説明

感温性粘着剤および感温性粘着テープ

【課題】被貼着部材を安定して固定することができ、かつリサイクルのために被貼着部材から剥離する際には簡単に取り外すことができる感温性粘着剤および感温性粘着テープを提供することである。
【解決手段】感圧性接着剤および側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度で粘着力が低下する感温性粘着剤であって、前記側鎖結晶性ポリマーの融点を60℃以上100℃未満にした。この感温性粘着剤からなる粘着剤層を、基材フィルムの少なくとも片面に設けた感温性粘着テープである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被貼着部材をリサイクルするのに好適な感温性粘着剤および感温性粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、粘着剤はテープ形状等に加工され、様々な部材を固定するのに用いられている。例えば液晶タッチパネルの製造では、基材フィルムの両面に粘着剤層を設けた両面粘着テープを用いて、タッチパネル本体を液晶カバーに取り付けている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、一般的なアクリル系粘着剤からなる前記粘着剤層には、タッチパネル本体への密着性が低いという問題がある。また、液晶タッチパネルの製造工程では、液晶カバーとタッチパネル本体との間にゴミやホコリが混入して不良品を生じることがある。この場合には、タッチパネル本体を液晶カバーから取り外し、前記ゴミやホコリを取り除いた後、リサイクルした前記タッチパネル本体を液晶カバーに取り付ける必要がある。
【0004】
しかしながら、タッチパネル本体は、通常、薄くて剛性が低い。このようなタッチパネル本体を粘着テープから剥離しようとすると、該タッチパネル本体に過度の力がかかり、タッチパネル本体が変形するか破損してしまい、リサイクル率が低下する。また、通常の粘着テープは、繰り返し使用することができないので、リサイクルした前記タッチパネル本体を液晶カバーに取り付ける際には、新しい粘着テープを使用しなければならない。
【0005】
一方、特許文献2には、粘着剤層が所定の感圧性接着剤に発泡剤を含有してなり、加熱処理による発泡剤の膨脹ないし発泡で粘着力が低下する粘着テープが記載されている。この粘着テープによれば、粘着テープ剥離時に粘着力を低下させることができるので、剥離時にかかるタッチパネル本体への負荷を小さくできるとも考えられる。
【0006】
しかしながら、前記粘着テープは、100〜150℃の温度で加熱したときに粘着力が低下する。液晶タッチパネルの製造工程において、粘着テープで固定された部材にかかる温度の上限は、通常、60℃未満である。100℃以上の高温雰囲気下に液晶パネルを曝すと、液晶パネルにおける偏光板等の光学部材が熱変形してしまう。また、発泡剤を含有する粘着テープは、繰り返し使用することができない。
【0007】
さらに、特許文献2に記載されている粘着テープには、液晶タッチパネルの薄型化に対応することができないという問題もある。すなわち、液晶タッチパネルを薄型化する際には、粘着テープにも薄膜化が要求される。
しかしながら、発泡剤を含む粘着剤層を薄膜化すると、該粘着剤層表面に発泡剤由来の凹凸が発生して粘着剤層表面の平滑性が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−242423号公報
【特許文献2】特開平5−43851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、被貼着部材を安定して固定することができ、かつリサイクルのために被貼着部材から剥離する際には簡単に取り外すことができる感温性粘着剤および感温性粘着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)感圧性接着剤および側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度で粘着力が低下する感温性粘着剤であって、前記側鎖結晶性ポリマーの融点が60℃以上100℃未満であることを特徴とする感温性粘着剤。
(2)前記側鎖結晶性ポリマーは、炭素数12〜40の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート20〜100重量部と、炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレート0〜70重量部と、極性モノマー0〜10重量部と、を重合させて得られる重合体である前記(1)記載の感温性粘着剤。
(3)前記側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量が1,000〜5万である前記(1)または(2)記載の感温性粘着剤。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の感温性粘着剤からなる粘着剤層を、基材フィルムの少なくとも片面に設けたことを特徴とする感温性粘着テープ。
(5)前記粘着剤層の厚さが1〜100μmである前記(4)記載の感温性粘着テープ。
(6)前記(4)または(5)記載の感温性粘着テープを貼着した被貼着部材のリサイクル方法であって、前記粘着テープにおける片面の粘着剤層の温度を、前記側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度で、かつ60℃以上100℃未満の温度にして粘着力を低下させ、前記被貼着部材から粘着テープを取り外すことを特徴とする被貼着部材のリサイクル方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度に加熱すると該側鎖結晶性ポリマーが流動性を示して感圧性接着剤の粘着性を阻害するので、粘着力を低下させることができる。
【0012】
また、本発明では、前記融点の上限値を100℃未満にしたので、被貼着部材をリサイクルする際には、該被貼着部材を従来のような100℃以上の高温雰囲気下に曝すことなく粘着力を低下させてリサイクルすることができる。しかも、本発明では、前記融点の下限値を60℃にしたので、被貼着部材を固定可能な温度範囲を十分に確保することができ、被貼着部材固定中に雰囲気温度が変化して温度上昇したとしても、被貼着部材が外れることを抑制することができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、従来のような発泡剤由来の凹凸問題がなく、粘着剤層表面の平滑性を確保しつつ薄膜化することができるので、部材の薄型化に対応することができる。また、側鎖結晶性ポリマーの相変化を利用するものであるため、繰り返し使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の感温性粘着剤(以下、「粘着剤」と言うことがある。)は、感圧性接着剤と側鎖結晶性ポリマーとを含有する。前記感温性粘着剤とは、温度変化に対応して粘着力が変化する粘着剤を意味する。
【0015】
前記感圧性接着剤は、粘着性を有するポリマーであればよく、特に限定されるものではないが、例えば天然ゴム接着剤、合成ゴム接着剤、スチレン/ブタジエンラテックスベース接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。
【0016】
前記アクリル系接着剤を例に挙げて説明すると、該アクリル系接着剤を構成するモノマーとしては、例えば炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられ、該(メタ)アクリレートとしては、例えばエチルへキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレート等を用いることもでき、該(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。例示したこれらのモノマーは、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
重合方法としては、特に限定されるものではなく、例えば溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が採用可能である。例えば溶液重合法を採用する場合には、前記で例示したモノマーを溶剤に混合し、40〜90℃程度で2〜10時間程度攪拌することによって前記モノマーを重合させることができる。
【0018】
前記モノマーを重合させて得られる重合体の重量平均分子量は、25万〜100万であるのがよい。前記重量平均分子量があまり小さいと、被貼着部材を取り外す際には、粘着剤が被貼着部材上に残る、いわゆる糊残りが多くなるおそれがある。また、前記重量平均分子量があまり大きいと、粘着剤の凝集力が高くなりすぎて粘着力が低くなるおそれがある。前記重量平均分子量は、前記重合体をゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0019】
一方、前記側鎖結晶性ポリマーは、融点未満の温度で結晶化しかつ融点以上の温度で流動性を示すポリマーである。すなわち、前記側鎖結晶性ポリマーは、温度変化に対応して結晶状態と流動状態とを可逆的に起こす。本発明の粘着剤は、前記融点以上の温度で側鎖結晶性ポリマーが流動性を示した際に粘着力が低下する割合で、前記側鎖結晶性ポリマーを含有する。したがって、被貼着部材をリサイクルする際には、粘着剤を前記側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度に加熱すれば、前記側鎖結晶性ポリマーが流動性を示すことによって前記感圧性接着剤の粘着性が阻害され、これにより粘着力が低下するので、被貼着部材を簡単に取り外すことができる。また、粘着剤を前記側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度に冷却すれば、前記側鎖結晶性ポリマーが結晶化することによって粘着力が回復するので、繰り返し使用することができる。
【0020】
前記融点とは、ある平衡プロセスにより、最初は秩序ある配列に整合されていた重合体の特定部分が無秩序状態となる温度を意味し、示差熱走査熱量計(DSC)により10℃/分の測定条件で測定して得られる値である。
【0021】
前記融点としては、60℃以上100℃未満、好ましくは60〜90℃である。前記融点が100℃以上であると、リサイクルする際に被貼着部材を100℃以上の高温雰囲気下に曝すことになるので、被貼着部材が熱変形するおそれがある。また、前記融点が60℃未満であると、被貼着部材を固定可能な温度範囲が狭くなる。すなわち、本発明の粘着剤は、側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度で粘着力が低下するので、被貼着部材固定中の雰囲気温度は、前記融点未満の温度に維持する必要がある。前記融点が60℃未満であると、被貼着部材固定中に雰囲気温度が変化して温度上昇した際には、雰囲気温度が前記融点を簡単に超えてしまい、被貼着部材が粘着剤から外れるおそれがある。
【0022】
前記融点を前記範囲内とするには、側鎖結晶性ポリマーの組成等を変えることによって任意に行うことができる。前記側鎖結晶性ポリマーの組成としては、例えば炭素数12〜40の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート20〜100重量部と、炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレート0〜70重量部と、極性モノマー0〜10重量部とを重合させて得られる重合体等が挙げられる。
【0023】
前記炭素数12〜40の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の炭素数12〜40の線状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、前記炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、前記極性モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有エチレン不飽和単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するエチレン不飽和単量体等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
上記で例示したモノマーのうち、炭素数12〜40の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートは、前記融点に与える影響が大きい。具体的には、前記(メタ)アクリレートのうち、炭素数の大きい直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートを用いると、融点が高くなる傾向にある。
【0025】
重合方法としては、特に限定されるものではなく、例えば溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が採用可能である。例えば溶液重合法を採用する場合には、前記で例示したモノマーを溶剤に混合し、40〜90℃程度で2〜10時間程度攪拌することによって前記モノマーを重合させることができる。
【0026】
前記側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量としては1,000〜5万、好ましくは5,000〜1万であるのがよい。前記重量平均分子量があまり小さいと、前記融点が低くなるおそれがある。また、前記重量平均分子量があまり大きいと、側鎖結晶性ポリマーの温度を融点以上の温度にしても流動性を示し難くなるので、粘着力が低下し難くなる。前記重量平均分子量は、側鎖結晶性ポリマーをGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0027】
側鎖結晶性ポリマーは、固形分換算で感圧性接着剤100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部の割合で含有するのがよい。これにより、被貼着部材固定時には、粘着剤が被貼着部材の表面形状に追従して部材表面に密着するので、被貼着部材を確実に固定することができ、かつ前記融点以上の温度で側鎖結晶性ポリマーが流動性を示した際には、粘着剤の粘着力が低下する。これに対し、側鎖結晶性ポリマーの含有量があまり少ないと、粘着剤を側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度に加熱しても、粘着力が低下し難くなる。また、側鎖結晶性ポリマーの含有量があまり多いと、粘着力が低下して被貼着部材を固定し難くなる。
【0028】
本発明の粘着剤には、例えば架橋剤、タッキファイヤー、可塑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤等の各種の添加剤を添加することができる。本発明の粘着剤の使用形態は、特に限定されるものではなく、例えばフィルム状またはシート状の形態で使用することもでき、あるいは粘着剤に適当な溶剤を加えて、被貼着部材に直接塗布して乾燥するようにしてもよい。
【0029】
また、本発明の粘着剤は、粘着テープの形態で使用することもできる。次に、本発明にかかる感温性粘着テープ(以下、「粘着テープ」と言うことがある。)について説明する。本発明にかかる粘着テープは、前記した本発明の感温性粘着剤からなる粘着剤層を、基材フィルムの少なくとも片面に設けてなる。
【0030】
前記基材フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンポリプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂フィルムが挙げられる。
【0031】
前記基材フィルムは、単層体または複層体からなるものであってもよく、厚さは、通常、5〜500μm程度である。基材フィルムには、粘着剤層に対する密着性を向上させるため、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、ブラスト処理、ケミカルエッチング処理、プライマー処理等の表面処理を施すことができる。
【0032】
基材フィルムの片面に粘着剤層を設けるには、粘着剤を溶剤に加えた塗布液を、基材フィルムの片面に塗布して乾燥させればよい。前記塗布は、一般的にナイフコーター、ロールコーター、カレンダーコーター、コンマコーター等により行うことができる。また、塗工厚みや塗布液の粘度によっては、グラビアコーター、ロッドコーター等により行うこともできる。
【0033】
前記粘着剤層の厚さとしては1〜100μm、好ましくは1〜30μmであるのがよい。本発明では、従来のような発泡剤由来の凹凸問題がなく、それゆえ粘着剤層の厚さを、その表面平滑性を確保しつつ薄膜化することができ、部材の薄型化に対応することができる。
【0034】
前記粘着テープは、基材フィルムの他面にも粘着剤層を設けて両面粘着テープとしてもよい。他面の粘着剤層は、特に限定されるものではない。したがって、他面の粘着剤層として、例えば片面の粘着剤層と同様に、本発明の感温性粘着剤からなる粘着剤層を用いることもできる。この場合には、片面の粘着剤層の組成と、他面の粘着剤層の組成とは、同じ組成であってもよく、それぞれ異なる組成であってもよい。また、他面の粘着剤層として、例えば感圧性接着剤のみからなる粘着剤層を用いることもできる。基材フィルムの他面の粘着剤層は、前記した片面の粘着剤層と同様にして設けることができる。片面の粘着剤層の厚さと、他面の粘着剤層の厚さとは、同じ厚さであってもよく、それぞれ異なる厚さであってもよい。
【0035】
次に、本発明にかかる被貼着部材のリサイクル方法について説明する。本発明のリサイクル方法は、前記した感温性粘着テープを貼着した被貼着部材のリサイクル方法である。具体的には、まず、雰囲気温度をガス等の加熱手段を用いて、前記側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度で、かつ60℃以上100℃未満の温度にする。これにより、粘着テープの粘着剤層が粘着力の低下を発現する。したがって、被貼着部材を従来のような100℃以上の高温雰囲気下に曝すことなく、粘着テープから取り外してリサイクルすることができる。また、粘着剤層の粘着力は前記した理由から十分に低下しているので、剥離時に被貼着部材にかかる負荷は小さい。粘着テープは、前記と同様の操作をすることで何度も繰り返し使用することができる。
【0036】
本発明にかかる感温性粘着剤および感温性粘着テープの被貼着部材としては、例えば液晶タッチパネルにおけるタッチパネル本体および液晶カバーの他、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、電卓、パソコン等に内蔵されている電子部品、液晶パネルにおけるバックライトおよびパネル部等が挙げられる。また、本発明にかかる感温性粘着剤および感温性粘着テープは、前記で例示した被貼着部材に限定されず、正常な場合には継続して固定する必要があり、かつ不良が確認されてリサイクルする際には簡単に取り外すことが要求される部材に対し、好適に用いることができる。
【0037】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明で「部」は重量部を意味する。
【0038】
(合成例1:感圧性接着剤)
エチルヘキシルアクリレートを52部、メチルアクリレートを40部、ヒドロキシエチルアクリレートを8部、および開始剤としてパーブチルND(日油社製)を0.2部の割合で、それぞれトルエン200部に加え、60℃で5時間攪拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は46万であった。
【0039】
(合成例2:側鎖結晶性ポリマー)
ベヘニルアクリレートを40部、ステアリルアクリレートを35部、メチルアクリレートを20部、アクリル酸を5部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタンを6部、および開始剤としてパーヘキシルPV(日油社製)を1.0部の割合で、それぞれトルエン100部に加え、80℃で5時間攪拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は8,000、融点は60℃であった。
【0040】
(合成例3:側鎖結晶性ポリマー)
ベヘニルアクリレートを95部、アクリル酸を5部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタンを6部、および開始剤としてパーヘキシルPV(日油社製)を1.0部の割合で、それぞれトルエン100部に加え、80℃で5時間攪拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は7,200、融点は75℃であった。
【0041】
(合成例4:側鎖結晶性ポリマー)
炭素数40の直鎖状アルキル基(n−テトラコンチル基)を有するアクリレートを95部、アクリル酸を5部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタンを6部、および開始剤としてパーヘキシルPV(日油社製)を1.0部の割合で、それぞれトルエン100部に加え、80℃で5時間攪拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は7,500、融点は87℃であった。
【0042】
(比較合成例1:側鎖結晶性ポリマー)
ベヘニルアクリレートを15部、ステアリルアクリレートを60部、メチルアクリレートを20部、アクリル酸を5部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタンを6部、および開始剤としてパーヘキシルPV(日油社製)を1.0部の割合で、それぞれトルエン100部に加え、80℃で5時間攪拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は8,200、融点は49℃であった。
【0043】
前記合成例1〜4および比較合成例1の各共重合体を表1に示す。なお、前記重量平均分子量は、共重合体をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。前記融点は、示差熱走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の測定条件で測定した値である。
【0044】
【表1】

【0045】
[実施例1〜3および比較例1]
<粘着テープの作製>
実施例1として、上記で得た合成例1の共重合体溶液100部に対し、固形分換算で合成例2の共重合体溶液を5部、およびイソシアネート系架橋剤を0.5部添加して得た粘着剤溶液を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に塗布して乾燥させ、厚さ10μmの粘着剤層が形成された粘着テープを作製した。
【0046】
実施例2として、前記合成例2の共重合体溶液に代えて前記合成例3の共重合体溶液を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に厚さ10μmの粘着剤層が形成された粘着テープを作製した。
【0047】
実施例3として、前記合成例2の共重合体溶液に代えて前記合成例4の共重合体溶液を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に厚さ10μmの粘着剤層が形成された粘着テープを作製した。
【0048】
比較例1として、前記合成例2の共重合体溶液に代えて前記比較合成例1の共重合体溶液を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に厚さ10μmの粘着剤層が形成された粘着テープを作製した。
【0049】
<評価>
上記で得た各粘着テープについて、180°剥離強度を評価した。評価方法を以下に示すとともに、その結果を表2に示す。
【0050】
(180°剥離強度)
0℃から100℃までの10℃毎の各雰囲気温度におけるステンレス鋼板に対する180°剥離強度を、JIS Z0237に準拠して測定した。具体的には、粘着テープを雰囲気温度23℃でステンレス鋼板に貼着し、雰囲気温度を測定温度に調整した後、前記粘着テープをロードセルにて300mm/分の速度で180°剥離した。
【0051】
【表2】

【0052】
表2から明らかなように、実施例1〜3は、側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度で粘着力が低下しているのがわかる。また、比較例1が50℃で粘着力の低下を発現しているのに対し、実施例1〜3は、いずれも60℃以上100℃未満の温度範囲で粘着力が低下しているのがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感圧性接着剤および側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度で粘着力が低下する感温性粘着剤であって、前記側鎖結晶性ポリマーの融点が60℃以上100℃未満であることを特徴とする感温性粘着剤。
【請求項2】
前記側鎖結晶性ポリマーは、炭素数12〜40の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート20〜100重量部と、炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレート0〜70重量部と、極性モノマー0〜10重量部と、を重合させて得られる重合体である請求項1記載の感温性粘着剤。
【請求項3】
前記側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量が1,000〜5万である請求項1または2記載の感温性粘着剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の感温性粘着剤からなる粘着剤層を、基材フィルムの少なくとも片面に設けたことを特徴とする感温性粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層の厚さが1〜100μmである請求項4記載の感温性粘着テープ。
【請求項6】
請求項4または5記載の感温性粘着テープを貼着した被貼着部材のリサイクル方法であって、前記粘着テープにおける片面の粘着剤層の温度を、前記側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度で、かつ60℃以上100℃未満の温度にして粘着力を低下させ、前記被貼着部材から粘着テープを取り外すことを特徴とする被貼着部材のリサイクル方法。

【公開番号】特開2011−37944(P2011−37944A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184470(P2009−184470)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】