説明

感熱孔版原紙用薄葉紙

【課題】 熱可塑性樹脂フィルムとのラミネート加工時の強度も十分であり、画像鮮明性に優れ、且つ白抜けの少ないポリエステル繊維100%よりなる感熱孔版原紙用薄葉紙を提供する。
【解決手段】 単繊維繊度が0.01〜0.6デシテックス、複屈折率が0.01〜0.05のポリエステル繊維Aと単繊維繊度が0.2〜2.0デシテックスのポリエステル系バインダー繊維Bからなる感熱孔版原紙用薄葉紙とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キセノンフラッシュランプやサーマルヘッド等の熱によって穿孔製版される感熱孔版原紙用の薄葉紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、感熱孔版原紙に使用する感熱孔版原紙用の薄葉紙としては、種々の提案がなされており、こうぞ、みつまた、マニラ麻等の天然非木材繊維単独の組成からなる感熱孔版原紙用薄葉紙(例えば特許文献1)、天然繊維に合成繊維または再生繊維を混抄した感熱孔版原紙用薄葉紙(例えば特許文献2)などが知られている。
【0003】
天然非木材繊維単独からなる感熱孔版原紙用薄葉紙は、抄造の際の繊維の断面や繊維長の不均一に起因する地合い不良や結束繊維のため、感熱孔版印刷時のインキの通過性を阻害し、ベタ印刷で白抜けが発生する欠点がある。また、湿潤寸法安定性に欠けるため、熱可塑性樹脂フィルムとラミネートして得られる感熱孔版原紙を用いて印刷する場合、水を含有するインキを用いると、インキに含まれる水分によって寸法に変化が生じ、印刷される文字等の画像に歪みを生じる欠点もある。
【0004】
これらの欠点を解消するため、天然繊維に合成繊維または再生繊維を混抄した感熱孔版原紙用薄葉紙が提案されている。合成繊維または再生繊維の配合により、白抜けや湿潤寸法安定性は改善されるが、合成繊維または再生繊維の配合量が多くなると感熱孔版原紙用薄葉紙の剛性や強度が低下し、大量枚数を印刷する場合、印刷途中で印刷画像に歪みが生じたり、原紙が破れたりするなど耐印刷性に課題がある。この対策のため、天然繊維または再生繊維を混抄した感熱孔版原紙用薄葉紙に樹脂を含浸する提案(例えば特許文献3、4など)がなされているが、含浸される樹脂によっては、繊維交絡点の接着が十分でなかったり、樹脂被膜の形成によりインキの通過性を阻害するなどの欠点がある。さらに、最近、市場ニーズがより高度化し、より鮮明な印刷性が要求されるようになってきている。このため、感熱孔版印刷の高解像度化を図るため、サーマルヘッドの熱素子密度が従来の300〜400dpiから600dpiへと高度化する傾向にある。そのため、インキが通過する穿孔を塞ぐ可能性の大きい天然繊維を配合した感熱孔版原紙用薄葉紙から、合成繊維100%よりなる感熱孔版原紙用薄葉紙が提案されている。
【0005】
しかしながら、合成繊維100%からなる感熱孔版原紙用薄葉紙は、画像鮮明性は優れているものの、薄葉紙の剛性や強度が低下するため、フィルムとのラミネート時や孔版印刷時に原紙が破れ易くなったり、搬送不良が起こり易いという課題がある。
【0006】
特許文献5は0.1デニール以下のポリエステル繊維および/またはアクリル繊維が5〜70%含まれ、他に0.5デニールのポリエステル繊維が10〜30%とポリエステルバインダー繊維20〜70%を混抄した秤量9〜11g/mの合成繊維100%よりなる感熱孔版原紙用薄葉紙である。しかしながら、一般に感熱孔版原紙用薄葉紙に用いられているポリエステル繊維は高倍率で延伸された後、熱処理されており、これをポリエステルバインダー繊維のみで接着させようとすると、抄紙機のドライヤー温度を高温にする必要があり、そのためドライヤーへ粘着し易い課題がある。
【0007】
また、特許文献6は、単糸繊度が0.1デニールを越え0.3デニール未満のポリエステル繊維40〜60重量%と、単糸繊度0.3デニール以上、0.5デニール未満のポリエステル繊維30〜50重量%、単糸繊度1〜2デニールのポリエステルバインダー繊維5〜15重量%を混抄した秤量7〜10g/mのポリエステル繊維100%よりなる感熱孔版原紙用薄葉紙である。しかしながら、該薄葉紙はバインダー繊維(熱溶融温度が110℃)の混抄割合が少なすぎて十分な強度が得られず、加工時に断紙する問題がある。
【0008】
【特許文献1】特公昭41−7623号公報
【特許文献2】特公昭55−47997号公報
【特許文献3】特開昭61−254396号公報
【特許文献4】特開平1−271293号公報
【特許文献5】特許第2726105号公報
【特許文献6】特開2000−141936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂フィルムとのラミネート加工時の強度も十分あり、画像鮮明性に優れ、且つ白抜けの少ないポリエステル繊維100%よりなる感熱孔版原紙用薄葉紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため検討を重ねた結果、構成繊維として配向が高くならないように製造した細繊度のポリエステル繊維を用い、これと特定の繊度を有するバインダー繊維を組合せたとき、強度が十分あり、画像鮮明性に優れ、且つ白抜けの少ない、バランスの取れた性能を有する感熱孔版原紙用薄葉紙が得られることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明によれば、単繊維繊度が0.01〜0.6デシテックス(以後、dtexと略す)、複屈折率(以後、Δnと略す)が0.01〜0.05のポリエステル繊維Aと単繊維繊度が0.2〜2.0dtexのポリエステル系バインダー繊維Bからなる感熱孔版原紙用薄葉紙が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリエステル繊維の水中分散性が優れており得られた薄葉紙の強度も十分あるため、フィルムとのラミネート加工時の断紙が起こらず、且つ感熱孔版印刷時の画像鮮明性に優れ、白抜けの少ない薄葉紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明においては、感熱孔版原紙用薄葉紙が、それぞれ以下に述べる特定の要件を満足するポリエステル繊維Aおよびポリエステル系バインダー繊維Bからなることが肝要である。これにより、ラミネート加工時の強度も十分あり、画像鮮明性に優れ、且つ白抜けの少ない薄葉紙を提供することができる。
【0014】
上記ポリエステル繊維Aの単繊維繊度を0.01〜0.6dtex、好ましくは0.05〜0.4dtex、より好ましくは0.1〜0.3dtexとする必要がある。上記単繊維繊度が、0.6dtexより大きくなると薄葉紙の強度が低くなり、画像鮮明性が低下し、白抜けも目立つようになる。一方、上記単繊維繊度が、0.01未満では、同じ目付けの薄葉紙を作る上において、繊度の大きいものと比べそれだけ繊維本数が多くなるため、水中分散時の繊維同士の絡み合いが起こりやすくなり、白抜けも起こり易くなる。
【0015】
また本発明においては、ポリエステル繊維AのΔnを0.01〜0.05、好ましくは0.01〜0.04とすることが大切である。本発明者は、かかる細繊度繊維の上記Δnを低く抑えることによって、後述するバインダー繊維だけでなく、細繊度繊維にもバインダー機能を持たせ、それらの相乗効果によって薄葉紙の高強力化を達成できることを見出した。したがって、Δnが0.05より高くなるとバインダー機能が低下し、薄葉紙の強度が低くなる。一方、Δnが0.01より小さくなると繊維の強度が低下し、同様に薄葉紙も強度が低くなる。
なお、従来の薄葉紙に用いられているポリエステル繊維は、通常の紡糸・延伸・熱処理工程を経て製造されるため、Δnは0.10以上のものがごく一般的である。
【0016】
本発明のポリエステル繊維を構成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(以後、PETと略す)系ポリエステル、ポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート系ポリエステル、ポリエチレンナフタレート系ポリエステルなどが挙げられるが、特にPET系ポリエステル、さらには5−ナトリウムスルホイソフタル酸(以後、SIPと略す)を2〜6モル%共重合したPET系ポリエステルが薄葉紙の強度の面から特に好ましい。これは、SIPを共重合したポリエステル繊維の抄紙時の水中分散性がより優れているためである。SIPの共重合割合が2モル%より少なくなると水中分散性が悪くなる傾向にあり、一方、6モル%を超えると紡糸時の溶融粘度が高くなって紡糸が難しくなる傾向にある。
【0017】
また、上記のSIPを共重合したPET系ポリエステル繊維Aの固有粘度は好ましくは0.30〜0.45、より好ましくは0.33〜0.40である。固有粘度が0.30より低くなると強度が低下し、0.45を越えると溶融粘度が高くなって紡糸が難しくなり、繊度の小さい繊維を作ることも難しくなる。
【0018】
このポリエステル繊維Aの配合比率は好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%である。配合比率が30重量%より少なくなると、バインダー繊維Bの配合比率が多くなり、ドライヤー粘着性が強くなり白抜けが目立ちやすくなり、90重量%を越えるとバインダー繊維Bの配合比率が少なくなるため薄葉紙の強度が低くなる傾向にある。
【0019】
本発明のポリエステル繊維Aは以下の方法により製造することができる。すなわち、溶融紡糸された未延伸糸を引き揃えてトウとなし、ガラス転移点(以後、Tgと略す)より高い温度で第1段延伸を行い、引き続いて、Tgより低い温度で第2段延伸を行い、水中分散性を向上させるため、ポリエーテル・ポリエステル共重合体を主成分とするエマルジョンで処理後、ドラム式カッターで所定の長さに切断される。これにより細繊度化と低複屈折率を同時に達成できる。またこの際、例えばポリエチレンテレフタレートの場合、第2段延伸を2.0倍以下、好ましくは1.5倍以下で実施することが、複屈折率を低く抑える点では望ましい。これに対して、薄葉紙に用いられている細い繊度のポリエステル繊維を製造する方法としては、一般的には、紡糸で直接細い繊度の繊維を製造する方法や、紡糸では繊度の大きい未延伸糸を紡糸しこれに延伸を施して細い繊度の繊維とする方法が挙げられるが、これらの方法では配向が進み過ぎてΔnが0.06を越える繊維となっているのが現状である。
【0020】
一方、本発明においては、ポリエステル系バインダー繊維Bの単繊維繊度を0.2〜2dtex、好ましくは0.3〜1.8dtexとする必要がある。上記単繊維繊度が2dtexより太くなると白抜けが起こり易くなる。一方、上記単繊維繊度が0.2未満では、バインダー成分の表面積が大きくなり過ぎて、抄紙時のドライヤー粘着が起こり易くなる。
【0021】
上記バインダー繊維Bとしては、芯鞘型複合繊維を用いることが好ましい。この際、芯成分としては、主たる繰り返し単位の85モル%以上がエチレンテレフタレートからなるポリエステルを好ましく用いることができる。エチレンテレフタレート単位が85モル%より少なくなると、融点等の熱的特性が低下するため好ましくない。該ポリエステルは艶消し剤、顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等の公知の添加剤を含んでいてもよい。一方、鞘のバインダー成分としては、PET系の非晶性共重合ポリエステルを好ましく用いることができる。該共重合ポリエステルは、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の酸成分と、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール等のジオール成分との共重合によって得られるが、特にテレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびジエチレングリコールから得られる共重合ポリエステルがコスト面から特に好ましい。
【0022】
また、上記バインダー繊維Bは公知の方法で製造できるが、水中分散性を向上させるため、延伸後、ポリエーテル・ポリエステル共重合体を主成分とするエマルジョンで処理後、ドラム式カッターで所定の長さに切断するのが望ましい。
【0023】
さらに、バインダー繊維Bの配合比率は好ましくは10〜70重量%、より好ましくは20〜50重量%である。配合比率が10重量%より少なくなると、薄葉紙の強度が低くなる傾向にあり、70重量%より多くなると、抄紙時のドライヤー粘着および感熱孔版印刷時の白抜けが起こり易くなる。
【0024】
本発明においては、ポリエステル繊維Aおよびバインダー繊維Bの繊維長は2〜15mm、好ましくは3〜10mmである。繊維長が2mmより短くなると、ドラム式カッターでの安定した繊維の切断し難くなり、また、薄葉紙の強力も低くなる傾向にある。逆に繊維長が15mmより長くなると、抄紙時の繊維の水中分散が難しくなり、地合斑の大きい薄葉紙となる。
【0025】
本発明の薄葉紙の抄造は公知の方法で実施される。すなわち、上記のポリエステル繊維をパルパーに投入して撹拌・分散し、抄き網に供給して湿紙を形成させ、乾燥工程を経てロール状に巻取る。抄き網は円網、短網、傾斜短網が一般的であるが、長網などでも構わない。乾燥方式は、複数の回転する加熱ローラーで乾燥する方式でも良いが、ヤンキー式ドライヤーで乾燥する方式が好ましい。
【0026】
薄葉紙の秤量は4〜15g/m、好ましくは5〜10g/mである。秤量が15g/mを越えると、感熱孔版印刷時のインキの透過性が低下して画像濃度・鮮明性が低下する。4g/m未満の場合、熱可塑性フィルムとラミネートする際の強度が不足し、安定したラミネートが難しくなる。
【0027】
薄葉紙と熱可塑性フィルムとの貼り合わせには、得られる感熱孔版原紙のインキ通過性を妨げない範囲で接着剤を用いることができる。接着剤としては、公知のエマルジョンラテックス型接着剤、溶剤型接着剤(アクリル系、ポリエステル系、酢酸ビニル系、ゴム系など)、反応硬化型接着剤等を用いることができる。これらの接着剤を乾燥塗布量で0.5〜2.5g/m薄葉紙または熱可塑性フィルムに塗布し、次いでラミネートすることにより感熱孔版原紙を得ることができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
(1)固有粘度
オルソクロロフェノールを溶媒として使用し、35℃で測定した。
(2)ガラス転移点(Tg)
TAインスツルメント・ジャパン(株)社製のサーマル・アナリスト2200を使用し、昇温速度20℃/分で測定した。
(3)複屈折率(Δn)
市販の偏光顕微鏡を使って、光源にナトリウムランプを用い、試料をα−ブロムナフタリンに浸漬した状態でBerekコンペンセーター法からレタデーションを求めて算出した。
(4)紙強力(引張り強さ)
JIS P 8113に示される方法で測定し、2N/15mm以上を合格とした。
(5)秤量
JIS P 8124に示される方法で測定した。
(6)ドライヤー粘着性
熊谷理機工業株式会社製の角型シートマシンを使って、各ポリエステル繊維原料を水中でよく撹拌・混合して分散させ、ワイヤー上に形成させた約25cm×約25cmの湿紙を濾紙を用いてピックアップする。次いで濾紙に密着した湿紙を室温中で乾燥後、ドラムの表面温度が140℃に調節された熊谷理機工業株式会社製の高温用回転型乾燥機を使い、ポリエステル繊維紙がドラム表面と接するようにして接着処理を行う。この接着処理されたポリエステル繊維紙をドラムから剥ぎ取るときの剥ぎ取り易さをドライヤー粘着性の代用特性とし、判定は下記に従った。
○ 簡単に剥ぎ取ることができる。
△ やや剥ぎ取りにくいが、断紙は起こらない。
× 非常に剥ぎ取りにくく、断紙が起こる。
(7)画像の鮮明性および白抜け
ポリエステル繊維紙と厚さ2μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを溶剤可溶共重合ポリエステル系接着剤1.2g(dry)/mによって貼り合わせ、感熱孔版印刷用原紙とした。得られた感熱孔版印刷用原紙に原稿を重ね合わせ、市販の400dpi感熱製版・印刷機を用いて穿孔製版・印刷を行い、印刷10枚目のサンプルの文字の鮮明性・解像性とベタ部のインキ濃度の均一性・白抜けを目視で評価した。
(a)鮮明性
文字のドットのつながりおよび太りを、下記の基準で目視評価した。
◎ 非常に良好
○ 良好
△ 若干、文字のドットのつながりが悪く、太りぎみ
× 文字のドットのつながりが悪く、また太って判読しにくい。
(b)白抜け
ベタ部の均一性も含めて、下記の基準で目視判定した。
○ 白抜けがなく、良好。
△ 白抜けが若干ある。
× 白抜けが目立ち、悪い。
【0029】
[実施例1]
(1)ポリエステル繊維Aの製造
固有粘度が0.47、Tgが77℃のPETペレットを170℃で乾燥後、290℃で溶融し、孔数が1192個の口金を通して285℃のポリマー温度で吐出し、冷却後、500m/分の速度で引取り、固有粘度が0.45、単繊維繊度が3.4dtexの未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を引き揃えて、約200万dtexのトウとなし、90℃の温水中で14.7倍の第1段延伸を行い、引き続いて70℃の温水中で1.1倍の第2段延伸を行った後(全延伸倍率16.2倍)、ポリエーテル・ポリエステル共重合体を主成分とするエマルジョンで処理し、水分率が約20%となるように絞った。該トウをドラム式カッターで3mmの長さに切断し、繊度が0.21dtex、Δnが0.019の延伸されたポリエステル繊維Aを得た。
【0030】
(2)バインダー繊維Bの製造
固有粘度が0.63のPETペレットを芯成分、テレフタル酸が60モル%、イソフタル酸が40モル%、エチレングリコールが96モル%、ジエチレングリコールが4モル%の割合で共重合された、固有粘度が0.55、Tgが65℃の非晶性共重合ポリエステルを鞘成分として、孔数が1032個の複合紡糸口金を用い、重量比50(芯成分)/50(鞘成分)の複合比率、紡糸温度275℃で吐出し、冷却後、1200m/分の速度で引取り、単繊維繊度が4.5dtexの芯鞘型複合繊維の未延伸糸を得た。尚、引取り前にポリエーテル・ポリエステル共重合体の付着量が0.15重量%となるようにエマルジョンを付与した。得られた未延伸を引き揃えて約45万dtexのトウとなし、85℃の温水中で3倍の延伸を行い、ポリエーテル・ポリエステル共重合体を主成分とするエマルジョンで処理し、水分率が約15%となるように絞った後、ドラム式カッターで5mmの長さに切断し、繊度が1.5dtexのバインダー繊維Bを得た。
【0031】
得られたポリエステル繊維Aおよびバインダー繊維Bを使って、ドライヤー粘着性の評価方法に従って、A/Bの配合比率を、重量を基準として40/60とし、秤量が8.0g/mの薄葉紙を得た。その結果を表1に示す。
【0032】
[実施例2〜3]
A/Bの配合比率を、重量を基準としてそれぞれ35/65、85/15に変更した以外は、実施例1と同様にして薄葉紙を得た。それぞれの結果を実施例2、3として表1に示す。
【0033】
[実施例4〜5、比較例1]
実施例1のポリエステル繊維Aの製造方法において、繊度がそれぞれ0.35dtex、0.55dtex、0.65dtexとなるように第1延伸倍率を変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル繊維Aを得、さらに薄葉紙を製造した。それぞれの結果を、実施例4、5、比較例1として表1に示す。
【0034】
[実施例6〜7、比較例2]
実施例1のポリエステル繊維Aの製造において、全延伸倍率は実施例1と同じ16.2倍のままで、第2段延伸倍率を1.2倍、1.3倍、1.4倍に変更して、それぞれΔnが0.033、0.045、0.060のポリエステル繊維Aを得、さらに薄葉紙を製造した。結果をそれぞれ、実施例6、7、比較例2として表1に示す。
【0035】
[実施例8]
SIPが4.5モル%共重合された固有粘度が0.37、Tgが76℃のPET系ポリエステルペレットを150℃で乾燥後、300℃で溶融し、孔数が1192個の口金を通して、290℃のポリマー温度で吐出し、冷却後、500m/分の速度で引取り、固有粘度が0.36、単繊維繊度が3.1dtexの未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を引き揃えて、約150万dtexのトウとなし、85℃の温水中で8.8倍の第1段延伸を行い、引き続いて70℃の温水中で1.7倍の第2段延伸を行い、ポリエーテル・ポリエステル共重合体を主成分とするエマルジョンで処理し、水分率が約30%となるように絞った。該トウをドラム式カッターで3mmの長さに切断し、繊度が0.23dtex、Δnが0.033の延伸されたポリエステル繊維を得た。
実施例1において、ポリエステル繊維Aを、上記ポリエステル繊維に変更した以外は実施例1と同様にして薄葉紙を得た。結果を表1に示す。
【0036】
[実施例9〜11]
SIPの共重合比率がそれぞれ2.3、3.5、5.5モル%であり、固有粘度がいずれも0.37、Tgが74〜77℃のPET系ポリエステルペレットを使用した以外は、実施例8と同様にして、ポリエステル繊維を得、薄葉紙を製造した。それぞれの結果を、実施例9、10、11として表1に示す。
【0037】
[実施例12〜13]
いずれもSIPが4.5モル%共重合されTgが76℃である、固有粘度がそれぞれ0.33、0.42のPET系ポリエステルペレットを使用した以外は、実施例8と同様にして、ポリエステル繊維を得、薄葉紙を製造した。それぞれの結果を、実施例12、13として表1に示す。
【0038】
[実施例14、比較例3]
実施例1のバインダー繊維Bの製造において、吐出量のみを変更して単繊維繊度が1.8dtex、2.3dtexのバインダー繊維Bを得、実施例1と同様にして薄葉紙を製造した。結果をそれぞれ実施例14、比較例3として表1に示す。
【0039】
[実施例15]
固有粘度が0.63のPETペレットを芯成分、テレフタル酸が60モル%、イソフタル酸が40モル%、エチレングリコールが96モル%、ジエチレングリコールが4モル%の割合で共重合された、固有粘度が0.55の非晶性共重合ポリエステルを鞘成分として、孔数が900個の複合紡糸口金を用い、重量比50(鞘成分)/50(芯成分)の複合比率、紡糸温度275℃で吐出し、冷却後、500m/分の速度で引取り、単繊維繊度が6.5dtexの芯鞘型複合繊維の未延伸糸を得た。尚、引取り前にポリエーテル・ポリエステル共重合体の付着量が0.20重量%となるようにエマルジョンを付与した。得られた未延伸を引き揃えて約100万dtexのトウとなし、90℃の温水中で10倍の第1段延伸を行い、引き続いて63℃の温水中で1.8倍の第2段延伸を行い、ポリエーテル・ポリエステル共重合体を主成分とするエマルジョンで処理し、水分率が約20%となるように絞った後、ドラム式カッターで5mmの長さに切断し、繊度が0.36dtexのバインダー繊維を得た。
実施例1において、バインダー繊維Bを、上記バインダー繊維に変更した以外は実施例1と同様にして薄葉紙を得た。結果を表1に示す。
【0040】
[比較例4]
第1段延伸倍率を17倍、第2段延伸倍率を2.2倍に変更した以外は実施例15と同様にして繊度が0.17dtexのバインダー繊維Bを得、薄葉紙を製造した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、熱可塑性樹脂フィルムとのラミネート加工時の強度も十分であり、画像の鮮明性に優れ、且つ白抜けの少ないポリエステル繊維100%よりなる感熱孔版原紙用薄葉紙を提供することができる。このため、上記の感熱孔版原紙用薄葉紙は、最近強く要求されている感熱孔版印刷の高解像度化にも十分対応できるものであり、その産業的利用価値が極めて高いのもである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維繊度が0.01〜0.6デシテックス、複屈折率が0.01〜0.05のポリエステル繊維Aと単繊維繊度が0.2〜2.0デシテックスのポリエステル系バインダー繊維Bからなる感熱孔版原紙用薄葉紙。
【請求項2】
ポリエステル繊維Aが5−ナトリウムスルホイソフタル酸を2〜6モル%共重合したポリエチレンテレフタレート系ポリエステルからなる請求項1に記載の感熱孔版原紙用薄葉紙。
【請求項3】
ポリエステル繊維Aの固有粘度が0.30〜0.45である請求項2に記載の感熱孔版原紙用薄葉紙。
【請求項4】
バインダー繊維Bが、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルを芯成分とし、テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびジエチレングリコールから構成される非晶性共重合ポリエステルを鞘成分とするポリエステル系複合繊維である請求項1〜3のいずれかに記載の感熱孔版原紙用薄葉紙。
【請求項5】
ポリエステル繊維Aの30〜90重量%と、バインダー繊維Bの10〜70重量%からなり、坪量が4〜15g/mである請求項1〜4のいずれかに記載の感熱孔版原紙用薄葉紙。

【公開番号】特開2006−137085(P2006−137085A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328842(P2004−328842)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】