説明

感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びそれを用いたパターン形成方法

【課題】 孤立パターンの解像性に優れた感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びそれを用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、下記一般式(1)により表される繰り返し単位を含んだ樹脂を備えている。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びそれを用いたパターン形成方法に関する。特に本発明は、超LSI及び高容量マイクロチップの製造プロセス、ナノインプリント用モールド作成プロセス並びに高密度情報記録媒体の製造プロセス等に適用可能な超マイクロリソグラフィプロセス、並びにその他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いられる組成物、並びにそれを用いたパターン形成方法に関する。更に詳しくは、本発明は、電子線又はEUV光を用いる半導体素子の微細加工に好適に用いることができる組成物、及びそれを用いたパターン形成方法に関する。
【0002】
なお、ここで「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及び電子線等を意味している。また、本発明において「光」とは、活性光線又は放射線を意味している。
【0003】
また、ここで「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、遠紫外線、X線及びEUV光等による露光のみならず、電子線及びイオンビーム等の粒子線による描画をも意味している。
【背景技術】
【0004】
レジスト組成物を用いた微細加工では、集積回路の高集積化に伴って、超微細パターンの形成が要求されている。それゆえ、露光波長にも短波長化の傾向が見られ、例えば、エキシマレーザー光の代わりに電子線、X線又はEUV光を用いたリソグラフィー技術の開発が進んでいる。また、近年では、レジスト組成物を用いた微細加工は、集積回路の製造のみならず、インプリント用モールド構造体の作成にも用いられている。
【0005】
このような超微細パターンを形成するためには、レジストを薄膜化することが必要である。ところが、レジストを薄膜化すると、そのドライエッチング耐性が低下する場合がある。
【0006】
また、電子線(EB)リソグラフィーでは、EBの加速電圧を増大させることによって、レジスト膜中での電子散乱、即ち前方散乱の影響が小さくなることが分かっている。それゆえ、近年では、EBの加速電圧は増大傾向にある。ところが、EBの加速電圧を増大させると、レジスト膜の電子エネルギー捕捉率が低下し、感度が低下する場合がある。
【0007】
これらの問題を解決する方法の1つとして、ナフタレン骨格を有する樹脂の使用が検討されている(例えば、特許文献1〜3参照)。ナフタレン骨格を有する樹脂を用いることにより、例えば、ドライエッチング耐性及び感度を向上させることが可能となる。
【0008】
しかしながら、EBの加速電圧を増大させると、前方散乱の影響が小さくなる代わりに、レジスト基板において反射した電子の散乱、即ち後方散乱の影響が増大する。そして、露光面積の大きい孤立パターンを形成する場合には、この後方散乱の影響が特に大きい。それゆえ、例えばEBの加速電圧を増大させると、孤立パターンの解像性が低下する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−169346号公報
【特許文献2】国際公開第2007−046453号公報
【特許文献3】特開2008−50568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、孤立パターンの解像性に優れた感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びそれを用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、例えば、以下の通りである。
【0012】
〔1〕下記一般式(1)により表される繰り返し単位を含んだ樹脂を備えた感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

【0013】
式中、R、R及びRは、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。Lはアリーレン基を表す。Aは2価の連結基を表す。Xは複数の芳香環を含んだ構造単位を表し、前記複数の芳香環は、縮環して多環式構造を形成しているか又は単結合を介して互いに連結されている。Yは、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表し、nが2以上の場合、複数のYは互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。nは1〜5の整数を表す。
【0014】
〔2〕前記Xは、下記一般式(X1)〜(X6)の何れかにより表される構造単位である〔1〕に記載の組成物。
【化2】

【0015】
式中、Rは、複数存在する場合は各々独立に、1価の置換基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、前記Aを表す。nは0〜14の整数である。XはCH又はNを表し、2つのXは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。前記A、OY及びRは、前記複数の芳香環を構成している原子の何れに結合していてもよい。
【0016】
〔3〕前記Yは、水素原子又は下記一般式(2)により表される基である〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
【化3】

【0017】
式中、R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。Mは、単結合又は2価の連結基を表す。Qは、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂環基、ヘテロ原子を含んでいてもよい芳香環基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基又はアルデヒド基を表す。R、R、M及びQの少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
【0018】
〔4〕前記樹脂は、下記一般式(3)及び(4)により表される繰り返し単位の少なくとも一方を更に含んでいる〔1〕〜〔3〕の何れかに記載の組成物。
【化4】

【0019】
式中、R〜R14は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。R15〜R17は、各々独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。R15〜R17の少なくとも2つは、互いに結合して、シクロアルキル基を形成していもよい。Lはアリーレン基を表す。Zは水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。
【0020】
〔5〕電子線、X線又はEUV光により露光される〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の組成物。
【0021】
〔6〕〔1〕〜〔5〕の何れかに記載の組成物を用いて膜を形成することと、前記膜を露光することと、前記露光された膜を現像することとを含んだパターン形成方法。
【0022】
〔7〕前記露光は、電子線、X線又はEUV光を用いて行われる〔6〕に記載の方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、孤立パターンの解像性に優れた感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及びそれを用いたパターン形成方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、ここでは、置換又は無置換を明示していない基及び原子団には、置換基を有していないものと置換基を有しているものとの双方が含まれることとする。例えば、置換又は無置換を明示していない「アルキル基」は、置換基を有していないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有しているアルキル基(置換アルキル基)をも包含することとする。
【0025】
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、例えばポジ型の組成物であり、典型的にはポジ型のレジスト組成物である。以下、この組成物の構成を説明する。
【0026】
〔1〕樹脂(P)
本発明に係る組成物は、樹脂(P)を含んでいる。この樹脂(P)は、下記一般式(1)により表される繰り返し単位を含んでいる。
【化5】

【0027】
式中、R、R及びRは、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。Lはアリーレン基を表す。Aは2価の連結基を表す。Xは複数の芳香環を含んだ構造単位を表し、前記複数の芳香環は、縮環して多環式構造を形成しているか又は単結合を介して互いに連結されている。Yは、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表し、nが2以上の場合、複数のYは互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。nは1〜5の整数を表す。
【0028】
、R及びRの各々は、上述したように、水素原子又は1価の置換基である。1価の置換基としては、例えば、アルキル基;シクロアルキル基;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びケイ素原子等のヘテロ原子を含んだ置換基;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0029】
アルキル基の炭素数は、好ましくは20以下とし、更に好ましくは8以下とする。このアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基及びドデシル基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びt−ブチル基が特に好ましい。
【0030】
シクロアルキル基は、単環型であってもよく、多環型であってもよい。このシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは3〜8とする。
【0031】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。これらのうち、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子がより好ましく、臭素原子が特に好ましい。
【0032】
ヘテロ原子を含んだ置換基としては、例えば、水酸基、アルコキシ基、チオール基、チオエーテル基及びアミノ基が挙げられる。
【0033】
アルコキシ基の炭素数は、好ましくは20以下とし、更に好ましくは8以下とする。このアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブチロキシ基及びオクチロキシ基が挙げられる。中でも、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基及びt−ブトキシ基が特に好ましい。なお、チオエーテル基についても、酸素原子の代わりに硫黄原子を用いることを除いては、アルコキシ基と同様のものが挙げられる。
【0034】
これらの基は、置換基を更に有していてもよい。これらの基が更に有し得る置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。なお、この置換基の炭素数は、好ましくは8以下とする。
【0035】
は、上述したように、アリーレン基を表す。このアリーレン基は、ヘテロ環を有していてもよい。また、このアリーレン基は、置換基を更に有していてもよい。
【0036】
アリーレン基の炭素数は、好ましくは4〜20とし、更に好ましくは6〜14とする。このアリーレン基としては、例えば、フェニレン基及びナフチレン基が挙げられる。
【0037】
アリーレン基が更に有し得る置換基としては、例えば、ニトロ基、フッ素原子等のハロゲン原子、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、及びアルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)が挙げられる
は、上述したように、2価の連結基を表す。この連結基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、−O−、−SO−、−CO−、−N(R)−及びこれらの組み合わせが挙げられる。ここで、Rは、アリール基、アルキル基又はシクロアルキルを表す。LとXとの間にAを介在させることにより、樹脂のアルカリ溶解性の低下を抑制することが可能となる。
【0038】
アルキレン基としては、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、及びドデカニレン基等の炭素数1〜12のものが挙げられる。
【0039】
シクロアルキレン基としては、好ましくは、シクロペンチレン基及びシクロヘキシレン基等の炭素数5〜8のものが挙げられる。
【0040】
これらアルキレン基及びシクロアルキレン基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。
【0041】
の「最小連結原子数」は、1〜50であることが好ましく、2〜25であることが更に好ましく、3〜15であることが特に好ましい。この「最小連結原子数」が過度に小さいと、側鎖の構造が剛直となり、樹脂(P)のアルカリ現像液への溶解性が著しく低下する可能性がある。この「最小連結原子数」が過度に大きいと、樹脂(P)のガラス転移温度が低下し、膜中で露光により発生した酸が拡散しやすくなるため、ラフネス特性及び解像性等が低下する可能性がある。
【0042】
なお、Aの「最小連結原子数」は、以下のようにして定められる数である。即ち、まず、Aを構成している原子のうち、Lと結合している原子と、Xと結合している原子とを結ぶ原子の列を考える。次に、これら列の各々に含まれる原子数を求める。そして、これら原子数のうち最小のものを、Aの「最小連結原子数」とする。
【0043】
例えば、Aがプロピレン基である場合、その最小連結原子数は3である。Aが−CH−O−CO−である場合、その最小連結原子数は3である。Aが2−メチル−ブチレン基である場合、その最小連結原子数は4である。Aがシクロへキシレン基である場合、その最小連結原子数は4である。Aが−O−CHCHCH−O−CO−である場合、その最小連結原子数は6である。なお、Aが直鎖状のアルキレン基の場合、Aの最小連結原子数は、その炭素数に等しい。
【0044】
Xは、上述したように、複数の芳香環を含んだ構造単位を表している。これら複数の芳香環は、縮環して多環式構造を形成していてもよく、単結合を介して互いに連結されていてもよい。なお、これら芳香環の各々は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。Xとして複数の芳香環を含んだ構造単位を用いることにより、ドライエッチング耐性の向上、及び二次電子発生量の増大に起因した感度の向上を達成し得る。
【0045】
Xが含み得る芳香環としては、例えば、ベンゼン環、チオフェン環、ピロール環、フラン環、イミダゾール環、ピリジン環及びピラゾール環が挙げられる。
【0046】
複数の芳香環が縮環して形成し得る多環式構造としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、トリフェニレン環、インドール環、ベンズイミダゾール環、カルバゾール環及びフェノチアジン環が挙げられる。この中でも、インドール環、ピレン環、フェナントレン環、アントラセン環及びナフタレン環が更に好ましく、インドール環、アントラセン環及びナフタレン環が特に好ましい。
【0047】
複数の芳香環が単結合を介して互いに連結された構造としては、例えば、ビフェニル構造、ターフェニル構造及びビオローゲン構造が挙げられる。中でも、ビフェニル構造及びターフェニル構造が特に好ましい。
【0048】
Xに含まれる芳香環の数は、好ましくは2〜6、より好ましくは2〜4、更に好ましくは2又は3である。なお、ここで「芳香環の数」とは、ベンゼン環又はそれに対応する単環ヘテロアリール環の数である。例えば、ナフタレン残基、ビフェニル残基及びビピリジン残基のそれは2であり、アントラセン残基、カルバゾール残基及びフェノチアジン残基のそれは3である。
【0049】
Xは、好ましくは、下記一般式(X1)〜(X6)の何れかにより表される構造単位である。
【化6】

【0050】
式中、Rは、複数存在する場合は各々独立に、1価の置換基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、一般式(1)におけるAを表す。nは0〜14の整数である。XはCH又はNを表し、2つのXは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。なお、これらXにおいて、A、OY及びRは、複数の芳香環を構成している原子の何れに結合していてもよい。
【0051】
は、上述したように、1価の置換基である。この1価の置換基としては、例えば、先にR〜Rについて列挙したのと同様のものが挙げられる。これらのうち、フッ素原子及び臭素原子等のハロゲン原子、並びにアルキル基が特に好ましい。
【0052】
は、上述したように、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、一般式(1)におけるAである。アルキル基及びシクロアルキル基としては、例えば、先にR〜Rについて列挙したのと同様のものが挙げられる。
【0053】
は、上述したように、0〜4の整数である。nは、好ましくは0〜10であり、より好ましくは0〜8である。
【0054】
以下に、一般式(X1)〜(X6)の何れかにより表される構造単位の具体例を示すが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【化7】

【0055】
【化8】

【0056】
Yは、上述したように、水素原子又は酸の作用により脱離する基である。なお、nが2以上の場合、複数のYは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0057】
酸の作用により脱離する基としては、例えば、下記一般式(5)〜(7)により表される基が挙げられる。
【化9】

【0058】
式中、R18〜R26は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。なお、R18とR19とは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
アルキル基及びシクロアルキル基としては、例えば、先にR〜Rについて列挙したのと同様のものが挙げられる。
【0059】
アリール基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。このアリール基の炭素数は、好ましくは4〜20とし、更に好ましくは6〜14とし、特に好ましくは6〜12とする。このアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0060】
アリール基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、及びアルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)が挙げられる。
【0061】
以下に、一般式(5)〜(7)の何れかにより表される基の具体例を示すが、本発明がこれに限定されるものではない。なお、式中、「−」はO原子との連結基を表し、メチル基は「Me−」として表記して区別している。
【化10】

【0062】
Yが酸の作用により脱離する基である場合、このYは、好ましくは、下記一般式(2)により表される基である。
【化11】

【0063】
及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はこれらの組み合わせを表す。Mは、単結合又は2価の連結基を表す。Qは、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂環基、ヘテロ原子を含んでいてもよい芳香環基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基又はアルデヒド基を表す。
【0064】
なお、R、R、M及びQの少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成していてもよい。この環は、5員環又は6員環であることが好ましい。
【0065】
又はRとしてのアルキル基は、例えば、炭素数1〜8のアルキル基である。好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基が挙げられる。
【0066】
又はRとしてのシクロアルキル基は、例えば、炭素数3〜15のシクロアルキル基である。好ましくは、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基及びアダマンチル基が挙げられる。
【0067】
又はRとしてのアリール基は、例えば、炭素数6〜15のアリール基である。好ましくは、フェニル基、トリル基、ナフチル基及びアントリル基が挙げられる。
【0068】
及びRとしてのアラルキル基は、例えば、炭素数6〜20のアラルキル基である。好ましくは、ベンジル基及びフェネチル基が挙げられる。
【0069】
Mとしての2価の連結基は、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基又はオクチレン基)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基又はシクロヘキシレン基)、アルケニレン基(例えば、エチレン基、プロペニレン基又はブテニレン基)、アリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基又はナフチレン基)、−S−、−O−、−CO−、−SO−、−N(R)−、又はこれらの組み合わせである。ここで、Rは、水素原子又はアルキル基(例えば炭素数1〜8のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等)である。
【0070】
Qとしてのアルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、上述したR及びRとしての各基と同様である。
【0071】
Qとしての脂環基及び芳香環基としては、例えば、上述したR及びRとしてのシクロアルキル基及びアリール基が挙げられる。その炭素数は、好ましくは、3〜15である。
ヘテロ原子を含む脂環基及びヘテロ原子を含む芳香環基としては、例えば、チイラン、シクロチオラン、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール及びピロリドンが挙げられる。
【0072】
、R、M及びQの少なくとも2つが互いに結合して環を形成する場合としては、例えば、RとRとが結合してブチレン基又はペンチレン基を形成して5員環又は6員環を形成する場合、及び、M及びQの何れかとR及びRの何れかとが結合してプロピレン基又はブチレン基を形成して、酸素原子を含有する5員環又は6員環を形成する場合が挙げられる。
【0073】
、R、M及びQにより表される各基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、上記のR〜Rが有し得る置換基として列挙したのと同様のものが挙げられる。なお、この置換基の炭素数は、好ましくは8以下である。
【0074】
−(M−Q)により表される基の炭素数は、好ましくは1〜30であり、更に好ましくは5〜20である。
【0075】
以下に、一般式(2)により表される基の具体例を示すが、本発明がこれに限定されるものではない。なお、式中、「−」はO原子との連結基を表し、メチル基は「Me−」として表記して区別している。
【化12】

【0076】
が2以上の場合、Yは、異なる2つの酸素原子と連結して環を形成していてもよい。即ち、Yは、「−O−Y−O−」により表される部分構造を構成していてもよい。この場合、Yは、好ましくは、下記一般式(2’)により表される基である。
【化13】

【0077】
式中、R6’及びR7’は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。これらR6’及びR7’の好ましい例は、R及びRの好ましい例と同様である。
Yと異なる2つの酸素原子とが連結して形成し得る環としては、5員、6員又は7員環が好ましく、6員環が特に好ましい。
【0078】
以下に、樹脂(P)の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化14】

【0079】
【化15】

【0080】
【化16】

【0081】
【化17】

【0082】
【化18】

【0083】
樹脂(P)は、一般式(1)により表される繰り返し単位を1種類のみ含んでいてもよいが、一般式(1)により表される繰り返し単位を複数種類含んでいることが更に好ましい。
【0084】
樹脂(P)は、下記一般式(3)及び(4)により表される繰り返し単位を更に含んでいてもよい。
【化19】

【0085】
式中、R〜R14は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。R15〜R17は、各々独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。なお、R15〜R17の少なくとも2つは、互いに結合して、シクロアルキル基を形成していもよい。
はアリーレン基を表す。Zは水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。
【0086】
〜R14としてのアルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、先にR〜Rについて列挙したのと同様のものである。
15〜R17のアルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖又は分岐状のものが好ましい。
15〜R17のシクロアルキル基としては、炭素数3〜8の単環のシクロアルキル基又は炭素数7〜20の多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0087】
15〜R17の少なくとも2つが互いに結合して形成し得るシクロアルキル基としては、炭素数3〜8の単環のシクロアルキル基又は炭素数7〜20の多環のシクロアルキル基が好ましい。中でも、炭素数5〜6の単環のシクロアルキル基が特に好ましい。R17がメチル基又はエチル基であり、R15とR16とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が更に好ましい。
【0088】
としては、例えば、先にLについて列挙したのと同様の基が挙げられる。
Zとしては、例えば、先にYについて列挙したのと同様の基が挙げられる。
【0089】
としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、−O−、−SO−、−CO−、−N(R)−及びこれらの複数の組み合わせが挙げられる。ここで、Rは、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
【0090】
としてのアリール基の炭素数は、好ましくは4〜20であり、更に好ましくは6〜14である。このアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
としてのアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜8である。このアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基が挙げられる。
としてのシクロアルキル基の炭素数は、好ましくは5〜8である。このシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0091】
一般式(3)により表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
【化20】

【0092】
【化21】

【0093】
【化22】

【0094】
一般式(4)により表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
【化23】

【0095】
【化24】

【0096】
一般式(1)により表される繰り返し単位の樹脂(P)に占める含有量は、全繰り返し単位を基準として、3〜100モル%とすることが好ましく、5〜90モル%とすることがより好ましく、10〜80モル%とすることが更に好ましい。
【0097】
樹脂(P)の形態は、ランダム型、ブロック型、クシ型及びスター型等の何れであってもよい。
上述した樹脂(P)は、例えば、各繰り返し単位に対応する不飽和モノマーを、ラジカル、カチオン又はアニオン重合させることにより合成することができる。また各繰り返し単位の前駆体に相当する不飽和モノマーを用いて重合した後に、高分子反応を行うことにより合成することも可能である。
【0098】
この樹脂(P)の分子量は、特に制限されないが、重量平均分子量が1000〜100000の範囲であることが好ましく、1500〜70000の範囲であることがより好ましく、2000〜50000の範囲であることが特に好ましい。ここで、樹脂の重量平均分子量は、GPC(溶媒:THF)によって測定したポリスチレン換算分子量を示す。
【0099】
また、分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.00〜3.50であり、より好ましくは1.03〜2.50であり、更に好ましくは1.05〜2.00である。
【0100】
樹脂(P)の性能を更に向上させるべく、耐ドライエッチング性を著しく損なわない範囲で、他の重合性モノマー由来の繰り返し単位を更に含有させてもよい。
【0101】
他の重合性モノマー由来の繰り返し単位の樹脂(P)に占める含有量は、全繰り返し単位を基準として、一般的に50モル%以下、好ましくは30モル%以下である。使用可能な他の重合性モノマーには、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類及びクロトン酸エステル類等から選択される付加重合性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物が含まれる。その他、無水マレイン酸、マレイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びマレイロニトリルも挙げられる。
【0102】
樹脂(P)の含量は、組成物の全固形分を基準として、30〜100質量%とすることが好ましく、50〜100質量%とすることがより好ましく、70〜100質量%とすることが特に好ましい。
【0103】
樹脂(P)の例としては、一般式(1)により表される繰り返し単位の具体例から選択される1種以上の繰り返し単位を含んだ樹脂が挙げられる。また、樹脂(P)の他の例としては、一般式(1)により表される繰り返し単位の具体例から選択される1種以上の繰り返し単位と、一般式(3)により表される繰り返し単位の具体例から選択される1種以上の繰り返し単位と、一般式(4)により表される繰り返し単位の具体例から選択される1種以上の繰り返し単位とを含んだ樹脂が挙げられる。
【0104】
樹脂(P)の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
【化25】

【0105】
【化26】

【0106】
【化27】

【0107】
【化28】

【0108】
【化29】

【0109】
【化30】

【0110】
<その他の成分>
本発明に係る組成物は、塩基性化合物、酸分解性樹脂、光酸発生剤、有機溶剤、界面活性剤、酸分解性溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、現像液に対する溶解を促進させる化合物、及びプロトンアクセプター性官能基を有する化合物等を更に含んでいてもよい。
【0111】
〔2〕塩基性化合物
本発明に係る組成物は、塩基性化合物を更に含んでいてもよい。塩基性化合物を更に含有させると、露光から加熱までの経時による性能変化を更に低減することが可能となる。また、こうすると、露光によって発生した酸の膜中拡散性を制御することが可能となる。
【0112】
この塩基性化合物は、含窒素有機化合物であることが好ましい。使用可能な化合物は特に限定されないが、例えば、以下の(1)〜(4)に分類される化合物を用いることができる。
【0113】
(1)下記一般式(BS−1)により表される化合物
【化31】

【0114】
一般式(BS−1)中、
Rは、各々独立に、水素原子又は有機基を表す。但し、3つのRのうち少なくとも1つは有機基である。この有機基は、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、単環若しくは多環のシクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0115】
Rとしてのアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常1〜20であり、好ましくは1〜12である。
Rとしてのシクロアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常3〜20であり、好ましくは5〜15である。
【0116】
Rとしてのアリール基の炭素数は、特に限定されないが、通常6〜20であり、好ましくは6〜10である。具体的には、フェニル基及びナフチル基等が挙げられる。
Rとしてのアラルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常7〜20であり、好ましくは7〜11である。具体的には、ベンジル基等が挙げられる。
【0117】
Rとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、水素原子が置換基により置換されていてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基及びアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
なお、一般式(BS−1)により表される化合物では、Rのうち少なくとも2つが有機基であることが好ましい。
【0118】
一般式(BS−1)により表される化合物の具体例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリイソデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、及び2,4,6−トリ(t−ブチル)アニリンが挙げられる。
【0119】
また、一般式(BS−1)により表される好ましい塩基性化合物として、少なくとも1つのRがヒドロキシ基で置換されたアルキル基であるものが挙げられる。具体的には、例えば、トリエタノールアミン及びN,N−ジヒドロキシエチルアニリンが挙げられる。
【0120】
なお、Rとしてのアルキル基は、アルキル鎖中に酸素原子を有していてもよい。即ち、オキシアルキレン鎖が形成されていてもよい。オキシアルキレン鎖としては、−CH2CH2O−が好ましい。具体的には、例えば、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン、及び、US6040112号明細書のカラム3の60行目以降に例示されている化合物が挙げられる。
【0121】
(2)含窒素複素環構造を有する化合物
この含窒素複素環は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。また、窒素原子を複数有していてもよい。さらに、窒素以外のヘテロ原子を含有していてもよい。具体的には、例えば、イミダゾール構造を有する化合物(2−フェニルベンゾイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾールなど)、ピペリジン構造を有する化合物〔N−ヒドロキシエチルピペリジン及びビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなど〕、ピリジン構造を有する化合物(4−ジメチルアミノピリジンなど)、並びにアンチピリン構造を有する化合物(アンチピリン及びヒドロキシアンチピリンなど)が挙げられる。
【0122】
また、環構造を2つ以上有する化合物も好適に用いられる。具体的には、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン及び1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−ウンデカ−7−エンが挙げられる。
【0123】
(3)フェノキシ基を有するアミン化合物
フェノキシ基を有するアミン化合物とは、アミン化合物が含んでいるアルキル基のN原子と反対側の末端にフェノキシ基を備えた化合物である。フェノキシ基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基及びアリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0124】
この化合物は、より好ましくは、フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン鎖を有している。1分子中のオキシアルキレン鎖の数は、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン鎖の中でも−CH2CH2O−が特に好ましい。
【0125】
具体例としては、2−[2−{2―(2,2―ジメトキシ−フェノキシエトキシ)エチル}−ビス−(2−メトキシエチル)]−アミン、及び、US2007/0224539A1号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1-1)〜(C3-3)が挙げられる。
【0126】
(4)アンモニウム塩
アンモニウム塩も適宜用いることができる。このアンモニウム塩は、好ましくは、ヒドロキシド又はカルボキシレートである。より具体的には、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0127】
その他、本発明に係る組成物に使用可能なものとして、特開2002−363146号公報の実施例で合成されている化合物、及び特開2007−298569号公報の段落0108に記載の化合物等が挙げられる。
【0128】
また、塩基性化合物として、感光性の塩基性化合物を用いてもよい。感光性の塩基性化合物としては、例えば、特表2003−524799号公報、及びJ.Photopolym.Sci&Tech. Vol.8,P.543−553(1995)等に記載の化合物を用いることができる。
【0129】
塩基性化合物の分子量は、250〜2000であることが好ましく、400〜1000であることが更に好ましい。
【0130】
これらの塩基性化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に係る組成物が塩基性化合物を更に含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、通常は0.001〜10質量%とし、好ましくは0.01〜5質量%とする。
【0131】
樹脂(P)の塩基性化合物に対するモル比は、1.5〜300であることが好ましい。即ち、感度及び解像度を向上させる観点から2.5以上が好ましく、露光後加熱処理前におけるパターン太りによる解像度の低下を抑制する観点から300以下が好ましい。このモル比は、より好ましくは2.0〜200であり、更に好ましくは2.5〜150である。
【0132】
〔3〕酸分解性樹脂
本発明に係る組成物は、樹脂(P)以外に、酸の作用により分解してアルカリ水溶性に対する溶解速度が増大する樹脂、即ち酸分解性樹脂を更に含んでいてもよい。
【0133】
酸分解性樹脂は、典型的には、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、酸分解性基ともいう)を備えている。この樹脂は、酸分解性基を、主鎖及び側鎖の一方に備えていてもよく、これらの両方に備えていてもよい。この樹脂は、酸分解性基を側鎖に備えていることが好ましい。
【0134】
酸分解性樹脂は、欧州特許254853号明細書、特開平2−25850号公報、同3−223860号公報及び同4−251259号公報等に開示されているように、例えば、樹脂に酸の作用により脱離する基の前駆体を反応させるか、又は、酸の作用により脱離する基の結合したアルカリ可溶性樹脂モノマーを種々のモノマーと共重合させることにより得られる。
【0135】
酸分解性基としては、−COOH基及び−OH基等のアルカリ可溶性基の水素原子を、酸の作用により脱離する基で置換した基が好ましい。
酸分解性基の具体例及び好ましい例としては、樹脂(P)における「OY」と同様のものが挙げられる。
【0136】
上述したアルカリ可溶性基を有する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノール性水酸基を含んだ樹脂、並びに、(メタ)アクリル酸及びノルボルネンカルボン酸等のカルボキシル基を有する繰り返し単位を含んだ樹脂が挙げられる。
フェノール性水酸基を含んだ樹脂としては、好ましくは、ポリ(o−ヒドロキシスチレン)、ポリ(m−ヒドロキシスチレン)、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)及びこれらの共重合体、水素化ポリ(ヒドロキシスチレン)、下記構造により表される置換基を有するポリ(ヒドロキシスチレン)類、スチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、α−メチルスチレン−ヒドロキシスチレン共重合体、及び水素化ノボラック樹脂等のヒドロキシスチレン構造単位を有する樹脂が挙げられる。
【化32】

【0137】
これら樹脂のアルカリ溶解速度は、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を用いて23℃で測定して、170Å/秒以上であることが好ましく、330Å/秒以上であることがより好ましい。
【0138】
これら樹脂の原料として採用可能なモノマーとしては、例えば、アルキルカルボニルオキシスチレン(例えば、t−ブトキシカルボニルオキシスチレン)、アルコキシスチレン(例えば、1−アルコキシエトキシスチレン又はt−ブトキシスチレン)、及び、(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル(例えば、t−ブチル(メタ)アクリレート又は2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート又はジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレート)が挙げられる。
【0139】
本発明に係る組成物に、KrFエキシマレーザー光、電子線、X線又は波長50nm以下の高エネルギー光線(例えばEUV)を照射する場合には、酸分解性樹脂は、芳香族基を備えた繰り返し単位を含んでいることが好ましい。特には、ヒドロキシスチレンを繰り返し単位として含んでいることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、ヒドロキシスチレンと酸の作用により脱離する基で保護されたヒドロキシスチレンとの共重合体、又は、ヒドロキシスチレンと(メタ)アクリル酸3級アルキルエステルとの共重合体が挙げられる。
【0140】
酸分解性樹脂としては、上記一般式(3)又は(4)により表される繰り返し単位を有する樹脂が特に好ましい。
【0141】
酸分解性樹脂は、他の重合性モノマー由来の繰り返し単位を有していてもよい。これら他の重合性モノマーとしては、例えば、先に樹脂(P)が含み得る他の重合性モノマーとして説明したものが挙げられる。なお、これら他の重合性モノマー由来の繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位を基準として、一般的に50モル%以下であり、好ましくは30モル%以下である。
【0142】
水酸基、カルボキシ基及びスルホン酸基等のアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有率は、酸分解性樹脂を構成する全繰り返し単位中、好ましくは1〜99モル%、より好ましくは3〜95モル%、特に好ましくは5〜90モル%である。
【0143】
酸分解性基を有する繰り返し単位の含有率は、酸分解性樹脂を構成する全繰り返し単位中、好ましくは3〜95モル%、より好ましくは5〜90モル%、特に好ましくは10〜85モル%である。
【0144】
酸分解性樹脂の重量平均分子量は、GPC法(溶媒:THF)によるポリスチレン換算値として、好ましくは50,000以下であり、より好ましくは1,000〜20,000であり、特に好ましくは1,000〜10,000である。
酸分解性樹脂の分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜3.0であり、より好ましくは1.05〜2.0であり、更に好ましくは1.1〜1.7である。
【0145】
また、酸分解性樹脂は、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0146】
酸分解性樹脂の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化33】

【0147】
【化34】

【0148】
なお、本発明に係る組成物が樹脂(P)以外の樹脂を更に含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.5〜80質量%であり、より好ましくは5〜50質量%であり、更に好ましくは10〜30質量%である。
【0149】
〔4〕光酸発生剤
光酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物である。光酸発生剤としては、例えば、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物、及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。これらの例としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩及びビス(アルキルスルホニルジアゾメタン等が挙げられる。
【0150】
光酸発生剤の好ましい例としては、下記一般式(ZI)、(ZII)及び(ZIII)により表される化合物が挙げられる。
【化35】

【0151】
上記一般式(ZI)において、R201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。R201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、例えば1〜30であり、好ましくは1〜20である。
【0152】
201〜R203のうち2つは、単結合又は連結基を介して互いに結合して、環を形成してもよい。この場合の連結基としては、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、カルボニル基、メチレン基及びエチレン基が挙げられる。R201〜R203のうちの2つが結合して形成する基としては、例えば、ブチレン基及びペンチレン基等のアルキレン基が挙げられる。
【0153】
201、R202及びR203の具体例としては、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)又は(ZI−3)における対応する基が挙げられる。
【0154】
は、非求核性アニオンを表す。Xとしては、例えば、スルホン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF、PF及びSbFが挙げられる。Xは、好ましくは、炭素原子を含んだ有機アニオンである。好ましい有機アニオンとしては、例えば、下記AN1〜AN3に示す有機アニオンが挙げられる。
【化36】

【0155】
式AN1〜AN3中、Rc〜Rcは、各々独立に、有機基を表す。この有機基としては、例えば、炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくは、アルキル基、アリール基、又はこれらの複数が連結基を介して連結された基である。なお、この連結基としては、例えば、単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO3−及び−SO2N(Rd1)−が挙げられる。ここで、Rd1は水素原子又はアルキル基を表し、結合しているアルキル基又はアリール基と環を形成してもよい。
【0156】
Rc〜Rcの有機基は、1位がフッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたアルキル基、又は、フッ素原子若しくはフロロアルキル基で置換されたフェニル基であってもよい。フッ素原子又はフロロアルキル基を含有させることにより、光照射によって発生する酸の酸性度を上昇させることが可能となる。これにより、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の感度を向上させることができる。なお、Rc〜Rcは、他のアルキル基及びアリール基等と結合して、環を形成していてもよい。
【0157】
また、好ましいX-として、下記一般式(SA1)又は(SA2)により表されるスルホン酸アニオンが挙げられる。
【化37】

【0158】
式(SA1)中、
Arは、アリール基を表し、−(D−B)基以外の置換基を更に有していてもよい。
nは、1以上の整数を表す。nは、好ましくは1〜4であり、より好ましくは2〜3であり、最も好ましくは3である。
Dは、単結合又は2価の連結基を表す。この2価の連結基は、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸エステル基又はエステル基である。
Bは、炭化水素基を表す。
【化38】

【0159】
式(SA2)中、
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
【0160】
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、及び、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基から選ばれる基を表し、複数存在する場合のR及びRの各々は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
Lは、単結合又は2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
Eは、環状構造を有する基を表す。
xは1〜20の整数を表し、yは0〜10の整数を表し、zは0〜10の整数を表す。
【0161】
まず、式(SA1)により表されるスルホン酸アニオンについて、詳しく説明する。
式(SA1)中、Arは、好ましくは、炭素数6〜30の芳香族環である。具体的には、Arは、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インデセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセタフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環又はフェナジン環である。中でも、ラフネス改良と高感度化との両立の観点から、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0162】
Arが−(D−B)基以外の置換基を更に有している場合、この置換基としては、例えば、以下のものが挙げられる。即ち、この置換基として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert−ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp−トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メチルチオキシ基、エチルチオキシ基及びtert−ブチルチオキシ基等のアルキルチオキシ基;フェニルチオキシ基及びp−トリルチオキシ基等のアリールチオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ドデシル基及び2―エチルヘキシル基等の直鎖アルキル基;分岐アルキル基;ビニル基、プロペニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基;アセチレン基;プロピニル基及びヘキシニル基等のアルキニル基;フェニル基及びトリル基等のアリール基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;並びにスルホン酸基が挙げられる。中でも、ラフネス改良の観点から、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基が好ましい。
【0163】
式(SA1)中、Dは、好ましくは、単結合であるか、又は、エーテル基若しくはエステル基である。より好ましくは、Dは、単結合である。
【0164】
式(SA1)中、Bは、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はシクロアルキル基である。Bは、好ましくは、アルキル基又はシクロアルキル基である。Bとしてのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はシクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
【0165】
Bとしてのアルキル基は、好ましくは、分岐アルキル基である。この分岐アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、イソヘキシル基、3,3−ジメチルペンチル基及び2−エチルヘキシル基が挙げられる。
【0166】
Bとしてのシクロアルキル基は、単環のシクロアルキル基であってもよく、多環のシクロアルキル基であってもよい。単環のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基が挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基、カンフェニル基、デカヒドロナフチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、カンホロイル基、ジシクロヘキシル基及びピネニル基が挙げられる。
【0167】
Bとしてのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はシクロアルキル基が置換基を有している場合、この置換基としては、例えば、以下のものが挙げられる。即ち、この置換基として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert−ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp−トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メチルチオキシ基、エチルチオキシ基及びtert−ブチルチオキシ基等のアルキルチオキシ基;フェニルチオキシ基及びp−トリルチオキシ基等のアリールチオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ドデシル基及び2―エチルヘキシル基等の直鎖アルキル基;分岐アルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基;アセチレン基;プロピニル基及びヘキシニル基等のアルキニル基;フェニル基及びトリル基等のアリール基;ヒドロキシ基;カルボキシ基;スルホン酸基;並びにカルボニル基等が挙げられる。中でも、ラフネス改良と高感度化との両立の観点から、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基が好ましい。
【0168】
次に、式(SA2)により表されるスルホン酸アニオンについて、詳しく説明する。
式(SA2)中、Xfは、フッ素原子であるか、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基である。このアルキル基としては、炭素数が1〜10のものが好ましく、炭素数が1〜4のものがより好ましい。また、フッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0169】
Xfは、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。具体的には、Xfは、好ましくは、フッ素原子、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH又はCHCHである。中でも、フッ素原子又はCFが好ましく、フッ素原子が最も好ましい。
【0170】
式(SA2)中、R及びRの各々は、水素原子、フッ素原子、アルキル基、及び、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基から選ばれる基である。このフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基としては、炭素数1〜4のものが好ましい。また、フッ素原子で置換されたアルキル基としては、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。具体的には、CF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH及びCHCHが挙げられ、中でもCFが好ましい。
【0171】
式(SA2)中、xは1〜8が好ましく、1〜4がより好ましい。yは0〜4が好ましく、0がより好ましい。zは0〜8が好ましく、0〜4がより好ましい。
式(SA2)中、Lは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、−COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、アルキレン基、シクロアルキレン基及びアルケニレン基が挙げられる。中でも、−COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−又は−SO−が好ましく、−COO−、−OCO−又は−SO−がより好ましい。
【0172】
式(SA2)中、Eは、環構造を有する基を表す。Eとしては、例えば、環状脂肪族基、アリール基及び複素環構造を有する基が挙げられる。
【0173】
Eとしての環状脂肪族基は、単環構造を有していてもよく、多環構造を有していてもよい。単環構造を有した環状脂肪族基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基が好ましい。多環構造を有した環状脂肪族基としては、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。特には、Eとして6員環以上のかさ高い構造を有する環状脂肪族基を採用した場合、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性が抑制され、解像力及びEL(露光ラチチュード)を更に向上させることが可能となる。
【0174】
Eとしてのアリール基は、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナンスレン環又はアントラセン環である。
Eとしての複素環構造を有する基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。この基に含まれているヘテロ原子としては、窒素原子又は酸素原子が好ましい。複素環構造の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピペリジン環及びモルホリン環等が挙げられる。中でも、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピペリジン環及びモルホリン環が好ましい。
【0175】
Eは、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、炭素数1〜12が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基及びスルホン酸エステル基が挙げられる。これら置換基の中でも特に分岐アルキル基、環状アルキル基、およびアリール基が好ましい。これら置換基を有することで発生酸の拡散が抑えられ、解像力や露光ラティチュードの向上が期待できる。
【0176】
光酸発生剤としては、一般式(ZI)により表される構造を複数有する化合物を使用してもよい。例えば、一般式(ZI)により表される化合物のR201〜R203の少なくとも1つが、一般式(ZI)により表されるもう1つの化合物のR201〜R203の少なくとも1つと結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0177】
更に好ましい(ZI)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)〜(ZI−4)を挙げることができる。
【0178】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である。即ち、化合物(ZI−1)は、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
【0179】
化合物(ZI−1)は、R201〜R203の全てがアリール基であってもよく、R201〜R203の一部がアリール基であり、それら以外がアルキル基であってもよい。なお、化合物(ZI−1)が複数のアリール基を含んでいる場合、これらアリール基は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0180】
化合物(ZI−1)としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物及びアリールジアルキルスルホニウム化合物が挙げられる。
【0181】
化合物(ZI−1)におけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、又は、インドール残基及びピロール残基等のヘテロアリール基が好ましく、フェニル基、ナフチル基又はインドール残基が特に好ましい。
【0182】
化合物(ZI−1)が必要に応じて有しているアルキル基としては、炭素数1〜15の直鎖、分岐又はシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0183】
これらアリール基及びアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基及びフェニルチオ基が挙げられる。
【0184】
好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、及び、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられる。特に好ましい置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。置換基は、3つのR201〜R203のうちの何れか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がフェニル基の場合には、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0185】
また、R201、R202及びR203のうち1つ又は2つが、置換基を有していてもよいアリール基であり、残りの基が直鎖、分岐又は環状のアルキル基である態様も好ましい。この構造の具体例としては、特開2004−210670号公報の段落0141〜0153に記載の構造が挙げられる。
【0186】
このとき、上記アリール基としては、具体的には、R201、R202及びR203としてのアリール基と同様であり、フェニル基又はナフチル基が好ましい。また、アリール基は、水酸基、アルコキシ基又はアルキル基の何れかを置換基として有することが好ましい。置換基としより好ましくは、炭素数1〜12のアルコキシ基であり、更に好ましくは、炭素数1〜6のアルコキシ基である。
【0187】
上記の残りの基としての直鎖、分岐又は環状のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。これら基は、更に置換基を有していてもよい。また、上記の残りの基が2つ存在する場合、これら2つが互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
【0188】
化合物(ZI−1)は、例えば、以下の一般式(ZI−1A)により表される化合物である。
【化39】

【0189】
一般式(ZI−1A)中、
13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基又はアルコキシカルボニル基を表す。
14は、複数存在する場合は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基又はシクロアルキルスルホニル基を表す。
【0190】
15は、各々独立して、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。2つのR15は、互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
は、非求核性アニオンを表し、例えば、一般式(ZI)におけるXと同様のものが挙げられる。
【0191】
13、R14又はR15のアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。このアルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、n−ブチル基及びt−ブチル基が特に好ましい。
【0192】
13、R14又はR15のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロドデカニル、シクロベンテニル、シクロヘキセニル及びシクロオクタジエニル基が挙げられる。これらのうち、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロオクチル基が特に好ましい。
【0193】
13又はR14のアルコキシ基のアルキル基部分としては、例えば、先にR13、R14又はR15のアルキル基として列挙したものが挙げられる。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基及びn−ブトキシ基が特に好ましい。
【0194】
13のシクロアルキルオキシ基のシクロアルキル基部分としては、例えば、先にR13、R14又はR15のシクロアルキル基として列挙したものが挙げられる。このシクロアルキルオキシ基としては、シクロペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基が特に好ましい。
【0195】
13のアルコキシカルボニル基のアルコキシ基部分としては、例えば、先にR13又はR14のアルコキシ基として列挙したものが挙げられる。このアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基及びn−ブトキシカルボニル基が特に好ましい。
【0196】
14のアルキルスルホニル基のアルキル基部分としては、例えば、先にR13、R14又はR15のアルキル基として列挙したものが挙げられる。また、R14のシクロアルキルスルホニル基のシクロアルキル基部分としては、例えば、先にR13、R14又はR15のシクロアルキル基として列挙したものが挙げられる。これらアルキルスルホニル基又はシクロアルキルスルホニル基としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n−プロパンスルホニル基、n−ブタンスルホニル基、シクロペンタンスルホニル基及びシクロヘキサンスルホニル基が特に好ましい。
【0197】
lは、好ましくは0又は1であり、より好ましくは1である。rは、好ましくは0〜2である。
【0198】
13、R14及びR15の各基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシアルキル基、シクロアルキルオキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、及びシクロアルキルオキシカルボニルオキシ基が挙げられる。
【0199】
アルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基及びt−ブトキシ基等の炭素数1〜20のものが挙げられる。
シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜20のものが挙げられる。
【0200】
アルコキシアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基及び2−エトキシエチル基等の炭素数2〜21のものが挙げられる。
シクロアルキルオキシアルキル基としては、例えば、シクロペンチルオキシエチル基、シクロペンチルオキシペンチル基、シクロヘキシルオキシエチル基及びシクロヘキシルオキシペンチル基等の炭素数4〜21のものが挙げられる。
【0201】
アルコキシカルボニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基及びt−ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜21のものが挙げられる。
シクロアルキルオキシカルボニル基としては、例えば、シクロペンチルオキシカルボニル基及びシクロヘキシルオキシカルボニル等の炭素数4〜21のものが挙げられる。
【0202】
アルコキシカルボニルオキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルコキシカルボニルオキシ基としては、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、i−プロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基及びt−ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数2〜21のものが挙げられる。
シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基としては、例えば、シクロペンチルオキシカルボニルオキシ基及びシクロヘキシルオキシカルボニルオキシ基等の炭素数4〜21のものが挙げられる。
【0203】
2つのR15が互いに結合して形成し得る環構造としては、一般式(ZI−1A)中のS原子と共に、5員環又は6員環、特に好ましくは5員環(即ち、テトラヒドロチオフェン環)を形成する構造が好ましい。
この環構造は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、及びアルコキシカルボニルオキシ基が挙げられる。
【0204】
15としては、メチル基、エチル基、及び2つのR15が互いに結合して硫黄原子と共にテトラヒドロチオフェン環構造を形成する2価の基が特に好ましい。
【0205】
13のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基、R14のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基及びシクロアルキルスルホニル基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、及びハロゲン原子(特にフッ素原子)が好ましい。
【0206】
以下に、一般式(ZI−1A)により表される化合物におけるカチオンの好ましい具体例を示す。
【化40】

【0207】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
【0208】
化合物(ZI−2)は、式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
【0209】
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、炭素数が例えば1〜30であり、好ましくは1〜20である。
【0210】
201〜R203は、各々独立に、アルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、アリル基、ビニル基であることが好ましい。更に好ましくは、直鎖、分岐若しくは環状の2−オキソアルキル基又はアルコキシカルボニルメチル基であり、特に好ましくは、直鎖又は分岐の2−オキソアルキル基である。
【0211】
201〜R203としてのアルキル基は、直鎖、分岐鎖及び環状のいずれであってもよく、好ましい例としては、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はペンチル基)及び炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はノルボニル基)が挙げられる。
【0212】
201〜R203としての2−オキソアルキル基は、直鎖、分岐及び環状のいずれであってもよく、好ましくは、上記のアルキル基の2位に>C=Oを有する基が挙げられる。
【0213】
201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基の好ましい例としては、炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)が挙げられる。
【0214】
201〜R203は、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基及び/又はニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0215】
201〜R203のうち2つが互いに結合して、環構造を形成していてもよい。この環構造は、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合及び/又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、例えば、アルキレン基(例えば、ブチレン基又はペンチレン基)が挙げられる。
【0216】
次いで、化合物(ZI−3)について説明する。
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)により表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【化41】

【0217】
式中、R1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。アルキル基及びアルコキシ基の炭素数は、1〜6が好ましい。
6c及びR7cは、水素原子又はアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1〜6が好ましい。
及びRは、各々独立に、アルキル基、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、アリル基又はビニル基を表す。これら原子団の炭素数は、1〜6が好ましい。
【0218】
1c〜R7cの何れか2つ以上が互いに結合して、環構造を形成していてもよい。また、RxとRyとが結合して、環構造を形成していてもよい。これらの環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合及び/又はアミド結合を含んでいてもよい。
一般式(ZI−3)におけるXは、一般式(ZI)におけるXと同義である。
【0219】
化合物(ZI−3)の具体例としては、特開2004−233661号公報の段落0047及び0048、又は、特開2003−35948号公報の段落0040〜0046に例示されている化合物に記載されている化合物が挙げられる。
【0220】
続いて、化合物(ZI−4)について説明する。
化合物(ZI−4)は、以下の一般式(ZI−4)により表されるカチオンを有した化合物である。この化合物(ZI−4)は、アウトガスの抑制に有効である。
【化42】

【0221】
一般式(ZI−4)中、
1〜R13は、各々独立に、水素原子又は置換基を表す。R1〜R13のうち少なくとも1つは、アルコール性水酸基を含む置換基であることが好ましい。なお、ここで「アルコール性水酸基」とは、アルキル基の炭素原子に結合した水酸基を意味している。
Zは、単結合又は2価の連結基である。
【0222】
1〜R13がアルコール性水酸基を含む置換基である場合、R1〜R13は−(W−Y)により表される基であることが好ましい。ここで、Yは水酸基で置換されたアルキル基であり、Wは単結合又は2価の連結基である。
【0223】
Yにより表されるアルキル基の好ましい例としては、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。Yは、特に好ましくは、−CH2CH2OHにより表される構造を含んでいる。
【0224】
Wにより表される2価の連結基としては、特に制限は無いが、好ましくは単結合、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はカルバモイル基における任意の水素原子を単結合で置き換えた2価の基であり、更に好ましくは、単結合、アシルオキシ基、アルキルスルホニル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基における任意の水素原子を単結合で置き換えた2価の基である。
【0225】
1〜R13がアルコール性水酸基を含む置換基である場合、含まれる炭素数は、好ましくは2〜10であり、更に好ましくは2〜6であり、特に好ましくは2〜4である。
【0226】
1〜R13としてのアルコール性水酸基を含む置換基は、アルコール性水酸基を2つ以上有していてもよい。R1〜R13としてのアルコール性水酸基を含む置換基の有するアルコール性水酸基の数は、1〜6であり、好ましくは1〜3であり、更に好ましくは1である。
【0227】
一般式(ZI−4)により表される化合物の有するアルコール性水酸基の数は、R1〜R13すべて合わせて1〜10であり、好ましくは1〜6であり、更に好ましくは1〜3である。
【0228】
1〜R13がアルコール性水酸基を含有しない場合、R1〜R13としての置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及び複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基〔−B(OH)2〕、ホスファト基〔−OPO(OH)2〕、スルファト基(−OSO3H)、並びに、他の公知の置換基が挙げられる。
【0229】
1〜R13がアルコール性水酸基を含有しない場合、R1〜R13は、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、シリル基又はウレイド基である。
【0230】
1〜R13がアルコール性水酸基を含有しない場合、R1〜R13は、更に好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、シアノ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基又はカルバモイル基である。
【0231】
1〜R13がアルコール性水酸基を含有しない場合、R1〜R13は、特に好ましくは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルコキシ基である。
【0232】
1〜R13のうちの隣接する2つが互いに結合して、環を形成してもよい。この環には、芳香族及び非芳香族の炭化水素環並びに複素環が含まれる。これら環は、更に組み合わされて、縮合環を形成していてもよい。
【0233】
化合物(ZI−4)は、好ましくは、R1〜R13のうち少なくとも1つがアルコール性水酸基を含んだ構造を有しており、更に好ましくは、R9〜R13のうち少なくとも1つがアルコール性水酸基を含んだ構造を有している。
【0234】
Zは、上述したように、単結合又は2価の連結基を表している。この2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミド基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、ジスルフィド基、アシル基、アルキルスルホニル基、−CH=CH−、アミノカルボニルアミノ基及びアミノスルホニルアミノ基が挙げられる。
【0235】
この2価の連結基は、置換基を有していてもよい。これらの置換基としては、例えば、先にR1〜R13について列挙したのと同様のものが挙げられる。
【0236】
Zは、好ましくは、単結合、アルキレン基、アリーレン基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、−CH=CH−、アミノカルボニルアミノ基及びアミノスルホニルアミノ基等の電子求引性を持たない結合又は基であり、更に好ましくは、単結合、エーテル基又はチオエーテル基であり、特に好ましくは、単結合である。
【0237】
以下、一般式(ZII)及び(ZIII)について説明する。
【0238】
一般式(ZII)及び(ZIII)中、R204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。これらアリール基、アルキル基及びシクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
【0239】
204〜R207としてのアリール基の好ましい例としては、先に化合物(ZI−1)におけるR201〜R203について列挙したのと同様の基が挙げられる。
204〜R207としてのアルキル基及びシクロアルキル基の好ましい例としては、先に化合物(ZI−2)におけるR201〜R203について列挙した直鎖、分岐又はシクロアルキル基が挙げられる。
【0240】
なお、一般式(ZII)及び(ZIII)におけるXは、一般式(ZI)におけるXと同義である。
【0241】
光酸発生剤の他の好ましい例として、下記一般式(ZIV)、(ZV)又は(ZVI)により表される化合物が挙げられる。
【化43】

【0242】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、
Ar3及びAr4は、各々独立に、置換又は無置換のアリール基を表す。
208は、一般式(ZV)と(ZVI)とで各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表している。これらアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
これら基は、フッ素原子により置換されていることが好ましい。こうすると、光酸発生剤が発生する酸の強度を高めることが可能となる。
【0243】
209及びR210は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は電子吸引性基を表す。これらアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び電子吸引性基は、置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
好ましいR209としては、置換又は無置換のアリール基が挙げられる。
好ましいR210としては、電子吸引性基が挙げられる。この電子吸引性基としては、好ましくは、シアノ基及びフロロアルキル基が挙げられる。
【0244】
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。これらアルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は、置換基を有していてもよい。
【0245】
なお、光酸発生剤として、一般式(ZVI)により表される構造を複数有する化合物も好ましい。このような化合物としては、例えば、一般式(ZVI)により表される化合物のR209又はR210と、一般式(ZVI)により表されるもう一つの化合物のR209又はR210とが互いに結合した構造を有する化合物が挙げられる。
【0246】
光酸発生剤としては、一般式(ZI)〜(ZIII)により表される化合物がより好ましく、一般式(ZI)により表される化合物が更に好ましく、化合物(ZI−1)〜(ZI−3)が特に好ましい。
【0247】
光酸発生剤の具体例を以下に示すが、本発明の範囲は、これらに限定されるものではない。
【化44】

【0248】
【化45】

【0249】
【化46】

【0250】
【化47】

【0251】
【化48】

【0252】
【化49】

【0253】
【化50】

【0254】
なお、光酸発生剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する際には、水素原子を除く全原子数が2以上異なる2種の有機酸を発生する化合物を組み合わせることが好ましい。
【0255】
本発明に係る組成物が光酸発生剤を更に含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.1〜40質量%であり、より好ましくは0.5〜30質量%であり、更に好ましくは1〜20質量%である。
【0256】
〔5〕溶剤
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、各成分を溶解するものである限り特に限定されないが、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、乳酸アルキルエステル(乳酸エチル、乳酸メチルなど)、環状ラクトン(γ−ブチロラクトンなど、好ましくは炭素数4〜10)、鎖状又は環状のケトン(2−ヘプタノン、シクロヘキサノンなど、好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、カルボン酸アルキル(酢酸ブチルなどの酢酸アルキルが好ましい)、及びアルコキシ酢酸アルキル(エトキシプロピオン酸エチル)などが挙げられる。その他使用可能な溶媒として、例えば、US2008/0248425A1号明細書の[0244]以降に記載されている溶剤などが挙げられる。
【0257】
上記の溶剤のうち、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、及び乳酸エチルが特に好ましい。
【0258】
これら溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合して用いる場合、水酸基を含んだ溶剤と水酸基を含んでいない溶剤とを混合することが好ましい。水酸基を含んだ溶剤と水酸基を含んでいない溶剤との質量比は、通常は1/99〜99/1であり、好ましくは10/90〜90/10であり、更に好ましくは20/80〜60/40である。
【0259】
水酸基を含んだ溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテル又は乳酸アルキルエステルが好ましく、水酸基を含んでいない溶剤としてはアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートが好ましい。溶剤の50質量%以上がプロピレングリコールモノメチルエーテルである溶剤を用いることが特に好ましい。
【0260】
なお、溶剤の使用量は、組成物の全固形分濃度が、好ましくは2.0〜4.0重量%、より好ましくは2.0〜3.0質量%となるように定める。
【0261】
〔6〕界面活性剤
本発明に係る組成物は、界面活性剤を更に含有していてもよい。この界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が特に好ましい。
【0262】
この界面活性剤としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製のメガファックF176及びメガファックR08、OMNOVA社製のPF656及びPF6320、トロイケミカル(株)製のトロイゾルS−366、住友スリーエム(株)製のフロラードFC430、並びに、信越化学工業(株)製のポリシロキサンポリマーKP−341が挙げられる。
【0263】
また、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の界面活性剤を使用することもできる。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類及びポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類等が挙げられる。
【0264】
その他、公知の界面活性剤が適宜使用可能である。使用可能な界面活性剤としては、例えば、米国特許2008/0248425A1号明細書の[0273]以降に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0265】
界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に係る組成物が界面活性剤を更に含んでいる場合、その含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.0001〜2質量%であり、より好ましくは0.001〜1質量%である。
【0266】
〔7〕溶解阻止化合物
本発明に係る組成物は、酸の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物(以下、「溶解阻止化合物」ともいう)を更に含んでいてもよい。
【0267】
この溶解阻止化合物としては、220nm以下の透過性を低下させないため、Proceeding of SPIE, 2724,355 (1996)に記載されている酸分解性基を含むコール酸誘導体等の、酸分解性基を含有する脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。この酸分解性基としては、例えば、先に樹脂(P)の「OY」について説明したのと同様のものが挙げられる。
【0268】
なお、本発明に係る組成物をKrFエキシマレーザーで露光するか又は電子線で照射する場合には、溶解阻止化合物としては、フェノール化合物のフェノール性水酸基を酸分解基で置換した構造を含んだ化合物が好ましい。フェノール化合物としては、フェノール骨格を1〜9個含有するものが好ましく、2〜6個含有するものが更に好ましい。
【0269】
溶解阻止化合物の分子量は、3000以下であり、好ましくは300〜3000であり、更に好ましくは500〜2500である。
【0270】
溶解阻止化合物の添加量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0〜20質量%であり、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0271】
以下に溶解阻止化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【化51】

【0272】
〔8〕その他の添加剤
本発明に係る組成物は、必要に応じて、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び現像液に対する溶解を促進させる化合物(以下、溶解促進性化合物ともいう)等を更に含有させることができる。また、特開2006−208781号公報及び特開2007−286574号公報等に記載されているプロトンアクセプター性官能基を備えた化合物も好適に用いることができる。
【0273】
上記の溶解促進性化合物は、フェノール性OH基を2個以上、又はカルボキシ基を1個以上有する分子量1,000以下の低分子化合物である。なお、カルボキシ基を有する場合は、溶解促進性化合物は、脂環族又は脂肪族化合物であることが好ましい。
【0274】
これら溶解促進性化合物の添加量は、樹脂(P)の質量を基準として、好ましくは0〜50質量%であり、更に好ましくは5〜30質量%である。現像残渣抑制及び現像時パターン変形防止の観点から、この添加量は、50質量%以下とすることが好ましい。
【0275】
なお、上記の溶解促進性化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4916210号及び欧州特許第219294号等に記載の方法を参考にして、容易に合成することができる。
【0276】
〔9〕パターン形成方法
本発明に係る組成物は、典型的には、以下のようにして用いられる。即ち、本発明に係る組成物は、典型的には、基板等の支持体上に塗布されて、膜を形成する。この膜の厚みは、0.02〜0.1μmが好ましい。基板上に塗布する方法としては、スピン塗布が好ましく、その回転数は1000〜3000rpmが好ましい。
【0277】
例えば、この組成物は、精密集積回路素子の製造等に使用される基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆、窒化シリコン及びクロム蒸着された石英基板など)上に、スピナー及びコーター等の適当な塗布方法により塗布される。その後、これを乾燥して、感活性光線性又は感放射線性の膜(以下、感光性膜ともいう)を得る。なお、公知の反射防止膜を予め塗設することもできる。
【0278】
次いで、この感光性膜に活性光線又は放射線を照射し、好ましくはベーク(通常80〜150℃、より好ましくは90〜130℃)を行った後、現像する。これにより良好なパターンを得ることができる。そして、このパターンをマスクとして用いて、適宜エッチング処理及びイオン注入などを行い、半導体微細回路及びインプリント用モールド構造体等を作成する。
【0279】
なお、本発明の組成物を用いてインプリント用モールドを作成する場合のプロセスの詳細については、例えば、特許第4109085号公報、特開2008−162101号公報、及び「ナノインプリントの基礎と技術開発・応用展開―ナノインプリントの基板技術と最新の技術展開―編集:平井義彦(フロンティア出版)」等を参照されたい。また、特に情報記録媒体の製造に好適なモールド構造体の製造方法については、例えば、特許第4109085号公報及び特開2008−162101号公報を参照されたい。
【0280】
現像工程では、通常アルカリ現像液を用いる。現像方法は、パドル形成、ディップ及びダイナミックディスペンス等の公知の方法を適宜使用する。アルカリ現像液としては、種々のアルカリ水溶液が適用可能であるが、通常は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドアルカリ性水溶液が使用される。アルカリ現像液には、アルコール類及び/又は界面活性剤を、適当量添加してもよい。
【0281】
アルカリ現像液の濃度は、通常、0.1〜20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常、10.0〜15.0である。
【実施例】
【0282】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容はこれにより限定されるものではない。
【0283】
〔樹脂〕
まず、以下に示すモノマー(M−1)〜(M−9)を合成した。また、モノマー(R−1)を準備した。
【化52】

【0284】
<合成例1:モノマー(M−1)の合成>
15質量部の6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を、80質量部のメタノールに溶解させた。得られた溶液に、3.35質量部の水酸化リチウム一水和物を48質量部のメタノールに溶解させた溶液を滴下して、室温で1時間に亘って撹拌した。その後、減圧下でメタノールを除去して、反応物を得た。
この反応物を、55質量部のジメチルスルホキシドに再溶解させた。次いで、これに12.2質量部のクロロメチルスチレン(CMS−14、セイミケミカル社製)を加え、80℃で4時間に亘って撹拌した。続いて、これに酢酸エチルと飽和塩化アンモニウム水溶液とを加え、抽出及び洗浄を行った。有機層を濃縮後、カラムクロマトグラフィーを用いて精製し、17.1質量部のモノマー(M−1)を得た。
【0285】
H NMR(DMSO−d):δ 10.22 (s, 1H), 8.53 (s, 1H), 8.00 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.90 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.77 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.54-7.47 (m, 4H), 7.19-7.15 (m, 2H), 6.76 (dd, J = 17.6, 10.5 Hz, 1H), 5.86 (d, J = 17.6 Hz, 1H), 5.38 (s, 2H), 5.29 (d, J = 10.5 Hz, 1H)。
【0286】
<合成例2:モノマー(M−2)の合成>
10質量部のモノマー(M−1)と、5質量部の2−シクロヘキシルエチルビニルエーテルとを、50質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解した。次いで、この溶液に0.015質量部のカンファースルホン酸を加え、室温で30分に亘って撹拌した。反応液に0.1質量部のトリエチルアミンを加え、減圧下で溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーを用いて精製した。これにより、12.6質量部のモノマー(M−2)を得た。
【0287】
H NMR(DMSO−d):δ 8.60 (s, 1H), 8.08 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.97 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.90 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.54-7.48 (m, 5H), 7.30 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 6.76 (dd, J = 18.0, 11.1 Hz, 1H), 5.86 (d, J = 18.0 Hz, 1H), 5.71 (q, J = 5.4 Hz, 1H), 5.39 (s, 2H), 5.28 (d, J = 11.1 Hz, 1H), 3.71-3.44 (m, 2H), 1.72-0.66 (m, 16H)。
【0288】
<合成例3:モノマー(M−3)の合成>
15質量部の6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の代わりに、16.3質量部の3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸を用いたことを除いては、合成例1と同様にして、15.2質量部のモノマー(M−3)を合成した。
【0289】
<合成例4:モノマー(M−4)の合成>
5質量部の2−シクロヘキシルエチルビニルエーテルの代わりに、2.4質量部の3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸を用いたことを除いては、合成例2と同様にして、10.1質量部のモノマー(M−4)を合成した。
【0290】
<合成例5:モノマー(M−5)の合成>
まず、6−ビニル−2−ナフトール(m−5a)を、以下のようにして合成した。即ち、7.6質量部のtert−ブトキシカリウム及び90質量部のテトラヒドロフランに、24質量部のメチルトリフェニルホスホニウムブロミド及び130質量部のトルエンとを加え、室温で2時間に亘って撹拌した。この反応液に、5.0質量部の6−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒドを加え、室温で更に4時間に亘って撹拌した。反応物を酢酸エチルと飽和塩化アンモニウム水溶液とを用いて抽出及び洗浄し、ヘキサン/酢酸エチルを用いてカラムクロマトグラフィー精製した。これにより、2.6質量部の6−ビニル−2−ナフトール(m−5a)を得た。
次いで、以下の反応スキームに従って、モノマー(M−5)を合成した。
【化53】

【0291】
具体的には、まず、5質量部の(m−5a)及び6.12質量部の3−ブロモ−1−プロパノールを45質量部のN−メチルピロリドンに溶解させた。次いで、これに8.12質量部の炭酸カリウムを加えて、80℃で7時間に亘って撹拌した。反応物を酢酸エチルと飽和塩化アンモニウム水溶液とを用いて抽出及び洗浄し、ヘキサン/酢酸エチルを用いてカラムクロマトグラフィー精製した。これにより、5.73質量部の上記化合物(m−5b)を得た。
【0292】
5質量部の(m−5b)及び4.59質量部の塩化パラトルエンスルホニルを50質量部のピリジンに溶解させ、室温で5時間に亘って撹拌した。反応物を酢酸エチルと飽和塩化アンモニウム水溶液とを用いて抽出及び洗浄し、ヘキサン/酢酸エチルを用いてカラムクロマトグラフィー精製した。これにより、7.15質量部の上記化合物(m−5c)を得た。
【0293】
4.81質量部の4−(4−ヒドロキシフェニル)安息香酸を、60質量部のメタノールに溶解させた。この溶液に、0.94質量部の水酸化リチウム一水和物を20質量部のメタノールに溶解させた溶液を滴下して、室温で1時間に亘って撹拌した。その後、減圧下でメタノールを除去して、反応物を得た。
この反応物を50質量部のN−メチルピロリドンに再溶解させた。次いで、これに、7.15質量部の(m−5c)を加え、80℃で8時間に亘って撹拌した。続いて、これに酢酸エチルと飽和塩化アンモニウム水溶液とを加え、抽出及び洗浄を行った。有機層を濃縮後、カラムクロマトグラフィーを用いて精製し、5.1質量部のモノマー(M−5)を得た。
【0294】
<合成例6:モノマー(M−6)の合成>
5質量部のモノマー(M−1)と0.4質量部の4−ジメチルアミノピリジンとを、80質量部のアセトニトリルに溶解させた。得られた溶液に、4.3質量部のニ炭酸ジ−tert−ブチルを加え、室温にて2時間に亘って撹拌した。続いて、これにクロロホルムと希塩酸水溶液とを加え、抽出及び洗浄を行った。有機層を濃縮することで、6.0質量部のモノマー(M−6)を得た。
【0295】
<合成例7:モノマー(M−7)の合成>
以下の合成スキームに従ってモノマー(M−7)を合成した。
【化54】

【0296】
具体的には、5質量部の4−ヒドロキシインドールと、5.64質量部の無水コハク酸と、38質量部のトリエチルアミンとに、400質量部のアセトニトリルを加え、16時間に亘って還流した。溶媒を留去した後、ヘキサン/酢酸エチルを用いて、カラムクロマトグラフィー精製した。これにより、2.71質量部の化合物(m−7a)を得た。
【0297】
100質量部のメタノールに4質量部の(m−7a)を溶解させた。得られた溶液に、0.72質量部の水酸化リチウム一水和物を20質量部のメタノールに溶解した溶液を滴下して、1時間撹拌した。反応物を濃縮した後、100質量部のN−メチルピロリドンに再溶解した。2.75質量部のクロロメチルスチレン(CMS−14、セイミケミカル社製)を加え、80℃で8時間に亘って撹拌した。続いて、これに酢酸エチルと飽和塩化アンモニウム水溶液とを加え、抽出及び洗浄を行った。有機層を濃縮後、カラムクロマトグラフィーを用いて精製し、4.25質量部の化合物(m−7b)を得た。
【0298】
5質量部の(m−7b)と、2.97質量部の2−(ビニルオキシ)エチル フェニルカルバメートとを、100質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させた。次いで、得られた溶液に0.004質量部のカンファースルホン酸を加え、室温で2時間に亘って撹拌した。反応液に0.1質量部のトリエチルアミンを加え、減圧下で溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーを用いて精製した。これにより、6.53質量部のモノマー(M−7)を得た。
【0299】
<合成例8:モノマー(M−8)の合成>
以下の合成スキームに従ってモノマー(M−8)を合成した。
【化55】

【0300】
具体的には、5.56質量部のジエチレングリコールと80質量部のTHFとに、2.52質量部の水素化ナトリウム(油性、60%)を加え、室温で1時間に亘って撹拌した。続いて、5質量部のクロロメチルスチレン(CMS−14、セイミケミカル社製)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液を濃縮後、酢酸エチルと飽和塩化アンモニウム水溶液とを加え、抽出及び洗浄を行った。有機層を濃縮後、カラムクロマトグラフィーを用いて精製し、3.93質量部の化合物(m−8a)を得た。
【0301】
4質量部の(m−8a)及び3.77質量部の塩化パラトルエンスルホニルを50質量部のピリジンに溶解させ、室温で5時間に亘って撹拌した。反応物を酢酸エチルと飽和塩化アンモニウム水溶液とを用いて抽出及び洗浄し、ヘキサン/酢酸エチルを用いてカラムクロマトグラフィー精製した。これにより、5.42質量部の化合物(m−8b)を得た。
【0302】
次に、12.2質量部のクロロメチルスチレンの代わりに30.12質量部の(m−8b)を用いたことを除いては、合成例1と同様にして、17.58質量部の化合物(m−8c)を得た。
次いで、10質量部のモノマー(M−1)の代わりに12.89質量部の(m−8c)を用いたことを除いては、合成例2と同様にして、15.27質量部のモノマー(M−8)を得た。
【0303】
<合成例9:モノマー(M−9)の合成>
10質量部の(m−5a)と、4.24質量部のエチルビニルエーテルとを、50質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させた。次いで、得られた溶液に、0.015質量部のカンファースルホン酸を加え、室温で1時間に亘って撹拌した。反応液に0.1質量部のトリエチルアミンを加え、減圧下で溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーを用いて精製した。これにより、12.1質量部のモノマー(M−9)を得た。
【0304】
次に、これらモノマーを用いて、樹脂を合成した。
<合成例9:樹脂(P−1)の合成>
次式により表される樹脂(P−1)を、以下のようにして合成した。
【化56】

【0305】
即ち、まず、3.86質量部の1−メトキシ−2−プロパノールを、窒素気流下、75℃に加熱した。この液を攪拌しながら、7.00質量部の4−ヒドロキシスチレン(以下、「HOST」ともいう)と、2.64質量部のモノマー(M−2)と、15.42質量部の1−メトキシ−2−プロパノールと、0.74質量部の2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル〔V−601;和光純薬工業(株)製〕との混合溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃で更に2時間攪拌した。反応液を放冷後、多量のヘキサン/酢酸エチルを用いて再沈殿させた。その後、真空乾燥を行うことにより、3.95質量部の樹脂(P−1)を得た。
【0306】
得られた樹脂(P−1)につき、H−NMRの測定を行った。これにより、樹脂(P−1)の組成比(モル比)を算出した。また、GPC(溶媒:THF)測定により、樹脂(P−1)の重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)、数平均分子量(Mn:ポリスチレン換算)及び分散度(Mw/Mn、以下「PDI」ともいう)を算出した。これらの結果を、上記化学式中及び下記表1に示す。
【0307】
<合成例10:樹脂(P−2)〜(P−8)の合成>
合成例9と同様にして、樹脂(P−2)〜(P−8)を合成した。使用した構造単位、その仕込み量(質量部)、重合濃度(反応液濃度:質量%)、及び重合開始剤の仕込み量(質量部)、並びに、得られた樹脂の組成比(モル比)、重量平均分子量及び分散度(PDI)を下記表1に示す。
【表1】

【0308】
以下、樹脂(P−1)〜(P−8)の各々について、構造、組成比、重量平均分子量、及び分散度を示す。
【化57】

【0309】
〔光酸発生剤〕
光酸発生剤としては、次式により表される化合物を用いた。
【化58】

【0310】
<合成例11:PAG−1>
(トリシクロヘキシルベンゼンの合成)
ベンゼン20.0gに塩化アルミニウム6.83gを加え、3℃で冷却攪拌し、シクロ
ヘキシルクロリド40.4gをゆっくり滴下した。滴下後、室温で5時間攪拌し、氷水にあけた。酢酸エチルで有機層を抽出し、得られた有機層を40℃で減圧留去した。更に170℃で減圧留去後、室温に冷却し、アセトン50mlを投入し、再結晶させた。析出した結晶を濾取し、トリシクロヘキシルベンゼン14gを得た。
【0311】
(トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの合成)
トリシクロヘキシルベンゼン30gを塩化メチレン50mlに溶解し、3℃で冷却攪拌し、クロロスルホン酸15.2gをゆっくり滴下した。滴下後、室温で5時間攪拌し、氷10gを投入後、50%水酸化ナトリウム水溶液を40g投入した。更にエタノールを20g加え、50℃で1時間攪拌後、不溶分を濾過除去し、40℃で減圧留去した。析出した結晶を濾取し、ヘキサン洗浄し、1,3,5−トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム30gを得た。
【0312】
(PAG−1の合成)
トリフェニルスルホニウムブロミド4.0gをメタノール20mlに溶解し、20mlのメタノールに溶解させた1,3,5−トリシクロヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5.0gを加えた。室温で2時間攪拌後、イオン交換水50mlを加えクロロホルムで抽出した。得られた有機層を水で洗浄後、40℃で減圧留去し、得られた結晶をメタノール/酢酸エチル溶媒で再結晶した。これにより化合物PAG−1を5.0g得た。
【0313】
1H-NMR(400MHz, CDCl3) δ=7.85 (d,6H), 7.68(t,3H), 7.59(t,6H), 6.97(s, 2H), 4.36-4.27(m,2H), 2.48-2.38(m,1H), 1.97-1.16(m,30H)。
【0314】
〔塩基性化合物〕
塩基性化合物としては、次式により表される化合物を用いた。
【化59】

【0315】
〔界面活性剤及び溶剤〕
界面活性剤としては、以下のものを用いた。
【0316】
W−1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素系)
W−2:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素及びシリコン系)
溶剤としては、以下のものを用いた。
【0317】
S1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
S2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
〔実施例1〜11及び比較例1〕
下記表2に示す各成分を、表2に示す溶剤に溶解させた。これを0.1μmのポアサイズを有するポリテトラフルオロエチレンフィルターを用いてろ過した。これにより、表2に示す全固形分濃度のポジ型レジスト溶液を調製した。なお、表2に示す各成分の濃度は、全固形分の質量を基準とした質量濃度である。
【0318】
<レジスト評価>
調製したポジ型レジスト溶液を、スピンコータを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、130℃で90秒間に亘って加熱乾燥を行った。これにより、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。
【0319】
このレジスト膜に対して、電子線照射装置((株)日立製作所製HL750;加速電圧50keV)を用いて、電子線照射を行った。照射後直ぐに、120℃で90秒間ホットプレート上にて加熱した。その後、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液を用いて、23℃で60秒間現像し、30秒間純水を用いてリンスした後、乾燥させた。これにより、ラインアンドスペースパターン(ライン:スペース=1:1)と孤立ラインパターン(ライン:スペース=1:>100)とをそれぞれ形成した。なお、以下では、ラインアンドスペースパターンをL&Sと略記し、孤立ラインパターンをILと略記することがある。
【0320】
〔感度〕
得られた各パターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4800)を用いて観察した。L&Sパターン及びILパターンの何れについても、100nmの線幅のラインを解像する際の最小照射エネルギーを感度(μC/cm)とした。
【0321】
〔解像力〕
上記の感度を示す照射量における限界解像力(ラインとスペースが分離解像する最小の線幅)を解像力(nm)とした。
【0322】
〔残膜率(プラズマエッチング耐性)〕
ヘキサメチルジシラザン処理をしたウエハー上に、膜厚100nmのポジ型レジスト膜を形成した。この膜に対し、CF(10mL/min)とO(20mL/min)とAr(1000mL/min)との混合ガスを用いて、23℃で30秒間プラズマエッチングを行った。その後、プラズマエッチング後のレジスト膜の膜厚を測定した。そして、このエッチング後の膜厚を、エッチング前の膜厚で除して100倍することにより、残膜率(%)を得た。なお、残膜率が大きいほど、プラズマエッチング耐性は良好である。
【表2−1】

【0323】
【表2−2】

【0324】
表2に示すように、実施例1〜11に係る組成物は、比較例1に係る組成物と比較して、ILパターンを形成する際の感度及び解像度がより優れていた。また、実施例1〜11に係る組成物は、プラズマエッチング耐性及びL&Sパターンを形成する際の解像度にも優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)により表される繰り返し単位を含んだ樹脂を備えた感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

式中、
、R及びRは、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。
はアリーレン基を表す。
は2価の連結基を表す。
Xは複数の芳香環を含んだ構造単位を表し、前記複数の芳香環は、縮環して多環式構造を形成しているか又は単結合を介して互いに連結されている。
Yは、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表し、nが2以上の場合、複数のYは互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
は1〜5の整数を表す。
【請求項2】
前記Xは、下記一般式(X1)〜(X6)の何れかにより表される構造単位である請求項1に記載の組成物。
【化2】

式中、
は、複数存在する場合は各々独立に、1価の置換基を表す。
は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、前記Aを表す。
は0〜14の整数である。
はCH又はNを表し、2つのXは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
前記A、OY及びRは、前記複数の芳香環を構成している原子の何れに結合していてもよい。
【請求項3】
前記Yは、水素原子又は下記一般式(2)により表される基である請求項1又は2に記載の組成物。
【化3】

式中、
及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂環基、ヘテロ原子を含んでいてもよい芳香環基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基又はアルデヒド基を表す。
、R、M及びQの少なくとも2つは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
【請求項4】
前記樹脂は、下記一般式(3)及び(4)により表される繰り返し単位の少なくとも一方を更に含んでいる請求項1乃至3の何れか1項に記載の組成物。
【化4】

式中、R〜R14は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。
15〜R17は、各々独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。R15〜R17の少なくとも2つは、互いに結合して、シクロアルキル基を形成していもよい。
はアリーレン基を表す。
Zは水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
【請求項5】
電子線、X線又はEUV光により露光される請求項1乃至4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の組成物を用いて膜を形成することと、
前記膜を露光することと、
前記露光された膜を現像することと
を含んだパターン形成方法。
【請求項7】
前記露光は、電子線、X線又はEUV光を用いて行われる請求項6に記載の方法。

【公開番号】特開2011−53365(P2011−53365A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200913(P2009−200913)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】