説明

感熱記録型磁気記録シート

【課題】磁気記録層の色落とブロッキングちを防止し、かつ、磁気記録層の耐水性を向上させる。
【解決手段】磁気記録層が(1)メタクリル酸(塩)(2)下記一般式(I)で示される単量体A(3)下記一般式(II)で示される単量体B(4)下記一般式(III)で示される単量体Cと、これらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体Dを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体の片面に磁気記録層が、他面に感熱記録層が設けられた感熱記録型磁気記録シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、鉄道の乗車券、定期券、回数券、駐車場の整理券等のチケット類に使用されている自動搬送形の磁気記録シートでは、紙、プラスチック及び合成紙等の支持体の片面に磁気記録層が設けられ、その他面に目視で視認できる記録層が設けられている。
【0003】
上記の記録材料には、目視で視認できる記録層として、無色ないし淡色の塩基性染料と反応して呈色しうる顕色剤を含有する感熱記録層が設けられたものがごく一般的である。このような感熱記録層がサーマルヘッド、熱ペン及びレーザー光等で加熱されることにより記録画像が形成される。
【0004】
上記の磁気記録層は強磁性体粉末と結着剤からなる。このような磁気記録シートは、基本的特性である磁気記録層への磁気情報の書き込み及び読み取りができることはもちろん、更に加工工程におけるスリットや断裁時に磁性層が容易に脱落せず、また支持体が折れ曲がっても簡単に割れが発生しないものでなければならない。従って、この裏面の磁気記録層では、強磁性体粉末が結着剤中に凝集することなく均等に分布しており、しかもしっかりと記録層内に固定され、かつ該記録層がしっかりと支持体に固着されていることが強く求められ、かつ、重要である。そのため、磁気記録層に用いられる結着剤には優れた結着性及び優れた柔軟性が要求される。
【0005】
このような磁気記録シートの用途は、鉄道の乗車券、定期券、回数券及び駐車場の整理券等のチケット類等である。これらの用途の中で特に雨の日の屋外の駐車場においては、駐車場の整理券が水に濡れ指で擦られることも間々あり、色落ちしたものが手を汚すこともある。又、夏場に乗車券が汗のかいた衣服のポケット等に入れられることも多い。そのような場合にも磁気記録層の塗層が色落ちしたものが衣類を汚すことがある。このような磁気記録層の色落ちを防止するため、使用される結着剤には上記の優れた結着性及び優れた柔軟性が強く求められるとともに、耐水性も強く求められる。
【0006】
通常、感熱記録型磁気記録シートは、製造工程でロール状に加工され使用される。このような場合には、支持体の両面に形成されている磁気記録層と感熱記録層とが互いに重なり、接触したまま長時間保管される。磁気記録層と感熱記録層が接触したまま長時間保管されるとブロッキングが発生する。ブロッキングが発生すると、感熱記録層が磁気記録層に転移するなどの致命的な問題が発生することも多い。このようなブロッキングは支持体の他面に水性樹脂を含有する感熱記録層が設けられている場合や、感熱記録層上に更に水溶性樹脂を含有する保護層が設けられている場合に顕著となる。更に、それらを高湿条件化で長時間放置すると、磁気記録層と感熱記録層自体がくっつき商品価値のないものとなる。
【0007】
磁性体の脱落や磁気記録層の割れを防ぐために磁気記録層に結着性や柔軟性に優れる結着剤を用いた場合、ブロッキングが一段と発生しやすくなる。従って、現状では磁性体の脱落や磁気記録層の割れを防止し、かつ、ブロッキングの発生を防止することは非常に困難である。従来、感熱記録層の上に保護層を設けた感熱記録型磁気記録シートにおいて保護層に特定の耐水化剤を含有させてブロッキングを防止する方法(例えば、特許文献1参照)、磁気記録層の結着剤として反応性乳化剤により乳化させた水系ラテックスを使用し、更に特定の耐水化剤を磁気記録層に含有させる方法(例えば、特許文献2参照)、磁気記録層の結着剤と感熱記録層の保護層にコアシェルタイプの共重合体エマルジョンもしくは反応性乳化剤により乳化させた水系ラテックスを使用する方法(例えば、特許文献3参照)及び磁気記録層の結着剤に完全水系でガラス転移点温度が40℃以上のポリエステル樹脂を使用する方法(例えば、特許文献4参照)等が提示されている。しかしながら、これらの方法では高温・高湿条件下で耐ブロッキング性が不十分であったり、磁気記録層が硬くなって磁気記録層が折れるなどの問題が発生する。また、磁気記録層の結着剤に、比較的柔らかい物を使用し、ブロッキング防止のため磁気記録層の上に比較的硬めの保護層を設ける提案がなされている(例えば、特許文献5参照)。この方法では磁気層上に保護層を設けるという工程が増えるし、保護層を設けることにより磁気記録層の読み取り出力が低下し、磁気記録情報が読みにくくなる。磁気記録層の読み取り出力の低下を防止するためには磁気記録層の塗り目方を増やす必要があるが、塗目方を増やすことはコストアップを招く。
【特許文献1】実公昭59−9999号公報
【特許文献2】特開平7−52541号公報
【特許文献3】特開平8−244348号公報
【特許文献4】特開2002−269722号公報
【特許文献5】特開2001−155323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明目的は、読取出力、出力変動及び出力波形等の磁気特性並びに減感性及び再発色性等の感熱特性を良好に保持したまま、磁気記録層と感熱記録層のブロッキング及び色落ちを防止し、かつ、磁気記録層の耐水性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、支持体上に、磁性体粉末と水性結着剤及び増粘剤を主成分とする磁気記録層を設け、もう一方の面にロイコ染料等の染料及び顕色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録型磁気記録シートにおいて、該記録層中の増粘剤が単量体合計100質量部中、(1)メタクリル酸(塩)を25〜90質量部、(2)下記一般式(I)で示される単量体Aを1〜60質量部、(3)下記一般式(II)で示される単量体Bを1〜30質量部、(4)下記一般式(III)で示される単量体Cを1〜60質量部、これらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体Dを0〜30質量部からなり、単量体D/単量体Cの質量比が0.5未満である重合体を含有し、水酸化ナトリウムで完全中和して使用する該増粘剤の2質量%水性液の25℃における粘度が50〜10,000mPa・sであること特徴とする感熱記録型磁気記録シートにより解決される。
【0010】
【化1】

【0011】
式I中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立にHまたはCH3であり、R4は炭素数8〜20のアルキルフェニル基、フェニルアルキル基またはアルキル基であり、nは3〜50である。
【0012】
【化2】

【0013】
式II中、R5、R6及びR7はそれぞれ独立にHまたはCH3であり、R8は炭素数1〜4のアルキル基であり、mは3〜100である。
【0014】
【化3】

【0015】
式III中、R9はHまたはCH3であり、R10は炭素数1〜2のアルキル基である。
【0016】
また、重合体の形態がエマルジョンである増粘剤を用いたり、エマルジョンがアニオン性乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート塩、モノ、ジ、またはトリポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、モノ、ジ、またはトリポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩及びポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルサルフェート塩からなる群より選ばれた1種または2種以上及び/または非イオン性乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルからなる群より選ばれた1種または2種以上を単量体合計100質量部に対し1〜25質量部を使用し、乳化重合した増粘剤を用いることが好ましい。
【0017】
更に、増粘剤を、磁性体粉末と水性結着剤を含有する磁気記録層用塗料に、磁性体粉末100質量部に対して0.5から1.5質量部含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、読取出力、出力変動及び出力波形等の磁気特性並びに減感性及び再発色性等の感熱特性を良好に保持したまま、磁気記録層の剥離、割れ及び色落ちを防止し、磁気記録層と感熱記録層のブロッキングを防止し、かつ、磁気記録層の耐水性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明における感熱記録型磁気記録シートは、支持体の片面に磁気記録層を設けたものである。磁気記録層は磁性体粉末と水性結着剤を主成分とし、増粘剤及びその他必要に応じて消泡剤、硬化剤、浸透剤、撥水剤、耐水化剤、カーボンブラック等の着色顔料、分散剤等の添加剤を含有することができる。磁性体粉末としては、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、Co−γ−Fe23及びγ−Fe23等の公知のものをそのまま使用できるが、磁気記録情報が通常の磁石で消去されないためには194〜398KA/mのバリウムフェライト及びストロンチウムフェライトが多く使用される。
【0020】
本発明の感熱記録型磁気記録シートに係る増粘剤には、メタクリル酸(塩)と上記一般式(I)、(II)、(III)の単量体及びその他のエチレン性不飽和単量体との共重合体であるアクリル系変性ポリマーを含有する。
【0021】
本発明に使用する上記一般式(I)で示される単量体Aの例としては、アルキルフェニル基の炭素数が8〜20のアルキルフェノキシポリオキシアルキレングリコール(アルキレンオキサイド付加モル数3〜50)の(メタ)アクリル酸エステル、フェニルアルキル基の炭素数が8〜20フェニルアルコキシポリオキシアルキレングリコール(アルキレンオキサイド付加モル数3〜50)の(メタ)アクリル酸エステル、またはアルキル基の炭素数が8〜20のアルコキシポリオキシアルキレングリコール(アルキレンオキサイド付加モル数3〜50)の(メタ)アクリル酸エステルである。
また、単量体Aにおけるアルキレンオキサイドに係るR2及びR3はそれぞれ独立にHまたはメチル基であるが、好ましくはR2及びR3がHまたはR2及びR3はいずれか一方のみがメチル基であって、エチレンオキサイドの付加モル数n1とプロピレンオキサイドの付加モル数n2がn1<n2、かつn1は0以上の整数である。
【0022】
本発明に係る上記一般式(II)で示される単量体Bの例としては、アルキル基の炭素数が1〜4のアルコキシポリオキシアルキレングリコール(アルキレンオキサイド付加モル数m=3〜100)(メタ)アクリル酸エステルであり、さらに詳細には一般式(II)中、mが3〜100であるアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。これらを単独あるいは2種以上使用することができる。一般式(II)中、R8の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基などが挙げられる。
また、単量体Bにおけるアルキレンオキサイドに係るR6及びR7はそれぞれ独立にHまたはメチル基であるが、好ましくはR6及びR7がHまたはR6及びR7はいずれか一方のみがメチル基であって、エチレングリコールの付加モル数m1とプロピレングリコールの付加モル数m2の関係がm1>m2、m1は2以上の整数である(メタ)アクリル酸エステルである。
【0023】
本発明に係る上記一般式(III)で示される単量体Cの例としては、R10が炭素数1〜2のアルキル基である(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルである。
【0024】
本発明に使用する共重合可能なエチレン性不飽和単量体Dの具体例として、特に好ましくは(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸デシル及び(メタ)アクリル酸ラウリルからなる炭素数8〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0025】
本発明に使用するメタクリル酸(塩)、単量体A、単量体B、単量体C及び単量体Dの混合比率は、単量体合計100質量部中、メタクリル酸(塩)が25〜90質量部、単量体Aが1〜60質量部、単量体Bが1〜30質量部、単量体Cが1〜60質量部及び単量体Dが0〜30質量部である。単量体D/単量体Cの重合比は0.5未満である。好ましくはメタクリル酸(塩)が30〜80質量部、単量体Aが5〜50質量部、単量体Bが5〜20質量部、単量体Cが5〜50質量部、かつ単量体D/単量体Cの重合比は0.3未満である。
【0026】
メタクリル酸(塩)が25質量部未満では保水性が劣り、90質量部を超えると粘度が高くなり、何れも塗工安定性に欠ける。単量体A及び単量体Bが1質量部未満では、保水性が劣り、単量体Aでは60質量部を超える、また単量体Bにおいては30質量部を超えると粘度が高くなり、何れも塗工安定性に欠ける。単量体Cが1質量部未満では乳化重合が困難であり、凝集物が発生し、60質量部を超えるとエマルジョンの機械的安定性に欠ける。単量体Dが30質量部を越える、或いは単量体D/単量体Cの重合比が0.5を越えると、何れも粘度が低くなり、保水性が劣り、塗工安定性に欠ける。
【0027】
本発明に係る上記重合体を含む増粘剤の粘度は、水酸化ナトリウムで完全中和した場合の25℃、2質量%水性液において、50〜10,000mPa・sである。この場合の粘度が50mPa・s未満であると、保水性が劣り、塗工安定性特に磁気特性の悪化をきたす。一方、粘度が10,000mPa・sを超えると、保水性は満足するが、塗液調製及び塗工安定性に欠ける。
【0028】
本発明に係る増粘剤に使用するアクリル系変性ポリマーの添加量は、水性結着剤100質量部に対し0.5〜1.5質量部が好ましい。その添加量が0.5質量部未満であると保水性が劣り、塗工安定性に欠け、磁気特性も悪化する場合がある。一方、その添加量が1.5質量部を越えると塗液の脱泡効果が極めて少なく、均一な塗層が得られないし、磁気特性も悪化する場合がある。
【0029】
磁気記録層の水性結着剤としては、酸化デンプン、エーテル化デンプン等のデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド等の水性結着剤、ポリウレタン系、塩化ビニル系、ポリアクリル系、スチレンブタジエン系等の各種ラテックスが挙げられる。これらの中から1種または2種以上が適宜選択して使用される。水性結着剤の添加量は、磁性体粉末100質量部に対し20〜40質量部である。
【0030】
本発明の磁気記録層用の磁気塗料は、リバースコーター、ロッドコーター、ブレードコーター、グラビアコーター及びカーテンコーター等により支持体に塗布、または印刷される。塗布又は印刷後、未乾燥のまま、直ちに配向処理され、乾燥され磁気記録層が形成される。乾燥後の塗布量は、記録の書き込み易さの点及び書き込まれた情報の読み取り易さの点から、20〜60g/m2、特に25〜50g/m2が好ましい。
【0031】
本発明における支持体の他面に設けられる感熱発色層で代表的なものとして、無色ないしは淡色の塩基性染料、顕色剤及び水性結着剤から主として構成されているものが例示される。これらの塩基性染料、顕色剤及び水性結着剤としては、感熱記録材料及び感圧記録材料で公知のものを使用できる。
【0032】
塩基性染料としては、一般に感熱記録材料や感圧記録材料に用いられているものに代表されるが、例えば3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−エトキシプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−4−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチル)アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチル)アニリノフルオラン等フルオラン系のロイコ染料等が例示される。
【0033】
顕色剤としては、活性白土、ゼオライト、ベントナイト等の粘度鉱物、4−フェニルフェノール、4−t−ブチルフェノール、4−ヒドロキシアセトフェノン、2,2′−ジヒドロキシジフェニル、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′エチレンビス(2−メチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、
【0034】
4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−シクロヘキシビス(2−イソプロピルフェノール)、4,4′−ジヒドロキシジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロピルオキシフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−n−プロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンジルオキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3クロロ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4ビス(フェニルスルホニル)フェノール、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4′−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2′−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)ジエチルエーテル、1,7−ジ(4−ヒドロキシジヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘプタン、
【0035】
4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、2,2′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸エステル類、没食子酸アルキルエステル類、サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリド、ノボラック型フェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂等のフェノール性化合物、4−ヒドロキシ安息香酸エチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸ブチル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸クロロベンジル等のヒドロキシ安息香酸エステル、安息香酸、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−シクロヘキシルサリチル酸、5−シクロヘキシルサリチル酸、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−t−ノニルサリチル酸、3,5−ジ−ドデシルサリチル酸、3−メチル−5−t−ドデシルサリチル酸、3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、3−メチル−5−(α−ジメチルベンジル)サリチル酸、4−n−オクチルオキシカルボニルアミノサリチル酸、4−{2−(4−メトキシフェノキシ)エトキシ}サリチル酸、酒石酸、ホウ酸、クエン酸、ステアリン酸等の有機酸、或いはこれらの亜鉛、ニッケル、アルミニウム、カルシウム等の金属塩、ビス{4−(4−メチルフェニル)スルホニルアミノカルボニルアミノフェニル}メタン等の尿素誘導体、チオ尿素誘導体等が例示される。
【0036】
画像保存性、特に、耐水画像保存性を向上させるために、感熱記録層に1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1−ジ(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)ブタン、及び1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン等を添加することができる。その添加量は顕色剤に対して、5〜50質量%が好ましい。
【0037】
感熱記録層の結着剤としては、ポリビニルアルコール及びその誘導体、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム等の水溶性高分子の他、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート等の水性エマルジョン等が例示される。
【0038】
必要に応じ、感熱記録層中に、感度向上剤として、熱可融性物質であるステアリン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アミド類、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類を、更に、顔料、界面活性剤、滑剤、圧力防止剤等を使用することも可能である。
【0039】
顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、表面処理された炭酸カルシウムやシリカ等の無機系微粉末のほか、尿素/ホルマリン樹脂、スチレン/メタクリル酸共重合体、ポリスチレン等の有機系の微粉末を挙げることができる。なかでも吸油性、ステイッキング、カス、サーマルヘッドの耐摩耗性の観点から、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、尿素/ホルマリン樹脂、微粉末シリカが特に好ましい。滑剤として、高級脂肪酸及びその金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、動物性、植物性、鉱物性又は石油系の各種ワックス類等が例示される。
【0040】
本発明では感熱記録層を保護するために保護層を一層もしくは複数層設けることができる。その保護層の中で最上層のものは、磁気記録層との耐ブロッキング性及び皮膜性の観点から限定される。最上層の保護層を形成する物質は、水に溶解しないキトサン及びポリビニルアルコールである。そのポリビニルアルコールとしては完全鹸化ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシ変成ポリビニルアルコール及びスルホン酸変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール等が例示される。最上層でキトサン及びポリビニルアルコールと併用される物質及び最上層以外の保護層を形成する物質として、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、カゼイン、アラビアゴム、酸化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、スチレン/ブタジエン共重合体エマルジョン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、メタクリレート/ブタジエン共重合体、スチレン/アクリル共重合体エマルジョン等の水溶性高分子又は水性エマルジョン等が例示される。尚、保護層にも、上記した顔料や滑剤等を用いることができる。更に、必要に応じて支持体と感熱記録層の間に中間層を設けることも可能である。
【0041】
保護層中には、磁気記録層と感熱記録層のブロッキングを防止する点から、グリオキザール、メチロールメラミン、過酸化カリ、過硫酸ソーダ、過硫酸アンモニウム等の耐水化剤を含有させることが好ましい。更に、必要に応じて、保護層中にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステル・ナトリウム塩、アルギン酸塩、脂肪酸金属塩等の界面活性剤(分散剤、湿潤剤として)、ベンゾフェノン系及びトリアゾール系等の紫外線吸収剤、消泡剤、蛍光染料、着色染料等の各種助剤等を添加することができる。
【0042】
本発明の磁気記録シートにおいて、支持体としては紙が一般的であるが、樹脂フィルム、合成紙等を用いることも可能である。これら支持体上に設ける感熱記録層及びオーバーコート層の塗工に用いる装置としては、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ロッドコーター、カーテンコーター等のコーターヘッドを用いる事ができる。
【0043】
更に、塗工したものの表面平滑性を改良するためにマシンカレンダー、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、ブラッシング等の装置を利用する事ができる。また、中間層を設ける場合の塗工量は特に限定されないが、3〜20g/m2が好ましく、特に5〜10g/m2が好ましい。感熱記録層の塗工量も特に限定されないが、通常3〜15g/m2、好ましくは4〜10g/m2である。保護層の塗工量は、可塑剤、有機溶剤等各種薬品類による地肌部及び発色部の変色及び退色のないことが強く求められるため、1〜7g/m2が好ましく、特に1.5〜3g/m2が好ましい。
【実施例】
【0044】
以下において本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これによって本発明が特に限定されるものではない。尚、以下の配合において示す部及び%は何れも質量基準である。
【0045】
実施例1
[30%白色エマルジョンの増粘剤Aの合成]
水 300部
メタクリル酸 82.3部
ラウリルフェノキシポリプロピレングリコール(プロピレンオキサイド10モル付加)
メタクリル酸エステル 21.6部
エトキシポリオキシエチレン・プロピレングリコール(エチレンオキサイド付30モル付加・プロピレンオキサイド10モル付加)メタクリル酸エステル 21.6部
メタクリル酸メチル 9.4部
ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド20モル付加)ノニルプロペニルフェニルエーテルエーテルサルフェートナトリウム塩 1部
ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド25モル付加)オクチルエーテルサルフェートナトリウム塩 14部
上記配合を反応容器に投入し、攪拌しながら過硫酸カリウム0.2%水溶液50部を滴下、反応、熟成、冷却して30%白色エマルジョン増粘剤Aを得た。
このエマルジョン増粘剤Aを水酸化ナトリウムでpH9に調節した。25℃におけるウベローデ粘度計を用いて測定した相対粘度は3,600mPa・sであった。
【0046】
[磁気記録層塗液の調製]
[B液の調製]
水 475部
40%ポリカルボン酸高分子界面活性剤(花王製、ポイズ520) 25部
バリウムフェライト(戸田工業製、MC−127) 500部
以上の組成からなる液をサンドグラインダーで平均粒径4μmになるように分散し、バリウムフェライト分散液Bを調製した。
[C液の調製]
B液 1000部
40%ステアリン酸亜鉛分散液 100部
35%カーボンブラック分散液 110部
A液 15部
水 150部
以上の組成からなる液を混合攪拌させて磁気記録層塗液C液を調製した。このC液において、強磁性体であるバリウムフェライト100部に対し、pH9に調節した増粘剤は0.9部である。この磁気記録層塗液を坪量157g/m2の上質紙の片面に乾燥塗布量が35g/m2となるように塗布し、磁場配向後に乾燥、スーパーカレンダー仕上げを行って磁気記録シートを得た。
【0047】
[感熱記録層塗液の調製]
[D液の調製]
10%スルホン酸変性ポリビニルアルコール溶液(日本合成化学工業社製、ゴーセランL3266) 100部
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン 100部
水 75部
D液をダイノミル(シンマルエンタープライゼス製)を用いて体積平均粒径1.5μmになるように粉砕した。
[E液の調製]
10%スルホン酸変性ポリビニルアルコール溶液(日本合成化学工業社製、ゴーセランL3266) 90部
2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン 100部
2−ベンジルオキシナフタレン 40部
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン 40部
水 270部
E液をダイノミル(シンマルエンタープライゼス製)を用いて体積平均粒径1.5μmになるように粉砕した。
[F液の調製]
下記内容からなる混合物を、混合攪拌させて感熱記録層塗液F液を調製した。
40%炭酸カルシウム分散液 125部
D液 25部
E液 360部
10%完全鹸化ポリビニルアルコール水溶液 150部
31%アクリル系共重合体(サイデン化学製、サイビノールEK106) 25部
50%ステアリン酸亜鉛分散体 35部
水 150部
感熱記録層塗液F液を、支持体の、磁気記録層が設けられた面の反対面に、乾燥塗布量が8.5g/m2となるように塗布乾燥して感熱記録層を設けた後に、更にベック平滑度が150〜200秒となるようにカレンダー処理をして、感熱記録型磁気記録シートを得た。
【0048】
実施例2
[30%白色エマルジョンの増粘剤Gの合成]
水 300部
メタクリル酸 71.4部
ノニルフェノキシポリエチレン・プロピレングリコール(エチレンオキサイド5モル付加・プロピレンオキサイド15モル付加)メタクリル酸エステル 13.7部
メトキシポリオキシエチレングリコール(エチレンオキサイド付25モル付加)メタクリル酸エステル 11部
アクリル酸エチル 19.3部
メタクリル酸メチル 19.3部
アクリル酸2−エチルヘキシル 2.7部
ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド25モル付加)オクチルフェニルエーテルリン酸モノエステルジナトリウム塩 5部
ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド25モル付加)ラウリルエーテル7.5部
上記配合を反応容器に投入し、攪拌しながら過硫酸カリウム0.2%水溶液50部を滴下、反応、熟成、冷却して30%白色エマルジョン増粘剤Gを得た。
このエマルジョン増粘剤Gを水酸化ナトリウムでpH9に調整した。25℃におけるウベローデ粘度計を用いて測定した相対粘度は4,500mPa・sであった。
【0049】
実施例1の磁気記録層塗液の調製において、A液をG液に等量置き換えた以外は実施例1と同様にして、感熱記録型磁気記録シートを得た。
【0050】
実施例3
実施例1の磁気記録層塗液の調製において、A液を10部にした以外は実施例1と同様にして、感熱記録型磁気記録シートを得た。
【0051】
実施例4
実施例1のD液を下記のH液に変更し、E液を下記のI液に変更した。
[感熱記録層塗液の調製]
[H液の調製]
10%スルホン酸変性ポリビニルアルコール溶液(日本合成化学工業社製、ゴーセランL3266) 100部
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン 100部
水 75部
H液をダイノミル(シンマルエンタープライゼス製)を用いて体積平均、1.5μmに粉砕した。
[I液の調製]
10%スルホン酸変性ポリビニルアルコール溶液(日本合成化学工業社製、ゴーセランL3266) 60部
p−オキシ安息香酸ベンジル 100部
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン 20部
水 180部
I液をダイノミル(シンマルエンタープライゼス製)を用いて体積平均粒径1.5μmになるように粉砕した。
[J液の調製]
下記内容からなる混合物を、混合攪拌させて感熱記録層塗液J液を調製した。
40%炭酸カルシウム分散液 70部
H液 25部
I液 175部
10%完全鹸化ポリビニルアルコール水溶液 260部
50%ステアリン酸亜鉛分散体 20部
J液を、実施例1において磁気記録層が設けられた支持体の反対面に、乾燥塗布量が7.5g/m2となるように塗布乾燥して感熱記録層を設け、更に感熱記録層の面のベック平滑度が150〜200秒となるようにカレンダー処理をした。
【0052】
[保護層塗液の調製]
[K液の調製]
完全鹸化ポリビニルアルコール 100部
キトサン 15部
水 1035部
上記の混合物を90℃に昇温し、1時間溶解後40℃まで冷却後、乳酸11部添加してK液を得た。
[L液の調製]
20%非晶質合成シリカ(水澤化学工業社製、ミズカシルP527)分散液 75部
K液 460部
50%ステアリン酸亜鉛分散体 5部
40%グリオキザール 1.6部
L液を、上記感熱記録層上に乾燥塗布量が2g/m2となるように塗布乾燥して保護層を設け、更に保護層の面のベック平滑度が400〜500秒となるようにカレンダー処理をして、感熱記録型磁気記録シートを得た。
【0053】
実施例5
実施例4のI液を下記のM液に変更した。
[M液の調製]
10%スルホン酸変性ポリビニルアルコール溶液(日本合成化学工業社製、ゴーセランL3266) 40部
2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン 40部
4,4′−ジアリルオキシジフェニルスルホン 40部
水 120部
M液をダイノミル(シンマルエンタープライゼス製)を用いて体積平均粒径1.5μmになるように粉砕した。
[N液の調製]
下記内容からなる混合物を混合攪拌させて、感熱記録層液N液を調製した。
40%炭酸カルシウム分散液 50部
D液 70部
M液 340部
10%完全鹸化ポリビニルアルコール水溶液 240部
50%ステアリン酸亜鉛分散体 30部
N液を、実施例1において磁気記録層が設けられた支持体の反対面に、乾燥塗布量が7.5g/m2となるように塗布乾燥して感熱記録層を設け、更に感熱記録層の面のベック平滑度が150〜200秒となるようにカレンダー処理をした。
[保護層の調製]
[O液の調製]
20%非晶質合成シリカ(水澤化学工業社製、ミズカシルP527)分散液 25部
20%アクリルエマルジョン(三井化学社製、OM−1050) 250部
50%ステアリン酸亜鉛分散体 10部
40%グリオキザール 3部
O液を、感熱記録層上に乾燥塗布量が2g/m2となるように塗布乾燥して保護層を設け、更に保護層の面のベック平滑度が400〜500秒となるようにカレンダー処理をして、感熱記録型磁気記録シートを得た。
【0054】
実施例6
実施例1の磁気記録層中のA液を5部にした以外は、実施例1と同様にして感熱記録型磁気記録シートを得た。
【0055】
実施例7
実施例1の磁気記録層中のA液を30部にした以外は、実施例1と同様にして感熱記録型磁気記録シートを得た。
【0056】
比較例1
[30%白色エマルジョン増粘剤Pの合成]
水 300部
メタクリル酸 27.8部
ノニルフェノキシポリオキシエチレン・プロピレングリコール(エチレンオキサイド5モル付加・プロピレンオキサイド15モル付加)メタクリル酸エステル 27.8部
エトキシポリオキシエチレングリコール(エチレンオキサイド25モル付加)メタクリル酸エステル 27.8部
アクリル酸エチル 13.9部
メタクリル酸メチル 13.9部
メタクリル酸ラウリル 27.8部
ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド25モル付加)ステアリルエーテルサルフェートナトリウム塩 3.5部
ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド48モル付加)オクチルエーテル 7.5部
上記配合を反応容器に投入し、攪拌しながら過硫酸カリウム0.2%水溶液50部を滴下、反応、熟成、冷却して30%白色エマルジョン増粘剤を得た。
このエマルジョン増粘剤Pを水酸化ナトリウムでpH9に調整した。25℃におけるウベローデ粘度計を用いて測定した相対粘度は700mPa・sであった。
【0057】
実施例1の磁気記録層塗液の調整において、A液をP液に等量置き換えた以外は実施例1と同様にして、感熱記録型磁気記録シートを得た。
【0058】
比較例2
[30%白色エマルジョン増粘剤Qの合成]
水 300部
メタクリル酸 42.6部
ノニルフェノキシポリオキシエチレングリコール(エチレンオキサイド20モル付加)アクリル酸エステル 1.8部
ブトキシポリオキシエチレン・プロピレングリコール(エチレンオキサイド30モル付加・プロピレンオキサイド20モル付加)メタクリル酸エステル 48.1部
メタクリル酸エチル 16.5部
アクリル酸2−エチルヘキシル 2.7部
アクリス酸ステアリル 11部
ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド15モル付加)ノニルフェニルエーテルリン
酸モノエステルジナトリウム塩 8.8部
ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド25モル付加)ラウリルフェニル エーテル 3.8部
上記配合を反応容器に投入し、攪拌しながら過硫酸カリウム0.2%水溶液50部を滴下、反応、熟成、冷却して30%白色エマルジョン増粘剤Qを得た。
このエマルジョン増粘剤Pを水酸化ナトリウムでpH9に調整した。25℃におけるウベローデ粘度計を用いて測定した相対粘度は6,200mPa・sであった。
【0059】
実施例1の磁気記録層塗液の調整において、A液をQ液に等量置き換えた以外は実施例1と同様にして、感熱記録型磁気記録シートを得た。
【0060】
比較例3
実施例1で作成した30%白色エマルジョン増粘剤Aを水酸化ナトリウムでpH9に調整しない以外は、実施例1と同様にして感熱記録型磁気記録シートを得た。
【0061】
比較例4
実施例1の磁気記録層中のA液をポリエチレンオキサイド(住友精化製、PEO−1)に等量置き換えた以外は、実施例1と同様にして感熱記録型磁気記録シートを得た。
【0062】
比較例5
実施例1の磁気記録層中のA液をカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬製、セロゲンPRC)4.0質量部にした以外は、実施例1と同様にして感熱記録型磁気記録シートを得た。
【0063】
実施例1〜7及び比較例1〜5で得た感熱記録型磁気記録シートについて下記の項目の評価を行った。
[磁気評価]
オムロン(株)製エンコード試験機で磁気記録面を上にして試験機に投入し、約2m/秒の搬送速度で磁気書き込みを行う。エンコーダーの端子にメモリーハイコーダー(日置電機(株)製)をつないで書き込みの磁気出力を得て、メモリーハイコーダーにそれをサインカーブとして表示した。上下のサインカーブが示す電圧の最大値(上Max.、下Max.)と最小値(上Min.、下Min.)の数値を読みとり、下記の式に従い読み取り出力と出力変動を求めた。この値が読み取り出力のどれくらいにあたるかを%で示した。
読み取り出力(V)=(上Max.+上Min.+下Max.+下Min.)/4
出力変動(mV)=〔(上Max.−上Min.)+(下Max.−下Min.)〕/2
一般には出力変動はこの値が読み取り出力のどれくらいにあたるかを%で示すため、以下の式により求めた。
出力変動(%)={出力変動(mV)/読み取り出力(V)}×100
読み取り出力は磁気記録層の塗布量に起因する特性であり、出力変動は磁気記録層中の磁性粉の分布の均一性を示す指標であり、数値的には小さい方がより均一に分布していることを示すが、実用的には出力変動は読み取り出力の10%以下であることが必要で、7%以下であることが好ましい。また読み取りに支障のある波形歪みの有無を目視にて判定した。△でも実用できるが、○が好ましい。
○・・波形歪みが全く認められない。
△・・波形歪みが認められるが、読み取りに支障をきたすことはない。
×・・波形歪みがあり、読み取りに支障をきたす。
××・波形歪みが酷く、読み取りができない。
【0064】
[ブロッキング評価]
実施例1〜7及び比較例1〜5の感熱記録型磁気記録シートを切符大のサイズ(縦30mm×横57.5mm)に2枚切り、各実施例又は比較例のシートの発色面側とその実施例又は比較例のもう1枚のシートの磁気記録面側とを接触させ、重さ580g/cm2の加重を掛け、40℃・90%RHの環境で24時間放置した。その後、2枚のシートを手で剥がし、磁気記録面及び感熱記録面への汚れの程度を目視にて判定した。△でも実用できるが、○が好ましい。
○・・ブロッキングによる磁気記録面及び感熱記録面への汚れが全くない。
△・・一部にブロッキングによる磁気記録面及び感熱記録面への汚れがある。
×・・全面的にブロッキングによる磁気記録面及び感熱記録面への汚れがあり、実用で きない。
××・ブロッキングでサンプル同士がくっつき、無理に剥がすと紙が破れる。
【0065】
[耐水性]
磁気記録面に水を0.05ml滴下し、10秒間放置後キムワイプ(日本製紙クレシア製)で15回強く擦り、磁気記録面の塗層の落ち具合で目視判定を行った。△でも実用できるが、○がより好ましい。
○・・塗層落ちが全くない。
△・・磁気層の塗層落ちは目視では判らないが、使用したキムワイプに汚れがある。
×・・塗層がやや溶け落ちる。
【0066】
[減感性]
実施例1〜7及び比較例1〜5の感熱記録型磁気券シートを切符大のサイズ(縦30mm×横57.5mm)に2枚ずつ切り、各実施例又は比較例のシートの発色面側にスタンプ式発色器を用い、発色濃度150℃、加圧1kg、接触時間5秒の条件で発色させる。発色させた感熱面とその実施例または比較例のもう1枚のシートの磁気記録面とを接触させ、重さ280g/cm2の加重を掛け、40℃・90%RHの環境で24時間放置し、磁気記録面と接触していた発色部分の発色濃度を測定し、初期濃度との残存率で評価を行う。残存率90%以上で実用できるが、95%以上が好ましい。
【0067】
[再発色性]
実施例1〜7及び比較例1〜5の感熱記録型磁気券シートを切符大のサイズ(縦30mm×横57.5mm)に2枚ずつ切る。各実施例又は比較例のシートの白紙状態の感熱面とその実施例または比較例のもう1枚のシートの磁気記録面とを接触させ、重さ280g/cm2の加重を掛け、40℃・90%RHの環境で24時間放置し、磁気記録面と接触
していた部分にスタンプ式発色器を用い、発色濃度150℃、加圧1kg、接触時間5秒の条件で発色させる。発色部分の発色濃度を測定し、初期濃度との残存率で評価を行う。残存率90%以上で実用できるが、95%以上が好ましい。
【0068】
【表1】

【0069】
表1から、本発明の感熱記録磁気シートが磁気特性を損なうこともブロッキング磁気記録層の色落ち等を生じさせることもなく、磁気記録層の耐水性に優れていることが分かる。また、感熱記録層上に保護層を設けることにより他の特性も良好に維持できたまま、感熱特性が更に向上することも分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、磁性体粉末と水性結着剤及び増粘剤を主成分とする磁気記録層を設け、もう一方の面に無色ないし淡色の塩基性染料及び該染料と反応して呈色しうる顕色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録型磁気記録シートにおいて、該増粘剤が単量体合計100質量部中、(1)メタクリル酸(塩)を25〜90質量部、(2)下記一般式(I)で示される単量体Aを1〜60質量部、(3)下記一般式(II)で示される単量体Bを1〜30質量部、(4)下記一般式(III)で示される単量体Cを1〜60質量部、これらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体Dを0〜30質量部からなり、単量体D/単量体Cの質量比が0.5未満である重合体を含有し、水酸化ナトリウムで完全中和して使用する該増粘剤の2質量%水性液の25℃における粘度が50〜10,000mPa・sであることを特徴とする感熱記録型磁気記録シート。
【化1】

(式I中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立にHまたはCH3であり、R4は炭素数8〜20のアルキルフェニル基、フェニルアルキル基またはアルキル基であり、nは3〜50である。)
【化2】

(式II中、R5、R6及びR7はそれぞれ独立にHまたはCH3であり、R8は炭素数1〜4のアルキル基であり、mは3〜100である。)
【化3】

(式III中、R9はHまたはCH3であり、R10は炭素数1〜2のアルキル基である。)
【請求項2】
上記重合体の形態がエマルジョンである請求項1記載の感熱記録型磁気記録シート。
【請求項3】
上記エマルジョンが、アニオン性乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート塩、モノ、ジ、またはトリポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、モノ、ジ、またはトリポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、及びポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルサルフェート塩からなる群より選ばれた1種または2種以上及び/または非イオン性乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルからなる群より選ばれた1種または2種以上を単量体合計100質量部に対し1〜25質量部を使用し、乳化重合してなる請求項2記載の感熱記録型磁気記録シート。
【請求項4】
増粘剤を、磁性体粉末と水性結着剤を含有する磁気記録層用塗料に、磁性体粉末100質量部に対して0.5から1.5質量部含有する請求項1〜3のいずれかに記載の感熱記録型磁気記録シート。

【公開番号】特開2008−246736(P2008−246736A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88608(P2007−88608)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】