説明

感熱記録媒体、感熱記録媒体ラベル、感熱記録媒体転写シート、および情報記録媒体

【課題】目視情報記録用の感熱記録層に、真偽判定用の手段を付与した感熱記録媒体を提供することを課題とするものであり、また、対象物品に適用するのに適した形態や、感熱記録媒体と他の情報記録手段を共に用いて構成した情報記録媒体を提供することを課題とする。
【解決手段】磁気記録層11等を設ける等した基材10に、色変化層、例えば光選択反射層2と感熱記録層3との積層体からなる感熱記録媒体1を適用し、必要に応じて保護層7等を設け、情報記録媒体9とした。光選択反射層2は見る角度により色相が変化し、右円偏光板もしくは左円偏光板を重ねることにより、真偽の判定が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不正な意図に基づく偽造や改ざん等により得られたものとの区別を可能にした感熱記録媒体に関する。また、本発明は、そのような感熱記録媒体を対象物品に適用するのに適するラベルの形態や転写シートの形態に加工したものにも関する。さらに本発明は、感熱記録媒体を適用した情報記録媒体にも関する。
【背景技術】
【0002】
クレジットカードもしくは預貯金用カード等の各種のカード、交通機関の定期券、または身分証明書等には、通常、所有者各人の氏名や番号、有効期間、もしくは乗車区間等の情報が用途に合わせて選択され、目視情報として記録されている。情報を目視情報として記録する際には、記録に要する時間が短く、大型の装置を要しない感熱発色方式が利用されることが多い。感熱発色方式としては、通常、不可逆なものが用いられるため、改ざんは難しいものの、得られる目視情報は解像度があまり高くなく、発色濃度も一定であるため、カラー複写機等による偽造が試みられる可能性がある。
【0003】
従来、カラー複写機による偽造を防止する意味で、二色性の色素を用いた特殊なインクを用いたり、肉眼では見えるが複写機の解像度では複写されない微細な地紋を形成する、等の高度な印刷技術を利用する試みが行われている。しかし感熱発色方式による情報を目視情報として記録する際には、発色色相が素材により予め決まっているし、解像度を高くすることが難しいから、上記のようなカラー複写機による偽造の防止策を採用することは難しい。
【0004】
偽造防止カードとして、基材、反射層、およびパターン状のサーモトロピック性高分子液晶層を順に形成し、サーモトロピック性高分子液晶層を加熱加圧して仕上げることにより液晶性を持たせ、偏光フィルムを介するとサーモトロピック性高分子液晶層のパターンが見えるよう構成したものが提案されている。(特許文献1。)。
【特許文献1】特開2004−122566号公報(請求項1)。
【0005】
特許文献1記載の偽造防止用カードは、肉眼では見えない潜像を有し、偏光フィルムを介することにより、その潜像が顕像化され、また、特有な色が見えることによる、真偽の判定を可能としたものであるとされている。しかしながら、感熱発色により記録が施される感熱記録層に、特許文献1記載のようなパターン状のサーモトロピック性高分子液晶層を隣接させて積層し、加熱加圧して仕上げようとすると、感熱記録層も発色する恐れがある。また、感熱記録層への記録の際にサーモトロピック性高分子液晶層にも同じ記録を潜像として施すことは可能だが、感熱記録層には個別情報が記録されることが普通であるから、一定の潜像を持たせることは難しくなり、真偽の判定用としては好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、感熱記録層を目視情報の記録用に用いた場合に、感熱記録層に隣接して形成する際の制約がなく、しかも、真偽判定に適した一定の光学的性能を有する真偽判定用の手段を付与した感熱記録媒体を提供することを課題とするものである。また、本発明の課題は、感熱記録媒体として対象物品に適用するのに適した形態を有するものを提供することを課題とするものである。さらに、本発明は、そのような感熱記録媒体に加えて他の情報記録手段を共に用いて構成した情報記録媒体を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の本発明の課題は、コレステリック液晶で構成された光選択反射層やその他の色変化層と感熱記録層とを積層して感熱記録媒体を構成して用いることにより、解決し得ることが判明し、これに基づいて本発明に到達することができた。
【0008】
課題を解決する第1の発明は、見る角度により異なる色を与える色変化層と、加熱により発色する感熱記録層とが積層されていることを特徴とする感熱記録媒体に関するものである。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記色変化層が、入射光のうち左円偏光もしくは右円偏光のいずれか一方を反射する光選択反射性を有する光選択反射層であることを特徴とする感熱記録媒体に関するものである。
【0010】
第3の発明は、第1の発明において前記色変化層もしくは前記感熱記録層の少なくともいずれか、または第2の発明において前記光選択反射層もしくは前記感熱記録層の少なくともいずれかが、二層以上から構成されていることを特徴とする感熱記録媒体に関するものである。
【0011】
第4の発明は、第1〜第3いずれかの発明の感熱記録媒体とシート状基材が積層された積層体に接着剤層が積層されていることを特徴とする感熱記録媒体ラベルに関するものである。
【0012】
第5の発明は、第1〜第3いずれかの発明の感熱記録媒体と接着剤層とからなる積層体の前記感熱記録媒体側がシート状基材と剥離可能に積層されていることを特徴とする感熱記録媒体転写シートに関するものである。
【0013】
第6の発明は、基材に情報記録手段が設けられており、さらに第1〜第3いずれかの発明の感熱記録媒体が積層されていることを特徴とする情報記録媒体に関するものである。
【0014】
第7の発明は、第6の発明において、前記情報記録手段が磁気記録層もしくはICチップであることを特徴とする情報記録媒体に関するものである。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、形成上の問題が無く、また、感熱記録層への記録および記録された情報の視認性に問題が無く、しかも、見る角度による色相の変化があり、真偽判定の可能な感熱記録媒体を提供することができる。
【0016】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、右円偏光もしくは左円偏光を照射することにより、光選択反射層の存在を確認でき、真偽判定の可能な感熱記録媒体を提供することができる。
【0017】
第3の発明によれば、第1もしくは第2の発明の効果に加え、色変化層または/および感熱記録層か、光選択反射層または/および感熱記録層が二層以上から構成されているので、色変化層もしくは光選択反射層の光学的特性をより複雑なものとすることでき、あるいは、感熱記録層に記録された情報の部分の色相を二色以上とすることが可能な感熱記録媒体を提供することができる。
【0018】
第4の発明によれば、第1〜第3いずれかの発明の効果を発揮し得る感熱記録媒体に接着剤層が積層されて構成されていることにより、接着剤層を利用して対象物品に容易に適用可能な感熱記録媒体ラベルを提供することができる。
【0019】
第5の発明によれば、第1〜第3いずれかの発明の効果を発揮し得る感熱記録媒体が転写可能に構成されていることにより、対象物品に容易に適用可能な感熱記録媒体転写シートを提供することができる。
【0020】
第6の発明によれば、第1〜第3いずれかの発明の感熱記録媒体が、情報記録手段が設けられた基材に適用されていることにより、第1〜第3いずれかの発明の効果に加えて、情報記録手段に情報を記録して利用することを可能とする情報記録媒体を提供することができる。
【0021】
第7の発明によれば、第6の発明の効果に加えて、情報記録手段を磁気記録層もしくはICチップと規定したので、不可視情報を電磁気的に書き込みまたは/および読み込み可能な情報記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の感熱記録媒体の積層構造を示す図であり、図2は本発明の感熱記録媒体を対象物品に適用するのに適した形態を示す図であり、さらに図3は本発明の感熱記録媒体を適用した情報記録媒体の積層構造を示す図である。
【0023】
図1(a)に示すように、本発明の感熱記録媒体1は、基本的には見る角度により異なり色を与える色変化層2と感熱記録層3とが積層したものである。図1(b)に示すように、感熱記録媒体1は色変化層2の1層と、感熱記録層として層3aおよび層3bの2層とから構成されたものであってもよい。図示はしないが、感熱記録媒体1は色変化層が2層と感熱記録層が1層とから構成されたものであってもよい。あるいは、図1(c)に示すように、感熱記録媒体1は色変化層として層2aおよび層2bの2層と、感熱記録層として層3aおよび層3bの2層とから構成されたものであってもよく、色変化層または/および前記感熱記録層は二層以上から構成されていてもよい。なお、本発明の感熱記録媒体1を構成する色変化層と感熱記録層の積層順は、任意でよい。また、色変化層が二層以上から構成されているとき、それら二層以上の同種の層は、互いに接していてもよいし、間に他の層が介在していてもよい。感熱記録層が二層以上から構成されているときも同様である。
【0024】
色変化層2は、種々の素材を用いて構成することができ、例えば、見る角度によって色が変化する顔料を用いる、蒸着薄膜を用いる、もしくは二色性色素を用いることにより構成することができる。見る角度によって色が変化する顔料としては、高屈折率の酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄などの層と、低屈折率のマイカ等の層を積層したパール顔料を例示することができ、具体的には、(株)資生堂製の商品名;インフィニットカラーや、メルク社(独国)製の商品名;イリオジン等が入手可能である。蒸着薄膜はアルミニウム等の金属やそのほかの素材を気相法により薄膜として形成したもので、水面に浮かんだ油の薄膜のようないわゆる干渉色を示すものである。二色性色素は、分子軸の方向によって光の吸収性を相違する長鎖色素分子からなり、例えば、色素分子の分子軸の方向に対して法線方向の光成分は吸収性がほぼなく光を透過するのに対して、分子軸の方向に対して平行方向の光成分は吸収性を有し、光を透過しない性質を有するもので、アントラキノン系、アゾ系、もしくはビスアゾ系の色素を例示することができる。上記のうち、見る角度によって色が変化する顔料もしくは二色性色素は適宜なバインダ樹脂中に分散し、溶剤で希釈して塗布用組成物としたものをシルクスクリーン印刷、グラビア印刷、もしくは公知のコーティング法によって対象表面に適用すればよい。
【0025】
感熱記録媒体1を構成する色変化層2は、コレステリック液晶を用いて構成することもできる。配向状態にあるコレステリック液晶層は、入射した光のうち、左円偏光もしくは右円偏光のいずれか一方のみを反射する性質を有している。また、見る角度により、色相が異なって見える効果も有する。光選択反射層2は、コレステリック液晶の溶剤溶液を各種の印刷法によって適用し、乾燥させることにより形成することができ、あるいは、このとき、重合性のコレステリック液晶を用いて紫外線重合性組成物を調製し、得られた紫外線重合性組成物を各種の印刷法によって適用し、乾燥後に、紫外線を照射して重合させて形成することもできる。コレステリック液晶層からなる光選択反射層2は、上記の見る角度により、色相が異なって見えることを除けば、透視性を有しており、その意味で透明性を有するものである。
【0026】
配向状態を実現するには、延伸したプラスチックシートの表面にコレステリック液晶の溶剤溶液もしくは重合性のコレステリック液晶を用いて調製した紫外線重合性組成物を適用するか、もしくは対象物の表面に配向膜を形成してからコレステリック液晶の溶剤溶液もしくは重合性のコレステリック液晶を用いて調製した紫外線重合性組成物を適用すればよい。光選択反射層2を二層以上設けるときは、層の厚みや素材のらせんピッチ等を異なるように構成し、より複雑な光学特性を付与することができる。あるいは光選択反射層2はパターン状に形成することもできるので、一方を一様な層として形成し、他方をパターン状に形成してもよい。
【0027】
重合性のコレステリック液晶材料としては、下記の一般式(1)で表される化合物や、式(2)〜式(10)で示す化合物を例示することができる。これら例示したものはモノマーであるが、オリゴマーやポリマーであってもよい。一般式(1)で表される化合物を2種類以上併用することや、一般式(1)で表される化合物および式(2)〜式(10)で示す化合物の中から選択して2種類以上併用してもよい。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【0028】
上記の一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれ水素もしくはメチル基を示し、Xは塩素もしくはメチル基であることが好ましい。また一般式(1)で表される化合物のスペーサーであるアルキレン基の鎖長を示すaおよびbは、2〜9の範囲であることが液晶性を発現させる上で好ましい。
【0029】
上記の液晶性化合物には、下記式(11)〜式(13)で表されるカイラル剤を配合してもよい。
【化11】

【化12】

【化13】

【0030】
上記の式(11)において、R3は、水素もしくはメチル基を示す。上記式(11)および式(12)において、Yは、下記式(14)および(15)で示す式(i)〜式(xxiv)のうちのいずれかである。また、上記式(11)〜式(13)において、アルキレン基の鎖長を示すc、dおよびeは、2〜9の範囲であることが液晶性を発現させる上で好ましい。
【化14】

【化15】

【0031】
上記のコレステリック液晶材料およびカイラル剤は、必要に応じて紫外線重合開始剤、さらに溶剤や希釈剤と共に、一例として、コレステリック液晶材料:カイラル剤:紫外線重合開始剤=100:5:5(質量基準)の配合比で混合し、混合して得られた粉体をトルエン等の溶剤を用いて溶解し、30質量%程度の濃度の塗布用溶液を調製するとよい。なお、配合比は、使用するコレステリック液晶材料、カイラル剤、もしくは紫外線重合開始剤等の種類、塗布方式もしくは塗布機、または得たい塗布量によって適宜に定めることができる。
【0032】
感熱記録媒体1を構成する感熱記録層3は、例えば、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物を主成分として構成されたものである。電子供与性染料前駆体としては、ロイコ染料としてこの種の感熱材料に適用されているものが任意に適用され、用途に合わせて、イエロー系、マゼンタ系、もしくはシアン系、またはその他の色相系に発色するものが選ばれる。例えば、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系等の染料のロイコ化合物が好ましく用いられる。
【0033】
電子受容性化合物は、電子供与性染料前駆体と組み合わせて顕色剤として用いられるものであり、具体的には、例えば、以下のような酸性物質が挙げられる。即ち、ビスフェノールA等のフェノール性物質、オクチルホスホン酸、ノニルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、もしくはエイコシルホスホン酸等、α−ヒドロキシオクタノイック酸、α−ヒドロキシドデカノイック酸、α−ヒドロキシテトラデカノイック酸、α−ヒドロキシヘキサデカノイック酸、もしくはα−ヒドロキシオクタデカノイック酸等の有機酸、金属錯体化合物、チオジフェニル尿素、またはキノン類である。
【0034】
上記の電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物は、バインダー樹脂中に分散されて感熱記録層3を構成する。バインダー樹脂としては、デンプン類、セルロース類、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール類、無水マレイン酸共重合体、アクリル類、スチレン?ブタジエン共重合体エマルジョン、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、もしくはポリウレタン樹脂等を用いることができ、必要に応じて各種助剤、例えば、消泡剤としてポリエチレンワックス、もしくはグリオキザール、増感剤としてステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、シュウ酸ジベンジル、もしくはトリルビフェニルエーテル等、または顔料、例えば、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、スチレン、もしくはシリカ等である。以上の素材からなる感熱記録層2は、通常、無色透明もしくは若干ヘイズのある層であるが、厚みが過大にならない限り、透視性を損なうものではなく、その意味で透明性を有するものである。
【0035】
感熱記録層2を二層以上設けるときは、層を構成する素材を各層の発色色相が異なるように選定し、二色以上の発色を行なわせることができる。感熱記録層2を二層以上設けるときは、各層が発色するのに要するエネルギーが異なるよう、感熱記録層2を構成する素材を選定して形成する。なお、感熱記録層2を互いに接する二以上の層として積層形成する場合には、例えば、後に設ける方の感熱記録層を形成するのに用いるインキ中の溶剤の作用に基づいて、既に設けてある方の感熱記録層中の電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物とが反応して発色する恐れがあるので、二以上の異なる感熱記録層どうし、もしくは他の層と感熱記録層との間には、層間を隔離する目的の樹脂等からなる中間層を設けてもよい。中間層を設けることにより、二以上の異なる感熱記録層の各々が発色するのに要するエネルギーの差、即ちエネルギーギャップを作ることができるので、各々の層を選択的に発色させ、しかも、各々の層を発色させたときの境界を明瞭化させる、即ち、コントラストをはっきりさせることができる。
【0036】
図2(a)は本発明の感熱記録媒体を対象物品に適用するのに適したラベルの形態を示す図である。図2(a)においては、感熱記録媒体1を構成する下側から光選択反射層2と感熱記録層3の積層構造(感熱記録媒体1)がシート状基材5上に積層され、感熱記録層3上には保護層7が積層されており、さらにシート状基材5の下側には接着剤層6が積層されて、感熱記録媒体ラベル4が構成されている。シート状基材5は、色変化層(光選択反射層)2や感熱記録層3を形成する際の形成対象として、また、感熱記録媒体1に機械的強度を付与する意味で存在する方が好ましいが、省略することもできる。保護層7は感熱記録媒体ラベル4が接着剤層6を利用して対象物品に適用された後の耐久性を増加させるためのものであるが、やはり省略することもできる。図2(b)に示すように、感熱記録媒体ラベル4における色変化層(光選択反射層)2と感熱記録層3とは、図2(a)を引用して説明した場合とは逆に、シート状基材5側から感熱記録層3、色変化層(光選択反射層)2の順に積層されたものであってもよい。また、シート状基材5を最上層として、上側からシート状基材5、感熱記録層3、色変化層(光選択反射層)2、および接着剤層6の順に積層してもよく、その場合、シート状基材5の上側に保護層7が積層されていてもよい。勿論、シート状基材5を最上層として、上側からシート状基材5、色変化層(光選択反射層)2、感熱記録層3、および接着剤層6の順に積層してもよく、その場合、シート状基材5の上側に保護層7が積層されていてもよい。
【0037】
図2(c)は本発明の感熱記録媒体を対象物品に適用するのに適した転写シートの形態を示す図である。図2(b)においては、感熱記録媒体1を構成する下側から色変化層(光選択反射層)2と感熱記録層3の積層構造(感熱記録媒体1)の上側に保護層7、色変化層(光選択反射層)2の下側に接着剤層6が積層され、保護層7がシート状基材5と剥離可能に積層されて感熱記録媒体転写シート8が構成されている。接着剤層6は転写の際に対象物品の表面に接着剤層を形成するのであれば、転写シート側に設けないことも可能である。また、保護層7は感熱記録媒体転写シート8を用い、接着剤層6を利用して対象物品に転写を行った後の転写されたものの表面の耐久性を増加させるためのものであるが、やはり省略することもできる。感熱記録媒体転写シート8は、図2(d)に示すように、感熱記録媒体1を構成する下側から感熱記録層3と色変化層(光選択反射層)2の積層構造(感熱記録媒体1)の上側に保護層7、感熱記録層3の下側に接着剤層6が積層され、保護層7がシート状基材5と剥離可能に積層されて感熱記録媒体転写シート8が構成されているものであってもよい。この場合にも接着剤層6または/および保護層7を省くことができる。
【0038】
なお、図2(a)および図2(b)を引用して説明した感熱記録ラベル4および感熱転写シート8において、色変化層(光選択反射層)2と感熱記録層3の積層構造は、図1を引用して説明したようないずれの感熱記録媒体1で置き換えてもよく、光選択反射層と感熱記録層の積層順は任意でよい。
【0039】
シート状基材5は、色変化層(光選択反射層)2や感熱記録層3を形成する際の形成対象として、また、感熱記録媒体1に機械的強度を付与する意味である方が好ましいが、省略することもできる。
【0040】
シート状基材5としては、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や真偽判定用媒体を製造する際の加工に耐える耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール等の各種のプラスチックフィルムもしくはプラスチックシートを例示することができる。
【0041】
配向膜が必要なときは、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリイミド樹脂等の一般に配向膜として使用し得るものであれば、いずれを使用して形成してもよい。配向膜は、これらの樹脂の溶剤溶液を、上記のようなシート状基材5の表面に、適宜な塗布法により塗布し、乾燥させた後に、布、ブラシ等を用いて摩擦するラビングを行なう等により形成する。
【0042】
接着剤層6は、本発明の感熱記録媒体1を対象物品に適用するためのもので、接着剤層6を構成する接着剤としては、感熱接着剤もしくは感圧接着剤を用いることができ、いずれでもよいが、どちらかと言えば、感熱記録媒体ラベル4の場合には、圧のみで貼り付けが可能な感圧接着剤を用いることが多く、また、感熱記録媒体転写シート8の場合には、熱および圧で瞬時に転写可能とさせる意味で、感熱接着剤を用いることが多い。
【0043】
保護層7は、感熱記録媒体1の一般的な保護に加えて、感熱記録層3への記録を行なう際にもたらされる熱と圧力による表面の変形の防止、耐薬品性、耐水性、耐摩擦性、ヘッドマッチング性等の向上のほか、透明性向上の目的でも用いられる。保護層7を構成する素材としては、感熱記録層3を構成するバインダー樹脂として既に挙げたもののうち、表面保護層として所望の物性を有する樹脂組成を選定する。特に、表面の耐擦傷性、耐薬品性、耐汚染性を要する場合は熱硬化性樹脂、又は紫外線硬化性樹脂もしくは電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂が通常よく用いられる。感熱記録層3への記録の際の、感熱記録媒体1とサーマルヘッドとの相対的な走行を円滑に行わせるため、保護層7は離型性を有していることが好ましい。このため、保護層7中にシリコーン等の離型性物質を配合したり、または離型性物質を含む素材で保護層の表面を被覆しておくことが好ましい。保護層7はまた、感熱記録媒体1が使用された後、不正な書き変えができないよう、感熱転写リボンを用いた印字を施すことがあるので、印字性と滑り性を共に有することが要求されることがある。この場合には、印字性を有する層をまず形成した後、離型性物質を含む素材を用いて、例えば、0.1mm程度の径の点、0.1mm程度の幅の線を、0.2mm程度あるいはそれ以上の間隔で配置して形成する等して、離型性を有する部分と印字性を有する部分とを密に並べることにより、両方の性質を持たせることができる。
【0044】
感熱記録媒体転写シート8においては、感熱記録媒体1がシート状基材5と剥離可能に積層されていることが好ましい。保護層7やそのほかの層が介在するときには、シート状基材と、シート状基材と接する層との間の剥離性が確保されればよい。剥離性とは言っても、転写の寸前までは、剥離しない程度の接着強度が必要である。シート状基材としてPETフィルムを用いる場合には、ほとんどの塗料もしくはインク中のバインダー樹脂は、PETフィルムと強固には接着しないので、転写の際の剥離が可能である。必要に応じて接着性の高いバインダー樹脂を加えて剥離強度を上げる、もしくは剥離性のあるバインダー樹脂や素材、例えばワックス等を添加して剥離強度を下げる等を行なってもよい。
【0045】
図3は、本発明の感熱記録媒体1が発揮する効果を活かした適用例である情報記録媒体9の積層構造を示す図である。図3(a)に示すように、情報記録媒体9は、下側から色変化層、例えば光選択反射層2、感熱記録層3、および保護層7からなる積層体が基材10上に、光選択反射層2側が接するようにして積層されており、基材10の下面側に磁気記録層11が積層された積層構造であってもよいし、あるいは、図3(b)に示すように、情報記録媒体9は、下側から感熱記録層3、色変化層、例えば光選択反射層2、および保護層7からなる積層体が基材10上に、感熱記録層3側が接するようにして積層されており、基材10の下面側に磁気記録層11が積層された積層構造であってもよい。
【0046】
図3(b)に示すような情報記録媒体9の感熱記録層3に熱記録を行ったものは、感熱記録層3の記録により発色した部分(=記録部分)の上の色変化層(光選択反射層)2の作用により、図の上面側から眺めると、記録部分の色が変化して見える効果が生まれる。例えば、感熱記録層3が黒色発色用および赤色発色用の2層を有しているときは、熱記録を行うことにより、赤色に発色した記録部および黒色に発色した記録部と発色していない無地部分とが生じるが、赤色に発色した記録部上、黒色に発色した記録部上、および発色していない無地部分上が、それぞれ色が変化して見える複雑な視覚効果が生まれる。このように複雑な視覚効果が得られるものは偽造を行ないにくく、あるいは偽造を行ないにくいと思わせることが可能となり、カラーコピー機を使用したコピー等を抑制することができる。
【0047】
図4は、本発明の情報記録媒体9の実施態様の一つを示すもので、図の下面側から磁気記録層11、基材10、中間層12A、感熱記録層A(符号3A)、中間層12B、感熱記録層B(符号3B)、色変化層としての光選択反射層2、および保護層7が積層されたものである。中間層B(符号12B)の役割は既に説明した通りであるが、中間層Aの役割は、基材10と感熱記録層Aとの積層の際に、感熱記録層Aが発色しないよう、基材10と感熱記録層Aとの間を熱的に遮断することである。
【0048】
基材10と磁気記録層11からなる積層体は、クレジットカードもしくは預貯金用カード等の各種のカード、交通機関の定期券、または身分証明書等に広く用いられているもので、磁気記録層11には、種々の情報が不可視情報として記録され、読み取り手段を用いて記録されている情報を読み取り、所定のステップを実行して、購入代金の精算、現金の預け入れもしくは引き出し、またはゲートの通過許可、等が行なわれる。
【0049】
基材10は、用途に応じた強度、厚みを有するもので、前記したシート状基材5を構成する素材と同様のプラスチックフィルムもしくはプラスチックシート、もしくは紙等で構成し、必要に応じて、2〜3枚、もしくはそれ以上を複合したものであってもよい。
【0050】
磁気記録層11は、(1)磁性剤粉末を含有する物質を添加し混練して調製した磁気塗料を用いて基材10に直接に塗布して設けたもの、(2)基材10とは別の薄いプラスチックフィルム等に塗布し、ストライプ状にカットしてカード基材10に貼り付けて設けたもの、もしくは(3)仮の基材に剥離可能に積層して準備された磁気記録層転写シートを用い、転写法により、基材10に転写して形成されたものである。磁気記録層11としては、基材10に対して、磁性物質の蒸着やスパッタリング等により気相状態で磁性物質の薄膜として形成されたものや、そのような薄膜の形成を、磁気記録媒体の基材とは別の基材上に行ない、その後、ストライプ状にカットして貼るか、転写により適用したものであってもよい。
【0051】
情報記録媒体9の感熱記録3には、例えば、所有者各人の氏名や番号、有効期間、乗車区間、もしくは金額等の情報が目視情報として記録され、目視による判定が可能になるよう構成されている。
【0052】
また、上記の例の情報記録媒体9の色変化層(光選択反射層)2は、見る角度により色相が変化する効果を有するから、カラー複写による複製が困難である印象を与え、偽造を防止する効果が生じる。また、色変化層2が光選択反射層である場合には、入射光のうち左円偏光もしくは右円偏光のいずれか一方を反射する光選択反射性を有するので、うち左円偏光もしくは右円偏光を入射することにより、より簡易には、左円偏光板もしくは右円偏光板を重ねることにより、その特性に合わせて、いずれかの円偏光の入射の際、もしくはいずれかの円偏光板を重ねたときに反射が起こらず、他方の場合には反射することを確認することにより、情報記録媒体9の真正性を判定することができる。
【0053】
上記の例の情報記録媒体9においては、基材10に情報記録手段として磁気記録層11が設けられているが、この磁気記録層11をICチップに置き換えてもよいし、あるいは磁気記録層11とICチップの両方が設けられているものであってもよい。
【0054】
本発明の情報記録媒体9には、感熱記録層3を利用して行なう目視情報の記録以外に、
発行団体名、カードの名称、注意書き、説明文、もしくは金券として利用するための金額等の情報や、任意の図柄、もしくは彩紋等が施されていてもよく、これらの情報、図柄、もしくは彩紋の形成は印刷等の任意の手段によって行なえ、形成する部分としては、感熱記録層3への記録を妨げない範囲であれば、いずれの部分でもよく、また、先に説明した感熱記録媒体1、感熱記録媒体ラベル4、もしくは感熱記録媒体転写シート8のいずれかの部分であってもよい。
【実施例1】
【0055】
厚みが188μmのPETフィルムの表面に、磁性塗料 (バリウムフェライト:ウレタン樹脂:カーボン=36:12:2の50%溶剤溶液(溶剤;トルエン:MEK:MIBK=20:15:15)を塗布して乾燥させ、温度;80℃でエージングを行ない、磁気記録層を形成した。磁気記録層の形成後、磁気記録層を形成したのとは反対側の面に、紫外線硬化性コレステリック液晶塗料を塗布して乾燥させ、その後、紫外線照射を行なって硬化させ、コレステリック液晶層を形成した。ここで、紫外線硬化性コレステリック液晶塗料は、重合性のネマチック液晶(BASF(株)製、商品名;「パリオカラーLC242」)、カイラル剤(BASF(株)製、商品名;「パリオカラーLC756」)および紫外線重合開始剤を配合したものの20%溶液(溶剤はトルエンである。)であり、このうち重合性のネマチック液晶/カイラル剤の配合比は95.5/4.5、紫外線重合開始剤を重合性のネマチック液晶に対して5%配合したものである。
【0056】
形成したコレステリック液晶層上に、さらに、黒色発色用の感熱記録層および保護層を順次形成して、情報記録媒体を得た。黒色発色用の感熱記録層形成用塗料としては、3−(N−エチル−N−アシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、ビスフェノールA、およびバインダー溶液(ポリビニルアルコール10%水溶液)からなるものを用い、保護層形成用塗料としてはウレタンアクリレート系樹脂溶液を用いた。
【実施例2】
【0057】
コレステリック液晶層をパターン状に形成したこと、および感熱記録層として黒色発色用および赤色発色用の二層を形成した以外は、実施例1におけるものと同様にして、情報記録媒体を得た。コレステリック液晶層をパターン状に形成するためにはグラビア印刷方式を利用して行なった。また、黒色発色用の感熱記録層形成用塗料としては、実施例1におけるのと同じものを用い、赤色発色用の感熱記録層形成用塗料としては、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3,3−ジクロロフェニルチオ尿素、およびバインダー溶液(ポリビニルアルコール10%水溶液)からなるものを用いた。
【実施例3】
【0058】
(転写シートの作成)
厚みが25μmのPETフィルムの表面に、実施例1におけるのと同様にして、コレステリック液晶層を形成した。
【0059】
コレステリック液晶層上に、赤色発色用の感熱記録層、黒色発色用の感熱記録層、および感熱記録層を保護するための樹脂層の三層を順次積層して転写シートを得た。赤色発色用の感熱記録層形成用塗料としては、実施例2で挙げたものを用い、黒色発色用の感熱記録層形成用塗料および保護層形成用塗料としては、実施例1で挙げたものと同じものを用いた。
【0060】
(基材への転写)
上記の転写シートとは別に、新たに厚みが188μmのPETフィルムを準備し、その上に磁性塗料 (バリウムフェライト:ウレタン樹脂:カーボン=36:12:2の50%溶剤溶液(溶剤;トルエン:MEK:MIBK=20:15:15)を塗布して乾燥させ、温度;80℃でエージングを行なった後、磁性塗料を塗布しなかった方の面に、上記の転写シートの保護層側が接するようにして重ねて圧着し、転写を行ない、転写シートのPETフィルムを剥離した。
【実施例4】
【0061】
厚みが25μmのPETフィルムの表面に、アクリル樹脂溶液からなる剥離性ニスを塗布して剥離層を形成し、剥離層上にポリイミド系樹脂の溶液を塗布し、乾燥させた後に、ラビングを行なって配向させ、配向膜を形成し、その後、配向膜上にコレステリック液晶層を形成した以外は、実施例3におけるのと同様に行なった。
【実施例5】
【0062】
実施例1におけるのと同様にして、ただし、黒色発色用の感熱記録層および保護層を、コレステリック液晶層上の一部に形成し、黒色発色用の感熱記録層および保護層を形成しなかった部分の上に、ポリウレタン樹脂溶液を塗布し、乾燥させ、その後、エージングを行なって、受像層を形成した。また、磁気記録層を形成した側には、磁気記録層の表面に説明文を印刷し、さらに保護層を積層した。
【実施例6】
【0063】
実施例3におけるのと同様にして、ただし、行なった後、黒色発色用の感熱記録層、赤色発色用の感熱記録層および保護層を、コレステリック液晶層上の一部に形成し、黒色発色用および赤色発色用の二種類の感熱記録層および保護層を形成しなかった部分の上に、ポリウレタン樹脂溶液を塗布し、乾燥させ、その後、エージングを行なって、受像層を形成した。また、磁気記録層を形成した側には、磁気記録層の表面に説明文を印刷し、さらに保護層を積層した。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の感熱記録媒体を示す図である。
【図2】本発明の感熱記録媒体を対象物品に適用する形態を示す図である。
【図3】本発明の情報記録媒体を示す図である。
【図4】本発明の他の情報記録媒体を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1……感熱記録媒体
2……色変化層(光選択反射層)
3……感熱記録層
4……感熱記録媒体ラベル
5……シート状基材
6……接着剤層
7……保護層
8……感熱記録媒体転写シート
9……情報記録媒体
10……基材
11……磁気記録層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
見る角度により異なる色を与える色変化層と、加熱により発色する感熱記録層とが積層されていることを特徴とする感熱記録媒体。
【請求項2】
前記色変化層が、入射光のうち左円偏光もしくは右円偏光のいずれか一方を反射する光選択反射性を有する光選択反射層であることを特徴とする請求項1記載の感熱記録媒体。
【請求項3】
請求項1において前記色変化層もしくは前記感熱記録層の少なくともいずれか、または請求項2において前記光選択反射層もしくは前記感熱記録層の少なくともいずれかが、二層以上から構成されていることを特徴とする感熱記録媒体。
【請求項4】
請求項1〜請求項3いずれか記載の感熱記録媒体とシート状基材が積層された積層体に接着剤層が積層されていることを特徴とする感熱記録媒体ラベル。
【請求項5】
請求項1〜請求項3いずれか記載の感熱記録媒体と接着剤層とからなる積層体の前記感熱記録媒体側がシート状基材と剥離可能に積層されていることを特徴とする感熱記録媒体転写シート。
【請求項6】
基材に情報記録手段が設けられており、さらに請求項1〜請求項3いずれか記載の感熱記録媒体が積層されていることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項7】
前記情報記録手段が磁気記録層もしくはICチップであることを特徴とする請求項6記載の情報記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−56019(P2006−56019A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237196(P2004−237196)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】