説明

感熱接着シート

【課題】
電解液と接液した状態でも被着体との良好な接着性を保持し、電解液を好適に封止できる感熱接着シートを提供する。
【解決手段】
二次電池の電解液封止に使用する感熱接着シートであって、
式(1)


(式(1)中、Rは二価のビスフェノール残基であり、Rは炭素原子数4〜12の二価の脂肪族炭化水素基を有するジオール残基を表わす。)
で表わされ、その重量平均分子量が3万〜20万であるエポキシ樹脂(A)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)及び硬化剤(C)を含有する感熱接着剤組成物から形成される感熱接着剤層を有し、前記感熱接着剤組成物に含まれる樹脂成分中のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)の含有量が10〜40質量%であることを特徴とする感熱接着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱接着シートに関する。詳しくはセパレータ間に電解液を封止する際に電解液の漏液が生じない、接着性と耐電解液性に優れる感熱接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型パソコンや携帯電話、電気自動車等の各種製品の電源としてリチウム二次電池が広く用いられている。こうした製品の使用範囲が広がるに従い、これらの電源となるリチウム二次電池(以下、単に電池ということがある)の性能と安全性に対する要求は高まっている。特に最近では、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウム二次電池に注目が集まっており、大出力を確保するために、複数の単電池層を直列に接続したラミネート型電池が提案されている。
【0003】
ラミネート型電池は、電解液を含む高分子電解質を電解質層に用いることで、優れたイオン伝導度、良好な電池のエネルギー密度や出力密度を有するものであるが、電解質部分から電解液が染み出した場合には、他の電池層の電極や電解質層と接触し、短絡を起こすという問題が生ずる。このため、電極の周囲に封止材を設け、短絡を防止する必要がある。
【0004】
電池に用いられる封止材としては、アルミニウムなど金属の外装体や電池ケースを熱接着により封止する接着剤が提案されている(特許文献1−2参照)。しかし、これらの接着剤は染み出してきたごくわずかな電解液が漏れないように封止するためのものであり、上記用途のように直接電解液を封止するには特性が不十分であった。また、色素増感型太陽電池の電解液を封止するためのシール剤として、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂を使用したシール剤が提案されている(特許文献3参照)。しかし、当該シール剤も二次電池用途への適用には耐電解液性の向上が求められており、また、接着剤による封止方法では、接着剤の塗布、硬化工程が必須となり、電池製造コストがかさむため、接着剤を用いない封止方法が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開平9−268277号公報
【特許文献2】特開2001−278956号公報
【特許文献3】特開2007−87684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電解液と接液した状態でも被着体との良好な接着性を保持し、電解液を好適に封止できる感熱接着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、二次電池の電解液封止において、式(1)
【0008】
【化1】

(式(1)中、Rは二価のビスフェノール残基であり、Rは炭素原子数4〜12の2価の脂肪族炭化水素基を有するジオール残基を表わす。)
で表わされ、その重量平均分子量が3万〜20万であるエポキシ樹脂(A)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)及び硬化剤(C)を含有する感熱接着剤組成物から形成される感熱接着剤層を有し、前記感熱接着剤組成物に含まれるエポキシ樹脂中のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)の含有量が10〜40重量%である感熱接着シートにより、ポリイミドフィルムに対する強固な接着性と、優れた耐電解液性を実現できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感熱接着シートは、電解液と接液した状態でも被着体との良好な接着力を保持でき、電解液を好適に封止できることから、リチウム二次電池の電極周囲の接着固定、特にセパレータ間に電解液を保持する際のセパレータ間の封止に好適に適用できる。また、本発明の感熱接着シートは、接着し難いポリイミドフィルムに対しても好適な接着力を有し、電解液接液後も好適に接着力を保持できることから、ポリイミドからなるセパレータを使用したリチウム二次電池におけるセパレータ間の封止に特に好適に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[感熱接着剤組成物]
本発明の感熱接着シートの感熱接着剤層を形成する感熱接着剤組成物は、式(1)
【0011】
【化2】

(式(1)中、Rは二価のビスフェノール残基であり、Rは炭素原子数4〜12の二価の脂肪族炭化水素基を有するジオール残基を表わす。]
で表わされ、その重量平均分子量が3万〜20万であるエポキシ樹脂(A)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)及び硬化剤(C)を含有し、前記感熱接着剤組成物に含まれるエポキシ樹脂中のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)の含有量が10〜40重量%である。上記式(1)で表わされるエポキシ樹脂を使用することで、ポリイミドフィルムへの強固な接着性が得られる。また、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の配合量をエポキシ樹脂の総量中の10〜40重量%使用することで、本発明の接着剤組成物の接着性を維持しながら耐電解液性を高めることができる。
【0012】
本発明に使用する上記式(1)で表わされるエポキシ樹脂(A)は、ビスフェノール骨格と脂肪族炭化水素基とを有することで、電解液への良好な耐性と接着性とを実現できる。
【0013】
上記式(1)中のRは、二価のビスフェノール残基を表わす。二価のビスフェノール残基を形成するビスフェノールとしては、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールSなどが挙げられる。これらビスフェノールは水素化されていても良い。また、テトラブロモビスフェノール等のハロゲンで置換されたビスフェノールであっても良い。なかでも、下式(2)で表わされる骨格が好ましい。
【0014】
【化3】

【0015】
なかでも、式(2)中のAが、−CH−であるビスフェノールF残基は、柔軟な骨格であることから、得られる感熱接着テープの接着性を特に向上させやすいため好ましい。
【0016】
上記式(1)中のRは、炭素原子数4〜12の二価の脂肪族炭化水素基を有するジオール残基であり、上記式(1)で表わされるエポキシ樹脂(A)は、主鎖骨格中に当該脂肪族炭化水素基を有することで好適な接着性を実現できる。炭素原子数4〜12の二価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、ブチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基等のアルキレン基を例示できる。
【0017】
式(1)中のRは、エポキシ樹脂(A)に特に柔軟性を与えやすいことから、下式(3)で表わされる直鎖脂肪族炭化水素基を有する二価のジオール残基であることが好ましく、式(3)中のmは4〜8であることが特に好ましい。
【0018】
【化4】

【0019】
上記式(1)で表わされるエポキシ樹脂(A)は、その重量平均分子量が3万〜20万であり、好ましくは3万〜10万である。当該分子量範囲とすることで、電解液への良好な耐性と、被着体、特にポリイミドへの良好な接着性を実現できる。
【0020】
また、本発明に使用するエポキシ樹脂(A)は、エポキシ当量が5000以上であることが好ましく、6000以上であることが特に好ましい。エポキシ当量を上記範囲とすることで、被着体、特にポリイミドへの接着性が特に良好となる。
【0021】
上記式(1)で表わされるエポキシ樹脂(A)の製造方法は特に制限されず、各種の製法を適宜選択すればよい。簡易な手法としては、例えば、炭素原子数4〜12の脂肪族炭化水素基を有するジオールのジグリシジルエーテルと、ビスフェノールとを重合させることで得ることができる。
【0022】
本発明においては、上記エポキシ樹脂(A)と併用して、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)を使用することで、得られる感熱接着シートの接着性を保持しつつ、好適な耐電解液性を付与できる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)の代表的なものとしてエピクロンN−680、N−695(DIC株式会社製)、YDCN−700−7、YDCN−704(新日鐵化学社製)などが挙げられる。
【0023】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のなかでも、下式(4)で表わされるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を特に好ましく使用できる。
【0024】
【化5】

【0025】
本発明の感熱接着テープに使用する感熱接着剤組成物は、上記式(1)で表わされるエポキシ樹脂(A)及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)を含有する。感熱接着剤組成物中には、式(1)で表わされるエポキシ樹脂(A)及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)以外のエポキシ樹脂や、他の樹脂を添加しても良いが、式(1)で表わされるエポキシ樹脂(A)及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)以外の樹脂成分が、感熱接着剤組成物における樹脂成分中20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。
【0026】
本発明に使用するクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)の含有量は、感熱接着剤組成物に含まれる樹脂成分中の10〜40質量%である。特に20〜30質量%であることが好ましい。含有量を上記範囲とすることで、接着剤組成物のポリイミドフィルムへの強固な接着性を維持しながら耐電解液性を高めることができる。
【0027】
また、上記式(1)で表わされるエポキシ樹脂(A)の含有量が、感熱接着剤組成物に含まれる樹脂成分中の60〜90質量%であることが、好適な接着性、特にポリイミドへの接着性を向上させやすいため好ましい。
【0028】
[硬化剤]
本発明の感熱接着剤組成物はエポキシ基と反応する官能基を有する硬化剤(C)を含有するが、当該硬化剤としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビフェニルフェノール樹脂等の種々の多価フェノール樹脂、種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂、および重質油類またはピッチ類、フェノール類およびホルムアルデヒド化合物を重縮合させて得られた変性フェノール樹脂等の各種のフェノール樹脂類、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸等の酸無水物類、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド等のアミン類等が挙げられる。
【0029】
硬化剤の含有量は、感熱接着剤組成物中に含有するエポキシ樹脂100質量部に対し、1〜60質量部、好ましくは5〜30重量部の範囲である。当該範囲とすることで、エポキシ樹脂の硬化収縮を生じさせず良好に硬化しやすくなり、好適な耐電解液性を得やすくなる。
【0030】
[硬化促進剤]
本発明の接着剤組成物には、硬化促進剤を併用する事もできる。硬化促進剤として、アミン化合物、イミダゾール類等が使用できる。
【0031】
硬化促進剤を使用する場合の使用量は、エポキシ樹脂100質量部に対し、0.1〜5.0重量部、好ましくは0.5〜3.0重量部の割合である。
【0032】
[溶媒]
本発明の感熱接着剤組成物に使用される溶剤は特に限定されるものではないが、通常塗料または接着剤に用いられている酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルケチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
【0033】
[添加剤]
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で添加材を含有してもよい。当該添加材としては、例えば、充填剤、軟化剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、無機フィラー、粘着付与樹脂、繊維類、可視用時間延長剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、増粘剤、可塑剤、顔料などの着色剤、充填剤などの添加剤を必要に応じて使用することが出来る。
【0034】
[感熱接着シート]
本発明の感熱接着シートは、上記接着剤組成物から形成される接着剤層のみからなる基材を有さない接着シートであっても、基材表面の少なくとも一方に上記接着剤組成物から形成される接着剤層が積層された接着シートであってもよい。基材を有さない接着シートは、シートの薄型化に適しているため好ましく使用できる。一方、基材を有する接着シートは、シートのコシや厚みの調整を容易に行うことができる。リチウム二次電池の電解液封止用途においては、特に基材を有さない感熱接着シートを好ましく使用できる。
【0035】
基材を有する感熱接着シートの場合には、基材の一面に接着剤層を有する片面接着シートであっても、基材の両面に接着剤層を有する両面接着シートであっても良い。いずれの場合においても、基材に積層する接着剤層は、基材表面の全面に積層しても良いし、一部でも良い。
【0036】
基材を有する感熱接着シートに使用する基材としては、フィルム基材などを適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0037】
また、フィルム基材には、接着剤層との密着性を向上させる目的で、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、コロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面処理を施すことができる。
【0038】
また、基材には、その他配合材料として帯電防止剤を添加し帯電防止機能を付与することができる。ノニオン系としてポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸グリセリンエステル、アルキルポリエチレンイミン等を挙げることができる。カチオン系としてアルキルアミン塩、アルキル第4級アンモニウム塩、アルキルイミダゾリン誘導体等を挙げることができる。またエチレンオキサイドを骨格に持つアクリレート化合物なども使用することができる。導電性高分子としてポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン及びこれらの誘導体を使用することができる。金属酸化物としてアンチモンドープ型酸化錫(ATO)、錫ドープ型酸化インジウム(ITO)、アルミニウムドープ型酸化亜鉛、アンチモン副酸化物などを使用することができる。またその他にリチウムイオンなどの金属イオンを混合するイオン伝導型の帯電防止剤も用いることができる。
【0039】
本発明の感熱接着シートは、厚さが5〜100μm、好ましくは10〜80μm、より好ましくは20〜50μmである。当該範囲の感熱接着シートを使用することで、接着力を低下させること無く、加熱圧着時の接着剤変形を少なくすることが容易になる。
【0040】
本発明の感熱接着シートは、一般的に使用されている方法で作成できる。例えば、フィルム基材または離型シート上に接着剤層を形成して製造することができる。具体的には、接着剤の組成物を基材フィルムに直接塗布し乾燥または硬化・重合するか、或いは、いったん離型シート上に塗布し、乾燥し、接着剤層を形成後、同様にして離型シート上に作成した接着剤層又は基材フィルムに貼り合わせる方法などにより製造できる。
【0041】
本発明の感熱接着シートを用いて固定する被着体の材質としては、特に制限無く用いることができる。例えば、樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ABSなどを用いることができる。また、樹脂中に各種添加剤、ビーズ、フレーク、不織布、フィルムなどを混入させることができる。耐熱性確保のため、ガラスフレークを樹脂中に混入させた材料は耐熱性の観点から好適に使用することが出来る。また、金属材料としては、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム含有合金、アルミニウム含有合金などが使用できる。
【0042】
本発明の感熱接着シートは電解液の封止用途で、高い耐電解液性が求められる箇所に利用することができる。特に、リチウム二次電池や太陽電池などの電解液の封止材として好適に利用することができる。
【0043】
セパレータ間で電解液を封止する用途については、片面に正極材層、他の面に負極材層を配した集電体を、電解液を含む電解質層を保持したセパレータではさみ、セパレータ同士をシール材で固定するラミネート型リチウム二次電池などが好ましく挙げられる。
【0044】
上記リチウム二次電池のセパレータとしては、ポリイミドフィルムを用いることが好ましい。セパレータに耐熱性のよいポリイミドを用いることで、シール材の加熱圧着時等のセパレータの熱変形を小さくすることができ、電池の耐久性を高めることができる。本発明の感熱接着シートは、ポリイミドに対する好適な接着性を有し、かつ電解液との接液後も好適にポリイミドへの接着性を保持できることから、ポリイミドを使用したセパレータ間に電解液を保持する際のセパレータ間の電解液封止用として、特に好適に適用できる。
また、リチウム二次電池の外装体として通常使用されるアルミニウムは絶縁性に劣るため、外装体には耐熱性と絶縁性に優れたポリイミドフィルムが用いられることがある。この場合、外装体の封止用途としても本発明の感熱接着シートが適用できる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例により本発明を具体的に説明する。
【0046】
(調整例1)
[エポキシ樹脂(a)の調整]
温度計、撹拌機、窒素ガス供給装置を取り付けたフラスコに1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル(DIC株式会社製:商品名EPICLON 726D、エポキシ当量124g/eq)1240gとビスフェノールF(水酸基当量100g/eq)972gとシクロヘキサノン660gを仕込み、窒素ガス雰囲気下140℃まで30分間要して昇温した後、49%水酸化ナトリウム水溶液0.5gを仕込んだ。その後、30分間要して150℃まで昇温し、さらに150℃で3時間反応させた。その後、150℃で減圧下、溶剤を除去し、エポキシ樹脂(a)を2190g得た。このエポキシ樹脂(a)のエポキシ当量は8240g/eq、重量平均分子量は53,000であった。
【0047】
(調整例2)
[エポキシ樹脂(b)の調整]
ビスフェノールF(水酸基当量100g/eq)972gを970gに変更した以外は樹脂(a)と同様の操作より、エポキシ樹脂(b)を2185g得た。このエポキシ樹脂Bのエポキシ当量は7700g/eq、重量平均分子量は52,000であった。
【0048】
(調整例3)
[エポキシ樹脂(c)の調整]
ビスフェノールF(水酸基当量100g/eq)972gを968gに変更した以外は樹脂(a)と同様の操作より、エポキシ樹脂(c)を2180g得た。このエポキシ樹脂(c)のエポキシ当量は6900g/eq、重量平均分子量は50,000であった。
【0049】
(調整例4)
[エポキシ樹脂(d)の調整]
ビスフェノールF(水酸基当量100g/eq)972gを900gに変更した以外は樹脂(a)と同様の操作より、エポキシ樹脂(d)を2120g得た。このエポキシ樹脂(d)のエポキシ当量は2140g/eq、重量平均分子量は14,000であった。
【0050】
上記調整例におけるエポキシ樹脂の重量平均分子量は、GPC測定装置として、商品名「HLC−8320GPC」(東ソー株式会社製)を用いて、ポリスチレン換算値により、次のGPC測定条件で測定した。
<GPC測定条件>
サンプル濃度:0.5重量%(テトラヒドロフラン溶液)
サンプル注入量:100μL
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流量(流速):1mL/min
カラム温度(測定温度):40℃
カラム(以下の順に通過):「TSKguardcolumnHXL−H/TSKgelGMHHR−H(20)/TSKgelGMHHR−H(20)」
【0051】
(実施例1〜4、比較例1〜6)
実施例1〜4、比較例1〜6の感熱接着シートを以下の方法で作成した。
【0052】
〔感熱接着シートの作製〕
エポキシ樹脂を表1に記載の配合比(表1中の配合量の数値は固形分換算した質量部を表す)にて配合し、メチルエチルケトンとトルエンが質量比で1:1である混合溶剤を用いて、組成分中の固形分量が35%となるように組成物を調整した。この組成物に、表1に記載の配合量にて、硬化剤、硬化促進剤を添加し、10分攪拌した後、1時間放置し泡抜けさせた。この感熱接着組成物を棒状の金属アプリケータを用いて、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ75μmのPETフィルムの剥離処理面上に乾燥後の厚さが30μmになるように塗工し、100℃の乾燥機に5分間投入し乾燥した後、シリコーン化合物で片面を剥離処理した38μmのPETフィルムを貼り合わせた。こうして厚さ30μmの感熱接着シートを得た。
【0053】
上記にて得られた感熱接着シートにつき、以下の評価方法に基づいて、接着強度を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0054】
〔初期接着強度評価〕
厚さ0.05mm、幅25mm、長さ50mmのポリイミドフィルム2枚に、幅20mm、長さ40mmの感熱接着シートを挟み込み、熱プレス条件150℃、10分、100N/cmで加熱圧着した。この試験片のポリイミドフィルム端部を引張速度50mm/分で引っ張り、Tの字形になる様に剥がして接着強度を測定した。
【0055】
〔DEC浸漬後の接着強度評価〕
厚さ0.05mm、幅25mm、長さ50mmのポリイミドフィルム2枚に、幅20mm、長さ40mmの感熱接着シートを挟み込み、熱プレス条件150℃、10分、100N/cmで加熱圧着した。この試験片を、室温および40℃のジエチルカーボネート電解液(DEC)中に、72時間および240時間投入し、それぞれ取り出してから室温30分放置後の試験片のポリイミドフィルム端部を引張速度50mm/分で引っ張り、Tの字形になる様に剥がして接着強度を測定した。
【0056】
【表1】

【0057】
表1中の略号の詳細は下記のとおりである。
エポキシ樹脂(a)〜(d):調整例1〜4にて調整したエポキシ樹脂(a)〜(d)
YX8040:三菱化学社製、水添ビスフェノールAグリシジルエーテル「YX8040」(エポキシ当量1010g/eq、重量平均分子量3,000)
N−680:DIC(株)社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「N−680」((4)で表わされるエポキシ樹脂、エポキシ当量210g/eq、式重量平均分子量2,000)
B−570−H:DIC(株)社製、酸無水物硬化剤「B−570−H」
キュアゾール2E4MZ:四国化成社製、イミダゾール型硬化促進剤「キュアゾール2E4MZ」
【0058】
上記表1のとおり、本願発明の実施例1〜4の感熱接着シートは、ポリイミドフィルムに対して強固な接着力を有し、かつDECに72時間および240時間浸漬させた後も接着力の低下がなく、優れた耐電解液性を有するものであった。一方、比較例1および4〜6の感熱接着シートは、ポリイミドフィルムに接着しなかった。また、比較例2〜3の熱接着シートは、ポリイミドフィルムに対して強固な接着力を有するものの、DECに240時間浸漬させた後に接着力が大幅に低下し、耐電解液性に劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の電解液封止に使用する感熱接着シートであって、
式(1)
【化1】

(式(1)中、Rは二価のビスフェノール残基であり、Rは炭素原子数4〜12の二価の脂肪族炭化水素基を有するジオール残基を表わす。)
で表わされ、その重量平均分子量が3万〜20万であるエポキシ樹脂(A)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)及び硬化剤(C)を含有する感熱接着剤組成物から形成される感熱接着剤層を有し、前記感熱接着剤組成物に含まれる樹脂成分中のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(B)の含有量が10〜40質量%であることを特徴とする感熱接着シート。
【請求項2】
セパレータ間で電解液を保持するラミネート型リチウム二次電池のセパレータ間の電解液封止に使用する請求項1に記載の感熱接着シート。
【請求項3】
前記式(1)で表わされるエポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が5000以上である請求項1又は2に記載の感熱接着シート。

【公開番号】特開2013−40271(P2013−40271A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177587(P2011−177587)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】