説明

感熱性粘着材料

【課題】非活性時のブロッキング性に優れ、且つ平滑性の低いダンボールのような被着体に対し、広い温度域において十分な粘着力を有する感熱性粘着材料の提供。
【解決手段】(1)支持体の一方の面上に、少なくとも、熱可塑性樹脂及び加熱時に溶融する熱溶融性物質を必須成分とする感熱性粘着剤層を有し、該熱可塑性樹脂は、モノマー成分であるアクリロニトリルがモノマー比で5〜20重量%を占める(メタ)アクリル共重合体を主成分とし、該共重合体のガラス転移温度が−70〜−30℃の範囲にある感熱性粘着材料。
(2)(メタ)アクリル共重合体がアクリル酸−2−エチルヘキシルを主成分とする(1)記載の感熱性粘着材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温では非粘着性であるが加熱により粘着性が発現し、しかも粘着性発現後も粘着性が持続する感熱性粘着剤層を有し、被着体に対して高い粘着力を有する感熱性粘着材料に関する。更に本発明は、特に平滑性の低い被着体に対して、広い温度域において優れた粘着力を発揮する感熱性粘着材料に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着ラベルシートは、価格表示用ラベル、商品表示(バーコード)用ラベル、品質表示用ラベル、計量表示用ラベル、広告宣伝用ラベル(ステッカー)等の用途に使用することが増加している。そして、ラベルの記録方式についてもインクジェット記録方式、感熱記録方式、感圧記録方式等の様々な方式が開発されている。
このような粘着ラベルシートとしては、例えば、ラベルの情報記録面と反対側の面に、粘着剤層と剥離紙を積層した構成が一般的であり、貼り合わせ時に剥離紙を剥がして加圧のみで簡便に貼り合わせることができるため広く使用されている。一般的な粘着ラベルシートでは、剥離紙を剥離させて使用するが、剥離された剥離紙は回収により再利用され難く、殆どの場合廃棄されている。
そこで近年、常温では粘着性を示さず剥離紙を必要としない感熱性粘着層を有する感熱性粘着材料としての感熱性粘着ラベルシートが注目されている(特許文献1)。このような感熱性粘着ラベルシートにおける感熱性粘着層は、例えば熱可塑性樹脂及び熱溶融性物質、更に必要に応じて粘着付与剤を含有する(非特許文献1)。
前記感熱性粘着ラベルシートにおける感熱性粘着層は、粘着性を発現した後の粘着力が経時で低下するとともに、ダンボールなどの平滑性の低い被着体に対する粘着力が弱いという欠点を有する。また、粘着力の温度依存性が大きいために、常温では良好な粘着性を示していても、それ以外の温度、例えば0℃といった環境では粘着性が著しく低下し、被着体から剥がれてしまうといったことが起こる。従って、屋外環境での利用などを想定した場合でも十分な粘着力を有する感熱性粘着ラベルシートは実現できていないのが現状である。
【0003】
これまでに例えば、粘着力を高める目的で熱溶融性物質としてジシクロヘキシルフタレートなどのエステル系の材料を用いることで粘着特性を向上させようという試みが行われている(特許文献2〜3など)。しかしながら、これらの熱溶融性物質を用いることにより、被着体に対する粘着特性を向上させる傾向にはあるが、ダンボール等の粗面被着体に対して安定な粘着力を維持することはできていなかった。
また、被着体に対する粘着特性に優れる材料としてリン系の化合物を用いる感熱性粘着材料及び、これを用いた各種シート等が提案されている(特許文献4〜12)。中でも特許文献4では、融点85〜100℃のリン化合物を熱溶融性化合物(固体可塑剤)として用いることを提案しており、融点の低い材料を用いることで加熱による粘着力発現を有利にしている。しかしながら、この場合でも、粘着性を発現する際に、140℃で30秒加熱というような条件を必要としていることから、例えば、サーマルプリントヘッドからのエネルギーによる粘着性発現は難しいと考えられる。
【0004】
一方で、熱溶融性材料ではなく、もう一つの大きな構成要素である熱可塑性樹脂を変更する試みも行われている。例えば、特許文献13においては、酸価が高く高Tgの樹脂と低Tg樹脂、粘着付与剤の混合物によって加熱時の粘着性を発現させることを提案しているが、固体可塑剤を用いた系とは異なり、加熱後の感熱粘着剤層の粘度低下が殆どなく、加えてサーマルヘッドによるごく短時間の加熱では樹脂の混合が充分に行われないため、粘着性が殆ど発現しなかった。
また、特許文献14などにおいてはエマルジョン粒子径を細かくすること等により改善させた事例が紹介されている。しかしながら、プラスチック容器やガラス瓶、ステンレス板のような平滑面に対しての粘着性は良好であるものの、ダンボールや艶消し表面のような表面が荒れているものや波打っているものに対しては充分な付着力を得られず、また、比較的長時間の加熱が必要であって熱応答性に劣るため、何れの場合においても、本発明が目的とするような感熱性粘着材料を得ることはできていない。
【0005】
【特許文献1】実開平6−25869号公報
【特許文献2】特開昭61−9479号公報
【特許文献3】特開平7−278521号公報
【特許文献4】特開2000−103969号公報
【特許文献5】特開2000−191922号公報
【特許文献6】特開2000−212527号公報
【特許文献7】特開2004−117941号公報
【特許文献8】特開2001−64401号公報
【特許文献9】特開2001−262117号公報
【特許文献10】特開2002−88678号公報
【特許文献11】特開2002−338935号公報
【特許文献12】特開2006−257320号公報
【特許文献13】特開2001−200227号公報
【特許文献14】特開平8−333565号公報
【非特許文献1】「接着便覧」第12版、第131〜135頁、昭和55年、高分子刊行会発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における問題を解決し、非活性時のブロッキング性に優れ、且つ平滑性の低いダンボールのような被着体に対し、広い温度域において十分な粘着力を有する感熱性粘着材料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は次の<1>〜<8>の発明によって解決される。
<1> 支持体の一方の面上に、少なくとも、熱可塑性樹脂及び加熱時に溶融する熱溶融性物質を必須成分とする感熱性粘着剤層を有し、該熱可塑性樹脂は、モノマー成分であるアクリロニトリルがモノマー比で5〜20重量%を占める(メタ)アクリル共重合体を主成分とし、該共重合体のガラス転移温度が−70〜−30℃の範囲にあることを特徴とする感熱性粘着材料。
<2> 前記(メタ)アクリル共重合体がアクリル酸−2−エチルヘキシルを主成分とすることを特徴とする<1>記載の感熱性粘着材料。
<3> 感熱性粘着剤層と支持体の間に、微小中空粒子と熱可塑性樹脂を主成分とする中間層を設けたことを特徴とする<1>又は<2>記載の感熱性粘着材料。
<4> 支持体と中間層の間に、粘着アンダー層を設けたことを特徴とする<3>記載の感熱性粘着材料。
<5> 支持体の感熱性粘着剤層を有さない側の面上に、記録層、又は、記録層と保護層を順次積層したことを特徴とする<1>〜<4>の何れかに記載の感熱性粘着材料。
<6> 記録層が、感熱記録層、熱溶融転写記録用インク受容層、電子写真用トナー受像層、ハロゲン化銀写真用記録層、及びインクジェット用インク受像層の何れかであることを特徴とする<5>記載の感熱性粘着材料。
<7> 支持体が、合成紙又はプラスチックフィルムであることを特徴とする<5>又は<6>記載の感熱性粘着材料。
<8> ラベル状、シート状、ラベルシート状、又はロール状であることを特徴とする<5>〜<7>の何れかに記載の感熱性粘着材料。
【0008】
以下、上記本発明の実施の形態について詳しく説明する。
<感熱性粘着剤層>
本発明における感熱性粘着剤層は、熱可塑性樹脂と熱溶融性物質を必須成分として含有し、更に必要に応じて、粘着付与剤、非溶融性物質などのその他の成分を含有してなる。通常、熱可塑性樹脂と熱溶融性物質は、材料全体の50重量%以上を占めるようにする。50重量%よりも少ないと、被着体に対して十分な粘着力を発揮できず、使用環境によって脱落が生じたりするので好ましくない。
−熱可塑性樹脂−
熱可塑性樹脂は、モノマー成分であるアクリロニトリルがモノマー比で5〜20重量%を占める(メタ)アクリル共重合体を主成分とする。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを指す。アクリロニトリル成分が5重量%未満では効果が発現せず、逆に20重量%を超えると樹脂内部の結合が強くなり、後述の熱溶融性物質と加熱時の溶融混合が難しくなるために粘着性を示さなくなる。
アクリロニトリル成分は共重合体のガラス転移温度(Tg)を上げる成分であり、これはメタクリル酸メチル成分やスチレン成分の増大によっても実現可能であるが、これらの成分では、温度依存性は解消されない。逆に、アクリロニトリル成分の割合が上記の範囲内にあっても、Tgが−70℃よりも低い場合はブロッキング問題を解決できず、Tgが−30℃よりも高い場合やアクリル成分が少ない場合には、平滑面への密着性はあっても、ダンボールのような平滑性の低い被着体にはうまく貼り付かない。
【0009】
アクリロニトリル以外のモノマー成分としては、〔A〕アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸といったエチレン系不飽和カルボン酸類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のアミド系ビニル化合物類、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有ビニル化合物類、〔B〕ブタジエン、イソプレン、ブチレン等の共役二重結合含有化合物類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族系ビニル単量体、酢酸ビニル等のビニルエステル、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物類、塩化ビニル等が挙げられる。
本発明における(メタ)アクリル共重合体とは、上記モノマー成分のうちアクリル基、メタクリル基等を有する成分〔A〕を主成分とし、それと共重合可能な〔A〕以外の成分〔B〕を重合させてなるものである。〔A〕と〔B〕の比率は重量比で100/0〜60/40が好ましく、98/2〜70/30がより好ましい。中でも成分〔A〕としてアクリル酸−2−エチルヘキシルを用いると、被着体との馴染みが良く、強固に貼り合わせることができる。
【0010】
本発明における(メタ)アクリル共重合体のTgは、−70〜−30℃の範囲に調整する。−70℃よりも低いと、例えばロール状にして保管した際の反対面との貼り付き現象が起きるため、実用上問題がある。逆に−30℃よりも高い材料を用いると熱活性後の感熱性粘着剤層の柔軟性が低く、ガラスのような平滑な面には密着するものの、被着体表面が平滑でない場合には点接触になるため、うまく貼り付かせることができない。
熱可塑性樹脂としては、上記(メタ)アクリル共重合体に加えて、例えば、ビニル系モノマーをグラフト共重合した天然ゴムラテックス、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエマルジョンや、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を混合して用いてもよい。但し、上記(メタ)アクリル共重合体が、主成分として熱可塑性樹脂の70重量%以上を占めるようにする必要がある。
感熱性粘着剤層における熱可塑性樹脂の含有量は、10〜60重量%が好ましく、15〜50重量%がより好ましい。含有量が10重量%未満の場合、粘着力が低下するので望ましくない。また、含有率が60重量%を超えた場合には、通常の保存環境下温度で粘着力が発現するなど保存上の不具合(ブロッキング)が生じる。
【0011】
−熱溶融性物質−
熱溶融性物質は、常温では固体であるため、樹脂に可塑性は与えないが、加熱により溶融し樹脂を膨潤又は軟化させて粘着性を発現させ、その後、ゆっくりと結晶化するため、熱源を取り除いた後も粘着性を長時間持続させることができるものである。
本発明で用いる熱溶融性物質としては、例えば、下記構造式(1)で示されるベンゾトリアゾール化合物、下記構造式(2)で表されるヒドロキシ安息香酸エステル化合物、下記構造式(3)〜(5)で表される化合物、下記構造式(6)〜(7)で表されるホスフィン系化合物を併用することができる。
【0012】
構造式(1)
【化1】

〔上記式中、R及びRは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、及びα,α−ジメチルベンジル基の何れかを表す。Xは、水素原子又はハロゲン原子を表す。〕
前記アルキル基としては、炭素数が1〜8のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基などが挙げられ、これらは置換基で更に置換されていてもよい。
前記置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、シアノ基、また、特定の置換基を有していてもよい(例えば、ハロゲン原子又はニトロ基により置換されていてもよい)アルキル基、アリール基、複素環基等が挙げられる。
前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0013】
前記構造式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物としては、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ(1,1−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−sec−ブチル−5′−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。また、これらの化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
構造式(2)
【化2】

〔上記式中、Rは、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、及びアリール基の何れかを表し、これらは更に置換基により置換されていてもよい。〕
前記アルキル基としては、炭素数1〜18のものが挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソアミル基、2−エチルブチル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、4−t−ブチルシクロヘキシル基、4−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基等が挙げられ、これらは更に置換基により置換されていてもよい。
【0015】
前記アルケニル基としては、炭素数2〜8のものが好適であり、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、メタクリル基、クロチル基、1−ブテニル基、3−ブテニル基、2−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、2−オクテニル基等が挙げられ、これらは更に置換基により置換されていてもよい。
前記アラルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられ、これらは更に置換基により置換されていてもよい。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、フェナレニル基、フェナントラニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基等が挙げられ、これらは更に置換基により置換されていてもよい。
前記アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、又はアリール基の置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、シアノ基、また、特定の置換基を有していてもよい(例えば、ハロゲン原子又はニトロ基により置換されていてもよい)アルキル基、アリール基、複素環基等が挙げられる。
【0016】
構造式(2)で表されるヒドロキシ安息香酸エステル化合物としては、例えば、m−ヒドロキシ安息香酸メチル、m−ヒドロキシ安息香酸エチル、m−ヒドロキシ安息香酸フェニル、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸−n−プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸−n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ステアリル、p−ヒドロキシ安息香酸シクロヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−4−クロロベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−4−メチルベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸フェニル等が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。また、これらの化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
構造式(3)
【化3】

〔上記式中、R及びRは、互いに同一でも異なっていてもよく、アルキル基又はアルコキシ基を表す。Yは、水素原子又は水酸基を表す。〕
【0018】
構造式(4)
【化4】

〔上記式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基の何れかを表す。Yは、水素原子又は水酸基を表す。〕
【0019】
構造式(5)
【化5】

〔上記式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基の何れかを表す。〕
【0020】
構造式(3)〜(5)におけるアルキル基としては、上記構造式(1)と同様のものが挙げられる。
構造式(3)〜(5)におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基などが挙げられる。
構造式(3)で表される化合物としては、例えば、p−アニソイン、4,4′−ジメチルベンゾイン、ピペロイン等が挙げられ、構造式(4)で表される化合物としては、例えば、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸−p−クロロフェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸−o−クロロフェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸−p−メチルフェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸−o−メチルフェニル、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸−p−クロロフェニル、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸−o−クロロフェニル等が挙げられ、構造式(5)で表される化合物としては、例えば、安息香酸−3−ヒドロキシフェニル、安息香酸−4−ヒドロキシフェニル、安息香酸−2−ヒドロキシフェニル、o−メチル安息香酸−3−ヒドロキシフェニル、p−クロロ安息香酸−3−ヒドロキシフェニル等が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。また、これらの化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
構造式(6)
【化6】

構造式(7)
【化7】

上記構造式(6)(7)において、Rは炭素数1〜4の分岐していてもよいアルキル基を表し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。nは、1〜5の整数を表す。
【0022】
構造式(6)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−2,4−キシレンホスフィン、トリ−2,5−キシレンホスフィン、トリ−2,6−キシレンホスフィン、トリ−3,4−キシレンホスフィン、トリ−3,5−キシレンホスフィン等が挙げられ、構造式(7)で表される化合物としては、例えば、トリス(o−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(m−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p−エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p−n−プロピルオキシフェニル)ホスフィン、トリス(m−t−ブトキシフェニル)ホスフィン、トリス(m−n−ブトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p−n−ブトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p−t−ブトキシフェニル)ホスフィン、トリス(m−t−ブトキシフェニル)ホスフィン等が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。また、これらの化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
また、前記構造式(1)〜(7)で表わされる化合物以外にも、常温で固体であり加熱溶融時に熱可塑性樹脂と混ざり合うことができる化合物であれば、本発明の熱溶融性物質として用いることが可能である。その他の化合物の一例を以下に挙げるが、本発明の範囲を限定するものではない。
2,2−エチリデン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1,6−ヘキサンジオールビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9ビス〔2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、2,4−ジ−t−ペンチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,2′−メチレンビス〔6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール〕、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、2,2′−ブチリデンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕フェノール、6−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルプロポキシ)−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ〔d,f〕〔1,3,2〕−ジオキサホスフェビン、リン酸エステルアミド、2−(4′−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、1−o−トリルビグアニド、O,O′−ジベンズアミドジフェニルジスルフィド、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0024】
前記構造式(1)〜(7)で表わされる化合物は、室温において固体であり、加熱時に溶融するものが好適に用いられる。これらの化合物の融点は70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。上限値は200℃程度である。
融点が70℃未満であると、感熱性粘着剤としたときに通常の保存環境下温度で粘着力が発現してしまうなど、保存上の不具合(ブロッキング)が生じることがある。また、感熱性粘着剤塗布液を支持体上に塗布し、乾燥するときに粘着力が発現するなどの製造上の不具合も生じることがある。一方、融点が200℃を超えると、粘着力を発現させるために大量のエネルギーが必要となり、実用上の不具合が生じることがある。また、感熱記録紙を支持体として用い大量のエネルギーで粘着力を発現させた場合、感熱記録層が発色することから印字画像が読み取れなくなってしまうという不具合がある。
また、前記構造式(1)〜(7)で表わされる化合物からなる熱溶融性物質は、体積平均粒子径で10μm以下、好ましくは3μm以下に粉砕して用いることができる。また、体積平均粒子径を更に細かく、例えば、0.5μm以下にすることにより、動的な熱感度が上がり低エネルギーで熱可塑性樹脂及び粘着付与剤と相溶して熱活性粘着剤となる。
熱溶融性物質としては、上記の化合物を単独で用いてもよいが、前記構造式(1)〜(7)で表される化合物と任意の割合で併用してもよく、その場合の配合比は任意に調整することが可能である。
【0025】
−粘着付与剤−
粘着付与剤は、感熱性粘着剤層の粘着力を向上させるために添加するもので、特に制限はなく公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロジン誘導体(例えば、ロジン、重合ロジン、水添ロジン)、テルペン系樹脂(例えば、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂)、石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等が挙げられる。
これらの粘着付与剤は、熱可塑性樹脂及び熱溶融性物質と相溶して、感熱性粘着剤層の粘着力を著しく向上させる。
粘着付与剤の融点(又は軟化点)は、80℃以上が好ましく、80〜200℃がより好ましい。融点(又は軟化点)が80℃未満であると、通常の保存環境下温度で保存上の不具合(耐ブロッキング性が低下)が生じることがある。
感熱性粘着剤層における粘着付与剤の含有量は、1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましい。含有量が1重量%未満であると、著しく粘着力が低下することがあり、30重量%を超えると、通常の保存環境下温度で保存上の不具合(耐ブロッキング性が低下)や低温環境下での初期粘着力の低下が生じることがある。
【0026】
−非溶融性物質−
本発明においては、ブロッキング防止機能、あるいは表面の摩擦力を低減させるために非溶融性物質を併用することができる。このような非溶融性物質としては、一般的に使われる体積平均粒子径0.5〜30μm、好ましくは1〜20μmの無機顔料、有機顔料、又は、有機顔料−無機顔料の複合系顔料が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、水酸化アルミニウム、クレー、焼成クレー、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、膨潤性雲母、非膨潤性雲母等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物、ベンゾグアナミン−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、ポリメタクリル酸メチル系架橋物、ポリメタクリル酸ブチル系架橋物、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂等の微粉末等が挙げられる。
また、これらの有機顔料を多孔質(ポーラス)構造に加工した粒子も用いることができ、例えば、ポリメタクリル酸メチル系架橋物のポーラス粒子を挙げることができる。
【0027】
有機顔料−無機顔料の複合系顔料としては、シリカ−アクリル複合化合物等を挙げることができ、更に、離型性に優れるシリコーン系材料の粒子を用いることができ、例えば、シリコーンゴム、シリコーンレジンの粒子、シリコーンゴムとシリコーンレジンの複合粒子等を用いることができる。
更に、これらのフィラーをシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤等によって化学的に、あるいはシリコーン樹脂等の高分子によって物理的に、一部又は完全に表面改質したものを用いても良い。
これらのフィラー物質の中では、離型性機能に優れる有機系顔料が好ましく、中でもシリコーン系粒子、ポリメタクリル酸メチル架橋物が好ましい。これらの樹脂粒子は、素材自身が耐ブロッキング性における離型性に優れるだけでなく、球状構造であることもその効果を高めていると考えられる。また、サーマルヘッドによる粘着性発現(活性化)を考えた場合、上記樹脂粒子は、サーマルヘッドで粘着性を発現する際のダメージが小さく、ヘッドマッチング性に優れた特性を有している。
【0028】
感熱性粘着剤層の形成方法には特に制限はなく、公知の塗布法又は印刷法などを採用することができるが、特に塗布法が好ましく、上記成分を配合した感熱性粘着剤層塗布液を用いて好適に形成することができる。
前記塗布法としては、例えば、ブレード塗工法、グラビア塗工法、グラビアオフセット塗工法、バー塗工法、ロール塗工法、ナイフ塗工法、エアナイフ塗工法、コンマ塗工法、Uコンマ塗工法、AKKU塗工法、スムージング塗工法、マイクログラビア塗工法、リバースロール塗工法、4本又は5本ロール塗工法、ディップ塗工法、落下カーテン塗工法、スライド塗工法、ダイ塗工法等が挙げられる。
なお、塗布又は印刷の際の乾燥は、使用される熱溶融性物質及び共融化剤が融解しない温度範囲で行わなければならない。乾燥の手段としては熱風乾燥の他に赤外線、マイクロ波、高周波による熱源を利用した乾燥方法が使用できる。
感熱性粘着剤層塗布液の塗布量は、乾燥塗布量で通常2〜30g/mが好ましく、5〜20g/mがより好ましい。塗布量が2g/m未満であると、ダンボール等の粗面被着体に対する粘着力の低下を引き起こす。逆に、30g/mを超えると、感熱性粘着剤層の粘着性発現に要するエネルギーが大きくなるとともに、支持体との間に中間層を設けた場合には、その断熱効果が薄れることになり、好ましくない。また、当然のことであるが、経済性が劣ることとなってしまう。
【0029】
<支持体>
支持体の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、感熱性粘着材料の目的用途に応じて適宜選択することができ、形状としては、例えば平板状等が挙げられ、構造としては、単層構造であっても積層構造であってもよい。
支持体の材料としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、種々の無機材料又は有機材料を用いることができる。
無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO、金属等が挙げられる。有機材料としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、合成紙等の紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等が挙げられる。これらの中でも、上質紙、コート紙、プラスチックフィルム、合成紙が好ましく、プラスチックフィルム、合成紙が特に好ましい。
合成紙としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどの合成繊維からなるものや、これらを紙の一部、一面、又は両面に貼り付けたもの等が挙げられる。合成紙の市販品としては、王子油化社製のFPG、FGS、GFG、KPK等が挙げられる。
【0030】
支持体がフィルム、合成紙の場合、パルプ等で出来た上質紙、古紙等と比較して感熱性粘着剤などの染み込みが悪く、またアンカー性も極めて低い。更に近年、熱活性方法としての安全性、高速性、オンデマンド化の風潮からサーマルヘッドを用いた接触活性方式が注目されてきている。しかし、この方式は活性層の面を削り落とす副作用があり、特に熱活性においては、ラベルの全面を活性させるためにサーマルヘッド自身が高温になり感熱性粘着剤層の脱落が著しくなるが、本発明においては、支持体として、フィルム、合成紙を用いた場合でも、熱活性時のフィルム及び合成紙の脱落、収縮を防止でき、また、ラベル張替え時の糊残りが生じることがない。
支持体は、塗布層の接着性を向上させる目的でコロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理等により表面改質することが好ましい。また、酸化チタン等の白色顔料などを添加して白色にすることが好ましい。
支持体の厚みには特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜2,000μmが好ましく、100〜1,000μmがより好ましい。
【0031】
<中間層>
本発明では、支持体と感熱性粘着剤層の間に中間層を設けることが好ましい。中間層を設けることにより、支持体表面を平滑化したり表面の濡れ性を調整できるため、結果として感熱性粘着剤層の厚みが均一化し、熱による活性化度合いのバラツキを抑えることができる。中間層は、熱可塑性樹脂及び顔料(フィラー)を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。顔料としては、粘着性発現の熱応答性の点から、微小中空粒子(中空フィラー)を用いることが特に好ましい。微小中空粒子を含むことにより、熱応答性に優れた材料とすることができる。
微小中空粒子としては、低エネルギー熱活性化(高感度熱活性化)の課題を考慮すると、断熱効果を有する体積平均粒子径2.0〜5.0μmで且つ中空率が70%以上のプラスチック球状中空粒子が好ましく、その中でも特に、最大粒子径が10.0μm以下のものが好ましい。中空率が低いものは、断熱効果が不充分なためにサーマルヘッドからの熱エネルギーが支持体を通じて外へ放出され、高感度熱活性化効果が劣る。
【0032】
本発明でいう微小中空粒子とは、熱可塑性樹脂を殻とし、内部に空気その他の気体を含有して既に発泡状態となっているものをいう。なお、ここでいう“中空率”とは、中空粒子の全体の体積に対する中空部(内部空隙部)の体積の比率である。
また、体積平均粒子径が5.0μmより大きい場合は、これらを用いた中間層上に感熱性粘着剤層を設けた場合に、該大きな粒子のために感熱性粘着剤層が形成されない部分ができ、熱活性化した場合に粘着力が低下しやすい。一方、2.0μmより小さい場合は、中空率70%以上を確保することが困難になり、高感度の熱活性化効果が得られないことがある。また、サーマルヘッドを用いた熱活性化方式での粘着力を確保するためには、中間層に用いる中空粒子の中空率は70%以上が好ましい。
上記の条件を満たすプラスチック球状中空粒子を形成する材料としては、アクリロニトリル−塩化ビニリデン−メタクリル酸メチル共重合体又はアクリロニトリル−メタクリロニトリル−イソボルニルメタクリレート共重合体が好ましい。
【0033】
中間層に用いる熱可塑性樹脂としては、公知の種々のものを用いることができ、例えばポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、エチルセルロース、ポリスチレン、スチレン系共重合体、フェノキシ樹脂、ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリル酸系共重合体、マレイン酸系共重合体、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン類などが挙げられる。中でも、前記感熱性粘着剤層に用いられる熱可塑性樹脂と同類の樹脂を用いると、両層の樹脂同士の相溶性がよくなることから、Tgが−70〜−5℃の範囲にあるものが好ましく、例えばビニル系モノマーをグラフト共重合した天然ゴムラテックス、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
Tgが−5℃を超える高Tg樹脂の場合は、中間層の特徴が全く得られず、ダンボール等の粗面被着体やポリオレフィンラップ等に対する粘着力が弱くなる。
【0034】
また、中間層に用いられる熱可塑性樹脂と微小中空粒子の比率については、樹脂1重量部に対してプラスチック球状中空粒子0.1〜1.0重量部が好ましく、プラスチック球状中空粒子が0.1重量部より少ないと高感度熱活性化に劣り、更にブロッキング性が低下する。逆に、プラスチック球状中空粒子が1.0重量部より多くなると、ダンボール等の粗面被着体やポリオレフィンラップに対する粘着力が低下し、上層に設けられた感熱性粘着剤層のみの粘着力となってしまう。
中間層の塗布量は、乾燥塗布量で通常0.2〜10g/m、好ましくは1〜5g/mの範囲とする。塗布量が0.2g/m未満では、熱活性時の断熱効果が得られない。また、10g/mを越えると、接着力や断熱効果が飽和し、経済上好ましくない。
中間層は、前記感熱性粘着剤層と同様の方法によって形成することができる。
【0035】
<粘着アンダー層(粘着性樹脂層)>
本発明では、支持体と中間層の間に粘着アンダー層(粘着性樹脂層)を設けることがより好ましい。粘着アンダー層に用いられる樹脂としては、Tgが−70〜−10℃である感熱性粘着剤層にも用いられる熱可塑性樹脂が好ましく、ビニル系モノマーをグラフト共重合した天然ゴムラテックス、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
Tgが−10℃を超える高Tg樹脂の場合は、粘着アンダー層の特徴が全く得られず、ダンボール等の粗面被着体やポリオレフィンラップ等に対する粘着力が弱く、上層に設けられた感熱性粘着剤層のみの粘着力となってしまう。一方、Tgが−70℃未満の低Tg樹脂でも特に問題はないが、コスト高となるため好ましくない。なお、殆どの樹脂はTgが−70℃以上である。
粘着アンダー層の塗布量は、乾燥塗布量で通常2〜35g/m、好ましくは4〜25g/mの範囲とする。塗布量が2g/m未満では、熱活性化後に接着を行う際に十分な接着力が得られない。また、35g/mを越えると接着力や断熱効果が飽和してしまうため、好ましくない。
粘着アンダー層は、前記感熱性粘着剤層と同様の方法によって形成することができる。
【0036】
次に、本発明の感熱性粘着材料は、支持体の感熱性粘着剤層を有さない側の面上に記録層、又は、記録層と保護層を順次積層することが好ましく、更に必要に応じてその他の層を設けてもよい。
記録層としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感熱記録層、熱溶融転写記録用インク受容層、電子写真用トナー受像層、ハロゲン化銀写真用記録層、及びインクジェット用インク受像層の何れかであることが好ましい。これらの中でも、ロイコ染料と顕色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録用の感熱性粘着材料、又は、熱溶融転写記録用インク受容層を設けた熱溶融転写記録用の感熱性粘着材料は、各種被着体、特にダンボール等の粗面被着体やポリオレフィンラップに対する粘着力が強く、低エネルギー熱活性化、かつ耐ブロッキング性も良好であり、極めて有用である。
【0037】
<感熱記録用の感熱性粘着材料>
感熱記録用の感熱性粘着材料における感熱記録層は、発色剤であるロイコ染料、顕色剤、及びバインダー樹脂を含み、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
ロイコ染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリフェニルメタン系染料、フルオラン系染料、フェノチアジン系染料、オーラミン系染料、スピロピラン系染料、インドリルフタリド系染料等が好適に挙げられる。
ロイコ染料の具体例としては、例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロルフルオラン、3−ジメチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンズフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−{N−(3′−トリフルオルメチルフェニル)アミノ}−6−ジエチルアミノフルオラン、2−{3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム}、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリクロルメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−N−メチル−N−アミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、6′−クロロ−8′−メトキシ−ベンゾインドリノ−ピリロスピラン、6′−ブロモ−3′−メトキシ−ベンゾインドリノ−ピリロスピラン、3−(2′−ヒドロキシ−4′−ジメチルアミノフェニル)−3−(2′−メトキシ−5′−クロルフェニル)フタリド、3−(2′−ヒドロキシ−4′−ジメチルアミノフェニル)−3−(2′−メトキシ−5′−ニトロフェニル)フタリド、3−(2′−ヒドロキシ−4′−ジエチルアミノフェニル)−3−(2′−メトキシ−5′−メチルフェニル)フタリド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2′,4′−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(2′−メトキシ−4′−ジメチルアミノフェニル)−3−(2′−ヒドロキシ−4′−クロル−5′−メチルフェニル)フタリド、3−モルホリノ−7−(N−プロピル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロロ−7−(N−ベンジル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(ジ−p−クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ピペリジノフルオラン、2−クロロ−3−(N−メチルトルイジノ)−7−(p−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)−5,6−ベンゾ−7−α−ナフチルアミノ−4′−o−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4′,5′−ベンゾフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2′,4′−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−{1,1−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル}フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−{1,1−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル}−6−ジメチルアミノフタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1−フェニルエチレン−2−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1−p−クロロフェニルエチレン−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4′−ジメチルアミノ−2′−メトキシ)−3−(1″−p−ジメチルアミノフェニル−1″−p−クロロフェニル−1″,3″−ブタジエン−4″−イル)ベンゾフタリド、3−(4′−ジメチルアミノ−2′−ベンジルオキシ)−3−(1″−p−ジメチルアミノフェニル−1″−フェニル−1″,3″−ブタジエン−4″−イル)ベンゾフタリド、3−ジメチルアミノ−6−ジメチルアミノ−フルオレン−9−スピロ−3′−(6′−ジメチルアミノ)フタリド、3,3−ビス{2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル}−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−ビス{1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル}−5,6−ジクロロ−4,7−ジブロモフタリド、ビス(p−ジメチルアミノスチリル)−1−ナフタレンスルホニルメタン、3−(N−メチル−N−プロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリドフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオランスピロ(9,3′)−6′−ジメチルアミノフタリド、3−ジエチルアミノ−6−クロル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−(2−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4′,5′−ベンゾフルオラン、3−N−メチル−N−イソブチル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
顕色剤としては特に制限はなく、公知の電子受容性の化合物の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール性化合物、チオフェノール性化合物、チオ尿素誘導体、有機酸又はその金属塩等が挙げられる。
顕色剤の具体例としては、例えば、4,4′−イソプロピリデンビスフェノール、3,4′−イソプロピリデンビスフェノール、4,4′−イソプロピリデンビス(o−メチルフェノール)、4,4′−s−ブチリデンビスフェノール、4,4′−イソプロピリデンビス(o−t−ブチルフェノール)、4,4′−シクロヘキシリデンジフェノール、4,4′−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(6−t−ブチル−2−メチル)フェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−2−メチル)フェノール、4,4′−ジフェノールスルホン、4,2′−ジフェノールスルホン、4−イソプロポキシ−4′−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ベンジロキシ−4′−ヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジフェノールスルホキシド、P−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、P−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、プロトカテキュ酸ベンジル、没食子酸ステアリル、没食子酸ラウリル、没食子酸オクチル、1,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘプタン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサヘプタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−プロパン、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2−ヒドロキシプロパン、N,N′−ジフェニルチオ尿素、N,N′−ジ(m−クロロフェニル)チオ尿素、サリチルアニリド、5−クロロ−サリチルアニリド、サリチル−o−クロロアニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、チオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、2−アセチルオキシ−3−ナフトエ酸の亜鉛塩、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ヒドロキシナフトエ酸の亜鉛、アルミニウム、カルシウム等の金属塩、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチルエステル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル、4−{β−(p−メトキシフェノキシ)エトキシ}サリチル酸、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、2,4′−ジフェノールスルホン、3,3′−ジアリル−4,4′−ジフェノールスルホン、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α−メチルトルエンチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、4,4′−チオビス(2−メチルフェノール)、3,4−ヒドロキシ−4′−メチル−ジフェニルスルホン、4,4′−チオビス(2−クロロフェノール)等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
感熱記録層における顕色剤の添加量は、目的に応じて適宜選択することができ、ロイコ染料1重量部に対し1〜20重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
【0039】
バインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、澱粉又はその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子の他、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリブチルメタクリレート、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエマルジョンやスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体等のラテックス類などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
感熱記録層には、填料として種々の熱可融性物質を使用することができる。該熱可融性物質としては、例えば、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アミド類、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類、p−ベンジルビフェニル、ターフェニル、トリフェニルメタン、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、β−ベンジルオキシナフタレン、β−ナフトエ酸フェニルエステル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸メチルエステル、ジフェニルカーボネート、テレフタル酸ジベンジルエステル、テレフタル酸ジメチルエステル、1,4−ジメトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジベンジルオキシナフタレン、1,2−ビス(フェノキシ)エタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、1,4−ビス(フェノキシ)ブタン、1,4−ビス(フェノキシ)−2−ブテン、1,2−ビス(4−メトキシフェニルチオ)エタン、ジベンゾイルメタン、1,4−ビス(フェニルチオ)ブタン、1,4−ビス(フェニルチオ)−2−ブテン、1,2−ビス(4−メトキシフェニルチオ)エタン、1,3−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、p−(2−ビニルオキシエトキシ)ビフェニル、p−アリールオキシビフェニル、p−プロパギルオキシビフェニル、ジベンゾイルオキシメタン、1,3−ジベンゾイルオキシプロパン、ジベンジルジスルフィド、1,1−ジフェニルエタノール、1,1−ジフェニルプロパノール、p−(ベンジルオキシ)ベンジルアルコール、1,3−ジフェノキシ−2−プロパノール、N−オクタデシルカルバモイル−p−メトキシカルボニルベンゼン、N−オクタデシルカルバモイルベンゼン、蓚酸ジベンジルエステル、1,5−ビス(p−メトキシフェニルオキシ)−3−オキサペンタン等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
感熱記録層には、更に必要に応じて、各種補助添加成分、例えば、界面活性剤、滑剤、フィラー等を併用することができる。滑剤としては、例えば高級脂肪酸又はその金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物性ワックス、石油系ワックス等が挙げられる。フィラーとしては公知のものが使用でき、例えば炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、シリカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、アルミナ、クレー等の無機顔料又は公知の有機顔料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、耐水性(耐水剥がれ性)を考慮すると酸性顔料(水溶液中で酸性を示すもの)であるシリカ、カオリン、アルミナが好ましく、特に発色濃度の点からシリカが好ましい。
感熱記録層の形成方法には、特に制限はなく、一般に知られている方法を採用することができ、例えば、ロイコ染料、顕色剤を別々に結合剤その他の成分と共に、ボールミル、アトライター、サンドミル等の分散機により、分散粒径が1〜3μmになるまで粉砕分散した後、必要に応じて填料、熱可融性物質(増感剤)分散液等と共に、一定処方で混合して感熱記録層塗布液を調製し、支持体上に塗布することによって形成することができる。
感熱記録層の厚みは、感熱記録層の組成や感熱性粘着材料の用途等により異なり一概には規定できないが、1〜50μmが好ましく、3〜20μmがより好ましい。
【0042】
<熱転写記録用の感熱性粘着材料>
熱転写記録用の感熱性粘着材料における熱転写記録用インク受容層は、フィラー、バインダー樹脂、耐水化剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、水酸化アルミニウム、クレー、焼成クレー、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、表面処理された炭酸カルシウムやシリカ、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン等の微粉末等が挙げられる。
バインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知の水溶性樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン又はその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン−無水マレイン共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子化合物等が挙げられる。
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
インク受容層におけるフィラーと水溶性樹脂の割合は、ブロッキング性に関わり、含有重量比(固形分)で、フィラー:水溶性樹脂=1:0.1〜0.2が好ましい。
【0043】
耐水化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、クロムミョウバン、メラミン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂等が挙げられる。
耐水化剤と水溶性樹脂の割合もブロッキング性に関わり、その含有重量比(固形分)は、水溶性樹脂:耐水化剤=1:0.3〜0.5が好ましい。
このようにインク受容層は、フィラーと水溶性樹脂、更に水溶性樹脂と耐水化剤を特定の比率で含有させて形成するが、更に、インク受容層の表面をキャレンダーなどにより、平滑度500秒以上に処理することにより、上記フィラーによる効果に加えて印字品質を一層向上させることができる。
【0044】
−保護層−
保護層は、樹脂成分と、必要に応じてその他の成分を含有してなる。この場合の樹脂としては、疎水性樹脂エマルジョン、水溶性樹脂を用いることができるが、保護層としてのバリアー性の点から、水溶性樹脂を用いた膜が好ましい。また、水溶性樹脂を用いた場合には、架橋剤によって耐水化することでその機能を向上させることができる。
水溶性樹脂としては通常ポリビニルアルコールを用いるが、耐水化するための架橋剤との組み合わせを適宜選定することができる。例えば、カルボキシ変性ポリビニルアルコールとポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、反応性カルボニル基を有するポリビニルアルコールとヒドラジド化合物との組み合わせなどである。
この中で、反応性カルボニル基を有するポリビニルアルコール(以下、PVAαという)と、架橋剤としてヒドラジド化合物を含有する保護層は、耐熱性、耐水性が極めて高く、圧力、温度、湿度の付加による影響を受け難いので、耐ブロッキング性を大きく向上させることができる。
【0045】
PVAαは、反応性カルボニル基を有するビニルモノマーと脂肪酸ビニルエステルとを共重合して得た重合体を鹸化する等の公知の方法により製造することができる。該反応性カルボニル基を有するビニルモノマーとしては、エステル残基を有する基、アセトン基を有する基が挙げられるが、ジアセトン基を有するビニルモノマーが好ましく、具体的にはジアセトンアクリルアミドやメタジアセトンアクリルアミドが好ましい。前記脂肪酸ビニルエステルとしては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられるが、これらの中でも、酢酸ビニルが特に好ましい。
PVAαは、共重合可能な他のビニルモノマーを共重合したものであってもよい。これらの共重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル、ブタジエン、エチレン、プロピレン、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸などが挙げられる。
PVAα中の反応性カルボニル基の含有量は、ポリマー全体の0.5〜20モル%が好ましく、耐水化を考慮すると2〜10モル%の範囲がより好ましい。含有量が2モル%より少ないと実用上耐水性が不十分となり、10モル%を超えてもそれ以上耐水化の向上が見られず高価になるだけなので経済的でない。また、PVAαの重合度は300〜3,000が好ましく、500〜2,200がより好ましい。また、PVAαの鹸化度は80%以上が好ましい。
【0046】
前記ヒドラジド化合物は、ヒドラジド基を持つものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボヒドラジド、蓚酸ジヒドラジド、蟻酸ヒドラジド、酢酸ヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,7−ナフトエ酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド等が挙げられる。
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、耐水性や安全性の面からアジピン酸ジヒドラジドが好ましい。
ヒドラジド化合物の含有量は、PVAα100重量部に対し、5〜40重量部が好ましく、15〜25重量部がより好ましい。
【0047】
保護層には、フィラーを含有することが好ましい。該フィラーは塩基性のものがよく、その例としては、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク、アルカリ性の珪酸類等が挙げられるが、サーマルヘッドとのマッチング(カス付着)等から水酸化アルミニウムと炭酸カルシウムが好ましく、適度な水溶性によるpHコントロールを考慮すると、特に水酸化アルミニウムが好ましい。
保護層の形成方法には特に制限はなく、一般に知られている方法を採用することができるが、例えば、常法により調製した保護層塗布液を記録層上に塗布する方法によって形成することができる。
保護層の厚みは特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0〜7.0μmが好ましい。
【0048】
更に、支持体と感熱記録層の間には、必要に応じて中間層などを設けることもできる。これらの層を構成する成分としては、前記の微小中空粒子を含む顔料、結合剤、熱可融性物質、界面活性剤等を用いることができる。
本発明の感熱性粘着材料は、感熱性粘着層の熱活性化時(加熱時)の前又は後でカットして使用することができる。この場合、該感熱性粘着材料に、予め切れ目を形成しておけば、ラベル、タグ等の様々な用途に好適に用いることができる点で有利である。
本発明の感熱性粘着材料の形状には特に制限はなく、ラベル状、シート状、ラベルシート状、ロール状などが好適に挙げられる。中でも、利便性、保管場所、取り扱い性の点から、円筒状の芯材に巻き取り、長尺状でロール状に巻いて保管するのが好ましい。
【0049】
本発明の感熱性粘着材料が貼付される被着体としては特に制限はなく、目的に応じて大きさ、形状、構造、材質等を適宜選択することができるが、材質としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、ナイロン等の樹脂板、SUS、アルミニウム等の金属板、封筒、ダンボール等の紙製品、ポリオレフィン製のラップ類、ポリ塩化ビニル製のラップ類、ポリエチエレン製不織布(封筒等)、ガラスなどが好適に挙げられる。
本発明の感熱性粘着材料の感熱性粘着剤層を熱活性化する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱風による活性化方法、熱ロールによる活性化方法、サーマルヘッドによる活性化方法、などが挙げられる。
これらの中でも、サーマルヘッドによる活性化方法が好ましく、既存の感熱記録プリンタ装置を用いて感熱性粘着材料の両面を加熱することにより、感熱記録層への記録と、感熱性粘着剤層の熱活性化とを同時に行うことができる点で有利である。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、非活性時のブロッキング性に優れ、且つ平滑性の低いダンボールのような被着体に対し、広い温度域において十分な粘着力を有する感熱性粘着材料を提供できる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下に示す部及び%は、何れも重量基準である。
【0052】
―熱可塑性樹脂液〔P液〕の作製−
下記表1、表2に示す組成のモノマー混合体(A〜O)を調製した。
次いで、下記組成の混合物を、撹拌しながら70℃で9時間かけて重合した。この共重合体を水酸化ナトリウム水溶液でpH7〜9に調整し、水蒸気蒸留にて未反応単量体等を除去し、水を添加して不揮発分を調整し、不揮発分50%の共重合体エマルジョンを得た。
−樹脂A〜N−
・水…170部
・乳化剤(三洋化成工業製エレミノールES−70)…2.5部
・過硫酸カリウム…0.5部
・モノマー混合体…100部
−樹脂O−
・水…100部
・乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)…2.5部
・過硫酸ナトリウム…0.5部
・α−メチルスチレンダイマー…0.5部
・t−ドデシルメルカプタン…0.4部
・モノマー混合体…100部
【0053】
【表1】

【表2】

【0054】
−熱溶融性物質分散液〔Q液〕の作製−
下記組成からなる混合物を、平均粒径が1.0μmとなるようにサンドミルを用いて分散して熱溶融性物質分散液〔Q液〕を得た。
・トリフェニルホスフィン …15部
・2−(3′−t−ブチル−5′−メチル−2′−ヒドロキシフェニル)−5−クロ
ロベンゾトリアゾール…15部
・ポリビニルアルコール…5部
(日本合成化学社製L−3266、平均分子量15000、鹸化度88%)
・界面活性剤(アルキル=アリルスルホン酸塩)…0.15部
・水…64.85部
【0055】
−感熱性粘着剤層塗布液〔R液〕の調整−
下記組成物を充分に攪拌し、感熱性粘着剤層塗布液〔R液〕を得た。
・〔P液〕(共重合体エマルジョン)…10部
・〔Q液〕(熱溶融性物質分散液)…66部
・特殊ロジンエステル系エマルジョン…6部
(荒川化学工業製スーパーエステルE−650、不揮発分50%)
・真球状シリコーン樹脂微粒子…3部
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製トスパール120)
・水…15部
【0056】
<微小中空粒子の調製>
塩化ナトリウム55gをイオン交換水160gに溶解し、アジピン酸−ジエタノールアミン縮合物1.0g、コロイダルシリカ20%水溶液25gを加えた後、硫酸でpHを3.8から4.2に調整し、均一に混合して水相とした。
アクリロニトリル45g、メタクリロニトリル16g、N−メチロールアクリルアミド5g、イソボニルメタクリレート23g、エチレングリコールジメタクリレート0.1g、アゾビスイソブチロニトリル0.3g、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)0.1g、イソブタン15gを混合、攪拌、溶解し、油相とした。
上記水相と油相を混合し、ホモミキサーにより4000rpmで1分間攪拌して懸濁液とし、これをセパラブルフラスコに移して窒素置換した後、攪拌しつつ70℃で6時間、次いで90℃で14時間反応させた。反応後、冷却し濾過してカプセル粒子を得た。
次に、加熱による発泡を行ない中空粒子を形成した。この中空粒子の中空率は89%、体積平均粒子径(メジアン径)は4.5μmであった。
【0057】
<中間層塗布液〔S液〕の作製>
下記混合物を攪拌分散して、中間層塗布液を調製した。
・上記微小中空粒子の水分散液(不揮発分30%)…30部
・アクリル共重合体エマルジョン…28部
(新中村化学製ニューコートSFK−1000A、不揮発分46%)
・ポリビニルアルコール水溶液(クラレ製PVA117、不揮発分16%)…9部
・水…50部
【0058】
実施例1
支持体である坪量80g/mの片面コート紙(OKアドニスラフ、王子製紙社製)におけるコート層を有さない側の面に、モノマー構成Aの樹脂を用いた感熱性粘着剤層塗布液〔R液〕を、乾燥付着量が20g/mとなるように塗布し、乾燥して感熱性粘着剤層を形成し、感熱性粘着材料を作製した。
【0059】
実施例2
モノマー構成Aの樹脂をモノマー構成Bの樹脂に変更した点以外は、実施例1と同様にして感熱性粘着剤層を形成し、感熱性粘着材料を作製した。
【0060】
実施例3
モノマー構成Aの樹脂をモノマー構成Cの樹脂に変更した点以外は、実施例1と同様に感熱性粘着剤層を形成し、感熱性粘着材料を作製した。
【0061】
実施例4
モノマー構成Aの樹脂をモノマー構成Dの樹脂に変更した点以外は、実施例1と同様に感熱性粘着剤層を形成し、感熱性粘着材料を作製した。
【0062】
実施例5
モノマー構成Aの樹脂をモノマー構成Eの樹脂に変更した点以外は、実施例1と同様に感熱性粘着剤層を形成し、感熱性粘着材料を作製した。
【0063】
実施例6
実施例1と同じ支持体のコート層を有さない側の面に、中間層塗布液〔S液〕を、乾燥付着量が5g/mとなるように塗布、乾燥して中間層を形成した。次いで、その上に、モノマー構成Aの樹脂を用いた感熱性粘着剤層塗布液〔R液〕を、乾燥付着量が15g/mとなるように塗布し、乾燥して感熱性粘着剤層を形成し感熱性粘着材料を作製した。
【0064】
実施例7
実施例1と同じ支持体のコート層を有さない側の面に、綜研化学社製粘着剤E−1054K(不揮発分50%)を15g/mとなるように塗布、乾燥して粘着アンダー層を設けた。次いで、その上に、中間層塗布液〔S液〕を、乾燥付着量が5g/mとなるように塗布、乾燥して中間層を形成し、更に、モノマー構成Aの樹脂を用いた感熱性粘着剤層塗布液〔R液〕を、乾燥付着量15g/mとなるように順次塗布乾燥して、感熱性粘着材料を作製した。
【0065】
比較例1
モノマー構成Aの樹脂をモノマー構成Fの樹脂に変更した点以外は、実施例1と同様にして感熱性粘着剤層を形成し、感熱性粘着材料を作製した。
【0066】
比較例2
モノマー構成Aの樹脂をモノマー構成Gの樹脂に変更した点以外は、実施例1と同様にして感熱性粘着剤層を形成し、感熱性粘着材料を作製した。
【0067】
比較例3
モノマー構成Aの樹脂をモノマー構成Hの樹脂に変更した点以外は、実施例1と同様にして感熱性粘着剤層を形成し、感熱性粘着材料を作製した。
【0068】
比較例4
モノマー構成Aの樹脂をモノマー構成Iの樹脂に変更した点以外は、実施例1と同様にして感熱性粘着剤層を形成し、感熱性粘着材料を作製した。
【0069】
比較例5
モノマー構成Aの樹脂をモノマー構成Jの樹脂に変更した点以外は、実施例1と同様にして感熱性粘着剤層を形成し、感熱性粘着材料を作製した。
【0070】
比較例6
モノマー構成Aの樹脂をモノマー構成Kの樹脂に変更した点以外は、実施例1と同様にして感熱性粘着剤層を形成し、感熱性粘着材料を作製した。
【0071】
比較例7
−感熱性粘着剤層塗布液〔R′液〕の調整−
下記組成物を充分に攪拌し、感熱性粘着剤層塗布液〔R′液〕を得た。
・共重合体エマルジョン(モノマー構成L)…3部
・共重合体エマルジョン(モノマー構成M)…7部
・特殊ロジンエステル系エマルジョン…2部
(荒川化学工業製スーパーエステルE−650)
・水…15部
感熱性粘着剤層塗布液〔R液〕を、上記感熱性粘着剤層塗布液〔R′液〕に変更した点以外は、実施例1と同様にして感熱性粘着剤層を形成し、感熱性粘着材料を作製した。
【0072】
比較例8
モノマー構成Aの樹脂をモノマー構成Nの樹脂に変更した点以外は、実施例1と同様にして感熱性粘着剤層を形成し、感熱性粘着材料を作製した。
【0073】
比較例9
モノマー構成Aの樹脂をモノマー構成Oの樹脂に変更した点以外は、実施例1と同様にして感熱性粘着剤層を形成し、感熱性粘着材料を作製した。
【0074】
上記実施例1〜7及び比較例1〜9の感熱性粘着材料について、支持体の感熱性粘着剤層を有さない側の面上に、以下の手順によって感熱記録層を設けた。

<感熱記録層形成例>
−[アンダー層形成液]−
下記組成の混合物を攪拌分散して[アンダー層形成液]を調製した.
・微小中空粒子分散体(塩化ビニリデン/アクリロニトリルを主体とする共重合樹脂
固形分濃度32%、体積平均粒子径3.0μm、中空度92%)…30部
・スチレン/ブタジエン共重合体ラテックス(Tg:+4℃)…10部
・水…60部

−〔感熱発色層形成液〕−
下記組成の〔ロイコ染料分散液〕と[顕色剤分散液]の原料混合物を、それぞれ体積平均粒子径が1.5μm程度となるようにサンドミルを用いて分散し〔ロイコ染料分散液〕と[顕色剤分散液]を調製した。次いで、〔ロイコ染料分散液〕:[顕色剤分散液]=1:8となるように混合攪拌して〔感熱発色層形成液〕を得た。
〔ロイコ染料分散液〕
・3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン…20部
・ポリビニルアルコ−ル(10%水溶液)…10部
・水…70部
[顕色剤分散液]
・4−イソプロポキシ−4′−ヒドロキシジフェニルスルホン…10部
・ポリビニルアルコ−ル(10%水溶液)…25部
・炭酸カルシウム…15部
・水…50部

−〔保護層形成液〕−
下記組成の原料混合物を縦型サンドミルで体積平均粒子径が1μm以下になるように粉砕、分散化して[保護層一次分散液]を調製した後、これを用いて下記組成の[保護層形成液]を調製した。
[保護層一次分散液]
・水酸化アルミニウム…20部
・ポリビニルアルコ−ル(10%水溶液)…20部
・水…40部
[保護層形成液]
・保護層一次分散液…10部
・ポリビニルアルコ−ル(10%水溶液)…20部
・12.5%エピクロヒドリン水溶液…5部
・30%ステアリン酸亜鉛分散液…2部

上記[アンダー層形成液]を支持体の表面に乾燥後重量が4g/mとなるように塗布乾燥して断熱層を設けた。次いで、その上に、上記〔感熱発色層形成液〕を乾燥後重量が5g/mとなるように塗布乾燥して感熱発色層を設けた。
次いで、感熱発色層上に、上記〔保護層形成液〕を、乾燥後重量が約3g/mとなるように塗布、乾燥し、更に、王研式平滑度が2000秒になるようにスーパーキャレンダー処理して感熱記録層を設けた。

【0075】
<粘着特性の評価>
得られた各感熱性粘着材料を40mm×120mmの長方形にカットし、感熱印字装置(大倉電気株式会社製、TH−PMD)を用いて、ヘッド条件:各エネルギー0.40mJ/dot、0.50mJ/dot、印字スピード:6ms/line、プラテン圧:6kgf/lineの条件で熱活性化させた。
次いで、活性化させたサンプルを、予め各環境条件下に入れておいたダンボール(C5ライナーA段)に速やかに貼り付けた(JIS Z 0237記載の180度引きはがし粘着力試験の測定法に準じ、加圧2kgのゴムローラーで20mm/sの速度で2往復させて圧着)。
貼り付けた後、同環境下に24時間静置保管し、その後、剥離角度180度、剥離速度300mm/minの条件で剥離させ、その時の粘着力をフォースゲージ(イマダ製DPS−5、)で測定し、0.1秒間隔でデータを読み取り平均化した数値を示した。数値の単位はN/40mmである。粘着力ランクは、下記のとおりとした。
◎ :10N/40mm以上
○ : 5N/40mm以上〜10N/40mm未満
△ : 2N/40mm以上〜 5N/40mm未満
× : 2N/40mm未満
【0076】
<耐ブロッキング性の評価>
得られた各感熱性粘着材料の感熱性粘着剤層面と、反対側の感熱記録層の保護層面を接触させ、200gf/cmの圧力を掛け、60℃、Dry条件下で15時間放置した。次いで、室温で放置した後、サンプルを剥がし、その時の耐ブロッキング性を、下記表3に示す基準で評価した。10段階のランクに分け、ランク10、9を「◎」、ランク8、7を「○」、ランク6、5、4を「△」、ランク3、2、1を「×」とした。
なお、「剥離時の抵抗感」「剥離音」「点状転写」「ハガレ」の順に、ブロッキングの程度が重くなった状態を指しており、「剥離時の抵抗感」とは、粘着性を持たせていないときにも軽くくっつくことを指し、その中の「自重」とは、軽くくっついた場合でも、2枚重ねて上の紙だけを持ったら自然に剥がれ落ちる程度の状態を指す。また、「剥離音」とは、くっついた状態から剥がそうとしたときに音が出ることを指し、「点状転写」とは、感熱性粘着剤層が裏面に点状に転写している状態を指し、「ハガレ」とは、感熱性粘着剤層が裏面と貼り付いてしまって、感熱性粘着剤層が剥れてしまうか、又は、裏面の紙が剥れてしまう(破れる)現象のことを指す。
【0077】
【表3】

【0078】
各感熱性粘着材料の評価結果を纏めて表4に示す。
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の一方の面上に、少なくとも、熱可塑性樹脂及び加熱時に溶融する熱溶融性物質を必須成分とする感熱性粘着剤層を有し、該熱可塑性樹脂は、モノマー成分であるアクリロニトリルがモノマー比で5〜20重量%を占める(メタ)アクリル共重合体を主成分とし、該共重合体のガラス転移温度が−70〜−30℃の範囲にあることを特徴とする感熱性粘着材料。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル共重合体がアクリル酸−2−エチルヘキシルを主成分とすることを特徴とする請求項1記載の感熱性粘着材料。
【請求項3】
感熱性粘着剤層と支持体の間に、微小中空粒子と熱可塑性樹脂を主成分とする中間層を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の感熱性粘着材料。
【請求項4】
支持体と中間層の間に、粘着アンダー層を設けたことを特徴とする請求項3記載の感熱性粘着材料。
【請求項5】
支持体の感熱性粘着剤層を有さない側の面上に、記録層、又は、記録層と保護層を順次積層したことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の感熱性粘着材料。
【請求項6】
記録層が、感熱記録層、熱溶融転写記録用インク受容層、電子写真用トナー受像層、ハロゲン化銀写真用記録層、及びインクジェット用インク受像層の何れかであることを特徴とする請求項5記載の感熱性粘着材料。
【請求項7】
支持体が、合成紙又はプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項5又は6記載の感熱性粘着材料。
【請求項8】
ラベル状、シート状、ラベルシート状、又はロール状であることを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の感熱性粘着材料。

【公開番号】特開2009−13382(P2009−13382A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180258(P2007−180258)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】