説明

感熱性粘着材料

【課題】熱活性前では印刷加工適性に優れ、熱活性後では被着体への糊残りがなく層間結着力が強いラベル状、シート状、ラベルシート状、ロール状の感熱性粘着材料を提供する。
【解決手段】支持体と、該支持体の一方の面上にアンダー層と熱可塑性樹脂及び加熱時に溶融する熱溶融性物質を主成分とする感熱性粘着剤層を有する感熱性粘着材料おいて、該支持体の一方の面上に体積平均粒径が2.0μm以下の微小粒子と3.0μm〜6.0μmの粗大粒子からなる2種類以上の粒子を質量比が1:2以下になるように含有して、表面の平滑度を100秒〜3500秒にしたアンダー層を設け、熱可塑性樹脂層および加熱時に溶融する熱溶融性物質を主成分とする感熱性粘着剤層を順次積層して一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は常温では非粘着性であるが熱を付与することによって粘着性を発現させることができる剥離紙を必要としない感熱性粘着材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粘着性を有する感熱記録用ラベルは、POS分野を代表として広い分野で使用されているが、感熱記録用ラベルは感圧粘着剤層の上に剥離紙を貼り付けているのが一般的である。このような剥離紙が設けられた粘着性を有する感熱記録用ラベルは有用であるが、その反面多くの欠点を有している。即ち、剥離紙はラベルを物品に貼付するときには剥離されるが、剥がされた剥離紙は回収によって再利用され難く、ほとんどの場合は廃棄処分されており資源の無駄である。また、巻装体を置いておくためのスペースも無駄であることからコスト高の原因の1つになっている。また、ラベルを物品に貼付するたびに剥離紙を剥がす作業は作業者にとってはかなり負担でもある。近年、常温では粘着性を示さないことから、剥離紙が不要な感熱性粘着剤層を有する感熱性粘着ラベルシートが注目されている(特許文献1)。なお、既存の感熱記録プリンタ−装置を用いると、前記感熱粘着材料の両面を加熱するため、感熱記録層への記録と感熱性粘着剤層の熱活性化とを行うことができる点で有利であるため最近ではサーマルヘッドでの熱活性の需要が増えてきている。
【0003】
前記感熱性粘着材料において、粘着力を向上させる方法として、支持体と感熱性粘着剤層の間にプラスチック中空粒子及び水溶性結着剤を含有する断熱層を設ける方法が知られている(特許文献1及び特許文献2)。しかしながら、このような感熱性粘着材料では、粘着力は向上するものの、断熱層と断熱層上に設けた感熱粘着層の層間の結着性が弱く、剥離時に界面で層剥がれが発生することが分かった。
また、ガラス転移温度(Tg)が−70℃以上0℃未満である熱可塑性樹脂及び中空フィラーを含有する断熱層を設け、熱活性化する際に熱エネルギーを低減化(高感度化)することも知られているが(特許文献3)、感熱性粘着材料の粘着力が向上し、かつガラス転移温度(Tg)が−70℃以上0℃未満である柔軟な熱可塑性樹脂が用いられているために断熱層上の感熱性粘着剤層との接触面積が増えるため、層間の強度は向上するが強度は十分ではなく剥離時に界面で剥がれが発生する。
【0004】
このように、剥離時に界面で層剥がれが発生するが、その際に被着体の表面に糊残りが発生することにもなり、被着体が汚れて再利用ができなくなるという問題が発生する。
さらに、感熱性粘着剤層上にアイマーク印刷など印刷加工を施す場合に、ピッキング現象が生じて印刷が不良になるという不都合も生じる。そのため、いくら被着体への塗れ性がよく粘着力を強くしても、市場での使われ方しだいで問題が生じてしまうことになる。
前記するように、活性前後で十分な層間結着性を有させるに際しては技術課題が高く難易度が高いものとなっており、さらなる改良および開発が望まれているのが現状である。
また、感熱記録材料において、記録層と支持体の間に断熱層を設けてサーマルヘッドからの熱効率を向上させて層間の結着性を良好にする方法として、平均体積粒径の異なる球状中空粒子を含有し、ガラス転移点が40℃以上の水溶性高分子エマルジョン樹脂を含有させることが知られている(特許文献4)。しかしながら、従来のいずれの方法も感熱性粘着材料特有の問題である被着体への糊残りが解決できてはいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の課題を解決するものとして、熱活性前では印刷加工適性に優れ、熱活性後では被着体への糊残りがないだけでなく、層間結着力が強く、しかも剥離紙が不要な感熱性粘着材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本願第1の発明によれば、支持体と、該支持体の一方の面上にアンダー層と熱可塑性樹脂及び加熱時に溶融する熱溶融性物質を主成分とする感熱性粘着剤層を順次設けた感熱性粘着ラベルにおいて、前記アンダー層の平滑度が100秒以上3500秒以下である感熱性粘着材料を提供する。
第2の発明によれば、アンダー層に体積平均粒径が異なる2種類以上の粒子を含有する上記の感熱性粘着材料を提供する。
第3の発明によれば、体積平均粒径が異なる2種類以上の粒子の径がそれぞれ2.0μm以下の微小粒子と3.0μm以上6.0μm以下の粗大粒子であるとともに、該微小粒子と該粗大粒子の質量比が1:2以下である上記の感熱性粘着材料を提供する。
第4の発明によれば、粒子の体積平均粒子径のCV値が50%以下である上記の感熱性粘着材料を提供する。
第5の発明によれば、粒子が中空粒子である上記の感熱性粘着材料を提供する。
第6の発明によれば、アンダー層にガラス転移点(Tg)が30℃未満の熱可塑性樹脂を含有する上記の感熱性粘着材料を提供する。
第7の発明によれば、アンダー層における粒子の総和と熱可塑性樹脂との混合質量比が1:0.5〜1:3.0である上記の感熱性粘着材料を提供する。
第8の発明によれば、アンダー層の厚みが5μm〜30μmである上記の感熱性粘着材料を提供する。
第9の発明によれば、支持体の感熱性粘着剤層を有さない側の面上に記録層及び保護層が順次設けられている上記の感熱性粘着材料を提供する。
第10の発明によれば、記録層が感熱記録層、熱溶融転写記録用インク受容層、電子写真用トナー受像層、ハロゲン化銀写真用記録層、又はインクジェット用インク受像層のいずれかである上記の感熱性粘着材料を提供する。
第11の発明によれば、UV硬化性インクによって形成されたインク画像を有するPOSラベル等に好適な上記の感熱性粘着材料を提供する。
第12の発明によれば、記録層面には視覚情報を有するプレ印刷が施され、感熱性粘着剤層面にはセンシング機能を有するPOSラベル等に好適なアイマーク印刷が施されている上記の感熱性粘着材料を提供する。
第13の発明によれば、支持体が合成紙又はプラスチックフィルムである上記の感熱性粘着材料を提供する。
第14の発明によれば、ラベル状、シート状、ラベルシート状、又はロール状のいずれかの形状である上記の感熱性粘着材料を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明で得られるラベル状、シート状、ラベルシート状、又はロール状の形状を有する感熱性粘着材料は、熱活性前は印刷加工適性に優れ、熱活性後は被着体への糊残りがなく、層間結着力が強く、しかも剥離紙が不要な感熱性粘着材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の詳細を具体的に説明すると、本発明の感熱性粘着材料は支持体と該支持体の一方の面上に、特定の物性を有するアンダー層及び感熱性粘着剤層が順次積層されていることを要件とするものであるが、勿論その他の層を有していてもよい。
【0009】
本発明のアンダー層は、アンダー層面における平滑度を100秒以上3500秒以下にするものであるが、このアンダー層面の平滑度を100秒以上3500秒以下にすることにより、アンダー層面の比表面積が大きくなり、感熱性粘着剤層との接触面積が増え、力が分散されて層間の結着力が強くなる。さらに、表面がより凹凸になるためにアンダー層と感熱性粘着剤層の層間にアンカー効果が生じて物理的に層間の結着性が向上して結着力が強くなる。ところが、平滑度が100秒未満の場合では、アンダー層面の表面凹凸が大きくなるため、凸が大きい部分に感熱性粘着剤層が形成されない部分が生じて、剥離時に力がうまく分散されず、層間で剥がれが生じて感熱性粘着剤層の塗布ムラが起こる原因となる。また、平滑度が3500秒より高くなると、接触面積が小さくなってアンカー効果が小さくなるために層間の結着力は弱くなる。
【0010】
本発明はアンダー層において、体積平均粒径の異なる粒子を2種類以上含有されることを要件とするものであるが、その主な理由としては、体積平均粒径の異なる粒子を2種類以上含有することにより1種類の粒子を含有するアンダー層より平滑度が下がり表面がより凹凸になることにより、アンダー層と感熱性粘着剤層の層間にアンカー効果が生じて物理的に層間の結着性が向上して層間の界面での層剥がれがなくなり粘着力が強くなる。
本発明の粒子については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、カオリン、タルク、表面処理されたカルシウムやシリカ等の無機系微粉末、及びアクリロニトリル−塩化ビニリデン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−メタクリロニトリル−イソボニルメタクリレート共重合体及びアクリル酸エステル−スチレン共重合体、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂、塩化ビニリデン樹脂などの有機系の微粉末を挙げることができる。
【0011】
アンダー層は、2.0μm以下の微小粒子と3.0μm以上6.0μm以下の粗大粒子が含有され、且つ微小粒子に対して粗大粒子の質量比が1:2以下であることが好ましい。
アンダー層に2.0μm以下の微小粒子と3.0μm以上6.0μm以下の粗大粒子が質量比で1:2以下にすることにより、2.0μm以下の微小粒子だけが含有されたアンダー層面に比べ、表面の凹凸が大きくなるので、より強いアンカー効果が得られて層間の結着力が強くなる。なお、アンダー層に2.0μm以下の微小粒子や6.0μmより大きい粗大粒子が含まれている場合は、アンカー効果は大きくなるが、アンダー層面の比表面が小さくなるため層間の結着力はわずかに(約0.5〜1.0N/40mm程度)弱くなる。また、アンダー層に2.0μm以下の微小粒子と2.0μmより大きく3.0μmより小さい粗大粒子を含む場合は、表面凹凸が小さいため、層間の結着力はわずかに弱くなる。さらに、2.0μm以下の微小粒子と3.0μm〜6.0μmの粗大粒子が含有され、微小粒子に対して粗大粒子の質量比が1:2より大きくなると粗大粒子が占める割合が大きくなるため、アンカー効果は大きくなるがアンダー層面の比表面が小さくなるため、層間の結着力はわずかに弱くなる。
【0012】
アンダー層における粒子の体積平均粒子径のCV値が50%以下であることが好ましく、30%以下がより好ましい。CV値とは、下記の(1)式で表される粒子の単分散性を示す指標であり、値が小さいほどバラツキが小さい粒子であることを示している。
アンダー層における粒子の体積平均粒子径のCV値が50%より大きい場合には、粗大な粒子が含まれるためアンダー層上に感熱性粘着剤層を設けた時にアンダー層面の表面凹凸が大きくなって凸が大きい部分に感熱性粘着剤層が形成されない部分が生じて剥離時に力がうまく分散されずに層間で剥がれが発生することがある。該粒子の体積平均粒径はメジアン径の値であり、体積平均粒径およびCV値はレーザー散乱/回折型の粒径測定装置(LA−920、堀場製作所製)等を用いて測定することができる。
CV値=[標準偏差]/[平均粒径]×100(%)・・・・(1)
【0013】
アンダー層には、ガラス転移点(Tg)が30℃未満の熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、ガラス転移点−80℃以上10℃以下がより好ましい。アンダー層にガラス転移点(Tg)が30℃以上の熱可塑性樹脂を含有する場合は熱可塑性樹脂が硬くなる。
また、アンダー層上に感熱性粘着剤層を設けられた場合には、アンダー層面の表面凹凸に感熱性粘着剤層が入り込まずにアンダー層と感熱性粘着剤層の接触面積が減少するために層間の結着力はわずかに弱くなる。
【0014】
アンダー層における粒子と熱可塑性樹脂との混合質量比(粒子:熱可塑性樹脂)が、1:0.5〜1:3の範囲が好ましく、1:1〜1:2の範囲がより好ましい。粒子と熱可塑性樹脂との混合質量比が1:0.5より小さいと粒子の量が少なくなるので表面凹凸は小さくなり層間の結着力は弱くなる。また、混合質量比が1:3.0より大きくなると熱可塑性樹脂の量が少なくなる為、アンダー層と感熱性粘着剤層の接触面積が減少して層間の結着力は弱くなる。
【0015】
本発明のアンダー層に含有される粒子は中空粒子であることが望ましい。特に、軽くて強くて断熱性が良好なプラスチックで成形された中空粒子がより好ましい。また、本発明では中空粒子を用いることでアンダー層自体にクッション性を向上させることができる。そして、アンダー層上に感熱性粘着剤層を設ける場合にはアンダー層面の表面凹凸に感熱性粘着剤層が入り込み易くなり、アンダー層と感熱性粘着剤層の接触面積が増大して層間の結着力は強くなる。なお、中空粒子合成法として一般的によく知られているものとしては有機ビーズテンプレート法、エマルジョンテンプレート法、バブルテンプレート法、噴霧熱分解法、静電噴霧法などがある。また、感熱性粘着剤層の乾燥塗布膜厚としては5〜30μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。この乾燥塗布膜厚が5μm未満であるとアンダー層の表面凹凸が小さくなって結着性が弱くなり、30μmを超えると結着性が必要以上に強くなりコスト的にも好ましくない。
【0016】
<支持体>
支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、構造としては、単層構造であっても積層構造でもよく、前記大きさとしては、前記感熱性粘着材料の大きさ等に応じて適宜選択することができる。また、支持体の材料は特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、大きく分けると、無機材料と有機材料がある。
無機材料としては、例えばガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO、金属などが挙げられる。また、有機材料としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、合成紙等の紙;三酢酸セルロース等のセルロース誘導体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどが挙げられる。これらの中でも、上質紙、コート紙、プラスチックフィルム、合成紙が特に好ましい。
【0017】
支持体は塗布層の接着性を向上させることが目的であり、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理等の表面改質を行うことが好ましい。なお、支持体には酸化チタン等の白色顔料を添加することが好ましい。
支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm〜2,000μmが好ましく、100μm〜1,000μmがより好ましい。
なお、本発明において、感熱性粘着剤を基材の片面に塗布することにより、経時的な粘着力低下も少なく、低エネルギーでも加熱後に十分な粘着特性を有する感熱性粘着材料を提供することができる。
【0018】
<アンダー層>
前記アンダー層については、平滑度が100秒以上3500秒以下の範囲が好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有することができる。
【0019】
<熱可塑剤樹脂>
アンダー層に用いられる熱可塑剤樹脂は、ガラス転移点(Tg)が30℃未満であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル系モノマーをグラフト共重合した天然ゴムラテックス、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられるが、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、アンダー層を設ける方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、上記成分を適宜配合してなるアンダー層塗布液を用いた塗布法により好適に形成することができる。
また、塗布法としては、例えば、ブレード塗工法、グラビア塗工法、グラビアオフセット塗工法、バー塗工法、ロール塗工法、ナイフ塗工法、エアナイフ塗工法、コンマ塗工法、Uコンマ塗工法、AKKU塗工法、スムージング塗工法、マイクログラビア塗工法、リバースロール塗工法、4本又は5本ロール塗工法、ディップ塗工法、落下カーテン塗工法、スライド塗工法、ダイ塗工法等が挙げられる。
【0020】
<感熱性粘着剤層>
前記感熱性粘着剤層は、熱可塑性樹脂及び熱溶融性物質を含有してなり、必要に応じて粘着付与剤、共融化剤、更にその他の成分を含有してなる。また、感熱性粘着剤層については、熱可塑性樹脂及び加熱時に溶融する熱溶融性物質を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有することができる。
【0021】
<熱可塑剤樹脂>
前記感熱性粘着剤層に用いられる熱可塑剤樹脂は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるがアンダー層に用いられる熱可塑性樹脂と同類の樹脂を用いると、両層の樹脂同士の相溶性がよくなり層間の結着性がより向上する。感熱性粘着層に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ビニル系モノマーをグラフト共重合した天然ゴムラテックス、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらの樹脂は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
<熱溶融性物質>
熱溶融性物質は、室温において固体であるため樹脂に可塑性は与えないが、加熱により溶融して樹脂を膨潤又は軟化させて粘着性を発現し、加熱により溶融した後、ゆっくりと結晶化するため、熱源を取り除いた後も粘着性を長時間持続することができるものである。
本発明の熱溶融性物質の融点としては80℃以上で、200℃以下のものが好ましい。
融点が80℃未満であると、感熱性粘着材料としたときに通常の保存環境下温度で粘着力が発現するなど、保存上の不具合(ブロッキング)が生じる。また、感熱性粘着剤層塗布液を基材に塗布し、乾燥するときに粘着力が発現するなどの製造上の不具合も生じることがある。融点が200℃を超えると、粘着力を発現させるために大量のエネルギーが必要となり、実用上の不具合が生じる。また、感熱記録紙を基材として用い、大量のエネルギーで粘着力を発現させた場合には、感熱記録層が発色するため印字画像が読み取れなくなるという問題がある。
【0023】
熱溶融性物質として好適な化合物としては、例えば、構造式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物、構造式(2)で表されるトリフェニルホスフィン化合物、構造式(3)で表される化合物および構造式(4)で表されるヒドロキシ安息香酸エステル化合物がある。さらには構造式(5)〜(10)で表される化合物なども挙げることができる。
【0024】
【化1】

なお、構造式(1)中、R及びRは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、及びα,α−ジメチルベンジル基のいずれかを表す。Xは水素原子、及びハロゲン原子のいずれかを表す。前記構造式(1)におけるアルキル基としては、炭素数が1〜8のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基などが挙げられ、これらは置換基で更に置換されていてもよい。置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、シアノ基、特定の置換基(例えば、ハロゲン原子、ニトロ基)を有していてもよく、アルキル基、アリール基、複素環基などが挙げられる。なお、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0025】
構造式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物としては、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ(1,1−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−sec−ブチル−5′−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、などが挙げられる。
【化2】

【化3】

【化4】

【0026】
構造式(4)中、Rは、炭素数が1〜18のアルキル基、シクロヘキシル基、アルケニル基、アラルキル基(芳香環に置換基を有していてもよい)、及びフェニル基のいずれかを表す。また、構造式(4)で表されるヒドロキシ安息香酸エステル化合物としては、例えば、m−ヒドロキシ安息香酸メチル、m−ヒドロキシ安息香酸エチル、m−ヒドロキシ安息香酸フェニル、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、
p−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ステアリル、p−ヒドロキシ安息香酸シクロヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸4−クロロベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸4−メチルベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸フェニル、などが挙げられる。
【0027】
次に構造式(5)〜(7)について説明すると、下記に示す構造式(5)〜(7)におけるアルキル基としては、前記構造式(1)と同様のものが挙げられる。
また、構造式(5)〜(7)におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、などが挙げられる。
【化5】

構造式(5)で表される化合物としては、例えば、トルオイン、アニソイン、m−アニソイン、デオキシトルオイン、デオキシアニソイン、4,4′−ジエチルベンゾイン、4,4′−ジエトキシベンゾイン、などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、構造式(5)中、R及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかを表す。Yは、水素原子、及び水酸基のいずれかを表す。
【0028】
【化6】

構造式(6)で表される化合物としては、例えば、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸−p−クロロフェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸−o−クロロフェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸−p−メチルフェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸−o−メチルフェニル、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸−p−クロロフェニル、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸−o−クロロフェニルなどが挙げられる。
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。構造式(6)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基のいずれかを表す。Yは、水素原子、及び水酸基のいずれかを表す。
【0029】
【化7】

構造式(7)で表される化合物としては、例えば、安息香酸−3−ヒドロキシフェニル、安息香酸−4−ヒドロキシフェニル、安息香酸−2−ヒドロキシフェニル、o−メチル安息香酸−3−ヒドロキシフェニル、p−クロロ安息香酸−3−ヒドロキシフェニル、などが挙げられる。構造式(7)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基のいずれかを表す。
【0030】
【化8】

構造式(8)中、R及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、又はアルキル基を表す。m及びnは、1〜5の整数を表す。
【化9】

【化10】

構造式(10)中、Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。
なお、nは1〜5の整数を表す。
【0031】
前記構造式(1)〜(10)で表される熱溶融性物質は、体積平均粒子径で10μm以下、好ましくは3μm以下に粉砕して用いることができる。また、体積平均粒子径を更に細かく、例えば、0.5μm以下にすることにより、動的な熱感度が上がり低エネルギーで熱可塑性樹脂及び粘着付与剤と相溶して熱活性粘着剤となる。また、熱溶融性物質は1種を単独で用いる以外に、前記構造式(1)〜(10)で表される化合物と任意の割合で併用することができるが、その場合の配合比は任意に調整することが可能である。
【0032】
本発明においては、0℃の環境下でのダンボールに対する粘着性の点から熱溶融性物質として、構造式(1)、構造式(2)及び構造式(3)の少なくともいずれかで表される化合物を用いることが好ましいが、特に、構造式(1)及び構造式(2)の混合物又は構造式(3)の化合物が好ましい。感熱性粘着剤層における熱溶融性物質の含有量は、25質量%〜80質量%が好ましく、35質量%〜70質量%がより好ましい。前記熱溶融性物質の含有量が、25質量%未満であると、熱可塑性樹脂と組合せた場合、ブロッキングが生じやすく、また粘着力の低下をきたすことがあり、80質量%を超えると、粘着力の低下が生じることがある。
【0033】
<粘着付与剤>
粘着付与剤は、感熱性粘着剤層の粘着力を向上させるために添加でき、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ロジン誘導体(例えば、ロジン、重合ロジン、水添ロジン)、テルペン系樹脂(例えば、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂)、石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等が挙げられる。これら粘着付与剤は、熱可塑性樹脂及び熱溶融性物質と相溶して、感熱性粘着剤の粘着力を著しく向上させることができる。
【0034】
粘着付与剤の融点(又は軟化点)は、80℃以上が好ましく、80〜200℃がより好ましい。該融点(又は軟化点)が80℃未満であると、通常の保存環境下温度で保存上の不具合(耐ブロッキング性が低下)が生じることがある。なお、粘着付与剤の前記感熱性粘着剤層における含有量は、1〜30質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。含有量が、1質量%未満であると、粘着力が低下してしまうことがあり、30質量%を超えると、通常の保存環境下温度で保存上の不具合(耐ブロッキング性が低下)や低温環境下での初期粘着力の低下が生じることがある。
【0035】
<共融化剤>
共融化剤は、室温において固体で加熱時に溶融する化合物が好適に用いられ、該化合物の融点は、70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、その上限値は150℃程度である。融点が70℃未満であると、感熱性粘着剤としたときに通常の保存環境下温度で粘着力が発現してしまうなど、保存上の不具合(ブロッキング)が生じたり、感熱性粘着剤塗布液を支持体に塗布し、乾燥するときに粘着力が発現してしまうという製造上の不具合が生じることがある。一方、融点が150℃を超えると、熱溶融性物質を共融化する効果がなくなることがある。共融化剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、前記熱溶融性物質を共融化する効果及び熱可塑性樹脂への相溶性が優れている点で、蓚酸ジベンジルエステル化合物が好ましい。
【0036】
前記感熱性粘着剤層には、上記成分以外にも、ブロッキング防止のために、酸化チタン、アルミナ、コロイダルシリカ、カオリン、タルク等の無機物、ステアリン酸金属塩、パラフィン、天然ワックス、合成ワックス、天然油脂、ポリスチレン粉末等の有機物を添加することができ、更に必要に応じて、分散剤、消泡剤、増粘剤等のその他の成分を添加することができる。前記感熱性粘着剤層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、上記成分を配合してなる感熱性粘着剤層塗布液を用いた塗布法により好適に形成することができる。前記塗布法としては、例えば、ブレード塗工法、グラビア塗工法、グラビアオフセット塗工法、バー塗工法、ロール塗工法、ナイフ塗工法、エアナイフ塗工法、コンマ塗工法、Uコンマ塗工法、AKKU塗工法、スムージング塗工法、マイクログラビア塗工法、リバースロール塗工法、4本又は5本ロール塗工法、ディップ塗工法、落下カーテン塗工法、スライド塗工法、ダイ塗工法等が挙げられる。
【0037】
なお、前記塗布若しくは印刷の際の乾燥条件は、使用される熱溶融性物質及び共融化剤が融解しない温度範囲で乾燥されなければならない。乾燥の手段としては熱風乾燥の他に赤外線、マイクロ波、高周波による熱源を利用した乾燥方法が使用できる。感熱性粘着剤層塗布液の塗布量は、乾燥塗布量で通常5〜30g/mが好ましく、5〜20g/mがより好ましい。前記感熱性粘着剤層塗布液の塗布量が5g/m未満であると、加熱による接着を行う際に十分な接着力が得られないことがあり、30g/mを超えると、経済性が劣ることとなり好ましくない。
【0038】
本発明において、前記感熱粘着層とアンダー層の間もしくは支持体とアンダー層の間に必要におうじて接着層を設けることができる。接着層は、少なくとも熱可塑性樹脂を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。接着層を設けることで前記感熱粘着層とアンダー層もしくは支持体とアンダー層の間の、層間の結着力が向上する。
本発明の感熱性粘着材料は、上記構成を備えることにより、層間の結着力を向上させ、剥離時に糊残りのないことを特徴としている。
【0039】
本発明の前記感熱性粘着材料は、支持体における感熱性粘着剤層とは反対側の面上に、記録層を設け、更に必要に応じて保護層やその他の層を設けてもよく、記録層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感熱記録層、熱溶融転写記録用インク受容層、電子写真用トナー受像層、ハロゲン化銀写真用記録層、及びインクジェット用インク受像層、などが好適に挙げられる。これらの中でも、前記記録層として、ロイコ染料と顕色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録用の感熱性粘着材料、又は前記記録層として、熱溶融転写記録用インク受容層を設けた熱転写記録用の感熱性粘着材料は、各種被着体、特にダンボール等の粗面被着体やポリオレフィンラップに対する粘着力が強く、低エネルギー熱活性化、かつ、耐ブロッキング性も良好であり、極めて有用である。感熱記録層において用いるロイコ染料(発色剤)は単独又は2種以上混合して適用されるが、このようなロイコ染料としては、この種の感熱記録材料に適用されている下記のようなものが任意に使用されるが、これだけに限定されるものではない。例えば、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系等の染料のロイコ化合物が好ましく用いられる。このようなロイコ染料の具体例としては、例えば、以下に示すようなものが挙げられる。
【0040】
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミンフタリド(別名:クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−3−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロルフルオラン、3−ジメチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジメチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンズフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−〔N−(3′−トリフルオルメチルフェニル)アミノ〕−6−ジエチルアミノフルオラン、2−〔3,6−ビス(ジエチルアミン)−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム〕、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−N−メチル−N−n−アミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、6′−クロロ−8′−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、6′−ブロモ−3′−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、3−(2′−ヒドロキシ−4′−ジメチルアミノフェニル)−3−(2′−メトキシ−5′−クロルフェニル)フタリド、3−(2′−ヒドロキシ−4′−ジメチルアミノフェニル)−3−(2′メトキシ−5′−ニトロフェニル)フタリド、3−(2′−メトキシ−4′−ジメチルアミノフェニル)−3−(2′−ヒドロキシ−4′−クロル−5′−メチルフェニル)フタリド、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−(2−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−イソブチル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−モルホリノ−7−(N−プロピル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−m−トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロロ−7−(N−ベンジル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(ジ−p−クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ピペリジノフルオラン、2−クロロ−3−(N−メチルトルイジノ)−7−(p−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−イソプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオランスピロ(9,3′)−6′−ジメチルアミノフタリド、3−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)−5,6−ベンゾ−7−α−ナフチルアミノ−4′−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4′,5′−ベンゾフルオラン、3−N−メチル−N−イソプロピル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2′,4′−ジメチルアニリノ)フルオラン等が挙げられる。
【0041】
また、感熱記録層で用いる顕色剤としては前記ロイコ染料を熱、溶媒下等で接触させ発色させる電子受容性の種々の化合物、又は酸化剤等が適用される。このようなものは従来公知であり、その具体例としては以下に示すようなものが挙げられるが、これだけに限定されるものではない。
4,4′−イソプロピリデンジフェノール、4,4′−イソプロピリデンビス(o−メチルフェノール)、4,4′−セカンダリーブチリデンビスフェノール、4,4′−イソプロピリデンビス(2−ターシャリ−ブチルフェノール)、p−ニトロ安息香酸亜鉛、1,3,5−トリス(4−ターシャリーブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、2,2−(3,4′−ジヒドロキシジフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、4−〔β−(p−メトキシフェノキシ)エトキシ〕サリチル酸、1,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘプタン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−5−オキサペンタン、フタル酸モノベンジルエステルモノカルシウム酸、4,4′−シクロヘキシリデンジフェノール、4,4′−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(6−ターシャリーブチル−2−メチル)フェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−ターシャリーブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4′−チオビス(6−ターシヤリブチル−2−メチル)フェノール、4,4′−ジフェノールスルホン、4−イソプロポキシ−4′−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ベンジロキシ−4′−ヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジフェノールスルホキシド、p−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、プロトカテキュ酸ベンジル、没食子酸ステアリル、没食子酸ラウリル、没食子酸オクチル、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−プロパン、N,N′−ジフェニルチオ尿素、N,N′−ジ(m−クロロフェニル)チオ尿素、サリチルアニリド、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジル、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジル、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、2,4′−ジフェノールスルホン、2,2′−ジアリル−4,4′−ジフェノールスルホン、3,4−ジヒドロキシフェニル−4′−メチルジフェニルスルホン、1−アセチルオキシ−2−ナフトエ酸亜鉛、2−アセチルオキシ−1−ナフトエ酸亜鉛、2−アセチルオキシ−3−ナフトエ酸亜鉛、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α−メチルトルエン、チオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、4,4′−チオビス(2−メチルフェノール)、4,4′−チオビス(2−クロロフェノール)等が挙げられる。
【0042】
感熱記録層で用いる顕色剤は、発色剤1質量部に対して、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜10質量部である。これら発色剤、顕色剤はともに単独もしくは二種以上混合して使用することができる。感熱記録層に用いるバインダー樹脂として好ましいものは分子内に水酸基又はカルボキシル基を有する樹脂である。このような樹脂には、例えばポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール等のポリビニルアセタール類、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらバインダー樹脂は単独又は2種以上混合して適用される。
【0043】
感熱記録層は、必要に応じて補助添加成分として、熱可融性物質を単独又は2種以上併用することができる。熱可融性物質としては、例えば高級脂肪酸又はそのエステル、アミドもしくは金属塩の他、各種ワックス類、芳香族カルボン酸とアミンとの縮合物、安息香酸フェニルエステル、高級直鎖グリコール、3,4−エポキシ−ヘキサヒドロフタル酸ジアルキル、高級ケトン、その他熱可融性有機化合物等の50〜200℃程度の融点を持つものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、感熱記録層には、ロイコ染料、顕色剤、バインダー樹脂とともに必要に応じこの種の感熱記録媒体に慣用される添加成分、例えば填料、界面活性剤、滑剤、圧力発色防止剤等を感熱記録層の透明性を損なわない範囲で併用することができる。
【0044】
この場合填料として、例えば炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、カオリン、タルク、表面処理されたカルシウムやシリカ等の無機系微粉末の他、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン/メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂、塩化ビニリデン系樹脂などの有機系の微粉末を挙げることができる。滑剤としては高級脂肪酸及びその金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、動物性、植物性、鉱物性又は石油系の各種ワックス類などが挙げられる。
感熱記録層は発色剤、顕色剤、バインダー樹脂をともに溶剤中に均一に分散もしくは溶解し、これを上質紙やフィルム等からなる支持体上に塗布、乾燥して作成するが、塗工方式は特に限定されない。感熱記録層塗布液の分散粒径は10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましい。感熱記録層の膜厚は感熱記録層の組成や熱粘着性ラベルの用途にもよるが1〜50μm程度、好ましくは3〜20μm程度である。また、本発明の感熱記録層の記録方法は使用目的によって熱ペン、サーマルヘッド、レーザー加熱等、特に限定されない。
【0045】
また、感熱記録層上に保護層を設けることもできる。本発明で使用する保護層は感熱記録層の透明性、耐薬品性、耐水性、耐摩擦性、耐光性及びサーマルヘッドに対する耐久性、耐腐蝕性、滑性等のいわゆるヘッドマッチング性の向上のため本発明の構成要素として重要である。この保護層には水溶性樹脂や疎水性樹脂を主体として形成された成膜や、紫外線硬化樹脂または電子線硬化樹脂を主体として形成された成膜等が包含される。
このような樹脂としては水溶性樹脂の他、水性エマルジョン、疎水性樹脂及び紫外線硬化樹脂、さらに電子線硬化樹脂が包含される。
【0046】
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体(メチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシセルロース等)、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、カルボキシ変性ポリエチレン、ポリビニルアルコール/アクリルアミドブロック共重合体、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0047】
水性エマルジョン用の樹脂または疎水性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、メチルセルロース、エチルセルロース、エチレン/酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。また、これらの樹脂とシリコンセグメントとの共重合体も好ましく用いられる。これらは単独もしくは混合して使用され、更に必要に応じて硬化剤を添加して樹脂を硬化させてもよい。
【0048】
紫外線硬化樹脂は紫外線照射によって重合反応を起こし、硬化して樹脂となるモノマー、オリゴマーあるいはプレポリマーであればその種類は特に限定されず、公知の種々のものが使用できる。電子線硬化型樹脂も特に種類は限定されないが、特に好ましい電子線硬化樹脂としては、ポリエステルを骨格とする5官能以上の分枝状分子構造を有する電子線硬化樹脂及びシリコン変性電子線硬化樹脂を主成分としたものである。
【0049】
保護層にはヘッドマッチングの向上のために無機及び/又は有機フィラーや滑剤を表面の平滑性を落とさない範囲で添加することができる。フィラーの粒径としては0.3μm以下が好ましい。また、フィラーとしては、好ましくは給油量30ml/100g以上、より好ましくは80ml/100g以上のものを選択することができる。
これらの無機及び/又は有機フィラーとしては、感熱記録媒体に慣用される顔料中の一種又は二種以上を選択することができる。例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、タルク、表面処理されたカルシウムやシリカ等の無機顔料の他、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン/メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂などの有機顔料を挙げることができる。また、滑剤としては感熱記録層の説明で挙げたものが使用できる。
【0050】
保護層の塗工方式は特に制限はなく、従来公知の方法で塗工することができる。好ましい保護層の厚さは0.1〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmである。保護層の厚さが薄すぎると、熱粘着性ラベルの保存性やヘッドマッチング等の保護層としての機能が不充分であり、厚すぎると感熱記録層の熱感度が低下するし、コスト的にも不利である。
前記支持体と前記感熱記録層との間には、更に必要に応じて、前記断熱層などを設けることもできる。これらの層を構成する成分としては、前記の中空粒子を含む顔料、結合剤、熱可融性物質、界面活性剤などを用いることができる。
【0051】
感熱性粘着材料は、その感熱性粘着剤層の熱活性化時(加熱時)の前又は後でカットされて好適に使用することができ、この場合、該感熱性粘着材料に、予め切れ目が形成されていてもよい。前記感熱性粘着材料を、ラベル、タグ等の様々な用途に好適に用いることができる点で有利である。本発明の感熱性粘着材料の形状としては、特に制限はなく、ラベル状、シート状、ラベルシート状、ロール状、などが好適に挙げられる。これらの中でも、利便性、保管場所、取り扱い性の点から円筒状の芯材に巻き取って、長尺状でロール状に巻かれて保管されるのが好ましい。
【0052】
感熱性粘着材料における前記感熱性粘着剤層を熱活性化する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱風による活性化方法、熱ロールによる活性化方法、サーマルヘッドによる活性化方法、などが挙げられる。これらの中でも、サーマルヘッドによる活性化方法が好ましく、本発明の感熱性粘着材料の熱活性化方法が特に好ましい。この場合、既存の感熱記録プリンタ−装置を用いて前記感熱粘着材料の両面を加熱することにより、前記感熱記録層への記録と、前記感熱性粘着剤層の熱活性化とを行うことができる点で有利である。
【0053】
感熱性粘着材料が貼付される被着体としては、特に制限はなく、目的に応じてその大きさ、形状、構造、材質等を適宜選択することができるが、前記材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、ナイロン等の樹脂板、SUS、アルミニウム等の金属板、封筒、ダンボール等の紙製品、ポリオレフィン製のラップ類、ポリ塩化ビニル製のラップ類、ポリエチレン製不織布(封筒等)、などが好適に挙げられる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これら実施例によって、何ら限定されるものではない。なお、以下に示す部及び%は、いずれも重量基準である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0055】
<実施例1>
(A液)染料分散液
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン 20部
ポリビニルアルコール10%水溶液 20部
水 60部
(B液)顕色剤分散液
4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン 10部
ポリビニルアルコール10%水溶液 25部
炭酸カルシウム 15部
水 50部
上記組成からなる混合物を、それぞれ平均粒子径が2.0μm以下となるようにサンドミルを用いて分散して(A液)及び(B液)を調整した。次に(A液)と(B液)の質量比が(A液):(B液)=1:8となるように混合攪拌して感熱記録層形成液を得た。
【0056】
保護層液
・水酸化アルミニウム分散液 40部
(固形分50%、平均体積粒径:1.0μm)
・ステアリン酸亜鉛(固形分30%、平均体積粒径:2.0μm) 5部
・ジアセトン基を有するポリビニルアルコール(固形分10%) 200部
(ジアセトンモノマー単位含有量4%、重合度1600、ケン化度98%;信越化学社製)
・アジピン酸ヒドラジド ADH(固形分10%;大塚化学株式会社) 10部
(固形分10%;大塚化学株式会社)
・水 43部
上記組成からなる混合物を混合し、保護層液を得た。
【0057】
坪量が約60g/mの上質紙(支持体)上に、ロイコ染料の乾燥付着重量が約0.6g/mになるように、記録層塗工液を塗布乾燥し、記録層を形成した。次いで、その上に乾燥付着重量が約3g/mになるように、保護層塗工液を塗布、乾燥し、保護層の平滑度が5000秒になるようにキャレンダー加工を行った。
【0058】
(C液)熱溶融性物質分散液
・トリフェニルホスフィン 30部
・30%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学製L−3266) 5部
・界面活性剤(日本乳化剤社製Newcol−290M) 0.2部
・水 65部
上記組成からなる混合物を、平均粒径が1.8μmとなるようにサンドミルを用いて分散して分散〔C液〕を得た。
【0059】
(D液)感熱性粘着剤層液
・熱可塑性樹脂 10部
2−エチルヘキシルアクリレート共重合体エマルジョン
(ガラス転移温度(Tg):−80℃、不揮発分50%)
・テルペン系粘着付与剤エマルジョン 7部
(荒川化学工業製、タマノルE−100、不揮発分50%)
・熱溶融性物質分散液(C液) 30部
上記組成からなる混合物を、攪拌分散して、感熱性粘着剤層液を調製した。
【0060】
(E液)炭酸カルシウム分散液
・炭酸カルシウム 30部
・30%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学製L−3266) 5部
・界面活性剤(日本乳化剤社製Newcol−290M) 0.2部
・水 65部
上記組成からなる混合物を、平均粒径が4.2μm、CV値が45%となるようにサンドミルを用いて分散して分散〔E液〕を得た。同様に平均粒径が2.5μm、CV値が30%となるようにサンドミルを用いて分散して分散〔F液〕を得た。
【0061】
(G液)シリカ分散液
・シリカ 30部
・30%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成化学製L−3266) 5部
・界面活性剤(日本乳化剤社製Newcol−290M) 0.2部
・水 65部
上記組成からなる混合物を、平均粒径が7.0μm、CV値が60%となるようにサンドミルを用いて分散して分散〔G液〕を得た。同様に平均粒径が1.0μm、CV値が30%となるようにサンドミルを用いて分散して分散〔H液〕を得た。
【0062】
塩化ナトリウム55gをイオン交換水160gに溶解し、アジピン酸−ジエタノールアミン縮合物1.0g、コロイダルシリカ20%水溶液25gを加えた後、硫酸でpHを3.8から4.2に調整し、均一に混合してこれを水相とする。アクリロニトリル45g、メタクリロニトリル16g、N−メチロールアクリルアミド5g、イソボニルメタクリレート23g、エチレングリコールジメタクリレート0.1g、アゾビスイソブチロニトリル0.3g、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)0.1g、イソブタン15gを混合、攪拌、溶解し、これを油相とする。水相と油相を混合し、ホモミキサーで2000rpmにて1分間攪拌して懸濁液とする。これをセパラブルフラスコに移して窒素置換をしてから、攪拌しつつ70℃で6時間その後90℃で14時間反応する。反応後冷却し、濾過してカプセル粒子を得る。次にこれを加熱による発泡を行い平均粒径が4.2μm、CV値が40%の中空粒子Aを形成した。
【0063】
(I液)アンダー液
・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体エマルジョン 9.6部
(ガラス転移温度(Tg):40℃、不揮発分50%)
・界面活性剤(エレメンティス ジャパン株式会社 ダプロW−77) 1.6部
・水 70部
上記組成からなる混合物を、攪拌して、アンダー液を調製した。
前記感熱発色層塗布済紙の裏面に、アンダー層を膜厚3μmとなるように塗布乾燥し、その後マット加工(表面に傷をつけて凹凸を設ける加工)を施し、その上に感熱性粘着剤層を膜厚8μmとなるように積層塗布乾燥した。膜厚は、塗工済みのサンプルに対して、ミクロトーム(ライカ社製RM2265)を用いて垂直に断面を出した。引き続き走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製SEM S3100)にて、断面に対して垂直の視野で厚みを測定した。
【0064】
<実施例2>
実施例1のアンダー液にシリカ分散Gを粒子:樹脂が1:0.3となるように調製した以外は同様にして感熱性粘着材料を得た。
<実施例3>
実施例2のアンダー液のシリカ分散液Gをシリカ分散液Hとなるように調製した以外は同様にして感熱性粘着材料を得た。
<実施例4>
実施例3のアンダー液に炭酸カルシウム分散液Eをシリカ分散液H:炭酸カルシウム分散液が1:3とし、粒子:樹脂が1:3となるように調製した以外は同様にして感熱性粘着材料を得た。
<実施例5>
実施例4のアンダー液の炭酸カルシウム分散液Eを炭酸カルシウム分散液Fとなるように調製した以外は同様にして感熱性粘着材料を得た。
<実施例6>
実施例4のアンダー液のシリカ分散液H:炭酸カルシウム分散液Eが1:3から1:2となるように調製した以外は同様にして感熱性粘着材料を得た。
<実施例7>
実施例4のアンダー液のシリカ分散液H:炭酸カルシウム分散液Eが1:3から1:1となるように調製した以外は同様にして感熱性粘着材料を得た。
<実施例8>
実施例7のアンダー液の粒子:樹脂が1:0.3から1:1となるように調製した以外は同様にして感熱性粘着材料を得た。
<実施例9>
実施例7のアンダー液の粒子:樹脂が1:0.3から1:4となるように調製した以外は同様にして感熱性粘着材料を得た。
<実施例10>
実施例8のアンダー液の熱可塑性樹脂のガラス転移点を40℃から−65℃の2−エチルヘキシルアクリレート共重合体エマルジョン(AP5570 固形分55%、ガラス転移点−65℃;昭和高分子社製)を用いた以外は同様にして感熱性粘着材料を得た。
<実施例11>
実施例10のアンダー液の炭酸カルシウム分散液Eに中空粒子Aを用いて調製した以外は同様にして感熱性粘着材料を得た。
<実施例12>
実施例10のアンダー層の膜厚を3μmから10μmとなるように塗布乾燥した以外は、同様にして感熱性粘着材料を得た。
<実施例13>
実施例10のアンダー層の膜厚を3μmから40μmとなるように塗布乾燥した以外は、同様にして感熱性粘着材料を得た。
<実施例14>
実施例13の支持体上の感熱形成層及び保護層を設けない以外は同様にして感熱粘着材料を得た。
<比較例1>
実施例1のアンダー層にマット加工を行わない以外は同様にして感熱粘着材料を得た。
<比較例2>
実施例1のアンダー層において平滑度が50秒となるようにマット加工を施した以外は同様にして感熱粘着材料を得た。
【0065】
続いて、これら実施例及び比較例で得られた熱粘着性ラベルについての評価を行った。結果を表1に示す。
[熱活性前の層間結着性(テープ結着性)]
各感熱粘着材料の感熱粘着層上にセロテープ(登録商標)を加圧2kgのゴムローラーで長手方向に貼り付け、剥離速度300mm/minの条件で剥離した時の、層間の結着性を下記結着性ランクにしたがって評価した。
◎:0%の界面破壊(剥がれなし)
○:熱活性層での層内破壊
△:熱活性層とアンダー層での界面破壊
×:100%界面破壊(層間での剥がれ)
[熱活性後の層間結着性]
塗工済みのサンプルを40mm×150mmの長方形にカットし、感熱印字装置(大倉電気株式会社製、TH−PMD)を用いてヘッド条件:エネルギー0.45mJ/dot、印字スピード:4inch/sec、プラテン圧:6kgf/lineの条件にて熱活性化させた。次いで、この活性化済みサンプルを被着体(Cライナーダンボール)に、加圧2kgのゴムローラーで長手方向に貼り付け、1日間保管後、22℃65%RHでの環境にて剥離角度180度、剥離速度300mm/minの条件で剥離させた時の、
被着体への糊残りの状態を下記結着性ランクにしたがって評価した。
〔結着性ランク〕
◎:0%の界面破壊(糊残りなし)
○:1〜39%の界面破壊(糊残りあり)
△:40〜99%の界面破壊(糊残りあり)
×:100%界面破壊(層間での剥がれ)
〔平滑度〕
各感熱性粘着材料の粘着アンダー面を王研式の平滑度で求めた。
【0066】
【表1】

【0067】
以上のように、実施例1〜14の感熱性粘着材料は支持体と、該支持体の一方の面上に少なくとも粘着アンダー層と熱可塑性樹脂及び加熱時に溶融する熱溶融性物質を主成分とした感熱性粘着剤層をこの順に設けた感熱性粘着ラベルにおいて、前記アンダー層の平滑度が100秒以上3500秒以下なので、比較例1〜2に比べ、活性前後で層間の結着力が強いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
粘着性を有する感熱記録用ラベルはPOS分野を代表として広い分野で使用されており、この感熱記録用ラベルの多くは感圧粘着剤層の上に剥離紙を貼り付けるものであるが、本発明の感熱性粘着材料は離型紙を剥離する手間が省けるだけでなく、離型紙そのものが不要であり、省エネにも適応する優れた製品である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特許第2683733号公報
【特許文献2】特開平10−52660号公報
【特許文献3】特開2006−111865号公報
【特許文献4】特開2008−229930号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体の一方の面上に少なくともアンダー層と熱可塑性樹脂及び加熱時に溶融する熱溶融性物質を主成分とした感熱性粘着剤層を順次設けた感熱性粘着ラベルにおいて、前記アンダー層の平滑度が100秒以上3500秒以下であることを特徴とする感熱性粘着材料。
【請求項2】
アンダー層に体積平均粒径が異なる2種類以上の粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載の感熱性粘着材料。
【請求項3】
体積平均粒径が異なる2種類以上の粒子が2.0μm以下の微小粒子と3.0μm〜6.0μmの粗大粒子であり、前記微小粒子と前記粗大粒子の質量比が1:2以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の感熱性粘着材料。
【請求項4】
粒子の体積平均粒子径のCV値が50%以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の感熱性粘着材料。
【請求項5】
粒子が中空粒子であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の感熱性粘着材料。
【請求項6】
アンダー層にガラス転移点(Tg)が30℃未満の熱可塑性樹脂を含有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感熱性粘着材料。
【請求項7】
アンダー層における粒子の総和と熱可塑性樹脂との混合質量比が1:0.5〜1:3.0であることを特徴とする請求項6に記載の感熱性粘着材料。
【請求項8】
アンダー層の厚みが5μm〜30μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の感熱性粘着材料。
【請求項9】
支持体の感熱性粘着剤層を有さない側の面上に記録層及び保護層が順次設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の感熱性粘着材料。
【請求項10】
記録層が感熱記録層、熱溶融転写記録用インク受容層、電子写真用トナー受像層、ハロゲン化銀写真用記録層、又はインクジェット用インク受像層のいずれかであることを特徴とする請求項9に記載の感熱性粘着材料。
【請求項11】
UV硬化性インクによって形成されたインク画像を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の感熱性粘着材料。
【請求項12】
記録層面には視覚情報を有するプレ印刷が施され、感熱性粘着剤層面にはセンシング機能を有するアイマーク印刷が施されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の感熱性粘着材料。
【請求項13】
支持体が合成紙又はプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の感熱性粘着材料。
【請求項14】
形状がラベル状、シート状、ラベルシート状、又はロール状のいずれかであることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の感熱性粘着材料。

【公開番号】特開2012−62377(P2012−62377A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206319(P2010−206319)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】