説明

感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、これを用いたレジスト膜、及び、パターン形成方法

【課題】孤立パターンの形成においても、高感度、高解像性、及び、良好なドライエッチング耐性を同時に満足したパターンを形成できる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、これを用いたレジスト膜、及びパターン形成方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(P)を含有することを特徴とする感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、これを用いたレジスト膜、及び、パターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、これを用いたレジスト膜、及びパターン形成方法に関する。特に本発明は、超LSI及び高容量マイクロチップの製造プロセス、ナノインプリント用モールド作成プロセス及び高密度情報記録媒体の製造プロセス等に適用可能な超マイクロリソグラフィプロセス、及び、その他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いられる感活性光線性又は感放射線性組成物、これを用いたレジスト膜、並びにパターン形成方法に関する。更に詳しくは、本発明は、電子線又はEUV光を用いる半導体素子の微細加工に好適に用いることができる感活性光線性又は感放射線性組成物、これを用いたレジスト膜、及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レジスト組成物を用いた微細加工では、集積回路の高集積化に伴って、超微細パターンの形成が要求されている。それゆえ、露光波長にも短波長化の傾向が見られ、例えば、エキシマレーザー光の代わりに電子線、X線又はEUV光を用いたリソグラフィー技術の開発が進んでいる。
【0003】
このような超微細パターンを形成するためには、レジストを薄膜化することが必要である。ところが、レジストを薄膜化すると、そのドライエッチング耐性が低下する場合がある。
【0004】
電子線(EB)リソグラフィーでは、EBの加速電圧を増大させることによって、レジスト膜中での電子散乱、即ち前方散乱の影響が小さくなることが分かっている。それゆえ、近年では、EBの加速電圧は増大傾向にある。ところが、EBの加速電圧を増大させると、レジスト膜の電子エネルギー捕捉率が低下し、感度が低下する場合がある。
【0005】
これらの問題を解決する方法の1つとして、ナフタレン等の多環芳香族骨格を有する樹脂の使用が検討されている(例えば、特許文献1〜5参照)。多環芳香族骨格を有する樹脂を用いることにより、例えば、ドライエッチング耐性及び感度を向上させることが可能となる。
【0006】
しかしながら、EBの加速電圧を増大させると、前方散乱の影響が小さくなる代わりに、レジスト基板において反射した電子の散乱、即ち後方散乱の影響が増大する。そして露光面積の大きい孤立パターンを形成する場合には、この後方散乱の影響が特に大きい。それゆえ、例えばEBの加速電圧を増大させると、孤立パターンの解像性が低下する可能性がある。
【0007】
特に、半導体露光に使用されるフォトマスクブランクスへのパターニングの場合、レジスト下層には、クロム、モリブデン、タンタル等の重原子を含む遮光膜が存在し、シリコンウェハー上にレジストを塗布する場合に比べ、レジスト下層からの反射に起因する後方散乱の影響がより顕著である。その為、フォトマスクブランクス上で孤立パターンを形成する場合には、特に後方散乱の影響を受けやすく、解像性が低下する可能性が大きい。
【0008】
孤立パターンの解像性を向上させる方法の1つとして、樹脂の溶解性を調整する基を含む樹脂の使用が検討されているが(例えば、特許文献6〜7参照)、孤立パターンの解像性、矩形性を充分に満足するには至っていない。
【0009】
近年では、エキシマレーザー光以外にも、電子線やX線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィーも開発が進んでいる。また、レジスト組成物による微細加工は、直接に集積回路の製造に用いられるだけでなく、近年ではいわゆるインプリント用モールド構造体の作製等にも適用されている(例えば、特許文献8、9、及び非特許文献1を参照)。そのため、特に、X線、軟X線、電子線を露光光源として使用して孤立パターンを形成する場合においても、高感度、高解像性、及び、良好なドライエッチング耐性を同時に満足させることが重要な課題となっており、これらの解決が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−95009号公報
【特許文献2】国際公開第2007−046453号公報
【特許文献3】特開2008−50568号公報
【特許文献4】特開2008−268871号公報
【特許文献5】特開2009−86354号公報
【特許文献6】特許第3843115号公報
【特許文献7】特開2005−99558号公報
【特許文献8】特開2004−158287号公報
【特許文献9】特開2008−162101号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ナノインプリントの基礎と技術開発・応用展開−ナノインプリントの基板技術と最新の技術展開―編集:平井義彦 フロンティア出版(2006年6月発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、孤立パターンの形成においても、高感度、高解像性、及び、良好なドライエッチング耐性を同時に満足したパターンを形成できる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、これを用いたレジスト膜、及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
〔1〕 下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(P)を含有することを特徴とする感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0014】
【化1】

【0015】
式中、
〜Rは、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。
は、アリーレン基を表す。
は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、−O−、−S−、又は、これらの2種以上の組み合わせからなる基を表す。
Xは、複数の芳香環を含む基を表し、前記複数の芳香環は、縮環して多環式構造を形成しているか又は単結合を介して互いに連結されている。
【0016】
〔2〕 前記樹脂(P)が、更に、下記一般式(2)で表される繰り返し単位と、下記一般式(3)で表される繰り返し単位及び下記一般式(4)で表される繰り返し単位の少なくとも一方とを有することを特徴とする上記〔1〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0017】
【化2】

【0018】
式中、
〜R及びR41〜R43は、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。
及びLは、各々独立に、アリーレン基を表す。
は単結合又は2価の連結基を表す。
及びYは酸の作用により脱離する基を表す。
【0019】
〔3〕 前記Xは、下記一般式(X1)〜(X6)のいずれかにより表される構造部位において、複数の芳香環を構成している原子に結合する任意の1個の水素原子又はR11を除してなる基であることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0020】
【化3】

【0021】
式中、
10は、1価の置換基を表し、複数存在する場合は、同じであっても異なっていてもよい。
11は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、前記Mに結合する結合手を表す。
は独立して0〜14の整数である。
はCH又はNを表し、2つのXは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
前記M及びR10は、前記複数の芳香環を構成している原子のいずれに結合していてもよい。
【0022】
〔4〕 前記樹脂(P)が、上記一般式(3)で表される繰り返し単位を含有するとともに、前記Yは、下記一般式(5)により表される基である上記〔2〕又は〔3〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0023】
【化4】

【0024】
式中、
12及びR13は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はこれらの2種以上の組み合わせを表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂環基、又は、ヘテロ原子を含んでいてもよい芳香環基。
12、R13、M及びQの少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
【0025】
〔5〕 前記樹脂(P)は、下記一般式(6)により表される繰り返し単位を更に有することを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0026】
【化5】

【0027】
式中、
14、R15及びR16は、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。
はアリーレン基を表す。
は単結合又は2価の連結基を表す。
は活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。
【0028】
〔6〕 前記Y及びYが脱離した後の樹脂(P)のCLogPの値が、2.6以上であることを特徴とする上記〔2〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0029】
〔7〕 前記樹脂(P)が、下記一般式(6)により表される繰り返し単位を更に有するとともに、
前記Y及びYが脱離してかつ、下記一般式(6)中のSが分解して側鎖に酸を発生させた後の樹脂(P)のCLogPの値が、2.6以上であることを特徴とする上記〔2〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0030】
【化6】

【0031】
式中、
14、R15及びR16は、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。
はアリーレン基を表す。
は単結合又は2価の連結基を表す。
は活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。
【0032】
〔8〕 前記樹脂(P)の分子量分布(Mw/Mn)が1.00〜1.30であることを特徴とする上記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0033】
〔9〕 電子線、X線又はEUV光により露光されることを特徴とする上記〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0034】
〔10〕 上記〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたレジスト膜。
【0035】
〔11〕 上記〔10〕に記載のレジスト膜を塗布した、レジスト塗布マスクブランクス。
【0036】
〔12〕 上記〔10〕に記載のレジスト膜を露光することと、前記露光された膜を現像することとを含んだパターン形成方法。
【0037】
〔13〕 上記〔11〕に記載のレジスト塗布マスクブランクスを露光することと、前記露光されたマスクブランクスを現像することとを含んだパターン形成方法。
【0038】
〔14〕 前記露光は、電子線、X線又はEUV光を用いて行われることを特徴とする上記〔12〕又は〔13〕に記載のパターン形成方法。
【0039】
また、本発明は、以下の形態も好ましい。
〔15〕 上記一般式(1)において、Mが、アルキレン基、−O−、又は、これらの組み合わせであることを特徴とする上記〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔16〕 上記一般式(1)において、Mの最小連結原子数が1〜15であることを特徴とする上記〔1〕〜〔9〕及び〔15〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔17〕 上記一般式(1)において、Mの最小連結原子数が1〜10であることを特徴とする上記〔1〕〜〔9〕及び〔15〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔18〕 上記一般式(1)において、Mの最小連結原子数が1〜5であることを特徴とする上記〔1〕〜〔9〕及び〔15〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔19〕 一般式(1)により表される繰り返し単位の樹脂(P)に占める含有量が、全繰り返し単位を基準として、1〜40モル%であることを特徴とする上記〔1〕〜〔9〕及び〔14〕〜〔18〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔20〕 一般式(1)により表される繰り返し単位の樹脂(P)に占める含有量が、全繰り返し単位を基準として、3〜30モル%であることを特徴とする上記〔1〕〜〔9〕及び〔14〕〜〔18〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔21〕 一般式(1)により表される繰り返し単位の樹脂(P)に占める含有量が、全繰り返し単位を基準として、5〜20モル%であることを特徴とする上記〔1〕〜〔9〕及び〔15〕〜〔18〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、孤立パターンの形成においても、高感度、高解像性、及び、良好なドライエッチング耐性を同時に満足したパターンを形成できる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、これを用いたレジスト膜、及びパターン形成方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、本明細書に於ける基(原子団)の表記において、置換又は無置換を記していない表記は、置換基を有していないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本発明において「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等を意味する。また、本発明において「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、EUV光等による露光のみならず、電子線及びイオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0042】
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、例えばポジ型の組成物であり、典型的にはポジ型のレジスト組成物である。以下、この組成物の構成を説明する。
【0043】
〔1〕樹脂(P)
本発明に係る組成物は、樹脂(P)を含んでいる。この樹脂(P)は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(1)とも言う)を含有する。
【0044】
【化7】

【0045】
式中、
〜Rは、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。
は、アリーレン基を表す。
は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、−O−、−S−、又は、これらの2種以上の組み合わせからなる基を表す。
Xは、複数の芳香環を含む基を表し、前記複数の芳香環は、縮環して多環式構造を形成しているか又は単結合を介して互いに連結されている。
【0046】
一般式(1)において、R〜Rの各々は、上述したように、水素原子又は1価の置換基である。1価の置換基としては、例えば、アルキル基;シクロアルキル基;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びケイ素原子等のヘテロ原子を含む置換基;並びにこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0047】
アルキル基の炭素数は、好ましくは20以下とし、更に好ましくは8以下とする。このアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基及びドデシル基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びt−ブチル基が特に好ましい。
【0048】
シクロアルキル基は、単環型であってもよく、多環型であってもよい。このシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは3〜8とする。
【0049】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。これらのうち、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子がより好ましく、臭素原子が特に好ましい。
【0050】
ヘテロ原子を含む置換基としては、例えば、水酸基、アルコキシ基、チオール基、チオエーテル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、アミノ基、アシルオキシ基及びアシルアミド基が挙げられる。
アルコキシ基、アシルオキシ基及びアシルアミド基の炭素数は、好ましくは20以下とし、更に好ましくは8以下とする。このアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブチロキシ基、t−ブトキシ基及びオクチロキシ基が挙げられる。中でも、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基及びt−ブトキシ基が特に好ましい。なお、チオエーテル基についても、酸素原子の代わりに硫黄原子を用いることを除いては、アルコキシ基と同様のものが挙げられる。アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ基が挙げられる。アシルアミド基としては、例えば、アセチルアミド基が挙げられる。
【0051】
アルキル基、シクロアルキル基及びヘテロ原子を含む基は、置換基を更に有していてもよい。
アルキル基が更に有し得る置換基としては、例えば、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。
シクロアルキル基及びヘテロ原子を含む基が更に有し得る置換基としては、アルキル基、及び、アルキル基が更に有し得る置換基の具体例として前述した各基が挙げられる。
なお、アルキル基、シクロアルキル基及びヘテロ原子を含む基が更に有し得る置換基の炭素数は、好ましくは8以下とする。
【0052】
は上述したように、アリーレン基を表す。このアリーレン基は、ヘテロ環を有していてもよい。また、このアリーレン基は、置換基を更に有していてもよい。
【0053】
アリーレン基の炭素数は、好ましくは4〜20とし、更に好ましくは6〜14とする。このアリーレン基としては、例えば、フェニレン基及びナフチレン基が挙げられる。
【0054】
アリーレン基が更に有し得る置換基としては、例えば、ニトロ基、フッ素原子等のハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルキル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、及びアルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)が挙げられる。
【0055】
は上述したように、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基又はオクチレン基)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基又はシクロヘキシレン基)、アルケニレン基(例えば、エチレン基、プロペニレン基又はブテニレン基)、−S−、−O−、又はこれらの2種以上の組み合わせからなる基である。ここでMは、酸の作用によって分解しない基である。
は、好ましくはアルキレン基、−S−、−O−、又は、これらの組み合わせであり、より好ましくはアルキレン基、アルキレンチオ基、又は、アルキレンオキシ基であり、更に好ましくはアルキレン基、又は、アルキレンオキシ基であり、特に好ましくは、アルキレン基である。ここで、アルキレン基、アルキレンチオ基、及び、アルキレンオキシ基の炭素数は、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3である。
が上記2種以上の組み合わせからなる基であるとともに、−S−又は−O−を含む基である場合、この−S−及び−O−は、基Xに直結し、Lに結合する酸素原子には直結しないことが好ましい。例えば、Mが、アルキレンチオ基やアルキレンオキシ基である場合、これらの基のアルキレン基がLに結合する酸素原子に直結し、これらの基の−S−及び−O−は、基Xに直結することが好ましい。
樹脂(P)の繰り返し単位(1)に含まれる基X(複数の芳香環を含む基)は、樹脂(P)のアルカリ溶解性を下げる機能を有しているものと考えられ、この機能が、パターン(特に、孤立パターン)の形成において解像度を向上させることに寄与するものと考えられるが、樹脂(P)のアルカリ溶解性が低すぎても、所望のパターンは形成されず、解像性は下がる傾向となる。
しかしながら、本発明においては、LとXとの間に上記のように定義されたMを介在させることにより、基Xの上記機能によって樹脂のアルカリ溶解性が下がりすぎることを抑制できるせいか、パターン(特に、孤立パターン)の解像性を確実に向上させることができる。
【0056】
アルキレン基としては、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、及びドデカニレン基等の炭素数1〜12のものが挙げられる。
シクロアルキレン基としては、好ましくは、シクロペンチレン基及びシクロヘキシレン基等の炭素数5〜8のものが挙げられる。
【0057】
これらアルキレン基及びシクロアルキレン基は、置換基を更に有していてもよい。
アルキレン基が更に有し得る置換基としては、例えば、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。
シクロアルキレン基が更に有し得る置換基としては、アルキル基、及び、アルキレン基が更に有し得る置換基の具体例として前述した各基が挙げられる。
【0058】
の「最小連結原子数」は、1〜15であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜5であることが特に好ましい。この「最小連結原子数」が過度に大きいと、樹脂(P)のガラス転移温度が低下し、膜中で露光により発生した酸が拡散しやすくなるため、ラフネス特性及び解像性等が低下する可能性がある。
【0059】
なお、Mの「最小連結原子数」は、以下のようにして定められる数である。即ち、まず、Mを構成している原子のうち、Lと隣接する酸素原子と結合している原子と、Xと結合している原子とを結ぶ原子の列を考える。次に、これら列の各々に含まれる原子数を求める。そして、これら原子数のうち最小のものを、Mの「最小連結原子数」とする。
【0060】
例えば、Mがプロピレン基である場合、その最小連結原子数は3である。Mが−CH−O−である場合、その最小連結原子数は2である。Mが2−メチル−ブチレン基である場合、その最小連結原子数は4である。Mがシクロへキシレン基である場合、その最小連結原子数は4である。Mが−O−CHCHCH−O−である場合、その最小連結原子数は5である。なお、Mが直鎖状のアルキレン基の場合、Mの最小連結原子数は、その炭素数に等しい。
【0061】
Xは、上述したように、複数の芳香環を含む基を表している。これら複数の芳香環は、縮環して多環式構造を形成していてもよく、単結合を介して互いに連結されていてもよい。なお、これら芳香環の各々は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。Xとして複数の芳香環を含んだ構造単位を用いることにより、ドライエッチング耐性の向上、上記したような樹脂(P)のアルカリ溶解性を低下する機能に基づく解像度の向上、及び二次電子発生量の増大に起因した感度の向上を達成し得る。
【0062】
Xが含み得る芳香環としては、例えば、ベンゼン環、チオフェン環、ピロール環、フラン環、イミダゾール環、ピリジン環及びピラゾール環が挙げられる。
【0063】
複数の芳香環が縮環して形成し得る多環式構造としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、トリフェニレン環、インドール環、ベンズイミダゾール環、カルバゾール環及びフェノチアジン環が挙げられる。この中でも、インドール環、ピレン環、フェナントレン環、アントラセン環及びナフタレン環が更に好ましく、インドール環、アントラセン環及びナフタレン環が特に好ましい。
【0064】
複数の芳香環が単結合を介して互いに連結された構造としては、例えば、ビフェニル構造、ターフェニル構造及びビオローゲン構造が挙げられる。中でも、ビフェニル構造及びターフェニル構造が特に好ましい。
【0065】
Xに含まれる芳香環の数は、好ましくは2〜6、より好ましくは2〜4、更に好ましくは2又は3である。なお、ここで「芳香環の数」とは、ベンゼン環又はそれに対応する単環ヘテロアリール環の数である。例えば、ナフタレン残基、ビフェニル残基及びビピリジン残基のそれは2であり、アントラセン残基、カルバゾール残基及びフェノチアジン残基のそれは3である。
【0066】
Xは、好ましくは、下記一般式(X1)〜(X6)のいずれかにより表される構造部位において、複数の芳香環を構成している原子に結合する任意の1個の水素原子又はR11を除してなる基である。
【0067】
【化8】

【0068】
式中、R10は、1価の置換基を表し、複数存在する場合は、同じであっても異なっていてもよい。R11は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、一般式(1)におけるMに結合する結合手を表す。nは独立して0〜14の整数である。XはCH又はNを表し、2つのXは、互いに同一であっても異なっていてもよい。なお、これらXにおいて、M、R10は、複数の芳香環を構成している原子の何れに結合していてもよい。
【0069】
10は、上述したように、1価の置換基である。この1価の置換基としては、例えば、先にR〜Rについて列挙したのと同様のものが挙げられる(但し、水酸基、カルボ
キシル基を除く)。これらのうち、フッ素原子及び臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基
、ニトロソ基、シアノ基、アセチルオキシ基、アセチルアミド基、メトキシ基が特に好ましい。
11は上述したように、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、一般式(1)におけるMに結合する結合手である。アルキル基及びシクロアルキル基としては、例えば、先にR〜Rについて列挙したのと同様のものが挙げられる。
【0070】
は、上述したように、0〜14の整数である。nは、好ましくは0〜10の整数であり、より好ましくは0〜8の整数である。
【0071】
以下に、一般式(X1)〜(X6)のいずれかにより表される構造単位の具体例を示すが、本発明は、これらに限定されるものではない。具体例において、Mは一般式(1)におけるMを表す。また、Acはアセチル基を表す。
【0072】
【化9】

【0073】
【化10】

【0074】
【化11】

【0075】
【化12】

【0076】
【化13】

【0077】
以下に、一般式(1)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。具体例において、Acはアセチル基を表す。
【0078】
【化14】

【0079】
【化15】

【0080】
【化16】

【0081】
【化17】

【0082】
【化18】

【0083】
【化19】

【0084】
【化20】

【0085】
【化21】

【0086】
繰り返し単位(1)に相当するモノマーの合成方法としては、特に、限定されないが、例えば、1−クロロメチルナフタレン、9−クロロメチルアントラセンのような基Xを有するハロゲン化アルキル化合物とビニルフェノール誘導体とを、炭酸カリウムのような塩基存在下で攪拌することにより合成することができる。また、繰り返し単位(1)は、フェノール性水酸基を有する高分子と、前述の基Xを有するハロゲン化アルキル化合物とを反応させることによっても得ることができる。
【0087】
樹脂(P)は、更に、下記一般式(2)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(2)とも言う)と、下記一般式(3)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(3)とも言う)及び一般式(4)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(4)とも言う)の少なくとも一方とを有することが好ましい。
【0088】
【化22】

【0089】
式中、
〜R及びR41〜R43は、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。
及びLは、各々独立に、アリーレン基を表す。
は単結合又は2価の連結基を表す。
及びYは酸の作用により脱離する基を表す。
【0090】
一般式(2)において、R〜Rは、各々独立に、水素原子又は1価の置換基であり、先に述べたR〜Rと同様のものである。Lはアリーレン基を表し、先に述べたLと同様のものである。
【0091】
以下に、一般式(2)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0092】
【化23】

【0093】
一般式(3)において、R〜Rは各々独立に水素原子又は1価の置換基であり、先に述べたR〜Rと同様のものである。Lはアリーレン基を表し、先に述べたLと同様のものである。
【0094】
は酸の作用により脱離する基を表す。
酸の作用により脱離する基としては、例えば、下記一般式(7)〜(9)のいずれかにより表される基が挙げられる。
【0095】
【化24】

【0096】
式中、R18〜R26は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。なお、R18とR19とは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
アルキル基及びシクロアルキル基としては、例えば、先にR〜Rについて列挙したのと同様のものが挙げられる。
【0097】
アリール基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。このアリール基の炭素数は、好ましくは4〜20とし、更に好ましくは6〜14とし、特に好ましくは6〜12とする。このアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0098】
アリール基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、及びアルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)が挙げられる。
【0099】
以下に、一般式(7)〜(9)のいずれかにより表される基の具体例を示すが、本発明がこれに限定されるものではない。なお、式中、「−」はO原子への結合手を表し、メチル基は「Me−」として表記して区別している。
【0100】
【化25】

【0101】
は、下記一般式(5)により表される基であることも好ましい。
【0102】
【化26】

【0103】
12及びR13は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はこれらの2種以上の組み合わせを表す。Mは、単結合又は2価の連結基を表す。Qは、アルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂環基、又は、ヘテロ原子を含んでいてもよい芳香環基を表す。
なお、R12、R13、M及びQの少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成していてもよい。この環は、5員環又は6員環であることが好ましい。
【0104】
12又はR13としてのアルキル基は、例えば、炭素数1〜8のアルキル基である。好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基が挙げられる。
【0105】
12又はR13としてのシクロアルキル基は、例えば、炭素数3〜15のシクロアルキル基である。好ましくは、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基及びアダマンチル基が挙げられる。
【0106】
12又はR13としてのアリール基は、例えば、炭素数6〜15のアリール基である。好ましくは、フェニル基、トリル基、ナフチル基及びアントリル基が挙げられる。
【0107】
12又はR13としてのアラルキル基は、例えば、炭素数6〜20のアラルキル基である。好ましくは、ベンジル基及びフェネチル基が挙げられる。
【0108】
としての2価の連結基は、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基又はオクチレン基)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基又はシクロヘキシレン基)、アルケニレン基(例えば、エチレン基、プロペニレン基又はブテニレン基)、アリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基又はナフチレン基)、−S−、−O−、−CO−、−SO−、−N(R)−、又はこれらの2種以上の組み合わせであり、総炭素数が20以下のものが好ましい。ここで、Rは、水素原子又はアルキル基(例えば炭素数1〜8のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等)である。
【0109】
Qとしてのアルキル基は、例えば、上述したR12及びR13としてのアルキル基と同様である。
【0110】
Qとしての脂環基及び芳香環基としては、例えば、上述したR12及びR13としてのシクロアルキル基及びアリール基が挙げられる。その炭素数は、好ましくは、3〜15である。なお、本発明においては、複数の芳香環が単結合を介して連結されてなる基(例えば、ビフェニル基、ターフェニル基)もQとしての芳香族基に含まれる。
ヘテロ原子を含む脂環基及びヘテロ原子を含む芳香環基としては、例えば、チイラン、シクロチオラン、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール及びピロリドンが挙げられる。なお、本発明においては、複数の“ヘテロ原子を含む芳香環”が単結合を介して連結されてなる基(例えば、ビオローゲン基)もQとしての芳香族基に含まれる。
【0111】
12、R13、M及びQの少なくとも2つが互いに結合して環を形成する場合としては、例えば、R12とR13とが結合してブチレン基又はペンチレン基を形成して5員環又は6員環を形成する場合、及び、M及びQのいずれかとR12及びR13のいずれかとが結合してプロピレン基又はブチレン基を形成して、酸素原子を含有する5員環又は6員環を形成する場合が挙げられる。
【0112】
12、R13、M及びQにより表される各基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、上記のR〜Rが有し得る置換基として列挙したのと同様のものが挙げられる。なお、この置換基の炭素数は、好ましくは8以下である。
【0113】
−(M−Q)により表される基の炭素数は、好ましくは1〜30であり、更に好ましくは5〜20である。
【0114】
以下に、一般式(5)により表される基の具体例を示すが、本発明がこれに限定されるものではない。なお、式中、「−」はO原子への結合手を表し、メチル基は「Me−」として表記して区別している。また、具体例において、Acはアセチル基を表す。
【0115】
【化27】

【0116】
【化28】

【0117】
【化29】

【0118】
以下に、一般式(3)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0119】
【化30】

【0120】
【化31】

【0121】
【化32】

【0122】
【化33】

【0123】
一般式(4)において、R41〜R43は、各々独立に、水素原子又は1価の置換基であり、先に述べたR〜Rと同様のものである。Lは単結合又は2価の連結基を表す。
【0124】
が2価の連結基の場合、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、−O−、−SO−、−CO−、−N(R)−及びこれらの複数の組み合わせ等が挙げられる。ここで、Rは、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
【0125】
としてのアルキレン基は、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基及びオクチレン基等が挙げられる。
【0126】
としてのシクロアルキレン基は、炭素数5〜10のものが好ましく、例えば、シクロペンチレン基及びシクロヘキシレン基等が挙げられる。
【0127】
としてのアリーレン基は、炭素数4〜20のものが好ましく、例えば、例えば、フェニレン基及びナフチレン基等が挙げられる。
【0128】
としてのアリール基の炭素数は、好ましくは4〜20であり、更に好ましくは6〜14である。このアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
としてのアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜8である。このアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基が挙げられる。
としてのシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは5〜8である。このシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0129】
の各基は、更に、置換基を有していてもよく、このような置換基の具体例としては、前記Lとしてのアリーレン基が更に有し得る置換基として説明したものと同様のものを挙げることができる。
【0130】
は酸の作用により脱離する基を表し、具体的には下記一般式で表される基であることが好ましい。
【0131】
【化34】

【0132】
44〜R46は、各々独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。R44〜R46の2つは、互いに結合して、シクロアルキル基を形成してもよい。
【0133】
44〜R46のアルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖又は分岐状のものが好ましい。
44〜R46のシクロアルキル基としては、炭素数3〜8の単環のシクロアルキル基又は炭素数7〜20の多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0134】
44〜R46の2つが互いに結合して形成し得るシクロアルキル基としては、炭素数3〜8の単環のシクロアルキル基又は炭素数7〜20の多環のシクロアルキル基が好ましい。中でも、炭素数5〜6の単環のシクロアルキル基が特に好ましい。R46がメチル基又はエチル基であり、R44とR45とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が更に好ましい。
【0135】
以下に、一般式(4)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0136】
【化35】

【0137】
【化36】

【0138】
樹脂(P)は、更に、一般式(6)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(6)とも言う)を含んでもよい。
【0139】
【化37】

【0140】
14、R15及びR16は、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、前記R
〜Rと同様である。Lはアリーレン基を表し、前記Lと同様である。
【0141】
は単結合又は2価の連結基を表す。Aが2価の連結基の場合、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、−O−、−SO−、−CO−、−N(R)−及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられ、総炭素数が20以下のものが好ましい。ここで、Rは、アリール基、アルキル基又はシクロアルキルを表す。
【0142】
のアルキレン基としては、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、及びドデカニレン基等の炭素数1〜12のものが挙げられる。
のシクロアルキレン基としては、好ましくは、シクロペンチレン基及びシクロヘキシレン基等の炭素数5〜8のものが挙げられる。
のアリーレンとしては、好ましくは、フェニレン基及びナフチレン基等の炭素数6〜14のものが挙げられる。
【0143】
これらアルキレン基、シクロアルキレン基及びアリーレン基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。
【0144】
は活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。Sは、活性光線又は放射線の照射により分解して樹脂側鎖に酸アニオンを生じる構造部位であることが好ましく、より好ましくは光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、又はマイクロレジスト等に使用されている公知の光により酸を発生する化合物が有する構造部位が挙げられ、該構造部位はイオン性構造部位であることが更に好ましい。
【0145】
としては、スルホニウム塩又はヨードニウム塩を含むイオン性構造部位がより好ましい。より具体的には、Sとして、下記一般式(PZI)又は(PZII)で表される基が好ましい。
【0146】
【化38】

【0147】
上記一般式(PZI)において、
201〜R203は、各々独立に、有機基を表す。
201〜R203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成したものを用いると、露光時の分解物で露光機を汚染することを抑えることが期待でき、好ましい。
は、活性光線又は放射線の照射により分解して発生する酸アニオンを示し、非求核性アニオンが好ましい。非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオン等を挙げることができる。
非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンであり、分子内求核反応による経時分解を抑制することができるアニオンである。これにより樹脂の経時安定性が向上し、レジスト組成物の経時安定性も向上する。
【0148】
201〜R203の有機基としては、アリール基、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、インドリル基などが挙げられる。ここで、シクロアルキル基及びシクロアルケニル基は、環を形成する炭素原子の少なくとも1つがカルボニル炭素であっても良い。
201〜R203のうち、少なくとも1つがアリール基であることが好ましく、三つ全てがアリール基であることがより好ましい。
201、R202及びR203におけるアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
201、R202及びR203におけるアルキル基、シクロアルキル基、及び、シクロアルケニル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)、炭素数3〜10のシクロアルケニル基(例えば、ペンタジエニル基、シクロヘキセニル基)を挙げることができる。
【0149】
201、R202及びR203としての、これらアリール基、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、インドリル基などの有機基は更に置換基を有していてもよい。その置換基としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルキル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜14)、ヒドロキシアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルカルボニル基(好ましくは炭素数2〜15)、シクロアルキルカルボニル基(好ましくは炭素数4〜15)、アリールカルボニル基(好ましくは炭素数7〜14)、シクロアルケニルオキシ基(好ましくは炭素数3〜15)、シクロアルケニルアルキル基(好ましくは炭素数4〜20)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
201、R202及びR203の各基が有していても良い置換基としてのシクロアルキル基及びシクロアルケニル基は、環を形成する炭素原子の少なくとも1つがカルボニル炭素であっても良い。
【0150】
201、R202及びR203の各基が有していても良い置換基は、更に置換基を有していてもよく、このような更なる置換基の例としては、R201、R202及びR203の各基が有していても良い置換基の上記例と同じものを挙げることができるが、アルキル基、シクロアルキル基が好ましい。
【0151】
201〜R203のうち、少なくとも1つがアリール基でない場合の好ましい構造としては、特開2004−233661号公報の段落0046,0047、特開2003−35948号公報の段落0040〜0046、米国特許出願公開第2003/0224288号明細書に式(I−1)〜(I−70)として例示されている化合物、米国特許出願公開第2003/0077540号明細書に式(IA−1)〜(IA−54)、式(IB−1)〜(IB−24)として例示されている化合物等のカチオン構造を挙げることができる。
【0152】
前記一般式(PZII)中、R204、R205は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。これらアリール基、アルキル基、シクロアルキル基としては、前述の化合物(PZI)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基として説明したアリール基と同様である。
204、R205のアリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基としては、例えば、ピロール残基(ピロールから水素原子が1個失われることによって形成される基)、フラン残基(フランから水素原子が1個失われることによって形成される基)、チオフェン残基(チオフェンから水素原子が1個失われることによって形成される基)、インドール残基(インドールから水素原子が1個失われることによって形成される基)、ベンゾフラン残基(ベンゾフランから水素原子が1個失われることによって形成される基)、ベンゾチオフェン残基(ベンゾチオフェンから水素原子が1個失われることによって形成される基)等を挙げることができる。
204、R205のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としても、前述の化合物(PZI)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよいものが挙げられる。
【0153】
は、活性光線又は放射線の照射により分解して発生する酸アニオンを示し、非求核性アニオンが好ましく、一般式(PZI)に於けるZと同様のものを挙げることができる。
【0154】
の好ましい具体例を以下に挙げるが、特にこれらに限定されない。なお、*印はAへの結合手を表す。
【0155】
【化39】

【0156】
【化40】

【0157】
【化41】

【0158】
【化42】

【0159】
【化43】

【0160】
繰り返し単位(6)に相当するモノマーの合成方法としては、特に限定されないが、例えばオニウム構造の場合、前記繰り返し単位に対応する重合性不飽和結合を有する酸アニオンと既知のオニウム塩のハライドを交換して合成する方法が挙げられる。
より具体的には、前記繰り返し単位に対応する重合性不飽和結合を有する酸の金属イオン塩(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)又はアンモニウム塩(アンモニウム、トリエチルアンモニウム塩等)と、ハロゲンイオン(塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)を有するオニウム塩を、水又はメタノールの存在下で攪拌し、アニオン交換反応を行い、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロキシフラン等の有機溶剤と水で分液・洗浄操作をすることにより、目的とする繰り返し単位(6)に相当するモノマーを合成することができる。
また、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロキシフラン等の水との分離が可能な有機溶剤と水の存在下で攪拌してアニオン交換反応を行った後に、水で分液・洗浄操作をすることによって合成することもできる。
繰り返し単位(6)はまた、高分子反応によって側鎖に酸アニオン部位を導入し、塩交換によりオニウム塩を導入することによっても合成することが出来る。
【0161】
以下に、繰り返し単位(6)の具体例を示すが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0162】
【化44】

【0163】
【化45】

【0164】
【化46】

【0165】
【化47】

【0166】
また、本発明の樹脂(P)が前記繰り返し単位(3)及び前記繰り返し単位(4)の少なくとも一方を含むが、前記繰り返し単位(6)を含まない場合には、樹脂(P)は、露光部位での樹脂のアルカリ現像液に対する溶解性を過度に高めない観点から、繰り返し単位(3)及び繰り返し単位(4)中の酸の作用により脱離するY及びYが脱離した後の樹脂(P)のCLogPの値が、2.6以上であることが好ましい。
本発明の樹脂(P)が前記繰り返し単位(3)及び前記繰り返し単位(4)の少なくとも一方と、前記繰り返し単位(6)とを含む場合には、樹脂(P)は、繰り返し単位(3)及び繰り返し単位(4)中の酸の作用により脱離するY及びYが脱離し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位Sが分解して側鎖に酸を発生させた後の樹脂(P)のCLogPの値が、2.6以上であることが好ましい。
【0167】
繰り返し単位(3)及び前記繰り返し単位(4)の少なくとも一方が存在する場合にはY及びYが脱離し、かつ、繰り返し単位(6)が存在する場合にはSが分解して側鎖に酸を発生させた状態とは、露光により樹脂(P)に生じ得る全ての化学反応が進行した状態、即ち露光後の樹脂(P)の理想的な状態を表す。その為、繰り返し単位(3)及び前記繰り返し単位(4)の少なくとも一方が存在する場合にはY及びYが脱離し、かつ、繰り返し単位(6)が存在する場合にはSが分解して側鎖に酸を発生させた後の樹脂(P)について、以下では「露光後の樹脂(P)」と記載する。
【0168】
ここで、酸の作用により脱離するY及びYが脱離した後の構造とは、Y及びYが水素原子で置換された構造を表す。例えば、繰り返し単位(3)の構造が下記(a−1)であった時、Yが脱離後の構造とは下記(b−1)で表される。
【0169】
【化48】

【0170】
また、活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位Sが分解して側鎖に酸を発生させた後の構造とは、例えばSがオニウム塩を含むイオン性構造部位の場合、オニウム塩が水素イオンで置換された構造を表す。例えば、繰り返し単位(6)の構造が下記(a−2)であった時、Sが分解後の構造とは下記(b−2)で表される。
【0171】
【化49】

【0172】
CLogPとは、水−n−オクタノール中での分配係数Pを常用対数で表示したLogPのコンピュータ計算値であり、物質の親疎水性の程度を表す指標として用いられている。樹脂(P)の各重合単位のCLogP計算は、例えばCambridge Soft社のソフトウェア、Chem Draw Ultra 8.0を用いることにより、行うことが出来る。例えばポリヒドロキシスチレン樹脂の場合、以下の構造(a−3)の値をCLogPの計算値とし、CLogP=2.50(小数点3位以下は四捨五入)となり、ポリメタクリル酸樹脂の場合、以下の構造(a−4)の値をCLogPの計算値とし、CLogP=0.64(小数点3位以下は四捨五入)となる。共重合組成のCLogP値は、各重合単位の数値の相加平均値とした。
【0173】
【化50】

【0174】
本発明において、露光後の樹脂(P)のCLogP値と、樹脂(P)を用いたレジスト組成物の孤立ライン解像性との関係について精査した結果、表2に示すように、露光後の樹脂(P)のCLogP値が2.6以上である場合に、孤立ライン解像性が良好となることが明らかとなった。従って、露光後の樹脂(P)のCLogP値は2.6以上であることが好ましい。露光後の樹脂(P)のCLogP値について、上限は特に定めないが、CLogP値が高すぎると、樹脂のアルカリ現像性が低下に伴い解像性が低下する。露光後の樹脂(P)のCLogP値は、2.6以上4.0以下であることが好ましく、2.6以上3.5以下であることが更に好ましい。
【0175】
一般式(1)により表される繰り返し単位の樹脂(P)に占める含有量は、露光後の樹脂(P)のCLogP値が2.6以上となるように適宜設計することが好ましいが、一般的には、全繰り返し単位を基準として、1〜40モル%とすることが好ましく、3〜30モル%とすることがより好ましく、5〜20モル%とすることが更に好ましい。
【0176】
一般式(2)により表される繰り返し単位の樹脂(P)に占める含有量は、全繰り返し単位を基準として、10〜90モル%とすることが好ましく、20〜85モル%とすることがより好ましく、30〜80モル%とすることが更に好ましい。
【0177】
本発明の樹脂(P)中に一般式(3)で表される繰り返し単位が含まれる場合、一般式(3)により表される繰り返し単位の樹脂(P)に占める含有量は、全繰り返し単位を基準として、1〜60モル%とすることが好ましく、3〜50モル%とすることがより好ましく、5〜40モル%とすることが更に好ましい。
【0178】
本発明の樹脂(P)中に一般式(4)で表される繰り返し単位が含まれる場合、一般式(4)により表される繰り返し単位の樹脂(P)に占める含有量は、全繰り返し単位を基準として、1〜60モル%とすることが好ましく、3〜50モル%とすることがより好ましく、5〜40モル%とすることが更に好ましい。
【0179】
本発明の樹脂(P)中に一般式(3)で表される繰り返し単位と一般式(4)で表される繰り返し単位とが含まれる場合、一般式(3)で表される繰り返し単位及び一般式(4)により表される繰り返し単位の樹脂(P)に占める含有量は、全繰り返し単位を基準として、1〜60モル%とすることが好ましく、3〜50モル%とすることがより好ましく、5〜40モル%とすることが更に好ましい。
【0180】
本発明の樹脂(P)中に一般式(6)で表される繰り返し単位が含まれる場合、一般式(6)により表される繰り返し単位の樹脂(P)に占める含有量は、全繰り返し単位を基準として、0.5〜80モル%とすることが好ましく、1〜60モル%とすることがより好ましく、3〜40モル%とすることが更に好ましい。
【0181】
樹脂(P)の形態は、ランダム型、ブロック型、クシ型及びスター型等の何れであってもよい。
上述した樹脂(P)は、例えば、各繰り返し単位に対応する不飽和モノマーを、ラジカル、カチオン又はアニオン重合させることにより合成することができる。また各繰り返し単位の前駆体に相当する不飽和モノマーを用いて重合した後に、高分子反応を行うことにより合成することも可能である。いずれの場合も、リビングアニオン重合等のリビング重合を用いることで、得られる樹脂の分子量分布が均一となり、好ましい。
【0182】
この樹脂(P)の分子量は、特に制限されないが、重量平均分子量が1000〜100000の範囲であることが好ましく、1500〜70000の範囲であることがより好ましく、2000〜50000の範囲であることが特に好ましい。ここで、樹脂の重量平均分子量は、GPC(溶媒:THF)によって測定したポリスチレン換算分子量を示す。
また、分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.00〜3.50であり、より好ましくは1.00〜2.00であり、更に好ましくは1.00〜1.30である。
【0183】
樹脂(P)の性能を更に向上させるべく、耐ドライエッチング性を著しく損なわない範囲で、他の重合性モノマー由来の繰り返し単位を更に含有させてもよい。
他の重合性モノマー由来の繰り返し単位の樹脂(P)に占める含有量は、全繰り返し単位を基準として、一般的に50モル%以下、好ましくは30モル%以下である。使用可能な他の重合性モノマーには、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類及びクロトン酸エステル類等から選択される付加重合性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物が含まれる。その他、マレイン酸ジアルキルエステル類、フマル酸ジアルキルエステル類、イタコン酸ジアルキルエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びマレイロニトリルも挙げられる。
【0184】
具体的には、(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−t−オクチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルなどが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、炭素原子数1〜10のもの、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、ヒドロキシエチル基、ベンジル基などがある。)、N−アリール(メタ)アクリルアミド(アリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、ニトロフェニル基、ナフチル基、シアノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、カルボキシフェニル基などがある。)、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、炭素原子数1〜10のもの、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、イソブチル基、エチルヘキシル基、シクロヘキシル基などがある。)、N,N−アリール(メタ)アクリルアミド(アリール基としては、例えばフェニル基などがある。)、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0185】
アリル化合物としては、例えば、アリルエステル類(例えば、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリルなど)、アリルオキシエタノールなどが挙げられる。
ビニルエーテル類としては、例えば、アルキルビニルエーテル(例えば、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテルなど)、ビニルアリールエーテル(例えばビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロルフェニルエーテル、ビニル−2,4−ジクロルフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテルなど)が挙げられる。
ビニルエステル類としては、例えば、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレート、安息香酸ビニル、サルチル酸ビニル、クロル安息香酸ビニル、テトラクロル安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニルなどが挙げられる。
スチレン類としては、例えば、スチレン、アルキルスチレン(例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオルメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレンなど)、アルコキシスチレン(例えば、メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレンなど)、アルキルカルボニルオキシスチレン(例えば、4−アセトキシスチレン、4−シクロヘキシルカルボニルオキシスチレン)、アリールカルボニルオキシスチレン(例えば、4−フェニルカルボニルオキシスチレン)、ハロゲンスチレン(例えば、クロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレンなど)、シアノスチレン、カルボキシスチレンなどが挙げられる。
クロトン酸エステル類としては、例えば、クロトン酸アルキル(例えば、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、グリセリンモノクロトネートなど)が挙げられる。
イタコン酸ジアルキルエステル類としては、例えば、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
マレイン酸又はフマル酸のジアルキルエステル類としては、例えば、ジメチルマレレート、ジブチルフマレートなどが挙げられる。その他にも、無水マレイン酸、マレイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル等をあげることができる。また一般に前記本発明にかかわる繰り返し単位と共重合可能である付加重合性不飽和化合物であれば、特に制限されず用いることができる。
【0186】
樹脂(P)は、前述の繰り返し単位(1)、繰り返し単位(2)、繰り返し単位(3)、繰り返し単位(4)、繰り返し単位(6)以外の、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を更に有していても良い。これにより基板密着性、現像液親和性を向上させることができる。水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましく、酸分解性基を有さないことが好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造が好ましい。
【0187】
【化51】

【0188】
一般式(VIIa)〜(VIIc)に於いて、Rc〜Rcは、各々独立に、水素原子、水酸基又はシアノ基を表す。ただし、Rc〜Rcの内の少なくとも1つは、水酸基又はシアノ基を表す。好ましくは、Rc〜Rcの内の1つ又は2つが水酸基で、残りが水素原子である。一般式(VIIa)に於いて、更に好ましくは、Rc〜Rcの内の2つが水酸基で、残りが水素原子である。
一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIIa)〜(AIId)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0189】
【化52】

【0190】
一般式(AIIa)〜(AIId)に於いて、Rcは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
c〜Rcは、一般式(VIIa)〜(VIIc)に於ける、Rc〜Rcと同義である。
【0191】
樹脂(P)が水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を含有する場合、その含有率は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対し、0.5〜80mol%が好ましく、より好ましくは1〜60mol%、更に好ましくは2〜40mol%である。
【0192】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0193】
【化53】

【0194】
また、本発明の樹脂(P)は、更に、極性基を持たない環状炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有することもできる。このような繰り返し単位としては、一般式(VII)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0195】
【化54】

【0196】
一般式(VII)中、Rは少なくとも一つの環状炭化水素構造を有し、極性基(水酸基やシアノ基など)を持たない炭化水素基を表す。
Raは水素原子、アルキル基又は−CH−O−Ra基を表す。式中、Raは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Raは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
が有する環状炭化水素構造には、単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基が含まれる。単環式炭化水素基としては、たとえば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基などの炭素数3から12のシクロアルキル基、シクロへキセニル基など炭素数3から12のシクロアルケニル基、フェニル基などが挙げられる。好ましい単環式炭化水素基としては、炭素数3から7の単環式炭化水素基であり、より好ましくは、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
多環式炭化水素基には環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれ、環集合炭化水素基の例としては、ビシクロヘキシル基、パーヒドロナフタレニル基、ビフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基などが含まれる。架橋環式炭化水素環として、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナン、ビシクロオクタン環(ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環等)などの2環式炭化水素環及び、ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン環などの3環式炭化水素環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、パーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレン環などの4環式炭化水素環などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、縮合環式炭化水素環、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロインデン、パーヒドロフェナレン環などの5〜8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環も含まれる。
好ましい架橋環式炭化水素環として、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビシクロオクタニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、などが挙げられる。より好ましい架橋環式炭化水素環としてノルボニル基、アダマンチル基が挙げられる。
これらの環状炭化水素基は置換基を有していても良く、好ましい置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護された水酸基、保護基で保護されたアミノ基などが挙げられる。好ましいハロゲン原子としては臭素、塩素、フッ素原子、好ましいアルキル基としてはメチル、エチル、ブチル、t−ブチル基が挙げられる。上記のアルキル基は更に置換基を有していても良く、更に有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護された水酸基、保護基で保護されたアミノ基を挙げることができる。
保護基としては、たとえばアルキル基、1価の脂肪族炭化水素環基、アラルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基、好ましい置換メチル基としてはメトキシメチル、メトキシチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基、好ましい置換エチル基としては、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、好ましいアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6の脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基としては炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
極性基を持たない環状炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH、CHOH、又はCFを表す。
【0197】
【化55】

【0198】
【化56】

【0199】
樹脂(P)は、極性基を持たない環状炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を含有していてもいなくてもよいが、添加する場合は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対し、1〜40モル%が好ましく、より好ましくは3〜20モル%である。
【0200】
本発明の樹脂(P)は、1種類単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
樹脂(P)の含量は、組成物の全固形分を基準として、30〜100質量%とすることが好ましく、50〜99.7質量%とすることがより好ましく、70〜99.5質量%とすることが特に好ましい。
【0201】
樹脂(P)の例としては、一般式(1)により表される繰り返し単位の具体例から選択される1種以上の繰り返し単位と、一般式(2)により表される繰り返し単位の具体例から選択される1種以上の繰り返し単位と、一般式(3)及び一般式(4)により表される繰り返し単位の少なくとも一方の具体例から選択される1種以上の繰り返し単位とを含んだ樹脂が挙げられる。また、樹脂(P)の他の例としては、上記に加え、一般式(6)により表される繰り返し単位の具体例から選択される1種以上の繰り返し単位を含んだ樹脂が挙げられる。
【0202】
樹脂(P)の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0203】
【化57】

【0204】
【化58】

【0205】
【化59】

【0206】
【化60】

【0207】
【化61】

【0208】
【化62】

【0209】
【化63】

【0210】
【化64】

【0211】
【化65】

【0212】
【化66】

【0213】
【化67】

【0214】
【化68】

【0215】
【化69】

【0216】
【化70】

【0217】
<その他の成分>
本発明に係る組成物は、塩基性化合物、酸分解性樹脂、光酸発生剤、有機溶剤、界面活性剤、酸分解性溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、現像液に対する溶解を促進させる化合物、及びプロトンアクセプター性官能基を有する化合物等を更に含んでいてもよい。
〔2〕塩基性化合物
本発明に係る組成物は、塩基性化合物を更に含んでいてもよい。塩基性化合物を更に含有させると、露光から加熱までの経時による性能変化を更に低減することが可能となる。また、こうすると、露光によって発生した酸の膜中拡散性を制御することが可能となる。
【0218】
この塩基性化合物は、含窒素有機化合物であることが好ましい。使用可能な化合物は特に限定されないが、例えば、以下の(1)〜(4)に分類される化合物を用いることができる。
【0219】
(1)下記一般式(BS−1)により表される化合物
【0220】
【化71】

【0221】
一般式(BS−1)中、
Rは、各々独立に、水素原子又は有機基を表す。但し、3つのRのうち少なくとも1つは有機基である。この有機基は、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、単環若しくは多環のシクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0222】
Rとしてのアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常1〜20であり、好ましくは1〜12である。
Rとしてのシクロアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常3〜20であり、好ましくは5〜15である。
Rとしてのアリール基の炭素数は、特に限定されないが、通常6〜20であり、好ましくは6〜10である。具体的には、フェニル基及びナフチル基等が挙げられる。
Rとしてのアラルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常7〜20であり、好ましくは7〜11である。具体的には、ベンジル基等が挙げられる。
【0223】
Rとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、水素原子が置換基により置換されていてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基及びアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
なお、一般式(BS−1)により表される化合物では、Rのうち少なくとも2つが有機基であることが好ましい。
【0224】
一般式(BS−1)により表される化合物の具体例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリイソデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、及び2,4,6−トリ(t−ブチル)アニリンが挙げられる。
また、一般式(BS−1)により表される好ましい塩基性化合物として、少なくとも1つのRがヒドロキシ基で置換されたアルキル基であるものが挙げられる。具体的には、例えば、トリエタノールアミン及びN,N−ジヒドロキシエチルアニリンが挙げられる。
【0225】
なお、Rとしてのアルキル基は、アルキル鎖中に酸素原子を有していてもよい。即ち、オキシアルキレン鎖が形成されていてもよい。オキシアルキレン鎖としては、−CH2CH2O
−が好ましい。具体的には、例えば、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン、及び、US6040112号明細書のカラム3の60行目以降に例示されている化合物が挙げられる。
【0226】
(2)含窒素複素環構造を有する化合物
この含窒素複素環は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。また、窒素原子を複数有していてもよい。更に、窒素以外のヘテロ原子を含有していてもよい。具体的には、例えば、イミダゾール構造を有する化合物(2−フェニルベンゾイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾールなど)、ピペリジン構造を有する化合物〔N−ヒドロキシエチルピペリジン及びビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなど〕、ピリジン構造を有する化合物(4−ジメチルアミノピリジンなど)、並びにアンチピリン構造を有する化合物(アンチピリン及びヒドロキシアンチピリンなど)が挙げられる。
また、環構造を2つ以上有する化合物も好適に用いられる。具体的には、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン及び1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−ウンデカ−7−エンが挙げられる。
【0227】
(3)フェノキシ基を有するアミン化合物
フェノキシ基を有するアミン化合物とは、アミン化合物が含んでいるアルキル基のN原子と反対側の末端にフェノキシ基を備えた化合物である。フェノキシ基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基及びアリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
この化合物は、より好ましくは、フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン鎖を有している。1分子中のオキシアルキレン鎖の数は、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン鎖の中でも−CH2CH2O−が特
に好ましい。
具体例としては、2−[2−{2―(2,2―ジメトキシ−フェノキシエトキシ)エチル}−ビス−(2−メトキシエチル)]−アミン、及び、US2007/0224539A1号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)が挙げられる。
【0228】
(4)アンモニウム塩
アンモニウム塩も適宜用いることができる。このアンモニウム塩は、好ましくは、ヒドロキシド又はカルボキシレートである。より具体的には、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0229】
その他、本発明に係る組成物に使用可能なものとして、特開2002−363146号公報の実施例で合成されている化合物、及び特開2007−298569号公報の段落0108に記載の化合物等が挙げられる。
【0230】
また、塩基性化合物として、感光性の塩基性化合物を用いてもよい。感光性の塩基性化合物としては、例えば、特表2003−524799号公報、及びJ.Photopolym.Sci&Tech. Vol.8,P.543−553(1995)等に記載の化
合物を用いることができる。
【0231】
塩基性化合物の分子量は、250〜2000であることが好ましく、400〜1000であることが更に好ましい。
【0232】
これらの塩基性化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に係る組成物が塩基性化合物を更に含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、通常は0.001〜10質量%とし、好ましくは0.01〜5質量%とする。
後述する光酸発生剤の塩基性化合物に対するモル比は、1.5〜300であることが好ましい。即ち、感度及び解像度を向上させる観点から1.5以上が好ましく、露光後加熱処理前におけるパターン太りによる解像度の低下を抑制する観点から300以下が好ましい。このモル比は、より好ましくは2.0〜200であり、更に好ましくは2.5〜150である。
なお、樹脂(P)が上記繰り返し単位(6)を含む場合には、上記モル比における光酸発生剤とは、該繰り返し単位(6)と後述する光酸発生剤との合計の量を基準とするものである。
【0233】
〔3〕酸分解性樹脂
本発明に係る組成物は、樹脂(P)以外に、酸の作用により分解してアルカリ水溶性に対する溶解速度が増大する樹脂、即ち酸分解性樹脂を更に含んでいてもよい。
【0234】
酸分解性樹脂は、典型的には、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、酸分解性基ともいう)を備えている。この樹脂は、酸分解性基を、主鎖及び側鎖の一方に備えていてもよく、これらの両方に備えていてもよい。この樹脂は、酸分解性基を側鎖に備えていることが好ましい。
【0235】
酸分解性樹脂は、欧州特許254853号明細書、特開平2−25850号公報、同3−223860号公報及び同4−251259号公報等に開示されているように、例えば、アルカリ可溶性樹脂に酸の作用により脱離する基の前駆体を反応させるか、又は、酸の作用により脱離する基の結合したアルカリ可溶性樹脂モノマーを種々のモノマーと共重合させることにより得られる。
【0236】
酸分解性基としては、−COOH基及び−OH基等のアルカリ可溶性基の水素原子を、酸の作用により脱離する基で置換した基が好ましい。
酸分解性基の具体例及び好ましい例としては、樹脂(P)における一般式(3)の「OY」、及び、一般式(4)の「COOY」と同様のものが挙げられる。
【0237】
上述したアルカリ可溶性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノール性水酸基を含んだ樹脂、並びに、(メタ)アクリル酸及びノルボルネンカルボン酸等のカルボキシル基を有する繰り返し単位を含んだ樹脂が挙げられる。
フェノール性水酸基を含んだ樹脂としては、好ましくは、ポリ(o−ヒドロキシスチレン)、ポリ(m−ヒドロキシスチレン)、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)及びこれらの共重合体、水素化ポリ(ヒドロキシスチレン)、下記構造により表される置換基を有するポリ(ヒドロキシスチレン)類、スチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、α−メチルスチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、及び水素化ノボラック樹脂等のヒドロキシスチレン構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。
【0238】
【化72】

【0239】
これらアルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解速度は、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を用いて23℃で測定して、170Å/秒以上であることが好ましく、330Å/秒以上であることがより好ましい。より具体的には、上記アルカリ溶解速度は、アルカリ可溶性樹脂のみをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等の溶剤に溶解して固形分濃度4質量%とした組成物をシリコンウエハ上に塗布して塗膜(膜厚100nm)を形成し、この塗膜がTMAH水溶液に完全に溶解するまでの時間(秒)を測定することにより得ることができる。
【0240】
これら樹脂の原料として採用可能なモノマーとしては、例えば、アルキルカルボニルオキシスチレン(例えば、t−ブトキシカルボニルオキシスチレン)、アルコキシスチレン(例えば、1−アルコキシエトキシスチレン又はt−ブトキシスチレン)、及び、(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル(例えば、t−ブチル(メタ)アクリレート又は2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート又はジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレート)が挙げられる。
【0241】
本発明に係る組成物に、KrFエキシマレーザー光、電子線、X線又は波長50nm以下の高エネルギー光線(例えばEUV)を照射する場合には、酸分解性樹脂は、芳香族基を備えた繰り返し単位を含んでいることが好ましい。特には、ヒドロキシスチレンを繰り返し単位として含んでいることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、ヒドロキシスチレンと酸の作用により脱離する基で保護されたヒドロキシスチレンとの共重合体、又は、ヒドロキシスチレンと(メタ)アクリル酸3級アルキルエステルとの共重合体が挙げられる。
【0242】
酸分解性樹脂としては、上記一般式(3)により表される繰り返し単位を有する樹脂が特に好ましい。
【0243】
酸分解性樹脂は、他の重合性モノマー由来の繰り返し単位を有していてもよい。これら他の重合性モノマーとしては、例えば、先に樹脂(P)が含み得る他の重合性モノマーとして説明したものが挙げられる。なお、これら他の重合性モノマー由来の繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位を基準として、一般的に50モル%以下であり、好ましくは30モル%以下である。
【0244】
また酸分解性樹脂は、水酸基、カルボキシ基及びスルホン酸基等のアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含有しても良く、その場合のアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有率は、酸分解性樹脂を構成する全繰り返し単位中、好ましくは1〜99モル%、より好ましくは3〜95モル%、特に好ましくは5〜90モル%である。
【0245】
酸分解性基を有する繰り返し単位の含有率は、酸分解性樹脂を構成する全繰り返し単位中、好ましくは3〜95モル%、より好ましくは5〜90モル%、特に好ましくは10〜85モル%である。
【0246】
酸分解性樹脂の重量平均分子量は、GPC法(溶媒:THF)によるポリスチレン換算値として、好ましくは50,000以下であり、より好ましくは1,000〜20,000であり、特に好ましくは1,000〜10,000である。
酸分解性樹脂の分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜3.0であり、より好ましくは1.05〜2.0であり、更に好ましくは1.1〜1.7である。
また、酸分解性樹脂は、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0247】
酸分解性樹脂の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0248】
【化73】

【0249】
【化74】

【0250】
なお、本発明に係る組成物が樹脂(P)以外の樹脂を更に含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.5〜80質量%であり、より好ましくは5〜50質量%であり、更に好ましくは10〜30質量%である。
〔4〕光酸発生剤
光酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物である。光酸発生剤としては、例えば、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物、及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。これらの例としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩及びビス(アルキルスルホニルジアゾメタン等が挙げられる。
【0251】
光酸発生剤の好ましい例としては、下記一般式(ZI)、(ZII)及び(ZIII)により表される化合物が挙げられる。
【0252】
【化75】

【0253】
上記一般式(ZI)において、R201’、R202’及びR203’は、各々独立に、有機基を表す。R201’、R202’及びR203’としての有機基の炭素数は、例えば1〜30であり、好ましくは1〜20である。
【0254】
201’〜R203’のうち2つは、単結合又は連結基を介して互いに結合して、環を形成してもよい。この場合の連結基としては、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、カルボニル基、メチレン基及びエチレン基が挙げられる。R201’〜R203’のうちの2つが結合して形成する基としては、例えば、ブチレン基及びペンチレン基等のアルキレン基が挙げられる。
【0255】
201’、R202’及びR203’の具体例としては、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)又は(ZI−3)における対応する基が挙げられる。
【0256】
は、非求核性アニオンを表す。Xとしては、例えば、スルホン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF、PF及びSbFが挙げられる。Xは、好ましくは、炭素原子を含んだ有機アニオンである。好ましい有機アニオンとしては、例えば、下記AN1〜AN3に示す有機アニオンが挙げられる。
【0257】
【化76】

【0258】
式AN1〜AN3中、Rc〜Rcは、各々独立に、有機基を表す。この有機基としては、例えば、炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくは、アルキル基、アリール基、又はこれらの複数が単結合又は連結基を介して連結された基である。なお、この連結基としては、例えば、−O−、−CO−、−S−、−SO−及び−SON(Rd)−が挙げられる。ここで、Rdは水素原子又はアルキル基を表し、結合しているアルキル基又はアリール基と環を形成してもよい。
【0259】
Rc〜Rcの有機基は、1位がフッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたアルキル基、又は、フッ素原子若しくはフロロアルキル基で置換されたフェニル基であってもよい。フッ素原子又はフロロアルキル基を含有させることにより、光照射によって発生する酸の酸性度を上昇させることが可能となる。これにより、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の感度を向上させることができる。なお、Rc〜Rcは、他のアルキル基及びアリール基等と結合して、環を形成していてもよい。
【0260】
また、好ましいXとして、下記一般式(SA1)又は(SA2)により表されるスルホン酸アニオンが挙げられる。
【0261】
【化77】

【0262】
式(SA1)中、
Arは、アリール基を表し、スルホン酸アニオン及び−(D−B)基以外の置換基を更に有していてもよい。
nは、0以上の整数を表す。nは、好ましくは1〜4であり、より好ましくは2〜3であり、最も好ましくは3である。
Dは、単結合又は2価の連結基を表す。この2価の連結基としては、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸エステル基、エステル基、及び、これらの2種以上の組み合わせからなる基等を挙げることができる。
Bは、炭化水素基を表す。
【0263】
【化78】

【0264】
式(SA2)中、
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、又は、アルキル基を表し、複数存在する場合のR及びRの各々は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
Lは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
Eは、環状の有機基を表す。
xは1〜20の整数を表し、yは0〜10の整数を表し、zは0〜10の整数を表す。
【0265】
まず、式(SA1)により表されるスルホン酸アニオンについて、詳しく説明する。
式(SA1)中、Arは、好ましくは、炭素数6〜30の芳香族環である。具体的には、Arは、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インデセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセタフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環又はフェナジン環である。中でも、ラフネス改良と高感度化との両立の観点から、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0266】
Arがスルホン酸アニオン及び−(D−B)基以外の置換基を更に有している場合、この置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシ基;カルボキシ基;並びにスルホン酸基が挙げられる。
【0267】
式(SA1)中、Dは、好ましくは、単結合であるか、又は、エーテル基若しくはエステル基である。より好ましくは、Dは、単結合である。
【0268】
式(SA1)中、Bは、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はシクロアルキル基である。Bは、好ましくは、アルキル基又はシクロアルキル基であり、更に好ましくはシクロアルキル基である。Bとしてのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はシクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
【0269】
Bとしてのアルキル基は、好ましくは、分岐アルキル基である。この分岐アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、イソヘキシル基、3,3−ジメチルペンチル基及び2−エチルヘキシル基が挙げられる。
【0270】
Bとしてのアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基が挙げられる。
【0271】
Bとしてのアルキニル基としては、例えば、プロピニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。
【0272】
Bとしてのアリール基としては、例えば、フェニル基、p−トリル基が挙げられる。
【0273】
Bとしてのシクロアルキル基は、単環のシクロアルキル基であってもよく、多環のシクロアルキル基であってもよい。単環のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基が挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基、カンフェニル基、デカヒドロナフチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、カンホロイル基、ジシクロヘキシル基及びピネニル基が挙げられる。
【0274】
Bとしてのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はシクロアルキル基が置換基を有している場合、この置換基としては、例えば、以下のものが挙げられる。即ち、この置換基として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert−ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp−トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メチルチオキシ基、エチルチオキシ基及びtert−ブチルチオキシ基等のアルキルチオキシ基;フェニルチオキシ基及びp−トリルチオキシ基等のアリールチオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ドデシル基及び2―エチルヘキシル基等の直鎖アルキル基;分岐アルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基;アセチレン基;プロピニル基及びヘキシニル基等のアルキニル基;フェニル基及びトリル基等のアリール基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;スルホン酸基;並びにカルボニル基等が挙げられる。中でも、ラフネス改良と高感度化との両立の観点から、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基が好ましい。
【0275】
次に、式(SA2)により表されるスルホン酸アニオンについて、詳しく説明する。
式(SA2)中、Xfは、フッ素原子であるか、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基である。このアルキル基としては、炭素数が1〜10のものが好ましく、炭素数が1〜4のものがより好ましい。また、フッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0276】
Xfは、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。具体的には、Xfは、好ましくは、フッ素原子、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH又はCHCHである。中でも、フッ素原子又はCFが好ましく、フッ素原子が最も好ましい。
【0277】
式(SA2)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、又はアルキル基である。アルキル基は、置換基(好ましくはフッ素原子)を有していてもよく、炭素数1〜4のものが好ましい。R及びRの置換基を有していてもよいアルキル基としては、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。具体的には、R、Rの置換基を有するアルキル基は、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH及びCHCHが挙げられ、中でもCFが好ましい。
【0278】
式(SA2)中、xは1〜8が好ましく、1〜4がより好ましい。yは0〜4が好ましく、0がより好ましい。zは0〜8が好ましく、0〜4がより好ましい。
式(SA2)中、Lは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、−COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基又はこれらの2種以上の組み合わせが挙げられ、総炭素数が20以下のものが好ましい。中でも、−COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−又は−SO−が好ましく、−COO−、−OCO−又は−SO−がより好ましい。
【0279】
式(SA2)中、Eは、環状の有機基を表す。Eとしては、例えば、環状脂肪族基、アリール基及び複素環基が挙げられる。
【0280】
Eとしての環状脂肪族基は、単環構造を有していてもよく、多環構造を有していてもよい。単環構造を有した環状脂肪族基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が好ましい。多環構造を有した環状脂肪族基としては、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。特には、Eとして6員環以上のかさ高い構造を有する環状脂肪族基を採用した場合、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性が抑制され、解像力及びEL(露光ラチチュード)を更に向上させることが可能となる。
【0281】
Eとしてのアリール基は、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナンスレン環又はアントラセン環である。
Eとしての複素環基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。この基に含まれているヘテロ原子としては、窒素原子又は酸素原子が好ましい。複素環構造の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピペリジン環及びモルホリン環等が挙げられる。中でも、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピペリジン環及びモルホリン環が好ましい。
【0282】
Eは、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、炭素数1〜12が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基及びスルホン酸エステル基が挙げられる。
【0283】
光酸発生剤としては、一般式(ZI)により表される構造を複数有する化合物を使用してもよい。例えば、一般式(ZI)により表される化合物のR201’〜R203’の少なくとも1つが、一般式(ZI)により表されるもう1つの化合物のR201’〜R203’の少なくとも1つと結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0284】
更に好ましい(ZI)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)〜(ZI−4)を挙げることができる。
【0285】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201’〜R203’の少なくとも1つがアリール基である。即ち、化合物(ZI−1)は、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
【0286】
化合物(ZI−1)は、R201’〜R203’の全てがアリール基であってもよく、R201’〜R203’の一部がアリール基であり、それら以外がアルキル基であってもよい。なお、化合物(ZI−1)が複数のアリール基を含んでいる場合、これらアリール基は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0287】
化合物(ZI−1)としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物及びアリールジアルキルスルホニウム化合物が挙げられる。
【0288】
化合物(ZI−1)におけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、又は、インドール残基及びピロール残基等のヘテロアリール基が好ましく、フェニル基、ナフチル基又はインドール残基が特に好ましい。
【0289】
化合物(ZI−1)が必要に応じて有しているアルキル基としては、炭素数1〜15の直鎖、分岐又はシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0290】
これらアリール基及びアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基及びフェニルチオ基が挙げられる。
【0291】
好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、及び、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられる。特に好ましい置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。置換基は、3つのR201’〜R203’のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がフェニル基の場合には、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0292】
また、R201’、R202’及びR203’のうち1つ又は2つが、置換基を有していてもよいアリール基であり、残りの基が直鎖、分岐又は環状のアルキル基である態様も好ましい。この構造の具体例としては、特開2004−210670号公報の段落0141〜0153に記載の構造が挙げられる。
【0293】
このとき、上記アリール基としては、具体的には、R201’、R202’及びR203’としてのアリール基と同様であり、フェニル基又はナフチル基が好ましい。また、アリール基は、水酸基、アルコキシ基又はアルキル基のいずれかを置換基として有することが好ましい。置換基としより好ましくは、炭素数1〜12のアルコキシ基であり、更に好ましくは、炭素数1〜6のアルコキシ基である。
【0294】
上記の残りの基としての直鎖、分岐又は環状のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。これら基は、更に置換基を有していてもよい。また、上記の残りの基が2つ存在する場合、これら2つが互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
【0295】
化合物(ZI−1)は、例えば、以下の一般式(ZI−1A)により表される化合物である。
【0296】
【化79】

【0297】
一般式(ZI−1A)中、
13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
14は、複数存在する場合は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基又はシクロアルキルスルホニル基を表す。
15は、各々独立して、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。2つのR15は、互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
は、非求核性アニオンを表し、例えば、一般式(ZI)におけるXと同様のものが挙げられる。
【0298】
13、R14又はR15のアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。このアルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、n−ブチル基及びt−ブチル基が特に好ましい。
13、R14又はR15のシクロアルキル基としては、環若しくは多環のシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基)が挙げられ、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロドデカニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル及びシクロオクタジエニル基が挙げられる。これらのうち、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル及びシクロオクチル基が特に好ましい。
【0299】
13又はR14のアルコキシ基のアルキル基部分としては、例えば、先にR13、R14又はR15のアルキル基として列挙したものが挙げられる。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基及びn−ブトキシ基が特に好ましい。
【0300】
13のシクロアルキルオキシ基のシクロアルキル基部分としては、例えば、先にR13、R14又はR15のシクロアルキル基として列挙したものが挙げられる。このシクロアルキルオキシ基としては、シクロペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基が特に好ましい。
【0301】
13のアルコキシカルボニル基のアルコキシ基部分としては、例えば、先にR13又はR14のアルコキシ基として列挙したものが挙げられる。このアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基及びn−ブトキシカルボニル基が特に好ましい。
【0302】
14のアルキルスルホニル基のアルキル基部分としては、例えば、先にR13、R14又はR15のアルキル基として列挙したものが挙げられる。また、R14のシクロアルキルスルホニル基のシクロアルキル基部分としては、例えば、先にR13、R14又はR15のシクロアルキル基として列挙したものが挙げられる。これらアルキルスルホニル基又はシクロアルキルスルホニル基としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基、n−ブタンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基及びシクロヘキサンスルホニル基が特に好ましい。
【0303】
lは、好ましくは0又は1であり、より好ましくは1である。rは、好ましくは0〜2である。
【0304】
13、R14及びR15の各基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシアルキル基、シクロアルキルオキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、及びシクロアルキルオキシカルボニルオキシ基が挙げられる。
【0305】
アルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基及びt−ブトキシ基等の炭素数1〜20のものが挙げられる。
シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜20のものが挙げられる。
【0306】
アルコキシアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基及び2−エトキシエチル基等の炭素数2〜21のものが挙げられる。
シクロアルキルオキシアルキル基としては、例えば、シクロペンチルオキシエチル基、シクロペンチルオキシペンチル基、シクロヘキシルオキシエチル基及びシクロヘキシルオキシペンチル基等の炭素数4〜21のものが挙げられる。
【0307】
アルコキシカルボニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基及びt−ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜21のものが挙げられる。
シクロアルキルオキシカルボニル基としては、例えば、シクロペンチルオキシカルボニル基及びシクロヘキシルオキシカルボニル等の炭素数4〜21のものが挙げられる。
【0308】
アルコキシカルボニルオキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシカルボニルオキシ基としては、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、i−プロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基及びt−ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数2〜21のものが挙げられる。
シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基としては、例えば、シクロペンチルオキシカルボニルオキシ基及びシクロヘキシルオキシカルボニルオキシ基等の炭素数4〜21のものが挙げられる。
【0309】
2つのR15が互いに結合して形成し得る環構造としては、一般式(ZI−1A)中のS原子と共に、5員環又は6員環、特に好ましくは5員環(即ち、テトラヒドロチオフェン環)を形成する構造が好ましい。
この環構造は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、及びアルコキシカルボニルオキシ基が挙げられる。前記環構造に対する置換基は、複数個存在しても良く、また、それらが互いに結合して環(芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、芳香族若しくは非芳香族の複素環、又はこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環など)を形成しても良い。
15としては、メチル基、エチル基、及び2つのR15が互いに結合して硫黄原子と共にテトラヒドロチオフェン環構造を形成する2価の基が特に好ましい。
13のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基、R14のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基及びシクロアルキルスルホニル基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、及びハロゲン原子(特にフッ素原子)が好ましい。
【0310】
以下に、一般式(ZI−1A)により表される化合物におけるカチオンの好ましい具体例を示す。
【0311】
【化80】

【0312】
【化81】

【0313】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
【0314】
化合物(ZI−2)は、式(ZI)におけるR201’〜R203’が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
【0315】
201’〜R203’としての芳香環を含有しない有機基は、炭素数が例えば1〜30であり、好ましくは1〜20である。
【0316】
201’〜R203’は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、アリル基、ビニル基であることが好ましい。更に好ましくは、直鎖、分岐若しくは環状の2−オキソアルキル基又はアルコキシカルボニルメチル基であり、特に好ましくは、直鎖又は分岐の2−オキソアルキル基である。
【0317】
201’〜R203’としてのアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はペンチル基)及び炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はノルボニル基)が挙げられる。
【0318】
201’〜R203’としての2−オキソアルキル基は、直鎖、分岐及び環状のいずれであってもよく、好ましくは、上記のアルキル基の2位に>C=Oを有する基が挙げられる。
【0319】
201’〜R203’としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基の好ましい例としては、炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)が挙げられる。
【0320】
201’〜R203’は、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基及び/又はニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0321】
201’〜R203’のうち2つが互いに結合して、環構造を形成していてもよい。この環構造は、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合及び/又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201’〜R203’の内の2つが結合して形成する基としては、例えば、アルキレン基(例えば、ブチレン基又はペンチレン基)が挙げられる。
上記環構造としては、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、芳香族若しくは非芳香族の複素環、又は、これらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環を挙げることができる。環構造としては、3〜10員環を挙げることができ、4〜8員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。
【0322】
次いで、化合物(ZI−3)について説明する。
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)により表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0323】
【化82】

【0324】
式中、R1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。アルキル基及びアルコキシ基の炭素数は、1〜6が好ましい。
6c及びR7cは、水素原子又はアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1〜6が好ましい。
及びRは、各々独立に、アルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、アリル基又はビニル基を表す。これら原子団の炭素数は、1〜6が好ましい。
【0325】
1c〜R7cのいずれか2つ以上が互いに結合して、環構造を形成していてもよい。また、RとRとが結合して、環構造を形成していてもよい。これらの環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合及び/又はアミド結合を含んでいてもよい。
【0326】
一般式(ZI−3)におけるXは、一般式(ZI)におけるXと同義である。
【0327】
化合物(ZI−3)の具体例としては、特開2004−233661号公報の段落0046及び0047、又は、特開2003−35948号公報の段落0040〜0046に例示されている化合物に記載されている化合物が挙げられる。
【0328】
続いて、化合物(ZI−4)について説明する。
化合物(ZI−4)は、以下の一般式(ZI−4)により表されるカチオンを有した化合物である。この化合物(ZI−4)は、アウトガスの抑制に有効である。
【0329】
【化83】

【0330】
一般式(ZI−4)中、
〜R13は、各々独立に、水素原子又は置換基を表す。R〜R13のうち少なくとも1つは、アルコール性水酸基を含む置換基であることが好ましい。なお、ここで「アルコール性水酸基」とは、アルキル基の炭素原子に結合した水酸基を意味している。
Zは、単結合又は2価の連結基である。
【0331】
〜R13がアルコール性水酸基を含む置換基である場合、R〜R13は−(W−Y)により表される基であることが好ましい。ここで、Yは水酸基で置換されたアルキル基であり、Wは単結合又は2価の連結基である。
【0332】
Yにより表されるアルキル基の好ましい例としては、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。Yは、特に好ましくは、−CHCHOHにより表される構造を含んでいる。
【0333】
Wにより表される2価の連結基としては、特に制限は無いが、好ましくは単結合、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はカルバモイル基における任意の水素原子を単結合で置き換えた2価の基であり、更に好ましくは、単結合、アシルオキシ基、アルキルスルホニル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基における任意の水素原子を単結合で置き換えた2価の基である。
【0334】
〜R13がアルコール性水酸基を含む置換基である場合、含まれる炭素数は、好ましくは2〜10であり、更に好ましくは2〜6であり、特に好ましくは2〜4である。
【0335】
〜R13としてのアルコール性水酸基を含む置換基は、アルコール性水酸基を2つ以上有していてもよい。R〜R13としてのアルコール性水酸基を含む置換基の有するアルコール性水酸基の数は、1〜6であり、好ましくは1〜3であり、更に好ましくは1である。
【0336】
一般式(ZI−4)により表される化合物の有するアルコール性水酸基の数は、R〜R13すべて合わせて1〜10であり、好ましくは1〜6であり、更に好ましくは1〜3である。
【0337】
〜R13がアルコール性水酸基を含有しない場合、R〜R13としての置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及び複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基〔−B(OH)〕、ホスファト基〔−OPO(OH)〕、スルファト基(−OSOH)、並びに、他の公知の置換基が挙げられる。
【0338】
〜R13がアルコール性水酸基を含有しない場合、R〜R13は、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、シリル基又はウレイド基である。
【0339】
〜R13がアルコール性水酸基を含有しない場合、R〜R13は、更に好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、シアノ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基又はカルバモイル基である。
【0340】
〜R13がアルコール性水酸基を含有しない場合、R〜R13は、特に好ましくは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルコキシ基である。
【0341】
〜R13のうちの隣接する2つが互いに結合して、環を形成してもよい。この環には、芳香族及び非芳香族の炭化水素環並びに複素環が含まれる。これら環は、更に組み合わされて、縮合環を形成していてもよい。
【0342】
化合物(ZI−4)は、好ましくは、R〜R13のうち少なくとも1つがアルコール性水酸基を含んだ構造を有しており、更に好ましくは、R〜R13のうち少なくとも1つがアルコール性水酸基を含んだ構造を有している。
【0343】
Zは、上述したように、単結合又は2価の連結基を表している。この2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミド基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、ジスルフィド基、アシル基、アルキルスルホニル基、−CH=CH−、アミノカルボニルアミノ基及びアミノスルホニルアミノ基が挙げられる。
【0344】
この2価の連結基は、置換基を有していてもよい。これらの置換基としては、例えば、先にR〜R13について列挙したのと同様のものが挙げられる。
【0345】
Zは、好ましくは、単結合、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、−CH=CH−、アミノカルボニルアミノ基及びアミノスルホニルアミノ基等の電子求引性を持たない結合又は基であり、更に好ましくは、単結合、エーテル基又はチオエーテル基であり、特に好ましくは、単結合である。
【0346】
以下、一般式(ZII)及び(ZIII)について説明する。
【0347】
一般式(ZII)及び(ZIII)中、R204’、R205’、R206及びR207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。これらアリール基、アルキル基及びシクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
【0348】
204’、R205’、R206及びR207としてのアリール基の好ましい例としては、先に化合物(ZI−1)におけるR201’〜R203’について列挙したのと同様の基が挙げられる。
204’、R205’、R206及びR207としてのアルキル基及びシクロアルキル基の好ましい例としては、先に化合物(ZI−2)におけるR201’〜R203’について列挙した直鎖、分岐又はシクロアルキル基が挙げられる。
204’、R205’、R206及びR207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。R204’、R205’、R206及びR207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
【0349】
なお、一般式(ZII)におけるXは、一般式(ZI)におけるXと同義である。
【0350】
光酸発生剤の他の好ましい例として、下記一般式(ZIV)、(ZV)又は(ZVI)により表される化合物が挙げられる。
【0351】
【化84】

【0352】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、
Ar及びArは、各々独立に、置換又は無置換のアリール基を表す。
208は、一般式(ZV)と(ZVI)とで各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表している。これらアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
これら基は、フッ素原子により置換されていることが好ましい。こうすると、光酸発生剤が発生する酸の強度を高めることが可能となる。
【0353】
209及びR210は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は電子吸引性基を表す。これらアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び電子吸引性基は、置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び電子吸引性基が有していても良い置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、及び、ニトロ基が挙げられる。
好ましいR209としては、置換又は無置換のアリール基が挙げられる。
好ましいR210としては、電子吸引性基が挙げられる。この電子吸引性基としては、好ましくは、シアノ基及びフロロアルキル基が挙げられる。
【0354】
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。これらアルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は、置換基を有していてもよい。
Ar、Ar、R208、R209及びR210のアリール基の具体例としては、上記一般式(ZI−1)におけるR201’、R202’及びR203’としてのアリール基の具体例と同様のものを挙げることができる。
208、R209及びR210のアルキル基及びシクロアルキル基の具体例としては、それぞれ、上記一般式(ZI−2)におけるR201’、R202’及びR203’としてのアルキル基及びシクロアルキル基の具体例と同様のものを挙げることができる。
Aのアルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基など)を、Aのアルケニレン基としては、炭素数2〜12のアルケニレン基(例えば、エチニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基など)を、Aのアリーレン基としては、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基など)を、それぞれ挙げることができる。
【0355】
なお、光酸発生剤として、一般式(ZVI)により表される構造を複数有する化合物も好ましい。このような化合物としては、例えば、一般式(ZVI)により表される化合物のR209又はR210と、一般式(ZVI)により表されるもう一つの化合物のR209又はR210とが互いに結合した構造を有する化合物が挙げられる。
【0356】
光酸発生剤としては、一般式(ZI)〜(ZIII)により表される化合物がより好ましく、一般式(ZI)により表される化合物が更に好ましく、化合物(ZI−1)〜(ZI−3)が特に好ましい。
【0357】
光酸発生剤の具体例を以下に示すが、本発明の範囲は、これらに限定されるものではない。
【0358】
【化85】

【0359】
【化86】

【0360】
【化87】

【0361】
【化88】

【0362】
【化89】

【0363】
【化90】

【0364】
【化91】

【0365】
【化92】

【0366】
なお、光酸発生剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する際には、水素原子を除く全原子数が2以上異なる2種の有機酸を発生する化合物を組み合わせることが好ましい。
【0367】
本発明に係る組成物が光酸発生剤を更に含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.1〜40質量%であり、より好ましくは0.5〜30質量%であり、更に好ましくは1〜20質量%である。
【0368】
〔5〕溶剤
本発明に係る組成物は溶剤を含有することが好ましい。
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、各成分を溶解するものである限り特に限定されないが、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)など)、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、別名1−メトキシ−2−プロパノール)など)、乳酸アルキルエステル(乳酸エチル、乳酸メチルなど)、環状ラクトン(γ−ブチロラクトンなど、好ましくは炭素数4〜10)、鎖状又は環状のケトン(2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなど、好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、カルボン酸アルキル(酢酸ブチルなどの酢酸アルキルが好ましい)、及びアルコキシ酢酸アルキル(エトキシプロピオン酸エチル)などが挙げられる。その他使用可能な溶媒として、例えば、US2008/0248425A1号明細書の[0244]以降に記載されている溶剤などが挙げられる。
【0369】
上記の溶剤のうち、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、及び乳酸エチルが特に好ましい。
【0370】
これら溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合して用いる場合、水酸基を含んだ溶剤と水酸基を含んでいない溶剤とを混合することが好ましい。水酸基を含んだ溶剤と水酸基を含んでいない溶剤との質量比は、通常は1/99〜99/1であり、好ましくは10/90〜90/10であり、更に好ましくは20/80〜60/40である。
【0371】
水酸基を含んだ溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテル又は乳酸アルキルエステルが好ましく、水酸基を含んでいない溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートが好ましい。溶剤の50質量%以上がプロピレングリコールモノメチルエーテルである溶剤を用いることが特に好ましい。
【0372】
なお、溶剤の使用量は、組成物の全固形分濃度が、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは2.0〜6.0質量%、更に好ましくは3.0〜5.0質量%となるように定める。
【0373】
〔6〕界面活性剤
本発明に係る組成物は、界面活性剤を更に含有していてもよい。この界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が特に好ましい。
【0374】
この界面活性剤としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製のメガファックF176及びメガファックR08、OMNOVA社製のPF656及びPF6320、トロイケミカル(株)製のトロイゾルS−366、住友スリーエム(株)製のフロラードFC430、並びに、信越化学工業(株)製のポリシロキサンポリマーKP−341が挙げられる。
【0375】
また、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の界面活性剤を使用することもできる。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類及びポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類等が挙げられる。
【0376】
その他、公知の界面活性剤が適宜使用可能である。使用可能な界面活性剤としては、例えば、米国特許2008/0248425A1号明細書の[0273]以降に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0377】
界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に係る組成物が界面活性剤を更に含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.0001〜2質量%であり、より好ましくは0.001〜1質量%である。
【0378】
〔7〕溶解阻止化合物
本発明に係る組成物は、酸の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物(以下、「溶解阻止化合物」ともいう)を更に含んでいてもよい。
この溶解阻止化合物としては、220nm以下の透過性を低下させないため、Proceeding of SPIE, 2724,355 (1996)に記載されている酸分解性基を含むコール酸誘導体等の、酸分解性基を含有する脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。この酸分解性基としては、例えば、先に樹脂(P)における一般式(3)の「OY」、及び、一般式(4)の「COOY」と同様のものが挙げられる。
【0379】
なお、本発明に係る組成物をKrFエキシマレーザーで露光するか又は電子線で照射する場合には、溶解阻止化合物としては、フェノール化合物のフェノール性水酸基を酸分解基で置換した構造を含んだ化合物が好ましい。フェノール化合物としては、フェノール骨格を1〜9個含有するものが好ましく、2〜6個含有するものが更に好ましい。
【0380】
溶解阻止化合物の分子量は、3000以下であり、好ましくは300〜3000であり、更に好ましくは500〜2500である。
【0381】
本発明に係る組成物が溶解阻止化合物を含有する場合、その添加量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.0001〜20質量%であり、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0382】
以下に溶解阻止化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0383】
【化93】

【0384】
〔8〕その他の添加剤
本発明に係る組成物は、例えば、必要に応じて、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び現像液に対する溶解を促進させる化合物(以下、溶解促進性化合物ともいう)等を更に含有させることができる。また、特開2006−208781号公報及び特開2007−286574号公報等に記載されているプロトンアクセプター性官能基を備えた化合物も好適に用いることができる。
【0385】
上記の溶解促進性化合物は、例えば、フェノール性水酸基を2個以上、又はカルボキシ基を1個以上有する分子量1,000以下の低分子化合物である。なお、カルボキシ基を有する場合は、溶解促進性化合物は、脂環族又は脂肪族化合物であることが好ましい。
【0386】
これら溶解促進性化合物の添加量は、樹脂(P)の質量を基準として、好ましくは0〜50質量%であり、更に好ましくは5〜30質量%である。現像残渣抑制及び現像時パターン変形防止の観点から、この添加量は、50質量%以下とすることが好ましい。
【0387】
なお、上記の溶解促進性化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4916210号及び欧州特許第219294号等に記載の方法を参考にして、容易に合成することができる。
【0388】
〔9〕パターン形成方法
本発明に係る組成物は、典型的には、以下のようにして用いられる。即ち、本発明に係る組成物は、典型的には、基板等の支持体上に塗布されて、膜を形成する。この膜の厚みは、0.02〜0.1μmが好ましい。基板上に塗布する方法としては、スピン塗布が好ましく、その回転数は1000〜3000rpmが好ましい。
【0389】
例えば、この組成物は、精密集積回路素子の製造等に使用される基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆、窒化シリコン及びクロム蒸着された石英基板など)上に、スピナー及びコーター等の適当な塗布方法により塗布される。その後、これを乾燥して、感活性光線性又は感放射線性の膜(以下、レジスト膜ともいう)を得る。なお、公知の反射防止膜を予め塗設することもできる。
【0390】
次いで、このレジスト膜に活性光線又は放射線(好ましくは、電子線、X線又はEUV光)を照射し、好ましくはベーク(通常80〜150℃、より好ましくは90〜130℃)を行った後、現像する。これにより良好なパターンを得ることができる。そして、このパターンをマスクとして用いて、適宜エッチング処理及びイオン注入などを行い、半導体微細回路及びインプリント用モールド構造体等を作成する。
【0391】
なお、本発明の組成物を用いてインプリント用モールドを作成する場合のプロセスの詳細については、例えば、特許第4109085号公報、特開2008−162101号公報、及び「ナノインプリントの基礎と技術開発・応用展開―ナノインプリントの基板技術と最新の技術展開―編集:平井義彦(フロンティア出版)」等を参照されたい。また、特に情報記録媒体の製造に好適なモールド構造体の製造方法については、例えば、特許第4109085号公報及び特開2008−162101号公報を参照されたい。
【0392】
現像工程では、通常アルカリ現像液を用いる。現像方法は、パドル形成、ディップ及びダイナミックディスペンス等の公知の方法を適宜使用する。アルカリ現像液としては、種々のアルカリ水溶液が適用可能であるが、通常は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドアルカリ性水溶液が使用される。アルカリ現像液には、アルコール類及び/又は界面活性剤を、適当量添加してもよい。
【0393】
アルカリ現像液の濃度は、通常、0.1〜20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常、10.0〜15.0である。
【0394】
また、本発明のパターン形成方法において、レジスト膜をマスクブランクス上に形成しても良い。
ここで、マスクブランクスとは、半導体製造工程に用いられるフォトマスクを作製するための材料であり、通常、透明基板(好ましくはガラス基板)の上に遮光膜が設けられてなる。透明基板に対する遮光膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、透明基板上に、遮光材料を構成する材料を化学蒸着することにより形成することができる。
遮光膜を構成する材料としては、タンタル、クロム、モリブデン、チタン、ジルコニウム、スズ、ガリウム、アルミニウム等の金属を主成分とし、これらの金属元素の酸化物、窒化物、酸化窒化物が好適に用いられる。具体的には、酸化クロム、窒化クロム、クロム、酸化タンタル、窒化タンタル、タンタル、モリブデンシリサイド酸化物、モリブデンシリサイド窒化物、モリブデンシリサイド酸化窒化物、モリブデン等を挙げることができる。
遮光膜は単層でも良いが、複数の材料を塗り重ねた複層構造であることがより好ましい。複層構造の場合、1層当たりの膜の厚みは、特に限定されないが、5nm〜100nmであることが好ましく、10nm〜80nmであることがより好ましい。遮光膜全体の厚みとしては、特に限定されないが、5nm〜200nmであることが好ましく、10nm〜150nmであることがより好ましい。
このようなマスクブランクス上にレジスト膜を形成し、露光、現像することにより、フォトマスクを得ることができる。
【実施例】
【0395】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容はこれにより限定されるものではない。
<合成例1:樹脂(P−1)の合成>
日本曹達株式会社製、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP8000)30gをジメチルスルホキシド(DMSO)120mLに溶解し、2.21gの1−クロロメチルナフタレン、34.51gの炭酸カリウム、0.56gのヨウ化ナトリウムを加え、70℃で4時間撹拌した。反応液を室温に戻した後、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを加え、反応液を氷水中で撹拌しながら、23%酢酸水溶液130gを少しずつ反応液に添加した。反応液を分液ロートに移し、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを更に加えて撹拌後、水層を除去した。その後有機層を200mLの蒸留水で5回洗浄後、有機層を濃縮し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)120gに溶解した。この溶液を以下では溶液p−1と表記することがある。
次に、溶液p−1に、ビニルエーテル化合物としての5.78gの2−シクロヘキシルエチルビニルエーテル、及び、1.45gの2%カンファースルホン酸(PGMEA溶液)を加え、室温で4時間撹拌した。1.05gの6%トリエチルアミン(PGMEA溶液)を加え、しばらく撹拌した後、反応液を酢酸エチル165mLの入った分液ロートに移した。この有機層を蒸留水200mLで3回洗浄後、有機層をエバポレーターで濃縮し、酢酸エチルを除去した。この反応液をヘキサン2L中に滴下した。得られた沈殿の一部をNMR測定用に採取し、残りを70gのPGMEAに溶解した。得られた溶液からエバポレーターで低沸点溶媒を除去することで、樹脂(P−1)のPGMEA溶液(32.7質量%)が105.6g得られた。
【0396】
得られた樹脂(P−1)につき、H−NMR測定により、樹脂(P−1)の組成比(モル比)を算出した。また、GPC(溶媒:THF)測定により、樹脂(P−1)の重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)、数平均分子量(Mn:ポリスチレン換算)及び分散度(Mw/Mn、以下「PDI」ともいう)を算出した。これらの結果を、以下の化学式中に示す。
【0397】
【化94】

【0398】
<合成例2:樹脂(P−2)の合成>
合成例1で、5.78gの2−シクロヘキシルエチルビニルエーテルを、6.15gの2−(4−シクロヘキシルフェノキシ)エチルビニルエーテルに変えた以外は、合成例1と同様にして、樹脂(P−2)のPGMEA溶液(30.4質量%)が102.3g得られた。
【0399】
<合成例3:樹脂(P−3)の合成>
合成例1で、2.21gの1−クロロメチルナフタレンを4.28gの2−(クロロメチル)キノリン塩酸塩に、5.78gの2−シクロヘキシルエチルビニルエーテルを4.24gに変えた以外は、合成例1と同様にして、樹脂(P−3)のPGMEA溶液(31.2質量%)が102.7g得られた。
【0400】
<合成例4:樹脂(P−4)の合成>
300mLのナス型フラスコに、50gのベンズアルデヒドジメチルアセタール及び27.08gの塩化アセチルを加え、45℃で3時間攪拌した。反応後、減圧下で低沸点残留物を除去することにより、α−クロロベンジルメチルエーテルを49.8g得た。
【0401】
【化95】

【0402】
日本曹達株式会社製、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP8000)30gをジメチルスルホキシド(DMSO)120mLに溶解し、3.04gの4−クロロメチルビフェニル、34.51gの炭酸カリウム、0.56gのヨウ化ナトリウムを加え、70℃で4時間撹拌した。反応液を室温に戻した後、8.21gのα−クロロベンジルメチルエーテルを滴下し、室温で4時間攪拌した。酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを加え、反応液を氷水中で撹拌しながら、21質量%塩化アンモニウム水溶液130gを少しずつ反応液に添加した。反応液を分液ロートに移し、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを更に加えて撹拌後、水層を除去した。その後有機層を200mLの蒸留水で5回洗浄後、有機層を約150mLに濃縮し、ヘキサン2L中に滴下した。得られた沈殿の一部をNMR測定用に採取し、残りを70gのPGMEAに溶解した。得られた溶液からエバポレーターで低沸点溶媒を除去することで、樹脂(P−4)のPGMEA溶液(33.8質量%)が100.1g得られた。
【0403】
【化96】

【0404】
<合成例5:樹脂(P−5)の合成>
合成例1で、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP8000)を、日本曹達株式会社製、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP2500)に、2.21gの1−クロロメチルナフタレンを4.53gの9−(クロロメチル)アントラセンに変えた以外は、合成例1と同様にして、樹脂(P−5)のPGMEA溶液(30.2質量%)が99.4g得られた。
【0405】
<合成例6:樹脂(P−6)の合成>
110.58gの1,3−ジブロモプロパン、450mLのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に、9.58gの水酸化カリウム(KOH)及び20.00gのインドールを加え、70℃にて8時間攪拌した。室温に冷却後、反応液に蒸留水1Lを加え、1Lの酢酸エチルで抽出した。500mLの蒸留水で5回洗浄後、有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィーにて精製することで、27.24gのN−(3−ブロモプロピル)−インドールを得た。同様の方法にて、下記に示すブロモプロピル基を有する化合物(p−9)、(p−10)も合成した。
【0406】
【化97】

【0407】
【化98】

【0408】
次に合成例1で、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP8000)をポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP2500)に、2.21gの1−クロロメチルナフタレンを7.73gのN−(3−ブロモプロピル)−インドールに、5.78gの2−シクロヘキシルエチルビニルエーテルを4.68gのエチルビニルエーテルに変えた以外は、合成例1と同様にして、樹脂(P−6)のPGMEA溶液(31.5質量%)が100.6g得られた。
【0409】
<合成例7:樹脂(P−7)の合成>
日本曹達株式会社製、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP2500)30gをDMSO150mLに溶解し、4.41gの1−クロロメチルナフタレン、34.51gの炭酸カリウム、0.56gのヨウ化ナトリウムを加え、70℃で4時間撹拌した。反応液を室温に戻した後、6.65gのα−クロロベンジルメチルエーテルを滴下し、室温で3時間攪拌した。その後、3.40gのブタンスルトンを滴下し、更に室温で4時間攪拌した。酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを加え、反応液を氷水中で撹拌しながら、21質量%塩化アンモニウム水溶液130gを少しずつ反応液に添加した。反応液を分液ロートに移し、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを更に加えて撹拌後、水層を除去した。その後有機層を200mLの蒸留水で5回洗浄後、有機層を約150mLに濃縮し、ヘキサン2L中に滴下した。得られた沈殿をメタノール:THF混合溶液に溶解し、7.50gの臭化トリフェニルスルホニウムを加え、室温で2時間攪拌した。減圧下で反応液を濃縮し、300mLの酢酸エチルで希釈後、300mLの蒸留水で5回洗浄した。有機層を濃縮し、70gのPGMEAに溶解後、エバポレーターで低沸点溶媒を除去することで、樹脂(P−7)のPGMEA溶液(32.5質量%)が108.2g得られた。
【0410】
<合成例8:樹脂(P−8)の合成>
250gの臭化エチルマグネシウム(39質量%ジエチルエーテル溶液)に、氷浴中で冷却しながら500mLのテトラヒドロフラン(THF)を加え、51.31gのシクロペンタノンを滴下し、室温で2時間攪拌した。氷浴中で冷却しながら飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、減圧下でTHFを除去した。反応物を酢酸エチルで希釈後、蒸留水で3回洗浄した。有機層を濃縮し、減圧蒸留により19.3gの1−エチルシクロペンタノールを得た。
次に、14.00gの1−エチルシクロペンタノール、220mLのN−メチルピロリドン(NMP)、28.00gの1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)の混合溶液を氷浴中で冷却し、61.87gの臭化ブロモアセチルを滴下し、室温で5時間攪拌した。反応液を氷浴中で冷却後、蒸留水を滴下して反応を停止した。酢酸エチル800mLで希釈し、500mLの蒸留水で4回洗浄した。有機層を濃縮後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、25.43gのブロモ酢酸(1−エチル)シクロペンチルを得た。また、1−エチルシクロペンタノールをt−ブタノールに変えた以外は上記と同様にして、ブロモ酢酸 t−ブチルも得た。
【0411】
【化99】

【0412】
日本曹達株式会社製、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP2500)30gをDMSO120mLに溶解し、5.73gの1−クロロメチルナフタレン、34.51gの炭酸カリウム、0.56gのヨウ化ナトリウムを加え、70℃で4時間撹拌した。反応液を50℃にした後、7.04gのブロモ酢酸(1−エチル)シクロペンチルを加えて4時間攪拌した。反応液を室温に戻した後、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを加え、反応液を氷水中で撹拌しながら、23質量%酢酸水溶液130gを少しずつ反応液に添加した。反応液を分液ロートに移し、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを更に加えて撹拌後、水層を除去した。その後有機層を200mLの蒸留水で5回洗浄後、有機層を濃縮し、PGMEA120gに溶解した。
次に、上記PGMEA溶液に5.01gの2−シクロヘキシルエチルビニルエーテル及び1.45gの2質量%カンファースルホン酸(PGMEA溶液)を加え、室温で4時間撹拌した。1.05gの6質量%トリエチルアミン(PGMEA溶液)を加え、しばらく撹拌した後、反応液を酢酸エチル165mLの入った分液ロートに移した。この有機層を蒸留水200mLで3回洗浄後、有機層をエバポレーターで濃縮し、酢酸エチルを除去した。この反応液をヘキサン2L中に滴下した。得られた沈殿の一部をNMR測定用に採取し、残りを70gのPGMEAに溶解した。得られた溶液からエバポレーターで低沸点溶媒を除去することで、樹脂(P−8)のPGMEA溶液(34.0質量%)が109.6g得られた。
【0413】
<合成例9:樹脂(P−9)の合成>
日本曹達株式会社製、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP8000)30gをジメチルスルホキシド(DMSO)120mLに溶解し、9.36gのブロモ酢酸(1−エチル)シクロペンチル、9.70gの上記化合物(p−9)、34.51gの炭酸カリウム、0.89gのヨウ化ナトリウムを加え、70℃で4時間撹拌した。反応液を室温に戻した後、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを加え、反応液を氷水中で撹拌しながら、23質量%酢酸水溶液130gを少しずつ反応液に添加した。反応液を分液ロートに移し、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを更に加えて撹拌後、水層を除去した。その後有機層を200mLの蒸留水で5回洗浄後、有機層を約150mLに濃縮し、ヘキサン2L中に滴下した。得られた沈殿の一部をNMR測定用に採取し、残りを70gのPGMEAに溶解した。得られた溶液からエバポレーターで低沸点溶媒を除去することで、樹脂(P−9)のPGMEA溶液(34.6質量%)が102.1g得られた。
【0414】
<合成例10:樹脂(P−10)の合成>
合成例9にて、9.36gのブロモ酢酸(1−エチル)シクロペンチル、9.70gの上記化合物(p−9)を、8.73gの上記ブロモ酢酸t−ブチル、5.73gの上記化合物(p−10)に変えた以外は合成例9と同様にして、樹脂(P−10)のPGMEA溶液(33.5質量%)が102.3g得られた。
【0415】
<合成例11:樹脂(P−11)の合成>
1−メトキシー2−プロパノール4.68gを窒素気流下、80℃に加熱した。この液を攪拌しながら、以下に示すモノマー(M−1)3.89g、モノマー(M−2)1.44g、モノマー(M−3)2.12g、モノマー(M−4)1.19g、1−メトキシー2−プロパノール18.70g、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル〔V−601、和光純薬工業(株)製〕1.38gの混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で更に4時間攪拌した。反応液を放冷後、多量のヘキサン/酢酸エチルで再沈殿を行い、真空乾燥を行うことで、本発明の樹脂(P−11)を5.42g得た。
【0416】
【化100】

【0417】
<合成例12〜15:樹脂(P−12)〜(P−15)の合成>
以下、合成例11と同様にして、樹脂(P−12)〜(P−15)を合成した。使用したモノマー、その仕込み量(g)、重合濃度(質量%)、重合開始剤仕込み量(g)、及び得られた樹脂の得量(g)を下表1に示す。
【0418】
【表1】

【0419】
樹脂(P−12)〜(P−15)の合成に用いたモノマーを以下に示す。
【0420】
【化101】

【0421】
<合成例16〜21:樹脂(P−16)〜(P−21)の合成>
加える試薬の種類・量を下記表2に示す通りに変更した以外は合成例1と同様にして、樹脂(P−16)〜(P−21)を合成した。
【0422】
【表2】

【0423】
樹脂(P−18)〜(P−21)の合成に用いたビニルエーテル化合物を以下に示す。
【0424】
【化102】

【0425】
<合成例22:樹脂(P−22)の合成>
30.0gの3,3−ジメトキシプロピオニトリル、67.63gのベンジルアルコール、100mlのトルエンに、4.95gのp−トルエンスルホン酸一水和物を加え、110℃で8時間攪拌した。反応液を室温に戻した後、5.26gのトリエチルアミンを加え、5分間攪拌した。反応液を分液ロートに移し、1質量%炭酸カリウム水溶液200mlで1回、次いで蒸留水200mlで3回洗浄した。トルエン及び未反応原料を減圧留去することで、60.6gの3,3−ジベンジルオキシプロピオニトリルを得た。これに21.36gの塩化アセチルを加え、45℃で6時間攪拌した。反応液を室温に戻した後、未反応の塩化アセチルを減圧留去した。反応液をH−NMRで分析したところ、反応液中の3−クロロ−3−ベンジルオキシプロピオニトリルの濃度は54.2質量%であった。
【0426】
【化103】

【0427】
日本曹達株式会社製、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP8000)30gをジメチルスルホキシド(DMSO)120mLに溶解し、2.21gの1−クロロメチルナフタレン、34.51gの炭酸カリウム、0.56gのヨウ化ナトリウムを加え、70℃で4時間撹拌した。反応液を室温に戻した後、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを加え、反応液を氷水中で撹拌しながら、23%酢酸水溶液130gを少しずつ反応液に添加した。反応液を分液ロートに移し、酢酸エチル100mLと蒸留水100mLを更に加えて撹拌後、水層を除去した。その後有機層を200mLの蒸留水で5回洗浄後、有機層を濃縮し、テトラヒドロフラン(THF)120gに溶解した。トリエチルアミン26.53gを加え、反応液を0℃に冷却後、前記3−クロロ−3−ベンジルオキシプロピオニトリル溶液23.43gを滴下した。反応液を室温に戻した後、4時間攪拌した。反応液に蒸留水200mlを加えた後、エバポレーターでTHFを除去した。酢酸エチル200mLを加え、反応液を分液ロートに移し、水層を除去した。蒸留水200mlで3回洗浄した後、エバポレーターで有機層を約150mLに濃縮し、ヘキサン2L中に滴下した。得られた沈殿の一部をNMR測定用に採取し、残りを75gのPGMEAに溶解した。得られた溶液からエバポレーターで低沸点溶媒を除去することで、樹脂(P−22)のPGMEA溶液(29.6質量%)が105.2g得られた。
【0428】
【化104】

【0429】
以下、樹脂(P−1)〜(P−22)の各々について、構造、組成比、重量平均分子量、及び分散度を示す。
【0430】
【化105】

【0431】
【化106】

【0432】
【化107】

【0433】
<比較合成例1:樹脂(R−1)の合成>
特開2009−86354号公報記載の方法に従い、下記記載の樹脂(R−1)を得た。
【0434】
<比較合成例2:樹脂(R−2)の合成>
日本曹達株式会社製、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP2500)30gをPGMEA120mLに溶解し、11.56gの2−シクロヘキシルエチルビニルエーテル及び1.45gの2%カンファースルホン酸(PGMEA溶液)を加え、室温で4時間撹拌した。1.05gの6%トリエチルアミン(PGMEA溶液)を加え、しばらく撹拌した後、反応液を酢酸エチル165mLの入った分液ロートに移した。この有機層を蒸留水200mLで3回洗浄後、有機層をエバポレーターで濃縮し、酢酸エチルを除去することで、樹脂(R−2)のPGMEA溶液(27.7%)が128.2g得られた。
【0435】
<比較合成例3:樹脂(R−3)の合成>
日本曹達株式会社製、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP8000)10gをPGMEA60mLに溶解し、トリエチルアミン8.67gを加えた。反応液を氷浴中で冷却し、0.80gの2−ナフトイルクロリドを10mLのPGMEAに溶解した溶液を滴下した。反応液を室温で4時間攪拌後、蒸留水を加えて反応を停止した。反応物を100mLの酢酸エチルで希釈し、100mLの蒸留水で5回洗浄した。有機層に10mLのPGMEAを加え、エバポレーターで酢酸エチルを除去した。
上記反応液に、1.68gのエチルビニルエーテル及び0.48gの2%カンファースルホン酸(PGMEA溶液)を加え、室温で4時間撹拌した。0.35gの6%トリエチルアミン(PGMEA溶液)を加え、しばらく撹拌した後、反応液を酢酸エチル55mLの入った分液ロートに移した。この有機層を蒸留水50mLで3回洗浄後、有機層をエバポレーターで濃縮し、酢酸エチルを除去した。この反応液をヘキサン800mL中に滴下した。得られた沈殿の一部をNMR測定用に採取し、残りを25gのPGMEAに溶解した。得られた溶液からエバポレーターで低沸点溶媒を除去することで、樹脂(R−3)のPGMEA溶液(28.9%)が36.1g得られた。
【0436】
以下、樹脂(R−1)〜(R−3)の各々について、構造、組成比、重量平均分子量、及び分散度を示す。
【0437】
【化108】

【0438】
〔光酸発生剤〕
光酸発生剤としては、次式により表される化合物を用いた。
【0439】
【化109】

【0440】
<合成例:PAG−1>
(トリシクロヘキシルベンゼンの合成)
ベンゼン20.0gに塩化アルミニウム6.83gを加え、3℃で冷却攪拌し、シクロ
ヘキシルクロリド40.4gをゆっくり滴下した。滴下後、室温で5時間攪拌し、氷水にあけた。酢酸エチルで有機層を抽出し、得られた有機層を40℃で減圧留去した。更に170℃で減圧留去後、室温に冷却し、アセトン50mlを投入し、再結晶させた。析出した結晶を濾取し、トリシクロヘキシルベンゼン14gを得た。
【0441】
(トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの合成)
トリシクロヘキシルベンゼン30gを塩化メチレン50mlに溶解し、3℃で冷却攪拌し、クロロスルホン酸15.2gをゆっくり滴下した。滴下後、室温で5時間攪拌し、氷10gを投入後、50%水酸化ナトリウム水溶液を40g投入した。更にエタノールを20g加え、50℃で1時間攪拌後、不溶分を濾過除去し、40℃で減圧留去した。析出した結晶を濾取し、ヘキサン洗浄し、1,3,5−トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム30gを得た。
【0442】
(PAG−1の合成)
トリフェニルスルホニウムブロミド4.0gをメタノール20mlに溶解し、20mlのメタノールに溶解させた1,3,5−トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5.0gを加えた。室温で2時間攪拌後、イオン交換水50mlを加えクロロホルムで抽出した。得られた有機層を水で洗浄後、40℃で減圧留去し、得られた結晶をメタノール/酢酸エチル溶媒で再結晶した。これにより化合物PAG−1を5.0g得た。
【0443】
H−NMR(400MHz,CDCl) δ=7.85(d,6H),7.68(t,3H),7.59(t,6H),6.97(s,2H),4.36−4.27(m,2H),2.48−2.38(m,1H),1.97−1.16(m,30H)。
【0444】
同様にして、PAG−2〜PAG−6についても合成した。
【0445】
〔塩基性化合物〕
塩基性化合物としては、次式により表される化合物を用いた。
【0446】
【化110】

【0447】
〔界面活性剤及び溶剤〕
界面活性剤としては、以下のものを用いた。
W−1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素系)
W−2:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素及びシリコン系)
W−3:PF6320(OMNOVA社製;フッ素系)
【0448】
溶剤としては、以下のものを用いた。
S1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
S2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
【0449】
[実施例1〜23及び比較例1〜3]
下記表2に示す各成分を、表2に示す溶剤に溶解させた。これを0.1μmのポアサイズを有するポリテトラフルオロエチレンフィルターを用いてろ過した。これにより、表2に示す全固形分濃度のポジ型レジスト溶液を調製した。なお、表2に示す各成分の濃度は、全固形分の質量を基準とした質量濃度である。
【0450】
<レジスト評価>
調製したポジ型レジスト溶液を、スピンコータを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、130℃で90秒間に亘って加熱乾燥を行った。これにより、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。
【0451】
このレジスト膜に対して、電子線照射装置((株)日立製作所製HL750;加速電圧50keV)を用いて、電子線照射を行った。照射後直ぐに、120℃で90秒間ホットプレート上にて加熱した。その後、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて、23℃で60秒間現像し、30秒間純水を用いてリンスした後、乾燥させた。これにより、ラインアンドスペースパターン(ライン:スペース=1:1)と孤立ラインパターン(ライン:スペース=1:>100)とをそれぞれ形成した。なお、以下では、ラインアンドスペースパターンをL&Sと略記し、孤立ラインパターンをILと略記することがある。
【0452】
〔感度〕
得られた各パターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4800)を用いて観察した。L&Sパターン及びILパターンの何れについても、100nmの線幅のラインを解像する際の最小照射エネルギーを感度(μC/cm)とした。
【0453】
〔解像力〕
上記の感度を示す照射量における限界解像力(ラインとスペースが分離解像する最小の線幅)を解像力(nm)とした。
【0454】
〔残膜率(ドライエッチング耐性)〕
ヘキサメチルジシラザン処理をしたウエハー上に、膜厚100nmのポジ型レジスト膜を形成した。この膜に対し、CF(10mL/min)とO(20mL/min)とAr(1000mL/min)との混合ガスを用いて、23℃で30秒間プラズマエッチングを行った。その後、プラズマエッチング後のレジスト膜の膜厚を測定した。そして、このエッチング後の膜厚を、エッチング前の膜厚で除して100倍することにより、残膜率(%)を得た。なお、残膜率が大きいほど、ドライエッチング耐性は良好である。
【0455】
【表3】

【0456】
【表4】

【0457】
【表5】

【0458】
【表6】

【0459】
上記実施例22において、露光後の樹脂(P)のClogP値については、樹脂(P−5)及び樹脂(P−6)の露光後ClogP値の相加平均値とした。
【0460】
表1に示すように、実施例1〜23に係る組成物は、比較例1〜3に係る組成物と比較して、ILパターンを形成する際の解像度が優れていた。また、実施例1〜23に係る組成物は、プラズマエッチング耐性及びL&Sパターンを形成する際の解像度にも優れていた。
【0461】
[実施例24〜33及び比較例4〜6]
マスクブランクス上におけるレジスト膜の性能を確認するべく、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板を、化学蒸着によって厚み100nmの酸化クロム膜(遮光膜)が設けられたガラス基板に、レジスト溶液塗布後の加熱条件を130℃で90秒間から130℃で600秒間に、電子線照射後の加熱条件を120℃で90秒間から120℃で600秒間に変更した以外は、実施例1〜23と同様にポジ型レジスト溶液を調製し、レジスト膜を形成し、レジスト評価を行った。結果を表3に示す。
【0462】
【表7】

【0463】
【表8】

【0464】
表3に示すように、実施例24〜33に係る組成物は、比較例4〜6に係る組成物と比較して、ILパターンを形成する際の解像度が優れていた。また、実施例24〜33に係る組成物は、プラズマエッチング耐性及びL&Sパターンを形成する際の解像度にも優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(P)を含有することを特徴とする感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】


式中、
〜Rは、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。
は、アリーレン基を表す。
は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、−O−、−S−、又は、これらの2種以上の組み合わせからなる基を表す。
Xは、複数の芳香環を含む基を表し、前記複数の芳香環は、縮環して多環式構造を形成しているか又は単結合を介して互いに連結されている。
【請求項2】
前記樹脂(P)が、更に、下記一般式(2)で表される繰り返し単位と、下記一般式(3)で表される繰り返し単位及び下記一般式(4)で表される繰り返し単位の少なくとも一方とを有することを特徴とする請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化2】


式中、
〜R及びR41〜R43は、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。
及びLは、各々独立に、アリーレン基を表す。
は単結合又は2価の連結基を表す。
及びYは酸の作用により脱離する基を表す。
【請求項3】
前記Xは、下記一般式(X1)〜(X6)のいずれかにより表される構造部位において、複数の芳香環を構成している原子に結合する任意の1個の水素原子又はR11を除してなる基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化3】

式中、
10は、1価の置換基を表し、複数存在する場合は、同じであっても異なっていてもよい。
11は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、前記Mに結合する結合手を表す。
は独立して0〜14の整数である。
はCH又はNを表し、2つのXは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
前記M及びR10は、前記複数の芳香環を構成している原子のいずれに結合していてもよい。
【請求項4】
前記樹脂(P)が、上記一般式(3)で表される繰り返し単位を含有するとともに、
前記Yは、下記一般式(5)により表される基であることを特徴とする請求項2又は3に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化4】


式中、
12及びR13は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はこれらの2種以上の組み合わせを表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂環基、又は、ヘテロ原子を含んでいてもよい芳香環基を表す。
12、R13、M及びQの少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
【請求項5】
前記樹脂(P)は、下記一般式(6)により表される繰り返し単位を更に有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化5】


式中、
14、R15及びR16は、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。
はアリーレン基を表す。
は単結合又は2価の連結基を表す。
は活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。
【請求項6】
前記Y及びYが脱離した後の樹脂(P)のCLogPの値が、2.6以上であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂(P)が、下記一般式(6)により表される繰り返し単位を更に有するとともに、
前記Y及びYが脱離してかつ、下記一般式(6)中のSが分解して側鎖に酸を発生させた後の樹脂(P)のCLogPの値が、2.6以上であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化6】

式中、
14、R15及びR16は、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。
はアリーレン基を表す。
は単結合又は2価の連結基を表す。
は活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。
【請求項8】
前記樹脂(P)の分子量分布(Mw/Mn)が1.00〜1.30であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項9】
電子線、X線又はEUV光により露光されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたレジスト膜。
【請求項11】
請求項10に記載のレジスト膜を塗布した、レジスト塗布マスクブランクス。
【請求項12】
請求項10に記載のレジスト膜を露光することと、
前記露光された膜を現像することと
を含んだパターン形成方法。
【請求項13】
請求項11に記載のレジスト塗布マスクブランクスを露光することと、前記露光されたマスクブランクスを現像することとを含んだパターン形成方法。
【請求項14】
前記露光は、電子線、X線又はEUV光を用いて行われることを特徴とする請求項12又は13に記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2011−175230(P2011−175230A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190109(P2010−190109)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】