説明

感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、これを用いた感活性光線性又は感放射線性膜、及び、パターン形成方法

【課題】高解像性で良好な形状の孤立ラインパターンを形成することができ、且つ、ドライエッチング耐性を含む他のレジスト性能にも優れる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、これを用いた感活性光線性又は感放射線性膜、及びパターン形成方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも1つのフェノール性水酸基と、フェノール性水酸基の水素原子が下記一般式(1)で表される基によって置換されている基を少なくとも1つ含む化合物(P)を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、これを用いた感活性光線性又は感放射線性膜、及びパターン形成方法に関する。特に本発明は、超LSI及び高容量マイクロチップの製造プロセス、ナノインプリント用モールドの製造プロセス及び高密度情報記録媒体の製造プロセス等に適用可能な超マイクロリソグラフィプロセス、及び、その他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いられる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、これを用いた感活性光線性又は感放射線性膜、及びパターン形成方法に関する。更に詳しくは、本発明は、電子線、X線又はEUV光を用いる半導体素子の微細加工に好適に用いることができる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、これを用いた感活性光線性又は感放射線性膜、及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レジスト組成物を用いた微細加工では、集積回路の高集積化に伴って、超微細パターンの形成が要求されている。それゆえ、露光波長にも短波長化の傾向が見られ、例えば、エキシマレーザー光の代わりに電子線、X線又はEUV光を用いたリソグラフィー技術の開発が進んでいる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
電子線(EB)リソグラフィーでは、EBの加速電圧を増大させることによって、レジスト膜中での電子散乱、即ち前方散乱の影響が小さくなることが分かっている。それゆえ、近年では、EBの加速電圧は増大傾向にある。しかしながら、EBの加速電圧を増大させると、前方散乱の影響が小さくなる代わりに、レジスト基板において反射した電子の散乱、即ち後方散乱の影響が増大する。そして露光面積の大きい孤立ラインパターンを形成する場合には、この後方散乱の影響が特に大きい。それゆえ、例えばEBの加速電圧を増大させると、孤立ラインパターンの解像性が低下する可能性がある。
【0004】
特に、半導体露光に使用されるフォトマスクブランクスへのパターニングの場合、レジスト膜の下層には、クロム、モリブデン、タンタル等の重原子を含む遮光膜が存在し、シリコンウェハー上にレジストを塗布する場合に比べ、レジスト下層からの反射に起因する後方散乱の影響がより顕著である。その為、フォトマスクブランクス上で孤立ラインパターンを形成する場合には、特に後方散乱の影響を受けやすく、解像性が低下する可能性が大きい。
【0005】
化学増幅型ポジレジストは一般的に、光照射により強酸を発生する化合物(光酸発生剤)と、発生した酸の触媒作用により疎水性の酸不安定基が分解し、アルカリ可溶性の物質に変化する化合物とを含有する感光性組成物であり、未露光部分における暗反応を抑止する為に、更に塩基性化合物を含む場合もある。この塩基性化合物が存在することで、散乱電子の影響により発生した酸が中和反応により失活し、未露光部の膜減りを抑制することが出来る。しかしながら、酸不安定基として酸分解反応の活性化エネルギーが低いアセタール基を使用すると、酸不安定基の分解反応と、発生酸の塩基性化合物との中和反応が競合する為、未露光部の膜減りを完全に抑制することが出来ず、特に孤立ラインパターンの解像性が低下する。
【0006】
孤立ラインパターンの解像性を向上させる方法の1つとして、樹脂の溶解性を調整する基を含む樹脂の使用が検討されているが(例えば、特許文献2を参照)、上記問題の根本的解決手段にはならず、孤立ラインパターンの解像性を充分に満足するには至っていない。
【0007】
また、レジスト組成物による微細加工は、直接に集積回路の製造に用いられるだけでなく、近年ではいわゆるインプリント用モールド構造体の作製等にも適用されている(例えば、特許文献3、4、及び非特許文献1を参照)。インプリント用モールド構造体の作製に際しても、描画面積の増加と共に後方散乱の影響が顕著になり、解像性が低下する傾向にある。そのため、特に、X線、軟X線、電子線を露光光源として使用して孤立パターンを形成する場合においても、高感度、高解像性、及び、良好なドライエッチング耐性を同時に満足させることが重要な課題となっており、これらの解決が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−95009号公報
【特許文献2】特開2005−157401号公報
【特許文献3】特開2004−158287号公報
【特許文献4】特開2008−162101号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ナノインプリントの基礎と技術開発・応用展開−ナノインプリントの基板技術と最新の技術展開―編集:平井義彦 フロンティア出版(2006年6月発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高解像性で良好な形状の孤立ラインパターンを形成することができ、且つ、ドライエッチング耐性を含む他のレジスト性能にも優れる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、これを用いた感活性光線性又は感放射線性膜、及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一態様において、下記の通りである。
(1) 少なくとも1つのフェノール性水酸基と、フェノール性水酸基の水素原子が下記一般式(1)で表される基によって置換されている基を少なくとも1つ含む化合物(P)を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

【0012】
式中、
11、R12及びR13はそれぞれ独立に、−(CR111213)中のCと結合する原子が炭素原子である有機基を表す。ここで、R11、R12及びR13により表される有機基に含まれる炭素原子数の合計は4以上である。R11、R12及びR13の少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。
11は単結合又は2価の連結基を表す。
11はアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。
【0013】
(2) 化合物(P)が下記一般式(2)又は下記一般式(7)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物である、(1)に記載の組成物。
【化2】

【0014】
一般式(2)中、
21は水素原子又はメチル基を表す。
Ar21はアリーレン基を表す。
11、R12及びR13はそれぞれ独立に、−(CR111213)中のCと結合する原子が炭素原子である有機基を表す。ここで、R11、R12及びR13により表される有機基に含まれる炭素原子数の合計は4以上である。R11、R12及びR13の少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。
11は単結合又は2価の連結基を表す。
11はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
【0015】
一般式(7)中、
71は水素原子又はメチル基を表す。
71は単結合又はアルキレン基を表す。
Ar71はアリーレン基を表す。
11、R12及びR13はそれぞれ独立に、−(CR111213)中のCと結合する原子が炭素原子である有機基を表す。ここで、R11、R12及びR13により表される有機基に含まれる炭素原子数の合計は4以上である。R11、R12及びR13の少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。
11は単結合又は2価の連結基を表す。
11はアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール環基を表す。
【0016】
(3) 前記Ar21及びAr71がフェニレン基である、(2)に記載の組成物。
(4) 前記R11、R12及びR13のうち少なくとも1つが、少なくとも1つの環状構造を有する、(1)乃至(3)の何れか1項に記載の組成物。
【0017】
(5) 前記R11、R12及びR13の少なくとも2つが互いに結合して多環を形成する、(1)乃至(4)の何れか1項に記載の組成物。
【0018】
(6) 前記−M11−Q11で表される基が、アルキル基、シクロアルキル基で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、又はアリールオキシアルキル基である、(1)乃至(5)の何れか1項に記載の組成物。
【0019】
(7) 化合物(P)が、下記一般式(5)で表される繰り返し単位を含んでいる(2)乃至(6)のいずれか1項に記載の組成物。
【化3】

【0020】
式中、
51は水素原子又はメチル基を表す。
Ar51はアリーレン基を表す。
【0021】
(8) 化合物(P)が、下記一般式(3)により表される非分解性の繰り返し単位を更に含んでいる、(2)乃至(7)の何れか1項に記載の組成物。
【化4】

【0022】
式中、
31は、水素原子又はメチル基を表す。
Ar31は、アリーレン基を表す。
31は、単結合又は2価の連結基を表す。
31は、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。
【0023】
(9) 化合物(P)が、下記一般式(4)により表される繰り返し単位を更に含んでいる、(2)乃至(8)の何れか1項に記載の組成物。
【化5】

【0024】
式中、
41は、水素原子又はメチル基を表す。
Ar41は、アリーレン基を表す。
41は、単結合又は2価の連結基を表す。
Sは、活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。
【0025】
(10) 電子線、X線又はEUV光により露光される(1)乃至(9)の何れか1項に記載の組成物。
(11) (1)乃至(10)の何れか1項に記載の組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
【0026】
(12) (11)に記載の感活性光線性又は感放射線性膜が形成されたマスクブランクス。
(13) (12)に記載のマスクブランクスを、露光し、現像することにより得られる半導体製造用マスク。
【0027】
(14) (11)に記載の膜を露光することと、
前記露光された膜を現像することと
を含んだパターン形成方法。
【0028】
(15) (12)に記載のマスクブランクスを露光することと、
前記露光されたマスクブランクスを現像することと
を含んだパターン形成方法。
【0029】
(16) 前記露光は、電子線、X線又はEUV光により行われる、(14)又は(15)に記載の方法。
【0030】
(17) 下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物。
【化6】

【0031】
式中、
21は水素原子又はメチル基を表す。
Ar21はアリーレン基を表す。
11、R12及びR13はそれぞれ独立に、−(CR111213)中のCと結合する原子が炭素原子である有機基を表す。ここで、R11、R12及びR13により表される有機基に含まれる炭素原子数の合計は4以上である。R11、R12及びR13の少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。
11は単結合又は2価の連結基を表す。
11はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
【0032】
(18) 下記一般式(5)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物と、下記一般式(A)で表される化合物とを反応させることを含む、(17)に記載の高分子化合物の製造方法。
【化7】

【0033】
一般式(5)中、
51は水素原子又はメチル基を表す。
Ar51はアリーレン基を表す。
一般式(A)中、
は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
【0034】
(19) 下記一般式(B)で表される化合物を重合させることを含む、(17)に記載の高分子化合物の製造方法。
【化8】

【0035】
式中、
21は水素原子又はメチル基を表す。
Ar21はアリーレン基を表す。
11、R12及びR13はそれぞれ独立に、−(CR111213)中のCと結合する原子が炭素原子である有機基を表す。ここで、R11、R12及びR13により表される有機基に含まれる炭素原子数の合計は4以上である。R11、R12及びR13の少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。
11は単結合又は2価の連結基を表す。
11はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
【発明の効果】
【0036】
本発明により、高解像性で良好な形状の孤立ラインパターンを形成することができ、更に、ラインアンドスペースパターンの解像性、ドライエッチング耐性、ラフネス特性等のレジスト性能に優れる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、これを用いた感活性光線性又は感放射線性膜及びパターン形成方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例で合成した化合物(P−1)のH−NMRチャートを示す図。
【図2】実施例で合成した化合物(P−4)のH−NMRチャートを示す図。
【図3】実施例で合成した化合物(P−13)のH−NMRチャートを示す図。
【図4】実施例で合成した化合物(P−16)のH−NMRチャートを示す図。
【図5】実施例で合成した化合物(P−33)のH−NMRチャートを示す図。
【図6】実施例で合成した化合物(P−36)のH−NMRチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、本明細書に於ける基(原子団)の表記において、置換又は無置換を記していない表記は、置換基を有していないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0039】
本発明において「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等を意味する。また、本発明において「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、EUV光等による露光のみならず、電子線及びイオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0040】
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、例えばポジ型の組成物であり、典型的にはポジ型のレジスト組成物である。以下、この組成物の構成を説明する。
【0041】
〔1〕化合物(P)
本発明に係る組成物は、少なくとも1つのフェノール性水酸基と、フェノール性水酸基の水素原子が下記一般式(1)で表される基(以下において、「酸不安定基」ともいう。)によって置換されている基を少なくとも1つ含む化合物(P)を含有する。ここで、「酸不安定基」とは、酸の作用により、化学結合の切断を伴って脱離する基をいう。また、「フェノール性水酸基」とは、芳香族環に直接結合した水酸基をいう。
【化9】

【0042】
一般式(1)において、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に、−(CR111213)中のCと結合する原子が炭素原子である有機基を表す。ここで、R11、R12及びR13により表される有機基に含まれる炭素原子数の合計は4以上である。R11、R12及びR13の少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。
11は単結合又は2価の連結基を表す。
11はアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。
【0043】
一般式(1)について詳細に説明する。
上記の通り、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に有機基を表す。
ここで有機基とは、少なくとも1つの炭素原子を含む基であり、含まれる炭素原子の一つが−(CR111213)基中のCと結合している。
【0044】
また、R11、R12及びR13により表される有機基に含まれる炭素原子数の合計は4以上であり、好ましくは6以上20以下であり、6以上10以下が特に好ましい。
【0045】
11、R12及びR13により表される有機基としては、炭素−水素結合部分を含む有機基が好ましく、2以上の炭素原子を含む場合は、炭素−炭素結合が単結合のみからなる飽和有機基であってもよいし、炭素−炭素結合が二重結合或いは三重結合からなる部分を含む不飽和有機基であってもよい。また、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0046】
11、R12及びR13としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は炭素原子で連結する複素環基を挙げることができる。炭素原子で連結する複素環基は芳香族であっても非芳香族であってもよい。
【0047】
一態様において、アルキル基の炭素数は、好ましくは20以下であり、更に好ましくは8以下である。このアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基及びドデシル基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びt−ブチル基が特に好ましい。
【0048】
シクロアルキル基は、単環型であってもよく、多環型であってもよい。このシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは3〜10である。このシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基が挙げられる。中でも、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0049】
アリール基は、複数の芳香環が単結合を介して互いに連結された構造(例えば、ビフェニル基、ターフェニル基)も含む。アリール基の炭素数は、好ましくは4〜20であり、更に好ましくは6〜14である。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。中でも、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が特に好ましい。
【0050】
アラルキル基の炭素数は、好ましくは6〜20であり、更に好ましくは7〜12である。このアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基が挙げられる。
【0051】
アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、置換基を更に有していてもよい。
アルキル基が更に有し得る置換基としては、例えば、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。
【0052】
シクロアルキル基が更に有し得る置換基としては、アルキル基、及び、アルキル基が更に有し得る置換基の具体例として前述した各基が挙げられる。
【0053】
なお、アルキル基、シクロアルキル基が更に有し得る置換基の炭素数は、好ましくは8以下とする。
【0054】
アリール基及びアラルキル基が更に有し得る置換基としては、例えば、ニトロ基、フッ素原子等のハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルキル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、及びアルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)が挙げられる。
【0055】
炭素原子で連結する複素環基において、「炭素原子で連結する」とは、−(CR111213)中のCと結合する原子が炭素原子であることを意味する。該複素環は芳香族環でも非芳香族環でもよく、炭素数は好ましくは2〜20であり、より好ましくは4〜14である。この炭素原子で連結する複素環基としては、ピロリル基、ピリジル基、ピリミジル基、フラニル基、チエニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基、ピロリジニル基、モルホリニル基などが挙げられる。
【0056】
11、R12及びR13の少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。ここで、R11、R12及びR13のうち2つが互いに結合して環を形成する場合、形成される環としては、例えばシクロペンタン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、ノルボルネン環、ノルボルナン環が挙げられる。これらは置換基を有しても良く、有し得る置換基としては、アルキル基、及び、アルキル基が更に有し得る置換基の具体例として前述した各基が挙げられる。R11、R12及びR13の全てが互いに結合して環を形成する場合、形成される環としては、例えばアダマンタン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、ビシクロ[2,2,2]オクタン環、ビシクロ[3,1,1]ヘプタン環が挙げられる。中でもアダマンタン環が特に好ましい。これらは置換基を有しても良く、有し得る置換基としては、アルキル基、及び、アルキル基が更に有し得る置換基の具体例として前述した各基が挙げられる。
【0057】
耐ドライエッチング性及び化合物(P)のガラス転移温度向上に鑑みると、R11、R12及びR13の少なくとも1つが環状構造を有することが好ましく、R11、R12及びR13の少なくとも2つが、互いに結合して、環を形成することがより好ましく、R11、R12及びR13の全てが互いに結合して環を形成することが特に好ましい。
【0058】
以下に、−(CR111213)で表される基の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化10】

【0059】
11としての2価の連結基は、例えば、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜8のアルキレン基、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基又はオクチレン基)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3〜15のシクロアルキレン基、例えば、シクロペンチレン基又はシクロヘキシレン基)、−S−、−O−、−CO−、−CS−、−SO−、−N(R)−、又はこれらの2種以上の組み合わせであり、総炭素数が20以下のものが好ましい。ここで、Rは、水素原子又はアルキル基(例えば炭素数1〜8のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等)である。
【0060】
11は、単結合、アルキレン基、又はアルキレン基と−O−、−CO−、−CS−及び−N(R)−の少なくとも一つとの組み合わせからなる2価の連結基が好ましく、単結合、アルキレン基、又はアルキレン基と−O−との組み合わせからなる2価の連結基がより好ましい。ここで、Rは上述のRと同義である。
【0061】
11は置換基を更に有していてもよく、M11が更に有し得る置換基は、上述したR11のアルキル基が有し得る置換基と同様である。
【0062】
11としてのアルキル基は、例えば、上述したR11としてのアルキル基と同様である。
11としてのシクロアルキル基は、単環型であってもよく、多環型であってもよい。このシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは3〜10とする。このシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基、ボルニル基、イソボルニル基、4−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデシル基、8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、2−ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基が挙げられる。中でも、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−アダマンチル基、8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、2−ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基が好ましい。
【0063】
11としてのアリール基は、例えば、上述したR11としてのアリール基が挙げられる。その炭素数は、好ましくは、3〜18である。
【0064】
11としてのシクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよく、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0065】
(−M11−Q11)として特に好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリールオキシアルキル基等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルエチル基、2−アダマンチル基、8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、2−ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ベンジル基、2−フェネチル基、2−フェノキシエチル基等である。
以下に、−(M11−Q11)で表される基の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化11】

【0066】
一般式(1)で表される酸不安定基の具体例としては、例えば、−(CR111213)で表される基の上記具体例と、−(M11−Q11)で表される基の上記具体例とを組み合わせた基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以下に、一般式(1)で表される酸不安定基の好ましい例を示す。
【化12】

【0067】
一般式(1)で表される酸不安定基は、例えばR11、R12、R13の全てが水素原子で置換された酸不安定基と比較すると、酸の作用により分解する過程で生成するカルボカチオン中間体がC−Hσ結合による超共役効果で安定化されない為、酸分解反応の活性化エネルギーがより高いものと推定される。
【化13】

【0068】
活性化エネルギーが高くなることで、室温付近での酸不安定基の分解反応が抑制され、レジスト膜中での発生酸の中和反応と酸不安定基の分解反応との競合が解消され、解像性・ラフネス特性が向上する。
【0069】
本発明の化合物(P)における、一般式(1)で表される酸不安定基による置換量は、全フェノール性水酸基に対して1〜60モル%の範囲が好ましく、2〜40モル%の範囲がより好ましく、2〜30モル%の範囲が特に好ましい。
【0070】
化合物(P)は、一態様において、フェノール性水酸基を含む繰り返し単位と、フェノール性水酸基の水素原子が一般式(1)で表される酸不安定基により置換されている基を含む繰り返し単位とを含有する高分子化合物であり得る。また、化合物(P)は、他の態様において、複数のフェノール性水酸基を有する母核化合物における、一部のフェノール性水酸基の水素原子が、一般式(1)で表される酸不安定基により置換されている低分子化合物であり得る。
【0071】
まず、化合物(P)が高分子化合物である場合について説明する。
上述したように、化合物(P)は、一態様において、フェノール性水酸基を含む繰り返し単位と、フェノール性水酸基の水素原子が一般式(1)で表される酸不安定基により置換されている基を含む繰り返し単位とを含有する高分子化合物であり得る。
【0072】
フェノール性水酸基を含む繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(5)又は(6)で表される繰り返し単位が挙げられ、一般式(5)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【化14】

【0073】
一般式(5)及び(6)において、R51及びR61はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Ar51及びAr61はそれぞれ独立にアリーレン基を表す。L61は単結合又はアルキレン基を表す。
【0074】
51は水素原子であることがより好ましく、R61はメチル基であることがより好ましい。
Ar51及びAr61により表されるアリーレン基は、置換基を有していてもよい。これらのアリーレン基は、炭素数6〜18の、置換基を有していてもよいアリーレン基であることが好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基又はナフチレン基がより好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基が最も好ましい。またこれらが有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0075】
61は上述したように単結合又はアルキレン基を表す。上記アルキレン基として、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基又はオクチレン基が挙げられ、メチレン基、エチレン基が特に好ましい。
【0076】
一般式(5)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化15】

【0077】
一般式(6)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化16】

【0078】
フェノール性水酸基の水素原子が一般式(1)で表される酸不安定基で置換された基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(2)又は一般式(7)で表される繰り返し単位が挙げられ、一般式(2)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【化17】

【0079】
一般式(2)及び(7)において、
21及びR71は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
Ar21及びAr71は、それぞれ独立に、アリーレン基を表す。
71は単結合又はアルキレン基を表す。
【0080】
11、R12及びR13はそれぞれ独立に、−(CR111213)中のCと結合する原子が炭素原子である有機基を表す。ここで、R11、R12及びR13により表される有機基に含まれる炭素原子数の合計は4以上である。R11、R12及びR13の少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。
11は単結合又は2価の連結基を表す。
11はアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール環基を表す。
21は水素原子であることがより好ましく、R71はメチル基であることがより好ましい。
Ar21及びAr71により表されるアリーレン基は置換基を有していてもよく、具体例としては、上記一般式(5)及び(6)におけるAr51及びAr61と同様の基が挙げられる。
【0081】
71により表されるアルキレン基の具体例としては、上記一般式(6)におけるL51及びL61と同様の基が挙げられる。
【0082】
11、R12、R13、M11及びQ11は、先に述べた一般式(1)中の各基と同義である。
【0083】
一般式(2)及び一般式(7)で表される繰り返し単位の具体例としては、例えば、先に説明した一般式(5)及び一般式(6)で表される繰り返し単位の具体例におけるフェノール性水酸基の水素原子が、先に説明した一般式(1)で表される酸分解性基の具体例で置換されたものが挙げられる。
【0084】
本発明の化合物(P)は、下記一般式(3)により表される非分解性の繰り返し単位を更に含んでもよい。
【化18】

【0085】
31は、水素原子又はメチル基を表す。
Ar31は、アリーレン基を表す。
31は、単結合又は2価の連結基を表す。
31は、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。
【0086】
ここで、「非分解性」とは、露光により発生した酸やアルカリ現像液などの作用で、化学結合の切断を生じないことを意味する。
【0087】
31は上述したように水素原子又はメチル基であり、水素原子がより好ましい。Ar31は上述したようにアリーレン基を表し、具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(2)におけるAr21の具体例及び好ましい範囲と同様である。
【0088】
31の2価の有機基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、−O−、−CO−、−NR32−、−S−、−CS−及びこれらの組み合わせが挙げられる。ここで、R32は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。L31の2価の有機基の総炭素数は1〜15が好ましく、より好ましくは1〜10である。
【0089】
上記アルキレン基として、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基又はオクチレン基が挙げられる。
【0090】
上記アルケニレン基は、好ましくは炭素数2〜8、より好ましくは炭素数2〜4のアルケニレン基である。
【0091】
32で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基の具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(1)におけるR11で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基の具体例及び好ましい範囲と同様である。
【0092】
31として好ましい基は、カルボニル基、メチレン基、−CO−NR32−、−CO−(CH−O−、−CO−(CH−O−CO−、−(CH−COO−、−(CH−CONR32−、又は−CO−(CH−NR32−であり、特に好ましくは、カルボニル基、メチレン基、−CO−NR32−、−CH−COO−、−CO−CH−O−、−CO−CH−O−CO−、−CH−CONR32−、又は−CO−CH−NR32−であり、カルボニル基、メチレン基、−CO−NR32−、−CH−COO−が特に好ましい。ここで、前記nは、1〜10の整数を表し、は主鎖側の連結部位、すなわち、式中のO原子との連結部位を表す。
【0093】
31は上述したようにシクロアルキル基又はアリール基を表し、具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(1)におけるQ11の具体例及び好ましい範囲と同様である。
一般式(3)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化19】

【0094】
母核が高分子化合物の場合、本発明の化合物(P)における一般式(3)で表される繰り返し単位の含有量は、化合物(P)の全繰り返し単位に対して、1〜30モル%の範囲が好ましく、2〜20モル%の範囲がより好ましく、2〜10モル%の範囲が特に好ましい。
【0095】
本発明の化合物(P)は、下記一般式(4)により表される繰り返し単位を更に含んでも良い。
【化20】

【0096】
41は、水素原子又はメチル基を表す。Ar41は、アリーレン基を表す。L41は、単結合又は2価の連結基を表す。Sは、活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。
【0097】
41は上述したように水素原子又はメチル基であり、水素原子がより好ましい。Ar41は上述したようにアリーレン基を表し、具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(2)におけるAr21の具体例及び好ましい範囲と同様である。
【0098】
41は単結合又は2価の連結基を表す。L41が2価の連結基の場合、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、−O−、−SO−、−CO−、−N(R)−、−S−、−CS−及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられ、総炭素数が20以下のものが好ましい。ここで、Rは、アリール基、アルキル基又はシクロアルキルを表す。
【0099】
樹脂(P)が一般式(4)で表される繰り返し単位を含んでいる場合、例えば、解像度、ラフネス特性及びEL(露光ラチチュード)の少なくとも1つが更に向上する。
【0100】
41のアルキレン基としては、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、及びドデカニレン基等の炭素数1〜12のものが挙げられる。
41のシクロアルキレン基としては、好ましくは、シクロペンチレン基及びシクロヘキシレン基等の炭素数5〜8のものが挙げられる。
【0101】
41のアリーレンとしては、好ましくは、フェニレン基及びナフチレン基等の炭素数6〜14のものが挙げられる。
【0102】
これらアルキレン基、シクロアルキレン基及びアリーレン基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。
【0103】
Sは活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。Sは、活性光線又は放射線の照射により分解して樹脂の側鎖に酸アニオンを生じる構造部位であることが好ましく、より好ましくは光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、又はマイクロレジスト等に使用されている公知の光により酸を発生する化合物が有する構造部位が挙げられ、該構造部位はイオン性構造部位であることが更に好ましい。
【0104】
Sとしては、スルホニウム塩又はヨードニウム塩を含むイオン性構造部位がより好ましい。より具体的には、Sとして、下記一般式(PZI)又は(PZII)で表される基が好ましい。
【化21】

【0105】
上記一般式(PZI)において、
201〜R203は、各々独立に、有機基を表す。
201〜R203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
【0106】
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成したものを用いると、露光時の分解物で露光機を汚染することを抑えることが期待でき、好ましい。
【0107】
は、活性光線又は放射線の照射により分解して発生する酸アニオンを示し、非求核性アニオンが好ましい。非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオン等を挙げることができる。
【0108】
非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンであり、分子内求核反応による経時分解を抑制することができるアニオンである。これにより樹脂の経時安定性が向上し、組成物の経時安定性も向上する。
【0109】
201〜R203の有機基としては、アリール基、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、インドリル基などが挙げられる。ここで、シクロアルキル基及びシクロアルケニル基は、環を形成する炭素原子の少なくとも1つがカルボニル炭素であってもよい。
【0110】
201〜R203のうち、少なくとも1つがアリール基であることが好ましく、三つ全てがアリール基であることがより好ましい。
201、R202及びR203におけるアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
【0111】
201、R202及びR203におけるアルキル基、シクロアルキル基、及び、シクロアルケニル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)、炭素数3〜10のシクロアルケニル基(例えば、ペンタジエニル基、シクロヘキセニル基)を挙げることができる。
【0112】
201、R202及びR203としての、これらアリール基、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、インドリル基などの有機基は更に置換基を有していてもよい。その置換基としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルキル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜14)、ヒドロキシアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルカルボニル基(好ましくは炭素数2〜15)、シクロアルキルカルボニル基(好ましくは炭素数4〜15)、アリールカルボニル基(好ましくは炭素数7〜14)、シクロアルケニルオキシ基(好ましくは炭素数3〜15)、シクロアルケニルアルキル基(好ましくは炭素数4〜20)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
201、R202及びR203の各基が有していても良い置換基としてのシクロアルキル基及びシクロアルケニル基は、環を形成する炭素原子の少なくとも1つがカルボニル炭素であってもよい。
【0114】
201、R202及びR203の各基が有していても良い置換基は、更に置換基を有していてもよく、このような更なる置換基の例としては、R201、R202及びR203の各基が有していても良い置換基の上記例と同じものを挙げることができるが、アルキル基、シクロアルキル基が好ましい。
【0115】
201〜R203のうち、少なくとも1つがアリール基でない場合の好ましい構造としては、特開2004−233661号公報の段落0046,0047、特開2003−35948号公報の段落0040〜0046、米国特許出願公開第2003/0224288号明細書に式(I−1)〜(I−70)として例示されている化合物、米国特許出願公開第2003/0077540号明細書に式(IA−1)〜(IA−54)、式(IB−1)〜(IB−24)として例示されている化合物等のカチオン構造を挙げることができる。
【0116】
前記一般式(PZII)中、R204、R205は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。これらアリール基、アルキル基、シクロアルキル基としては、前述の化合物(PZI)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基として説明したアリール基と同様である。
【0117】
204、R205のアリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基としては、例えば、ピロール残基(ピロールから水素原子が1個失われることによって形成される基)、フラン残基(フランから水素原子が1個失われることによって形成される基)、チオフェン残基(チオフェンから水素原子が1個失われることによって形成される基)、インドール残基(インドールから水素原子が1個失われることによって形成される基)、ベンゾフラン残基(ベンゾフランから水素原子が1個失われることによって形成される基)、ベンゾチオフェン残基(ベンゾチオフェンから水素原子が1個失われることによって形成される基)等を挙げることができる。
【0118】
204、R205のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としても、前述の化合物(PZI)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよいものが挙げられる。
【0119】
は、活性光線又は放射線の照射により分解して発生する酸アニオンを示し、非求核性アニオンが好ましく、一般式(PZI)に於けるZと同様のものを挙げることができる。
【0120】
Sの好ましい具体例を以下に挙げるが、特にこれらに限定されない。なお、*印はL41への結合手を表す。
【化22】

【0121】
【化23】

【0122】
【化24】

【0123】
【化25】

【0124】
【化26】

【0125】
一般式(4)で表される繰り返し単位の(−L41−S)に相当する部位は、より好ましくは下記一般式(6)で表される。
【化27】

【0126】
式中、L61は2価の有機基、Ar61はアリーレン基を表す。
61の2価の有機基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、−O−、−SO−、−CO−、−N(R)−、−S−、−CS−及びこれらの組み合わせが挙げられる。ここで、Rは式(4)のL41におけるRと同義である。L61の2価の有機基の総炭素数は1〜15が好ましく、より好ましくは1〜10である。
【0127】
61のアルキレン基及びシクロアルキレン基は、式(4)のL41におけるアルキレン基及びシクロアルキレン基と同様であり、好ましい例も同様である。
【0128】
61として好ましい基は、カルボニル基、メチレン基、−CO−(CH−O−、−CO−(CH−O−CO−、−(CH−COO−、−(CH−CONR−、又は−CO−(CH−NR−であり、特に好ましくは、カルボニル基、−CH−COO−、−CO−CH−O−、−CO−CH−O−CO−、−CH−CONR−、又は−CO−CH−NR−である。ここで、前記nは、1〜10の整数を表す。nは、1〜6の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1が最も好ましい。また、は主鎖側の連結部位、すなわち、式中のO原子との連結部位を表す。
【0129】
Ar61は、アリーレン基を表し、置換基を有していてもよい。Ar61が有していてもよい置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4)、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、より好ましくはフッ素原子)が挙げられる。Ar61の芳香族環は、芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)であっても、芳香族複素環(例えば、キノリン環)であってもよく、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数6〜12である。
【0130】
Ar61は、無置換又はアルキル基若しくはフッ素原子が置換したアリーレン基であることが好ましく、フェニレン基又はナフチレン基であることが更に好ましい。
【0131】
一般式(4)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの合成方法としては、特に限定されないが、例えばオニウム構造の場合、前記繰り返し単位に対応する重合性不飽和結合を有する酸アニオンと既知のオニウム塩のハライドを交換して合成する方法が挙げられる。
【0132】
より具体的には、前記繰り返し単位に対応する重合性不飽和結合を有する酸の金属イオン塩(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)又はアンモニウム塩(アンモニウム、トリエチルアンモニウム塩等)と、ハロゲンイオン(塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)を有するオニウム塩を、水又はメタノールの存在下で攪拌し、アニオン交換反応を行い、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロキシフラン等の有機溶剤と水で分液及び洗浄操作をすることにより、目的とする一般式(4)で表される繰り返し単位に相当するモノマーを合成することができる。
【0133】
また、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロキシフラン等の水との分離が可能な有機溶剤と水の存在下で攪拌してアニオン交換反応を行った後に、水で分液・洗浄操作をすることによって合成することもできる。
【0134】
一般式(4)で表される繰り返し単位はまた、高分子反応によって側鎖に酸アニオン部位を導入し、塩交換によりオニウム塩を導入することによっても合成することが出来る。
【0135】
以下に、一般式(4)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明がこれに限定されるものではない。
【化28】

【0136】
【化29】

【0137】
【化30】

【0138】
【化31】

【0139】
【化32】

【0140】
【化33】

【0141】
【化34】

【0142】
母核が高分子化合物の場合、本発明の化合物(P)における一般式(4)で表される繰り返し単位の含有量は、化合物(P)の全繰り返し単位に対して、1〜30モル%の範囲が好ましく、2〜15モル%の範囲がより好ましく、2〜10モル%の範囲が特に好ましい。
【0143】
母核が高分子化合物の場合、本発明で用いられる化合物(P)は、その他の繰り返し単位として、下記のような繰り返し単位を更に有することも好ましい。
【0144】
例えば、更に、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位があげられる。そのような基としては、ラクトン構造を有する基、フェニルエステル構造を有する基などがあげられ、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【化35】

【0145】
一般式(AII)中、Vはアルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を表し、Rbは水素原子又はメチル基を表し、Abは単結合又は2価の有機基を表す。
【0146】
アルカリ現像液の作用で分解する基であるVはエステル結合を有する基であり、中でもラクトン構造を有する基がより好ましい。ラクトン構造を有する基としては、ラクトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。
【0147】
好ましいAbは、単結合、又は−AZ−CO−で表される2価の連結基である(AZは、アルキレン基又は脂肪族環基である)。好ましいAZはメチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基である。
以下に、具体例を示す。式中、Rxは、H又はCHを表す。
【化36】

【0148】
【化37】

【0149】
化合物(P)は、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、該基を有する繰り返し単位の含有量は、化合物(P)中の全繰り返し単位に対し、10〜60モル%が好ましく、より好ましくは15〜50モル%、更に好ましくは15〜40モル%である。
【0150】
本発明の化合物(P)における上記以外の繰り返し単位を形成するための重合性モノマーの例としては、スチレン、アルキル置換スチレン、アルコキシ置換スチレン、O−アルキル化スチレン、O−アシル化スチレン、水素化ヒドロキシスチレン、無水マレイン酸、アクリル酸誘導体(アクリル酸、アクリル酸エステル等)、メタクリル酸誘導体(メタクリル酸、メタクリル酸エステル等)、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、アセナフチレン、置換基を有しても良いインデン等を挙げることができる。置換スチレンとしては4−(1−ナフチルメトキシ)スチレン、4−ベンジルオキシスチレン、4−(4−クロロベンジルオキシ)スチレン、3−(1−ナフチルメトキシ)スチレン、3−ベンジルオキシスチレン、3−(4−クロロベンジルオキシ)スチレンなどが好ましい。
【0151】
化合物(P)は、これら繰り返し単位を含有してもしなくても良いが、含有する場合、これら繰り返し単位の化合物(P)中の含有量は、化合物(P)を構成する全繰り返し単位に対して、一般的に1〜20モル%、好ましくは2〜10モル%である。
【0152】
母核が高分子化合物の場合、本発明の化合物(P)は、例えば、(i)各繰り返し単位の前駆体に相当する不飽和モノマーを用いてポリマーを重合した後に、合成したポリマーに低分子化合物を修飾し、所望の繰返し単位へ変換することによって合成することができる。また、(ii)各繰り返し単位に対応する不飽和モノマーを、ラジカル、カチオン又はアニオン重合させることにより合成することも可能である。(i)及び(ii)の各々について、以下で詳細を述べる。
【0153】
[方法(i)]
前記一般式(2)で表される繰り返し単位、又は前記一般式(7)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物(P)は、下記反応(W)に示すように、前記一般式(5)で表される繰り返し単位、又は前記一般式(6)で表される繰り返し単位を前駆体に相当するユニットとして有する高分子化合物と、修飾剤である前記化合物(A)とを反応させる工程を経て、合成することができる。
【化38】

【0154】
上記一般式(A)において、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、臭素原子がより好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0155】
上記反応(W)は、塩基性化合物、及び反応溶媒の存在下で行うことが好ましい。
【0156】
好ましい塩基性化合物としては、下記一般式(W1)又は(W2)で表される化合物が挙げられる。
【化39】

【0157】
一般式(W1)中、RW11、RW12及びRW13は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
【0158】
W11、RW12及びRW13のアルキル基はヘテロ原子により置換されていてもよく、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基のいずれでもよく、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましい。RW11、RW12及びRW13のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等が挙げられ、中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
【0159】
W11、RW12及びRW13のアリール基はヘテロ原子を有していてもよく、また、環上に置換基を更に有していてもよい。
【0160】
W11、RW12及びRW13のアリール基は、炭素数4〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましい。このアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ピレニル基、ピリジル基、ピロリル基、インドリル基、が挙げられ、中でもフェニル基が好ましい。
【0161】
W11、RW12及びRW13のアラルキル基は、ヘテロ原子を有していてもよく、また、環上に置換基を更に有していてもよい。
【0162】
W11、RW12及びRW13のアラルキル基は、炭素数7〜21のアラルキル基であること好ましく、炭素数7〜15のアラルキル基であることがより好ましい。このアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、プロピルフェニル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラニルメチル基が挙げられ、中でもベンジル基が好ましい。
【0163】
W11、RW12及びRW13の内の2つが互いに連結して、環を形成してもよい。形成される環としては5員環、6員環、7員環が挙げられ、5員環又は6員環が好ましい。
【0164】
一般式(W1)で表される化合物としては、例えば、N,N−ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、1−メチルピロリジン、1−エチルピロリジン、トリプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン、トリオクチルアミン、ジデシルメチルアミン、トリス(2−エチルヘキシル)アミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、トリ−n−デシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−フェニルモルホリン、N−(4−ピリジル)モルホリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−o−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジメチル−1−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−2−ナフチルアミン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジプロピルアニリン、4−ジメチルアミノピリジン、トリフェニルアミン、トリ−p−トリルアミン、N−メチルジフェニルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンが挙げられるが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0165】
一般式(W2)中、nw21は0〜4の整数であり、0〜3の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、0又は1であることが更に好ましい。
【0166】
W21は一価の置換基である。一価の置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基が挙げられる。
【0167】
W21のアルキル基の炭素数は好ましくは1〜5であり、更に好ましくは1〜3である。このアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基が挙げられ、中でもメチル基、エチル基が好ましい。
【0168】
W21のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、中でも塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0169】
W21のアルコキシ基の炭素数は好ましくは1〜5であり、更に好ましくは1〜3である。このアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブチロキシ基、sec−ブチロキシ基、tert−ブチロキシ基、n−ペンチロキシ基が挙げられ、中でもメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0170】
W21のジアルキルアミノ基におけるアルキル基の炭素数は好ましくは1〜3である。このジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基が挙げられる。
【0171】
一般式(W2)で表される化合物としては、例えば、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2−エチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、2−メトキシピリジン、3−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2,6−ジメトキシピリジン、2−クロロ−6−メトキシピリジン、2−ブトキシピリジン、2−クロロピリジン、3−クロロピリジン、4−クロロピリジン、2,6−ジクロロピリジン、2−クロロ−4−メチルピリジン、2−ブロモピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジンが挙げられるが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0172】
前記塩基性化合物の使用量は、前記化合物(A)に対して1.0〜20.0等量であることが好ましく、2.0〜15.0等量であることがより好ましく、2.0〜10.0等量であることが特に好ましい。
【0173】
前記反応(W)を行う際に用い得る好適な溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のアミド系溶媒、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、また複数の溶媒を混合して用いても良い。溶媒が水溶性であれば、反応時に塩の析出が抑制され、反応が均一に進行することから、水溶性液体を50質量%以上含む溶媒であることが好ましく、水溶性液体を65質量%以上含む溶媒であることがより好ましい。ここで、水溶性液体とは、1気圧で温度20℃において同容量の純水と緩やかにかき混ぜた場合に、流動がおさまったあとも混合液が均一な外観を維持する液体を示す。
【0174】
反応溶媒の添加量としては、前記一般式(5)で表される繰り返し単位、又は前記一般式(6)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が2〜60質量%となる添加量が好ましく、10〜40質量%となる添加量が更に好ましく、15〜30質量%が特に好ましい。
【0175】
前記反応(W)を行う温度としては、−20℃〜100℃の範囲が好ましく、−10℃〜50℃の範囲が更に好ましく、0℃〜30℃の範囲が特に好ましい。
【0176】
[方法(ii)]
前記一般式(2)で表される繰り返し単位、又は前記一般式(7)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物(P)は、下記一般式(B)で表される化合物、又は下記一般式(C)で表される化合物を重合させる工程を経て合成することができる。
【化40】

【0177】
一般式(B)中のR21、Ar21、R11、R12、R13、M11及びQ11は、一般式(2)中の各基と同義である。
一般式(C)中のR71、L71、Ar71、R11、R12、R13、M11及びQ11は、一般式(7)中の各基と同義である。
【0178】
例えばラジカル重合の場合、モノマー種および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、さらにはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような溶媒が挙げられる。
【0179】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
ラジカル重合の他にも、カチオン重合、アニオン重合によって合成することもできる。
【0180】
本発明に用いられる上記化合物(P)の重量平均分子量は、好ましくは1000〜200000であり、更に好ましくは2000〜50000であり、更により好ましくは2000〜15000である。上記化合物(P)の好ましい分散度(分子量分布)(Mw/Mn)は、1.0以上1.7以下であり、より好ましくは1.0以上1.3以下である。上記化合物(P)の重量平均分子量及び分散度は、GPC測定によるポリスチレン換算値として定義される。
【0181】
以下に、化合物(P)が高分子化合物である場合の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化41】

【0182】
【化42】

【0183】
【化43】

【0184】
【化44】

【0185】
【化45】

【0186】
【化46】

【0187】
次に、化合物(P)が低分子化合物である場合について説明する。
上述したように、化合物(P)は、複数のフェノール性水酸基を有する単一の分子骨格から成る母核化合物における、一部のフェノール性水酸基の水素原子が、一般式(1)で表される酸不安定基により置換されている低分子化合物であり得る。ここで「低分子化合物」とは、例えば、重合性モノマーに由来する繰り返し単位が10個未満である化合物を意味し、その分子量は、例えば、3000以下であり、好ましくは300〜2000であり、より好ましくは500〜1500である。
【0188】
低分子化合物(P)は、一態様において、下記一般式(T−1)又は(T−II)で表される構造を有する。
【化47】

【0189】
一般式(T−I)及び(T−II)中、
1、R2、R3及びR4は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。複数のR1が結合して環を形成してもよい。複数のR2が結合して環を形成してもよい。複数のR3が結合して環を形成してもよい。複数のR4が結合して環を形成してもよい。また、複数あるR1、R2、R3及びR4は互いに同じであっても異なっていてもよい。
5及びR6は、各々独立に、水素原子又は有機基を表し、複数あるR5及びR6は互いに同じであっても異なっていても良い。また、複数あるR5及びR6のうち少なくとも1つは一般式(1)で表される基である。
Wは単結合、アルキレン基、アリーレン基、およびこれらの任意の組み合わせからなる基を表す。
【0190】
xは正の整数を表す。
yは0以上の整数を表し、Wが単結合の場合、yは0である。
zは0以上の整数を表す。
vは0以上の整数を表す。
【0191】
m1、m3、m4及びm6は正の整数を表す。
m2、m5及びm7は0以上の整数を表す。但し、m1+m2+z=5、m3+v=3、m4+m5=5、m2+m5≧2を満たす。また、m6+m7=4である。
なお、一般式(T−I)で表される化合物(P)は、前記一般式(T−III)〜(T−V)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0192】
化合物(P)は、多価フェノール化合物等の母核となる化合物(母核化合物)のフェノール性水酸基と保護反応剤とを反応させ、該母核化合物のフェノール性水酸基を一般式(1)で表される基で保護することにより合成できる。ここでの保護反応剤とは、保護基を導入する反応を行う際に使用する化合物を指す。尚、母核化合物中に含まれるフェノール性水酸基の総数に対する酸分解性基で保護されたフェノール性水酸基の割合を保護率と呼ぶ。
以下に、一般式(T−I)で表される化合物(P)の母核化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【化48】

【0193】
【化49】

【0194】
【化50】

【0195】
【化51】

【0196】
【化52】

【0197】
【化53】

【0198】
【化54】

【0199】
【化55】

【0200】
次に、一般式(T−II)で表される化合物(P)の母核化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【化56】

【0201】
<その他の成分>
本発明に係る組成物は、塩基性化合物、酸分解性樹脂、光酸発生剤、有機溶剤、界面活性剤、酸分解性溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、現像液に対する溶解を促進させる化合物、及びプロトンアクセプター性官能基を有する化合物等を更に含んでいてもよい。
【0202】
〔2〕塩基性化合物
本発明に係る組成物は、塩基性化合物を更に含んでいてもよい。塩基性化合物を更に含有させると、露光から加熱までの経時による性能変化を更に低減することが可能となる。また、こうすると、露光によって発生した酸の膜中拡散性を制御することが可能となる。
【0203】
この塩基性化合物は、含窒素有機化合物であることが好ましい。使用可能な化合物は特に限定されないが、例えば、以下の(1)〜(4)に分類される化合物を用いることができる。
【0204】
(1)下記一般式(BS−1)により表される化合物
【化57】

【0205】
一般式(BS−1)中、
Rは、各々独立に、水素原子又は有機基を表す。但し、3つのRのうち少なくとも1つは有機基である。この有機基は、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、単環若しくは多環のシクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0206】
Rとしてのアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常1〜20であり、好ましくは1〜12である。
【0207】
Rとしてのシクロアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常3〜20であり、好ましくは5〜15である。
【0208】
Rとしてのアリール基の炭素数は、特に限定されないが、通常6〜20であり、好ましくは6〜10である。具体的には、フェニル基及びナフチル基等が挙げられる。
【0209】
Rとしてのアラルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常7〜20であり、好ましくは7〜11である。具体的には、ベンジル基等が挙げられる。
【0210】
Rとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、水素原子が置換基により置換されていてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基及びアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0211】
なお、一般式(BS−1)により表される化合物では、Rのうち少なくとも2つが有機基であることが好ましい。
【0212】
一般式(BS−1)により表される化合物の具体例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリイソデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、及び2,4,6−トリ(t−ブチル)アニリンが挙げられる。
【0213】
また、一般式(BS−1)により表される好ましい塩基性化合物として、少なくとも1つのRがヒドロキシ基で置換されたアルキル基であるものが挙げられる。具体的には、例えば、トリエタノールアミン及びN,N−ジヒドロキシエチルアニリンが挙げられる。
【0214】
なお、Rとしてのアルキル基は、アルキル鎖中に酸素原子を有していてもよい。即ち、オキシアルキレン鎖が形成されていてもよい。オキシアルキレン鎖としては、−CH2CH2O
−が好ましい。具体的には、例えば、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン、及び、US6040112号明細書のカラム3の60行目以降に例示されている化合物が挙げられる。
【0215】
(2)含窒素複素環構造を有する化合物
この含窒素複素環は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。また、窒素原子を複数有していてもよい。更に、窒素以外のヘテロ原子を含有していてもよい。具体的には、例えば、イミダゾール構造を有する化合物(2−フェニルベンゾイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾールなど)、ピペリジン構造を有する化合物〔N−ヒドロキシエチルピペリジン及びビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなど〕、ピリジン構造を有する化合物(4−ジメチルアミノピリジンなど)、並びにアンチピリン構造を有する化合物(アンチピリン及びヒドロキシアンチピリンなど)が挙げられる。
【0216】
また、環構造を2つ以上有する化合物も好適に用いられる。具体的には、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン及び1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−ウンデカ−7−エンが挙げられる。
【0217】
(3)フェノキシ基を有するアミン化合物
フェノキシ基を有するアミン化合物とは、アミン化合物が含んでいるアルキル基のN原子と反対側の末端にフェノキシ基を備えた化合物である。フェノキシ基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基及びアリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0218】
この化合物は、より好ましくは、フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン鎖を有している。1分子中のオキシアルキレン鎖の数は、好ましくは3〜9個、更に好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン鎖の中でも−CH2CH2O−が特
に好ましい。
【0219】
具体例としては、2−[2−{2―(2,2―ジメトキシ−フェノキシエトキシ)エチル}−ビス−(2−メトキシエチル)]−アミン、及び、US2007/0224539A1号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)が挙げられる。
【0220】
(4)アンモニウム塩
アンモニウム塩も適宜用いることができる。このアンモニウム塩は、好ましくは、ヒドロキシド又はカルボキシレートである。より具体的には、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0221】
その他、本発明に係る組成物に使用可能なものとして、特開2002−363146号公報の実施例で合成されている化合物、及び特開2007−298569号公報の段落0108に記載の化合物等が挙げられる。
【0222】
また、塩基性化合物として、感光性の塩基性化合物を用いてもよい。感光性の塩基性化合物としては、例えば、特表2003−524799号公報、及びJ.Photopolym.Sci&Tech. Vol.8,P.543−553(1995)等に記載の化
合物を用いることができる。
【0223】
塩基性化合物の分子量は、250〜2000であることが好ましく、400〜1000であることが更に好ましい。
【0224】
これらの塩基性化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0225】
本発明に係る組成物が塩基性化合物を更に含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、通常は0.001〜10質量%とし、好ましくは0.01〜5質量%とする。
【0226】
後述する光酸発生剤の塩基性化合物に対するモル比は、1.5〜300であることが好ましい。即ち、感度及び解像度を向上させる観点から1.5以上が好ましく、露光後加熱処理前におけるパターン太りによる解像度の低下を抑制する観点から300以下が好ましい。このモル比は、より好ましくは2.0〜200であり、更に好ましくは2.5〜150である。
【0227】
なお、化合物(P)が上記上述した一般式(4)により表される繰り返し単位を含む場合には、上記モル比における光酸発生剤とは、該繰り返し単位と後述する光酸発生剤との合計の量を基準とするものである。
【0228】
〔3〕酸分解性樹脂
本発明に係る組成物は、化合物(P)以外に、酸の作用により分解してアルカリ水溶性に対する溶解速度が増大する樹脂、即ち酸分解性樹脂を更に含んでいてもよい。
【0229】
酸分解性樹脂は、典型的には、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、酸分解性基ともいう)を備えている。この樹脂は、酸分解性基を、主鎖及び側鎖の一方に備えていてもよく、これらの両方に備えていてもよい。この樹脂は、酸分解性基を側鎖に備えていることが好ましい。
【0230】
酸分解性樹脂は、欧州特許254853号明細書、特開平2−25850号公報、同3−223860号公報及び同4−251259号公報等に開示されているように、例えば、アルカリ可溶性樹脂に酸の作用により脱離する基の前駆体を反応させるか、又は、酸の作用により脱離する基の結合したアルカリ可溶性樹脂モノマーを種々のモノマーと共重合させることにより得られる。
【0231】
酸分解性基としては、−COOH基及び−OH基等のアルカリ可溶性基の水素原子を、酸の作用により脱離する基で置換した基が好ましい。
【0232】
酸分解性基の具体例及び好ましい例としては、樹脂(P)における一般式(3)の「OY」、及び、一般式(4)の「COOY」と同様のものが挙げられる。
【0233】
上述したアルカリ可溶性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノール性水酸基を含んだ樹脂、並びに、(メタ)アクリル酸及びノルボルネンカルボン酸等のカルボキシル基を有する繰り返し単位を含んだ樹脂が挙げられる。
【0234】
フェノール性水酸基を含んだ樹脂としては、好ましくは、ポリ(o−ヒドロキシスチレン)、ポリ(m−ヒドロキシスチレン)、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)及びこれらの共重合体、水素化ポリ(ヒドロキシスチレン)、下記構造により表される置換基を有するポリ(ヒドロキシスチレン)類、スチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、α−メチルスチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、及び水素化ノボラック樹脂等のヒドロキシスチレン構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。
【化58】

【0235】
これらアルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解速度は、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を用いて23℃で測定して、170Å/秒以上であることが好ましく、330Å/秒以上であることがより好ましい。より具体的には、上記アルカリ溶解速度は、アルカリ可溶性樹脂のみをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等の溶剤に溶解して固形分濃度4質量%とした組成物をシリコンウエハ上に塗布して塗膜(膜厚100nm)を形成し、この塗膜がTMAH水溶液に完全に溶解するまでの時間(秒)を測定することにより得ることができる。
【0236】
これら樹脂の原料として採用可能なモノマーとしては、例えば、アルキルカルボニルオキシスチレン(例えば、t−ブトキシカルボニルオキシスチレン)、アルコキシスチレン(例えば、1−アルコキシエトキシスチレン又はt−ブトキシスチレン)、及び、(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル(例えば、t−ブチル(メタ)アクリレート又は2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート又はジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレート)が挙げられる。
【0237】
本発明に係る組成物に、KrFエキシマレーザー光、電子線、X線又は波長50nm以下の高エネルギー光線(例えばEUV)を照射する場合には、酸分解性樹脂は、芳香族基を備えた繰り返し単位を含んでいることが好ましい。特には、ヒドロキシスチレンを繰り返し単位として含んでいることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、ヒドロキシスチレンと酸の作用により脱離する基で保護されたヒドロキシスチレンとの共重合体、又は、ヒドロキシスチレンと(メタ)アクリル酸3級アルキルエステルとの共重合体が挙げられる。
【0238】
酸分解性樹脂としては、上記一般式(3)により表される繰り返し単位を有する樹脂が特に好ましい。
【0239】
酸分解性樹脂は、他の重合性モノマー由来の繰り返し単位を有していてもよい。これら他の重合性モノマーとしては、例えば、先に樹脂(P)が含み得る他の重合性モノマーとして説明したものが挙げられる。なお、これら他の重合性モノマー由来の繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位を基準として、一般的に50モル%以下であり、好ましくは30モル%以下である。
【0240】
また酸分解性樹脂は、水酸基、カルボキシ基及びスルホン酸基等のアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含有しても良く、その場合のアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有率は、酸分解性樹脂を構成する全繰り返し単位中、好ましくは1〜99モル%、より好ましくは3〜95モル%、特に好ましくは5〜90モル%である。
【0241】
酸分解性基を有する繰り返し単位の含有率は、酸分解性樹脂を構成する全繰り返し単位中、好ましくは3〜95モル%、より好ましくは5〜90モル%、特に好ましくは10〜85モル%である。
【0242】
酸分解性樹脂の重量平均分子量は、GPC法(溶媒:THF)によるポリスチレン換算値として、好ましくは50,000以下であり、より好ましくは1,000〜20,000であり、特に好ましくは1,000〜10,000である。
【0243】
酸分解性樹脂の分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜3.0であり、より好ましくは1.05〜2.0であり、更に好ましくは1.1〜1.7である。
【0244】
また、酸分解性樹脂は、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0245】
酸分解性樹脂の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化59】

【0246】
【化60】

【0247】
なお、本発明に係る組成物が化合物(P)以外の樹脂を更に含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.5〜80質量%であり、より好ましくは5〜50質量%であり、更に好ましくは10〜30質量%である。
【0248】
〔4〕光酸発生剤
光酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物である。光酸発生剤としては、例えば、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物、及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。これらの例としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩及びビス(アルキルスルホニルジアゾメタン等が挙げられる。
【0249】
光酸発生剤の好ましい例としては、下記一般式(ZI)、(ZII)及び(ZIII)により表される化合物が挙げられる。
【化61】

【0250】
上記一般式(ZI)において、R201’、R202’及びR203’は、各々独立に、有機基を表す。R201’、R202’及びR203’としての有機基の炭素数は、例えば1〜30であり、好ましくは1〜20である。
【0251】
201’〜R203’のうち2つは、単結合又は連結基を介して互いに結合して、環を形成してもよい。この場合の連結基としては、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、カルボニル基、メチレン基及びエチレン基が挙げられる。R201’〜R203’のうちの2つが結合して形成する基としては、例えば、ブチレン基及びペンチレン基等のアルキレン基が挙げられる。
【0252】
201’、R202’及びR203’の具体例としては、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)又は(ZI−3)における対応する基が挙げられる。
【0253】
は、非求核性アニオンを表す。Xとしては、例えば、スルホン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF、PF及びSbFが挙げられる。Xは、好ましくは、炭素原子を含んだ有機アニオンである。好ましい有機アニオンとしては、例えば、下記AN1〜AN3に示す有機アニオンが挙げられる。
【化62】

【0254】
式AN1〜AN3中、Rc〜Rcは、各々独立に、有機基を表す。この有機基としては、例えば、炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくは、アルキル基、アリール基、又はこれらの複数が単結合又は連結基を介して連結された基である。なお、この連結基としては、例えば、−O−、−CO−、−S−、−SO−及び−SON(Rd)−が挙げられる。ここで、Rdは水素原子又はアルキル基を表し、結合しているアルキル基又はアリール基と環を形成してもよい。
【0255】
Rc〜Rcの有機基は、1位がフッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたアルキル基、又は、フッ素原子若しくはフロロアルキル基で置換されたフェニル基であってもよい。フッ素原子又はフロロアルキル基を含有させることにより、光照射によって発生する酸の酸性度を上昇させることが可能となる。これにより、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の感度を向上させることができる。なお、Rc〜Rcは、他のアルキル基及びアリール基等と結合して、環を形成していてもよい。
【0256】
また、好ましいXとして、下記一般式(SA1)又は(SA2)により表されるスルホン酸アニオンが挙げられる。
【化63】

【0257】
式(SA1)中、
Arは、アリール基を表し、スルホン酸アニオン及び−(D−B)基以外の置換基を更に有していてもよい。
【0258】
nは、0以上の整数を表す。nは、好ましくは1〜4であり、より好ましくは2〜3であり、最も好ましくは3である。
【0259】
Dは、単結合又は2価の連結基を表す。この2価の連結基としては、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸エステル基、エステル基、及び、これらの2種以上の組み合わせからなる基等を挙げることができる。
【0260】
Bは、炭化水素基を表す。
【化64】

【0261】
式(SA2)中、
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、又は、アルキル基を表し、複数存在する場合のR及びRの各々は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
Lは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
Eは、環状の有機基を表す。
xは1〜20の整数を表し、yは0〜10の整数を表し、zは0〜10の整数を表す。
【0262】
まず、式(SA1)により表されるスルホン酸アニオンについて、詳しく説明する。
式(SA1)中、Arは、好ましくは、炭素数6〜30の芳香族環である。具体的には、Arは、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インデセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセタフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環又はフェナジン環である。中でも、ラフネス改良と高感度化との両立の観点から、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0263】
Arがスルホン酸アニオン及び−(D−B)基以外の置換基を更に有している場合、この置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシ基;カルボキシ基;並びにスルホン酸基が挙げられる。
【0264】
式(SA1)中、Dは、好ましくは、単結合であるか、又は、エーテル基若しくはエステル基である。より好ましくは、Dは、単結合である。
【0265】
式(SA1)中、Bは、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はシクロアルキル基である。Bは、好ましくは、アルキル基又はシクロアルキル基であり、更に好ましくはシクロアルキル基である。Bとしてのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はシクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
【0266】
Bとしてのアルキル基は、好ましくは、分岐アルキル基である。この分岐アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、イソヘキシル基、3,3−ジメチルペンチル基及び2−エチルヘキシル基が挙げられる。
【0267】
Bとしてのアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基が挙げられる。
【0268】
Bとしてのアルキニル基としては、例えば、プロピニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。
【0269】
Bとしてのアリール基としては、例えば、フェニル基、p−トリル基が挙げられる。
【0270】
Bとしてのシクロアルキル基は、単環のシクロアルキル基であってもよく、多環のシクロアルキル基であってもよい。単環のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基が挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基、カンフェニル基、デカヒドロナフチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、カンホロイル基、ジシクロヘキシル基及びピネニル基が挙げられる。
【0271】
Bとしてのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はシクロアルキル基が置換基を有している場合、この置換基としては、例えば、以下のものが挙げられる。即ち、この置換基として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert−ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp−トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メチルチオキシ基、エチルチオキシ基及びtert−ブチルチオキシ基等のアルキルチオキシ基;フェニルチオキシ基及びp−トリルチオキシ基等のアリールチオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ドデシル基及び2―エチルヘキシル基等の直鎖アルキル基;分岐アルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基;アセチレン基;プロピニル基及びヘキシニル基等のアルキニル基;フェニル基及びトリル基等のアリール基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;スルホン酸基;並びにカルボニル基等が挙げられる。中でも、ラフネス改良と高感度化との両立の観点から、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基が好ましい。
【0272】
次に、式(SA2)により表されるスルホン酸アニオンについて、詳しく説明する。
式(SA2)中、Xfは、フッ素原子であるか、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基である。このアルキル基としては、炭素数が1〜10のものが好ましく、炭素数が1〜4のものがより好ましい。また、フッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0273】
Xfは、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。具体的には、Xfは、好ましくは、フッ素原子、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH又はCHCHである。中でも、フッ素原子又はCFが好ましく、フッ素原子が最も好ましい。
【0274】
式(SA2)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、又はアルキル基である。アルキル基は、置換基(好ましくはフッ素原子)を有していてもよく、炭素数1〜4のものが好ましい。R及びRの置換基を有していてもよいアルキル基としては、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。具体的には、R、Rの置換基を有するアルキル基は、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH及びCHCHが挙げられ、中でもCFが好ましい。
【0275】
式(SA2)中、xは1〜8が好ましく、1〜4がより好ましい。yは0〜4が好ましく、0がより好ましい。zは0〜8が好ましく、0〜4がより好ましい。
【0276】
式(SA2)中、Lは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、−COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基又はこれらの2種以上の組み合わせが挙げられ、総炭素数が20以下のものが好ましい。中でも、−COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−又は−SO−が好ましく、−COO−、−OCO−又は−SO−がより好ましい。
【0277】
式(SA2)中、Eは、環状の有機基を表す。Eとしては、例えば、環状脂肪族基、アリール基及び複素環基が挙げられる。
【0278】
Eとしての環状脂肪族基は、単環構造を有していてもよく、多環構造を有していてもよい。単環構造を有した環状脂肪族基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が好ましい。多環構造を有した環状脂肪族基としては、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。特には、Eとして6員環以上のかさ高い構造を有する環状脂肪族基を採用した場合、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性が抑制され、解像力及びEL(露光ラチチュード)を更に向上させることが可能となる。
【0279】
Eとしてのアリール基は、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナンスレン環又はアントラセン環である。
【0280】
Eとしての複素環基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。この基に含まれているヘテロ原子としては、窒素原子又は酸素原子が好ましい。複素環構造の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピペリジン環及びモルホリン環等が挙げられる。中でも、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピペリジン環及びモルホリン環が好ましい。
【0281】
Eは、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、炭素数1〜12が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基及びスルホン酸エステル基が挙げられる。
【0282】
光酸発生剤としては、一般式(ZI)により表される構造を複数有する化合物を使用してもよい。例えば、一般式(ZI)により表される化合物のR201’〜R203’の少なくとも1つが、一般式(ZI)により表されるもう1つの化合物のR201’〜R203’の少なくとも1つと結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0283】
更に好ましい(ZI)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)〜(ZI−4)を挙げることができる。
【0284】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201’〜R203’の少なくとも1つがアリール基である。即ち、化合物(ZI−1)は、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
【0285】
化合物(ZI−1)は、R201’〜R203’の全てがアリール基であってもよく、R201’〜R203’の一部がアリール基であり、それら以外がアルキル基であってもよい。なお、化合物(ZI−1)が複数のアリール基を含んでいる場合、これらアリール基は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0286】
化合物(ZI−1)としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物及びアリールジアルキルスルホニウム化合物が挙げられる。
【0287】
化合物(ZI−1)におけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、又は、インドール残基及びピロール残基等のヘテロアリール基が好ましく、フェニル基、ナフチル基又はインドール残基が特に好ましい。
【0288】
化合物(ZI−1)が必要に応じて有しているアルキル基としては、炭素数1〜15の直鎖、分岐又はシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0289】
これらアリール基及びアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基及びフェニルチオ基が挙げられる。
【0290】
好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、及び、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられる。特に好ましい置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。置換基は、3つのR201’〜R203’のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がフェニル基の場合には、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0291】
また、R201’、R202’及びR203’のうち1つ又は2つが、置換基を有していてもよいアリール基であり、残りの基が直鎖、分岐又は環状のアルキル基である態様も好ましい。この構造の具体例としては、特開2004−210670号公報の段落0141〜0153に記載の構造が挙げられる。
【0292】
このとき、上記アリール基としては、具体的には、R201’、R202’及びR203’としてのアリール基と同様であり、フェニル基又はナフチル基が好ましい。また、アリール基は、水酸基、アルコキシ基又はアルキル基のいずれかを置換基として有することが好ましい。置換基としより好ましくは、炭素数1〜12のアルコキシ基であり、更に好ましくは、炭素数1〜6のアルコキシ基である。
【0293】
上記の残りの基としての直鎖、分岐又は環状のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。これら基は、更に置換基を有していてもよい。また、上記の残りの基が2つ存在する場合、これら2つが互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
【0294】
化合物(ZI−1)は、例えば、以下の一般式(ZI−1A)により表される化合物である。
【化65】

【0295】
一般式(ZI−1A)中、
13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
14は、複数存在する場合は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基又はシクロアルキルスルホニル基を表す。
15は、各々独立して、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。2つのR15は、互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
は、非求核性アニオンを表し、例えば、一般式(ZI)におけるXと同様のものが挙げられる。
【0296】
13、R14又はR15のアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。このアルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、n−ブチル基及びt−ブチル基が特に好ましい。
【0297】
13、R14又はR15のシクロアルキル基としては、環若しくは多環のシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基)が挙げられ、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロドデカニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル及びシクロオクタジエニル基が挙げられる。これらのうち、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル及びシクロオクチル基が特に好ましい。
【0298】
13又はR14のアルコキシ基のアルキル基部分としては、例えば、先にR13、R14又はR15のアルキル基として列挙したものが挙げられる。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基及びn−ブトキシ基が特に好ましい。
【0299】
13のシクロアルキルオキシ基のシクロアルキル基部分としては、例えば、先にR13、R14又はR15のシクロアルキル基として列挙したものが挙げられる。このシクロアルキルオキシ基としては、シクロペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基が特に好ましい。
【0300】
13のアルコキシカルボニル基のアルコキシ基部分としては、例えば、先にR13又はR14のアルコキシ基として列挙したものが挙げられる。このアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基及びn−ブトキシカルボニル基が特に好ましい。
【0301】
14のアルキルスルホニル基のアルキル基部分としては、例えば、先にR13、R14又はR15のアルキル基として列挙したものが挙げられる。また、R14のシクロアルキルスルホニル基のシクロアルキル基部分としては、例えば、先にR13、R14又はR15のシクロアルキル基として列挙したものが挙げられる。これらアルキルスルホニル基又はシクロアルキルスルホニル基としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基、n−ブタンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基及びシクロヘキサンスルホニル基が特に好ましい。
【0302】
lは、好ましくは0又は1であり、より好ましくは1である。rは、好ましくは0〜2である。
【0303】
13、R14及びR15の各基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシアルキル基、シクロアルキルオキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、及びシクロアルキルオキシカルボニルオキシ基が挙げられる。
【0304】
アルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基及びt−ブトキシ基等の炭素数1〜20のものが挙げられる。
シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜20のものが挙げられる。
【0305】
アルコキシアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基及び2−エトキシエチル基等の炭素数2〜21のものが挙げられる。
【0306】
シクロアルキルオキシアルキル基としては、例えば、シクロペンチルオキシエチル基、シクロペンチルオキシペンチル基、シクロヘキシルオキシエチル基及びシクロヘキシルオキシペンチル基等の炭素数4〜21のものが挙げられる。
【0307】
アルコキシカルボニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基及びt−ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜21のものが挙げられる。
【0308】
シクロアルキルオキシカルボニル基としては、例えば、シクロペンチルオキシカルボニル基及びシクロヘキシルオキシカルボニル等の炭素数4〜21のものが挙げられる。
【0309】
アルコキシカルボニルオキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシカルボニルオキシ基としては、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、i−プロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基及びt−ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数2〜21のものが挙げられる。
【0310】
シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基としては、例えば、シクロペンチルオキシカルボニルオキシ基及びシクロヘキシルオキシカルボニルオキシ基等の炭素数4〜21のものが挙げられる。
【0311】
2つのR15が互いに結合して形成し得る環構造としては、一般式(ZI−1A)中のS原子と共に、5員環又は6員環、特に好ましくは5員環(即ち、テトラヒドロチオフェン環)を形成する構造が好ましい。
【0312】
この環構造は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、及びアルコキシカルボニルオキシ基が挙げられる。前記環構造に対する置換基は、複数個存在しても良く、また、それらが互いに結合して環(芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、芳香族若しくは非芳香族の複素環、又はこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環など)を形成しても良い。
【0313】
15としては、メチル基、エチル基、及び2つのR15が互いに結合して硫黄原子と共にテトラヒドロチオフェン環構造を形成する2価の基が特に好ましい。
【0314】
13のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基、R14のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基及びシクロアルキルスルホニル基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、及びハロゲン原子(特にフッ素原子)が好ましい。
【0315】
以下に、一般式(ZI−1A)により表される化合物におけるカチオンの好ましい具体例を示す。
【化66】

【0316】
【化67】

【0317】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
化合物(ZI−2)は、式(ZI)におけるR201’〜R203’が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
【0318】
201’〜R203’としての芳香環を含有しない有機基は、炭素数が例えば1〜30であり、好ましくは1〜20である。
【0319】
201’〜R203’は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、アリル基、ビニル基であることが好ましい。更に好ましくは、直鎖、分岐若しくは環状の2−オキソアルキル基又はアルコキシカルボニルメチル基であり、特に好ましくは、直鎖又は分岐の2−オキソアルキル基である。
【0320】
201’〜R203’としてのアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はペンチル基)及び炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はノルボニル基)が挙げられる。
【0321】
201’〜R203’としての2−オキソアルキル基は、直鎖、分岐及び環状のいずれであってもよく、好ましくは、上記のアルキル基の2位に>C=Oを有する基が挙げられる。
【0322】
201’〜R203’としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基の好ましい例としては、炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)が挙げられる。
【0323】
201’〜R203’は、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基及び/又はニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0324】
201’〜R203’のうち2つが互いに結合して、環構造を形成していてもよい。この環構造は、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合及び/又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201’〜R203’の内の2つが結合して形成する基としては、例えば、アルキレン基(例えば、ブチレン基又はペンチレン基)が挙げられる。
【0325】
上記環構造としては、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、芳香族若しくは非芳香族の複素環、又は、これらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環を挙げることができる。環構造としては、3〜10員環を挙げることができ、4〜8員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。
【0326】
次いで、化合物(ZI−3)について説明する。
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)により表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【化68】

【0327】
式中、R1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。アルキル基及びアルコキシ基の炭素数は、1〜6が好ましい。
【0328】
6c及びR7cは、水素原子又はアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1〜6が好ましい。
【0329】
及びRは、各々独立に、アルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、アリル基又はビニル基を表す。これら原子団の炭素数は、1〜6が好ましい。
【0330】
1c〜R7cのいずれか2つ以上が互いに結合して、環構造を形成していてもよい。また、RとRとが結合して、環構造を形成していてもよい。これらの環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合及び/又はアミド結合を含んでいてもよい。
【0331】
一般式(ZI−3)におけるXは、一般式(ZI)におけるXと同義である。
【0332】
化合物(ZI−3)の具体例としては、特開2004−233661号公報の段落0046及び0047、又は、特開2003−35948号公報の段落0040〜0046に例示されている化合物に記載されている化合物が挙げられる。
【0333】
続いて、化合物(ZI−4)について説明する。
化合物(ZI−4)は、以下の一般式(ZI−4)により表されるカチオンを有した化合物である。この化合物(ZI−4)は、アウトガスの抑制に有効である。
【化69】

【0334】
一般式(ZI−4)中、
〜R13は、各々独立に、水素原子又は置換基を表す。R〜R13のうち少なくとも1つは、アルコール性水酸基を含む置換基であることが好ましい。なお、ここで「アルコール性水酸基」とは、アルキル基の炭素原子に結合した水酸基を意味している。
【0335】
Zは、単結合又は2価の連結基である。
【0336】
〜R13がアルコール性水酸基を含む置換基である場合、R〜R13は−(W−Y)により表される基であることが好ましい。ここで、Yは水酸基で置換されたアルキル基であり、Wは単結合又は2価の連結基である。
【0337】
Yにより表されるアルキル基の好ましい例としては、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。Yは、特に好ましくは、−CHCHOHにより表される構造を含んでいる。
【0338】
Wにより表される2価の連結基としては、特に制限は無いが、好ましくは単結合、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はカルバモイル基における任意の水素原子を単結合で置き換えた2価の基であり、更に好ましくは、単結合、アシルオキシ基、アルキルスルホニル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基における任意の水素原子を単結合で置き換えた2価の基である。
【0339】
〜R13がアルコール性水酸基を含む置換基である場合、含まれる炭素数は、好ましくは2〜10であり、更に好ましくは2〜6であり、特に好ましくは2〜4である。
【0340】
〜R13としてのアルコール性水酸基を含む置換基は、アルコール性水酸基を2つ以上有していてもよい。R〜R13としてのアルコール性水酸基を含む置換基の有するアルコール性水酸基の数は、1〜6であり、好ましくは1〜3であり、更に好ましくは1である。
【0341】
一般式(ZI−4)により表される化合物の有するアルコール性水酸基の数は、R〜R13すべて合わせて1〜10であり、好ましくは1〜6であり、更に好ましくは1〜3である。
【0342】
〜R13がアルコール性水酸基を含有しない場合、R〜R13としての置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及び複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基〔−B(OH)〕、ホスファト基〔−OPO(OH)〕、スルファト基(−OSOH)、並びに、他の公知の置換基が挙げられる。
【0343】
〜R13がアルコール性水酸基を含有しない場合、R〜R13は、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、シリル基又はウレイド基である。
【0344】
〜R13がアルコール性水酸基を含有しない場合、R〜R13は、更に好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、シアノ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基又はカルバモイル基である。
【0345】
〜R13がアルコール性水酸基を含有しない場合、R〜R13は、特に好ましくは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルコキシ基である。
【0346】
〜R13のうちの隣接する2つが互いに結合して、環を形成してもよい。この環には、芳香族及び非芳香族の炭化水素環並びに複素環が含まれる。これら環は、更に組み合わされて、縮合環を形成していてもよい。
【0347】
化合物(ZI−4)は、好ましくは、R〜R13のうち少なくとも1つがアルコール性水酸基を含んだ構造を有しており、更に好ましくは、R〜R13のうち少なくとも1つがアルコール性水酸基を含んだ構造を有している。
【0348】
Zは、上述したように、単結合又は2価の連結基を表している。この2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミド基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、ジスルフィド基、アシル基、アルキルスルホニル基、−CH=CH−、アミノカルボニルアミノ基及びアミノスルホニルアミノ基が挙げられる。
【0349】
この2価の連結基は、置換基を有していてもよい。これらの置換基としては、例えば、先にR〜R13について列挙したのと同様のものが挙げられる。
【0350】
Zは、好ましくは、単結合、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、−CH=CH−、アミノカルボニルアミノ基及びアミノスルホニルアミノ基等の電子求引性を持たない結合又は基であり、更に好ましくは、単結合、エーテル基又はチオエーテル基であり、特に好ましくは、単結合である。
【0351】
以下、一般式(ZII)及び(ZIII)について説明する。
【0352】
一般式(ZII)及び(ZIII)中、R204’、R205’、R206及びR207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。これらアリール基、アルキル基及びシクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
【0353】
204’、R205’、R206及びR207としてのアリール基の好ましい例としては、先に化合物(ZI−1)におけるR201’〜R203’について列挙したのと同様の基が挙げられる。
【0354】
204’、R205’、R206及びR207としてのアルキル基及びシクロアルキル基の好ましい例としては、先に化合物(ZI−2)におけるR201’〜R203’について列挙した直鎖、分岐又はシクロアルキル基が挙げられる。
【0355】
204’、R205’、R206及びR207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。R204’、R205’、R206及びR207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
【0356】
なお、一般式(ZII)におけるXは、一般式(ZI)におけるXと同義である。
【0357】
光酸発生剤の他の好ましい例として、下記一般式(ZIV)、(ZV)又は(ZVI)により表される化合物が挙げられる。
【化70】

【0358】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、
Ar及びArは、各々独立に、置換又は無置換のアリール基を表す。
208は、一般式(ZV)と(ZVI)とで各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表している。これらアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
これら基は、フッ素原子により置換されていることが好ましい。こうすると、光酸発生剤が発生する酸の強度を高めることが可能となる。
【0359】
209及びR210は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は電子吸引性基を表す。これらアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び電子吸引性基は、置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び電子吸引性基が有していても良い置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、及び、ニトロ基が挙げられる。
【0360】
好ましいR209としては、置換又は無置換のアリール基が挙げられる。
好ましいR210としては、電子吸引性基が挙げられる。この電子吸引性基としては、好ましくは、シアノ基及びフロロアルキル基が挙げられる。
【0361】
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。これらアルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は、置換基を有していてもよい。
【0362】
Ar、Ar、R208、R209及びR210のアリール基の具体例としては、上記一般式(ZI−1)におけるR201’、R202’及びR203’としてのアリール基の具体例と同様のものを挙げることができる。
【0363】
208、R209及びR210のアルキル基及びシクロアルキル基の具体例としては、それぞれ、上記一般式(ZI−2)におけるR201’、R202’及びR203’としてのアルキル基及びシクロアルキル基の具体例と同様のものを挙げることができる。
【0364】
Aのアルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基など)を、Aのアルケニレン基としては、炭素数2〜12のアルケニレン基(例えば、エチニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基など)を、Aのアリーレン基としては、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基など)を、それぞれ挙げることができる。
【0365】
なお、光酸発生剤として、一般式(ZVI)により表される構造を複数有する化合物も好ましい。このような化合物としては、例えば、一般式(ZVI)により表される化合物のR209又はR210と、一般式(ZVI)により表されるもう一つの化合物のR209又はR210とが互いに結合した構造を有する化合物が挙げられる。
【0366】
光酸発生剤としては、一般式(ZI)〜(ZIII)により表される化合物がより好ましく、一般式(ZI)により表される化合物が更に好ましく、化合物(ZI−1)〜(ZI−3)が特に好ましい。
【0367】
光酸発生剤の具体例を以下に示すが、本発明の範囲は、これらに限定されるものではない。
【化71】

【0368】
【化72】

【0369】
【化73】

【0370】
【化74】

【0371】
【化75】

【0372】
【化76】

【0373】
【化77】

【0374】
【化78】

【0375】
なお、光酸発生剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する際には、水素原子を除く全原子数が2以上異なる2種の有機酸を発生する化合物を組み合わせることが好ましい。
【0376】
本発明の化合物(P)は、一般式(SA1)で表されるスルホン酸アニオンを有する、化合物(Z1−1)又は化合物(Z1−4)と組み合わせて使用すると、発生する酸を適度な強度とすることができ、好ましい。
【0377】
本発明に係る組成物が光酸発生剤を更に含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.1〜40質量%であり、より好ましくは0.5〜30質量%であり、更に好ましくは1〜20質量%である。
【0378】
〔5〕溶剤
本発明に係る組成物は溶剤を含有することが好ましい。
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、各成分を溶解するものである限り特に限定されないが、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)など)、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、別名1−メトキシ−2−プロパノール)など)、乳酸アルキルエステル(乳酸エチル、乳酸メチルなど)、環状ラクトン(γ−ブチロラクトンなど、好ましくは炭素数4〜10)、鎖状又は環状のケトン(2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなど、好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、カルボン酸アルキル(酢酸ブチルなどの酢酸アルキルが好ましい)、及びアルコキシ酢酸アルキル(エトキシプロピオン酸エチル)などが挙げられる。その他使用可能な溶媒として、例えば、US2008/0248425A1号明細書の[0244]以降に記載されている溶剤などが挙げられる。
【0379】
上記の溶剤のうち、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、及び乳酸エチルが特に好ましい。
【0380】
これら溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合して用いる場合、水酸基を含んだ溶剤と水酸基を含んでいない溶剤とを混合することが好ましい。水酸基を含んだ溶剤と水酸基を含んでいない溶剤との質量比は、通常は1/99〜99/1であり、好ましくは10/90〜90/10であり、更に好ましくは20/80〜60/40である。
【0381】
水酸基を含んだ溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテル又は乳酸アルキルエステルが好ましく、水酸基を含んでいない溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートが好ましい。溶剤の50質量%以上がプロピレングリコールモノメチルエーテルである溶剤を用いることが特に好ましい。
【0382】
なお、溶剤の使用量は、組成物の全固形分濃度が、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは2.0〜6.0質量%、更に好ましくは3.0〜5.0質量%となるように定める。
【0383】
〔6〕界面活性剤
本発明に係る組成物は、界面活性剤を更に含有していてもよい。この界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が特に好ましい。
【0384】
この界面活性剤としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製のメガファックF176及びメガファックR08、OMNOVA社製のPF656及びPF6320、トロイケミカル(株)製のトロイゾルS−366、住友スリーエム(株)製のフロラードFC430、並びに、信越化学工業(株)製のポリシロキサンポリマーKP−341が挙げられる。
【0385】
また、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の界面活性剤を使用することもできる。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類及びポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類等が挙げられる。
【0386】
その他、公知の界面活性剤が適宜使用可能である。使用可能な界面活性剤としては、例えば、米国特許2008/0248425A1号明細書の[0273]以降に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0387】
界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に係る組成物が界面活性剤を更に含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.0001〜2質量%であり、より好ましくは0.001〜1質量%である。
【0388】
〔7〕溶解阻止化合物
本発明に係る組成物は、酸の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物(以下、「溶解阻止化合物」ともいう)を更に含んでいてもよい。
【0389】
この溶解阻止化合物としては、220nm以下の透過性を低下させないため、Proceeding of SPIE, 2724,355 (1996)に記載されている酸分解性基を含むコール酸誘導体等の、酸分解性基を含有する脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。この酸分解性基としては、例えば、先に樹脂(P)における一般式(3)の「OY」、及び、一般式(4)の「COOY」と同様のものが挙げられる。
【0390】
なお、本発明に係る組成物をKrFエキシマレーザーで露光するか又は電子線で照射する場合には、溶解阻止化合物としては、フェノール化合物のフェノール性水酸基を酸分解基で置換した構造を含んだ化合物が好ましい。フェノール化合物としては、フェノール骨格を1〜9個含有するものが好ましく、2〜6個含有するものが更に好ましい。
【0391】
溶解阻止化合物の分子量は、3000以下であり、好ましくは300〜3000であり、更に好ましくは500〜2500である。
【0392】
本発明に係る組成物が溶解阻止化合物を含有する場合、その添加量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.0001〜20質量%であり、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0393】
以下に溶解阻止化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【化79】

【0394】
〔8〕その他の添加剤
本発明に係る組成物は、例えば、必要に応じて、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び現像液に対する溶解を促進させる化合物(以下、溶解促進性化合物ともいう)等を更に含有させることができる。また、特開2006−208781号公報及び特開2007−286574号公報等に記載されているプロトンアクセプター性官能基を備えた化合物も好適に用いることができる。
【0395】
上記の溶解促進性化合物は、例えば、フェノール性水酸基を2個以上、又はカルボキシ基を1個以上有する分子量1000以下の低分子化合物である。なお、カルボキシ基を有する場合は、溶解促進性化合物は、脂環族又は脂肪族化合物であることが好ましい。
【0396】
これら溶解促進性化合物の添加量は、樹脂(P)の質量を基準として、好ましくは0〜50質量%であり、更に好ましくは5〜30質量%である。現像残渣抑制及び現像時パターン変形防止の観点から、この添加量は、50質量%以下とすることが好ましい。
【0397】
なお、上記の溶解促進性化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4916210号及び欧州特許第219294号等に記載の方法を参考にして、容易に合成することができる。
【0398】
〔9〕パターン形成方法
本発明に係る組成物は、典型的には、以下のようにして用いられる。即ち、本発明に係る組成物は、典型的には、基板等の支持体上に塗布されて、膜を形成する。この膜の厚みは、0.02〜0.1μmが好ましい。基板上に塗布する方法としては、スピン塗布が好ましく、その回転数は1000〜3000rpmが好ましい。
【0399】
例えば、この組成物は、精密集積回路素子の製造等に使用される基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆、窒化シリコン及びクロム蒸着された石英基板など)上に、スピナー及びコーター等の適当な塗布方法により塗布される。その後、これを乾燥して、感活性光線性又は感放射線性の膜(以下、レジスト膜ともいう)を得る。なお、公知の反射防止膜を予め塗設することもできる。
【0400】
次いで、このレジスト膜に活性光線又は放射線(好ましくは、電子線、X線又はEUV光)を照射し、好ましくはベーク(通常80〜150℃、より好ましくは90〜130℃)を行った後、現像する。これにより良好なパターンを得ることができる。そして、このパターンをマスクとして用いて、適宜エッチング処理及びイオン注入などを行い、半導体微細回路及びインプリント用モールド構造体等を作成する。
【0401】
なお、本発明の組成物を用いてインプリント用モールドを作成する場合のプロセスの詳細については、例えば、特許第4109085号公報、特開2008−162101号公報、及び「ナノインプリントの基礎と技術開発・応用展開―ナノインプリントの基板技術と最新の技術展開―編集:平井義彦(フロンティア出版)」等を参照されたい。また、特に情報記録媒体の製造に好適なモールド構造体の製造方法については、例えば、特許第4109085号公報及び特開2008−162101号公報を参照されたい。
【0402】
現像工程では、通常アルカリ現像液を用いる。現像方法は、パドル形成、ディップ及びダイナミックディスペンス等の公知の方法を適宜使用する。アルカリ現像液としては、種々のアルカリ水溶液が適用可能であるが、通常は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドアルカリ性水溶液が使用される。アルカリ現像液には、アルコール類及び/又は界面活性剤を、適当量添加してもよい。
【0403】
アルカリ現像液の濃度は、通常、0.1〜20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常、10.0〜15.0である。
【0404】
また、本発明の組成物は、塗布、製膜、露光した後に、有機溶剤を主成分とする現像液を用いて現像し、ネガ型パターンを得るプロセスにも用いることができる。このようなプロセスとしては例えば特開2010−217884号公報に記載されているプロセスを用いることができる。
【0405】
有機系現像液としては、エステル系溶剤(酢酸ブチル、酢酸エチルなど)、ケトン系溶剤(2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなど)、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。有機系現像液全体としての含水率は10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
【0406】
また、本発明のパターン形成方法において、レジスト膜をマスクブランクス上に形成しても良い。
【0407】
ここで、マスクブランクスとは、半導体製造工程に用いられるフォトマスクを作製するための材料であり、通常、透明基板(好ましくはガラス基板)の上に遮光膜が設けられてなる。透明基板に対する遮光膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、透明基板上に、遮光材料を構成する材料を化学蒸着することにより形成することができる。
【0408】
遮光膜を構成する材料としては、タンタル、クロム、モリブデン、チタン、ジルコニウム、スズ、ガリウム、アルミニウム等の金属を主成分とし、これらの金属元素の酸化物、窒化物、酸化窒化物が好適に用いられる。具体的には、酸化クロム、窒化クロム、クロム、酸化タンタル、窒化タンタル、タンタル、モリブデンシリサイド酸化物、モリブデンシリサイド窒化物、モリブデンシリサイド酸化窒化物、モリブデン等を挙げることができる。
【0409】
遮光膜は単層でも良いが、複数の材料を塗り重ねた複層構造であることがより好ましい。複層構造の場合、1層当たりの膜の厚みは、特に限定されないが、5nm〜100nmであることが好ましく、10nm〜80nmであることがより好ましい。遮光膜全体の厚みとしては、特に限定されないが、5nm〜200nmであることが好ましく、10nm〜150nmであることがより好ましい。
【0410】
このようなマスクブランクス上にレジスト膜を形成し、露光、現像することにより、フォトマスクを得ることができる。
【実施例】
【0411】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容はこれにより限定されるものではない。
【0412】
<参考合成例1:修飾ポリヒドロキシスチレン化合物(PHS−M1)の合成>
ポリヒドロキシスチレン化合物としてのポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP−2500,日本曹達株式会社製)30.0gをアセトン120gに溶解し、1−クロロメチルナフタレン1.32g、炭酸カリウム2.07g(1−クロロメチルナフタレンに対し、2等量)、ヨウ化ナトリウム0.56g(1−クロロメチルナフタレンに対し0.5等量)を加え、4時間還流した。エバポレーターでアセトンを約半分量留去した後、酢酸エチル200mL、次いで1規定塩酸200mLを攪拌しながら加えた。分液ロートに移し、水層を除去した後、有機層を1規定塩酸200mL、次いで蒸留水200mLで洗浄し、エバポレーターで有機層を濃縮した。以上の操作により、3%ナフチルメチル化されたポリ(p−ヒドロキシスチレン)を得た。
【0413】
<参考合成例2:修飾ポリヒドロキシスチレン化合物(PHS−M2)の合成>
1−クロロメチルナフタレンの添加量を1.32gから2.21gに変えた以外は、参考合成例1と同様にして、5%ナフチルメチル化されたポリ(p−ヒドロキシスチレン)を得た。
【0414】
<参考合成例3:修飾ポリヒドロキシスチレン化合物(PHS−M3)の合成>
ポリヒドロキシスチレン化合物としてのポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP−2500,日本曹達株式会社製)30.0gをアセトン170gに溶解し、臭化ベンジル3.42g、炭酸カリウム3.59g(臭化ベンジルに対し、1.3等量)、を加え、4時間還流した。その後の操作は参考合成例1と同様にして、8%ベンジル化されたポリ(p−ヒドロキシスチレン)を得た。
【0415】
<参考合成例4:修飾ポリヒドロキシスチレン化合物(PHS−M4)の合成>
VP−2500をVP−8000(日本曹達株式会社製)に、臭化ベンジル添加量を3.42gから2.14gに変えた以外は、参考合成例3と同様にして、5%ベンジル化されたポリ(p−ヒドロキシスチレン)を得た。
【0416】
<参考合成例5:修飾ポリヒドロキシスチレン化合物(PHS−M5)の合成>
ポリヒドロキシスチレン化合物としてのポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP−2500,日本曹達株式会社製)30.0gをテトラヒドロフラン(THF)170gに溶解し、トリエチルアミン26.53gを加え、氷水浴中で攪拌した。反応液に、1−ナフトイルクロリド2.34gのTHF溶液を滴下し、4時間攪拌した後、蒸留水を加えて反応を停止した。THFを減圧留去して反応物を酢酸エチルに溶解した。得られた有機層を蒸留水で5回洗浄した後、有機層をエバポレーターで濃縮した。以上の操作により、5%ナフトイル化されたポリ(p−ヒドロキシスチレン)を得た。
【0417】
<参考合成例6:修飾ポリヒドロキシスチレン化合物(PHS−M6)の合成>
1−ナフトイルクロリド2.34gをフェニルイソシアネート1.50gに変えた以外は、参考合成例5と同様にして、5%フェニルカルバモイル化されたポリ(p−ヒドロキシスチレン)を得た。
【0418】
<合成例1:化合物(P−1)の合成>
(クロロエーテル化合物の合成)
ディーンスターク管を備えた300mLナス型フラスコに、1−アダマンタンカルボアルデヒド20.0g、シクロヘキサンエタノール34.35g、カンファースルホン酸1.41g、ヘプタン100mLを加え、8時間還流を行った。室温に戻した後、トリエチルアミン3.1gを加えて攪拌し、飽和重曹水で2回、蒸留水で1回、有機層を洗浄した。減圧加熱条件でヘプタン及び未反応のシクロヘキサンエタノールを除去することで、アセタール化合物として、下記に示す化合物1を得た。
【0419】
次に、得られた化合物1の全量に対し、塩化アセチル11.47gを加え、45℃の水浴で4時間攪拌した。室温に戻した後、減圧条件で未反応の塩化アセチルを除去することで、クロロエーテル化合物として、下記に示す化合物Cl−1を含む液を得た。H−NMRより、化合物Cl−1/1−アダマンタンカルボアルデヒド/酢酸シクロヘキシルエチル/シクロヘキサンエタノール=1.00/0.17/1.26/0.28 (モル比)の混合物として得られ、生成物中の化合物Cl−1の質量%濃度は52.8%であった。
【化80】

【0420】
(化合物(P−1)の合成)
ポリヒドロキシスチレン化合物としてのポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP−2500,日本曹達株式会社製)10.0gをテトラヒドロフラン(THF)50gに溶解し、トリエチルアミン8.85gを加え、氷水浴中で攪拌した。反応液に、上記で得られた化合物Cl−1を含む混合液(7.84g)を滴下し、4時間攪拌した。反応液を少量採取してH−NMRを測定したところ、保護率は14.5%であった。その後、少量の化合物Cl−1を含む混合液を追添して1時間攪拌し、H−NMRを測定する操作を繰り返し、保護率が目標値である16.0%を超えた時点で蒸留水を加えて反応を停止した。THFを減圧留去して反応物を酢酸エチルに溶解した。得られた有機層を蒸留水で5回洗浄した後、有機層をヘキサン1.5L中に滴下した。得られた沈殿を濾別し、少量のヘキサンで洗浄した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)35gに溶解した。得られた溶液からエバポレーターで低沸点溶媒を除去することで、化合物(P−1)のPGMEA溶液(23.4質量%)が41.3g得られた。
【0421】
得られた化合物(P−1)につき、H−NMR測定により、化合物(P−1)の組成比(モル比)を算出した。H−NMR測定方法を以下に示す。
【0422】
(H−NMR測定方法)
化合物(P−1)のPGMEA溶液0.5gを酢酸エチル1.5ml、トリエチルアミン0.5mlで希釈し、ヘキサン50g中へ滴下した。得られた沈殿をろ別し、そのうち75mgをDMSO−d1.1gに溶解した。この溶液をH−NMRにて測定した。
得られた化合物(P−1)のH−NMRチャートを図1に示す。
【0423】
また、GPC(溶媒:THF)測定により、化合物(P−1)の重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)、数平均分子量(Mn:ポリスチレン換算)及び分散度(Mw/Mn、以下「PDI」ともいう)を算出した。これらの結果を、以下の化学式中に示す。
【化81】

【0424】
<合成例2:化合物(P−4)の合成>
(クロロエーテル化合物の合成)
500mLナス型フラスコに、1−アダマンタンカルボアルデヒド20.0g、オルトギ酸トリエチル23.46g、カンファースルホン酸283mg、ヘキサン100mLを加え、25℃で1時間攪拌を行った。トリエチルアミン617mgを加えて攪拌し、蒸留水150mLで3回、有機層を洗浄した。減圧条件でヘキサンを除去することで、アセタール化合物として、下記に示す化合物2を25.9g得た。
【0425】
次に、得られた化合物2の25.0gに対し、塩化アセチル10.70gを加え、45℃の水浴で6時間攪拌した。室温に戻した後、減圧条件で未反応の塩化アセチルを除去することで、クロロエーテル化合物として、下記に示す化合物Cl−2を22.07g得た。
【0426】
H−NMR(CDCl:ppm)δ:1.22(3H、t)、1.45−2.15(15H、m)、3.40−3.60(1H、m)、3.90−4.05(1H、m)、5.22(1H、s)
【化82】

【0427】
(化合物(P−4)の合成)
ポリヒドロキシスチレン化合物としてのポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP−2500,日本曹達株式会社製)10.0gをテトラヒドロフラン(THF)60gに溶解し、トリエチルアミン8.85gを加え、氷水浴中で攪拌した。反応液に、上記で得られた化合物Cl−2(4.38g)を滴下し、4時間攪拌した。反応液を少量採取してH−NMRを測定したところ、保護率は21.2%であった。その後、少量の化合物Cl−2を追添して1時間攪拌し、H−NMRを測定する操作を繰り返し、保護率が目標値である23.0%を超えた時点で蒸留水を加えて反応を停止した。THFを減圧留去して反応物を酢酸エチルに溶解した。得られた有機層を蒸留水で5回洗浄した後、有機層をヘキサン1.5L中に滴下した。得られた沈殿を濾別し、少量のヘキサンで洗浄した後、PGMEA35gに溶解した。得られた溶液からエバポレーターで低沸点溶媒を除去することで、化合物(P−4)のPGMEA溶液(22.3質量%)が45.3g得られた。
【0428】
得られた化合物(P−4)につき、合成例1と同様の方法でH−NMR及びGPCを測定した。
得られた化合物(P−4)のH−NMRチャートを図2に示す。
【0429】
<合成例3:化合物(P−13)の合成>
ポリヒドロキシスチレン化合物としての(PHS−M3)10.0gをテトラヒドロフラン(THF)50gに溶解し、トリエチルアミン8.85gを加え、氷水浴中で攪拌した。反応液に、上記で得られた化合物Cl−1を含む混合液(7.84g)を滴下し、4時間攪拌した。反応液を少量採取してH−NMRを測定したところ、保護率は14.3%であった。蒸留水を加えて反応を停止した。THFを減圧留去して反応物を酢酸エチルに溶解した。得られた有機層を蒸留水で5回洗浄した後、有機層をヘキサン1.2L中に滴下した。得られた沈殿を濾別し、少量のヘキサンで洗浄した後、PGMEA35gに溶解した。得られた溶液からエバポレーターで低沸点溶媒を除去することで、化合物(P−13)のPGMEA溶液(22.4質量%)が44.8g得られた。
【0430】
得られた化合物(P−13)につき、合成例1と同様の方法でH−NMR及びGPCを測定した。化合物(P−13)のH−NMRチャートを図3に示す。
【0431】
<合成例4:化合物(P−16)の合成>
(クロロエーテル化合物の合成)
500mLナス型フラスコに、1−アダマンタンカルボアルデヒド20.0g、オルトギ酸トリメチル16.8g、カンファースルホン酸283mg、ヘキサン100mLを加え、25℃で1時間攪拌を行った。トリエチルアミン617mgを加えて攪拌し、蒸留水150mLで3回、有機層を洗浄した。減圧条件でヘキサンを除去することで、アセタール化合物として、下記に示す化合物10を24.0g得た。
【0432】
次に、得られた化合物10の20.0gに対し、塩化アセチル8.96gを加え、45℃の水浴で4時間攪拌した。室温に戻した後、減圧条件で未反応の塩化アセチルを除去することで、クロロエーテル化合物として、下記に示す化合物Cl−10を20.42g得た。
【0433】
H−NMR(CDCl:ppm)δ:1.58〜1.83(12H、m)、2.02(3H、s)、3.52(3H、s)、5.08(1H、s)
【化83】

【0434】
(化合物(P−16)の合成)
ポリヒドロキシスチレン化合物としてのポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP−2500,日本曹達株式会社製)30.0gをテトラヒドロフラン(THF)180gに溶解し、トリエチルアミン26.53gを加え、氷水浴中で攪拌した。反応液に、上記で得られた化合物Cl−10(14.88g)を滴下し、4時間攪拌した。反応液を少量採取してH−NMRを測定したところ、保護率は19.2%であった。その後、少量の化合物Cl−10を追添して1時間攪拌し、H−NMRを測定する操作を繰り返し、保護率が目標値である23.0%を超えた時点で蒸留水を加えて反応を停止した。THFを減圧留去して反応物を酢酸エチルに溶解した。得られた有機層を蒸留水で5回洗浄した後、有機層をヘキサン2.5L中に滴下した。得られた沈殿を濾別し、少量のヘキサンで洗浄した後、PGMEA75gに溶解した。得られた溶液からエバポレーターで低沸点溶媒を除去することで、化合物(P−16)のPGMEA溶液(27.2質量%)が110.2g得られた。
【0435】
得られた化合物(P−16)につき、合成例1と同様の方法でH−NMR及びGPCを測定した。化合物(P−16)のH−NMRチャートを図4に示す。
【0436】
<合成例5:化合物(P−33)の合成>
ポリヒドロキシスチレン化合物として(PHS−M2)10.0gをテトラヒドロフラン(THF)60gに溶解し、トリエチルアミン8.84gを加え、氷水浴中で攪拌した。反応液に、上記で得られた化合物Cl−10(4.11g)を滴下し、4時間攪拌した。反応液を少量採取してH−NMRを測定したところ、保護率は18.2%であった。蒸留水を加えて反応を停止した。THFを減圧留去して反応物を酢酸エチルに溶解した。得られた有機層を蒸留水で5回洗浄した後、有機層をヘキサン1.5L中に滴下した。得られた沈殿を濾別し、少量のヘキサンで洗浄した後、PGMEA35gに溶解した。得られた溶液からエバポレーターで低沸点溶媒を除去することで、化合物(P−33)のPGMEA溶液(24.4質量%)が45.2g得られた。
【0437】
得られた化合物(P−33)につき、合成例1と同様の方法でH−NMR及びGPCを測定した。化合物(P−33)のH−NMRチャートを図5に示す。
【0438】
<合成例6:化合物(P−36)の合成>
(クロロエーテル化合物の合成)
500mLナス型フラスコに、1−アダマンタンカルボアルデヒド20.0g、オルトギ酸トリイソプロピル30.12g、カンファースルホン酸283mg、ヘキサン100mLを加え、25℃で1時間攪拌を行った。トリエチルアミン617mgを加えて攪拌し、蒸留水150mLで3回、有機層を洗浄した。減圧条件でヘキサンを除去することで、アセタール化合物として、下記に示す化合物13を29.52g得た。
【0439】
次に、得られた化合物13の20.0gに対し、塩化アセチル7.66gを加え、45℃の水浴で4時間攪拌した。室温に戻した後、減圧条件で未反応の塩化アセチルを除去することで、クロロエーテル化合物として、下記に示す化合物Cl−13を16.59g得た。
【0440】
H−NMR(CDCl:ppm)δ:1.12−1.25(6H、m)、1.60−1.77(12H、m)、1.96−2.08(3H、m)、4.03(1H、sep)、5.29(1H、s)
【化84】

【0441】
(化合物(P−36)の合成)
ポリヒドロキシスチレン化合物としてのポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP−2500,日本曹達株式会社製)10.0gをテトラヒドロフラン(THF)60gに溶解し、トリエチルアミン8.84gを加え、氷水浴中で攪拌した。反応液に、上記で得られた化合物Cl−13(10.10g)の10gTHF溶液を滴下し、4時間攪拌した。蒸留水を加えて反応を停止した。THFを減圧留去して反応物を酢酸エチルに溶解した。得られた有機層を蒸留水で5回洗浄した後、有機層をヘキサン800mL中に滴下した。得られた沈殿を濾別し、少量のヘキサンで洗浄した後、PGMEA35gに溶解した。得られた溶液からエバポレーターで低沸点溶媒を除去することで、化合物(P−36)のPGMEA溶液(24.7質量%)が54.63g得られた。
【0442】
得られた化合物(P−36)につき、合成例1と同様の方法でH−NMR及びGPCを測定した。化合物(P−36)のH−NMRチャートを図6に示す。
【0443】
<合成例7〜23:他の化合物(A)の合成>
使用するポリヒドロキシスチレン化合物、及びクロロエーテル化合物を適宜変更した以外は、合成例1と同様の方法で化合物(P−2)、(P−3)、(P−5)〜(P−12)、(P−14)、(P−15)、(P−17)、(P−34)、(P−35)、(P−37)、(P−38)を合成した。合成に使用したポリヒドロキシスチレン化合物、及びクロロエーテル化合物を以下に示す。なお、使用したクロロエーテル化合物は、合成例1と同様、対応するアルデヒド化合物を出発原料とし、アセタール化合物を経由して合成した。
【表1】

【0444】
【化85】

【0445】
【化86】

【0446】
【化87】

【0447】
<合成例24:化合物(P−18)の合成>
ポリヒドロキシスチレン化合物として(PHS−M4)(ヒドロキシスチレンユニット83.3mmol相当)、クロロエーテル化合物としてCl−2を使用し、合成例1と同様の方法で19mol%分反応させ、蒸留水を加えて反応を停止した。THFを減圧留去して反応物を酢酸エチルに溶解した。得られた有機層を蒸留水で5回洗浄したのち、濃縮乾固した。
【0448】
得られたポリマーをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)40gに溶解し、ピリジン6.58g、スルホ化剤として2−スルホ安息香酸無水物(以下、SN−1と略すことがある)0.92g、N,N−ジメチルアミノピリジン122mgを加え、室温で5時間攪拌した。反応液を酢酸エチル100mLの入った分液ロートに移し、有機層を飽和食塩水100mLで5回洗浄し、有機層をエバポレーターで濃縮し、酢酸エチルを除去した。
【0449】
得られたポリマーをテトラヒドロフラン(THF)30mL及びメタノール10mLに溶解し、PAG前駆体として臭化トリフェニルスルホニウム(以下、PG−1と略すことがある)1.72gを加え、室温で3時間攪拌した。反応液をエバポレーターで濃縮した後、酢酸エチル100mLに再溶解して有機層を蒸留水100mLで5回洗浄した。有機層を濃縮し、アセトン50mLに溶解した後、蒸留水:メタノール=15:1(体積比)の混合溶液700mL中に滴下した。上澄み液を除去して得られた固体を酢酸エチル50mLに溶解し、ヘキサン700mL中に滴下した。上澄みを除去して得られた沈殿を32gのPGMEAに溶解した。得られた溶液からエバポレーターで低沸点溶媒を除去することで、化合物(P−18)のPGMEA溶液(27.2質量%)が45.1g得られた。
【化88】

【0450】
<合成例25〜30:化合物(P−19)〜(P−24)の合成>
使用するポリヒドロキシスチレン化合物、クロロエーテル化合物、スルホ化剤及びPAG前駆体を適宜変更した以外は、合成例24と同様の方法で合成した。合成に使用した試薬を以下に示す。
【表2】

【0451】
【化89】

【0452】
【化90】

【0453】
<合成例31:化合物(P−25)の合成>
1−メトキシー2−プロパノール11.0gを窒素気流下、70℃に加熱した。この液を攪拌しながら、以下に示すモノマー(M−1)10.0g、モノマー(M−2)3.74g、1−メトキシ−2−プロパノール43.96g、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル〔V−601、和光純薬工業(株)製〕2.13gの混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃で更に4時間攪拌した。反応液を放冷後、多量のヘキサン/酢酸エチルで再沈殿を行い、真空乾燥を行うことで、本発明の高分子化合物(P−25)を9.21g得た。
【化91】

【0454】
【化92】

【0455】
<合成例32〜37:化合物(P−26)〜(P−29)の合成>
合成例31を基に、使用するモノマー種を適宜変更することで、本発明の高分子化合物(P−26)〜(P−29)、(P−39)及び(P−40)を得た。
【化93】

【0456】
<合成例38〜39:化合物(P−30)〜(P−31)の合成>
ポリヒドロキシスチレン化合物を、4−tert−ブチルカリックス[8]アレーン(合成例38)、及び1,3,5−トリ(1’,1’−ジ(4−ヒドロキシフェニル)エチル)ベンゼン(合成例39)に変えた以外は、合成例2と同様の方法で、本発明の化合物(P−30)及び(P−31)を合成した。
【化94】

【0457】
<合成例40:化合物(P−32)の合成>
ポリヒドロキシスチレン化合物としてのポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP−2500,日本曹達株式会社製)30gをPGMEA120gに溶解した。この溶液に、ビニルエーテル化合物として2,6−ジフェニルフェニルオキシエチルビニルエーテル13.82g及び1.45gの2質量%カンファースルホン酸(PGMEA溶液)を加え、室温で2時間撹拌した。1.05gの10質量%トリエチルアミン(PGMEA溶液)を加え、しばらく撹拌した後、反応液を酢酸エチル165mLの入った分液ロートに移した。この有機層を蒸留水200mLで3回洗浄後、エバポレーターで酢酸エチルを除去した。得られた反応液を2Lのヘキサン中に滴下し、上澄みを除去した。得られた生成物をPGMEA95gに溶解し、減圧条件で低沸点溶媒を除去することで、(P−32)のPGMEA溶液(27.8質量%)が141.3g得られた。
【化95】

【0458】
比較用として、下記化合物を用いた。組成比、重量平均分子量及び分散度と共に以下に示す。
【化96】

【0459】
〔光酸発生剤〕
光酸発生剤としては、次式により表される化合物を用いた。
【化97】

【0460】
<合成例:PAG−1>
(トリシクロヘキシルベンゼンの合成)
ベンゼン20.0gに塩化アルミニウム6.83gを加え、3℃で冷却攪拌し、シクロ
ヘキシルクロリド40.4gをゆっくり滴下した。滴下後、室温で5時間攪拌し、氷水にあけた。酢酸エチルで有機層を抽出し、得られた有機層を40℃で減圧留去した。更に170℃で減圧留去後、室温に冷却し、アセトン50mlを投入し、再結晶させた。析出した結晶を濾取し、トリシクロヘキシルベンゼン14gを得た。
【0461】
(トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの合成)
トリシクロヘキシルベンゼン30gを塩化メチレン50mlに溶解し、3℃で冷却攪拌し、クロロスルホン酸15.2gをゆっくり滴下した。滴下後、室温で5時間攪拌し、氷10gを投入後、50%水酸化ナトリウム水溶液を40g投入した。更にエタノールを20g加え、50℃で1時間攪拌後、不溶分を濾過除去し、40℃で減圧留去した。析出した結晶を濾取し、ヘキサン洗浄し、1,3,5−トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム30gを得た。
【0462】
(PAG−1の合成)
トリフェニルスルホニウムブロミド4.0gをメタノール20mlに溶解し、20mlのメタノールに溶解させた1,3,5−トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5.0gを加えた。室温で2時間攪拌後、イオン交換水50mlを加えクロロホルムで抽出した。得られた有機層を水で洗浄後、40℃で減圧留去し、得られた結晶をメタノール/酢酸エチル溶媒で再結晶した。これにより化合物PAG−1を5.0g得た。
【0463】
H−NMR(400MHz,CDCl) δ=7.85(d,6H),7.68(t,3H),7.59(t,6H),6.97(s,2H),4.36−4.27(m,2H),2.48−2.38(m,1H),1.97−1.16(m,30H)
同様にして、PAG−2〜PAG−7についても合成した。
【0464】
〔塩基性化合物〕
塩基性化合物としては、次式により表される化合物を用いた。
【化98】

【0465】
〔界面活性剤及び溶剤〕
界面活性剤としては、以下のものを用いた。
W−1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素系)
W−2:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素及びシリコン系)
W−3:PF6320(OMNOVA社製;フッ素系)
溶剤としては、以下のものを用いた。
S1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
S2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
S3:シクロヘキサノン
S4:乳酸エチル
[実施例1〜9及び比較例1〜5]
下記表3に示す各成分を、同表に示す溶剤に溶解させた。これを0.1μmのポアサイズを有するポリテトラフルオロエチレンフィルターを用いてろ過した。これにより、表3に示す全固形分濃度のポジ型レジスト溶液を調製した。なお、表3に示す各成分の濃度は、全固形分の質量を基準とした質量濃度である。
【0466】
<レジスト評価>
調製したポジ型レジスト溶液を、スピンコータを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、130℃で90秒間に亘って加熱乾燥を行った。これにより、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。
【0467】
このレジスト膜に対して、電子線照射装置((株)日立製作所製HL750;加速電圧50keV)を用いて、電子線照射を行った。照射後直ぐに、120℃で90秒間ホットプレート上にて加熱した。その後、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて、23℃で60秒間現像し、30秒間純水を用いてリンスした後、乾燥させた。これにより、ラインアンドスペースパターン(ライン:スペース=1:1)と孤立ラインパターン(ライン:スペース=1:>100)を形成した。なお、以下では、ラインアンドスペースパターンをL&Sと略記し、孤立ラインパターンをILと略記することがある。
【0468】
〔形状〕
得られた各パターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4800)を用いて観察した。100nmのILパターンにおける形状を観察し、矩形に近いものを二重丸、やや膜減り形状を○、テーパー形状を△で表した。
【0469】
〔解像力〕
限界解像力(ラインとスペースが分離解像する最小の線幅)を解像力(nm)とした。
【0470】
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
線幅100nmのラインパターンの長さ方向50μmにおける任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4800)を用いてエッジがあるべき基準線からの距離を測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。この値が小さい程、ラインエッジラフネスが良好である。
【0471】
〔残膜率(ドライエッチング耐性)〕
ヘキサメチルジシラザン処理をしたウエハー上に、膜厚100nmのポジ型レジスト膜を形成した。この膜に対し、CF(10mL/min)とO(20mL/min)とAr(1000mL/min)との混合ガスを用いて、23℃で30秒間プラズマエッチングを行った。その後、プラズマエッチング後のレジスト膜の膜厚を測定した。そして、このエッチング後の膜厚を、エッチング前の膜厚で除して100倍することにより、残膜率(%)を得た。なお、残膜率が大きいほど、ドライエッチング耐性は良好である。
【表3】

【0472】
表3に示すように、実施例1〜9に係る組成物は、比較例1〜5に係る組成物と比較して、IL解像性・ILパターン形状及びLERが優れていた。
【0473】
[実施例10〜44及び比較例6〜9]
マスクブランクス上におけるレジスト膜の性能を確認すべく、(1)ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板を、化学蒸着によって厚み100nmの酸化クロム膜(遮光膜)が設けられたガラス基板に変更し、(2)レジスト溶液塗布後の加熱条件を130℃で90秒間から130℃で600秒間に変更し、(3)電子線照射後の加熱条件を120℃で90秒間から120℃で600秒間に変更した以外は、実施例1〜9と同様にポジ型レジスト溶液を調製し、レジスト膜を形成し、レジスト評価を行った。結果を表4に示す。
【表4−1】

【0474】
【表4−2】

【0475】
【表4−3】

【0476】
表4に示すように、実施例10〜44に係る組成物は、比較例6〜9に係る組成物と比較して、IL解像性・ILパターン形状及びLERが優れていた。これら本発明の組成物からなるレジスト膜が形成されたマスクブランクスを、露光、現像することにより、半導体製造用として好適なフォトマスクが得られる。
[実施例45〜50及び比較例10〜13]
下記表5に示す各成分を、同表に示す溶剤に溶解させた。これを0.1μmのポアサイズを有するポリテトラフルオロエチレンフィルターを用いてろ過した。これにより、表5に示す全固形分濃度のポジ型レジスト溶液を調製した。なお、表5に示す各成分の濃度は、全固形分の質量を基準とした質量濃度である。
【0477】
<レジスト評価>
調製したポジ型レジスト溶液を、スピンコータを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、130℃で90秒間に亘って加熱乾燥を行った。これにより、膜厚30nmのレジスト膜を形成した。
【0478】
このレジスト膜に対して、電子線照射装置((株)JEOL製 JBX6000;加速電圧50keV)を用いて、2.5nm刻みで線幅20nm〜30nmのラインパターン(長さ方向0.5mm、描画本数40本)を、照射量を変えて露光した。照射後直ぐに、110℃で90秒間ホットプレート上にて加熱した。その後、濃度0.8質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて、23℃で180秒間現像し、30秒間純水を用いてリンスした後、乾燥させた。これにより、ラインアンドスペースパターン(ライン:スペース=1:1)を形成した。なお、以下では、ラインアンドスペースパターンをLSパターンと略記することがある。
【0479】
〔形状〕
得られた各パターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて観察した。30nmのLSパターンにおける形状を観察し、矩形に近いものを二重丸、それ以外は矩形に近い順に、○、△、×と記載し、形状に関するコメントを併記した。
【0480】
〔解像力〕
限界解像力(ラインとスペースが分離解像する最小の線幅)を解像力(nm)とした。
【0481】
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
線幅30nmのラインパターンの長さ方向50μmにおける任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いてエッジがあるべき基準線からの距離を測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。この値が小さい程、ラインエッジラフネスが良好である。
【表5】

【0482】
表5に示すように、実施例45〜50に係る組成物は、比較例10〜13に係る組成物と比較して、LS解像力、LER及びパターン形状が優れていた。
【0483】
[実施例51〜53及び比較例14]
大面積露光におけるレジスト膜の性能を確認すべく、描画本数を40本から500本に変更した以外は、実施例45〜50と同様にポジ型レジスト膜を形成し、レジスト評価を行った。結果を表6に示す。
【表6】

【0484】
表6に示すように、実施例51〜53に係る組成物は、比較例14に係る組成物と比較して、LS解像力、LER及びパターン形状が優れていた。表5及び表6に示す結果から、本発明に係るレジストパターン形成方法は、ナノインプリント用モールドの製造にも適用可能であることが分かる。
【0485】
[実施例54〜64及び比較例15]
EUV露光におけるレジスト膜の性能を確認すべく、レジスト膜の膜厚を100nmから50nmに変更した以外は、実施例1〜9と同様にポジ型レジスト膜を形成した。
このレジスト膜に対し、EUV露光装置(波長=13.5nm、Na=0.3)を用いてEUV光を照射した。照射後直ぐに、110℃で90秒間に亘ってホットプレート上にて加熱した。その後、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて、23℃で30秒間現像し、30秒間純水を用いてリンスした後、乾燥させた。これにより、ラインアンドスペースパターン(ライン:スペース=1:1)を形成した。
【0486】
(感度)
まず、得られたラインアンドスペースパターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9380)を用いて観察した。そして、線幅35nmのライン(ライン:スペース=1:1)を解像するときの露光量を、感度(Eopt)とした。
【0487】
(パターン形状)
上記の感度を示す照射量における35nmラインパターン(ライン:スペース=1:1)の断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4800)を用いて観察した。そして、その形状を、矩形、逆テーパー形状、テーパー形状の3段階で評価した。
【0488】
(ラフネス特性:LWR)
上記の35nmラインパターン(ライン:スペース=1:1)を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9380)を用いて観察した。そして、その長さ方向2μmに含まれる等間隔の50点について、エッジがあるべき基準線と実際のエッジとの間の距離を測定した。そして、この距離の標準偏差を求め、3σを算出した。そして、この3σを「LWR(nm)」とした。この値が小さい程、ラフネス特性は良好である。
これらの評価結果を、下記表7に示す。
【表7】

【0489】
表7に示すように、実施例の組成物は、比較例の組成物と比較して、感度、パターン形状及びLWRにおいて優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフェノール性水酸基と、フェノール性水酸基の水素原子が下記一般式(1)で表される基によって置換されている基を少なくとも1つ含む化合物(P)を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

式中、
11、R12及びR13はそれぞれ独立に、−(CR111213)中のCと結合する原子が炭素原子である有機基を表す。ここで、R11、R12及びR13により表される有機基に含まれる炭素原子数の合計は4以上である。R11、R12及びR13の少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。
11は単結合又は2価の連結基を表す。
11はアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。
【請求項2】
化合物(P)が下記一般式(2)又は下記一般式(7)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物である、請求項1に記載の組成物。
【化2】

一般式(2)中、
21は水素原子又はメチル基を表す。
Ar21はアリーレン基を表す。
11、R12及びR13はそれぞれ独立に、−(CR111213)中のCと結合する原子が炭素原子である有機基を表す。ここで、R11、R12及びR13により表される有機基に含まれる炭素原子数の合計は4以上である。R11、R12及びR13の少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。
11は単結合又は2価の連結基を表す。
11はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
一般式(7)中、
71は水素原子又はメチル基を表す。
71は単結合又はアルキレン基を表す。
Ar71はアリーレン基を表す。
11、R12及びR13はそれぞれ独立に、−(CR111213)中のCと結合する原子が炭素原子である有機基を表す。ここで、R11、R12及びR13により表される有機基に含まれる炭素原子数の合計は4以上である。R11、R12及びR13の少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。
11は単結合又は2価の連結基を表す。
11はアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール環基を表す。
【請求項3】
前記Ar21及びAr71がフェニレン基である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記R11、R12及びR13のうち少なくとも1つが、少なくとも1つの環状構造を有する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記R11、R12及びR13の少なくとも2つが互いに結合して多環を形成する、請求項1乃至4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記−M11−Q11で表される基が、アルキル基、シクロアルキル基で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、又はアリールオキシアルキル基である、請求項1乃至5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
化合物(P)が、下記一般式(5)で表される繰り返し単位を含んでいる請求項2乃至6のいずれか1項に記載の組成物。
【化3】

式中、
51は水素原子又はメチル基を表す。
Ar51はアリーレン基を表す。
【請求項8】
化合物(P)が、下記一般式(3)により表される非分解性の繰り返し単位を更に含んでいる請求項2乃至7の何れか1項に記載の組成物。
【化4】

式中、
31は、水素原子又はメチル基を表す。
Ar31は、アリーレン基を表す。
31は、単結合又は2価の連結基を表す。
31は、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。
【請求項9】
化合物(P)が、下記一般式(4)により表される繰り返し単位を更に含んでいる請求項2乃至8の何れか1項に記載の組成物。
【化5】

式中、
41は、水素原子又はメチル基を表す。
Ar41は、アリーレン基を表す。
41は、単結合又は2価の連結基を表す。
Sは、活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。
【請求項10】
電子線、X線又はEUV光により露光される請求項1乃至9の何れか1項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の組成物を用いて形成された感活性光線性又は感放射線性膜。
【請求項12】
請求項11に記載の感活性光線性又は感放射線性膜が形成されたマスクブランクス。
【請求項13】
請求項12に記載のマスクブランクスを、露光し、現像することにより得られる半導体製造用マスク。
【請求項14】
請求項11に記載の膜を露光することと、
前記露光された膜を現像することと
を含んだパターン形成方法。
【請求項15】
請求項12に記載のマスクブランクスを露光することと、
前記露光されたマスクブランクスを現像することと
を含んだパターン形成方法。
【請求項16】
前記露光は、電子線、X線又はEUV光により行われる請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物。
【化6】

式中、
21は水素原子又はメチル基を表す。
Ar21はアリーレン基を表す。
11、R12及びR13はそれぞれ独立に、−(CR111213)中のCと結合する原子が炭素原子である有機基を表す。ここで、R11、R12及びR13により表される有機基に含まれる炭素原子数の合計は4以上である。R11、R12及びR13の少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。
11は単結合又は2価の連結基を表す。
11はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
【請求項18】
下記一般式(5)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物と、下記一般式(A)で表される化合物とを反応させることを含む、請求項17に記載の高分子化合物の製造方法。
【化7】

一般式(5)中、
51は水素原子又はメチル基を表す。
Ar51はアリーレン基を表す。
一般式(A)中、
は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。
【請求項19】
下記一般式(B)で表される化合物を重合させることを含む、請求項17に記載の高分子化合物の製造方法。
【化8】

式中、
21は水素原子又はメチル基を表す。
Ar21はアリーレン基を表す。
11、R12及びR13はそれぞれ独立に、−(CR111213)中のCと結合する原子が炭素原子である有機基を表す。ここで、R11、R12及びR13により表される有機基に含まれる炭素原子数の合計は4以上である。R11、R12及びR13の少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。
11は単結合又は2価の連結基を表す。
11はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−20226(P2013−20226A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−77484(P2012−77484)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】