜(n),40倍拡大像)およびX−Gal染色を行った(図16(o)〜(r),40倍拡大像)。
感染後7日目および30日目の野生型マウスの肝臓では、X−Gal染色像が示すアデノウイルスの感染が認められたが、PD−1-/-マウスでは、その感染は、30日目にはほぼ排除されていた(図16(o)、(p)および(q)、(r))。これらの結果から、PD−1シグナルが、ウイルス感染による炎症組織におけるエフェクターT細胞の細胞増殖を誘導することによるウイルスの排除に関与することが示された。
【0100】
実施例12
マウスPD−L1を強制発現させたP−815/PD−L1細胞は、5μg/mL puromycin(Sigmaより購入)を含む通常培地(以下、選択培地と略す。)を用いて、培養フラスコに播種し、37℃、5%CO2/95%airの条件で50%〜90%コンフルエントになるまで培養した。マウスcytotoxic T lymphocyte 2C細胞は、MMC(Mitomycin C)処理したP−815細胞およびConA刺激ラット脾細胞培養上清とともに通常培地中で数日継代培養した。回収したP−815/PD−L1細胞にDELFIA EuTDA Cytotoxicity Reagents(PerkinElmerより購入)のBATDA Reagentを3μL加え、15分間培養した。さらに、PBSで洗浄した。2C細胞は、P−815細胞を加えて継代した5〜8日目の細胞を用いた。
被検物質である抗マウスPD−1抗体(図17中、anti-mPD-1Ab(J43))、抗マウスPD−L1抗体(同図中、anti-mPD-L1Ab(1−111))、マウスPD−1Fc(同図中、mPD−1Fc)、ヒトPD−1Fc(同図中、hPD−1Fc)、マウスIgG2aκ(同図中、ControlIg)またはPBSを96well plateに20μL(10ng/mL)ずつ分注し、P−815/PD−L1細胞または通常培地を50μLずつ加えた。さらに2C細胞、通常培地または1%TritonX100を含む通常培地を50μLずつ加えた。通常培地を添加したウェルの上清50μLをバックグラウンド用として回収し、その他の上清を回収するまで、37℃で保存した。残りの細胞は4時間培養した。続いて、同96well plateを遠心し、上清を回収した。回収した上清にCytotoxicity Reagents(PerkinElmerより購入)のDELFIA Europium Solutionを200μL添加して15分間振とうした。振とう後、ARVOsxマルチラベルカウンター(WALLAC)にて時間分解蛍光測定を行った。なお、1%TritonX100を含む通常培地を添加したウェルの上清を高コントロール、通常培地を添加したウェルの上清を低コントロールとした。
評価群の組成は、被検物質、P−815/PD−L1細胞及び2C細胞、高コントロール群の組成は、PBS、P−815/PD−L1細胞および1%TritonX100を含む通常培地、低コントロール群の組成は、PBS、P−815/PD−L1細胞および通常培地、2C細胞コントロール群の組成は、PBS、通常培地および2C細胞、バックグラウンド群の組成は、PBS、P−815/PD−L1細胞及び通常培地である。CTL活性(%)は、以下の式にて算出した。すべての値は、バックグランドで得た平均値を引いたものを使用した。
【数1】

抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体およびPD−1Fcは、CTL活性を有意に増強した(図17(a)〜(d)、図中、E:Tratioは、2C細胞とPD−L1/P815細胞の混合比を示す。)。
【0101】
実施例13
B16メラノーマ細胞を脾臓に移入したC57BL/6マウスに、抗マウスPD−1モノクローナル抗体を2日おきに腹腔内に投与して、移入後18日目の肝臓重量を測定することによって、癌転移に対する抗PD−1抗体の抑制効果を評価した。
コントロールIgGのみを投与したコントロール群に比べ、抗PD−1抗体投与群では、肝臓重量増加が有意に抑制された(肝臓重量/癌細胞非移入群:1.3g、コントロール群:6.8gから抗PD−1抗体投与群:3.5gへ減少)。この重量増加の抑制は、B16メラノーマ細胞の転移を抑制することを示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD−1抗体を有効成分として含む感染症治療剤。
【請求項2】
感染症が、ウイルス、病原性原生動物、細菌および真菌から選択される一以上の病原体の感染による請求項1記載の感染症治療剤。
【請求項3】
ウイルスが、ヒト肝炎ウイルス、ヒトレトロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒトTリンパ向性ウイルス、単純ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、日本脳炎ウイルス、おたふくウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、ライノウイルス、重症急性呼吸器症候群を発症するウイルス、エボラウイルスおよび西ナイルウイルスから選択される一以上のウイルスである請求項2記載の感染症治療剤。
【請求項4】
ヒト肝炎ウイルスが、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルスまたはE型肝炎ウイルスである請求項3記載の感染症治療剤。
【請求項5】
さらに、抗HIV剤、抗ウイルス剤、抗生物質製剤、抗菌剤、内臓真菌症治療薬またはワクチンと組み合わせることを特徴とする請求項1記載の感染症治療剤。
【請求項6】
PD−1抗体が、ヒト化抗ヒトPD−1モノクローナル抗体または完全ヒト型抗ヒトPD−1モノクローナル抗体である請求項1記載の感染症治療剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−236861(P2012−236861A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−197861(P2012−197861)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【分割の表示】特願2009−203514(P2009−203514)の分割
【原出願日】平成15年7月2日(2003.7.2)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【出願人】(396023812)
【Fターム(参考)】