説明

感熱記録体およびその製造方法

【課題】光沢度と記録濃度が高く、記録画質と記録保存性に優れ、しかも記録面にひび割れが発生しない感熱記録体およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】支持体の一方の面に、中間層、電子供与性化合物および電子受容性化合物を含有する感熱記録層、水性樹脂を含有する保護層、並びに最外層をこの順に有する感熱記録体であって、中間層と最外層が紫外線または電子線硬化性樹脂に紫外線または電子線を照射して硬化された層であり、最外層が平滑な面を有する基材上から支持体上に転写された面を有し、保護層が重合度200〜600のポリビニルアルコールを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコ染料と呈色剤との熱による発色反応を利用した感熱記録体およびその製造方法に関し、特に光沢度と記録濃度が高く、記録画質と記録保存性に優れ、しかも記録面にひび割れが発生しない感熱記録体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロイコ染料と呈色剤との熱による発色反応を利用した感熱記録体はよく知られている。かかる感熱記録体は比較的安価であり、また記録機器がコンパクトで且つその保守も比較的容易であるため、ファクシミリや各種ラベル、その他の出力用記録媒体としてのみならず、超音波画像診断やX線画像診断等の医療診断装置のプリンターに使用される記録媒体としても広く使用されている。
【0003】
その中で、記録画像の均一性、高解像度が必要な医療診断装置のプリンターでは、複層構造を有する合成紙や、必要に応じて無機顔料を含有する二軸延伸した樹脂フィルムを支持体とする感熱記録体が使用されている。近年では、低濃度から高濃度に至る階調再現性に優れ、且つ銀塩写真に匹敵するような高画質及び高光沢の記録画像が得られる感熱記録体への要望が高まっている。
【0004】
このような感熱記録体としては、保護層の表面をキャスト面とする感熱記録体が提案されている(特許文献1参照)。保護層の表面をキャスト面とするには、フィルムの平滑な面にオーバーコート層を含む一部の層または全ての層を形成した第1部材と、第1部材に形成されなかった残りの層を形成した基材からなる第2部材とを積層した後、フィルムを剥離する方法が提案されている(特許文献2参照)。また、鏡面ドラム上に保護層および感熱記録層を設けた後、鏡面ドラム上から支持体上に保護層および感熱記録層を転写する方法が提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、このような平滑な面を有する基材上に層を形成する方法では、高平滑な基材上に塗布および乾燥して積層する過程において記録面にひび割れが発生し易く、光沢度が低下し、未記録部だけでなく記録部もひび割れて記録濃度と記録画質が劣るため、更なる改良が要望されている。また、記録保存性、特に可塑剤、油、水、溶剤等による退色や地肌カブリの問題があり、満足できるものが得られていない。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−205278号公報
【特許文献2】特開平11−321111号公報
【特許文献3】特開2002−234251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、光沢度と記録濃度が高く、記録画質と記録保存性に優れ、しかも記録面にひび割れが発生しない感熱記録体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来技術に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、最外層が紫外線または電子線硬化性樹脂に紫外線または電子線を照射して硬化された層であり、かつ平滑な面を有する基材上から支持体上に転写された面を有し、保護層が重合度200〜600のポリビニルアルコール(以下、特定PVAということがある)を含有することにより、上記問題点を解決するに至った。すなわち、本発明は下記の感熱記録体およびその製造方法に係る。
【0008】
項1:支持体の一方の面に、中間層、電子供与性化合物および電子受容性化合物を含有する感熱記録層、水性樹脂を含有する保護層、並びに最外層をこの順に有する感熱記録体であって、中間層と最外層が紫外線または電子線硬化性樹脂に紫外線または電子線を照射して硬化された層であり、最外層が平滑な面を有する基材上から支持体上に転写された面を有し、保護層が重合度200〜600のポリビニルアルコールを含有することを特徴とする感熱記録体。
【0009】
項2:支持体が合成紙、樹脂フィルムまたは樹脂フィルムと紙の積層体のいずれかであり、平滑な面を有する基材が樹脂フィルム、鏡面メッキされた金属製のドラムまたは無端ベルトのいずれかである項1に記載の感熱記録体。
【0010】
項3:最外層中の紫外線または電子線硬化性樹脂が水性樹脂である項1または2に記載の感熱記録体。
【0011】
項4:中間層と感熱記録層の間に水性樹脂を含有するバリア層を設けた項1〜3のいずれかに記載の感熱記録体。
【0012】
項5:支持体の一方の面に、中間層、電子供与性化合物および電子受容性化合物を含有する感熱記録層、水性樹脂を含有する保護層、並びに最外層をこの順に有する感熱記録体であって、中間層と最外層が紫外線または電子線硬化性樹脂に紫外線または電子線を照射して硬化された層であり、最外層が平滑な面を有する基材上から支持体上に転写された面を有し、保護層が重合度200〜600のポリビニルアルコールを含有する感熱記録体を製造する方法であって、あらかじめ平滑な面を有する基材上に、未硬化の最外層、保護層、感熱記録層、および必要に応じて水性樹脂を含有するバリア層をこの順に設け、未硬化の中間層を介して、支持体の一方の面と感熱記録層もしくはバリア層の表面を接合し、紫外線または電子線を照射して最外層および中間層を硬化し、平滑な面を有する基材の表面と最外層の間を剥離することを特徴とする感熱記録体の製造方法。
【0013】
項6:平滑な面を有する基材上に、少なくとも感熱記録層および保護層を同時に塗布して設ける項5に記載の感熱記録体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光沢度と記録濃度が高く、記録画質と記録保存性に優れ、しかも記録面にひび割れが発生しない感熱記録体およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に用いる支持体は、合成紙、樹脂フィルムまたは樹脂フィルムと紙の積層体のいずれかであることが好ましい。支持体としては、例えば、熱可塑性のポリオレフィン系樹脂と白色無機顔料を加熱混練し、ダイから押し出し、縦方向に延伸したものの両面にポリオレフィン系樹脂と白色無機顔料からなるフィルムを片面当たり1〜2層積層し、横方向に延伸して半透明化、或いは不透明化して製造される合成紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂単独もしくは混合物を加熱混練し、ダイから押し出し2軸延伸して得られた樹脂フィルム、これらの樹脂に白色無機顔料を混合し、2軸延伸した不透明フィルム、あるいは無延伸で得られた樹脂フィルムのほか、上質紙、中質紙、中性紙、再生紙、塗工紙等のパルプ繊維から製造された紙の一方の面または両面に、樹脂を被覆した積層体等が使用できる。かかる支持体の坪量としては、30〜200g/m程度が好ましい。
【0016】
本発明に用いる平滑な面を有する基材は、高光沢、高平滑な面を有するものが好ましく、平滑な面を有する基材の75度鏡面光沢度を90%以上とすることにより、光沢性がより優れた感熱記録体を得ることができる。また、基材表面に剥離剤が塗布されていることにより、剥離性を向上することができる。基材としては、例えば、ポリエステル系フィルム(PETフィルム)、ポリプロピレン系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリカーボネート系フィルムおよびナイロン系フィルムなどの樹脂フィルム、鏡面メッキされた金属製のドラムまたは無端ベルトなどが挙げられる。なかでも、樹脂フィルムが好ましく、その厚さとしては10〜500μm程度が好ましい。特に、乾燥時の伸縮の少ないポリエステル系フィルムがより好ましい。
【0017】
本発明における最外層は、紫外線または電子線硬化性樹脂に紫外線または電子線を照射して硬化された層であり、平滑な面を有する基材上から支持体上に転写された面を有している。これにより、光沢度と記録濃度が高く、記録画質と記録保存性に優れた感熱記録体が得られる。
【0018】
紫外線または電子線硬化性樹脂としては、例えば、以下のプレポリマーやモノマーが挙げられる。プレポリマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、飽和ポリエステル/スチレン、ポリエチレン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、ポリエン/チオール、ポリスチリルエチル(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート等が挙げられる。モノマーとしては、スチレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン等のビニルモノマー、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−デシルアクリレートイソボニルアクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の単官能モノマー、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAジエトキシジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能モノマー等が挙げられる。これらは、1種単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0019】
本発明では、最外層中の紫外線または電子線硬化性樹脂が水性樹脂であることが好ましい。水性樹脂としては、水分散性および水溶性のいずれの水性樹脂も使用することができる。これにより、平滑な面を有する基材上に最外層を塗布するに当たり、保護層や感熱記録層等との同時多層塗布が容易になり、生産性を向上することができる。ここで、水分散性または水溶性とは、水を媒体として沈殿を生じない状態であることを意味し、具体的には、水中で均一に乳化・分散されている状態、水中でミセルを形成している状態、水に溶解している状態などを意味する。
【0020】
水分散性の水性樹脂として使用する場合には、水を媒体とし、紫外線または電子線硬化性樹脂に乳化・分散剤を添加し、強制乳化することにより安定なエマルジョンの状態で用いればよい。乳化・分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレナルキル硫酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル等の陰イオン性界面活性剤等の一般に商品化されている種々の乳化・分散剤が挙げられる。これらは、乳化・分散する紫外線または電子線硬化性樹脂の種類によって、1種単独または2種以上を併用することができる。必要により上記以外の乳化・分散剤と混合して使用することもできる。
【0021】
乳化・分散剤の使用量は、最外層の全固形量に対し、通常0.5〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%の範囲である。0.5質量%以上とすることにより、安定なエマルジョンが得られ、30質量%を以下とすることにより、サーマルヘッドへのカス付着や保存性が改善される。
【0022】
水溶性の水性樹脂として使用する場合には、紫外線または電子線硬化性樹脂の構造中に、例えば、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、エチレンオキサイド基等の親水基を有し、カルボキシル基を有する場合はその基をアミンやアルカリ等で中和したものが挙げられる。
【0023】
紫外線を照射して紫外線または電子線硬化性樹脂を硬化する場合、光重合開始剤を含有させることにより硬化を促進させることができる。光重合開始剤は限定的でなく各種公知のものを使用できる。例えば、ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、カンファーキノン、アントラセン、ベンジル、フェニルメチルグリオキシレートなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、それぞれ1種単独または2種以上を組合せて使用できる。
【0024】
光重合開始剤の含有量は、紫外線または電子線硬化性樹脂100質量部に対して、0.05〜10質量部程度が好ましく、0.1〜5質量部程度がより好ましい。0.05質量部以上とすることにより、硬化を効果的に促進させることができる。一方、10質量部を超えると硬化性は飽和してしまうため、10質量部以下とすることにより、製造コストを抑えることができる。
【0025】
最外層は、塗布適性や記録時のスティッキング防止、ヘッド粕掻き取り性等のヘッドマッチング性を高める目的で、顔料、滑剤、ワックス、架橋剤、界面活性剤等の添加剤を含有することもできる。添加剤としては、例えば、カオリン、クレー、水酸化アルミニウム、焼成クレー、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪藻土、無定形シリカ、硫酸バリウム、タルク、スチレン樹脂フィラー、ナイロン樹脂フィラー、尿素・ホルマリン樹脂フィラー等の顔料類、アルキルリン酸塩、ステアリン酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の滑剤類、カルナウバロウ、パラフィンワックス等のワックス類、ホウ酸、ホウ砂、グリオキザール、ジアルデヒド澱粉等のジアルデヒド系化合物、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、メラミン樹脂、ジメチロールウレア化合物、アジピン酸ジヒドラジド等の架橋剤類、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、アルキルエチレンオキサイド等の界面活性剤、フッ素系界面活性剤、消泡剤、蛍光増白剤、着色染料等が挙げられる。
【0026】
最外層は、例えば水を媒体とし、水溶性または水分散性の紫外線または電子線硬化性樹脂、必要により光重合開始剤、顔料、滑剤、架橋剤、界面活性剤等の添加剤と共に混合撹拌することにより調製された最外層用塗液を、乾燥後の塗布量が0.5〜4g/m程度、好ましくは0.5〜2g/m程度となるよう、あらかじめ平滑な面を有する基材上に塗布および乾燥して形成される。0.5g/m以上とすることにより、バリア性が向上し、記録保存性を向上できる。4g/m以下とすることにより、記録感度と記録濃度を向上できる。
【0027】
本発明では、最外層が平滑な面を有する基材上から支持体上に転写された面を有する。これにより、光沢度の高い感熱記録体を得ることができる。
【0028】
平滑な面を有する基材上から支持体上に転写された最外層を設ける方法としては、(1)最外層を乾燥に至らない湿潤状態もしくは乾燥後に再湿潤した状態で平滑な面を有する基材表面と接合し、接合したまま乾燥し、乾燥後に平滑な面を有する基材より剥離する方法、(2)(a)あらかじめ平滑な面を有する基材上に設けた少なくとも最外層を、接着性を有する物質を介して、支持体の一方の面に設けた感熱記録層を含む層と接合し、平滑な面を有する基材より剥離する方法、(2)(b)あらかじめ平滑な面を有する基材上に設けた少なくとも最外層および感熱記録層を含む層を、接着性を有する物質を介して、支持体の一方の面と接合し、平滑な面を有する基材より剥離する方法が挙げられる。
【0029】
接着性を有する物質は、接合される層の表面および支持体の表面の少なくとも一方に塗布されるか、接合される層のいずれかに含有されていればよい。接着性を有する物質またはこれを含む層の乾燥が必要であれば、接合したまま乾燥し、乾燥後に最外層を平滑な面を有する基材より剥離すればよい。本発明における接着性を有する物質は、支持体から見て感熱記録層より近い側に塗布されるか、あるいは含有されることが、記録画質をより一層向上する観点から、好ましい。更に、本発明の感熱記録体では、接着性を有する物質を中間層中に樹脂として含有する態様が、本発明の効果を遺憾なく発揮することができるため、好ましい。これにより、少なくとも感熱記録層と保護層とを同時に塗布して生産性を格段に向上することができる。
【0030】
本発明における保護層は、重合度200〜600のポリビニルアルコールを含有する。これにより、記録面にひび割れが発生しないため、光沢度と記録濃度が高く、記録画質に優れた感熱記録体を得ることができる。重合度を200以上とすることにより、保護層の塗工適性を向上することができる。重合度が600を超えると、保護層が湿潤状態から乾燥状態に移行する間に、水分によって膨潤していた水性樹脂が乾燥収縮して感熱記録体の記録面にひび割れを引き起こすため、重合度を600以下とすることにより、記録面にひび割れが発生しない感熱記録体を得ることができる。なお、本発明でいう重合度とは、JIS K6726−1994に記載の方法で求めた平均重合度である。
【0031】
特定PVAとしては、特に限定されるものではないが、例えば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、ケイ素変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。なかでも、耐水性の観点からアセトアセチル変性ポリビニルアルコールが好ましい。特定PVAの含有量としては、保護層中の全固形量に対して20〜95質量%程度が好ましく、30〜95質量%がより好ましい。20質量%以上とすることにより、記録面のひび割れをより一層効果的に抑制することができる。95質量%以下とすることにより、保護層の塗工適性を向上することができる。
【0032】
保護層には、本発明の効果を損なわない限り、他の水性樹脂を含有することができる。他の水性樹脂としては、最外層の樹脂成分が感熱記録層に移行するのを防止するため、バリア性の高い水性樹脂が好ましい。これにより、最外層に含有される紫外線または電子線硬化性樹脂による感熱記録層の地肌カブリを効果的に防止できる。
【0033】
水性樹脂としては、水溶性樹脂および水分散性樹脂のいずれも使用できる。水溶性樹脂としては、例えば、澱粉類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビヤゴム、特定PVA以外のその他のポリビニルアルコール、ジイソブチレン・無水マレイン酸共重合体塩、スチレン・無水マレイン酸共重合体塩、エチレン・アクリル酸共重合体塩、スチレン・アクリル酸共重合体塩、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体塩、イソプロピレン・無水マレイン酸共重合体塩、ポリアクリルアマイド等が挙げられる。水分散性樹脂としては、例えば、酢酸ビニル系ラテックス、スチレン・ブタジエン系ラテックス、アクリル系ラテックス、ウレタン系ラテックス等が挙げられる。他の水性樹脂の占める割合としては、本発明の効果を損なわないためにも、特定PVAに対して50質量%以下とすることが好ましい。
【0034】
保護層は、例えば水を媒体とし、特定PVAを含む水性樹脂、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩等の添加剤とともに混合撹拌することにより調製された保護層用塗液を、乾燥後の塗布量が0.5〜4g/m程度、好ましくは0.5〜2g/m程度となるように、あらかじめ平滑な面を有する基材上に最外層、保護層の順に塗布および乾燥して形成される。保護層の塗布量が0.5g/m以上とすることによりバリア性が向上し、4g/m以下とすることにより記録感度と記録濃度を向上できる。
【0035】
本発明の感熱記録層は、加熱により記録画像を形成できるものであれがいかなるものであってもよく、発色成分として各種公知の電子供与性化合物と電子受容性化合物を含有することができる。また、必要に応じて、保存性改良剤、増感剤等を含有していてもよい。発色成分としては、例えば、ロイコ染料と呈色剤との組合せ、イミノ化合物とイソシアナート化合物との組合せ、長鎖脂肪酸金属塩と多価フェノールとの組合せ、鉄、コバルト、銅など遷移元素とキレート化合物との組合せ等が挙げられる。以下、記録感度及び記録濃度に優れた特性を有するロイコ染料と呈色剤との組合せについて詳細に述べる。
【0036】
ロイコ染料としては、例えば、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチル)アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものでなく、必要に応じて2種以上を併用することもできる。
【0037】
ロイコ染料の含有量は特に限定されないが、感熱記録層中の全固形量に対して5〜40質量%程度が好ましい。
【0038】
呈色剤としては、例えば、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,4−ビス〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、2,2’−〔4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル等のフェノール性化合物、N−p−トリルスルホニル−N’−フェニルウレア、4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(N−p−トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、N−(p−トリルスルホニル)−N’−p−ブトキシフェニルウレア等の分子内にスルホニル基とウレイド基を有する化合物、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸亜鉛、4−〔3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5−〔p−(2−(p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸亜鉛等の芳香族カルボン酸の亜鉛塩化合物等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものでなく、必要に応じて2種以上を併用することもできる。
【0039】
呈色剤の含有量は特に限定されず、使用するロイコ染料および呈色剤の種類に応じて適宜選択すればよく、通常はロイコ染料1質量部に対して1〜10質量部程度が好ましく、より好ましくは1〜5質量部程度である。
【0040】
感熱記録層は、例えば水を媒体とし、サンドミル、アトライター、ボールミル等の撹拌・粉砕機によりロイコ染料、呈色剤、必要により各種公知の保存性改良剤および増感剤、顔料、添加剤等を一緒に、または別々に微粉砕して得られた分散液と、接着剤を混合撹拌することにより調製された感熱記録層用塗液を、乾燥後の塗布量が3〜20g/m程度となるように、あらかじめ平滑な面を有する基材上に最外層、保護層、感熱記録層の順に塗布および乾燥して形成される。接着剤としては、例えば、保護層に含有する水性樹脂が挙げられる。接着剤の含有量は、感熱記録層中の全固形量に対して8〜35質量%程度が好ましい。
【0041】
本発明における中間層は、紫外線または電子線硬化性樹脂に紫外線または電子線を照射して硬化された層である。これにより、支持体との接着性に優れ、平滑な面を有する基材上から支持体上に転写された面を最外層に付与して光沢度の高い感熱記録体を得ることができる。紫外線または電子線硬化性樹脂をエマルジョンの形態で含有することもできるが、中間層を介して支持体側と平滑な面を有する基材側を接合した後に乾燥する必要がなく、支持体として透湿性の低い合成紙や樹脂フィルムを使用できるという観点から、無溶剤系の紫外線または電子線硬化性樹脂が好ましい。紫外線または電子線硬化性樹脂としては、最外層に使用するもののなかから適宜選択して使用することができる。
【0042】
中間層は、例えば紫外線または電子線硬化性樹脂、必要により光重合開始剤、顔料、添加剤等を一緒に、スリーロールミル、ツーロールミル、カウレスディゾルバー、ホモミキサー、サンドミル、ペイントコンディショナー及び超音波分散機等を使用して混合撹拌することにより得られた中間層用塗液を、乾燥後の塗布量が1〜6g/m程度、好ましくは1.5〜4.0g/m程度となるように、支持体の一方の面および平滑な面を有する基材側に設けた感熱記録層の表面もしくは必要に応じて設けた後述のバリア層の表面の少なくとも一方に塗布し、未硬化の中間層塗布面を介して、支持体側と平滑な面を有する基材側の表面を接合させ、紫外線または電子線を照射して、最外層とともに硬化される。
【0043】
紫外線を使用する場合、紫外線の光源としては、例えば、1〜50個の紫外線ランプ、キセノンランプ、タングステンランプ等が挙げられる。これにより、40〜240W/cm程度、好ましくは60〜180W/cm程度の強度を有する紫外線が照射できる。一方、電子線を使用する場合、照射する電子線の吸収線量は150kGy以下が好ましい。より好ましくは100kGy以下である。150kGyを越えるような過度の照射は、感熱記録体の変色や強度低下を引き起こす恐れがある。照射する電子線の下限は限定的でないが、所望の効果を得るうえで10kGy以上が好ましい。より好ましくは20kGy以上である。照射する際の加速電圧は30〜300kV程度が好ましく、70〜200kV程度がより好ましい。電子線の照射方式は、カーテンビーム方式、スキャニング方式、ブロードビーム方式等が利用できる。紫外線または電子線は、支持体または平滑な面を有する基材のいずれの側から照射してもよく、紫外線または電子線硬化性樹脂の種類や塗布量に応じて照射条件を適宜選択すればよい。
【0044】
本発明では、中間層と感熱記録層の間に水性樹脂を含有するバリア層を設けることができる。これにより、紫外線または電子線硬化性樹脂が感熱記録層に浸透して地肌カブリが発生したり、記録感度が低下したり、感熱記録層の保存性が低下するのを防止することができる。水性樹脂としては、バリア性を有する水性樹脂が好ましく、例えば、保護層に含有する水性樹脂が挙げられる。
【0045】
バリア層は、例えば水を媒体とし、水性樹脂、必要によりジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩などの界面活性剤を混合撹拌することにより調製されたバリア層用塗液を、乾燥後の塗布量が0.5〜5.0g/m程度、好ましくは0.5〜2.0g/m程度となるように、あらかじめ平滑な面を有する基材上に最外層、保護層、感熱記録層、バリア層の順に塗布および乾燥して形成される。
【0046】
上記の各塗液は、1層ずつ塗布および乾燥してもよいし、同一の塗液を2層以上に分けて塗布してもよい。また、2層以上を同時に塗布することもできる。塗布方法としては、例えばスロットダイ、スライドビード、カーテン、エアナイフ、ブレード、メイヤーバー、ロッド、ロールコーター等が用いられる。
【0047】
本発明では、生産性を向上する観点から、少なくとも感熱記録層および隣接する保護層を同時多層塗布する態様が好ましい。乾燥収縮による記録面のひび割れは、平滑な面を有する基材上に同時多層塗布および乾燥する過程で発生し易いが、感熱記録層に隣接する保護層が特定PVAを含有することにより、本発明の効果を遺憾なく発揮できる。同時多層塗布する方法としては、スライドダイ、多層スロットダイ等のビード塗布方法、またはスライドカーテン等のカーテン塗布方法が好ましく用いられる。
【0048】
また、同時多層塗布においては、各々の層のウェット塗布量が少なくても、多層を重ねて塗布することにより、均一な塗布面を得ることができ、より一層優れた記録画質を得ることができる。特に、最外層やバリア層は、感熱記録層に比較して少ない塗布量で効果が得られるため、感熱記録層および隣接する保護層と同時に塗布することにより、均一な塗布面を得ることができる。更に、各塗液の固形分濃度を高めることにより、乾燥負荷を軽減して生産性を向上することもできる。
【0049】
本発明の感熱記録体は、未記録部の像鮮明度(JIS K7105−1981に基づく)が75%(スリット幅2mmにおける値)以上であることが好ましい。像鮮明度は、記録面の光学的性質の一つであり、像鮮明度測定装置を用いて試料が反射する光を、移動する光学くしを通して測定し、計算によって求めるものである。未記録部の像鮮明度を75%以上とすることにより、記録画質をより一層向上できる。像鮮明度を80%以上とすることが、より好ましい。
【0050】
未記録部の像鮮明度を75%以上とすることは、種々の方法により行えるが、本発明では、感熱記録層に隣接する保護層が重合度200〜600のポリビニルアルコールを含有することにより、均一な保護層塗布面を形成し、記録面にひび割れを生じないため、像鮮明度を向上することができる。
【0051】
本発明の感熱記録体は、支持体の一方の面に、中間層、電子供与性化合物および電子受容性化合物を含有する感熱記録層、水性樹脂を含有する保護層、最外層をこの順に有する感熱記録体であって、中間層と最外層が紫外線または電子線硬化性樹脂に紫外線または電子線を照射して硬化された層であり、最外層が平滑な面を有する基材上から支持体上に転写された面を有し、保護層が重合度200〜600のポリビニルアルコールを含有する感熱記録体を製造する方法であって、あらかじめ平滑な面を有する基材上に、未硬化の最外層、保護層、感熱記録層、および必要に応じて水性樹脂を含有するバリア層をこの順に設け、未硬化の中間層を介して、支持体の一方の面と感熱記録層もしくはバリア層の表面を接合し、紫外線または電子線を照射して最外層および中間層を硬化し、平滑な面を有する基材の表面と最外層の間を剥離することを特徴とする方法により製造される。
【0052】
中間層を介して、支持体の一方の面と感熱記録層もしくはバリア層を接合する方法は特に限定されないが、金属ロールと弾性ロールで構成された加圧ニップに通して、密着させることが好ましい。その際、支持体側が金属ロール面に接し、平滑な面を有する基材側が弾性ロール面に接するのが好ましい。これにより、接着性を有する物質がより一層優れた投錨効果を発揮し、平滑な面を有する基材の表面と最外層の間を剥離することが容易となり、光沢度の高い感熱記録体を得ることができる。
【0053】
本発明に用いる弾性ロールの表面材質としては、例えばウレタンゴム、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)等が挙げられる。また、弾性ロールの表面を所望の表面粗さに仕上げることにより、ニップ時のエアーの巻き込みを抑制し、均一な中間層を設けることができる。弾性ロール表面の粗さは特に限定されるものではないが、Rmax10μm以下(JIS B0601に準じる)が好ましい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。また、平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置SALD2000(島津製作所社製)を用いて測定した。
【0055】
実施例1
・ロイコ染料分散液(A液)の調製
3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン20部、ポリビニルアルコールの10%水溶液10部、及び水20部からなる組成物をサンドミルで平均粒子径が1.0μmとなるように分散してA液を得た。
【0056】
・呈色剤分散液(B液)の調製
4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン50部、ポリビニルアルコールの10%水溶液20部、及び水60部からなる組成物をサンドミルで平均粒子径が1.2μmとなるように分散してB液を得た。
【0057】
・感熱記録層用塗液の調製
A液70部、B液75部、シリカ(商品名:ニップシールE−743、日本シリカ社製)の25%スラリー40部、ポリビニルアルコールの10%水溶液50部、スチレン・ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1571、固形分濃度48%、旭化成社製)30部、ステアリン酸アミド(商品名:ハイミクロンL−271、固形分濃度25%、中京油脂社製)20部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩の10%水溶液4部、及び水35部からなる組成物を混合攪拌して感熱記録層用塗液を得た。
【0058】
・保護層用塗液の調製
アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマーZ−100、重合度500、日本合成化学工業社製)の6%水溶液165部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩の10%水溶液5部からなる組成物を混合攪拌して保護層用塗液を得た。
【0059】
・最外層用塗液の調製
水性ウレタン系樹脂(商品名:ニッカコートUV−800、固形分濃度41%、日本化工塗料社製)140部、カオリン(商品名:UW−90、エンゲルハード社製)の60%スラリー65部、ステアリン酸亜鉛(商品名:ハイミクロンL−111、固形分濃度20%、中京油脂社製)25部、ステアリルリン酸エステルカリウム塩(商品名:ウーポール1800、固形分濃度35%、松本油脂製薬社製)2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩の10%水溶液1部、及び水250部からなる組成物を混合攪拌して最外層用塗液を得た。
【0060】
・中間層用塗液の調製
電子線硬化性樹脂としてε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのアクリレート(商品名:カヤラッドDPCA−60、日本化薬社製)80部とエチレンオキサイド変性の1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(商品名:カヤラッドR−167、日本化薬社製)20部をカウレスディゾルバーで混合攪拌して中間層用塗液を得た。
【0061】
・感熱記録体の作製
平滑な面を有する基材としてのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(商品名:テイジンテトロンフィルムS、厚さ25μm、帝人デュポンフィルム社製)上に、最外層用塗液、保護層用塗液、感熱記録層用塗液をこの順に、乾燥後の塗布量がそれぞれ、2.0g/m、1.5g/m、7.0g/mとなるように、スライドダイを用いて同時多層塗布および乾燥した。一方、支持体としての合成紙(商品名:ユポFPG−80、ユポ・コーポレーション社製)の一方の面に、中間層用塗液を硬化後の塗布量が3.0g/mとなるように、オフセットグラビアコーターにより塗布し、中間層塗布面を介して感熱記録層の表面と支持体の一方の面を接合し、支持体側からエレクトロカーテン型電子線加速器(ESI社製)により加速電圧175kV、吸収線量45kGyの電子線を照射して中間層と最外層を硬化させた後、PETフィルムの表面と最外層の間を剥離して感熱記録体を得た。
【0062】
実施例2
・バリア層用塗液の調製
部分鹸化ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217EE、クラレ社製)の8%水溶液250部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩の10%水溶液4部からなる組成物を混合攪拌してバリア層用塗液を得た。
【0063】
実施例1の感熱記録体の作製において、平滑な面を有する基材としてのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(商品名:テイジンテトロンフィルムS、厚さ25μm、帝人デュポンフィルム社製)上に最外層用塗液、保護層用塗液、感熱記録層用塗液および上記のバリア層用塗液をこの順に、乾燥後の塗布量がそれぞれ、2.0g/m、1.5g/m、7.0g/m、1.0g/mとなるように同時多層塗布および乾燥した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0064】
実施例3
実施例2の最外層用塗液の調製において、水性ウレタン系樹脂(商品名:ニッカコートUV−800、固形分濃度41%、日本化工塗料社製)140部に代えて、オリゴエステルアクリレート(商品名:アロニックスM−8060、東亜合成化学社製)の30%エマルジョン167部を用いた以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。
【0065】
実施例4
実施例1の保護層用塗液の調製に用いたポリビニルアルコールに代えて、部分鹸化ポリビニルアルコール(商品名:PVA203、重合度300、クラレ社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0066】
比較例1
実施例1の保護層用塗液の調製に用いたポリビニルアルコールに代えて、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマーZ−200、重合度1000、日本合成化学工業社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0067】
比較例2
実施例2の感熱記録体の作製において、平滑な面を有する基材としてのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(商品名:テイジンテトロンフィルムS、厚さ25μm、帝人デュポンフィルム社製)上に、下記の最外層用塗液、感熱記録層用塗液およびバリア層用塗液をこの順に、乾燥後の塗布量がそれぞれ、3.5g/m、7.0g/m、1.0g/mとなるように同時多層塗布および乾燥した以外は、実施例2と同様にして感熱記録体を得た。すなわち、最外層用塗液として、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマーZ−100、重合度500、日本合成化学社製)の12%水溶液330部、カオリン(商品名:UW−90、エンゲルハード社製)の60%スラリー85部、ステアリン酸亜鉛(商品名:ハイミクロンL−111、固形分濃度20%、中京油脂社製)25部、ステアリルリン酸エステルカリウム塩(商品名:ウーポール1800、固形分濃度35%、松本油脂製薬社製)2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩の10%水溶液3部、及び水200部からなる組成物を混合攪拌して用いた。
【0068】
かくして得られた感熱記録体について以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0069】
〔光沢度〕
75度および20度光沢度を光沢度計(商品名:GM−26D、村上色彩技術研究所)で測定した。
【0070】
〔記録濃度〕
感熱記録プリンター(商品名:UP−880、ソニー社製)で内蔵パターンの17階調を記録し、17階調濃度をマクベス濃度計(商品名:RD918、グレタグマクベス社製)で測定した。
【0071】
〔耐可塑剤性〕
記録濃度を測定し終えた感熱記録体を、2枚の塩化ビニルラップフィルムの間に挟み、40℃、24時間処理した後の記録濃度を測定した。
【0072】
〔記録面のひび割れ〕
感熱記録体の記録面(未記録部)のひび割れ程度をルーペにより目視評価した。
◎:ひび割れが全くない。
○:ひび割れが少しある。
△:ひび割れが多い。
×:ひび割れが非常に多い。
【0073】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の一方の面に、中間層、電子供与性化合物および電子受容性化合物を含有する感熱記録層、水性樹脂を含有する保護層、並びに最外層をこの順に有する感熱記録体であって、中間層と最外層が紫外線または電子線硬化性樹脂に紫外線または電子線を照射して硬化された層であり、最外層が平滑な面を有する基材上から支持体上に転写された面を有し、保護層が重合度200〜600のポリビニルアルコールを含有することを特徴とする感熱記録体。
【請求項2】
支持体が合成紙、樹脂フィルムまたは樹脂フィルムと紙の積層体のいずれかであり、平滑な面を有する基材が樹脂フィルム、鏡面メッキされた金属製のドラムまたは無端ベルトのいずれかである請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
最外層中の紫外線または電子線硬化性樹脂が水性樹脂である請求項1または2に記載の感熱記録体。
【請求項4】
中間層と感熱記録層の間に水性樹脂を含有するバリア層を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の感熱記録体。
【請求項5】
支持体の一方の面に、中間層、電子供与性化合物および電子受容性化合物を含有する感熱記録層、水性樹脂を含有する保護層、並びに最外層をこの順に有する感熱記録体であって、中間層と最外層が紫外線または電子線硬化性樹脂に紫外線または電子線を照射して硬化された層であり、最外層が平滑な面を有する基材上から支持体上に転写された面を有し、保護層が重合度200〜600のポリビニルアルコールを含有する感熱記録体を製造する方法であって、あらかじめ平滑な面を有する基材上に、未硬化の最外層、保護層、感熱記録層、および必要に応じて水性樹脂を含有するバリア層をこの順に設け、未硬化の中間層を介して、支持体の一方の面と感熱記録層もしくはバリア層の表面を接合し、紫外線または電子線を照射して最外層および中間層を硬化し、平滑な面を有する基材の表面と最外層の間を剥離することを特徴とする感熱記録体の製造方法。
【請求項6】
平滑な面を有する基材上に、少なくとも感熱記録層および保護層を同時に塗布して設ける請求項5に記載の感熱記録体の製造方法。